説明

酒類のオリ下げ剤

【課題】酒類のオリ下げ工程において、酒類中のタンパク質や濁りを速やかに凝集させることができ、なおかつ酒質に悪影響を及ぼさず、より安全なオリ下げ剤を提供すること。
【解決手段】米糠出タンパク質を含有することを特徴とするオリ下げ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米糠タンパク質を含有するオリ下げ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酒類の製造工程の一つにオリ下げという工程がある。オリ下げとは、酒類中に存在するタンパク質や濁りを沈殿させて、濾過等の操作により酒類中からタンパク質や濁りを除去する作業のことであり、酒類を製品として充填する前には必要となる工程である。このオリ下げの工程で、酒類中に存在するタンパク質等の除去が不十分となると、酒類を製品として充填する時にタンパク質等に起因する白い浮遊物が酒類中に発生し、酒類の製品としての商品価値を著しく低下させることになる。
【0003】
そのようなオリ下げ方法として、例えば、清酒中に柿渋と、ゼラチン又は二酸化珪素等を混合してフロックを形成させてオリを沈降させる方法(特許文献1参照)、プロテアーゼで清酒中の混濁タンパク質を一部分解する方法(特許文献2参照)及び限外濾過膜を用いて酒類を濾過する方法等が挙げられる。
【0004】
柿渋と、ゼラチン等を用いる方法は、次のとおりである。まず、清酒に所要量の活性炭を添加して十分撹拌した後1〜3時間放置する。そして、予備試験により決定した量の柿渋を清酒に添加してよく撹拌して30分放置する。そうすると、清酒中に活性炭、柿渋及び清酒中のタンパク質からなる小さなオリができ、最後に予備試験により決定した量のゼラチンを添加して十分撹拌した後、2〜3日静置する。このようにすると、ゼラチンが清酒中のタンパク質と結合して、小さなオリが大きくなり沈殿しやすくなるので、次の濾過工程がし易くなることに因っている。ゼラチンを用いる方法は狂牛病問題があり業界全体で使用を控える方向にあり、代替の安全なタンパク質が求められている。
【0005】
プロテアーゼで清酒中の混濁タンパク質を分解する方法は、清酒に所要量のプロテアーゼ剤を添加して撹拌した後、所要量の活性炭を添加して10〜20日間静置し、清酒中のタンパク質を分解除去する方法であるが、かなりの日数とコストが必要となるという問題がある。限外濾過膜を用いて酒類を濾過する方法は、清酒中のタンパク質を分画分子量の濾過膜で分離除去する方法であるが、高額な装置が必要となるという問題がある。
【特許文献1】特開昭49−110895号公報
【特許文献2】特開平11−169163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酒類のオリ下げ工程において、酒類中のタンパク質や濁りを速やかに凝集させることができ、なおかつ酒質に悪影響を及ぼさず、より安全なオリ下げ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、オリ下げ剤に米糠タンパク質を含む米糠溶媒抽出物を含有させることにより、上記課題を解決できることを見出し、この知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1] 米糠タンパク質を含有することを特徴とするオリ下げ剤、
[2] 米糠タンパク質が米糠の中性乃至弱アルカリ性溶液抽出タンパク質であることを特徴とする前記[1]に記載のオリ下げ剤、
[3] 中性乃至弱アルカリ性溶液のpHが6.5〜12であることを特徴とする前記[2]に記載のオリ下げ剤、
[4] 米糠に中性乃至弱アルカリ性溶液を添加して混合し、米糠から米糠タンパク質を抽出する工程を含むことを特徴とするオリ下げ剤の製造方法。
[5] 酒類の製造方法において、該酒類に前記[1]〜[3]のいずれかに記載のオリ下げ剤を加える工程を含むことを特徴とする酒類の製造方法、及び
[6] 酒類が、清酒、ビール、発泡酒、みりん又は梅酒であることを特徴とする前記[5]に記載の酒類の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、酒類製造における酒類のオリ下げ工程において、酒類中のタンパク質や濁りを速やかに凝集させることができ、なおかつ酒質に悪影響を及ぼさず、より安全なオリ下げ剤を提供できる。
本発明に係るオリ下げ剤を酒類のオリ下げ工程に用いれば、従来この技術分野において使用されていた柿渋とゼラチン又は二酸化珪素等既知のオリ下げ剤を用いる方法と同等以上に、酒類中のタンパク質や濁りを速やかに凝集させることができ、なおかつ米糠の抽出タンパク質を使用しているため、オリ下げを行う酒質に悪影響を及ぼさず、より安全な製品として酒類を消費者に提供することが可能である。
また、本発明のオリ下げ剤は、精米後のいわば廃棄物である米糠を原料とするので、廃棄物の有効利用にもなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るオリ下げ剤は、米糠を適当な溶媒を用いて抽出することにより米糠タンパク質を含有する抽出物として得ることができる。米糠としては、玄米を精米等して得られる米糠が挙げられる。また該米糠は、米糠であれば特に限定されず、例えば米糠から油分を抽出した後に得られる脱脂米糠等も含まれる。経済性、保存性、操作性などの点から、脱脂米糠が好ましい。本発明に用いられる溶媒としては、例えば水(例えば、精製水、蒸留水、水道水等)、塩類(例えば塩化ナトリウム等)溶液、食品素材調製用に使用可能なアルカリ若しくは酸溶液、食品素材調製用に使用可能な有機溶剤(例えば、エタノール等)又はそれらを適宜組み合わせた溶媒等が挙げられる。より具体的には、例えば希塩類溶液、中性乃至弱アルカリ性溶液、弱酸溶液さらには、5〜90容量%のエタノール含有中性乃至弱アルカリ性溶液、又は5〜90容量%のエタノール含有弱酸溶液等の溶媒が挙げられるが、中性乃至弱アルカリ性溶液が好ましい。中性乃至弱アルカリ性溶液のpHは約6.5〜12が好ましく、約6.5〜11がより好ましく、約7.0〜11がさらに好ましく、約7.5〜10がとりわけ好ましく、約7.5〜9が特に好ましい。本発明においては、前記pHの範囲であれば米糠タンパク質を効率よく抽出できる。アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、酸としては例えば塩酸等が挙げられる。上記において、水溶液が好ましい。
溶媒を用いて米糠から米糠タンパク質を抽出するには、米糠タンパク質を有効に抽出できる方法であれば、如何なる抽出方法も用いることができる。例えば米糠と溶媒を混合し、混合液を得る。米糠と溶媒との配合割合としては、例えば米糠1質量部に対して溶媒約5〜50質量部、好ましくは約5〜20質量部、さらに好ましくは約8〜15質量部程度等が挙げられるが、特に限定されない。米糠タンパク質を例えば中性乃至弱アルカリ性水溶液で抽出する場合、米糠と上記pHに調整した中性乃至弱アルカリ性水溶液とを前記配合割合で混合してもよく、米糠と水とを前記配合割合で混合して、例えば約10〜30質量%程度の水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等で上記pHに調整してもよい。米糠と溶媒との混合は、米糠を均一に混合するため攪拌、振とう等を行なうことが好ましい。
次に、混合液中の米糠の米糠タンパク質を溶液に可溶化せしめ溶液に抽出する。抽出温度は、約0〜50℃が好ましく、約0〜40℃が特に好ましい。前記抽出温度には室温も含まれる。抽出時間は、特に限定されず通常、約0.5〜100時間、好ましくは約0.5〜24時間、さらに好ましくは約0.5〜5時間程度である。抽出方法としては、例えば、静置法、攪拌法、振とう法又はカラム溶出法等が挙げられるが、攪拌法又は振とう法等が好ましい。
次に、可溶化された米糠タンパク質を含む抽出液を米糠から分離する。抽出液を分離する方法としては、例えば、遠心分離法、濾過法、減圧膜濾過法、加圧膜濾過法又は静置デカント法等が挙げられるが、好ましくは、遠心分離法である。
【0011】
分離された米糠タンパク質を含む抽出液は、所望により濃縮又は乾燥等して本発明のオリ下げ剤とすることができるが、前記抽出液に含まれる米糠タンパク質が濃縮されたオリ下げ剤とすることが好ましい。前記米糠タンパク質の濃縮の方法としては、例えば(1)米糠タンパク質を含む抽出液に有機溶媒を添加する方法;(2)米糠タンパク質を含む抽出液のpHを弱酸性に調整する方法等が挙げられる。米糠タンパク質を含む抽出液に有機溶媒を添加する方法としては、例えばエタノールやアセトン等を約50〜70容量%となるように抽出液に添加して米糠タンパク質を沈殿させて、沈殿を分離し取得する方法等が挙げられる。また、米糠タンパク質を含む抽出液のpHを弱酸性に調整する方法としては、米糠タンパク質を含む抽出液に無機酸類等を添加して抽出液のpHを弱酸性に調整して米糠タンパク質を沈殿させて、沈殿を分離し取得する方法等が挙げられる。無機酸類として、特に限定されないが、例えば塩酸や硫酸等が挙げられる。pHは約2.5〜4.5とするのが好ましい。また、米糠タンパク質の濃縮の方法には、前記の他、例えばトリクロロ酢酸、スルホサリチル酸又は硫酸アンモニウム等によって米糠タンパク質を沈殿させる公知の方法等も含まれる。
これによって分離し取得された沈殿は、米糠タンパク質の含有量が高く、オリ下げ剤として好ましい。分離し取得された沈殿はそのままオリ下げ剤として使用することができるが、これを凍結保存し使用に際して解凍してオリ下げ剤として使用することもでき、あるいは得られた沈殿を乾燥させてオリ下げ剤として使用することもできる。
沈殿を分離する方法としては、例えば、遠心分離法、膜濾過法、濾過助剤を用いる濾過法等が挙げられる。遠心分離法により沈殿を分離する場合は、例えば、遠心分離器を用いて、約100rpm〜30,000rpm、好ましくは約500rpm〜3,000rpmで約1分〜1時間、遠心分離を行なうのが好ましい。膜濾過法により沈殿を分離する場合は、セルロース膜や限外濾過膜等を用いて、圧力差によりろ別することができる。またセライト等の濾過助剤を用いてろ別することもできる。乾燥方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧常温乾燥、真空乾燥又は凍結乾燥等が挙げられるが、凍結乾燥が好ましい。
また、上記沈殿を分離した上清も、米糠タンパク質を含有するので本発明のオリ下げ剤に包含される。該上清も濃縮又は乾燥等されるのが好ましい。濃縮又は乾燥は上記した方法等が挙げられる。
【0012】
本発明に係るオリ下げ剤における米糠タンパク質の含有割合は、特に限定されないが、オリ下げ剤(乾燥質量)に対して、例えばケルダール法による粗タンパク質量が、約5質量%以上が好ましく、約20質量%以上がさらに好ましく、約40質量%以上がとりわけ好ましい。
【0013】
本発明に係るオリ下げ剤には、タンパク質の他に、所望により添加物を添加することができる。該添加物としては、例えば、食品に添加できる各種安定剤や各種殺菌剤等が挙げられる。具体的には、例えばグリセリンや乳酸等が挙げられる。
【0014】
本発明に係るオリ下げ剤が好適に用いられる酒類としては、例えば、清酒、ビール、発泡酒、ワイン、みりん又は梅酒等が挙げられる。
【0015】
酒類の製造方法において、酒類のオリ下げは、該酒類に本発明のオリ下げ剤を加え、適宜、攪拌混合し行なうことができる。本発明のオリ下げ剤を加える工程は、酒類の製造工程中どの段階においても行なうことができるが、酒類の発酵終了後に例えば清酒の場合にはもろみ等を除去した後に本発明のオリ下げ剤を添加するのが好ましい。もろみ等の除去後にオリ下げ剤を添加すると、オリ下げ剤の添加量も少なくてすみ効率よくオリ下げを行なうことができる。オリ下げ剤の添加量としては、十分にオリ下げ効果を発揮できる量であれば特に限定されないが、例えば、タンパク質換算で約100〜2000ppm、好ましくは約120〜1000ppm、より好ましくは約150〜500ppm程度となるようオリ下げ剤を秤量し、酒類に添加するのが好ましい。攪拌混合は、公知の方法で行なうことができ、例えば攪拌機等を適宜使用し得る。
また、本発明に係るオリ下げ剤は、公知の他のオリ下げ剤と併用することができる。他のオリ下げ剤としては、例えば柿渋、シリカ、ゼラチン、ベントナイト又は二酸化珪素等が挙げられ、好ましくは柿渋である。他のオリ下げ剤は、本発明のオリ下げ剤と同時に添加してもよく、本発明のオリ下げ剤を添加した後、他のオリ下げ剤を添加してもよく、あるいは他のオリ下げ剤を添加した後、本発明のオリ下げ剤を添加してもよい。このようにして、本発明のオリ下げ剤を加える工程を行なった後、酒類は製品とされ、もしくはその後の製造工程に供される。このように酒類に本発明のオリ下げ剤を添加して得られる混合物を、所望により一定時間放置し、生成したタンパク質を含む沈殿物を除去することにより酒類を製造する。放置する時間は約1時間乃至1週間程度が好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の実施例はこれに限られるものではない。
【0017】
[実施例1]
脱脂米糠3kgに水30Lを加え、25質量%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを8.5に調整しながら室温で1時間撹拌した。その後、遠心分離(1,500rpm×30秒間)で抽出液と残渣に分離し、抽出液に対してエタノール濃度が60質量%になるようにエタノールを撹拌しながら添加した。その後、遠心分離(3,000rpm×1分間)にて沈澱を分離した。エタノール沈殿タンパク質画分を回収し、凍結乾燥により乾燥した。得られたエタノール沈殿タンパクをオリ下げ剤Aとした。
オリ下げ剤Aの収量は145gで、収率は4.8%であった。
ケルダール法によりタンパク質含量を分析した。その結果、オリ下げ剤A中のタンパク質含量は、47.0質量%であった。
SDS−PAGE法(ポリアクリルアミドゲル電気泳動法)によりオリ下げ剤Aに含まれる米糠タンパク質の分子量を分析した結果、オリ下げ剤Aに含まれる米糠タンパク質は分子量約30万〜2万の範囲に分布するタンパク質の混合物であることが分かった。
【0018】
[実施例2]
脱脂米糠3kgに水30Lを加え、25質量%水酸化ナトリウム水溶液にてpHを8.5に調整しながら室温で1時間撹拌した。その後、遠心分離(1,500rpm×30秒間)で抽出液と残渣に分離した。抽出液に36質量%塩酸を加えてpH3.0に調整し、室温にて1時間撹拌した。その後、遠心分離(3,000rpm×1分間)にて沈澱を分離し、凍結乾燥により乾燥した。得られた酸沈澱(分離)タンパクをオリ下げ剤Bとした。
オリ下げ剤Bの収量は230gで、収率は7.7%であった。
ケルダール法によりタンパク質含量を分析した。その結果、オリ下げ剤B中のタンパク質の割合は、64.7質量%であった。
SDS−PAGE法によりオリ下げ剤Bに含まれる米糠タンパク質の分子量を分析した結果、オリ下げ剤Bに含まれる米糠タンパク質は分子量約30万〜2万の範囲に分布するタンパク質の混合物であることが分かった。
得られたオリ下げ剤Bの主な成分分析結果を表1に示す。成分分析は、日本食品標準成分表分析マニュアル(科学技術庁資源調査会食品成分部会編)に従って測定した。
また、アミノ酸組成分析結果を表2に示す。アミノ酸組成は、アミノ酸自動分析システムProminence(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
[実施例3]
実施例2における遠心分離後の上清画分を回収し、凍結乾燥によって乾燥した。得られた上清画分をオリ下げ剤Cとした。
オリ下げ剤Cの収量は516gで、収率は17.2%であった。
ケルダール法によりタンパク質含量を分析した。その結果、オリ下げ剤C中のタンパク質の割合は、5.1質量%であった。
SDS−PAGE法によりオリ下げ剤Cに含まれる米糠タンパク質の分子量を分析した結果、オリ下げ剤Cに含まれる米糠タンパク質の分子量は主に3万以下のタンパク質の混合物であることが確認された。
【0022】
[実施例4〜9]
清酒のオリ下げ試験
総米(α化米及び麹米)並びに汲み水を用いて、表3に示す仕込み配合量により配合し、小仕込みを実施した。汲み水には、濃度が2×107/mLになるように、NBRC2347の酵母を加えておいた。小仕込みは、乳酸、リンゴ酸又はフィチン酸を配合して、添・仲時のpHを2.8に調整して行った。その後、小仕込みしたものを、15℃で16日間発酵した。発酵終了後、もろみを遠心分離し、そして0.45μmのフィルターを用いて、濾過し清酒を得た。
【0023】
【表3】

【0024】
次に、得られた清酒についてオリ下げ試験を行った。まず得られた清酒(20mL)に表4で示す量の柿渋を添加して、30分間撹拌し、オリ下げ剤A(タンパク質含量47%)、オリ下げ剤B(タンパク質含量64.7%)又はオリ下げ剤C(タンパク質含量5.1%)を表4で示す量だけ加え、更に撹拌して1日間静置した。静置後の上澄液を取り出し、0.45μmのフィルターを用いて濾過し、オリ下げ後の清酒(実施例4〜9)を得た。そして、オリ下げ後の清酒中のタンパク質含量を測定し、またSDS−PAGE法によって、オリ下げ後の清酒中のタンパク質の分子量分布を検討した(図1参照)。また、比較例1及び2として、米糠タンパク質の代わりに市販の二酸化珪素剤を用いて、表4に示す配合量で、上記と同様の操作を行い、オリ下げ試験を行った。
結果として、清酒中に柿渋と二酸化珪素を添加した場合(比較例1及び2)よりも、清酒中に柿渋と米糠タンパク質を添加した場合(実施例4〜9)の方が、高いタンパク質除去能を示した。また、比較例及び実施例の清酒(0.4mL)を濃縮して測定したSDS−PAGEパターンから、米糠タンパク質を添加した場合の方が、高分子のタンパク質の除去能が高いことが分かった。以上、これらの結果は、乳酸仕込みの清酒の結果であるが、リンゴ酸又はフィチン酸仕込み清酒の両者においても、乳酸仕込みの清酒と同様の結果であった。また、実施例及び比較例について官能検査を行ったが、両者の間に香味の差は認められなかった。
【0025】
【表4】

【0026】
[実施例10〜12]
みりんのオリ下げ試験
総米100gとなるように、もち米と麹米を仕込み、四段用酵素剤(TG−B)5gを配合した(表5参照)。そして40%エタノール80mLを加え、25℃で45日間発酵した。発酵終了後、もろみを遠心分離してみりんを得た。
【0027】
【表5】

【0028】
上記で得られたみりんにつきオリ下げ試験を行った。すなわち上記で得られたみりんに各々800ppmの柿渋を加えて30分間攪拌し、次いで実施例2で得たオリ下げ剤Bを各々500ppm添加して、更に攪拌した。攪拌後のみりんを1日静置し、オリ(沈殿物)と上澄みに分離した。分離した上澄み液を取り出し、0.45μmのフィルターを用いて濾過し、オリ下げ後のみりん(実施例10〜12)を得た。比較例として、前記オリ下げ剤B500ppmの代わりに二酸化珪素50ppmを使用する以外は実施例10〜12と同様にオリ下げを行い、オリ下げ後のみりん(比較例3〜5)を得た。柿渋と米糠タンパク質をみりんに添加した実施例10〜12は、柿渋と二酸化珪素をみりんに添加した比較例3〜5よりも、いずれもタンパク質の除去能が高かった。また香味について両者の間で何の遜色もないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる米糠タンパク質を添加した清酒のオリ下げ前後でのSDS−PAGEパターンを示す図である。図中、Mは分子量マーカーを、レーン1はオリ下げ前の清酒を、レーン2は比較例2のオリ下げ後の清酒、レーン3は比較例3のオリ下げ後の清酒、レーン4は実施例3のオリ下げ後の清酒、レーン5は実施例4のオリ下げ後の清酒、レーン6は実施例5のオリ下げ後の清酒、レーン7は実施例6のオリ下げ後の清酒、レーン8は実施例7のオリ下げ後の清酒、レーン9は実施例8のオリ下げ後の清酒示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠タンパク質を含有することを特徴とするオリ下げ剤。
【請求項2】
米糠タンパク質が米糠の中性乃至弱アルカリ性溶液抽出タンパク質であることを特徴とする請求項1に記載のオリ下げ剤。
【請求項3】
中性乃至弱アルカリ性溶液のpHが6.5〜12であることを特徴とする請求項2に記載のオリ下げ剤、
【請求項4】
米糠に中性乃至弱アルカリ性溶液を添加して混合し、米糠から米糠タンパク質を抽出する工程を含むことを特徴とするオリ下げ剤の製造方法。
【請求項5】
酒類の製造方法において、該酒類に請求項1〜3のいずれかに記載のオリ下げ剤を加える工程を含むことを特徴とする酒類の製造方法。
【請求項6】
酒類が、清酒、ビール、発泡酒、みりん又は梅酒であることを特徴とする請求項5に記載の酒類の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2006−204293(P2006−204293A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373495(P2005−373495)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(591066362)築野食品工業株式会社 (31)