説明

酢酸を製造するためのエタンをベースとするプロセスにおいてエタンからエチレンを分離するための化学反応の使用

【課題】エタンの酸化によって酢酸を製造するプロセスにおいて、一つの副生成物であるエチレンを低下させる方法の提供。
【解決手段】第1の反応器内において、酸素含有ガス及び触媒の存在下、400℃〜600℃の温度でエタンを酸化して、酢酸及びエチレンを含み、未反応のエタンを含んでいてもよい第1の流出流を生成し、これを、150℃〜250℃の温度で、酸素含有触媒を含む第2の反応器に直接通して第1の流出流に存在するエチレンを酢酸まで酸化することにより、第1の流出流中に存在するエチレンを低下させて、第1の流出流よりも少ないエチレン及び多い酢酸を含む反応生成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタンを酸化して酢酸を製造する方法に関する。詳しくは、本発明は、化学反応を用いてエタン/エチレン再循環流からエチレンを除去する、エタンを酸化して酢酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気相中におけるエタンの酢酸への酸化脱水素は、当該技術において周知である。一般に、この方法は、流動床又は固定床反応器内で気体状供給流を反応させることを含む。気体状供給流はエタン及び/又はエチレンを含み、これは純粋なガスとしてか又は1種類以上の他のガスと混合して反応器に供給される。かかる更なるガス又はキャリアガスの例は、窒素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、空気、及び/又は水蒸気である。分子状酸素を含むガスは、空気、或いはより多いか又はより少ない分子状酸素を含む空気以外のガス、例えば酸素であってよい。比較的高い酸素含量は、達成しうるエタン転化率、及びしたがって酢酸の収率がより高いので好ましい。酸素又は分子状酸素を含むガスは、好ましくは、反応条件下での爆発限界の外側の濃度範囲で加える。これは、プロセスをより容易に行うことができるからである。しかしながら、エタン/エチレンを爆発限界内の酸素比で用いることも可能である。反応は400〜600℃の温度で行い、一方、圧力は、大気圧又は超大気圧、例えば1〜50barの範囲であってよい。
【0003】
エタンは、通常、酸素又は分子状酸素を含むガスを送り込む前に、まず窒素又は水蒸気のような不活性ガスと混合する。混合したガスは、好ましくは、ガス混合物を触媒と接触させる前に、予備加熱区域において反応温度に予め加熱する。凝縮によって反応器から排出されるガスから酢酸を分離する。残りのガスは反応器の入口に再循環し、ここに酸素又は分子状酸素を含むガス、並びにエタン及び/又はエチレンを計量供給する。再循環されるガスは、常にエチレン及びエタンの両方を含む。
【0004】
図1に、一般的な従来技術の酢酸製造プロセスを示す。この基本的なシステムにおいては、エタン含有流(1)を、酸素含有ガス(2)と一緒にエタン酸化反応器(3)中に供給する。この反応器は、流動床又は固定床反応器のいずれかであってよい。反応器(3)の内部において、エタンが、酢酸、エチレン、及び種々の炭素酸化物(CO)に酸化される。これらの3種類の主成分を含む気体状反応器流出流(4)は、再循環ガススクラバー(5)中に供給され、ここで、エチレン、エタン、及びCOを含む塔頂流が生成する。再循環ガススクラバーからの塔頂流(7)は、塔頂流からCOを除去する処理工程(8)に送られる。精製流(9)は、次に、酢酸に更に転化するために酸化反応器(3)に再循環される。酢酸、水、及び重質留分副生成物を含む再循環ガススクラバー(5)からの塔底流(6)は、当該技術において公知のように精製して、精製酢酸を与えることができる。例えば、塔底流は、乾燥カラムに送って水を除去し、次に重質留分カラムに送ってプロピオン酸及び他の重質成分を除去することができる。
【0005】
再循環気体流中のエチレン含量が高いと、酢酸反応器内において、効率が劣り、CO副生成物への損失がより高くなる。実際、再循環供給流中のエチレンは、限られた量の酸素供給流に対してエタンと競合し、その結果、生のエタン酸化よりも炭素酸化物への非効率性がより高くなる。したがって、エタン酸化反応器への再循環流中にエチレンが存在しないプロセスを開発することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エタン酸化によって酢酸を製造するプロセスを提供することである。エタン酸化の一つの副生成物であるエチレンは、エタンは反応性でないが、エチレンが酢酸に転化されるのに十分に低い温度での更なる反応によって更に除去される。この方法によって、エタン酸化反応器流出流又はエタン酸化反応器への再循環流のいずれか、或いは両方を処理して、これらの流のエチレン含量を低下させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エタンの酸化から酢酸を選択的に製造する方法を提供する。エタン酸化反応の一つの副生成物はエチレンである。本発明の目的は、全酢酸製造プロセスの全体的な効率を向上させるように、製造されたエチレンを系からできるだけ多く除去することである。
【0008】
エタンの酸化は、流動床又は固定床反応器内で行うことができる。流動床において用いるためには、触媒は、通常、10〜200μmの範囲の粒径に粉砕するか、或いは噴霧乾燥によって調製する。
【0009】
気体状供給流、及びかかる供給ガスと組み合わされた任意の再循環ガスは、主としてエタンを含むが、若干量のエチレンを含む可能性があり、純粋なガスとしてか又は1種類以上の他のガスとの混合物で反応器に供給される。かかる更なるガス又はキャリアガスの好適な例は、窒素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、空気、及び/又は水蒸気である。分子状酸素を含むガスは、空気であっても、或いは空気よりもより高いか又はより低い分子状酸素濃度を有するガス、例えば純粋酸素であってよい。エタン酸化反応は、一般に、約400〜約600℃、好ましくは約450〜約550℃で行い、重要な点は、温度がエタンを酸化するのに十分に高いことである。適当な温度は、エタン酸化反応器内において用いられる触媒によって決まる。この反応において用いるための広範囲の触媒が存在し、当業者であれば、適当な反応温度を見出すことによってどのように触媒特性を最適にするかを理解するであろう。圧力は、大気圧、又は超大気圧、例えば約1〜約50bar、好ましくは約1〜約30barであってよい。
【0010】
酸化反応によって、エチレン、酢酸、水、CO(CO及びCO)、未反応のエタン、及び様々な重質副生成物を含むガスの混合物が生成する。反応器からの生成物ガス流出流は、好ましくは濾過して触媒微粉を除去し、次に再循環ガススクラバーに送られ、ここでエチレン、エタン、及びCOを含む塔頂流が生成する。再循環ガススクラバーからの塔頂流は、固定床CO転化器に送られ、次に塔頂流からCOを除去する処理工程に送られる。酢酸、水、及び重質留分副生成物を含む再循環ガススクラバーからの塔底流は、当該技術において公知のように精製して精製酢酸を与えることができる。例えば、塔底流を乾燥カラムに送って水を除去し、次に重質留分カラムに送ってプロピオン酸及び他の重質成分を除去することができる。
【0011】
本発明の幾つかの教示によれば、化学反応を用いてエチレンを酸化反応生成物から除去する。この反応は、プロセスの任意の時点において、例えばエタン酸化反応器の直後、又は再循環ガスライン内で行うことができる。この反応を行うためには、エチレンが酢酸に転化するが流中のエタンは酢酸に転化しないのに十分に低い温度において、流を酸化触媒上に通す。一態様においては、この工程は、エタン酸化工程において用いたものと同じ触媒を含む固定床又は流動床反応器に流を通すことによって行うが、他の態様においては触媒は異なっていてもよい。より高い温度においてエタンを酢酸に酸化することができる殆どの触媒は、より低い温度においてエチレンを酢酸に酸化することができる。再循環ガス流中のエチレン含量が高いと、酢酸反応器において効率が劣り、CO副生成物への損失がより高くなるので、酢酸へのその転化によってエチレンをプロセスから除去することに
より、プロセス及び全体的な酢酸製造の効率が向上する。
【0012】
当業者であれば、上記段落において言及する塔、スクラバー、及び反応経路は、それらと種々の熱交換器、ポンプ、及びコネクターが関係しており、関係する特定のガスの混合物によって決定される運転パラメーターを有することを認識するであろう。本開示を考慮して適当な形態及びパラメーターを決定することは、当業者の能力の範囲内である。
【0013】
好ましい態様においては、エタン酸化反応及びエチレン除去反応の両方に用いる酸化触媒は、式:Mo0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01Pd0.00075を有する。当業者であれば、触媒は実際には式:Mo0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01Pd0.00075を有する混合酸化物であることを認識するであろう。酸素の量:zは、Mo、V、Nb、Sb、Ca、及びPdの酸化状態によって定まり、一般的に特定することはできない。
【0014】
本発明の触媒は、例えばBorchertらの米国特許6,399,816(その全ての内容は参照として本明細書中に包含する)に記載されているようにして調製することができる。簡単に言えば、触媒中の金属の源である金属化合物を、適当な量の少なくとも1種類の溶媒中で配合して溶液を形成する。これらは、適当な割合の元素の個々の出発成分を含む、特に水溶液中のスラリーから出発する。本発明の触媒を調製するための個々の成分の出発物質は、酸化物の他には、好ましくはアンモニウム塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、及び加熱によって対応する酸化物に転化することのできる有機酸の塩などの水溶性物質である。成分を混合するために、金属塩の水溶液又は懸濁液を調製し、混合する。モリブデンの場合には、それらの商業的入手容易性のために、対応するモリブデン酸塩、例えばモリブデン酸アンモニウムを出発化合物として用いることが推奨される。好適なパラジウム化合物は、例えば、塩化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、硝酸テトラアミンパラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、及びアセチルアセトン酸パラジウム(II)である。それぞれの元素に関する好適な化合物は、当該技術において公知である。
【0015】
好適な溶媒としては、水、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、及びジオールなどが挙げられるが、これらに限定されない)、並びに当該技術において公知の他の極性溶媒が挙げられる。一般に、水が好ましい。水は、化学合成において用いるのに好適な任意の水であり、蒸留水及び脱イオン水が挙げられるが、これらに限定されない。存在する水の量は、調製工程中の組成分離及び/又は相分離を避けるか又は最小にするのに十分に長い時間、元素を実質的に溶液中に保持するのに十分な量である。水溶液が形成されたら、当該技術において公知の任意の好適な方法の組み合わせによって水を除去して、触媒前駆体を形成する。かかる方法としては、真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、ロータリーエバポレーション、及び空気乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。ロータリーエバポレーション又は空気乾燥が一般に好ましい。
【0016】
触媒前駆体が得られたら、これを不活性雰囲気下でか焼することができる。不活性雰囲気は、実質的に触媒前駆体に対して不活性、即ち触媒前駆体と反応又は相互作用しない任意の物質であってよい。好適な例としては、窒素、アルゴン、キセノン、ヘリウム、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、不活性雰囲気は、アルゴン又は窒素、より好ましくはアルゴンである。不活性雰囲気は、触媒前駆体の表面上に流動させてもよく、流動させなくてもよい。典型的には、窒素を用いる場合には流動を用いる。不活性雰囲気がアルゴンである場合には、通常は流動を用いない。不活性雰囲気を触媒前駆体の表面上に流動させない場合には、流速は、広範囲にわたって、例えば1〜500hr−1の空間速度で変化させることができる。か焼は、通常、350℃〜850℃、好ましくは400℃〜700℃、より好ましくは500℃〜640℃の温度で行う。か焼は、触媒を形成するのに十分に長い時間行う。一態様においては、か焼は、0.5〜30時間、好ましくは1〜25時間、より好ましくは1〜15時間行う。
【0017】
本発明の触媒は、単独で固体触媒として用いることができ、或いは好適な担体と共に用いることができる。通常の担体材料、例えば多孔質二酸化ケイ素、燃焼二酸化ケイ素、珪藻土、シリカゲル、多孔質又は非多孔質酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化トリウム、酸化ランタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ホウ素、リン酸ホウ素、リン酸ジルコニウム、ケイ酸アルミニウム、窒化ケイ素、又は炭化ケイ素が好適であるが、ガラス、炭素繊維、炭素、活性炭、金属酸化物、又は金属網状構造体、或いは対応するモノリスも好適である。
【0018】
担体材料は、対象の特定の酸化に対して表面積及び孔径の両方を最適化することに基づいて選択しなければならない。触媒は、規則的か又は不規則的に成形された担体素材として成形された後に用いることができるが、不均一酸化触媒として粉末形態で用いることもできる。
【0019】
また、触媒は材料内にカプセル封入することができる。カプセル封入のために好適な材料としては、SiO、P、MgO、Cr、TiO、ZrO、及びAlが挙げられる。酸化物中に物質をカプセル封入する方法は、当該技術において公知である。酸化物中に物質をカプセル封入する好適な方法は、米国特許4,677,084及びその中で引用されている参照文献(これらの全ての内容は参照として本明細書に包含する)に記載されている。
【0020】
図2は、本発明の一態様を示す。この態様においては、気体状のエタン供給流(11)及び任意の再循環ガス(19)を、純粋なガスか又は1種類以上の上記記載のキャリアガスとの混合物で、エタン酸化反応器(13)に供給する。酸素含有ガス(12)、好ましくは純粋酸素も、反応器(13)に供給する。エタン酸化反応温度は、一般に、用いる触媒によって、約400〜約600℃、好ましくは約450℃〜約550℃で行い、重要な点は、温度がエタンを酸化するのに十分に高いことである。適当な温度は、エタン酸化反応器内において用いられる触媒によって決まるが、一態様においては、触媒は式:Mo0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01Pd0.00075を有する。
【0021】
酸化反応によって、エチレン、酢酸、水、CO、未反応のエタン、及び関係する重質副生成物を含むガスの混合物(14)が生成する。エタン酸化生成物ガス(14)は、次に第2の酸化反応器(20)に通され、ここで少なくとも一部のエチレンが酢酸に酸化される。エチレンの酸化反応温度は、一般に、用いる触媒によって、約150〜約250℃、好ましくは約200〜約250℃で行い、重要な点は、温度が、エチレンを酸化するのに十分に高いが、実質的に更なるエタンは酸化しないのに十分に低いものであることである。これによって、流からエチレンが除去され、酢酸製造量も増大する。適当な温度は、エタン酸化反応器内において用いる触媒によって決まるが、一態様においては、エチレン酸化のための触媒はエタン酸化のために用いるものと同じである。更なる態様においては、かかる触媒の式は、Mo0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01Pd0.00075である。
【0022】
第2の酸化反応器(20)の気体状生成物流(21)は、水、CO、未反応のエタン、及び関係する重質副生成物を未だ含むが、また、エタン酸化反応器生成物流(14)よりも実質的に少ないエチレン及び多い酢酸も含む。反応器からの生成物ガス流出流は、好ましくは濾過して触媒微粉を除去し(図示せず)、次に再循環ガススクラバー(15)に送られて、エチレン、エタン、及びCOを含む塔頂流(17)が生成する。再循環ガススクラバーからの塔頂流は、固定床CO転化器に送られ、次に塔頂流からCOを除去する処理工程(18)に送られ、次に流(19)としてエチレン酸化反応器(13)に再循環される。酢酸、水、及び重質留分副生成物を含む再循環ガススクラバーからの塔底流(16)は、当該技術において公知のように精製して、精製酢酸を与えることができる。
【0023】
更なる態様を図3において示す。この態様においては、気体状エタン供給流(31)及び任意の再循環ガス(39)を、純粋なガスか又は1種類以上の上記記載のキャリアガスとの混合物で、エタン酸化反応器(33)に供給する。酸素含有ガス(32)、好ましくは純粋酸素も、反応器(33)に供給する。エタン酸化反応温度は、一般に、用いる触媒によって、約400〜約600℃、好ましくは約450℃〜約550℃で行い、重要な点は、温度がエタンを酸化するのに十分に高いことである。適当な温度は、エタン酸化反応器内において用いられる触媒によって決まるが、一態様においては、触媒は式:Mo0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01Pd0.00075を有する。
【0024】
酸化反応によって、エチレン、酢酸、水、CO、未反応のエタン、及び関係する重質副生成物を含むガスの混合物(34)が生成する。反応器からの生成物ガス流出流は、好ましくは濾過して触媒微粉を除去し(図示せず)、次に再循環ガススクラバー(35)に送られて、エチレン、エタン、及びCOを含む塔頂流(37)が生成する。酢酸、水、及び重質留分副生成物を含む再循環ガススクラバーからの塔底流(36)は、当該技術において公知のように精製して、精製酢酸を与えることができる。
【0025】
再循環ガススクラバー(35)からの塔頂流(37)は、次に第2の酸化反応器(40)に通され、ここで少なくとも一部のエチレンが酢酸に酸化される。エチレンの酸化反応温度は、一般に、用いる触媒によって、約150〜約250℃、好ましくは約200〜約250℃で行い、重要な点は、温度が、エチレンを酸化するのに十分に高いが、実質的に更なる再循環エタンを酸化しないのに十分に低いものであることである。第2の酸化反応器(40)の気体状生成物流(41)は、CO及び未反応のエタンを未だ含む。最後に、エチレン酸化反応器生成物(41)は、固定床CO転化器に送られ、次に塔頂流からCOを除去する処理工程(38)に送られ、次に流(39)としてエチレン酸化反応器(33)に再循環される。
【0026】
更なる態様を図4において示す。この態様においては、気体状エタン供給流(51)及び任意の再循環ガス(62)を、純粋なガスか又は1種類以上の上記記載のキャリアガスとの混合物で、エタン酸化反応器(53)に供給する。酸素含有ガス(52)、好ましくは純粋酸素も、反応器(53)に供給する。酸化反応によって、エチレン、酢酸、水、CO、未反応のエタン、及び関係する重質副生成物を含むガスの混合物(54)が生成する。反応器(53)からの生成物ガス流出流(54)は、エチレン酸化反応器(60)からの反応器流出流(61)と合わせられ、濾過して触媒微粉が除去され(図示せず)、次に再循環ガススクラバー(55)に送られて、エチレン、エタン、及びCOを含む塔頂流(57)が生成する。酢酸、水、及び重質留分副生成物を含む再循環ガススクラバーからの塔底流(56)は、当該技術において公知のように精製して、精製酢酸を与えることができる。
【0027】
再循環ガススクラバー(55)からの塔頂流(57)は、固定床CO転化器に送られ、次に塔頂流からCOを除去する処理工程(58)に送られる。得られたガス(59)は、次に二つの流に分離され、第1の流(62)はエチレン酸化反応器(53)に再循環され、第2の流(63)はエチレン酸化反応器(60)に送られる。エチレンの酸化反応温度は、一般に、用いる触媒によって、約150〜約250℃、好ましくは約200〜約250℃で行い、重要な点は、温度が、少なくとも一部のエチレンを酸化するのに十分に高いが、実質的にエタンは酸化しないのに十分に低いものであることである。第2の酸化反応器(61)の気体状生成物流(61)は、酢酸、CO、及び未反応のエタンを含む。これは、反応器(53)からの生成物ガス流出流(54)と合わせられて、次に上記に記載のように再循環ガススクラバー(55)に送られる。
【0028】
上述の記載は例示のみの目的で与えるものであり、限定の意味はない。種々の修正及び変更は当業者には容易に明らかとなろう。したがって、上記の記載は例示のみとして考察され、発明の範囲は特許請求の範囲から明確になると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、従来技術の酢酸製造プロセスを示す。
【図2】図2は、本発明の酢酸製造プロセスの一態様を示す。
【図3】図3は、本発明の酢酸製造プロセスの第2の態様を示す。
【図4】図4は、本発明の酢酸製造プロセスの第3の態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反応器内においてエタンを酸化して、酢酸及びエチレンを含む第1の流出流を生成し;そして
第2の反応器内において、少なくとも一部のエチレンを酸化するのに十分な条件で第1の流出流を酸化する;
ことを含む酢酸の製造方法。
【請求項2】
エタンの酸化を約400℃〜約600℃で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の反応器内における第1の流出流の酸化を約150℃〜約250℃で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
エタンの酸化及び第1の流出流の酸化を、化学式:Mo0.55Nb0.09Sb0.01Ca0.01Pd0.00075を有する触媒を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
エタンの酸化を、固定床反応器又は流動床反応器を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の流出流の酸化を、固定床又は流動床反応器を用いて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の流出流の酸化の条件が、エタンを実質的に酸化するのに十分なものではない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
エタンを酸化するか又はエチレンを酸化するためにキャリアガスを用いることを更に含み、キャリアガスが、窒素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、空気、水蒸気、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
エタンを酸化するか又はエチレンを酸化するために溶媒を用い、溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ジオール、水、蒸留水、及び脱イオン水、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の反応器内においてエタンを酸化して、酢酸及びエチレンを含む第1の流出流を生成し;
第2の反応器内において、少なくとも一部のエチレンを酸化するのに十分な条件で第1の流出流を酸化して第2の流出流を生成し;そして
第2の流出流を再循環ガススクラバーを通して流して、酢酸流及び再循環流を生成する;
ことを含む、酢酸の製造方法。
【請求項11】
第2の流出流を、再循環ガススクラバーを通して流す前に、フィルターを通して流すことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
再循環流を、COスクラバーを通して流すことを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1の反応器が固定床又は流動床反応器である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
第2の反応器が固定床又は流動床反応器である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
第1の反応器内が約400℃〜約600℃の温度であり、第2の反応器が約150℃〜約250℃の温度である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
第1の反応器内においてエタンを酸化して、酢酸及びエチレンを含む第1の流出流を生成し;
第1の流出流を、再循環ガススクラバーを通して流して、酢酸流及び再循環流を生成し;そして
第2の反応器内において、少なくとも一部のエチレンを酸化するのに十分な条件で第1の流出流を酸化して第2の流出流を生成する;
ことを含む酢酸の製造方法。
【請求項17】
第1の流出流を再循環ガススクラバー中に流入させる前に、第1の流出流をフィルターを通して流すことを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
再循環流中にCOスクラバーを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
第1の反応器が約400℃〜約600℃の温度であり、第2の反応器が約150℃〜約250℃の温度である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
第1の反応器内においてエタンを酸化して、酢酸及びエチレンを含む第1の流出流を生成し;
第1の流出流を、再循環ガススクラバーを通して流して、酢酸流及び再循環流を生成し;
再循環流の一部を第1の反応器に流し;そして
第2の反応器内において、少なくとも一部のエチレンを酸化するのに十分な条件で再循環流の第2の部分を酸化して第2の流出流を生成する;
ことを含み、第1の流出流を再循環ガススクラバーを通して流す前に、第2の流出流と第1の流出流とを合わせる、酢酸の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63997(P2013−63997A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−258329(P2012−258329)
【出願日】平成24年11月27日(2012.11.27)
【分割の表示】特願2008−554259(P2008−554259)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】