説明

酢酸アリル重合体の製造方法

【課題】 酢酸アリルの重合により高分子量の酢酸アリル重合体を提供する。
【解決手段】 酢酸アリル、または主成分の酢酸アリルと酢酸アリルと共重合可能な他のモノマーとをパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の存在下にラジカル重合することを特徴とする酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸アリル重合体の製造方法に関する。さらに詳しく言えば、分子量が1万を超える高分子量の酢酸アリル重合体及び酢酸アリルを主成分とする共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビニルモノマー(C=C−R)の重合では高分子量の重合体が得られるのに対して、単官能アリルモノマー(C=C−C−R)の重合ではオリゴマーしか得られず、分子量が1万を越えるポリマーを得ることはできなかった(R. C. Laible, Chemical review, 58, p.807-843 (1985);非特許文献1参照)。これは、成長ラジカルがモノマーからアリル水素を引き抜くことで連鎖移動し、その結果として新たに生成したアリルラジカルが共鳴安定化のため、重合再開始能に乏しく、重合再開始反応より重合停止反応が勝ってしまうためと考えられている。このため、分子量が1万を超えるポリマーを製造する方法が望まれていた。
【0003】
特開2004−256620号公報(特許文献1)に酢酸アリルを亜鉛塩もしくは無機酸の存在下に重合することにより分子量が1万を超えるポリマーが得られることが開示されているが、この方法は、重合時に添加する亜鉛塩もしくは無機酸を酢酸アリルと等モル必要とし、後処理等を考えると実用的な方法であるとは言い難い。
【0004】
【特許文献1】特開2004−256620号公報
【非特許文献1】R.C.Laible,Chemical review,58,p.807−843(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高分子量の酢酸アリル重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ある特定のルイス酸の共存下で酢酸アリルをラジカル重合すると高分子量の酢酸アリル重合体を得ることができることを見出した。更に、ジチオカルボン酸エステル骨格を有する化合物を重合停止反応抑制剤として使用するとより高分子量化できること見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の1〜8の酢酸アリル重合体の製造方法に関する。
【0007】
1.酢酸アリル、または主成分の酢酸アリルと酢酸アリルと共重合可能な他のモノマーとをパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の存在下にラジカル重合することを特徴とする酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
2.パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩が、水素原子が全てフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である前項1に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
3.パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩がイットリウム、スカンジウム、ランタノイド系列より選ばれる元素のいずれかの金属塩である前項1または2に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
4.パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩がトリフルオロメタンスルホン酸金属塩である前項2に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
5.トリフルオロメタンスルホン酸金属塩がトリス(トリフルオロメタンスルホン酸)イットリウムまたはトリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウムである前項4に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
6.ジチオカルボン酸エステル骨格を有する化合物を重合停止反応抑制剤として使用する前項1〜5のいずれかに記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
7.ジチオカルボン酸エステル骨格を有する化合物が、ジチオ安息香酸クミル、ジチオ安息香酸(1−フェニルエチル)、フェニルジチオ酢酸クミル、またはフェニルジチオ酢酸(1−フェニルエチル)である前項6に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
8.パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の使用量が、酢酸アリル1molに対して0.005〜0.5molである前項1〜7のいずれかに記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高分子量の酢酸アリル重合体及び共重合体を提供することができる。本発明の酢酸アリル重合体及び共重合体は加水分解することにより、ポリビニルアルコールよりも反応性の高い1級水酸基を有する類縁体で種々の機能が期待されるポリアリルアルコール及び共重合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[酢酸アリル重合体]
本発明の酢酸アリル重合体は、酢酸アリルが主たるモノマー成分であればよく、酢酸アリル以外のモノマーが共重合された共重合体であってもよい。共重合モノマーは酢酸アリルとラジカル共重合可能のものであれば特に限定されない。共重合モノマーとしては酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリロニトリル、N−イソプロピルアクリルアミド等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0010】
[酢酸アリルの重合]
本発明において、酢酸アリル重合体は酢酸アリルモノマーおよび必要に応じて用いる共重合モノマーをパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の存在下でラジカル重合して得ることができる。
【0011】
[溶媒]
ラジカル重合反応は無溶媒で行っても良いし、モノマーと反応しない溶媒を使用しても良い。また、水共存下でも問題なく実施できる。溶媒としては、一般に成長ラジカルの連鎖移動に不活性なものが好ましい。例えば、ベンゼン、t−ブチルベンゼン、トルエン、t−ブタノールなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独もしくは2種類以上を併用することもできる。
【0012】
[重合開始剤]
本発明の製造方法において、酢酸アリルを重合させるにはラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。熱、紫外線、電子線、放射線等によってラジカルを生成するものであれば、いずれのラジカル重合開始剤も使用できる。ラジカル重合開始剤としては熱ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0013】
熱ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、ジベンゾイルパーオキシド、ジデカノイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロプルカーボネート等のパーオキシカーボネート類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの熱ラジカル重合開始剤は2種以上併用しても良い。
【0014】
これらの重合開始剤の添加量は、重合温度によって異なるため一概に限定することはできないが、酢酸アリル100質量部、共重合体の場合は酢酸アリルと他の共重合モノマーとの総和100質量部に対して0.01〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量が0.01質量部未満の場合は重合が十分に進行しない恐れがある。また、15質量部を超えて添加することは経済上好ましくない。
【0015】
[パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩]
本発明の製造方法において、酢酸アリルの重合はパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の存在下で実施される。
【0016】
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩としては水素原子(H)がすべてフッ素原子(F)で置換された炭素数1〜10のアルキル基を有するスルホン酸の金属塩であれば、どのようなものでも良い。例えば、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸の金属塩が挙げられる。経済性、安全性の観点からはトリフルオロメタンスルホン酸の金属塩が特に好ましい。
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の塩となる金属はイットリウム、スカンジウム、ランタノイド系列より選ばれる元素が好ましい。
【0017】
トリフルオロメタンスルホン酸金属塩としてはイットリウム、スカンジウム、ランタノイド系列より選ばれる元素のトリフルオロメタンスルホン酸塩が好ましい。具体的にはトリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)イットリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ランタン、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)プラセオジム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ネオジム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)サマリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ユーロピウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ガドリニウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)テルビウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ジスプロシウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ホルミウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)エルビウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ツリウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)イッテルビウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)ルテチウムなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
これらの中でも少量の添加で高分子量の酢酸アリル重合体を得るという観点からは、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウム、トリス(トリフルオロメタンスルホン酸)イットリウムが特に好ましい。
【0019】
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の使用量は、酢酸アリル1molに対して0.005〜0.5molが好ましく、0.03〜0.3molが特に好ましい。酢酸アリル1molに対してパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の添加量が0.005mol未満の場合は分子量向上効果が乏しく、0.5molを超えて添加することは後処理上及び経済上好ましくない。
【0020】
[重合停止反応抑制剤]
本発明の酢酸アリル重合反応は、重合停止反応抑制剤共存下に実施することが好ましい。重合停止反応抑制剤は重合反応系内でジチオカルボン酸ラジカルを発生し、それがポリマーの生長末端のラジカルと付加、解裂を繰り返すことで、ポリマー生長末端が水素を引き抜き反応が停止することを抑制する。
【0021】
重合停止反応抑制剤としてはジチオカルボン酸エステル骨格を有する化合物であれば、どのようなものでも使用できるが、反応温度においてポリマー成長末端ラジカル種と容易に反応できるものが好ましい。具体的には、ジチオ安息香酸クミル、ジチオ安息香酸(1−フェニルエチル)、フェニルジチオ酢酸クミル、フェニルジチオ酢酸(1−フェニルエチル)などを使用できる。
【0022】
これらの重合停止反応抑制剤の使用量は、重合開始剤1molに対して0.5〜5molが好ましく、1〜3molが特に好ましい。重合開始剤1molに対して重合停止反応抑制剤の添加量が0.5mol未満の場合は分子量向上効果が乏しく、5molを超えて添加することは後処理上及び経済上好ましくない。
【0023】
重合温度は重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。紫外線等による重合であれば、室温でも可能である。熱重合開始剤を用いるの場合は開始剤の分解温度に対応して適宜決めることが望ましく、一般的には30〜160℃である。また、段階的に温度を変えて重合させてもよい。
【0024】
反応終了後、酢酸アリル重合体は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去、再沈殿など)により後処理して単離される。
【0025】
本発明の製造方法により得られた酢酸アリル重合体を水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで加水分解することにより、ポリアリルアルコールを製造することができる。ポリアリルアルコールはポリビニルアルコールと同様に水溶性であり、かつポリビニルアルコールが持つ2級水酸基よりも反応性の高い1級水酸基を有するので変性品の製造が容易であり、幅広い用途に展開できる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
【0027】
実施例及び比較例で合成した物質の諸物性は、以下の通りに測定した。
1.分子量測定:ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)
使用機種
カラム:Shodex GPC K−G+KF−801+KF−802+KF−80
2.5+KF−803+KF−804(昭和電工社製)、
検出器:Shodex SE−61(昭和電工社製)
測定条件
溶媒:テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:1.0ml/分、
試料濃度:1.0mg/ml、
注入量:1.0μl、
検量線:Universal Calibration curve、
解析プログラム:SIC 480II(システム インスツルメンツ社製)。
【0028】
実施例1:トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム存在下での酢酸アリルの重合
温度計、撹拌子を備えた二口フラスコを予め窒素置換しておき、それに酢酸アリル(東京化成工業社製,0.200g,2mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸イットリウム(東京化成工業社製,0.214g,0.4mmol)、ジベンゾイルパーオキシド(日本油脂社製,9.69mg,0.04mmol)を加えた。このフラスコをオイルバスに浸し、60℃まで昇温して、この温度を維持して24時間撹拌した。フラスコを室温まで冷却し、内容物をn−ヘキサン10mlに注ぎ、再沈殿操作を行った。析出物を更に水で洗浄し、残渣を減圧下で加熱し、n−ヘキサン及び低沸点物を除去して酢酸アリル重合体0.024g(収率:12.0%)を白色固体物として得た。
得られた重合体の分子量はMw=53700であった。
【0029】
実施例2:トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム存在下での酢酸アリルの重合
トリフルオロメタンスルホン酸イットリウムの替わりにトリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(東京化成工業社製,0.197g,0.4mmol)を使用した以外は実施例1と同様にして酢酸アリル重合体0.022g(収率:11.0%)を白色固体物として得た。
得られた重合体の分子量はMw=40200であった。
【0030】
実施例3:トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム及び重合停止反応抑制剤存在下での酢酸アリルの重合
[重合停止反応抑制剤(フェニルジチオ酢酸(1−フェニルエチル))の合成]
温度計、撹拌子、冷却管、滴下漏斗を備えた三口フラスコを予め窒素置換しておき、それにベンジルマグネシウムクロリドの1.0mol/Lエーテル溶液(Aldrich社製,200ml,0.20mol)を加えた後、氷浴に浸し、内温を−10℃にして、二硫化炭素(和光純薬社製,15.0g,0.197mol)を60分かけて滴下した。滴下終了後、0℃で2時間撹拌し、その後、反応液を350mlの氷水中に注いだ。これにジエチルエーテル200mlを加え、分液漏斗で水層とエーテル層の分離操作を行った。この操作をジエチルエーテル100mlで更に2回行った。得られた水層にジエチルエーテル300mlと30%塩酸水溶液を加え抽出操作を行い、エーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、エーテルを減圧下で留去してベンジルジチオカルボン酸15.8g(収率:47.5%)を赤色液体として得た。
【0031】
撹拌子を備えた二口フラスコを予め窒素置換しておき、それにヘプタン20.0g(和光純薬社製)と純水(イオン交換水を蒸留した水)20.0gを仕込み、更にベンジルジチオカルボン酸(5.7g,0.0209mol)、スチレン(東京化成工業社製,5.3g,0.0509mol)、濃塩酸(和光純薬社製,3.0g,0.0288mol)を加えて、室温で24時間撹拌した。その後、反応液をヘプタン層と水層に分離し、得られたヘプタン層を5%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、ヘプタンと残存スチレンを減圧下に留去し、残渣より再結晶によってフェニルジチオ酢酸(1−フェニルエチル)6.2gを黄色針状結晶として得た。
【0032】
[酢酸アリルの重合]
温度計、撹拌子を備えた二口フラスコを予め窒素置換しておき、それに酢酸アリル(東京化成工業社製,0.200g,2mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリウム(東京化成工業社製,0.214g,0.4mmol)、ジベンゾイルパーオキシド(日本油脂社製,9.69mg,0.04mmol)を加え、更に、調製したフェニルジチオ酢酸(1−フェニルエチル)(21.8mg,0.08mmol)を加えた。後は実施例1と同様の操作により、酢酸アリル重合体0.032g(収率:16.0%)を白色固体物として得た。
得られた重合体の分子量はMw=75100であった。
【0033】
比較例1:酢酸アリルの重合
トリフルオロメタンスルホン酸イットリウムを使用しなかった点を除き、実施例1と同様にして酢酸アリル重合体0.020g(収率:10.0%)を高粘性液状物として得た。
得られた重合体の分子量はMw=3300であり、分子量が低く、固体の重合体を得ることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の製造方法により得られる高分子量の酢酸アリル重合体及び酢酸アリルを主成分とする共重合体は、加水分解することにより反応性の高い1級水酸基を有する、工業的に有用な高分子量のポリアリルアルコール及び共重合体に誘導できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸アリル、または主成分の酢酸アリルと酢酸アリルと共重合可能な他のモノマーとをパーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の存在下にラジカル重合することを特徴とする酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項2】
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩が、水素原子が全てフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を有するスルホン酸の金属塩である請求項1に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項3】
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩がイットリウム、スカンジウム、ランタノイド系列より選ばれる元素のいずれかの金属塩である請求項1または2に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項4】
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩がトリフルオロメタンスルホン酸金属塩である請求項2に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項5】
トリフルオロメタンスルホン酸金属塩がトリス(トリフルオロメタンスルホン酸)イットリウムまたはトリス(トリフルオロメタンスルホン酸)スカンジウムである請求項4に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項6】
ジチオカルボン酸エステル骨格を有する化合物を重合停止反応抑制剤として使用する請求項1〜5のいずれかに記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項7】
ジチオカルボン酸エステル骨格を有する化合物が、ジチオ安息香酸クミル、ジチオ安息香酸(1−フェニルエチル)、フェニルジチオ酢酸クミル、またはフェニルジチオ酢酸(1−フェニルエチル)である請求項6に記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。
【請求項8】
パーフルオロアルキルスルホン酸金属塩の使用量が、酢酸アリル1molに対して0.005〜0.5molである請求項1〜7のいずれかに記載の酢酸アリル重合体または共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−203319(P2009−203319A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45970(P2008−45970)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】