説明

酢酸セルロース及びその製造方法

【課題】光学用途用のフィルムの製造において、濾過漏れによりフィルムの光学的欠陥が発生するリスクを低減できる酢酸セルロースの提供。
【解決手段】20μm以上の輝点異物が20個/mm3以下であるフレーク状酢酸セルロース。(輝点異物の測定方法)フレーク状酢酸セルロースをメチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)混合溶媒に溶解し、15重量%(固形分濃度)の溶液(ドープ)を得る。このドープをスライドグラス上に流延、乾燥し、スライドグラス上に厚さ100μm程度のフィルム状のサンプルを得る。このサンプルを偏光顕微鏡で暗視野下で観察し、面積32mm2内にある最大長さが20μm以上の輝点異物を数え、別途測定した正確なフィルムの厚みで補正し、単位体積(1mm3)あたりの異物数を求める。異なるドープから製膜したフィルム3枚について同様の測定を行い、それらの平均値を算出し、輝点異物の数とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤に溶かしたときの微小な不溶解異物量が少なく、濾過性に優れた酢酸セルロース及びその製造方法に関し、特に光学用途用のフィルムの製造において、濾過漏れによりフィルムの光学的欠陥が発生するリスクを低減できる酢酸セルロース及びその製造方法に関する。
更に本発明は、溶剤に溶かしたときの溶液の弾性的性質が小さく、フィルム流延や繊維紡糸等の加工性に優れた酢酸セルロース及びその製造方法に関する。
更に本発明は、上記の濾過性と弾性的性質が共に改善された酢酸セルロース及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸セルロースには三酢酸セルロースと二酢酸セルロースがあり、写真用フィルム、偏光板の保護フィルム、衣料用繊維、たばこフィルター用繊維束、人工腎臓用中空繊維等の種々の用途に用いられている。
【0003】
このような用途に酢酸セルロースを使用する際には、酢酸セルロースを有機溶媒に溶解させた後、それぞれの成型体に成形する。例えば三酢酸セルロースをフィルムにする場合は、酢酸セルロースをメチレンクロライド等の溶剤に溶解した濃厚溶液(ドープ)を、鏡面状態に仕上げた支持体(ドラム、バンド等)上に流延し、乾燥してからフィルムを剥ぎ取る、ソルトベントキャスト法が適用されている。また、二酢酸セルロースを繊維にする場合は、酢酸セルロースをアセトン等の溶剤に溶解した濃厚溶液(ドープ)を、多数の細孔を有する口金から熱風中に吐出させ、溶媒を除去する乾式紡糸法が適用されている。
【0004】
このようなフィルム流延時又は紡糸時にドープ中に溶剤に対して不溶解異物が存在すると、成型品の品質上の問題とともに、生産上の問題を生ずる。例えば、フィルムとして利用する場合、ドープに不溶解異物が存在すると生成したフィルムの光学特性(光透過率、屈折率等)に問題が生じ、繊維として利用する場合、紡糸時に糸切れが発生し、生産性の低下を来たす。
【0005】
そこで、流延や紡糸に先立ち、ドープの濾過を行って不溶解異物を除去する処置がなされるが、この濾過の際には、濾材の孔径が小さいほど不溶解異物の除去効果は高くなる一方で目詰まりし易くなり、濾材の交換等で作業効率が低下する。従って、ドープとしたときに、目詰まりの原因となる不溶解異物の少ない濾過性に優れた酢酸セルロースが要望されている。
【0006】
また、偏光板保護フィルム等の光学用途においては、輝点異物は光学的欠陥の原因となるため、特に厳しい条件の濾過が実施されるのが普通であるが、それでも目的の不溶解物を100%除去することは困難であり、濾過漏れが避けられない場合がある。このため、漏れたときのリスクをできるだけ小さくする観点から、輝点異物の少ない酢酸セルロースが望まれている。
【0007】
更に、酢酸セルロースを溶剤に溶かして溶液(ドープ)を作製し、そのドープを成型加工に供する際に、ドープの弾性的性質が大きいと、成型加工上好ましくない影響を及ぼすことがある。例えば、酢酸セルロースのドープからフィルムを流延する際、ドープの弾性的性質が大きすぎると、ドープを流延バンド上に押し出した後に、ドープ表面の十分な平滑性を得るための時間が長くなって、生産性が低下したり、極端な場合は、十分な表面の平滑性を持ったフィルムが得られなくなったりする。また、ドープから繊維を紡糸する際にも、ドープの弾性的性質が大きすぎると、紡糸速度を大きくできないため、やはり生産性を低下させる。このように主として生産性を高める観点から、ドープの弾性的性質が小さい酢酸セルロースが望まれている。
【0008】
このような要望を製造工程の改善により充足せんとして、二酢酸セルロースの製造の場合、特開昭56−59801号公報には、50〜85℃の高温で酢化反応を行い、熟成工程において、110〜120℃の高温で加水分解を行う高温酢化−高温熟成法の技術が開示されている。また、特公昭58−20961号公報には、熟成工程において125〜170℃の高温で加水分解を行う高温熟成法が開示されている。
【0009】
しかし、成型品を先端技術分野で使用する際の品質に対する高い要求、一般消費者の高品質指向、そして生産者の高度な生産性追求に対しては、上記した技術では十分応えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭56−59801号公報
【特許文献2】特公昭58−20961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、不溶解異物量が少なく、ドープの濾過性にも優れた酢酸セルロース及びその製造方法の提供を課題とする。
【0012】
更に本発明は、ドープの弾性的性質が小さい酢酸セルロース及びその製造方法の提供を課題とする。
【0013】
更に本発明は、ドープの濾過性及び弾性的性質が改善された酢酸セルロース及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決する手段として、先に閉塞恒数(K)が70以下であるセルローストリアセテートに係わる発明を出願しており(特願平10−329165号明細書参照)、本発明はかかる先願発明を更に改良するものである。
【0015】
本発明者らは、酢酸セルロースを溶剤に溶かしたドープの不溶解異物について詳細に分析検討した結果、ドープから製膜したフィルムを偏光顕微鏡下で見たとき輝点異物として観察される不溶解異物の量が濾材の目詰りと高い相関を示すこと、輝点異物は反応が不十分なセルロース繊維が崩壊した微細フラグメントであり、このような微細フラグメントを酢化反応系内に混入させないことによって、ドープ中の不溶解異物量を大幅に減少できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
本発明は、下記の要件(A)を具備することを特徴とするフレーク状酢酸セルロース。
要件(A):20μm以上の輝点異物が20個/mm3以下。
(輝点異物の測定方法)
フレーク状酢酸セルロースをメチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)混合溶媒に溶解し、15重量%(固形分濃度)の溶液(ドープ)を得る。このドープをスライドグラス上に流延、乾燥し、スライドグラス上に厚さ100μm程度のフィルム状のサンプルを得る。このサンプルを偏光顕微鏡で暗視野下で観察し、面積32mm2内にある最大長さが20μm以上の輝点異物を数え、別途測定した正確なフィルムの厚みで補正し、単位体積(1mm3)あたりの異物数を求める。異なるドープから製膜したフィルム3枚について同様の測定を行い、それらの平均値を算出し、輝点異物の数とする。
本発明における酢酸セルロースは、三酢酸セルロース及び/又は二酢酸セルロースを意味するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の酢酸セルロースは、上記方法により求められる要件(A)〜(C)を、要件(A)、要件(A)及び(B)、要件(C)又は要件(A)、(B)及び(C)の組合せで具備するものである。
【0018】
要件(A)の20μm以上の輝点異物は、20個/mm3以下、好ましくは10個/mm3以下である。
【0019】
要件(B)の閉塞恒数(K)は、60以下、好ましくは50以下である。
要件(C)の測定周波数0.016Hzの貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)の比(G’/G”)は、0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.06以下である。
【0020】
要件(A)又は要件(A)及び(B)を具備することによって、濾過性が向上し、例えば紡糸工程において不都合な異物を濾過により除去することが容易になる。特に輝点異物の数を少なくすることで、偏光板保護フィルム等の光学用途に適用した場合、濾過漏れの場合のリスクも小さくできる。
要件(C)を具備することによって、ドープの弾性的性質を小さく抑えることができるので、フィルムの流延及び紡糸速度を上げて生産性を高めることができる。
要件(A)、(B)及び(C)を具備することによって、上記した作用効果を得ることができる。
【0021】
次に、本発明の酢酸セルロースの製造法について説明する。本発明の酢酸セルロースの製造方法は、前処理セルロースを酢化反応工程へ送る送綿工程に特徴を有するものであり、この送綿工程の前後に行う工程処理については、一般的な酢酸セルロースの製造工程の処理を適用できる。以下において、本発明の酢酸セルロースの製造方法を工程ごとに順に説明する。
【0022】
まず、原料となる木材パルプ等の解砕セルロースに酢酸を添加して前処理活性化する。この前処理活性化における酢酸の使用量は、セルロース100重量部に対して、好ましくは10〜500重量部である。また、前処理活性化は、好ましくは密閉及び攪拌条件下、20〜50℃で、0.5〜2時間行う。
【0023】
次に、送綿工程の処理を行う。この工程においては、前処理セルロースを酢化反応系に送るとともに、送綿経路に付着した前処理セルロースを酢化反応系に洗い落とす(洗浄する)処理をする。
【0024】
送綿工程の送綿経路を形成する送綿装置は、好ましくは内部に1又は2個のダンパーを有するものであり、その他、1又は2以上の液体噴霧ノズル等の液体噴霧手段を具備したダクトも適用できる。
【0025】
送綿工程で使用する洗浄液となる酢酸又は酢酸−無水酢酸混合液において、酢酸の場合は氷酢酸が使用され、酢酸−無水酢酸混合液の場合は、酢酸と無水酢酸の割合が重量比で好ましくは1:99〜99:1、より好ましくは40:60〜60:40の混合液が使用される。
【0026】
洗浄液量は、使用したセルロース100重量部に対して、好ましくは5〜50容量部、より好ましくは10〜50容量部、更に好ましくは15〜50容量部である。5容量部以上であると、付着した前処理セルロースの洗浄による落下効果が高く、50容量部以下であると洗浄時間が長くなり過ぎることが防止される。
【0027】
洗浄液の温度は、好ましくは15〜50℃、より好ましくは15〜40℃、更に好ましくは15〜30℃である。
【0028】
洗浄方法は、送綿経路に付着した前処理セルロースを洗い落とすことができる方法であれば特に限定されず、洗浄液を噴霧する方法、洗浄液をシャワー状に注入する方法等を適用することができる。
【0029】
次に、酢化反応工程の処理を行う。酢化反応工程における無水酢酸と酢酸の使用量は、前記送綿工程で添加する酢酸又は酢酸−無水酢酸混合液量も含め、セルロース100重量部に対して、無水酢酸が好ましくは200〜400重量部、より好ましくは240〜280重量部であり、酢酸が好ましくは300〜600重量部、より好ましくは350〜500重量部である。
【0030】
触媒としての硫酸の添加量は、セルロース100重量部に対して、好ましくは5〜15重量部である。
【0031】
酢化反応は、上記反応剤を添加した後、攪拌条件下、40〜90分かけ、ほぼ一定速度で昇温しながら、最終的に30〜55℃で15〜60分間保持して行うことが望ましい。
【0032】
次に、熟成工程の処理を行う。この熟成処理は、酢化反応生成系中の硫酸触媒を、完全又は一部中和し、系内の温度を50〜150℃とし、同温度範囲で15分〜2時間保持して、所望の酢化度の酢酸セルロースを得る。
【0033】
次に、反応混合物を稀酢酸水溶液中に投入し、沈殿物として回収し、水洗、乾燥して製品とする。
【0034】
本発明の製造方法は、三酢酸セルロース及び二酢酸セルロースの製造のいずれにも高い効果があるが、三酢酸セルロースの製造において特に効果が高い。
【0035】
本発明の酢酸セルロースは、要件(A)、(B)及び(C)を所定の組合せで具備することにより、濾過性、輝点異物の数、ドープの弾性的性質等を改善することができる。このため、例えばフィルム用途に利用する場合、光学的に高い性能を示すフィルムを安定して製造できるようになる。
【0036】
本発明の製造方法は、前記した酢酸セルロースを工業的に安定に製造することができる。
実施例
以下に本発明を具体的に説明する実施例を示すが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。また、酢酸セルロースの物性測定は次の方法で行った。
【0037】
(1)酢化度
酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)の酢化度の測定法に準じて測定した。まず、乾燥した酢酸セルロース1.9gを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)150mlに溶解した後、1N−水酸化ナトリウム水溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、フェノールフタレイン溶液を指示薬として添加し、1N−硫酸で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した後、下記式にしたがって酢化度を算出する。なお、同様の方法により、ブランク試験を行う。
【0038】
酢化度(%)=〔6.005×(B−A)×F〕/W
(式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸のml数、Bはブランク試験の滴定に要した1N−硫酸のml数、Fは1N−硫酸の濃度ファクター、Wは試料重量を示す。)
【0039】
(2)6%粘度
三角フラスコに乾燥試料6.0g、メチレンクロライド/メタノール=91/9(重量比)混合溶媒94.0mlを入れ、密栓して約1時間攪拌した。その後、回転振盪機で約1時間振盪して完溶させた。得られた6wt/vol%の溶液を所定オストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約30分間整温した。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出した。
6%粘度(mPas)=流下時間(s)×粘度計係数
粘度計係数は、粘度計校正用標準液を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求めた。
【数1】

【0040】
(3)不溶解物量
メチレンクロライド:メタノール=9:1(重量比)溶液に、2%固形分濃度になるよう酢酸セルロースを溶解した溶液(ドープ)を、ガラスフィルター(G−4:孔径5〜10μm、相互理化学硝子製作所製)を使用して濾過する。その後、濾過残渣に付着しているドープをメチレンクロライド:メタノール=9:1(重量比)溶液で十分洗浄除去する。濾過残渣をガラスフィルターごと恒量になるまで乾燥する。濾過前後のガラスフィルター重量を測定し、次式より不溶解物量を算出する。
【数2】

【0041】
実施例1
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸10容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸410重量部、無水酢酸260重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0042】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、系内に過熱蒸気を吹き込み、温度と時間を調整し熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0043】
実施例2
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸10容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸410重量部、無水酢酸260重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0044】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、停止時の水と無水酢酸の反応熱で上昇する温度で所定時間熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0045】
実施例3
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸15容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸40.5重量部、無水酢酸260重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0046】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、系内に過熱蒸気を吹き込み、温度と時間を調整し熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0047】
実施例4
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸15容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸405重量部、無水酢酸260重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0048】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、停止時の水と無水酢酸の反応熱で上昇する温度で所定時間熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0049】
実施例5
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸/無水酢酸50/50(重量比)の混合液20容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸410重量部、無水酢酸250重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0050】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、停止時の水と無水酢酸の反応熱で上昇する温度で所定時間熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0051】
実施例6
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸/無水酢酸60/40(重量比)の混合液30容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸400重量部、無水酢酸250重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0052】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、系内に過熱蒸気を吹き込み、温度と時間を調整し熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0053】
実施例7
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、氷酢酸/無水酢酸60/40(重量比)の混合液30容量部で送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とした。その後、氷酢酸400重量部、無水酢酸250重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0054】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、停止時の水と無水酢酸の反応熱で上昇する温度で所定時間熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0055】
比較例1
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とすことなく、氷酢酸420重量部、無水酢酸260重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0056】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、停止時の水と無水酢酸の反応熱で上昇する温度で所定時間熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【0057】
比較例2
セルロースパルプ100重量部に氷酢酸50重量部を散布して、前処理活性化した。この前処理セルロースを酢化機に送綿した後、送綿装置内部に付着している前処理セルロースを酢化機へ洗い落とすことなく、氷酢酸420重量部、無水酢酸260重量部、硫酸8重量部を添加し酢化処理を行った。
【0058】
酢化終了後、酢酸マグネシウム15重量%酢酸−水混合溶液を、溶液中の水の濃度が3.0重量%、硫酸イオン濃度が0.5重量%になるまで添加して無水酢酸を分解させ、酢化反応を停止し、系内に過熱蒸気を吹き込み、温度と時間を調整し熟成を行った。その後、常法により精製・乾燥し、フレーク状酢酸セルロースを得た。
【表1】

表1に示したように、本発明により、濾過性に優れた酢酸セルロースを製造することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の要件(A)を具備することを特徴とするフレーク状酢酸セルロース。
要件(A):20μm以上の輝点異物が20個/mm3以下。
(輝点異物の測定方法)
フレーク状酢酸セルロースをメチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)混合溶媒に溶解し、15重量%(固形分濃度)の溶液(ドープ)を得る。このドープをスライドグラス上に流延、乾燥し、スライドグラス上に厚さ100μm程度のフィルム状のサンプルを得る。このサンプルを偏光顕微鏡で暗視野下で観察し、面積32mm2内にある最大長さが20μm以上の輝点異物を数え、別途測定した正確なフィルムの厚みで補正し、単位体積(1mm3)あたりの異物数を求める。異なるドープから製膜したフィルム3枚について同様の測定を行い、それらの平均値を算出し、輝点異物の数とする。
【請求項2】
要件(A)の20μm以上の輝点異物が10個/mm3以下である請求項1記載のフレーク状酢酸セルロース。

【公開番号】特開2010−196056(P2010−196056A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33573(P2010−33573)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【分割の表示】特願2001−571778(P2001−571778)の分割
【原出願日】平成13年3月27日(2001.3.27)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】