説明

酢酸化合物の製造方法

【課題】比較的安定で取り扱いが容易な原料から酢酸化合物を製造し得る方法を提供する。
【解決手段】酢酸化合物(1)の製造方法は、


〔式中、Rはアルキル基を示す。〕アルキルベンジルシアニド(2)


〔式中、Rは前記と同じ意味を示す。〕を硫酸の存在下に水と反応させることを特徴とする。アルキルベンジルシアニド(2)に対して、硫酸の使用量は1〜2モル倍であり、水の使用量は0.5〜2質量倍であり、80〜150℃で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸化合物の製造方法に関し、詳しくは式(1)

〔式中、Rはアルキル基を示す。〕
で示される酢酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)で示される酢酸化合物は、農薬、医薬品などの中間体として有用であり、その製
造方法として特許文献1〔特開2000−198756号公報〕には、フェニル金属化合
物をアミン類の存在下にキシレンと反応させ、得られたベンジル金属化合物を二酸化炭素
と反応させる方法が開示されている。
【0003】
しかし、かかる従来の方法で原料として用いられるフェニル金属化合物は、不安定で、そ
の取り扱いが面倒であることから、比較的安定で取り扱いが容易な原料を用いて、上記酢
酸化合物(1)を製造し得る方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−198756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、比較的安定で取り扱いが容易な原料から上記酢酸化合物(1)を製造
し得る方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、式(2)

〔式中、Rは前記と同じ意味を示す。〕
で示されるアルキルベンジルシアニドを硫酸の存在下に水と反応させることを特徴とする
前記式(1)で示される酢酸化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法は、原料として式(2)で示されるアルキルベンジルシアニドを使用す
るので、比較的安定で、取り扱いも容易な原料から、目的の酢酸化合物(1)を製造する
ことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の製造方法で用いられるアルキルベンジルシアニドは、式(2)で示される化合物
である。式(2)における置換基Rはアルキル基である。かるアルキル基の炭素数は通常
1〜3であり、アルキル基として具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ
る。置換基Rはオルト位であってもよいし、メタ位であってもよいし、パラ位であっても
よい。
【0009】
かかるアルキルベンジルシアニド(2)としては、例えばo−メチルベンジルシアニド、
m−メチルベンジルシアニド、p−メチルベンジルシアニド、o−エチルベンジルシアニ
ド、m−エチルベンジルシアニド、p−エチルベンジルシアニド、o−プロピルベンジル
シアニド、m−プロピルベンジルシアニド、p−プロピルベンジルシアニドなどが挙げら
れる。
【0010】
かかるアルキルベンジルシアニド(2)は、いずれも比較的安定であり、その工業的な入
手も容易である。
【0011】
本発明の製造方法では、アルキルベンジルシアニド(2)を硫酸の存在下に水と反応させ
る。
【0012】
硫酸〔H2SO4〕の使用量は、アルキルベンジルシアニド(2)に対して通常1モル倍〜2モル倍、好ましくは1.2モル倍〜1.8モル倍である。
【0013】
水〔H2O〕は通常、溶媒量で使用され、その使用量は、具体的にはアルキルベンジルシ
アニド(2)に対して通常0.5質量倍〜2質量倍、好ましくは1質量倍〜1.5質量倍
である。
【0014】
アルキルベンジルシアニド(2)を硫酸の存在下に水と反応させるには、アルキルベンジ
ルシアニド(2)、硫酸および水を混合すればよく、通常は硫酸および水の混合液中にア
ルキルベンジルシアニド(2)を添加すればよい。反応温度は通常80℃〜150℃、好
ましくは90℃〜120℃である。反応は大気圧下に行ってもよいし、加圧下に行っても
よい。反応時間は通常1時間〜10時間、好ましくは4時間〜8時間である。
【0015】
反応後、得られた反応混合物を冷却し、有機溶媒で抽出することにより、目的の式(1)
で示される酢酸化合物を得ることができる。抽出に使用される有機溶媒としては、例えば
トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンおよびこれらの混合溶媒などが挙
げられる。抽出後の抽出液は、水洗してもよい。
【0016】
抽出液を冷却することにより、酢酸化合物(1)を析出させ、析出した析出物を濾過する
方法により、固形分として酢酸化合物(1)を得ることもできる。
【0017】
本発明の製造方法により得られる酢酸化合物(1)としては、例えばo−トリル酢酸、m
−トリル酢酸、p−トリル酢酸、o−エチルフェニル酢酸、m−エチルフェニル酢酸、p
−エチルフェニル酢酸、o−プロピルフェニル酢酸、m−プロピルフェニル酢酸、p−プ
ロピルフェニル酢酸などが挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例により限定さ
れるものではない。
【0019】
実施例1
硫酸〔H2SO4分50質量%、水分50質量%〕150gを90℃に加熱し、撹拌下、同温度を維持しながら、o−メチルベンジルシアニド60gを滴下して加え、その後さらに撹拌しながら同温度を6時間維持して反応させた。
【0020】
反応後の反応混合物を50℃まで冷却し、同温度でキシレン(o−キシレン、m−キシレ
ンおよびp−キシレンの混合物)100mL(116g)を加え、30分間攪拌した後、
分液して、抽出液を得、得られた抽出液を同温度で純水50mLにより水洗した。水洗後
の抽出液を2℃〜3℃まで冷却して析出物を析出させ、次いで濾過することにより析出物
を取り出し、乾燥して、o−トリル酢酸(純度95%)53.1gを得た(収率75%)
。なお、純度はガスクロマトグラフ法により面積百分率として求めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)

〔式中、Rはアルキル基を示す。〕
で示されるアルキルベンジルシアニドを硫酸の存在下に水と反応させることを特徴とする
式(1)

〔式中、Rは前記と同じ意味を示す。〕
で示される酢酸化合物の製造方法。
【請求項2】
硫酸の使用量が前記アルキルベンジルシアニドに対して1モル倍〜2モル倍であり、水の
使用量が前記アルキルベンジルシアニドに対して0.5質量倍〜2質量倍である請求項1
に記載の製造方法。
【請求項3】
80℃〜150℃で反応させる請求項1または請求項2に記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−184904(P2010−184904A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30967(P2009−30967)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】