説明

酢酸含有調味料

【課題】酢酸含有調味料を飲食品に添加した際に、飲食品の味の持続性や嗜好性を改善する酢酸含有調味料と味の持続性および嗜好性を改善する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、不快臭や不快味をマスキングする方法、甘味やうま味を増強する方法および米飯の食感を改善する方法並びに食感が改善された米飯の製造方法を提供することを目的とする
【解決手段】イソアミルアルコールおよび酢酸エチルを含んでなる酢酸含有調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸含有調味料に関する。本発明はまた、酢酸含有調味料の酸味によって低下する飲食品の味の持続性および嗜好性を改善する方法に関する。本発明はさらにまた、飲食品の甘味若しくはうま味を増強する方法、不快臭または不快味をマスキングする方法、飲食品の嗜好性を改善する方法および米飯の食感を改善する方法並びに食感が改善された米飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸は、醸造酢等幅広い飲食物に含まれる成分であり、鋭い酸味を持つ。そのため、酢酸を含む調味料(以下、「酢酸含有調味料」という)を使用した飲食物はいずれも鋭い酸味をもつ。その結果、他の風味に比べ酸味だけが突出して感じられ、飲食品によっては酸味も含めて全体の味の持続性が失われて、結果として好ましくないものとなる場合がある。また、不快臭若しくは不快味のマスキングまたは食感の改善のために酢酸が用いられることがあるが、従来の酢酸含有調味料を使用すると、やはり、他の風味に比べ酸味だけが突出して感じられ、飲食品の味の持続性や嗜好性が低下する場合がある。
【0003】
このような、酢酸含有調味料の問題を解決するために、様々な方法が開発されてきた。例えば、コハク酸モノエチルを含有させる方法(例えば、特許文献1参照)、3−ヒドロキシ4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンやフルフラールを添加する方法(例えば、特許文献2参照)、クロトン酸およびマルトールを含有させる方法(例えば、特許文献3参照)、高甘味度甘味料を添加する方法(例えば、特許文献4参照)、γ−ノナラクトンを添加する方法(例えば、特許文献5参照)等の方法が知られている。
【0004】
しかし、これらの方法では、酸味の突出を抑える効果が満足できるものでなかったり、味の持続性が改善されなかったり、添加した物質特有のクセが飲食物に移行して、かえって品質を悪くすることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−263810号公報
【特許文献2】特開2001−69940号公報
【特許文献3】特開平6−335379号公報
【特許文献4】特開平10−215793号公報
【特許文献5】特開2010−227054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酢酸含有調味料を飲食品に添加した際に、飲食品の味の持続性や嗜好性を改善する酢酸含有調味料と味の持続性および嗜好性を改善する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、不快臭や不快味をマスキングする方法、甘味やうま味を増強する方法および米飯の食感を改善する方法並びに食感が改善された米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イソアミルアルコール(3−メチル−1−ブタノール)および酢酸エチルが、酢酸含有調味料を用いて調製した飲食品の嗜好性および味の持続性を改善することを見いだした。また、イソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸エチル以外の酢酸エステルを組み合わせて用いると、酢酸含有調味料を用いて調製した飲食品の嗜好性および味の持続性がさらに改善することを見いだした。さらに、イソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸エチル以外の酢酸エステルを組み合わせて用いると、飲食品一般において、甘味若しくはうま味が増強され、不快臭または不快味がマスキングされ、飲食品の嗜好性が改善することを見いだした。さらにまた、炊飯前の米にイソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸エチル以外の酢酸エステルを組み合わせて用いて炊飯すると、米飯の食感および米飯の嗜好性が顕著に改善することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいてなされた発明である。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)イソアミルアルコールおよび酢酸エチルをそれぞれ10〜300ppmおよび10〜150ppmの含有量で含んでなる、酢酸含有調味料。
(2)酢酸エチル以外の酢酸エステルから選択される1種以上の酢酸エステルをそれぞれ5〜75ppmの含有量でさらに含んでなる、上記(1)に記載の酢酸含有調味料。
(3)酢酸エチル以外の酢酸エステルが酢酸イソアミルおよび/または酢酸イソブチルである、上記(2)に記載の酢酸含有調味料。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酢酸含有調味料が添加されてなる、飲食品。
(5)酢酸含有調味料が添加された飲食品において酢酸により低下する飲食品の嗜好性および味の持続性を改善する方法であって、飲食品および/または酢酸含有調味料においてイソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる方法。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酢酸含有調味料を添加することにより、飲食品においてイソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、上記(5)に記載の方法。
(7)酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、飲食品の甘味またはうま味の増強方法。
(8)酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、飲食品の嗜好性の改善方法。
(9)酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、飲食品の不快臭または不快味のマスキング方法。
(10)酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、米飯の食感の改善方法。
(11)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酢酸含有調味料を添加することにより、酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整する、上記(7)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)飲食品が酢酸含有飲食品である、上記(7)〜(9)および(11)のいずれかに記載の方法。
(13)酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整して炊飯することを含んでなる、食感が改善された米飯の製造方法。
(14)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の酢酸含有調味料を添加することにより、酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整する、上記(13)に記載の製造方法。
【0009】
本発明の酢酸含有調味料は、イソアミルアルコールと酢酸エチルを用いることで、酢酸が添加される飲食品の味の持続性や嗜好性を改善することができる。すなわち、本発明の酢酸含有調味料は、簡便かつ効果的に酢酸による飲食品の味の低下を防ぐことができる点で有利である。本発明の酢酸含有調味料はまた、飲食品の甘味やうま味を増強させ、不快臭や不快味をマスキングし、飲食品の嗜好性を改善することができる点で有利である。本発明の酢酸含有調味料はさらに、米飯の粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力などの食感を顕著に改善することができる点で有利である。
【発明の具体的な説明】
【0010】
本発明の酢酸含有調味料は、酢酸に加えて、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルを含んでなることを特徴とする。
【0011】
本発明の酢酸含有調味料を構成する酢酸は、特に限定されないが、醸造酢や合成酢のような食酢由来のものを用いることができる。
【0012】
食酢は、食酢品質表示基準(平成12年12月19日農林水産省告示第1668号)によれば、醸造酢および合成酢に分類される。醸造酢としては、たとえば、米、麦、酒粕、とうもろこし等の穀物類を1種以上用いて製造される穀物酢、ぶどう、りんご等の果実を用いて製造される果実酢、醸造アルコールを原料に製造されるアルコール酢等であって、氷酢酸および酢酸を使用しないものが挙げられる。なお、合成酢とは、氷酢酸または酢酸の希釈液に砂糖類、酸味料、調味料、食塩等を加えたものまたはこれらに醸造酢を加えたものを言う。本発明では食酢として、醸造酢および合成酢のいずれを用いても良い。
【0013】
本発明の酢酸含有調味料における酢酸の含有量は、例えば、10,000ppm(1重量/体積%)〜150,000ppm(15重量/体積%)とすることができ、好ましくは30,000ppm(3重量/体積%)〜100,000ppm(10重量/体積%)、より好ましくは30,000ppm(3重量/体積%)〜60,000ppm(6重量/体積%)、特に好ましくは40,000ppm(4重量/体積%)〜50,000ppm(5重量/体積%)である。なお、本明細書においては、「酢酸の含有量」の「ppm」は、mg/Lに基づいて定められた値を表すものとし、「%」は重量/体積%を表すものとする。また、それ以外の物質の含有量に関しては、特に断りのない限り、「ppm」はμL/Lに基づいて定められた値を表すものとし、「%」は体積/体積%を表すものとする。
【0014】
本発明の酢酸含有調味料に含まれるイソアミルアルコールの含有量は10〜300ppmとすることができ、好ましくは20〜300ppm、より好ましくは50〜200ppmである。
【0015】
本発明の酢酸含有調味料の好ましい態様では、酢酸45,000ppm(4.5重量/体積%)に対して、イソアミルアルコールが10〜300ppm、好ましくは20〜300ppm、より好ましくは50〜200ppmとなるような比率で含まれるように調整することができる。すなわち、酢酸含有調味料における酢酸の含有量が45,000ppm(4.5重量/体積%)のときに、該酢酸含有調味料におけるイソアミルアルコールの含有量が、10〜300ppm、好ましくは20〜300ppm、より好ましくは50〜200ppmとなるようにイソアミルアルコールの含有量を調整することができ、酢酸含有調味料中の酢酸含有量は45,000ppm(4.5重量/体積%)には限定されない。より具体的には、酢酸の含有量が増減する場合には、酢酸含有量の増減に比例するようにイソアミルアルコールの含有量を増減させることができる。例えば、酢酸の含有量を2倍にした場合には、イソアミルアルコールの含有量の範囲を2倍とすることができる。このとき、酢酸含有調味料は希釈後に用いても良いし、含有量を変えずに分量を減らして用いてもよい。
【0016】
本発明の酢酸含有調味料に含まれる酢酸エチルの含有量は10〜150ppmとすることができ、好ましくは10〜100ppmである。
【0017】
本発明の酢酸含有調味料の好ましい態様では、酢酸45,000ppm(4.5重量/体積%)に対して、酢酸エチルが10〜150ppm、好ましくは10〜100ppmとなるような比率で含まれるように調整することができる。すなわち、酢酸含有調味料における酢酸の含有量が45,000ppm(4.5重量/体積%)のときに、該酢酸含有調味料における酢酸エチルの含有量が、10〜150ppm、好ましくは10〜100ppmとなるように、酢酸エチルの含有量を調整することができ、酢酸含有調味料中の酢酸含有量は45,000ppm(4.5重量/体積%)には限定されない。より具体的には、酢酸の含有量が増減する場合には、酢酸含有量の増減に比例するように酢酸エチルの含有量を増減させることができる。例えば、酢酸の含有量を2倍にした場合には、酢酸エチルの含有量の範囲を2倍とすることができる。このとき、酢酸含有調味料は希釈後に用いても良いし、含有量を変えずに分量を減らして用いてもよい。
【0018】
本発明の酢酸含有調味料は、酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステルを含んでいてもよい。酢酸エチル以外の酢酸エステルの例としては、下記に限定されないが、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、酢酸2−フェニルエチル等が挙げられ、好ましくは、酢酸イソアミル若しくは酢酸イソブチルまたはこれらの混合物、あるいはこれらとこれら以外の1種以上の酢酸エステルの混合物である。
【0019】
本発明の酢酸含有調味料における酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステルの含有量はそれぞれ5〜75ppmとすることができ、好ましくはそれぞれ5〜60ppm、より好ましくはそれぞれ5〜50ppmである。
【0020】
本発明の酢酸含有調味料の好ましい態様では、酢酸45,000ppm(4.5重量/体積%)に対して、酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステルがそれぞれ5〜75ppm、好ましくはそれぞれ5〜60ppm、より好ましくはそれぞれ5〜50ppmとなるような比率で含まれるように調整することができる。すなわち、酢酸含有調味料における酢酸の含有量が45,000ppm(4.5重量/体積%)のときに、該酢酸含有調味料における酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステルの含有量が、それぞれ5〜75ppm、好ましくはそれぞれ5〜60ppm、より好ましくはそれぞれ5〜50ppmとなるように、酢酸エチル以外の酢酸エステルの含有量を調整することができ、酢酸含有調味料中の酢酸含有量は45,000ppm(4.5重量/体積%)には限定されない。より具体的には、酢酸の含有量が増減する場合には、酢酸含有量の増減に比例するように酢酸エチル以外の酢酸エステルの含有量を増減させることができる。例えば、酢酸の含有量を2倍にした場合には、酢酸エチル以外の酢酸エステルの含有量の範囲を2倍とすることができる。このとき、酢酸含有調味料は希釈後に用いても良いし、含有量を変えずに分量を減らして用いてもよい。
【0021】
本発明の酢酸含有調味料は、必要に応じて食品に使用可能な各種成分を含有していてもよい。食品に使用可能な各種成分としては、下記に限定されないが、例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム等の無機塩、グルタミン酸ナトリウム、グリシンおよびアラニン等のアミノ酸、イノシン酸ナトリウムおよびグアニル酸ナトリウム等の核酸、ショ糖、ブドウ糖および乳糖等の糖、乳酸、コハク酸、リンゴ酸およびクエン酸等の有機酸、醤油、味噌、畜肉エキス、家禽エキス、魚介エキスおよび蛋白質加水分解物等の天然調味料、スパイス類およびハーブ類等の香辛料、水、デキストリンおよび各種澱粉等の賦形剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の酢酸含有調味料は、酢酸にイソアミルアルコールおよび酢酸エチルを添加することにより調製することができる。また、酢酸含有調味料は、これらに加えて、酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステル類や食品に使用可能な各種成分をさらに追加して調製することもできる。添加する順序やタイミングには特に制限はなく、原料を同時に添加しても、別々に任意の順序で添加してもよい。
【0023】
本発明の酢酸含有調味料は、例えば、澱粉および糖分等を含有する原料に麹および酵母等を加えて酒精発酵液を調製し、これにAcetobacter(アセトバクター)属またはGluconobacter(グルコノバクター)属等の酢酸菌を加えて酢酸発酵液を調製し、その後、イソアミルアルコール、酢酸エチルを添加し、必要に応じて酢酸や酢酸エチル以外の1種以上の酢酸エステルを添加することにより調製することができるが、この手順に限定されるわけではなく、本発明の酢酸含有調味料が調製できる限り種々の改変が許容される。
【0024】
本発明の酢酸含有調味料の調製に用いることができる原料については、酢酸を含有するものとして食酢が、イソアミルアルコールを含有するものとして清酒が、酢酸エチルを含有するものとしてみりんが、酢酸エチル以外の酢酸エステル類を含有するものとして果汁等がそれぞれ挙げられ、これらの一部あるいは全部を用いて本発明の酢酸含有調味料を調製してもよい。酢酸、イソアミルアルコール、酢酸エチル、および場合によっては酢酸エチル以外の酢酸エステルが本発明の酢酸含有調味料に含まれる限り、食酢、清酒、みりん、および果汁以外の原料を用いて本発明の酢酸含有調味料を調製してもよいことは当業者に自明であろう。
【0025】
イソアミルアルコールや酢酸エチルの一部が酢酸含有調味料の原料に既に含まれている場合には、不足する成分を追加するか、あるいは過剰な成分を取り除くことにより、本発明の酢酸含有調味料を調製することができる。酢酸含有調味料における酢酸、イソアミルアルコール、酢酸エチル、酢酸エチル以外の酢酸エステルの含有量は、ガスクロマトグラフを連結した質量分析計(GCMS)等により容易に測定することができる。
【0026】
本発明の酢酸含有調味料はそれ自体喫食に供してもよいが、味付け等のために飲食品に添加して使用することができる。食酢等の酢酸含有調味料を飲食品に添加すると酢酸の酸味によって飲食品の味の持続性や嗜好性が低下するが、本発明によれば、本発明の酢酸含有調味料を用いるとこのような飲食品の味の持続性や嗜好性の低下を防ぐことができる。
従って、本発明によれば、本発明の酢酸含有調味料が添加されてなる飲食品が提供される。本発明の酢酸含有調味料の飲食品への添加量には特に制限はなく、本発明の酢酸含有調味料中の酢酸の濃度に応じて、通常の食酢と同様に用いることができる。
【0027】
また、本発明の別の側面によれば、飲食品の不快臭や不快味をマスキングし、または、飲食品の甘味やうま味を増強させ、飲食品の嗜好性を改善することができる。従って、本発明によれば、この目的においても本発明の酢酸含有調味料が添加されてなる飲食品が提供される。
【0028】
本発明の酢酸含有調味料が添加される飲食品としては、飲食品であればいずれのものであってもよく、本発明の酢酸含有調味料を飲食品に添加することで、飲食品の有する甘味またはうま味を増強することができ、または飲食品の不快臭や不快味をマスキングすることができ、あるいは飲食品の嗜好性を改善することができる。例えば、米、パン、ケーキ、クッキー、ビスケット、米菓、和菓子および洋菓子などの穀物製品;豆腐、みそ、醤油、煮豆、納豆、きな粉、湯葉、豆乳および大豆飲料などの大豆含有飲食品;イソフラボンおよびサポニンなどの穀類成分含有飲食品;そば、うどん、中華麺、パスタなどの麺類;キャベツ、レタス、ハクサイ、ほうれん草、シュンギク、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、キュウリ、カボチャ、ブロッコリーおよびカリフラワーなどの野菜;大豆、小豆、そら豆、グリーンピースおよびサヤエンドウなどの豆;サラダ、青汁、野菜ジュース、野菜スープおよび野菜ピューレなどの野菜を原料とした飲食品;食用植物油、食用精製加工油脂、マーガリン、ショートニングおよび精製ラードなどの油または油脂;かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつまあげ、伊達巻、魚肉ハムおよび魚肉ソーセージなどの魚肉練り製品;マグロ、サバ、サケ、イワシ、スケトウダラ、カニ、イカ、エビ、タコ、イクラ、スジコ、タラコ、シラコ、アサリ、ハマグリ、サザエおよび赤貝などの魚介またはこれらの加工食品;ハンバーグ、ハム、ソーセージ、ベーコン、サラミなどの肉製品;牛乳、ヨーグルト、アイス、チーズ、バターおよびクリームなどの乳製品;鶏卵およびうずらの卵などの卵;焼き肉のタレ、鰻丼のタレ、生姜焼きのタレおよび焼き鳥のタレなどのタレ;ソース;麺つゆなどのつゆ;煮込み料理、揚げ料理、焼き料理、炒め料理、蒸し料理などの料理;カレー、ハヤシ、シチュー、食肉野菜混合煮、ミートソース、ハンバーグ、ミートボール、牛丼の素および麻婆豆腐の素などのレトルト食品;佃煮、惣菜、珍味類、ペースト類、飴、ジャム、パン、米菓、和菓子、洋菓子、冷菓、氷菓、健康食品、機能性食品、畜肉加工品、調理冷凍食品および魚肉加工品等の食品;ビール、日本酒、焼酎、ワイン、ウイスキー、ブランデー、スピリッツおよびリキュールなどのアルコール含有飲料;スポーツ飲料、炭酸飲料および果実飲料等の清涼飲料水;生乳、牛乳、加工乳、および脱脂乳などの乳飲料;缶詰などを挙げることができる。その他、例えば、桜井芳人編、総合食品辞典 第六版、同文書院、平成2年8月2日、1048〜1120頁に記載された飲食品を挙げることができる。
【0029】
本発明の酢酸含有調味料が添加される酢酸含有飲食品は製造あるいは喫食時に酢酸や食酢を用いる酢酸含有飲食品であればいずれのものであってもよく、例えば、ドレッシング、たれ、合わせ酢、マヨネーズ、ケチャップおよび各種ソース等の調味料;食酢飲料、スポーツ飲料、炭酸飲料および果汁飲料等の清涼飲料水;乳飲料および酒類等の飲料;佃煮、惣菜、珍味類、ペースト類、飴、ジャム、パン、米菓、和菓子、洋菓子、冷菓、氷菓、寿司、酢の物、健康食品、機能性食品、畜肉加工品および魚肉加工品等の食品が挙げられる。
【0030】
本発明の酢酸含有調味料は、従来の食酢に代替して用いてもよいし、従来の食酢と併用してもよい。また食酢に添加して用いてもよい。
【0031】
本発明の酢酸含有調味料の形態は特に限定されず、液状、粉状、粒状または粉粒状のいずれであってもよい。
【0032】
本発明の酢酸含有調味料にはエタノールが含まれていてもよく、該酢酸含有調味料中のエタノール濃度は、特に限定されないが、好ましくは、5,000ppm(0.5体積/体積%)以下である。
【0033】
本発明の酢酸含有調味料の好ましい態様では、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルがそれぞれ10〜300ppmおよび10〜150ppmの含有量で含まれる食酢(以下、「本発明の食酢」という)が提供される。この食酢は前記のように醸造酢であっても、合成酢であってもよく、本発明の食酢中の酢酸含有量は30,000ppm(3重量/体積%)〜60,000ppm(6重量/体積%)の範囲、好ましくは、40,000ppm(4重量/体積%)〜50,000ppm(5重量/体積%)の範囲とすることができる。本発明の食酢には、エタノールが含まれていてもよく、該食酢中のエタノール濃度は、特に限定されないが、好ましくは、5,000ppm(0.5体積/体積%)以下である。本発明の食酢に使用する各種成分やその含有量、並びに本発明の食酢が添加される飲食品等は本発明の酢酸含有調味料に関するものと同様のものを用いることができる。
【0034】
本発明の別の面によれば、酢酸含有調味料が添加された飲食品において酢酸により低下した飲食品の嗜好性および味の持続性を改善する方法であって、飲食品および/または酢酸含有調味料においてイソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる方法が提供される。酢酸含有調味料を飲食品に添加すると酢酸の酸味によって飲食品の味の持続性や嗜好性が低下するが、飲食品や酢酸含有調味料においてイソアミルアルコールや酢酸エチルの含有量を調整することで、酢酸による飲食品の味の持続性の低下や嗜好性の低下を防ぐことができる。本発明の方法では、酢酸と、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルとが含まれる本発明の酢酸含有調味料を飲食品に添加することによって酢酸により低下する飲食品の嗜好性および味の持続性を改善することができるが、これ以外に、食酢等の酢酸が添加された飲食品においてイソアミルアルコールや酢酸エチルの含有量を調整することによって酢酸により低下した飲食品の嗜好性および味の持続性を改善することもできる。本発明の方法では、また、酢酸と、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルとが含まれる本発明の酢酸含有調味料を飲食品に添加するとともに、酢酸含有調味料が添加された飲食品においてイソアミルアルコールや酢酸エチルの含有量を調整することによって酢酸により低下した飲食品の嗜好性および味の持続性を改善してもよい。本発明の方法に使用する各種成分やその含有量、並びに酢酸が添加される飲食品等は本発明の酢酸含有調味料に関するものと同様のものを用いることができる。
【0035】
本発明のさらに別の面によれば、甘味若しくはうま味を増強する方法;不快臭または不快味をマスキングする方法;および飲食品の嗜好性を改善する方法が提供される。本発明によりマスキングされる不快臭としては、特に限定されるものではないが、大豆臭、青臭さ、穀物臭、酸臭、ビタミン臭、魚臭、食肉臭、コラーゲン臭、アルコール臭、レトルト臭、缶臭、加熱臭および容器臭などの飲食品に含まれる異臭が挙げられ、好ましくは大豆臭および青臭さを挙げることができる。本発明によりマスキングされる不快味としては、特に限定されるものではないが、苦味、渋み、酸味およびえぐみなどがあげられ、好ましくは苦味、酸味およびえぐみを挙げることができる。本発明の方法では、飲食品中の酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整するが、酢酸と、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルとが含まれる本発明の酢酸含有調味料を飲食品に添加することによって、甘味やうま味を増強し、不快臭や不快味をマスキングし、飲食品の嗜好性を改善することができる。これ以外に、食酢等の酢酸が添加された飲食品においてイソアミルアルコールや酢酸エチルの含有量を調整することによって、甘味やうま味を増強し、不快臭や不快味をマスキングし、飲食品の嗜好性を改善することもできる。本発明の方法に使用する各種成分および酢酸が添加される飲食品等は本発明の酢酸含有調味料に関するものと同様のものを用いることができる。また、本発明では、飲食品中の酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量の調整は、当業者であれば適宜行うことができる。また、調整を本発明の酢酸含有調味料を添加して行う場合には、その添加量は、当業者であれば、適宜選択することができる。
【0036】
本発明のさらに別の面によれば、米飯の食感を改善する方法が提供される。本発明により改善される食感としては、特に限定されるものではないが、粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力を挙げることができる。より具体的には、米飯のもちもちとした食感を増強し、また、ふっくら感、粘りや弾力を増強し、一粒一粒が口の中でばらけやすく粒感のある米飯を得ることができる。本発明の方法では、炊飯前の米中で酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整してから炊飯することができるが、酢酸と、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルとが含まれる本発明の酢酸含有調味料を米に添加して炊飯することによっても米飯の食感を改善し、米飯の嗜好性を改善することができる。本発明によれば、さらに、炊飯前の米中で酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整して炊飯することを含んでなる、食感が改善された米飯の製造方法が提供される。米飯の食感の改善方法と同様に、酢酸と、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルとが含まれる本発明の酢酸含有調味料を米に添加して炊飯することにより、食感が改善された米飯を製造してもよい。
【0037】
本発明の米飯の食感の改善方法や食感が改善された米飯の製造方法に使用する各種成分は、本発明の酢酸含有調味料に関するものと同様のものを用いることができる。また、本発明では、炊飯前の米中の酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量の調整は、当業者であれば適宜行うことができる。さらに、調整を本発明の酢酸含有調味料を添加して行う場合には、その添加量は、当業者であれば、適宜選択することができる。炊飯前の米は、精白米のみならず、玄米や胚芽玄米などを用いることができる。また、炊飯前の米には、麦、アワ、キビ、ヒエ、大豆、小豆などのいわゆる雑穀などを添加してもよい。また、本発明では、食感が改善された米飯は、炊飯時に調味料や食材などを添加して、炊き込みご飯などの調味米飯などとして製造してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、下記の実施例により本発明が限定されるものではない。実施例中で使用される含有量の単位ppmは、各成分の酢酸含有調味料に対する含有量(ppm)を示す。
【0039】
実施例1:酢酸含有調味料における酢酸エチルの効果
4.5重量/体積%(45,000ppm)酢酸水溶液に、70ppmとなるようにイソアミルアルコールを添加し、さらに0ppm、10ppm、50ppm、100ppm、125ppm、150ppm、175ppm、200ppm、300ppm、あるいは500ppmとなるように酢酸エチルを添加して酢酸含有調味料を調製した。得られた該酢酸含有調味料を用いて表1記載の配合で合わせ酢を調製した。なお、表1内のかつおぶしだしとしてはBrix10の濃縮品(製品名:素だしかつお:キリン協和フーズ)を用いた。また、アルコール酢としては、高酸度ビネガーDV(酸度10%:キューピー醸造)を用いた。
【表1】

【0040】
得られた合わせ酢の酢酸含有飲食品としての味の持続性および好ましさ(嗜好性)について、10名のパネラーによる官能評価を実施した。官能評価は、味の持続性についてはコントロール(酢酸エチル無添加の例、つまり、0ppm)を1点とする3点評価法、嗜好性については、コントロール(酢酸エチル無添加の例、つまり、0ppmの例)を3点とする5点評価法を採用し、10名の評点の平均値を比較することにより実施した(n=10)。味の持続性および嗜好性に関する評点は、以下のように設定した。
【0041】
味の持続性
3点:コントロールと比較して、明確に強く感じる。
2点:コントロールと比較して、若干強く感じる。
1点:コントロールと比較して、同程度の味の持続性を感じる。
嗜好性
5点:コントロールより好む。
4点:コントロールより若干好む。
3点:コントロールと同程度に好む。
2点:コントロールより若干好まない。
1点:コントロールより好まない。
【0042】
官能評価結果は表2に示される通りであった。
【表2】

【0043】
表2に示す通り、70ppmのイソアミルアルコールを含有し、酢酸エチルを含有する酢酸含有調味料を用いて得られた合わせ酢は、試験した全ての酢酸エチル濃度において味の持続性が改善した。特に、10〜150ppmの酢酸エチルを含有する酢酸含有調味料を用いて得られた合わせ酢は、いずれも酢酸により低下する味の持続性および嗜好性が改善し、酢酸含有飲食品として好ましいものであった。
【0044】
実施例2:酢酸含有調味料におけるイソアミルアルコールの効果
(1)市販醸造酢Aの成分分析
市販の醸造酢Aを5倍希釈し、5mLを採取した。該醸造酢を、食塩2gおよび内部標準試料としてのヘキサナール0.1μLと共に専用のバイアルに注入し、ヘッドスペースを窒素ガスで置換した後、ガスクロマトグラフィー分析に供し、酢酸エチル、イソアミルアルコールおよび酢酸エステル(酢酸イソアミル、酢酸イソブチル)をヘッドスペース法にて定量した。
分析条件を以下に示す。
装置 :アジレント製GC/MS HP6890
カラム:GLサイエンス製TC−WAXカラム0.25mm×60m、I.D.0.25μm
条件 :インジェクター230℃、イオン源210℃、カラムの温度条件:40℃、10分間保持、4℃/分で190℃まで上昇、その後10℃/分で240℃まで上昇、最後に240℃で10分間保持
【0045】
定量の結果、市販の醸造酢A中には、酢酸エチルが119ppm含有されていたが、イソアミルアルコール、酢酸イソアミルおよび酢酸イソブチルはいずれも検出限界以下であった。
【0046】
(2)官能評価
該醸造酢A(酢酸濃度:4.2重量/体積%)に、0ppm、7ppm、10ppm、20ppm、50ppm、100ppm、200ppm、300ppm、400ppm、500ppm、1000ppmあるいは5000ppmとなるようにイソアミルアルコールを添加して酢酸含有調味料を調製し、表1記載の配合で合わせ酢を調製した。得られた合わせ酢における味の持続性、および酢酸含有飲食品としての好ましさ(嗜好性)について、10名のパネラーにより官能評価を実施した。
【0047】
官能評価は、味の持続性については上記実施例1に記載の方法に準じてコントロール(イソアミルアルコール無添加の例、つまり、0ppm)を1点とする3点評価法、嗜好性については、上記実施例1に記載の方法に準じてコントロールを3点とする5点評価法を採用し、10名の評点の平均値を比較することにより実施した(n=10)。
【0048】
官能評価結果は表3に示される通りであった。
【表3】

【0049】
表3に示す通り、酢酸エチルを119ppm含有し、かつイソアミルアルコールを10〜300ppm含有する酢酸含有調味料を用いて得られた合わせ酢は、いずれも酢酸により低下する味の持続性および嗜好性が改善し、酢酸含有飲食品として好ましいものであった。
【0050】
実施例3:酢酸含有調味料における酢酸エチル以外の酢酸エステルの効果
市販の醸造酢A(酢酸濃度:4.2重量/体積%)に、70ppmとなるようにイソアミルアルコールを添加し、さらに0ppm、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、30ppm、50ppm、60ppm、70ppm、80ppm、90ppm、100ppm、200ppmあるいは500ppmの含有量となるように酢酸イソアミルを添加して酢酸含有調味料を調製し、表1記載の配合で合わせ酢を調製した。
各合わせ酢の味の持続性および酢酸含有飲食品としての好ましさ(嗜好性)について、酢酸イソアミルを添加しないものをコントロールとして、上記実施例2(2)に記載の官能評価方法にて、10名のパネラーによる官能評価を実施した。
【0051】
官能評価結果は表4に示される通りであった。
【表4】

【0052】
表4に示すとおり、イソアミルアルコールを70ppm、酢酸エチルを119ppm、かつ酢酸イソアミルを含有する醸造酢を用いて得られた合わせ酢は、試験した全ての酢酸イソアミル濃度において味の持続性が改善した。特に、酢酸イソアミルを5〜70ppm含有する酢酸含有調味料を用いて得られた合わせ酢は、いずれも酢酸により低下する味の持続性および嗜好性が改善し、酢酸含有飲食品として好ましいものであった。
【0053】
このように、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルを含有する酢を添加した合わせ酢では、合わせ酢の味の持続性および飲食品としての嗜好性が改善する(実施例1および2)。また、合わせ酢の味の持続性および飲食品としての嗜好性の改善の効果は、酢酸エチルを単独で含有する酢を用いた場合よりも大きかった(実施例2)。イソアミルアルコールおよび酢酸エチルに加えてさらに酢酸イソアミルを含有する酢を添加した合わせ酢では、味の持続性および飲食品としての嗜好性のより大きな改善が認められた(実施例3)。
【0054】
実施例4:酢酸含有調味料の飲食品への添加効果(1)(野菜ジュース)
4.5重量/体積%(45,000ppm)酢酸水溶液に、イソアミルアルコール、酢酸エチル、および酢酸イソアミルを、それぞれ70ppm、100ppmおよび20ppmとなるように添加して酢酸含有調味料を調製した。得られた酢酸含有調味料を0.2重量/重量%となるように市販の100%野菜ジュースに添加して、試験例1の野菜ジュースを得た。また、上記酢酸含有調味料の代わりに4.5重量/体積%(45,000ppm)酢酸水溶液を用いて、比較例1の野菜ジュースを得た。
各野菜ジュースの甘味、青臭さ、えぐみ、および野菜ジュースとしての好ましさ(嗜好性)について、酢酸調味料および酢酸水溶液のいずれも添加していない野菜ジュースをコントロールとして、12名のパネラーで官能評価を行った。
【0055】
甘み、青臭さ、えぐみおよび嗜好性に関する評点は、以下のように設定した。
甘味
3点:コントロールと比較して、明確に強く感じる。
2点:コントロールと比較して、若干強く感じる。
1点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
青臭さ、えぐみ
3点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
2点:コントロールと比較して、若干弱く感じる。
1点:コントロールと比較して、明確に弱く感じる。
嗜好性
5点:コントロールより好ましい。
4点:コントロールより若干好ましい。
3点:コントロールと同程度に好ましい。
2点:コントロールより若干好ましくない。
1点:コントロールより好ましくない。
【0056】
官能評価結果は表5に示される通りであった。
【表5】

【0057】
表5に示す通り、イソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸イソアミルを、それぞれ70ppm、100ppmおよび20ppm含有する酢酸含有調味料を添加して得られた野菜ジュース(試験例1)は、無添加の野菜ジュース(コントロール)や酢酸のみが添加された野菜ジュース(比較例1)と比較して、甘味が増強され、一方で、青臭さおよびえぐみが低減し、飲食品としての嗜好性が大きく改善していた。比較例1でも、コントロールに比べ、甘味の増強効果や青臭さ、えぐみの低減効果が見られたが、飲食品としての嗜好性は若干低下していた。
【0058】
実施例5:酢酸含有調味料の飲食品への添加効果(2)(豆乳)
実施例4で調製した、イソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸イソアミルを、それぞれ70ppm、100ppmおよび20ppm含有する酢酸含有調味料を0.2%重量/重量%となるように市販の豆乳に添加して試験例2の豆乳を調製した。また、上記酢酸含有調味料の代わりに4.5重量/体積%(45,000ppm)酢酸水溶液を用いて、比較例2の豆乳を得た。
【0059】
各豆乳の甘味、うま味、えぐみ、大豆臭、苦味、および豆乳としての好ましさ(嗜好性)について、酢酸調味料および酢酸水溶液のいずれも添加していない豆乳をコントロールとして、12名のパネラーで官能評価を行った。
【0060】
うま味、大豆臭および苦味の評価基準は、以下のように設定した。なお、甘味、えぐみおよび嗜好性の評価基準は、実施例4における評価基準に準じる。
【0061】
うま味
3点:コントロールと比較して、明確に強く感じる。
2点:コントロールと比較して、若干強く感じる。
1点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
大豆臭、苦味
3点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
2点:コントロールと比較して、若干弱く感じる。
1点:コントロールと比較して、明確に弱く感じる。
【0062】
官能評価結果は表6に示される通りであった。
【表6】

【0063】
表6に示す通り、イソアミルアルコール、酢酸エチル、および酢酸イソアミルを、それぞれ70ppm、100ppmおよび20ppm含有する酢酸含有調味料を添加して得られた豆乳(試験例2)は、無添加の豆乳(コントロール)や酢酸のみが添加された豆乳(比較例2)と比較して、甘味およびうま味が増強され、一方で、大豆臭、えぐみおよび苦味が低減し、飲食品としての嗜好性が改善していた。比較例2でも、コントロールに比べ、甘味、うま味の増強効果や青臭さ、えぐみ、大豆臭、苦味の低減効果が見られたが、飲食品としての嗜好性は若干低下していた。
【0064】
実施例6:酢酸含有調味料の食品への添加効果(3)(鍋つゆ)
本実施例では、鍋つゆに対する本発明の酢酸含有調味料の添加の効果を調べた。
【0065】
4.5重量/体積%(45,000ppm)酢酸水溶液、および、実施例4で調製した酢酸含有調味料を用いて、表7の組成で配合した鍋つゆをレトルト耐性容器に100gずつ封入して120℃で5分の条件(F値=6)でレトルト加熱殺菌を行い、コントロール、比較例3および試験例3の鍋つゆを得た。
【表7】

【0066】
各鍋つゆのうま味、だし感、レトルト臭(ムレ臭)、レトルト臭(コゲ臭)、苦味、および、鍋つゆとしての好ましさ(嗜好性)について、10名のパネラーによる官能評価を行った。
【0067】
だし感、レトルト臭(ムレ臭)、レトルト臭(コゲ臭)および苦味の評価基準は、以下のように設定した。なお、うま味および嗜好性の評価基準はそれぞれ、実施例5および実施例4における評価基準に準じる。
【0068】
だし感
3点:コントロールと比較して、明確に強く感じる。
2点:コントロールと比較して、若干強く感じる。
1点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
レトルト臭(ムレ臭)、レトルト臭(コゲ臭)、苦味
3点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
2点:コントロールと比較して、若干弱く感じる。
1点:コントロールと比較して、明確に弱く感じる。
【0069】
官能評価結果は表8に示される通りであった。
【表8】

【0070】
表8に示す通り、イソアミルアルコール、酢酸エチル、および酢酸イソアミルを、それぞれ70ppm、100ppmおよび20ppm含有する酢酸含有調味料を添加して得られた鍋つゆ(試験例3)は、無添加の鍋つゆ(コントロール)や酢酸のみが添加された鍋つゆ(比較例2)と比較して、うま味およびだし感が増強され、一方で、レトルト臭(ムレ臭)、レトルト臭(コゲ臭)および苦味が低減し、飲食品としての嗜好性が改善していた。このように、本発明の酢酸含有調味料は、食品の味や嗜好性を改善するだけでなく、レトルト加熱により生じる不快臭を低減することができた。比較例3でも、同様の効果が見られたが、試験例3で見られた効果よりも弱く、結果として嗜好性はコントロールと比較してほとんど改善しなかった。
【0071】
実施例7:酢酸含有調味料の飲食品への添加効果(4)(米飯)
本実施例では、本発明の酢酸含有調味料の、米飯の甘味やうま味に対する影響および糠臭などの不快臭に対する影響を調べた。本実施例ではまた、本発明の酢酸含有調味料の米飯の食感に対する影響も調べた。
【0072】
無洗米150gと水240mLに対して、4.5重量/体積%(45,000ppm)酢酸水溶液を1.3g添加して(比較例4)、または、実施例4で調製した酢酸含有調味料を1.3g添加して(試験例4)、定法に従って炊飯した。
【0073】
得られた米飯は、甘味、うま味、酸臭、酸味、糠(ぬか)臭、えぐみ、粒感、ふっくら感、もちもち感、粘り、弾力、および米飯としての好ましさ(嗜好性)について、酢酸水溶液および酢酸含有調味料のいずれも添加せずに炊飯した米飯をコントロールとして、9名のパネラーで官能評価を行った。
【0074】
酸臭、酸味、糠臭、粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力の評価基準は、以下のように設定した。なお、甘味、うま味および嗜好性の評価基準は、実施例4における評価基準に準じ、えぐみの評価基準は、実施例5における評価基準に準じる。
【0075】
酸臭、酸味
3点:コントロールと比較して、明確に強く感じる。
2点:コントロールと比較して、若干強く感じる。
1点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
糠臭
3点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
2点:コントロールと比較して、若干弱く感じる。
1点:コントロールと比較して、明確に弱く感じる。
粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力
5点:コントロールと比較して、明確に強く感じる。
4点:コントロールと比較して、若干強く感じる。
3点:コントロールと比較して、同程度に感じる。
2点:コントロールと比較して、若干弱く感じる。
1点:コントロールと比較して、明確に弱く感じる。
【0076】
官能評価結果は表9に示される通りであった。
【表9】

【0077】
表9に示す通り、イソアミルアルコール、酢酸エチル、および酢酸イソアミルを、それぞれ70ppm、100ppmおよび20ppm含有する酢酸含有調味料を添加して得られた米飯(試験例4)は、無添加の米飯(コントロール)や酢酸のみが添加された米飯(比較例4)と比較して、甘味およびうま味が増強され、一方で、糠臭およびえぐみが低減した。試験例4でまた、粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力などの食感が、顕著に改善していた。試験例4ではさらに、比較例4と比較して酸臭や酸味が抑えられていた。結果として、試験例4は、食品としての嗜好性が顕著に改善していた。一方、比較例4では、甘味およびうま味の増強効果、糠臭およびえぐみのマスキング効果、並びに粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力などの食感が若干改善していたものの、酢酸を加えたことによる酸臭および酸味が強く、結果として食品としての嗜好性は、コントロールと比較してほとんど改善しなかった。
【0078】
このように、イソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸イソアミルを含む酢酸含有調味料を添加した飲食品では、甘味およびうま味が増強され、また、青臭さおよび大豆臭などの不快臭や苦味およびえぐみなどの不快味がマスキングされ、飲食品としての嗜好性が改善する(実施例4および5)。同様に、実施例6および7でもイソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸イソアミルを含む酢酸含有調味料を添加した飲食品では、甘味、うま味およびだし感が増強され、レトルト臭(ムレ臭)、レトルト臭(コゲ臭)、苦味、酸臭、酸味、糠(ぬか)臭およびえぐみなどの不快臭や不快味が低減した。
【0079】
一方で、米飯では、イソアミルアルコール、酢酸エチルおよび酢酸イソアミルを含む酢酸含有調味料を添加して炊飯した場合には、粒感、ふっくら感、もちもち感、粘りおよび弾力などの食感が改善したが、その改善効果は、比較例4と比較しても顕著であった(実施例7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソアミルアルコールおよび酢酸エチルをそれぞれ10〜300ppmおよび10〜150ppmの含有量で含んでなる、酢酸含有調味料。
【請求項2】
酢酸エチル以外の酢酸エステルから選択される1種以上の酢酸エステルをそれぞれ5〜75ppmの含有量でさらに含んでなる、請求項1に記載の酢酸含有調味料。
【請求項3】
酢酸エチル以外の酢酸エステルが酢酸イソアミルおよび/または酢酸イソブチルである、請求項2に記載の酢酸含有調味料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の酢酸含有調味料が添加されてなる、飲食品。
【請求項5】
酢酸含有調味料が添加された飲食品において酢酸により低下する飲食品の嗜好性および味の持続性を改善する方法であって、飲食品および/または酢酸含有調味料においてイソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の酢酸含有調味料を添加することにより、飲食品においてイソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、飲食品の甘味またはうま味の増強方法。
【請求項8】
酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、飲食品の嗜好性の改善方法。
【請求項9】
酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、飲食品の不快臭または不快味のマスキング方法。
【請求項10】
酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整することを含んでなる、米飯の食感の改善方法。
【請求項11】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の酢酸含有調味料を添加することにより、酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
飲食品が酢酸含有飲食品である、請求項7〜9および11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整して炊飯することを含んでなる、食感が改善された米飯の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の酢酸含有調味料を添加することにより、酢酸、イソアミルアルコールおよび酢酸エチルの含有量を調整する、請求項13に記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−99316(P2013−99316A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87791(P2012−87791)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(505144588)キリン協和フーズ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】