説明

酢酸n−プロピルの製造方法

【課題】水素化触媒を用いて酢酸アリルを水素化し、酢酸n−プロピルを製造するにあたり、酢酸n−プロピルを高効率に製造できる水素化触媒を提供すること。
【解決手段】水素化触媒として破砕状活性炭にパラジウムを担持したものを用いる。担体である破砕状活性炭は試験用ふるいの目開きで、500μm〜5.60mmの粒度を有するものが好ましい。破砕状活性炭はヤシガラ活性炭を破砕したものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒を用いて酢酸アリルを水素化し、酢酸n−プロピルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飽和酢酸エステル類たる酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル等は溶剤・溶媒や反応溶媒として多用され、工業上重要な化合物となっている、これらの飽和エステル類は、一般に相当するアルコールとカルボン酸との縮合反応によるエステル化反応により製造される。しかしながら、このようなエステル化反応系では、副生物である水を系外に取り除かなければ、反応の平衡状態を生成物(エステル)側に傾けることができず、したがって工業的に有利な原料転化率や反応速度を得ることは困難である。
【0003】
この問題点を解決するために、いくつかの提案がなされている。例えば特許文献1には、アルキルベンゼンスルホン酸を触媒に、アルコールとカルボン酸からカルボン酸エステルを製造する方法が記載されている。しかしながら、当該公報にもあるようにカルボン酸エステルの工業的な製造方法には複雑な反応装置や反応工知恵が必要となるという問題点がある。
【0004】
他方、特許文献2では、飽和酢酸エステル類の製造方法として、カルボン酸、酸素、オレフィン化合物の酸化的カルボキシル化反応によって得た不飽和カルボン酸エステルの水素化反応を行う提案がなされている。当該公報によれば、ニッケルを含有する水素化触媒を用いて、不飽和基含有エステルを水素化することで、相当する飽和エステルを製造することが出来るとの記載がある。当該公報記載には、ニッケル含有量が46重量%の円柱状成形品である担持型ニッケル触媒を用いた製造例が示されているが、その時の不飽和基含有エステルの転化率は、高濃度のニッケルを使用しているにもかかわらず十分なものとは言えず、工業的な利用には制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5―194318号公報
【特許文献2】特開平9−194427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば、酢酸アリルを水素化触媒として用いて水素化反応を行うにあたり、酢酸n−プロピルを高効率に製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、酢酸アリルを破砕状の活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒の存在下、水素化反応することにより、酢酸n−プロピルを高効率に得ることに成功し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]に示される酢酸n−プロピルの製造方法に関する。
【0008】
[1]破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒の存在下、酢酸アリルの水素化反応を行うことを特徴とする酢酸n−プロピルの製造方法。
[2]破砕状活性炭が試験用ふるいの目開きで、500μm〜5.60mmの粒度を有することを特徴とする[1]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[3]破砕状活性炭が試験用ふるいの目開きで、1.0mm〜5.60mm粒度を有することを特徴とする[1]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[4]破砕状活性炭が試験用ふるいの目開きで、2.0mm〜5.60mm粒度を有することを特徴とする[1]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[5]破砕状活性炭がヤシガラ活性炭を破砕して得られたものである[1]〜[4]のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[6]破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒の存在下、酢酸アリルの水素化反応が気液固反応であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[7]前記の気液固反応が下降並流操作で行われることを特徴とする[6]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[8]気液固反応の反応器に供給される反応液中の酢酸アリルの濃度が0.1質量%〜10.0質量%であることを特徴とする[6]〜[7]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると高効率に酢酸n−プロピルを製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明では、破砕状の活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒の存在下、酢酸アリルの水素化反応を行い、酢酸n−プロピルを製造することを特徴とする。
【0011】
<水素化触媒>
先ず、本発明で使用する破砕状の活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒について説明する。本発明では、破砕状の活性炭に、公知の方法でパラジウムを担持した水素化触媒を使用する。ここで破砕状の活性炭とは、粒状活性炭の一つであり、円柱状造粒活性炭、球状造粒活性炭と区別される(この分類の詳細については、例えば「新版 活性炭 基礎と応用」、株式会社 講談社、1997年3月20日発行、第5刷、第61頁以降の「2.3.3 粒状活性炭製造プロセス」の項を参照することができる)。また、粒状活性炭の市販品としては、例えば、日本エンバイロケミカルズ株式会社製の商品名「粒状白鷺 破砕炭 G2C」などを挙げることが出来る(日本エンバイロケミカルズ株式会社 活性炭総合カタログ 2008.6版 5頁「粒状活性炭 1)破砕炭の項を参照できる)。
活性炭の原料としては種々のものが用いられる。たとえば、おがくずのような木材、瀝青炭のような石炭、ヤシガラなどである。特にヤシガラ活性炭は多孔質で扁平であり、本発明の破砕状活性炭として活性向上の面で好ましい。
【0012】
本発明で用いる破砕状活性炭の大きさは試験用ふるいの目開きで500μm〜5.60mmの粒度、及び0.5mm〜3.0mmの厚さを有していることが好ましい。さらに好ましくは、目開きで、1.0mm〜5.60mmであり、最も好ましくは目開きで2.0mm〜5.6mmである。本発明の「目開き」の値は、JIS Z8801−1に記載された試験用ふるいの公称目開きを意味する。また、破砕状活性炭の粒度が目開きで500μm〜5.60mmとは、500μmの試験用ふるいオンかつ5.60mmの試験用ふるいパスのものが全体の80.0質量%以上であることを意味する。他の目開き範囲についても同様である。破砕状の活性炭粒度、及び厚さがこの範囲より大きくなると、触媒間の空隙が大きくなり、酢酸アリルと水素ガス及び触媒金属との接触効率が低下し、酢酸アリルの水素化活性が悪化するため好ましくない。一方、破砕状活性炭の粒度、厚さがこの範囲より小さくなると、触媒を反応器に充填した際、反応器における圧力損失が高くなり、工業的に運転を行うことが困難となるため好ましくない。破砕状活性炭の製造方法及び原料は特に制限されず、破砕状活性炭の形状を有するものを水素化触媒の担体として用いることが出来る。
【0013】
本発明で使用する破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒を製造する方法は特に制限されない。本発明において、パラジウムとは、いずれの価数を持つものであっても良く0価のパラジウムと2価および/または4価のパラジウムを有するパラジウム化合物が混在していても構わない。本発明で使用する破砕状活性炭に金属パラジウムを担持した水素化触媒は、破砕状活性炭にパラジウム塩を担持し、ついで当該パラジウム塩を還元することにより製造することができる。破砕状活性炭にパラジウム塩を担持する方法としては特に制限はない。公知の、共沈殿を利用する方法、エバポレーションやスプレー噴霧による強制担持法、含浸法(これらの詳細については、例えば「接触水素化反応−有機合成への応用−」、東京化学同人、1987年4月10日発行、第1版第1刷、第5頁以降の「1・2・2含浸法」の項を参照することができる)を採用することが可能である。破砕状活性炭へのパラジウム担持状態をコントロールできる点から、含浸法、スプレー噴霧による強制担持法が好適である。
【0014】
更に、必要に応じて、パラジウムを担持した後、アルカリ処理によるパラジウムの不溶化工程を設けても良い。この不溶化工程を設けることにより、パラジウム化合物の溶出を防止できるという利点が得られる。不溶化方法に特に制限はない。水酸化ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化バリウムといった塩基性物質を添加して、酸化物あるいは水酸化物に変換して不溶化させることが望ましい。
【0015】
本発明で使用する破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒は、パラジウム化合物を破砕状活性炭に担持後に、還元処理を行ってもよい。還元処理の方法は公知の方法から適宜選択することが可能である。この還元処理の具体例としては、例えば水素化ホウ素ナトリウムやヒドラジン等の還元剤を使用した公知の液相還元処理や、水素気流下で加熱する気相還元処理などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明で使用する破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒におけるパラジウムの担持量は特に制限されないが、パラジウムコスト、触媒活性の観点から、0.1質量%〜10質量%の範囲になることが好ましい。
【0017】
<酢酸n−プロピルの製造>
本発明では前記のPd−破砕状活性炭を触媒として酢酸アリルと水素ガスを反応させて酢酸n−プロピルを製造する。
CHCOO−CH−CH=CH+H → CHCOO−CHCHCH
【0018】
この水素化反応は発熱量が極めて大きいため、無溶媒で酢酸アリルのみを反応させると冷却がまにあわず、反応系内の発熱により温度が上昇し、これが原因となって水素化分解反応が促進される可能性がある。また、反応温度が低い方が温度の制御が容易である点を考慮すると、酢酸アリルを水素化反応に不活性な溶媒で希釈したものを、酢酸アリルを含有する「原料液」として水素化反応を行うことが好ましい。ここに「不活性な溶媒」とは酢酸アリルの水素化反応に実質的に影響を与えない溶媒をいう。
【0019】
酢酸アリルを不活性溶媒で希釈したものを、酢酸アリルを含有する原料液として使用して水素化反応を行う態様における酢酸アリルの濃度は、0.1質量%〜50質量%の範囲が好ましい。酢酸アリルの濃度が0.1質量%未満では、酢酸n−プロピルの生産性が低くなる。酢酸アリル濃度が50質量%以上になると温度上昇による水素化分解が顕著になる可能性がある。
【0020】
酢酸アリルの水素化反応に不活性な溶媒は水素化反応を受けにくいという点からは、炭素−炭素二重結合を有さない溶媒が好ましい。より具体的には、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソプロピル等の飽和エステル類、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル等のエーテル類;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール等のアルコール類;N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド等のアミド類を挙げることができる。これらの中でも、水素化反応を受けにくくかつ、酢酸アリルの水素化分解反応を起こしにくいという点からは、飽和エステル類、炭化水素類、ケトン類が好適に使用可能である。中でも本反応の生成物である酢酸n−プロピルを不活性溶媒として用いると溶媒の分離、回収が不要であり、リサイクルの面でも好ましい。
【0021】
本発明の酢酸アリル水素化反応における反応温度は、0℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは30℃〜150℃である。反応が0℃未満では十分な反応速度が得られにくくなる傾向がある。また、200℃を超えると水素化分解反応が進行しやすくなる傾向がある。
【0022】
本発明の水素化反応の反応圧力は、0MPaG〜10MPaGの範囲であることが好ましく、更に好ましくは、0MPaG〜5MPaGの範囲である。反応圧力が0MPaG未満では、水素化反応が十分に促進されない傾向があり、他方、反応圧力が10MPaGを超えると、水素化分解反応が起こり易くなる傾向がある。なお、MPaGの「G」はゲージ圧を意味する。
【0023】
本発明に使用する原料の水素ガス及び酢酸アリルは特に制限されない。原料としては、通常は市販されているもので良く、一般的には高純度のものを用いることが好ましい。
【0024】
供給される水素ガスの量は、酢酸アリルから酢酸n−プロピルを製造するのに必要な水素の理論量以上であることが好ましく、理論量の1.1倍〜3.0倍の範囲であることが更に好ましい。酢酸アリルの供給量は、必要な酢酸n−プロピルの生産量に依存し、特に制限はないが、一般的には、酢酸アリルを含む原料液供給量/触媒使用量の体積比が0.1〜50となるのが好ましい。酢酸アリルを含む減量液供給量/触媒使用量の体積比が50以上の場合、十分な酢酸アリル水素化速度が得られなくなる可能性があり、酢酸アリルを含む原料液供給量/触媒使用量の体積比が0.1未満の場合は、反応に寄与しない触媒を反応器に充填することとなり、触媒コストの面で経済的でない。
【0025】
本発明の酢酸n−プロピル製造方法の反応形態は、気固反応、気液固反応、液固反応のいずれでも可能である。水素化反応器の構造は、固定層型反応装置、移動層型反応装置、攪拌槽型反応装置の使用が可能であり、何ら制限されるものではない。原料供給に要するエネルギー、反応温度上昇による水素化分解反応の増加、触媒と生成物の分離の点から、本発明における反応態様は、固定層型反応装置による気液固反応が最も好ましい。
【0026】
本発明の酢酸アリルの水素化反応を気液固反応にて固定層型反応装置を用いて行う場合、気相と液相を並流で流す方法、液相と気相を向流で流す方法があり、何れの方法も用いることが可能である。向流操作は気相の濃度と吸収液の濃度差が大きくとれるため、気液間の物質移動速度が並流操作に比べて大きく有効な方法であるが、フラッディングがあるため、気液流量に制限がある。並流操作のうち充填気泡塔といわれる上昇並流は、気液接触、固液接触の良い方法であるが、触媒の流動化やそれに伴う触媒の摩耗、流出対策をする必要がある。一方、下降並流操作は、上昇並流と比較して液ホールドアップが少ないため触媒と液の濡れをみた場合、上昇並流に比べて効率が悪いが、触媒の流動化の恐れがなく、流動時に摩耗し易い破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒を用いる本発明で好ましい反応様態である。

【実施例】
【0027】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ制限されるものではない。
【0028】
<水素化触媒A> 破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒Aの製造
工程1:パラジウム元素が19.87質量%となるように調整した塩化パラジウム酸ナトリウム水溶液0.413gを純水で13.0mlにメスアップし、A−1溶液とした。日本エンバイロケミカルズ株式会社製のヤシガラを原料とする破砕状活性炭担体、粒状白鷺G2C、大きさ目開き2.36mm〜4.75mm、50ml、27.3gに、A−1溶液を含浸させて、全量を吸収させた。
工程2:メタケイ酸ナトリウム9水和物7.2gに純水を加えて溶解させ、27.3mlにメスアップし、A−2溶液とした。工程1で得た金属担持担体にA−2溶液を含浸させ、室温で20時間静置した。
工程3:得られたアルカリ処理金属担持担体のスラリーにヒドラジン1水和物6.7gを添加し、緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、パラジウム化合物を還元した。得られた触媒を濾過後、ストップコック付のガラスカラムに移し、40時間純水を流通させて洗浄した。次いで、空気気流下に、110℃で4時間乾燥を行い、水素化触媒Aを得た。

【0029】
<水素化触媒B> 円柱状成形炭にパラジウムを担持した水素化触媒Bの製造
工程1:パラジウム元素が19.87質量%となるように調整した塩化パラジウム酸ナトリウム水溶液0.352gを純水で17.0mlにメスアップし、B−1溶液とした。日本エンバイロケミカルズ株式会社製の円柱状成形炭C2X、大きさ目開き3.35mm〜4.75mm、50ml、23.5gに、B−1溶液を含浸させて、全量を吸収させた。
工程2:メタケイ酸ナトリウム9水和物7.5gに純水を加えて溶解させ、35.8mlにメスアップし、B−2溶液とした。工程1で得た金属担持担体にB−2溶液を含浸させ、室温で20時間静置した。
工程3:得られたアルカリ処理金属担持担体のスラリーにヒドラジン1水和物5.7gを添加し、緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、パラジウム化合物を還元した。得られた触媒を濾過後、ストップコック付のガラスカラムに移し、40時間純水を流通させて洗浄した。次いで、空気気流下に、110℃で4時間乾燥を行い、水素化触媒Bを得た。

【0030】
<水素化触媒C> 球状シリカ担体にパラジウムを担持した水素化触媒Cの製造
工程1:パラジウム元素が19.87質量%となるように調整した塩化パラジウム酸ナトリウム水溶液0.340gを純水で18.7mlにメスアップし、C−1溶液とした。シリカ球状担体、球体直径5mm、上海海源化工科技有限公司製HSV−D、50ml、22.5gに、C−1溶液を含浸させて、全量を吸収させた。
工程2:メタケイ酸ナトリウム9水和物7.2gに純水を加えて溶解させ、39.4mlにメスアップし、C−2溶液とした。工程1で得た金属担持担体にC−2溶液を含浸させ、室温で20時間静置した。
工程3:得られたアルカリ処理金属担持担体のスラリーにヒドラジン1水和物5.5gを添加し、緩やかに攪拌した後、室温で4時間静置し、パラジウム化合物を還元した。得られた触媒を濾過後、ストップコック付のガラスカラムに移し、40時間純水を流通させて洗浄した。次いで、空気気流下に、110℃で4時間乾燥を行い、水素化触媒Cを得た。

【0031】
(実施例1)
内径25mmのSUS316L製円筒型反応器に、破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒Aを35ml充填した。反応器内を水素ガスで置換した後、水素雰囲気下で0.8MPaGまで昇圧した。つぎに水素ガスを2.1L/hr、酢酸アリル5.0質量%、酢酸n−プロピル95.0質量%の原料液を156ml/hrの速度及び40℃で反応器に下降並流操作で供給し、酢酸アリルの水素化反応を行った。
【0032】
反応器下部の出口から流出した反応液を冷却捕集し、捕集した液をガスクロマトグラフィーを用いて分析した。捕集した液の分析は、キャピラリーカラムCP−WAXを取り付けたアジレント社製ガスクロマトグラフィー装置7890Aを用い、内部標準法で行った。酢酸アリルの水素化反応の反応成績を表す酢酸アリルの転化率、酢酸n−プロピルの選択率は次の計算式により求めた。

酢酸アリルの転化率(%)=反応で消費された酢酸アリルのモル数/反応器に供給した酢酸アリルのモル数 × 100

酢酸n−プロピルの選択率(酢酸アリル基準)(%)=反応で生成した酢酸n−プロピルのモル数/反応で消費された酢酸アリルのモル数 × 100

【0033】
(実施例2)
実施例1で使用した水素化触媒Aに代えて、破砕状活性炭を触媒担体とするNEケムキャット社製 0.3%Pdカーボン粒触媒、大きさ目開きで2.36mm〜4.75mm、35mlを用いた以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの水素化反応を行った。
【0034】
(比較例1)
実施例1で使用した水素化触媒Aに代えて、円柱状成形炭にパラジウムを担持した水素化触媒B、35mlを用いた以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの水素化反応を行った。
【0035】
(比較例2)
実施例1で使用した触媒Aに代えて、球状シリカ担体にパラジウムを担持した水素化触媒C、35mlを用いた以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの水素化反応を行った。
【0036】
(比較例3)
実施例1で使用した触媒Aに代えて、円柱状アルミナを触媒担体とするNEケムキャット社製0.3%Pd・アルミナ触媒、大きさ直径3.0mm、高さ3.0mm、35mlを用いた以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの水素化反応を行った。
【0037】
(比較例4)
実施例1で使用した触媒Aに代えて、円柱状成形炭を触媒担体とするNEケムキャット社製0.3%カーボンペレット触媒、大きさ目開きで3.35mm〜4.75mm、35mlを用いた以外は、実施例1と同様の方法で酢酸アリルの水素化反応を行った。

【0038】
表1に各実施例、比較例の結果を示す。破砕状活性炭を担体とした水素化触媒のほうが酢酸アリルの転化率が高くなっていることがわかる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒の存在下、酢酸アリルの水素化反応を行うことを特徴とする酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項2】
破砕状活性炭が試験用ふるいの目開きで、500μm〜5.60mmの粒度を有することを特徴とする請求項1に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項3】
破砕状活性炭が試験用ふるいの目開きで、1.0mm〜5.60mm粒度を有することを特徴とする請求項1に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項4】
破砕状活性炭が試験用ふるいの目開きで、2.0mm〜5.60mm粒度を有することを特徴とする請求項1に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項5】
破砕状活性炭がヤシガラ活性炭を破砕して得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項6】
破砕状活性炭にパラジウムを担持した水素化触媒の存在下、酢酸アリルの水素化反応が気液固反応であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項7】
前記の気液固反応が下降並流操作で行われることを特徴とする請求項6に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
【請求項8】
気液固反応の反応器に供給される反応液中の酢酸アリルの濃度が0.1質量%〜10.0質量%であることを特徴とする請求項6または7に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。

【公開番号】特開2011−136937(P2011−136937A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297452(P2009−297452)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】