説明

酪農調合物及びその製法

本発明は、乳から成分を分離する方法に関する。本発明は、分離された成分から調製される調合物にも関する。本発明は、乳から分離された成分1種以上を、一人前の分量当たり、特定のパーセンテージ範囲で含むように設計されている、栄養乳調合物及び製品に関する。本発明の調合物は、場合により、必須ではないが、栄養的に機能する成分を含んでよい。本発明の完全栄養乳調合物は、ノンフレーバー乳、フレーバー乳、アイスクリーム、ヨーグルト、及び乳粉末として提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2002年8月27日提出の出願No.10/229462の一部継続出願である。
【0002】
発明分野
本発明は、乳から成分を分離する方法、乳を個々の成分に分離する装置及びこの分離された成分から調製される調合物に関する。
【背景技術】
【0003】
栄養分は、健康、厚生、及び多数の慢性疾患予防の要の1つである。栄養製品は、こうした分野において重要な役割を果たしており、かつ容易く入手でき、手軽な栄養製品を一般の人々に提供する試みに、近年、特に焦点があてられてきている。健康維持のために、人間栄養に不可欠な必須栄養素が摂取されねばならない。必須栄養素には、主要栄養素、例えば、脂肪、炭水化物及び蛋白質、並びに微量栄養素、例えばビタミン及びミネラル(微量元素及び電解質を含む)、の両方が含まれる。
【0004】
乳製品は、人間の食事及びカロリー消費全体のかなりの部分を占める。乳製品は、そういうものとして、人々の健康を維持する上で重要な役割を果たしている。栄養的に最適な乳製品は、人々の栄養及び健康にプラスの効果を与えよう。いずれの乳製品中の主要栄養素の濃度も、製品の性質及び製造者により開発された好ましい特性に影響されることが多い。
【0005】
例えば、牛乳は、水約87wt%、蛋白質約約3wt%、ホエー(可溶性蛋白質)約0.65wt%、ラクトース約4.5〜5.0wt%、乳脂肪3〜4wt%、無機塩0.3〜0.7wt%を含有し、更に、多様な水溶性及び脂溶性のビタミン、乳酸及びクエン酸、尿素、遊離アミノ酸及びポリペプチドを含有する。これらの成分1種以上を乳から分離し、次いで場合によっては多様な組み合わせで結合させて、種々のブレンド調合物を製造できる。例えば、カッテージチーズ又はカゼインの製造において、乳脂肪は、最初に(クリームとして)遠心分離され、次いで乳のカゼインフラクションが酸の添加によりその等電点で沈殿する。原乳の残分は、前に列記した他の成分を全て含有し、ホエー又は乳精と呼ばれる。即ちカゼイン及び乳脂肪の大半が除去された乳は、ホエー又は乳精と称される。
【0006】
次に、ホエー(即ち乳精)を濾過して、残留物及び透過物を得ることができる。これらは、飲料又は乾燥食品のような食品に混入させることができる。例えば生乳は濾過されて、食用の飲料又は酪農製品に混入できる実質的に純粋な酪農水(dairy water)を生じ、この酪農水は、実質的に純粋で元の生乳中に存在する主要な栄養成分を含まない。
【0007】
乳をその個々の成分に分離することにより、乳中に存在する栄養的メリットを活用し、かつこれら個々の成分を食品中に使用することにより、食用に適する酪農調合物(dairy composition)を製造することは望ましい。更に、酪農産業には、人間集団の各群、例えばスポーツマン、授乳中の婦人、高齢者、子供、ラクトース不耐症集団及び糖尿病患者の栄養的な要件を満たし得る酪農調合物を企画する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、連続ステップからなる乳成分の分離方法を提供し、これには、膜に基づく分離プロセス、クロマトグラフィー及び密度に基づく分離プロセスがある。
【0009】
本発明は、分画された乳成分から酪農調合物を製造する方法も提供する。
【0010】
本発明は、更に、本発明方法により誘導された分画乳成分から調製される酪農調合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明により乳成分を分離し、分離したフラクションを引き続き混合し、生成物を加工する第一の方法を示す。
【図2】本発明により乳成分を分離し、分離したフラクションを引き続き混合し、生成物を加工する第二の方法を示す。
【図3】本発明により乳成分を分離し、分離したフラクションを引き続き混合し、生成物を加工する第三の方法を示す。
【0012】
本発明は、種々の変更及び代替形態を受け入れる余地がある一方、具体的な実施形態が、図中の例により示され、詳細に本明細書中に記載される。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態に限定される意図はないと理解すべきである。むしろ、本発明は、添付クレームにより記載された本発明の精神及び範囲の中にある全ての変更、等価物及び代替物を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、乳の特定成分を含むように設計された栄養乳調合物及び乳製品にかかわる。本発明の調合物は、場合によっては、必須ではないが、栄養的に機能する成分を含んでもよい。本明細書中に使用される用語「乳の成分」又は「乳成分」は、乳の個々の成分を示すことを意図しており、例えば、バター脂肪、乳蛋白質、非蛋白態窒素、ラクトース及びミネラルを示すが、これらに限定はされない。本明細書中で表わされるパーセンテージは、特に指示がない限り、全て重量パーセンテージ(wt%)である。
【0014】
本明細書中に使用される用語「酪農製品」又は「酪農調合物」は、1種以上の乳成分を含む製品又は調合物を示す。
【0015】
本発明の完全栄養乳調合物は、ノンフレーバー乳、フレーバー乳、アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ、特殊粉乳又は乳もしくは乳成分から調製できるその他の栄養製品として提供することができる。
【0016】
本明細書中で使用される用語「乳」は、脂肪不含乳、低脂肪乳、高脂肪乳(full fat milk)、ラクトース不含乳(ラクターゼ酵素によりラクトースをグルコースとガラクトースに加水分解して製造するか、又はナノ濾過、電気透析、イオン交換クロマトグラフィー及び遠心分離法などの他の方法により製造する)、濃縮乳又は粉乳を含む。脂肪不含乳は、無脂肪乳又は脱脂乳製品である。低脂肪乳は、一般に、脂肪約1%〜約2%を含有する乳として定義される。高脂肪乳は、脂肪約3.25%を含有することが多い。本明細書中で使用される用語「乳」は、動物及び植物源からの乳を包含することも意図する。乳の動物源は、ヒト、牛、羊、山羊、水牛、ラクダ、ラマ、雌ロバ及び鹿を含むが、これらに限定はされない。乳の植物源は、大豆から抽出された乳を含むが、これに限定はされない。更に、用語「乳」は、全乳を示すだけでなく、脱脂乳又はこれらから誘導される何れの液体成分も示す。「ホエー」又は「乳精」は、乳中に含まれる乳脂肪及びカゼインの全て又は大部分が除去された後に残る乳成分を意味する。
【0017】
本発明の実施形態は、全乳から出発して、乳成分を分離する方法を提供する。膜濾過系に入る前に、場合により、全乳を、機械的分離器に通して、乳残分とクリームに分離するか又は、精密濾過(MF)ユニットに通して、脂肪を除去することができる。分離クリームは、将来の使用のために貯蔵する。本発明の特定の実施形態では、クリームを予め分離せず、全乳を直接に膜系に通過させる。
【0018】
図1によれば、脱脂乳は、限外濾過(UF)膜ユニットを通過させ、UF透過成分とUF残留成分を生じる。特定の実施形態では、約45から約150psiに及ぶ圧力で、約8〜10kDaの分画分子量(molecular weight cut−off)を有する膜濾過系を使用して、限外濾過ステップを実施する。図1に示された本発明の実施形態では、UF透過物は、ナノ濾過(NF)膜ユニットを通過させ、NF透過物及びNF残留物を生じる。本発明の特定の態様では、ナノ濾過ステップは、約150から約600psiに及ぶ圧力で、約500〜1000Daの分画分子量を有する膜濾過系を使用して実施する。NF透過物及びNF残留物は、将来の使用のために貯蔵することができる。
【0019】
本発明の特定の実施形態では、精密濾過(MF)ステップを、限外濾過ステップの代わりに用いるか又は限外濾過ステップの前に挿入する。精密濾過ステップは、15から約21psiに及ぶ圧力で、10kDa〜200kDaの範囲の分画分子量を有する膜濾過系を使用して実施する。
【0020】
精密濾過ステップを、限外濾過ステップの前に挿入する場合には、精密濾過ステップからの透過物(MF透過物)に約45から約150psiに及ぶ圧力で、約10kDaの分画分子量を有する膜濾過系を使用する限外濾過ステップを施す。
【0021】
図2に示された本発明の実施形態では、全乳は、脱脂乳とクリームに分離し、脱脂乳に、前に検討したUFステップとNFステップを施す。NFステップの後、NF透過物は逆浸透系を通過させ、RO残留物及びRO透過物を生じる。ROステップは、約450から約1500psiに及ぶ圧力で、約100Daの分画分子量を有する膜濾過系を使用する。RO透過物及びRO残留物は、将来の使用のために貯蔵する。
【0022】
本発明の特定の実施形態では、ラクトースを更に除去するために、RO透過物又は水及び/又はNF透過物を注入して、透析濾過を、限外濾過に連結させてよい。図3に示されるように、UF残留物は、水及び/又はRO透過物と混合し、透析濾過(DF)膜ユニットを通過させて、DF透過物とDF残留物を生じる。透析濾過ステップは、ラクトースを更に除去するのに役立ち、約45から約150psiに及ぶ圧力で、約10kDaの分画分子量を有する膜濾過系を使用する。DF透過物及びDF残留物は、将来の使用のために貯蔵する。特定の実施形態では、追加の透析濾過ステップをDF透過物に直接に施すか、又はNF透過物もしくはRO透過物の添加後に施す。
【0023】
本発明の実施形態は、最初に乳から個々の乳成分を分離した後、引き続いて、分離成分を所望の組み合わせ及び割合で混合することにより、酪農調合物を調製する方法を提供する。
【0024】
本発明の態様は、様々な範囲の脂肪、蛋白質、ラクトース及びミネラルを有する酪農調合物を提供する。言い換えれば、本発明の対象は、種々の乳成分から誘導され、脂肪、蛋白質、ラクトース及びミネラルを様々な範囲で有する調合物を提供することである。
【0025】
本発明の調合物は、特許請求の範囲に記載された発明の方法で乳から分離された種々の成分を組み合わせることにより得られるように処方される。
【0026】
本発明の1実施形態では、1種以上の乳成分を組み合わせて本発明調合物を生成する。以下に記載の調合物を含む本発明の幾つかの実施形態があるが、本発明は、これらに限定はされない。
【0027】
本発明の実施形態により、クリーム、脱脂乳、UF透過物、UF残留物、DF透過物、DF残留物、NF残留物、NF透過物、MF透過物、MF残留物、RO透過物及びRO残留物からなる群から選択される乳成分1種以上から調製される調合物が提供される。本発明の方法により生じた各フラクションの所定量を変化させて組み合わせ、例えばラクトース、脂肪、蛋白質及びミネラルなどの乳成分を所望の範囲で含む調合物を得ることができる。
【0028】
本発明の典型的実施形態では、図1に示されるように、NF残留、DF残留及びNF透過フラクションは一緒にして、146°F(63.3℃)で30分間(又はその他の等価の、時間と温度の組み合わせ)熱処理し、その後、調合物を42°F(5.6℃)以下まで冷却する。冷却プロセス後に、調合物は、ラクターゼ酵素を用いて、42°F〜45°F(5.6℃〜7.2℃)で6〜10時間処理する。酵素処理フラクションは、40°F(4.4℃)未満まで冷却して貯蔵し、包装及び出荷する。本発明の特定の実施形態では、調合物は、全乳から分離されたクリームフラクションを、場合により含む。
【0029】
本発明のもう1つの実施例形態では、図2に示されるように、NF透過、UF残留及びRO残留フラクションは一緒にして、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、その後、調合物を42°F(5.6℃)以下まで冷却する。冷却プロセス後に、調合物は、42°F〜45°F(5.6℃〜7.2℃)で6〜10時間、ラクターゼ酵素で処理する。酵素処理フラクションは、40°F(4.4℃)未満まで冷却し、貯蔵及び出荷する。本発明の特定の実施形態では、調合物は、全乳から分離されたクリームフラクションを、場合により含む。
【0030】
ラクトース加水分解完了後に、ラクトース不含乳を、低温殺菌、超高温殺菌又は滅菌し、その後、小売り用容器に詰める。ラクトース不含乳に精密濾過を施して、バクテリア、胞子及びラクターゼ酵素を除去した後、低温殺菌する。これらのプロセスが、得られた生成物の保存期限を確実に延長させるであろう。
【0031】
低脂肪又は高脂肪のラクトース不含乳を製造するために、ラクトース加水分解済みクリームを、単独に200〜212°F(93.3℃〜100℃)で1分加熱し、これを、バクテリア及びラクターゼ酵素を精密濾過により除去したラクトース不含脱脂乳に添加する。熱処理したクリームと精密濾過したラクトース不含脱脂乳とを混合して、所望の調合物が得られる。次いで、これを212°F(100℃)で30秒低温殺菌した後、小売り用容器に詰める。
【0032】
本発明の別の実施形態では、図3に示されるように、DF残留、NF残留及びRO残留フラクションは一緒にして、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、その後、調合物を42°F(5.6℃)以下まで冷却する。冷却プロセス後に、調合物は、ラクターゼ酵素を用いて、42°F〜45°F(5.6℃〜7.2℃)で6〜10時間処理する。酵素処理フラクションは、40°F(4.4℃)未満まで冷却し、貯蔵し、出荷する。本発明の特定の実施形態では、調合物は、全乳から分離されたクリームフラクションを、場合により含む。
【0033】
本発明の更にもう1つの実施形態では、図2に示されるように、UF残留及びRO残留フラクションは一緒にして、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、その後、調合物を42°F(5.6℃)以下まで冷却する。冷却プロセス後に、調合物は、ラクターゼ酵素を用いて、42°F〜100°F(5.6℃〜37.8℃)で1〜8時間処理する。酵素処理フラクションは、42°F(5.6℃)以下まで冷却し、貯蔵及び出荷する。本発明の特定の実施形態では、調合物は、全乳から分離されたクリームフラクションを、場合により含む。
【0034】
本発明の1実施形態において、1種以上の乳成分を含む低ラクトース調合物が提供され、但し、前記調合物中のラクトース濃度は、非酵素的方法、例えば分離プロセス、により低減されている。本発明の1実施形態では、本発明の低ラクトース調合物は、膜濾過プロセスを使用して調製される。本発明の1実施形態では、本発明の低ラクトース調合物は、ラクトース約1wt%〜約3wt%を含む。本発明の1実施形態では、本発明の低ラクトース調合物は、2wt%未満のラクトースを含む。本明細書中に使用される用語「低ラクトース調合物」は、ラクトース約1wt%〜約3wt%、更に好ましくはラクトース2wt%未満を含む調合物を示すことを意図する。本明細書中に使用される用語「低ラクトース調合物」及び「低炭水化物調合物」は、相互に同意語である。
【0035】
本発明の調合物は、乳成分を濃縮調合物又は形態で提供するために、様々な方法で濃縮でき、前記方法には、蒸発及び逆浸透のような膜プロセスがあるが、これらに限定はされない。言い換えると、本発明の調合物は、バター脂肪、脱脂乳、MF透過物、MF残留物、UF透過物、UF残留物、DF透過物、DF残留物、NF残留物、NF透過物、RO透過物及びRO残留物からなる群から選択される乳成分1種以上から調製され、本発明の特定の実施形態では、調合物は、蒸発を含む当技術で公知の方法(これに限定はされない)により、濃縮されて、調合物の乳成分を一層濃縮された形態で提供する。
【0036】
本発明の特定の実施形態により、バター脂肪約0.05wt%〜約5.5wt%、蛋白質約3wt%〜約10wt%、ラクトース1wt%未満、及びミネラル約0.65wt%〜約2wt%を含む乳成分から得られる酪農調合物が提供される。本発明の1実施形態により、更に、バター脂肪約0.05wt%〜約5.5wt%、蛋白質約3wt%〜約10wt%、ラクトース約1wt%未満〜約10wt%未満、及びミネラル約0.65wt%〜約2wt%を含む乳成分から得られる酪農調合物が提供される。
【0037】
本発明の調合物は、様々なタイプの酪農製品に処方することができる。例えば、酪農製品は、ノンフレーバー乳又はフレーバー乳であってよい。更に、酪農製品は、酪農ドリンク、酪農飲料又は酪農カクテルであってよい。そのようなドリンク、飲料又はカクテルは、希釈された形態で調合物を含有する製品である。そのような希釈形態は、調合物と組み合せる希釈剤としてフルーツジュース又は炭酸ソーダ(非限定例として)を含んでよい。
【0038】
調合物は、また凍らせて、アイスクリーム又は他のフローズンデザートを生じることができる。アイスクリームは、乳脂肪約10wt%を含有する標準アイスクリーム、乳脂肪約15wt%を含有する高級アイスクリーム、及び乳脂肪約17wt%を含有する超高級アイスクリームに処方することができる。他の乳脂肪レベルの調合物も考慮の対象となる。更に、非酪農性脂肪も考慮の対象となる。その上、他のフローズンデザート、例えばシャーベット、サンデー、又は部分的フローズンデザート、例えばミルクセーキ、を、調合物から適切に製造することができる。
【0039】
本発明の1実施形態は、全乳にラクトース低減ステップを施した後、低ラクトース又はラクトース不含材料を逆浸透により濃縮することにより、冷凍菓子製品、例えばアイスクリーム、を製造する方法を提供する。本発明の特定の実施形態では、ラクトースは、ラクターゼ酵素を使用して、加水分解することにより除去する。
【0040】
RO濃縮材料は、アイスクリームミックスの主成分として使用され、このミックスは、砂糖、蛋白質、脂肪、無脂乳固形分(MSNF)及び全固形分などの種々の成分の濃度を変えるように操作できる。RO濃縮ラクトース加水分解全乳から製造されて、得られたアイスクリームは、砂糖、安定剤又は乳化剤の外部源を何ら必要としない。
【0041】
本発明の実施形態では、(前記のような)アイスクリームミックスは、蛋白質約8%、脂肪6%及びスクロース10%を含有するように処方された。蛋白質の減少は、ポリデキストラン及びコーンシロップ固体を添加することにより補填した。アイスクリームミックスを11分間凍らせて、ソフトアイスクリーム製品が得られた。
【0042】
更に、調合物は、ヨーグルトに処方することができる。本発明の調合物を、乳酸生産バクテリア、即ちラクトバチルスブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)及びストレプトコッカスサーモフィラス(Streptococcus thermophilus)のような培養バクテリアで培養することにより、ヨーグルトが製造される。本発明の調合物を使用して調製されるヨーグルトは、最終的小売り用容器中で発酵が起こる固形ヨーグルト又は包装前に発酵が塊状で起こる撹拌型ヨーグルトであってよい。更に、これらのヨーグルトは、フレーバー又は果物を含有でき、冷凍してフローズンヨーグルトを提供でき、又は飲用液体の形状にしてドリンクヨーグルトを提供することができる。
【0043】
ラクトース富裕フラクションである、ナノ濾過残留フラクションを発酵させることができ、この発酵させたフラクションを使用して、ヨーグルト又はヨーグルトドリンク調合物を調製することができる。全乳ではなく、むしろNF残留フラクションに対し発酵プロセスを遂行するのには多数の利点がある。即ち、NF残留物の発酵に必要な培養と時間が全乳に対し少ないこと、NF残留フラクションから発酵バクテリアをより容易に分離できること及び将来、必要に応じて使用するために発酵残留物を貯蔵できることである。
【0044】
NFフラクションの発酵は、乳酸生産バクテリア、例えばラクトバチルスブルガリカス及びストレプトコッカスサーモフィラス、の添加により実施する。バクテリアは、将来使用するために、限外濾過又は精密濾過により、発酵NF残留物から除去できる。バクテリア不含発酵NF残留物は、ヨーグルトドリンクを製造するのに使用する。
【0045】
本発明の1実施形態では、5未満のpHで、透析濾過残留フラクションは、クリーム、逆浸透残留フラクション及び発酵NF残留フラクションと一緒にする。混合物を容器内に入れ、しっかりと凝塊が形成されるまで、107.6°F(42℃)でインキュベートする。
【0046】
本発明の調合物は、場合により、蛋白質源、ミネラル、炭水化物源、又は混合物を加えて栄養価を高めることができる。栄養化源の例は、カルシウム源、ビタミンD源及び蛋白質源である。蛋白質源は、乳蛋白質、ホエー蛋白質、カゼイネート、大豆蛋白質、卵白、ゼラチン、コラーゲン及びこれらの組合せを含む種々の材料から選択してよいが、これらに限定はされない。
【0047】
蛋白質源には、ラクトース不含脱脂乳、乳蛋白質単離物及びホエー蛋白質単離物がある。本発明調合物と共に豆乳又は他の植物由来蛋白質源を使用することも考慮の対象である。本明細書中に使用される「豆乳」又は「大豆からの乳」は、脱皮大豆をすりつぶし、水と混合し、加熱調理し、大豆から溶解した豆乳を回収することにより製造された液体を示す。このような豆乳は、畜乳(酪農乳)と類似の味、質感及び外観を有するが、本質的に畜乳(酪農乳)を含まない乳様製品に加工できる。更に、本明細書中で使用されるように、畜乳製の酪農製品と類似の味、質感及び外観を有するが、畜乳を含まない製品を示す酪農製品様製品は、そのような乳様製品から製造できる。本発明で有用な炭水化物源は、多種多様な材料、例えばスクロース、コーンシロップ固体、グルコース、フルクトース、マルトデキストリン及びこれらの組合せから選択することができる。
【0048】
人工甘味料、例えばサッカリン、アスパルテーム、アセスルファム(asulfame)K、スクラロース及びこれらの組み合せを、別のものと同様、調合物の感知可能な甘味の品質を増大させるために含むことができる。様々な繊維源も、本発明の調合物中に含まれていてよい。このような源は、オート麦繊維、大豆繊維、グアーガム、ペクチン、大豆多糖類、アラビアゴム、加水分解された繊維等の材料から選択することができる。セルロース、ヘミセルロース、親水コロイド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等々が考慮される。フラクトオリゴ糖も有用である。
【0049】
本発明の調合物は、種々の異なる製品形態に処方することができる。例えば、その形態として、高蛋白質及び繊維含有の、脂肪不含(脱脂)乳、1wt%低脂肪乳、2wt%低脂肪乳、高脂肪(3.4wt%)乳、脱脂+無脂乳固形分及びラクトース不含脱脂乳を挙げることができるが、これらに限定はされない。更に、脂肪不含(無脂肪又は脱脂)乳を使用する場合、乳の一部を蒸発させるか、又は無脂乳固形分を添加して、濃くクリーミーな味の製品を生じることができる。調合物は、天然又は人工の成分により風味づけることができる。そのような成分は、調合物と組み合せて、実質的に均一に風味づけされた製品を形成するか、又はヨーグルト調合物の底部に入れられた果物のように、不均一な形で存在させてよい。風味づけされた調合物の非限定例は、チョコレート、苺、桃、ラズベリー、バニラ、バナナ、コーヒー、モカ及びこれらの組合せを含む。
【0050】
本発明の特定の実施形態に使用される、ラクトース濃度を下げる他の非酵素的方法は、電気透析、イオン交換プロセス及び遠心分離である。電気透析プロセスは、膜への電流の印加を含み、そうしてイオン特異性膜を使用して、ラクトースを他の酪農成分から分離させる。同様にして、イオン交換プロセスは、ラクトース生来の比電荷を利用して、この成分を他の酪農成分から分離する。
【0051】
本発明の1実施形態では、電気透析、イオン交換又は遠心分離のプロセスは、ナノ濾過ステップの代わりに使用でき、ラクトースの除去に役立つ。
【0052】
電気透析は、電圧勾配の影響下に、1つの溶液から他の溶液へとイオン透過膜を通ってイオンが輸送される電気膜プロセスである。イオン上の電荷により、イオンが、イオン交換ポリマー製膜を通過させられる。2つの端部電極間に電圧を印加すると、このために要するポテンシャル場が生じる。電気透析に使用される膜はプラス又はマイナスの電荷を有するイオンを選択的に輸送し、反対の電荷のイオンを拒絶する能力を有するので、電解質の有用な濃度、除去又は分離を、電気透析により成し遂げることができる。
【0053】
イオン交換は、可逆化学反応であり、溶液からのイオン(電子を失うか又は獲得して電荷を得た原子又は分子)が、不動の固体粒子に結合する同様の荷電イオンと交換される。これらの固体イオン交換粒子は、天然起源無機ゼオライト又は合成有機樹脂である。
【0054】
脱脂乳の限外濾過の間に得られた脱脂乳透過物は、主に、ラクトース、水及びミネラルを含有する。15℃で、乳ミネラル密度2500kgm−3に対し、ラクトースの密度は、1670kgm−3であり、その差1830kgm−3は、乳と乳SNFとの密度差(690kgm−3)よりはるかに高い。ミネラルは、遠心力(5000gより大)によりUF透過物から分離することができる。ラクトース及び水は上澄みを形成し、他方ミネラルはペレットを形成する。ペレットは、脱脂乳の濃縮UF透過物に再導入して、低ラクトース乳調合物中にミネラルを再導入することができる。ラクトース−水上澄みは、逆浸透により濃縮される。このプロセスで得られた透過物は、脱脂乳のUF透過物と混合し、次いで、透析濾過を施す。又は、ラクトース−水上澄みから得られるRO透過物を使用して、脱脂乳のミネラルが添加されたUF透過物とブレンドして所望の調合物にする。
【0055】
本発明の1実施形態では、ナノ濾過ステップの代わりに遠心ステップを使用して、ラクトースを脱脂乳のUF透過物から分離する。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、本発明のプロセスステップを1方向性方法で実施する。本発明の1実施形態は、乳又は分離された成分の流れが、所定の膜濾過系をただ1度のみ通過する、シングルパス(single pass)システムを提供する。本発明の他の実施形態は、特別の膜濾過ステップから得られる透過フラクションの全部又は一部が、フラクションが得られた膜ユニットを通過するのを容認するマルチパス(multi−pass)システムを提供する。シングルパスシステムに対して、マルチパスシステムは、フラクションの1回以上の追加の通過を含むことができる。
【0057】
本発明の1実施形態では、マルチパスシステムは、前に分画させた成分、例えば残留フラクション、を、フラクションが得られた膜ユニットに通過させることを含む。そのようなマルチパスシステムの目的は、種々のフラクションから栄養分の有効回収を促進することである。注目すべきことには、請求の範囲に記載されている発明のマルチパスシステムでは、成分分離プロセスの間、フラクションの相互混合を許さない。マルチパスシステムでは、特別の膜ユニットから得られたフラクションが、それらがもともと派生した同一の膜ユニットを通過する。
【0058】
本発明の方法により生じたフラクションのラクターゼ処理の間、ラクトースの加水分解により、ガラクトースとグルコースが生じる。そのため、酪農調合物のラクターゼによる処理は、調合物中のラクトース量を減じ、調合物の甘味を増すことができる。酪農製品について甘味を測定するために客観的基準が考案され、そうして、種々の糖に、基準としてスクロースを使用する甘味の客観値を定めた。例えばスクロース(テーブル・シュガー)は、100等級(rating)と評価され、他の甘味剤全ては多いか(フルクトース=110〜180、アスパルテーム=18000)又は少ない(マルトース=40、ラクトース=20、ガラクトース=35、グルコース=75)と評価される。乳(乳は、ラクトース約4.7%を有する)中のラクトースの30%の加水分解は、スクロース0.3%(w/v)に相当する量で、加水分解された組成物の甘味を増加させる結果を生じる(Mahoney,P.R.,1992,Advanced Dairy Chemistry,Vol.3,p.108)。同様に、乳ラクトースの60%、90%及び100%の加水分解は、それぞれ、スクロース0.6%(w/v)、0.9%(w/v)及び1%(w/v)に相当する量で、加水分解された組成物の甘味を増加させる結果を生じる。
【0059】
様々な非栄養成分が、調合物中に含まれていてもよい。例えば、増量剤、着色剤、フレーバー、乳化剤、脂肪源(例えば植物油)等が、有用である。他の栄養的価値は高いが、必須ではない成分も添加でき、この成分にはコリン、タウリン、L−カルニチン等がある。これらの非栄養成分と非必須成分の組み合わせも考慮される。
【0060】
様々な栄養補助食品及びファイトケミカルズをこれらの所望の機能を得るために調合物に導入することができる。更に、調合物を、他の酪農製品、例えば限定はしないが、チーズ、クリーム、カスタード等、の中に使用できることが考慮される。
【0061】
調合物を、消費及び販売のために、屋根型カートン、プラスチック容器、ガラス容器、紙容器、厚紙容器又は金属容器を含むアセンブリに詰めることができる。
【実施例】
【0062】
例1
本発明の1実施形態で、生乳の成分を以下のようにして分離した。乳分離器(CMRP618−HGV,Alfa Laval)を使用して、乳のコールドボウル機械的分離(cold bowl mechanical separation)を45°F(7.2℃)以下の温度で実施し、遠心力によりクリームと脱脂乳に分離した。本発明のプロセスは、42°F(5.6℃)以下の温度で実施するのが好ましい。所要の温度にプロセス温度を保持するために、膜濾過系と組み合わせて、誘導弁を使用することができる。これらの誘導弁は、生成物温度が所望の最大値を超えると、温度が、45°F(7.2℃)を超えるならば、生成物を供給タンクに戻すように設計されている。結果として、生成物は、生成物温度が45°F(7.2℃)以下になるまで、前方に流れない。
【0063】
クリームは、150°F(65.6℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、冷所(36°F(2.2℃))に移した。クリームの分離後に、脱脂乳を最初に限外濾過系に通した。限外濾過系は、分子排除範囲(molecular exclusion range)約5000〜10000ダルトンの膜フィルターを使用した。UF膜フィルター(PTI)は、ポリスルホン/ポリプロピレン支持体及び最大圧負荷150psiを有した。脱脂乳をマルチパス限外濾過により3倍濃縮し、限外濾過残留物(UF残留物)と限外濾過透過物(UF透過物)を生じた。限外濾過ユニットのバランスタンクのジャケットに冷水を循環させることにより、濃縮物の温度を、45°F(7.2℃)以下に保持した。
【0064】
UF透過物は、ナノ濾過系により3〜4倍濃縮し、ラクトース富裕ナノ濾過残留物(NF残留物)及び低ラクトースナノ濾過透過物(NF透過物)を生じた。ナノ濾過系は、分子排除範囲約100〜1000ダルトン及び最大圧負荷600psiの膜フィルター(Koch)を使用した。
【0065】
NF残留物は、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、冷所(36°F(2.2℃))に移した。NF透過物は、分子排除範囲約100〜180ダルトンの膜フィルターを使用する逆浸透系を用いて、2〜3倍濃縮した。RO膜フィルター(Osmonics)は、複合ポリエステル材料薄膜から製造され、最大圧負荷550psiを維持することができた。逆浸透残留物(RO残留物)は、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、冷所(36°F(2.2℃))に移した。RO透過物(乳水(milk water)としても知られている)は、後記するように、将来の使用のために取りのけておいた。
【0066】
UF残留物を、42°F(5.6℃)で、水、RO透過物、NF透過物と混合し、混合物を、透析濾過により3倍濃縮し、透析濾過残留物(DF残留物I)と透析濾過透過物(DF透過物I)を生じた。特定の場合には、第二の透析濾過ステップを使用して、UF残留物のラクトース含分を更に減じた。第二の透析濾過ステップでは、DF残留物Iを、42°F(5.6℃)で、水、RO透過物又はNF透過物と混合して、再構成された透析濾過残留物が得られ、これは、引き続き、透析濾過により2倍濃縮し、残留物(DF残留物II)と透過物(DF透過物II)を生じた。2回透析濾過を行ったDF残留物IIは、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、冷所(36°F(2.2℃))に移した。透析濾過系は、分子排除範囲約1000〜10000ダルトンの膜フィルターを使用した。
【0067】
熱処理フラクション全ては、42°F(5.6℃)以下に冷却し、ブレンドされた酪農調合物の調製に使用するために36°F(2.2℃)で貯蔵した。
【0068】
例2
本発明の他の実施形態では、生乳を、機械的分離器により脱脂乳とクリームに分離した。脱脂乳フラクションは、前記のように限外濾過により濃縮して、UF残留物とUF透過物を生じた。UF透過物は、前記のようにナノ濾過により濃縮して、NF透過物とNF残留物を生じた。NF透過物の一部を146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、ブレンドされた酪農調合物の調製に使用するために36°F(2.2℃)で貯蔵した。NF透過物の他の部分は、UF残留物と混合し、透析濾過系により濃縮し、DF残留物とDF透過物を生じた。本発明の特定の態様では、場合により、第二のDFステップを使用して、出発材料、即ちUF残留物、のラクトースを更に減じた。
【0069】
例3
本発明の1実施形態で、生乳を、脱脂乳とクリームに分離した。脱脂乳フラクションは、前記のように限外濾過により濃縮して、UF残留物とUF透過物を生じた。UF透過物は、前記のようにナノ濾過により濃縮して、NF透過物とNF残留物を生じた。NF透過物の一部を146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、ブレンドされた酪農調合物の調製に使用するために36°F(2.2℃)で貯蔵した。NF残留物は、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、冷所(36°F(2.2℃))に移した。NF透過物の他の部分は、逆浸透系を使用して、2〜3倍濃縮した。RO残留物は、146°F(63.3℃)で30分間熱処理し、42°F(5.6℃)以下に冷却し、冷所(36°F)に移した。RO透過物は、将来の使用のために、取りのけておいた。
【0070】
例4
本発明の1実施形態は、例えば、UF/DF残留物(DF残留物I又はDF残留物II)、NF残留物及びNF透過物などの乳成分1種以上を含む、ブレンドされた酪農調合物を提供する。UF/DF残留物は、ブレンドされた調合物の基礎となる主要成分である。この成分は、最終生成物に必要な蛋白質の大部分を含有する。NF残留成分は、主として、最終生成物のラクトース及びミネラルの源であり、最大の風味の担体でもある。RO残留物は、生成物の無脂固形分フラクションを、乳を特定する基準に規格化するのに必要な乳ミネラル/水の主要源である。
【0071】
本発明の特定の態様では、場合により、(生乳から分離された)クリームを調合物に添加することができる。乳成分のブレンド後に、調合物を、146°F(63.3℃)で30分間又は165°Fで16秒間低温殺菌した。低温殺菌後、調合物を約45°F(7.2℃)まで冷却し、酵素ラクターゼで処理した。ラクターゼ処理後に、最終生成物は、一般に、予消毒したプラスチック瓶に詰め、冷所(36°F)に移し、断熱コンテナで出荷されるまで貯蔵した。本発明の代替実施形態では、調合物に、低温殺菌前にラクターゼ処理を施してよい。
【0072】
例5
本発明の更に別の実施形態は、例えば、UF/DF残留物(DF残留物I又はDF残留物II)、NF残留物及びRO残留物などの乳成分1種以上を含む、ブレンドされた酪農調合物を提供する。本発明の特定の態様では、場合により、(生乳から分離された)クリームを調合物に添加することができる。乳成分のブレンド後に、調合物を、146°F(63.3℃)で30分間又は165°Fで16秒間低温殺菌した。低温殺菌後、調合物を約45°F(7.2℃)まで冷却し、酵素ラクターゼで処理した。ラクターゼ処理後に、最終生成物は、一般に、予消毒したプラスチック瓶に詰め、冷所(36°F)に移し、断熱コンテナで出荷されるまで貯蔵した。本発明の代替実施形態では、調合物に、低温殺菌前にラクターゼ処理を施してよい。
【0073】
例6
本発明の1実施形態は、例えば、UF/DF残留物(DF残留物I又はDF残留物II)、RO残留物及びRO透過物などの乳成分1種以上を含む、ブレンドされた酪農調合物を提供する。本発明の特定の態様では、場合により、(生乳から分離された)クリームを調合物に添加することができる。乳成分のブレンド後に、調合物を、146°F(63.3℃)で30分間又は162°Fで16秒間低温殺菌した。低温殺菌後、調合物を約45°F(7.2℃)まで冷却し、酵素ラクターゼで処理した。ラクターゼ処理後に、最終生成物は、ラクトースの全加水分解が達成されるまで、一般に、予消毒したプラスチック又は金属タンク/容器に詰められ、その後、乳の低温殺菌処理を行った。低温殺菌された生成物は、冷所(36°F)に移し、断熱コンテナ又は小売り用包装で出荷されるまで貯蔵した。本発明の代替実施形態では、低温殺菌前に、調合物にラクターゼ処理を施してよい。
【0074】
例7
本発明の別の実施形態は、例えば、UF残留物、RO残留物及びNF透過物などの乳成分1種以上を含む、ブレンドされた酪農調合物を提供する。本発明の特定の態様では、場合により、(生乳から分離された)クリームを調合物に添加することができる。乳成分のブレンド後に、調合物を、146°F(63.3℃)で30分間又は165°Fで16秒間低温殺菌した。低温殺菌後、調合物を約45°F(7.2℃)まで冷却し、酵素ラクターゼで処理した。ラクターゼ処理後に、最終生成物は、一般に、予消毒したプラスチック瓶に詰め、冷所(36°F)に移し、断熱コンテナで出荷されるまで貯蔵した。本発明の代替実施形態では、調合物に、低温殺菌前にラクターゼ処理を施してよい。
【0075】
例8
表1は、特許請求の範囲に記載の発明の方法により得られた乳成分及び生乳に関する組成特性を表わす。表1に記載の数字は、複数回行った実験の結果を表す。
【表1】

【0076】
例9
本発明の方法を使用して生全乳から得られた成分及び生全乳の組成特性を、表2にまとめる。この場合、乳成分の分離の前に、クリームを除去する分離ステップを全乳に施さなかった。
【表2】

【0077】
例10
本発明の方法を使用して脱脂乳から得られた成分及び脱脂乳の組成特性を、表3にまとめる。この場合、乳成分の分離の前に、クリームを除去する分離ステップを全乳に施した。
【表3】

【0078】
例11
表4は、例5に記載のようにして調製した蛋白質ほぼ5%を有するブレンド調合物の組成特性を表わす。UF−DF残留物は、UFステップ及び少なくとも1つのDFステップを通過した乳の残留フラクションを示す。
【表4】

【0079】
例12
表5は、例5に記載のようにして調製した蛋白質ほぼ5.7%を有するブレンド調合物の組成特性を表わす。
【表5】

【0080】
例13
表6は、蛋白質4%、無脂肪(脱脂)、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表6】

【0081】
例14
表7は、蛋白質4%、低脂肪、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表7】

【0082】
例15
表8は、蛋白質4%、高脂肪、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表8】

【0083】
例16
表9は、蛋白質4.5%、無脂肪、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表9】

【0084】
例17
表10は、蛋白質4.5%、低脂肪、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表10】

【0085】
例18
表11は、蛋白質4.5%、高脂肪、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表11】

【0086】
例19
表12は、蛋白質8%、無脂肪、低炭水化物のブレンド調合物の調製に使用される乳成分の量を示す。
【表12】

【0087】
例20
酵素処理の前の最終生成物中の成分範囲は、典型的には蛋白質3.5〜12.0%、ラクトース0.1〜5.0%、ミネラル0.6〜1.1%、カルシウム0.2〜0.8%、及び乳脂肪0(無脂肪)〜4(高脂肪)%である。生成物のラクターゼ処理後に、生成物中のラクトースの量は著しく減じられる。本発明の特定の実施形態では、酵素処理生成物のラクトース量は、0まで減じられる。
【0088】
表13は、本発明の単離乳成分を使用して調製した代表的なDESIGNER(登録商標名)の組成を示す。
【表13】

【0089】
特許請求の範囲に記載された発明の分離成分から調製できる追加の典型的な調合物を、以下に記載する。
【0090】
バター脂肪2.0%、蛋白質6.2%、ミネラル0.75%及びラクトース1.8%からなる酪農調合物であって、再濾過された脱脂乳のUF残留物62%、クリーム4.75%、ラクトース濃縮物4.66%(NF残留物)及びRO残留物29%を組み合わせて調製される。
【0091】
バター脂肪0.2%、蛋白質6.2%、ミネラル0.75%及びラクトース1.8%からなる酪農調合物であって、再濾過された脱脂乳のUF残留物62%、ラクトース濃縮物4.66%(NF残留物)及びRO残留物33.34%を組み合わせて調製される。
【0092】
バター脂肪0.2%、蛋白質6.25%、ミネラル0.75%及びラクトース1.8%からなる酪農調合物であって、再濾過された脱脂乳のUF残留物62%、ラクトース濃縮物4.66%(NF残留物)及び脱脂乳UF透過物から調製されたNF透過物33.34%を組み合わせて調製される。
【0093】
バター脂肪2.0%、蛋白質6.25%、ミネラル0.75%及びラクトース1.8%からなる酪農調合物であって、再濾過された脱脂乳のUF残留物62%、クリーム4.75%、ラクトース濃縮物4.66%(NF残留物)及び脱脂乳UF透過物から調製されたNF透過物29%を組み合わせて調製される。
【0094】
バター脂肪0.2%、蛋白質6.2%、ミネラル0.75%及びラクトース1.6%からなる酪農調合物であって、脱脂乳のUF残留物33.5%(6X濃縮)及び脱脂乳UF透過物からのNF透過物66.5%を組み合わせて調製される。
【0095】
バター脂肪2.0%、蛋白質6.2%、ミネラル0.75%及びラクトース1.6%からなる酪農調合物であって、前記調合物は、脱脂乳のUF残留物33.5%(6X濃縮)、クリーム4.75%及び脱脂乳UF透過物からのNF透過物61.75%を組み合わせて調製される。
【0096】
バター脂肪0.2%、蛋白質6.2%、ミネラル0.75%及びラクトース1.6%からなる酪農調合物であって、前記調合物は、脱脂乳のUF残留物33.5%(6X濃縮)及び脱脂乳UF透過物のナノ濾過透過のRO濃縮物66.5%を組み合わせて調製される。
【0097】
バター脂肪2.0%、蛋白質6.2%、ミネラル0.75%及びラクトース1.6%からなる酪農調合物であって、前記調合物は、脱脂乳のUF残留物33.5%(6X濃縮)、クリーム4.75%及び脱脂乳UF透過物のナノ濾過透過のRO残留物61.75%を組み合わせて調製される。
【0098】
ブレンドされた酪農調合物の甘味を増加させるために、調合物をラクターゼ酵素で処理した。ラクターゼによる処理は、調合物中のラクトースを加水分解して、ガラクトースとグルコースを生じる。加水分解の結果として、処理生成物中にグルコースが存在するため、処理生成物の甘味は、未処理生成物と比較して大きい。例えば、UF残留物(ラクトースほぼ5%を有する)中のラクトース100%の加水分解は、処理生成物にスクロース1.0%(w/v)に匹敵する甘味の増加を生じる。同様に、もともと存在するラクトースの30%、60%及び90%の加水分解は、それぞれ、スクロース0.3%(w/v)、0.6%(w/v)及び0.9%(w/v)の添加に相当する。Adbanced Dairy Chemistry,Vol.3,p.108,by R.R.Mahoney,Chapman & Hall,2d ed参照。
【0099】
甘味測定の共通基準が、開発されてきており、これは、スクロースの公知量と甘味レベルを相関させる。例えば、2%スクロースサンプルは、甘味値「2」を有すると指定される。同様に、5%スクロースサンプルは、甘味値「5」を有すると指定され、10%スクロースサンプルは、甘味値「10」を有すると指定され、15%スクロースサンプルは、甘味値「15」を有すると指定される。
【0100】
サンプルの甘味評価に使用される1方法は、マグニチュード推定法(magnitude estimation procedure)である。この方法では、サンプルは、基準スクロース溶液との比較で、甘味を評価される。J.of Dairy Science,Vol.61(1978),p542参照。試験者は、まず、対照スクロース溶液を味見する。サンプル間は、水で濯いだ後、判定者がテストサンプルを味見する。次いで、各試験者が、対照スクロース溶液に対する、サンプルの甘味強度を、サンプルが対照スクロース溶液よりもより甘いか又は甘くないかを示すことにより評価する。追加のスクロース対照溶液を使用する場合、試験者は、追加のスクロース対照溶液を、最初のスクロース対照溶液と同じ方法で用いて、マグニチュード推定法を実施することができる。
【0101】
本発明に記載の乳成分分画プロセスは、連続オンラインプロセスである。本発明の分画プロセスから得られ、本発明の調合物の調製に使用される乳成分は、任意の所定時間に、最初に分画システムに入ってきた乳の同一バッチから得られる。
【0102】
本発明は、特定の好ましい実施形態を有するが、本発明から離脱することなく種々の変更及び修正をなし得るし、そのような変更及び修正の全ては本発明の真の精神及び範囲内に含まれると意図されることは、当業者には明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酪農調合物の製造方法であって、
乳を1方向だけの流れで、濾過装置を通過させるステップと、
乳に限外濾過を施して、限外濾過透過フラクション及び限外濾過残留フラクションを生じるステップと、
前記限外濾過透過フラクションにナノ濾過を施して、ナノ濾過透過フラクション及びナノ濾過残留フラクションを生じるステップと、
前記限外濾過残留フラクションに透析濾過を施して、透析濾過透過フラクション及び透析濾過残留フラクションを生じるステップと、
1つ以上の透過フラクション及び残留フラクションを混合して混合物を形成するステップと、
混合物を146°F(63.3℃)で熱処理するステップと、
熱処理混合物をラクターゼ酵素で処理するステップと
を含む、製法。
【請求項2】
限外濾過ステップの前に、乳を脱脂乳とクリームとに分離する、請求項1に記載の製法。
【請求項3】
脱脂乳に限外濾過ステップを施す、請求項2に記載の製法。
【請求項4】
透析濾過ステップの前に、限外濾過残留フラクションに水を混ぜる、請求項1に記載の製法。
【請求項5】
透析濾過ステップの前に、限外濾過残留フラクションにナノ濾過透過フラクションを混ぜる、請求項1に記載の製法。
【請求項6】
1つ以上の透過及び残留フラクションから製造された混合物は、更にクリームを含む、請求項2に記載の製法。
【請求項7】
酪農調合物の製造方法であって、
乳を1方向だけの流れで、濾過装置を通過させるステップと、
乳に限外濾過を施して、限外濾過透過フラクション及び限外濾過残留フラクションを生じるステップと、
前記限外濾過透過フラクションにナノ濾過を施して、ナノ濾過透過フラクション及びナノ濾過残留フラクションを生じるステップと、
前記ナノ濾過透過フラクションに逆浸透を施して、逆浸透透過フラクション及び逆浸透残留フラクションを生じるステップと、
1つ以上の透過フラクション及び残留フラクションを混合して混合物を形成するステップと、
混合物を146°F(63.3℃)で熱処理するステップと、
熱処理混合物をラクターゼ酵素で処理するステップと
を含む、製法。
【請求項8】
限外濾過ステップの前に、乳を脱脂乳とクリームとに分離する、請求項7に記載の製法。
【請求項9】
脱脂乳に限外濾過ステップを施す、請求項8に記載の製法。
【請求項10】
1つ以上の透過及び残留フラクションから製造された混合物は、更にクリームを含む、請求項8に記載の製法。
【請求項11】
酪農調合物の製造方法であって、
乳を1方向だけの流れで、濾過装置を通過させるステップと、
乳に限外濾過を施して、限外濾過透過フラクション及び限外濾過残留フラクションを生じるステップと、
前記限外濾過透過フラクションにナノ濾過を施して、ナノ濾過透過フラクション及びナノ濾過残留フラクションを生じるステップと、
前記ナノ濾過透過フラクションに逆浸透を施して、逆浸透透過フラクション及び逆浸透残留フラクションを生じるステップと、
前記限外濾過残留フラクションに透析濾過を施して、透析濾過透過フラクション及び透析濾過残留フラクションを生じるステップと、
1つ以上の透過フラクション及び残留フラクションを混合して混合物を形成するステップと、
混合物を146°F(63.3℃)で熱処理するステップと、
熱処理混合物をラクターゼ酵素で処理するステップと
を含む、製法。
【請求項12】
限外濾過ステップの前に、乳を脱脂乳とクリームとに分離する、請求項11に記載の製法。
【請求項13】
脱脂乳に限外濾過ステップを施す、請求項12に記載の製法。
【請求項14】
透析濾過ステップの前に、限外濾過残留フラクションに水を混ぜる、請求項11に記載の製法。
【請求項15】
透析濾過ステップの前に、限外濾過残留フラクションに逆浸透透過フラクションを混ぜる、請求項11に記載の製法。
【請求項16】
1つ以上の透過及び残留フラクションから製造された混合物は、更にクリームを含む、請求項12に記載の製法。
【請求項17】
請求項1に記載の製法により調製される、酪農調合物。
【請求項18】
請求項7に記載の製法により調製される、酪農調合物。
【請求項19】
請求項11に記載の製法により調製される、酪農調合物。
【請求項20】
冷凍菓子製品の製造方法であって、
乳にラクトース低減ステップを施すステップと、
乳中のラクトース濃度を低下させて、低ラクトース生成物を生じるステップと、
低ラクトース生成物を濃縮するステップと、
冷凍菓子製品を得るのに効果的な条件で濃縮低ラクトース生成物を冷凍するステップと
を含む、製法。
【請求項21】
請求項20に記載の製法により調製される、冷凍菓子製品。
【請求項22】
発酵酪農製品を調製する方法であって、
ラクトース富裕フラクションを乳から調製するステップと、
ラクトース富裕フラクションを出発培養菌と共にインキュベートして、発酵生成物を得るステップと、
発酵生成物を追加成分と混合して、混合物を形成するステップと、
混合物を、発酵酪農製品を得るのに効果的な条件でインキュベートするステップと
を含む、調製法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法により調製される、発酵酪農製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−512798(P2010−512798A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543148(P2009−543148)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/087991
【国際公開番号】WO2008/077071
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505072731)セレクト ミルク プロデューサーズ, インク. (1)
【Fターム(参考)】