説明

酵母への安定な遺伝子組み込みのためのURA5遺伝子および方法

【課題】P.pastorisオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(URA5)をコードする新規遺伝子が開示される。
【解決手段】宿主ゲノムへの異種配列の安定な遺伝子組み込みが可能な酵母株を作製および選択するための方法もまた提供される。別の局面において、本発明は、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列の縮重改変体である核酸配列、ならびに関連する核酸配列およびフラグメントからなる群より選択される核酸配列の破壊、欠失、または変異を含む宿主細胞を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は酵母中で単離される新規な遺伝子に関する。本発明はまた、酵母ゲノムへの安定な遺伝子組み込みのために特に有用であるプラスミドに関する。本発明はまた、異種タンパク質の発現における新規な酵母株、および新規な株を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
Pichia pastorisなどの酵母株は異種タンパク質の産生のために一般的に使用される。P.pastorisは、ペルオキシソーム生合成(Gouldら、Yeast 8:613−628(1992))、自食作用(TuttleおよびDunn、J.Cell Sci.108:25−35(1995);Sakaiら、J.Cell.Biol.141:625−636(1998))、および分泌経路のオルガネラの組織化および生合成(Rossaneseら、J.Cell Biol.145:69−81(1999))の研究のための評判のよいモデル系になっている。単純なDNA形質転換系の開発(Creggら、Mol.Cell.Biol.5:3376−3385(1985))および選択マーカー遺伝子の利用可能性は、上記の実験を実行する際に非常に重要である。現在、生合成マーカー遺伝子ADE1、ARG4、HIS4、およびURA3は、形質転換された細胞について、選択するための対応する独立栄養性宿主株と合わせて使用される。Lun Cereghinoら、Gene 263:159−169(2001)。形質転換体を同定するためのドミナントな選択マーカーの使用もまた可能であるが、マーカーは、薬物Zeocinに対する耐性を付与するStreptoalloteichus hindustanusからのShble遺伝子(Higginsら、Methods Mol.Biol.103:41−53(1998))、薬物ブラスチシジンに対する耐性を付与するAspergillus terreusからのブラスチシジンSデアミナーゼ遺伝子(Kimuraら、Mol.Gen.Genet.242:121−129(1994))に限定される。
【0003】
相同組換えを通しての酵母ゲノムへのクローニングされたDNAセグメントの安定な組み込みは当該分野で周知である。例えば、Orr−Weaverら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:6364−6358(1981)を参照のこと。より最近では、S.cerevisiaeにおいて、URA3マーカー遺伝子を含む分子構築物を使用する相同組換えによって、複数の連鎖していない部位において組み込まれたDNAを含む酵母株を生成するための方法が開発された。例えば、Alaniら、Genetics 116:541−545(1987)を参照のこと。このアプローチにおいて、S.cerevisiae URA3遺伝子がSalmonella hisG DNAの直接反復に隣接する構築物が生成される。この構築物は、目的のクローニングされた標的遺伝子に挿入され、そしてhisGからの直接反復によって隣接され、さらに標的遺伝子からの5’および3’セグメントによって隣接される完全なURA3遺伝子を含む直鎖状カセットが、形質転換によってUra3変異体酵母株に導入される。URA3マーカー遺伝子に連結された標的遺伝子のゲノム遺伝子座における相同組換えから生じる安定な組み込みは、次いで、ウラシルの非存在下での増殖についての選択によって単離される。隣接するhisG直接反復セグメント間の組換え事象を通してのURA3遺伝子の切除は、ウラシル栄養要求性(Ura)を回復するが、標的遺伝子の破壊されたゲノムコピーを後ろに残す。S,cerevisiaeのUra株は、ピリミジンアナログ5−フルオロオロチン酸(5−FOA)を補充した培地上で増殖することが不可能であるのに対して、Ura細胞はこのような処理で生存する。従って、URA3遺伝子を欠く細胞は、5−FOAに対するポジティブ対比染色を使用して容易に同定される。Boekeら、Mol.Gen.Genet.197:345−346(1984)。リサイクル可能なURA3マーカー構築物の反復使用を通して、目的の複数の異なる遺伝子は単一の株内で破壊され得る。同様のアプローチは他の真菌において使用されてきた。Wilsonら、Yeast 16:65−70(2000)。
【0004】
いくつかの遺伝子が並行して発現されなければならず、かついくつかの他の遺伝子が除去されなければならない広範な遺伝子操作プロジェクトは、宿主ゲノムへの異種タンパク質の安定な遺伝子組み込みのための対抗選択マーカーおよびプラスミドの使用を必要とする。最近、雄性不稔トウモロコシのミトコンドリアゲノムからのT−urf13遺伝子に基づく新規な対抗選択マーカーがP.pastorisについて記載されている。Soderholmら、BioTechniques 31:306−312(2001)。しかし、T−urf13遺伝子はさもなくば致死的ではない特定の遺伝子破壊を伴って条件的に致死的であるので、遺伝子の毒性は宿主特異的な問題であるようである。さらに、この遺伝子は、対比染色薬剤メトミルの非存在下でもまた毒性であり、それゆえに、対比染色工程はすぐに実行されなくてはならない。さらに、別々の遺伝子が最初のポジティブ選択工程のために必要であり、対抗選択工程のために使用される薬剤であるメトミルは光感受性であり、水性溶液中で急速に分解する。従って、この系は、同じ遺伝子がUra原栄養体の最初の選択、およびUra独立栄養生物の引き続く対比染色の両方の原因である、上記のURA3系よりも複雑である。独立栄養生物の選択および5−FOAまたは同様に作用する薬剤を使用する対比染色が、異なる遺伝子座における複数ラウンドの遺伝子形質転換において単一のマーカー遺伝子を選択および対抗選択するために使用され得る、酵母ピリミジン生合成経路における新規なマーカー遺伝子を見い出すために有用である。
【0005】
6段階の酵素的段階を提供する5種の構造遺伝子が、S.cerevisiaeにおける内因性ピリミジン生合成の原因である。Montignyら、Mol.Gen.Genet.215:455−462(1989)。この経路における最後の2段階である、オロチン酸からオロチジン5’−リン酸への転換、およびオロチジン5’−リン酸からウリジン5’−リン酸への転換は、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRTase)およびオロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(OMPdecase)によって触媒される。これらの酵素はURA5遺伝子およびURA3遺伝子によってそれぞれコードされている。両方の遺伝子はクローニングされ、特徴付けされ、かつS.cerevisiaeにおける遺伝子組み込みのために使用されてきたが、URA3遺伝子のみがP.pastorisにおいてクローニングされてきた。
【0006】
S.cerevisiae URA5遺伝子は、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性がブロックされた、元の状態に戻っていないE.coli pyrE変異体の相補によってクローニングされた。Montignyら、Mol.Gen.Genet.215:455−462(1989)。この遺伝子を欠く酵母細胞は漏出表現型を示すが、しかし、このことは、S.cerevisiaeにおいて、別のタンパク質がオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有することを示す。JundおよびLacroute、J.Bacteriol.109:196−202(1972)を参照のこと。URA5遺伝子はまた、Kluyveromyces lactisにおいて同定されてきた。Baiら、Yeast 15:1393−1398(1999)。URA5遺伝子周辺の遺伝子の整列がS.cerevisiae、K.lactis、C.albicans、およびY.lipolyticaにおいて試験されてきた。SanchezおよびDominguez、Yeast 18:807−813(2001)。4種すべての生物において、URA5遺伝子および分泌経路において機能する遺伝子(SEC65遺伝子)は、互いに隣接して、かつ相対的に反対の方向で配列されている。
【0007】
P.pastorisにおけるURA3遺伝子を破壊することに基づく選択系は、最近開示された。米国特許第6,051,419号。そこに記載される方法はまた、「二方向性選択プロセス」と呼ばれるものにおける、「ポップ−イン」(遺伝子付加によるDNAの形質転換の部位特異的組み込み)および「ポップ−アウト」(これらの遺伝子およびURA3遺伝子の1つの喪失を生じる、機能的遺伝子と非機能的遺伝子との間の組換え)を提供する。S.cerevisiae URA3を使用する「ポップ−イン/ポップ−アウト」遺伝子置換は、上記のように、選択マーカーがリサイクルされ得るので、便利な方法である。Boekeら、Meth.Enzymol.154:164−175(1987)を参照のこと。しかし、P.pastoris ura3栄養要求株はゆっくりと増殖する。米国特許第6,051,419号。さらに、「ポップアウト」工程における相同組換えの原因である配列は、単一の交叉組換えプロセスにおける「ポップイン」工程の原因である配列を同じであるので、「ポップ−イン」によって挿入される遺伝物質は「ポップ−アウト」によって失われるらしい。従って、この方法は、ゲノムに目的の発現可能な異種遺伝子を安定に組み込むためよりも、点変異または遺伝子破壊を生成するためにより適切である。
【0008】
P.pastorisの現在利用可能な栄養要求性株は、それぞれの栄養要求性マーカー遺伝子が復帰する潜在能力を有するというさらなる欠点に苦しんでいる。高い復帰率は、復帰突然変異体コロニーが偽陽性形質転換体として誤って同定されるので、栄養要求性株の有用性を減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
S.cerevisiaeにおけるURA3選択および対抗選択系の有用性、ならびに他の酵母および真菌におけるこれらおよび現在の方法を使用することに対する制限があるので、P.pastorisにおけるURA5遺伝子の同定およびURA5を使用する安定な遺伝子組み込み事象を選択するための系の開発は有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、P.pastoris URA5遺伝子、P.pastoris SEC65遺伝子のフラグメント、およびP.pastoris SCS7遺伝子のフラグメントのコード配列;これらの配列の縮重改変体である核酸配列;ならびに関連する核酸配列およびフラグメントからなる群より選択される核酸配列を含むか、またはこれらの配列からなる単離されたポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、これらの単離されたポリヌクレオチドを含むベクターおよび宿主細胞を提供する。
【0011】
本発明はさらに、P.pastoris URA5遺伝子、P.pastoris SEC65遺伝子のフラグメント、およびP.pastoris SCS7遺伝子のフラグメントによってコードされる配列、ならびに関連するポリペプチド配列、フラグメント、および融合物からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むか、またはこれらの配列からなる単離されたポリペプチドを提供する。本発明の単離されたポリペプチドに特異的に結合する抗体もまた、提供される。
【0012】
本発明はまた、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列の縮重改変体である核酸配列、ならびに関連する核酸配列およびフラグメントからなる群より選択される核酸配列の破壊、欠失、または変異を含む宿主細胞を提供し、ここでこの宿主細胞は、破壊、欠失、または変異を伴わない宿主細胞と比較して、核酸配列によってコードされるポリペプチドの減少している活性を有する。
【0013】
本発明はさらに、宿主細胞中における異種核酸配列の遺伝子組み込みのための方法を提供する。これらの方法は、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列の縮重改変体である核酸配列、ならびに関連する核酸配列およびフラグメントからなる群より選択される配列に由来する、破壊、欠失、または変異した核酸配列の導入によって、宿主遺伝子によってコードされるオロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼを破壊する工程を包含する。
【0014】
さらに、本発明は、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を欠く宿主細胞中での異種核酸配列の遺伝子組み込みのための方法を提供する。これらの方法は、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列、P.pastoris URA5遺伝子のコード配列の縮重改変体である核酸配列、ならびに関連する核酸配列およびフラグメントからなる群より選択される、オロチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性をコードする配列と連結して、目的の配列を宿主細胞に導入する工程を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、URA5コード配列(配列番号2)およびそのコードポリペプチド(配列番号3)、SEC65コード配列の3’フラグメントに対して相補的な配列(配列番号4)およびそのコードされるポリペプチド(配列番号5)、ならびにSCS7コード配列の3’フラグメント(配列番号6)およびそのコードされるポリペプチド(配列番号7)を含む、P.pastorisの1947bp URA5含有ゲノムフラグメント(Sau3A−Ssp1)(配列番号1)を示す。
【図2】図2は、縮重プライマーを設計するために使用される配列のアラインメントを示す。URA45関連配列は、S.cerevisiae由来のURA5(配列番号8)、S.cerevisiae由来のURA10(配列番号9)、ならびにk.lactis(配列番号10)由来のURA5、Y.lipolytica由来のURA5(配列番号11)、S.pombe由来のURA5(配列番号12)、T.reesei由来のURA5(配列番号13)、E.coli由来のURA5(配列番号14)、P.aeruginosa由来のURA5(配列番号15)、およびH.influenzae由来のURA5(配列番号16)である。P.pastoris由来のUR45配列(配列番号3の残基27〜80)が比較のために示される。SEC65関連配列は、S.cerevisiae(配列番号17)、k.lactis(配列番号18)、C.albicans(配列番号19)、Y.lipolytica(配列番号20)、N.Crassa(配列番号21)、およびs.pombe(配列番号22)由来である。
【図3】図3は、P.pastoris URA4遺伝子のクローニングにおいて使用された縮重オリゴヌクレオチドのいくつかを示す。これらのオリゴヌクレオチドは、URA5−1(配列番号23)、URA5−2(配列番号24)、URA5−3(配列番号25)、URA5−4(配列番号26)、URA5−5(配列番号27)、およびURA5−6(配列番号28)である。
【図4】図4は、プラスミドpJN266(KEX1遺伝子座を破壊するために使用され得るリサイクル可能なURA3カセットを含む);プラスミドpJN315(lacZ直接反復に隣接されたP.pastorisURA3遺伝子を含む);およびプラスミドpJN329(OCH1遺伝子座を破壊するために使用され得るリサイクル可能なURA3カセットを含む)の制限マップを示す。
【図5】図5は、プラスミドpJN395(カナマイシン耐性遺伝子でマークされたP.pastoris URA5破壊カセットを含む);プラスミドpLN396(lacZ直接反復によって隣接されるP.pastoris URA5遺伝子を含む);プラスミドpJN398(OCH1遺伝子座をノックアウトするために使用され得るリサイクル可能なURA5カセットを含む);およびプラスミドpJN407(OCH1遺伝子座への安定な組み込みのために使用され得るP.pastoris URA5−K.lactis UDP−GlcNAcトランスポーターカセットを含む)の制限マップを示す。
【図6】図6は、OCH1遺伝子座へのUDP−GlcNAcトランスポーターの安定な組み込みにおける、P.pastoris URA5−K.lactis UDP−GlcNAcトランスポーターの使用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本明細書において他に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学的用語および技術的用語は、当業者によって共通して理解される意味を有するべきである。さらに、文脈によって他に必要とされない限り、単数形は複数形を含むべきであり、複数形の用語は単数形を含むべきである。一般的に、本明細書に記載される生化学、酵素学、分子生物学および細胞生物学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションの技術と関連して使用される命名法は、周知でありかつ当該分野において一般的に使用される。本発明の方法および技術は、他に示されない限り、一般的に当該分野において周知であり、かつ本明細書を通して引用されかつ議論される種々の一般的な参考文献およびより特定の参考文献従来的な方法に従って実行される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992、および2002への補遺);HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990);TaylorおよびDrickamer、Introduction to Glycobiology,Oxford Univ.Press(2003);Worthington Enzyme Manual,Worthington Biochemical Corp.,Freehold,NJ;Handbook of Biochemistry:Section A Proteins,第I巻、CRC Press(1976);Handbook of Biochemistry:Section A Proteins,第II巻、CRC Press(1976);Essentials of Glycobiology,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)を参照のこと。
【0017】
本明細書に言及されるすべての刊行物、特許、および他の参考文献は、本明細書によってその全体が参照として援用される。
【0018】
以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0019】
用語「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は、少なくとも10塩基長のポリマー型のヌクレオチドをいう。この用語はDNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNAまたは合成DNA)およびRNA分子(例えば、mRNAまたは合成RNA)、ならびにDNAまたはRNAのアナログ(非天然ヌクレオチドアナログ、非天然ヌクレオシド結合、または両方)を含む。核酸は、任意のトポロジー的配置にあり得る。例えば、核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四重鎖、部分的二本鎖、分枝、ヘアピン、環状、または南京錠コンホメーションであり得る。
【0020】
他に示されない限り、「配列番号Xを含む核酸」とは、少なくともその一部が(i)配列番号Xの配列、または(ii)配列番号Xに相補的な配列のいずれかを有する核酸をいう。2つの間の選択は、状況によって決定づけられる。例えば、核酸がプローブとして使用される場合、2つの間の選択は、プローブが所望の標的に対して相補的であるという要件によって決定づけられる。
【0021】
「単離された」または「実質的に純粋な」核酸またはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNA、または混合ポリマー)は、その天然の宿主細胞においてネイティブなポリヌクレオチドに天然に付随する他の細胞成分、例えば、それが天然には付随するリボソーム、ポリメラーゼ、およびゲノム配列から実質的に分離されているものである。この用語は、(1)その天然に存在する環境から取り出されている、(2)「単離されたポリヌクレオチド」が天然に見い出されるポリヌクレオチドのすべてまたは一部に付随していない、(3)天然には連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されている、または(4)天然には存在しない、核酸またはポリヌクレオチドを含む。用語「単離された」または「実質的に純粋な」はまた、組換えもしくはクローニングされたDNA単離物、化学合成されたポリヌクレオチドアナログ、または異種系によって生物学的に合成されたポリヌクレオチドアナログに関連して使用され得る。
【0022】
しかし、「単離された」は、そのように記載された核酸またはポリヌクレオチドが、それ自体そのネイティブな環境から物理的に取り出されていることを必ずしも必要としない。例えば、生物のゲノム中の内因性核酸配列は、異種配列が内因性核酸配列に隣接して配置され、その結果、この内因性核酸配列の発現が変化される場合に、本明細書において「単離された」と見なされる。この状況において、異種配列は、その異種配列がそれ自体内因性(同じ宿主細胞またはその子孫から生じる)であるかまたは外因性(異なる宿主細胞またはその子孫から生じる)であるかに関わらず、内因性の核酸配列に天然に隣接しない配列である。例として、プロモーター配列は、宿主細胞のゲノム中の1つの遺伝子のネイティブなプロモーターに置換され得(例えば、相同組換えによって)、その結果、この遺伝子は、変化した発現パターンを有する。この遺伝子は、ここで「単離された」ことになる。なぜなら、この遺伝子は、それに天然に隣接する配列の少なくともいくつかから分離されているからである。
【0023】
核酸配列はまた、それがゲノム中の対応する核酸に天然には起こらない任意の修飾を含む場合に「単離された」と見なされる。例えば、内因性コード配列は、それが人工的に(例えば、ヒトの介入によって)挿入、欠失、または点変異を含む場合に、「単離された」と見なされる。「単離された核酸」はまた、異種部位において宿主細胞染色体に組み込まれた核酸、およびエピソームとして存在する核酸構築物を含む。さらに、「単離された核酸」は、他の細胞物質を実質的に含まないことが可能であるか、または組換え技術によって産生された培養培地を実質的に含まないことが可能であるか、または化学合成されたときに化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないことが可能である。
【0024】
本明細書において使用される場合には、語句「縮重改変体」とは、参照核酸配列の「縮重改変体」が標準的な遺伝コードに従って翻訳され得る核酸配列を含み、その参照アミノ酸から翻訳されるものと同一のアミノ酸配列を提供する。用語「縮重オリゴヌクレオチド」または「縮重プライマー」とは、配列中で必ずしも同一でないが、1つ以上の特定のセグメント中で互いに相同である標的アミノ酸配列をハイブリダイズすることが可能であるオリゴヌクレオチドを意味するために使用される。
【0025】
用語「配列同一性パーセント」または「同一である」とは、核酸配列の状況において、最大の一致のためにアラインされたときに同じである2つの配列中の残基をいう。配列同一性比較の長さは、少なくとも約9ヌクレオチドのストレッチにわたり得、通常少なくとも約20ヌクレオチド、より通常には約24ヌクレオチド、代表的には少なくとも約28ヌクレオチド、より代表的には少なくとも約32ヌクレオチド、および好ましくは少なくとも約36ヌクレオチド以上である。ヌクレオチドの配列同一性を測定するために使用され得る、当該分野において公知の異なる多数のアルゴリズムが存在する。例えば、ポリヌクレオチド配列は、FASTA、Gap、またはBestfit(これらは、Wisconsin Package Version 10.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,Wisconsinのプログラムである)を使用して比較され得る。FASTAは、問い合わせ配列と検索配列との間の最良の重複の領域のアラインメントおよび配列同一性パーセントを提供する。Pearson、Methods Enzymol.183:63−98(1990)(本明細書によってその全体が参照として援用される)。例えば、核酸配列間の配列同一性パーセントは、そのデフォルトパラメーター(6のワードサイズおよびスコアリングマトリックスのためのNOPAM因子)を用いてFASTAを使用して、またはGCGバージョン6.1(参照として本明細書に援用される)に提供されるようなそのデフォルトパラメーターを用いてGapを使用して決定され得る。代替的には、配列は、コンピュータプログラムBLAST(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990);GishおよびStates、Nature Genet.3:266−272(1993);Maddenら、Meth.Enzymol.266:131−141(1996);Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997);ZhangおよびMadden、Genome Res.7:649−656(1997))、とりわけ、blastpまたはtblastn(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997))を使用して比較され得る。
【0026】
用語「実質的に相同」または「実質的に類似」とは、核酸またはそのフラグメントに関して参照される場合、別の核酸(またはその相補鎖)と、適切ねヌクレオチドの挿入または欠失を用いて最適にアラインされた場合に、上記に議論したようなFASTA、BLAST、またはGapなどの配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定されるように、ヌクレオチドベースで少なくとも約50%、より好ましくは60%、通常少なくとも約70%、より通常には約80%、好ましくは少なくとも約90%、およびより好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチド配列同一性が存在することを示す。
【0027】
代替的には、実質的な相同性または類似性は、1つの核酸またはそのフラグメントが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、別の核酸に対して、別の核酸の1本の鎖に対して、またはその相補鎖に対してハイブリダイズするときに存在する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」および「ストリンジェントな洗浄条件」とは、核酸ハイブリダイゼーション実験の状況において、多数の異なる物理的パラメーターに依存する。核酸ハイブリダイゼーションは、当業者によって容易に認識されるように、塩濃度、温度、溶媒、ハイブリダイズする種の塩基組成、相補性領域の長さ、およびハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基のミスマッチといった条件によって影響される。当業者は、ハイブリダイゼーションの特定のストリンジェンシーを達成するためにいかにしてこれらのパラメーターを変化させるかを知っている。
【0028】
一般的に、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、特定の条件のセットの下で、特異的DNAハイブリッドについての熱融解点(T)より約25℃下で実行される。「ストリンジェントな洗浄」は、特定の条件のセットの下で、特異的DNAハイブリッドについてのTよりも約5℃下の温度で実行される。Tは、標的配列の50%完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度である。Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、9.51頁(参照により本明細書によって援用される)参照のこと。本明細書における目的のために、「ストリンジェントな条件」とは、溶液相ハイブリダイゼーションのために、6×SCC(ここで、20×SSCは3.0M NaClおよび0.3Mクエン酸ナトリウムを含む)、1% SDS中での、65℃、8〜12時間の水性(すなわち、ホルムアミドを含まない)ハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、0.1%SDS中での65℃、20分間の2回の洗浄として定義される。65℃におけるハイブリダイゼーションは、ハイブリダイズする配列の長さおよび同一性パーセントを含む多数の因子に依存して異なる速度で起こることが当業者によって理解される。
【0029】
本発明の核酸(ポリヌクレオチドともいわれる)は、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方のRNA、cDNA、ゲノムDNA、ならびに上記のポリマーの合成型および混合型を含み得る。これらは、当業者によって容易に認識されるように、化学的もしくは生化学的に修飾され得るか、または非天然のもしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含み得る。このような修飾には、例えば、標識、メチル化、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログとの置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、荷電していない連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミダイト、カルバメートなど)、荷電した連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、張り出し部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、および修飾連結(例えば、αアノマー性核酸など)が含まれる。水素結合および他の化学的相互作用を介して、指定された配列に結合するそれらの能力においてポリヌクレオチドを模倣する合成分子もまた含まれる。このような分子は当該分野において公知であり、かつ、例えば、分子のバックボーン中のリン酸結合の代わりにペプチド結合が置き換わるものが含まれる。他の修飾には、例えば、リボース環が架橋部分または他の構造、例えば、「ロックされた」核酸中に見い出される修飾などを含むアナログが含まれ得る。
【0030】
用語「変異された」は、核酸配列に適用される場合には、核酸配列中のヌクレオチドが、参照核酸配列と比較して、挿入、欠失、または変化され得ることを意味する。単一の変化は1つの遺伝子座において作製され得るか、または複数のヌクレオチドが単一の遺伝子座において挿入、欠失、または変化され得る。さらに、1つ以上の変化は、核酸配列中の任意の数の遺伝子座において作製され得る。核酸配列は、当該分野において公知である任意の方法によって変異され得、この方法には、「誤りがちなPCR」(DNAポリメラーゼのコピー忠実度が低い条件下でPCRを実行し、その結果、高い頻度の点変異が全長のPCR産物に沿って得られるプロセス;例えば、Leungら、Technique、1:11−15(1989)ならびにCaldwellおよびJoyce、PCR Methods Applic.2:28−33(1992)を参照のこと);および「オリゴヌクレオチド指向性変異誘発」(目的の任意のクローニングされたDNAセグメントにおける部位特異的面の生成を可能にするプロセス;例えば、Reidhaar−OlsonおよびSauer、Science 241:53−57(1988)を参照のこと)などの変異誘発技術が含まれるがこれらに限定されない。
【0031】
用語「ベクター」とは、本明細書において使用される場合、それが連結されている別の核酸の輸送を可能にする核酸分子をいう。1つの型のベクターは「プラスミド」であり、これは、さらなるDNAセグメントがそこに連結され得る環状二本鎖DNAループをいう。他のベクターには、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、および酵母人工染色体(YAC)が含まれる。別の型のベクターはウイルスベクターであり、ここでは、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る(以下により詳細に議論される)。特定のベクターは、それらが挿入される宿主中での自律的複製が可能である(例えば、宿主細胞中で機能する複製起点を有するベクター)。他のベクターは、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、かつそれによって宿主ゲノムとともに複製される。さらに、特定の好ましいベクターは、それらが作動可能に連結されている遺伝子の発現を指向することが可能である。このようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「目的の配列」または「目的の遺伝子」とは、宿主細胞中では通常産生されない、代表的にはタンパク質をコードする、核酸配列をいう。本明細書中に開示される方法は、1つ以上の目的の配列または目的の遺伝子が宿主ゲノムに安定に組み込まれることを可能にする。目的の配列の非限定的な例には、酵素活性(例えば、マンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーター、ガラクトシルトランスフェラーゼ、およびシアリルトランスフェラーゼなどの、宿主におけるN−グリカン合成に影響を与える酵素)を有する1つ以上のポリペプチドをコードする配列が含まれる。他の非限定的な例には、酵素活性(例えば、タンパク質−マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)遺伝子なとの、宿主中でO−グリカン合成に影響を与える酵素)を有する1つ以上のポリペプチドをコードする配列が含まれる。なお他の配列が、ヒトプラスミノーゲンのkringleドメイン、エリスロポエチン、サイトカイン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンω、および顆粒球−CSF)、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、およびヒトプロテインC)、可溶性IgEレセプターα鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、ウロキナーゼ、チマーゼ、尿素トリプシンインヒビター、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄前駆細胞阻害因子−1、オステオプロテゲリン、α−1抗トリプシン、DNase II、およびα−フェトプロテインなどの目的のタンパク質をコードする。
【0033】
用語「マーカー配列」または「マーカー遺伝子」とは、宿主細胞中で配列の存在または非存在についてポジティブまたはネガティブのいずれかでの選択を可能にする活性を発現することが可能である核酸配列をいう。例えば、P.pastoris URA5遺伝子は、その存在が、その遺伝子を含む細胞がウラシルの非存在下で増殖する能力によって選択され得るので、マーカー遺伝子である。その存在はまた、その遺伝子を有する細胞が5−FOAの存在下で増殖する能力を有さないことに対して選択され得る。マーカー配列または遺伝子は、必ずしも、ポジティブおよびネガティブの両方の選択可能性を示す必要はない。P.pastoris由来のマーカー配列または遺伝子の非限定的な例には、ADE1、ARG4、HIS4、およびURA3が含まれる。
【0034】
「作動可能に連結された」発現制御配列とは、発現制御配列が目的の遺伝子を制御するために目的の遺伝子と連続している連結、ならびに目的の遺伝子を制御するためにトランスでまたは一定の距離離れて作用する発現制御配列をいう。
【0035】
用語「発現制御配列」とは、本明細書で使用される場合、それらが作動可能に連結されているコード配列の発現に影響を与えるために必要であるポリヌクレオチド配列をいう。発現制御配列は、核酸配列の転写、転写後事象、および翻訳を制御する配列である。発現制御配列には、適切な転写の開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングシグナルおよびポリアデニル化シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を増強する配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質安定性を増強する配列;および所望される場合、タンパク質分泌を増強する配列。このような制御配列は、宿主生物に依存して異なる;原核生物においては、このような制御配列は、一般的にはプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終結配列を含む。用語「制御配列」は、最小限、その存在が発現のために必須であるすべての構成成分を含むことが意図され、およびまた、その存在が遊離であるさらなる構成成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列を含み得る。
【0036】
用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)とは、本明細書において使用される場合、組換えベクターが導入される細胞をいうことが意図される。このような用語は、特定の対象の細胞のみならず、このような細胞の子孫もいうことが意図されることが理解されるべきである。変異および環境的な影響のいずれかに起因して、特定の改変が後に続く世代において起こり得るので、このような子孫は、実際、親と同一ではない可能性があるが、なお、本明細書において使用される用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞は、培養中で増殖した単離された細胞もしくは細胞株であり得、または生きている組織もしくは生物中に存在する細胞であり得る。
【0037】
用語「ペプチド」とは、本明細書で使用される場合、短いポリペプチド、例えば、代表的には約50アミノ酸長未満、およびより代表的には約30アミノ酸長未満であるものをいう。この用語は、本明細書で使用される場合、アナログ、ならびに構造的、および従って生物学的機能を模倣する模倣物を含む。
【0038】
用語「ポリペプチド」は、天然に存在するタンパク質と天然には存在しないタンパク質の両方、ならびにそのフラグメント、変異体、誘導体、およびアナログを含む。ポリペプチドは、モノマー性またはポリマー性であり得る。さらに、ポリペプチドは、その各々が1つ以上の別個の活性を有する多数の異なるドメインを含み得る。
【0039】
用語「単離されたタンパク質」または「単離されたポリペプチド」は、その起源または誘導体の供給源に基づいて、(1)そのネイティブな状態においてそれに付随する天然に結合している成分が結合していない、(2)天然には見い出されない純度で存在している(ここで、純度は他の細胞物質の存在に関連して考えられるべきである(例えば、同じ種からの他のタンパク質が存在していない))、(3)異なる種からの細胞によって発現される、または(4)天然には存在しない(例えば、これは天然に見い出されるポリペプチドのフラグメントであるか、あるいはこれは天然には見い出されないアミノ酸のアナログもしくは誘導体、または標準的なペプチド結合以外の結合を含む)。従って、化学合成されるか、またはそれが天然に生じる細胞とは異なる細胞系中で合成されるポリペプチドは、その天然に付随する成分から「単離される」。ポリペプチドまたはタンパク質はまた、当該分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然に付随する成分を実質的に含まなくされ得る。このように定義されるように、「単離された」とは、そのように記載されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはオリゴペプチドが、そのネイティブな環境から物理的に分離されていることを必ずしも必要としない。
【0040】
用語「ポリペプチドフラグメント」とは、本明細書で使用される場合、全長ポリペプチドと比較して、欠失、例えば、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失を有するポリペプチドをいう。好ましい実施形態において、このポリペプチドフラグメントは、フラグメントのアミノ酸配列が、天然に存在する配列中の対応する位置と同一である、連続する配列である。フラグメントは、代表的には、少なくとも5、6、7、8、9、または10アミノ酸長であり、好ましくは、少なくとも12、14、16、または18アミノ酸長であり、より好ましくは、少なくとも20アミノ酸長であり、より好ましくは、少なくとも25、30、35、40、または45アミノ酸であり、さらにより好ましくは、少なくとも50または60アミノ酸長であり、およびなおより好ましくは少なくとも70アミノ酸長である。
【0041】
「修飾誘導体」とは、一次構造配列において実質的に相同であるが、これらが、例えば、インビボもしくはインビトロの化学修飾もしくは生化学的修飾を含み、またはネイティブなポリペプチドにおいては見い出されないアミノ酸を取り込む、ポリペプチドまたはそのフラグメントをいう。このような修飾には、当業者によって容易に認識されるように、例えば、アセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、標識化(例えば、放射性核種を用いる)、および種々の酵素的修飾が含まれる。ポリペプチドを標識するための種々の方法、およびこのような目的のために有用な置換基または標識は当該分野で周知であり、これには、125I、32P、35S、およびHなどの放射活性アイソトープ、標識された抗リガンド(例えば、抗体)、蛍光団、化学発光剤、酵素、ならびに標識されたリガンドのための特異的結合対メンバーとして働き得る抗リガンドが含まれる。標識の選択は、必要とされる感度、プライマーの結合の容易さ、安定性の必要性、および利用可能な機器に依存する。ポリペプチドを標識するための方法は当該分野で周知である。例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992、および2002への補遺)を参照のこと(本明細書によって参照として援用される)。
【0042】
用語「融合タンパク質」とは、異種アミノ酸配列に結合されたポリペプチドまたはフラグメントを含むポリペプチドをいう。融合タンパク質は、それらが、2つ以上の異なるタンパク質からの2つ以上の所望の機能的エレメントを含むように構築され得るので、有用である。融合タンパク質は、目的のポリペプチドから少なくとも10個の連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも20個または30個のアミノ酸、なおより好ましくは少なくとも40、50、または60個のアミノ酸、なおより好ましくは少なくとも75、100、または125個のアミノ酸を含む。本発明のタンパク質の完全さを含む融合タンパク質は、特に有用性を有する。本発明の融合タンパク質に含まれる異種ポリペプチドは、少なくとも6アミノ酸長、しばしば少なくとも8アミノ酸長、および通常少なくとも15、20、および25アミノ酸長である。より大きなポリペプチド(例えば、IgG Fc領域)、および全体のタンパク質でさえ(例えば、グリーン蛍光タンパク質(「GFP」)クロモホア含有タンパク質)を含む融合タンパク質は、特に有用性を有する。融合タンパク質は、異なるタンパク質またはペプチドをコードする核酸配列とインフレームでポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする核酸配列を構築すること、および次いで融合タンパク質を発現することによって、組換え的に産生され得る。代替的には、誘導タンパク質は、別のタンパク質に、ポリペプチドまたはそのフラグメントを架橋することによって化学的に産生され得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、少なくともその一部が少なくとも1つの免疫グロブリン遺伝子、またはそのフラグメントによってコードされ、かつ所望の標的分子に特異的に結合し得るポリペプチドをいう。この用語は、天然に存在する形態、ならびにフラグメントおよび誘導体を含む。
【0044】
用語「抗体」の範囲内にあるフラグメントには、そのフラグメントが標的分子への特異的結合可能なままである限り、種々のプロテアーゼによって産生されるもの、化学的切断および/もしくは化学的解離によって産生されるもの、ならびに組換え的に産生されるものが含まれる。このようなフラグメントの中には、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)、および単鎖Fv(scFv)のフラグメントがある。
【0045】
この用語の範囲内にある誘導体には、配列が改変されているが、標的分子への特異的結合が可能なままである抗体(またはそのフラグメント)が含まれる。これには以下が含まれる:種間キメラおよびヒト化抗体;抗体融合物;ヘテロマー抗体複合体および抗体融合物、例えばジアボディー(二特異性抗体)、単鎖ジアボディー、およびイントラボディー(例えば、Intracellular Antibodies:Research and Disease Applications(Marasco編、Springer−Verlag New York,Inc.,1998)を参照のこと、これらの開示はその全体が参照として本明細書に援用される)。
【0046】
本明細書で使用される場合、抗体は、ネイティブBリンパ球の細胞培養からの収集、ハイブリドーマからの収集、組換え発現系およびファージディスプレイを含む、任意の公知の技術によって産生され得る。
【0047】
用語「非ペプチドアナログ」とは、参照ポリペプチドの特性と類似である特性を有する化合物をいう。非ペプチド化合物はまた、「ペプチド模倣物」または「ペプチド類似物」と呼ばれる。例えば、以下を参照のこと:Jones、Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford University Press(1992);Jung、Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries:A Handbook,John Wiley(1997);Bodanszkyら、Peptide Chemistry−A Practical Textbook,Springer Verlag(1993);Synthetic Peptide:A Users Guide,(Grant編、W.H.Freeman and Co.,1992);Evansら、J.Med.Chem.30:1229(1987);Fauchere、J.Adv.Drug Res.15:29(1986);VeberおよびFreidinger、Trends Neurosci.,8:392−396(1985);および上記の各々において引用される参考文献(これらは参照として本明細書に援用される)。このような化合物は、しばしば、コンピュータ化された分子モデリングの補助を用いて開発される。本発明の有用なペプチドと構造的に類似のペプチド模倣物は、等価な効果を生じるために使用され得、それゆえに本発明の一部として想定される。
【0048】
「ポリペプチド変異体」または「ムテイン」とは、その配列が、ネイティブなまたは野生型のタンパク質と比較して、1つ以上のアミノ酸の挿入、複製、欠失、再配列、または置換を含むポリペプチドをいう。ムテインは、1つ以上のアミノ酸の点変異(ここで、1つの位置における単一のアミノ酸が別のアミノ酸に変化している)、1つ以上の挿入および/もしくは欠失(ここで、1つ以上のアミノ酸が、天然に存在するタンパク質の配列中で、それぞれ、挿入もしくは欠失されている)ならびに/または、アミノ末端もしくはカルボキシ末端のいずれかもしくは両方においてアミノ酸配列の短縮を含み得る。ムテインは、天然に存在するタンパク質と比較して、同じ生物学的活性を有し得るが、好ましくは異なる生物学的活性を有する。
【0049】
ムテインは、その野生型対応物に対して、少なくとも65%の全体の配列相同性を有する。なおより好ましいのは、野生型タンパク質に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、または90%の全体の配列相同性を有するムテインである。さらにより好ましい実施形態において、ムテインは、少なくとも95%の配列同一性、なおより好ましくは98%、なおより好ましくは99%、およびなおより好ましくは99.9%の全体の配列同一性を示す。配列相同性は、GapまたはBestfitなどの任意の一般的な配列分析アルゴリズムによって測定され得る。
【0050】
アミノ酸置換は以下のものを含み得る:(1)タンパク質分解に対する感受性を減少させるもの、(2)酸化に対する感受性を減少させるもの、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させるもの、(4)結合親和性または酵素活性を変化させるもの、および(5)このようなアナログの他の物理化学的特性または機能的特性を付与または修飾するもの。
【0051】
本明細書で使用される場合、20種の従来的なアミノ酸およびそれらの略号は従来的な使用に従う。Immunology−A Synthesis(GolubおよびGren編、Sinauer Associates,Sunderland,Mass,第2版、1991)(これは参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。20種の従来型のアミノ酸の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)、非天然アミノ酸(例えば、α−、α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸)、および他の従来型でないアミノ酸もまた、本発明のポリペプチドのための構成成分として適切であり得る。従来型でないアミノ酸には以下が含まれる:4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、N−メチルアルギニン、および他の同様のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)。本明細書で使用されるポリペプチドの表記法において、標準的な使用および慣習に従って、左側の末端はアミノ末端に対応し、右側の末端はカルボキシ末端に対応する。
【0052】
タンパク質は、そのタンパク質をコードする核酸配列が第2のタンパク質をコードする核酸配列に対して類似の配列を有する場合、第2のタンパク質に対して「相同性」を有するか、または「相同である」。代替的には、タンパク質は、2つのタンパク質が「類似の」アミノ酸配列を有する場合、第2のタンパク質に対して相同性を有する(従って、用語「相同タンパク質」は、2つのタンパク質が類似のアミノ酸配列を有することを意味するために定義される)。好ましい実施形態において、相同タンパク質は、野生型タンパク質に対して少なくとも65%の配列相同性を示すものであり、より好ましくは少なくとも70%の配列相同性である。さらにより好ましいものは、野生型タンパク質に対して、少なくとも75%、80%、85%、または90%の配列相同性を示す相同タンパク質である。なおより好ましい実施形態において、相同タンパク質は、少なくとも95%、98%、99%、または99.9%の配列同一性を示す。本明細書で使用される場合、アミノ酸配列の2つの領域間の相同性(とりわけ、推定の構造類似性に関して)は、機能の類似性を意味するものと解釈される。
【0053】
「相同な」がタンパク質またはペプチドに関連して使用される場合、同一でない残基の位置が保存性アミノ酸置換によって異なることが認識される。「保存性アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般的に、保存性アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つ以上のアミノ酸配列が保存性置換によって互いに異なる場合において、配列同一性パーセントまたは相同性の程度は、置換の保存的性質について補正するために、情報に調整され得る。この調整を行うための手段は当業者に周知である。例えば、Pearson、1994,Methods Mol.Biol.24:307−31および25:365−89(参照として本明細書に援用される)を参照のこと。
【0054】
以下の6つの群は、互いに保存性置換であるアミノ酸を各々含む:1)セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、および6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0055】
配列同一性パーセントともまた呼ばれる、ポリペプチドについての配列相同性は、代表的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。例えば、the Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group(GCG),University of Wisconsin Biotechnology Center,910 University Avenue,Madison,Wisconsin 53705を参照のこと。タンパク質分析ソフトウェアは、種々の置換、欠失、および他の修飾(保存性アミノ酸置換を含む)に割り当てられた相同性の尺度を使用して、類似の配列をマッチさせる。例えば、GCGは、密接に関連したポリペプチド(例えば、異なる種の生物からの相同ポリペプチド)間、または野生型とそのムテインとの間の配列相同性または配列同一性を決定するためにデフォルトパラメーターを用いて使用され得る「Gap」および「Bestfit」などのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。
【0056】
好ましいアルゴリズムは、特定のポリペプチド配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースに対して比較する場合、コンピュータプログラムBLASTである(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990);GishおよびStates、Nature Genet.3:266−272(1993);Maddenら、Meth.Enzymol.266:131−141(1996);Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997);ZhangおよびMadden、Genome Res.7:649−656(1997))、とりわけ、blastpまたはtblastn(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402(1997))。
【0057】
BLASTpのための好ましいパラメーターは以下の通りである:
予測値:10(デフォルト);フィルター:seg(デフォルト);コスト対オープンギャップ:11(デフォルト);コスト対エクステンドギャップ:1(デフォルト);最大アラインメント:100(デフォルト);ワードサイズ:11(デフォルト);記述の数:100(デフォルト);ペナルティーマトリックス:BLOWSUM62。
【0058】
相同性のために比較されるポリペプチド配列の長さは、一般的に、少なくとも約16アミノ酸残基、通常少なくとも約20残基、より通常には少なくとも約24残基、代表的には少なくとも約28残基、および好ましくは約35残基よりも多くである。大量の異なる生物からの配列を含むデータベースを検索する際に、アミノ酸配列を比較することが好ましくあり得る。アミノ酸配列を使用するデータベース検索は、当該分野において公知であるblastp以外のアルゴリズムによって測定され得る。例えば、ポリペプチド配列は、FASTA、GCGバージョン6.1中のプログラムを使用して比較され得る。FASTAは、問い合わせ配列と検索配列との間のアラインメント、およびこの最良の重複の領域の配列同一性パーセントを提供する。Pearson、Methods Enzymol.183:63−98(1990)(参照として本明細書に援用される)。例えば、アミノ酸配列間の配列同一性パーセントは、GCGバージョン6.1(参照として本明細書に援用される)において提供されるように、そのデフォルトパラメーター(2のワードサイズおよびPAM250スコアリングマトリックス)を用いるFASTAを使用して決定され得る。
【0059】
「特異的結合」とは、環境中の他の分子に結合することに優先して、互いに結合する2つの分子の能力をいう。代表的には、「特異的結合」は、反応中の偶発的な結合を、少なくとも2倍、より代表的には少なくとも10倍、しばしば少なくとも100倍区別する。代表的には、特異的結合反応の親和性または結合性は、解離定数によって定量されるように、約10−7M以上である(例えば、約10−8M、10−9Mまたはさらにより強い)。
【0060】
用語「領域」は、本明細書で使用される場合、生体分子の一次構造の物理的に連続している部分をいう。タンパク質の場合において、領域は、そのタンパク質のアミノ酸配列の連続する部分によって規定される。
【0061】
用語「ドメイン」とは、本明細書で使用される場合、生体分子の公知のまたは疑われる機能に寄与する生体分子の構造をいう。ドメインは、領域またはその部分と同じ長さに及び得る;ドメインはまた、生体分子の別個の、非連続的な領域を含み得る。タンパク質ドメインの例には、Igドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが含まれるがこれらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「分子」は、低分子、ペプチド、糖、ヌクレオチド、核酸、脂質などを含むがこれらに限定されない任意の化合物を意味し、このような化合物は天然または合成であり得る。
【0063】
他に定義されない限り、本明細書で使用される科学的用語および技術的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。例示的な方法および物質が以下に記載されるが、本明細書に記載されるものと類似または等価な方法および物質もまた、本発明の実施において使用されることが可能であり、それらは当業者には明らかである。本明細書において言及されるすべての刊行物および他の参考文献は、それらの全体が参照として援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先する。物質、方法、および実施例は例示目的のみであり、限定を意味するものではない。
【0064】
本明細書および特許請求の範囲を通して、語句「含む(comprise)」またはそのバリエーション(例えば、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」)は、言及された数字または数字の群を含むことを意味するが、任意の他の数字または数字の群を排除することを意味しないことが理解される。
【0065】
(核酸配列)
本発明は、P.pastorisからのURA5遺伝子およびその改変体を含む単離された核酸分子を提供する。酵素オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRTase、EC2.4.2.10)をコードする、この遺伝子についての全長核酸配列は、図1において記載されるように同定および配列決定された。クローニングされたゲノム配列(配列番号1)の中には、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼについてのコード配列(配列番号2)が含まれている。このコードされたアミノ酸配列は、図1(配列番号3)においてもまた示されている。URA5遺伝子は、再利用可能な、選択可能な、かつ対抗選択可能なマーカーとして特に有用である。
【0066】
本明細書に提供されるものは、宿主ゲノムへの異種遺伝子(すなわち、目的の遺伝子)の安定な遺伝子組み込みを促進することが可能である核酸分子である。安定な遺伝子組み込みを促進することが可能であるURA5マーカーおよび核酸の組み合わせが、広範な株の修飾を可能にする。本明細書に開示される方法の反復使用が種々の遺伝子座において複数の遺伝子が破壊されることを可能にし、さらに任意の遺伝子または目的の遺伝子のこれらの部位における挿入を可能にすることは当業者には容易に明らかである。開示されたアプローチによって挿入される遺伝子は、宿主細胞のゲノムDNAにおいて選択された領域において安定に組み込まれる。
【0067】
1つの実施形態において、本発明は、野生型P.pastoris URA5コード配列(配列番号2)、およびそのホモログ、改変体、および誘導体を含むか、またはそれからなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。本発明はまた、野生型P.pastoris URA5遺伝子の縮重改変体である配列を含むか、またはそれからなる核酸配列を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、野生型遺伝子に対して少なくとも65%の同一性を有する野生型P.pastoris URA5遺伝子の改変体である配列を含むか、またはそれからなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。この核酸配列は、好ましくは、野生型遺伝子に対して、少なくとも70%、75%、または80%の同一性を有し得る。さらにより好ましくは、この核酸配列は、野生型遺伝子に対して、85%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらに高い同一性を有し得る。
【0068】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。配列番号3に少なくとも65%同一であるポリペプチド配列をコードする核酸分子もまた提供される。代表的には、本発明の核酸分子は、配列番号3に対して少なくとも70%、75%、または80%の同一性のポリペプチド配列をコードする。好ましくは、このコードされたポリペプチドは、配列番号3に対して85%、90%、または95%同一であり、およびその同一性は、さらにより好ましくは、98%、99%、99.9%、またはさらに高くであり得る。
【0069】
別の局面において、本発明は、P.pastorisからのSEC65遺伝子のフラグメントを提供する。URA5遺伝子から下流に位置し、かつ反対の配向にあるこのフラグメントは、図1(配列番号4)において示されるように同定された。SEC65フラグメントによってコードされるアミノ酸配列もまた、図1(配列番号5)に示される。従って、本発明は、P.pastorisからのSEC65遺伝子フラグメント、およびそのホモログ、改変体、および誘導体を含む単離された核酸分子を提供する。
【0070】
1つの実施形態において、本発明は、野生型P.pastoris SEC65遺伝子(配列番号4)およびそのホモログ、改変体、および誘導体を含むか、またはそれからなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。本発明の代替的な実施形態において、核酸配列は、P.pastoris SEC65遺伝子フラグメントの縮重改変体である。
【0071】
本発明のさらなる実施形態において、核酸配列は、野生型遺伝子フラグメントに対して、少なくとも65%の同一性を有するP.pastoris SEC65遺伝子フラグメントの改変体である。この核酸配列は、好ましくは、野生型遺伝子フラグメントに対して、少なくとも70%、75%、または80%の同一性を有し得る。さらにより好ましくは、この核酸配列は、野生型遺伝子フラグメントに対して、85%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらに高い同一性を有し得る。
【0072】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。配列番号5に少なくとも65%同一であるポリペプチド配列をコードする核酸分子もまた提供される。代表的には、本発明の核酸分子は、配列番号5に対して少なくとも70%、75%、または80%の同一性のポリペプチド配列をコードする。好ましくは、このコードされたポリペプチドは、配列番号5に対して85%、90%、または95%同一であり、およびその同一性は、さらにより好ましくは、98%、99%、99.9%、またはさらに高くであり得る。
【0073】
さらに別の局面において、本発明は、P.pastorisからのSCS7遺伝子のフラグメントを提供する。このフラグメントは、URA5遺伝子から上流に配置され、かつそれと同じ配向にあり、図1(配列番号6)に示されるように同定されている。SCS7フラグメントによってコードされるアミノ酸配列がまた、図1(配列番号7)に示される。従って、本発明は、P.pastoris野生型SCS7遺伝子フラグメントおよびその改変体を含む単離された核酸分子を提供する。
【0074】
1つの実施形態において、本発明は、野生型P.pastoris SCS7遺伝子(配列番号6)のフラグメント、およびそのホモログ、改変体、および誘導体を含むか、またはそれからなる核酸配列を有する単離された核酸分子を提供する。本発明の代替的な実施形態において、核酸配列は、P.pastoris SCS7遺伝子フラグメントの縮重改変体である。
【0075】
本発明の別のさらなる実施形態において、核酸配列は、野生型遺伝子フラグメントに対して少なくとも65%の同一性を有する野生型P.pastoris SCS7遺伝子フラグメントの改変体である。この核酸配列は、好ましくは、野生型遺伝子フラグメントに対して、少なくとも70%、75%、または80%の同一性を有し得る。さらにより好ましくは、この核酸配列は、野生型遺伝子フラグメントに対して、85%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらに高い同一性を有し得る。
【0076】
別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。配列番号7に少なくとも65%同一であるポリペプチド配列をコードする核酸分子もまた提供される。代表的には、本発明の核酸分子は、配列番号7に対して少なくとも70%、75%、または80%の同一性のポリペプチド配列をコードする。好ましくは、このコードされたポリペプチドは、配列番号7に対して85%、90%、または95%同一であり、およびその同一性は、さらにより好ましくは、98%、99%、99.9%、またはさらに高くであり得る。
【0077】
本発明はまた、上記の核酸配列分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズ
する核酸分子を提供する。上記に定義したように、および当該分野で周知であるように、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、特定の条件のセットの下での特異的DNAハイブリッドのための熱融解点(T)よりも約25℃下で実行され、ここで、Tとは、標的配列の50%が完全にマッチしたプローブにハイブリダイズする温度である。ストリンジェントな洗浄は、特定の条件のセットの下で、特異的DNAハイブリッドのためのTよりも約5℃低い温度で実行される。
【0078】
上記の核酸配列のいずれか1つのフラグメントを含む核酸分子もまた、提供される。これらのフラグメントは、好ましくは、少なくとも20の連続するヌクレオチドを含む。より好ましくは、この核酸配列のフラグメントは、少なくとも25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、またはさらにより多くの連続するヌクレオチドを含む。
【0079】
本発明の核酸配列フラグメントは、種々の系および方法において有用性を示す。例えば、このフラグメントは、種々のハイブリダイゼーション技術におけるプローブとして使用され得る。方法に依存して、標的核酸配列は、DNAまたはRNAのいずれかであり得る。標的核酸配列はハイブリダイゼーションの前に分画され得(例えば、ゲル電気泳動によって)、またはハイブリダイゼーションはインサイチュで試料上で行われ得る。当業者は、公知の配列の核酸プローブが、染色体構造を決定する際に(例えば、サザンブロッティングによって)、および遺伝子発現の測定において(例えば、ノーザンブロッティングによって)有用性を見いだすことを理解する。このような実験において、配列フラグメントは、好ましくは検出可能に標識され、その結果、標的配列へのそれらの特異的ハイブリダイゼーションが検出され得、必要に応じて定量され得る。当業者は、本発明の核酸フラグメントが、本明細書に具体的に記載されていない広範な種々のブロッティング技術において使用され得ることを理解する。
【0080】
本明細書に開示される核酸配列フラグメントはまた、マイクロアレイ上に固定化された場合に、プローブとしての有用性を見いだすこともまた、理解されるべきである。支持基材上への核酸の沈着および固定によってマイクロアレイを作製するための方法は当該分野において周知である。以下において概説されている:DNA Microarrays:A Practical Approach(Practical Approach Series),Schena(編)、Oxford University Press(1999)(ISBN:0199637768);Nature Genet 21(1)(補遺):1−60(1999);Microarray Biochip:Tools and Technology,Schena(編)、Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division(2000)(ISBN:1881299376)(これらの開示はそれらの全体が参照として本明細書に援用される)。例えば、核酸配列フラグメント(例えば、本明細書に開示される核酸配列フラグメント)を含むマイクロアレイを使用する遺伝子発現の分析は、細胞生物学および分子生物学の分野における配列フラグメントについての十分に確立された有用性である。マイクロアレイ上に固定化された配列フラグメントについての他の用途は以下に記載されている:Gerholdら、Trends Biochem.Sci.24:168−173(1999)およびZweiger、Trends Biotechnol.17:429−436(1999);DNA Microarrays:A Practical Approach(Practical Approach Series),Schena(編)、Oxford University Press(1999)(ISBN:0199637768);Nature Genet.21(1)(補遺):1−60(1999);Microarray Biochip:Tools and Technology,Schena(編)、Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division(2000)(ISBN:1881299376)(これらの各々の開示はその全体が参照として本明細書に援用される)。
【0081】
別の実施形態において、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸分子が提供される。当該分野で周知であるように、酵素活性は、種々の方法において測定され得る。例えば、OMPの加ピロリン酸分解は分光学的に追跡され得る。Grubmeyerら、J.Biol.Chem.268:20299−20304(1993)。オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性の分光学的アッセイのために有用な基質のさらなる例はまた、当該分野において公知である。Shostakら、Anal.Biochem.191:365−369(1990)。代替的には、酵素の活性は、クロマトグラフィー技術によって、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって追跡され得る。ChungおよびSloan、J.Chromatogr.371:71−81(1986)。他の方法および技術もまた、当業者によって公知であるように、酵素活性の測定のために適切であり得る。
【0082】
本発明はまた、直接反復配列に隣接された、P.pastoris URA5遺伝子、またはそのホモログ、改変体、または誘導体を含むカセットを含む組換えDNA分子を提供する。直接的反復は、効率的な相同組換えを媒介するために十分な長さであり、それによって、ポジティブ選択マーカーとしてURA5遺伝子を使用する形質転換の別のラウンドのための調製物において、宿主細胞からのURA5マーカーを欠失させるための手段を提供する。相同組換えの効率を増加させるために、直接反復配列は、好ましくは、少なくとも200ヌクレオチド長である(例えば、Wilsonら、Yeast;16:65−70(2000)を参照のこと)。代表的には、直接反復配列は、約200ヌクレオチドから約1,100ヌクレオチドまでであるが、これらはより長くてもよい。特定の好ましい実施形態において、直接反復配列は、SalmonellaのhisGセグメントに由来する。代替的には、直接反復は、lacZリーディングフレームのセグメントから得られる。当業者は、実質的にあらゆる反復配列がまた、本発明のこの局面に従って、組換えのための隣接配列を提供するために使用され得ることを容易に理解する。
【0083】
本発明のURA5−含有カセットは、宿主からのURA5配列の引き続く切除を媒介する直接反復配列に隣接するURA5配列を含む。このようなURA5カセットは、URA5遺伝子活性についての選択および対抗選択の両方を可能にする。ポジティブ選択工程は、ウラシルに対する栄養要求性を解放することに基づき、対抗選択は、ウラシル原栄養株において5−FOAに対する耐性の獲得に基づく。Boekeら、Mol.Gen.Genet.197:345−346(1984)。
【0084】
従って、本発明は、発現に際してURA5宿主における選択および対抗選択を可能にする、直接反復により隣接されるP.pastorisURA5遺伝子(例えば、lacZ−URA5−lacZ、「URA5カセット」)を含む組換え核酸分子を提供する。好ましい実施形態において、P.pastoris URA5カセットで形質転換した酵母は、宿主と組換え核酸配列との間の相同組換えによって選択された位置において、URA5遺伝子を宿主ゲノムに組み込んだ。好ましくは、宿主は、内因性URA5遺伝子座への相同組換えを阻止するために内因性のURA5配列が欠失されている。URA5カセット−含有組換え核酸分子は、好ましくは、URA5および他の所望される配列の、酵母宿主の選択の位置への組み込みを標的とする配列を含む。記載されるように、このような形質転換体は、UraからUraへの転換に基づいて選択される。次いで、URA5マーカー遺伝子に隣接する直接反復は、内部URA5マーカーを欠失する相同組換え事象を容易にする。このような事象を受けた細胞はUraに戻り、5−FOAの存在下で増殖するそれらの能力によって選択される。この方法は、宿主細胞への、異種配列の効率的で安定な組み込みを提供する。
【0085】
本発明のP.pastoris URA5マーカー選択を使用することに対するいくつかの利点が存在する。第1に、このマーカー遺伝子は比較的小さく、約1kbしかない。小さなサイズのマーカーは、より小さなプラスミドの構築を可能にする。さらに、小さなサイズは、URA5配列について欠失されていないUra宿主株中での形質転換の間、栄養要求株マーカー遺伝子の遺伝子転換の速度を減少するはずである。この望ましくない結果は、HIS4マーカーの場合において、形質転換されたコロニーの10〜50%を占め得る。HigginsおよびCregg、Meth.Mol.Biol.,103:1−15(1998)。より遅い速度の遺伝子転換は、所望の標的部位において、ノック−インを有する形質転換体の画分を増加させるはずである。本発明のP.pastoris URA5マーカー遺伝子は、さらに、自発的な逆転の頻度、および従って偽陽性のバックグラウンドコロニーをさらに減少するために、使用されて内因性のURA5宿主配列を、欠失、またはさもなくば破壊し得る。
【0086】
本発明の単離された核酸分子は、目的の配列または遺伝子をさらに含み得る。上記に記載されるように、目的の配列または遺伝子は、代表的には、宿主細胞中で通常は産生されないタンパク質をコードする。好ましい実施形態において、目的の配列または遺伝子で形質転換された酵母は、宿主と組換え核酸配列との間での相同組換えによって選択される位置に置いて、例えば、宿主ゲノム中に、安定に取り込まれた目的の配列または遺伝子を有する。目的の配列または遺伝子は、好ましくは、1つ以上の発現制御配列に連結され得、その結果、その配列によってコードされたタンパク質が、適切な条件下で、単離された核酸分子を含む宿主細胞中で発現され得る。
【0087】
本発明はさらに、P.pastoris SEC65タンパク質のフラグメントをコードする単離された核酸分子を提供する。このタンパク質のS.cerevisiaeホモログは哺乳動物SRP19、シグナル認識粒子のサブユニットと関連し、かつ同様の機能を有すると考えられている。Hannら、Nature 356:532−533(1992);StirlingおよびHewitt、Nature 356:534−537(1992)。S.cerevisiae SEC65遺伝子における変異は、温度感受性の細胞増殖を引き起こし得、かついくつかの分泌タンパク質および膜結合タンパク質の移行を欠損する。S.cerevisiae SEC65タンパク質は、シグナル認識粒子との別のサブユニット、SRP54pの安定な結合のために必要とされる。同文献。SRP54pの過剰発現は、SEC65遺伝子の温度感受性の欠損を有する細胞において、増殖およびタンパク質移行の欠損を抑制する。P.pastoris SEC65遺伝子のフラグメントをコードする核酸分子は、全長遺伝子を同定するために使用され得、かつさらにコードされたタンパク質の発現および機能的活性をプローブするためにさらに使用され得る。このような活性には、P.pastorisシグナル認識粒子における構造的および機能的役割、ならびに小胞体を横切るタンパク質移行に対する関連する効果が含まれ得る。真菌SEC65−コードタンパク質間で共有された拡張されたドメイン構造、およびS.cerevisiae SEC65の短縮変異体の、この遺伝子における条件致死突然変異体を相補する能力(Regnacqら、Mol Microbiol 29:753−762(1998))は、P.pastoris SEC65遺伝子のフラグメントによってコードされるポリペプチドが同様の有用性を提供し得ることを示す。
【0088】
本発明はさらに、P.pastoris SCS7タンパク質のフラグメントをコードする単離された核酸分子を提供する。SCS7のS.cerevisiaeホモログを欠くS.cerevisiaeの変異体は、野生型細胞における優先型であるイノシトールホスホリルセラミド種、IPC−Cを蓄積し損なう。Dunnら、Yeast 14:311−321(1998)。その代わりに、これらの変異体は、アミド結合C26−脂肪酸上でヒドロキシル化されないと考えられているIPC−B種を蓄積する。さらに、SCS7遺伝子の除去は、IPC−Cのマンノシル化のために必要とされる遺伝子であるCSG1およびCSG2における変異のCa2+感受性表現型を抑制する。同文献。これらの変異を有する細胞におけるIPC−Cの蓄積は、細胞をCa2+感受性にする。全長S.cerevisiae SCS7遺伝子は、シトクロムb5様ドメインと、脂肪酸およびステロールの不飽和化またはヒドロキシル化を触媒するために鉄および酸素を使用するシトクロムb5依存性酵素のファミリーに類似するドメインの両方のドメインを含むタンパク質をコードする。同文献。それゆえに、コードされるタンパク質は、IPC−CのC26脂肪酸をヒドロキシル化する酵素であるらしい。細胞の膜組成に対するSCS7遺伝子における変異の効果は、Haakら、J.Biol.Chem.272:29704−29710(1997)(その全体が参照として本明細書に援用される)において記載されるように測定され得る。
【0089】
本発明のP.pastoris SCS7タンパク質のフラグメントをコードする単離された核酸分子は、全長型のSCS7遺伝子を同定および特徴付けするために使用され得る。本発明の単離された核酸分子はまた、SCS7遺伝子の発現を測定するため、ならびにこの遺伝子およびそのコードされるタンパク質の特徴および機能、ならびに細胞の代謝におけるこの遺伝子の変化の効果を特徴付けするために使用され得る。
【0090】
(P.pastoris URA5のクローニングのために有用な縮重オリゴヌクレオチド)
別の実施形態において、P.pastoris URA5遺伝子の単離において有用な縮重オリゴヌクレオチドが提供される。これらのオリゴヌクレオチドは、P.pastoris URA5遺伝子の異なる部分を増幅することが可能である。これらは、S.cerevisiae URA10遺伝子の一部に結合し得、かつこれを増幅し得る。これらのオリゴヌクレオチドがP.pastorisにおいてURA5遺伝子を増幅するのみであることは、この生物がURA10遺伝子を有していないことを示唆する。このオリゴヌクレオチドは、図3に示されるように、URA5遺伝子の位置にアニールする。このようなオリゴヌクレオチドはまた、ハイブリダイゼーションおよび増幅実験において有用である。
【0091】
(ベクター)
本明細書にさらに記載されるような、上記の本明細書の核酸分子を含むベクター(発現ベクターを含む)もまた提供される。第1の実施形態において、このベクターは、上記の単離された核酸分子を含む。代替的な実施形態において、本発明のベクターは、1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された上記の核酸分子を含む。従って、本発明のベクターは、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現するために使用され得る。
【0092】
本発明のベクターはまた、それらが各細胞中で単一コピーで安定に維持されることを保証するエレメント(例えば、「CEN」などのセントロメア様配列)を含み得る。代替的には、自律複製ベクターは、ベクターが宿主細胞あたり1コピーよりも多く複製されることを可能にするエレメント(例えば、自律複製配列、すなわち「ARS」)を必要に応じて含み得る。Methods in Enzymology、第350巻:Guide to yeast genetics and molecular and cell biology,Part B,GuthrieおよびFink(編)、Academic Press(2002)。
【0093】
本発明の好ましい実施形態において、ベクターは、遺伝子破壊または置換カセットとして機能するように設計された、自律複製しない統合型ベクターである。この型の統合型ベクターの例は、好ましくは、直接反復配列によって隣接される、P.pastorisオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(「OPT」)コード配列に連結された異種標的遺伝子の一部を少なくとも含む。従って、このベクターは、統合型ベクターを有する細胞中でOPT活性によって選択される配列の標的化された組み込みを可能にする。OPTコード配列の引き続く切除は、隣接する直接反復配列によって容易にされる。
【0094】
他の実施形態において、本発明の統合型ベクターは、所望の特性を有するタンパク質をコードするさらなる異種配列、例えば、グリコシル化酵素をコードする配列を含み得、その結果、所望の配列が、組み込みの結果として宿主細胞ゲノムに導入され得る。これらの配列は、OPTコード配列が、隣接する直接反復配列間の組換えによって欠失された後でさえ、宿主ゲノムに残っている。
【0095】
(単離されたポリペプチド)
本発明の別の局面に従って、本発明の核酸分子によってコードされる単離されたポリペプチド(ムテイン、対立遺伝子改変体、フラグメント、誘導体、およびアナログを含む)が提供される。1つの実施形態において、単離されたポリペプチドは、配列番号3、5、または7に対応するポリペプチド配列を含む。本発明の代替的な実施形態において、単離されたポリペプチドは、配列番号3、5、または7に対して少なくとも65%同一であるポリペプチド配列を含む。好ましくは、本発明の単離されたポリペプチドは、配列番号3、5、または7に対して少なくとも70%、75%、または80%の同一性を有する。より好ましくは、この同一性は85%、90%、または95%であるが、配列番号3、5、または7に対する同一性は、98%、99%、99.9%、またはなおより高くであり得る。
【0096】
本発明の他の実施形態に従って、上記のポリペプチド配列のフラグメントを含む単離されたポリペプチドが提供される。これらのフラグメントは、好ましくは、少なくとも20個の連続するアミノ酸、より好ましくは、少なくとも25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、またはさらにより多くのアミノ酸を含む。
【0097】
本発明のポリペプチドはまた、上記のポリペプチド配列と異種ポリペプチドとの間の融合物を含む。異種配列は、例えば、組換え的に発現されたタンパク質の精製および/または可視化を容易にするように設計された異種配列を含み得る。タンパク質融合物の他の非限定的な例には、ファージまたは細胞の表面上でのコードされたタンパク質のディスプレイを可能にするもの、グリーン蛍光タンパク質(GFP)などの固有の蛍光タンパク質に対する融合物、およびIgG Fc領域に対する融合物が含まれる。
【0098】
(宿主細胞)
本発明の別の局面において、本発明の核酸分子またはベクターで形質転換した宿主細胞、およびその子孫が提供される。本発明のある実施形態において、これらの細胞は、ベクター上に本発明の核酸配列を有する。これらのベクターは自由に複製するベクターであってもよいが、そうである必要はない(以下を参照のこと)。本発明の他の実施形態において、核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれている。好ましい実施形態において、本発明の宿主細胞は、本発明の単離された核酸の破壊、欠失、または変異を用いる組換えによって変異されており、その結果、宿主細胞中のオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼの活性が、変異を欠く宿主細胞と比較して減少している。本発明の宿主細胞は、好ましくは、Pichia pastorisまたはPichia methanolicaであるが、他の宿主細胞、とりわけ酵母細胞もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0099】
本発明の他の実施形態においてオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼが欠損している宿主細胞が、本発明の核酸分子および/または方法を使用して、宿主細胞ゲノムに1つ以上の配列および/または目的の遺伝子を組み込むために使用される。ある実施形態において、目的の配列または遺伝子は、宿主細胞の内因性遺伝子を破壊するように組み込まれる。組み込みを含む細胞は、P.pastorisオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子の同時の組み込みに起因して、ウラシル原栄養性の回復によって同定される。さらなる本発明の実施形態において、修飾宿主細胞のウラシル栄養要求性は、P.pastorisオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が相同組換えによって切除されている細胞の選択によって提供される。
【0100】
(抗体)
別の局面において、本発明は、本発明の単離されたポリペプチドおよびその誘導体、または本発明の単離された核酸によってコードされる1つ以上のポリペプチドに特異的に結合する、単離された抗体(そのフラグメントおよび誘導体を含む)を提供する。本発明の抗体は、そのネイティブなコンホメーションあるポリペプチド上に存在するものとして、またはある場合において、変性したときのポリペプチド上に存在するもの(例えば、SDS中での可溶化によって)としてのいずれかで、このようなポリペプチドまたはポリフラグメントの直鎖状エピトープ、不連続エピトープ、またはコンホメーション的エピトープについて特異的であり得る。本発明によって提供される有用な抗体フラグメントの中には、Fab、Fab’、Fv、F(ab’)、および単鎖抗体Fvフラグメントがある。
【0101】
「特異的に結合する」および「特異的結合」によって、抗体および第1の分子種が一緒に混合される他の分子種に対する結合に優先して、抗体が第1の分子種に結合する能力が意図される。抗体は、それが第1の分子種に特異的に結合し得るときに、第1の分子種を特異的に「認識する」といわれる。
【0102】
当該分野で周知であるように、抗体が混合物中で分子種間を区別し得る程度は、部分的には、混合物中の種のコンホメーションの関連性に依存する;代表的には、本発明の抗体は、関連性のないポリペプチドとの偶発的な結合に対して、少なくとも2倍、より代表的には少なくとも5倍、代表的には10倍、25倍、50倍、75倍より多く、およびしばしば100倍より多く、および時折、500倍または1000倍より多く区別する。
【0103】
代表的には、本発明のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントについての本発明の抗体(または抗体マルチマー、IgMペンタマーの場合におけるように)の親和性または結合性は、少なくとも約1×10−6M、代表的には少なくとも約5×10−7M、通常少なくとも約1×10−7Mであり、1×10−8M、5×10−9M、1×10−10M、およびさらにより強い親和性または結合性が特に有用であることが分かった。
【0104】
本発明の単離された抗体は、任意の哺乳動物種からの天然に存在する型、例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、およびIgAであり得る。例えば、抗体は、齧歯類(代表的にはマウスであるが、ラット、モルモット、およびハムスター)、ウサギ目(代表的にはウサギ)、およびまたより大きな哺乳動物(例えば、ヒツジ、ヤギ、ウシ、およびウマ)を含む種から通常得られる。動物は、代表的には、本発明のポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを用いて、標準的な免疫プロトコールに従って同意の下で免疫される。
【0105】
本発明のポリペプチドの8個以上の連続するアミノ酸の実質的にすべてのフラグメントが、二官能性リンカーを使用して便利にキャリア(代表的には、ウシサイログロブリン、キーホールリンペットヘモシアニン、またはウシ血清アルブミン)に結合体化されたときに、免疫原として有効に使用され得る。免疫原性はまた、他の部分への本発明のポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントの融合物によって付与され得る。例えば、本発明のペプチドは、分枝ポリリジンコアマトリックス上の固相合成によって産生され得;これらの複数の抗原性ペプチド(MAP)は高純度、結合性の増加、正確な化学的定義、およびワクチン開発における安全性の改善を提供する。例えば、Tamら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5409−5413(1988);Posnettら、J.Biol.Chem.263,1719−1725(1988)を参照のこと。
【0106】
免疫のためのプロトコールは当該分野で十分に確立されている。このようなプロトコールは、しばしば、フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントなどのアジュバントを伴うかまたは伴わないかのいずれかである、複数の免疫を含む。本発明の抗体はポリクローナルまたはモノクローナルであり得、ポリクローナル抗体は、本発明のタンパク質の免疫組織化学的検出において特定の利点を有し、そしてモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質の特定のエピトープを同定および区別する際に利点を有する。免疫後、本発明の抗体は、当該分野において受容されている任意の技術を使用して産生され得る。組換え抗体産生のための宿主細胞(全抗体、抗体フラグメント、または抗体誘導体のいずれか)は、原核細胞または真核細胞であり得る。当該分野において周知であるように、原核生物宿主は、ファージディスプレイ抗体を産生するために特に有用である。哺乳動物、昆虫、植物、および真菌の細胞を含む真核生物細胞もまた、本発明の抗体、抗体フラグメント、および抗体誘導体の発現のために有用である。本発明の抗体はまた、無細胞翻訳によって調製され得る。
【0107】
本発明の単離された抗体(そのフラグメントおよび誘導体を含む)は有用に標識され得る。それゆえに、本発明の別の局面は、本発明のポリペプチドおよびポリペプチドフラグメントの1つ以上に特異的に結合する標識された抗体を提供することである。標識の選択は、部分的には、所望される用途に依存する。ある場合において、本発明の抗体は、酵素で有用に標識され得る。代替的には、この抗体は、金コロイドまたは蛍光団で標識され得る。標識されたアビジン、ストレプトアビジン、キャプタビジン、またはニュートラビジンを使用する二次的検出のために、本発明の抗体は、ビオチンで有用に標識され得る。本発明の抗体が、例えば、ウェスタンブロッティング適用のために使用される場合、これらは、33P、32P、H、および125Iなどの放射性同位元素で有用に標識され得る。理解されるように、上記の標識の使用は、任意の特定の適用に限定されない。
【0108】
(核酸配列の遺伝子組み込みのための方法−オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする宿主遺伝子の破壊)
本発明の別の実施形態に従って、宿主細胞のゲノムへの異種核酸配列の遺伝子組み込みのための方法が提供される。この実施形態の1つの局面において、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする宿主遺伝子は、本明細書に開示されたP.pastoris URA5遺伝子由来の、破壊され、欠失され、またはさもなくば変異された核酸配列の導入によって破壊される。従って、点変異、再配列、挿入、または好ましくは欠失(「マークされた欠失」を含む、ここで、異種選択可能配列は置換された欠失されたURA5配列を有する)を有する破壊された宿主細胞が提供される。URA5遺伝子が破壊され、かつ結果的にオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を欠く宿主細胞は、異種配列が標的化された組み込みによって宿主細胞ゲノムに導入され得る、本発明のさらなる実施形態のための適切な宿主細胞として働く。
【0109】
(核酸配列の遺伝子組み込みのための方法−マーカー配列と結合されている目的の配列の導入)
本発明の別の局面において、異種核酸配列が、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPT)活性を欠く(すなわち、Ura5)酵母宿主細胞に導入される。この方法を使用して導入される異種核酸配列は、P.pastoris OPT活性をコードする核酸配列に連結される(好ましくは、ベクター上で)。コンピテントUra5宿主細胞へのベクターの形質転換の債に、本発明のOPT−コード配列に連結された異種配列を含む細胞が、ウラシル付加の非存在下で増殖する能力に基づいて選択され得る。
【0110】
1つの実施形態において、本発明の方法は、細胞複製の間に、母細胞から娘細胞に継代される自律複製ベクターをコンピテントUra5宿主細胞に導入する工程を包含する。自律複製ベクターは、P.pastoris OPT−コード配列に連結された目的の異種核酸配列を含み、かつ必要に応じて、それが各細胞中で単一のコピーで安定に維持されることを保証するエレメント(例えば、「CEN」などのセントロメア様配列)を含む。別の実施形態において、自律複製ベクターは、ベクターが宿主細胞あたり1コピーよりも多く複製されることを可能にするエレメント(例えば、自律複製配列、すなわち「ARS」)を必要に応じて含み得る。
【0111】
好ましい実施形態において、ベクターは、遺伝子破壊または置換カセットとして機能するように設計された、自律複製しない統合型ベクターである。本発明の統合型ベクターは、好ましくは、直接反復配列によって隣接される、本発明のP.pastoris OPT−コード配列に連結された「標的遺伝子配列」(宿主細胞中の所望のゲノム部位における配列との相同組換えを受け得る配列)を含む1つ以上の領域を含む(以下を参照のこと)。OPTコード配列は、標的遺伝子配列に隣接し得るか(例えば、遺伝子置換カセット)、または標的遺伝子配列を破壊するように操作され得る(例えば、遺伝子破壊カセット)。置換カセットまたは破壊カセットにおける標的遺伝子配列の存在は、相同組換えによって、宿主中の特異的ゲノム領域へのカセットの組み込みを標的化する。
【0112】
本発明の好ましい方法において、望ましくない活性(例えば、酵素活性)をコードする宿主遺伝子は、相同組換えによって本発明のP.pastoris OPTコード置換カセットまたは破壊カセットを宿主遺伝子に標的化することによってに変異され(例えば、中断され)得る。好ましい実施形態において、望ましくないグリコシル化酵素活性(例えば、OCH1などの開始マンノシルトランスフェラーゼ活性)は、宿主細胞中で破壊され、細胞中で産生されるポリペプチドのグリコシル化を変化させる。
【0113】
好ましくは、本発明の標的遺伝子の置換カセットまたは破壊カセットは、P.pastorisオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を隣接する直接反復配列をさらに含む。このような直接反復配列の特性はすでに記載されている。宿主細胞ゲノムへのカセットの標的化された組み込み、およびウラシルの非存在下での増殖のための組み込み体の選択の後、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子に隣接する直接反復配列は、宿主ゲノムからのOPT−コード配列の切除を促進する。オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を欠く細胞は、5−FOAを含む培地中で増殖するそれらの能力について便利に対抗選択される。しかし、当業者は、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を欠く細胞について対抗選択するために他の手段が使用され得ることを理解している。対抗選択段階から得られた細胞はオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を欠くので、同じP.pastoris OPT−コード核酸配列が、本発明のこの局面に従って、反復される遺伝子破壊事象において使用され得る。
【0114】
本発明のなおさらなる実施形態において、異種タンパク質をコードする遺伝子は、遺伝子置換カセットまたは遺伝子破壊カセット中で、P.pastoris URA5に連結して操作される。好ましい実施形態において、このカセットは、望ましくない活性(例えば、酵素活性)をコードする宿主ゲノムの遺伝子座に組み込まれる。例えば、1つの好ましい実施形態において、このカセットは、開始マンノシルトランスフェラーゼ活性をコードする宿主遺伝子(例えば、OCH1遺伝子)に組み込まれる。より好ましい実施形態において、このカセットはさらに、所望のグリコシル化酵素(マンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnT)、UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーター、ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、シアリルトランスフェラーゼ(ST)、およびタンパク質マンノシルトランスフェラーゼ(PMT)を含むがこれらに限定されない)を含む1種以上の遺伝子をさらに含む。別の好ましい実施形態において、このカセットは、有用な治療タンパク質、例えば、ヒトプラスミノーゲンのkringleドメイン、エリスロポエチン、サイトカイン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンω、および顆粒球−CSFであるがこれらに限定されない)、凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、およびヒトプロテインC)、可溶性IgEレセプターα鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、ウロキナーゼ、チマーゼ、尿素トリプシンインヒビター、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄前駆細胞阻害因子−1、オステオプロテゲリン、α−1抗トリプシン、DNase II、およびα−フェトプロテインをコードする1種以上の遺伝子を含む。操作されたカセットは、このようなグリコシル化酵素をコードする「ノッキング−イン」遺伝子および他の目的の配列が、酵母細胞株において、ヒト様グリコシル化を有する糖タンパク質および他の有用な目的のタンパク質を産生するために有用である。ヒト様糖タンパク質を産生するための代表的な方法は、WO02/00879において記載されており、これは参照として本明細書に援用される。
【0115】
以下の実施例は例示目的のみのためであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
(一般的な材料および方法)
Escherichia coli株DH5α(Invitrogen,Carlsbad,CA)を、組換えDNA研究のために使用した。P.pastoris株NRRL Y−11430(野生型)およびJC308(ade1 arg4 his4 ura3)(Lin Cereghinoら、Gene 263:159−169(2001))を、酵母株の構築のために使用した。PCR反応を、ExTaq(TaKaRa,Madison,WI)、Taq Poly(Promega,Madison,WI)、またはPfu Turbo(Stratagene,Cedar Creek,TX)のいずれかを使用して、供給業者の推奨に従って実行した。制限酵素および修飾酵素は、New England Biolabs(Beverly,MA)またはPromegaから入手した。
【0117】
修飾酵母株のPCR分析は以下の通りであった。単一コロニーを、100μlの破壊緩衝液(100mM NaCl、10mM Tris、pH 8、0.1mM EDTA)中に再懸濁した。100mgの酸洗浄したガラスビーズおよび100μlのフェノール−クロロホルムの付加後、溶液を1分間ボルテックスした。次いで、混合物を微量遠心分離機中で5分間、最大速度で遠心分離し、上清を回収し、そしてゲノムDNAを1mlの氷冷エタノールの付加により沈殿させた。70%エタノールを用いる洗浄後、ペレットを10μl破壊緩衝液中で再懸濁し、0.5から1μlをPCR分析のために使用した。
【0118】
(P.pastoris URA5遺伝子のクローニング)
いくつかのストラテジーが、P.pastoris URA5遺伝子をクローニングおよび同定するために使用され得る。好ましい方法は、種々の酵母種における遺伝子の整列の保存と組み合わせて、既存のS.cerevisiae URA5遺伝子の配列相同性を使用する工程を包含する。2種の遺伝子、URA5およびSEC65は、少なくとも4種の酵母種:S.cerevisiae、K.lactis、C.albicans、およびY.lipolyticaにおいて互いに反対の配向で隣接して配置されている。SanchezおよびDominguez、Yeast 18:807−813(2001)。これらの遺伝子の各々によってコードされるタンパク質配列は、これらおよび他の微生物中で知られており(図2)、これらの配列は、例えば、CODEHOPストラテジーを使用して、縮重プライマーを設計した。Roseら、Nucleic Acids Res 26:1628−1635(1998)。URA5−1(図3)(配列番号23)およびSec65−1
【0119】
【化1】

(配列番号29)と名付けられたこのような2つのプライマーを使用して、P.pastorisゲノムDNAから1.1kb DNAフラグメントを増幅した。URA5−1は、アミノ酸27から開始するトップ鎖上にある。次いで、このPCRフラグメントを、pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にクローニングし、そして配列決定した。
【0120】
PCRによって生成した1100bpフラグメントは、S.cerevisiaeのURA5に対して一方の末端で、ならびにS.cerevisiae、K.lactis、Y.lipolytica、およびS.pombeからのSEC65遺伝子に対して他方の末端で、高い相同性を示した。誘導されたヌクレオチド配列を使用して、Integrated Genomics,Inc.(Chicago,IL)によって提供されるように、P.pastorisの部分ゲノム配列を検索した。この検索の結果は、プライマー部位に隣接したさらなる0.9kbのDNA配列を含む重複するDNAフラグメントを同定した。タンパク質翻訳のための推定開始コドンがこの配列中にある。この推定開始コドンには、上流の約150ヌクレオチドの調節配列(プロモーター配列を含む)およびS.cerevisiae SCS7に対して高い相同性を有する遺伝子の約0.7kbの3’領域が先行する(図1)。P.pastoris URA5遺伝子の翻訳によって誘導されたタンパク質配列は、S.cerevisiaeからのURA5遺伝子に対して約64%の同一性および約78%の類似性を示し、他の種からのURA5遺伝子に対してもまた高い相同性を示した。完全な1947bpフラグメントを図1に示す。
【0121】
(代替的な縮重オリゴヌクレオチドを使用するP.pastoris URA5のクローニング)
縮重プライマーを、CODEHOPストラテジーを使用して設計した。Roseら、Nucleic Acids Res 26:1628−1635(1998)。URA5−1(配列番号23)はコード鎖の縮重型であり、アミノ酸27をコードするコドンから開始する。URA5−2(配列番号24)はアミノ酸66をコードするコドンから開始するコード鎖の縮重型である。URA5−3(配列番号25)は、URA5−2の部分相補物である。URA5−4(配列番号26)はアミノ酸105をコードするコドンから開始するコード鎖の縮重型である。URA5−5(配列番号27)はURA5−4の部分的相補物である。URA5−6(配列番号28)はコード鎖の縮重型であり、アミノ酸130をコードするコドンで開始するコード鎖のセグメントにハイブリダイズするように設計されている。オリゴヌクレオチドによって結合されるURA5中の配列および位置を図3に図示する。
【0122】
(実施例2)
(P.pastoris URA5遺伝子の破壊)
クローニングされたURA5遺伝子を、遺伝子特異的プライマーとともに使用して、P.pastorisのゲノムからのURA5遺伝子を破壊するための構築物を生成し得る。破壊されたURA5遺伝子を有する宿主細胞を、以下のようにP.pastoris URA5破壊カセットを使用して作製した。
【0123】
トランスポゾンTn903のカナマイシン耐性遺伝子を含む1.5kbのSacI、XbaIフラグメントを、プラスミドpUG6(Guldenerら、Nucleic Acids Res.24:2519−2524(1996))から切除し、pUC19(New England Biolabs,Beverly,MA)のSacI、XbaI部位にクローニングし、pJN374を得た。オリゴヌクレオチドUra5−55
【0124】
【化2】

(配列番号30)およびUra5−53p
【0125】
【化3】

(配列番号31)を、P.pastorisゲノムDNAをテンプレートとして、およびPfu Turbo DNAポリメラーゼを使用してURA5 ATGの上流の領域を増幅するために使用した。得られたDNAフラグメントをEcoRVで切断し、pJN374のEcoICRI部位にクローニングした。次いで、得られたプラスミドをSalIおよびSphIで消化した。コード配列の一部およびURA5遺伝子の3’領域に対応するDNAフラグメントを、オリゴヌクレオチドUra5−35p
【0126】
【化4】

(配列番号32)およびUra5−33
【0127】
【化5】

(配列番号33)を使用して増幅した。このフラグメントを、切断したプラスミドに挿入して、pJN395(図5)を作製した。このプラスミドにおいて、P.pastoris URA5遺伝子のコドン27〜39は、カナマイシン耐性遺伝子によって置き換えられていた。
【0128】
EcoRIおよびSphIを用いるpJN395の消化後、線状化された破壊カセットを、エレクトロポレーションによってP.pastoris野生型株NRRL Y−11430(ATCC 76273)に形質転換し、そして細胞を、300mg/lジェネテシン(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含むYPDプレート(Methods in Enzymology、第350巻:Guide to yeast genetics and molecular and cell biology,Part B,GuthrieおよびFink(編)、Academic Press(2002))上にプレートした。30℃における4日間のインキュベーションの後、約10,000クローンを、5−FOAを含むプレート(1.4%酵母窒素ベース、2%デキストロース、0.2g/lウラシル、1gl 5−FOA、4mg/l ビオチン、1.5%寒天)上で複製し、30℃で7日間インキュベートした。5−FOAに耐性であるコロニー(240コロニー)を5−FOAプレート上で再ストリークし、次いで、YPDおよびUraドロップアウトプレートに適用した(Methods in Enzymology、第350巻:Guide to yeast genetics and molecular and cell biology,Part B,GuthrieおよびFink(編)、Academic Press(2002))。Uraドロップアウトプレート上で増殖し損ねたが、YPD上で増殖することが可能であった細胞(もともとの240個の耐性コロニーのうちの205個)を、次いで液体YPD中で増幅した。各約10細胞を、単一のUraドロップアウトプレート上にプレートし、復帰突然変異株についてチェックした。13個のクローンがUraドロップアウトプレート上でコロニーを生じ、これはさらに試験しなかった。他のクローンは自発的に復帰することはできなかった。YPDおよび5−FOA上での最も強固な増殖に基づいて、31個のクローンを拾い上げ、コロニーPCRによって試験し、そのうちの30個がカナマイシンでマークされたURA5ノックアウトであることが見い出された。これらの株中でのゲノムURA5遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子で破壊されたことを確証するために、コロニーPCR反応物の1つをBglIIまたはXbaIで消化した。予想された制限パターンを示す株(2.35kbおよび1.05kb)をYJN165と名付けた。
【0129】
(実施例3)
(P.pastorisの安定な遺伝子修飾のためのベクターのセットの構築)
Pichia pastorisにおける安定な遺伝子置き換えのために有用なベクターのセットを以下に記載するように構築した。高コピー数ベクター pUC19(Yanisch−Perronら、Gene 33:103−119(1985))に基づいて、一連のモジュラープラスミドをアセンブルした。これは、数回の単純なサブクローニング工程の後で、P.pastoris遺伝子を、強力なP.pastoris GAPDHプロモーターの制御下で、目的の異種遺伝子と置き換えるために使用され得る。プラスミドpJN266(図4)は、P.pastoris KEXI遺伝子の5’領域および3’領域に相同である2つのフラグメントからなる。これらのセグメントは、P.pastoris GAPDHプロモーター、S.cerevisiaeCYCI転写終結発現カセット(「CYC1 TT」)およびS.cerevisiae URA3栄養要求性マーカーカセットに隣接する。このプラスミドのすべての領域にマルチプル制限サイトが隣接し、そして個々に置換され得る。この発現カセットは、異種遺伝子の挿入のための複数のクローニング部位を含む。
【0130】
2つの再使用可能な栄養要求性マーカーカセットを、Luら、Appl.Microbiol.Biotechnol.49:141−146(1998)およびAlaniら、Genetics 116:541−545(1987)によって記載されるアプローチに基づいて、組換え部位としてlacZリーディングフレームのセグメントからの直接反復を使用して構築した。対抗選択可能である栄養要求性マーカーとして、P.pastoris URA3遺伝子を含む2kbDNAセグメント、またはP.pastoris URA5遺伝子を有する1kbフラグメントを使用した。次いで、両方のマーカーカセットを、P.pastoris OCH1ノックアウトプラスミドに挿入した。次いで、P.pastoris URA5含有プラスミドを、K.lactisのUDP−N−アセチルグルコサミントランスポーターについての異種遺伝子を含むプラスミドを生成するためにさらに修飾した。
【0131】
(方法)
プラスミド構築の第1の段階は、ノックアウトされる遺伝子の5’領域および3’領域についてのスペースホルダーとして、P.pastorisのKEX1遺伝子のDNA領域を含むユニバーサルプラスミドのセット(Boehmら、Yeast 15:563−572(1999))を作製する工程を含んだ。このプラスミドはまた、栄養要求性マーカーおよび外因性遺伝子の挿入のためのマルチプルクローニングサイトを有する発現カセットのためのスペースホルダーとして、細菌の直接反復配列(Alaniら、Genetics 116:541−545(1987))に隣接された、S.cerevisiae URA3遺伝子を含んだ。
【0132】
P.pastoris KEX1−5’領域の0.9kbフラグメントを、プライマーKex55
【0133】
【化6】

(配列番号34)およびKex53
【0134】
【化7】

(配列番号35)を使用して、P.pastorisゲノムDNAをテンプレートとして用いて、PCRによって増幅した。増幅されたフラグメントを、pUC19(New England Biolabs,Beverly,MA)のSacI部位、SalI部位にクローニングした。得られるプラスミドをBamHIおよびSalIで切断した。プライマーKex35
【0135】
【化8】

(配列番号36)およびKex33
【0136】
【化9】

(配列番号37)を使用して、P.pastorisゲノムDNAをテンプレートとして用いて増幅したKEXI−3’領域の0.8kbフラグメントを、切断されたプラスミドにクローニングして、pJN262を作製した。このプラスミドをさらに、BamHIで切断した。次いで、pNKY51(Alaniら、Genetics 116:541−545(1987))からの3.8kb BamHI、BglIIフラグメントを、両方の可能な方向でこの部位に挿入して、pJN263およびpJN264を生成した。
【0137】
発現カセットを、クローニング部位としてNotIおよびPacIを使用して作製した。P.pastorisのGAPDHプロモーターを、プライマーGap5
【0138】
【化10】

(配列番号38)およびGap3
【0139】
【化11】

(配列番号39)を使用して、プラスミドpGAPZ−A(Invitrogen,Carlsbad,CA)をテンプレートとして用いて増幅した。増幅したセグメントを、pUC19(New England Biolabs,Beverly,MA)のBamHI部位、SphI部位にクローニングした。得られるプラスミドを、SpeIおよびSphIで切断した。CYC1点S.cerevisiaeyターミネーター領域を、プライマーCyc5
【0140】
【化12】

(配列番号40)およびCyc 3
【0141】
【化13】

(配列番号41)を使用して、プラスミドpPICZ−A(Invitrogen,Carlsbad,CA)をテンプレートとして用いて増幅した。増幅したセグメントを切断して、pJN261を作製した。発現カセットを、このプラスミドをBamHIでの消化によって生成した。このフラグメントを、プラスミドpJN265を生成するためにpJN263(上記)に、またはプラスミドpJN266およびpJN267を生成するためにpJN264(上記)のいずれかに、インサートの方向に依存してクローニングした。pJN266のマップを図4に示す。
【0142】
P.pastoris OCH1遺伝子についてのノックアウトプラスミドを、SalIおよびSpeIを用いてpJN263を消化することによって作製した。プライマーOch55
【0143】
【化14】

(配列番号42)およびOch53
【0144】
【化15】

(配列番号43)を使用して、P.pastorisゲノムDNAをテンプレートとして用いて増幅されたOCH1−5’領域の2.9kb DNAフラグメントを、オープン部位にクローニングした。得られるプラスミドを、EcoRIおよびPmeIで切断した。プライマーOch35
【0145】
【化16】

(配列番号44)およびOch33
【0146】
【化17】

(配列番号45)を使用して、P.pastorisゲノムDNAをテンプレートとして用いて増幅されたOCH1−3’領域の1.0kb DNAフラグメントを、切断したプラスミドに挿入して、pJN298を生成した。同時にOCH1遺伝子をノックアウトしかつ新規な遺伝子を導入する可能性を許容するために、pJN261(上記)のBamHI発現カセットを、pJN298の独特なBamHI部位にクローニングし、pJN299を作製する。
【0147】
URA3およびURA5についてのP.pastoris遺伝子破壊カセットを、Luら、Appl.Microbiol.Biotechnol.49:141−146(1998)に記載されるものと同様のストラテジーを使用して構築した。P.pastoris URA3遺伝子の2.0kb PstI、SpeIフラグメントを、pUC19(New England Biolabs,Beverly,MA)のPstI、XbaI部位に挿入し、pJN306を作製した。E.coliからのlacZオープンリーディングフレームの0.7kb SacI、PvuII DNA(例えば、Kalninsら、EMBO J.2:593−597(1983)を参照のこと)を、SacI部位、SmaI部位にクローニングして、pJN308を生じた。PstIを用いるpJN308の消化およびT4 DNAポリメラーゼを用いる処理の後、T4 DNAポリメラーゼによって平滑末端化された、lacZからのSacI−PvuIIフラグメントを、プラスミドに挿入してpJN315を生成した(図4)。lacZ/URA3破壊カセットを、SacIおよびSphIを用いるpJN315の消化によって遊離させ、そしてT4 DNAポリメラーゼを用いて平滑末端化した、次いで、このカセットフラグメントを、PmeIおよびAflIIで消化し、かつT4 DNAポリメラーゼで平滑末端化したpJN299(上記)のバックボーンにクローニングした。得られるプラスミドをpJN329と名付けた(図4)。Choiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5022−5027(2003)もまた参照のこと。
【0148】
lacZ/URA5破壊カセットを生成するために、lacZのSacI、PvuIIフラグメントを、pUC19のSacI部位、SmaI部位にクローニングした。得られるプラスミドをPstIで消化しかつ平滑末端化し、T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化したlacZフラグメントをプラスミドに挿入して、pJN316を生成した。P.pastoris URA5遺伝子の1.0kbフラグメントを、プライマーUra5Comp5
【0149】
【化18】

(配列番号46)およびUra5Comp3
【0150】
【化19】

(配列番号47)を使用してゲノムDNAから増幅し、pJN316のBamHI部位、XbaI部位にクローニングして、pJN396(図5)を生成した。lacZ/URA5カセットを、EcoRIおよびSphIを用いるこのプラスミドの消化によって遊離させた。
【0151】
異なる栄養要求性マーカーを含むOCH1ノックアウトプラスミドを作製するために、pJN299(上記)を、PmeIおよびAflIIで消化し、そしてT4 DNAポリメラーゼで処理した。SacIおよびSphIを用いるpJN315(図4)の消化、およびEcoRIおよびSphIを用いるpJN396(図5)の消化後、各栄養要求性マーカーカセットをT4 DNAポリメラーゼで平滑末端化し、pJN299バックボーンに連結した。これは、プラスミドpJN329(URA3)およびpJN398a(URA5)を生じた。
【0152】
プラスミドpJN398をさらに、SpeIおよびNotIを用いる消化によって修飾し、T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化した。Genbank Accession番号AF106080に由来し(Abeijonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:5963−5968(1996))K.lactisびUDP−N−アセチルグルコサミントランスポーターを含むpDL02の平滑末端化されたBglII/HindIIIフラグメントを、オープン部位にクローニングし、pJN407を作製した(図5)。
【0153】
(実施例4)
(対抗染色可能なマーカーのP.pastoris OCH1遺伝子および再生の破壊)
プラスミドpJN329(URA3)を使用する株JC308(ade1、arg4、his4、ura3)(Lin Cereghinoら、Gene 263:159−169(2001)におけるP.pastoris OCH1の破壊は、Choiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5022−5027(2003)に記載されている(これは、その全体が参照として本明細書に援用される)。
【0154】
URA5対抗選択マーカーを使用して、K.lactisのUDP−N−アセチルグルコサミントランスポーターについての遺伝子で、P.pastoris OCH1遺伝子を置き換えるために、100μgのpJN407をSfiIで消化し、エレクトロポレーションによってYJN165に形質転換した。ウラシルを各最小培地上での10日間、室温でのインキュベーション後、460個のコロニーを拾い上げ、再ストリークした。3日後、460個すべてを2セットのYPDプレートにストリークした。37℃では増殖が不可能であったが、室温では増殖した5個のURAクローンを、コロニーPCRに供し、P.pastorisOCH1遺伝子の検出のために試験した。5個すべての株が、予測されたサイズのPCRシグナルを生じた。第2のコロニーPCRは、5個すべてのクローンが、K.lactis UDP−N−アセチル−グルコサミントランスポーターについての遺伝子を含んだことを確証した。これらのクローンを、YJN198−1〜5と名付けた。
【0155】
ura5の栄養要求性を再生するために、och1::URA5対立遺伝子を含む5個すべてのクローンを2日間YPDプレート上で増殖させ、次いで、5−FOAプレート上に拡げた。室温での6日間のインキュベーション後、5個すべてのクローンは、5−FOAに対して耐性であり、かつまたウラシルに対して栄養要求性であるクローンを生じた。YJN198−2およびYJN198−3の対抗選択によって誘導された5−FOAに対して耐性のコロニーは、YPD上で他よりも有意に遅く増殖し、そしてさらに試験を行わなかった。YJN198−1、YJN198−4、およびYJN198−5の対抗選択によって誘導された6個の増殖しているコロニーをPCR分析に供した。これらのコロニーは、すべて、URA5カセットを喪失したことが確認された、これらは、YJN199−1〜6と名付けた。
【0156】
P.pastoris URA5−k.lactis UDP−GlcNAcトランスポーターカセットを使用する、OCH1遺伝子座へのUDP−GlcNAcトランスポーターの安定な組み込みを生じる、破壊およびマーカーリサイクリング工程の模式図を図6に示す。
【0157】
本発明の好ましい例示的な実施形態を記載してきたが、当業者は、本発明が、例示目的のみであって限定を意図しない記載された実施形態以外によって実施され得ることを理解する。本発明は、上記の特許請求の範囲によってのみ、限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリヌクレオチドであって:
(a)配列番号2;
(b)配列番号2の縮重改変体である核酸配列;
(c)配列番号2に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一である核酸配列;
(d)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号3に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)配列番号2に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列;および
(g)少なくとも60の連続するヌクレオチド長である、(a)〜(f)のいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される核酸配列を含むか、またはその配列からなる、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記核酸配列がオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記核酸配列が直接反復配列によって隣接される、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
さらに目的の配列を含む、請求項3に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記目的の配列がポリペプチドをコードする、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記核酸配列および前記目的の配列が1つ以上の発現制御配列を含む、請求項5に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
単離されたポリヌクレオチドであって:
(a)配列番号4;
(b)配列番号4の縮重改変体である核酸配列;
(c)配列番号4に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一である核酸配列;
(d)配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号5に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)配列番号4に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列;および
(g)少なくとも60の連続するヌクレオチド長である、(a)〜(f)のいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される核酸配列を含むか、またはその配列からなる、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
単離されたポリヌクレオチドであって:
(a)配列番号6;
(b)配列番号6の縮重改変体である核酸配列;
(c)配列番号6に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一である核酸配列;
(d)配列番号7のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号7に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)配列番号6に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列;および
(g)少なくとも60の連続するヌクレオチド長である、(a)〜(f)のいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される核酸配列を含むか、またはその配列からなる、ポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項1、7、または8に記載の単離されたポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項10】
前記核酸配列がオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現する、請求項9に記載のベクター。
【請求項11】
pJN266、pJN395、pJN396、pJN398、およびpJN407からなる群より選択されるベクター。
【請求項12】
単離されたポリペプチドであって:
(a)配列番号3;
(b)配列番号3に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチド配列;
(c)少なくとも20の連続するアミノ酸長である、(a)〜(b)のいずれか1つのフラグメントを含むポリペプチド配列
からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むか、またはその配列からなる、ポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドがオロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を有する、請求項12に記載の単離されたポリペプチド。
【請求項14】
単離されたポリペプチドであって:
(a)配列番号5;
(b)配列番号5に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチド配列;
(c)少なくとも20の連続するアミノ酸長である、(a)〜(b)のいずれか1つのフラグメントを含むポリペプチド配列
からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むか、またはその配列からなる、ポリペプチド。
【請求項15】
単離されたポリペプチドであって:
(a)配列番号7;
(b)配列番号7に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチド配列;
(c)少なくとも20の連続するアミノ酸長である、(a)〜(b)のいずれか1つのフラグメントを含むポリペプチド配列
からなる群より選択されるポリペプチド配列を含むか、またはその配列からなる、ポリペプチド。
【請求項16】
異種アミノ酸配列に融合された、請求項12、14、または15に記載の単離されたポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項17】
前記異種アミノ酸配列が検出可能な部分である、請求項16に記載の融合タンパク質。
【請求項18】
請求項1、7、または8に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項19】
前記宿主細胞が、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、およびNeurospora crassaからなる群より選択される、請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
宿主細胞であって:
(a)配列番号2;
(b)配列番号2の縮重改変体である核酸配列;
(c)配列番号2に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一である核酸配列;
(d)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号3に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)配列番号2に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列;および
(g)少なくとも60の連続するヌクレオチド長である、(a)〜(f)のいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される核酸配列の破壊、欠失、または変異を含み、該宿主細胞は、該破壊、欠失または変異を有さない宿主細胞と比較して、該核酸配列によりコードされるポリペプチドの活性が減少していることにより特徴付けられる、宿主細胞。
【請求項21】
前記宿主細胞が、Pichia pastoris、Pichia finlandica、Pichia trehalophila、Pichia koclamae、Pichia membranaefaciens、Pichia opuntiae、Pichia thermotolerans、Pichia salictaria、Pichia guercuum、Pichia pijperi、Pichia stiptis、Pichia methanolica、Pichia sp.、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces sp.、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces sp.、Kluyveromyces lactis、Candida albicans、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Chrysosporium lucknowense、Fusarium sp.、Fusarium gramineum、Fusarium venenatum、およびNeurospora crassaからなる群より選択される、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
1つ以上の目的の配列をさらに含む、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項23】
前記目的の配列が1種以上のグリコシル化酵素をコードする、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項24】
前記グリコシル化酵素が、グリコシダーゼ、マンノシダーゼ、ホスホマンノシダーゼ、ホスファターゼ、ヌクレオチド糖トランスポーター、マンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーター、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、およびタンパク質マンノシルトランスフェラーゼからなる群より選択される、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項25】
前記目的の配列が1種以上の治療タンパク質をコードする、請求項22に記載の宿主細胞。
【請求項26】
前記治療タンパク質が、ヒトプラスミノーゲンのkringleドメイン、エリスロポエチン、サイトカイン、凝固因子、可溶性IgEレセプターα鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、ウロキナーゼ、チマーゼ、尿素トリプシンインヒビター、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄前駆細胞阻害因子−1、オステオプロテゲリン、α−1抗トリプシン、DNaseII、およびα−フェトプロテインからなる群より選択される、請求項25に記載の宿主細胞。
【請求項27】
請求項12、14、または15に記載の単離されたポリペプチドに選択的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合フラグメントもしくは誘導体。
【請求項28】
宿主細胞中への異種核酸配列の遺伝子組み込みのための方法であって:
(a)配列番号2;
(b)配列番号2の縮重改変体である核酸配列;
(c)配列番号2に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一である核酸配列;
(d)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号3に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)配列番号2に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列;および
(g)少なくとも60の連続するヌクレオチド長である、(a)〜(f)のいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される配列に由来する、破壊、欠失、または変異された核酸配列の導入によって、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼをコードする宿主遺伝子を破壊する工程を包含する、方法。
【請求項29】
オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性を欠く宿主細胞中への異種核酸配列の遺伝子組み込みのための方法であって:
(a)配列番号2;
(b)配列番号2の縮重改変体である核酸配列;
(c)配列番号2に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一である核酸配列;
(d)配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(e)配列番号3に対して少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%同一であるポリペプチドをコードする核酸配列;
(f)配列番号2に対してストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸配列;および
(g)少なくとも60の連続するヌクレオチド長である、(a)〜(f)のいずれか1つのフラグメントを含む核酸配列
からなる群より選択される、オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性をコードする配列と連結して目的の配列を宿主細胞に導入する工程を包含する、方法。
【請求項30】
異種核酸配列が安定に組み込まれる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性をコードする配列が直接反復配列によって隣接される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
目的の配列がポリペプチドをコードする、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドがグリコシル化酵素である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記グリコシル化酵素が、グリコシダーゼ、マンノシダーゼ、ホスホマンノシダーゼ、ホスファターゼ、ヌクレオチド糖トランスポーター、マンノシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、UDP−N−アセチルグルコサミントランスポーター、ガラクトシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、およびタンパク質マンノシルトランスフェラーゼからなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリペプチドが治療タンパク質である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記治療タンパク質が、ヒトプラスミノーゲンのkringleドメイン、エリスロポエチン、サイトカイン、凝固因子、可溶性IgEレセプターα鎖、IgG、IgGフラグメント、IgM、ウロキナーゼ、チマーゼ、尿素トリプシンインヒビター、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンギオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄前駆細胞阻害因子−1、オステオプロテゲリン、α−1抗トリプシン、DNase II、およびα−フェトプロテインからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
オロチン酸−ホスホリボシルトランスフェラーゼ活性の損失について対抗選択する工程をさらに包含する、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記対抗選択が5−フルオロオロチン酸に対する増殖についてである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記異種核酸配列が宿主細胞のOCH1遺伝子座に導入される、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115182(P2011−115182A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58168(P2011−58168)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2006−532526(P2006−532526)の分割
【原出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【出願人】(503007287)グライコフィ, インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】