説明

酵母を用いた慢性C型肝炎感染の治療

ワクチンを含む組成物、並びに、C型肝炎ウィルス(HCV)に対するワクチンを動物に接種する方法および動物におけるC型肝炎ウィルス感染を治療もしくは予防する方法を開示する。本発明は、直接ワクチンとして用いたり、または、動物においてHCVに対する免疫応答を誘発するための酵母ベースのワクチンともに用いたりすることができる様々な新規のHCV融合タンパク質を含む。本発明はまた、HCV感染の検出および/または治療もしくは予防のためのあらゆる予防プロトコールもしくは治療プロトコールにおいて、本明細書で記載されるHCV融合遺伝子およびHCV融合タンパク質を使用することを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、概して、C型肝炎ウィルス(HCV)に対するワクチンを動物に接種する組成物および方法、並びにC型肝炎ウィルスの動物への感染を予防もしくは治療する組成物および方法に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
C型肝炎ウィルス(HCV)は、世界的に、急性慢性肝炎の主要な原因因子である。慢性的にHCVに感染している人は、世界中に2億人おり、そのうち、400万人がアメリカ合衆国に在住していると見積もられている。最も主要な感染源は、輸血や静脈注射麻薬(IV drug)の使用を含む非経口的な経路を介するものである。現在の血液バンクの手順は、高度に安全であるにも関わらず、感染速度は上昇し続けている。これは、おそらく、静脈注射麻薬の使用およびその他の形態の被爆によるものである。
【0003】
米国栄養調査NHANES III(Third National Health and Nutrition Examination Survey)のデータによれば、アメリカ合衆国におけるHCV感染患者の約70%は、慢性的にHCVに感染している。慢性的に感染している人のうち、多くの人は、慢性的なHCV感染による深刻な後遺症にさらされるであろう。上記後遺症には、肝硬変、肝臓代償不全(hepatic decompensation)、肝臓移植、肝細胞癌、および死への進行が含まれる。慢性的にHCVに感染している患者についての後向きの長期追跡調査によれば、10年〜29年の範囲の追跡期間に、約20%〜50%の人が肝硬変に進行すると推定される(参考文献1〜4)。輸血後に慢性的にHCVに感染した患者についての前向きの長期追跡調査によれば、8年〜16年の範囲の追跡期間に、約10%〜15%の人が肝硬変に進行すると推定される(参考文献5〜8)。ウィルス感染後、肝硬変に進展する患者のうち、毎年、約1%〜3%の患者は、肝細胞癌に進展し、毎年の死亡率は、約2%〜6%である(参考文献9〜10)。NHANES IIIの血清有病率のデータ、および年齢特異的な発生率を用いた疫学モデルによれば、アメリカ合衆国において、肝硬変およびそれに関連する合併症に進行する危険のある人口のピークは、2015年である。また、近い将来、さらに悪化して、未だ遭遇していない医療が必要になると予測されている(参考文献11)。肝硬変、肝細胞癌、および死に進行する速度を好転させるための一連の大きな流れとして、インターフェロンをベースとする投薬を用いて、慢性的なウィルス感染を防止することが、いくつか示されている(参考文献12〜14)。しかし、アメリカ合衆国で支配的な遺伝子型であることが知られている1型の慢性C型肝炎の治療に対する持続的なウィルス応答率は、リバビリンを含むペグ化されたインターフェロン−αの投薬で、約50%に過ぎない。さらに、インターフェロンとリバビリンとをベースとする投薬は、うつ病、自殺思考、インフルエンザ様症状、および好中球減少を含め、安全性に重大な問題がある。治療の選択対象者は、現在、一部の治療効果を示す者、再発者、インターフェロンをベースとする治療に応答しない者に限定されている。
【0004】
HCVは、フラビウィルス属のメンバーであり、エンベロープをもつ(+)鎖RNAウィルスである。そのゲノムは、約9600ヌクレオチドからなり、侵入した細胞において、おおよそ3000アミノ酸からなるポリタンパク質に翻訳される。細胞のプロテアーゼおよびHCVに由来するプロテアーゼにより、翻訳と同時および翻訳後に、3つの構造タンパク質と、7つの非構造タンパク質とを生じる(表1)。ウィルスタンパク質のうち、いくつかについては、その役割は未だ明らかではない。一方、HCV構造のCoreタンパク質、E1およびE2表面糖タンパク質、非構造タンパク質であるNS2およびNS3プロテアーゼ、並びにNS5B RNA依存RNAポリメラーゼのようなウィルスタンパク質の多くは、HCVの生活環において必須の機能を果たすことが知られている。今までに単離されたウィルスゲノムの遺伝的多様性に基づくと、HCVは、6つの主要な遺伝子型、および100以上のサブタイプをもつ。
【0005】
遺伝子型1a型、1b型、および2型は、北アメリカおよびヨーロッパで優勢であることが知られている。一方、南アメリカでは、HCVの遺伝子型は、1a型、1b型、および3型が優勢である。遺伝子型4型、5型、および6型は、世界の残りの至る所で見られる(参考文献19)。特定のHCV遺伝子型が地理的に優勢であるにもかかわらず、人口移動が増加しているため、ほとんどの遺伝子型が、世界中で同定されている。HCVの遺伝子型が異なると、現在推奨されているインターフェロン/リバビリン治療に対する応答性が異なる。具体的には、HCV遺伝子型1型に感染した患者の〜50%が、現在の治療投薬に対して無反応である。さらに、アフリカ系アメリカ人の患者におけるインターフェロン−αに対する応答率は、白色人種(Caucasian)家系よりも低い。これらのデータは、各個人に予め備えられている細胞性免疫応答を理想的に増大させるような選択的な治療方法が必要であることを示唆している。
【0006】
【表1】

【0007】
多くの研究によれば、HCVに感染している個体におけるウィルスの複製、ウィルス血症の程度、および慢性状態への進行は、並びにCD4ヘルパー(T)、およびCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTLs)によって媒介され、CoreおよびNS3を含むウィルスの構造タンパク質および非構造タンパク質の両方に対して向けられたHCV特異的な細胞性免疫によって、直接的および間接的に影響を受けることが示唆されている(参考文献15)。慢性的にHCVが感染している人における事実上の免疫欠如は、さらに、他の遺伝子型のHCVの重複感染の発生を伴うものである。細胞性免疫応答が強いこと、および寛容であることは、HCV感染の自然経路に影響することが示唆されている。そのため、ウィルスに被爆した個体において、T細胞性免疫応答を刺激する免疫療法用製品の開発は、非常に重要である。
【0008】
ヒトおよびチンパンジーの研究によって、血液および肝臓におけるCD4T細胞応答およびCD8T細胞応答の開始前に、HCVは何週間も複製できることが明らかとなった。さらに、血液中に広がった後でさえも、CD8T細胞(および、おそらくCD4T細胞も)による機能獲得に遅延が生じると考えられる。機能的なCD8T細胞の出現は、少なくともいくつかのケースでは、血清トランスアミナーゼの上昇を伴う。このことは、急性C型肝炎中の肝臓障害が、免疫病理学的であることを示唆している。血液、肝臓、もしくはその両方において、検出可能なウィルス特異的なTリンパ球の応答を生じない人が、持続的なHCV感染で最も危険である。おそらく、最も重要なことに、細胞性免疫応答の発生は、必ずしも感染が持続的に制御されていることを保証するものではない。CD4T細胞応答およびCD8T細胞応答は、持続的な感染の再発および確立を防止するためにウィルス複製を明確に制御するとの観点を超えて、何週間もしくは何ヶ月も維持されているに違いない。
【0009】
CD4T細胞は、CD8T細胞の活性化および維持を助けることによって、HCVに対する免疫に必須の役割を果たしている。HCVの他の遺伝子産物に対する応答も報告されているが(参考文献20〜21)、保護性のCD4T細胞は、Core、NS3、NS4、およびNS5タンパク質のエピトープを優位に認識するように思われる。CD4T細胞はCD8T細胞を助けることに加えて、γ−インターフェロン、およびT2型サイトカインと対照的な他の炎症誘発性のT1を産生することが重要であるように思われる。それと同時に、慢性感染を制御するためには、HCV特異的メモリーCD4T細胞を確立することが重要である(参考文献20、22)。
【0010】
CD4T細胞応答およびCD8T細胞応答は自己限定的なHCV感染に共通するという発見は、それらが協同してウィルス血症を制御することを示唆している。C型肝炎感染を緊急に解消する間に初回刺激を受けたメモリーCD4T細胞およびメモリーCD8T細胞は、チンパンジー、およびおそらくヒトでも、ウィルス持続性を長期間防止することができる。抗体を媒介とするメモリーT細胞の各サブセットの枯渇を通して、チンパンジーモデルは、急性C型肝炎の制御において、CD8T細胞は重要であり、また、それは、CD4T細胞の援助に依存するという直接的な証拠を提供した。CD4T細胞とは対照的に、急性CD8T細胞およびメモリーCD8T細胞は共に、全てのHCVタンパク質を同等に認識するように思われる。また、それらは、CD4T細胞と同様に、γ−インターフェロンを含む炎症誘発性のサイトカインを産生できることが重要であるかもしれない(参考文献15)。
【0011】
急性HCV感染から慢性HCV感染への遷移は、宿主の生存中には回復しないと思われるHCV特異的なCD4+T細胞の実質的な減少に関連している。CD8+T細胞の活性もまた、感染を解消するには不十分であるように、低下する。
【0012】
免疫療法への実験的アプローチの多くは、一般的に、DNA、組換えウィルス、および自己の樹状細胞に基づくワクチンストラテジーの使用を含む。DNAワクチンは、ヒトにおける初回刺激の免疫応答に有効である。しかし、免疫増強には不向きである。対照的に、組換えウィルスは、免疫増強には有効であるが、ベクターの中和の制限を受ける。最後に、樹状細胞をベースとするワクチンは、患者特異的で、作用が集中的である。したがって、HCVに対する効果的な免疫療法アプローチの技術が、依然必要とされている。
【0013】
〔発明の概要〕
本発明の一実施形態は、(a)酵母ビヒクル(yeast vehicle)、および(b)HCV融合タンパク質を含むワクチンに関する。該ワクチンにおいて、酵母ビヒクルは、組換え的に上記融合タンパク質を発現する。上記HCV融合タンパク質は、以下に述べるHCV融合タンパク質のいずれかから選択することができる。上記HCV融合タンパク質は、HCV Core配列の少なくとも一部分に連結された、HCV NS3プロテアーゼの少なくとも一部分を含むことが特に好ましい。
【0014】
したがって、ある局面では、上記HCV融合タンパク質は、HCV Core配列の少なくとも一部分に連結された、HCV NS3プロテアーゼの少なくとも一部分を含む。上記HCV NS3プロテアーゼは、天然のHCV NS3プロテアーゼの触媒ドメインを欠失していることが好ましい。ある局面では、上記HCV NS3プロテアーゼは、本質的に、HCV NS3の全長タンパク質のN末端側の88アミノ酸の後に続く262アミノ酸(配列番号20の第1115位〜第1376位)からなる。ある局面では、上記HCV Coreの疎水性のC末端配列を欠失している。ある局面では、上記HCV Core配列は、本質的に、HCV Coreの全長配列の第2位のアミノ酸から第140位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第140位)からなる。別の局面では、上記HCV Core配列は、グルタミン酸およびアスパラギン酸の2つのアミノ酸を含むように付加されている。別の局面では、HCV Core配列は、G−G−G−H−H−H−H−H−H(配列番号10)のアミノ酸配列を含むように付加されている。ある局面では、HCV NS3プロテアーゼは、そのN末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号2からなる。
【0015】
別の局面では、上記融合タンパク質は、不活性化されたHCV NS3タンパク質の全長を含む。ある局面では、上記HCV NS3タンパク質は、配列番号20に関し、HCV ポリタンパク質配列の第1165位の残基に変異を含み、タンパク質のタンパク質分解活性が不活性化している。別の局面では、上記HCV NS3プロテアーゼは、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号4からなる。
【0016】
さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、切断(truncated)HCV E2タンパク質に融合された、切断HCV E1タンパク質を含む。ある局面では、切断HCV E1タンパク質は、本質的に、HCV E1の第1位〜第156位のアミノ酸(配列番号20の第192位〜第347位)からなる。さらに別の局面では、切断HCV E2タンパク質は、本質的に、HCV E2の第1位〜第334位のアミノ酸(配列番号20の第384位〜第717位)からなる。さらに別の局面では、切断HCV E1タンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号6からなる。
【0017】
別の局面では、上記融合タンパク質は、膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4bタンパク質を含む。ある局面では、上記膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4bタンパク質は、本質的に、HCV NS4bの第1位〜第69位のアミノ酸(配列番号20の第1712位〜第1780位)と、HCV NS4bの第177位〜第261位のアミノ酸(配列番号20の第1888位〜第1972位)とが連結されたアミノ酸配列からなる。さらに別の局面では、上記膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4bタンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号8からなる。さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、HCV E2全長タンパク質に融合されたHCV E1全長タンパク質に融合されたHCV Coreの全長タンパク質を含む。ある局面では、上記HCV Core全長タンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号12からなる。
【0018】
別の局面では、上記融合タンパク質は、膜貫通ドメインが欠失したHCV E1タンパク質と、膜貫通ドメインが欠失したHCV E2タンパク質とに融合された、切断HCV Coreタンパク質を含む。ある局面では、上記切断HCV Coreタンパク質は、本質的に、HCV Coreタンパク質の第2位〜第140位(配列番号20の第2位〜第140位)からなる。別の局面では、上記膜貫通ドメインが欠失したHCV E1タンパク質は、本質的に、HCV E1タンパク質の第1位〜第156位(配列番号20の第192位〜第347位)からなる。さらに別の局面では、上記切断HCV E2タンパク質は、本質的に、HCV E2タンパク質の第1位〜第334位(配列番号20の第384位〜第717位)からなる。さらに別の局面では、上記切断HCV Coreタンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号14からなる。
【0019】
別の局面では、上記融合タンパク質は、HCV NS4bに融合されたHCV NS4aに融合されたHCV NS3を含む。該融合タンパク質では、上記HCV NS3プロテアーゼは不活性化されている。また、HCV NS4bは膜貫通ドメインを欠失している。ある局面では、上記HCV NS3タンパク質は、本質的に、HCV HS3の第1位〜第631位(配列番号20の第1027位〜第1657位)からなる。該HCV NS3タンパク質において、配列番号20の第1165位のセリンは、アラニンに置換されており、プロテアーゼが不活性化している。ある局面では、上記HCV NS4aタンパク質は、本質的に、HCV NS4aタンパク質の第1位〜第54位(配列番号20の第635位〜第691位)からなる。さらに別の局面では、上記HCV NS4bタンパク質は、本質的に、HCV NS4bの第177位〜第261位(配列番号20の第1888位〜第1972位)に融合されたHCV NS4bの第1位〜第69位(配列番号20の第1712位〜第1780位)からなる。別の局面では、上記HCV NS3タンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号16からなる。
【0020】
さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、HCV NS5bタンパク質に融合されたHCV NS5aタンパク質を含む。該融合タンパク質では、上記NS5bタンパク質は、NS5bのC末端が欠失しており、不活性化されている。ある局面では、HCV NS5aタンパク質は、本質的に、HCV NS5aの第1位〜第448位(配列番号20の第1973位〜第2420位)からなる。ある局面では、上記HCV NS5bタンパク質は、本質的に、HCV NS5bの第1位〜第539位(配列番号20の第2421位〜第2959位)からなる。さらに別の局面では、上記HCV NS5aタンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている。さらに別の局面では、上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号18からなる。
【0021】
一実施形態において、上記融合タンパク質の発現は、CUP1のような誘導プロモーターの制御下にある。
【0022】
本発明にかかる別の実施形態は、単離されたHCV融合タンパク質に関する。該HCVタンパク質は、上述したいずれかのタンパク質であり、具体的には、配列番号2、4、6、8、12、14、16、および18から選択される。
【0023】
本発明にかかる別の実施形態は、上述した融合タンパク質のいずれかをコードする核酸配列を含む単離された核酸分子に関する。一実施形態において、上記融合タンパク質の発現は、CUP1のような誘導プロモーターの制御下にある。
【0024】
本発明にかかる別の実施形態は、上記単離された核酸分子のいずれかを含む組換え組換え核酸分子に関する。一実施形態において、該組換え核酸分子は、ウィルスベクターである。
【0025】
本発明にかかるさらに別の実施形態は、本明細書に記載の組換え核酸分子のいずれかが形質移入された組換え細胞に関する。そのような細胞には、腫瘍細胞や酵母細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明にかかる別の実施形態は、(a)上述したHCV融合タンパク質、および(b)薬学的に許容される担体を含むワクチンに関する。
【0027】
本発明にかかるさらに別の実施形態は、(a)樹状細胞、および(b)上述したHCV融合タンパク質を含むワクチンに関する。そのようなワクチンは、さらに、上記樹状細胞に含まれる酵母ビヒクルを含んでいてもよい。
【0028】
本発明にかかるさらに別の実施形態は、上述したようなHCV融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を含むワクチンに関する。
【0029】
本発明にかかる上述したワクチンは、いずれも、本発明にかかる単離されたHCV融合タンパク質を含むが、さらに、少なくとも1つの生物的応答の修飾因子(modifier)を含んでもよい。
【0030】
そのような生物学的な応答の修飾因子には、サイトカイン、ホルモン、脂質誘導体、および低分子薬剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。このような生物学的な応答の修飾因子には、抗CTLA−4、抗CD137、抗CD28、抗CD40、アレムツズマブ、デニロイキンジフチトクス、抗CD4、抗CD25、抗PD1、抗PD−L1、抗PD−L2、FOXP3ブロッキング剤、Flt−3リガンド、イミキモド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、サルグラモスチム、Toll様受容体(TLR)−7アゴニスト、およびTLR−9アゴニストが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明にかかる別の実施形態は、C型肝炎ウィルス(HCV)感染から動物を保護するための方法に関する。該方法は、HCVに既に感染している動物、もしくは、HCVに感染する危険がある動物に、本明細書に記載の本発明にかかるワクチンのいずれかを投与することを含む。また、該方法において、動物への上記ワクチンの投与は、HCV感染、もしくは動物へのHCV感染によって生じる少なくとも1つの症状を軽減または抑制する。
【0031】
本発明にかかるさらに別の実施形態は、HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発する方法に関する。該方法は、本明細書に記載の本発明にかかるワクチンのいずれかを動物に投与することを含む。
【0032】
本発明にかかる別の実施形態は、HCVに既に感染している個体群において、HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発させる方法に関する。該方法は、上記個体群に、上述したワクチンのいずれかを投与することを含む。
【0033】
本発明にかかるさらに別の実施形態は、HCVに感染する危険がある固体群を、HCVに対して免疫する方法に関連する。該方法は、上述したワクチンのうちのいずれかのワクチンを上記個体群に投与することを含む。
【0034】
上記方法のいずれにおいても、上記ワクチンは、HCV抗原をコードするウィルスベクターを含むワクチンに加えて、追加免疫として投与されうる。上記方法のいずれにおいても、上記ワクチンは、異なるHCVワクチンで追加免疫する前に、上記の免疫系を初回刺激するために投与されうる。
【0035】
本発明にかかる別の実施形態は、HCV感染から動物を保護するための製剤における上述のいずれかのワクチンの使用に関する。
【0036】
本発明にかかるさらに別の実施形態は、HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発するための製剤における上述のいずれかのワクチンの使用に関する。
【0037】
本発明にかかる別の実施形態は、疾患もしくは異常を治療もしくは予防するための製剤における上述のいずれかのワクチンの使用に関する。本発明にかかるさらに別の実施形態は、HCVに感染する危険がある個体群を免疫するための製剤における上述のいずれかのワクチンの使用に関する。
【0038】
本発明にかかる別の実施形態は、HCVに感染している個体群を治療するための製剤における上述のいずれかのワクチンの使用に関する。
【0039】
〔発明の詳細な記述〕
図1Aおよび1Bは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、切断NS3−Core融合タンパク質、および不活性化されたHCV NS3融合タンパク質の発現を示すウエスタンブロット(図1A)およびクーマシー染色(図1B)のデジタル画像である。図1Cは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、切断HCV E1−E2融合タンパク質の発現を示すウエスタンブロットのデジタル画像である。図1Dは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、膜貫通(TM)ドメインが欠失したHCV NS4b融合タンパク質の発現を示すウエスタンブロットのデジタル画像である。図2は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、NS3およびCoreに特異的なリンパ球増殖を誘導することを説明するグラフである。図3A〜3Cは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、NS3に特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを説明するグラフである。図4Aおよび4Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3またはCoreをコードする組換えワクシニアウィルスに感染した腫瘍細胞を死滅させる細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを証明するグラフである。図5は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、マウス脾細胞による炎症誘発性サイトカインの分泌を誘導することを説明するグラフである。図6は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導されるリンパ球の増殖を示すグラフである。図7A〜7Dは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。図8Aおよび8Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される、炎症誘発性で、酵母特異的なサイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。図9は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、異なる免疫方法で免疫および追加免疫されたBALB/cマウス由来の脾臓細胞における、リンパ球増殖を説明するグラフである。図10は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、異なる免疫方法で免疫および追加免疫されたBALB/cマウス由来の脾臓エフェクタ細胞における、細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。図11Aおよび11Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、誘導されたリンパ球増殖応答の持続性を証明するグラフである。図12Aおよび12Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞応答の持続性を示すグラフである。図13A〜13Dは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された酵母およびNS3に特異的なサイトカインを分泌する細胞の持続性を示すグラフである。図14A〜14Iは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。図15A〜15Cは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された炎症誘発性サイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。図16は、切断NS3−Core融合タンパク質もしくは不活性化されたHCV NS3プロテアーゼ融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系の腫瘍細胞を用いたチャレンジ(challenge)に対して、BALB/cマウスにおいて、感染防御免疫を誘導することを示すグラフである。図17は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系の腫瘍細胞を用いたチャレンジに対して、C57BL/6マウスにおいて、感染防御免疫を誘導することを示すグラフである。図18は、防御されたマウス由来の脾臓細胞におけるリンパ球増殖活性を示すグラフである。図19は、防御されたマウス由来の脾臓細胞における細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。図20は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、腫瘍をもったナイーブマウスから単離された脾臓細胞における細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を刺激することを示すグラフである。図21は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系のB細胞リンパ腫をもつBALB/cマウスにおいて、治療的な免疫を誘導することを示すグラフである。図22Aおよび22Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系のB細胞リンパ腫をもつBALB/cマウスにおいて、治療的な免疫を誘導することを示すグラフである。図23Aおよび23Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、ニュージーランドホワイトラビット(New Zealand White rabbit)のオス及びメスにおいて、酵母に特異的なリンパ球増殖を誘導することを示すグラフである。
【0040】
本発明は、概して、C型肝炎ウィルス(HCV)に対するワクチンを動物に接種する組成物および方法、並びに、動物におけるC型肝炎感染を治療もしくは予防するための組成物および方法に関する。本発明は、特定の酵母ベースのワクチンの使用を含む。該特定の酵母ベースのワクチンは、酵母ビヒクルと、動物においてHCV感染に対する免疫応答を誘発させるために選択されるHCV抗原融合タンパク質とを含む。本発明はまた、あらゆるワクチンおよびワクチンプロトコールにおいて、本明細書に記載のHCV融合遺伝子およびタンパク質を使用することを含む。
【0041】
臨床的な証明では、C型肝炎ウィルス(HCV)の除去(clearance)および制御は、細胞性免疫によって促進されることが示唆されている。また、慢性的に感染している個体において免疫を増強することは、治療的メリットがあることが示唆されている。本発明者らや他の者がこれまでに報告した研究では、組換えS. cerevisiae酵母全体を、ワクチンや免疫療法のベクターとして用いる可能性が示されてきた(米国特許第5,830,463号(1998年11月3日発効)、米国特許出願第09/991,363号(2001年11月15日出願)を参照。なお、これらはいずれも全体が参照として本明細書に組み込まれる)。本発明者らの酵母をベースとする免疫療法用製品は、様々な動物種に存在し、様々なウィルス抗原および腫瘍抗原を生体内で発現する標的細胞を殺傷することができる免疫応答を誘発することが示されている。また、該免疫応答は、CD8CTLが媒介する形態で誘発される(参考文献16〜17)。
【0042】
本発明は、米国特許第5,830,463号(1998年11月3日発効)および米国特許出願第09/991,363号(2001年11月15日出願)に述べられているような酵母をベースとする免疫療法用製品に関する技術を基盤に改良されたものである。本発明者らは、S. cerevisiaeは、樹状細胞によって貪欲に捕食され、樹状細胞を直接活性化する。そのとき、樹状細胞は、高い効率の方法で、CD4T細胞およびCD8T細胞に酵母に関連するタンパク質を提示する(Stubbs et al. Nature Med. 5:625-629, 2001、上記米国特許出願第09/991,363号)。変異型のRas腫瘍性タンパク質を発現するS. cerevisiaeは、自然に肺癌を発症したモデルマウスにおいて、相同変異をもつ確立された腫瘍を特異的に除去することが示された(Lu et al., Cancer Research 64:5084-5088, 2004)。また、このアプローチは、現在、膵臓癌、肺癌、および直腸癌の患者において、ヒトの臨床試験フェーズIの試験がなされている。この基盤技術をベースとする免疫療法用製品は、生産の方向に進んでいる。また、該製品は、宿主の免疫応答によって中和されない。さらに、抗原特異的な免疫応答を増進するために繰り返し投与することができる。加えて、製造に患者特異的なアプローチが不要である。
【0043】
より具体的には、一例として、本発明者らは、酵母をベースとするワクチンを開発した。該ワクチンは、新規のHCV融合タンパク質を発現する、熱により不活性化された組換えS. cerevisiaeを含む。上記HCV融合タンパク質は、一実施形態において、NS3タンパク質の配列およびCoreタンパク質の配列の両方の一部を少なくとも含む。他の実施形態では、不活性化されたNS3 HCVタンパク質の全長と、新規の切断E1−E2融合タンパク質と、膜貫通ドメインが欠失した新規のHCV NS4b融合タンパク質とを含む。本発明の他の実施形態は、本明細書に提供される開示に鑑みれば、明らかであるだろう。
【0044】
HCV Coreタンパク質およびNS3プロテアーゼは、HCVが感染した細胞では多量に発現されている。また、これらのタンパク質は、ウィルスの複製には必須である。これらの特性を、高度な配列保存性と組み合わせることで、HCV Coreタンパク質およびNS3プロテアーゼを、免疫療法の優れた標的とすることができる。本発明のワクチンは、動物において、NS3抗原とCore抗原との両方を発現するウィルス感染細胞に対する細胞傷害性T細胞(CTL)応答に加えて、抗原特異的で増殖性のT細胞応答を共に生じさせ、HCV抗原を発現する腫瘍から動物を保護する(実施例、および参考文献18を参照)。上記ワクチンの投与は、HCV NS3タンパク質およびCoreタンパク質に標的とされるHCV特異的なCD4T細胞応答およびCD8T細胞応答を増強させることが期待される。これにより、HCV感染個体において、ウィルス負荷が軽減され、最終的に、ウィルスが除去される。
【0045】
本発明の酵母をベースとするワクチンの成分として用いられる新規のHCV融合タンパク質は、酵母において、異種抗原発現用の新規のコンストラクトを用いて製造される。上記HCV融合タンパク質において、望ましい抗原タンパク質またはペプチドは、そのN末端に、(a)本明細書に記載の特定の合成ペプチド、もしくは、(b)内在性の酵母タンパク質の少なくとも一部が融合されている。また、上記HCV融合タンパク質において、融合相手は、いずれも、酵母における該タンパク質の発現の安定性を顕著に向上させる、および/または、酵母細胞による該タンパク質の翻訳後修飾を阻害する。また、上記融合ペプチドは、抗体のような選択剤によって認識されるように設計されうるエピトープを提供する。上記構成では、該融合ペプチドは、ワクチン接種する抗原に対する免疫応答に、負の影響を与えないと考えられる。そのような薬剤は、本発明に有用なタンパク質を同定、選抜、および精製するために有効である。
【0046】
さらに、本発明は、抗原構造物のC末端に融合されるペプチドを使用する、特に、上記タンパク質を選抜および同定するために該ペプチドを使用することを意図する。そのようなペプチドには、ペプチドタグ(例えば、6×His)や、あらゆるその他の短いエピトープタグのような合成もしくは天然のペプチドが含まれるが、これらに限定されない。本発明にかかる抗原のC末端に付加されたペプチドは、上述したN末端のペプチドの付加の有無に関係なく、用いることができる。最後に、本発明者らは、本明細書において、いくつかの異なる新規な融合タンパク質について述べる。
【0047】
酵母ベースのワクチンに用いられるHCV抗原は、同じ構造物内に、1つ以上の抗原に由来する複数(2つ以上)の免疫原性のあるドメインを提供する。複数の免疫原性のあるドメインを含む代表的な融合タンパク質は、HCV NS3タンパク質およびCoreタンパク質、または本明細書に記載されているそれらの免疫原性のある部分を含む融合タンパク質である。また、その他の融合タンパク質については、以下に述べる。
【0048】
上述したように、NS3およびCoreは、感染細胞において、多量に発現され、ウィルス複製に必要とされる。また、急性感染および慢性感染において、CD4T細胞およびCD8T細胞の両方によって認識されるエピトープを含む。これらのタンパク質、特に、1種のワクチンで両方のタンパク質を標的とすることのさらなる利点、アミノ酸レベルで、高度に保存されている点である。Coreタンパク質およびNS3タンパク質はともに、米国において最も優勢なHCV株であるHCVの遺伝子型1a型および1b型間で高度に保存されている(表1)。上記Coreタンパク質は、1a型と1b型との間の配列同一性は、アミノ酸レベルで98%である。また、1a型のHCVのタンパク質配列と比較して、その他の5つの遺伝子型のHCVの配列同一性は、86〜95%の範囲である。上記NS3タンパク質もまた、異なるHCV株間で高度に保存されている。具体的には、1a型と1b型との間での配列同一性は、アミノ酸レベルで92%である。また、1a型のHCVのタンパク質配列と比較して、その他の遺伝子型のHCVの配列同一性は、81〜86%である。様々な遺伝子型のHCV間において、上記Coreタンパク質およびNS3タンパク質が高度に保存されていることは、ウィルスの機能における特定の全般的なタンパク質ドメインの必須の性質を示すものである。本発明のワクチンの1つは、単一の製品にもかかわらず、NS3プロテアーゼおよびCoreタンパク質の2つのウィルス抗原を標的とするように設計された。このアプローチは、他の必須で保存されたHCVウィルスタンパク質のタンパク質配列を含むように、容易に拡張することができる。その結果、より一層広い細胞性免疫応答を生じさせることができる。そのような付加的な融合タンパク質およびワクチンは、本明細書において例示される。
【0049】
HCVポリタンパク質遺伝子およびそれによりコードされるポリタンパク質の核酸配列、並びにアミノ酸配列は、従来知られている。例えば、C型肝炎ウィルスH77株のポリタンパク質の遺伝子の核酸配列は、データベースアクセション番号AF011753(gi:2327074)に記載されている。また、配列番号19に示されている。配列番号19は、本明細書の配列番号20に示されるアミノ酸配列を有する、HCV H77株のポリタンパク質をコードする。配列番号20において、HCVタンパク質は、以下の位置に含まれる;HCV Core(配列番号20の第1位〜第191位)、HCV E1エンベロープ糖タンパク質(配列番号20の第192位〜第383位)、HCV E2エンベロープ糖タンパク質(配列番号20の第384位〜第746位)、HCV P7イオンチャネル(配列番号20の第747位〜第809位)、HCV NS2金属プロテアーゼ(配列番号20の第810位〜第1026位)、HCV NS3プロテアーゼ/ヘリカーゼ(配列番号20の第1027位〜第1657位)、HCV NS4a NS3プロテアーゼ補因子(配列番号20の第1658位〜第1711位)、HCV NS4b(配列番号20の第1712位〜第1972位)、HCV NS5a(配列番号20の第1973位〜第2420位)、およびHCV NS5b RNA依存性RNAポリメラーゼ(配列番号20の第2421位〜第3011位)。上述したように、HCVの株は、高度なアミノ酸同一性を示す(表1を参照)。したがって、本明細書で提供するプロトコールを用い、例示のHCV株を参照すれば、当業者であれば、本発明の組成物およびワクチンにおいて用いるいかなるHCV株からも、様々なHCVベースの融合タンパク質を容易に得ることができる。
【0050】
HCVの制御および除去には、CD4T細胞およびCD8T細胞が必要であること、並びに、適切な細胞性免疫の欠如は、慢性感染の進行に関係していることは明らかである。したがって、慢性的に感染した個体において、存在するが、不十分なHCV特異的なCD4T細胞およびCD8T細胞を刺激することは治療上有益であることを提案することを訴えている。理論による保証なしに、本発明者らは、理想的なHCV免疫療法は、MHCクラスIおよびクラスII抗原提示経路に、抗原を運搬し、強力なCD4T細胞およびCD8T細胞の応答を刺激できる非病原性ベクターからなると信じている。このベクターはまた、他の治療製品と同様に、繰り返し投与できるはずである。本発明のワクチンおよび組成物は、これらの目的に理想的に適している。
【0051】
本発明よりも以前に知られている、いくつかの免疫療法用ワクチン製剤は、樹状細胞およびマクロファージ(本明細書では、概して、抗原提示細胞もしくはAPCと称される)によって形質膜陥入された精製ウィルスタンパク質からなる。飲み込まれた物質内にあるタンパク質は、(10〜20アミノ酸の)ポリペプチドに分解される。該ポリペプチドは、APCにおいて、分化したエンドソームのMHCクラスII分子に結合する。その後、該ペプチドとMHCクラスII分子との複合体は、APCの表面に提示される。抗原特異的なCD4ヘルパーT細胞(T)は、MHCクラスIIとペプチドとの複合体に結合し、活性化され、リンホカインを産生する。
【0052】
アジュバントなしに細胞外に投与された可溶性の抗原は、体液性免疫応答に導くB細胞上で作用するリンホカインを産生する2型ヘルパーT細胞(T2)を刺激する傾向がある。T2応答は、細胞性免疫の誘導に重要な1型ヘルパーT細胞(T1)を阻害する傾向がある。標的とされるウィルス性抗原が、感染細胞の膜上にあれば、抗体を生じさせるアプローチが治療上有効である。しかし、標的とされるウィルス性抗原が感染細胞の内部に見つかれば、抗体は一般的に効果がほとんどない。さらに、T2応答に対するバイアスのために、CD8CTLは、外因的に導入されたタンパク質抗原に応答して、正常に活性化されない。CD8CTLが慢性的なウィルス感染に対する予防に必要なのであれば、組換えタンパク質を用いるアプローチはうまくいかないと仮定することは、理にかなっている。
【0053】
細胞外抗原とは対照的に、CD8CTLは、標的とされる細胞によって合成されている、いかなる抗原にも応答して誘導される。これらの抗原は、内因性抗原と呼ばれる。感染細胞によって合成されているウィルスタンパク質は、小胞体へのペプチド運搬と共役する細胞質のプロテアソームによって、(8〜10アミノ酸の)ペプチドに消化される。小胞体におけるMHCクラスI分子の適切なフォールディングは、感染細胞や腫瘍細胞の表面に輸送される前に、プロテアソームで生じるペプチドに結合することに依存している。CD8T細胞は、MCH I受容体−ペプチド複合体の連係動作に応答し、IFN−γを含むリンホカインを産生する。このことは、一般的に、感染細胞の殺傷を含む、細胞性免疫応答に導く。
【0054】
CTLが効果的に活性化されるためには、IL−2およびIL−12が必要であると考えられている。CD8CTLは、ある程度のIL−2を産生することができる。しかし、CD41細胞が、CTLが媒介する応答におけるIL−2の主要な供給源であることが一般的に受け入れられている。IL−12は、樹状細胞およびマクロファージによって産生される。さらに、CTLを最大に活性化するために、樹状細胞による抗原の提示が必要であることは明らかである。このように、CD41細胞については、CTLが、最大に活性化され、その後、ウィルス感染細胞に応答するためには、抗原提示細胞(APC)と相互作用することが必要である。
【0055】
樹状細胞自体が感染されない限り、ウィルス感染細胞によって合成されている抗原のうち、どの程度が樹状細胞のMHCクラスI経路にたどり着くかは不明である。しかし、最近のデータでは、樹状細胞は、感染の結果アポトーシスに至る感染細胞を認識できることが示されている。また、樹状細胞およびマクロファージによって飲み込まれる細胞/粒子に関連するタンパク質のいくつかが、MHCクラスI経路にたどり着くように、交差提示(cross-priming)(内因性抗原の提示経路への外因性抗原の運搬)が起こることが示されている(参考文献23)。さらに、ある危険シグナル(後述)が、このプロセスを増強する(参考文献25)。
【0056】
免疫応答は、主として、細胞外液から外来性物質を取り込む樹状細胞およびマクロファージによって、開始される。これらの細胞が適切に抗原を提示する能力を向上させる方法は、T細胞が媒介する細胞性免疫を改善するはずである。この観点において、高度にグリコシル化された酵母は天然のアジュバント様の特性を有し、複数の抗原を発現するように容易に操作できる(参考文献16、27〜29)という利点に加えて、組換えS. cerevisiae酵母は免疫刺激複合体(ISCOM)の粒子性の特徴(参考文献26)を示す。S. cerevisiae酵母細胞は、マクロファージおよび樹状細胞を含む、専らの抗原提示細胞によって貪欲に取り込まれる。酵母に関連するタンパク質は、MCHクラスIおよびクラスIIの両方を経て、効果的に提示され、腫瘍細胞に対する予防的で抗原特異的なCTL媒介性免疫を引き起こす(参考文献16〜17)。
【0057】
樹状細胞およびマクロファージは、その表面に、微生物によるパターン認識分子として作用する様々な受容体を有する。例えば、パターン認識分子は、グリコシル化パターン、リポタンパク質および核酸の組成の違いに基づいて、病原体を認識する。それゆえ、そのような抗原提示細胞(APC)は、微生物のマンノタンパク質、ペプチドグリカン、グリカン、リポタンパク質、2本鎖RNAおよびCG島含有DNA(CpG island-containing DNA)の受容体を有する(参考文献30〜32)。これらの受容体が関与することにより、「危険(danger)」シグナルと称される、樹状細胞の成熟、活性化、増強されたファゴサイトーシス、および関与する物質と関連した抗原の効果的な提示が引き起こされる(参考文献33)。
【0058】
事実、樹状細胞およびマクロファージは、他のあらゆる微生物よりも酵母を認識する受容体をより多く有している。これらの受容体には、TLR−2、TLR−4、TLR−6、CD14、Dectin−1、Dectin−2、DEC−205、およびマンノース受容体ファミリーが含まれる(参考文献30、34)。ザイモサン、つまり、Saccharomyces cerevisiae酵母の細胞壁粗調製物を取り込むと、たくさんの炎症誘発性遺伝子がアップレギュレートされる(参考文献35)。本発明者らのデータでは、マウスおよびヒトの樹状細胞およびマクロファージが酵母全体を取り込むと、その結果、TNF−α、CM−CSF、インターフェロン−γ、IL−2およびIL−12のような炎症誘発性T1サイトカインの分泌促進に加えて、様々な細胞表面分子がアップレギュレートされることが示されている。上記細胞表面分子には、付着分子(ICAM−1、CD54)、同時刺激分子(B7−1、B7−2、CD80、CD86)、およびMHCクラスIおよびクラスII分子が含まれる。
【0059】
酵母は、樹状細胞と直接相互作用することができることに加えて、免疫療法の理想的な基盤になりうる様々な他の特性を有する。まず、複数の抗原を、単一の酵母株内で発現させるように操作することができる(参考文献29)。また、これらの製剤は、製造の容易性、および複数の抗原を標的とする能力を含め、DNAワクチンのもつ多くの利点を共有している。DNAワクチンと違って、酵母ベースの免疫治療用製剤は、潜在的に毒性のある不純物を除去するために、過度な精製を行う必要がない。以下、さらに詳細に述べるように、組換え酵母で発現された異種タンパク質は、インビトロおよびインビボにおいて、強力なCD8CTL媒介性の免疫応答の抗原となる(参考文献16〜17)。治療処置に加えて、予防処置としての動物試験でも、該酵母製剤は、免疫された動物における腫瘍増殖の防止及び治療に成功した(参考文献16〜17)。これらの結果は、本発明のワクチンがHCVの免疫療法剤として、薬効範囲の広い免疫応答を誘発させるのに有効であることを示唆している。
【0060】
本発明において、本発明者らは、本明細書ではGI−5005と称される、新規な組換え酵母免疫療法剤を生み出した。該組換え酵母は、誘導プロモーターの制御下で、HCV NS3−Core融合タンパク質を発現する。NS3特異的抗体またはCore特異的抗体を用いた、GI−5005細胞ライセートの免疫ブロット解析によって、47kDaのタンパク質が確認される。該GI−5005酵母は、1000万細胞あたり5μgより多くのHCV融合タンパク質を生産する。C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスへのGI−5005酵母の注射は、NS3およびCore抗原特異的ヘルパーT細胞性免疫応答および細胞傷害性T細胞性免疫応答を強力に誘導した。このことは、リンパ球増殖アッセイ、細胞傷害性アッセイ、およびサイトカイン放出アッセイにより示された。GI−5000シリーズの酵母をワクチン接種したマウスは、HCV抗原を発現する同系の腫瘍細胞のチャレンジから保護された。治療の代理モデルにおける結果に加えて、免疫原性および腫瘍防御の結果もまた、本明細書に示されている。最後に、慢性的にHCVに感染している患者におけるフェーズI試験が述べられている。
【0061】
<本発明のワクチンおよび組成物>
本発明の一実施形態は、HCV感染もしくはそれを原因とする病気から動物を予防する方法、またはHCV感染の結果生じる少なくとも1つの症状を緩和する方法に用いることができる組成物(ワクチン)に関する。組成物またはワクチン。上記ワクチンは、(a)酵母ビヒクルと、(b)該酵母ビヒクルによって発現される異種融合タンパク質とを含む。上述したように、本発明は、いくつかの改良されたHCV融合タンパク質を含み、該HCV融合タンパク質は、本発明のワクチンにおいて抗原として用いられる。本発明において、上記ワクチンは、酵母ビヒクルを含むが、酵母ビヒクルを含まない他のワクチンもまた意図される(以下を参照)。特に、本発明は、(A)酵母ビヒクルにおける異種タンパク質の発現を安定させる、(B)発現された異種タンパク質の翻訳後修飾を防止する、および/または、(C)本明細書に述べる酵母ビヒクルを含まないときに(すなわち、従来のワクチン組成物もしくは非酵母ベースのワクチン組成物において)ワクチン抗原として用いることができる、新しい融合タンパク質の構造物を提供する。また、ある実施形態において、上記新規な融合タンパク質は、単一のワクチンにおいて複数の選択された抗原を用いることによって、広範囲の細胞性免疫応答を引き起こす。本発明の実施形態では、上述したように、そのような融合タンパク質の1種もしくはそれ以上を、酵母ビヒクルに搭載したり、さもなければ、酵母ビヒクルと複合体化させたり、混合させたりして、本発明のワクチンを形成する。しかし、これらの融合タンパク質は、上記酵母ビヒクルと共同して、最も典型的には、該酵母ビヒクル(例えば、無傷酵母または酵母スフェロプラスト)によって組換えタンパク質として発現される。なお、無傷酵母または酵母スフェロプラストは、酵母の細胞質体、酵母ゴースト、または酵母膜もしくはその画分にさらに処理してもよい。
【0062】
本発明において有効なそのような融合構造物の1つは、(a)少なくとも1つのHCV抗原(本明細書の他の箇所に記載された様々な融合タンパク質および複数の抗原構造物に加えて、免疫原性ドメインおよび全長抗原のエピトープを含む)と、(b)合成ペプチドとを含む融合タンパク質である。
【0063】
一実施形態において、HCV抗原のN末端には、合成ペプチドが連結される。該合成ペプチドは、HCV抗原とは非相同の少なくとも2つのアミノ酸残基からなり、上記融合タンパク質の酵母ビヒクルにおける発現を安定化したり、発現した該融合タンパク質の翻訳後修飾を防止したりする。上記合成ペプチドと上記抗原のN末端部分とが連結して、次の要件を満たす融合タンパク質を形成する。
(1)該融合タンパク質の第1位のアミノ酸残基はメチオニンである。すなわち、上記合成ペプチドの1番目のアミノ酸はメチオニンである。
(2)該融合タンパク質の第2位のアミノ酸残基は、グリシンもしくはプロリンではない。すなわち、上記合成ペプチドの2番目のアミノ酸は、グリシンもしくはプロリンではない。
(3)該融合タンパク質の第2位〜第6位のアミノ酸残基は、メチオニンではない。すなわち、上記合成ペプチド、または、該合成ペプチドが6アミノ酸よりも短い場合には上記タンパク質の2番目〜6番目のアミノ酸は、メチオニンではない。
(4)該融合タンパク質の第2位〜第6位のアミノ酸残基は、リジンもしくはアルギニンではない。すなわち、上記合成ペプチド、または該合成ペプチドが5アミノ酸よりも短い場合には上記タンパク質の2番目〜6番目のアミノ酸は、リジンもしくはアルギニンではない。
【0064】
上記合成ペプチドは、2アミノ酸と同じくらい短くてもよいが、少なくとも2〜6アミノ酸(3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸を含む)であることがより好ましい。また、上記合成ペプチドは、6アミノ酸よりも長くしてもよく、整数で約200までのアミノ酸とすることができる。
【0065】
一実施形態において、上記ペプチドは、M−X−X−X−X−X(Mはメチオニン;Xはグリシン、プロリン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸)というアミノ酸配列を含む。一実施形態において、上記X残基は、プロリンである。HCV抗原の酵母細胞における発現の安定性を向上させたり、該酵母における該タンパク質の翻訳後修飾を防止したりする代表的な合成配列は、M−A−D−E−A−P(配列番号9)という配列を含む。上記発現産物の安定性の向上に加えて、本発明者らは、この融合相手は、上記構造物におけるワクチン抗原に対する免疫応答に負の影響を与えないと考えている。さらに、上記合成融合ペプチドは、抗体のような選択剤によって認識されうるエピトープを提供するように設計されうる。
【0066】
本発明の別の実施形態では、本発明に用いられる合成ペプチドの翻訳開始部位をコードする核酸は、Kozak翻訳配列ルールに従って、A−C−C−A−T−G−G(配列番号21)である。なお、この配列のATGは最初の翻訳開始部位であり、M−A−D−E−A−P(配列番号9)のメチオニンをコードする。
【0067】
本明細書に記載されているように、本発明の様々な実施形態を組み合わせることができることは理解されうる。例えば、本発明の一局面において、上記合成ペプチドがM−A−D−E−A−P(配列番号9)であるとき、このペプチドの開始部位をコードする核酸は、上述したように、A−C−C−A−T−G−G(配列番号10)でありうる。本発明の実施形態の様々な他の組み合わせは、当業者には明らかであろう。
【0068】
上記実施形態と同様であり、必須ではないが上記実施形態の限定を含む本発明の別の特定の実施形態は、(iii)HCV抗原のC末端に連結されたペプチドを含む。該ペプチドは、HCV抗原と非相同の少なくとも2つのアミノ酸からなり、融合タンパク質の酵母ビヒクルにおける発現を安定化させたり、発現された該融合タンパク質の翻訳後修飾を防止したりする。本発明の代表的な一局面では、上記ペプチドは、E−D(Glu−Asp)というアミノ酸配列を含む。そのような配列は、疎水性を相殺するのに機能する。
【0069】
本発明によれば、「非相同なアミノ酸」は、天然で特定のアミノ酸配列にフランキングすることが見出されていない(すなわち、生体内において天然では見られない)アミノ酸配列;特定のアミノ酸配列の機能に関連しないアミノ酸配列;または所定のアミノ酸配列の由来となる生物の標準コドン使用頻度を用いて、天然に起こる配列におけるヌクレオチドが翻訳されれば、遺伝子において見られるような特定のアミノ酸配列をコードする天然に起こる核酸配列にフランキングするヌクレオチドによってコードされないアミノ酸配列;である。したがって、HCV抗原と非相同な少なくとも2つのアミノ酸残基は、天然でHCV抗原にフランキングすることが見出されていないあらゆる2つのアミノ酸残基である。
【0070】
本発明の別の実施形態は、HCV感染もしくは該感染によって生じる症状から動物を保護するために用いることができる組成物に関する。該組成物は、(a)酵母ビヒクルと、(b)該酵母ビヒクルによって発現された異種融合タンパク質とを含む。一実施形態において、上記融合タンパク質は、(i)少なくとも1つのHCV抗原(本明細書の他の箇所に記載されているような様々な融合タンパク質および複数の抗原構造物に加えて、免疫原性ドメインおよび全長抗原のエピトープを含む)を含み、該HCV抗原は、(ii)上記HCV抗原のN末端に連結された酵母タンパク質に融合されている。また、該組成物において、上記酵母タンパク質は、内在性の酵母タンパク質の約2〜200アミノ酸からなる。上記酵母タンパク質は、酵母ビヒクルにおける上記融合タンパク質の発現の安定性を顕著に向上させたり、該酵母細胞によって発現された該融合タンパク質の翻訳後修飾を防止したりする。さらに、上記内在性の酵母抗原は、上記合成ペプチドと同様に、上記構造物におけるワクチン抗原に対する免疫応答に負の影響を与えない。本発明のこの局面は、上述の本発明の他の実施形態とともに用いてもよい。
【0071】
上記内在性の酵母タンパク質は、内在性の酵母タンパク質の約2〜200アミノ酸(すなわち、最大で22kDa)からなる。上記内在性の酵母タンパク質は、上記酵母ビヒクルにおける融合タンパク質の発現を安定化させたり、発現された該融合タンパク質の翻訳後修飾を防止したりする。本実施形態において用いられる好ましい内在性の酵母タンパク質、および特に好ましいタンパク質には、SUC2(酵母インベルターゼで、同じプロモーターで、培地中の炭素源に依存して、細胞質で発現させたり、分泌経路に向けさせて発現させたりすることができるよい候補である。);α因子シグナルリーダー配列(alpha factor signal leader sequence);SEC7;CPY;ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PCK1)、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)、およびトリースリン酸イソメラーゼ(TPI)といった、グルコースで発現を抑制でき、細胞質に局在する遺伝子産物;細胞壁に局在し、保持されるCwp2;細胞が熱処理されたときに、発現が誘導され、より熱安定である、ヒートショックタンパク質SSA1、SSA3、SSA4、SSC1、およびKAR2;ミトコンドリアに輸送されるミトコンドリアタンパク質CYC1;娘細胞の形成初期段階中の酵母細胞の出芽に局在するBUD遺伝子;アクチン束上にアンカーするためのACT1が含まれる。
【0072】
一実施形態において、本明細書の融合タンパク質に用いられる、内在性の酵母タンパク質および/またはペプチド、もしくは、合成ペプチドは、上記融合タンパク質を同定および精製するための抗体エピトープを含む。内在性の抗原に選択的に結合する抗原、または迅速に生じる抗体は、既に入手可能である。最後に、特定の細胞部位(例えば、分泌経路、ミトコンドリア、核)にタンパク質に移行させることを望むならば、そのときは、上記構造物は、上記酵母タンパク質の内在性のシグナルを用いることができる。これにより、確実に、細胞機構をその輸送システムに最適化することができる。上記融合相手に選択的に結合する抗体を用いる、もしくは製造することが好ましい。本発明によれば、「選択的に結合する」との表現は、抗体、抗原に結合する断片、または特定のタンパク質に好適に結合するための本発明の結合相手の能力を表す。より具体的には、「選択的に結合する」との表現は、あるタンパク質の別のタンパク質(例えば、抗体、抗体断片、または抗原への結合相手)への特異的な結合を表す。ここで、あらゆる標準的なアッセイによって測定したときの結合レベルは、該アッセイのバックグラウンドコントロールよりも、統計的に優位に高い。例えば、免疫アッセイを行ったとき、コントロールは、一般的に、抗体もしくは抗原結合断片のみを含む(すなわち、抗原を含まない)反応ウェル/チューブを含み、抗原が存在しないときの抗体もしくはその抗原結合断片による反応性の量(例えば、ウェルへの非特異的結合)はバックグラウンドであると考えられる。結合は、酵素免疫アッセイ(例えば、ELISAや免疫ブロットアッセイ)を含む技術の様々な標準的な方法を用いて測定することができる。
【0073】
一実施形態において、本発明のワクチンは、HCV抗原のC末端に連結されたペプチドを含みうる。該ペプチドにより、該ペプチドに対する抗体を用いて、該融合タンパク質を認識することができる。ある局面では、上記ペプチドは、G−G−G−H−H−H−H−H−H(配列番号10)のアミノ酸配列を含む。この実施形態は、単独で、もしくは、上述の融合タンパク質の他の局面とともに用いることができる。
【0074】
上述したように、本発明のワクチンおよび組成物で用いられる融合タンパク質は、動物にワクチン接種するための少なくとも1つのHCV抗原を含む。上記組成物またはワクチンは、HCV抗原を、1つ、2つ、数個、十数個、もしくは多数含む。該HCV抗原には、1つもしくはそれ以上のHCV抗原の1つもしくはそれ以上の免疫原性ドメインが所望に含まれる。例えば、本明細書に記載されるあらゆる融合タンパク質は、HCV E1エンベロープ糖タンパク質、HCV E2エンベロープ糖タンパク質、HCV P7イオンチャネル、HCV NS2金属プロテアーゼ、HCV NS3プロテアーゼ/ヘリカーゼ、HCV NS4a NS3プロテアーゼ補因子、HCV NS4b、HCV NS5a、HCV NS5b RNA依存性RNAポリメラーゼ、およびHCV Core配列からなる群より選択される1つもしくはそれ以上のあらゆるHCVタンパク質の少なくとも一部を含む。好ましい実施形態において、HCV Core配列以外のHCVタンパク質の部分は、HCV Core配列の少なくとも一部に連結されている。別の局面では、上記融合タンパク質は、1つもしくはそれ以上のHCV抗原の少なくとも1つもしくはそれ以上の免疫原性ドメインを含む。
【0075】
本発明によれば、本明細書で一般的に用いられる用語「抗原」は、自然発生的に、もしくは合成的に得られるタンパク質(ペプチド、部分タンパク質、全長タンパク質)のあらゆる部分、細胞成分(全細胞、細胞ライセートまたは破壊細胞)、生物(生物全体、ライセートもしくは破壊細胞)、または炭水化物や他の分子もしくはその一部を表す。上記抗原は、抗原特異的な免疫応答(体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答)を誘発したり、その代わりに、該抗原が投与される動物の細胞および組織内で遭遇する同一もしくは類似の抗原に対する免疫寛容原として作用したりする。
【0076】
本発明の一実施形態において、用語「抗原」は、免疫応答を刺激することが望ましいとき、用語「免疫原」と交換可能に用いられる。また、本明細書では、(例えば、本発明のワクチンにより)動物に免疫原を投与することによって、該動物の組織内で遭遇する同一もしくは類似の抗原に対して抗原特異的な免疫応答を引き起こさせるような、タンパク質、ペプチド、細胞成分、生物、もしくは体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答を誘発する(すなわち、免疫原性である)他の分子を記述するために用いられる。したがって、ある実施形態において、動物に特定の抗原に対するワクチンを接種することは、該抗原の投与の結果、抗原またはその免疫原性のある部分もしくは免疫寛容原性のある部分に対する免疫応答を誘発させることが意図される。ワクチン接種は、予防効果または治療効果をもたらすことが好ましい。その後の抗原(もしくは抗原源)被爆は、該抗原(もしくは抗原源)に対する免疫応答を誘発する。該免疫応答は、該動物における疾患もしくは異常を緩和もしくは予防する。ワクチン接種の概念は、従来公知である。本発明の治療用組成物の投与によって誘発される免疫応答は、ワクチンを投与していないときと比較して、免疫応答のあらゆる面(例えば、細胞性応答、体液性応答、サイトカイン産生)において、検出可能なあらゆる変化である。
【0077】
「ワクチン接種する抗原」は、免疫原もしくは免疫寛容原でありうるが、ワクチンに用いられる抗原である。つまり、ワクチン接種する抗原に対する生物学的応答(免疫応答、免疫寛容の誘発)が誘発される。
【0078】
所定の抗原の免疫原性ドメイン(部分、断片、エピトープ)は、動物に投与されたときに免疫原として作用する、少なくとも1つのエピトープを含む抗原(すなわち、ペプチド断片、サブユニット、抗体エピトープ、またはその他の立体配置的なエピトープ)のあらゆる部分でありうる。例えば、単一のタンパク質は、複数の異なる免疫原性ドメインを含む。免疫原性ドメインは、体液性免疫応答の場合には、タンパク質内に直線の配列を必要としない。本明細書においてエピトープは、免疫応答を誘発するのに十分な所定の抗原内にある単一の免疫原性の部位、または、免疫応答を抑制、除去、もしくは不活性化するのに十分な所定の抗原内にある単一の免疫寛容性の部位として定義される。当業者は、T細胞エピトープがB細胞エピトープとは異なるサイズおよび組成であること、および、MHCクラスI経路によって提示されるエピトープがMHCクラスII経路によって提示されるエピトープと異なることは、分かっている。エピトープは、免疫応答のタイプに依存して直線配列のエピトープまたは立体配置的なエピトープ(保存された結合領域)でありうる。抗原は、単一のエピトープのように小さくてもよいし、より大きくてもよい。また、抗原には、複数のエピトープが含まれていてもよい。したがって、抗原の大きさは、約5〜12アミノ酸(例えば、ペプチド)程度と小さくてもよいし、全長タンパク質ほど大きくてもよい。全長タンパク質には、多量体、融合タンパク質、キメラタンパク質、細胞全体、微生物全体、もしくはそれらの一部(例えば、細胞全体のライセートや、微生物の抽出物)が含まれる。さらに、抗原には、酵母ビヒクルや本発明の組成物に搭載されうる炭化水素が含まれる。ある実施形態(すなわち、抗原が、組換え核酸分子から、酵母ビヒクルによって発現される実施形態)では、該抗原は、細胞全体や微生物よりもむしろ、タンパク質、融合タンパク質、キメラタンパク質、またはそれらの断片であると理解される。好ましい本発明のHCV融合タンパク質は、本明細書で述べられている。
【0079】
本発明のさらに別の実施形態では、上記ワクチンのHCV抗原の一部は、2つもしくはそれ以上の抗原を含む融合タンパク質として製造される。ある局面では、該融合タンパク質は、2つもしくはそれ以上の免疫原性ドメイン、または1つもしくはそれ以上の抗原(例えば、本明細書に記載のHCV NS3配列およびHCV Core配列)の2つもしくはそれ以上のエピトープを含む。そのようなワクチンは、広い範囲の患者において、抗原特異的な免疫性を示す。例えば、本発明において有効な複数のドメイン融合タンパク質は、複数のドメインを有する。各ドメインは、特定のタンパク質由来のペプチドからなる。該ペプチドは、上記タンパク質のいずれかの末端にフランキングし、該タンパク質で見出された変異アミノ酸を含む少なくとも4つのアミノ酸残基からなる。該変異は、特定の疾患もしくは異常(例えば、HCV感染)と関連している。
【0080】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載のアミノ酸配列は、いずれも、特定のアミノ酸配列のC末端および/またはN末端のそれぞれにフランキングする少なくとも1〜20の付加的な非相同なアミノ酸で作られる。その結果生じるタンパク質またはポリペプチドは、「本質的に、該特定のアミノ酸配列からなる」と称される。上述したように、本発明によれば、非相同なアミノ酸は、特定のアミノ酸配列にフランキングしているのが、天然には見いだされないアミノ酸配列(つまり、生体内では、天然に見出されないアミノ酸配列)、特定のアミノ酸配列の機能に関係しないアミノ酸配列、または、所定のアミノ酸配列の由来となる生物の標準コドン使用頻度を用いて、天然に起こる配列におけるヌクレオチドが翻訳されれば、遺伝子において見られるような特定のアミノ酸配列をコードする天然に起こる核酸配列にフランキングするヌクレオチドによってコードされないアミノ酸配列特定のアミノ酸配列をコードする天然に生じる核酸配列にフランキングするヌクレオチドによってコードされないアミノ酸配列である。同様に、「本質的に〜からなる」との表現は、本明細書において核酸配列に関して用いられる場合、少なくとも1つ、多くとも約60の付加的な非相同なヌクレオチドが、特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列の5’末端および/または3’末端のそれぞれにフランキングされた特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列を表す。上記非相同なヌクレオチドは、天然の遺伝子で起こるような特定のアミノ酸配列をコードする核酸配列にフランキングすることが天然には見いだされない(つまり、生体内では天然に見出されない)。また、該タンパク質に何らかの付加的な機能を与えたり、特定のアミノ酸配列を有するタンパク質の機能を変化させたりするタンパク質をコードしない。
【0081】
本発明の好ましい一局面では、上記HCV抗原は、HCV NS3プロテアーゼおよびCore配列からなる。別の局面では、上記HCV抗原は、HCV Core配列に連結された、天然のNS3タンパク質の触媒ドメインを欠失するHCV NS3タンパク質からなる。別の局面では、上記HCV抗原は、HCV Core配列に連結された、天然のNS3タンパク質の最初のN末端の88アミノ酸に続くHCV NS3の262個のアミノ酸(すなわち、HCV NS3の第89位〜第350位(配列番号20))からなる。ある局面では、上記HCV Core配列は、疎水性のC末端配列を欠失する。別の局面では、上記HCV Core配列は、C末端のグルタミン酸およびアスパラギン酸の2つのアミノ酸を欠失する。好ましい局面では、上記HCV Core配列は、天然のHCV Core配列の第2位〜第140位のアミノ酸からなる。
【0082】
そのようなワクチンの例は、実施例1に記載されている。この実施例では、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)は、銅誘導プロモーターであるCUP1の制御下で、HCV NS3−Core融合タンパク質を発現するように操作された。該融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書では配列番号2に示されている融合タンパク質のアミノ酸配列を用いて括弧内に番号が付されているHCVポリタンパク質(配列番号20))において、以下の配列要素が融合された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号2の第1位〜第6位)
2)HCV NS3プロテアーゼタンパク質の第89位〜第350位(配列番号20の第1115位〜第1376位)(配列番号2の第6位〜第268位)
3)クローニングにおいて導入された1つのスレオニンアミノ酸残基(配列番号2の第269位)
4)HCV Coreタンパク質の第2位〜第140位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第140位)(配列番号2の270位〜第408位)
5)Core変異体の親水性を向上させるための配列E−D(配列番号2の第409位〜第410位)
本明細書において、配列番号2の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号1に示される。
【0083】
本発明の別の好ましい局面では、上記HCV抗原は、本発明にかかる融合タンパク質の一部である不活性化されたHCV NS3全長である。そのようなワクチンの例は、実施例2に記載されている。この実施例では、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)は、銅誘導プロモーターであるCUP1の制御下で、不活性化された、全長のHCV NS3−Core融合タンパク質を発現するように操作された。HCV NS3全長を含む該融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書では配列番号4に示されている融合タンパク質のアミノ酸配列を用いて括弧内に番号が付されているHCVポリタンパク質(配列番号20))において、以下の配列要素が融合された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号4の第1位〜第6位)
2)HCV NS3プロテアーゼタンパク質の第1位〜第631位のアミノ酸(配列番号20の第1027位〜第1657位)(配列番号4の第7位〜第637位)(但し、HCVポリペプチドの第1165位の残基は、タンパク質分解活性を不活性化するためにセリンからアラニンに置換されている。)
本明細書において、配列番号4の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号3に示される。
【0084】
本発明の別の好ましい局面では、上記酵母ワクチンは、切断HCV E1−E2融合タンパク質を含む。そのようなワクチンの例は、実施例3に記載されている。この実施例では、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号6に示されており、括弧内に番号が付されているHCVポリタンパク質)において、以下の配列要素が融合された単一のポリペプチドとして、E1−E2融合タンパク質を発現するように操作されている。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号6の第1位〜第6位)
2)HCVタンパク質E1の第1位〜第156位のアミノ酸(配列番号20の第192位〜第347位)(配列番号6の第7位〜第162位)
3)HCVタンパク質E2の第1位〜第334位のアミノ酸(配列番号20の第384位〜第717位)(配列番号6の第163位〜第446位)
なお、この特定の融合タンパク質において、E1のC末端の疎水性の36個のアミノ酸、およびE2のC末端の疎水性の29個のアミノ酸は、酵母における細胞質への蓄積を促進させるために、欠失された。本明細書において、配列番号6の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号5に示される。
【0085】
本発明のさらに別の好ましい局面では、上記酵母ワクチンは、膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4b融合タンパク質を含む。そのようなワクチンの例は、実施例4に記載されている。上記融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号8に示されており、括弧内に番号が付されているポリタンパク質)において、以下の配列要素がタンデムに配置された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号8の第1位〜第6位)
2)HCVタンパク質NS4bの第1位〜第69位のアミノ酸(配列番号20の第1712位〜第1780位)(配列番号8の第7位〜第75位)
3)HCVタンパク質NS4bの第177位〜第261位のアミノ酸(配列番号20の第1888位〜第1972位)(配列番号8の第76位〜第160位)
複数の膜貫通ドメインを含む、NS4bの第70位〜第176位(配列番号20の第1781位〜第1887位)のアミノ酸に対応する107個のアミノ酸領域は、酵母における細胞質への蓄積を促進させるために欠失された。本明細書において、配列番号8の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号7に示される。
【0086】
本発明のさらに別の好ましい局面では、上記酵母ワクチンは、Core−E1−E2融合タンパク質を含む。該融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号12に示されており、括弧内に番号が付されているポリタンパク質)において、以下の配列要素がタンデムに配置された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号12の第1位〜第6位)
2)Core、E1、およびE2タンパク質の全長をコードする修飾されていないHCVポリタンパク質の第1位〜第746位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第746位)(配列番号12の第7位〜第751位;第7位〜第196に延びたCore、第197位〜第387位に延びたE1、および第388位〜第751位に延びたE2)
配列番号12の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号11に示される。
【0087】
本発明の別の好ましい局面では、上記酵母ワクチンは、膜貫通ドメインを欠失したCore−E1−E2融合タンパク質を含む。該融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号14に示されており、括弧内に番号が付されているポリタンパク質)において、以下の配列要素が融合された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)
2)HCV Coreタンパク質の第2位〜第140位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第140位)(配列番号14の第7位〜第145位)
3)HCVタンパク質E1の第1位〜第156位のアミノ酸(配列番号20の第192位〜第347位)(配列番号14の第146位〜第301位)
4)HCVタンパク質E2の第1位〜第334位のアミノ酸(配列番号20の第384位〜第717位)(配列番号14の第302位〜第635位)
Coreタンパク質のC末端の疎水性の51個のアミノ酸、E1のC末端の疎水性の36個のアミノ酸、およびE2のC末端の疎水性の29個のアミノ酸は、酵母における細胞質への蓄積を促進させるために、欠失された。本明細書において、配列番号14の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号13に示される。
【0088】
本発明のさらに別の好ましい局面では、上記酵母ワクチンは、NS3−NS4a−NS4b融合タンパク質を含み、該NS3プロテアーゼは、不活性化されており、該NS4bは、膜貫通ドメインを欠失する。該NS3−NS4a−NS4b融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号16に示されており、括弧内に番号が付されているポリタンパク質)において、以下の配列要素が融合された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号16の第1位〜第6位)
2)全長のHCV NS3タンパク質(但し、第139位のセリン(配列番号20の第1165位)はNS3のタンパク質分解能を不活性化するためにアラニンに置換されている)に対応する第1位〜第631位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第140位)(配列番号16の第7位〜第634位)
3)NS4aタンパク質の第1位〜第54位のアミノ酸(配列番号20の第1658位〜第1711位)(配列番号16の第635位〜第691位)
4)HCVタンパク質NS4bの第1位〜第69位のアミノ酸(配列番号20の第1712位〜第1780位)(配列番号16の第692位〜第776位)
5)HCVタンパク質NS4bの第177位〜第261位のアミノ酸(配列番号20の第1888位〜第1972位)(配列番号16の第777位〜第845位)
複数の膜貫通ドメインを含む、NS4bの第70位〜第176位(配列番号20の第1781位〜第1887位)のアミノ酸に対応する107個のアミノ酸領域は、酵母における細胞質への蓄積を促進させるために欠失された。本明細書において、配列番号16の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号15に示される。
【0089】
本発明の別の好ましい局面では、上記酵母ワクチンは、NS5bのC末端が欠失して不活性化しているNS5a−NS5b融合タンパク質を含む。該NS5a−NS5b融合タンパク質は、N末端〜C末端までのフレーム(本明細書で、融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号18に示されており、括弧内に番号が付されているポリタンパク質)において、以下の配列要素が融合された単一のポリペプチドである。
1)プロテアソームの分解に対して抵抗性を付与するための配列MADEAP(配列番号9)(配列番号18の第1位〜第6位)
2)第1位〜第448位のアミノ酸(配列番号20の第1973位〜第2420位)に対応するNS5aタンパク質全体(配列番号18の第7位〜第454位)
3)NS5bの第1位〜第539位のアミノ酸(配列番号20の第2421位〜第2959位)(配列番号18の第455位〜第993位)
HCV複製にかかるNS5bの活性に必要となるC末端の52個の残基は、タンパク質を不活性化するために欠失された。本明細書において、配列番号18の融合タンパク質をコードする核酸配列は、配列番号17に示される。
【0090】
本発明によれば、本明細書に記載された融合タンパク質は、いずれも、該融合タンパク質のN末端に連結されている、HCV抗原に非相同な少なくとも2〜6個のアミノ酸残基からなるペプチドを含む。ある局面では、該ペプチドは、M−X−X−X−X−X(Xはグリシン、プロリン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニン、リジン、またはアルギニンを除くいずれかのアミノ酸;Xはメチオニンを除くいずれかのアミノ酸)というアミノ酸配列を含む。ある局面では、Xは、プロリンである。別の局面では、上記ペプチドは、M−A−D−E−A−P(配列番号9)というアミノ酸配列を含む。
【0091】
本発明の特定の局面では、上述の融合タンパク質は、2つのHCVタンパク質(例えば、HCV NS3配列とHCV Core配列)の間に非相同なリンカー配列を含む。好ましい実施形態では、該非相同なリンカー配列は、1つの非相同なアミノ酸残基からなる。より好ましい実施形態では、該非相同なリンカー配列は、1つのスレオニン残基からなる。
【0092】
本発明の上述した組成物(例えば、ワクチン)のいずれにおいても、酵母ビヒクルに関する以下の局面が発明に含まれる。一実施形態では、酵母ビヒクルは、酵母全体、酵母スフェロプラスト、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、および細胞よりも小さい酵母膜抽出物もしくはその画分から選択される。ある局面では、該酵母ビヒクルを調製するために用いられる酵母細胞もしくは酵母スフェロプラストは、抗原が該酵母細胞もしくは酵母スフェロプラストによって組換え的に発現されるように、抗原をコードする組換え核酸分子で形質転換される。この局面では、該抗原を組換え的に発現する酵母細胞もしくは酵母スフェロプラストは、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、または細胞よりも小さい酵母膜抽出物もしくはその画分を含む酵母ビヒクルを製造するために用いられる。ある局面では、該酵母ビヒクルは、非病原性酵母に由来する。別の局面では、該酵母ビヒクルは、Saccharomyces、Schizosaccharomyces, Kluveromyces、Hansenula、Candida、およびPichiaからなる群より選択された酵母に由来する。ある局面では、Saccharomycesは、S. cerevisiaeである。
【0093】
通常、上記酵母ビヒクルおよび抗原は、本明細書に記載されたあらゆる技術によって連想することができる。ある局面において、上記酵母ビヒクルは、HCVと共に細胞内に搭載された。別の局面では、上記HCV抗原は、酵母ビヒクルに共有結合的に、もしくは非共有結合的に結合された。さらに別の局面では、上記酵母ビヒクルおよびHCV抗原は、混合して結合された。別の局面では、上記抗原は、酵母ビヒクル、酵母細胞、もしくは該酵母ビヒクルが由来する酵母スフェロプラストによって、組換え的に発現される。
【0094】
より具体的には、本発明によれば、酵母ビヒクルは、本発明のワクチンもしくは治療用組成物において、抗原と共に用いたり、アジュバントとして用いたりすることができる、あらゆる酵母細胞(例えば、細胞全体もしくは無傷細胞)またはその派生物(以下を参照)である。したがって、上記酵母ビヒクルには、生きている無傷の酵母微生物(すなわち、細胞壁を含む全ての成分を有する酵母細胞)、殺傷された(死滅した)無傷の酵母微生物もしくは酵母スフェロプラストを含む派生物(すなわち、細胞壁を欠く酵母細胞)、酵母サイトプラスト(すなわち、細胞壁と核を欠く酵母細胞)、酵母ゴースト(すなわち、細胞壁、核、および細胞質を欠く酵母細胞)、または細胞よりも小さい酵母膜抽出物もしくはその画分(以前は、小細胞酵母粒子とも称した)を含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
酵母スフェロプラストは、通常、酵母細胞壁を酵素的に消化することによって製造される。そのような方法は、例えば、Franzusoff et al., 1991, Meth. Enzymol. 194, 662-674に記載されており、これらは、参照として、全体が本明細書に組み込まれる。酵母サイトプラストは、通常、酵母細胞から核を除去することにより製造される。そのような方法は、例えば、Coon, 1978, Natl. Cancer Inst. Monogr. 48, 45-55に記載されており、これらは、参照として、全体が本明細書に組み込まれる。酵母ゴーストは、通常、透過化もしくは溶解された細胞を再び封じることによって、製造される。これにより、細胞のオルガネラの少なくともいくつかを含むが、必ずしも必要ではない。そのような方法は、例えば、Franzusoff et al., 1983, J. Biol. Chem. 258, 3608-3614 and Bussey et al., 1979, Biochim. Biophys. Acta 553, 185-196に記載されており、これらは、それぞれ、参照として、全体が本明細書に組み込まれる。細胞よりも小さい酵母膜抽出物もしくはその画分は、もともとの核や細胞質を欠く酵母膜を表す。該粒子は、もともとの酵母膜の大きさから、超音波処理や、当業者に知られたその他の膜破壊方法により製造された微粒子のサイズまでを含む。該膜抽出物もしくはその画分は、その後、再度、封じられる。細胞よりも小さい酵母膜抽出物の製造方法は、例えば、Franzusoff et al., 1991, Meth. Enzymol. 194, 662-674に記載されている。また、酵母膜部分を含む酵母膜抽出物の画分、および上記抗原が酵母膜の調製の前に該酵母によって組換え的に発現されたときには、該抗原を用いてもよい。
【0096】
あらゆる酵母株を、本発明の酵母ビヒクルを製造するために用いることができる。酵母は、3つのクラスのうちの1つに属する単細胞微生物である。本発明によれば、Ascomycetes, BasidiomycetesおよびFungi Imperfecta Whileといった病原性酵母もしくはそれらの非病原性変異株を用いることができ、非病原性の酵母株であることが好ましい。酵母株の好ましい属には、SaccharomycesおよびCandida(病原性)、Cryptococcus、Hansenula、Kluyveromyces、Pichia、Rhodotorula、Schizosaccharomyces、およびYarrowiaが含まれる。中でも、Saccharomyces、Candida、Hansenula、Pichia、およびSchizosaccharomycesがより好ましく、Saccharomycesが特に好ましい。酵母株の好ましい種には、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Candida albicans、Candida kefyr、Candida tropicalis、Cryptococcus laurentii、Cryptococcus neoformans、Hansenula anomala、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus var. lactis、Pichia pastoris、Rhodotorula rubra、Schizosaccharomyces pombe、およびYarrowia lipolyticaが含まれる。これらの種の多くは、上述の種に含まれることが意図される、様々な亜種、類、亜類等を含むことは十分に理解されるべきである。より好ましい酵母種には、S. cerevisiae、C. albicans、H. polymorpha、P. pastoris、およびS. pombeが含まれる。扱いが比較的容易で、食品添加物として用いるの「Generally Recognized As Safe」、いわゆる「GRAS」である(GRASとは、1997年4月17日にFDAが提案したRule62FR18938)ため、S. cerevisiaeは、特に好ましい。本発明の一実施形態は、S. cerevisiae cir株のような特に高いコピー数にプラスミドを複製できる酵母株である。
【0097】
一実施形態では、本発明の好ましい酵母ビヒクルは、該酵母ビヒクルおよび抗原(多くの実施形態では、抗原)が運搬される細胞種、例えば、樹状細胞もしくはマクロファージと融合される。これにより、該酵母ビヒクルの特に効果的な運搬に影響を与えることができる。本明細書で用いる場合、酵母ビヒクルの標的細胞種との融合は、酵母細胞膜もしくはその粒子が該標的細胞種(例えば、樹状細胞もしくはマクロファージ)の膜と融合し、融合細胞の形成に至ることを表す。本明細書で用いる場合、融合細胞は、細胞を融合することによって製造される原形質の多核巨細胞のマス(multinucleate mass)である。多くのウィルス表面タンパク質(HIV、インフルエンザウィルス、ポリオウィルス、およびアデノウィルスのような免疫不全ウィルスの表面タンパク質を含む)、および他の膜融合因子(fusogen)(例えば、卵と精子との間の融合に関わる膜融合因子)は、2つの膜の間(すなわち、ウィルス膜と哺乳細胞膜との間、もしくは、哺乳細胞膜間)の融合に影響を及ぼしうることが知られている。例えば、HIV gp120/gp41異種抗原を表面上に産生する酵母ビヒクルは、CD4Tリンパ球と融合することができる。しかし、該酵母ビヒクルへの標的部分の取り込みは、ある環境下では望ましいが、必ずしも必要ではないことを記載しておく。本発明者らは、すでに、本発明の酵母ビヒクルが、マクロファージのような他の細胞と同様に、樹状細胞によって容易に取り込まれることを示している。
【0098】
酵母ビヒクルは、当業者に知られている数多くの技術を用いて、本発明の組成物に製剤化される。製剤には、患者に直接投与される製剤、および樹状細胞のような担体にまず、搭載されて患者に投与される製剤が含まれる。例えば、酵母ビヒクルは、凍結乾燥により乾燥されてもよい。また、酵母ビヒクルを含む製剤は、焼成操作や醸造操作で用いられる酵母のように、固形物やタブレット内に酵母を封入することによって製剤化されてもよい。さらに、樹状細胞もしくは抗原と投与される他の細胞種に搭載する前に、酵母ビヒクルを、宿主細胞によって許容される等張緩衝液のような薬学的に許容可能な賦形剤と混合してもよい。そのような賦形剤の例には、水、生理的食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液、ハンク溶液、およびだの水系の生理学的に安定な塩溶液が含まれる。また、不揮発性油、ゴマ油、オレイン酸エチル、トリグリセリドのような非水溶性媒体を用いることもできる。他の有用な製剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール、もしくはデキストランのような増粘剤を含む懸濁剤が含まれる。また、賦形剤は、等張性や化学安定性を向上させる物質のような添加剤を少量含んでいてもよい。緩衝液の例として、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、およびTris緩衝液を挙げることができる。一方、防腐剤の例として、チメロサール、m−クレゾールもしくはo−クレゾール、ホルマリン、およびベンジルアルコールが挙げられる。標準的な製剤は、注射可能な液体、または懸濁剤もしくは注射用溶液として適切な液体になる固体のいずれかでありうる。このように、非液体の製剤では、上記賦形剤は、例えば、ブドウ糖、ヒト血清アルブミン、および/または防腐剤を含み、投与前に、滅菌水や生理的食塩水が添加される。
【0099】
本発明によれば、用語「酵母ビヒクル−抗原複合体」、もしくは「酵母−抗原複合体」は、一般的に、抗原と酵母ビヒクルとのあらゆる結合を記載するために用いられる。そのような結合には、酵母(組換え酵母)による抗原の発現、酵母への抗原の導入、抗原の酵母への物理的な付着、および、例えば、緩衝液、その他の溶液、もしくは製剤内における酵母と抗原との混合が含まれる。これらのタイプの複合体の詳細は、後述している。
【0100】
一実施形態において、上記酵母ビヒクルを調製するために用いられる酵母細胞は、抗原が酵母細胞によって発現されるように、抗原をコードする異種の核酸分子で形質転換される。そのような酵母もまた、本明細書では、組換え酵母もしくは組換え酵母ビヒクルという。その後、酵母細胞は無傷細胞、または死滅した酵母細胞として樹状細胞に搭載される。また、酵母細胞は、例えば、酵母スフェロプラスト、サイトプラスト、ゴースト、もしくは細胞より小さい粒子を形成するように調製され、その後、該調製物が樹状細胞に搭載されてもよい。また、抗原を発現する組換えスフェロプラストを作製するために、酵母スフェロプラストは、組換え核酸分子で直接形質移入されてもよい(例えば、酵母全体からスフェロプラストを作製し、その後、形質移入してもよい)。
【0101】
本発明によれば、単離された核酸分子もしくは核酸配列は、自然環境から取り出された核酸分子もしくは核酸配列である。例えば、「単離された」とは、核酸分子の精製の程度を反映する必要はない。酵母ビヒクルに形質移入するのに有効な単離された核酸分子には、DNA、RNA、または、DNAもしくはRNAの誘導体が含まれる。単離された核酸分子は、二本鎖であってもよいし、一本鎖であってもよい。本発明において有効な単離された核酸分子には、本発明の組成物において有効な少なくとも1つのエピトープを含むタンパク質、もしくは該断片をコードする核酸分子が含まれる。
【0102】
本発明の酵母ビヒクルに形質転換される核酸分子には、1つもしくはそれ以上のタンパク質またはその一部(断片、ドメイン、立体配置的なエピトープ)をコードする核酸配列が含まれる。そのような核酸分子は、部分的なもしくは完全なコード領域、制御領域、またはそれらの組み合わせを含む。酵母株の1つの利点は、多くの核酸分子を保持することができる能力、および多くの異種タンパク質を生産することができる能力を有することである。本発明の酵母ビヒクルによって製造される抗原の好ましい数は、酵母ビヒクルによって合理的に製造される抗原の数である。一般的には、少なくとも1つ〜少なくとも約5以上の範囲であり、約2〜約5の異種抗原が製造されることがより好ましい。
【0103】
酵母ビヒクル内の核酸分子によってコードされるペプチドまたはタンパク質は、全長タンパク質であってもよいし、アミノ酸が欠失、(例えば、切断タンパク質)、挿入、逆位、置換、および/または誘導化(アセチル化、グリコシル化、リン酸化、グリセロホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーによる付加)された機能的に同等のタンパク質であってもよい。そのような修飾されたタンパク質は、天然のタンパク質の生物学的活性と実質的に同等の生物学的活性を有するか、もしくは、天然のタンパク質と比較して機能が所望に亢進したり阻害されたりしている。修飾は、当技術分野で知られた技術によって実現することができる。具体的には、タンパク質への直接の修飾、または例えば、ランダムもしくはターゲティングされた変異をもたらす標準的な組換えDNA技術を用いたタンパク質をコードする核酸の修飾を含むが、これらに限定されるものではない。機能的に同等のタンパク質は、タンパク質の生物学的活性を測定するアッセイ系を用いて選抜することができる。好ましいHCV抗原は、上述した通りである。本発明の酵母ビヒクルにおける抗原の発現は、当業者に知られている技術を用いて実現できる。簡単に言えば、少なくとも1つの所望の抗原をコードする核酸を発現ベクターに挿入する。このとき、該核酸分子は、宿主の酵母細胞に形質転換したときに、該核酸分子を恒常的に、もしくは制御されて発現させるために、転写制御配列に機能できるように連結されている。1つもしくはそれ以上の抗原をコードする核酸分子は、1つもしくはそれ以上の発現ベクター上で、1つもしくはそれ以上の転写制御配列に機能できるように連結されている。
【0104】
本発明の組換え分子において、核酸分子は、制御配列を含む発現ベクターに、機能できるように連結されている。該制御配列には、転写制御配列、翻訳制御配列、複製オリジン、および、酵母細胞に適合して、核酸分子の発現を制御する他の制御配列が含まれる。特に、本発明の組換え分子は、1つもしくはそれ以上の転写制御配列に機能できるように連結されている核酸分子を含む。「機能できるように連結されている」との表現は、宿主細胞に形質移入(すなわち、形質転換、形質導入、形質移入)したときに、核酸分子が発現できるように、転写制御配列に該分子を連結することを表す。
【0105】
産生するタンパク質の量を制御することができる転写制御配列には、転写の開始、伸張、および終結を制御する配列が含まれる。特に重要な転写制御配列は、プロモーターおよび上流の活性化配列のような転写の開始を制御する配列である。本発明には、あらゆる適切な酵母プロモーターを用いることができる。また、そのようなプロモーターの多様性は、当業者に知られている。Saccharomyces cerevisiaeにおける発現に好ましいプロモーターには、アルコールデヒドロゲナーゼI(ADH1)もしくはアルコールデヒドロゲナーゼII(ADH2)、CUP1、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH、トリオースリン酸デヒドロゲナーゼ(TDH3)ともいう)、ガラクトシキナーゼ(GAL1)、ガラクトース−1−リン酸ウリジル−トランスフェラーゼ(GAL7)、UDP−ガラクトースエピメラーゼ(GAL10)、シトクロムc1(CYC1)、Sec7タンパク質(SEC7)、および酸ホスファターゼ(PHO5)といった酵母タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター、より好ましくは、ADH2/GAPDHプロモーター、CYC1/GAL10プロモーターのようなハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定されるものではない。中でも、細胞内のグルコース濃度を低くしたとき(例えば、約0.1%〜0.2%)に誘導されるADH2/GAPDHプロモーターは、特に好ましい。同様に、多くの上流の活性化配列(UAS、エンハンサーともいう)が知られている。Saccharomyces cerevisiaeにおける発現に好ましい上流の活性化配列には、GAL4遺伝子産物によって活性化される他のUASに加えて、PCK1、TPI、TDH3、CYC1、ADH1、ADH2、SUC2、GAL1、GAL7、およびGAL10といったタンパク質をコードする遺伝子のUASが含まれるが、これらに限定されるものではない。中でも、ADH2のUASが特に好ましい。ADH2のUASは、ADR1の遺伝子産物によって活性化されるため、異種遺伝子がADH2のUASに機能できるように連結されたときにADR1遺伝子を好適に過剰発現させる。Saccharomyces cerevisiaeにおける発現に好ましい転写終結配列には、α−因子、GAPDH、およびCYC1の遺伝子の終結配列が含まれる。
【0106】
メチロトローフの酵母(methyltrophic yeast)において、遺伝子を発現させるのに好ましい転写制御配列には、アルコールオキシダーゼおよびギ酸デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の転写制御領域が含まれる。
【0107】
本発明にかかる酵母細胞への核酸分子の形質移入は、核酸分子を細胞内に投与する方法によって達成される。該方法には、拡散、能動輸送、浴超音波処理(bath sonication)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、およびプロトプラスト融合が含まれるが、これらに限定されるものではない。形質移入された核酸分子は、酵母の染色体に組み込まれたり、当業者に知られた技術を用いて染色体外のベクター上に維持されたりする。そのような核酸分子を保持する酵母ビヒクルの例は、本明細書に詳細に記載されている。上述したように、酵母サイトプラスト、酵母ゴースト、および細胞よりも小さい酵母膜抽出物もしくはその画分は、無傷の酵母微生物、または所望の核酸分子をもつ酵母スフェロプラストに形質移入し、そこで、抗原を産生させ、その後、さらに、サイトプラスト、ゴースト、または細胞よりも小さい酵母膜抽出物もしくはその所望の抗原を含む画分を製造するための当業者に知られた技術を用いて、該微生物またはスフェロプラストを操作することによって組換え的に製造されうる。
【0108】
組換え酵母ビヒクルの製造および該酵母ビヒクルによる抗原の発現に有効な条件には、酵母株を培養する効果的な培地が含まれる。効果的な培地は、一般的には、適切な塩、ミネラル、金属、および、ビタミンや増殖因子のような他の栄養素に加えて、吸収可能な炭化水素源、窒素源、およびリン酸源を含む水溶性の培地である。該培地は、複雑な栄養素を含んでいてもよいし、確立された最小培地でもよい。本発明の酵母株は、バイオリアクター、三角フラスコ、試験管、マイクロリットル皿(microliter dishes)、およびペトリ皿を含む様々な容器で培養することができるが、これらに限定されるものではない。培養は、該酵母株にとって適した温度、pH、および酸度濃度で行われる。そのような培養条件は、当業者の専門知識の範囲内でうまく設定できる(例えば、Guthrie et al. (eds.), 1991, Methods in Enzymology, vol. 194, Academic Press, San Diegoを参照)。
【0109】
本発明の一実施形態では、酵母ビヒクルにおいて組換え的に抗原を発現させる代わりに、酵母ビヒクルを、タンパク質もしくはペプチド抗原、または炭化水素もしくは抗原として作用する他の分子とともに、細胞内に搭載させる。続いて、細胞内に抗原を含む酵母ビヒクルを、患者に投与するか、もしくは、樹状細胞のような担体に搭載させる(以下に述べる)。本明細書で用いられる場合、ペプチドは、約30〜50のアミノ酸と同じかそれよりも少ないアミノ酸配列を含む。一方、タンパク質は、約30〜50のアミノ酸よりも多いアミノ酸配列を含む。また、タンパク質は、多量体であってもよい。抗原として有効なタンパク質またはペプチドは、T細胞エピトープと同じ程度に小さい(すなわち、長さが5アミノ酸よりも長い)。また、複数のエピトープ、タンパク質断片、全長タンパク質、キメラタンパク質もしくは融合タンパク質を含むものよりも大きい適切なサイズである。ペプチドおよびタンパク質は、天然由来であってもよいし、合成されたものであってもよい。また、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリスチル化、プレニル化、パルミトイル化、アミド化、および/またはグリセロホスファチジルイノシトールによる付加のような修飾を含んでいてもよい。なお、修飾は、上記に限定されるものではない。ペプチドおよびタンパク質は、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、ファゴサイトーシス、凍結融解サイクル(freeze-thaw cycles)、および浴超音波処理のような当業者に知られる技術を用いて、本発明の酵母ビヒクルに直接挿入されてもよい。ペプチド、タンパク質、炭化水素、もしくは他の分子が直接搭載された酵母ビヒクルには、スフェロプラスト、ゴースト、もしくはサイトプラストに加えて、無傷酵母が含まれる。その場合、製造後で、樹状細胞に搭載される前に抗原が搭載される。これとは別に、無傷酵母に抗原を搭載し、その後、該無傷酵母からスフェロプラスト、ゴースト、サイトプラスト、または細胞よりも小さい粒子を調製してもよい。この実施形態においては、例えば、微生物、哺乳腫瘍細胞もしくはその一部を搭載することによって抗原を提供することで、酵母ビヒクルにあらゆる数の抗原、少なくとも1、2、3、4、もしくは数百もしくは数千までの整数個の抗原を搭載することができる。
【0110】
本発明の別の実施形態では、抗原は、上記酵母ビヒクルに物理的に結合される。抗原の酵母ビヒクルへの物理的な結合は、当技術分野における適切な方法によって達成できる。該方法には、共有結合させる方法および非共有結合させる方法が含まれる。具体的には、酵母ビヒクルの外側表面への抗原の化学的架橋、または抗体やその結合相手を用いることによる酵母ビヒクルの外側表面への抗原の生物学的な結合が含まれるが、これらに限定されるものではない。化学的架橋は、例えば、グルタルアルデヒド結合、光親和性ラベル、カルボジイミド処理、ジスルフィド結合を形成可能な化学物質処理、および当技術分野で標準的な他の架橋化学物質を含む方法で達成することができる。これとは別に、酵母膜の脂質二重膜の外側表面の電荷、もしくは細胞壁の組成を変化させる化学物質を、酵母ビヒクルと接触させてもよい。これにより、該酵母の外側表面は、特定の電荷特性を持つ抗原に融合したり、結合したりしやすくなる。抗体、結合ペプチド、可溶性受容体、および他のリガンドのような標的剤は、融合タンパク質として抗原に取り込まれてもよいし、さもなければ、上記酵母ビヒクルに抗原が結合するように抗原と結合してもよい。
【0111】
さらに別の実施形態では、例えば、緩衝液や他の適切な製剤中で、上記酵母ビヒクルと抗原とを一緒に穏やかに混合することによって、上記酵母ビヒクルおよび抗原は、互いに、より受動的に、非特異的に、もしくは非共有結合機構によって結合してもよい。本発明の一実施形態では、上記酵母ビヒクルおよび抗原は共に、樹状細胞もしくはマクロファージのような担体の細胞内に搭載され、本発明の治療用組成物もしくはワクチンを形成する。これとは別に、本発明の抗原(すなわち、本発明の新規なHCV融合タンパク質)は、酵母ビヒクルの存在なしに、樹状細胞に搭載される。両方の成分を搭載することができる様々な形態の詳細は、後述する。本明細書において用いられる場合、用語「搭載される」およびその派生語は、成分(例えば、酵母ビヒクルおよび/または抗原)の細胞(例えば、樹状細胞)への挿入、導入、または侵入を表す。成分を細胞内に搭載することは、該細胞の細胞内小器官に(例えば、原形質膜を通して、少なくとも細胞質、ファゴソーム、リソソーム、もしくは細胞のある細胞内スペースに)該成分を挿入または導入することを表す。細胞に成分を搭載することは、上記成分を、例えば、エレクトロポレーションにより無理やり細胞に入れたり、あるプロセス(例えば、ファゴサイトーシス)により、該成分が十分に細胞に入りそうな環境に置いたりする(例えば、細胞に接触させたり、細胞近傍に置いたりする)あらゆる技術が意図される。搭載技術には、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、ファゴサイトーシス、および浴超音波処理が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施形態において、樹状細胞による上記酵母ビヒクルおよび/または抗原のファゴサイトーシスを含む受動的な機構のように、上記酵母ビヒクルおよび/または抗原を樹状細胞に搭載する受動的な機構が用いられる。
【0112】
上述したHCV融合タンパク質は、いずれも、酵母におけるそのようなタンパク質の発現に特に有利なN末端および/またはC末端の修飾を1つも含まないワクチンに提供されてもよい。そのようなHCV融合タンパク質は、例えば、従来のアジュバントと、該融合タンパク質とを組み合わせたり、そんな融合タンパク質で樹状細胞をパルシングしたり、そのような融合タンパク質をコードする核酸分子を含むDNA、核酸、もしくはウィルスベクターを提供したり、または本発明の特定のHCV融合タンパク質(例えば、本発明のE1−E2融合タンパク質)からなる偽ウィルス粒子を構築したりするといった、他の非酵母ベースのワクチンに有用である。
【0113】
したがって、本発明のさらに別の実施形態は、動物を、HCV感染もしくはそのような感染により生じる症状を予防するための組成物に関する。上記組成物(ワクチンであってもよい)は、(a)1つもしくはそれ以上の、上述したHCV融合タンパク質(本明細書に記載されるN末端およびC末端の修飾はあってもなくてもよい)のいずれかと、(b)薬学的に許容可能な運搬手段(delivery vehicle)(薬学的に許容可能な賦形剤もしくはアジュバントを含む)とを含む。
【0114】
本発明のさらに別の実施形態は、DNAワクチンもしくはウィルスベクターワクチンのような核酸ベースのワクチンに関する。該ワクチンは、本明細書に記載されるようなHCV融合タンパク質(本明細書に記載されるN末端およびC末端の修飾はあってもなくてもよい)をコードする核酸構成物(例えば、ウィルスベクターもしくは他の核酸分子)を含む。該ワクチンは、さらに、薬学的に許容可能なあらゆる運搬手段(薬学的に許容可能な賦形剤もしくはアジュバントを含む)を含んでもよい。
【0115】
本発明の別の実施形態は、本発明の様々なHCV融合タンパク質、特に、本明細書に記載のE1−E2融合タンパク質、からなる偽ウィルス粒子に関する。この場合も、本発明のウィルスベースのワクチンに関連して、特に有効なN末端もしくはC末端の修飾は、含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0116】
本発明の一実施形態において、組成物もしくはワクチンはまた、生物学的応答の修飾因子(modifier)化合物を含んでいたり、または、そのような修飾因子を製造する能力を有していたり(すなわち、そのような修飾因子をコードする核酸分子が形質移入されていたいり)してもよい。例えば、酵母ビヒクルは、少なくとも1つの抗原と、少なくとも1つの生物学的応答の修飾因子化合物とが形質移入されたり、または、該抗原と修飾因子とが搭載されたりしてもいてもよい。また、本発明のワクチンもしくは組成物は、少なくとも1つの生物学的応答の修飾因子と共に、投与されてもよい。なお、そのような修飾因子は、本発明にかかる免疫応答を誘発させるためには、必須ではない。生物学的応答の修飾因子には、免疫応答を調節する化合物(免疫原性化合物とも称される)が含まれる。ある生物学的応答の修飾因子は、保護的な免疫応答を刺激することができる。一方、別の生物学的応答の修飾因子は、他の有害な免疫応答を抑制することができる。また、ある生物学的応答の修飾因子は、細胞性免疫応答を好適に増強する。すなわち、体液性免疫と比べて細胞性免疫のレベルを向上させるように免疫応答を刺激することができる。一方、別の生物学的応答の修飾因子は、体液性免疫応答を好適に増強する。すなわち、細胞性免疫と比べて体液性免疫のレベルを向上させるように免疫応答を刺激することができる。細胞性免疫と体液性免疫とを区別して、免疫応答の刺激もしくは抑制を測定する方法は、当業者に、数多く知られている。
【0117】
適切な生物学的応答の修飾因子には、サイトカイン、ホルモン、脂質誘導体、低分子薬剤、および他の増殖モジュレーターが含まれ、具体的には、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン10(IL−10)、インターロイキン12(IL−12)、インターフェロンγ(IFN−γ)、インスリン様成長因子I(IGF−I)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)ステロイド、プロスタグランジン、およびロイコトリエンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。酵母ビヒクルが、IL−2、IL−12、および/またはIFN−γを発現(換言すれば、製造)し、おそらく分泌する能力は、細胞性免疫を好適に増強する。一方、酵母ビヒクルが、IL−4、IL−5、および/またはIL−10を発現し、おそらく分泌する能力は、体液性免疫を好適に増強する。他の適切な生物学的応答の修飾因子には、抗CTLA−4抗体(例えば、アレルギー性T細胞を放出する)、T細胞共刺激物質(co-stimulators)(例えば、抗CD137、抗CD28、抗CD40)、アレムツズマブ(例えば、CamPath(登録商標))、デニロイキンジフチトクス(例えば、ONTAK(登録商標))、抗CD4、抗CD25、抗PD−1、抗PD−L1、抗PD−L2、FOXP3を遮断する(例えば、活性を無効にしたり、CD4+/CD25+T制御細胞を死滅させたりする)薬剤、Flt3リガンド、イミキモド(Aldara(商標))、GM−CSF、サルグラモスチム(Leukine(登録商標))、Toll様受容体(TLR)−7アゴニスト、もしくはTLR−9(例えば、樹状細胞、マクロファージ、および他の専らの抗原提示細胞の数、または活性状態を向上させる薬剤)が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのような生物学的応答の修飾因子は、当技術分野でよく知られており、公然に入手可能である。
【0118】
本発明の組成物および治療用ワクチンは、さらに、HCV感染から対象物を保護するのに有効な他のあらゆる化合物、またはそのような感染のあらゆる症状を治療したり改善したりするあらゆる化合物を含む。上述したように、本発明はまた、例えば、あらゆる従来の組成物もしくはワクチン、または非酵母ベースの組成物もしくはワクチンのように、本発明の酵母ビヒクルを含まない組成物もしくはワクチンにおいて、本明細書に記載のあらゆるHCV融合タンパク質、またはそのようなHCV融合タンパク質をコードする核酸分子を使用する方法を含む。そのような組成物は、上記HCV融合タンパク質に加えて、アジュバントのような薬学的に許容可能な担体を含んでもよい。さらに、本発明の酵母ベースのワクチンは、薬学的に許容可能な担体と共に、提供されてもよい。
【0119】
本明細書において用いる場合、薬学的に許容可能な担体は、本発明の方法において、生体内もしくは生体外の適切な部位に、HCV融合タンパク質を運搬するのに適したあらゆる物質もしくは媒体を表す。そのような担体には、アジュバント、賦形剤、またはあらゆるタイプの運搬手段もしくは担体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
本発明によれば、アジュバントは、一般的に、通常、動物の特定の抗原に対する免疫応答を増強する物質である。適切なアジュバントには、フロインドのアジュバント、他の細菌細胞壁成分、アルブミンベースの塩、カルシウムベースの塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウィルス外殻タンパク質、他の細菌由来の調製物、γインターフェロン、ハンタータイターマックス(Hunter's Titermax)アジュバントのようなブロック共重合体アジュバント(CytRx(商標)、Inc. Norcross, GA)、Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, MTから入手可能)、並びにQuil A(Superfos Biosector A/S, Denmarkから入手可能)のようなサポニンおよびその誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
担体は、一般的に、治療される動物における治療用組成物の半減期を向上させる化合物である。適切な担体には、高分子で放出が制御された製剤、生分解性移植物、リポソーム、オイル、エステル、およびグリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
本発明の治療用組成物は、1つもしくはそれ以上の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい。本明細書で用いられる場合、薬学的に許容可能な賦形剤は、本発明の方法において、生体内もしくは生体外の適切な部位に、治療用組成物を有効に運搬するのに適切なあらゆる物質を表す。好ましい薬学的に許容可能な賦形剤は、組成物(または、酵母ビヒクルもしくは該酵母ビヒクルを含む樹状細胞)が、身体における標的細胞、標的組織、もしくは標的部位に到達し、該標的部位(なお、該標的部位は、全身であってもよい)で免疫応答を誘発することができる形態に、該組成物を維持することができる。本発明の適切な賦形剤には、ワクチンをある部位に輸送するが、特異的にはターゲティングさせない賦形剤または製剤(formularies)(本明細書では、非ターゲティング担体ともいう)が含まれる。薬学的に許容可能な賦形剤には、水、生理的食塩水、リン酸緩衝生理的食塩水、リンガー溶液、ブドウ糖溶液、血清含有溶液、ハンクス液、他の水溶性で生理学的にバランスのとれた溶液、オイル、エステル、およびグリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。水溶性の担体には、例えば、化学安定性、および等張性を向上させることによって、投与された者の生理学的な状態に近づけるために必要とされる適切な補助物質が含まれてもよい。適切な補助物質には、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、並びに、リン酸緩衝液、トリス緩衝液および重炭酸緩衝液を製造するために用いられる他の物質が含まれる。また、補助物質は、チメロサール、m−クレゾールもしくはo−クレゾール、ホルマリン、およびベンジルアルコールのような防腐剤も含まれる。
【0123】
<本発明の方法>
本発明の別の実施形態は、動物をHCV感染、もしくはそれにより生じる疾患から保護するための方法に関する。該方法には、HCV感染している、もしくはHCV感染する危険がある動物に、本明細書に記載した本発明のワクチンもしくは組成物を投与する工程を含む。これにより、該動物におけるHCV感染もしくは、HCVによって引き起こされる少なくとも1つの症状を軽減もしくは抑制する。
【0124】
本発明のさらに別の実施形態は、動物において、抗原特異的な体液性免疫応答および/または抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発する方法に関する。該方法は、本明細書に記載したような本発明のワクチンもしくは組成物を動物に投与することを含む。本発明の方法は、動物において、抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発することが好ましい。
【0125】
上記実施形態において、上記ワクチンもしくは組成物は、(1)(a)酵母ビヒクルと、(b)1つもしくはそれ以上の、上述のHCV融合タンパク質のいずれかとを含む組成物、および/または(2)(a)1つもしくはそれ以上の、上述のHCV融合タンパク質のいずれかと、(b)薬学的に許容可能な運搬手段(薬学的に許容可能な賦形剤もしくはアジュバントを含む、または、それらからなってもよい)と含む組成物、および/または(3)(a)単離された核酸分子(例えば、DNA構築物、ベクター、ウィルスベクター)、および/または(4)(a)酵母ビヒクルと、(b)1つもしくはそれ以上の、上述のHCV融合タンパク質のいずれかとを含む(でパルスされた)単離された樹状細胞(自己の樹状細胞)、および/または(5)本明細書に記載のHCV融合タンパク質を含むE1−E2のいずれかからなるHCV偽ウィルス粒子を含むことができる。
【0126】
本発明の一実施形態において、本明細書に記載されて本発明のウィルスもしくは組成物は、従来のあらゆるワクチンもしくは組成物を含む、1つもしくはそれ以上の他のワクチンまたは免疫療法用組成物を投与することを含む方法で投与することができる。例えば、そのような他のワクチンまたは免疫療法用組成物には、HCV抗原をコードするDNAワクチン、もしくはHCV抗原を含む他のウィルスベクターのような、他のあらゆる抗原含有組成物、抗原をコードする組成物、または抗原を発現する組成物が含まれうる。ワクチン用のウィルスベクターは、当技術分野で知られており、ポックスウィルス(ワクシニア、カナリア、アビポックス)、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、アルファウィルス(シンドビス、VEE)が含まれるが、これらに限定されるものではない。タンパク質ベースのワクチンを含む、他のタイプのワクチンもまた、この実施形態に包含される。ある局面では、そのような従来のワクチン、本発明の一部ではないワクチン、または酵母ビヒクルを含まない本発明のワクチン(薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、本発明の新規なHCV融合タンパク質を含むワクチン、または、本発明の新規なHCV融合タンパク質をコードするDNAワクチン)は、HCV抗原に対する対象物の免疫応答を初回刺激するために、該対象物に、最初に投与されうる。続いて、本発明のワクチンもしくは組成物、特に、本発明の酵母ベースのワクチン、は、免疫応答を追加免疫するために、該対象物に投与されうる。その代わりに、本発明のワクチンもしくは組成物、特に本発明の酵母ベースのワクチンを、免疫応答を初回刺激するために、該対象物に投与する。そして、他の従来のワクチンもしくは組成物(例えば、非酵母ベースのワクチン本発明の新規なHCV融合タンパク質、または本発明の新規なHCV融合タンパク質をコードするDNAワクチン)を、該免疫応答を追加免疫するために用いてもよい。
【0127】
本発明の治療用組成物もしくはワクチンを用いる方法は、動物において、免疫応答を誘発することが好ましい。これにより、該動物を、HCV感染、またはHCV感染による引き起こされる疾患異常もしくは症状から保護する。本明細書において用いられる場合、「疾患から保護される」との表現は、疾患の症状の軽減、疾患の発生の抑制、および/または疾患の重症度の軽減を表す。動物を保護することは、動物に投与したとき、疾患が、疾患の症状、兆候、原因を引き起こすのを防止したり、治療したり、および/または緩和したりする、本発明の治療用組成物の能力を表す。したがって、動物を疾患から保護することは、疾患の発生の防止(予防処理、予防ワクチン)、および疾患を有する、もしくは疾患の初期症状を呈する動物の治療(治療処理、治療ワクチン)の両方を含む。特に、動物を疾患から保護することは、有益もしくは保護的な免疫応答を誘発することにより、該動物において免疫応答を誘発することによって、達成される。該有益もしくは保護的な免疫応答は、ある例では、過反応もしくは有害な免疫応答をさらに抑制(例えば、低減、阻害、または遮断)する。用語「疾患」は、動物の正常な健康から、なんらか逸脱していることを表し、逸脱が起こる状態(例えば、感染、遺伝子変異、遺伝子欠損等)であるが、症状は明確ではない状態に加えて、疾患の症状が存在する状態を含む。
【0128】
一実施形態において、本発明のワクチンは、いずれも、HCVに感染している個体もしくは個体群に投与される。別の実施形態では、本発明のワクチンは、いずれも、HCVに感染する危険がある個体もしくは個体群に投与される。そのような個体は、例えば、正常なもしくは無傷な個体群よりもHCV感染する危険が高いと同定された群を含む。そのような群は、あらゆる適切なパラメーターによって定義されうる。別の実施形態において、本発明のワクチンは、いずれも、HCVに感染していることが知られているか、感染状態が予測されているか、もしくは感受的であるかにかかわらず、あらゆる個体または個体群に投与される。
【0129】
より具体的には、本明細書に記載されるワクチンは、本発明の方法によって動物に投与されると、疾患の軽減(例えば、疾患の少なくとも1つの症状もしくは臨床的兆候の軽減)、疾患の排除、原発疾患の発生の結果生じる後遺症の軽減、疾患の予防、および疾患に対する細胞性免疫のエフェクタの刺激を引き起こす結果をもたらすことが好ましい。
【0130】
本発明は、本発明の組成物もしくはワクチンの動物への運搬を含む。投与過程は、生体外もしくは生体内で行われうる。生体外への投与は、例えば、酵母ビヒクルおよび抗原が細胞に搭載され、該細胞が患者に戻すことが可能な条件で、患者から取り出された細胞(樹状細胞)群に、本発明の組成物を投与するといった、患者の外側で、制御工程の一部を実行することを表す。本発明の治療用組成物は、患者に戻してもよいし、適した投与形態によって患者に投与してもよい。
【0131】
酵母ビヒクルおよび抗原が搭載された樹状細胞、酵母ビヒクルのみ、新規なHCV融合タンパク質を含む組成物、HCV融合タンパク質のみ、または、本発明にかかる担体と組み合わせたHCV融合タンパク質を含む組成物もしくはワクチンの投与は、全身、粘膜、および/または標的部位の位置近傍(例えば、腫瘍近傍)である。好ましい投与経路は、予防もしくは治療する症状、用いる抗原、および/または標的細胞群もしくは組織に応じて、当業者には明らかである。好ましい投与方法には、静脈投与、腹腔内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、冠内投与、動脈内投与(例えば、頚動脈内投与)、皮下投与、経皮送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、心室内投与、吸入(例えば、エアロゾル)、頭蓋内投与、脊髄内投与、眼内投与、耳内投与、鼻腔内投与、経口投与、肺内投与、カテーテル注入、および組織への直接注射が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい投与経路には、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、鼻腔内(intranodal)投与、筋肉内投与、経皮投与、吸引、鼻腔内投与、経口投与、眼内投与、関節内投与、頭蓋内投与、および脊髄内投与が含まれる。非経口送達には、皮内、筋肉内、腹腔内、胸膜内、肺内、静脈内、皮下、心房カテーテル、およびvenalカテーテル経路が含まれる。耳送達には、点耳薬が含まれる。鼻腔送達には、点鼻薬また鼻腔内注射が含まれる。また、眼内送達には、点眼剤が含まれる。エアロゾル(吸入)送達は、当技術分野で標準的な方法(例えば、Stribling et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 189:11277-11281, 1992を参照、なお、該文献は、参照として全体が本明細書に組み込まれる。)を用いて実施することができる。例えば、一実施形態において、本発明の組成物もしくはワクチンは、適切な吸入機器もしくは噴霧器を用いた噴霧送達に適した組成物に製剤化されうる。経口送達には、口を通して摂取されうる固体や液体が含まれる。また、経口送達は、粘膜の免疫性を発達させるのに有効である。酵母ビヒクルを含む組成物は、食品や飲料製品に製剤化されることに加えて、例えば、タブレットやカプセルとして、経口送達用に容易に調製できる。粘膜の免疫性を調節する他の投与経路は、ウィルス感染の治療に有効である。そのような経路には、気管支内経路、皮内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、他の吸入経路、直腸経路、皮下経路、局所経路、経皮経路、膣経路、および尿道経路が含まれる。
【0132】
上記の方法のいずれかの一実施形態において、上記ワクチンは、気道に投与される。別の実施形態では、上記ワクチンは、投与の非経口経路によって投与される。さらに別の実施形態では、上記ワクチンは、樹状細胞もしくはマクロファージをさらに含む。該ワクチンでは、上記融合タンパク質を発現する酵母ビヒクルは、細胞外で、樹状細胞もしくはマクロファージに送達される。また、該ワクチンにおいて、HCV抗原を発現する酵母ビヒクルを含む上記樹状細胞もしくはマクロファージは、上記動物に投与される。本実施形態のある局面では、樹状細胞もしくは酵母ビヒクルには、フリーの抗原が付加的に搭載されている。ある局面では、上記ワクチンは、治療用ワクチンとして投与される。別の局面では、上記ワクチンは、予防ワクチンとして投与される。
【0133】
本発明によれば、効果的な投与プロトコール(すなわち、効果的な方法で、ワクチンもしくは治療用組成物を投与すること)は、疾患もしくは異常をもつ動物、または疾患もしくは異常にかかる危険がある動物において、免疫応答を誘発する結果を招く適切な投与パラメーターおよび投与様式を含む。効果的な投与パラメーターは、特定の疾患に関する技術で標準的な方法を用いて決定することができる。そのような方法には、例えば、生存率、副作用(すなわち、毒性)、および疾患の進行もしくは退行が含まれる。
【0134】
本発明によれば、一回の適切な投与量は、適切な期間にわたって、1倍もしくはそれ以上投与したときに、動物に抗原特異的な免疫応答を誘発させることができる投与量である。投与量は、治療される疾患もしくは異常に依存して変更することができる。例えば、一実施形態において、本発明の酵母ビヒクルの1回の投与量は、該組成物を投与される生物の体重1kgあたり、約1×10〜5×10酵母細胞当量である。好ましい実施形態において、1投与あたりの酵母細胞は、生物の重量に調整されない。本実施形態では、本発明の酵母ビヒクルの1回の投与量は、1投与当たり、約1×10〜約1×10酵母細胞である。より好ましくは、本発明の酵母ビヒクルの1回の投与量は、1投与あたり(つまり、生物あたり)、約0.1Y.U.(1×10細胞)〜約100Y.U.(1×10細胞)である。この中には、0.1×10細胞ずつ増加させたあらゆる中間の投与量(つまり、1.1×10、1.2×10、1.3×10・・・)が含まれる。この範囲の投与量は、マウス、サル、ヒト等を含むあらゆる大きさのあらゆる生物において効果的に用いることができる。
【0135】
樹状細胞に上記酵母ビヒクルおよび抗原を搭載することによって、上記ワクチンを投与するとき、本発明のワクチンの1回の投与量は、個体あたり、約0.5×10〜約40×10樹状細胞であることが好ましく、約1×10〜約20×10樹状細胞であることがより好ましく、約1×10〜約10×10樹状細胞であることがさらに好ましい。
【0136】
上記ワクチンが本発明の融合タンパク質および担体を含むとき、好ましい1回の投与量は、動物の体重1kgあたり、約0.01μg〜約10mgであることが好ましく、約1μg〜約10mgであることがより好ましく、約5μg〜約7mgであることがさらに好ましく、約10μg〜約5mgであることが特に好ましい。また、上記薬剤がエアロゾルによって送達される場合、動物の体重1kgあたり、1回の投与量は、約0.1mg〜約5mgであることが特に好ましい。上記薬剤が非経口的に送達される場合、動物の体重1kgあたり、1回の投与量は、約0.1μg〜約10μgであることが特に好ましい。
【0137】
治療用組成物の「追加免疫剤(booster)」もしくは「追加免疫(boost)」は、上記抗原に対する免疫応答が弱くなったとき、または、免疫応答を誘発したり、特定の抗原もしくは抗原群に対する記憶応答を誘導したりする必要があるときに、投与することが好ましい。追加免疫剤は、もともとの投与から、約2週間〜数年間投与されうる。一実施形態では、投与スケジュールは、約1ヶ月〜約6ヶ月の期間にわたって、個体の体重1kgあたり、約1×10〜約5×10酵母細胞当量の組成物が、約1〜4倍投与されるものである。本発明の方法では、ワクチンおよび治療用組成物は、あらゆる脊椎動物を含む動物、特に、霊長類、家畜、および家庭用ペットを含む(これらに限定されない)脊椎動物網哺乳類のいずれかに、投与することができる。家畜には、食される動物、または有用な製品を生産する動物(例えば、ウール製品用の羊)を含む。保護する好ましい動物には、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、およびブタが含まれるが、特に、ヒトであることが好ましい。本発明によれば、用語「患者」もしくは「被験体」は、本明細書に記載されているような診断、予防、もしくは治療の処置の対象である動物を記載するために用いられる。
【0138】
<単離された融合タンパク質、核酸および細胞>
本発明の別実施形態は、本明細書に記載されているように、HCV抗原を含む単離された融合タンパク質のいずれかを含む単離されたタンパク質を含有する。また、本発明には、そのようなタンパク質のいずれかをコードする単離された核酸分子、そのようなタンパク質をコードする核酸配列を含む組換え核酸分子、並びに、そのような核酸分子もしくは組換え核酸分子を含有する、またはこれら核酸分子が形質移入/形質転換された細胞、およびベクター(ウィルスベクターを含む)が含まれる。
【0139】
本明細書で用いられる場合、本発明における単離されたタンパク質もしくはポリペプチドの対象には、全長タンパク質、融合タンパク質、または、そのようなタンパク質のあらゆる断片、ドメイン、立体配置的なエピトープ、もしくはホモログが含まれる。より具体的には、本発明にかかる単離されたタンパク質は、自然環境から取り出された(すなわち、人に操作された)タンパク質(ポリペプチドまたはペプチドを含む)である。例えば、精製されたタンパク質、部分精製されたタンパク質、組換え的に製造されたタンパク質、および合成的に製造されたタンパク質が含まれる。このように、「単離された」とは、該タンパク質が精製された程度を反映するものではない。本発明の単離されたタンパク質は、組換え的に製造されることが好ましい。本発明によれば、用語「修飾」および「変異」は、特に、本明細書に記載されているタンパク質もしくは該タンパク質の一部のアミノ酸配列(または、核酸配列)の修飾/変異に関して、交換可能に用いられる。
【0140】
本明細書において用いられる場合、用語「ホモログ」は、天然に生じるタンパク質もしくはペプチド(すなわち、「プロトタイプ」もしくは「野生型」タンパク質)にわずかな変異が導入された結果、該天然に生じるタンパク質もしくはペプチドとは異なるタンパク質もしくはペプチドが意図される。しかし、該ホモログは、該天然に生じる型の基本的なタンパク質構造および側鎖構造を維持している。そのような変化には、1もしくは数個のアミノ酸側鎖の変化、欠失(例えば、切断されたタイプのタンパク質もしくはペプチド)、挿入および/または置換を含む1もしくは数個のアミノ酸の変化、1または数個の原子の立体的配置の変化、および/または、あまり重要でない誘導体化が含まれるが、これらに限定されるものではない。上記誘導体化には、メチル化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ミリストイル化、プレニル化、パルミチン化、アミド化、および/またはグリコシルホスファチジルイノシトールの付加が含まれるが、これらに限定されるものではない。ホモログは、天然に発生するタンパク質もしくはペプチドと比較して、強化された、減衰された、もしくは実質的に同一、のいずれかの特性を有する。ホモログは、タンパク質生産法として従来知られている技術を用いて製造することができる。該タンパク質生産法には、タンパク質のアゴニスト、またはタンパク質のアンタゴニストが含まれる。ホモログには、単離された、天然に生じるタンパク質への直接の修飾;直接のタンパク質合成;または、例えば、ランダムもしくはターゲティングされた変異の誘発に効果を示す古典的技術もしくは組換えDNA技術を用いた、タンパク質をコードする核酸配列への修飾;が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
本発明のタンパク質および/または該タンパク質のホモログ、断片、もしくは他の部分の最小サイズは、ある局面では、必要な生物学的活性を有するのに十分な大きさである。例えば、本発明の融合タンパク質または組成物における抗原もしくは免疫原、または、インビトロアッセイの標的となりうる。一実施形態において、本発明のタンパク質は、長さが、少なくとも約8アミノ酸、約25アミノ酸、約30アミノ酸、約40アミノ酸、約50アミノ酸、約75アミノ酸、約100アミノ酸、約125アミノ酸、約150アミノ酸、約175アミノ酸、約200アミノ酸、約250アミノ酸、約300アミノ酸、約350アミノ酸、約400アミノ酸、約450アミノ酸、約500アミノ酸、約550アミノ酸、または約600アミノ酸等である。整数(例えば、8、9、10、・・・25、26、・・・102、103)であれば、8アミノ酸から本発明のタンパク質の全長、またはタンパク質または該タンパク質の一部を組み合わせた全長までの長さ、もしくはそれよりも長い長さなど、いかなる長さであってもよい。タンパク質の一部、機能ドメイン、もしくはそれらの生物学的活性を有する断片もしくは有用な断片、全長タンパク質、または必要に応じて付加配列が付加されたもの(例えば、融合タンパク質配列)を含め、タンパク質の最大のサイズは、現実的な限界を除いては、制限はない。本発明にかかる好ましい融合タンパク質は、本明細書に記載された融合タンパク質のいずれかを含む。本発明に包含される典型的な融合タンパク質には、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号18から選択されるアミノ酸配列を含む融合タンパク質、本質的に該アミノ酸配列からなる融合タンパク質、または該アミノ酸配列からなる融合タンパク質が含まれる。様々なHCVタンパク質配列が当技術分野でよく知られているので、他の融合タンパク質配列は、本明細書に記載された手引きによれば、当業者には明らかであるだろう。
【0142】
本発明はまた、本明細書に記載された融合タンパク質のいずれかをコードする核酸配列を含む核酸分子、本質的に該核酸配列からなる核酸分子、または該核酸配列からなる核酸分子を含む。本発明によれば、単離された核酸分子は、自然環境から取り去れた核酸分子(すなわち、人に操作された核酸分子)である。その自然環境は、核酸分子を天然に有するゲノムまたは染色体が存在する自然環境である。したがって、「単離された」とは、該核酸分子が精製された程度を反映するものではない。しかし、該分子は、該核酸分子を天然に有するゲノム全体もしくは染色体全体を含まないことを示す。単離された核酸分子には、遺伝子が含まれる。遺伝子を含む単離された核酸分子は、そのような遺伝子を含む染色体の断片ではなく、むしろ、該遺伝子と関連するコード領域および制御領域を含む。しかし、同一の染色体上に天然に見出される付加的な遺伝子ではない。単離された核酸分子はまた、天然では通常フランクしない付加的な核酸がフランクした特定の核酸配列を含んでいてもよい。すなわち、該配列の5’末端および/または3’末端に、天然では通常フランクしない付加的な核酸がフランクした特定の核酸配列(すなわち、異種配列)を含んでいてもよい。単離された核酸分子には、DNA、RNA(例えば、mRNA)、またはDNAもしくはRNAのいずれかの誘導体(例えば、cDNA)を含んでいてもよい。「核酸分子」との表現は、本来、物質としての核酸分子をさす。また、「核酸配列」との表現は、本来、核酸分子におけるヌクレオチドの配列を指す。これら2つの表現は、特にタンパク質もしくはタンパク質のドメインをコードすることができる核酸分子または核酸配列に関しては、交換可能に用いられる。
【0143】
本発明の単離された核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)増幅、クローニング)または化学合成を用いて製造されることが好ましい。単離された核酸分子には、天然の核酸分子およびそのホモログが含まれる。該ホモログには、天然のアリルの変種、および修飾された核酸分子が含まれる。該修飾では、修飾により所望の効果が得られるように、ヌクレオチドが挿入、欠失、置換、および/または逆位されている。タンパク質のホモログ(例えば、核酸ホモログによってコードされるタンパク質)の詳細は、上述した。
【0144】
核酸分子のホモログは、当業者に知られた多くの方法を用いて製造することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Labs Press (1989)を参照)。例えば、核酸分子は、部位特異的変異誘発、変異を誘発させるための核酸分子の化学処理、核酸断片の制限酵素消化、核酸断片の連結、核酸配列の選択された領域のPCR増幅および/または変異誘発、オリゴヌクレオチドの合成、および核酸分子の混合物を調製ための混合物群の連結、並びにそれらの組み合わせのような、古典的な変異誘発技術、および組換えDNA技術を含む様々な技術を用いて修飾することができるが、該技術は上記に限定されるものではない。核酸分子のホモログは、核酸によってコードされるタンパク質の機能に基づくスクリーニング、および/または野生型遺伝子とのハイブリダイゼーションによって修飾された核酸の混合物から選抜することができる。
【0145】
本発明の融合タンパク質を発現する組換え核酸分子は、本明細書に記載された1またはそれ以上の融合タンパク質のいずれかをコードする核酸配列の少なくともいずれか1つを含む分子である。該核酸配列には、形質移入された細胞において、該核酸分子の発現を効果的に制御することができる、少なくともいずれか1つの転写制御配列が機能可能に連結されている。「核酸配列」との表現は、本来、核酸分子におけるヌクレオチドの配列を指す。これら2つの表現は、特にタンパク質もしくはタンパク質のドメインをコードすることができる核酸分子または核酸配列に関しては、交換可能に用いられる。さらに、「組換え分子」との表現は、本来、転写制御配列に機能できるように連結された核酸分子をさす。しかし、動物に投与される、「核酸分子」との表現と交換可能に用いることができる。
【0146】
組換え核酸分子には、あらゆる核酸配列、典型的には異種配列である組換えベクターが含まれる。該核酸配列には、本発明の融合タンパク質をコードする単離された核酸分子に機能可能に連結されている。また、該核酸配列は、上記融合タンパク質を組換え的に製造することを可能にする。また、該核酸配列は、本発明にかかる宿主細胞に該核酸分子を運搬することができる。そのようなベクターは、該ベクターに挿入されている単離された核酸分子の近傍には、天然に見出されない核酸分子を含む。該ベクターは、RNAまたはDNAのいずれであってもよい。また、原核型または真核型のいずれであってもよい。本発明では、該ベクターは、ウィルスまたはプラスミドであることが好ましい。組換えベクターは、クローニング、配列解読、および/または、さもなければ、核酸分子の操作に用いることができる。また、該ベクターは、例えば、DNAワクチンもしくはウィルスベクターベースのワクチンとして、そのような分子の運搬に用いることができる。組換えベクターは、核酸分子の発現に用いることが好ましい。つまり、該組換えベクターは、発現ベクターということもできる。好ましい組換えベクターは、形質移入された宿主細胞において発現することができる。
【0147】
本発明の組換え分子において、核酸分子は、発現ベクターに機能可能に連結されている。該発現ベクターは、転写制御配列、翻訳制御配列、複製オリジン、および宿主細胞と適合し、本発明の核酸分子の発現を制御する他の制御配列を含む。特に、本発明の組換え分子は、1またはそれ以上の転写制御配列に機能できるように連結された核酸分子を含む。「機能できるように連結された」との表現は、宿主細胞に形質移入(形質転換、形質導入、または形質移入)されたときに、核酸分子が発現するように、該核酸分子に転写制御配列が連結されていることを指す。
【0148】
転写制御配列は、転写の開始、伸長、および終結を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーター配列、エンハンサー配列、オペレーター配列、およびレプレッサー配列のような転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列は、本発明にかかる宿主細胞において、機能することができる、あらゆる転写制御配列を含む。様々な適切な転写制御配列が、当業者には知られている。
【0149】
本発明によれば、用語「形質移入」は、外来核酸分子(すなわち、組換え核酸分子)が細胞に挿入されうるあらゆる方法を意図して用いられる。核酸分子を藻類、バクテリア、および酵母ような微生物の細胞、もしくは植物細胞に導入することを意図して用いられるとき、用語「形質転換」が、用語「形質移入」と交換可能に用いられる。微生物システムおよび植物システムでは、用語「形質転換」は、微生物または植物によって外来核酸が獲得されることによる遺伝変化を述べるために用いられ、本質的に、用語「形質移入」と同義語である。したがって、形質移入技術には、形質転換、細胞の化学処理、パーティクルガン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、感染、およびプロトプラスト融合が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
本発明の組換え核酸分子において有用な組換えベクターの1種は、組換えウィルスベクターである。そのようなベクターは、本発明の融合タンパク質をコードする組換え核酸配列を含む。該融合タンパク質は、投与後、動物内の宿主細胞内、もしくは生体外で発現させたウィルスコートにパッケージングされている。アルファウィルス、ポックスウィルス、アデノウィルス、ヘルペスウィルス、レンチウィルス、アデノ随伴ウィルス、およびレトロウィルスに基づく組換えウィルスベクターを含め、多くの組換えウィルスベクターを用いることができるが、これらに限定されるものではない。特に好ましいウィルスベクターは、アデノウィルスおよびアデノ随伴ウィルスに基づくものである。遺伝子の運搬に適したウィルスベクターは、当技術分野ではよく知られており、当業者によって、本発明に用いるためのウィルスベクターは選択されうる。現在のウィルスベクターの詳細については、"Molecular Biotechnology," Second Edition, by Glick and Pasternak, ASM Press, Washington D.C., 1998, pp. 555-590に記載されている。該文献は、参照として本明細書に完全に組み込まれる。
【0151】
本発明にかかる組換え核酸分子を形質移入するのに適した宿主細胞には、あらゆる動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、真菌細胞(酵母を含む)が含まれる。一実施形態において、上記宿主細胞は、本発明の融合タンパク質が形質移入され、該融合タンパク質を発現している腫瘍細胞を含む動物細胞である。そのような細胞は、実施例に例示されており、例えば、本発明のワクチンもしくは組成物によって誘導される抗原特異的なT細胞応答を評価するために有効である。HCV抗原に対して向けられた他のワクチンまたは組成物は、そのような形質移入された腫瘍細胞を試験することができる。
【0152】
以下の実験結果は、例証を目的として提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0153】
〔実施例〕
〔実施例1〕
以下の実施例はGI−5005、すなわち、本発明に係る切断NS3−Core融合タンパク質酵母ワクチンの設計について説明する。
【0154】
GI−5005 Saccharomyces cerevisiaeは、銅誘導性プロモーターであるCUP1の制御下で、HCV NS3−Core融合タンパク質を発現するように設計された。HCV遺伝子(遺伝子型 1a、H77株、cDNAはNIHから提供された。)の2領域を、遺伝子産物を産生するためにPCRで増幅した。NS3−Core融合タンパク質は、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素を有する単一のポリペプチドである(HCV ポリタンパク質の番号付けを括弧書きで示す。ここでは、配列番号2によって表される。):1)プロテアソームの分解に対する耐性を付与する配列MADEAP;2)HCV NS3プロテアーゼタンパク質のアミノ酸第89位〜第350位(第1115位〜第1376位);3)クローニングにおいて導入される単一のトレオニンアミノ酸残基;4)HCV Coreタンパク質のアミノ酸第2位〜第140位(第2位〜第140位);および5)Core変異体の親水性を向上させるための配列ED。
【0155】
HCV NS3−Core融合タンパク質の発現は、銅により誘導され、熱により不活性化されたGI−5005酵母からのライセートをウエスタンブロット法により分析することにより確認された。タンパク質の検出には、HCV NS3タンパク質に特異的なモノクローナル抗体(Virostat)またはHCV Coreタンパク質に特異的なモノクローナル抗体(Anogen)を用いた(図1Aおよび図1B参照)。
【0156】
〔実施例2〕
以下の実施例はGI−5003、すなわち、本発明に係る不活性化NS3酵母ワクチンの設計について説明する。
【0157】
GI−5003 Saccharomyces cerevisiaeは、銅誘導性プロモーター、CUP1の制御下で、不活性化された全長HCV NS3タンパク質を発現するように設計された。HCV遺伝子(遺伝子型1a、H77株、cDNAはNIHより提供された。)の1領域を、遺伝子産物を産生するためにPCRで増幅した。不活性化されたNS3タンパク質は、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素を有する単一のポリペプチドである(HCV ポリタンパク質の番号付けを括弧書きで示す。ここでは、配列番号4によって表される。):1)プロテアソームの分解に対する耐性を付与する配列MADEAP;2)HCV NS3プロテアーゼタンパク質のアミノ酸1〜631(1027〜1657)(HCVポリペプチド残基1165のアミノ酸は、タンパク質分解活性を不活性化するためにセリンからアラニンに変えられている。)
HCV NS3タンパク質の発現は、銅により誘導され、熱により不活性化されたGI−5003酵母からのライセートをウエスタンブロット法により分析することにより確認された。タンパク質の検出には、HCV NS3に特異的なモノクローナル抗体(Virostat)を用いた(図1Aおよび図1B参照)。
【0158】
〔実施例3〕
以下の実施例は本発明に係るGI−5000シリーズ、すなわち、切断HCV E1−E2融合タンパク質酵母ワクチンの設計について説明する。
【0159】
E1−E2融合タンパク質は、N末端からC末端までインフレームで融合された以下の配列要素を有する単一のポリペプチドである(HCV ポリタンパク質の番号付けを括弧書きで示す。ここでは、配列番号6によって表される。):1)プロテアソームの分解に対する耐性を付与する配列MADEAP;2)HCVタンパク質E1のアミノ酸1〜156(192〜347);3)HCVタンパク質E2のアミノ酸1〜334(384〜717)、E1の36のC末端疎水性アミノ酸、およびE2の29のC末端疎水性アミノ酸が、酵母細胞質での蓄積を促進するために、融合タンパク質から除かれている。
【0160】
HCV E1/E2融合タンパク質の発現は、銅により誘導され、熱により不活性化された酵母からのライセートをウエスタンブロット法により分析することにより確認された(図1C参照)。
【0161】
〔実施例4〕
以下の実施例は本発明に係るGI−5000シリーズ、すなわち、TMドメインが欠失したHCV NS4b融合タンパク質酵母ビヒクルの設計について説明する。
【0162】
NS4b融合タンパク質は、N末端からC末端までインフレームでタンデムに配列された以下の配列要素を有する単一のポリペプチドである(ポリタンパク質の番号付けを括弧書きで示す。ここでは、配列番号8によって表される):1)プロテアソームの分解に対する耐性を付与する配列MADEAP;2)HCVタンパク質NS4bのアミノ酸1〜69(1712〜1780);3)HCVタンパク質NS4bのアミノ酸177〜261(1888〜1972)。NS4bアミノ酸70〜176(1781〜1887)に相当し、複数の膜貫通ドメインを含有する107アミノ酸からなる領域が、酵母の細胞質の蓄積を促進するために、除かれている。
【0163】
HCV NS4b融合タンパク質の発現は、銅により誘導され、熱により不活性化された酵母からのライセートをウエスタンブロット法により分析することにより確認された(図1D参照)。
【0164】
〔実施例5〕
以下の実施例では、HCV抗原を発現するGI−5005酵母ビヒクル(TarmogenTMとも称される)を用いたマウスの非臨床薬理学試験:免疫原性テストを説明する。
【0165】
GI−5005は、酵母発現プラスミドが安定に導入されたS.cerevisiae酵母(ATCCから入手したW303株)からなる。酵母発現プラスミドは、実施例1で説明したように、銅誘導性プロモーター、CUP1(配列番号2)の制御下で、HCV遺伝子型1a由来の切断NS3遺伝子産物とCore遺伝子産物との融合タンパク質をコードする。以下の試験では、C57BL/6(H−2)マウス、およびBALB/cBy(H−2)マウスに、GI−5005酵母を皮下注射する。GI−5005酵母による抗原特異的なリンパ球の誘導を検出するインビボおよびインビトロでのアッセイを行った。これらのアッセイには、リンパ球増殖、細胞媒介性細胞傷害、サイトカイン分泌、および腫瘍からの保護が含まれる。これらの試験をサポートするために、以下の酵母株、細胞株、および組換えウィルスを生産し維持した:
・GI−5003:HCV−NS3タンパク質発現酵母株。GI−5003は、触媒ドメインが単一の点変異によって不活性化されている全長NS3を発現する
・GI−5005−L:50ng/YUより少ないHCV−NS3−Core融合タンパク質を発現するGI−5005酵母株
・GI−5005−M:約500ng/YUのHCV−NS3−Core融合タンパク質を発現するGI−5005酵母株
・GI−5005−H:約1400ng/YUのHCV−NS3−Core融合タンパク質を発現するGI−5005酵母株
・EL4−NS3:HCV NS3をコードするDNAを安定に形質移入したC57BL/6由来のEL4リンパ腫細胞(H−2
・A20−NS3:HCV NS3をコードするDNAを安定に形質移入したBALB/c由来のA20リンパ腫細胞(H−2
・P815−NS3:HCV NS3をコードするDNAを安定に形質移入したDBA/2由来のP815白血病細胞(H−2
・組換えワクシニアウィルス(rVV):β−ガラクトシダーゼをコードする組換えワクシニアウィルス(rVV−lac)、HIV−1Gagをコードする組換えワクシニアウィルス(rVV−Gag)、HCV NS3をコードする組換えワクシニアウィルス(rVV−NS3)、およびHCVCoreタンパク質をコードする組換えワクシニアウィルス(rVV−Core)。
【0166】
以下に説明する試験では、特に他に示さない限り、雌のBALB/cマウスおよび/または雌のC57BL/6マウス(各群5匹;6−10週齢)は、週に一度、5YU(5000万)のGI−5005またはGI−5003を皮下注射し、最終の注射後7日目に屠殺した。各群からの脾細胞懸濁液は、10%熱非働化ウシ胎仔血清、L−グルタミン、HEPES、および2−メルカプトエタノールが添加されたRPMI−1640組織培地中で調製され、所定のHCV抗原特異的刺激(典型的にはrVV−NS3および/またはrVV−Core)と、酵母抗原特異的刺激(典型的にはGI−5005)との両方を用いてインビトロで刺激(IVS)した。GI−5005の投与により誘導された免疫応答を評価するために標準的なアッセイを用いた。このアッセイには、H−チミジン取り込みにより評価されるリンパ球増殖、51Crでラベルしたターゲット細胞を用いる細胞媒介性細胞傷害アッセイ、サイトカイン分泌の定量、および腫瘍からの保護が含まれる。
【0167】
(a)GI−5005による抗原特異的なリンパ球増殖の誘導
GI−5005の免疫原性を評価する予備的な実験において、C57BL/6マウスに、3週間、週に一度の頻度で5YU(5000万)の熱非働化GI−5005酵母細胞を注射した。マウスには免疫の付与による表面的な悪影響は見られなかった。最終免疫から7日後に脾細胞を採取し、単一の細胞懸濁液を、インビトロで、刺激しないか、あるいはEL4リンパ腫細胞、EL−NS3(安定的にHCV NS3を発現しているEL4)、rVV−NS3(HCV NS3をコードする組換えワクシニアウィルス)またはrVV−Coreで刺激した。5日間培養した後、リンパ球増殖を標準的なチミジン取り込みを用いて評価した。より具体的には、5YUのGI−5005を注射したC57BL/6マウスからの脾細胞を、96ウエルのU型底部を有する組織培養プレート(400000細胞/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで以下の刺激を与えた:無刺激、マイトマイシンCで処理したEL4(10000細胞/ウエル)、マイトマイシンCで処理したEL4−NS3(10000細胞/ウエル)、rVV−NS3(400000pfu/ウエル)またはrVV−Core(400000pfu/ウエル)。5日目に3HTdRを添加し、その18時間後にプレートから試料を採集した。結果を3つのサンプルの平均CMP+/−S.D.として示す。図2に示される結果は、GI−5005が、NS3特異的なリンパ球増殖およびCore特異的なリンパ球増殖を誘導することを示している。
【0168】
(b)GI−5005による抗原特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞応答の誘導
<GI−5005による、安定的にHVC NS3を発現している腫瘍細胞を殺傷する細胞傷害性エフェクタ細胞の誘導>
図3は、GI−5005による免疫の付与は、HVC NS3を発現している腫瘍細胞を殺傷することができる細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを示す。具体的には、3週間、週に一度の頻度で5YUのGI−5005を注射したC57BL/6マウス由来の脾細胞を、25cmの組織培養フラスコ(30×10細胞/フラスコ(図3A−3B))、または、24ウエルの平底組織培養プレート(6×10/ウエル(図3C))のいずれかの各ウエルに入れた。脾細胞に6日間以下のインビトロ刺激(IVS)を与えた:1YU(10酵母細胞)GI−5005/フラスコ(図3A);無刺激、1YU GI−1001/フラスコ、または、1YU GI−5005/フラスコ(図3B);または、6×10pfu/ウエルrVV−lac、または、rVV−NS3(図3C)。rVV−lacまたはrVV−NS3と培養された脾細胞は、さらに3日間、10%のT細胞成長増殖因子源としてのT−stimの存在下で培養を行った。6日(図3A、3B)または9日(図3C)のIVS培養期間終了後、脾細胞培養物の2倍希釈物を51Crでラベルした10000個のEL4細胞または51Crでラベルした10000個のEL4−NS3細胞と混合した。E:T比は、エフェクタ:ターゲット比を示し、IVS培養期間の初期のエフェクタ細胞の濃度に基づいている。結果を6時間後に96ウエルのV底プレートから単離した同時培養された3つのサンプルの平均特異的溶解%+/−S.D.として示す。自然に放出されるクロムの割合は、EL−4に対しては19%(図3A)、EL4−NS3に対しては40%(図3A、図3B)、EL4−NS3に対して29%(図3C)であった。
【0169】
図3Aに示される結果において、GI−5005で免疫されたC57BL/6マウス由来の脾細胞は、51Crでラベルした形質移入されていないEL4リンパ腫細胞または安定的にHCV−NS3を発現するEL4細胞(EL4−NS3)について試験を行う前に、インビトロで、6日間、酵母の脾細胞に対する比を1:3として、GI−5005酵母で刺激した。刺激された脾細胞はEL4−NS3ターゲットを用量依存的に殺した。これと対照的に、刺激された脾細胞は、形質移入されていないEL4細胞を僅かにしか殺さなかった。これらのデータは、GI−5005による免疫は、NS−3特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導するという証拠を提供することに加えて、GI−5005酵母は、インビトロでNS−3特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞を再び刺激するために用いることができるということを示している。図3Bに示される結果は、さらに、上記知見に確証を与え、GI−5005で免疫されたマウスの脾細胞のGI−5005によるインビトロ刺激(IVS)が、無刺激またはベクターコントロール酵母(GI−1001)によるIVSと比較して、細胞障害性エフェクタ細胞のEL4−NS3に対する細胞障害活性を増強することができることを示す。IVS期間中に細胞障害性のエフェクタ細胞活性を活性化するためにHCV NS3抗原に暴露する必要性を、NS3をコードする組換えワクシニアウィルス(rVV−NS3;図3C)による刺激を用いてさらに調べた。これらのデータは、免疫されたマウスの脾臓に存在するNS−3特異的な細胞障害性エフェクタ細胞は、rVV−lac(無関係な抗原β−ガラクトシダーゼをコードする組換えウィルス)によるIVSと比較して、rVV−NS3によるIVSによって刺激されることを示している。
【0170】
<GI−5005による、HCV NS3またはHCV Coreをコードする組換えワクシニアウィルスに感染した腫瘍細胞を殺傷する細胞傷害性エフェクタ細胞の誘導>
上記結果は、GI−5005による免疫は、NS3を発現している同系の腫瘍細胞を殺傷することができる細胞障害性エフェクタ細胞を誘導することを示している。しかし、GI−5005はHCV Core抗原をも発現する。安定的に形質移入されたHCVCoreタンパク質を発現する腫瘍細胞株を得る試みは成功しなかった。Coreを発現するターゲット細胞の欠如を克服するために、図4に示す実験を行った。要するに、H−2dを有するP815白血病細胞を、免疫されたBALB/cマウス由来の脾細胞を用いた標準的なクロム放出アッセイに用いる前に、一晩、HCV NS3またはHCV Coreをコードする組換えワクシニアウィルスに感染させた。BALB/cマウスの免疫は、GI−5005またはGI−5003(全長HCV−NS3を発現するがCoreを発現しないTarmogenTM)によって行い、インビトロでGI−5005の存在下5日間刺激した。より、詳しくは、3週間、週に一度の頻度で5YUのGI−5005(GI5005)または週に一度の頻度で5YUのGI−5003(GI5003)を注射したBALB/cマウス由来の脾細胞を24ウエルの平底組織培養プレート(8×10/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで、GI−5005(1×10/ウエル)により5日間刺激した。IVS培養期間の終了後、脾細胞培養物の2倍希釈物を、一晩HCV NS3(図4A)またはHCVCore(図4B)をコードする組換えワクシニアウィルスに感染させた、51Crでラベルした10000個のP815白血病細胞と混合した。E:T比は、エフェクタ:ターゲット比を示し、IVS培養期間初期の脾臓エフェクタ細胞の濃度に基づいている。結果を6時間後に96ウエルのV底プレートから単離した同時培養された3つのサンプルの平均特異的溶解%+/−S.D.として示す。自然に放出されるクロムの割合は、P815−rVV−NS3に対しては21%、P815−rVV−Core対しては40%であった。
【0171】
図4Aおよび図4Bは、GI−5005はrVV−NS3(図4A)またはrVV−Core(図4B)で感染させた腫瘍細胞を殺傷することができる細胞障害性細胞を誘導するが、GI−5003によって誘導された腫瘍細胞の死滅はNS3に対して制限されることを示す。要約すれば、図3および図4に示された結果は、GI−5005による免疫はNS3特異的細胞障害性エフェクタ細胞の活性化およびCore特異的細胞障害性エフェクタ細胞の活性化を誘導する。
【0172】
(c)GI−5005による炎症促進サイトカイン分泌細胞の誘導
図5は、未処置のC57BL/6マウスまたはGI−5005で免疫したC57BL/6マウスの脾細胞を、GI−5005酵母とともに組織培養したときに、分泌されるサイトカインを示す。無細胞上清を培養開始から48時間後に集め、サイトカイン濃度を、フローサイトメトリーをベースとするLuminexTMアッセイ(Biosource社)を用いて決定した。より具体的には、未処置のC57BL/6マウス、または、3週間、週に一度の頻度で5YUのGI−5005を注射したC57BL/6マウスの脾細胞を、24ウエルの平底組織培養プレート(10×10/ウエル)の各ウエルに入れた。脾細胞を、GI−5005(1×10酵母細胞/ウエル)またはPMA(15ng/mL)+イオノマイシン(750ng/mL)により刺激した。無細胞上清を培養開始から48時間後に集め、サイトカインをコロラド大学ガンセンターフローサイトメーター施設により、フローサイトメーターLuminexTMアッセイ(Biosource社)を用いて定量した。IFN−gはIFN−γを、TNF−aはTNF−αを表す。
【0173】
これらの結果は、GI−5005の投与は、炎症促進サイトカインIL−6、GM−CSF、IFN−γおよびTNF−αに加えて、IL−2およびIL−5を分泌するT細胞をも発現させることを示している。免疫したマウスの脾細胞をインビトロで酵母に暴露した脾細胞のサイトカイン応答は、未処置のC57BL/6マウスのT細胞をPMA+イオノマイシンによりポリクローナルに刺激したものにその大きさにおいて匹敵したことに留意することが重要である。加えて、図5は、未処置のC57BL/6マウス脾細胞の酵母に対するサイトカイン応答をも示し、酵母に対する生得的反応は、個体群における単球および樹状細胞から分泌されると推定される、IL−6、IL−12およびTNF−αの分泌を含むことを示唆している。未処置のBALB/cマウスまたは免疫したBALB/cマウスの脾細胞についても同様の結果が得られた(図8および図11参照)。
【0174】
(d)GI−5005により誘導される免疫応答に対する反復投与の効果
図6、7、および8に示されている結果は、C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスの両方に施された1回、2回または3回の週ごとのGI−5005による免疫を比較した実験の結果である。図6はNS3特異的なリンパ球増殖およびCore特異的なリンパ球増殖を調べ、図7はNS3特異的な細胞障害性細胞活性およびCore特異的な細胞障害性細胞活性の誘導を示し、図8はサイトカイン分泌のプロファイルを示す。全体的に、これらの結果は、GI−5005の1回の注射は弱い応答を誘導し、その応答は追加的な投与により顕著に増強されることを示している。
【0175】
図6は、1回、2回または3回の週ごとのGI−5005による免疫を施されたC57BL/6マウスの脾細胞について行われたリンパ球増殖アッセイの結果を示す。具体的には、1回、2回または3回の週ごとの5YUのGI−5005の注射を施されたC57BL/6マウスの脾細胞を96ウエルのU型底部を有する組織培養プレート(400000細胞/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで以下の刺激を与えた:無刺激、rVV−NS3、rVV−Core、または、rVV−rastafar(100000pfu/ウエル)。5日目に3HTdRを添加し、その18時間後にプレートからから試料を採集した。結果を3つのサンプルの平均CMP+/−S.D.として示す。HCV NS3特異的なリンパ球の応答およびCore特異的なリンパ球の応答は免疫の回数に比例して増加し、算出された刺激指数は1回の免疫に対して、3回の免疫では、rVV−NS3では1.8から2.8に、rVV−Coreでは6.5から8.6に増加した。rVV−rastafar(ヒトのRasをコード)では刺激は観察されなかったことから、GI−5005によって誘導された免疫応答の抗原特異性が確認された。
【0176】
図7は、1回、2回または3回の週ごとのGI−5005による免疫を施されたC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスの脾細胞について行われたクロム放出アッセイの結果を示す。具体的には、1回、2回または3回の週ごとの5YUのGI−5005の注射を施されたC57BL/6マウス(図7Aおよび図7B)またはBALB/cマウス(図7Cおよび図7D)の脾細胞を24ウエルの平底組織培養プレート(10×10/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで、GI−5005(1×10/ウエル)により5日間刺激した。IVS培養期間の終了後、脾細胞培養物の2倍希釈物を、一晩HCV NS3(図7Aおよび図7C)またはHCV Core(図7Bおよび図7D)をコードする組換えワクシニアウィルスに感染させた、51Crでラベルした10000個のEL4リンパ腫細胞(図7Aおよび図7B)またはP815白血病細胞(図7Cおよび図7D)と混合した。E:T比は、エフェクタ:ターゲット比を示し、IVS培養期間初期の脾臓エフェクタ細胞の濃度に基づいている。結果を6時間後に96ウエルのV底プレートから単離した同時培養された3つのサンプルの平均特異的溶解%+/−S.D.として示す。自然に放出されるクロムの割合は、EL−4−rVV−NS3に対しては10%、EL−4−rVV−Coreに対しては10%、P815−rVV−NS3に対しては12%、P815−rVV−Core対しては11%であった。図7に示される結果は、図4に示されている知見を確認するとともに、rVV−NS3またはrVV−Coreに感染した同系の腫瘍細胞ターゲットの死滅は、免疫の回数に比例して増加する用量依存性の死滅であることを示す。
【0177】
図8に示される結果は、1回、2回または3回の週ごとのGI−5005による免疫を施されたC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスの脾細胞が、GI−5005によるインビトロ刺激に応答して分泌するサイトカイン分泌のプロファイルを示す。具体的には、1回、2回または3回の週ごとの5YUのGI−5005の注射を施されたC57BL/6マウス(上段)またはBALB/cマウス(下段)の脾細胞を24ウエルの平底組織培養プレート(10×10/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで、GI−5005(1×10/ウエル)により刺激した。無細胞上清を培養開始から48時間後に集め、サイトカインをコロラド大学ガンセンターフローサイトメーター施設により、フローサイトメーターLuminexTMアッセイ(Biosource社)を用いて定量した。IFN−gはIFN−γを、TNF−aはTNF−αを表す。これらの結果は、免疫したマウスの細胞の酵母抗原に対するサイトカイン応答は、主にT1様の炎症を促進する種類であり、T1全範囲のサイトカイン応答が誘導されるためには1回より多くの免疫付与が必要であることを示している。T2サイトカインIL−4およびIL−10が検出されなかったことは、本発明の酵母ビヒクルが主として体液性免疫よりもむしろ細胞性免疫を誘導することを示していることに留意することが重要である。
【0178】
上記データは、GI−5005によって誘導される免疫応答は、週ごとの反復投与によって増強されることを示している。GI−5005による免疫応答の追加免疫による増強を探求するために、表2に概要を示す実験を行った。要するに、雌BALB/cマウスに週ごとのGI−5005の注射を5回行い、その後、追加免疫を行わないか、または、1週ごと、2週ごと、1月ごと、若しくは、2月ごとの間隔で追加免疫を行った。最後の追加免疫の16日後にマウスを屠殺した。その結果、重要なことには、週ごとの反復投与は、中和および/または免疫寛容を誘導しなかった。週ごとの注射を12回施した後でさえ、その後に続く投与によって、結果として、リンパ球増殖および細胞媒介性細胞傷害アッセイで測定される増強が見られたにとどまった。
【0179】
【表2】

【0180】
図9は、表2に記載の免疫スケジュールでGI−5005を投与したBALB/cマウスの脾細胞について行ったリンパ球増強アッセイの結果を示す。要するに、表2に記載のスケジュールで5YUのGI−5005を免疫したBALB/cマウスの脾細胞を、96ウエルのU型底部を有する組織培養プレート(400000細胞/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで以下の刺激を与えた:無刺激(Bkgd)、GI−5005(320000または20000酵母細胞/ウエル)、コンカナバリンA(ConA;2.5μg/mL)、または、リポ多糖類+硫酸デキストラン(LPS+DS;25μg/mL および20μg/mL)。3日目に3HTdRを添加し、その18時間後にプレートからから試料を採集した。結果は、3つのサンプルの平均CMP+/−S.D.として示す。図9は酵母に関連する抗原に対する応答を追加免疫により増強することができることが明白であること、および明白な免疫寛容は誘導されないことを示している。
【0181】
図10は、免疫を付与され、表2に記載されているように追加免疫を付与されたBALB/cマウスの脾臓エフェクタ細胞について行われたクロム放出アッセイの結果を示す。要するに、表2に記載のスケジュールで5YUのGI−5005を免疫したBALB/cマウスの脾細胞を、24ウエルの平底組織培養プレート(10×10/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで、GI−5005(1×10/ウエル)により5日間刺激した。IVS培養期間の終了後、脾細胞培養物の2倍希釈物を、51Crでラベルした10000個のP815白血病細胞と混合した。E:T比は、エフェクタ細胞:ターゲット(標的)細胞の比である。結果を6時間後に96ウエルのV底プレートから単離した同時培養された3つのサンプルの平均特異的溶解%+/−S.D.として示す。自然に放出される51クロムの割合は、P815−NS3に対しては12%であった。図10に示される結果は、図9に示されている知見を確認するとともに、安定的にHCV NS3を発現している同系の腫瘍細胞を、用量依存的に殺傷することができることを示すとともに、GI−5005によって誘導されたCTL応答の追加免疫による増強可能性だけでなく持続性をも示している。
【0182】
(e)GI−5005により誘導された免疫応答の持続性
GI−5005の免疫により誘導される細胞性免疫応答の堅牢性(robustness)を評価するために、GI−5005を週一度の頻度で3回投与されたC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスを、投与後1月目および2月目に屠殺した。図11は、酵母特異的なリンパ球増殖の持続性を試験した結果を、図12はNS3特異的な細胞障害性細胞活性およびCore特異的な細胞障害性細胞活性の持続性を試験した結果を、図13はNS3特異的なサイトカイン分泌および酵母特異的なサイトカイン分泌のプロファイルを示す。全体的に、これらの結果は、GI−5005の投与は、持続する堅牢な(robster)メモリーT細胞応答を誘導することを示唆している。
【0183】
<GI−5005により誘導されたリンパ球増殖応答の持続性>
図11に示される結果は、酵母抗原に対する増殖反応は、週一度の頻度で3回免疫を付与した後少なくとも2月間持続する。要するに、未処置または3週間、週に一度の頻度で5YUのGI−5005で免疫し、その後5週(1月の持続性)または9週(2月の持続性)おいて屠殺したC57BL/6マウス(図11A)またはBALB/cマウス(図11B)の脾細胞を、96ウエルのU型底部を有する組織培養プレート(400000細胞/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで以下の刺激を与えた:無刺激(Bkgd)、GI−5005(400000酵母細胞/ウエル)。5日目に3HTdRを添加し、その18時間後にプレートからから試料を採集した。結果は、3つのサンプルの平均CMP+/−S.D.として示す。これらの結果は、図2および図6に示されるHCV NS3特異的な増殖反応またはCore特異的な増殖反応と対照的に、酵母特異的な増殖反応を試験していることに留意することが重要である。これらの特別な試験において酵母抗原に対する刺激指数は約11〜77の範囲であった。
【0184】
<GI−5005により誘導された細胞障害性エフェクタ細胞応答の持続性>
図12に示すように、リンパ球増殖応答に関する結果と同様に、GI−5005によって誘導された細胞障害性エフェクタ細胞活性の持続性は少なくとも2月であった。要するに、未処置または3週間、週に一度の頻度で5YUのGI−5005で免疫し、その後5週(1月の持続性)または9週(2月の持続性)おいて屠殺したC57BL/6マウス(図12A)またはBALB/cマウス(図12B)の脾細胞を、24ウエルの平底組織培養プレート(10×10/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで、GI−5005(1×10/ウエル)により5日間刺激した。IVS培養期間の終了後、脾細胞培養物の2倍希釈物を、51Crでラベルした10000個のEL4−NS3リンパ腫細胞(図12A)、または、51Crでラベルした10000個のP815−NS3白血病細胞(図12B)と混合した。E:T比は、エフェクタ:ターゲット比を示し、IVS培養期間の初期のエフェクタ細胞の濃度に基づいている。結果を6時間後に96ウエルのV底プレートから単離した同時培養された3つのサンプルの平均特異的溶解%+/−S.D.として示す。自然に放出されるクロムの割合は、EL4−NS3に対しては11%、P815−NS3に対して11%であった。
【0185】
<GI−5005により誘導されたサイトカイン分泌応答の持続性>
図13は、3週間、週に一度の頻度でGI−5005による免疫を施されたC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスの脾細胞が、GI−5005と、rVV−NS3によるインビトロ刺激に応答して分泌するサイトカイン分泌のプロファイルを示す。要するに、未処置または3週間、週に一度の頻度で5YUのGI−5005で免疫し、その5週間後(1ヶ月間の持続性)または9週間後(2ヶ月間の持続性)に屠殺したC57BL/6マウス(図13Aおよび図13B)またはBALB/cマウス(図13Cおよび図13D)の脾細胞を、24ウエルの平底組織培養プレート(10×10/ウエル)の各ウエルに入れ、インビトロで、GI−5005(1×10/ウエル)またはrVV−NS3(1×10pfu/ウエル)により刺激した。無細胞上清を培養開始から48時間後(IVS w/ GI−5005)または120時間後(IVS w/ rVV−NS3)に集めた。サイトカインをLuminexTMアッセイ(Biosource社)を用いて定量した。IFN−gはIFN−γを、TNF−aはTNF−αを表す。これらの結果は、GI−5005による免疫で誘導されるサイトカイン分泌細胞の持続性は少なくとも2月であることを示している。サイトカインの酵母特異的なプロファイルと対照的に、これらのデータは、また、刺激としてrVV−NS3を用いた、抗原特異的な(すなわち、NS3特異的な)応答は、主としてGM−CSFおよびIFN−γに限られることを示している。
【0186】
(f)種々の用量でのGI−5005投与の比較
図14および15に要約した結果は、GI−5005 TarmogenTMによる、異なる量の抗原を発現する細胞傷害性エフェクタ細胞およびサイトカイン分泌細胞の誘導を比較する。本研究は、有効性(potency)アッセイの開発の一部として理解される。
【0187】
簡単には、およそ1400ng/YU、500ng/YUおよび50ng/YU未満のHCV NS3−Core融合タンパク質を発現するGI−5005 TarmogenTMを生成した。このことを、誘導期間に存在する銅の量を変化させることにより達成した。3種のTarmogenTMを、GI−5005−H(1400ng/YU;0.02ngタンパク質/ng総タンパク質)、GI−5005−M(500ng/YU;0.008ngタンパク質/ng総タンパク質)およびGI−5005−L(50ng/YU未満;0.001ng未満タンパク質/ng総タンパク質)と名付けた。これら3種の異なるTarmogenTMを3種の用量(0.1YU、1YUおよび10YU)で、BALB/c雌マウス5匹の群を毎週免疫した。3週目の注入の7日後にマウスを屠殺し、脾細胞を、記載のインビトロ刺激(IVS)に供した。
【0188】
図14において、免疫したマウスからの脾細胞を群ごとにプールし、3種の異なるGI−5005 TarmogenTMのいずれかとともに、別々にIVSに配置した。HCV NS3を安定的に発現するH−2d保持P815細胞に対する、IVS培養物の細胞媒介性細胞傷害性活性を、評価した。簡単には、0.1YU、1YUまたは10YUのGI−5005−H(図14A−14C)、GI−5005−M(図14D−14F)またはGI−5005−L(図14G−14I)のいずれかの、3週間にわたる毎週の注入を受容したBALB/c細胞からの脾細胞を、24ウエル平底組織培養プレートの個々のウエルに置き(10×10脾細胞/ウエル)、示したGI−5005 TarmogenTM(2×10酵母細胞/ウエル)で5日間インビトロ刺激(IVS)した。IVS培養期間の終了時に、二倍希釈した脾細胞培養物を、10,000個の51Cr標識化P815−NS3白血球と混合した。E:T比は、IVS培養期間の開始時での脾臓エフェクタ細胞濃度に基づいた、エフェクタ細胞:ターゲット細胞の比をいう。結果を、96ウエルのV底プレートでの同時培養の6時間後に単離した三連のサンプルについての、特異的溶解%の平均+/−S.D.として表す。自発的な51Cr放出%はP815−NS3について12%であった。各図の説明における10YU、1YUおよび0.1YUは、免疫に使用したGI−5005の量をいう。データは、単一パラメータに基づいた明瞭な用量依存性を示す。すなわち、多量のHCV抗原が免疫またはインビトロ刺激に使用したTarmogenTMに発現した。同様の結論が、図15に示されるデータから導かれ得る。
【0189】
図15は、酵母特異的抗原に応じて分泌されたIL−6 対 HCV NS3特異的抗原に応じて分泌されたGM−CSFのレベルを示す。詳細には、0.1YU、1YUまたは10YU(X軸)のGI−5005−H(図15A)、GI−5005−M(図15B)またはGI−5005−L(図15C)のいずれかの、3週間にわたる毎週の注入を受容したBALB/c細胞からの脾細胞を、24ウエル平底組織培養プレートの個々のウエルに置き(10×10脾細胞/ウエル)、GI−5005−H(2×10酵母細胞/ウエル)またはrVV−NS3(100×10pfu/ウエル)のいずれかでインビトロ刺激(IVS)した。培養開始後72時間(IVSw/GI−5005)または120時間(IVSw/rVV−NS3)の時点で、細胞を含まない上清を回収した。サイトカインを、LuminexTMアッセイ(Biosource)を用いて定量した。簡単には、これらのデータは、IL−6分泌細胞の誘導が免疫に使用されるTarmogenTMの数に依存するが、TarmogenTMにおいて発現するHCV抗原の量には依存しないことを示す。対照的に、GM−CSFを分泌する細胞の誘導は両者に依存する。図14および15に示されたデータに基づいて、最低限500ngの融合タンパク質/YUまたは0.008ngタンパク質/ng総タンパク質が、抗原特異的応答を示すに必要とされる。
【0190】
〔実施例6〕
以下の実施例は、HCV抗原を発現するGI−5005 TarmogenTMを使用する、マウスでの非臨床的な薬理学的試験(腫瘍保護試験および治療試験)を示す。
【0191】
HCVに対する保護および治療のインビボでの動物モデルが利用可能ではないので、本発明者らは、HCV抗原を保有する腫瘍に対する保護および治療を用いてGI−5005の活性を示した。
【0192】
(a)GI−5005は、NS3を発現する腫瘍細胞に対する保護免疫を誘導する
上記の実験は、C57BL/6マウスおよびBALB/cマウスにおけるGI−5005の免疫原性を示す。GI−5005酵母の注入が保護免疫を惹起するか否かを決定するために、BALB/cマウスに、0.1YU、0.7YUまたは5YUの、GI−5005またはGI−5003(HCV NS3プロテアーゼのみを発現するTarmogenTM)のいずれかを、あるいは、5YUのGI−4014(変異したRasタンパク質を発現するTarmogenTM)をネガティブコントロールとして、あるいは何も用いることなく、週に一度、3週間にわたって皮下注射した。最終免疫の1週間後、マウスを、同系のA20腫瘍細胞を皮下注射することによってチャレンジした。この細胞はmHCV NS3(A20−NS3)で安定に形質移入されている。チャレンジの21日後に腫瘍容量を測定した。図16に示されるデータは、HCV NS3抗原、GI−5005またはGI−5003を発現するTarmogenTMを用いて免疫したマウスが、A20−NS3腫瘍細胞でのチャレンジから保護されたことを示す。一方、免疫しなかったマウスまたはGI−4014を用いて免疫したマウスは保護されなかった。結果を、平均腫瘍容量+/−S.D.として示す。これらの結果は、GI−5005は、容量依存的および抗原依存的な免疫応答を誘導することを示す。この応答は、HCV NS3を発現する同系の腫瘍細胞からマウスを保護する。
【0193】
本実験を、GI−5005を3週間にわたって毎週注射し、その後7日間EL4−NS3リンパ球を皮下でチャレンジしたC57BL/6に反復した。簡単には、C57BL/6(一群あたり5匹)に、何もなし(未処置)または5YU GI−5005を3週間にわたって毎週皮下注射した。皮下注射した5×10個のA20−NS3での最終免疫の7日後に、マウスをチャレンジした。チャレンジ後の示した日に腫瘍を測定した。結果を、平均腫瘍容量+/−S.D.として示す。数値は、測定可能な腫瘍を有する動物の数をいう(*免疫したマウスから摘出した腫瘍はもはやNS3を発現しないことがわかった)。図17に示した結果は、GI−5005を注射したマウスがEL4−NS3でのチャレンジから保護されるが、未処置のマウスは保護されないことを示す。GI−5005の注射は、EL4単独でのチャレンジからマウスを保護しない。このことは、保護免疫が抗原特異的であることを示す(データは示さず)。免疫したマウスにおいて成長する腫瘍がなおHCV NS3を発現するか否かを決定するために、GI−5005免疫したマウス2匹および未処置のマウスコントロール5匹から、腫瘍を摘出し、抗生物質G418を含む組織培養培地中に置いた。EL4−NS3において、HCV NS3を発現する哺乳動物発現ベクターもまた、ネオマイシンアナログG418の存在下で形質転換体が増殖することを可能にするネオマイシン耐性遺伝子を含み、これによりHCV NS3の安定的な発現を維持する。未処置のマウスから摘出したEK4−NS3腫瘍細胞はG418の存在下で増殖するが、GI−5005を用いて免疫したマウスからの腫瘍は増殖しなかった。この観察は、形質移入した抗原の発現を排除する免疫学的な圧力が存在することを示唆する。これらの結果は、NS3を発現する同系の腫瘍細胞でのチャレンジに対するインビボでの保護免疫をGI−5005が誘導することを示す。
【0194】
(b)「保護された」マウスにおける免疫応答
HCV NS3を発現する同系の腫瘍細胞を拒絶した「保護」マウスの利用可能性は、保護免疫の準備(setting)における抗原特異的免疫応答を試験する機会を提供した。EL4−NS3腫瘍細胞を拒絶した上記のマウス5匹からの脾細胞をプールし、96ウエルのU底組織培養プレートの個々のウエルに置き(4×10細胞/ウエル)、刺激なし、あるいはGI−1001(2×10酵母細胞/ウエル)、GI−5005(2×10酵母細胞/ウエル)、rVV−Gag(1×10pfu/ウエル)、rVV−NS3(1×10pfu/ウエル)、またはrVV−Core(1×10pfu/ウエル)のいずれかで刺激した。HTdRを5日目に添加し、その18時間後に細胞を回収した。結果を四連のサンプルについての平均CPM+/−S.D.として示す。図18は、酵母特異的刺激、HCV NS3特異的刺激およびHCV Core特異的刺激に対して保護されたマウス由来の脾細胞の、増殖性の応答を示す。図19は、これらの細胞傷害性エフェクタ細胞活性を試験する。この実験において、EL4−NS3腫瘍細胞を拒絶した免疫化マウス5匹からの脾細胞、または未処置のマウスからの脾細胞を一緒にプールして、24ウエルの平底組織培養プレートの個々のウエルに置き(8×10脾細胞/ウエル)、GI−5005(1×10細胞/ウエル)またはrVV−NS3(8×10pfu/ウエル)のいずれかで5日間インビトロ刺激(IVS)した。IVS培養期間の最後に、脾細胞培養物の二倍希釈物を、rVV−NS3で一晩感染した10,000個の51Cr標識化EL4ターゲット細胞と混合した。E:T比は、IVS培養期間の開始時での脾臓エフェクタ細胞濃度に基づいた、エフェクタ細胞:ターゲット細胞の比をいう。結果を、96ウエルのV底プレートでの同時培養の5時間後に単離した三連のサンプルについての、特異的溶解%の平均+/−S.D.として表す。自発的な51Cr放出%はEL4−rVV−NS3について33%であった。同時に、これらの知見は、保護されたマウス、すなわち、NS3を発現する腫瘍細胞を拒絶した免疫化マウスが、上記実施例5に示したような単純に免疫したマウスと比較して、HCV NS3に対する免疫応答を増強したことを示唆する。
【0195】
(c)GI−5005は、未処置の腫瘍保有マウスから単離した脾細胞中の細胞傷害性エフェクタ細胞活性を刺激する
上記にて示した結果は、HCV抗原の二次的供給源(すなわちHCV NS3を発現する腫瘍細胞)へのGI−5005マウスの曝露が、増強された増殖および細胞傷害性エフェクタ細胞応答によって裏付けられるような追加免疫効果(ブースト効果)を生じる事を示唆する。GI−5005酵母が抗原保持マウスからのT細胞活性をさらに刺激し、その結果、慢性のHCV感染患者におけるT細胞活性を模倣することができるか否かを決定するために、未処置のC57BL/6マウスに、EL4−NS3腫瘍細胞を皮下注射した。3週間後、腫瘍容量は約2500mmに達し、マウスを屠殺し、脾細胞をベクターコントロール(GI−1001)またはGI−5005酵母のいずれかとインキュベートした。EL4ターゲット細胞を感染したrVV−NS3に対する細胞傷害性エフェクタ細胞活性を、インビトロ刺激開始6日後に評価した。詳細には、21日前にEL4−NS3腫瘍細胞を注射した未処置のマウス5匹からの脾細胞を一緒にプールし、24ウエルの平底組織培養プレートの個々のウエルに置き(8×10脾細胞/ウエル)、GI−1001またはGI−5005(1×10酵母細胞/ウエル)のいずれかで6日間インビトロ刺激(IVS)した。IVS培養期間の終了時に、脾細胞培養物の二倍希釈物を、rVV−NS3を一晩感染した10,000個の51Cr標識化EL4ターゲット細胞と混合した。E:T比は、IVS培養期間の開始時での脾臓エフェクタ細胞濃度に基づいた、エフェクタ細胞:ターゲット細胞の比をいう。結果を、96ウエルのV底プレートでの同時培養の5時間後に単離した三連のサンプルについての、特異的溶解%の平均+/−S.D.として表す。自発的な51Cr放出%はEL4−rVV−NS3について33%であった。図20に示した結果は、GI−5005が、HCV−NS3を発現する腫瘍を保有するマウス由来の細胞傷害性エフェクタ細胞を刺激し得ることを示す。
【0196】
(d)GI−5005はNS3を発現する腫瘍細胞に対する治療活性を誘導する
図20に示した結果は、GI−5005が、EL4−NS3を発現する腫瘍を保持するC57BL/6マウスの脾細胞からのNS3特異的細胞傷害性エフェクタ活性を再度刺激し得ることを示す。このことは、治療効果もまた達成され得ることを示唆する。この可能性を評価するために、BALB/cマウス(一群あたり5匹)に、HCV NS3をコードするDNAで安定的に形質移入した同系のA20−NS3 Bリンパ球1.25×10個を、皮下注射した。腫瘍移植の7日後に開始して、マウスを3週間にわたって週1回、PBSまたはYU GI−5005のいずれかを用いて免疫した。腫瘍増殖をモニタリングし、腫瘍移植28日後にマウスを屠殺した。このとき、PBS群における腫瘍は2500mmに達した。図21における結果は、平均腫瘍容量+/−S.D.として示され、数値は、測定可能な腫瘍を有する動物の数をいう(*腫瘍を保有する全てのマウスから摘出した腫瘍はなおNS3を発現していることがわかった)。
【0197】
図21は、GI−5005の治療的投与が腫瘍寛解を生じることを示す。簡単には、PBSで処置した腫瘍保有マウス5匹全てが腫瘍増殖を示したが、GI−5005で処置した5匹中3匹のみが腫瘍増殖を示し、処置した動物において生じる腫瘍ははるかに遅く増殖するようである(PBS処置群における腫瘍保有マウスでの平均腫瘍容量2488+/−636mm 対 GI−5005処置群における腫瘍保有マウスでの平均腫瘍容量1264+/−548mm)。しかし、上述したEL4−NS3を用いて得られた結果とは対照的に、A20−NS3腫瘍保有マウスからの腫瘍の全てにおいてHCV NS3タンパク質はなお発現していた(データは示さず)。
【0198】
GI−5005の免疫療法的な特性は、図22に示すような、移植された腫瘍細胞の数を変化させた第2の試験において確認された。簡単には、BALB/cマウス(一群あたり5匹)に、2.5×10個、5.0×10個、または1×10個のA20−NS3 Bリンパ球を皮下注射した。マウスを、腫瘍から離れた皮膚部位での皮下注射によって、PBSまたは10YU GI−5005を用いて腫瘍移植の7日後、14日後および21日後に治療的に免疫した。治療開始後の示した日に腫瘍容量を測定した。治療開始24日後の結果を、平均腫瘍容量+/−S.D.として示し(図22A)、腫瘍保有マウスのパーセントで示す(図22B)。
【0199】
〔実施例7〕
以下の実施例は、本発明の酵母ワクチンを用いた毒性試験を記載する。
【0200】
上記のように、GI−5005 TarmogenTMを、多くの異なる試験において現在までに300匹より多くのマウスに投与し、検出可能な著しい毒性は示されなかった。酵母ベースのワクチンプラットフォームを用いる他の関連製品を、観察可能な主要な毒性を有していないマウス、ラット、ウサギ、ブタ(pig-tailed)およびマカク(rhesus macaque)ザルに投与した。他の酵母ベースの製品のGI−5005 TarmogenTMとの類似性、すなわち安全性データの妥当性のために、これら他のTarmogenTMを用いた多くの非臨床的安全性評価は、GI−5005の毒性データに続いて詳述される。
【0201】
この試験の目的は、毎週1回で最大で連続13週間にわたる固定容量1mLでの皮下注射投与(1日目、8日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、78日目、85日目および92日目の投与)を行い、引き続く特異的回復/検視間隔をおいた後の、ニュージーランドホワイトラビット(雄または雌)におけるGI−5005の毒性効果を決定することである(表3)。以前の研究から利用可能なデータを基にして、用量レベルを選択した。皮下経路は、ヒトでの本試験品の投与経路が意図される。3つの処置群(グループ2〜4)の5匹の雄または5匹の雌のニュージーランドホワイトラビットに、試験品を用量レベル1YU、10YUおよび100YUで投与した。コントロール群(グループ5)の雌雄別で10匹ずつの動物は、ビヒクルPBSを受容した。グループ5カラにおいて、試験品またはビヒクルを、1日目、8日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、57日目、64日目、71日目、78日目、85日目および92日目に一度投与した。グループ5〜8の雌雄別で5匹ずつの動物を、94日目に屠殺した。雌雄別で残りの5匹の動物を、回復期間約23日間にわたって維持した。
【0202】
【表3】

【0203】
罹患率、死亡率、傷害、ならびに食物および水の利用度について、全ての動物を1日2回観察した。詳細な臨床実験、注射部位の炎症評価、検眼鏡実験、ならびに体重および食物消費の測定を、実験の経過中に行った。臨床病理学的評価(血液学、臨床化学、および尿検査)を、生存する動物の全てに対して、投与前、各投与の次の日に行い、グループ1〜4の動物に対して31日目の検視時に行った。さらなる血液サンプルを、全ての生存する動物から、血清抗体分析のために投与前および投与1時間後に収集し、血清抗体分析のためにグループ1〜4の動物に対して31日目の検視時に収集した。31日目、97日目および120日目の検視時に、適切な群における全ての動物を安楽死させ、器官重量測定と称されるプロトコルとともに、巨視的実験および微視的実験を行った。
【0204】
生存、臨床的知見、食物消費、眼科、または器官重量に対する、処置に関連した影響は、観察されなかった。微視的には、処置に関連した変化が、雌雄いずれにおいても注射部位にて、全ての用量レベルで観察された。これは、線維形成、亜急性炎症およびネクローシスを含んだ。さらに、肉芽腫性炎症もまた、全てではないがいくつかの注射部位で観察された。これらの知見の発生率および重篤度は一般に用量に関連した。1YUでの雌ならびに10YUおよび100YUでの雌雄両方の骨髄における顆粒球の過形成、ならびに濾胞性リンパ球の過形成および/または10YUでの雌および100YUでの雌雄両方の脾臓における過敏性赤色髄/間質細胞の過形成を、注射部位で観察した炎症に対する二次応答とみなした。これらの知見は、注射部位での組織肥厚の微視的知見と相関する。処置に関連した炎症は紅斑および浮腫の両方からなり、これを100YUでの雌雄両方の注射部位で観察した。最小限の知見もまた、10YUでの雌雄両方において見られた。このことは、処置の関連を示唆する。注射部位のいずれかでの投与に続く回復の何らかの徴候を示すものはなかった。効果は穏やかであったが、体重の減少が100YUでの雌雄両方において見られた。このことは、GI−5005での処置に対する関連を示唆する。
【0205】
血液学および臨床化学における処置に関連した効果を観察し、注射部位で観察した局所性炎症応答に対して二次的であるとみなした。好中球の数の増加を反映する、処置に関連した白血球数の増加が、GI−5005処置群の全てで見られた。このことの開始および重篤度は一般に用量に関連する。好中球レベルのいくらかの回復が、次の投与の前に見られた。処置に関連したグロブリン値の増加が観察された。このことの開始および重篤度は一般に用量に関連する。これらの増加は、時間とともに進行する傾向があり、回復の徴候は示さない。
【0206】
本研究の条件および知見に基づけば、雄および雌のウサギに対する、用量レベル1YU、10YUおよび100YUでのGI−5005の投与は、明白な全身性の毒性を何ら生じなかった。予備的な処置に関連した知見は、注射部位での線維形成、亜急性炎症およびネクローシスの局所的な効果に限定された。これは、最も高い用量で試験した場合を除いて穏やかであり、低度〜中程度であった。注射部位での反応は、臨床設定において潜在的な用量限定効果を示し得る。局所性炎症応答に対して二次的であるとみなされた好中球数およびグロブリン値が付随した増加する。
【0207】
ウサギ毒性試験においてGI−5005の免疫原性、すなわち試験の免疫毒性学関連性を示すために、リンパ球増殖アッセイを行った。ウサギでのリンパ球増殖をアッセイするための標準化された方法は存在しないが、酵母タンパク質に対するリンパ球増殖の非最適化アッセイを行った。これは、5回の免疫(31日目)の2日後に収集した腸骨リンパ節および腋窩リンパ節から単離したリンパ球を用いる。個々のウサギからのリンパ節細胞懸濁物を、示された数の加熱にて殺傷したGI−5005酵母細胞とともに組織培養の96ウエルのU底プレートに置いた(4×10個/ウエル)。1μCi/ウエルのH−TdRで18時間パルスすることにより培養の3日目にリンパ球増殖を決定した。雄のリンパ節細胞(図23A)対雌のリンパ節細胞(図23B)を用いて得られた平均刺激指数を図23に示す(結果を、各用量グループ内の個々のウサギからの評価可能なリンパ節細胞について得られた平均刺激指数+/−S.E.M.として示す。)。総合的には、データは、ビヒクル(PBS)で免疫した10匹のウサギのうちの1匹のみが、GI−5005酵母に対して10より大きな刺激インデックスを示し、1YU GI−5005で免疫したウサギ10匹のうちの9匹が、10YU GI−5005で免疫したウサギ10匹のうちの7匹が、100YU GI−5005で免疫したウサギ10匹のうちの8匹が、10より大きな刺激インデックスを示した。雄のリンパ節細胞での応答と雌のリンパ節細胞での応答との間で差異は識別できず、用量投与応答効果が現れなかった。
【0208】
酵素免疫測定法(ELISA)を使用して、MPI研究962−003の一部としてGI−5005を注入したウサギの血清中の抗Saccharomyces cerevisiae抗体(ASCA)を検出しかつ滴定した。試験した血清サンプルを1日目(最初の注入の前)および29日目(第5週の注入の前)に得た。全てのウサギが、試験の開始時には1:100未満のASCA力価を示した(表4)。対照的に、GI−5005を受容したウサギの全てが4週間の注入投与の後に増大したASCA力価を示した。しかし、この力価は低く、1:10,000未満であり、用量応答効果は観察されなかった。
【0209】
【表4】

【0210】
PBSあるいは1YU、10YUまたは100YUのGI−5005 TarmogenTMで5週間にわたって毎週免疫したウサギにおいて生成されたHCV−NS3特異的血清抗体およびCore特異的血清抗体の存在を、ウエスタンブロット分析によって定量的に評価し、このTarmogenTMに含まれる異種タンパク質に対して誘導された体液性の抗体応答についてのよりよい理解を得た。免疫前の動物から得られた血清には、HCV特異的抗体は観察されなかった。対照的に、NS3タンパク質およびCoreタンパク質と特異的に反応する抗体を、用量100YUのGI−5005を5週間受容した後の31日目の試験ウサギ9匹中7匹からの血清サンプル中、および用量10YU群における3匹中1匹からの血清サンプル中に検出した。PBS群または1YU群の31日目からの血清サンプル中には、HCV特異的抗体が検出されなかった。この分析は、GI−5005に含まれる異種性のHCV NS3−Coreタンパク質に対する血清抗体の用量依存的な誘導が、ウサギにおいてこのTarmogenTMの皮下注射の結果として生じることを示す。
【0211】
予備的な97日目および120日目の臨床病理学および全ての観察データは、31日目の集団からの知見と一致する。雄および雌のウサギへの、用量レベル1YU、10YUおよび100YUのGI−5005の13週間の投与は、明らかな全身性の毒性を何ら生じなかった。第一の処置に関連した知見は、一般に用量に関連する徴候および重篤度とともに局所部位反応に限定された。しかし、100YU用量群において、より重篤な肉芽腫性の変化、線維形成およびネクローシスが、注射部位反応において観察され、臨床設定における潜在的な用量限定効果を示す。この97日集団の組織病理学的分析はまだ利用可能ではない。処置に関連した白血球数の増加(好中球数の増加を反映する)およびグロブリン値の増加もまた、両方の効果について一般に用量に関連する開始および重篤度とともに、観察された。これらの増加は、時間とともに進行する傾向があり、回復の徴候は示さない。
【0212】
GI−5005 TarmogenTMシリーズ製品およびプロトタイプを注射した331匹のC57BL/6マウスおよびBALB/cマウスからの安全性評価の全ては、約5%の動物における注射部位で遅延型過敏症と一致する、未処置に関連した死および低度〜中程度の毛髪の喪失およびまれに腫瘍形成を伴う炎症を示した。注射部位反応性は、C57BL/6マウスに限定された。このマウスは、典型的に、皮膚外傷により感受性であり、群のハウジング条件により生じる身づくろいの振る舞いに二次的であり得る。他の全体的な臨床的な異常または副作用は観察されなかった。
【0213】
【表5】

【0214】
本明細書中に記載または列挙される刊行物の各々は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0215】
〔参考文献〕
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本発明の種々の実施形態が詳細に記載されているが、これらの実施形態の変更および適合が当業者になされ得ることは明らかである。しかし、このような変更および適合が、添付の特許請求の範囲に従って本発明の範囲内であることは、明らかに理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1A】図1Aは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、切断NS3−Core融合タンパク質、および不活性化されたHCV NS3融合タンパク質の発現を示すウエスタンブロットのデジタル画像である。
【図1B】図1Bは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、切断NS3−Core融合タンパク質、および不活性化されたHCV NS3融合タンパク質の発現を示すクーマシー染色のデジタル画像である。
【図1C】図1Cは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、切断HCV E1−E2融合タンパク質の発現を示すウエスタンブロットのデジタル画像である。
【図1D】図1Dは、本発明にかかる酵母ビヒクルにおける、膜貫通(TM)ドメインが欠失したHCV NS4b融合タンパク質の発現を示すウエスタンブロットのデジタル画像である。
【図2】図2は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンがNS3およびCoreに特異的なリンパ球増殖を誘導することを説明するグラフである。
【図3A】図3Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンがNS3に特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを説明するグラフである。
【図3B】図3Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンがNS3に特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを説明するグラフである。
【図3C】図3Cは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンがNS3に特異的な細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを説明するグラフである。
【図4A】図4Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3またはCoreをコードする組換えワクシニアウィルスに感染した腫瘍細胞を死滅させる細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを証明するグラフである。
【図4B】図4Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3またはCoreをコードする組換えワクシニアウィルスに感染した腫瘍細胞を死滅させる細胞傷害性エフェクタ細胞を誘導することを証明するグラフである。
【図5】図5は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、マウス脾細胞による炎症誘発性サイトカインの分泌を誘導することを説明するグラフである。
【図6】図6は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導されるリンパ球の増殖を示すグラフである。
【図7A】図7Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。
【図7B】図7Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。
【図7C】図7Dは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。
【図7D】図7Dは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。
【図8A】図8Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される炎症誘発性で、酵母特異的なサイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。
【図8B】図8Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、1、2、または3週間免疫されることによって誘導される炎症誘発性で、酵母特異的なサイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。
【図9】図9は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、異なる免疫方法で、免疫および追加免疫されたBALB/cマウス由来の脾臓細胞におけるリンパ球増殖を説明するグラフである。
【図10】図10は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、異なる免疫方法で、免疫および追加免疫されたBALB/cマウス由来の脾臓エフェクタ細胞における細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図11A】図11Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて、誘導されたリンパ球増殖応答の持続性を証明するグラフである。
【図11B】図11Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導されたリンパ球増殖応答の持続性を証明するグラフである。
【図12A】図12Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞応答の持続性を示すグラフである。
【図12B】図12Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞応答の持続性を示すグラフである。
【図13A】図13Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された酵母およびNS3に特異的なサイトカインを分泌する細胞の持続性を示すグラフである。
【図13B】図13Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された酵母およびNS3に特異的なサイトカインを分泌する細胞の持続性を示すグラフである。
【図13C】図13Cは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された酵母およびNS3に特異的なサイトカインを分泌する細胞の持続性を示すグラフである。
【図13D】図13Dは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された酵母およびNS3に特異的なサイトカインを分泌する細胞の持続性を示すグラフである。
【図14A】図14Aは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14B】図14Bは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14C】図14Cは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14D】図14Dは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14E】図14Eは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14F】図14Fは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14G】図14Gは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14H】図14Hは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図14I】図14Iは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を説明するグラフである。
【図15A】図15Aは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された炎症誘発性サイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。
【図15B】図15Bは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された炎症誘発性サイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。
【図15C】図15Cは、異なる量の切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンを用いて誘導された炎症誘発性サイトカインを分泌する細胞を示すグラフである。
【図16】図16は、切断NS3−Core融合タンパク質もしくは不活性化されたHCV NS3プロテアーゼ融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系の腫瘍細胞を用いたチャレンジに対して、BALB/cマウスにおいて、感染防御免疫を誘導することを示すグラフである。
【図17】図17は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系の腫瘍細胞を用いたチャレンジに対して、C57BL/6マウスにおいて、感染防御免疫を誘導することを示すグラフである。
【図18】図18は、防御されたマウス由来の脾臓細胞におけるリンパ球増殖活性を示すグラフである。
【図19】図19は、防御されたマウス由来の脾臓細胞における細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を示すグラフである。
【図20】図20は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、ナイーブの腫瘍をもったマウスから単離された脾臓細胞における細胞傷害性エフェクタ細胞の活性を刺激することを示すグラフである。
【図21】図21は、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系のB細胞リンパ腫をもつBALB/cマウスにおいて、治療的な免疫を誘導することを示すグラフである。
【図22A】図22Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系のB細胞リンパ腫をもつBALB/cマウスにおいて、治療的な免疫を誘導することを示すグラフである。
【図22B】図22Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、HCV NS3を発現する同系のB細胞リンパ腫をもつBALB/cマウスにおいて、治療的な免疫を誘導することを示すグラフである。
【図23A】図23Aは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、ニュージーランドホワイトラビットのオス及びメスにおいて、酵母に特異的なリンパ球増殖を誘導することを示すグラフである。
【図23B】図23Bは、切断NS3−Core融合タンパク質を発現する本発明のワクチンが、ニュージーランドホワイトラビットのオス及びメスにおいて、酵母に特異的なリンパ球増殖を誘導することを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、HCV Core配列の少なくとも一部分に連結された、HCV NS3プロテアーゼの少なくとも一部分を含む、ワクチン。
【請求項2】
上記HCV NS3プロテアーゼは、天然のHCV NS3プロテアーゼの触媒ドメインを欠失している請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
上記HCV NS3プロテアーゼは、本質的に、NS3全長タンパク質のN末端の88アミノ酸の後に続く、262アミノ酸(配列番号20の第1115位〜第1378位)からなる請求項1に記載のワクチン。
【請求項4】
上記HCV Coreの疎水性のC末端配列は切断されている請求項1に記載のワクチン。
【請求項5】
上記HCV Core配列は、本質的に、HCV Coreの全長配列の第2位〜第140位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第140位)からなる請求項5に記載のワクチン。
【請求項6】
上記HCV Core配列は、グルタミン酸およびアスパラギン酸の2つのアミノ酸を含むように付加されている請求項1に記載のワクチン。
【請求項7】
上記HCV Core配列は、アミノ酸配列G−G−G−H−H−H−H−H−H(配列番号10)を含むように付加されている請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
上記HCV NS3プロテアーゼは、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている請求項1に記載のワクチン。
【請求項9】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号2からなる請求項1に記載のワクチン。
【請求項10】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記融合タンパク質は、不活性化された、全長のHCV NS3タンパク質を含む、ワクチン。
【請求項11】
上記HCV NS3タンパク質は、配列番号20のHCV ポリタンパク質配列の第1165位の残基に変異を含み、タンパク質分解活性が不活性化している請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
上記HCV NS3プロテアーゼは、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている請求項10に記載のワクチン。
【請求項13】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号4からなる請求項10に記載のワクチン。
【請求項14】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、切断HCV E2タンパク質に融合された、切断HCV E1タンパク質を含む、ワクチン。
【請求項15】
上記切断HCV E1タンパク質は、本質的に、HCV E1の第1位〜第156のアミノ酸(配列番号20の第192位〜第347位)からなる請求項14に記載のワクチン。
【請求項16】
上記HCV E2タンパク質は、本質的に、HCV E2の第1位〜第334位のアミノ酸(配列番号20の第384位〜第717位)からなる請求項14に記載のワクチン。
【請求項17】
上記切断HCV E1タンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている請求項14に記載のワクチン。
【請求項18】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号6からなる請求項14に記載のワクチン。
【請求項19】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4bタンパク質を含む、ワクチン。
【請求項20】
上記膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4bタンパク質は、本質的に、HCV NS4bの第1位〜第69位のアミノ酸(配列番号20の第1712位〜第1780位)と、第177位〜第261位のアミノ酸(配列番号20の第1888位〜第1972位)とが連結されている請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
上記膜貫通ドメインが欠失したHCV NS4bタンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている請求項19に記載のワクチン。
【請求項22】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号8からなる請求項19に記載のワクチン。
【請求項23】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、HCV E2全長タンパク質に融合されたHCV E1全長タンパク質に融合されたHCV Core全長タンパク質を含む、ワクチン。
【請求項24】
上記HCV Core全長タンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号12からなる請求項23に記載のワクチン。
【請求項26】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、膜貫通ドメインが欠失したHCV E1タンパク質と、膜貫通ドメインが欠失したHCV E2タンパク質とに融合された、切断HCV Coreタンパク質を含む、ワクチン。
【請求項27】
上記切断HCV Coreタンパク質は、本質的に、HCV Coreタンパク質の第2位〜第140位(配列番号20の第2位〜第140位)からなる請求項26に記載のワクチン。
【請求項28】
上記膜貫通ドメインが欠失したHCV E1タンパク質は、本質的に、HCV E1タンパク質の第1位〜第156位(配列番号20の第192位〜第347位)からなる請求項26に記載のワクチン。
【請求項29】
上記膜貫通ドメインが欠失したHCV E2タンパク質は、本質的に、HCV E2タンパク質の第1位〜第334位(配列番号20の第384位〜第717位)からなる請求項26に記載のワクチン。
【請求項30】
上記切断HCV Coreタンパク質は、N末端に、配列番号9(MADEAP)に示されるアミノ酸配列が連結されている請求項26に記載のワクチン。
【請求項31】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号14からなる請求項26に記載のワクチン。
【請求項32】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、HCV NS4bに融合されたHCV NS4aに融合されたHCV NS3を含み、
該HCV NS3は、不活性化されており、
該HCV NS4aは、膜貫通ドメインを欠失している、ワクチン。
【請求項33】
上記HCV NS3タンパク質は、本質的に、HCV HS3の第1位〜第631位(配列番号20の第1027位〜第1657位)からなり、
配列番号20の第1165位のセリンがアラニンに置換され、プロテアーゼが不活性化している請求項32に記載のワクチン。
【請求項34】
上記HCV NS4aタンパク質は、本質的に、HCV NS4aタンパク質の第1位〜第54位(配列番号20の第635位〜第691位)からなる請求項32に記載のワクチン。
【請求項35】
上記HCV NS4bタンパク質は、本質的に、HCV NS4bの第177位〜第261位(配列番号20の第1888位〜第1972位)に融合されたHCV NS4bの第1位〜第69位(配列番号20の第1712位〜第1780位)からなる請求項32に記載のワクチン。
【請求項36】
上記HCV NS3タンパク質は、N末端に、配列番号9に示されるアミノ酸配列(MADEAP)が連結されている請求項32に記載のワクチン。
【請求項37】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号16からなる請求項32に記載のワクチン。
【請求項38】
(a)酵母ビヒクルと、
(b)該酵母ビヒクルによって組換え的に発現されたHCV融合タンパク質とを含み、
上記HCV融合タンパク質は、HCV NS5bタンパク質に融合されたHCV NS5aタンパク質を含み、
上記NS5bタンパク質は、NS5bのC末端が欠失しており、不活性化されている、ワクチン。
【請求項39】
上記HCV NS5aタンパク質は、本質的に、HCV NS5aの第1位〜第448位(配列番号20の第1973位〜第2420位)からなる請求項38に記載のワクチン。
【請求項40】
上記HCV NS5bタンパク質は、本質的に、HCV NS5bの第1位〜第539位(配列番号20の第2421位〜第2959位)からなる請求項38に記載のワクチン。
【請求項41】
上記HCV NS5aタンパク質は、N末端に、配列番号9に示されるアミノ酸配列(MADEAP)が連結されている請求項38に記載のワクチン。
【請求項42】
上記融合タンパク質は、本質的に、配列番号18からなる請求項38に記載のワクチン。
【請求項43】
上記融合タンパク質の発現は、誘導プロモーターの制御下にある請求項1〜42にいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項44】
上記誘導プロモーターは、CUP1である請求項43に記載のワクチン。
【請求項45】
樹状細胞をさらに含み、
該樹状細胞は、HCV融合タンパク質を組換え的に発現する酵母ビヒクルが、細胞内に搭載されている請求項1〜42のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項46】
少なくとも1つの生物学的応答の修飾因子をさらに含む請求項1〜45のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項47】
上記生物学的応答の修飾因子は、サイトカイン、ホルモン、脂質誘導体、および低分子薬剤からなる群より選択される請求項46に記載のワクチン。
【請求項48】
上記生物学的応答の修飾因子は、抗CTLA−4、抗CD137、抗CD28、抗CD40、アレムツズマブ、デニロイキンジフチトクス、抗CD4、抗CD25、抗PD1、抗PD−L1、抗PD−L2、FOXP3の遮断薬、Flt−3リガンド、イミキモド、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、サルグラモスチム、Toll様受容体(TLR)−7アゴニスト、およびTLR−9アゴニストからなる群より選択される請求項46に記載のワクチン。
【請求項49】
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンの使用方法であって、
HCV感染から、動物を保護する製剤において、上記ワクチンを使用する使用方法。
【請求項50】
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンの使用方法であって、
HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発させる製剤において、上記ワクチンを使用する使用方法。
【請求項51】
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンの使用方法であって、
疾患もしくは異常を治療または予防するための製剤において、上記ワクチンを使用する使用方法。
【請求項52】
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンの使用方法であって、
HCVに感染する危険がある個体群を免疫するための製剤において、上記ワクチンを使用する使用方法。
【請求項53】
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンの使用方法であって、
HCVに感染している個体群を治療するための製剤において、上記ワクチンを使用する使用方法。
【請求項54】
C型肝炎ウィルス(HCV)感染から動物を保護する方法であって、
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンを、HCVに感染している動物もしくは、HCVに感染する危険がある動物に投与することを含み、
該ワクチンの該動物への投与により、HCV感染もしくは該動物へのHCV感染の結果生じる少なくとも1つの症状を、軽減または抑制する、方法。
【請求項55】
HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発させる方法であって、
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンを動物に投与することを含む、方法。
【請求項56】
HCVに感染している個体群において、HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発させる方法であって、
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンを、該個体群に投与することを含む、方法。
【請求項57】
HCVに感染する危険がある個体群を、HCVに対して免疫する方法であって、
請求項1〜48のいずれか1項に記載のワクチンを該個体群に投与することを含む、方法。
【請求項58】
上記ワクチンは、HCV抗原をコードするウィルスベクターを含むワクチンに加えて、追加免疫として投与される、請求項53〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
上記ワクチンは、異なるHCVワクチンで追加免疫する前に、上記の免疫系を初回刺激ために投与される、請求項53〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
HCV Core配列の少なくとも一部分に連結された、HCV NS3プロテアーゼの少なくとも一部分を含み、
上記HCV NS3プロテアーゼは、天然のHCV NS3プロテアーゼの触媒ドメインが欠失している、単離されたHCV融合タンパク質。
【請求項61】
上記HCV NS3プロテアーゼは、本質的に、NS3全長タンパク質のN末端の88アミノ酸に後に続くHCV NS3の262アミノ酸(配列番号20の第1115位〜第1376位)からなる請求項60に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項62】
上記HCV Coreの疎水性のC末端配列は、切断されている請求項60に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項63】
上記HCV Coreの配列は、本質的に、HCV Coreの全長配列の第2位〜第140位のアミノ酸(配列番号20の第2位〜第140位)からなる請求項62に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項64】
上記HCV Coreの配列は、グルタミン酸およびアスパラギン酸の2つのアミノ酸を含むように付加されている請求項60に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項65】
上記HCV Coreの配列は、G−G−G−H−H−H−H−H−Hのアミノ酸配列(配列番号10)を含むように付加されている請求項60に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項66】
上記HCV NS3プロテアーゼは、N末端に、配列番号9に示されるアミノ酸配列(MADEAP)が連結されている請求項60に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項67】
本質的に、配列番号2からなる請求項60に記載の単離された融合タンパク質。
【請求項68】
本質的に、配列番号4、6、8、12、14、16、および18からなる群より選択される核酸配列からなる核酸配列によってコードされる、単離された融合タンパク質。
【請求項69】
請求項60〜68のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項70】
請求項69に記載の単離された核酸分子を含む、組換え核酸分子。
【請求項71】
ウィルスベクターである請求項70に記載の組換え核酸分子。
【請求項72】
請求項71に記載の組換え核酸分子が導入された、組換え細胞。
【請求項73】
腫瘍細胞である請求項72に記載の組換え細胞。
【請求項74】
酵母細胞である請求項72に記載の組換え細胞。
【請求項75】
(a)請求項60〜68のいずれか1項に記載のHCV融合タンパク質と、
(b)薬学的に許容可能な担体とを含む、ワクチン。
【請求項76】
請求項60〜68のいずれか1項に記載のHCV融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を含む、ワクチン。
【請求項77】
HCV抗原から動物を保護するための製剤において、請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを使用する方法。
【請求項78】
HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発するための製剤において、請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを使用する方法。
【請求項79】
HCVに感染する危険がある個体群を免疫するための製剤において、請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを使用する方法。
【請求項80】
HCVに感染している個体群を治療するための製剤において、請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを使用する方法。
【請求項81】
C型肝炎ウィルス(HCV)感染から動物を保護する方法であって、
HCVに感染している動物、またはHCVに感染する危険がある動物に、請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを投与することを含み、
上記ワクチンの上記動物への投与により、HCV感染もしくは該動物へのHCV感染により生じる少なくとも1つの症状を軽減または抑制する、方法。
【請求項82】
HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発するための方法であって、
請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを動物に投与することを含む、方法。
【請求項83】
HCVに感染している個体群において、HCV抗原に対する抗原特異的な細胞性免疫応答を誘発するための方法であって、
請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを上記個体群に投与することを含む、方法。
【請求項84】
HCVに感染する危険がある個体群をHCVに対して免疫する方法であって、
請求項60〜68のいずれか1項に記載のワクチンを、上記個体群に投与することを含む、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図14H】
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【図14I】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【公表番号】特表2008−516610(P2008−516610A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537026(P2007−537026)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/037499
【国際公開番号】WO2006/044923
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(505226437)グローブイミューン,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】