説明

酵母を用いてシスチンからシステインおよび/またはグルタチオンを製造する方法

本発明は、シスチンを微生物に接触させるステップを含んでなる、シスチンをシステインおよび/またはグルタチオンに転換する方法を提供する。本発明はまた、少なくとも1.8mg/gのシステインを含んでなる酵母抽出物、および少なくとも1.3mg/gのシステインを含んでなる酵母自己溶解物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、シスチンからシステインおよび/またはグルタチオンを製造する方法に関する。
【0002】
[背景技術]
市販されるシステインの主要原料はシスチンである。シスチンを電気化学的に還元して、システイン(cystein、;時に「cysteine」とも綴られる)にすることができる。この方法は高価かつ複雑である。特開平3−180188号公報は、ヒドロゲナーゼ活性があるアルカリ抵抗性酵素の溶液を使用して、アルカリ性条件下でシステインをシスチンから製造する方法について記載する。特開平2−092294号公報は、ヒドロゲナーゼ活性がある酵素溶液を使用して、システインをシスチンから製造する方法について記載する。
【0003】
[発明の説明]
意外にも出願人らは、シスチンを微生物と接触させることで、システインおよび/またはグルタチオンを生成され得ることを発見した。したがって第1の態様では、本発明は、シスチンを微生物と接触させるステップと、システインおよび/またはグルタチオンを回収するステップを含んでなる、シスチンからシステインおよび/またはグルタチオンを製造する方法を提供する。
【0004】
好ましい実施態様では、本発明の方法の温度は0〜100℃である。好ましくは温度は20〜80℃、より好ましくは30〜70℃、なおもより好ましくは35〜65℃、最も好ましくは40〜60℃である。温度が低すぎる(すなわち0℃未満である)場合、シスチンからシステインおよび/またはグルタチオンへの転換が起きない、またはわずかな程度しか起きない場合がある。加えて低温ではシスチンの溶解度が低く、それは溶液中に少なすぎるシスチンをもたらすかもしれない。温度が高すぎる(すなわち100℃を超える)場合、シスチンからシステインおよび/またはグルタチオンへの転換が起きない、またはわずかな程度しか起きない場合がある。
【0005】
微生物は、細胞内にグルタチオンの形態でシステインを貯蔵してもよい。したがってシスチンと微生物の接触中には、システインだけでなくグルタチオンもまた形成されてもよい。本発明の第1の態様の段階次第で、システインのみ、グルタチオンのみ、または両者の組み合わせが検出されてもよい。グルタチオンの生成は、システインもまた生成したが、グルタチオンに転換されたことを意味する。
【0006】
本発明の方法のpHは、好ましくは2〜10である。好ましくはpHは3〜9、より好ましくは4〜8、なおもより好ましくは5〜7である。
【0007】
好ましい実施態様では、本発明の方法は工業規模で実施される。本発明の説明全体を通じて、工業規模工程または工業工程は、≧10L、好ましくは≧100L、より好ましくは≧1m、≧5m、なおもより好ましくは≧10m、最も好ましくは≧25m、好ましくは250m未満の体積規模の工程を包含するものと理解されてもよい。
【0008】
本発明の方法では、あらゆるタイプの微生物を使用してもよい。好ましくは微生物は、シスチンからシステインおよび/またはグルタチオンへの転換に適する。食品および飼料用途に適したものなどの細菌および真菌微生物が好ましい。好ましい微生物は食品等級である実態を有し、したがってヒト消費のための食品に安全に応用し得るものである。本発明の方法で使用するのに適した微生物の例としては、トリコデルマ(Trichoderma)またはアスペルギルス(Aspergillus)などの糸状菌、および酵母が挙げられる。好ましくは微生物は酵母である。サッカロミセス(Saccharomyces)、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)またはカンジダ(Candida)属に属する酵母株が好ましく使用される。サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母株、例えばサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)株がなおもより好ましい。適切な細菌微生物の例としては、クロストリジウム(Clostridia)、エシェリキア(Escherichia)、そしてメタノバクテリウム(Methanobacterium)やメタノサルシナ(Methanosarcina)などの古細菌が挙げられる。
【0009】
好ましい実施態様では、本発明の方法の微生物は発酵培地中にある。シスチンを生きている(生)微生物と接触させてもよく、それは発酵培地中のシステインおよび/またはグルタチオン形成をもたらしてもよく、またはそれは、その中にシスチンが存在せずおよび/またはそれにシスチンが添加されていない発酵で得られる微生物と比較して、システインおよび/またはグルタチオン含量が増大している微生物(すなわち微生物細胞)をもたらしてもよい。好ましくはシスチンが、好ましくは発酵開始時に発酵培地に添加される。発酵は、例えばタンパク質加水分解産物の酵母抽出物を含有する富栄養培地を使用して実施してもよいが、合成または最少培地を使用してもよい。合成または最少培地は、例えばシスチン以外のイオウ源を除外することで、またはこのようなイオウ源の濃度を可能な限り低く保つことで、微生物がシスチンをシステインおよび/またはグルタチオンに転換するよう刺激する培地組成物を合成し得る利点を有し得る。例えば発酵培地にスルフェート(硫酸塩)を添加しないことが、有利であり得る。合成または最少培地は、成長に必要な通常のビタミン、補助因子、および微量元素を含んでなってもよい。当業者は異なる各種微生物の成長にビタミン、補助因子、および微量元素が必要であることを知っているが、それらは発酵または微生物学便覧にもまた列挙されており、したがって当業者によって過度の負担なしに容易に見出され得る。
【0010】
別の実施態様では、死滅しているが無傷の微生物にシスチンを接触させてもよい。例えば死滅処理後、例えば発酵の終わりに、死滅しているが無傷の微生物にシスチンを接触させてもよい。死滅しているが無傷の微生物は、例えば90〜100℃で熱ショックを与えることによって得られてもよく、それは透過性(「漏出」)細胞をもたらしてもよい。
【0011】
さらに別の実施態様では、シスチンを溶解微生物と接触させてもよい。例えば酵母抽出物の生成中に、シスチンを溶解微生物と接触させてもよい。溶解生物は、細胞壁画分(細胞壁)と可溶性画分からなる。細胞壁を溶解微生物として使用することは、本発明の方法後に、それらをシステインおよび/またはグルタチオンから単離し再使用し得ることから、有利であり得る。溶解微生物は、機械的、化学的、または酵素的に処理することで得られてもよい。機械的処理としては、均質化技術が挙げられる。この目的で、高圧ホモジナイザーの使用も可能である。その他の均質化技術としては、例えば砂および/またはガラスビーズなどの粒子との混合、または製粉装置(例えばビーズミル)の使用が挙げられる。処理はまた、細胞を加熱することで実施してもよい。化学処理剤としては、塩、酸またはアルカリおよび/または1つ以上の界面活性剤または洗剤の使用が挙げられる。化学処理剤は、システインまたはグルタチオンの分解または変性をもたらし得るので、あまり好ましくない。酵素処理は、セルラーゼ、グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、キチナーゼ、プロテアーゼおよび/またはペクチナーゼを使用して実施してもよい。処理の併用もまた可能である。
【0012】
好ましい実施態様では、溶解生物は細胞壁(例えば細胞壁の形態)である。細胞壁は酵母自己溶解物の一部であってもよいが、また細胞内容物から分離されてもよい。
【0013】
好ましい実施態様では、本発明の方法中に、還元剤および/または補助因子が存在する。還元剤および/または補助因子を添加することは、方法の速度および/または転換および/または収率を向上させ得る。還元剤および/または補助因子は、好ましくは、(還元)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、(還元)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、(還元)リポアミド、(還元)フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、(還元)フラビンモノヌクレオチド(FMN)、(還元)金属イオン、およびHからなる群から選択される。
【0014】
別の実施態様では、本発明の方法中に1つ以上の酵素が存在する。酵素は、好ましくは、プロテアーゼ、システイン還元酵素、ヒドロゲナーゼ、およびリポアミドデヒドロゲナーゼからなる群から選択される。好ましくは1つ以上の酵素が微生物に添加される。
【0015】
一実施態様では、補助因子再生系が存在する。このような系は、酵素によって酸化され得る基質と共に、通常は酸化還元酵素である酵素からなってもよい。補助因子再生系の例は、グルコースデヒドロゲナーゼ/グルコースおよびギ酸デヒドロゲナーゼ/ギ酸である。補助因子再生系は、シスチンからシステインまたはグルタチオンへの転換に必要であってもよく、またはそれは前記転換を増大または向上させてもよく、またはそれはより長い期間にわたり進行する工程をもたらしてもよい。
【0016】
別の態様では、本発明は、好ましくは、全乾燥物質を基準にして少なくとも1.8mg/gのシステインを含んでなる、システインおよび/またはグルタチオンに富んだ酵母抽出物を提供する。Food Chemical Codexは、「酵母抽出物」を次のように定義する。「酵母抽出物は酵母細胞の水溶性構成要素を含んでなり、その組成物は主としてアミノ酸、ペプチド、炭水化物、および塩である。酵母抽出物は食用酵母中に存在する天然酵素による、または食品等級酵素の添加による、ペプチド結合の加水分解を通じて生成される」。システインおよびグルタチオンは、還元性糖類との反応による加工香料調製の主要原料である。米国特許第4,592,917号明細書は、還元性糖類と、アミノ酸(ロイシン)と、システインであってもよいイオウ含有物質とを反応させることによる、茹でチキン香料の調製について記載する。酵母抽出物は長年にわたり、タンパク質、ペプチド、システインなどのアミノ酸、脂肪、ミネラル、およびBビタミンの原料として知られている。システインに富んだ酵母抽出物は、加工香料を製造するための適切なシステインまたはグルタチオン原料になるであろう。好ましくは本発明の酵母抽出物中のシステインの量は、全乾燥物質を基準にして、少なくとも4.6mg/g、4.7mg/g、より好ましくは少なくとも5mg/g、5.1mg/g、6.1mg/g、6.2mg/g、なおもより好ましくは少なくとも6.7mg/g、6.8mg/gである。好ましくは本発明の酵母抽出物は、いかなる添加グルタチオンまたはシステインも含まない。
【0017】
好ましい実施態様では本発明の酵母抽出物は、NaCl非含有乾燥物質重量を基準にして、少なくとも1%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる。5’−リボヌクレオチド、特に5’−IMPおよび5’−GMPは、それらの香味増強特性が知られている。それらは特定の各種食品において、よい風味と旨みを増強できる。この現象は、「口当たり」またはウマミ(umami)と記述される。5’−リボヌクレオチドに富んだ酵母抽出物は、通常、スープ、ソース、マリネード、および香味調味料に添加される。好ましくは、本発明の酵母抽出物中の5’−リボヌクレオチドの量は、NaCl非含有乾燥物質重量を基準にして、少なくとも2%w/w、3%、4%、より好ましくは少なくとも6、8、10%w/w、なおもより好ましくは少なくとも12%、14%、16%、なおもより好ましくは少なくとも18%、20%、22%、最も好ましくは少なくとも25%w/wである。本発明の酵母抽出物中の5’−リボヌクレオチドの重量百分率(%w/w)は、組成物のNaCl非含有乾燥物質重量を基準にして、5’−リボヌクレオチドの二ナトリウム塩七水和物(2Na.7Aq)として計算される。NaCl非含有とは、酵母抽出物がNaClを含有し得ないことを意味しないが、%w/w計算のためにNaClが酵母抽出物から除外されていることを意味する。後者の計算は、当業者に知られている方法によって実施することができる。
【0018】
別の態様では、本発明は、好ましくは全乾燥物質を基準にして少なくとも1.2mg/gw/wのシステインを含んでなる、システインおよび/またはグルタチオンに富んだ酵母自己溶解物を提供する。Food Chemical Codexは、自己溶解酵母を次のように定義する。「自己溶解酵母は、食品等級酵母から得られる、濃縮され、抽出されていない、部分的可溶性消化物である。可溶化は、酵母細胞の酵素加水分解または自己消化によって達成される。自己溶解酵母は、酵母細胞全体に由来する、可溶性および不溶性双方の構成要素を含有する」。酵母自己溶解物は、酵母抽出物中に存在する全ての関心のある構成要素に加えて、可溶性画分から分離されていない関心のある細胞壁構成要素もまた含有するので、酵母自己溶解物は「酵母抽出物」とは異なる。細胞壁からの関心のある構成要素の例はβ−グルカン、マンノプロテイン、および酵母脂質画分である。これらの構成要素は、油っこさや満腹感などの口当たり属性を引き起こし、または増強し得る。酵母自己溶解物は、タンパク質、ペプチド、システインなどのアミノ酸、脂肪、ミネラル、およびBビタミンの原料として、長年にわたって知られている。システインに富んだ酵母自己溶解物は、加工香料を製造するための適切なシステインまたはグルタチオン原料になるであろう。本発明の酵母自己溶解物は、クリーム酵母から、または全発酵ブロス、すなわち発酵残渣を含む酵母細胞から得られてもよい。好ましくは本発明の酵母自己溶解物は、50〜95の乾燥固体比を有する。乾燥固体比が50〜95の酵母自己溶解物を生成する方法は、国際公開第2009/007424号パンフレットに記載される。
【0019】
好ましくは、本発明の酵母自己溶解物中のシステインの量は、全乾燥物質を基準にして、少なくとも3.3mg/g、より好ましくは少なくとも3.6mg/g、4.4mg/mL、なおもより好ましくは少なくとも4.8mg/gである。好ましくは本発明の酵母自己溶解物の5’−リボヌクレオチドの量は、NaCl非含有乾燥物質重量を基準にして、少なくとも2%w/w、3%、4%、より好ましくは少なくとも6、8、10%w/w、なおもより好ましくは少なくとも12%、14%、16%、なおもより好ましくは少なくとも18%、20%、22%、最も好ましくは少なくとも25%w/wであり、NaCl非含有については上で定義される。
【0020】
システインおよびグルタチオンは、例えばNMR、例えば高圧LC(HPLC)などの液体クロマトグラフィー(LC)、または質量分析法(LCMS)併用LC、または(HP)LC−MSMSを使用して、いくつかの方法によって測定されてもよい。
【0021】
システインはまた、M.K.Gaitonde,Biochemical Journal(1967年),vol.104,p.627〜633に記載されるように、ニンヒドリンを使用して測定されてもよい。
【0022】
システインおよび/またはグルタチオンは、当該技術分野で知られている技術によって回収してもよい。例えばシステインおよび/またはグルタチオンを遠心分離によって回収してもよく、それによって微生物をペレットとして廃棄し、システインおよび/またはグルタチオンを上清中で回収するか、または濾過によって回収してもよく、それによって微生物を残余分(または濾過ケーク)として濾液中に回収される。シスチンを生微生物または死滅しているが無傷の微生物と接触させる場合、システインおよび/またはグルタチオンを回収するのに先立って、システインおよび/またはグルタチオンを放出させるために、微生物細胞を溶解させることが好ましい場合がある。システインおよび/またはグルタチオンは、例えば遠心分離および(限外)濾過によって、主に細胞壁からなる固体画分を含んでなる溶解微生物懸濁液から回収してもよい。当業者は、細胞壁を構成する前記固体画分が、幾分かのシステインまたはグルタチオンもまた含んでなってもよいことを理解するであろう。したがってできる限り多くのシステインおよびグルタチオンを回収するためには、固体画分を1回以上洗浄することが好ましい場合がある。
【0023】
[実施例]
[実施例1]
酵母自己消化中のシステイン生成
バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)からのエンドプロテアーゼ(デンマーク国のノボザイムズ(Novozymes,Denmark)からのアルカラーゼ(Alcalase))を添加して、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からのクリーム酵母(乾燥固形分18.2%)をpH5.9および51℃で自己消化させた。自己消化中、自己消化開始時(t=0時間)または自己消化開始4時間後(t=4時間)のどちらかに、シスチン(2%w/w)、還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH、1%w/w)および/またはグルコース(1%w/w)を添加し、添加量は全て表1に従った、全乾燥重量を基準にしたw/wである。
【0024】
自己消化の20時間後に、pH調節せずに遠心分離によって固体液体分離を実施した。乾燥物質の収率は70%であった。NMRおよびHPLCを使用して、酵母細胞からの可溶性構成要素を含有する上清をシステイン含量(mg/g乾燥物質)について分析した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】



【0026】
[実施例2]
酵母細胞壁および酵母抽出物によるシステイン生成
サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)からのおよそ2kgのクリーム酵母(乾燥固形分19.9%w/wの酵母懸濁液)を51℃で5分間で加熱処理した。引き続いてNaOHを使用して懸濁液のpHを6.0に調節した。乾燥物質を基準にして0.0068g/gの量で)、枯草菌(Bacillus subtilis)(Bacillus subtilus)セリンエンドプロテアーゼ(デンマーク国のノボザイムズからアルカラーゼとして得られる)を添加して、3.5時間インキュベーションし、自己溶解物を得て、酵母懸濁液を自己消化させた。引き続いてHS0を使用して自己溶解物のpHを5.1に低下させ、自己溶解物をおよそ18時間インキュベートした。次に自己溶解物を4400rpmで15分間遠心分離し、細胞壁を含んでなるペレットと酵母抽出物である上清を得た。ペレットを冷水で2回洗浄し、水に再懸濁して同一条件下で遠心分離した。上清を廃棄し、細胞壁を含んでなるペレットを水に再懸濁して、懸濁液中の細胞壁の最終濃度を細胞壁の全乾燥重量を基準にして7.7%w/wにした。酵母抽出物の乾物含量は15%w/wであった。
【0027】
150gの酵母抽出物に、シスチン(1.2g)、グルコース(1.3g)、グルコースデヒドロゲナーゼ(10U/g)、および酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(0.5mM)を添加した。150gの細胞壁懸濁液に、シスチン(0.6g)、グルコース(0.7g)、グルコースデヒドロゲナーゼ(10U/g)、および酸化ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(0.5mM)を添加した。表2を参照されたい。pHを6.5に調節した。次に細胞壁懸濁液および酵母抽出物を35℃でおよそ18時間インキュベートした。M.K.Gaitonde,Biochemical Journal(1967年),vol.104,p.627〜633に記載されるように、ニンヒドリン試薬を使用してシステインを分光光度法で測定した。
【0028】
グルコースデヒドロゲナーゼは、米国カリフォルニア州94063レッドウッドシティ(Redwood City,CA 94063,USA)200 Penobscot DriveのCodexis,Incから得た。
【0029】
【表2】



【0030】
[実施例3]
発酵中のシステイン生成
サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、100mLの振盪フラスコ内で、表3に従ったミネラル上で成長させた。ビタミン、補助因子、および微量元素は別々に添加した。
【0031】
【表3】



【0032】
培地を160℃で180分間にわたり加熱滅菌した。インキュベーション温度は30℃であり、発酵時間は24時間であった。各フラスコを二連(AおよびB)で発酵させた。その他の条件は表4に列挙される。システインおよびシスチンは表5に従って添加した。
【0033】
【表4】



【0034】
【表5】



【0035】
発酵の終わりに、増殖の指標として600nmにおけるブロスの吸光度を測定した。その後ブロスを2つの部分に分割した。1つの部分はシステインおよび/またはグルタチオンを放出させるために10分間沸騰させた。これは細胞懸濁液をもたらした。乾燥と引き続く秤量によって、この細胞懸濁液の乾物含量を測定した。別の部分は濾過した。得られた残余分を廃棄して透明な濾液を得た。t=0(接種後)とt=24時間(表6)の双方で、システインについて濾液と細胞懸濁液の双方を分析した。
【0036】
【表6】



【0037】
ドイツ国ダルムシュタット(Darmstadt,Germany)のメルク(Merck)からのZIC−HILICカラムを使用した、WatersからのHPLC−MSMSシステムを使用して、システインを測定した。13C標識システインを内部基準として使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シスチンを微生物に接触させるステップと、システインおよび/またはグルタチオンを回収するステップを含んでなる、シスチンからシステインおよび/またはグルタチオンを生成する方法。
【請求項2】
前記微生物が酵母である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶解微生物が細胞壁である、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
前記微生物が発酵培地中にある、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記シスチンが前記発酵培地に添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
還元剤および/または補助因子が存在する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の酵素が存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素が、プロテアーゼ、システイン還元酵素、ヒドロゲナーゼ、およびリポアミドデヒドロゲナーゼからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
全乾燥物質を基準にして少なくとも1.8mg/gのシステインを含んでなる、酵母抽出物。
【請求項10】
NaCl非含有乾燥物質重量を基準にして少なくとも1%w/wの5’リボヌクレオチドを含んでなる、請求項9に記載の酵母抽出物。
【請求項11】
全乾燥物質を基準にして、少なくとも1.3mg/gw/wのシステインを含んでなる、酵母自己溶解物。
【請求項12】
NaCl非含有乾燥物質重量を基準にして、少なくとも1%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる、請求項11に記載の酵母自己溶解物。

【公表番号】特表2013−505712(P2013−505712A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530289(P2012−530289)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064309
【国際公開番号】WO2011/039156
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】