説明

酵母を用いるスクアレン生成のための方法および組成物

イソプレノイド(スクアレンを含む)を生成するための組成物および方法を提供する。本明細書に記載するある観点および態様では、遺伝子転換された酵母およびその使用法を提供する。ある観点および態様では、遺伝子転換された酵母はイソプレノイド、好ましくはスクアレンを産生する。また、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母を使用するスクアレンの生成法も提供する。本発明はまた、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母によって産生されたスクアレンも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許仮出願第61/263,775号(標題“Methods and Compositions for Producing Squalene Using Yeast”、2009年11月23日出願。参照によりその全体が全ての目的において本明細書に組み込まれる)に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の属する分野
酵母を用いるイソプレノイド(例えばスクアレン)の生成のための方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
以下の発明の背景に関する記載は単に本発明に関する理解を促すために提供するものであり、本発明の従前技術を記述する、またはそれを構成すると認めるものではない。
【0004】
イソプレノイド(例えばスクアレン)は、商業上重要な脂質である。それらは優れた潤滑性、酸化安定性、低流動点、低凝固点、高引火点、および易生分解性を有する。スクアレンは、現在、オリーブ油または寒冷水域に生息するサメの肝油からの抽出によって、高単位原価で生産されている。単位原価が高いため、スクアレンおよびスクアラン(スクアレンの完全に水素化された誘導体)の採算性のある用途としては、小規模の市場用途(例えば腕時計の潤滑油、医薬品/栄養補助食品、化粧品、香水、および高額商品の化学中間物)に限られている。
【0005】
しかしながら、生分解性潤滑油、潤滑油添加剤、および油圧油として、かなりの市場可能性がある。これらの製品の生分解性は、環境に配慮すべき適用、例えば農業用途、または多量の潤滑油もしくは油圧油が環境中に放出されうる場合に、特に重要である。生分解性潤滑油、潤滑油添加剤、および油圧油の市場可能性は非常に大きく、年間500万メートルトンのオーダーであると推定される。
【0006】
植物および動物油脂由来の生分解性潤滑油、潤滑油添加剤、および油圧油が利用可能であるが、それらには欠点がある。それらは一般に、相対的に凝固点が高く(すなわち、寒冷時には固化する)、また、高温条件下で使用するには引火点が低すぎる(すなわち、標準的な高温エンジン条件下で分解または発火する)。
【0007】
従って、費用効率が高いスクアレンの製造法が所望されており、これによってスクアレンおよびスクアランの大量生産、並びに生分解性潤滑油、潤滑油添加剤、および油圧油における広範な使用が可能となり得る。
【0008】
Changら(Appl. Microbiol. Biotechnol., 2008, 78, 963-72)は、「大量のスクアレンおよびいくつかの多価不飽和脂肪酸を産生する」野生型酵母、Pseudozyma属JCC207の発見について報告している。Changらの報告によれば、米国グアム近海で採取した海水からPseudozyma属JCC207を単離したが、Pseudozyma属JCC207が新種であるか、または、P. regulosaもしくはP. aphidisの変種であるかは明らかではない。報告によれば、「(Pseudozyma属JCC207の)スクアレン産生効率を異なる条件下で検討した」。
【0009】
Dow AgroSciences社のUsing Yeast Fermentation to Produce Cost-Effective and Biodegradable Lubricants(http://statusreports.atp.nist.gov/reports/95-01-0148PDF.pdf)の開示によれば、「当社は、遺伝子工学を利用して油性酵母の代謝特性を改変し、酵母の生合成によるイソプレンの産生能力を向上させることを提案した」。特に、以下の4つの酵素を標的としている:ACCase、ヒドロキシメチルグルタリルCoAレダクターゼ(HMGR)、スクアレンシンターゼ、およびスクアレンエポキシダーゼ。
【0010】
米国特許第5,460,949号は、「酵母におけるスクアレンおよび特定のステロールの蓄積を増加させる方法」を開示している。特に、「HMG-CoAレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベル増加により、スクアレンおよびステロール蓄積が増加する」ことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,460,949号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Changら(Appl. Microbiol. Biotechnol., 2008, 78, 963-72)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、酵母からスクアレンを生成するための組成物および方法を提供する。
【0014】
ある観点および態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母によって産生されるイソプレノイド(例えばスクアレン)量は、イソプレノイド生合成経路中の1つまたはそれ以上の酵素の変異導入、改変、および/または活性変更の結果として増加する。例えばアセチルCoAカルボキシラーゼ(または「ACCase」)、HMG-CoAレダクターゼ、スクアレンエポキシダーゼ、スクアレンシンターゼ、ATPクエン酸シンターゼ、メバロン酸キナーゼ(例えばY. lipolyticaメバロン酸キナーゼ(Genolevures YALI0B16038g))、グリセロールキナーゼ(例えばY. lipolyticaグリセロールキナーゼ(Genolevures YALI0F00484g))、および/または5-アミノレブリン酸シンターゼ(例えばSaccharomyces cerevisiae HEM1遺伝子にコードされる)の改変、変異導入、または活性変更を行ってもよい。
【0015】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子修復オリゴ核酸塩基を使用して酵素中に変異を導入することによって、改変型酵素を発現する遺伝子転換された酵母を生成する。ある態様では、該方法は、目的の標的遺伝子に特異的な変異を含有する遺伝子修復オリゴ核酸塩基を、当該分野で公知の多くの方法(例えばエレクトロポレーション、LiOAc、遺伝子銃、スフェロプラスト、および/またはアグロバクテリウム。例えばMcClelland, C.M., Chang, Y.C.,およびKwon-Chung, K.J. (2005) Fungal Genetics and Biology 42:904-913参照)のいずれかによって酵母細胞に導入し、変異型酵素を有する細胞を同定することを含む。
【0016】
本発明のある観点では、本明細書に開示する遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母から抽出されるイソプレノイドを提供する。関連する観点では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母から抽出されるスクアレンを提供する。
【0017】
別の観点では、イソプレノイド(好ましくはスクアレン)の生成法を提供する。特定の観点では、該方法は、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母の提供、および同酵母からのスクアレンの抽出を含む。ある態様では、該方法は、(遺伝子転換された、または遺伝子転換されていない)酵母を抗真菌剤(例えばテルビナフィンのようなアリルアミン抗真菌剤)に暴露すること、および同酵母からスクアレンを抽出することを含む。ある態様では、該方法は、遺伝子転換された酵母(例えば本明細書に記載するもの)を抗真菌剤(例えばテルビナフィンのようなアリルアミン抗真菌剤)に暴露すること、および同酵母からスクアレンを抽出することを含む。ある態様では、該方法は、遺伝子転換されていない酵母(例えば本明細書に記載するもの)を抗真菌剤(例えばテルビナフィンのようなアリルアミン抗真菌剤)に暴露すること、および同酵母からスクアレンを抽出することを含む。
【0018】
本明細書に開示する、抗真菌剤(例えばテルビナフィンのようなアリルアミン抗真菌剤)を含む方法および組成物の特定の態様では、抗真菌剤(例えばテルビナフィンまたは他の抗真菌剤)を以下の、またはそれ以上の濃度で添加または含有することができる:約1μg/ml;または約5μg/ml;または約10μg/ml;または約11μg/ml;または約12μg/ml;または約12.5μg/ml;または約13μg/ml;または約15μg/ml;または約16μg/ml;または約20μg/ml;または約25μg/ml;または約30μg/ml;または約40μg/ml;または約50μg/mlまたはそれ以上。本明細書に開示する、抗真菌剤(例えばテルビナフィンのようなアリルアミン抗真菌剤)を含む方法および組成物の特定の態様では、抗真菌剤(例えばテルビナフィンまたは他の抗真菌剤)を以下の範囲の濃度で添加または含有することができる:約0.5-100μg/ml;または0.5-50μg/ml;または1-50μg/ml;または5-50μg/ml;または8-50μg/ml;または10-50μg/ml;または12-50μg/ml;または15-50μg/ml;または15-50μg/ml;または25-50μg/ml;または1-25μg/ml;または5-25μg/ml;または10-25μg/ml;または10-20μg/ml;または10-15μg/ml。
【0019】
ある観点では、遺伝子転換されたイソプレン産生酵母を提供する。ある態様では、遺伝子転換された酵母はスクアレンを産生する。
【0020】
別の観点では、遺伝子転換された酵母を提供し、同酵母は、対応する野生型酵母に比較して高レベルのスクアレンを産生するように遺伝子転換されている。本発明の上記の観点のある態様では、遺伝子転換された酵母は1つまたはそれ以上の変異を有する1つまたはそれ以上改変型酵素を発現する。上記の観点のある態様では、遺伝子転換された酵母中の1つまたはそれ以上の酵素の発現レベルは、対応する野生型酵母に比較して高い、または低い。関連する態様では、遺伝子転換された酵母は1つまたはそれ以上の変異を有する1つまたはそれ以上の改変型酵素を発現し、遺伝子転換された酵母中の1つまたはそれ以上の酵素の発現レベルは、対応する野生型酵母に比較して高い、または低い。ある好ましい態様では、本明細書で提供する遺伝子転換された酵母は、遺伝子修復オリゴ塩基を用いて酵素に変異を導入することによって遺伝子転換される。ある態様では、本明細書で提供する遺伝子転換された酵母は、酵素をコードする遺伝子の翻訳開始部位、またはその近傍に1つまたはそれ以上の変異を導入し、酵素の発現を増加または低下させることによって遺伝子転換を行う(例えば米国特許出願10/411,969および11/625,586に報告されている)。ある態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母中で改変された酵素には、アセチルCoAカルボキシラーゼ(または「ACCase」)、HMG-CoAレダクターゼ、スクアレンエポキシダーゼ、スクアレンシンターゼ、ATPクエン酸リアーゼ、ATPクエン酸シンターゼ、メバロン酸キナーゼ(例えばY. lipolyticaメバロン酸キナーゼ(Genolevures YALI0B16038g))、グリセロールキナーゼ(例えばY. lipolyticaグリセロールキナーゼ(Genolevures YALI0F00484g))、および5-アミノレブリン酸シンターゼが含まれる。
【0021】
核酸塩基は塩基、すなわちプリン、ピリミジン、またはそれらの誘導体もしくは類似体を含有する。ヌクレオシドはペントースフラノシル部分(例えば必要により置換されたリボシドまたは2'-デオキシリボシド)を含有する核酸塩基である。ヌクレオシドはいくつかの結合部分のうちの一つによって結合してもよく、それらの部分はリンを含有しても含有しなくてもよい。未置換型ホスホジエステル結合で結合したヌクレオシドをヌクレオチドと称する。本明細書で使用する「核酸塩基」には、ペプチド核酸塩基、ペプチド核酸のサブユニット、およびモルホリン核酸塩基、並びにヌクレオシドおよびヌクレオチドが含まれる。
【0022】
オリゴ核酸塩基は核酸塩基のポリマーであり、このポリマーはワトソン・クリック塩基対形成によって相補配列を有するDNAにハイブリダイズできる。オリゴ核酸塩基鎖は5'および3'末端を一つずつ有し、これらはポリマーの最末端核酸塩基である。ある種のオリゴ核酸塩基鎖は、全ての型の核酸塩基を含有してもよい。オリゴ核酸塩基化合物は、相補的であってワトソン・クリック塩基対形成によってハイブリダイズする1つまたはそれ以上のオリゴ核酸塩基鎖を含有する化合物である。核酸塩基はデオキシリボ型またはリボ型のいずれかである。リボ型核酸塩基はペントースフラノシルを含有する核酸塩基であり、2'炭素はヒドロキシル、アルキルオキシ、またはハロゲンで置換されたメチレンである。デオキシリボ型核酸塩基は、リボ型核酸塩基以外の核酸塩基であって、ペントースフラノシル部分を含有しない全ての核酸塩基を含む。
【0023】
一般的に、オリゴ核酸塩基ストランドには、オリゴ核酸塩基鎖、およびオリゴ核酸塩基鎖のセグメントまたは領域の両方が含まれる。オリゴ核酸塩基ストランドは3'末端および5'末端を有する。オリゴ核酸塩基ストランドが鎖と同一の広がりを有する場合、このストランドの3'および5'末端はまた、鎖の3'末端および5'末端でもある。
【0024】
本明細書で使用する「遺伝子修復オリゴ核酸塩基」という用語は、混合2本鎖オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド非含有分子、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド、および他の遺伝子修復分子を含むオリゴ核酸塩基を表す(これについては以下に詳述する)。
【0025】
ある態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母は油性酵母から誘導される。ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母は、Cryptococcus curvatus、Yarrowia lipolytica、Rhodotorula glutinus、およびRhorosporidium toruloidesから成る群から選択される酵母から誘導される。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母は、Cryptococcus curvatus、Yarrowia lipolytica、およびRhodotorula glutinusから成る群から選択される酵母から誘導される。関連する態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母はCryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinusから成る群から選択される酵母から誘導される。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母はYarrowia lipolyticaから誘導されたものではない。ある態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母はATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、およびYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である。
【0026】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はアセチルCoAカルボキシラーゼ(または「ACCase」)である。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のアセチルCoAカルボキシラーゼは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して低下するように;またはその活性および/または発現が除去されるように改変される。他の態様では、アセチルCoAカルボキシラーゼを、その基質選択性が変更されるように改変してもよい。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、アセチルCoAカルボキシラーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して低下するが、活性は除去されないように改変される。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のアセチルCoAカルボキシラーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の約90%;または約80%;または約70%;または約60%;または約50%;または約40%;または約30%;または約20%;または約10%;または約5%まで低下するように改変される。関連する態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のアセチルCoAカルボキシラーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の約90-95%;または約80-90%;または約70-80%;または約60-70%;または約50-60%;または約40-50%;または約30-40%;または約20-30%;または約10-20%;または約5-10%;または約2-5%となるように改変される。
【0027】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はHMG-CoAレダクターゼである。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のHMG-CoAレダクターゼは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加するように改変される。他の態様では、HMG-CoAレダクターゼを、その基質選択性が変更されるように改変してもよい。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のHMG-CoAレダクターゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加するように改変される。
【0028】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はスクアレンエポキシダーゼである。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のスクアレンエポキシダーゼは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して低下するように;またはその活性および/または発現が除去されるように改変される。他の態様では、スクアレンエポキシダーゼを、その基質選択性が変更されるように改変してもよい。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、スクアレンエポキシダーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して低下するが、活性は除去されないように改変される。ある態様では、スクアレンエポキシダーゼを、テルビナフィンに対する感受性の増加に関係する1つもしくはそれ以上の変異または1つもしくはそれ以上の変異のホモログを含有するように改変する。ある態様では、酵母はSaccharomyces cerevisiaeではなく、スクアレンエポキシダーゼを、Saccharomyces cerevisiaeのERG1遺伝子中にテルビナフィンに対する感受性の増加に関係する以下の変異の1つまたはそれ以上のホモログを含有するように改変する:G30S、L37P、およびR269G(例えばTurnowsky、2005、2007、および2008参照)。ある態様では、酵母はY. lipolyticaであり、スクアレンエポキシダーゼを、Saccharomyces cerevisiaeのERG1遺伝子中にテルビナフィンに対する感受性の増加に関係する以下の変異の1つまたはそれ以上のホモログを含有するように改変する:G30S、L37P、およびR269G(例えばTurnowsky、2005、2007、および2008参照)。ある態様では、酵母スクアレンエポキシダーゼ遺伝子を、野生型遺伝子の合成および置換によって、またはRTDSによる変異導入によって本明細書に記載するように改変する。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のスクアレンエポキシダーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現に比較して約90%;または約80%;または約70%;または約60%;または約50%;または約40%;または約30%;または約20%;または約10%;または約5%まで低下するように改変される。関連する態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のスクアレンエポキシダーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の約90-95%;または約80-90%;または約70-80%;または約60-70%;または約50-60%;または約40-50%;または約30-40%;または約20-30%;または約10-20%;または約5-10%;または約2-5%となるように改変される。
【0029】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はスクアレンシンターゼである。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のスクアレンシンターゼは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加するように改変される。他の態様では、スクアレンシンターゼを、その基質選択性が変更されるように改変してもよい。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のスクアレンシンターゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加するように改変される。
【0030】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はATPクエン酸リアーゼである。ある好ましい態様では、ATPクエン酸リアーゼ遺伝子(例えばYarrowia lipolytica ATPクエン酸リアーゼ;Genoleveres YALI0D24431gおよびYALI0E34793g)の一方または両方のサブユニットを本明細書に記載するように改変する。ある態様では、1つのサブユニットのホロ酵素を含む動物ATPリアーゼ遺伝子の挿入および/または異種発現によって、改変された酵母中のATPクエン酸リアーゼの活性を増加させる。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のATPクエン酸リアーゼは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加するように改変される。ある好ましい態様では、遺伝子転換した酵母は、遺伝子転換された酵母中のATPクエン酸リアーゼの活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加するように改変される。
【0031】
本明細書に記載する組成物および方法のある態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母において改変される酵素はATPクエン酸シンターゼである。好ましくは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加される。
【0032】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はメバロン酸キナーゼ(例えばY. lipolyticaメバロン酸キナーゼ(Genolevures YALI0B16038g))である。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のメバロン酸キナーゼ(例えばY. lipolyticaメバロン酸キナーゼ(Genolevures YALI0B16038g))は、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加するように改変される。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のメバロン酸キナーゼ(例えばY. lipolyticaメバロン酸キナーゼ(Genolevures YALI0B16038g))の活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加するように改変される。
【0033】
ある好ましい態様では、本明細書に記載する遺伝子転換された酵母において改変される酵素はグリセロールキナーゼ(例えばY. lipolyticaグリセロールキナーゼ(Genolevures YALI0F00484g))である。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母中のグリセロールキナーゼ(例えばY. lipolyticaグリセロールキナーゼ(Genolevures YALI0F00484g))は、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加するように改変される。ある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は、遺伝子転換された酵母中のグリセロールキナーゼ(例えばY. lipolyticaグリセロールキナーゼ(Genolevures YALI0F00484g))の活性および/または発現が、対応する野生型酵母の活性および/または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加するように改変される。
【0034】
本明細書に記載する組成物および方法のある態様では、遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母において改変される酵素は(例えばSaccharomyces cerevisiae HEM1遺伝子にコードされる)5-アミノレブリン酸シンターゼである。好ましくは、その活性および/または発現が、対応する野生型酵母に比較して増加される。
【0035】
上記の観点のある好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は遺伝子的に転換された酵母である;他の好ましい態様では、遺伝子転換された酵母は遺伝子導入酵母である。更なる態様では、遺伝子導入改変および遺伝子改変の両方を含む酵素である。
【0036】
ある観点および態様では、酵母(例えば本明細書に記載するように遺伝子転換された酵母、または遺伝子転換されていない酵母)を含む組成物を提供し、ここで、総脂質含有量の少なくとも10%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも20%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも25%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも28%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも30%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも32%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも35%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも37%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも38%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも40%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも42%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも45%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも47%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも50%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも52%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも55%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも57%がスクアレンである;または総脂質含有量の少なくとも60%もしくはそれ以上がスクアレンである。
【0037】
本明細書に開示する種々の観点の更なる態様では、上記または下記の遺伝子転換された、遺伝子導入された、または遺伝子転換されていない酵母から抽出されるイソプレノイド(例えばスクアレン)を提供する。
【0038】
本明細書で使用する「遺伝子転換された酵母」または「遺伝子改変された酵母」という用語は、1つまたはそれ以上の遺伝子改変(例えば導入遺伝子および/または、1つもしくはそれ以上の意図的変異を含有する改変型酵素)を有する酵母をいう。それらの意図的変異により、野生型酵素とは異なる活性を有する改変型酵素が得られうる。それらの相違には基質特異性または活性レベルの相違がある。本明細書の使用では、「遺伝子導入酵母」は「遺伝子転換された酵母」の一種である。
【0039】
本明細書で使用する「野生型酵母」という用語は、遺伝子転換されていない(すなわち遺伝子導入されていない、または遺伝子的に改変されていない)酵母をいう。野生型酵母には野生型酵母、および特定の特性を獲得するように選択交配させた酵母が含まれる。
【0040】
「遺伝子導入酵母」という用語は、別の酵母種または非酵母種由来の遺伝子を有する酵母をいう。それらの遺伝子を「導入遺伝子」と称する場合もある。
【0041】
本明細書で使用する「標的遺伝子」という用語は、改変すべき酵素をコードする遺伝子をいう。
【0042】
「油性酵母」という用語は、菌体から抽出可能な脂質を細胞乾燥重量(cdw)の少なくとも約20%含有する酵母をいう。少なくとも約20% cdwのレベルの脂質を蓄積できる能力は、特定の属に限られたものではない;約20% cdw以上の脂質はLipomyces lipofer、L. starkeyi、L. tetrasporus、Candida lipolytica、C. diddensiae、C. paralipolytica、C. curvata、Cryptococcus albidus、Cryptococcus laurentii、Geotrichum candidum、Rhodotorula graminus、Trichosporon pullulans、Rhodosporidium toruloides、Rhodotorula glutinus、Rhodotorula gracilis、およびYarrowia lipolyticaで報告されている。例えばTatsumiら, 米国特許第4,032,405号およびRattray, Microbial Lipids, Vol. 1 (1998)参照。
【0043】
本明細書で使用する「約」という用語は、数量に関してプラス/マイナス10%を意味する。例えば「約3%」とは、2.7-3.3%を包含し、「約10%」は9-11%を包含する。
【0044】
特に記載しない限り、本明細書に記載するパーセンテージはいずれも重量パーセントである。
【0045】
本発明の他の特長および利点は、以下の好ましい態様に関する記述および特許請求の範囲から明白になる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
酵母の種類
本明細書に開示する組成物および方法は、多くの酵母種および株のうちの、任意のものに基づくことができる。ある態様では、酵母は油性酵母である。例えば酵母はCryptococcus curvatus(例えばATCC 20508)、Yarrowia lipolytica(例えばATCC 20688またはATCC 90811)、Rhodotorula glutinus(例えばATCC 10788またはATCC 204091)、およびRhorosporidium toruloidesであってもよい。発明者は、Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinisが他の酵母(例えばYarrowia lipolytica)と比較して、広範な基質上で非常に高密度まで増殖し、多くの培養条件下で多量の総脂質を産生することを発見した。従って、特定の態様では、Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinisは、本明細書に開示する組成物および方法に特に有益である。Yarrowia lipolyticaに特異的な多くの遺伝子ツール(例えば形質転換プロトコル、選択マーカー)が開発されている;そのため、ある態様では、Yarrowia lipolyticaは本明細書に開示する組成物および方法に特に有益である。本明細書に開示する組成物および方法のある態様では、酵母(遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母)はYarrowia lipolytica株、例えばATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgであってもよい。
【0047】
遺伝子修復オリゴ核酸塩基
本発明は、以下に詳述するコンフォメーションおよび化学的性質を有する「遺伝子修復オリゴ核酸塩基」を用いて実施することができる。本発明の「遺伝子修復オリゴ核酸塩基」には、混合2本鎖オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド非含有分子、1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド、および以下に記載する特許および特許文献に記載される、他の遺伝子修復分子がある。本発明の「遺伝子修復オリゴ核酸塩基」は、公開されている科学文献および特許文献に、以下の別称でも記載されている:「遺伝子組換え(recombinagenic)オリゴヌクレオチド」、「RNA/DNAキメラオリゴヌクレオチド」、「キメラオリゴヌクレオチド」、「混合2本鎖オリゴヌクレオチド(MDON)」、「RNA DNAオリゴヌクレオチド(RDO)」「遺伝子ターゲッティング・オリゴヌクレオチド」、「ゲノプラスト(genoplast)」、「1本鎖改変型オリゴヌクレオチド」、「1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド変異ベクター」、「2本鎖変異ベクター」、および「ヘテロ2本鎖変異ベクター」。
【0048】
Kmiecの米国特許第5,565,350号(Kmiec I)およびKmiecの米国特許第5,731,181号(Kmiec II)(参照により本明細書に組み込まれる)に報告されているコンフォメーションおよび化学的性質を有するオリゴ核酸塩基は、本発明の「遺伝子修復オリゴ核酸塩基」として使用するのに好適である。Kmiec Iおよび/またはKmiec IIの遺伝子修復オリゴ核酸塩基は2つの相補的な鎖を含有し、その一方はRNAヌクレオチドの少なくとも1つのセグメント(「RNAセグメント」)であって、他方のDNAヌクレオチド鎖と塩基対を形成する。
【0049】
Kmiec IIは、プリンおよびピリミジン塩基含有非ヌクレオチドでヌクレオチドを置換できることを開示している。本発明に使用できる更なる遺伝子修復オリゴ分子は以下に報告されている:米国特許第5,756,325号;第5,871,984号;第5,760,012号;第5,888,983号;第5,795,972号;第5,780,296号;第5,945,339号;第6,004,804号;および第6,010,907号、並びに国際特許出願PCT/US00/23457;そして国際公開WO 98/49350;WO 99/07865;WO 99/58723;WO 99/58702;およびWO 99/40789(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0050】
ある態様では、遺伝子修復オリゴ核酸は混合2本鎖オリゴヌクレオチドであり、同混合2本鎖オリゴヌクレオチドのRNAヌクレオチドは2'-ヒドロキシルをフルオロ、クロロ、またはブロモで機能的に置換するか、または2'-Oに置換基を配することによってRNase耐性となっている。好適な置換基にはKmiec IIに報告されている置換基がある。他の置換基には、米国特許第5,334,711号(Sproat)に報告されている置換基、そして欧州特許EP 629 387およびEP 679 657(総称、Martinアプリケーション)に報告されている置換基がある(これらは参照により本明細書に組み込まれる)。本明細書の使用では、リボヌクレオチドの2'-フルオロ、クロロ、もしくはブロモ誘導体、またはMartinアプリケーションもしくはSproatに記載される置換基で置換された2'-OHを有するリボヌクレオチドを「2'-置換型リボヌクレオチド」と称する。本明細書で使用する「RNAヌクレオチド」とは、2'-ヒドロキシルまたは2'-置換型ヌクレオチドで、混合2本鎖オリゴヌクレオチドの他方のヌクレオチドに未置換型ホスホジエステル結合またはKmiec IもしくはKmiec IIに記載される非天然型結合で結合しているものをいう。本明細書で使用する「デオキシリボヌクレオチド」とは2'-Hを有するヌクレオチドであり、これは遺伝子修復オリゴ核酸の他のヌクレオチドに未置換型ホスホジエステル結合またはKmiec IもしくはKmiec IIに記載される非天然型結合で結合している。
【0051】
本発明のある態様では、遺伝子修復オリゴ核酸は、未置換型ホスホジエステル結合のみで結合した混合2本鎖オリゴヌクレオチドである。別の態様では、結合は置換型ホスホジエステル、ホスホジエステル誘導体、およびKmiec IIに報告されているリンを含有しない結合による。更に別の態様では、混合2本鎖オリゴヌクレオチド中のRNAヌクレオチドはそれぞれ、2'-置換型ヌクレオチドである。ある好ましい態様では、2'-置換型リボヌクレオチドは2'-フルオロ、2'-メトキシ、2'-プロピルオキシ、2'-アリルオキシ、2'-ヒドロキシルエチルオキシ、2'-メトキシエチルオキシ、2'-フルオロプロピルオキシ、および2'-トリフルオロプロピルオキシ置換型リボヌクレオチドである。より好ましい態様では、2'-置換型リボヌクレオチドは2'-フルオロ、2'-メトキシ、2'-メトキシエチルオキシ、および2'-アリルオキシ置換型ヌクレオチドである。別の態様では、混合2本鎖オリゴヌクレオチドは未置換型ホスホジエステル結合で結合している。
【0052】
単一種の2'-置換型RNAヌクレオチドのみを有する混合2本鎖オリゴヌクレオチドの合成がより簡便であるが、本発明の方法は、2種またはそれ以上のRNAヌクレオチドを有する混合2本鎖オリゴヌクレオチドを用いて実施することができる。RNAセグメントの機能は2つのRNAトリヌクレオチド間にデオキシヌクレオチドを導入することによって起こる離断に影響されないため、RNAセグメントという用語は「不連続型RNAセグメント」なども包含する。不連続的でないRNAセグメントを連続型RNAセグメントと称する。別の態様では、RNAセグメントはRNase耐性ヌクレオチドおよび未置換型2'-OHヌクレオチドを交互に含有してもよい。混合2本鎖オリゴヌクレオチドは、好ましくは100未満、より好ましくは85未満、かつ50より多いヌクレオチドを含有する。第1のストランドおよび第2のストランドはワトソン・クリック塩基対を形成している。ある態様では、混合2本鎖オリゴヌクレオチドのストランドはリンカー(例えば1本鎖ヘキサ、ペンタ、またはテトラヌクレオチド)で共有結合しており、そのため第1および第2のストランドはそれぞれ、1つの3'末端および1つの5'末端を有する1つのオリゴヌクレオチド鎖のセグメントである。3'および5'末端を保護するために、「ヘアピン・キャップ」の添加によって3'および5'末端ヌクレオチドを隣接するヌクレオチドとワトソン・クリック塩基対形成させてもよい。更に、第2のヘアピン・キャップを同3'および5'末端から遠位にある第1および第2ストランド間の接合部に配することによって、第1および第2ストランド間のワトソン・クリック塩基対形成を安定化させてもよい。
【0053】
第1および第2ストランドは、標的遺伝子の2つのフラグメントと相同な(すなわち標的遺伝子と同じ配列を有する)2つの領域を含有する。相同領域はRNAセグメントのヌクレオチドを含有し、DNAセグメントを連結させる1つまたはそれ以上のDNAヌクレオチドを含有してもよく、また、介在DNAセグメント内に存在しないDNAヌクレオチドを含有してもよい。2つの相同領域は、標的遺伝子の配列と異なる配列を有する領域(「非相同領域」と称する)で分離され、それぞれはこの非相同領域に隣接する。非相同領域は1、2、または3個のミスマッチ・ヌクレオチドを含有してもよい。ミスマッチ・ヌクレオチドは連続しているか、または、標的遺伝子と相同な1個もしくは2個のヌクレオチドで分離されていてもよい。あるいはまた、非相同領域は、1、2、3、または5個以下のヌクレオチドから成る挿入部分を含有してもよい。あるいはまた、混合2本鎖オリゴヌクレオチド配列の標的遺伝子配列との相違は、混合2本鎖オリゴヌクレオチドから1、2、3、または5個以下のヌクレオチドが欠失していることだけであってもよい。この場合、混合2本鎖オリゴヌクレオチドのヌクレオチドはいずれも非相同領域内に存在しないが、それでもなお、非相同領域の長さおよび位置は欠失の長さであると見なされる。置換(単数または複数)が企図される場合、2つの相同領域に相補的な標的遺伝子のフラグメント間の長さは、非相同領域の長さと同一である。非相同領域が挿入部分を含有する場合、相同領域は混合2本鎖オリゴヌクレオチド中で、それに相補的な相同フラグメントが遺伝子中で存在するより遠位に分離される。非相同領域が欠失をコードする場合はこの逆である。
【0054】
混合2本鎖オリゴヌクレオチドのRNAセグメントは、それぞれ相同領域(すなわち、標的遺伝子のフラグメントと配列が同一である領域)の一部であり、それらのセグメントは、好ましくは共に少なくとも13個のRNAヌクレオチド、好ましくは16-25個のRNAヌクレオチド、更に好ましくは18-22個のRNAヌクレオチド、または最も好ましくは20個のヌクレオチドを含有する。ある態様では、相同領域のRNAセグメント(複数)は、介在DNAセグメントによって分離され、それぞれがこのDNAセグメントに隣接してもよい、すなわち、「DNAセグメントによって連結されて」もよい。ある態様では、非相同領域の各ヌクレオチドは、介在DNAセグメントのヌクレオチドである。混合2本鎖オリゴヌクレオチドの非相同領域を含有する介在DNAセグメントを「変異誘発セグメント」と称する。
【0055】
本発明の別の態様では、遺伝子修復オリゴ核酸塩基は、国際特許出願PCT/US00/23457、米国特許第6,271,360号、第6,479,292号、および第7,060,500号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示される1本鎖オリゴデオキシヌクレオチド変異ベクター(single stranded oligodeoxynucleotide mutational vector;SSOMV)である。SSOMVの配列は以下に報告されている変異ベクターと同じ原理に基づく:米国特許第5,756,325号;第5,871,984号;第5,760,012号;第5,888,983号;第5,795,972号;第5,780,296号;第5,945,339号;第6,004,804号;および第6,010,907号、並びに、国際公開WO 98/49350;WO 99/07865;WO 99/58723;WO 99/58702;およびWO 99/40789。SSOMVの配列は、標的配列と相同な2つの領域を含有し、それらの領域は所望の遺伝子改変を含有する領域(変異誘発領域と称する)によって分離されている。変異誘発領域は、標的配列中の相同な領域を分離する配列と同じ長さであって、異なる配列を有してもよい。それらの変異誘発領域により、置換が起きてもよい。あるいはまた、SSOMV中の相同領域は互いに連続的であって、同じ配列を有する標的遺伝子中の同領域は1、2、またはそれ以上のヌクレオチドで分離されていてもよい。それらのSSOMVにより、SSOMV中に存在しないヌクレオチドが標的遺伝子から欠失される。最後に、相同領域と同一である標的遺伝子配列は、標的遺伝子中では隣接していて、SSOMV配列中では1、2、またはそれ以上のヌクレオチドで分離されていてもよい。それらのSSOMVにより、標的遺伝子配列に挿入が起こる。
【0056】
SSOMVのヌクレオチドは未修飾のホスホジエステル結合で結合したデオキシリボヌクレオチドである。ただし、3'末端および/もしくは5'末端ヌクレオチド間結合、または2つの3'末端および/もしくは5'末端ヌクレオチド間結合はホスホロチオエートまたはホスホアミデートであってもよい。本明細書で使用するヌクレオチド間結合はSSOMVのヌクレオチド間の結合であって、3'末端ヌクレオチドまたは5'末端ヌクレオチドとブロッキング置換基(上記参照)との間の結合は含まない。特定の態様では、SSOMVは21から55デオキシヌクレオチド長であり、従って、相同領域の全長は少なくとも20デオキシヌクレオチドであり、少なくとも2つの相同領域はそれぞれ、少なくとも8デオキシヌクレオチド長である。
【0057】
SSOMVは、標的遺伝子のコーディング鎖または非コーディング鎖のいずれかに相補的であるように設計してもよい。所望する変異が単一塩基の置換である場合、変異誘発ヌクレオチドはいずれもピリミジンであるのが好ましい。所望する機能が得られるのであれば、変異誘発ヌクレオチドおよび相補鎖中の標的となるヌクレオチドがいずれもピリミジンであるのが好ましい。トランスバージョン変異をコードする(すなわちCまたはT変異誘発ヌクレオチドが、それぞれ相補鎖中のCまたはTヌクレオチドとミスマッチである)SSOMVは特に好ましい。
【0058】
オリゴデオキシヌクレオチドに加え、SSOMVはリンカーを介して5'末端炭素に結合する5'ブロッキング置換基を含有してもよい。リンカーの化学的性質は重要ではない。ただし、その長さは少なくとも6原子長であるのが好ましく、リンカーはフレキシブルであるべきである。種々の非毒性置換基、例えばビオチン、コレステロール、または他のステロイドもしくは非インターカレート・カチオン性蛍光色素を使用してもよい。SSOMVを生成するための試薬として特に好ましいのは、Glen Research社(バージニア州スターリング)から販売されているCy3TMおよびCy5TMという試薬であり、これらはオリゴヌクレオチドへの導入の際、それぞれ3,3,3',3'-テトラメチルN,N'-イソプロピル置換されたインドモノカルボシアニンおよびインドジカルボシアニン色素を生成する、ブロッキングされたホスホロアミダイトである。Cy3が最も好ましい。インドカルボシアニンがN-オキシアルキル置換されている場合、5'末端リン酸とのホスホジエステルとしてオリゴデオキシヌクレオチドの5'末端に便宜に結合できる。色素およびオリゴデオキシヌクレオチド間の色素リンカーの化学的性質は重要ではなく、合成の簡便性によって選択する。市販のCy3ホスホルアミダイトを説明書に従って使用する場合、得られる5'修飾はブロッキング置換基およびリンカーから成り、それらは合わせてN-ヒドロキシプロピルN'-ホスファチジルプロピル3,3,3',3'-テトラメチルインドモノカルボシアニンとなる。
【0059】
ある好ましい態様では、インドカルボシアニン色素はインドール環の3および3'位における四置換体である。理論に拘束されるものではないが、これらの置換により、色素がインターカレート色素になることが防止される。これらの位置の置換基の種類は重要ではない。SSOMVは、3'ブロッキング置換基を更に含有してもよい。この場合も、3'ブロッキング置換基の化学的性質は重要ではない。
【0060】
異種発現
ある態様では、異種発現によって外来遺伝子または内在性遺伝子の過剰コピーを酵母(例えばYarrowia lipolytica)中で発現させる。酵母における異種発現は、当該分野で公知の方法を用いて行うことができる。異種発現を用いる酵母中での外来遺伝子または内在性遺伝子の過剰コピーの発現は、以下を含有するベクターの使用を伴ってもよい:(a)転写開始のためのプロモーター配列、(b)転写終了のための終結配列、および(c)選択マーカー。異種発現および発現ベクターは、例えば以下に報告されているものであってもよい:Madzak, C., Gaillardin, C.,およびBeckerich, J-M., 2004 Heterologous Protein Expression and Secretion in the Non-Conventional Yeast Yarrowia lipolytica: a review, Journal of Biotechnology 109:63-81。本明細書の組成物および方法のある態様では、ベクターはpYLEX1(Yeastern)である。使用できる選択マーカーの非制限的な例としてura3、lys5、trp1、leu2、ade1、ハイグロマイシン耐性をコードするE.coli hph、およびSaccharomyces cerevisiae由来のSUC2がある。使用できるプロモーターの非制限的な例としてpLEU2、pXPR2、pPOX2、pPOT1、pICL1、pG3P、pMTP、pTEF、およびpRPS7がある。ある態様では、プロモーターはhp4dプロモーターであり、これは強力な構成的ハイブリッド・プロモーターである(米国特許第6,083,717号(2000年7月4日出願))。使用できる終結配列の非制限的な例としてXPR2t、LIP2t、およびPHO5tがある。
【0061】
ある態様では、1つまたはそれ以上のYarrowia lipolytica LYS1(Genolevures YALI0B15444g)、TRP1(Genolevures YALI0B07667g)、およびADE1(Genolevures YALI0E33033g)遺伝子を選択マーカーとして使用する。ある態様では、1つまたはそれ以上のYarrowia lipolytica URA3(GenBank: U40564.1)またはLEU2(Genoluveres YALI0C00407)を選択マーカーとして使用する。
【0062】
ある態様では、組み込み発現ベクターは、Yarrowia lipolyticaの解糖系遺伝子、アルカンもしくはグリセロール利用遺伝子、XPR2、ACC1、HMG1、ERG1、およびERG9から成る群から選択される1つもしくはそれ以上のプロモーターおよび/またはターミネーター配列を含む。
【0063】
Yarrowia lipolyticaの一方または両方のサブユニットに関するある態様では、Yarrowia lipolyticaにおいてATPクエン酸リアーゼ(Genoleveres YALI0D24431gおよびYALI0E34793g)の過剰発現を行う。
【0064】
改変型酵素
本明細書に開示する改変型または変異型酵素は、塩基対の変更、挿入、置換などによって改変または変異させることができる。
【0065】
脂肪酸生合成経路およびイソプレノイド生合成経路に関与する酵素をコードする遺伝子は、好ましい変異標的である。ある態様では、標的遺伝子はアシルCoAカルボキシラーゼをコードする。他の態様では、標的遺伝子はHMG-CoAレダクターゼをコードする。他の態様では、標的遺伝子はスクアレンエポキシダーゼをコードする。他の態様では、標的遺伝子はスクアレンシンターゼをコードする。ある態様では、標的遺伝子はATPクエン酸リアーゼをコードする。変異は、酵素の活性を低減もしくは除去する、酵素の活性を向上する、または酵素の活性を変更する(例えば基質選択性を変化させる)ように設計してもよい。
【0066】
野生型油性酵母では、アセチルCoAはアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACCase)を介して脂質生合成に広範に関与する。従ってスクアレン合成に利用可能なアセチルCoAの量を増加するために、ACCaseの酵素発現および比活性を低減させることが望ましい。代表的なACCase遺伝子配列は、Saccharomyces cerevisiaeのACC1遺伝子(アクセッション番号:Z71631)である。従って、ACCaseの細胞内活性を低減させるある態様では、メバロン酸生合成とトリグリセリド生合成との分岐点における酵素によって、油脂合成に分配されるアセチルCoAの量が低減し、それによってイソプレン経路に利用できる量が増加する。
【0067】
HMG-CoAレダクターゼ活性は、イソプレン生合成の律速酵素である。代表的なHMG-CoAレダクターゼ遺伝子配列にはSaccharomyces cerevisiaeのHMG1およびHMG1遺伝子(アクセッション番号:それぞれNC_001145およびNC_001144)がある。従って、ある態様では、HMGR遺伝子を改変して転写の増加、産生されるタンパク質の安定化、および/または生成物によるフィードバック阻害の低減を行うことによって、HMG-CoAレダクターゼ活性が増加される。
【0068】
酵母中のACCase活性の低下および/またはHMG-CoAレダクターゼ活性の増加により、経路の下流酵素の操作を介して、多くの関連するイソプレノイド産物を産生できる、中核となるイソプレノイド産生菌体を作製することができる。
【0069】
スクアレンエポキシダーゼは、ステロール生合成に関与する第1の段階を触媒する。代表的なスクアレンエポキシダーゼ遺伝子配列は、Saccharomyces cerevisiaeのERG1遺伝子(アクセッション番号:NC_001139)である。従って、ある態様では、酵母中のスクアレンエポキシダーゼの活性、阻害剤に対する感受性、および/または発現を、例えば酵素のアミノ酸配列中の触媒的に重要な残基によって減弱させる。
【0070】
スクアレンシンターゼは、2つのC15イソプレン前駆体(ファルネシル2リン酸(FPP))の縮合によるスクアレン合成を触媒する。代表的なスクアレンシンターゼ遺伝子配列は、Saccharomyces cerevisiaeのERG9遺伝子(アクセッション番号:NC_001140)である。従って、ある態様では、酵母中のスクアレンシンターゼの活性および/または発現を増加させる。
【0071】
ATPクエン酸リアーゼ(E.C. 4.1.3.8)は、クエン酸を触媒的に開裂し、アセチルCoAおよびオキサロ酢酸を生成する。アセチルCoAはACCaseによって脂肪酸生合成に利用されるか、またはアセチルCoAアセチルトランスフェラーゼによってイソプレンおよび誘導体(例えばスクアレン)の生成に利用される。
【0072】
メバロン酸キナーゼは、メバロン酸経路中のHMG-CoAレダクターゼの直後の酵素であり、メバロン酸からメバロン酸5リン酸への変換を触媒する。従って、ある態様では、例えば酵素のアミノ酸配列中の触媒的に重要な残基を変更するか、またはその遺伝子量もしくは転写レベルを増加させることによって、酵母中のメバロン酸キナーゼの活性および/または発現レベルを増加させる。
【0073】
グリセロールキナーゼは、ATPからグリセロールへリン酸が転移し、グリセロールリン酸が生成されるのを触媒する。従って、ある態様では、例えば酵素のアミノ酸配列中の触媒的に重要な残基を変更するか、またはその遺伝子量もしくは転写レベルを増加させることによって、酵母中のグリセロールキナーゼの活性および/または発現レベルを増加させる。
【0074】
ある態様では、代謝変化の結果、炭素がアセチルCoAからスクアレンに分配され、この炭素の流れを巡る主な競合経路が減弱され、結果としてスクアレンの産生量が顕著に増加する。
【0075】
遺伝子修復オリゴ核酸塩基の酵母細胞内への送達
任意の公知の方法を本発明の方法に使用して、酵母細胞を遺伝子修復オリゴ核酸塩基で形質転換することができる。代表的な方法として、エレクトロポレーション、LiOAc、遺伝子銃、スフェロプラスト、および/またはアグロバクテリウムの使用がある(例えばMcClelland, C.M., Chang, Y.C.,およびKwon-Chung, K.J. (2005) Fungal Genetics and Biology 42:904-913参照)。
【0076】
ある態様では、エレクトロポレーションによって遺伝子修復オリゴ核酸塩基を酵母細胞に導入する。ある態様では、エレクトロポレーションによって、あらかじめPEG(3350または4000mw)および/または酢酸リチウムで処理した酵母細胞内に遺伝子修復オリゴ核酸塩基を導入する。ある態様では、PEG(3350または4000mw)および/または酢酸リチウムを用いて、遺伝子修復オリゴ核酸塩基を酵母細胞に導入する。
【0077】
本発明の方法にマイクロキャリアを使用するための具体的な条件は、国際公開WO 99/07865、US09/129,298に報告されている。例えば、氷冷マイクロキャリア(60mg/mL)、混合2本鎖オリゴヌクレオチド(60mg/mL)、2.5M CaCl2、および0.1Mスペルミジンを、この順に添加する;混合液を(例えばボルテックスによって)10分間穏やかに撹拌し、室温に10分間放置し、その後直ちにマイクロキャリアを5容量のエタノールに希釈し、遠心分離し、100%エタノールに再懸濁する。この粘性溶液中の典型的な成分濃度は8-10μg/μLのマイクロキャリア、14-17μg/μLの混合2本鎖オリゴヌクレオチド、1.1-1.4MのCaCl2、および18-22mMのスペルミジンである。ある態様では、成分濃度は8μg/μLのマイクロキャリア、16.5μg/μLの混合2本鎖オリゴヌクレオチド、1.3MのCaCl2、および21mMのスペルミジンである。
【0078】
ある態様では、当業者に公知の方法に従って、エレクトロポレーションによって遺伝子修復オリゴ核酸塩基を酵母細胞内に送達することができる(例えばBecker, D. M.およびGuarente, L. High Efficiency Transformation of Yeast by Electroporation. Methods in Enzymology, vol. 194, section [12] pp. 182-186. 1991. Elsevier Academic Press, London参照)。
【0079】
所望の改変型酵素を含有する酵母の選択
改変型酵素を発現する酵母の同定は、多くの方法のいずれを用いて行うことができる。ある方法では、同一実験で選択可能な転換(すなわちマーカー)および選択不能な転換(例えば目的の標的遺伝子)の両方を標的とする遺伝子修復オリゴ核酸塩基(gene repair oligonucleobases;GRON)を用いる、同時転換法を行う。この方法では、GRONが送達されなかった、またはGRONによって指定された転換が伝達されなかった細胞が除去される。非関連遺伝子を標的とするGRONの送達は選択的ではないと考えられるので、ある程度の頻度で、うまく選択された転換を含有するコロニーは、他の標的遺伝子の1つにも転換を有すると考えられる。転換事象は一塩基多型(SNP)分析によって解析される。
【0080】
従って、ゲノムDNAを酵母から抽出し、SNP検出法(例えばアレル特異的ポリメラーゼ連鎖反応(ASPCR))を用いて、各標的に関して個々のDNAサンプルのスクリーニングを行う。陽性酵母中の配列変化を個別に確認するために、標的遺伝子の好適な領域をPCRで増幅し、得られた増副産物を直接シーケンシングするか、またはクローニングして複数の挿入断片をシーケンシングしてもよい。
【0081】
あるいはまた、目的遺伝子への変異導入の同定は、抽出された核酸中の一塩基変異を検出するために設計された多くの分子生物学的方法(例えばPCRおよびシングルヌクレオチドプライマー伸長のような増幅法)のいずれによって行ってもよい。より大きな変異の検出は、変異を導入すべき標的遺伝子領域の増幅およびシーケンシングによって行ってもよい。
【0082】
あるいはまた、改変型酵素を含有する酵母または酵母細胞の同定は、例えば酵母によって産生されるイソプレノイドの組成分析によって行ってもよい。従って、酵母を増殖させ、油脂を抽出し、当該分野で公知の方法(例えばガスクロマトグラフィーまたはHPLC)を用いて分析する。
【実施例】
【0083】
実施例1 Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinis形質転換系
Cryptococcus curvatus(ATCC株20508)およびRhodotorula glutinis(ATCC株10788および204091)形質転換系を作製するために、S. cerevisiaeにカナマイシン耐性を付与するKANMX発現カセット(プロモーター-遺伝子-ターミネーター)を選択マーカーとして用い、菌株をカナマイシン感受性から耐性に転換する(例えばBaudin, A.ら (1993) Nucleic Acids Research (21) 3329-3330参照)。菌株を、発現カセットのみ、並びに、DNA複製起点を含有するR. glutinusが報告するプラスミド(例えばOloke, J.K.およびGlick, B.R. (2006) African Journal of Biotechnology 5(4):327-332参照)の制限フラグメントにライゲートしたKANMXで形質転換した。エレクトロポレーション、LiOAc、遺伝子銃、スフェロプラスト、および/またはアグロバクテリウムによって、DNAをC. curvatusおよびR. glutinisに導入する(McClelland, C.M., Chang, Y.C.,およびKwon-Chung, K.J. (2005) Fungal Genetics and Biology 42:904-913)。
【0084】
実施例2 選択マーカー
Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinisにおいてウラシル要求性変異株を作製するために、細胞を抗代謝物(5-フルオロオロチン酸)を含有する最少量の培地中で培養し、ura3またはura5遺伝子中に変異を有する耐性変異体を選択した。Cryptococcus curvatusの安定な5-FOARコロニー33個およびRhodotorula glutinisの安定な5-FOARコロニー20個をバンクに預託した。Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinis由来の野生型URA3遺伝子をクローニングし、5-FOAR分離株中の変異ura3遺伝子をシーケンシングした。
【0085】
他の栄養要求性マーカーは、Saccharomyces cerevisiaeにおける機能的相補性によってクローニングする(Ho, Y.R.およびChang, M.C. (1988) Chinese Journal of Microbiology and Immunology 21(1):1-8参照)。Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinisからゲノムライブラリーおよび/またはcDNAライブラリーを構築し、ウラシル選択的Saccharomyces発現ベクターにライゲートし、これをYPH500株(MATα ura3-52 lys2-801 ade2-101 trp1-Δ63 his3-Δ200 leu2-Δ1)に形質転換し、リジン、アデニン、トリプトファン、ヒスチジン、およびロイシン原栄養体を選択する。これらの原栄養体から、LYS2、ADE2、TRP1、HIS3、およびLEU2の対応する遺伝子のゲノムまたはcDNA挿入断片からのシーケンシングを行う。
【0086】
実施例2 RTDS法を用いる酵母における遺伝子操作
Yarrowia lipolytica株ATCC 90811(leu2-35 lys5-12 ura3-18 XPR2B)由来のleu2、lys5、およびura3遺伝子の対立遺伝子をPCRによってクローニングし、その配列を野生型対立遺伝子と比較して差異を同定した。
【0087】
ura3では、差異は以下で確認された:1365位(A→G変異。リジンをコードするサイレント変異(AAA→AAG))、1503位(ATCC 90811に余剰配列AAGAA。これによってフレーム変化が起こるが、1511位でインフレームとなって7個のアミノ酸付加となり、その後配列はGenBankのYL URA3として継続)、1511位(ATCC 90811に余剰塩基T)、および1978位(C→T変異。停止変異となり、これによってタンパク質のトランケーションが起こり、カルボキシ末端の24個のアミノ酸が短縮される)。停止(TGA)→R(CGA)の転換によって原栄養性を回復するようにGRONオリゴヌクレオチドを設計し、YlUra3 - YLU40564アミノ酸ナンバリングに基づく264Rを作製した。使用したGRONはYlUra31264/C/40/5’Cy3/3’idC(配列はVCGAGGTCTGTACGGCCAGAACCGAGATCCTATTGAGGAGGH)およびYlUra31264/NC/40/5’Cy3/3’idC(配列はVCCTCCTCAATAGGATCTCGGTTCTGGCCGTACAGACCTCGH)である(V=CY3;H=3'DMT dC CPG)。酢酸リチウム法を用いて10、30、および50μgの各GRONをYarrowia lipolytica株ATCC 90811に形質転換し、ura-2%グルコース上に播種した。コード鎖を用いて設計したGRONによって合計82個のura+コロニーを、非コード鎖を用いて設計したGRONによって6個のコロニーを得、これはギャップ修復オリゴヌクレオチドでの形質転換では一般的なストランドバイアスを示した。18個のコード鎖形質転換体のシーケンシングにより、17個のクローンで意図された変異が確認された。
【0088】
LEU2では、差異は以下で確認された:1710位(更なるCの欠失によってフレームシフトおよびタンパク質の未成熟終結が起こる)、1896位(余剰T)、2036位(T→A変異。終結コドンの後に位置する)、2177位(余剰Tの欠失。終結コドンの後に位置する)。
【0089】
LEU2では、差異は以下で確認された:1092位(G→A、TCG→TCA。保存的置換(セリン))、1278位(G→A、CAG→CAA。保存的置換(グルタミン))、1279位(G→A、GGT→ATT。V→I変化)。
【0090】
このように、変異を種々の目的で用い、原栄養性酵母を栄養要求性に(またはその逆に)転換することができる。
【0091】
Cryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinisにおけるRTDS法の有効性を示すための同様の戦略を、Yarrowia lipolyticaについて記載されているように実施する(ura3変異が原栄養性を回復するように修正される)。
【0092】
ある態様では、Y. lipolyticaにおけるRTDSの有効性を、E. coliハイグロマイシン遺伝子の変異型をそのゲノム内に融合することによって確認してもよい。この型の遺伝子は、G34T点変異を保有し、E12STOP変化をコードしているため、Y. lipolyticaの天然のハイグロマイシン感受性は影響を受けない。この変異を修正するGRONでの形質転換により、Y. lipolytica株は(例えば1000μg/mlまでのハイグロマイシンに対する)耐性を獲得する。また、ハイグロマイシン耐性(HGH)遺伝子における2重変異を構築し、単一のGRONによって修正されるG34T A37T (E12ASTOP K13STOP)、および2つのGRONによって修正されるG34T T149G(E12STOP Y46 STOP)を含有させる。
【0093】
YarrowiaにおけるGRON活性の測定には、野生型Yarrowia lipolyticaのアミノグリコシド系抗生物質、ハイグロマイシンBに対する天然の感受性を用いた。ハイグロマイシンB(hmB)はStreptomyces hygroscopicusによって産生されるアミノシクリトール系抗生物質であり、原核生物および真核生物の両方において、リボソームのトランスロケーションおよびアミノアシルtRNA認識に干渉することによってタンパク質合成を阻害する。E. coli由来のhph遺伝子(別名aph(4))(GENBANK V01499。シクリトール環の4位へのリン酸基の共有結合的付加によってハイグロマイシンBを不活性化するアミノアシリトールホスホトランスフェラーゼをコードする)の導入によって、耐性を付与することができる。Yarrowia lipolytica株Polg(Yeastern由来 Mat a ura3-302::URA3 leu2-270 xpr2-322 axp-2)を、ベクターpyLEX1-2u-ura3-13にクローニングした単一変異(G34TによるE12stop)または2重変異(E12stopK13stop (G34T.A37T))のいずれかを含有するE. coli hph遺伝子(遺伝子はhpd4プロモーターおよびXPR2ターミネーターの制御下にある)で形質転換した。LEU2マーカーによって付与される原栄養性の回復に関する選択の際に、直線化したベクターをゲノムに融合させた。得られた菌株は不全型のハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を保有し(従って、ハイグロマイシン感受性である)、これを、G34TまたはG34T.A37Tのいずれかを修正する以下のGRONによって野生型(ハイグロマイシン耐性)に転換した。
【0094】
E12stopを修復して野生型とするGRON(T34G)
HPH2/C/42/5'Cy3/3'idC
5’Cy3-GAACTCACCGCGACGTCTGTCGAGAAGTTTCTGATCGAAAAG-3’idC
HPH2/NC/42/5'Cy3/3'idC
5’Cy3-HCTTTTCGATCAGAAACTTCTCGACAGACGTCGCGGTGAGTTC-3’idC
E12stopK13stopを修復して野生型とするGRON(T34G T37A)
HPH3/C/43/5'Cy3/3'idC
5’Cy3-CTCACCGCGACGTCTGTCGAGAAGTTTCTGATCGAAAAGTTCG-3’idC
HPH3/NC/43/5'Cy3/3'idC
5’Cy3-CGAACTTTTCGATCAGAAACTTCTCGACAGACGTCGCGGTGAG-3’idC
【0095】
記載するGRONの30μgを用いて単一hph変異株または2重hph変異株を反復して転換し(x6)、これをプールし、100-1000μg/mlのハイグロマイシンを含有するYEPDプレートにアリコートを播種し、シグナル対ノイズ比を最適化した。両株で、「DNA未含有」コントロールに比較して有意数の転換されたと推定されるコロニーが、所定のハイグロマイシン濃度のいずれでも得られた。いずれの菌株でも、非コードGRON鎖に強いバイアスが見られた。考え合わせると、これらの結果は、Yarrowia lipolyticaにおけるハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子標的のGRON転換を示唆しており、更に、2つの変異(T34G T37A)の転換を単一のGRONを用いて行うことができることを示唆している。DNAシーケンシングを行って、野生型遺伝子型に修復されていることを確認する。
【0096】
【表1】

【0097】
実施例3 標的遺伝子のクローニング
NCBIデータベースに収録されているSaccharomycesおよび他の酵母由来のACCase、HMGR、スクアレンシンターゼ、およびスクアレンエポキシダーゼの配列をPCRプライマー源として使用し、対応する遺伝子をCryptococcus curvatusおよびRhodotorula glutinisから、それらに対応する調節領域(プロモーター、ターミネーター)と共にクローニングした。プロモーターの「亢進」変異および「抑制」変異(それぞれ、転写を増加または低下させる)を同定するために、これら4つの遺伝子のプロモーターを相対的に誤りがちな(error-prone)DNAポリメラーゼを用いてクローニングし、プロモーター中に点変異を作製し、それらのフラグメントを、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはβガラクトシダーゼレポーター遺伝子と融合させたベクターにクローニングし、S. cerevisiaeまたはE. coliにおけるインビトロ試験に使用した。プロモーターの「亢進」変異はRTDSによってHMGRおよびスクアレンシンターゼゲノム配列に再導入し、「抑制」変異はゲノムACCaseおよびスクアレンエポキシダーゼ配列中で作製する。R. glutinisおよびC. curvatus中の必須遺伝子(例えばGAPDH、アクチン)由来のプロモーターをクローニングし、外来遺伝子発現に使用する。PCRクローニング用のプライマーは、S. cerevisiae中のこれらの遺伝子との相同性から設計する。
【0098】
実施例4 スクアレン産生量増加のための標的遺伝子の遺伝子操作
ACCase。R. glutinis、C. curvatus、およびそれ以外の酵母中のACCase遺伝子のコピー数を測定する。RTDSを利用し、過剰コピー中の翻訳開始位置の直後に終結コドンを導入することによってACCase発現を低下させる。
【0099】
スクアレンエポキシダーゼ。同様に、S. cerevisiae中のスクアレン蓄積量の増加は、2倍体におけるスクアレンエポキシダーゼの1コピーを破壊させて行う。Kamimura, N., Hidaka, M., Masaki, H.,およびUozumi, T. (1994) Appl. Microb. Biotech. 42: 353-357。R. glutinis、C. curvatus、およびそれ以外の酵母中のスクアレンエポキシダーゼのコピー数を測定し、RTDSを利用し、第1のコピー以降の過剰コピー中の翻訳開始部位の直後に終結コドンを作製または挿入する。
【0100】
ある態様では、テルビナフィン(スクアレンエポキシダーゼの阻害剤)を培地に添加することによってスクアレンエポキシダーゼ活性を減弱させる。ある態様では、スクアレンエポキシダーゼのアミノ酸を変化させて、スクアレンエポキシダーゼのテルビナフィンへの感受性を増加させる(例えばSaccharomyces ERG1上にマップされるG30S、L37P、およびR269Gに相同なアミノ酸変化)。ある態様では、遺伝子合成および相同組換えによる野生型遺伝子の変異型での置換によってアミノ酸を変化させる。他の態様では、RTDSによって野生型遺伝子に変化を導入する。
【0101】
HMGR。Saccharomyces cerevisiaeおよび哺乳動物のHMGR酵素はいずれも、そのリンカー領域にアミノ酸配列を含有し、それらは真核生物において多くの短寿命タンパク質中に存在し、迅速な細胞内代謝回転を受ける(Rogers, S., Wells, R.,およびRechsteiner, M. (1986) Science 234: 364-368;およびChun, K.T., and Simoni, R.D. (1991) J. Biol. Chem. 267(6): 4236-4246)。類似する配列が存在する場合、これをY. lipolytica、R. glutinis、および/またはC. curvatus中で同定し、RTDSを用いて除去し、HMGRタンパク質代謝回転を低減させる。それらの類似配列はS. cerevisiaeのシンターゼ遺伝子中で発見されており、Y. lipolytica、R. glutinis、および/またはC. curvatusのスクアレンシンターゼ遺伝子中にそれらの配列が存在する場合は、これも測定する。Y. lipolytica、R. glutinis、および/またはC. curvatusのスクアレンシンターゼ中に配列が存在する場合、RTDSを用いてこれを除去し、タンパク質代謝回転を低減する。
【0102】
S. cerevisiae中のHMGRは2つの高度に保存されたドメインを含有し、そのN-末端552アミノ酸は膜結合性に関与する。C末端触媒部分のみを含有するようにトランケートされたHMG1タンパク質の過剰発現により、S. cerevisiaeにおけるHMG-CoAの活性が40倍上昇し、スクアレンの蓄積量が乾燥物で5.5%増加した(Polakowski, T.、Stahl, U.、およびLang, C. (1998) Appl. Microbiol. Biotech. 49:66-71)。Y. lipolytica、R. glutinis、およびC. curvatusのHMGRが類似の構造を有するか否かを確認し、有する場合は、可溶性触媒ドメインのみを有するフラグメントを発現させてもよい。
【0103】
HMGRのタンパク質構造およびDNA配列は真核生物において真菌から哺乳動物まで高度に保存されており、膜結合性N-末端ドメインおよび触媒性C-末端ドメインを有する。2つのドメインの境界はYarrowia lipolytica HMG1遺伝子(Genelouvres Yarrowia lipolytica YALI0E04807g)のアミノ酸500-600領域にマッピングされ、ここで疎水特性は疎水性から親水性に移行する。Yarrowia lipolytica HMG1の疎水特性、並びにトランケートしたSaccharomyces cerevisiae(Donald, K.A.G.ら, 1997. Appl. Environ. Micro. 63(9): 3341-3344)およびCandida utilis(Shimada, H.ら, 1998. Appl. Environ. Micro. 64(7):2676-2680)タンパク質のN-末端へのそのホモロジー評価から残基548および544が選択される。従って、ある例では、Yarrowia lipolytica HMG1 IのC末端ドメインのアミノ酸548-1000が発現される。第2の例では、Yarrowia lipolytica HMG1 IのC-末端ドメインのアミノ酸544-1000が発現される。関連する例では、Yarrowia lipolytica HMG1 IのC-末端ドメインのアミノ酸543-1000が発現される;またはYarrowia lipolytica HMG1 IのC-末端ドメインのアミノ酸545-1000が発現される;またはYarrowia lipolytica HMG1 IのC-末端ドメインのアミノ酸546-1000が発現される;またはYarrowia lipolytica HMG1 IのC-末端ドメインのアミノ酸547-1000が発現される;またはYarrowia lipolytica HMG1 IのC-末端ドメインのアミノ酸549-1000が発現される。
【0104】
撹拌フラスコを用いた実験で、Y. lipolytica株PolgにおけるHMGRのC-末端触媒ドメイン(残基543-1000、457アミノ酸)の発現により2%スクアレン/総脂質が産生され、ベクターのみを含有するコントロール株では0%であった。培養器を用いて工程を反復し、拡大培養した。
【0105】
シリアンハムスターでは、HMGR触媒ドメインの活性はAMP依存性キナーゼによるリン酸化によって抑制的に調節され(Omkumar, R.V., Darnay, B.G.,およびRodwell, V.W. (1994) J. Biol. Chem. 269:6810-6814)、同様の調節様態がS. cerevisiaeで報告されている。R. glutinis、C. curvatus、およびそれ以外の酵母中のHMGRタンパク質が同様の調節を受けるか否かを確認し、受ける場合はRTDSを使用してリン酸化部位を除去する。
【0106】
スクアレンシンターゼ。哺乳動物系のスクアレンシンターゼは、SREBP(sterol regulatory element binding proteins;ステロール調節因子結合タンパク質)によって、HMG-CoAシンターゼおよびファネシル2リン酸シンターゼと共に転写レベルで協調的に調節される(Szkopinsda, A., Swiezewska, E.,およびKarst, F (2000) Biochem. Biophys. Res. Comm. 267:473-477)。SREBPは3つの形態で存在し、そのうちの1つはスクアレンシンターゼ・プロモーターに結合している。それらの転写因子および/または結合部位がR. glutinis、C. curvatus、およびそれ以外の酵母中のスクアレンシンターゼ・プロモーター上に存在するか否かを確認し、存在する場合はRTDSを使用してそれらの転写因子および/または結合部位を改変し、スクアレンシンターゼの転写を亢進させる。
【0107】
撹拌フラスコを用いた実験で、Y. lipolytica株PolgにおけるY. lipolyticaスクアレンシンターゼの過剰発現により2%スクアレン/総脂質が産生され、ベクターのみを含有するコントロール株では0%であった。培養器を用いて工程を反復し、拡大培養した。
【0108】
実施例5 Cryptococcus curvatusの増殖条件
Cryptococcus curvatuの増殖を測定し、培地中の細胞量を最大にするのに最適な炭素源を検討した。酵母抽出物に基づくリッチな培地(10g/L 酵母抽出物、20g/L ペプトン)中で、C. curvatusは2-20% w/v グルコースの存在下で良好に増殖し、16% w/v グルコース以上では、4日後に最大レベル55g/Lの細胞乾燥重量(CDW)を得た。同様に、C. curvatusは同じ培地中、3-12% w/v グルコースの存在下でも増殖し、12% w/v グルコースでは、5日後のCDWは40g/Lであった。C. curvatusは、最大3.5% w/vのバイオディーゼルグリセロール(Imperial Western Products社。カリフォルニア州コーチェラ)中でも増殖し、CDWは23g/Lであった。
【0109】
実施例6 スクアレン生成量増加のための標的遺伝子の環境操作
スクアレンの正味の生成量を増加させるために環境操作についての検討を行った。それらには以下がある:(a)オレイン酸、オリーブもしくは他の植物油(単数または複数)、イノシトール、コリン、ソラフェン、フルアジホップ、およびクレトジム、または他のACCase阻害性除草剤を用いるACCaseの発現および/または活性の阻害、(b)テルビナフィン、トルナフテート、およびエルゴステロール、または他のスクアレンエポキシダーゼ阻害性防かび剤を用いるスクアレンエポキシダーゼの発現および/または活性の阻害、(c)(出発培地または追加培地中の)グリセロールに基づく培地のC/N比の操作、(d)培地中の窒素源の変更(有機対無機対単体/複合体)、(e)炭素添加方式の変更(例えばバッチ対流加)、(f)炭素源以外の栄養素を枯渇させた場合の影響の検討、(g)糖、糖アルコール、アルコール、多価アルコール、および有機酸の混合物に添加する炭素源の変更、(h)HMGR阻害性化合物、例えばロバスタチン、または他のスタチン系阻害剤上での増殖に関する選択、および(i)親油性色素もしくは染料の使用、および/または(例えば重量分析法またはガスクロマトグラフィー分析法による)抽出可能な脂質の分析による、培地中での高油生成量に関する選択。
【0110】
例えば、Yarrowia lipolytica ATCC 90904を、0-50μg/mlのテルビナフィンを添加した高炭素/窒素比培地(C/N = 420。Li, Y-H., Liu, B., Zhao, Z-B.,およびBai, F-W. 2006 “Optimized Culture Medium and Fermentation Conditions for Lipid Production by Rhodosporidium toruloides” Chinese Journal of Biotechnology 22(4): 650-656。以下、「CYM001培地」と記載する)中、30℃、300rpmで120時間培養した。12.5μg/mlまたはそれ以上の濃度のテルビナフィンで、最大で総脂質の18.5%のスクアレンが得られた。
【0111】
種々のYarrowia lipolytica株(ATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、およびYeastern polgを含む)を脂質およびスクアレンの生成に使用する。例えば、Yarrowia lipolytica株polg(Yeastern)を、0-50μg/mlのテルビナフィンを添加した高炭素/窒素比培地(C/N = 420。Li, Y-H., Liu, B., Zhao, Z-B.,およびBai, F-W. 2006 “Optimized Culture Medium and Fermentation Conditions for Lipid Production by Rhodosporidium toruloides” Chinese Journal of Biotechnology 22(4): 650-656。以下、「CYM001培地」と記載する)中、30℃、300rpmで120時間培養した。12.5μg/mlまたはそれ以上の濃度のテルビナフィンで、最大で総脂質の38%のスクアレンが得られ、総脂質/細胞乾燥重量は最大51%であった。
【0112】
別の例では、Yarrowia lipolytica ATCC 90904を、0-50μg/mlのオレイン酸を添加したCYM001培地中、30℃、300rpmで120時間培養した。10μl/mlのオレイン酸の添加により、脂質蓄積量が脂質/CDW(細胞乾燥重量)が、無添加の場合の10倍に向上された。
【0113】
更なる例では、Yarrowia lipolytica ATCC 90904を0-200μMのクレトジムを添加したCYM001培地中、30℃、300rpmで120時間培養した。200μMのクレトジムの添加により、60mlフラスコ当たりのスクアレン産生量(mg)が60倍増加した。
【0114】
好気的条件下で、酸素の増加によりS. cerevisiae中のHMG1およびHMG2が差異的に調節され、HMG2の迅速な分解およびHMG1の発現増加が起こることが明らかになっている(Casey, W.M., Keesler, G.A., Parks, L.W. (1992) J. Bact. 174:7283-7288)。出願人の油性酵母中のHMGR遺伝子の数が酸素によって影響を受けるか否かを確認し、受ける場合は、培養機内の酸素レベルを改変することによって、その発現および活性を操作する。
【0115】
「CYM001 Media」(Li, Y-H., Liu, B., Zhao, Z-B.,およびBai, F-W. (2006) Chinese Journal of Biotechnology 22(4):650-656)から出発し、成分および成分濃度を種々に変更し(新たな成分の添加を含む)、細胞増殖、総脂質含量/単位細胞量(%)、およびスクアレン/総脂質(%)を向上させる。評価した培地成分には以下が含まれる:炭素源:グリセロール、グルコース;窒素源:アンモニウム化合物、硝酸塩、アミノ酸;無機塩:カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅;酵母抽出物、脂質前駆体、および脂質合成影響因子:テルビナフィン、クレトジム、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、および消泡剤。評価を行った他の因子には以下が含まれる:接種物のパーセント、培養時間、温度、pH、背圧、溶存酸素(DO)、供給栄養組成、栄養供給方式、および撹拌方式。
【0116】
実施例7 菌株選択
慣例的な菌株選択法を油性酵母に使用し、正味のスクアレン生産性を増加させる。UV、ニトロソグアニジン、またはエタンスルホン酸メチルによって変異させた菌株を高スクアレン蓄積量でスクリーニングおよび/または選択した。また、菌株を逐次選択圧(例えば3%グリセロール含有YEP(15g/L酵母抽出物、5g/Lペプトン)培地またはロバスタチンおよび他の公知のHMGR阻害剤を含有する培地での反復継代培養)に施与する。また、菌株を、種々の量のグリセロールおよび/またはグルコースを含有するCYM001培地、あるいは、ロバスタチンおよび/もしくは他の公知のHMGR阻害剤および/またはスクアレンシンターゼ阻害剤を含有する培地で反復継代し、HMGRおよび/またはスクアレンシンターゼ活性が高い自然発生突然変異体を得る。それらの変異はHMGR、スクアレンシンターゼ、または他の遺伝子中に存在してもよい(「第2部位変異」)。
【0117】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0118】
本明細書に例証的に記載する本発明は、任意の要素(単数または複数)、制限(単数または複数)(これらについては本明細書には具体的に開示していない)を欠いた状態で好適に実施することができる。従って、例えば「含む」、「包含する」、「含有する」等の用語は広義かつ無制限に解釈すべきである。更に、本明細書で使用する用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであり、それらの用語および表現の使用においては、表記および説明する特長の同等物またはその一部のいずれをも除外することを意図せず、認識されるように、本発明の特許請求の範囲内で種々の改変を行うことができる。
【0119】
従って、好ましい態様および更なる特長によって本発明を具体的に開示したが、当業者は本明細書において具体化した本発明の改変、改良、および変更の手段をとってもよく、それらの改変、改良、および変更は本発明の範囲内に含まれるとみなされることは理解されるべきである。本明細書に記載する物質、方法、および実施例は好ましい態様を表すもので、例証であって、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0120】
本発明について、本明細書において広範かつ一般的に記載した。包括的な開示の中に含まれるより狭い分類および亜群もそれぞれ本発明の一部を成す。これには、その属から対象物を除外する条件または負の限定付きの本発明の包括的な説明が含まれ、除外されたものが本明細書に具体的に記載されているか否かは関係がない。
【0121】
更に、本発明の特長または観点をマルクーシュ群で記載する場合、当業者に認識されるように、本発明はマルクーシュ群の任意の個別メンバーまたはメンバーのサブグループでも記述される。
【0122】
本明細書に記載する全ての文献、特許出願、特許、および他の文献は、そのそれぞれが個別で参照により組み込まれるのと同じ程度に、参照によりその全体が明確に本明細書に組み込まれる。不一致がある場合は、本明細書(定義を含む)が制御する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高レベルのイソプレノイドを産生するように改変された酵母を含む組成物であって;該酵母は、ATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である組成物。
【請求項2】
遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母から抽出されたイソプレノイドを含有する組成物であって、該酵母は、ATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である組成物。
【請求項3】
遺伝子転換された酵母を含有する組成物であって、該遺伝子転換された酵母は1つまたはそれ以上の意図的変異を有する1つまたはそれ以上の改変型酵素を発現し、該1つまたはそれ以上の意図的変異は該酵素中の所定の位置に存在し、該酵母は野生型酵母に比較して多量のイソプレノイドを産生し、かつ、該酵母はATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である組成物。
【請求項4】
遺伝子転換された酵母によってスクアレンを生成する方法であって、該方法は、イソプレノイド生合成経路中の1つまたはそれ以上の酵素の活性または発現を増加または低下させることを含み、該酵素の活性または発現は1つまたはそれ以上の意図的変異によって増加または低下され、該1つまたはそれ以上の意図的変異は該酵素中の所定の位置に存在し、該遺伝子転換された酵母は野生型酵母に比較して多量のイソプレノイドを産生し、該酵母は、ATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である、上記方法。
【請求項5】
該イソプレノイドはスクアレンである、請求項1−4のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項6】
該酵母は対応する野生型酵母に比較して高レベルのスクアレンを産生する、請求項1−5のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項7】
該遺伝子転換された酵母は油性酵母に由来する、請求項1−6のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項8】
該改変された酵素はイソプレノイド生合成経路中のものである、請求項3−7のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項9】
該改変された酵素は、アセチルCoAカルボキシラーゼ(「ACCase」)、HMG-CoAレダクターゼ、スクアレンエポキシダーゼ、スクアレンシンターゼ、ATPクエン酸リアーゼ、ATPクエン酸シンターゼ、メバロン酸キナーゼ、グリセロールキナーゼ、および5-アミノレブリン酸シンターゼから成る群から選択される改変された酵素である、請求項3−8のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項10】
該改変された酵素はアセチルCoAカルボキシラーゼである、請求項3−9のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項11】
該アセチルCoAカルボキシラーゼの活性または発現が低減されている、請求項9−10のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項12】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の約90%、または約80%、または約70%、または約60%、または約50%、または約40%、または約30%、または約20%、または約10%、または約5%まで低減される、請求項9−11のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項13】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の90-95%;または80-90%;または70-80%;または60-70%;または50-60%;または40-50%;または約30-40%;または約20-30%;または約10-20%;または約5-10%;または約2-5%まで低減される、請求項9−11のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項14】
該改変された酵素はHMG-CoAレダクターゼである、請求項3−13のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項15】
該HMG-CoAレダクターゼの活性または発現が増加されている、請求項3−14のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項16】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加される、請求項14−15のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項17】
該改変された酵素はスクアレンエポキシダーゼである、請求項3−16のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項18】
該スクアレンエポキシダーゼの活性または発現が低減されている、請求項3−17のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項19】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の約90%;または約80%;または約70%;または約60%;または約50%;または約40%;または約30%;または約20%;または約10%;または約5%まで低減される、請求項17−18のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項20】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の90-95%;または80-90%;または70-80%;または60-70%;または50-60%;または40-50%;または約30-40%;または約20-30%;または約10-20%;または約5-10%;または約2-5%である、請求項17−18のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項21】
該改変された酵素はスクアレンシンターゼまたはATPクエン酸リアーゼである、請求項3−20のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項22】
該スクアレンシンターゼまたはATPクエン酸リアーゼの活性または発現が増加されている、請求項3−21のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項23】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加される、請求項21−22のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項24】
該改変された酵素はメバロン酸キナーゼである、請求項3−23のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項25】
該改変された酵素はY.lipolyticaメバロン酸キナーゼ(Genolevures YALI0B16038g)である、請求項24記載の組成物または方法。
【請求項26】
該メバロン酸キナーゼの活性または発現が増加されている、請求項24−25のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項27】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加される、請求項24−26のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項28】
該改変された酵素はグリセロールキナーゼである、請求項3−23のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項29】
該改変された酵素はY.lipolyticaグリセロールキナーゼ(Genolevures YALI0F00484g)である、請求項24記載の組成物または方法。
【請求項30】
該グリセロールキナーゼの活性または発現が増加されている、請求項24−25のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項31】
該活性または発現は、対応する野生型酵母の活性または発現の少なくとも1.2倍;または1.5倍;または2倍;または3倍;または4倍;または5倍;または10倍;または15倍;または20倍;または50倍;または100倍;または1,000倍;または10,000倍;または100,000倍;または1,000,000倍まで増加される、請求項24−26のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項32】
該改変された酵素は遺伝子修復オリゴ核酸塩基によって変異を受ける、請求項3−31のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項33】
該遺伝子修復オリゴ核酸塩基は、混合2本鎖オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド非含有分子、および1本鎖オリゴデオキシヌクレオチドから成る群から選択される、請求項3−32のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項34】
該遺伝子修復オリゴ核酸塩基は混合2本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項3−33のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項35】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドのRNAヌクレオチドの2'-ヒドロキシルがフルオロ、クロロ、またはブロモで機能的に置換されている、請求項32−34のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項36】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドのRNAヌクレオチドが2'-Oに置換基を有する、請求項32−35のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項37】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドは未置換型ホスホジエステル結合のみによって結合している、請求項32−34のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項38】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドは2'-置換型ヌクレオチドである、請求項32−34のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項39】
該2'-置換型ヌクレオチドは、2'-フルオロ、2'-メトキシ、2'-プロピルオキシ、2'-アリルオキシ、2'-ヒドロキシルエチルオキシ、2'-メトキシエチルオキシ、2'-フルオロプロピルオキシ、および2'-トリフルオロプロピルオキシ置換型リボヌクレオチドから成る群から選択される、請求項32-38のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項40】
該2'-置換型ヌクレオチドは、2'-フルオロ、2'-メトキシ、2'-メトキシエチルオキシ、および2'-アリルオキシ置換型ヌクレオチドから成る群から選択される、請求項32-39のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項41】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドは未置換型ホスホジエステル結合によって結合している、請求項34−40のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項42】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドは100ヌクレオチド長未満かつ50ヌクレオチド長を超える、請求項34−41のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項43】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドは85ヌクレオチド長未満かつ50ヌクレオチド長を超える、請求項34−41のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項44】
該混合2本鎖オリゴヌクレオチドのストランドはリンカーによって共有結合している、請求項34−41のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項45】
該リンカーは1本鎖ヘキサ、ペンタ、またはテトラヌクレオチドであり、第1および第2のストランドは単一の3'末端および単一の5'末端を有する1本鎖オリゴヌクレオチドのセグメントである、請求項44記載の組成物または方法。
【請求項46】
該3'および5'末端はヘアピン・キャップを有する、請求項45記載の組成物または方法。
【請求項47】
3'および5'末端から遠位にある第1および第2ストランド間の接合部に第2のヘアピン・キャップを更に含有し、第1および第2ストランド間のワトソン・クリック塩基対形成が安定化されている、請求項45記載のの組成物または方法。
【請求項48】
混合2本鎖オリゴヌクレオチドの第1および第2ストランドが標的遺伝子の2つのフラグメントと相同である2つの領域を含有する、請求項32−47のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項49】
請求項3−48の遺伝子転換された酵母から抽出されたイソプレノイドを含有する組成物。
【請求項50】
該イソプレノイドはスクアレンである、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
遺伝子転換された酵母または遺伝転換されていない酵母によるスクアレンの生成法であって、該方法は該酵母を抗真菌剤と共に培養することを含む方法。
【請求項52】
遺伝子転換された酵母または遺伝転換されていない酵母によるスクアレンの生成法であって、該方法は該酵母を抗真菌剤と共に培養することを含み、該酵母は、ATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である方法。
【請求項53】
該酵母は、ATCC 20688、ATCC 90811、ATCC 90904、ATCC 90812、ATCC MYA-2613、またはYeastern polgから成る群から選択されるYarrowia lipolytica株である、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項54】
該酵母はYarrowia lipolyticaのYeastern polg株である、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項55】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加される、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項56】
該方法において抗真菌剤が0.5-100μg/mlの濃度で組成物中に含有されるか、または酵母に添加される、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項57】
該方法において抗真菌剤が1-25μg/mlの濃度で組成物中に含有されるか、または酵母に添加される、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項58】
該方法において抗真菌剤が10-15μg/mlの濃度で組成物中に含有されるか、または酵母に添加される、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項59】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤はアリルアミン抗真菌剤である、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項60】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤は0.5-100μg/mlの濃度のアリルアミン抗真菌剤である、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項61】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤は1-25μg/mlの濃度のアリルアミン抗真菌剤である、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項62】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤は10-15μg/mlの濃度のアリルアミン抗真菌剤である、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項63】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤はテルビナフィンである、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項64】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤は0.5-100μg/mlの濃度のテルビナフィンである、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項65】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤は1-25μg/mlの濃度のテルビナフィンである、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項66】
該方法において抗真菌剤が組成物中に含有されるか、または酵母に添加され、該抗真菌剤は10-15μg/mlの濃度のテルビナフィンである、上記請求項のいずれかに記載される組成物または方法。
【請求項67】
遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母によるスクアレンの生成法であって、該方法は該酵母を抗真菌剤と共に培養することを含み、該酵母は、Yarrowia lipolyticaのYeastern polg株であり、抗真菌剤はテルビナフィンであることを特徴とする方法。
【請求項68】
遺伝子転換された酵母または遺伝子転換されていない酵母によるスクアレンの生成法であって、該方法は該酵母を抗真菌剤と共に培養することを含み、該酵母は、Yarrowia lipolyticaのYeastern polg株であり、抗真菌剤は約12.5μg/mlまたはそれ以上のテルビナフィンであることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2013−511282(P2013−511282A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540136(P2012−540136)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/057668
【国際公開番号】WO2011/063350
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512133786)ニューセリス インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】