説明

酵母エキス抽出残渣の利用法

【課題】機能性食品や医薬品等に適した、品質の安定した、ステロール配糖体などの夾雑物が除去されたグリコシルセラミド組成物を得ること。原料としては、食経験があり安全で、かつ調達が容易なものを用い、低コストでグリコシルセラミド組成物を製造することを課題とする。
【解決手段】トルラ酵母等から酵母エキスを抽出した後の酵母残渣を原料とし、これをアルコール等の有機溶媒で抽出して、グルコシルセラミド含有組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性食品、化粧品、医薬品等に用いることができるグルコシルセラミド組成物を酵母由来物から取得する方法に関するものである。
また、酵母から酵母エキスを抽出した残渣を利用して得られるグルコシルセラミド組成物、それを含有する食品等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グルコシルセラミドはスフィンゴイド塩基と脂肪酸がアミド結合したセラミド骨格に、1分子のグルコースが結合したスフィンゴ糖脂質の一種である。動植物や微生物に幅広く分布し、サプリメント等で摂取した場合、肌機能の改善効果や、大腸がんを予防する効果あることなどから近年、健康食品、化粧品、医薬品の素材として注目を集めている。
【0003】
当初グルコシルセラミドは牛脳から抽出されていたが、BSEの発生以来、より安全な植物原料が利用されるようになった。現在では蒟蒻飛び粉、米糠、麦ふすま、とうもろこし胚芽など様々な原料からグルコシルセラミドが抽出され、セラミド含有抽出物として市販されている。しかし、これら植物原料を用いた場合の問題点として、天候や収穫後の保存状況により品質への影響を受けやすいこと、収穫量によって供給不安や価格変動や起こる可能性があること、また原料中のグルコシルセラミド含量が微量であることから大量の原料を必要とし、原料調達に多大なコストが掛かること等があった。
【0004】
このような背景の中、品質面や供給面でより安定である酵母を原料としたグルコシルセラミドの製造法が検討されてきた。検討対象として工業生産規模が大きいパン酵母やビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ビール残渣の酵母菌体は有望ではあるが、これらSaccharomyces cerevisiaeにはグルコシルセラミドの生産能がない。そのため、その他のSaccharomyces属、Zygosaccharomyces属、Kluyveromyces属酵母、Pseudozyma属、Candida属、Pichia属酵母で検討が行われ、製法が提案されている。これらの酵母は、閉鎖系において一箇所で大量生産が可能であることから、植物原料に比較して品質管理や原料調達が容易であると考えられる。
【0005】
しかし、酵母の培養には大量の栄養源の投入が必要でありながら、酵母菌体においてもグルコシルセラミドの含量は植物同様に低いため、製造コストが高く、かつ大量の産業廃棄物を発生させてしまうという問題点があった。また、酵母から従来の製法で得られたグルコシルセラミドの組成物には、ステロール配糖体など除去が困難な夾雑物が多く含まれていた。さらに、現在市販されているグルコシルセラミド含有抽出物の大部分は食品用途で使用されていることから、原料としては食経験があって安全な種に属する酵母を使用する必要があるなど、酵母によるグルコシルセラミドの生産は課題が多く困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-89047号公報
【特許文献2】特開2005-312372号公報
【特許文献3】特開2005-187392号公報
【特許文献4】特開2006-55070号公報
【特許文献5】特開2008-245607号公報
【特許文献6】特開2010-22217号公報
【特許文献7】特開2010-22218号公報
【特許文献6】特開2002-519070号公報
【特許文献8】特開2003-221592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、食経験があって安全性が高く、かつ品質、供給、価格が安定している原料を用いて、品質の良いグルコシルセラミド組成物を得ることを課題とする。また、より低コストで、産業廃棄物の排出の少ない方法により、グルコシルセラミド組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前述の植物原料や酵母原料を用いた場合の問題点を解決すべく研究を行った。その結果、現在食品用途に大量生産されている酵母エキスの製造工程において発生する、エキス抽出後の酵母残渣を原料として使用し、それから有機溶媒で抽出して得られたグルコシルセラミド含有組成物は、夾雑物が少ないことを見出し、本発明に至った。
前記酵母エキスの原料とする酵母は、食経験があって安全性が認められており、またグルコシルセラミドを多く含有することから、トルラ酵母(Candida utilis)が望ましい。
【0009】
具体的には、
(1)酵母エキス抽出後の酵母残渣から抽出して得られるグルコシルセラミド組成物、
(2)前記酵母がトルラ酵母である、上記(1)記載のグルコシルセラミド組成物、
(3)酵母エキス抽出後の酵母残渣から抽出されたグルコシルセラミドを含有する機能性食品、
(4)酵母エキス抽出後の酵母残渣から抽出されたグルコシルセラミドを含有する医薬品、
(5)酵母エキス抽出後の酵母残渣から有機溶媒により抽出することを特徴とする、グルコシルセラミド組成物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、食経験があり安全性が確認されているトルラ酵母等の残渣から、夾雑物が少ない高品質のグルコシルセラミド組成物を得ることができる。特に、植物原料に多く含まれ、除去が困難とされているステロール配糖体などの夾雑物が少ない点で、優れている。
トルラ酵母の酵母エキスは、調味料として好適で、大量生産されており、本発明はその残渣を有効利用できるため、コスト、廃棄物削減の点でも、きわめて有利な方法である。また、農作物を原料とする場合と異なり、供給不安、価格変動、品質変動のリスクも少ない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で使用する酵母は、グルコシルセラミドを含有する酵母であればよい。特に好ましくは、一般名トルラ酵母と称されるCandida utilisである。酵母の培養形式はバッチ培養、あるいは連続培養のいずれかが用いられる。培養に用いる培地は一般的な培地組成でよい。具体的には炭素源として、ブドウ糖、酢酸、エタノール、グリセロール、糖蜜、亜硫酸パルプ廃液等が用いられ、窒素源としては、尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸塩などが使用される。リン酸、カリウム、マグネシウム源も過リン酸石灰、リン酸アンモニウム、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の通常の工業用原料でよく、その他亜鉛、銅、マンガン、鉄イオン等の無機塩を添加する。その他、ビタミン、アミノ酸、核酸関連物質等を添加したり、カゼイン、酵母エキス、肉エキス、ペプトン等の有機物を添加しても良い。培養温度は21〜37℃、好ましくは25〜34℃で、pHは3.0〜8.0、特に3.5〜7.0が好ましい。培養条件によりアミノ酸や核酸の生産性が変動するため、目的とする酵母エキスの製品仕様に合わせて条件設定を行う。
【0012】
菌体培養後にエキス抽出を行う。本願では、エキス抽出後の酵母を酵母残渣としている。抽出法は、とくに制限がないが、一般的に、自己消化法、熱水抽出法、酵素抽出法、酸、若しくはアルカリ抽出法、又はこれらの組み合わせにより行うことが可能である。
【0013】
自己消化により酵母エキスを抽出する場合は、例えば、55℃で4時間攪拌する。酵素抽出法であれば、細胞壁溶解酵素又はプロテアーゼ等で攪拌抽出する。酸抽抽出法であれば、硫酸等で酸性に調整後、抽出する。アルカリ抽出法であれば、アルカリに調整後、抽出する。又は、自己消化後(例えば55度で4時間攪拌)に、酵素抽出をする等の組み合わせも可能である。このようにして抽出し分離した水溶性画分が酵母エキスであり、調味料として好適に用いられている。一方、酵母エキスが分離除去された後の残りが酵母残渣である。
【0014】
上記の酵母中のエキス抽出により、菌体中のタンパク質や核酸が抽出除去されると共に、ステロール配糖体など一部の脂溶性夾雑物が除去され、グルコシルセラミドが富化された酵母残渣が製造される。本願は、このような酵母残渣から、グルコシルセラミドを抽出することで、特別な処理をすることなく、ステロール配糖体等の夾雑物が除去されたグルコシルセラミド組成物を得ることができる。なお、本願では、夾雑物、及びグルコシルセラミドの定性分析をTLCで、定量分析をHPLC-ELSDで行った。
【0015】
エキス抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、残渣を蒸留水に懸濁して遠心分離を繰り返すことで洗浄を行う。洗浄後の残渣を必要に応じて、凍結乾燥又は熱風乾燥することも可能である。得られた酵母残渣をトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料とする。
【0016】
続いて上記原料を用いてグルコシルセラミドの抽出を行う。抽出の方法に制限はないが、食品として用いることができる抽出法が望ましい。具体的には、特開2002-281936に記載されている方法で精製することができる。たとえば、原料である酵母残渣から有機溶媒を用いて抽出する。その有機溶媒としては、食品に用いることから、エタノール、アセトン、ヘキサンが望ましく、特にエタノールが望ましい。さらに、抽出効率を上げるために有機溶媒に水、界面活性剤などを加えることができる。抽出に用いる溶媒の量は、原料に対して1〜30倍が望ましい。
さらに、具体的には例えば、トルラ酵母由来酵母残渣に対して2倍量の90〜100%エタノールを使用し、1〜24時間の攪拌によりグルコシルセラミドの抽出を行う。抽出後は抽出液を遠心分離で回収し、濃縮及び凍結乾燥または熱風乾燥させることでグルコシルセラミド組成物が得られる。
【0017】
必要に応じて、グルコシルセラミド組成物をさらに精製することにより、グルコシルセラミド含有量の高い組成物又はグルコシルセラミドを製造することもできる。精製法は、既知の方法により精製可能であり、例えば、シリカゲルやイオン交換樹脂などのカラム精製等を用いることができる。
【0018】
本発明のグルコシルセラミド組成物、当該精製物である、グルコシルセラミド含有量の高い組成物、及びグルコシルセラミドは、安全性の高い酵母から抽出したものであるため、健康食品、若しくはサプリメントなどの機能性食品、化粧品、又は医薬品等として使用することができる。
【実施例】
【0019】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
(TLC条件)
前処理として試料のグルコシルセラミド組成物20mgを2mlの0.4N KOH EtOHに溶解し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後は0.4N HCl EtOHを2ml加えて中和し、遠心分離後の上清4μlをTLCに供した。TLCはシリカゲルプレート(メルク社製Silicagel60、層厚0.25m)を使用し、クロロホルム:エタノール:水=65:16:2(容量比)で展開した。展開後はシリカゲルプレートを乾燥させ、アニスアルデヒド硫酸試液を噴霧して加熱することで発色させた。
【0021】
(HPLC-ELSD条件)
前処理として試料のグルコシルセラミド組成物20mgを2mlの0.4N KOH EtOHに溶解し、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後は0.4N HCl EtOHを2ml加えて中和し、塩類をフィルター除去してからHPLCに供した。カラムにはGLサイエンス社製Inertsil 100Aを用い、グルコシルセラミドの検出は蒸発光散乱検出器(島津製ELSD-LTII)で行った。溶出溶媒にはクロロホルムとメタノール:水=95:5(容量比)のグラジエントを用いた。カラム温度は35℃、流速は1ml/min、ドリフトチューブ温度は40℃で窒素ガス圧力は350kPaであった。
【0022】
(酵母の培養)
キャンディダ・ウチリスCS7529株(FERM BP−1656 )を予めYPD培地(酵母エキス1%、ポリペプトン2%、グルコース2%)を入れた三角フラスコで種母培養し、これを30L容発酵槽の18L培地に1〜2%植菌した。培地組成は、グルコース4%、燐酸一アンモニウム0.3%、硫酸アンモニウム0.161%、塩化カリウム0.137%、硫酸マグネシウム0.08%、硫酸銅1.6ppm、硫酸鉄14ppm、硫酸マンガン16ppm、硫酸亜鉛14ppmとした。培養条件は、pH4.0、培養温度30℃、通気量1vvm、撹拌600rpmで行い、アンモニアを添加しpHのコントロールを行った。16時間菌体培養した後、培養液を回収し、遠心分離により集菌し、180gの湿潤酵母菌体を得た。
【0023】
(酵母エキスの抽出)
菌体培養後の湿潤酵母菌体を蒸留水に懸濁して遠心分離を繰り返すことで洗浄した。洗浄後は湿潤菌体をそのまま蒸留水に再度懸濁するか、凍結乾燥または熱風乾燥により乾燥菌体とした後、蒸留水に懸濁し、以下の条件に調整することでエキス抽出を行った。
自己消化: 1N HClでpH5.0に調整後、55℃で4時間攪拌
酵素抽出:1N NaOHでpH7に調整後、細胞壁溶解酵素(天野エンザイム株式会社製「ツニカーゼ」)又はプロテアーゼで55℃、4時間攪拌抽出
酸抽出:1N硫酸でpH2以下に調整後、65℃で2分間攪拌抽出
アルカリ抽出:2N NaOHでpH13に調整後、70℃で20分間攪拌抽出
【0024】
実施例1 (自己消化)
前述の方法で菌体培養後に洗浄したトルラ酵母の乾燥菌体 60gを蒸留水 1Lに懸濁し、1N HClでpH5.0に調整した。エキス抽出は55℃で4時間攪拌により行い、遠心分離により酵母残渣を回収した後、蒸留水への懸濁と遠心分離を3回繰り返すことで酵母残渣を洗浄した。次いで、洗浄後の酵母残渣を真空乾燥することで 10.9gの乾燥酵母残渣が得られ、これをトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料とした。得られた乾燥酵母残渣全量を2倍量の90% エタノールに懸濁し、60℃で12時間攪拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、残渣をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物0.6gが得られた。これをグルコシルセラミド組成物とし、HPLC-ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドは2.0%含有されていた。またTLCによる分析結果、Rf値0.42付近にグルコシルセラミドのスポットだけが見られ、夾雑物のステロール配糖体は確認されなかった。これらの分析結果からトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料中のグルコシルセラミド含量は0.11%であった。
【0025】
実施例2 (酵素抽出)
菌体培養後に洗浄し、熱風乾燥させたトルラ酵母の乾燥菌体 60gを蒸留水 1Lに懸濁し、1N NaOHでpH7.0に調整した後、55℃で4時間プロテアーゼにより酵母エキスを抽出した。抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、酵母残渣の蒸留水への懸濁と遠心分離を3回繰り返すことで洗浄した。次いで、洗浄後の酵母残渣を真空乾燥することで12.8gの乾燥酵母残渣が得られ、これをトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料とした。得られた乾燥酵母残渣全量を2倍量の90%エタノールに懸濁し、60℃で12時間攪拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、酵母残渣をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物 0.8gが得られた。これをグルコシルセラミド含有組成物とし、HPLC-ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドは1.6%含有されていた。またTLCによる分析の結果、Rf値0.42付近にグルコシルセラミドのスポットだけが見られ、夾雑物のステロール配糖体は確認されなかった。これらの分析結果からトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料中のグルコシルセラミド含量は0.10%であった。
【0026】
実施例3 (酸抽出)
菌体培養後に洗浄し、熱風乾燥させたトルラ酵母の乾燥菌体 60gを蒸留水 1Lに懸濁し、2N硫酸でpH2.0に調整した後、65℃で2分間エキス抽出した。抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、酵母残渣の蒸留水への懸濁と遠心分離を3回繰り返すことで洗浄した。次いで、洗浄後の酵母残渣を真空乾燥することで11.3gの乾燥酵母残渣が得られ、これをトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料とした。得られた乾燥酵母残渣全量を2倍量の90%エタノールに懸濁し、60℃で12時間攪拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、酵母残渣をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物0.6gが得られた。これをグルコシルセラミド含有組成物とし、HPLC-ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドは1.9%含有されていた。またTLCによる分析の結果、Rf値0.42付近にグルコシルセラミドのスポットだけが見られ、夾雑物のステロール配糖体は確認されなかった。これらの分析結果から原料中のグルコシルセラミド含量は0.10%であった。
【0027】
実施例4(アルカリ抽出)
菌体培養後に洗浄し、熱風乾燥させたトルラ酵母の乾燥菌体 60gを蒸留水 1Lに懸濁し、2N NaOHでpH13.0に調整した後、70℃で30分間エキス抽出した。抽出後は遠心分離で酵母残渣を回収し、酵母残渣の蒸留水への懸濁と遠心分離を3回繰り返すことで洗浄した。次いで、洗浄後の酵母残渣を真空乾燥することで12.3gの乾燥酵母残渣が得られ、これをトルラ酵母由来グルコシルセラミド原料とした。得られた乾燥酵母残渣全量を2倍量の90%エタノールに懸濁し、60℃で12時間攪拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、酵母残渣をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物 0.7gが得られた。これをグルコシルセラミド含有組成物とし、HPLC-ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドが2.1%含有されていた。またTLCによる分析の結果、Rf値0.42付近にグルコシルセラミドのスポットだけが見られ、夾雑物のステロール配糖体は確認されなかった。これらの分析結果から原料中のグルコシルセラミド含量は0.12%であった。
【0028】
比較例1
菌体培養後に洗浄し、熱風乾燥させたトルラ酵母の乾燥菌体20gを2倍量の90%エタノールに懸濁し、60℃で10時間攪拌してグルコシルセラミドを抽出した。遠心分離により抽出液を回収し、固形分をエタノールで3回洗浄した洗浄液と合わせて濃縮した結果、抽出物0.9gが得られた。これをグルコシルセラミド含有組成物とし、HPLC-ELSDで分析した結果、グルコシルセラミドが1.4%含有されていた。またTLCによる分析の結果、Rf値0.42付近にグルコシルセラミドのスポットが見られたほか、Rf値0.48付近に夾雑物としてステロール配糖体が見られ、他に脂質のスポット等も確認された。これらの分析結果から原料であるトルラ酵母菌体中のグルコシルセラミド含量は0.06%であった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明で得られた夾雑物の少ないグルコシルセラミド組成物は、そのまま、またはさらに精製して機能性食品や化粧品の素材として用いることができる。また、将来的に薬効が認められれば、医薬品の原料としても用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母エキス抽出後の酵母残渣から抽出して得られるグルコシルセラミド組成物。
【請求項2】
前記酵母がトルラ酵母である、請求項1に記載のグルコシルセラミド組成物。
【請求項3】
酵母エキス抽出後の酵母残渣から抽出されたグルコシルセラミドを含有する機能性食品。
【請求項4】
酵母エキス抽出後の酵母残渣から抽出されたグルコシルセラミドを含有する医薬品。
【請求項5】
酵母エキス抽出後の酵母残渣から有機溶媒により抽出することを特徴とする、グルコシルセラミド組成物の製造方法。


【公開番号】特開2012−246287(P2012−246287A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87010(P2012−87010)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】