酵母ジゴサッカロマイシスロキシイ(Zygosaccharomycesrouxii)からサイトカラシン(Cytochalasin)様物質群を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、自然界に存在利用される耐浸透圧性酵母(Z.rouxii) より抽出したサイトカラシン様物質群を製造する方法に関する。
【0002】従来、ジゴサッカロマイシス ロキシイは食品腐敗原因の一つとされており、この酵母の利用法はまだ発明されていなかった。一方、1960年代英国の科学者によって初めて発見されたサイトカラシン物質は可逆性を持ち、抗菌性を始め、動物細胞の分裂を抑制する効果等が確認されている。しかし、従来発見れたサイトカラシン物質群は全てカビ類だけに存在していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】「カビ類」はその性質上変性し易く安全で安定した繁殖や取扱いが難しく、生産設備も高額となるが、「酵母類」は変性し難く安全で安定した繁殖が可能で生産設備も低額であり、何よりも“カビの毒性”の有無を心配する必要が無い。サイトカラシンやサイトカラシン様物質は初期に発見されたサイトカラシンAやBから現在サイトカラシンWまで発見されてきており、夫々独自の機能を持つ物質として色々な分野で利用されている(以下これらサイトカラシンA乃至Wを「サイトカラシン物質」とする)。今までに発見された上記サイトカラシン物質の一群は新物質を含む可能性が高く、従来用いられていない微生物を利用して生産する等の方法が必要である。因みに抗生物や抗菌性物質の分野でもカビ類から抽出し、既に市場に出回っている薬品に対して強い病害菌等が現れてきており、このため新たな方法による新薬品の開発が要求されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決することを目的とし、酵母ジゴサッカロマイシスロキシイをグルコース等糖の入った培地で培養した後、酢酸エチル等有機溶媒液で抽出し、その有機溶媒液を完全に飛ばすことにより得られたサイトカラシン様代謝物群から上記サイトカラシン様物質群を得ることを特徴とするサイトカラシン様物質群を製造する方法であることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の態様】本発明はジゴサッカロマイシス ロキシイを糖の入った培地で培養する。培地は普段酵母を培養する時の培地で、糖はグルコース、スクロース、マルトース等である。
【0006】培地の糖濃度は2%から40%までである。
【0007】培地のpHは4から7までである。
【0008】培養温度は10℃から35℃までである。
【0009】培養時間は1日から7日までである。
【0010】培養後の上澄みの収穫は遠心機にかけることによるものである。
【0011】代謝物の抽出法は有機溶媒液を利用することである。
【0012】上述の有機溶媒液は酢酸エチル、クロロフォーム等である。
【0013】その後の操作は溶媒液を完全に飛ばし、得られた物質をエチルアルコールやクロロフォーム等に溶かしてジゴサッカロマイシス ロキシイから生産された代謝物として収穫する。
【0014】
【発明の効果】上述の方法で、ジゴサッカロマイシス ロキシイを培養することによって回収できる未精製代謝物群の量は培地1L当たり1.0g〜1.6gである。
【0015】表1はPaper disc方法を用いて8属種の細菌に対して抗菌性の検討をした結果を示す表である。
【表1】
【0016】実験方法はシャレーに普通の寒天培地を入れ、その上に菌を摂取したソフトアガー(0.5%寒天)培地をまいた後、その上にZ.rouxiiから抽出した本発明の物質(以下、サンプルと書く)および対照物のつけたPaper discを載せて30℃で一晩培養し、discの周りに現れる透明直径を測った方法である。サンプルは既にアルコールに溶かしており、その対照物としては純アルコールを利用した。抗菌性があればdiscの周りに菌が繁殖せず、透明になる論理である。その結果、対照物エタノールでは効果が全くなかったのに対し、サンプルではサンプルの量を増やせば増やすほど効果が強くなったことが分かる。
【0017】図1はBacillus toyoi(バチルス、桿菌の一種)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法は試験管の中に普通の液体培地を入れサンプル濃度を1.8mg/ml、3.5mg/mlとなるように添加した。サンプルの入っていない(濃度0mg/ml)ものを対照とした。それぞれに対象菌を摂取して30℃で12時間培養し、菌の生育を吸光度計で測った生育曲線である。(a)のグラフは培地のpHを5.5に調整したもので、(b)のグラフはpHを6.0に調整したものである。その結果、pH6.0よりpH5.5で菌の生育がはっきりと抑制されたことが分かる。pH5.5でサンプルの濃度が3.5mg/mlになると菌は全く繁殖しなかったことが分かる。
【0018】図2はEscherichia coli(大腸菌)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様でpH5.5での結果を表わしている。サンプルの濃度を2.0mg/mlにした場合pHを5.5に調整したものにも無調整のもの(pH4.6)にも効果があることが分かる。
【0019】図3はPseudomnas aeruginosa(緑膿菌)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法ならびに結果は図2の大腸菌と同様である。
【0020】図4(a),(b)はSalmonella enteritidis(食中毒を起すサルモネラ腸炎菌)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様で、(a)はpH5.5、(b)はpH6.0での生育グラフである。pH6.0よりpH5.5で菌の繁殖および生育が共に抑えられたことが分かる。
【0021】図5はMicrococcus luteus(球菌の一種)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様であるが培養時間を24時間までした。サンプルの入っていない対照に対し、サンプル濃度2mg/ml入った試験管には菌が24時間経っても繁殖しなかったことが分かる。
【0022】図6はStaphylococcus aureus(ブドウ球菌)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様である。サンプルを2mg/ml入れて無調整pHの4.6のときでもpHを5.5に調整したときでも菌は24時間まで繁殖せずサンプルの効果があるということが分かる。
【0023】表2は本発明物質群の各細菌における生育抑制最低濃度(MIC)を示す表である。
【表2】
【0024】この表は図1〜図6に示した抗菌性実験を各菌に対して行った結果をまとめたものである。細菌はグラム陽性、グラム陰性と大別してある。各菌に対して生育抑制最低濃度(MIC)を無調整のpH,pH5.5、pH6.0にて表わしてある。pHを調整しなければ少量でサンプルの抗菌性が見られ、このサンプルの効果はpHを下げると共に現れると言える。無調整のpHでの生育抑制最低濃度(MIC)はサルモネラ菌で0.7mg/ml,ブドウ球菌で1−2mg/mlである。大腸菌で2.0mg/mlである。
【0025】図7はMicrococcus luteus(球菌の一種)におけるサンプルの抗菌性が可逆的であることを示す図である。実験方法は図1と同様である。サンプルの濃度を0.5mg/mlと1mg/mlにした。対照としてはエタノールを20μl/mlになるように加えた。また無添加の普通の培地もControlI,ControlIIとして使った。エタノールを加えた試験管には菌が通常通り生育し、48時間培養後生育のピークを迎えた。サンプルを0.5mg/ml加えた試験管には24時間まで菌の生育が抑制されたものの24時間後には弱いながら繁殖してきた。それに対し、サンプルを1.0mg/ml加えた試験管には菌が168時間経っても育成しなかった。ControlIとControlIIの試験管では菌の生育は共に通常であった。それらを12時間培養して菌の数を増やしてからサンプルを0.7mg/mlと1.5mg/mlなるようそれぞれ入れた。菌の数が増えている培地にサンプルを0.7mg/ml入れると(ControlI)生育は数時間抑えられた後通常に上がってきた。一方サンプルを1.5mg/mlまで入れたら(ControlII)数の増えた菌も168時間以上まで生育が抑制された。そのControlII試験管とサンプルを最初から1.0mg/ml加えた試験管を培養時間168時間で無菌的に開け、培地を遠心分離して菌細胞を取り出し、無菌水で2回洗ってから普通の培地に戻して培養を続けた。その結果、両方共菌が通常通り生育してきたことが見られた。結論として下記の点が挙げられる。
(1)本発明の物質群の最適な使用量は菌の数に適しており、サンプルの濃度を高めれば増えた数にも対応できる。
(2)本発明の物質群はその使用量によって菌の発生を長時間抑制できる。
(3)本発明の物質群の効果は可逆的で、菌を元の培地に戻すと通常に生育する。
【0026】図8はMicrococcus luteus(球菌の一種)の生育に及ぼすサンプルの影響を示す異層差顕微鏡写真である。
(a)の写真はMicrococcus luteus菌を通常の培地で12時間培養後に撮ったものである。菌は通常通り生育し、細胞分裂も通常に起こっていることがわかる。
(b)の写真は培地にサンプルが2.5mg/ml入っていて同じく12時間培養後に撮ったものである。菌の細胞が膨張している上、分裂も完全にせず二つの細胞がくっついていることが分かる。
【0027】図9(a)の写真はEscherichia coli(大腸菌)、(b)の写真はSalmonella enteritidis(サルモネラ腸炎菌)それぞれの生育に及ぼすサンプルの影響を示す電子顕微鏡写真である。両方共サンプルを2.5mg/ml入れた培地に菌を12時間培養後に撮った写真でどちらにも菌の細胞壁が膨張し一部が突き出ていることが分かる。
【0028】応用の具体性を下記に記す。食品分野では■ 畜産、水産物への“抗菌剤”使用は、O−157菌、サルモネラ菌の変種害菌化を促す要因となるが「発明物質」を餌に加えることで、「害菌繁殖を防止し、害菌の変種」が防げる。農薬使用の軽減可能。
■ 現在約130種類の食品添加剤が認可され食品分野に用いられるが、その主体である「抗菌性」が「発明剤」の使用で安全にできる。
■ 第1次産品の食材の保存で、主体となる「雑菌繁殖防止剤」を用いるが「発明剤」で安全な腐敗防止が可能となる。化粧品分野では■ トイレタリー分野の“殺菌剤”は必ずしも人体にとって無害でないものが含まれるが、安全で肌に相応しいpHの殺菌効果の「洗浄剤」ができる。
■ 肌に付着させる様々な化粧品の品質保持成分も、必ずしも安全で刺激性が無いと言えない。「発明剤の添加」でこの問題が解決できる。医薬品分野では、■ AからWまで既に発見、発明された物質は全てカビ類からつくるもので、非常に高価なもの。酵母からつくることで安全で安価な新しい“抗生物質”の生産ができる。
■ 細胞の分裂(増殖)を抑止する機能は、ガン細胞、エイズウイルス、脳細胞などの分裂、増殖を抑止する可能性を持つ分野。
■ 本発明が病害菌の繁殖を抑止することはデータや写真にあるように明らかであり、更に「自己免疫機能」による自然治癒療法が期待される分野。
【0029】サイトカラシン様物質群(全く同じ群か良く似た性状の新物質群か定かでない)は全てカビ類から抽出していた。医療分野でも既にこれまで様々な可能性を持っている。しかし、本発明は「酵母起源」で初めての物質として抗菌性、細胞分裂抑止機能とその可逆性を立証して、広い範囲の「食品」に先ず応用できることが特徴であり、化粧品、医薬品へと付加価値の高い分野へ利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Bacillus toyoi(バチルス、桿菌の一種)に対しての抗菌性を示す図である。
【図2】Escherichia coli(大腸菌)に対しての抗菌性を示す図である。
【図3】Pseudomnas aeruginosa(緑膿菌)に対しての抗菌性を示す図である。
【図4】(a)、(b)はSalmonella enteritidis(食中毒を起すサルモネラ腸炎菌)に対しての抗菌性を示す図である。
【図5】Micrococcus luteus(球菌の一種)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。
【図6】Staphylococcus aureus(ブドウ球菌)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。
【図7】Micrococcus luteus(球菌の一種)におけるサンプルの抗菌性が可逆的であることを示す図である。
【図8】発明物質(酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイよりの抽出物質)の球菌(IFO 12708〈Micrococcus luteus〉)に及ぼす影響を示す異層差顕微鏡写真で、(a)は通常の培地で12時間培養後、(b)は発明物質2.5mg/mlの入った培地で12時間培養後に撮ったものである。
【図9】(a)は発明物質(酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイよりの抽出物質)2.5mg/mlの入った培地で12時間培養後に撮影した大腸菌(IFO 3301〈Escherichia coli〉)の電子顕微鏡写真、(b)は発明物質(酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイよりの抽出物質)2.5mg/mlの入った培地で12時間培養後に撮影したサルモネラ腸炎菌(IFO 3313〈Salmonella enteritidis〉)の電子顕微鏡写真である。
【0001】本発明は、自然界に存在利用される耐浸透圧性酵母(Z.rouxii) より抽出したサイトカラシン様物質群を製造する方法に関する。
【0002】従来、ジゴサッカロマイシス ロキシイは食品腐敗原因の一つとされており、この酵母の利用法はまだ発明されていなかった。一方、1960年代英国の科学者によって初めて発見されたサイトカラシン物質は可逆性を持ち、抗菌性を始め、動物細胞の分裂を抑制する効果等が確認されている。しかし、従来発見れたサイトカラシン物質群は全てカビ類だけに存在していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】「カビ類」はその性質上変性し易く安全で安定した繁殖や取扱いが難しく、生産設備も高額となるが、「酵母類」は変性し難く安全で安定した繁殖が可能で生産設備も低額であり、何よりも“カビの毒性”の有無を心配する必要が無い。サイトカラシンやサイトカラシン様物質は初期に発見されたサイトカラシンAやBから現在サイトカラシンWまで発見されてきており、夫々独自の機能を持つ物質として色々な分野で利用されている(以下これらサイトカラシンA乃至Wを「サイトカラシン物質」とする)。今までに発見された上記サイトカラシン物質の一群は新物質を含む可能性が高く、従来用いられていない微生物を利用して生産する等の方法が必要である。因みに抗生物や抗菌性物質の分野でもカビ類から抽出し、既に市場に出回っている薬品に対して強い病害菌等が現れてきており、このため新たな方法による新薬品の開発が要求されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決することを目的とし、酵母ジゴサッカロマイシスロキシイをグルコース等糖の入った培地で培養した後、酢酸エチル等有機溶媒液で抽出し、その有機溶媒液を完全に飛ばすことにより得られたサイトカラシン様代謝物群から上記サイトカラシン様物質群を得ることを特徴とするサイトカラシン様物質群を製造する方法であることを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の態様】本発明はジゴサッカロマイシス ロキシイを糖の入った培地で培養する。培地は普段酵母を培養する時の培地で、糖はグルコース、スクロース、マルトース等である。
【0006】培地の糖濃度は2%から40%までである。
【0007】培地のpHは4から7までである。
【0008】培養温度は10℃から35℃までである。
【0009】培養時間は1日から7日までである。
【0010】培養後の上澄みの収穫は遠心機にかけることによるものである。
【0011】代謝物の抽出法は有機溶媒液を利用することである。
【0012】上述の有機溶媒液は酢酸エチル、クロロフォーム等である。
【0013】その後の操作は溶媒液を完全に飛ばし、得られた物質をエチルアルコールやクロロフォーム等に溶かしてジゴサッカロマイシス ロキシイから生産された代謝物として収穫する。
【0014】
【発明の効果】上述の方法で、ジゴサッカロマイシス ロキシイを培養することによって回収できる未精製代謝物群の量は培地1L当たり1.0g〜1.6gである。
【0015】表1はPaper disc方法を用いて8属種の細菌に対して抗菌性の検討をした結果を示す表である。
【表1】
【0016】実験方法はシャレーに普通の寒天培地を入れ、その上に菌を摂取したソフトアガー(0.5%寒天)培地をまいた後、その上にZ.rouxiiから抽出した本発明の物質(以下、サンプルと書く)および対照物のつけたPaper discを載せて30℃で一晩培養し、discの周りに現れる透明直径を測った方法である。サンプルは既にアルコールに溶かしており、その対照物としては純アルコールを利用した。抗菌性があればdiscの周りに菌が繁殖せず、透明になる論理である。その結果、対照物エタノールでは効果が全くなかったのに対し、サンプルではサンプルの量を増やせば増やすほど効果が強くなったことが分かる。
【0017】図1はBacillus toyoi(バチルス、桿菌の一種)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法は試験管の中に普通の液体培地を入れサンプル濃度を1.8mg/ml、3.5mg/mlとなるように添加した。サンプルの入っていない(濃度0mg/ml)ものを対照とした。それぞれに対象菌を摂取して30℃で12時間培養し、菌の生育を吸光度計で測った生育曲線である。(a)のグラフは培地のpHを5.5に調整したもので、(b)のグラフはpHを6.0に調整したものである。その結果、pH6.0よりpH5.5で菌の生育がはっきりと抑制されたことが分かる。pH5.5でサンプルの濃度が3.5mg/mlになると菌は全く繁殖しなかったことが分かる。
【0018】図2はEscherichia coli(大腸菌)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様でpH5.5での結果を表わしている。サンプルの濃度を2.0mg/mlにした場合pHを5.5に調整したものにも無調整のもの(pH4.6)にも効果があることが分かる。
【0019】図3はPseudomnas aeruginosa(緑膿菌)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法ならびに結果は図2の大腸菌と同様である。
【0020】図4(a),(b)はSalmonella enteritidis(食中毒を起すサルモネラ腸炎菌)に対しての抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様で、(a)はpH5.5、(b)はpH6.0での生育グラフである。pH6.0よりpH5.5で菌の繁殖および生育が共に抑えられたことが分かる。
【0021】図5はMicrococcus luteus(球菌の一種)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様であるが培養時間を24時間までした。サンプルの入っていない対照に対し、サンプル濃度2mg/ml入った試験管には菌が24時間経っても繁殖しなかったことが分かる。
【0022】図6はStaphylococcus aureus(ブドウ球菌)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。実験方法は図1と同様である。サンプルを2mg/ml入れて無調整pHの4.6のときでもpHを5.5に調整したときでも菌は24時間まで繁殖せずサンプルの効果があるということが分かる。
【0023】表2は本発明物質群の各細菌における生育抑制最低濃度(MIC)を示す表である。
【表2】
【0024】この表は図1〜図6に示した抗菌性実験を各菌に対して行った結果をまとめたものである。細菌はグラム陽性、グラム陰性と大別してある。各菌に対して生育抑制最低濃度(MIC)を無調整のpH,pH5.5、pH6.0にて表わしてある。pHを調整しなければ少量でサンプルの抗菌性が見られ、このサンプルの効果はpHを下げると共に現れると言える。無調整のpHでの生育抑制最低濃度(MIC)はサルモネラ菌で0.7mg/ml,ブドウ球菌で1−2mg/mlである。大腸菌で2.0mg/mlである。
【0025】図7はMicrococcus luteus(球菌の一種)におけるサンプルの抗菌性が可逆的であることを示す図である。実験方法は図1と同様である。サンプルの濃度を0.5mg/mlと1mg/mlにした。対照としてはエタノールを20μl/mlになるように加えた。また無添加の普通の培地もControlI,ControlIIとして使った。エタノールを加えた試験管には菌が通常通り生育し、48時間培養後生育のピークを迎えた。サンプルを0.5mg/ml加えた試験管には24時間まで菌の生育が抑制されたものの24時間後には弱いながら繁殖してきた。それに対し、サンプルを1.0mg/ml加えた試験管には菌が168時間経っても育成しなかった。ControlIとControlIIの試験管では菌の生育は共に通常であった。それらを12時間培養して菌の数を増やしてからサンプルを0.7mg/mlと1.5mg/mlなるようそれぞれ入れた。菌の数が増えている培地にサンプルを0.7mg/ml入れると(ControlI)生育は数時間抑えられた後通常に上がってきた。一方サンプルを1.5mg/mlまで入れたら(ControlII)数の増えた菌も168時間以上まで生育が抑制された。そのControlII試験管とサンプルを最初から1.0mg/ml加えた試験管を培養時間168時間で無菌的に開け、培地を遠心分離して菌細胞を取り出し、無菌水で2回洗ってから普通の培地に戻して培養を続けた。その結果、両方共菌が通常通り生育してきたことが見られた。結論として下記の点が挙げられる。
(1)本発明の物質群の最適な使用量は菌の数に適しており、サンプルの濃度を高めれば増えた数にも対応できる。
(2)本発明の物質群はその使用量によって菌の発生を長時間抑制できる。
(3)本発明の物質群の効果は可逆的で、菌を元の培地に戻すと通常に生育する。
【0026】図8はMicrococcus luteus(球菌の一種)の生育に及ぼすサンプルの影響を示す異層差顕微鏡写真である。
(a)の写真はMicrococcus luteus菌を通常の培地で12時間培養後に撮ったものである。菌は通常通り生育し、細胞分裂も通常に起こっていることがわかる。
(b)の写真は培地にサンプルが2.5mg/ml入っていて同じく12時間培養後に撮ったものである。菌の細胞が膨張している上、分裂も完全にせず二つの細胞がくっついていることが分かる。
【0027】図9(a)の写真はEscherichia coli(大腸菌)、(b)の写真はSalmonella enteritidis(サルモネラ腸炎菌)それぞれの生育に及ぼすサンプルの影響を示す電子顕微鏡写真である。両方共サンプルを2.5mg/ml入れた培地に菌を12時間培養後に撮った写真でどちらにも菌の細胞壁が膨張し一部が突き出ていることが分かる。
【0028】応用の具体性を下記に記す。食品分野では
【0029】サイトカラシン様物質群(全く同じ群か良く似た性状の新物質群か定かでない)は全てカビ類から抽出していた。医療分野でも既にこれまで様々な可能性を持っている。しかし、本発明は「酵母起源」で初めての物質として抗菌性、細胞分裂抑止機能とその可逆性を立証して、広い範囲の「食品」に先ず応用できることが特徴であり、化粧品、医薬品へと付加価値の高い分野へ利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Bacillus toyoi(バチルス、桿菌の一種)に対しての抗菌性を示す図である。
【図2】Escherichia coli(大腸菌)に対しての抗菌性を示す図である。
【図3】Pseudomnas aeruginosa(緑膿菌)に対しての抗菌性を示す図である。
【図4】(a)、(b)はSalmonella enteritidis(食中毒を起すサルモネラ腸炎菌)に対しての抗菌性を示す図である。
【図5】Micrococcus luteus(球菌の一種)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。
【図6】Staphylococcus aureus(ブドウ球菌)に対してpH5.5での抗菌性を示す図である。
【図7】Micrococcus luteus(球菌の一種)におけるサンプルの抗菌性が可逆的であることを示す図である。
【図8】発明物質(酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイよりの抽出物質)の球菌(IFO 12708〈Micrococcus luteus〉)に及ぼす影響を示す異層差顕微鏡写真で、(a)は通常の培地で12時間培養後、(b)は発明物質2.5mg/mlの入った培地で12時間培養後に撮ったものである。
【図9】(a)は発明物質(酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイよりの抽出物質)2.5mg/mlの入った培地で12時間培養後に撮影した大腸菌(IFO 3301〈Escherichia coli〉)の電子顕微鏡写真、(b)は発明物質(酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイよりの抽出物質)2.5mg/mlの入った培地で12時間培養後に撮影したサルモネラ腸炎菌(IFO 3313〈Salmonella enteritidis〉)の電子顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 サイトカラシン様物質群を製造する方法であって、酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイをグルコース等糖の入った培地で培養した後、培地から分離した培養液より酢酸エチル等の有機溶媒液で抽出し、かつ当該有機溶媒液を完全に飛ばすことにより未精製のサイトカラシン様代謝物群を得ることを特徴とする酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイからサイトカラシン様物質群を製造する方法。
【請求項1】 サイトカラシン様物質群を製造する方法であって、酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイをグルコース等糖の入った培地で培養した後、培地から分離した培養液より酢酸エチル等の有機溶媒液で抽出し、かつ当該有機溶媒液を完全に飛ばすことにより未精製のサイトカラシン様代謝物群を得ることを特徴とする酵母ジゴサッカロマイシス ロキシイからサイトカラシン様物質群を製造する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【特許番号】特許第3307627号(P3307627)
【登録日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【発行日】平成14年7月24日(2002.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−73115(P2000−73115)
【出願日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【公開番号】特開2001−218594(P2001−218594A)
【公開日】平成13年8月14日(2001.8.14)
【審査請求日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【出願人】(500110614)
【氏名又は名称原語表記】TAING OK
【出願人】(500110658)株式会社プランズボード創英 (2)
【参考文献】
【文献】特開 昭54−86696(JP,A)
【文献】日本食品科学工学会第46回大会要旨集(1999)p.50,2Ea5
【登録日】平成14年5月17日(2002.5.17)
【発行日】平成14年7月24日(2002.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【公開番号】特開2001−218594(P2001−218594A)
【公開日】平成13年8月14日(2001.8.14)
【審査請求日】平成12年2月9日(2000.2.9)
【出願人】(500110614)
【氏名又は名称原語表記】TAING OK
【出願人】(500110658)株式会社プランズボード創英 (2)
【参考文献】
【文献】特開 昭54−86696(JP,A)
【文献】日本食品科学工学会第46回大会要旨集(1999)p.50,2Ea5
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