説明

酵母細胞内代謝物による酵母の生理状態の評価方法

【課題】酵母の生理状態を、物質成分レベルで簡便かつ正確に評価することができる方法を提供することにある。
【解決手段】本発明による酵母の生理状態の評価方法は、目的とする酵母について取得した1または複数の細胞内代謝物濃度から、対照酵母について取得しておいた1または複数の細胞内代謝物濃度に対する変動値をそれぞれ求め、該変動値を、既知の生理状態の酵母について予め取得しておいた細胞内代謝物濃度の変動値からなるデータベースと比較することによって、目的の酵母の生理状態を判定することを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母細胞内代謝物による酵母の生理状態の評価方法に関する。詳しくは、本発明は、目的とする酵母について取得した複数の細胞内代謝物濃度から、対照酵母について取得しておいた複数の細胞内代謝物濃度に対する変動値をそれぞれ求め、その値を予め用意したデータベースの情報と比較することによって、目的とする酵母の生理状態を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酵母を用いて発酵を行うことにより、ビール、焼酎等の様々な酒類を製造することができる。酒類の品質保持のためには、このような発酵に使用する酵母の生理状態を発酵前に判定して、その後の発酵への影響を予測することが期待される。すなわち、酵母を用いた発酵、醸造や物質生産等において、生産にこれから用いようとする酵母細胞の生理状態を予め把握しておくことは、発酵の成否を予見し、高品質で安定した製品を得る観点から、重要であるといえる。
【0003】
酵母の生理状態を評価するための方法としては、細胞内pH・プロトンポンプに着目した酵母活性測定法(Intracellular pH法(ICP法))(特許文献1:特開平5−76393号公報)や、メチレンブルー法による死滅判別技術等の評価方法(非特許文献1: E.B.C. Analytica Microbiologica., J. Inst. Brew., 83, 109 (1977))が知られている。しかしながら、このような細胞内pHに基づく方法やメチレンブルー法では、酵母状態を物質成分レベルで多面的に判明できるものではなく、酵母の生理状態を発酵前に判定するという上記の目的の観点からは、さらなる改善が期待される。
【0004】
また、特開2009−153395号公報(特許文献2)には、pH感受性蛍光色素前駆体と、細胞膜非透過性のDNA染色色素とを用いて細胞を染色して、蛍光強度をフローサイトメーターを用いて測定することによって、微生物細胞の細胞内pH値に基づく細胞活性(バイタリティ)と、細胞の生死(バイアビリティ)判定とを同時に得ることを含んでなる、微生物細胞の生理状態評価方法が開示されている。
【0005】
特表2005−507108号公報(WO2003/036296)(特許文献3)には、酵母の反応ネットワークの活性をシミュレートし、かつ予測するための計算方法、すなわち、酵母生理機能を決定するためのインシリコモデルが開示されている。このモデルは、異なる環境的または遺伝的条件下での培養における酵母細胞の挙動を様々にシミュレートすることを目指したものであり、酸素や培地成分などの培養条件の改善、未知の代謝経路の同定、有用な代謝産物の同定などに使用できるとされている。しかしながら、この公報に開示された発明は、酵母の生理機能のインシリコ解析の手法に関するものであり、ウェットの実験については、連続培養モデルの検証が行われているに過ぎない(特許文献3の図10)。またインシリコ解析において使用されるのは、発行された文献、実証された実験結果等(0065段落)であるとされているものの、ここには、ウェットな条件の場合に、どのような酵母から、どのような手法、条件、対象物についてデータを取得し、それをどのように解析するかについて、何ら具体的な開示や示唆はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−76393号公報
【特許文献2】特開2009−153395号公報
【特許文献3】特表2005−507108号公報(WO2003/036296)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】E.B.C. Analytica Microbiologica., J. Inst. Brew., 83, 109 (1977)
【発明の概要】
【0008】
本発明者等は今般、酵母の細胞内代謝物濃度を比較することで、条件が異なると酵母細胞内代謝物がどのように変化するかということを物質成分レベルで把握することに成功した。より具体的には、本発明者等は、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS(Capillary Electrophoresis Time-of-Flight Mass Spectrometer))法を用いて酵母細胞内代謝物濃度を定量解析し、それらの比較から、酵母の生理状態を物質成分レベルで評価することに成功した。グルコースを唯一の成分として酵母を発酵させた場合、酵母は死滅し、この酵母を用いた次発酵では正常な発酵ができないことが知られている。本発明者等は、発酵終了時の酵母の細胞内代謝物のCE−TOFMS法による解析を行ったところ、グルコース培地で発酵した酵母の細胞内代謝物において、アミノ酸が枯渇していると同時に、解糖系(解糖経路)の後半以降における代謝産物が多く蓄積されることを見出した。この知見に基づいて、様々な条件下で発酵させた酵母サンプルの細胞内代謝物濃度を定量解析し、それらをまとめたデータベースを作成して、これを、評価したい生理状態が未知の(目的の)酵母における細胞内代謝物濃度の解析データと比較することで、目的の酵母の生理状態を評価することに成功した。さらに、これらデータをクラスター解析することにより、どの条件が他の条件とより類似しているかを迅速かつ適格に判別することにも成功した。
酵母の未知の生理状態を、酵母細胞内の代謝物濃度を測定することで、正確かつ簡便に、さらに迅速に判別することができたことは、予想外のことであった。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0009】
よって本発明は、酵母の生理状態を、物質成分レベルで簡便かつ正確に評価することができる方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明による酵母の生理状態の評価方法は、
目的とする酵母について取得した1または複数の細胞内代謝物濃度から、対照酵母について取得しておいた1または複数の細胞内代謝物濃度に対する変動値をそれぞれ求め、
該変動値を、既知の生理状態の酵母について予め取得しておいた細胞内代謝物濃度の変動値からなるデータベースと比較することによって、目的の酵母の生理状態を判定することを含んでなる。
【0011】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、濃度を取得する細胞内代謝物は、解糖系の生成物を少なくとも含んでなる。本発明の一つの別の好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、濃度を取得する細胞内代謝物は、解糖系の生成物とアミノ酸とを少なくとも含んでなる。
【0012】
本発明の別の一つの好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、変動値は、目的とする酵母について取得した細胞内代謝物濃度と、対照酵母について取得しておいた細胞内代謝物濃度の比として求められる。
【0013】
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、既知の生理状態の酵母は、発酵遅延を起こす、状態の悪い酵母を含む。
【0014】
本発明のさらに別の一つのより好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、解糖系における後半の生成物である、フルクトース−1,6−ビスリン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、およびピルビン酸からなる群より選択される1または2以上の細胞内代謝物の変動値に増大が見られるという情報が含まれる。
【0015】
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、解糖系における前半の生成物である、グルコース−6−リン酸、およびフルクトース−6−リン酸からなる群より選択される1または2の細胞内代謝物の変動値に減少が見られるという情報が含まれる。
【0016】
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、細胞内代謝物としてのアミノ酸の変動値に減少が見られるという情報が含まれる。
【0017】
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、得られた変動値とデータベースとの比較を、クラスター解析により行って、得られた変動値と類似した値を有する、既知の生理状態の酵母をデータベースより抽出し、それに基づいて、目的の酵母の生理状態を判別することを含んでなる。
【0018】
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、酵母の細胞内代謝物濃度を、キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS)法により求める。
【0019】
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、生理状態を評価する酵母は、培養、発酵または醸造後の保存中のいずれかの酵母である。
【0020】
本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、酵母はビール酵母である。
【0021】
本発明の別の態様によれば、培養、発酵または醸造後の保存中の酵母を、本発明による酵母の生理状態の評価方法に付して、得られた酵母の生理状態の評価に基づいて、目的に適合した良好な状態の酵母を選別することを含んでなる、状態の良い酵母の選別方法が提供される。
【0022】
本発明の方法によれば、培養、発酵または醸造後の保存中の酵母の生理状態を、物質成分レベルで、簡便かつ正確に把握することができる。またこれにより、発酵遅延やオフフレーバーの発生などの問題を引き起こす可能性のある酵母を排除し、目的に適合した良好な状態の酵母を容易に選別することも可能となる。また、本発明の方法によれば、酵母の発酵中の経時変化、酵母保存中における経時変化、酵母株による違い、酵母の発酵条件による違い等の条件の違いに伴う酵母の生理状態を、正確に判別することも可能である。したがって、これらより、本発明は、発酵の作業工程の改善および品質の均一化等に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の結果を示す図である。具体的には、グルコース培地と完全培地とで培養した酵母の細胞内代謝物濃度の変動値の解析結果を示す。
【図2】実施例1の結果を示す図である。具体的には、解糖系の代謝産物濃度の解析結果を示す。
【図3】実施例2の結果を示す図である。具体的には、発酵遅延を引き起こした酵母における解糖系の代謝産物濃度の解析結果を示す。
【図4】実施例3の結果を示す図である。具体的には、本発明に従うクラスター解析の結果を示す。
【発明の具体的説明】
【0024】
本発明による酵母の生理状態の評価方法は、前記したように、目的とする酵母について取得した1または複数の細胞内代謝物濃度から、対照酵母について取得しておいた1または複数の細胞内代謝物濃度に対する変動値をそれぞれ求め、該変動値を、既知の生理状態の酵母について予め取得しておいた細胞内代謝物濃度の変動値からなるデータベースと比較することによって、目的の酵母の生理状態を判定することを含んでなる。
【0025】
ここで、酵母の生理状態とは、酵母が発酵する際の状態の良し悪しを意味し、酵母の状態が良い場合には、それを使用することによって、高品質で安定した発酵が期待でき、その結果、高品質な酒類を醸出させることができる。また酵母の状態が悪い場合には、それを使用すると質の良い安定した発酵が期待できず、その結果、低品質の酒類ができてしまう。
【0026】
本発明において、酵母としては、分類学上酵母の範疇に入るものであればいずれもであっても良く、例えば、ビール酵母(例えば、下面発酵酵母、上面発酵酵母)、清酒酵母、焼酎酵母、ワイン酵母、ウイスキー酵母、パン酵母等であって、微生物学的にはサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属するもの、好ましくはサッカロマイセス・センス・ストリクト(Saccharomyces sensu stricto)に属するものが挙げられる。また酵母には、例えば醸造業者が使用目的に応じて育種したものも包含され、そのような「変異種」(変異株)も本発明における酵母に包含される。本発明の好ましい態様によれば、前記したように、酵母はビール酵母である。
【0027】
本発明において、生理状態を評価する「目的とする酵母」は、好ましくは、培養、発酵または醸造後の保存中のいずれかの酵母である。
【0028】
本発明においては、まず、目的とする酵母について1または複数の細胞内代謝物濃度を取得しておく。本発明において、酵母の細胞内代謝物濃度は測定可能なものであれば特にその方法に制限はない。好ましくは、酵母の細胞内代謝物濃度は、キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS)法により求める。具体的な測定手法の例としては、例えば、後述する実施例に記載のものが挙げられる。
【0029】
従来、細胞を物質成分レベルで網羅的に定量解析する場合、揮発性化合物についてはGC/MSで、水溶性物質についてはLC/MSで解析が行われてきた。細胞における代謝物質の多くは陽イオン性か陰イオン性の低分子であることから、キャピラリー電気泳動−質量分析法(CE−MS(Capillary Electrophoresis Mass Spectrometer))が開発された[Anal. Chem. 72, 1236 (2000)]。この手法はさらに、イオン性メタボローム解析技術を著しく向上させ、キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS)法を用いることで、さらにイオン性代謝物質の高速、高分離能、高感度測定が実現できるようになってきた。本発明においては、典型的にはCE−TOFMS法を用いて定量解析した酵母細胞内代謝物濃度の比較から酵母の生理状態を評価する。したがって、酵母細胞内のpHなどのみでは十分でなかったところを、細胞内代謝物濃度を定量することで、物質成分レベルで総合的に、酵母の生理状態を評価することが可能となる。
【0030】
ここで細胞内代謝物とは、細胞内での種々の代謝によって生ずる代謝産物をいう。このような代謝物を生じ得る代謝としては、解糖系/糖新生、アミノ酸代謝、ペントースリン酸経路、クエン酸回路(TCAサイクル)、尿素回路、プリン代謝経路、ピリミジン代謝経路、電子伝達系、脂肪β酸化、脂肪酸の合成等が挙げられる。本発明においては特に、細胞内代謝物はCE−TOFMS法を用いてその濃度が測定できるものであることが望ましい。
【0031】
本発明において、濃度を取得する細胞内代謝物の種類は1または複数である。ここで「複数」とは、2以上を意味する。評価に使用する代謝物の種類が少なすぎると、酵母の生理状態の判別の精度が低下し、評価の正確性が低下するおそれがある。評価に使用する代謝物の種類が多ければ、判別の精度を高め、評価の正確性を挙げることができるが、測定に時間とコストがかかり、判定・評価が難しくなる傾向にある。濃度を取得可能な細胞内代謝物の種類は、例えば、3×10個あるとも言われるが(Appl. Environ. Microbiol., 74, 2787-2796. 2008)、濃度を取得する細胞内代謝物の種類は、評価に関連性が低いと思われる代謝物の種類が明らかであれば、細胞内代謝物の種類を絞り込むことができる。この場合、例えば、濃度を取得する細胞内代謝物の種類は、2〜300種であることができ、好ましくは2〜200種である。さらには、100種以下であってもよく、90種以下、80種以下、70種以下、60種以下、50種以下、40種以下、30種以下、20種以下、または10種以下に絞り、これらについて変動値を求めるとしてもよい。
【0032】
実施例でも後述するように、グルコースを唯一の成分として酵母を発酵させた後の酵母の細胞内代謝物のCE−TOFMS法による解析を行ったところ、グルコース培地で発酵した酵母の細胞内代謝物において、アミノ酸が枯渇していると同時に、解糖系(解糖経路)の後半以降における代謝産物が多く蓄積されることが確認できた。このとき、解糖系の前半の生成物(代謝産物)について蓄積はあまり見られなかった。なおここで、解糖系における後半の生成物(代謝産物)とは、フルクトース−1,6−ビスリン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、およびピルビン酸であり、前半の代謝産物とは、グルコース−6−リン酸、およびフルクトース−6−リン酸である。一方で、グルコース以外の各種栄養素を含む完全培地で発酵させた酵母においては、解糖系の前半の代謝産物について蓄積が見られたが、後半の代謝産物については、顕著な蓄積は見られなかった。またこのときアミノ酸の枯渇も観察されなかった。さらに、発酵遅延を起こす酵母と、正常な酵母との間でも同様の傾向が観察されている。
【0033】
これらのことから、細胞内の解糖系での生成物の濃度を測定することで、それに基づいて、状態の悪い酵母と、状態の良い酵母とを判別できると言える。よって、本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による方法において、濃度を取得する細胞内代謝物は、解糖系の生成物を少なくとも含んでなる。解糖系の生成物は、グルコース−6−リン酸、フルクトース−6−リン酸、フルクトース−1,6−ビスリン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、およびピルビン酸から1または2以上を選択することができる。また解糖系における後半の生成物から1または2以上を選択し、解糖系における前半の生成物から1または2選択して、これらを組み合わせて使用しても良い。
さらに、本発明の一つの別の好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、濃度を取得する細胞内代謝物は、解糖系の生成物とアミノ酸とを少なくとも含んでなる。
【0034】
本発明の別の好ましい態様によれば、濃度を取得する細胞内代謝物は、後述する表1に記載のもの、後述する表2に記載のもの、後述する表3に記載のもの、後述する表2および表3に記載のもの、または後述する表4に記載のものの群であってもよい。
【0035】
本発明においてはまた、対照酵母について細胞内代謝物濃度を取得しておく。ここで対照酵母としては、次の発酵で正常な発酵を行うことが可能な酵母を使用することが望ましい。ここで、正常は発酵を行えるとは、糖消費速度が遅延することなく、酢酸エステル等の香気成分のバランスが良く、ダイアセチル、アセトアルデヒド等のオフフレーバーの発生が抑えられた発酵が行える状態をいう。対照酵母について濃度を取得しておく細胞代謝物の種類は、1または複数であることができ、この数は、目的とする酵母についての数に対応する。
【0036】
本発明によれば、前記したように、変動値は、好ましくは、目的とする酵母について取得した細胞内代謝物濃度と、対照酵母について取得しておいた細胞内代謝物濃度の比として求められる。必要により、これをさらにLog2変換したものを利用しても良い。
【0037】
次に本発明の評価方法においては、得られた変動値を、既知の生理状態の酵母細胞について予め取得しておいた細胞内代謝物濃度の変動値からなるデータベースと比較することによって、目的の酵母の生理状態を判定する。
すなわち、予め、既知の生理状態の酵母細胞について、対照酵母との間で細胞内代謝物濃度の変動値を取得しておき、データベースを作成しておく。データベースに加えられる細胞内代謝物濃度の変動値のデータは、それが対応する既知の生理状態の酵母細胞と関連づけておくことが必要である。すなわち、変動値とデータベース上の値を比較し、目的とする酵母の変動値と、データベース上のある酵母の値が類似する場合には、この目的とする酵母は、このデータベース上の酵母と同等の生理状態にあると判定することができる。予め取得しておく既知の生理状態の酵母細胞の種類は、多いほど、評価の精度を高めることができる。なお、目的とする酵母の変動値と、データベース上のある酵母の値とが類似するかどうかは、例えば、次のようなクラスター解析による手法により判断することができる。すなわち、クラスター解析により、まず、対照酵母に対する目的の酵母の代謝物濃度の比(Log2)パターンの違いから項目をグループに分けることができる。パターンが似ている項目は、クラスター解析後の表示によって、より近くの位置に示される。従って、目的の項目と近いクラスターに配置された場合、その生理機能は、より近いと予測できる場合がある。
【0038】
予め取得しておく既知の生理状態の酵母としては、評価をしようとする内容に応じて適宜設定することができるが、例えば、発酵遅延を起こすような酵母において、その利用の程度や発酵遅延の度合いも加味して変動値を得ておいてもよい。また、酵母の発酵中の経時変化に従い各時点での酵母についての値を得ても良く、さらに、酵母の保存中における経時変化に従い各時点での酵母についての値を得ても良い。また、酵母の種類、例えば、下面発酵酵母、上面発酵酵母、清酒酵母、焼酎酵母、ワイン酵母、ウイスキー酵母などについて値を得ておいても良く、また実験室酵母の全遺伝子破壊株のデータを組み合わせても良い。
【0039】
よって、既知の生理状態の酵母は好ましくは、発酵遅延を起こす、状態の悪い酵母を含む。
【0040】
本発明のさらに好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、解糖系における後半の生成物である、フルクトース−1,6−ビスリン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、およびピルビン酸からなる群より選択される1または2以上の細胞内代謝物の変動値に増大が見られるという情報が含まれる。すなわち、本発明の評価方法において、このような情報に基づいて、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母であるか否かを判定することができる。
【0041】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、解糖系における前半の生成物である、グルコース−6−リン酸、およびフルクトース−6−リン酸からなる群より選択される1または2の細胞内代謝物の変動値に減少が見られるという情報が含まれる。すなわち、本発明の評価方法において、このような情報に基づいて、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母であるか否かを判定することができる。
【0042】
本発明の別の好ましい態様によれば、本発明による評価方法において、データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、細胞内代謝物としてのアミノ酸の変動値に減少が見られるという情報が含まれる。すなわち、本発明の評価方法において、このような情報に基づいて、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母であるか否かを判定することができる。
【0043】
本発明のさらに別の一つの好ましい態様によれば、前記したように、本発明による評価方法において、得られた変動値とデータベースとの比較を、クラスター解析により行って、得られた変動値と類似した値を有する、既知の生理状態の酵母細胞をデータベースより抽出し、それに基づいて、目的の酵母の生理状態を判別することを含んでなる。
【0044】
ここでクラスター解析は、対象物(データの集まり)をサンプルの類似度(距離)によって、いくつかのグループ(クラスター)に分けるデータ分析手法の一つである。この解析は、スタンフォード大学で開発されたClusterとTreeViewというコンピュータのソフトウエアを用いて行うことができる。なお、ソフトウエアの設定条件や使用法についてはマニュアルを適宜参照することができる。具体的には、コントロール(対照)に対するテスト(目的データ)の比から変換したlog2値を用いて、種々のデータのパターンの違いからClusterを用いて条件をグループ分けすることができる。これらの解析結果は、TreeViewを用いて、テスト/コントロールの比から変換したlog2値を視覚的に表現できる。すなわち、増大した場合を赤色、減少した場合を緑色、変化が見られない場合を黒色で表現し、それらの明るさに応じて強さを表示することができる。その結果、表示パターンが似ている場合、より類似していると容易に判断することができる。
【0045】
さらに、本発明の別の態様によれば、培養、発酵または醸造後の保存中の酵母を、本発明による酵母の生理状態の評価方法に付して、得られた酵母の生理状態の評価に基づいて、目的に適合した良好な状態の酵母を選別することを含んでなる、状態の良い酵母の選別方法が提供される。これにより、目的に適合した良好な状態の酵母を容易に選別するも可能となる。
【実施例】
【0046】
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
実験方法:
(1) 発酵試験
前培養として、実用下面発酵酵母S. pastorianus KBY011株(キリンビール株式会社所有菌株ストックより入手)を用い、200mlのYPD10培地(1%酵母エキス、2%ペプトン、10%グルコース)において、20℃の条件下、嫌気攪拌培養を行った。
培養開始から96時間後に、酵母を集菌して、200mlのグルコース培地(10%グルコース)、または、200mlのYPD10培地において、20℃の条件下、嫌気攪拌培養により本試験(発酵)を行った。前培養、および発酵終了後の酵母サンプルを採取して解析に用いた。
【0048】
(2) CE−TOFMS法による解析
酵母サンプルの抽出は、論文(Appl. Environ. Microbiol., 74, 2787-2796. 2008)に記載された方法に従って、3×10個の酵母細胞内の代謝物を抽出した。抽出した酵母抽出物試料に、泳動時間補正用内部標準物質を添加した純水(Milli−Q水)50μLを加えて溶解し、測定に供した。カチオンモードでの測定には10倍希釈、アニオンモードでの測定には5〜10倍に希釈した試料を用いた。
キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS)としては、Agilent CE−TOFMS システム(Agilent Technologies社製)を使用した。
CE−TOFMS法で検出されたピークは、自動積分ソフトウェアのMasterHands ver.1.0.6.12を用いて自動抽出し、ピーク情報として質量電荷比(m/z)、泳動時間(Migration time: MT)とピーク面積値を得た。
得られたピーク面積値は下記の式を用いて相対面積値に変換した。次に、m/zとMTの値をもとに、各試料間のピークの照合・整列化を行った。
相対面積値 = 目的ピークの面積値/内部標準物質の面積値
【0049】
検出されたピークに対してm/zとMTの値をもとに代謝物データベースとの照合、検索を行った。また、KEGG4−6)データベースおよびペプチドリスト(2〜4残基)に収録されているが、標準物質が入手できない物質についてはMTの情報が得られていないため、分子構造式による理論上のm/zを算出し、これとの照合により検索を行った。
【0050】
実施例1: 栄養源のバランスを崩した発酵による酵母細胞内代謝物濃度の解析
酵母の生理状態が悪化する原因には、数多くの要因が明らかになっている。栄養源の欠乏もその一つである。グルコースを唯一の栄養源として発酵を行うと、酵母は直ちに死滅することが知られている。この現象は、糖誘導による細胞死、即ち、SICD(Sugar-Induced Cell Death)と呼ばれている(FEMS Yeast Res. 2003 4:7-13)。換言すれば、糖以外の栄養源欠乏による細胞死とも考えられる。糖以外の栄養源が不十分な場合には、糖誘導による細胞死が発生すると考えられる。
【0051】
グルコース培養した酵母の生理状態を物質成分レベルで評価するために、発酵試験を行い、その酵母サンプルをCE−TOFMS解析に供した。
具体的には、前記した発酵試験に従って得た、前培養および発酵終了後の酵母サンプルを採取して解析に用いた。
(i)発酵前の酵母の代謝物、(ii)グルコース培地における発酵終了後の酵母の代謝物(テスト)、(iii)YPD10培地(完全培地)における発酵終了後の酵母の代謝物(コントロール)の3サンプルについて、CE−TOFMSのカチオンモード、アニオンモードによる測定を実施した。
本試験では、代謝物質データベース、KEGGデータベースおよびペプチドリスト(2〜4残基)に登録された物質を対象として解析を行った。この結果、379(カチオン227,アニオン152)のピークが検出された。
発酵終了時の酵母の細胞内代謝物濃度の変化(コントロールである正常酵母Aに対する比)をクラスター解析した。
【0052】
結果は表1および図1に示される通りであった。
図1中、各レーンはそれぞれ下記の通りを意味する:
左レーン: 添加前におけるグルコースを唯一の栄養源とした際の酵母細胞内の代謝物濃度の比(Log2)、
中レーン: 添加前におけるYPD10培地で発酵させた際の酵母細胞内の代謝物濃度の比(Log2)、
右レーン: 左レーン/中レーンの値で1.5倍以上変化した物質成分のみをLog2で示した。
また得られた値が、コントロールの値よりも高い値の場合を赤色、低い値の場合を緑色で表現し、その大きさに応じて明るさを変えて表示した。
【0053】
結果から、グルコース培地で発酵が終了した酵母の細胞内代謝物においては、アミノ酸が枯渇していると同時に、解糖経路の後半以降の代謝経路中の代謝物の蓄積が特徴的に観察された。
【0054】
【表1】


【0055】
また、解糖系の代謝経路の生成物について着目し、これらの解析結果を図2にまとめて示した。
図中、左は、発酵前の酵母の代謝物、中間は、グルコース培地における発酵終了後の酵母の代謝物(テスト)、右は、YPD10培地における発酵終了後の酵母の代謝物(コントロール)の濃度の相対比で1.5倍以上変化した物質成分のみを示した。
また図中の物質は下記の通りを意味する:
Glucose: グルコース、
Glucose-6-phoshate: グルコース−6−リン酸、
Fructose-6-phoshate: フルクトース−6−リン酸、
Fructose-1,6-bisphoshate: フルクトース−1,6−ビスリン酸、
Dihydrocyacetone P: ジヒドロキシアセトンリン酸、
Gyeceraldehyde-3P: グリセルアルデヒド−3−リン酸、
Glycerate-1,3-P2: 1,3−ビスホスホグリセリン酸、
Glycerate-3P: 3−ホスホグリセリン酸、
Glycerate-2P: 2−ホスホグリセリン酸、
Phosphoenolpyruvate: ホスホエノールピルビン酸、
Pyruvate: ピルビン酸。
【0056】
結果から、YPD10培地で培養した場合、フルクトース−6−リン酸(Fructose-6-phoshate)の蓄積量が多く、フルクトース−1,6−ビスリン酸(Fructose-1,6-bisphoshate)量が少なかった。このことからこのホスホフルクトキナーゼ(PFK1)が律速となっていることが観察された。このホスホフルクトキナーゼは解糖経路の律速酵素であり、解糖により生じるATPがこの酵素の阻害剤として働くことが知られている。
これに対して、グルコース培地で培養したサンプルでは、フルクトース−1,6−ビスリン酸の蓄積量が多くなっており、ホスホフルクトキナーゼの阻害は観察されていない。グルコース培養した生理状態が悪い酵母には、フルクトース−1,6−ビスリン酸の蓄積量が多く、物質成分レベルで考えると、この蓄積が、酵母の生理状態の悪さに関係している可能性が示唆された。
【0057】
実施例2: 発酵遅延を発生した酵母細胞内代謝物の解析
糖消費速度が低下して、発酵遅延を発生した発酵終了後の酵母と、正常に発酵が行われた酵母のサンプルの比較を行い、物質成分レベルでどのような差異があるかをCE−TOFMS解析により調査した。
ここで、酵母Aは正常に発酵した酵母であり、酵母Bは、糖消費速度が低下して、発酵遅延を発生した発酵終了後の酵母であり、酵母Cはその酵母を用いて次発酵を行ない、発酵遅延を発生した酵母であった。これらの発酵終了後の酵母サンプルを上記手法で解析した。
【0058】
結果は、表2および表3に示された通りであった。
酵母Bおよび酵母Cの細胞内代謝物濃度がコントロールとして1.5倍以上減少した代謝物は8個あった(表1)。また、1.5倍以上増大した代謝物は30個あった(表2)。
【0059】
さらに、解糖系の特定の細胞内代謝物の濃度の変化を図3にまとめた。なお図では、コントロールである発酵正常な酵母Aの細胞内代謝物濃度との相対比で示されている。
【0060】
解糖系の中で、フルクトース−1,6−ビスリン酸を境に、グルコース側の前半と、エタノール側の後半とで代謝物の挙動が大きくことなっていることが明らかになった。すなわち、発酵遅延を発生していた酵母においては、グルコースからフルクトース−1,6−ビスリン酸までの代謝経路のフラックスが細くなり、フルクトース−1,6−ビスリン酸からエタノールまでの代謝経路のフラックスが太くなっていた。
従って、酵母の生理状態定量的に把握する場合、フルクトース−1,6−ビスリン酸やホスホエノールピルビン酸(Phosphoenolpyruvate)等の細胞内代謝物濃度を指標として、酵母の状態が悪くなっていることを判断することが可能であると考えられた。
【0061】
表2: 発酵遅延を発生した酵母の細胞内代謝物の変化
(コントロールと比較して1.5倍以上減少した代謝物)
【表2】

表は、コントロールである発酵正常な酵母Aの細胞内代謝物濃度との相対比(Ratio)を示す。
【0062】
表3: 発酵遅延を発生した酵母の細胞内代謝物の変化
(コントロールと比較して1.5倍以上増大した代謝物)
【表3】

表は、コントロールである発酵正常な酵母Aの細胞内代謝物濃度との相対比を示す。
【0063】
実施例3: データベースによる解析の検討
様々な条件下で発酵させた酵母A〜Lの細胞内代謝物濃度を得、実施例1と同様にして酵母の細胞内代謝物濃度の変化(コントロールである正常酵母Aに対する比)をクラスター解析した。
【0064】
なお、実験に使用した酵母サンプルとしては、発酵条件の異なる発酵終了後のものを用意した。
具体的には、酵母Aは、正常に発酵した酵母であり、
酵母Bは、糖消費速度が低下して、発酵遅延を発生した発酵終了後の酵母であり、
酵母Cは、酵母Bがさらに劣化し、発酵遅延を発生した酵母であり、
酵母D〜Lは、発酵条件の異なる発酵終了後のサンプルであった。
【0065】
結果は、表4および図4に示される通りであった。ここで値は、少なくとも1つのデータで1.5倍以上の差があった物質成分のみをLog2で示した。
図中、値は、コントロールの値よりも高い値の場合を赤色、低い値の場合を緑色で表現し、その大きさに応じて明るさを変えて表示した。
【0066】
図から明らかなように、解析結果(データベース)を利用することによって、どの条件が他の条件とより類似しているかについて、容易に判別することが可能であることがわかった。したがって、上記のようにして、これらの変動値のデータベースを予め作成しておくことによって、生理状態が未知の酵母について、その生理状態を簡便に調べることが可能であることがわかった。
【0067】
【表4】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的とする酵母について取得した1または複数の細胞内代謝物濃度から、対照酵母について取得しておいた1または複数の細胞内代謝物濃度に対する変動値をそれぞれ求め、
該変動値を、既知の生理状態の酵母について予め取得しておいた細胞内代謝物濃度の変動値からなるデータベースと比較することによって、目的の酵母の生理状態を判定することを含んでなる、酵母の生理状態の評価方法。
【請求項2】
濃度を取得する細胞内代謝物が、解糖系の生成物を少なくとも含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
濃度を取得する細胞内代謝物が、解糖系の生成物とアミノ酸とを少なくとも含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
変動値が、目的とする酵母について取得した細胞内代謝物濃度と、対照酵母について取得しておいた細胞内代謝物濃度の比として求められる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
既知の生理状態の酵母が、発酵遅延を起こす、状態の悪い酵母を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、解糖系における後半の生成物である、フルクトース−1,6−ビスリン酸、ジヒドロキシアセトンリン酸、グリセルアルデヒド−3−リン酸、1,3−ビスホスホグリセリン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、およびピルビン酸からなる群より選択される1または2以上の細胞内代謝物の変動値に増大が見られるという情報が含まれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、解糖系における前半の生成物である、グルコース−6−リン酸、およびフルクトース−6−リン酸からなる群より選択される1または2の細胞内代謝物の変動値に減少が見られるという情報が含まれる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
データベースに、発酵遅延を起こす状態の悪い酵母は、細胞内代謝物としてのアミノ酸の変動値に減少が見られるという情報が含まれる、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
得られた変動値とデータベースとの比較を、クラスター解析により行って、得られた変動値と類似した値を有する、既知の生理状態の酵母をデータベースより抽出し、それに基づいて、目的の酵母の生理状態を判別することを含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酵母の細胞内代謝物濃度を、キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS)法により求める、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
生理状態を評価する酵母が、培養、発酵または醸造後の保存中のいずれかの酵母である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酵母がビール酵母である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
培養、発酵または醸造後の保存中の酵母を、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法に付し、得られた酵母の生理状態の評価に基づいて、目的に適合した良好な状態の酵母を選別することを含んでなる、状態の良い酵母の選別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−172512(P2011−172512A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39152(P2010−39152)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】