説明

酵母菌感染症の予防・改善に用いるための生理用ナプキン

【課題】酵母菌感染症の予防・改善に用いるための生理用ナプキン
【解決手段】透水性の表面シートと非透水性の裏面シートの間に吸水材を介装して構成される生理用ナプキンであって、透水性の表面シートと吸水材の間に抗菌シートを配置してなり、該抗菌シートは、紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸又は塗布したことを特徴とする、酵母菌感染症の予防・改善に用いるための生理用ナプキン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母菌感染症、特に、膣カンジダ症の予防・改善に用いるための生理用ナプキンに関するものであり、詳細には、透水性の表面シートと吸水材の間に抗菌シートを配置してなり、該抗菌シートは、紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸又は塗布したことを特徴とする生理用ナプキンに関する。
【背景技術】
【0002】
水虫やたむし等の皮膚白癬やカンジダ症などの酵母菌感染症の治療には、ミコナゾール、テルコナゾール、イトラコナゾール、クロトリマゾール等のようなアゾールの抗真菌剤が使用されているが、これらの抗真菌剤は、皮膚刺激性など、皮膚に対して悪影響を及ぼすことがあった。
そのため、酵母菌感染症の予防・治療のために、より安全性の高い薬剤が求められており、特に、これらの薬剤は、酵母菌感染によって損傷した皮膚患部に適用することが多いため、健康な皮膚に対して用いる場合よりも、より安全性に優れる薬剤であることが要求される。
また、カンジダ症は、皮膚、粘膜、腸管等において、他の常在菌と共に存在している非病原性の酵母菌であるカンジダ・アルビカンスが、ステロイド、抗生物質、免疫抑制剤等の薬物の過剰投与、糖尿病や免疫不全等による免疫力の低下、衛生状態の劣悪化等を原因とする常在菌のバランスの崩れにより発症するものであるため、再発や再感染を繰り返しやすい疾患である。
カンジダ症のなかでも、膣カンジダ症は多くの女性が感染したことがあり、加えて、上記のように再発や再感染を繰り返し易いにもかかわらず、心情的理由から医師による十分な検査を行わず、患者自身の判断で市販のOTC医薬品により処置されるケースも多い。
そのため、薬剤の選択が不適切で、十分な治療効果が得られなかったり、逆に症状が悪化することもあった。
また、特に、生理中は、カンジダ菌や他の雑菌が繁殖しやすい状態にあるにも拘らず、出血等のため、通常、塗り薬等は使用できないという問題があった。
従って、安全性が高く、それゆえ安心して使用できる生理用ナプキンであって、酵母菌感染症、特に、膣カンジダ症の予防、改善、再発防止効果を有し、且つ他の菌に対しても有効である上記酵母菌感染症、特に、膣カンジダ症の予防、改善、再発防止のための生理用ナプキンに対する要求が存在する。
一方、幅広い抗菌性を有し、天然素材で安全性が高い物質としてヒノキチオールが知られている。しかし、ヒノキチオールは、水溶化が困難であり、紫外線に弱いという欠点を有しているため、溶解性が高いアルコールに混ぜて使用されるのが一般的であり、歯磨き、ヘアートニック等に使用されるに留まっている。
また、天然ヒノキチオールは食品添加物にも指定されているにも拘らず、上記の理由等により、梅干のカビの予防程度にしか使用されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、酵母菌感染症、特に、膣カンジダ症の予防・改善に有用な生理用ナプキンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、安全性に優れる天然素材であるヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール
含有率20ないし60%のアルコール溶液を、紙又は不織布に含浸又は塗布した抗菌シートを、透水性の表面シートと吸水材の間に配置してなる生理用ナプキンが、人体に対する安全性が高く且つ低刺激性である、酵母菌感染症、特に、膣カンジダ症の予防・改善に有用な生理用ナプキンとなり得ることを見出し本発明を完成させた。
【0005】
即ち、本発明は、
(1)透水性の表面シートと非透水性の裏面シートの間に吸水材を介装して構成される生理用ナプキンであって、透水性の表面シートと吸水材の間に抗菌シートを配置してなり、該抗菌シートは、紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸又は塗布したことを特徴とする、酵母菌感染症の予防・改善に用いるための生理用ナプキン、
(2)前記ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩において2種以上の金属が使用される前記(1)記載の生理用ナプキン、
(3)前記金属が銅、アルミニウム、亜鉛又はこれらの混合物である前記(2)記載の生理用ナプキン、
(4)アロエ、緑茶、熊笹、及びドクダミからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む水溶液を使用する前記(1)ないし(3)の何れか1つに記載の生理用ナプキン、
(5)グリセリン及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水溶液を使用する前記(1)ないし(4)の何れか1つに記載の生理用ナプキン、
(6)酵母菌感染症が膣カンジダ症である前記(1)ないし(5)の何れか1つに記載の生理用ナプキン、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の生理用ナプキンは、各種酵母菌に対する優れた、幅広い抗菌・殺菌効果を有し、人体に対する安全性が高く且つ低刺激性であるため、生理中における、酵母菌感染症、特に膣カンジダ症に対する予防・改善において有用である。
また、本発明の生理用ナプキンは、酵母菌以外の菌に対しても幅広い抗菌・殺菌効果を有するため、酵母菌に加えて他の菌が複合的に関与するような酵母菌感染症に対する予防・改善においても有用である。
本発明の生理用ナプキンは、その使用により、酵母菌感染症、特に膣カンジダ症の感染、再発、再感染を抑えることができる。
また、本発明の生理用ナプキンは、安全性に優れ、低刺激性であるため、膣カンジダ症の発症後の生理においても安心して使用でき、これにより、症状を軽度に抑えることができ、また、治癒までの期間を短くすることができ、また、例え生理中に発症したとしても、症状を軽度に抑えることができ、それにより、治癒までの期間を短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の酵母菌感染症の予防・改善に用いるための生理用ナプキンは、透水性の表面シートと非透水性の裏面シートの間に吸水材を介装して構成される生理用ナプキンであって、透水性の表面シートと吸水材の間に抗菌シートを配置してなり、該抗菌シートは、紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸又は塗布したことを特徴とする。
【0008】
抗菌シートに使用する紙又は不織布は、吸水材への生理血やおりものの吸収を妨げない限りにおいて、特に限定されるものではなく、具体的な紙としては、例えば、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、マット紙及び再生紙等が挙げられ、具体的な不織布としては
、適度な強度と柔軟性を持つものが好ましく、具体的には、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、アクリル、ウレタン、ポリエステル、レーヨン、綿、麻、絹、セルロース、ウール等の繊維を単独でまたは混合して作ったものを用いることができる。また本発明に使用する紙又は不織布は、単独で用いてもよく、同一もしくは異なる種類の紙又は不織布を複数枚積層してもよい。また、天然セルロース繊維や再生セルロース繊維等のセルロース繊維は親水性や保水性が高いため、これらを含有する紙又は不織布が好ましい。尚、具体的な不織布の種類としては、例えば、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、湿式不織布及び複合化不織布等を挙げることができる。
また、抗菌シートは、生理血やおりものが生理用ナプキンの横からもれにくいように、例えば、エンボス加工のような凹凸を形成して、生理血やおりものを抗菌シートの表面で保持し易いような表面加工を行ったり、また、吸水材への生理血やおりものの吸収を向上させるために、抗菌シートに単数又は複数の穴部を形成してもよい。
【0009】
抗菌シートに使用するヒノキチオールは、タイワンヒノキ、ヒバ、アスナロ等の原料植物に由来する精油から抽出された天然物でもよく、化学合成品でもよい。また、市販品のヒノキチオールをそのまま用いてもよい。原料植物としては、入手容易性の観点から、ヒバが好ましい。原料植物からのヒノキチオールの抽出・精製は公知の方法により行うことができる。前記精油としてはヒバ油が好ましい。化学合成品も公知の方法により得ることができる。市販のものとしては、たとえば、高砂香料(株)や大阪有機化学工業(株)から販売されているものを挙げることができる。
【0010】
ヒノキチオールの金属錯体としては、ヒノキチオールと、亜鉛、銅、鉄、カルシウム、マグネシウム、バリウム、スズ、コバルト、チタン、バナジウムなどとの金属錯体が挙げられる。ヒノキチオールと金属との割合は、特に限定されるものではないが、通常、ヒノキチオール:金属のモル比が2:1のもの、あるいは3:1のものが好ましく用いられる。
【0011】
ヒノキチオール若しくはヒノキチオールの金属錯体の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;銅塩、亜鉛塩等の遷移金属塩;ジエタノールアミン塩、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モルホリン塩、ピペラジン塩、ピペリジン塩等のヘテロ環アミン塩、アンモニウム塩、アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩等の塩基性アミン塩等の有機塩類等を挙げることができる。
【0012】
これらのヒノキチオール若しくはその金属錯体又はこれらの塩は、1種類だけ単独で含有されていてもよいし、2種類以上併用してもよく、2種以上の金属が使用されるのが好ましい。
【0013】
また、好ましくは、前記金属は銅、亜鉛、アルミニウム、ビスマス又はこれらの混合物である。
また、ヒノキチオールアルミニウム錯体、ヒノキチオール亜鉛錯体、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物又はこれらの混合物が好ましい。
【0014】
また、ヒノキチオールの金属錯体又は金属錯体の塩は、耐光性がヒノキチオールよりも優れているので、耐候性が要求される場合には、ヒノキチオールの金属錯体又は金属錯体の塩を用いることが好ましい。
更に、ヒノキチオールの金属錯体又は金属錯体の塩は、ヒノキチオールよりも低い濃度(例えば、1/10程度の濃度)で同等の効果を示すことから経済的な面からも好ましい。
【0015】
ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩は、媒体1000gに対して、50μgないし100g、好ましくは、0.1gないし10g、より好ましくは、0.5ないし3gの割合で添加される。
尚、上記媒体は、水であるか又はアルコール含有率20ないし60%となるアルコール(水溶液)である。
【0016】
水溶液に使用する水は、水道水でも脱イオン水や蒸留水等の精製水でも使用できるが、脱イオン水等の精製水を使用するのが好ましい。
アルコール溶液に使用するアルコールは、たとえば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらは単独であるいは複数を組み合わせて使用してもよい。好ましいアルコールはエタノールである。
【0017】
紙又は不織布に含浸又は塗布する水溶液又はアルコール溶液中には、更に、アロエ、緑茶、熊笹、及びドクダミからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含むことができる。これらの抽出成分自体、ヒノキチオールほどではないにしても抗菌力を有するため、他の有害な菌に対する消毒効果を期待できる。また、ヒノキチオールは、一般に水に対する溶解度が0.2質量%が限界といわれているが、これらの抽出液との併用により、1質量%程度の水溶液を容易に得ることができる。従って、ヒノキチオールの含有量の高い水溶液を容易に調製できるという点からも、上記抽出物を共存させることが好ましい。
【0018】
アロエの抽出物とは、主にアロエが葉に持つゼリー状の身(葉肉)を厚搾抽出法で抽出し、熱を加えて濃縮安定化したエキスをいう。このようなアロエエキスに代えて、主成分であるアントラキノン誘導体のアロインやバーバーロインを用いてもよい。アロエ抽出物には、アロインやバーバーロインの他、アロエ‐エモジン、アロエシン、アロエニンなども含まれる。
【0019】
緑茶の抽出物としては、粉砕した緑茶を熱湯で抽出し、精製し濃縮した液を使用する。緑茶の抽出物の主成分は茶ポリフェノールである。茶ポリフェノールは、分子内にフェノール性水酸基を複数もつ化合物の総称で、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、エピガテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどを主要成分とする。
【0020】
熊笹の抽出物は、低温高圧圧搾抽出法で、熊笹を抽出することにより得られる。低温高圧圧搾抽出法は、熊笹を高圧に設定した機械装置によって温度を上げずに抽出する方法で、その時にしぼり出された液を濃縮した液が熊笹抽出物となる。熊笹は、日本や中国に広く分布しているイネ科のササの1種である。熊笹の抽出物には、主成分であるトリテルペノール(β−アミリン・フリーデン)の他、リグニン残渣、還元糖、グルコースなどの糖類も含まれている。熊笹の抽出物に代えて、これらの合成品の混合物を用いることもできる。
【0021】
ドクダミは、日本、タイワン、中国、ヒマラヤ、ジャワに分布し、山野や庭などに見られる多年草である。ドクダミの抽出物は、熊笹と同様に、低温高圧圧搾抽出法という方法で抽出する。ドクダミ抽出物には、クエルシトリン(quercitrin)、アフゼニン(afzenin)、ハイぺリン(hyperin)、ルチン、クロロゲン酸、β−シトステロール、cisおよびtrans-N-(4-ヒドロキシスチリル)が含まれている。熊笹の抽出物に代えて、これらの合
成品の混合物を用いることもできる。
【0022】
前記抽出物としては、アロエ、緑茶、熊笹及びドクダミの抽出物から選択される1種類
だけを用いてもよいが、2種類以上を併用することが好ましく、より好ましくは上記4種の抽出物を全て含む。
【0023】
前記抽出物を添加する際の配合量は、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩1質量部に対して、1ないし4質量部使用するのが好ましく、より好ましくは、1.2ないし3.5質量部の範囲である。
また、添加する際の各抽出物の配合量は以下の通りである。
例えば、アロエの抽出物は、媒体1000gに対して、20μgないし100g、好ましくは、0.1gないし10g、より好ましくは、0.5ないし2.5gの割合で添加される。
例えば、緑茶の抽出物は、媒体1000gに対して、20μgないし100g、好ましくは、0.1gないし5g、より好ましくは、0.2ないし2gの割合で添加される。
例えば、熊笹の抽出物は、媒体1000gに対して、10μgないし50g、好ましくは、0.05gないし3g、より好ましくは、0.1ないし1gの割合で添加される。
例えば、ドクダミの抽出物は、媒体1000gに対して、10μgないし50g、好ましくは、0.05gないし3g、より好ましくは、0.1ないし1gの割合で添加される。
尚、上記媒体は、水又はアルコール含有率20ないし60%となるアルコール(水溶液)である。
【0024】
紙又は不織布に含浸又は塗布する水溶液又はアルコール溶液中には、グリセリン及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を添加することもできる。
【0025】
グリセリンとしては、グリセリンおよびグリセリンの各種誘導体が挙げられる。
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル類、キラヤサポニン等が挙げられる。これらを含有することにより、ヒノキチオール濃度を10質量%にまで高めた水溶液とすることができる。
【0026】
アルコール溶液を使用する場合は、上記のような添加物を使用することなく高濃度のヒノキチオール溶液とすることができる。抗菌シートにおいては、殆どの場合、アルコールは含浸又は塗布後又はその間に蒸発して残存しないため殆ど問題となることは無い。
【0027】
前記水溶液又はアルコール溶液中には更に、柿の葉、松、杉、あま茶づる、シソ、ワサビ、アカネ、ウメ、ニンニク、ペパーミント、ヨモギ、サンショウ、ダイオウ、アザミ、ハッカ、ビワ、ムラサキ、ラベンダー、レモングラス、及びレンギョウの抽出成分、ハチミツより抽出されるプロポリス等を含有してもよい。これらは、ヒノキチオールの殺菌力を損なうことなく、ヒノキチオールの独特の臭い、苦みを緩和することができ、また、水に対するヒノキチオールの溶解度を高めることができる。
【0028】
上記に加え、さらに必要に応じて、従来使用されている添加剤、例えば金属石鹸、動物抽出物、ビタミン剤、ホルモン剤、アミノ酸等の薬効剤、色素、香料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤等を適宜配合することもできる。
【0029】
紙又は不織布に、含浸又は塗布するヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液の好ましい態様としては、以下が挙げられる。
0.5ないし5%のヒノキチオール銅錯体を含むアルコール含有率10ないし60%のエタノール溶液(水溶液)。
0.5ないし5%のヒノキチオール亜鉛錯体を含むアルコール含有率10ないし60%のエタノール溶液(水溶液)。
0.5ないし5%のヒノキチオール塩化亜鉛混合物を含むアルコール含有率10ないし60%のエタノール溶液(水溶液)。
0.5ないし5%のヒノキチオールアルミニウム錯体を含むアルコール含有率10ないし60%のエタノール溶液(水溶液)。
0.5ないし5%のヒノキチオールビスマス錯体を含むアルコール含有率10ないし60%のエタノール溶液(水溶液)。
0.5ないし5%のヒノキチオール亜鉛錯体及びヒノキチオールアルミニウム錯体の混合物を含むアルコール含有率10ないし60%のエタノール溶液(水溶液)。
【0030】
抗菌シートは、上記で示された各種成分を含有する水溶液又はアルコール溶液を紙又は不織布に、含浸又は塗布することにより製造される。
上記含浸は、各種成分を含有する水溶液又はアルコール溶液中に紙又は不織布を浸漬し、その後乾燥することにより行うことができる。
【0031】
上記塗布としては、例えば、刷毛塗り、ロールコート、スプレーコート(吹き付け)、スピンコート、スリットコート等の慣用の塗布方法を採用することができる。
【0032】
上記塗布により、特定のパターンを形成してもよい。
上記特定のパターンは、上記慣用の塗布方法を用いて形成することもできるが、慣用の印刷機、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷及びオフセット印刷等を用いて形成することもできる。
また、使用する水溶液又はアルコール溶液の温度は、30ないし60℃であるのが好ましく、また、30℃ないし45℃であるのが好ましい。
【0033】
塗布は、紙又は不織布の片面のみに施されてもよいし、両面に施されてもよい。しかし、有効成分を削減できるという点から表面シート側の片面のみに施されるのが好ましい。
【0034】
本発明の生理用ナプキンは、透水性の表面シートと非透水性の裏面シートの間に吸水材を介装して構成され、透水性の表面シートと吸水材の間に抗菌シートを配置してなるものである。
【0035】
透水性の表面シートは、身体に接する内面側のシートであり、斯かるシートとしては、各種の熱可塑性樹脂から成る不織布やこれに穿孔処理したもの、穿孔処理したシートやフィルムが挙げられる。好適な表面シートは、様々な材料、例えば織布材料または不織布材料;孔あき成形熱可塑性フィルム、孔あきプラスチックフィルム、及び繊維絡み合わせ孔あきフィルムを包含する孔あきフィルム材料;ハイドロフォーミングされた熱可塑性フィルム;多孔質発泡体;網状発泡体;網状熱可塑性フィルム;熱可塑性スクリム;またはこれらの組み合わせにより製造され得る。
また、表面シートとして用いるのに好適な織布材料及び不織布材料の非限定例には、天然繊維、修飾された天然繊維、合成繊維、またはこれらの組み合わせから製造された繊維性材料が挙げられる。
表面シートが、不織布ウェブの形態の不織布繊維性材料を含む場合には、その不織布ウェブは不織布ウェブを製造するいかなる既知の手順により製造することもできるが、これの非限定例として、スパンボンディング、カーディング、湿式、風成、メルトブロウン、ニードルパンチング、機械的絡み合わせ、熱機械的絡み合わせ、及び湿式絡み合わせが挙げられる。
【0036】
非透水性の裏面シートは、衣類に接する外面側のシートであり、斯かるシートとしては、撥水処理された不織布や熱可塑性樹脂などの非透水性の従来公知の各種シートが使用される。裏面シートとして用いるのに好適な材料には、織布材料及び不織布材料、ラミネー
トティッシュ、ポリエチレン及び/またはポリプロピレンの熱可塑性フィルムのようなポリマーフィルム、フィルムコーティング不織布材料のような複合材料、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
吸水材としては、当該技術分野において吸水材として使用されているものであれば如何なるものも用いることができ、実質的に水分を吸収保持し得るものであればよく、例えば、パルプ、レーヨン、コットン等、親水性の天然繊維、または、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維から成る紙、パルプシート、不織布などによって構成されるものを用いることができる。好適な吸水材としては、一般にエアフェルトと呼ばれる粉砕木材パルプ;捲縮セルロース塊;ヒドロゲル形成性ポリマーゲル化剤のような超吸収性ポリマーを包含する吸収性ゲル材料;化学的に剛化、変性、若しくは架橋したセルロース繊維;コフォームを包含するメルトブロウンポリマー;捲縮ポリエステル繊維を包含する合成繊維;ティッシュラップ及びティッシュラミネートを包含するティッシュ;毛管チャネル繊維;吸収性フォーム;吸収性スポンジ;合成ステープル繊維;ピートモス;若しくは任意の等価の材料;またはこれらの組み合わせが挙げられる。吸水材は、単層構造、複層構造の何れであってもよく、また、吸水材には、消臭剤、脱臭剤、抗菌剤、芳香剤、吸湿剤などを担持させてもよい。
【0038】
裏面シートの外側面には、下着にナプキン本体を固定するための粘着剤層が設けられ、斯かる粘着剤層は、使用時まで剥離紙によって被覆される。
上記の表面シートと裏面シートは、抗菌シートと吸水材を挟み込んだ状態で貼り合わされる。表面シートと裏面シートとの貼着部は、従来のナプキンと同様に、吸水材の外周囲に張出された各シートの周縁部とされ、貼合せ方法としては、接着剤を使用した貼着、ヒートシール、超音波溶着などの方法が採用される。
また、本発明の生理用ナプキンは、当該技術分野において既知の「ウィング」または「フラップ」を有する形状を採用することもできる。
【0039】
このようにして構成された、本発明の生理用ナプキンは、安全性に優れ、低刺激性であるため、膣カンジダ症の発症後の生理においても安心して使用でき、これにより、症状を軽度に抑えることができ、また、治癒までの期間を短くすることができ、また、例え生理中に発症したとしても、症状を軽度に抑えることができ、それにより、治癒までの期間を短くすることができるため、非常に有用である。
【実施例】
【0040】
以下の実施例により本発明をより詳しく説明する。但し、実施例は本発明を説明するためのものであり、いかなる方法においても本発明を限定することを意図しない。
【0041】
製造例1:ヒノキチオール水溶液の調製
以下の組成に従ってヒノキチオール水溶液を調製した。
【表1】

【0042】
製造例2:ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液の調製
ヒノキチオール32.8g(0.2mol)に40℃ないし50℃でメタノール150gを滴下して溶解し、そのままの温度で1時間攪拌した。この溶液に、メタノール100gに塩化亜鉛(ZnCl2)13.6g(0.1mol)を溶解させた溶液を、30℃な
いし40℃で1.6時間かけて滴下し、40℃ないし45℃で5時間反応させた。冷却後、析出物を濾取し、濾物をメタノール30gで2回洗浄した。減圧下(133.3Pa)19ないし48℃で乾燥することにより、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物37.1gを淡黄色塊として得た。
上記で得たヒノキチオール塩化亜鉛混合物を30%エタノール水溶液に溶解して、1%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液及び0.3%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液を調製した。
【0043】
製造例3:ヒノキチオールナトリウム塩溶液の調製
25%水酸化ナトリウム水溶液112g(0.7mol)を、ヒノキチオール121.1g(0.738mol)をメタノール160gに溶解した溶液に、35℃ないし40℃でゆっくり滴下した。溶液を30℃ないし40℃で2時間反応させた。減圧下で溶媒(メタノール)を留去して黄色塊を沈殿させ、該残渣をアセトン300gで再結晶し、濾過した後、減圧下(133.3Pa、7時間)で乾燥することにより、黄色のナトリウム塩(2水和物、133g)を得た。
上記で得たヒノキチオールナトリウム塩を30%エタノール水溶液に溶解して、3%ヒノキチオールナトリウム塩溶液を調製した。
【0044】
製造例4:ヒノキチオール溶液(30%エタノール水溶液)の調製
ヒノキチオールを30%エタノール水溶液に溶解して、1%ヒノキチオール溶液を調製した。
【0045】
製造例5:抗菌シートの作成(上質紙)
上質紙に製造例1で調製した水溶液(30℃)をインクとして用い、慣用のグラビア印刷機及び印刷条件でグラビア印刷(全面)を行うことにより、抗菌シートを作製した。
尚、上記抗菌シートにおけるヒノキチオールの量は、HPLC分析により、2.9μg/cm2であった。
【0046】
製造例6:抗菌シートの作成(レーヨン不織布)
レーヨン不織布(目付90g/m2)に製造例1で調製した水溶液(30℃)を基材の
重量に対して100質量%含浸させた後、乾燥することにより、抗菌シートを作成した。
【0047】
製造例7:抗菌シートの作成(和紙)
レーヨン不織布を和紙(秤量18g/m2)に代えた以外は製造例6と同様の操作を行
って抗菌シートを得た。
【0048】
製造例8
製造例1で調製した水溶液を製造例2で調製した1%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液に代えた以外は製造例6と同様の操作を行って抗菌シートを作成した(レーヨン不織布)。
【0049】
製造例9
製造例8で使用した1%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液を0.3%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液に代えた以外は製造例8と同様の操作を行って抗菌シートを得た(レーヨン不織布)。
【0050】
製造例10
製造例1で調製した水溶液を製造例2で調製した1%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液に代えた以外は製造例7と同様の操作を行って抗菌シートを作成した(和紙)。
【0051】
製造例11
製造例10で使用した1%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液を0.3%ヒノキチオール塩化亜鉛混合物溶液に代えた以外は製造例10と同様の操作を行って抗菌シートを得た(和紙)。
【0052】
製造例12
製造例1で調製した水溶液を製造例3で調製した3%ヒノキチオールナトリウム塩溶液に代えた以外は製造例6と同様の操作を行って抗菌シートを作成した(レーヨン不織布)。
【0053】
製造例13
製造例1で調製した水溶液を製造例3で調製した3%ヒノキチオールナトリウム塩溶液に代えた以外は製造例7と同様の操作を行って抗菌シートを作成した(和紙)。
【0054】
製造例14
製造例1で調製した水溶液を製造例4で調製した1%ヒノキチオール溶液に代えた以外は製造例6と同様の操作を行って抗菌シートを作成した(レーヨン不織布)。
【0055】
製造例15
製造例1で調製した水溶液を製造例4で調製した1%ヒノキチオール溶液に代えた以外は製造例7と同様の操作を行って抗菌シートを作成した(和紙)。
【0056】
試験例1:黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する抗菌シートの効果試験
大腸菌(Escherichia coli)IFO 12529株及び黄色ブドウ球
菌(IFO 12732株)を、それぞれ普通ブイヨン培地で37℃にて18時間培養した後、培養液10μLを3mLの普通ブイヨン培地に添加後、37℃にて6時間振とう培養した。この培養液を生理食塩水(0.85%食塩水)にて10段階希釈し、105倍ま
で希釈したものを添加細菌液(大腸菌、黄色ブドウ球菌)とした。
滅菌ガラス板(50mm×50mm)を直径90mm×高さ20mmの滅菌シャーレに
入れ、滅菌ガラス板表面に添加細菌液(大腸菌、黄色ブドウ球菌)の各1mLを塗布した。滅菌ガラス板表面を、抗菌シート(製造例5ないし15)で拭取った後、滅菌ガラス板表面の残存菌を洗い出すため、滅菌生理食塩水(pH7.4)を直ちに10mL添加してよく攪拌した。得られた試験菌抽出液1mL中の生菌数を標準寒天培地法により測定した。
結果を表2に示した。製造例5ないし15の抗菌シートは、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対して、共に優れた抗菌効果を示すことが確認された。
【表2】

【0057】
試験例2:酵母菌に対する抗菌活性試験
1)被験薬剤
ヒノキチオール混合液
製造例1に記載の水溶液において、精製水のみを620g用いて調製したヒノキチオール3.2mg/mLを含む水溶液を、滅菌蒸留水で1/8希釈を4回行い、5系列の薬液を作製した。各希釈液から0.4、0.2、0.1mLを取り、直径10cmのシャーレ(Falcon#1001)に分注した。50〜60℃に冷ましたオートクレーブ済み培地を分注器を用いて10mLづつシャーレに分注し、直ちに薬液と培地をよく混合して培地固化後、培地表面を乾かし使用した。
2)使用菌株
使用した菌種及び菌株は以下の通り。
カンジダ アルビカンス(Candida albicans)(菌株:ATCC3417、YU−1200、MTU12001、MTU12002、MTU12124、IFO1269、IFO1385、IFO1388、IFO1594)、カンジダ ギリエルモンジイ(Candida gilliermondii)(菌株:IFO0679、IFO0838)、カンジダ クルセイ(Candida krusei)(菌株:IFO0011、IFO1395)、カンジダ シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)(菌株:IFO0617)、カンジダ トロピカリス(Candida tropicalis)(菌株:IFO0006、IFO1647、MTU12032、MTU12034)、カンジダ パラプシローシス(Candida parapsilosis)(菌株:IFO1396)、カンジダ ステラトイデア(Ca
ndida stellatoidea)(菌株:IFO1398)、カンジダ グラブラータ(Candida glabrata)(菌株:IMF40065、IMF40121)、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces Cerevisiae)(菌株:IMF40195、IMF40196)、クリプトコッカス ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)(菌株:MTU13001、MTU13002)
3)使用培地
i)増菌用培地:PYG寒天培地(ペプトン 1%、グルコース 3%、イーストエキストラクト0.3%、寒天 1.5%)
ii)前培養培地:PYG Broth(ペプトン 1%、グルコース3%、イーストエキストラクト 0.3%)
iii)感受性測定培地:Brain−heart Infusion寒天培地(BHI
Agar;Eiken)
3)接種菌液の調製
菌接種前日までにフリーザー保存の菌を増菌用培地で培養しておき(培養条件:35℃、2日間)、菌接種前日に増菌した菌を滅菌爪楊枝にて釣菌し、前培養培地(0.5mL)を入れた小試験管(MIC用チビ小試)に接種し、一晩培養した。菌接種日は、前培養した菌液を、カンジダ(Candida)属及びサッカロミセス(Saccharomyses)属は前培養液を20倍希釈したものを接種菌液として使用し、クリプトコッカス(Cryptococcus)属はそのままのものを接種菌液として使用した。
4)菌液の接種
ミクロプランター(佐久間製作所製、27ピン)を使用し、寒天培地に上記の接種菌液を5μL/spot接種した。
感受性測定培地(BHI)へ、ヒノキチオール混合液を添加したところ、128μg/mLの濃度で析出が観られたため、これ以上の濃度での判定は行わなかった。
MICの測定結果を表3に示した。
【表3】

ヒノキチオール混合液は、酵母菌に対し幅広い抗菌スペクトルを示し、その活性(MIC)は、カンジダ ギリエルモンジイを除き、32μg/mLであった。
以上のことから、ヒノキチオール、ヒノキチオール塩化亜鉛混合物及びヒノキチオールナトリウム塩を含む製造例5ないし15の抗菌シートも同様に、種々の酵母菌に対する抗菌効果を奏し得ると考えられる。
【0058】
実施例1ないし11(生理用ナプキンの製造)
表面シート(PE/EVA多孔樹脂フィルム(開孔率25%、目付け量35g/m2))、製造例5ないし15で作成した抗菌シート、エアレイド吸収体(目付け220g/m2)、裏面シート(PE樹脂フィルム(目付け量25g/m2))の順に配置して生理用ナプキン(実施例1ないし11)を製造した。
【0059】
試験例4:皮膚刺激性試験
上記で製造した生理用ナプキンをパネラー10人に対して装着試験を行ったところ、何れの生理用ナプキンにおいても皮膚刺激性は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性の表面シートと非透水性の裏面シートの間に吸水材を介装して構成される生理用ナプキンであって、透水性の表面シートと吸水材の間に抗菌シートを配置してなり、該抗菌シートは、紙又は不織布に、ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩を含む水溶液又はアルコール含有率20ないし60%のアルコール溶液を含浸又は塗布したことを特徴とする、酵母菌感染症の予防・改善に用いるための生理用ナプキン。
【請求項2】
前記ヒノキチオール若しくはその金属錯体又はそれらの塩において2種以上の金属が使用される請求項1記載の生理用ナプキン。
【請求項3】
前記金属が銅、アルミニウム、亜鉛又はこれらの混合物である請求項2記載の生理用ナプキン。
【請求項4】
アロエ、緑茶、熊笹、及びドクダミからなる群より選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む水溶液を使用する請求項1ないし3の何れか1項に記載の生理用ナプキン。
【請求項5】
グリセリン及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む水溶液を使用する請求項1ないし4の何れか1項に記載の生理用ナプキン。
【請求項6】
酵母菌感染症が膣カンジダ症である請求項1ないし5の何れか1項に記載の生理用ナプキン。

【公開番号】特開2010−183992(P2010−183992A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29132(P2009−29132)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(593170702)株式会社ピーアンドピーエフ (27)
【出願人】(501382063)株式会社ジェイシーエス (14)
【Fターム(参考)】