説明

酵素により触媒されるモノアシル化ポリオールの調製方法

本発明は、例えばカンジダ・アンタークティカリパーゼB(CALB)から誘導された、トリアシルグリセロールリパーゼ突然変異体により触媒されるモノアシル化ポリオールの生体触媒調製方法;同酵素突然変異体により触媒される不斉モノアシル化ポリオールの生体触媒エナンチオ選択的調製方法;ならびにモノアシル化ポリオールの調製方法での突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼの使用に関する。本発明はまた、新規突然変異体、そのコード配列、および該コード配列を担持する組み換え微生物も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB(CALB)由来のものなどのトリアシルグリセロールリパーゼ突然変異体により触媒されるモノアシル化ポリオールの生体触媒調製方法;同酵素突然変異体により触媒される不斉モノアシル化ポリオールのエナンチオ選択的な生体触媒調製方法;ならびに、モノアシル化ポリオールの調製方法での突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼの使用に関する。本発明はまた、新規突然変異体、そのコード配列、および該コード配列を含む組換え微生物も提供する。
【背景技術】
【0002】
トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)は、例えば、洗剤工業、油化学、食品工業およびファインケミカルの製造での非常に多様な工業的用途に対する、高く評価された高効率な触媒である(Schmid R.D., Verger, R., Angew. Chem. Int. Ausg. 37: 1608-33 (1998))。リパーゼは、カルボン酸エステル加水分解酵素であり、トリグリセリドおよびその他の一般的な疎水性エステルの加水分解と合成の両方を触媒する。三次元結晶構造が明らかになっているすべてのトリアシルグリセロールリパーゼは、α/β-加水分解酵素フォールディングタンパク質ファミリーに属し、これらは類似する全体的構造を有する(Ollis D.L., Cheah, E., Cygler, M., Dijkstra, B., Frolow, F., Franken, S.M., Harel, M., Remingon, S.M., Silman, L., Schrag, J.D., Protein Eng. 5: 197-211 (1992))。
【0003】
カンジダ・アンタークティカリパーゼB(本明細書中ではCALBとも称される)は、多数の反応に対する高効率な触媒であり、例えば、立体選択的変換およびポリエステル合成のために用いられる(Anderson E.M., Larsson, K.M., Kirk, O., Biocat. Biotransform. 16: 181-204 (1998))。CALBは、溶媒接触可能な活性中心を有し(Uppenberg J., Hansen, M.T., Patkar, S., Jones, A., Structure 2: 293-308 (1994))、間期活性化を示さない(Martinelle M., Holmquist M., Hult K., Biochim. Biophys. Acta 1258(3): 272-6 (1995))。活性中心は狭い漏斗状であり、この理由から、トリグリセリドに対してよりもカルボン酸エステル(例えば、オクタン酸エチル)に対して高い活性を有する(Martinelle 1995,上掲)。有機媒体中のCALBの活性が水中でのものと同等であるという事実、および特に第二級アルコールに対するCALBの高いエナンチオ選択性が、この酵素をバイオテクノロジーでの使用で現在最も重要なリパーゼの1つにしている。
【0004】
近年、ランダム突然変異導入によるCALBの改変が報告された(Chodrorge M., Fourage L., Ullmann C., Duvivier V., Masson J.M., Lefevre F., Adv. Synth. Catal. 347: 1022-1026 (2005))。理論的酵素設計を通じて特定の用途のためにCALBを改良するいくつかの試みも、文献に報告されている。それらのうちの一部はよい結果をもたらしたが(Patkar S., Vind J., Kelstrup E., Christensen M.W., Svendsen A., Borch K., Kirk O., Chem. Phys. Lipids 93(1-2): 95-101 (1988); Rotticci D."Understanding and Engineering the Enantioselectivity of Candida antarctica Lipase B towards sec-Alcohols". Stockholm: Royal institute of Technology 1-61 (2000))、この酵素の触媒特性の不十分な理解により、理論的酵素設計についての可能性は、未だ限定されている。
【0005】
Zhangらは、Protein Engineering, vol.16, no. 8 (2003) 599の中で、不可逆的熱不活性化に対するCALBの耐容性の改善を目的とした実験について報告している。指向進化技術の適用により、V210I、V221DまたはA281E突然変異を含む単一突然変異体が作製された。二重突然変異体(V210I、A281E)および三重突然変異体(V210I、A281E、V221D)ならびに単一突然変異体A281Eが、野生型酵素の融点(Tm)に対するTmの著明な改善を示した。
【0006】
CALBの活性および熱安定性を改善するための別のアプローチが、SuenらによりProtein Engineering, Design & Selection, vol. 17, no. 2 (2004), 133に記載されている。DNAファミリーシャッフリングの技術を用いて、カンジダ・アンタークティカおよびクリプトコッカス・ツクバエンシス(Crytococcus tzukubaensis)ならびにハイホジーマ属種(Hyphozyma sp.)由来のキメラリパーゼBタンパク質を作製した。ハイスループットスクリーニングにより、キメラが、基質3-(3’,4’-ジクロロフェニル)グルタレートに対するより高い活性、45℃での改善された半減期および改善された融点(Tm)を示すことを明らかにすることができた。
【0007】
Magnussonらは、J. Am. Chem. Soc. 123 (2001), 4354の中で、3-ヒドロキシブタン酸エチル(ethyl-3-hydroxybutanoat)および2-ヒドロキシプロパン酸エチル(ethyl-2-hydroxypropanoat)の2種類のエチルエステルの加水分解に関するエナンチオ選択性が異なるCALBの単一突然変異体を記載している。特に、単一突然変異体T40AおよびT40Vがその文献に記載されている。モノアシル化ポリオールの調製は、教示も示唆もされていない。
【0008】
Rotticciらは、ChemBiochem. 2 (2001), 766の中で、種々の光学活性な第二級モノアルコールに対するCALBのエナンチオ選択性を改善するための実験を開示している。特に、単一突然変異体S47A、S47N、S47H、T42N、T42D、T42H、T42V、W104H、ならびに二重突然変異体(T42V、S47A)が、理論的設計により作製され、さらに調べられた。
【0009】
Brannebyらは、J. Am. Chem. Soc. 125 (2003) 874の中で、CALBの単一突然変異体S105AおよびS105Gならびにアルドール縮合反応でのその挙動を開示している。
【0010】
Magnussenらは、ChemBiochem. (2005) 1051の中で、拡大された基質ポケットを有するCALBの突然変異体を開示し、これらの突然変異体は、より大型の第二級モノアルコールを利用する能力を有する。特に、単一突然変異体T42V、S47A、W104A、W104H、W104Qおよび二重突然変異体(T42V、S47A)が調べられた。
【0011】
結果として、上記の文献のいずれも、ポリオール、特に非環状ポリオールをモノアシル化するための方法にCALB酵素を使用することは教示も示唆もしていない。
【0012】
モノアシル化中間体は同じ酵素により迅速にさらにエステル化されると考えられ、それによりポリオールのモノエステルは反応の過程で形成される単なる中間物であると予測され、またエステル化反応の進行に伴い、モノエステル化生成物の割合は徐々に小さくなるという事実により、モノアシル化ポリオールの選択的調製は達成するのが困難であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、ジオール、特に非環状ジオールなどのポリオールを選択的にモノアシル化するための酵素触媒法を提供する継続した必要性があった。特に、モノアシル化ポリオールの改善された優先的な調製を可能にする方法への必要性があった。これに関する改善は、モノエステルの最大収率の増大、モノエステル生成物とより高度または完全にエステル化された生成物(例えば、ジエステルなど)との改善されたモル比、モノエステル生成物とエステル化生成物全体との改善されたモル比、および/またはより高い変換度でのより高いモノエステル収率を特徴とする可能性がある。
【0014】
酵素基質が不斉炭素原子を有する場合に、そのようなモノアシル化ポリオールをエナンチオ選択的に調製するための方法へのさらなる必要性があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題は、驚くべきことに、改善された選択性(すなわち、部位選択性(regioselectivity))を示し、モノアシル化ポリオールの優先的形成を可能にするように遺伝子操作された突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ酵素(CALBの突然変異体など)を用いるモノアシル化ポリオールを調製するための酵素触媒法を提供することにより解決することができる。
【0016】
本発明は、低いポリオール変換度のみならず、驚くべきことに、高いポリオール変換度でも、完全にエステル化された生成物に対して著明なモル過剰量でモノエステル生成物が生成される、ポリオールエステル化反応を行なうことを可能にする。例えば、少なくとも90%の生成物分布(モノエステルとエステル化生成物全体の合計との比として定義される)が、約50〜90%までの変換度で観察され、つまり、ほとんど完全なまでの反応の進行、および反応混合物からの高収率での所望のモノエステル生成物の単離を可能にする。
【0017】
本発明を、添付の図面を参照することにより、さらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1のエステルROC(O)R1のアシル残基C(O)R1をアルコールHOR2に転移させ、新たな第2のエステル化合物R2OC(O)R1を形成させるエステル交換反応中のCALBの反応中心のアミノ酸残基Asp187、Ser105およびHis224の相互作用を表すメカニズム模式図である。四面体中間体は、反応中心のオキシアニオンホールで安定化され、したがってエステル交換反応が起きやすい。
【図2】エステル交換反応中に形成されたオキシアニオン中間体の安定化でのCALBオキシアニオンホールの106位および40位のアミノ酸残基の関与を模式的に表す図である。図2Aは、オキシアニオンとアミノ酸残基Gln106およびThr40との間の3個の水素結合の形成によるオキシアニオンの安定化を表す。示されたエステルは、式R1OC(O)Rのものである。図2Bは、図2Aと同じ基質であるが、CALBの単一突然変異体T40Aである基質の安定化を示し、ここで、Thr40がAlaにより置換され、結果として1つの安定化水素結合が失われ、したがって該遷移状態が不安定化される。図2Cは、ブタンジオールモノエステルHOButOC(O)Rのエステル交換反応中に観察された同じ突然変異体T40Aで生じる遷移状態の安定化における基質支援を表す。ジオールの遊離ヒドロキシ基が、水素結合を介してオキシアニオンと相互作用し、それにより、遷移状態の安定化が回復する。該ジオール分子による該基質支援が、T40A突然変異体により触媒されるエステル交換反応中のジオール優先性を説明する。
【図3】酢酸エチルに溶解した基質としての1,4-ブタンジオールを用いたエステル交換反応でのCALB野生型およびCALB T40A突然変異体により触媒されるエステル交換反応について観察された実験結果を表す。一酢酸エステルおよび二酢酸エステルの収率を、変換率%の関数として示す。(A)CALB野生型についての結果を表す。(B) CALB突然変異体T40Aについて得られた結果を表す。見て取れるように、広い変換率%にわたって一酢酸エステルが好ましく得られる。
【図4】酢酸エチルに溶解した基質としての1,2-エタンジオールを用いたエステル交換反応でのCALB野生型およびCALB T40A突然変異体により触媒されるエステル交換反応について観察された実験結果を表す。一酢酸エステルおよび二酢酸エステルの収率を、変換率%の関数として示す。(A)CALB野生型についての結果を表す。(B) CALB突然変異体T40Aについて得られた結果を表す。見て取れるように、T40A突然変異体では、一酢酸エステルが広い変換率%範囲にわたって優先的に得られる。野生型酵素についての最大モノエステル収率は43%であり;突然変異体についての最大モノエステル収率は77%まで著明に改善され、これはモノエステルに対する突然変異体の改善された選択性を表す。
【図5】酢酸エチルに溶解した1,2-エタンジオールを用いたエステル交換反応での生成物分布に関する野生型とT40A CALBとの差異を表す。(A)および(B)には、同じ実験から得られた2つの所定の生成物分布でのジオール変換率を表す。75%の生成物分布で、野生型ではジオールの17%が変換され、T40A CALBでは99%が変換された((A)を参照されたい)。90%の生成物分布についての対応する図は、野生型では9%、T40A CALBでは78%である((B)を参照されたい)。
【図6】式1〜3に基づくモデルにフィッティングしたデータを表す。ジオール(菱形)、モノエステル(四角)およびジエステル(三角)を表す点は、測定値である。エラーバーは、式1〜3での得られたkcat/KM値を用いて算出した値を表す。(A)および(B)は、それぞれ野生型およびT40A CALBに対応する。
【図7】MTBEに溶解した基質としての2-メチル-1,3-プロパンジオールおよびアシル供与体としての酪酸ビニルを用いたアシル基転移反応でのモノエステルおよびジエステルの収率を表す。野生型(A)およびT40A (B) CALBを触媒として用いている。見て取れるように、広い変換率%範囲にわたって、一酪酸エステルが好ましく得られる。
【図8】MTBEに溶解したアシル供与体としての酪酸ビニルを用いた反応での1,4-ブタンジオール変換率の関数として表したモノエステルおよびジエステルの収率を表す。野生型(A)およびT40A (B) CALBを触媒として用いている。見て取れるように、広い変換率%範囲にわたって一酪酸エステルが好ましく得られる。
【図9】競合基質の変換を示す。ジオールの変換率を、1-ブタノール変換率の関数として表す。2種類の異なるジオールである1,2-エタンジオール(A)および1,4-ブタンジオール(B)を示す。反応は、アシル供与体および溶媒としての酢酸エチルを用いて行なっている。野生型(菱形)およびT40A(四角)CALBにより触媒された反応を比較している。AおよびBの両方で、1-ブタノールと比較したジオールに対する選択性は、野生型CALBよりもT40Aにより触媒される反応の方が高い。
【図10】競合基質の変換を示す。ジオールの変換率を、1-ブタノール変換率の関数として表す。2種類の異なるジオールである1,2-エタンジオール(A)および1,4-ブタンジオール(B)を示す。反応は、アシル供与体としての酪酸ビニルおよび溶媒としてのMTBEを用いて行なっている。野生型(菱形)、T40A(四角)およびT40V(三角)CALBにより触媒された反応を比較している。AおよびBの両方で、1-ブタノールと比較したジオールに対する選択性は、野生型CALBよりもT40AおよびT40Vにより触媒される反応の方が高い。
【図11】酵素(g)当たりに変換された1,2-エタンジオールを時間に対して示す。Aでは、アシル供与体および溶媒として、酢酸エチルを用いている。Bでは、アシル供与体として酪酸ビニルを用い、溶媒としてMTBEを用いている。野生型とT40A CALBでは反応速度が異なり、野生型(菱形)は、T40A(四角)変異体よりも効率の良い触媒であることが示されている。反応速度の差異は、酪酸ビニルよりもアシル供与体として酢酸エチルを用いた場合により大きい。
【図12】市販の酵素(Novo 435)(黒点により表す)、A282L突然変異体(白四角)またはL278S突然変異体(白三角)による酵素触媒後の種々の変換率での、二アクリル酸ブタンジオールに対する4-ヒドロキシブタンジオールの過剰率を示す。試験したそれぞれの範囲で、両方のCALB突然変異体が、達成された変換率の広範囲にわたって、測定可能な4-ヒドロキシブタンジオールの過剰率を示す。
【図13】CALB Novo 435およびCALB A282Lについての、生成物過剰率または変換率の流量依存性を示す。黒点および白点は、それぞれ、Novo 435またはA282Lによる変換率を表し、黒四角および白四角は、それぞれNovo 435またはA282Lにより達成された所定の変換率での4-HBAの過剰率を表す。
【図14】CALB Novo 435と本発明による選択されたCALB突然変異体との比較での、変換度に対する生成された一アクリル酸エステルの過剰率を示す。結果は、媒体から直接回収したサンプルに基づく。図14Aは、A282C(+により標識);A282P(白三角);A282I(白四角);A282D(白菱形、破線)に由来する結果を含み;図14Bは、A282L(白四角);A282V(白三角、破線);A282R(白菱形)およびL278S/A282L(×)に由来する結果を含む。図14Aおよび図14Bの両方で、Novo 435は黒点により表す。
【図15】CALB Novo 435と本発明による選択されたCALB突然変異体との比較での、変換度に対する生成された一アクリル酸エステルの過剰率を示す。結果は、Resindinon Diaion HP20Lビーズ(Resindion SRL、三菱化学の子会社)に固定化された酵素に基づく。図15Aは、A282I(白三角により表す)、A282R(白菱形)、およびL278S/A282L(白四角、破線)に由来する結果を含み;図15Bは、A282C(白菱形)、I285F(白四角)およびA282L/I285F(白三角)に由来する結果を含む。図15Aおよび図15Bの両方で、Novo 435は黒点により表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1. 一般的定義:
別の意味の情報がない場合、以下の一般的定義を適用する:
本発明に従えば、「トリアシルグリセロールリパーゼ」とは、IUBMB酵素命名法に従うクラスE.C.3.1.1.3の酵素を意味する(http://www.iubmb.unibe.ch;http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/)。
【0020】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、機能的に発現されるトリアシルグリセロールリパーゼは、リパーゼBであり、カンジダ・アンタークティカ由来のCALB遺伝子産物である。CALB遺伝子は報告されており(Uppenberg et al., 1994)、そのヌクレオチド配列またはタンパク質配列は、登録番号Z30645およびCAA83122.1としてGenBankに登録されている。より詳細に指定しない限り、ここでは、CALBとは、この登録番号を有するヌクレオチド配列を意味する。トリアシルグリセロールリパーゼの別の例は、シュードザイマ・ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)由来のリパーゼBである(Suen, W.C., Zhang, N., Xiao, L, Madison, V., Zaks, A. Protein Eng. Des. Sel. 17(2): 133-40 (2004))。
【0021】
「酵素により触媒される(酵素触媒)」法または「生体触媒」法とは、該方法が、本明細書中に定義される酵素突然変異体を含む酵素の触媒作用下で行なわれることを意味する。つまり、該方法は、単離された(精製された、富化された)かもしくは粗精製形態での該酵素の存在下で、または細胞系、特に、活性型の該酵素を含み、かつ本明細書中に開示される変換反応を触媒する能力を有する天然もしくは組み換え微生物細胞の存在下で行なうことができる。
【0022】
「選択的にモノアシル化されたポリオール」または「ポリオールをモノアシル化するための選択性の増大」との用語は、一般的に、本明細書中に開示されるエステル化反応の過程で(すなわち、該反応の全過程で(すなわち、反応の開始から終了までの間)、該反応の特定の時点で、または該反応の「一定区間」で)、少なくとも1種、好ましくはすべてのより高度にエステル化されたポリオール成分よりも、高い割合でまたは多量に(モル基準で比較して)、該ポリオールのモノエステルが生成されることを意味する。特に、「一定区間」で、ポリオール基質の初期量の1〜99%、2〜95%、3〜90%、5〜85%、10〜80%、15〜75%、20〜70%、25〜65%、30〜60%、または40〜50%の変換率に対応する選択性が観察される場合がある。より高い割合または多量は、例えば、以下の点に関して表すことができる:
・反応の全過程またはその一定区間に観察されるモノアシル化ポリオールのより高い最大収率;
・ポリオールの所定の変換率%値でのモノアシル化生成物のより大きな相対量;
・より高い変換度%値でのモノアシル化生成物の同じ相対量;
これらのそれぞれは、対応する非突然変異型リパーゼ酵素を用いて、それ以外は同じ条件で行なわれる参照法との比較で観察される。
【0023】
「生成物分布」との用語は、本明細書中に記載される酵素触媒法により形成されるすべての生成物の合計量と比較した、該方法の過程の特定の時点または「一定区間」で形成された特定の反応生成物の部分量の割合(%)を表す。つまり、特定のポリオールのモノエステルについての「生成物分布」とは、酵素的エステル化反応の開始後の特定の時点または所定の一定区間内で本明細書中に規定される酵素の影響下において生成された、エステル(モノエステルおよびポリエステル)の合計量と比較した該モノエステルの割合(%)を規定する。
【0024】
「光学活性な」化合物とは、少なくとも1個の不斉中心、すなわち、少なくとも1個の不斉炭素原子を有するものである。
【0025】
「約」との用語は、記載された値の±25%、特に±15%、±10%、±5%、±2%または±1%の潜在的な変動を示す。
【0026】
「実質的に」との用語は、記載された値の±10%、特に±5%、±1%、±0.5%、±0.2%または±0.1%以下の潜在的な変動を示す。
【0027】
「立体選択性」または「エナンチオ選択性」とは、立体異性体としてもしくはエナンチオマーとして純粋な形態で光学活性化合物を生成する能力または複数の立体異性体もしくはエナンチオマーのうち特定の立体異性体もしくはエナンチオマーを特異的に変換する能力を表す。より具体的には、この用語は、本発明の生成物が、特定の立体異性体またはエナンチオマーに関して富化されていることを意味する。これは、以下の式:
%ee = [XA-XB]/[XA+XB]*100
[式中、
XAおよびXBは、エナンチオマーAおよびBのモル比(Molenbruch)を表す]
に従い算出されるエナンチオマー純度%eeパラメータを介して定量化することができる。
【0028】
少なくとも90%ee、例えば少なくとも95%ee、または少なくとも98%ee、または少なくとも99%ee以上などのエナンチオマー純度を得ることができる。
【0029】
「水素結合を形成することが可能な」との用語は、本発明の酵素分子のアミノ酸残基が、別の分子との(例えば、該酵素の別のアミノ酸残基との、または該酵素分子上もしくは分子内に位置するその基質分子もしくはその中間体状態との)水素結合を形成する能力を意味する。
【0030】
オキシアニオン遷移状態を「安定化する」条件とは、非安定化状態と比較した場合に、エネルギー的にオキシアニオン状態をより生じ易くする条件を意味する。安定化は、例えば、アニオンの負電荷の非局在化により生じる。
【0031】
本明細書中に規定される酵素の「基質ポケット」、またはその「反応中心」は、触媒される反応中に、基質分子を保持し、それを式Iの生成物に変換する。該基質ポケットは、いくつかの「構造エレメント」、すなわち、異なる機能を有する該基質ポケットの複数部分からなる。該構造エレメントは、互いに「機能的配置」にあり、すなわち、触媒される反応中に協働する。
【0032】
「配列モチーフ」または「パターン」とは、特定のアミノ酸配列内で互いに隣り合っているか、もしくは所定の様式で(すなわち、特徴的な長さの介在スペーサー配列により)互いに隔たっている複数のアミノ酸残基の特徴的配置または「フィンガープリント」を表す。
【0033】
「拡張された基質特異性」とは、参照酵素と比較した場合に、追加の構造的に異なる基質を変換する酵素を意味する。
【0034】
「変化した/改変された基質特異性」とは、参照酵素と比較した場合に、部分的にまたは完全に異なる基質分子のセットを変換する酵素を意味する。つまり、「変化した基質特異性」との用語は、例えば突然変異を受けたリパーゼ酵素が、参照酵素(例えば、非突然変異型酵素)よりも、特定の基質分子のアシル化によりよく適合している状況を表す場合がある。例えば、より高い優先性または特異性は、酵素変異体により形成される結合ポケットの、より高い基質親和性により引き起こされる場合がある。
【0035】
「変化した/改変された部位選択性(regioselectivity)」とは、参照酵素と比較した場合に、変化した優先性で、基質分子の1箇所以上の潜在的反応部位を変換する酵素を意味する。つまり、「変化した部位選択性」との用語は、例えば突然変異を受けたリパーゼ酵素が、参照酵素(例えば、非突然変異型酵素)よりも、2以上のアシル化可能官能基を有する特定の基質分子のモノアシル化によりよく適合している状況を表す場合がある。
【0036】
酵素反応の可逆性に伴い、本発明はまた、本明細書中に記載される生体触媒アシル化反応の対応する逆(すなわち、脱アシル化)反応にも関する場合がある。
【0037】
2. 本発明の特定の実施形態
本発明は、以下の特定の実施形態を提供する:
1. モノアシル化ポリオール、特に、一般式(I):
【化1】

【0038】
[式中、
R1は、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基を表し;
Aは、特に少なくとも2個の炭素原子を有し、特に複数の酸素原子が異なる炭素原子に連結している、任意により置換された、直鎖または分岐鎖非環状ヒドロカルビレン残基を表す]
のモノアシル化ジオールの生体触媒、酵素触媒調製方法であって、以下のステップ:
(a)式(II)のポリオールと式(III)のアシル供与体化合物:
【化2】

【0039】
[式中、
R1およびAは上記で定義した通りであり、特に、複数のヒドロキシル基が異なる炭素原子に連結し、
Donは、該アシル基を担持する供与体分子残基を表し、好ましくは-OR基(Rは、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基を表す)から選択される]
とを、上記の式(I)のモノアシル化ポリオールが形成されるまで、突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)の存在下で反応させるステップ;および
(b)モノアシル化ポリオール生成物を取得するステップ
を含む、上記方法。
【0040】
2. 前記突然変異型リパーゼが少なくとも1箇所のアミノ酸突然変異を含み、この突然変異が、対応する非突然変異型リパーゼと比較した場合に、前記ポリオールのモノアシル化に対するリパーゼの選択性を増大させる、実施形態1に記載の方法。
【0041】
3. 前記突然変異体が、形成される式(I)のモノアシル化ポリオールのカルボニル基のオキシアニオン遷移状態を安定化させる酵素の反応中心の一部分から、安定性官能性アミノ酸基、特に、水素結合を形成することが可能なアミノ酸側鎖を除去する少なくとも1箇所の突然変異を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0042】
4. 前記酵素が突然変異を有し、その結果、
(a)対応する野生型酵素により得られる最大収率を少なくとも1%、例えば、2〜1000、5〜500、10〜200、15〜100、10〜80または15〜50%上回る最大モノエステル収率が得られ;
(b)対応する野生型酵素により得られる対応する変換率を少なくとも1%、例えば2〜1000、5〜500、10〜200、15〜100、10〜80または15〜50%上回るポリオールの変換率で、モノエステルとポリエステルのモル比3:1に到達し;かつ/または
(c)ポリオールの合計量に基づいて、90%(モル基準)のモノアシル化ポリオールに到達するための反応時間の比(T90(突然変異体)/T90(野生型))が、1より大きい、例えば約2〜1000、5〜500、10〜200、15〜100、10〜80または15〜50の範囲内である、
実施形態1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【0043】
5. 前記酵素が、少なくとも1箇所の位置、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10箇所の位置に突然変異を有する配列番号2のアミノ酸配列を含むカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB(CALB)の突然変異体である、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
6. 前記突然変異体が、少なくともアミノ酸Thr40に突然変異を有する配列番号2のアミノ酸配列を含む、実施形態5に記載の方法。
【0045】
7. 前記突然変異が、オキシアニオン中間体と40位のアミノ酸残基との安定性相互作用を実質的に生じさせない、実施形態6に記載の方法。
【0046】
8. 前記突然変異が、単一突然変異Thr40Ala、Thr40ValまたはThr40Serを含む、実施形態7に記載の方法。
【0047】
9. 前記突然変異体が、配列番号4のアミノ酸配列を有する突然変異体または少なくとも60%の配列同一性を有する該突然変異体の変異体から選択され、該変異体は、配列番号2または4のThr40位に対応するアミノ酸位置に突然変異を含んだままである、実施形態8に記載の方法。
【0048】
10. 前記突然変異体が、配列番号2または4のアミノ酸位置Leu278、Ile285およびPro280のうち1つに少なくとも1箇所の突然変異をさらに含む、実施形態7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
11. 前記突然変異体およびその変異体が、酵素の触媒部位に寄与する他のアミノ酸位置に突然変異を有しない、実施形態10に記載の方法。
【0050】
12. 前記突然変異体が、アミノ酸位置Ser105、Asp187、His224(触媒三残基)およびGln106に突然変異を有さず、前記変異体が、それに対応するアミノ酸位置に突然変異を有しない、実施形態11に記載の方法。
【0051】
13. 配列番号2、もしくは配列番号4のアミノ酸Thr40に突然変異を含む配列番号2において、Leu278、Ala281、Ala282またはIle285のうち1箇所以上に突然変異を有する、実施形態5〜12のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
14. 前記1箇所以上の突然変異が、以下の突然変異:
Leu278に対してLeu278Ser、
Ala281に対してAla281ValまたはAla281Glu、および
Ala282に対してAla282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282MetまたはAla282Arg
から独立に選択される、実施形態13に記載の方法。
【0053】
15. 配列番号2が、Ala281Val、Ala281Glu、Ala282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282Met、Ala282ArgおよびIle285Pheから選択される1箇所の突然変異を含むか、または配列番号2が、Leu278SerおよびAla282Leuの二重突然変異を含む、実施形態14に記載の方法。
【0054】
16. 前記反応が、単離された酵素突然変異体または該突然変異体を機能的に発現する組み換え微生物の存在下で行なわれる、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
17. 前記ポリオールが式(II)の化合物であり、式中、Aが以下の基:
-(CH2)n-および
-(CH2)m-CR2R3-(CH2)m’-
[式中、
nは、2〜6の整数であり、
mおよびm’は、互いに独立に、1〜3の整数であり、
R2およびR3は、互いに独立に、H、OH、SH、NH2、任意により置換されている炭素環または複素環およびヒドロカルビル残基から選択され、ただしR2とR3は同時にHではない]
から選択される、実施形態1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
18. 式(III)の供与体が、R1がC1〜C6-アルキルであり、Donが-OR残基(式中、RはC1〜C6-アルキルおよびC2〜C4-アルケニルから選択される)である化合物から選択される、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
19. 一般式(I):
【化3】

【0058】
[式中、
R1は、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、非環状、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基を表し;
A*は、少なくとも2個の炭素原子を有し、特に、複数の酸素原子が異なる炭素原子に連結している、任意により置換された、直鎖または分岐鎖不斉ヒドロカルビレン残基を表す]
の不斉モノアシル化ポリオールの生体触媒的酵素触媒エナンチオ選択的調製方法であって、以下のステップ:
(a)式(II’)のポリオールの立体異性体混合物と式(III)のアシル供与体化合物:
【化4】

【0059】
[式中、
R1およびA*は上記で定義した通りであり、特に、複数のヒドロキシル基が異なる炭素原子に連結し、
Donは、該アシル基を担持する供与体分子残基を表し、好ましくは-OR基(Rは、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基を表す)から選択される]
とを、上記式(I)のモノアシル化ポリオールが形成されるまで、突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)の存在下で反応させるステップ;および
(b)不斉モノアシル化ポリオール生成物を取得するステップ
を含む、上記方法。
【0060】
20. 単離された酵素突然変異体または該突然変異体を機能的に発現する組み換え微生物の形態での実施形態2〜15のいずれか1つに定義された酵素突然変異体を利用する、実施形態19に記載の方法。
【0061】
21. 前記ポリオールが、式(II’)の化合物であり、A*が以下の基:
-(CH2)m-CHR2-(CH2)m’-
[式中、
m、m’およびR2は上記で定義した通りである]
から選択される、実施形態19または20に記載の方法。
【0062】
22. 上記で定義した一般式(I)または(I’)のモノアシル化ポリオールの調製方法における突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)の使用。
【0063】
23. 下記の表Aに示されるパターンから選択される配列番号2または4のアミノ酸配列の少なくとも2箇所の突然変異のパターンを示す、カンジダ・アンタークティカリパーゼB(CALB)突然変異体。
【0064】
24. 配列番号2または4の配列において、Val210Ile、Ala281Glu、Val221Aspから選択される1箇所の突然変異をさらに示す、実施形態23に記載の突然変異体。
【0065】
25. 以下の突然変異:
Leu278に対してLeu278Ser、
Ala281に対してAla281ValまたはAla281Glu、および
Ala282に対してAla282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282MetまたはAla282Arg
から独立に選択される配列番号2のアミノ酸配列での1箇所以上の突然変異を有する、カンジダ・アンタークティカリパーゼB(CALB)突然変異体。
【0066】
26. 配列番号2においてAla281Val、Ala281Glu、Ala282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282Met、Ala282ArgおよびIle285Pheから選択される1箇所の突然変異を有するか、または配列番号2において二重突然変異Leu278SerおよびAla282Leuを有する、実施形態25に記載の突然変異体。
【0067】
27. 実施形態25または26のいずれか1つに定義された突然変異のうち少なくとも1つをさらに有する、実施形態23または24に記載の突然変異体。
【0068】
28. 実施形態20〜27のいずれか1つに記載の突然変異体をコードする核酸分子。
【0069】
29. 任意により調節核酸配列の制御下に、実施形態28に記載の少なくとも1種のコード配列を含む、発現ベクター。
【0070】
24. 実施形態23に記載の少なくとも1種の発現ベクターまたは実施形態22に記載の少なくとも1種のコード配列を担持する微生物宿主。
【0071】





【0072】
3. 基質
(a)ポリオール
本発明に従ってアシル化されるポリオールは、一般的に、式II:
HO-A-OH (II)
[式中、
Aは、少なくとも2個の炭素原子を有し、複数のヒドロキシル基が異なる炭素原子に連結されている、任意により置換された、直鎖または分岐鎖非環状ヒドロカルビレン残基を表す]
のものである。
【0073】
この文脈では、「非環状」とは、HO-基が炭素環式もしくは複素環式単環または多環に連結されていないことを意味する。
【0074】
Aは、特に、以下の一般式:
HO-CR4R4-B-CR4R4-OH
[式中、
R4残基は、互いに独立に、Hおよび直鎖または分岐鎖、特に直鎖C1〜C6-アルキルから選択することができ、
Bは、式-(CR5R5)z-
(式中、
zは0、1、2、3、4、5または6の整数であり、
R5残基は、互いに独立に、H、直鎖または分岐鎖、特に直鎖C1〜C6-アルキル、任意により置換されたC3〜C7-シクロアルキルおよび任意により置換されたアリールまたはヘテロアリールから選択される)
の基を表す]
に従って両方のHO-基を担持するヒドロカルビレン骨格Bにより形成される。
【0075】
別の実施形態では、アシル化されるジオールのヒドロキシル基は、互いに独立に、第四級、第二級または第一級ヒドロキシル基であり得る。
【0076】
A基の特定の例は、2個の第一級ヒドロキシル基を有するようにつくられた以下の基:
-(CH2)n- および
-(CH2)m-CR2R3-(CH2)m’-
[式中、
nは、1、2、3、4、5、または6の整数であり、
mおよびm’は、互いに独立に、1、2または3の整数であり、
R2およびR3は、互いに独立に、H、OH、SH、NH2、炭素環または複素環、特に任意により置換されたC3〜C7-シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール;および、直鎖または分岐鎖、特に直鎖C1〜C6-アルキルから選択され、ただし、R2およびR3は、同時にHではない]
から選択される。
【0077】
(b)アシル供与体
「アシル供与体」分子は、本発明の生体触媒アシル化反応のためにアシル基を供給する能力を有する。
【0078】
一般的には、供与体は、上記の式(III)
[式中、
R1は、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基、特にC1〜C30-ヒドロカルビルを表し;
Donは、該アシル基を有する供与体分子残基を表し、好ましくは、-OR基(式中、Rは、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基、特にC1〜C6-アルキルまたはC2〜C4-アルケニル(メチル、エチルまたはビニルなど)を表す)から選択される]
のものである。
【0079】
(c)定義
本発明の「ヒドロカルビレン」残基は、特に、本明細書中でさらに定義されるようにさらに置換されていてもよい、n=1、2、3、4、5、6、7、または8を有する直鎖-(CH2)n-骨格を含む。
【0080】
本発明に従う直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和「ヒドロカルビル」残基とは、特に、直鎖もしくは分岐鎖アルキルまたはアルケニル残基を意味する。
【0081】
「アルキル」残基は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖残基であるC1〜C8-アルキル残基を含む、その例は、以下のものである:
・メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルから選択されるC1〜C4-アルキル残基、
・上記で定義したC1〜C4-アルキル残基およびさらにペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピルから選択されるC1〜C6-アルキル残基、
・上記で定義したC1〜C6-アルキル残基およびさらにヘプチル、オクチル、および2-エチルヘキシルなどのその構造異性体から選択されるC1〜C8-アルキル残基、ならびに
・8〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖残基であるC8〜C30-アルキル残基;その例は、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、スクアリル、それらの構造異性体、高級同族体およびその構造異性体から選択される。
【0082】
「アルケニル」残基は、2〜30個の炭素原子を有する一価不飽和直鎖または分岐鎖炭化水素残基であるC2〜C30-アルケニル残基を含む。
【0083】
特定の例は、以下のものである:
・エテニルまたはビニル、1-または2-プロペニル、1-、2-および3-ブテニルなどのC2〜C4-アルケニル残基、
・上記で定義したC2〜C4-アルケニル残基ならびに2-メチルプロペン-3-イル、2-メチルプロペン-1-イル、1-、2-、3-および4-ペンテニル、1-、2-、3-、4-および5-ヘキセニル、1-、2-、3-、4-、5-および6-ヘプテニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-および7-オクテニルおよびそれらの構造異性体を含むC2〜C8-アルケニル残基;ならびに
・8〜30個の炭素原子を有する一価不飽和直鎖または分岐鎖炭化水素残基であるC8〜C30-アルケニル残基。その例は、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ペンタコセニル、ヘキサコセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル、スクアレニル、それらの構造異性体、高級同族体およびその構造異性体である。
【0084】
「炭素環または複素環」残基は、3〜12個の炭素原子および任意により1、2、3もしくは4個の同じかまたは異なる環ヘテロ原子(N、SおよびOなど)を有する、任意により縮合された芳香族または非芳香族環基を含む。
【0085】
例として、以下のものに言及することができる:
・フェニルおよびナフチルなどの芳香族炭素環、
・非芳香族炭素環、特に、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、シクロブチル、シクロブチルメチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルなどのC3〜C7-シクロアルキル残基、ならびにそれらの一価または二価不飽和類似体(例えば、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニルなど);
・O、NおよびSから選択される1〜4個の環ヘテロ原子を有する5〜7員飽和または不飽和、芳香族または非芳香族複素環残基であって、さらなる複素環残基または炭素環残基と縮合していてもよい複素環残基。例として、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、クマロン、インドールおよびキノリンの残基に言及することができる。
【0086】
本明細書中で定義した「任意により置換されている」残基の非限定例は、HO、SH、NH2、NO2、ハロゲン(F、Cl、Br、Jなど);上記で定義された低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルまたはヒドロキシル低級アルキルなどの1、2、3、4、5もしくは6個の同じかまたは異なる置換基を含む。
【0087】
「低級アルキル」とは、上記で定義したC1〜C8-アルキル残基を意味する。
【0088】
「低級アルコキシ」とは、好ましくは、上記で言及した低級アルキル残基のC1〜C8-アルコキシ類似体を意味する。
【0089】
「低級アルキルチオ」とは、好ましくは、上記で言及した低級アルキル残基のC1〜C8-アルキルチオ類似体を意味する。例は、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec-ブチルチオ、イソブチルチオおよびtert-ブチルチオである。
【0090】
「低級アルケニル」は、上記で定義したC2〜C8-アルケニル残基を含む。
【0091】
「低級アルキニル」は、上記の「低級アルケニル」残基のアルキニル同族体を含む。
【0092】
「ヒドロキシル低級アルキル」との用語は、1〜8個、特に1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル残基であり、少なくとも1個の水素原子(例えば、1または2個の水素原子)がヒドロキシル基で置き換えられているC1〜C8-ヒドロキシアルキルを意味する。その例は、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシ-1-エチル、2-および3-ヒドロキシ-1-プロピル、2-、3-および4-ヒドロキシ-1-ブチル、2-、3-、4-および5-ヒドロキシ-1-ペンチル、2-、3-、4-、5-および6-ヒドロキシ-1-ヘキシル、2-、3-、4-、5-、6-および7-ヒドロキシ-1-ヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-および8-ヒドロキシ-1-オクチル、2,3-ジヒドロキシ-1-プロピルならびにそれらの構造異性体である。
【0093】
(a)、(b)および(c)で示された上記の定義は、式(I’)、(II’)および(III’)の化合物に同時に適用される。
【0094】
4. 本発明の酵素および酵素突然変異体
本発明は、具体的に開示されたトリアシルグリセロールリパーゼおよび突然変異体の使用に限定されず、その機能的等価物にも及ぶ。
【0095】
明示的に開示された酵素の「機能的等価物」または類似体は、本発明の範囲内で、所望の生物学的機能または活性(例えば、酵素活性)をさらに有するそれらの種々のポリペプチドである。
【0096】
例えば、「機能的等価物」は、酵素活性について用いられる試験において、本明細書中に定義される酵素に対して少なくとも1〜10%、もしくは少なくとも20%、もしくは少なくとも50%、もしくは少なくとも75%、もしくは少なくとも90%高いかまたは低い活性を示す酵素を意味する。
【0097】
本発明に従えば、「機能的等価物」は、特に、上記のアミノ酸配列の少なくとも1箇所の配列位置で、明示的に記載されたものとは異なるアミノ酸を有するが、それにもかかわらず、上記の生物学的活性のうち1種を有する突然変異体も意味する。つまり、「機能的等価物」は、1箇所以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15箇所のアミノ酸付加、置換、挿入、欠失および/または反転により得られる突然変異体を含み、ここで、記載された変化は、本発明に従う特性プロフィールを有する突然変異体をもたらす限り、いずれの配列位置でも生じ得る。機能的等価はまた、特に、突然変異体と未変化ポリペプチドで反応性パターンが質的に同じである場合、すなわち、例えば、同じ基質を異なる速度で変換する場合にももたらされる。好適なアミノ酸置換の例を、以下の表に示す:

【0098】
上記の意味での「機能的等価物」とは、記載されたポリペプチドの「前駆体」;ならびに該ポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」でもある。
【0099】
この場合、「前駆体」とは、所望の生物学的活性を有するか有しない、該ポリペプチドの天然または合成前駆体である。
【0100】
「塩」との表現は、本発明のタンパク質分子のカルボキシル基の塩ならびにアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、公知の方法で生成することができ、無機塩(例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛塩)および有機塩基(例えば、アミン(トリエタノールアミンなど)、アルギニン、リシン、ピペリジンなど)との塩を含む。酸付加塩、例えば、無機酸(塩酸または硫酸など)との塩および有機酸(酢酸およびシュウ酸など)との塩も、本発明に含まれる。
【0101】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」も、公知の技術を用いて、官能性アミノ酸側基またはN末端もしくはC末端に作製することができる。そのような誘導体は、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニアまたは第一級もしくは第二級アミンとの反応により得られるカルボン酸基のアミド;アシル基との反応により生成される遊離アミノ基のN-アシル誘導体;あるいはアシル基との反応により生成される遊離ヒドロキシ基のO-アシル誘導体を含む。
【0102】
「機能的等価物」はまた、当然に、他の生物から得られるポリペプチド、ならびに天然に存在する変異体も含む。例えば、相同配列領域の部分を配列比較により明らかにすることができ、本発明の明示のパラメータに基づいて等価な酵素を決定することができる。
【0103】
「機能的等価物」はまた、例えば所望の生物学的機能を示す本発明のポリペプチドの断片、好ましくは個々のドメインまたは配列モチーフも含む。
【0104】
さらに、「機能的等価物」は、上記で記載したポリペプチド配列のうち1つまたはそれに由来する機能的等価物と、少なくとも1種のさらなる機能的に異なる異種配列とを、機能的N末端またはC末端結合で(すなわち、融合タンパク質部品の相互的な機能傷害が実質的になく)有する融合タンパク質である。これらの異種配列の非限定例は、例えば、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
【0105】
本発明によりこれもまた含められる「機能的等価物」は、明示的に開示されたタンパク質の相同体である。これらは、上述の同一性%値を有する。それらの値は、明示的に開示されたアミノ酸配列に対する同一性を意味し、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad, Sci. (USA) 85(8), 1988, 2444-2448のアルゴリズムに従って算出することができる。
【0106】
同一性%値はまた、BLASTアライメント、アルゴリズムblastp(protein-protein BLAST)から、または下記のClustal設定を用いることによって算出することもできる。
【0107】
本発明に従う相同ポリペプチドの同一性%とは、特に、本明細書中に明示的に記載されたアミノ酸配列のうち1つの全長に対するアミノ酸残基の同一性%を意味する。
【0108】
考えられるタンパク質グリコシル化の場合、本発明の「機能的等価物」は、脱グリコシル化型またはグリコシル化型ならびにグリコシル化パターンを変化させることにより得られる修飾型での上記で指定したタイプのタンパク質を含む。
【0109】
本発明のタンパク質もしくはポリペプチドのそのような機能的等価物または相同体は、突然変異導入により、例えば、点突然変異、タンパク質の伸長または短縮により、作製することができる。
【0110】
本発明のタンパク質のそのような機能的等価物または相同体は、突然変異体(例えば、短縮突然変異体)のコンビナトリアルデータベースをスクリーニングすることにより特定することができる。例えば、タンパク質変異体の斑入りデータベース(variegated database)は、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異導入により(例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的ライゲーションにより)作製することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列からの潜在的相同体のデータベースの作製のために用いることができる非常に多数の方法がある。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動化DNA合成機で行なうことができ、続いて合成遺伝子を好適な発現ベクターにライゲーションすることができる。縮重ゲノムの使用は、潜在的タンパク質配列の所望のセットをコードする、混合物中のすべての配列を供給することを可能にする。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者に公知である(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323; Itakura et al., (1984) Science 198:1056;Ike et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
【0111】
先行技術では、点突然変異または短縮により作製されたコンビナトリアルデータベースの遺伝子産物のスクリーニングのため、および選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーのスクリーニングのためのいくつかの方法が公知である。これらの技術は、本発明の相同体のコンビナトリアル突然変異導入により作成された遺伝子バンクの迅速スクリーニングのために適合させることができる。ハイスループット分析に基づく、大型遺伝子バンクのスクリーニングのために最も頻繁に用いられる技術は、複製可能な発現ベクターへの遺伝子バンクのクローニング、得られたベクターデータベースを用いた好適な細胞の形質転換およびコンビナトリアル遺伝子の発現を含み、発現ステップは、所望の活性の検出により、産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離が容易になる条件で行なわれる。再帰的アンサンブル突然変異導入(REM)は、データベース中の機能的突然変異体の頻度を増大させる技術であり、相同体を特定するためにスクリーニング試験と組み合わせて用いることができる(Arkin and Yourvan (1992) PNAS 89:7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
【0112】
5. コード核酸配列
本発明はまた、本明細書中に定義される酵素および突然変異体をコードする核酸配列にも関する。
【0113】
本発明はまた、本明細書中に具体的に開示された配列に対する一定の程度の「同一性」を有する核酸にも関する。2つの核酸の間の「同一性」とは、それぞれ核酸の全長にわたるヌクレオチドの同一性を意味する。
【0114】
例えば、同一性は、以下の設定でClustal法を用いて、Informax社(USA)のVector NTI Suite 7.1プログラムにより算出することができる(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr; 5(2):151-1):
マルチアライメントパラメータ:
ギャップ開始ペナルティ 10
ギャップ伸長ペナルティ 10
ギャップ分離ペナルティ範囲 8
ギャップ分離ペナルティ オフ
アライメント遅延のための同一性% 40
残基特異的ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
遷移重みづけ 0

ペアワイズアライメントパラメータ:
FASTアルゴリズム オン
K-tupleサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
最上対角数 5
【0115】
あるいは、同一性は、Chenna, Ramu, Sugawara, Hideaki, Koike,Tadashi, Lopez, Rodrigo, Gibson, Toby J, Higgins, Desmond G, Thompson, Julie D. Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs. (2003) Nucleic Acids Res 31 (13):3497-500、ウェブサイト:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#に従って、以下の設定により決定することができる:
DNAギャップ開始ペナルティ 15.0
DNAギャップ伸長ペナルティ 6.66
DNAマトリックス Identity
タンパク質ギャップ開始ペナルティ 10.0
タンパク質ギャップ伸長ペナルティ 0.2
タンパク質マトリックス Gonnet
タンパク質/DNA ENDGAP -1
タンパク質/DNA GAPDIST 4
【0116】
本明細書中に記載したすべての核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAならびにRNA配列、例えば、cDNAおよびmRNA)は、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成により(例えば、二重らせんの個々の重複相補的核酸ビルディングブロックの断片縮合により)公知の方法で作製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホルアミダイト法により公知の方法で行なうことができる(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press, New York, pages 896-897)。合成オリゴヌクレオチドの蓄積およびDNAポリメラーゼのKlenow断片を用いたギャップの充填およびライゲーション反応ならびに一般的クローニング技術は、Sambrookら(1989)(下記を参照されたい)に記載されている。
【0117】
本発明はまた、例えば、人工的ヌクレオチド類似体を用いて得られる、上記のポリペプチドおよびそれらの機能的等価物のうち1つをコードする核酸配列(一本鎖および二本鎖DNAならびにRNA配列、例えば、cDNAおよびmRNA)にも関する。
【0118】
本発明は、本発明のポリペプチドもしくはタンパク質または生物学的に活性なそのセグメントをコードする単離された核酸分子、および例えば本発明のコード核酸の同定もしくは増幅のためのハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして用いることができる核酸断片の両方に関する。
【0119】
本発明の核酸分子は、コード遺伝子領域の3’および/または5’末端からの非翻訳配列をさらに含むことができる。
【0120】
本発明はさらに、明示的に記載されたヌクレオチド配列またはそのセグメントに相補的な核酸分子にも関する。
【0121】
本発明のヌクレオチド配列は、他の細胞タイプおよび生物での相同配列の同定および/またはクローニングのために用いることができるプローブおよびプライマーの作製を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは、一般的に、本発明の核酸配列のセンス鎖もしくは対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12個、好ましくは少なくとも約25個、例えば約40、50または75個の連続するヌクレオチドに、「ストリンジェントな」条件下(下記を参照されたい)でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
【0122】
「単離された」核酸分子は、核酸の天然供給源に存在する他の核酸分子から分離されており、さらに、組み換え技術により生成される場合は他の細胞性物質もしくは培養培地を実質的に含まず、または化学合成される場合は化学的前駆体もしくは他の化学物質を含まないことができる。
【0123】
本発明の核酸分子は、分子生物学の標準的技術および本明細書中に提供される配列情報を用いて単離することができる。例えば、ハイブリダイゼーションプローブとして明示的に開示された完全配列のうち1種またはそのセグメントおよび標準的ハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている)を用いて、好適なcDNAライブラリーからcDNAを単離することができる。さらに、開示された配列のうち1種またはそのセグメントを含む核酸分子は、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる。このようにして増幅された核酸を、好適なベクターにクローニングし、DNA配列決定により特徴付けすることができる。本発明に従うオリゴヌクレオチドも、標準的合成法により、例えば、自動化DNA合成機を用いて作製することができる。
【0124】
本発明に従う核酸配列もしくはその誘導体、相同体またはこれらの配列の一部分は、例えば、ゲノムライブラリーもしくはcDNAライブラリーを介して、他の細菌から、例えば、通常のハイブリダイゼーション技術またはPCR技術により単離することができる。これらのDNA配列は、標準的な条件で本発明の配列とハイブリダイズする。
【0125】
「ハイブリダイズする」とは、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが、標準的条件でほぼ相補的な配列に結合することができる能力を意味するが、これらの条件では非相補的パートナー間での非特異的結合は生じない。このために、配列同士は、90〜100%相補的であり得る。相補配列の互いに特異的に結合できる特性は、例えば、ノザンブロッティングもしくはサザンブロッティングまたはPCRもしくはRT-PCRでのプライマー結合に利用される。
【0126】
保存領域の短いオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションのために有利に用いられる。しかしながら、ハイブリダイゼーションのために、本発明の核酸配列のより長い断片または完全配列を用いることも可能である。これらの標準的条件は、用いる核酸によって(オリゴヌクレオチド、より長い断片または完全配列)、またはどのタイプの核酸(DNAまたはRNA)をハイブリダイゼーションに用いるかによって変わる。例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドのものよりも約10℃低い。
【0127】
例えば、対象となる核酸に応じて、標準的条件とは、0.1〜5×SSC(1×SSC=0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)の濃度を有する水性バッファー溶液中で、またはさらに50%ホルムアミドの存在下で、42〜58℃の温度を意味する(例えば、42℃、5×SSC、50%ホルムアミド)。有利には、DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、0.1×SSC、約20℃〜45℃、好ましくは約30℃〜45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドに対しては、ハイブリダイゼーション条件は、有利には、0.1×SSC、約30℃〜55℃、好ましくは約45℃〜55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの記載された温度は、ホルムアミドの非存在下で、約100個のヌクレオチド長および50%のG+C含量を有する核酸に対する計算上の融解温度値の例である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、関連する遺伝学の教科書(例えば、Sambrook et al., 1989)に記載されており、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドのタイプまたはG+C含量に応じて、当業者に公知の式を用いて算出することができる。当業者であれば、以下の教科書から、ハイブリダイゼーションについてのさらなる情報を取得することができる:Ausubel et al. (eds), 1985, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York;Hames and Higgins (eds), 1985, Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford;Brown (ed), 1991, Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
【0128】
「ハイブリダイゼーション」は、特に、ストリンジェントな条件下で行なうことができる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 第9.31〜9.57頁またはin Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1〜6.3.6に記載されている。
【0129】
「ストリンジェントな」ハイブリダイゼーション条件とは、特に、以下の条件を意味する:50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストランおよび20g/mL変性せん断サケ精子DNAからなる溶液中、42℃で一晩のインキュベーション、およびそれに続く0.1×SSC、65℃でのフィルターの洗浄。
【0130】
本発明はまた、明示的に開示されたかまたは誘導可能な核酸配列の誘導体にも関する。
【0131】
つまり、本発明のさらなる核酸配列は、本明細書中に具体的に開示された配列から誘導することができ、1個もしくは数個のヌクレオチドの付加、置換、挿入または欠失により元の配列と異なることができ、さらに所望の特性プロフィールを有するポリペプチドをコードすることができる。
【0132】
本発明はまた、特定の供給源生物もしくは宿主生物のコドン使用頻度に従い、明示的に記載された配列と比較していわゆるサイレント突然変異を含むかまたは改変されている核酸配列、ならびに天然に存在するその変異体(例えば、スプライシング変異体または対立遺伝子変異体)も包含する。
【0133】
本発明はまた、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、対象となるアミノ酸が、同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解性のアミノ酸により置き換えられている)により得られる配列にも関する。
【0134】
本発明はまた、配列多型により明示的に開示された核酸から誘導された分子にも関する。これらの遺伝的多型は、自然変異により集団内の個体間に存在する場合がある。これらの自然変異は、通常は、遺伝子のヌクレオチド配列中に1〜5%の変動をもたらす。
【0135】
本発明の核酸配列の誘導体とは、例えば、配列範囲全体にわたる誘導アミノ酸のレベルで少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、非常に特に好ましくは少なくとも90%の相同性を有する対立遺伝子変異体を意味する(アミノ酸レベルでの相同性に関する;ポリペプチドに関して上記で記載した詳細を参照されたい)。有利には、相同性は、配列の一部の領域にわたってより高い場合がある。
【0136】
さらに、誘導体はまた、本発明の核酸配列の相同体、例えば、コードDNA配列および非コードDNA配列の動物、植物、真菌もしくは細菌相同体、短縮配列、一本鎖DNAまたはRNAであるとも理解される。例えば、相同体は、DNAレベルで、本明細書中に具体的に開示された配列中にもたらされたDNA領域全体にわたって、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、非常に特に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
【0137】
さらに、誘導体は、例えば、プロモーターとの融合体であると理解されるべきである。記載されたヌクレオチド配列に付加されるプロモーターは、少なくとも1箇所のヌクレオチド交換、少なくとも1箇所の挿入、反転および/または欠失により改変することができるが、プロモーターの機能性または効率を傷害されない。さらに、プロモーターの効率は、その配列を変化させることにより増大させることができ、または異なる属の生物のものでさえもより高効率のプロモーターと完全に入れ替えることができる。
【0138】
6. 本発明の構築物
本発明はまた、調節核酸配列の遺伝的制御下に、本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸配列を含む発現構築物;ならびにこれらの発現構築物のうち少なくとも1個を含むベクターにも関する。
【0139】
「発現ユニット」とは、本発明に従えば、本明細書中に定義されるプロモーターを含み、発現される対象の核酸または遺伝子との機能的連結後に、発現(すなわち、この核酸もしくはこの遺伝子の転写または翻訳)を調節する、発現活性を有する核酸を意味する。この文脈では、したがって、発現ユニットは、「調節核酸配列」とも称される。プロモーターに加えて、他の調節エレメント(例えば、エンハンサー)が存在することができる。
【0140】
「発現カセット」または「発現構築物」とは、本発明に従えば、発現される対象の核酸または発現される対象の遺伝子と機能的に連結している発現ユニットを意味する。つまり、発現ユニットとは異なり、発現カセットは、転写および翻訳を調節する核酸配列のみならず、転写および翻訳の結果としてタンパク質として発現されるべき核酸配列も含む。
【0141】
本発明の文脈では、「発現」または「過剰発現」との用語は、対応するDNAによりコードされる、微生物中の1種以上の酵素の生成または細胞内活性の増大を表す。このために、例えば、生物に遺伝子を挿入すること、既存の遺伝子を別の遺伝子で置き換えること、1種以上の遺伝子のコピー数を増加させること、強力なプロモーターを用いることまたは高活性の対応する酵素をコードする遺伝子を用いることが可能であり、かつ任意によりこれらの手順を組み合わせることができる。
【0142】
好ましくは、本発明のそのような構築物は、それぞれコード配列と機能的に連結されて、それぞれのコード配列の5’上流にプロモーター、および3’下流にターミネーター配列を、ならびに任意によりさらなる通常の調節エレメントを含む。
【0143】
本発明に従えば、「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸」または「プロモーター配列」とは、転写される対象の核酸と機能的に連結された、この核酸の転写を調節する核酸を意味する。
【0144】
この文脈では、「機能的な」または「作動可能な」連結とは、調節エレメントのそれぞれが核酸配列の転写においてその機能を発揮できるような様式での、例えば、プロモーター活性を有する核酸配列のうち1つと、転写される核酸配列および任意によりさらなる調節エレメント(例えば、核酸の転写を可能にする核酸配列、および例えばターミネーター)の連続的配置を意味する。これは、化学的な意味での直接的連結を必ずしも必要としない。エンハンサー配列などの遺伝的制御配列はまた、より離れた位置から、または他のDNA分子からでさえ、標的配列に対してその機能を発揮することもできる。転写される核酸配列がプロモーター配列の後ろに(すなわち、3’末端に)位置し、それにより2つの配列が互いに共有結合している配置が好ましい。プロモーター配列とトランスジェニックに発現される対象の核酸配列との距離は、200bp(塩基対)未満または100bp未満または50bp未満であり得る。
【0145】
プロモーターおよびターミネーター以外で、言及することができる他の調節エレメントの例は、標的化配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などである。好適な調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
【0146】
本発明の核酸構築物は、特に、本明細書中に具体的に言及された配列またはその誘導体および相同体、ならびに本明細書中に具体的に言及されたアミノ酸配列から誘導することができる核酸配列から選択される配列を含み、これらは、有利には、遺伝子発現を制御する(例えば、増加させる)ための1個以上の調節シグナルと作動可能にまたは機能的に連結されている。
【0147】
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然の調節が、実際の構造遺伝子の前に存在したままであることができ、任意により、遺伝的に改変して、それにより、天然の調節を停止させ、遺伝子の発現を増加させることができる。核酸構築物はまた、よりシンプルな設計のものであることができ、すなわち、コード配列の前に追加の調節シグナルが挿入されず、その調節を有する天然のプロモーターを除去していないことができる。その代わりに、天然の調節配列をサイレント化し、それにより調節が行なわれず、遺伝子発現を増加させる。
【0148】
好ましい核酸構築物はまた、有利には、プロモーターに機能的に連結された1個以上の上記のエンハンサー配列も含み、これが、核酸配列の発現増加を可能にする。追加の有利な配列(他の調節エレメントまたはターミネーターなど)を、DNA配列の3’末端に挿入することもできる。1コピー以上の本発明の核酸を、構築物中に含ませることができる。構築物はまた、任意により構築物の選別のために、抗生物質耐性または栄養要求性補完遺伝子などの他のマーカーも含むことができる。
【0149】
好適な調節配列の例は、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda-PRまたは lambda-PLプロモーターなどのプロモーターに含まれ、これらは、グラム陰性細菌において有利に用途が見出される。他の有利な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターace、amyおよびSPO2、酵母または真菌プロモーターADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHに含まれる。人工的プロモーターも、調節のために用いることができる。
【0150】
発現のために、核酸構築物を、有利には宿主で遺伝子の最適な発現を可能にするベクター(例えば、プラスミドまたはファージ)中で、宿主生物に挿入する。プラスミドおよびファージに加えて、ベクターは、当業者に公知のすべての他のベクター(例えば、SV40、CMV、バキュロウイルスおよびアデノウルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、プラスミド、コスミド、および直鎖状または環状DNA)を意味するものとも理解される。これらのベクターは、宿主生物中で自律的に複製することができ、または染色体として複製することができる。これらのベクターは、本発明のさらなる実施形態を表す。
【0151】
好適なプラスミドは、例えば、大腸菌ではpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11またはpBdCI;ノカルジオホルム・アクチノミセス(放線菌;nocardioform actinomycetes)ではpJAM2;ストレプトミセス属ではpIJ101、pIJ364、pIJ702またはpIJ361;バチルス属ではpUB110、pC194またはpBD214;コリネバクテリウム属ではpSA77またはpAJ667;真菌ではpALS1、pIL2またはpBB116;酵母では2αM、pAG-1、YEp6、YEp13またはpEMBLYe23あるいは植物ではpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004またはpDH51である。上記のプラスミドは、考えられるプラスミドの一部の選択である。他のプラスミドが当業者に周知であり、例えば、書籍Cloning Vectors(Eds. Pouwels P.H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に見出されるであろう。
【0152】
ベクターのさらなる実施形態では、本発明の核酸構築物または本発明の核酸を含むベクターは、有利には、微生物に直鎖状DNAの形態で挿入し、異種組み換えまたは相同組み換えにより宿主生物のゲノムに組み込むことができる。この直鎖状DNAは、プラスミドなどの直線化ベクターまたは単に本発明の核酸構築物もしくは核酸を含むことができる。
【0153】
生物での異種遺伝子の最適な発現のために、該生物で用いられる特異的なコドン使用頻度に従って核酸配列を改変するのが有利である。コドン使用頻度は、対象となる生物の他の既知の遺伝子のコンピュータ評価に基づいて容易に決定することができる。
【0154】
本発明の発現カセットの作製は、好適なプロモーターと好適なコードヌクレオチド配列およびターミネーターシグナルまたはポリアデニル化シグナルとの融合に基づく。このために、一般的な組み換えおよびクローニング技術が用いられ、それらは例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)ならびにT.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)およびAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されている。
【0155】
組み換え核酸構築物または遺伝子構築物を、有利に、好適な宿主生物での発現のために、宿主特異的ベクターに挿入し、該宿主での遺伝子の最適な発現を可能にする。ベクターは当業者に周知であり、例えば、”Cloning Vectors”(Pouwels P.H. et al., Publ. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に見出されるであろう。
【0156】
7. 本発明に従い用いることができる宿主
文脈に応じて、「微生物」との用語は、出発微生物(野生型)もしくは本発明に従い遺伝的に改変された微生物、またはその両方を意味する。
【0157】
本発明に従えば、「野生型」との用語は、対応する出発微生物を意味し、必ずしも天然に存在する生物に対応する必要はない。
【0158】
本発明のベクターを用いて、例えば、本発明の少なくとも1種のベクターを用いて形質転換された組み換え微生物を作製することができ、それを本発明のポリペプチドの作製のために用いることができる。有利には、上記の本発明の組み換え構築物を好適な宿主系に挿入し、発現させる。好ましくは、それぞれの発現系での記載された核酸の発現を確実にするために、当業者が熟知している一般的なクローニングおよびトランスフェクション法を用い、それは例えば、共沈殿、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどである。好適な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., Publ. Wiley Interscience, New York 1997、またはSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。
【0159】
原則として、すべての原核生物を、本発明の核酸または核酸構築物に対する組み換え宿主生物とみなすことができる。宿主生物として、細菌が有利に用いられる。好ましくは、細菌は、特にTAG生成性ノカルジオホルム・アクチノミセスなどのPHA型、TGA型またはWE型の封入体を生成する能力を有する天然または組み換え細菌、特にロドコッカス属、ミコバクテリウム属、ノカルジア属、ゴルドニア属、スケルマニア属およびツカムレラ属のもの;ならびにTAG生成性ストレプトミセス属;WE生成性アシネトバクターおよびアルカニボラックス属;ならびにエシェリキア属(特に大腸菌)、コリネバクテリウム属(特にコリネバクテリウム・グルタミクム)およびバチルス属(特に枯草菌(バチルス・サブティリス))の組み換え株から選択される。
【0160】
次に、本発明の1種以上の宿主生物は、好ましくは、上記の定義に従う酵素活性をコードする、本発明に記載された核酸配列、核酸構築物またはベクターのうち少なくとも1種を含む。
【0161】
本発明の方法で用いる生物は、宿主生物に応じて、当業者が精通している方法で増殖または生育させる。通常、微生物は、一般的に糖の形態の炭素源、一般的に有機窒素源(酵母エキスなど)または塩(硫酸アンモニウムなど)の形態の窒素源、微量元素(鉄、マンガンおよびマグネシウム塩)および任意によりビタミンを含有する液体培地中で、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃の温度で、酸素通気しながら増殖させる。液体栄養培地のpHは、固定値に維持することができ、すなわち、増殖中に調節するか調節しないことができる。増殖は、バッチ形式で、セミバッチ形式でまたは連続的に行なうことができる。栄養素は、発酵の開始時に供給することができ、または半連続的もしくは連続的に後に供給することができる。
【0162】
8. 本発明の酵素の組み換え生成
本発明はまた、本発明のタンパク質を発現する微生物を培養するステップ、および培養物から所望の生成物を単離するステップによる、本発明のタンパク質の製造方法にも関する。
【0163】
本発明に従って用いられる微生物は、連続的に、あるいはバッチ法またはフェドバッチ法もしくは反復フェドバッチ法で断続的に培養することができる。公知の培養法の総説は、Chmielによる教科書(Bioprocesstechnik 1. Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))またはStorhasによる教科書(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))に見出されるであろう。
【0164】
用いられる培養培地は、適切な様式で特定の微生物株の要求を満たさなければならない。様々な微生物に対する培養培地の説明は、ハンドブック"Manual of Methods for General Bacteriology"(American Society for Bacteriology;Washington D. C., USA, 1981)に提供されている。
【0165】
本発明に従って用いることができるこれらの培地は、一般的に、1種以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含む。
【0166】
好ましい炭素源は、単糖、二糖または多糖などの糖である。非常によい炭素源は、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖は、糖蜜または精糖からの他の副産物などの複合化合物により培地に添加することもできる。種々の炭素源の混合物を添加することも有利であり得る。他の考えられる炭素源は、ダイズ油、ヒマワリ油、ラッカセイ油およびココナッツ油などの油脂、パルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸などの脂肪酸、グリセロール、メタノールまたはエタノールなどのアルコールならびに酢酸または乳酸などの有機酸である。
【0167】
窒素源は、通常は、有機もしくは無機窒素化合物またはこれらの化合物を含有する物質である。窒素源の例としては、アンモニアガスもしくはアンモニウム塩(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムなど)、硝酸塩/エステル、尿素、アミノ酸または複合窒素源(コーンスティープリカー、ダイズ粉、ダイズタンパク質、酵母エキス、肉エキスなど)その他が挙げられる。窒素源は、別々にまたは混合物として用いることができる。
【0168】
培地中に存在することができる無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩を含む。
【0169】
無機含硫化合物(例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物)、および有機硫黄化合物(メルカプタンおよびチオールなど)を、硫黄源として用いることができる。
【0170】
リン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を、リン供給源として用いることができる。
【0171】
溶液中に金属イオンを保持するために、キレート剤を培地に添加することができる。特に好ましいキレート剤は、カテコールもしくはプロトカテク酸エステルなどのジヒドロキシフェノール、またはクエン酸などの有機酸を含む。
【0172】
本発明に従って用いられる発酵培地はまた、ビタミンまたは増殖促進因子などの他の増殖因子を含有することができ、そのようなものとしては、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩およびピリドキシンが挙げられる。増殖因子および塩は、多くの場合、培地の複合成分(酵母エキス、糖蜜、コーンスティープリカーなど)に由来する。さらに、好適な前駆体を培養培地に添加することができる。培地中の化合物の正確な組成は、対象となる実験に強く依存し、それぞれの具体的なケースに対して個別に決定しなければならない。培地最適化についての情報は、教科書"Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach"(Publ. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) p. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)に見出すことができる。増殖培地はまた、商業的供給元からも入手することができる(Standard 1(Merck社)またはBHI(Brain heart infusion、DIFCO社)など)。
【0173】
培地のすべての成分を、加熱(20分、1.5bar、121℃)または滅菌濾過により滅菌する。成分は、一緒に、または必要であれば別々に滅菌することができる。培地のすべての成分は、増殖の開始時に存在するか、または場合によっては連続的にもしくはバッチ供給により添加することができる。
【0174】
培養の温度は、通常は、15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、実験中に一定に保つことができ、または変えることができる。培地のpH値は、5〜8.5、好ましくは7.0付近とするべきである。増殖のためのpH値は、塩基性化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアまたはアンモニア水など)または酸性化合物(リン酸または硫酸など)を添加することにより、増殖中に制御することができる。発泡を制御するために、消泡剤(例えば、脂肪酸ポリグリコールエステル)を用いることができる。プラスミドの安定性を維持するために、選択作用を有する好適な物質(例えば、抗生物質)を培地に添加することができる。好気条件を維持するために、酸素または酸素含有ガス混合物(例えば、大気)を培養物中に送り込む。培養物の温度は、通常は20℃〜45℃である。最大限の所望の生成物が形成されるまで、培養を続ける。これは、通常は、10時間〜160時間以内に達成される。
【0175】
任意により、高周波数超音波により、高圧(例えば、フレンチプレス)により、浸透圧溶解により、界面活性剤、溶解性酵素もしくは有機溶媒の作用により、ホモジナイザーを用いて、または列挙した方法のうち数種類の組み合わせにより、細胞を破砕することができる。
【0176】
9. 反応条件
モノアシル化ポリオールの製造方法において存在する少なくとも1種の酵素は、天然もしくは組み換え的に該1種以上の酵素を産生する生存細胞中に、回収された細胞中に、死滅細胞中に、透過化細胞中に、粗精製細胞抽出物中に、精製抽出物中に、または実質的に純粋もしくは完全に純粋な形態で存在し得る。少なくとも1種の酵素は、溶液中に、または担体上に固定化された酵素として存在し得る。1種または数種の酵素が、可溶化形態および固定化形態で同時に存在することができる。
【0177】
本発明の方法は、当業者に公知の一般的な反応器中で、様々な範囲の規模で(例えば、実験室規模(数ミリリットル〜数十リットルの反応体積)から工業規模(数リットルから数千立方メートルの反応体積)まで)で実施することができる。リパーゼを、任意により透過化された非生存細胞にカプセル化された形態で、いくぶんか精製された細胞抽出物の形態で、または精製された形態で用いる場合、化学反応器を用いることができる。化学反応器は、通常は、少なくとも1種の酵素の量、少なくとも1種の基質の量、pH、温度および反応媒体の循環を制御することを可能にする。少なくとも1種の酵素が生存細胞中に存在する場合、該方法は発酵であるであろう。この場合、生体触媒製造は、バイオリアクター(発酵器)で行なわれ、生存細胞に対する好適な生存条件に必要なパラメータ(例えば、栄養素を含む培養培地、温度、通気、酸素その他のガスの存在または非存在、抗生物質など)を制御することができる。当業者は、化学反応器またはバイオリアクターに精通しており、例えば、実験室規模から工業規模へと化学法もしくはバイオテクノロジー法をアップスケールするための手順、または方法パラメータを最適化するための手順に精通し、これは、文献にも十分記載されている(バイオテクノロジー法については、例えば、Crueger und Crueger, Biotechnologie - Lehrbuch der angewandten Mikrobiologie, 2. Ed., R. Oldenbourg Verlag, Munchen, Wien, 1984を参照されたい)。
【0178】
少なくとも1種のリパーゼ(lopase)を含む細胞は、物理的もしくは機械的手段(超音波または高周波パルス、フレンチプレスなど)、または化学的手段(低張媒体、溶解性酵素および媒体中に存在する界面活性剤など)、あるいはそのような方法の組み合わせにより透過化することができる。界面活性剤の例は、ジギトニン、n-ドデシルマルトシド、オクチルグリコシド、Triton(登録商標)X-100、Tween(登録商標)20、デオキシコール酸塩、CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホン酸)、Nonidet(登録商標)P40(エチルフェノールポリ(エチレングリコエーテル))などである。
【0179】
少なくとも1種の酵素が固定化される場合、これは、不活性担体に連結される。好適な担体材料は、当技術分野で公知であり、例えば、EP-A-1149849、EP-A-1 069 183およびDE-OS 100193773ならびにそれらに引用されている引用文献に開示されている(それらのすべてが担体材料に関して具体的に包含される)。好適な担体材料の例は、粘土、粘土鉱物(カオリナイトなど)、珪藻土、パーライト、シリカ、アルミナ、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、アニオン交換材料、合成ポリマー(ポリスチレンなど)、アクリル酸樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタンおよびポリオレフィン(ポリエチレンおよびポリプロピレンなど)である。担体結合酵素を調製するために、通常は、担体材料を微細粉末の形態で用い、この場合、多孔形態が好ましい。担体材料の粒径は、通常は、5mm、特に2mmを超えない。少なくとも1種の酵素が全細胞調製物として存在する場合、該全細胞調製物は、遊離形態または固定化形態で存在することができる。好適な担体材料は、例えば、アルギン酸カルシウムまたはカラギーナンである。酵素ならびに細胞を、グルタルアルデヒドにより直接的に連結することができる。広範囲の固定化法が、当技術分野で公知である(例えば、J. Lalonde and A. Margolin “Immobilization of Enzymes” in K. Drauz und H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002, Vol.III, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheim)。
【0180】
変換反応は、バッチ形式で、セミバッチ形式で、または連続的に行なうことができる。反応物質(および任意により栄養素)は、反応の開始時に供給することができ、または半連続的もしくは連続的に後に供給することができる。
【0181】
反応は、水性または非水性反応媒体中で行なうことができる。
【0182】
水性媒体は、pHを5〜9(6〜8など)の値に調整するために、好適な緩衝剤を含有することができる。
【0183】
非水性媒体は、実質的に水を含まないことができ、すなわち、約1重量%または0.5重量%未満の水を含有するであろう。
【0184】
特に、本発明の方法は、有機非水性媒体中で行なう。好適な有機溶媒として、例えば5〜8個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素(ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはシクロオクタンなど)、ハロゲン化脂肪族炭化水素(ジクロロメタン、クロロギ酸エステル、CCl4、ジクロロエタンまたはテトラクロロエタンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシロール、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼンなど)、脂肪族非環状および環状エーテル(ジエチルエーテル、メチル-tert.-ブチルエーテル、エチル-tert.-ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなど)またはエステル(酢酸エチルまたは酢酸n-ブチルなど)またはケトン(メチルイソブチルケトンなど)またはジオキサンあるいはそれらの混合物に言及することができる。
【0185】
アシル供与体である酢酸エチルのように、反応物質としても機能し得る溶媒が特に有用である。
【0186】
反応物質の濃度は、至適反応条件に合わせることができ、これは、利用する具体的な酵素に依存し得る。例えば、初期基質濃度は、0.01〜0.5M、例えば10〜100mMの範囲内であり得る。
【0187】
適切であれば、反応平衡を生成物側にシフトさせるために、例えばアシル供与体などの1種類の反応物質をモル過剰で用いることができる。
【0188】
反応温度は、至適反応条件に合わせることができ、これは、利用する具体的な酵素に依存し得る。例えば、反応は、0〜70℃、例えば、20〜50または25〜40℃の範囲内の温度で行なうことができる。反応温度の例は、約30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃および約60℃である。
【0189】
該方法は、基質と生成物との平衡が達成されるまで進めることができるが、それより早く停止させてもよい。通常の処理時間は、1分間〜25時間、特に10分間〜6時間の範囲内、例えば、1時間〜4時間、特に1.5時間〜3.5時間の範囲内である。
【0190】
10. 生成物単離
本発明の方法はさらに、任意により立体異性体としてまたはエナンチオマーとして実質的に純粋な形態で、アシル化生成物を回収するステップを含むことができる。「回収する」との用語は、培養培地または反応媒体から化合物を抽出する、採取する、単離するまたは精製することを含む。化合物の回収は、当技術分野で公知のいずれかの慣用の単離または精製法に従って行なうことができ、そのような方法としては、限定するものではないが、慣用の樹脂(例えば、アニオンまたはカチオン交換樹脂、非イオン性吸着樹脂等)を用いた処理、慣用の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナ等)を用いた処理、pHの変化、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどの慣用の溶媒を用いたもの)、蒸留、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶化、pH調整、凍結乾燥などが挙げられる。
【0191】
単離された生成物が何であるかおよびその純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、分光法(IR、UV、NMRなど)、着色法、TLC、NIRS、酵素または微生物アッセイなどの公知の技術により決定することができる(例えば、以下の文献を参照されたい:Patek et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140;Malakhova et al. (1996) Biotekhnologiya 11 27-32;およびSchmidt et al. (1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70. Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) Bd. A27, VCH: Weinheim, S. 89-90, S. 521-540, S. 540-547, S. 559-566, 575-581およびS. 581-587;Michal, G (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons;Fallon, A. et al. (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17)。
【実施例】
【0192】
以下の実施例は、本発明を例示するためにのみ機能する。当業者に明らかな多数の考えられる変形も、本発明の範囲内に入る。
【0193】
実験パート:
A. 材料および方法:
1. 酵素固定化
5gのAccurel <1500ミクロンMP1000/pp粉末を用いた。粉末を、95%エタノールに5日間浸漬した。粉末を新たなエタノールで再度洗浄し、インキュベーション前にエタノールを除去した。100mM PO4バッファー、pH7.2に溶解した約2.7mg/mLの濃度のT40A突然変異型CALB 21mLを添加した。
【0194】
ピキア・パストリス(P. pastoris)培養由来の酵素含有上清を3g/lのタンパク質濃度まで濃縮した。pHを7.5に調整した。酵素溶液1リットル当たり100gのResindion Diaoin HP 20Lビーズを添加した。スラリーを4時間振盪しながらインキュベートした。続いて、固体を濾別し、弱気流中で乾燥させた。
【0195】
T40V突然変異型CALBに対して、5gのAccurel <1500ミクロンMP1000/pp粉末を用いた。粉末を1時間超、95%エタノールに浸漬し、続いて新たなエタノールで洗浄した。固定化前にエタノールを除去するために、粉末をバッファー(100mM KxHyPO4、pH7.2)で洗浄した。約30〜50mg/lの濃度のタンパク質溶液70mL。固定化溶液を、3日間、4℃で、80rpmにて、IKA(登録商標) KSベーシックシェーカー上に置いた。上清を濾別し、真空マニホールド上で50mM NH4Ac(pH7)100mLを3回添加することにより、ビーズを洗浄した。蒸発後にビーズ上に多量の塩が残らないように、50mM NH4Acを用いた。
【0196】
2. 種々の成分の分析のためのGCパラメータ
2.1 グリコール
注入口の温度は200℃に設定し、検出器は270℃に設定した。温度プログラムは、40℃、5分間で開始し、200℃まで10℃/分の勾配が続き、最後の10分間は温度を一定に維持した。
【0197】
2.2 1,3-プロパンジオール
注入口および検出器の温度は、いずれも200℃とした。温度プログラムは、40℃、5分間で開始し、160℃まで5℃/分の勾配が続き、200℃まで10℃/分の勾配が続き、最後の5分間は温度を一定に維持した。
【0198】
2.3 1,4-ブタンジオール
注入口の温度はスイッチを切り、検出器は270℃に設定した。温度プログラムは、30℃、5分間で開始し、40℃まで2℃/分の勾配が続き、200℃まで10℃/分の勾配が続き、最後の5分間は温度を一定に維持した。
【0199】
2.4 2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび2-フェニル-1,3-プロパンジオール
注入口の温度はスイッチを切り、検出器は270℃に設定した。温度プログラムは、40℃、5分間で開始し、200℃まで10℃/分の勾配が続き、最後の10分間は温度を一定に維持した。
【0200】
2.5 1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオール
実施例5、6または7に記載する突然変異体および測定に対して、以下のパラメータを用いた。注入口の温度は200℃に設定し、検出器は200℃に設定した。温度プログラムは、40℃、5分間で開始し、200℃まで10℃/分の勾配が続き、最後の10分間は温度を一定に維持した。
【0201】
2.6 1,4-ブタンジオール、アクリル酸4-ヒドロキシブタンおよび二アクリル酸ブタンジオール
実施例8および9に記載する突然変異体および測定に対して、以下のパラメータを用いた。注入口の温度は220℃に設定し、検出器は225℃に設定した。温度プログラムは、50℃、5分間で開始し、290℃まで10℃/分の勾配が続き、最後の10分間は温度を一定に維持した。
【0202】
B. 実施例:
実施例1:CALB野生型ならびにT40AおよびT40V突然変異体の調製および固定化
野生型およびT40A突然変異型CALBは、既定のプロトコールに従う以前の実験からの自家生成により取得した(Magnusson, A., K. Hult, and M. Holmquist, Creation of an enantioselective hydrolase by engineered substrate-assisted catalysis. Journal of the American Chemical Society, 2001. 123(18): p. 4354-4355. Rotticci-Mulder, J.C., et al., Expression in Pichia pastoris of Candida antarctica lipase B and lipase B fused to a cellulose-binding domain. Protein Expression and Purification, 2001. 21(3): p. 386-392)。
【0203】
T40A突然変異型CALBに対して用いたプライマーは、以下の通りである:
5’-GACTGGTTCCAATTGACAAGC-3’(配列番号5)および
5’-GCAAATGGCATTCTGACATCC-3’(配列番号6)
【0204】
T40V突然変異型CALBは、以前の研究により得られたpGAPZαB CALB構築物を用いて作製した(Larsen M. W., et al., Expression of Candida antarctica lipase B in Pichia pastoris and various Escerichia coli systems, Protein Expression and Purification, 2008, 62(1): p. 90-97)。
【0205】
25ngの鋳型を、100ngのプライマーと共に用いた:
5’-CCCATCCTTCTCGTCCCCGGAGTCGGCACCACAGGTCCA-3’(配列番号7)および
5’-GTCGAACGACTGTGGACCTGTGGTGCCGACTCCGGGGAC-3’(配列番号8)
【0206】
PCR反応で6%DMSOを用いた。反応は、98℃、1分間、および98℃で10秒間、60℃で50秒間、72℃で3分間の25サイクルで行なった。鋳型DNAを、FastDigest DpnIを用いて消化した。コンピテントセル(大腸菌株XL10 GOLD、Stratagene社)を、3μLの突然変異導入反応混合物で形質転換した。BigDyeターミネーターを用いたDNAサイクルシーケンスによる配列決定により、突然変異を確認した。QIAprep Spinミニプレップキットを用いてプラスミドを抽出し、FastDigest AvrII(Fermentas社)を用いて直線化した。ピキア・パストリス(Picchia pastoris)X33(Invitrogen社)の形質転換は、説明書に従ってエレクトロポレーションにより行なった:BIORAD Gene Pulserを用いてpGAPZ A、B、CおよびpGAPZαA、B、C。培養は、10mLのBMGY培地(10g酵母エキス、20gペプトン、100mL 1M K2HPO4/KH2PO4、pH6.0/1リットル、13.4g酵母窒素ベース(硫酸アンモニウム含有、アミノ酸不含)(YNB)、0.4mgビオチン、および10mLグリセロール、1Lの水中)に単一細胞コロニーを植菌し、これを260rpmで軌道撹拌しながら、30℃で一晩培養することにより行った。次に、500μLを用いて、5L振盪フラスコ中の0.5L BMGYに植菌した。培養は、260rpmで軌道撹拌しながら、30℃で3日間行なった。Sorvall Super T21遠心分離機での遠心分離および細胞ペレットの回収により、採取を行なった。
【0207】
タンパク質発現は、組み換え酵母ピキア・パストリスで行なった。
【0208】
野生型およびT40A CALBの精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィーおよびそれに続くゲル濾過により行なった。野生型およびT40A CALBの精製のために、既定のプロトコールを用いた(Rotticci-Mulder, J.C., et al., Expression in Pichia pastoris of Candida antarctica lipase B and lipase B fused to a cellulose-binding domain. Protein Expression and Purification, 2001. 21(3): p. 386-392)。T40V CALBは、イオン交換クロマトグラフィーにより精製した。プロトコールは、バッファー交換をクロスフロー濾過ではなく透析により行なった以外は、以下の文献に従った(Trodler P. et al, Rational design of a one-step purification strategy for Candida Antarctica lipase B by ion exchange chromatography. Journal of Chromatography A 2008 1179(2) p. 386-392)。Spectra/Por(登録商標)社製の透析バッグ(分子量カットオフ14,000Daの透析膜)に、0.5Lの濾過後培養培地を入れた。培地を1.5Lのバッファーで4回平衡化し(10mMギ酸ナトリウム、10mMクエン酸ナトリウム、10mM酢酸ナトリウム、pH3.0)、これをイオン交換クロマトグラフィーに用いた。精製は、AKTA explorerに連結した16/20カラムに充填した7mLのSource 15Sマトリックスを用いて行なった。
【0209】
酵素をAccurel MP1000担体ビーズに固定化し(上記の一般的方法を参照されたい)、乾燥させ、飽和塩化リチウムに対して平衡化した。水分活性の平衡化は、数日間、塩化リチウム上で酵素を保存することにより達成することができた。このT40Aおよび野生型CALBは、活性の低下を防ぐために、長期間この環境で固定化CALBを保存するのが好適であるので、塩化リチウム上で3〜4年間保存していた。T40V CALBは、使用前に塩化リチウム上で3日間保存した。
【0210】
担体上に積載する酵素量は、阻害剤である4-メチルウンベリフェリルヘキシルホスホン酸メチルを用いた活性部位滴定(active site titration)により確認した。冷凍庫(-20℃)で保存したアンプルからの阻害剤を、アセトニトリル中に50μMの濃度で溶解した。阻害剤は、以前に合成され、以下の文献に記載されたCALBの活性部位滴定のために用いた:Magnusson, A.O., et al., Creating space for large secondary alcohols by rational redesign of Candida antarctica lipase B. Chembiochem, 2005. 6(6): p. 1051-1056およびRotticci, D., et al., An active-site titration method for lipases. Biochimica Et Biophysica Acta-Molecular and Cell Biology of Lipids, 2000. 1483(1): p. 132-140。
【0211】
阻害反応は、固定化CALB野生型およびT40A突然変異体を含む50mgの酵素担体ビーズがそれぞれ入った3本の別々のバイアル中で行なった。野生型は反応バイアルのうち1本で反応させ、他の2本にはT40A突然変異体を入れた。酵素を、アセトニトリルに溶解した50μM阻害剤1mL中でインキュベートした。それぞれのバイアルを密閉し、蛍光団にダメージを与える光から守るためにアルミホイルで覆い、連続回転器で保存した。2、5および9日後にアリコートを採取した。インキュベーションからの100μLの反応溶液を含むそれぞれのアリコートを、Perkin Elmer 10/4 mmクオーツキュベット中の900μLのバッファー(100mM Tris、1mM CaCl2、pH8.0)に分注した。Perkin Elmer LS 50 B蛍光光度計を用いて、蛍光によって分析を行なった。励起および発光の波長は、それぞれ、360nmおよび445nmとした。蛍光は、2種類の異なる対照サンプルでも測定した。4-メチルウンベリフェリルヘキシルホスホン酸メチルの自発的加水分解からのバックグラウンド蛍光の対照として、阻害剤(アセトニトリル中、50μM)を酵素なしでインキュベートした。これに加えて、固定化酵素からのバックグラウンド蛍光の対照として、それぞれの酵素50mgを阻害剤なしでアセトニトリル中でインキュベートした。これらのサンプルからの合計蛍光を、阻害反応で測定された蛍光から差し引いた。固定化CALB T40Vの活性部位滴定のために、同じ方法を用いた。阻害2週間後に採取し、測定したサンプルは、低レベルの阻害を示した。
【0212】
阻害後に、残存活性を測定した。固定化酵素を1mLのアセトニトリルで洗浄し、飽和LiCl上で3日間保存した。MTBE(99.5%、Labscan社)中に溶解した100mM 1-ブタノール(≧99.5%、Riedel-deHaen社)、20mMデカン(≧98%、Fluka社)および1M酪酸ビニル(≧99%、Fluka社)を含有する溶液を、活性測定のための反応溶液として用いた。4mLの反応溶液を、阻害された酵素に添加した。比較のために、バックグラウンド蛍光の対照として用いた酵素を用いて反応を繰り返した。反応速度に影響し得る基質の高度な変換を防ぐために、活性測定に用いる酵素量を調整した。反応に用いた阻害された固定化酵素は、野生型で19mg、T40Aで20mgであった。反応で用いた蛍光対照から採取した固定化酵素の量は、野生型で2.8mg、T40Aで9.0mgであった。50〜350秒の反応時間で、各反応から5個のアリコートを採取した。区分解析で、上記のとおりにGCで分析を行なった。
【0213】
活性測定により、野生型の83%、T40A突然変異体の21%が阻害されたことが示された。残存活性は、CALB T40Aについては測定するのには低すぎた。これらの活性を考慮して、T40A突然変異体については担体ビーズ1g当たり4.6mgの活性酵素を固定化し、野生型については担体ビーズ1g当たり12mgの酵素を固定化した。固定化された活性CALB T40Vの量は、担体ビーズ1g当たり約0.3mgであった。
【0214】
実施例2:基質として種々のジオールおよびアシル供与体として酢酸エチルを用いる酵素触媒アシル化反応
以下の3種類の異なる直鎖第一級ジオールを用いて、反応を行なった:
1,2-エタンジオール、≧99.5%、MERCK社、
1,3-プロパンジオール、98%、Aldrich社および
1,4-ブタンジオール、≧99%、Aldrich社。
【0215】
さらに、以下の異なる置換を有する1,3-プロパンジオールを用いて反応を行なった:
2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび
2-フェニル-1,3-プロパンジオール。
【0216】
3-ヘキサノン(≧98%、Aldrich社)を内部標準として用いた。
【0217】
それぞれのジオールを、20mMの濃度で、5mMの3-ヘキサノンと共に酢酸エチル(≧99%、Fluka社)に溶解した。酢酸エチルは、アシル供与体および溶媒として用いた。野生型またはT40A突然変異型CALBを積載した20mgの酵素担体ビーズに4mLの反応溶液を添加することにより、反応を開始させた。反応は、HLC回転式サーモブロックで29℃で行なった。50μLのアリコートを採取し、パスツールピペット中でウールを通して濾過し、分析前に50μLの酢酸エチルで希釈した。内部標準として用いた3-ヘキサノンを、反応および分析を通して、反応溶液中に存在させた。
【0218】
5mM 3-ヘキサノンを、内部標準として20mMジオールと共に反応混合物中で用いた。反応サンプル50μLを採取することにより、反応中にアリコートを回収した。サンプルを、50μLの酢酸エチルと共にウールを通して濾過し、それにより残存酵素を除去し、分析前に反応サンプルを2倍に希釈した。
【0219】
最大モノエステル収率の決定のために、100mgの酵素担体ビーズを用いてT40A突然変異体により触媒される反応を再実施した。CALB野生型およびCALB T40A突然変異体の両方を用いて、100mM濃度のジオールおよび50mg酵素担体ビーズで、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび2-フェニル-1,3-プロパンジオールとの反応を再実施した。これは、エナンチオマー過剰率を決定するために行なった。
【0220】
すべての反応を、GC(Hewlett Packard 5890シリーズII)で分析した。分析する異なる基質および生成物に応じて、2種類の異なる25m×0.32mm WCOT溶融シリカカラムを用いた。1,2-エタンジオールおよび1,3-プロパンジオールとの反応には、CP Chirasil-Dex CBコーティングを有する極性GCカラムを用いた。1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび2-フェニル-1,3-プロパンジオールとの反応には、CP-SIL 5CBコーティングを有する非極性GCカラムを用いた。
【0221】
3-ヘキサノンとの関連で、各ジオールについての応答係数を決定した。すべてのジオールおよびモノエステルがジエステルに変換されている場合、ジエステルについての応答係数はデカンとの関連で決定することができた。各反応でのモノエステルの濃度は、ジオールの出発濃度からジエステルの濃度を差し引くことにより決定した。
【0222】
実施例3:基質として種々のジオールおよびアシル供与体として酪酸ビニルを用いる酵素触媒アシル化反応
以下の2種類のジオールを用いて、反応を行なった:
1,4-ブタンジオール、≧99%、Aldrich社、
2-メチル-1,3-プロパンジオール。
【0223】
各ジオールを、10mMの濃度で、2mMのデカン(≧98%、Fluka社)および200mM酪酸ビニル(>99%、Fluka社)と共に、MTBE(99.5%、Lab-Scan社)に溶解した。MTBEは、アシル供与体および溶媒として用いた。野生型またはT40A突然変異型CALBを積載した20mg酵素担体ビーズに4mLの反応溶液を添加することにより、反応を開始した。反応は、HLC回転式サーモブロックで29℃で行なった。50μLのアリコートを採取し、パスツールピペット中でウールを通して濾過し、分析前に50μLの酢酸エチルで希釈した。内部標準として用いたデカンを、反応および分析を通して、反応溶液中に存在させた。
【0224】
すべての反応を、GC(Hewlett Packard 5890シリーズII)で分析した。CP-SIL 5CBコーティングを有する25m×0.32mm WCOT溶融シリカ非極性GCカラムを、これらの反応に用いた。
【0225】
デカンとの関連で、各ジオールについての応答係数を決定した。すべてのジオールおよびモノエステルがジエステルに変換されている場合、ジエステルについての応答係数はデカンとの関連で決定することができた。各反応でのモノエステルの濃度は、ジオールの出発濃度からジエステルの濃度を差し引くことにより決定した。
【0226】
実施例4:1-ブタノールとの競合で基質として種々のジオールを用いる酵素触媒アシル化反応
以下の2種類の異なる直鎖第一級ジオールを用いて、反応を行なった:
1,2-エタンジオール、≧99.5%、MERCK社、
1,4-ブタンジオール、≧99%、Aldrich社。
【0227】
さらに、1-ブタノール(≧99.5%、Riedel-de Haen社)を競合基質として用いた。
【0228】
25mMデカン(≧98%、Fluka社)を、内部標準として用いた。
【0229】
以下の2種類のアシル供与体を用いた:
酢酸エチル、≧99%、Fluka社、溶媒およびアシル供与体の両方として用いた、
1M酪酸ビニル、>99%、Fluka社、MTBE(99.5%、Lab-Scan社)と共に、溶媒として用いた。
【0230】
各ジオールを、100mMの濃度で、25mMのデカンと共に、酢酸エチル(≧99%、Fluka社)に溶解した。酢酸エチルは、アシル供与体および溶媒として用いた。野生型CALBを積載した10mgの酵素担体ビーズまたはT40A突然変異型CALBを積載した20mg担体ビーズに3mLの反応溶液を添加することにより、反応を開始した。Bom-roerder複合型恒温槽および磁気スターラーと組み合わせたHETOサーモスタットからなる恒温槽で、29℃で反応を行なった。内部標準として用いた25mMデカンを、反応および分析を通して、反応溶液中に存在させた。60μLのアリコートを採取し、分析前に540μLの酢酸エチルと共にパスツールピペット中でウールを通して濾過した。ウールを通した濾過により、反応溶液から残存酵素を除去し、分析前に反応サンプルを10倍に希釈した。
【0231】
すべての反応を、GC(Hewlett Packard 5890シリーズII)で分析した。分析する異なる基質および生成物に応じて、2種類の異なる25m×0.32mm WCOT溶融シリカカラムを用いた。1,2-エタンジオールとの反応には、CP Chirasil-Dex CBコーティングを有する極性GCカラムを用いた。1,4-ブタンジオールとの反応には、CP-SIL 5CBコーティングを有する非極性GCカラムを用いた。
【0232】
デカンとの関連で、各ジオールについての応答係数を決定した。すべてのジオールおよびモノエステルがジエステルに変換されている場合、ジエステルについての応答係数はデカンとの関連で決定することができた。各反応でのモノエステルの濃度は、ジオールの出発濃度からジエステルの濃度を差し引くことにより決定した。
【0233】
実施例5:CALB A282L突然変異体の調製および固定化
凍結乾燥A282L突然変異型CALBは、以前の実験からの自家生成により取得した(Z. Marton, V. Leonard-Nevers, P.-O. Syren, C. Bauer, S. Lamare, K. Hult, V. Tranc and M. Graber, Mutations in the stereospecificity pocket and at the entrance of the active site of Candida antarctica lipase B enhancing enzyme enantioselectivity. Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic)。
【0234】
A282Lは、構造に基づく酵素工学から提案された。突然変異を導入するためのプライマーペアは以下のものであり:
5’-CCTGGCGCCGGCATTGGCAGCC-3’(配列番号9)、
対応する逆向き相補配列は以下のものである:
5’-GGCTGCCAATGCCGGCGCCAGG-3’(配列番号10)。
【0235】
この突然変異を有する酵素により増大した選択性が示された後に、282位を飽和突然変異導入(Saturation mutagenesis)に供した。飽和突然変異導入のために、以下のプライマー:
5’-CTGGCGCCGGCGNNNGCAGCCAT-3’(配列番号11)および
5’-ATGGCTGCNNNCGCCGGCGCCAG-3(配列番号12)
を用いた(一般形で示され、NはA、T、CまたはGを表す)。PCRでは対応するプライマー混合物を用いたので、結果として、NNNはいずれかの考えられるコドントリプレットのランダムな使用を表す。900個の形質転換陽性コロニーをピックアップし、培養して、対応するタンパク質をマイクロタイタープレート規模で発現させた。エステル交換反応(アクリル酸エチル+ブタンジオール)での選択性のスクリーニングにより、282位がジオールエステル交換での選択性に重要であることが示された。
【0236】
282位のすべての突然変異は、上記のとおりに飽和突然変異導入により作製した。それぞれ8個の対照ウェル(野生型(WT)の発現、空のP.パストリスX33)を含む10マイクロタイタープレートから、陽性形質転換体をピックアップした。メタノールの添加により、酵素発現を誘導した。細胞および上清を凍結乾燥した。凍結乾燥ペレットを、エステル交換アッセイで用いた。反応生成物の検出のために、GCを用いた。
【0237】
突然変異体I285Fを構築するために、以下のプライマーペアを用いた:
フォワードプライマー:5’-GCAGCCTTTGTGGCG-3’(配列番号13)
リバースプライマー:5’-CGCCACAAAGGCTGC-3’(配列番号14)
【0238】
二重突然変異A282L/I285Fは、以下のプライマーペアにより同時に導入した:
フォワードプライマー:5’-CCGGCGCTTGCAGCCTTTGTGGCGGGTCCAAAG-3’(配列番号15)
リバースプライマー:5’-CTTTGGACCCGCCACAAAGGCTGCAAGCGCCGG-3’(配列番号16)
【0239】
以下のプライマー:
フォワードプライマー:5’-GCTCTCTGCGCCGGC-3’(配列番号17)
リバースプライマー:5’-GCCGGCGCAGCGACG-3’(配列番号18)
を用いて、最初にL278S突然変異を別に導入し、これにA282L突然変異を追加することにより、二重突然変異体L278S/A282Lを作製した。
【0240】
約2mgの凍結乾燥A282L CALBまたは上記の他の突然変異体を、10mLの100mM KxHyPO4、pH7.0に溶解した。以下の点以外は、「A.材料および方法、1. 酵素固定化」の節に記載された一般的プロトコールに従って、1gのAccurelビーズに酵素を固定化した:固定化溶液は、24時間、室温で回転器に入れた。固定化、NH4Acでの洗浄および乾燥後、酵素ビーズを、室温、回転器で24時間の50mL 10mM MOPS、pH7.5でのさらなる洗浄に供した。ビーズを真空中で一晩乾燥させ、塩化リチウム上で保存した。
【0241】
ビーズに積載された酵素量は、T40Aおよび野生型CALBについて記載されている通りに活性部位滴定により分析した。0.17%(w/w)の酵素積載量が確認された。
【0242】
実施例6. CALB A281VおよびA281E突然変異体の調製および固定化
A281VおよびA281E突然変異型CALB変異体は、以前の研究から得られたpET22b+ベクターを用いて重複伸長PCRにより作製した(Larsen M. W., et al., Expression of Candida antarctica lipase B in Pichia pastoris and various Escerichia coli systems, Protein Expression and Purification, 2008, 62(1): p. 90-97)。第1ステップでは、A281VおよびA281E突然変異型CALBについてフォワードおよびリバースPCR反応を行なった。フォワード反応のために、A281V変異体には5’-CGGCTGCGCTCCTGGCTCCTGTAGCTG-3’(配列番号19)と共に、A281E変異体には5’-CGGCTGCGCTCCTGGCTCCTGAGGCTG-3’(配列番号21)と共に、リバースNotプライマーを用いた。リバース反応のために、A281V変異体には5’-CTGCAGCTACAGGAGCCAGGAGCGCAG-3’(配列番号20)と共に、A281E変異体には5’-CAGCCTCAGGAGCCAGGAGCGCAGCCG-3’(配列番号22)と共に、フォワードNcoIプライマーを用いた。第2のPCR反応を、A281VおよびA281E突然変異型CALBについて行なった。フォワード反応からの1μLおよびリバース反応からの1μLを、フォワードNcoIプライマーおよびリバースNotプライマーと共に用いた。PCR温度プログラムは、両方のステップについて同じであった(98℃、30秒間;98℃で10秒間、65℃で15秒間、72℃で20秒間の30サイクル;72℃、5分間)。フォワードNcoIプライマーおよびリバースNotプライマーは、Thermo Scientificから入手した。PCR産物およびpET22b+を、FastDigest制限酵素NotIおよびNcoI(Fermentas社)を用いて消化した。PCR産物および直線化pET22b+を1%アガロースゲル上で精製し、QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN社)を用いて抽出した。T4 DNAリガーゼ(Fermentas社)を用いて、PCR産物を直線化pET22b+にライゲーションした。室温で1時間20分インキュベートした。エレクトロコンピテントなRosetta株大腸菌細胞を、ライゲーション溶液で形質転換した。A281V CALBを含有する溶液1μLおよびA281E CALBを含有する溶液0.5μLを細胞に添加した。Eurofins MWG Operon(Ebersberg, Germany)による配列決定により、突然変異を確認した。
【0243】
タンパク質の発現および精製は、大腸菌株Rosettaを用いたCALBのペリプラズム発現のための既定のプロトコールに従って行なった(Larsen M. W., et al., Expression of Candida antarctica lipase B in Pichia pastoris and various Escerichia coli systems, Protein Expression and Purification, 2008, 62(1): p. 90-97)。PD-10カラム(GE healthcare社)を用いて、精製酵素をバッファー交換した。バッファーを、10mM MOPS、pH7.2に交換し、これを固定化バッファーとして用いた。
【0244】
A281VおよびA281E突然変異型CALBに対して、それぞれ1.5gおよび2gのAccurel酵素担体ビーズを用いた。固定化前に、ビーズを95%エタノールで2時間洗浄し、次に新たなエタノールで洗浄した。エタノールを10mLの固定化バッファー(10mM MOPS、pH7.2)で3回洗い流した。固定化溶液は10mL 10mM MOPS、pH7.2とし、回転器中に室温で一晩入れた。
【0245】
ビーズに積載された酵素量は、小さすぎたために、活性部位滴定では分析できなかった。A281VおよびA281E CALBの固定化は、固定化前後の溶液サンプルを用いたクマシー染色ゲルにより確認した。
【0246】
実施例7:A282L、A281VおよびA281Eの酵素選択性ならびに特異性の測定
実施例5および実施例6に記載のCALB突然変異体を用いた反応を、以下の2種類の異なる直鎖第一級ジオールを用いて行なった:1,2-エタンジオール(≧99.5%、MERCK社)および1,4-ブタンジオール(≧99%、Aldrich社)。以下の2種類の異なるアシル供与体を用いた:酢酸ビニル(≧99%、Fluka社)および酪酸ビニル(>99%、Fluka社)。デカン(≧99%、Fluka社)を内部標準として用いた。MTBE(99.5%、Lab-Scan)を溶媒として用いた。
【0247】
各ジオールを、100mMの濃度で、1Mのアシル供与体および20mMのデカンと共に、MTBEに溶解した。特定の量の酵素担体ビーズに3mLの反応溶液を添加することにより、反応を開始させた。異なる反応には、異なる量の酵素担体ビーズを用いた。1,2-エタンジオールおよび酢酸ビニルを用いた反応には、19.7mgの野生型、22.5mgのA282L、50.5mgのA281V、および45.5mgのA281E CALBを用いた。1,2-エタンジオールおよび酪酸ビニルを用いた反応には、19.3mgの野生型、19.7mgのA282L、40.5mgのA281V、および40.6mgのA281E CALBを用いた。1,4-ブタンジオールおよび酢酸ビニルを用いた反応には、17.6mgの野生型、22.5mgのA282L、69mgのA281V、および54mgのA281E CALBを用いた。1,4-ブタンジオールおよび酪酸ビニルを用いた反応には、20.3mgの野生型、25.4mgのA282L、52.2mgのA281V、および53mgのA281E CALBを用いた。磁気スターラーにより、反応バイアル中で酵素を均一に分布させた。温度制御のために、反応中はバイアルを29℃の水浴中で保持した。10μLのアリコートを採取し、パスツールピペット中でウールを通して濾過し、分析前に90μLのMTBEで希釈した。内部標準として用いたデカンを、反応および分析を通して、反応溶液中に存在させた。
【0248】
20mMデカンを、100mMジオールと共に、反応混合物中で内部標準として用いた。10μLの反応サンプルを採取することにより、反応中にアリコートを回収した。サンプルを、90μLのMTBEと共にウールを通して濾過し、それにより残余の酵素を除去し、分析前に反応サンプルを10倍に希釈した。
【0249】
選択性測定のために、A281V突然変異体により触媒される反応を、より多量の酵素担体ビーズを用いて再実施した。1,2-エタンジオールおよび酢酸ビニルを用いた反応には、A281V CALBを含むビーズを121mg用いた。1,2-エタンジオールおよび酪酸ビニルを用いた反応には、A281V CALBを含むビーズを122.9mg用いた。1,4-ブタンジオールおよび酪酸ビニルを用いた反応には、A281V CALBを含むビーズを127.8mg用いた。
【0250】
すべての反応を、GC(Hewlett Packard 5890シリーズII)で分析した。分析する異なる基質および生成物に応じて、2種類の異なる25m×0.32mm WCOT溶融シリカカラムを用いた。1,2-エタンジオールとの反応には、CP Chirasil-Dex CBコーティングを有する極性GCカラムを用いた。1,4-ブタンジオールとの反応には、CP-SIL 5CBコーティングを有する非極性GCカラムを用いた。デカンとの関連で、各ジオールについての応答係数を決定した。すべてのジオールおよびモノエステルがジエステルに変換されている場合、ジエステルについての応答係数はデカンとの関連で決定することができた。各反応でのモノエステルの濃度は、ジオールの出発濃度からジエステルの濃度を差し引くことにより決定した。
【0251】
実施例8:ミニ反応器規模での酵素触媒
ブタンジオールおよびアクリル酸エチルからアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4-HBA、一アクリル酸ブタンジオール)および二アクリル酸ブタンジオール(BDDA)への酵素的変換を、酵素カラムでの循環流および安定化剤としてのカラム(50mLカラム)上の部分流を有する750mLミニプラント反応器で試験した。
【0252】
3.75gの固定化CALB(Novozym(登録商標)435、本明細書中では、Novo 435またはNovo435とも称される;Novozymes A/S, Denmark)またはA282L(実施例5で調製され、「材料および方法」に記載の手順に従ってDiaion HP 20Lに固定化;タンパク質積載量:3%)、50.0gの1,4-ブタンジオール(0.555モル)および555.7gのアクリル酸エチル(5.55モル)を用い、1:10のブタンジオール:アクリル酸エチルのモル比がもたらされた。反応混合物の合計重量は、0.606kgであった。200ppmのヒドロキノンモノメチルエーテル(MeHQ、121mg)および200ppmのフェノチアジン(121mg)を安定化剤として含めた。排出物を反応器に入れた。固定化酵素に反応混合物を通過させる前に、反応混合物を100mbar(100hPa)で加熱還流した。種々の時点でサンプルを採取し、ガスクロマトグラフィーにより分析した(50℃〜290℃温度上昇の勾配:10℃/分、注入温度:220℃)。
【0253】
実施例9:基質変換率および生成物過剰率の流速依存性
基質変換率および生成物過剰率に対する様々な流速の影響を決定するために、Desaga社製ポンプおよびMinistatに連結した総容積49mLの二重胴ガラスカラム(加熱部容積:26mL、酵素含有部の容積:23mL、酵素材料の充填高:167mm)を用いた。実施例8に記載されたCALB Novo 435または4.4gのCALB A282L(Diaion HP 20Lに固定化、タンパク質積載量:3%)をカラムに充填した。反応混合物は、90.0g(1.0モル)の1,4-ブタンジオールおよび1400g(14モル)のアクリル酸エチルを含んでいた。10mL/h〜1000mL/hの流速で反応器を作動させ、流速に応じて135〜280mLの反応混合物の通過後にサンプルを採取し、実施例8に記載したようにガスクロマトグラフィーにより分析した。
【0254】
実施例10:A282T、A282C、A282P、A282I、A282D、A282V、A282M、A282R、I285、A282L/I285FおよびL278S/A282Lの酵素選択性および特異性の測定
50mL Duranガラス瓶に入れた300mgまたは別途指定した量のそれぞれの酵素(HP20L担体上)を、440μLの1,4-ブタンジオール、5.4mLのアクリル酸エチルおよび2gの分子篩(0.5nm)と共に、振盪水浴中、40℃でインキュベートした(200rpm)。2、4、6、24および48時間でサンプルを採取した。ガスクロマトグラフィー前に、160μlのサンプルおよび240μLのジオキサンを混合し、濾過した。
【0255】
C. 結果:
実施例2の結果:基質として種々のジオールおよびアシル供与体として酢酸エチルを用いる酵素触媒アシル化反応
【表1】

【表2】

【表3】

【0256】
表1〜3は、野生型とT40A突然変異型CALBでのモノエステルと比較したジオールに対する選択性の差異を示す。示したデータは、酢酸エチル(アシル供与体および溶媒の両方として用いた)に溶解したジオールの出発濃度20mMで得られた。反応条件は、2種類の触媒を比較するために選択した。反応条件のさらなる最適化によって、より高い収率を得ることができた。ジオールは反応中に消費されるので、濃度の差異によって、形成されたモノエステルはより反応し易くなり、ジエステルを形成し易くなるであろう。表1は、野生型CALBと比較して、T40A CALB突然変異体を用いることにより、すべての試験したジオールについて、モノアセチル化ジオールの最大収率が上昇したことを示す。表2および3は、生成物の所定の純度、3:1および9:1(モノエステル:ジエステル)で、どのような最大変換率が得られるかを実証している。表2および3の結果は、T40A突然変異型CALBを野生型CALBと比較した場合に、生成物純度が所定のレベルまで下がる前に、より多くのジオールを変換することができることを示す。
【0257】
アシル供与体とジオールとの濃度の大きな差異は、溶媒およびアシル供与体として酢酸エチル、ならびに20mMのジオール濃度を用いることにより、反応中で達成された。したがって、以下の反応スキームに従い、反応は不可逆的であると考えられた:
【数1】

【0258】
不可逆的反応条件は、以下の式を有効にする:
【数2】

【0259】
A、BおよびCは、それぞれ、ジオール、モノエステルおよびジエステルに対応する。k1およびk2はそれぞれ、ジオールおよびモノエステルのアシル化の反応速度に対応する。
【0260】
反応速度は、酵素濃度および基質に対するkcat/KMに依存する。時間に対する測定濃度を式に当てはめ、活性部位滴定により決定された酵素濃度を用いることにより、以下の結果が得られた。
【表4】

【表5】

【表6】

【0261】
野生型およびT40A CALBでのジオールおよびモノエステルに対するkcat/KMの値を、表4〜6に示す。表4は、野生型についてのkcat/KMを表し、表5は、T40A CALBについてのkcat/KMを表す。さらに、モノエステルと比較したジオールに対する選択性(kcat/KM)ジオール/(kcat/KM)モノエステルを示す。活性化エネルギーΔΔGの差異を、これらの選択性から算出する。表4および5の選択性を、野生型とT40A突然変異体との比較のために、表6に移した。T40A/野生型CALBの選択性の比および関連する活性化エネルギーの差異(ΔΔΔG)を表すデータは、CALBでのT40A突然変異の効果を示す。T40A突然変異の効果として、試験したジオールは、対応するモノエステルよりも好まれる。
【0262】
さらなる結果を、図3、4、5および6にまとめて図示する:
野生型とT40A CALBにより触媒される反応を比較するモノエステルおよびジエステル収率の例を、図3および4に示す。1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオールを用いた反応を、図3および4にそれぞれ示す。両方の図面で、野生型CALBの代わりにT40Aを用いることにより、最大モノエステル収率が改善されている。
【0263】
図5は、野生型およびT40A CALBにより触媒される1,2-エタンジオールを用いた反応についての生成物分布の例を示す。生成物分布は、以下の式により算出される:
【数3】

【0264】
75%の生成物分布は3:1のモノエステル:ジエステルに対応し、90%は9:1のモノエステル:ジエステルに対応する。
【0265】
図6は、野生型またはT40A CALBにより触媒される1,2-エタンジオールと酢酸エチルとの反応に関して、時間によってジオール、モノエステルおよびジエステルの濃度がいかに変化するかを示す。エラーバーは、測定値を当てはめた式1〜3からのモデルを表す。モデルは、表4〜6に示されるkcat/KMの値をもたらす。
【0266】
実施例3の結果:基質として種々のジオールおよびアシル供与体として酪酸ビニルを用いる酵素触媒アシル化反応
【表7】

【0267】
表7は、野生型とT40A CALBとの測定された最大収率の差異を示す。対応する一酪酸エステルと比較したジオールに対する選択性は、野生型CALBよりもT40Aの方が高い。これらの結果は、表1に示された結果と一致する。
【0268】
結果を、図7および8にまとめる:
図7および8は、酪酸ビニルとの反応での2-メチル-1,3-プロパンジオールおよび1,4-ブタンジオールに由来するモノエステルおよびジエステルの収率を示す。MTBEを溶媒として用いた。対応するモノエステルと比較したジオールに対する野生型(7A、8A)とT40A(7B、8B)との選択性の差異を、これらの図面に示す。
【0269】
実施例4の結果:野生型、T40AおよびT40V CALBの選択性を比較する競合実験
100mM ジオール
100mM 1-ブタノール
25mMデカン(内部標準として)
酢酸エチル(溶媒およびアシル供与体として用いた)。あるいは、1M酪酸ビニルおよびMTBE。
【0270】
結果を、図9および10にまとめる:
図9および10では、ジオールの変換を、1-ブタノール変換率の関数として表す。図9に示す実験のために、酢酸エチルをアシル供与体および溶媒として用いた。図10に示す実験のために、酪酸ビニルをアシル供与体として、MTBEを溶媒として用いた。野生型とT40A CALBとを、図9および10のグラフで比較する。さらに、図10のグラフは、T40V CALBにより触媒された反応を示す。すべての示したグラフで、野生型とT40A CALBとの顕著な差異が観察される。野生型CALBの代わりにT40Aを用いる場合、ジオールは1-ブタノールよりも速く変換される。それにより、野生型CALBよりもT40A CALBを用いて、1-ブタノールと比較したジオールに対する高い選択性が得られる。
【0271】
1-ブタノールと比較したジオールに対するより高い選択性は、1,4-ブタンジオールよりも、基質として1,2-エタンジオールを用いる場合に観察される。これらの知見は、モノエステルと比較したジオールに対する選択性を野生型とT40A CALBとの間で比較している表6に示した結果と一致する。最も高い選択性は、図9および10ならびに表6の両方で、1,2-エタンジオールに対して観察された。
【0272】
T40Vと野生型CALBとを比較した場合に、同様の結果が得られた。低い酵素発現レベルと試験基質に対する低い活性との組み合わせにより、低い反応速度がもたらされる。したがって、酪酸ビニルを含有する反応のみがT40V変異体について正確に測定できた。これらの反応に関して、1,4-ブタンジオールとの反応は、1,2-エタンジオールを含む反応よりも長時間行なった。したがって、1,4-ブタンジオールを含む反応では、より高い変換率が測定された。つまり、1-ブタノールと比較した1,4-ブタンジオールに対する選択性は、野生型CALBよりもT40Vの方が高いことが見て取れる。1,2-エタンジオールとの反応からの結果は、この場合も選択性がより高いことを示唆する。
【0273】
図11は、野生型およびT40A CALBにより触媒される1,2-エタンジオールとの反応についての反応速度の差異を示す。酵素1g当たりの1,2-エタンジオールの変換量(モル)を、時間の関数として表す。図11Aでは、アシル供与体および溶媒として酢酸エチルを用いた。図11Bでは、酪酸ビニルをアシル供与体として用い、MTBEを溶媒として用いた。
【表8】

【0274】
表8では、野生型およびT40A CALBにより触媒される反応についての初期反応速度を示す。2種類の異なるアシル供与体である酢酸エチルおよび酪酸ビニルを用いたアシル基転移反応において、2種類の異なるジオールである1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオールを用いた。3番目の列に示した速度比は、野生型CALBと比較したT40Aでの残存活性の指標である。野生型CALBと比較したT40Aについての速度比は、酢酸エチルに対してよりも酪酸ビニルに対して高い。酢酸エチルから酪酸ビニルへとシフトした際の、アシル化から脱アシル化への速度決定ステップにおけるシフトにより、これらの差異を説明することができる。酪酸ビニルはより活性化型のエステルであるので、酪酸ビニルよりも酢酸エチルからのアシル化を遅延させるアシル化ステップでの基質支援はない。
【0275】
酪酸ビニルおよび酢酸エチルに対する野生型CALBと比較したT40Aについての速度比での差異および1-ブタノールと比較したジオールに対する選択性は、T40Aでのジオールに対する基質支援触媒の仮説を支持する。
【0276】
実施例7の結果:野生型、A282L、A281VおよびA281E CALBの選択性の比較
CALBにより触媒されるアシル基転移反応でのモノエステル収率を高めるための異なるアプローチを試験した。モノアシル化ジオールが反応するのを防ぐために、突然変異A282L、A281VおよびA281Eを行なった。これらの突然変異は、比較的大きな基質を選択的に立体的に妨げるが、比較的小さな基質は妨げないと考えられる。つまり、ジオールは、対応するモノエステルよりもよい基質である。結果を表9および10に示す。ジオールに対して10倍過剰のアシル供与体を用いて反応を行ない、反応は不可逆的であるとみなした。実施例2の結果で考察した反応スキーム1および式1〜3は妥当である。溶媒としてMTBEを用いた。
【0277】
表9は、モノエステルと比較したジオールに対する野生型、A282L、A281VおよびA281Eについての選択性を示す。選択性は、実験データを式1〜3にフィッティングすることにより得られた速度定数から直接的に算出される。酵素濃度は両方のアシル化ステップに対して同じであるので、k1/k2は(kcat/KM)ジオール/(kcat/KM)モノエステルに等しい。さらに、選択性をエネルギー差ΔΔGに再計算した。ΔΔGは、遷移状態でのエネルギーの差に対応する。試験したジオールは1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオールであり、酢酸ビニルまたは酪酸ビニルと反応させた。ジオールとアシル供与体の両方が、モノエステルと比較したジオールに対する選択性に影響する。3種類すべての突然変異体が、試験したすべての基質に対して、野生型よりも高い選択性を有する。CALB変異体のうち最も大きな差異は、1,2-エタンジオールおよび酪酸ビニルに対する、A282Lと野生型CALBについてものである。
【表9】

【0278】
表10は、表9に示した反応の一部に関する、より詳細な情報を含む。1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオールならびにそれらの対応するモノエステル(アシル供与体として酢酸ビニルおよび酪酸ビニルを用いて形成される)に対する野生型およびA282L CALBについての特異性定数を示す。試験したケースで、A282L突然変異により、ジオールに対する特異性は増大する。酪酸ビニルとの反応での1,2-エタンジオールに対する特異性は、1.6から8.1s-1mM-1に増大した。大多数のケースで、A282L突然変異の結果として、モノエステルに対する特異性は減少した。例外は、モノアセチル化1,2-エタンジオールに対するものであり、これは、A282L突然変異により引き起こされる立体障害には小さすぎる可能性がある。表9に示されているように、対応するモノエステルと比較したジオールに対する選択性は、A282L突然変異の結果として増大した。表10に示したジオールとモノエステルの両方に対する特異性の変化は、選択性の増大に寄与する。
【表10】

【0279】
表11は、野生型およびA282L CALBにより触媒される反応についての初期反応速度を示す。試験したジオールは、1,2-エタンジオールおよび1,4-ブタンジオールである。アシル基転移反応に用いたアシル供与体は、酢酸ビニルおよび酪酸ビニルであった。野生型CALBとのA282Lの初期反応速度の比較は、最終列にパーセンテージで示されている。A282L突然変異の結果として、初期反応速度の著明な低下は観察できない。実際には、4つのケースのうち3つで、著明な上昇が見て取れる。初期反応速度の上昇に対する考えられる説明は、表9および10で上記で考察した通り、モノエステルと比較したジオールに対する選択性が、野生型よりもA282L CALBについて高いことである。モノエステルが形成されるとすぐに、これは酵素の基質としてジオールと競合する。結果として、ジオール変換速度が低下する。初期反応速度の上昇についての別の可能性は、Vmax、およびしたがってkcatが、野生型よりもA282L CALBについての方が基質に対して大きいことである。kcatの増大は、A282L突然変異体が、野生型CALBよりもジオールのモノアシル化に対するよりよい触媒であることを意味する。
【表11】

【0280】
実施例8の結果:ミニ反応器条件でのA282Lを用いた一アクリル酸エステルの過剰率
実験中、反応器シェルおよび反応器の底部の温度は、それぞれ55℃および41℃に維持した。カラム温度は、反応器の主要部が作動している間は、39℃でほぼ一定であった。ブタンジオール、4-ヒドロキシブタンジオールおよび二アクリル酸ブタンジオールの実験的に測定された量から、変換度および二アクリル酸ブタンジオールに対する4-ヒドロキシブタンジオールの過剰率を計算した。図12に示されているように、A282L突然変異体またはL278Sによる酵素的触媒後の基質変換率の広い範囲内で、二アクリル酸ブタンジオールに対する4-ヒドロキシブタンジオールのより高い過剰率が達成される。Novo 435による酵素触媒後に得られた過剰率は、多少低い。
【0281】
実施例9の結果:基質変換および生成物過剰率の流速依存性
反応器作動の開始後、表12に示されているようにサンプルを採取した:
【表12】

【0282】
表13は、CALB A282L積載カラムの通過後に表12のそれぞれの終了時点で採取したサンプルの1,4-ブタンジオール、4-ヒドロキシブタンジオールおよび二アクリル酸ブタンジオールの含有量を示す。
【表13】

【0283】
変換速度からの生成物過剰率の流速依存性を、図13に示す。所望の生成物の過剰率は、400mL/h以上の流速で、CALB Novo 435およびCALB A282Lによる変換後に同程度であった。すべての流速でのCALB A282Lによる基質の著明に高い変換率によって、本発明の突然変異体は、これらの範囲でCALB Novo 435よりも優れている。ほぼ同じ変換率でのNovo 435とA282Lを比較した場合、A282Lにより生成される一アクリル酸エステルの過剰率の方が高い。
【0284】
実施例10の結果:A282T、A282C、A282P、A282I、A282Asp、A282V、A282M、A282R、I285、A282L/I285FおよびL278S/A282Lの酵素選択性および特異性の測定
図14Aおよび図14Bの結果は、HP20L Diaionに固定化した酵素300mgを含む反応に基づき、図15Aおよび15Bの結果は、134mgの酵素(A282I)、117mgの酵素(A282R)、140mgの酵素(A282C)、300mgの酵素(A282L/I285F)および115mgの酵素(I285F)に基づく。図14A、図14B、図15Aおよび図15Bに示した結果から、突然変異A282C、A282P、A282I、A282Asp、A282L、A282V、A282R、I285Fならびに二重突然変異体L282S/A282Lが、CALB Novo 435と比較して、一アクリル酸エステル過剰率の無視できない増大を引き起こすことが明らかである。二重突然変異体A282L/I285Fは、変換度に対する一アクリル酸エステル過剰率の若干の低下をもたらす。
【0285】
本明細書中で引用した引用文献および添付の配列表は、明白に参照される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、
R1は、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基を表し;
Aは、少なくとも2個の炭素原子を有する、任意により置換された、直鎖または分岐鎖ヒドロカルビレン残基を表す]
のモノアシル化ポリオールの生体触媒調製方法であって、以下のステップ:
(a)式(II)のポリオールと式(III)のアシル供与体化合物:
【化2】

[式中、
R1およびAは上記で定義した通りであり、
Donは該アシル基を担持する供与体分子残基を表す]
とを、上記式(I)のモノアシル化ポリオールが形成されるまで、突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ(EC3.1.1.3)の存在下で反応させるステップ;および
(b)モノアシル化ポリオール生成物を取得するステップ
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記突然変異型リパーゼが、少なくとも1箇所のアミノ酸突然変異を有し、該突然変異が、対応する非突然変異型リパーゼと比較して、前記ポリオールのモノアシル化に対する該リパーゼの選択性を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記突然変異体が、形成される式(I)のモノアシル化ポリオールのカルボニル基のオキシアニオン遷移状態を安定化させる酵素の反応中心の一部分から、安定性官能性アミノ酸を除去する少なくとも1箇所の突然変異を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)対応する野生型酵素により得られる最大収率を少なくとも1%上回る最大モノエステル収率が得られ;
(b)対応する野生型酵素により得られる対応する変換率を少なくとも1%上回るポリオールの変換率で、モノエステルとポリエステルのモル比3:1に到達し;かつ/または
(c)ポリオールの合計量に基づいて、90%のモノアシル化ポリオールに到達するための反応時間の比(T90(突然変異体)/T90(野生型))が、1より大きい、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素が、少なくとも1箇所の位置に突然変異を有する配列番号2のアミノ酸配列を含むカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB(CALB)の突然変異体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記突然変異体が、アミノ酸Thr40に突然変異を有する配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記突然変異が、オキシアニオン中間体と40位のアミノ酸残基との安定性相互作用を実質的に生じさせない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記突然変異が、単一突然変異Thr40Ala、Thr40ValまたはThr40Serを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記突然変異体が、配列番号4のアミノ酸配列を有する突然変異体または少なくとも60%の配列同一性を有する該突然変異体の変異体から選択され、該変異体は、配列番号4のThr40位に対応するアミノ酸位置に突然変異を含んだままである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記突然変異体が、配列番号2または4のアミノ酸位置Leu278、Ile285およびPro280のうち1つに少なくとも1箇所の突然変異をさらに含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記突然変異体およびその変異体が、酵素の触媒部位に寄与する他のアミノ酸位置に突然変異を有しない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記突然変異体が、アミノ酸位置Ser105、Asp187、His224(触媒三残基)およびGln106に突然変異を有さず、前記変異体が、それに対応するアミノ酸位置に突然変異を有しない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
配列番号2、もしくは配列番号4のアミノ酸Thr40に突然変異を含む配列番号2において、Leu278、Ala281、Ala282またはIle285のうち1箇所以上に突然変異を有する、請求項5〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記1箇所以上の突然変異が、以下の突然変異:
Leu278Ser、
Ala281ValまたはAla281Glu、および
Ala282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282MetまたはAla282Arg
から独立に選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
配列番号2が、Ala281Val、Ala281Glu、Ala282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282Met、Ala282ArgおよびIle285Pheから選択される1箇所の突然変異を含むか、または配列番号2が、Leu278SerおよびAla282Leuの二重突然変異を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記反応が、単離された酵素突然変異体または該突然変異体を機能的に発現する組み換え微生物の存在下で行なわれる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリオールが式(II)の化合物であり、式中、Aが以下の基:
-(CH2)n-および-(CH2)m-CR2R3-(CH2)m’-
[式中、
nは、2〜6の整数であり、
mおよびm’は、互いに独立に、1〜3の整数であり、
R2およびR3は、互いに独立に、H、OH、SH、NH2、任意により置換されている炭素環または複素環およびヒドロカルビル残基から選択され、ただしR2とR3は同時にHではない]
から選択される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
式(III)の供与体が、R1がC1〜C6-アルキルであり、Donが-OR残基(式中、RはC1〜C6-アルキルおよびC2〜C4-アルケニルから選択される)である化合物から選択される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
一般式(I):
【化3】

[式中、
R1は、任意により置換された、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ヒドロカルビル残基を表し;
A*は、少なくとも2個の炭素原子を有する、任意により置換された、直鎖または分岐鎖不斉ヒドロカルビレン残基を表す]
の不斉モノアシル化ポリオールの酵素触媒エナンチオ選択的調製方法であって、以下のステップ:
(a)式(II’)のポリオールの立体異性体混合物と式(III)のアシル供与体化合物:
【化4】

[式中、
R1およびA*は上記で定義した通りであり、
Donは、該アシル基を担持する供与体分子残基を表す]
とを、上記式(I)のモノアシル化ポリオールが形成されるまで、突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)の存在下で反応させるステップ;および
(b)不斉モノアシル化ポリオール生成物を取得するステップ
を含む、上記方法。
【請求項20】
単離された酵素突然変異体または該突然変異体を機能的に発現する組み換え微生物の形態での請求項2〜15のいずれか1項に定義された酵素突然変異体を利用する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリオールが、式(II’)の化合物であり、A*が以下の基:
-(CH2)m-CHR2-(CH2)m’-
[式中、
m、m’およびR2は上記で定義した通りである]
から選択される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
上記で定義した一般式(I)または(I’)のモノアシル化ポリオールの調製方法における突然変異型トリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)の使用。
【請求項23】
表Aに示されるパターンから選択される配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも2箇所の突然変異のパターンを示す、カンジダ・アンタークティカリパーゼB(CALB)突然変異体。
【請求項24】
Val210Ile、Ala281Glu、Val221Aspから選択される1箇所の突然変異をさらに示す、請求項23に記載の突然変異体。
【請求項25】
以下の突然変異:
Leu278Ser、
Ala281ValまたはAla281Glu、および
Ala282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282MetまたはAla282Arg
から独立に選択される配列番号2のアミノ酸配列での1箇所以上の突然変異を有する、カンジダ・アンタークティカリパーゼB(CALB)突然変異体。
【請求項26】
配列番号2においてAla281Val、Ala281Glu、Ala282Leu、Ala282Thr、Ala282Cys、Ala282Pro、Ala282Ile、Ala282Asp、Ala282Val、Ala282Met、Ala282ArgおよびIle285Pheから選択される1箇所の突然変異を有するか、または配列番号2において二重突然変異Leu278SerおよびAla282Leuを有する、請求項25に記載の突然変異体。
【請求項27】
請求項25または26のいずれか1項に定義された突然変異のうち少なくとも1つをさらに有する、請求項23または24に記載の突然変異体。
【請求項28】
請求項20〜27のいずれか1項に記載の突然変異体をコードする核酸分子。
【請求項29】
任意により調節核酸配列の制御下に、請求項28に記載の少なくとも1種のコード配列を含む、発現ベクター。
【請求項30】
請求項29に記載の少なくとも1種の発現ベクターまたは請求項28に記載の少なくとも1種のコード配列を担持する微生物宿主。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−504336(P2013−504336A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529276(P2012−529276)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063645
【国際公開番号】WO2011/033039
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】