説明

酵素の抽出および精製

細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスが、本出願において提供される。このプロセスは、 少なくとも1種の二価カチオンを含む溶液から形成される細胞抽出物を加熱して、その抽出物におけるPDE−1の比活性を増加させる工程を包含する。本出願はまた、オオムギ細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、その細胞から、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液中へとPDE−1を放出させて、抽出物を形成する工程;ならびにその抽出物を加熱して、その抽出物中のPDE−1の比活性を増加させる工程;を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、細胞から酵素を抽出して精製することに関し、特に、オオムギ細胞から5’ホスホジエステラーゼを抽出して精製することに関するが、これに限定はされない。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ホスホジエステラーゼ1(オルトリン酸ジエステルホスホヒドロラーゼ、EC 3.1.4.1;本明細書中で「PDE−1」)は、リボヌクレオチドの3’ヒドロキシル末端にあるホスホジエステル結合の加水分解を触媒して5’リボヌクレオチドを生じる、酵素である。
【0003】
PDE−1は、食品産業および薬剤産業にとって特に重要である。なぜなら、酵母RNAのPDE−1媒介性切断により生成される5’リボヌクレオチドは、風味相乗剤として有用であるからである。
【0004】
オオムギ細胞またはオオムギ細根が、PDE−1供給源として、食品産業において使用される。
【0005】
オオムギ細根からPDE−1を精製するためのプロセスは、高度な抽出技術および分離技術、複数の工程、ならびに高価な試薬および装置を必要とする点で、商業規模で操作することが困難である傾向がある。いくつかのプロセスは、容認できないPDE−1損失またはPDE−1消耗によって、特徴付けられる。他のプロセスは、最適に満たない比活性しか有さない最終産物を生じる傾向がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記を考慮すると、PDE−1の精製のための改善されたプロセスについての必要性が、存在する。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、上記の問題もしくは制限のうちの1つ以上を少なくとも最小限にし、かつ/またはPDE−1の精製のための改善されたプロセスを提供するように努める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一局面において、本発明は、細胞からPDE−1を精製するためのプロセスを提供する。そのプロセスは、少なくとも1種の二価カチオンを含む溶液から形成される細胞抽出物を加熱して、その抽出物におけるPDE−1の比活性を増加させる工程、を包含する。
【0009】
別の局面において、本発明は、オオムギ細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、
(a)その細胞から、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液中へとPDE−1を放出させて、抽出物を形成する工程;ならびに
(b)その抽出物を加熱して、その抽出物中のPDE−1の比活性を増加させる工程;
を包含する。
【0010】
別の局面において、本発明は、オオムギ細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスを提供する。このプロセスは、
(a)その細胞から、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液中へとPDE−1を放出させて、抽出物を形成する工程;
(b)その抽出物を加熱して、その抽出物中のPDE−1の比活性を増加させる工程;ならびに
(c)アニオン交換クロマトグラフィーを使用して、上記の加熱した抽出物からPDE−1を精製する工程
を包含する。
【0011】
代表的には、上記細胞は、オオムギ細胞(例えば、オオムギ細根由来の細胞)である。
【0012】
別の局面において、本発明は、本発明のプロセスにより生成されるPDE−1を提供する。
【0013】
別の局面において、本発明は、本発明のプロセスにより生成されるPDE−1を含む細胞を、提供する。
【0014】
別の局面において、本発明は、リボヌクレオチドを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、ポリリボヌクレオチドを、本発明のプロセスにより生成されるPDE−1と接触させて、5’リボヌクレオチドを生成する工程、を包含する。
【0015】
別の局面において、本発明は、上記のプロセスにより生成されるリボヌクレオチドを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態の詳細な説明)
本明細書中に記載されるように、本発明者は、少なくとも1種の二価カチオンを含む溶液中にあるオオムギ細胞抽出物もしくはオオムギ細根抽出物を加熱処理すると、その抽出物の比活性が増加させられることが可能になることを、見出した。例えば、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液から形成される加熱処理済みオオムギ細根抽出物の比活性は、非加熱処理サンプルより2.6倍増加する(312.6×10−3μmole/分/mL 対 122×10−3μmole/分/mL)ことが、観察された。さらに、カルシウムとマグネシウムとを含む加熱処理済み抽出物は、カルシウムおよびマグネシウムを含まない加熱処理済み抽出物(46×10−3μmole/分/mL)と比較して改善された比活性(78×10−3μmole/分/mL)を有することが、観察された。
【0017】
これは、重要な知見である。なぜなら、これは、加熱処理、商業規模で操作することが比較的簡単な精製工程を、PDE−1の活性損失を最小限にして実施することを、可能にするからである。
【0018】
上記抽出物の比活性は、増加することが、考えられる。なぜなら、上記二価カチオンは、PDE−1を、その抽出物中の他のタンパク質(ホスホモノエステラーゼを含む)が分解される温度において分解されることから保護するからである。
【0019】
代表的には、上記溶液中の少なくとも1種の二価カチオンは、マグネシウムカチオンおよび/またはカルシウムカチオンであり得る。例えば、上記溶液は、MgClおよび/またはCaClを含み得る。
【0020】
上記マグネシウムイオンおよびカルシウムイオンは、その抽出物が加熱された場合にPDE−1の変性の制御を可能にする量で、その抽出物中に含まれ得る。代表的には、マグネシウムおよびカルシウムは、その抽出物が加熱された場合にPDE−1の変性を少なくとも制限する量で、その抽出物中に含まれる。例えば、カルシウム濃度は、100mM未満であり得、マグネシウム濃度は、100mM未満であり得る。
【0021】
約10mM〜約50mMの範囲にあるカルシウムおよびマグネシウムの濃度は、特に有用である。なぜなら、さらなる精製(例えば、アニオン交換クロマトグラフィー)のために上記抽出物をさらに下流で処理するには、カルシウムおよびマグネシウムの除去が必要とされ得るからである。従って、カルシウムイオン濃度約50mMおよびマグネシウムイオン濃度約50mMが、特に有用である。
【0022】
ホスホモノエステラーゼは、オオムギ細根抽出物の主要成分であると、考えられる。従って、上記抽出物は、代表的には、その抽出物中のホスホモノエステラーゼの変性またはホスホモノエステラーゼ活性の破壊を可能にする温度まで、加熱される。本明細書中に記載されるように、80℃未満の温度が、この目的のために適切である。
【0023】
約45℃と約75℃との間まで上記抽出物を加熱することは、特に有利である。なぜなら、70℃付近およびそれ以上の温度では、PDE−1活性が、喪失され得るからである。従って、温度約60℃が、特に有用である。
【0024】
本発明者はまた、オオムギ細胞抽出物からのPDE−1精製は、マグネシウムとカルシウムとを含む溶液中において4℃でオオムギ細胞ホモジネートを抽出することによって、改善され得ることを見出した。具体的には、本明細書中に記載されるように、4℃で維持した後の、カルシウムとマグネシウムとを含む抽出物の比活性は、カルシウムおよびマグネシウムの非存在下で4℃にて維持した抽出物の活性(75×10μmole/分/mL)と比較して、92×10μmole/分/mLであることを見出した。
【0025】
4℃においてそのような抽出物を維持することは、重要であると、考えられる。なぜなら、これは、PDE−1が、その抽出物中の固体から解離することを可能にし、従って、PDE−1が、その抽出物のさらなる処理(例えば、加熱処理工程またはクロマトグラフィー分離工程)の前に、その抽出物の液相中に可溶化することを可能にするからである。上記のカルシウムおよびマグネシウムは、4℃において上記抽出物を維持する間の上記酵素の加水分解を制限するために、重要であると考えられる。
【0026】
従って、本発明に従って、オオムギ細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスは、
(a)その細胞から、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液中へとPDE−1を放出させて、抽出物を形成する工程;ならびに
(b)その抽出物を加熱して、その抽出物中のPDE−1の比活性を増加させる工程;
を包含する。
【0027】
代表的には、上記抽出物は、その抽出物を加熱する工程の前に、その抽出物中のホスホジエステラーゼの可溶化を促進するための条件下で維持される。
【0028】
上記抽出物は、10℃未満にて5日間未満維持され得る。例えば、上記抽出物は、0℃〜約4℃にて、約1時間〜約48時間維持され得る。
【0029】
上記抽出物を4℃にて24時間維持することは、特に有利である。なぜなら、このことは、さらなる精製工程を含む精製プロトコルの速度を改善するからである。
【0030】
本発明者は、PDE−1が、
(a)細胞から、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液中へとPDE−1を放出させて、抽出物を形成する工程;
(b)その抽出物を加熱して、その抽出物中のPDE−1の比活性を増加させる工程;ならびに
(c)クロマトグラフィーを使用して、上記の加熱した抽出物からPDE−1を精製する工程;
を包含するプロセスによって、オオムギ細胞抽出物から事実上均質な状態まで精製され得ることを、さらに見出した。
【0031】
本明細書中に記載されるように、PDE−1は、アニオン交換クロマトグラフィーによって、加熱処理済みオオムギ細胞抽出物からさらに精製され得る。従って、代表的には、工程(c)において、アニオン交換クロマトグラフィーが使用されて、その加熱された抽出物からPDE−1が精製される。
【0032】
本発明者は、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンが、アニオン交換クロマトグラフィーの間でのPDE−1の結合を制限する傾向があることを、見出した。従って、代表的には、上記抽出物は、アニオン交換クロマトグラフィーの前に脱塩される。マグネシウムイオンおよびカルシウムイオンを除去するためのある脱塩方法は、限外濾過による。あるいは、分取脱塩カラム(例えば、Hiトラップ26/10脱塩カラム)が、使用され得る。アニオン交換クロマトグラフィーの前に、そのアニオン交換カラムから精製されるPDE−1収量を最大にするために、上記抽出物からカルシウムおよびマグネシウムを実質的にすべて除去することは、特に有利である。
【0033】
代表的には、上記抽出物は、その抽出物を加熱する前に、その抽出物中のホスホジエステラーゼの可溶化を促進するための条件中で維持される。
【0034】
上記の本発明のプロセスにおいて、上記オオムギ細胞抽出物は、代表的には、適切な緩衝液中にてオオムギ細根を粉砕することによって、生成され得る。細根をホモジナイズする一方法は、ブレンダー(例えば、ワーリングブレンダー)の使用による。あるいは、上記抽出物は、適切な緩衝液中でオオムギ細根を粉砕することによって、生成され得る。
【0035】
上記細胞由来のPDE−1が放出されて抽出物を形成する溶液は、代表的には、pHを制御する緩衝液である。Trismaベースから調製された溶液が、そのような溶液の例である。約100mM以下のTris濃度を有する溶液が、適切である。しかし、約20mM Tris〜約50mM Trisの濃度(例えば、25mM Tris)を有する溶液が、特に有利である。なぜなら、本明細書中に記載されるように、このTris濃度は、アニオン交換カラムに適合し、かつアニオン交換カラムにおけるPDE−1分離を可能にするからである。
【0036】
本発明のプロセスは、オオムギ細胞以外の細胞からPDE−1を精製するために有用であることが理解される。さらに、本発明のプロセスは、オオムギPDE−1をコードする組換え核酸分子を含む細胞からオオムギPDE−1を単離するために有用であることが理解される。このような細胞の例としては、細菌細胞および酵母細胞が挙げられる。
【0037】
別の局面において、本発明は、リボヌクレオチドを生成するためのプロセスを提供する。このプロセスは、ポリリボヌクレオチドを、本発明のプロセスにより生成されたPDE−1と接触させて、リボヌクレオチドを生成する工程を包含する。好ましくは、このポリリボヌクレオチドは、酵母RNA(例えば、酵母リボソームRNA)由来である。
【実施例】
【0038】
(実施例1:材料および機器)
発芽オオムギの種子(Schooner品種)を、Barrett Burston Malting(Thornleigh,NSW,Australia)から入手した。チミジン5’モノホスフェートp−ニトロフェニルエステル、Trismaベース、MgCl、CaCl、p−ニトロフェニル−ホスフェート、Bakerの酵母RNA、ウシ血清アルブミン、グアノシン5’−モノホスフェート、オルトリン酸二水素カリウムを全て、Sigma Aldrich(Castle Hill,NSW Australia)から調達した。
【0039】
酵母rRNAを、清潔な室内環境においてRNAseを含まないMilli Q水(pH 7.0)中の3mg/mL標準溶液として調製し、直ちに−80℃まで凍結し、必要になるまで保存した。
【0040】
グアノシン5’−モノホスフェートを、Milli Q水中に溶解し、−20℃にて保存することによって、1%(w/v)ストックとして調製した。このストック溶液を、0.01%(w/v)まで希釈することによって、作業溶液を調製した。
【0041】
FPLCのために使用した緩衝液は、25mM Tris HCl(pH 8.9)であった。溶離緩衝液は、1M NaClを含んだ。
【0042】
HPLC分析について、溶媒(A)は、0.02M オルトリン酸二水素カリウム(pH 6.5)溶液であり、一方で、溶媒(B)は、40%メタノール(HPLC等級)および60% Milli Q水の混合物(pH 6.5)であった。
【0043】
全ての溶媒および緩衝液を、脱気し、使用前に、各溶液を真空下で5分間Milliporeメンブレンフィルター(孔径0.45μm)に通すことによって濾過した。
【0044】
Unicorn分析ソフトウェアを支援するCompaq Deskpro Pentium(登録商標)IIIコンピュータと接続された900モデルのモニタ、ランプおよび検出器(280nmに設定)、920モデルのポンプおよびFrac 950分画コレクターを完備した、Amersham Pharmacia AKAT勾配処理のFPLCシステムを、全てのタンパク質精製に使用した。使用したカラムは、Superループ50に接続されたHi Trap 26/10脱塩カラム(より大きい注入容積を容易にするため)、16/10 Hi−Load Q陰イオン交換カラム、そして、Mono Q HR 5/5カラム上で行なう最終精製を含んだ。
【0045】
5’ヌクレオチドの分析のために使用したHPLCシステムは、オンライン脱気ユニットを備えるShimadzuポンプ(モデルLC−10Ai)、SCL−10Aシステムコントローラ、SPD−M10Aダイオードアレイ検出器およびカラムオーブン(30℃に設定)から構成される、Shimadzu Liquid Chromatographyユニットであり、このシステムを、ShimadzuクラスVP(バージョン5.03)分析用ソフトウェアプログラムを動作する、Dell Pentium(登録商標)IIIコンピュータにより制御した。5’リボヌクレオチドの分析に使用したカラムは、Activon Goldpak HPLCカラム(250mm×4.6mm、5mm粒子サイズおよび10nm孔径)。ピークの高さを、245nmおよび280nmの両方で記録したクロマトグラムから決定した。
【0046】
Pharmacia LKB UV−可視分光光度計をまた使用して、整列された温度制御セルを用いて、酵素活性を測定し、410nmに設定した。これらのセルは、全て、Biochrome 4060酵素反応速度論ソフトウェアプログラムを動作する、HP Pentium(登録商標)IIコンピュータにより制御した。
【0047】
(実施例2:PDE−1活性を決定するためのp−ニトロフェノールについての標準曲線の準備)
10mg/100mLのp−ニトロフェノールの溶液を、50mM Tris HCl(pH 8.9)において調製し、0.719μモル/mlの濃度のp−ニトロフェノールを得た。50mMのTris HCl(pH8.9)中で希釈物を調製し、410nmにおいて4.1mLのサンプルサイズとして読み取り、各希釈段階における酵素活性の吸光度と直接相関させた。
【0048】
900モデルモニター、ランプおよび検出器(280nmに設定)、920モデルポンプおよびUnicorn分析用ソウフトウェアをサポートするCompaq Deskpro Pentium(登録商標)IIIコンピューターに接続されたFrac 950フラクションコレクターを備える、Amersham Pharmacia AKAT勾配プロセシングFPLCシステムを、すべてのタンパク質精製のために使用した。使用したカラムは、Mono Q HR 5/5カラム上で行われる最終精製に関して、Superループ50(より多くの注入量を容易にするため)に接続されたHi Trap 26/10脱塩カラム、16/10 Hi−Load Qアニオン交換カラムを備えた。
【0049】
5’ヌクレオチドの分析のために使用したHPLCシステムは、オンライン脱ガスユニットを有するShimadzuポンプ(モデルLC−10Ai)、SCL−10Aシステムコントローラ、SPD−M10Aダイオードアレイ検出器およびカラムオーブン(30℃に設定)からなる、Shimadzu Liquid Chromatographyユニットであり、このシステムを、ShimadzuクラスVP(バージョン5.03)分析用ソフトウェアプログラムを操作するDell Pentium(登録商標)IIIコンピューターにより制御した。5’リボヌクレオチドの分析用に使用したカラムは、Activon Goldpak HPLCカラム(250mm×4.6mm、5mm粒径および10nm細孔径)であった、ピーク高さを、245nmと280nmとの両方で記録したクロマトグラムから決定した。
【0050】
Pharmacia LKB 紫外可視分光計もまた、酵素活性を測定するために使用し、Biochrome 4060酵素反応速度ソフトウェアプログラムを操作するHP Pentium(登録商標)IIコンピューターによりすべて制御される整列した温度制御セルを用いて410nmに設定した。
【0051】
(実施例2:PDE−1活性を決定するためのp−ニトロフェノール用の検量線の調製)
p−ニトロフェノールの10mg/100mL溶液を、50mM Tris HCl(pH8.9)中に調製して、p−ニトロフェノールに関して0.0719μモル/mlの濃度を得た。希釈液を50mM Tris HCl(pH8.9)中に調製し、410nmでの4.1mLサンプルサイズとして読み取り、各精製工程において酵素活性吸光度と直接相関付けた。
【0052】
(実施例3:PDE−1比活性を決定するためのタンパク質用の検量線の調製)
タンパク質を、ウシ血清アルブミンについて作られた検量線を利用するBradfordの原法に由来するBioRadマイクロアッセイ手順を使用して決定した。各分析を、595nmで測定される吸光度に関して室温で10分間のインキュベーションを必要とする二連で行った。標準物質は、0.2〜1.4mg/mLのタンパク質の範囲で調製した。
【0053】
(実施例4:酵素反応速度アッセイ)
アッセイ溶液は、0.1mLの精製したPDE−1、2.0mLの50mM Tris HCl(pH8.9)、50mM Tris HCl(pH8.9)中の1mMチミジン5’一リン酸p−ニトロフェニルエステル(1mL)および50mM Tris HCl(pH8.9)中の1mMの50mM MgCl(1mL)からなった。この反応混合物を、毎分410nmで酵素的に生成されたp−ニトロフェノールの光学濃度を測定しながら37℃で30分間インキュベートして、PDE−1反応速度を決定した。
【0054】
その活性を、1mLの精製したPDE−1当たりの1分当たりのp−ニトロフェノールエステルから生成されたp−ニトロフェノールのマイクロモルとして規定される1ユニットの活性に関して、検量線に対する推定により決定した。比活性を、精製したPDE−1のミリグラム当たりの活性として規定した。
【0055】
(実施例5:PDE−1活性の確認)
酵素活性の確認を、精製した酵素と3mg/mL パン酵母RNAとの反応および逆相HPLCにより5’リボヌクレオチド産物を測定することによって行った。
【0056】
HPLCカラムを、180Kpa以下の圧力に確実に維持して、1ml/分の流速で30分間、100%緩衝液Aで平衡化した。溶出系における溶媒Bの速度を、18分間にわたって40%まで直線的に増加させ、次いで、次の2分間にわたって100%まで増加させ、そしてさらに2分間保持して任意の残存する強力に結合した化合物をフラッシュした。この系を、その後の8分間にわたって自動的にその開始条件に戻し、次の注入前にさらに30分間緩衝液Aで安定化した。総分析時間は、30℃のオーブン温度で行われる溶出を含めて60分間であった。
【0057】
(実施例6:粗製PDE−1抽出物の調製)
5日間(酵素抽出を容易にするための5mg/kgジベレリン酸中の2日間の含浸を含む)発芽した種から、10gの新鮮なオオムギ細根を得た。この細根を、50mM MgClおよび50mM CaClを含む100mLの25mM Tris HCl(pH7.5)中に分散させた。この混合物を、Waringブレンダーで、高速で1分間ホモジナイズし、4℃で24時間維持して、PDE−1の可溶化を容易にした。
【0058】
不溶性物質を、ニ重のチーズクロスを通して濾過することによって抽出物から除去した。次いで、濾液を、15,000rpmで30分間、4℃で遠心分離して固体を除去し、そして上清を0.45μMフィルターを通過させ、4℃で0.01%アジ化ナトリウムを含む滅菌容器で保存した。このプロセスにより粗製PDE−1抽出物が形成した。
【0059】
次いで、この粗製PDE−1抽出物の活性および比活性を、上記の実施例2〜4に従って決定した。
【0060】
(実施例7:粗製PDE−1抽出物からのPDE−1の精製)
精製プロセス第1段階は、PDE−1の任意の活性の損失またはPDE−1の構造に対する損傷を低減する目的で、熱不安定性酵素(主として、酸ホスファターゼ[ホスホモノエステラーゼ(PME)]EC 3.1.3.2)および阻害性タンパク質の、粗製PDE−1抽出物からの除去に関する。PMEを不活化するために、この粗製抽出物を、水浴中で60℃まで加熱し、その温度で1時間維持した。次いで、この抽出物を、室温まで冷却し、そしてpHを8.9に調整した。次いで、この抽出物を、0.45μmフィルターを通して濾過した。
【0061】
次いで、加熱処理したPDE−1抽出物の活性および比活性を、上記の実施例2〜4に従って決定した。
【0062】
次いで、イオン交換クロマトグラフィーを行った。抽出物の100mLのサンプルを、Superループ50カラムに注入し、そしてHiトラップ26/10脱塩カラム上で1分当たり7.0mLの流速でFPLCにより脱塩して、マグネシウムおよびカルシウムを除去した。次いで、脱塩した画分をプールし、Superループカラムに再充填し、Hiロード16/10アニオン交換カラムを1分当たり3.0mLで通過させて、PDE−1を初期分画した。単離した画分を、再度脱塩して、1M NaCl溶出緩衝液を除去し、次いで、その画分をMono QHR 5/5カラムを1分当たり1.5mLで通過させることによって精製した。単一ピークを得、上記実施例2〜4に従って、活性および比活性を分析した。
【0063】
(実施例8:PDE−1についての精製プロフィール)
PDE−1の精製についての結果を、表1に示す。
【0064】
【表1】

活性: ×10−3μモル/分/mL
比活性: ×10−3μモル/分/mL/mg。
【0065】
(実施例9.4℃における可溶化の間の粗抽出物のPDE−1活性に対する、カルシウムおよびマグネシウムの影響)
本発明者は、カルシウムおよびマグネシウムが、4℃においてPDE−1を可溶化する工程と、その後の実施例6に記載されるホモジナイゼーション工程の間に、上記の粗抽出物中のPDE−1の安定化に対して、またはその粗抽出物のPDE−1活性を保存もしくは増強することに対して、影響を有するか否かを決定する努力を行った。
【0066】
この目的のために、本発明者は、25mM Tris HCl(pH8.9)中で4℃において、上記のホモジネートした抽出物を、(i)カルシウムおよびマグネシウムの非存在下で;(ii)5mM MgClおよび5mM CaClとともに;および(iii)50mM MgClおよび50mM CaClとともに、維持した。
【0067】
本発明者は、カルシウムおよびマグネシウムが、PDE−1を増強して実際に安定化したことを、見出した。50mM MgClおよび50mM CaClにおいて、PDE−1活性は、マグネシウムもカルシウムも含まないサンプル中よりも22%高かった(75×10μmole/分/mLと比較して、92×10μmole/分/mL)。
【0068】
(実施例10.加熱処理の間の粗抽出物のPDE−1活性に対する、カルシウムおよびマグネシウムの影響)
本発明者は、カルシウムおよびマグネシウムが、実施例7に記載されるPDE−1を加熱する工程の間に、上記の粗抽出物中のPDE−1の安定化に対して、またはその粗抽出物のPDE−1活性を保存もしくは増強することに対して、影響を有するか否かを決定する努力を行った。
【0069】
この目的のために、本発明者は、25mM Tris HCl(pH8.9)中で60℃において1時間、上記の粗抽出物を、(i)カルシウムおよびマグネシウムの非存在下で;(ii)5mM MgClおよび5mM CaClとともに;および(iii)50mM MgClおよび50mM CaClとともに、インキュベートした。
【0070】
本発明者は、加熱工程の後に、上記活性が、マグネシウムおよびカルシウムを含まないサンプルと、5mM MgClおよび5mM CaClを含むサンプルとにおいては、50mM MgClおよび50mM CaClとを含むサンプルと比較して、40%を超える分、有意に低下した(78×10μmole/分/mLと比較して、46×10μmole/分/mLおよび48×10μmole/分/mL)ことを見出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスであって、該プロセスは、
少なくとも1種の二価カチオンを含む溶液から形成される細胞抽出物を加熱して、該抽出物におけるPDE−1の比活性を増加させる工程;
を包含する、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、前記二価カチオンは、マグネシウムカチオンまたはカルシウムカチオンである、プロセス。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスであって、前記二価カチオンは、マグネシウムカチオンおよびカルシウムカチオンである、プロセス。
【請求項4】
請求項1に記載のプロセスであって、前記二価カチオンの濃度は、100mM未満である、プロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスであって、前記二価カチオンの濃度は、約10mM〜約50mMである、プロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスであって、前記二価カチオンの濃度は、約50mMである、プロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスであって、前記抽出物を、該抽出物からホスホモノエステラーゼ活性を除去することを可能にする温度まで加熱する、プロセス。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセスであって、前記抽出物を、80℃未満まで加熱する、プロセス。
【請求項9】
請求項8に記載のプロセスであって、前記抽出物を、約45℃と約75℃との間まで加熱する、プロセス。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスであって、前記抽出物を、約60℃まで加熱する、プロセス。
【請求項11】
オオムギ細胞からホスホジエステラーゼ1(PDE−1)を精製するためのプロセスであって、該プロセスは、
該細胞から、カルシウムとマグネシウムとを含む溶液中へとPDE−1を放出させて、抽出物を形成する工程;ならびに
該抽出物を加熱して、該抽出物中のPDE−1の比活性を増加させる工程;
を包含する、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスであって、前記抽出物を、該抽出物を加熱する前に、該抽出物中のホスホジエステラーゼの可溶化を促進するための条件において維持する、プロセス。
【請求項13】
請求項12に記載のプロセスであって、前記抽出物を、10℃未満にて維持する、プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスであって、前記抽出物を、0℃〜約4℃にて維持する、プロセス。
【請求項15】
請求項11に記載のプロセスであって、
クロマトグラフィーを使用して、前記加熱した抽出物からPDE−1を精製する工程;
というさらなる工程を包含する、プロセス。
【請求項16】
請求項15に記載のプロセスであって、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して、前記加熱した抽出物からPDE−1を精製する、プロセス。
【請求項17】
請求項1〜16のうちのいずれか1項に記載のプロセスによって精製される、PDE−1。
【請求項18】
請求項17に記載のPDE−1を含む、細胞。
【請求項19】
リボヌクレオチドを生成するためのプロセスであって、該プロセスは、
ポリリボヌクレオチドを、請求項17に記載のPDE−1と接触させて、リボヌクレオチドを生成する工程;
を包含する、プロセス。
【請求項20】
請求項19に記載のプロセスによって生成される、リボヌクレオチド。

【公表番号】特表2006−525788(P2006−525788A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571747(P2004−571747)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/AU2003/001618
【国際公開番号】WO2004/101613
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505422752)プロテク リサーチ ピーティーワイ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】