説明

酵素を使用するDNAにおけるランダム二本鎖切断

非特異的ヌクレアーゼとT7エンドI突然変異体とを1:200未満の単位比で含む酵素調製物を記載する。この酵素調製物は、DNA配列決定に適したサイズの二本鎖DNA断片を製造するために使用されうる。該断片の末端は、必要に応じて、該二本鎖DNA断片の一方の鎖にアダプターまたは個々のヌクレオチドを連結するために容易に修飾されうる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
より小さい異なるサイズの断片へのゲノムDNAの切断は多数の配列決定技術における重要な段階である。現在の機械的断片化方法、例えば音波処理、適応合焦音響処理(adaptive−focused acoustics)または噴霧化は、塩基切断の優先性を伴うことなくDNA断片を生成する。しかし、これらの方法は、ホスホジエステル結合以外の部位でDNAを損傷する可能性を有し、酵素方法の場合より低いDNA回収効率を有する。一方、特異的認識配列を有する制限酵素に基づく方法のような酵素方法は、該認識配列の出現頻度に応じて大きく又は小さくなりうる一定の特異的サイズの断片を生成する。これまでのところ、非特異的ヌクレアーゼに関する研究は、認識および切断に必要な特異的配列は存在しないものの、これらの酵素が切断部位における或る塩基に対する優先性を示すことを示している(Anderson,Nucleic Acids Res.9(13):3015−27(1981);HerreraおよびChaires,J,Mol.Biol.236(2):405−11(1994))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Anderson,Nucleic Acids Res.9(13):3015−27(1981)
【非特許文献2】HerreraおよびChaires,J,Mol.Biol.236(2):405−11(1994)
【発明の概要】
【0003】
要旨
本発明の1つの実施形態においては、非特異的ヌクレアーゼおよびT7エンドI突然変異体を1:200未満の単位比で含む調製物を提供する。1つの具体例においては、該非特異的ヌクレアーゼはビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)(Vvn)ヌクレアーゼであり、これはQ69において突然変異を有する。
【0004】
本発明のもう1つの実施形態においては、関心のあるDNAを、非特異的ヌクレアーゼおよびT7エンドI突然変異体を1:200未満の単位比で含有する調製物と混合することを含む、配列決定に適した、大きなDNAからの断片の製造方法を提供する。該大きなDNAを、配列決定に適したサイズの断片に切断する。直前に記載されているとおり、該方法において使用する非特異的ヌクレアーゼの一例はVvnヌクレアーゼ、より詳細には、増加した特異的活性を有するVvnヌクレアーゼ突然変異体、例えば、Q69において突然変異を有するVvnヌクレアーゼ突然変異体である。該大きなDNAの断片は1つ又は2つの平滑末端を有してよく、またDNAの配列決定において使用されるタイプのアダプターに連結するために更に修飾されうる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、マルトース結合タンパク質(MBP)−T7エンドI突然変異体とMBP−Vvnとの組合せを使用するDNA断片化を示す。CB4は2容量のMBP−T7エンドI突然変異体(PA/A)(0.13単位/μl)と1容量のMBP−Vvn(0.14単位/μl)との混合物である。各レーンは30μlの反応を表し、該反応においては、5μgのゲノムDNA(レーンの上部に示されている)を3μlのCB4混合物と37℃で温置した。30分、60分および90分の時間間隔の後、各反応を15mM EDTAで停止させた。DNA断片をエタノール沈殿させ、ついで風乾させた。DNAペレットを50μlの1×ゲルローディング色素オレンジ(New England Biolabs,Inc.,(NEB),Ipswich,MA,NEB#B7022)に再懸濁させ、2% アガロースゲル上にローディングした。四角の枠は約100〜200bpの断片を示す。図1AはHela(子宮頚腺癌)細胞、大腸菌(E.coli)およびCpG Hela細胞(NEB#4007)からのゲノムDNAの断片化を示す。図1Bはニシン精子、ラムダファージおよびJurkat(ヒト急性T細胞白血病)細胞からのゲノムDNAの断片化を示す。
【図2】図2は、2つのDNAラダーM1[2−Log DNAラダー(NEB #N3200,Ipswich,MA)]およびM2[NEB PCRマーカー(NEB #N3234,Ipswich,MA)]と比較した場合の、CB4混合物を使用するDNA断片の生成を示す。7つの反応を準備した。3μlのCB4混合物および5μgのDNAラダー(NEB #N3231,Ipswich,MA)を含有するそれぞれ50μlの反応を種々の時間にわたり37℃で温置し、ついで0、5、10、20、40,80、160分の時間間隔で15mM EDTAで停止させた。断片を1% アガロースゲル上にローディングした。
【図3】図3A〜3Bは、ヌクレアーゼ:MBP−Vvnヌクレアーゼ(野生型(WT))またはMBP−Vvnヌクレアーゼ(Q69S)の系列希釈物を使用する30μlの反応中の37℃で30分間にわたる1μgのラムダDNAからのDNA断片の生成を示す。図3A:レーンMはNEB(Ipswich,MA)PCRマーカー(#N3234)であり、レーン1〜9は、レーン1における2μgのMBP−Vvnヌクレアーゼ(WT)から出発する酵素の2倍希釈系列物である(希釈バッファー:20mM Tris−HCl(pH7.5)、50mM NaCl、0.15% Triton X−100および0.1μg/ml BSA)。レーン3において使用する酵素の量は1ゲル単位と定義され、ここで、該DNA断片の90%は150bp未満である。図3B:レーンMはNEB(Ipswich,MA)PCRマーカー(#N3234)であり、レーン1〜9は、レーン1における1.5μgのMBP−Vvnヌクレアーゼ(突然変異体)から出発する酵素の2倍希釈系列物である(希釈バッファーは前記のとおり)。レーン6において使用する酵素の量は1ゲル単位と定義される。
【図4】図4は、MBP−T7エンドI突然変異体およびMBP−Vvnヌクレアーゼ(Q69S)からなる混合物(CB4v2)に関して種々の温置時間を用いた場合のDNA断片の生成を示す。CB4v2は、2容量のMBP−T7エンドI突然変異体(0.16単位/μl)と1容量のMBP−Vvnヌクレアーゼ(Q69S)との混合物(0.048TCA単位/μl)である。各レーンは50μlの反応を表し、該反応においては、5μgの種々のゲノムDNA(レーンの上に示されているもの)を同量の3μlのCB4v2混合物と37℃で温置した。30分、60分および90分の時間間隔の後、各反応を15mM EDTAで停止させた。DNA断片をエタノール沈殿させ、ついで風乾させた。DNAペレットを50μlの1×ゲルローディング色素オレンジ(NEB#B7022,Ipswich,MA)に再懸濁させ、2% アガロースゲル上にローディングした。四角の枠は約150bpの断片を示す。
【図5】図5はVvnヌクレアーゼ(Q69S)突然変異体のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。該アミノ酸配列は19位から始まる。なぜなら、MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)構築物にはシグナルペプチド(1−18)がクローニングされていないからである。「」は、QがSへと突然変異している69位を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、複数の異なるエンドヌクレアーゼを別々の反応容器内で使用し次いで断片化産物を合わせた場合(図6A)、および2つのエンドヌクレアーゼを同じ反応容器内で一緒に使用した場合(図6B)の、或る時間範囲にわたる比較を示す。Mは2−Log DNAラダーであり、Cは未消化pUC19である。「N」はpUC19のニック化形態が泳動する位置を示す。「L」はpUC19の直線形態が泳動する位置を示す。「S」はpUC19のスーパーコイル形態が泳動する位置を示す。図6Aは、ニック化酵素MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)およびMBP−T7エンドI突然変異体を別々に使用するランダム二本鎖切断を示す。8μgのpUC19を480μlの反応において1.376 TCA単位のMBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)と共に温置した。もう1つの新たなチューブにおいて、8μgのpUC19を480μlの反応において5.6単位のMBP−T7エンドI突然変異体と共に温置した。サンプルを37℃で温置した。0、5、10、15、20、30、40および60分の時点で各温置混合物から30μlを取り出し、該反応をEDTA(最終濃度15mM)の添加により停止させた。同じ温置時間のサンプルを一緒に集め、0〜60分の温置時間に対応するレーン1から8までの0.8% アガロースゲル上にローディングした。図6Bは、MBP−T7エンドI突然変異体およびMBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)を一緒に使用するランダム二本鎖切断を示す。16μgのpUC19を480μlの反応において1.376 TCA単位のMBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)および5.6単位/μl MBP−T7エンドI突然変異体(CB4V2)と共に温置した。サンプルを37℃で温置した。0、5、10、15、20、30、40および60分の時点で各温置混合物から60μlを取り出し、該反応をEDTA(最終濃度15mM)の添加により停止させた。サンプルを、0〜60分の温置時間に対応するレーン1から8までの0.8% アガロースゲル上にローディングした。MBP−T7エンドI突然変異体とニック化酵素MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)との相乗効果がランダムDNA断片の生成に際して見出された。
【図7】図7は、ヌクレアーゼの混合物に関する適当な単位比を決定するための滴定を示す。既存の切れ目(ニック)部位に対するT7エンドI突然変異体による特異的切断をゲル電気泳動により判定した。該酵素を2倍系列希釈した。1単位は、基質の90%を2つの断片に変換しうる酵素の量と定義された。該系列希釈を、最も濃いもの(レーン1)から最も薄いもの(レーン9)まで示した。前記の基質調製中にBsaI/Nt.BstNBIにより生成された既存のニック化部位に対するT7エンドヌクレアーゼ突然変異体による特異的切断は線状ニック化2.44Kb二本鎖DNA(dsDNA)を2つの断片(1.37Kbおよび1.07Kb)に変換した。したがって、T7エンドヌクレアーゼ突然変異体の1単位は、20μlの反応において5単位の大腸菌(E.coli)リガーゼ、60μM NAD、20mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM MgCl、0.15% Triton X−100および50mM NaClを含有するバッファーで37℃で1時間にわたり該線状ニック化2.44kb dsDNAの2μgの90%を2つの断片(1.37Kbおよび1.07Kb)に変換するのに必要な酵素の量(レーン5に示されているとおり)と定義された。レーン「M」は2−log DNAラダー(NEB,Ipswich,MA,#3200)である。
【図8−1】図8は、エンドヌクレアーゼ混合物を含む製品に付属しているデータカードを示す。
【図8−2】図8は、エンドヌクレアーゼ混合物を含む製品に付属しているデータカードを示す。
【図8−3】図8は、エンドヌクレアーゼ混合物を含む製品に付属しているデータカードを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態においては、ほぼ均一なサイズの二本鎖DNA断片を製造するための調製物中の酵素の混合物に基づく組成物および方法を提供し、ここで、該均一サイズは、必要に応じて予め決定されることが可能であり、例えば温置時間を変化させることにより生成されうる。該酵素調製物は、抗ニック化活性を含めることにより、非特異的ヌクレアーゼ切断反応のみのdsDNA産物と比較してdsDNA断片における非生産性ニックの数を減少させる。該抗ニック化は、通常の解離条件下で解離し後続の操作のために平滑末端へと修復されうる一定の長さの突出部の生成を可能にする。修復は、3’突出部を逆方向へ砕き取ること、またはポリメラーゼを使用して5’突出部に対する相補的配列を合成することを含みうる。ついで、平滑末端または単一ヌクレオチド突出部を有するアダプターを該修飾断片に連結することが可能である。ついでこれらの断片を種々の配列決定法において使用することが可能である。
【0007】
先行技術におけるランダム断片化法は突出部を生成するが、これらは個別にサイズ分けされず、少なくとも2つの問題を引き起こす。第1に、融解温度は該突出部の長さおよび塩基組成に左右されるため、該末端の解離は均一ではない。第2に、断片の解離に要求されるものを超える過剰のニック(切れ目)の存在は、増幅および/または実際の配列決定反応を含む後続工程に要求される重合の障害となる。該温度の物理的連続性を要する配列決定方法も悪影響を受けるであろう。
【0008】
本発明の1つの実施形態においては、該調製物は非特異的ヌクレアーゼおよびT7エンドヌクレアーゼIまたはその突然変異体を含有する。ATまたはGC塩基対を優先的に切断するヌクレアーゼが使用されうるが、好ましくは、GCまたはATのいずれにも有意な優先性を有さないヌクレアーゼが選択される。この後者の範疇に属するヌクレアーゼの一例はビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)(Vvn)から得られる(GI:2625684 Wuら,Appl Environ Microbiol 67(1):82−8(2001))。
【0009】
該調製物において使用されうる他の細胞外ヌクレアーゼには、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholera)由来のDns(FocaretaおよびManning,Gene 53(1):31−40(1987))、エルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)由来のNucM(Moulardら,Mol Microbiol 8(4):685−95(1993))、大腸菌(E.coli)由来のEndoI(Jekelら,Gene 154(1):55−59(1995))、エロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophila)由来のDnsおよびDnsH(Changら,Gene 122(1):175−80(1992)およびDoddら,FEMS Microbiol Lett 173(1):41−6(1999);Wangら,Nucleic Acids Res 35:584−94(2007);ならびにWangら,Nucleic Acid Res.35:584−594(2007))が含まれる。
【0010】
該ヌクレアーゼに対する突然変異は特異的活性の改善をもたらしうることが本明細書に示されている。例えば、VvnエンドヌクレアーゼのQ69の突然変異は、増強した特異的活性を有するヌクレアーゼを与える。特に、実施例(具体例)においては、Q69Sを用いる。例えば、突然変異エンドヌクレアーゼの回収の改善のために周辺腔内に蓄積する融合タンパク質を得るために該遺伝子がMBPの遺伝子と共役された場合、該突然変異ヌクレアーゼは宿主細胞において容易に産生されることが判明した。
【0011】
非特異的ヌクレアーゼを含有する酵素調製物へのT7エンドI突然変異体の添加は、所望の特性を有する断片の生成に対して重要な有益な効果を及ぼした。変性条件下で種々のサイズの断片を与える非特異的ヌクレアーゼにより生成されるニックは、T7エンドI突然変異体の存在下では、その抗ニック化活性のため、有効に消失した。該抗ニック化活性は、ニック部位から好ましくは8ヌクレオチド以下を容易に解離しうる末端を有する断片を生成した。dsDNAに対する該酵素混合物の他の有益な効果には、DNA配列決定法に要求されることがあるアダプターの結合を可能にする修復または除去に適した予測可能な突出部の性質および長さを有するDNA断片の生成が含まれた。
【0012】
本発明のもう1つの実施形態においては、複数のヌクレアーゼを反応混合物において組合せる。この場合、少なくとも1つのヌクレアーゼは、いずれかの鎖上のDNA全体にわたってランダムなニックを導入しうるタイプのものであり、もう1つのヌクレアーゼは、DNA二本鎖の反対鎖における、この最初のニックに直に隣接した部位において、抗ニック化をもたらすことが可能であり、したがって二本鎖DNAの切断を引き起こす。
【0013】
このアプローチは、それぞれ、ビブリオ(Vibrio)に由来する非特異的ヌクレアーゼ、および米国公開第2007−0042379に記載されているタイプのT7エンドIの突然変異体、例えば、架橋領域に突然変異を有するT7エンドIを用いて例示される。酵素断片は該ゲノムに沿って分布していると予想される。
【0014】
プラスミドDNAおよび種々のタイプのゲノムDNA(gDNA)を、前記の酵素調製物を使用する配列決定法に適したサイズのDNA断片へと酵素的に切断した。該DNAの断片化の後、DNA断片をゲル単離し、後続の配列決定のために加工した。
【0015】
実施例2に記載されているアッセイは、いずれかの特定のDNAに関する選択された温置時間にわたるヌクレアーゼの適量または選択されたヌクレアーゼ比に関する適当な温置時間を特定するために使用されうる。
【0016】
それらの2つのヌクレアーゼの単位比(Vvnエンドヌクレアーゼ突然変異体のようなニック化エンドヌクレアーゼ:T7エンドI突然変異体のような抗ニック化ヌクレアーゼ)は、好ましくは1:200未満、例えば1:100未満、例えば1:10未満である。該範囲は1:2〜1:200でありうる。
【0017】
T7エンドIまたはその突然変異体の1単位は、37℃で1時間にわたり該線状ニック化2.44kb dsDNAの2μgの90%を2つの断片(1.37kbおよび1.07kb)に変換するのに必要な酵素の量と定義された。
【0018】
Vvnヌクレアーゼおよびその突然変異体の1単位は、37℃で30分のうちに酸可溶性オリゴヌクレオチドの1 A260単位を遊離させるのに必要な酵素の量と定義される
本発明の1つの実施形態においては、該DNA断片化反応のための温置の最適時間は、60%を超えるGC(高GC含量)、40%〜60%のGC(標準的なGC含量)または40%未満のGC(低GC含量)の範囲内に該DNAが含まれるかどうかに応じてアッセイされうる。例えば、該温置時間範囲は、典型的には10分〜120分、例えば15分〜60分の範囲でありうる。
【0019】
本明細書中で引用されている全ての参考文献ならびに2009年2月3日付け出願の米国仮出願第61/149,675号および2009年3月10日付け出願の第61/158,815号および2009年8月31日付け出願の第61/275、531号を参照により本明細書に組み入れることとする。
【0020】
実施例
「大きな」は、配列決定のための断片化を要するサイズを有するDNAに関して用いられる。
【0021】
T7エンドI突然変異体は、2つの触媒ドメインの間の架橋領域に突然変異を有するT7エンドIを意味する。
【0022】
MBP−T7エンドI突然変異体はT7エンドIと同様に作用する。
【0023】
MBP−Vvnヌクレアーゼ(WTまたは突然変異体)はVvnヌクレアーゼ(WTまたは突然変異体)と同様に作用する。
【0024】
非特異的ヌクレアーゼは、特異的DNA配列を認識しない任意のDNAヌクレアーゼを意味する。DNA配列は、一定の順序の少なくとも2ヌクレオチドからなる。これは、特異的DNA配列を認識する制限エンドヌクレアーゼを含まない。
【実施例1】
【0025】
Vvnまたはその突然変異体を含有する酵素混合物の調製
Vvnからのペリプラズム(周辺腔)ヌクレアーゼをコードする遺伝子を化学合成した。シグナルペプチドを有さないVvn遺伝子は図5におけるアミノ酸19−231(配列番号5)に対応する。それを、プライマー1(5’−AAGGTTGAATTCGCGCCACCTAGCTCCTTCTCT GCC−3’)(配列番号1)および2(5’−GGTAGAGGATCCTTATTGAGTTTGACAG GATTGCTG−3’)(配列番号2)のペアを使用するPCR増幅により合成し、該断片をpMALp4xベクター(NEB,Ipswich,MA,#N8104)のEcoRIとBamHIとの間にクローニングした。融合タンパク質MBP−Vvnエンドヌクレアーゼを大腸菌(E.coli)のペリプラズム区画において発現させ、均一になるまでアミロースアフィニティーカラムにより精製した。MBP−Vvnヌクレアーゼ(WT)をヘパリンカラム(GE Healthcare,Piscataway,NJ)により更に精製した。タンパク質濃度をブラッドフォード(Bradford)アッセイ(Bio−Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)により決定した。
【0026】
突然変異MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)を作製した。これは、MBP−Vvnエンdヌクレアーゼ(WT)より5〜10倍高い特異的活性を示した(図4A〜4B)。MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)突然変異体を製造するために、プライマー3(5’−C AAGTACGCAAAAGCCAAACTCGCGCAT CG−3’)(配列番号3)および2(配列番号2)を使用してVvn遺伝子のC末端部分を増幅し、プライマー1(配列番号1)おより4(5’−TGCGCGAGTTTGGCTTTTGCGTA CTTGGTA−3’)(配列番号4)を使用して、シグナルペプチド配列以外のVvn遺伝子のN末端領域を増幅した。各反応からのPCR断片を混合し、プライマー1(配列番号1)および2(配列番号2)を使用して無傷Vvn遺伝子から再増幅した。該PCR産物をEcoRIおよびBamHIで切断し、ついで、タンパク質発現のために同じ酵素で切断されたpMAL−p4xベクター内にクローニングした。Vvn突然変異エンドヌクレアーゼ(Q69S)のアミノ酸配列を図5に示す。融合タンパク質MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)を大腸菌(E.coli)のペリプラズム(周辺腔)において発現させ、均一になるまでアミロースアフィニティーカラムにより精製した。タンパク質濃度をブラッドフォード(Bradford)アッセイ(Bio−Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)により決定した。該Vvn突然変異エンドヌクレアーゼをT7エンドI突然変異体(CB4v2)と組合せた場合、該混合物は種々の起源およびサイズのゲノムDNAを時間依存的に効率的に断片化することが判明した。
【実施例2】
【0027】
該混合物における酵素に関する単位比の決定
(a)T7エンドI突然変異体の活性の決定
特異的ニック化部位を有する線状dsDNAを調製するために、pNB1を使用した(2.44Kb)。pNB1は、Nt.BstNBIおよびBsaI切断のための単一部位を有するプラスミドである。BsaIでの切断は該プラスミドを線状化し、一方、Nt.BstNBIはその認識部位に部位特異的ニックを導入する。プラスミドpNB1をNt.bstNBIおよびBstI制限酵素で50℃で1時間消化した。ついで子ウシ腸アルカリホスファターゼを該線状ニック化dsDNAに加え、37℃で1時間温置した。この処理は後続アッセイ中の大腸菌(E.coli)リガーゼによるNt.BstNBIニックの封着(sealing)を防ぐ。Qiagenカラム(Valencia,CA)を使用して、断片化dsDNAを付随酵素から分離した。
【0028】
T7エンドI突然変異体での該断片化pNBI DNAの処理は、Nt.BstNBIニックとはほぼ反対に、該DNA鎖内に抗ニックを導入して、2つの断片を与えた(1.37kbおよび1.07kb)(図7を参照されたい)。T7エンドI突然変異体の1単位は、5単位の大腸菌(E.coli)リガーゼ、60μM NAD、20mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM MgCl、0.15% Triton X−100および50mM NaClを含有するバッファーで37℃で1時間にわたり該線状ニック化2.44kb dsDNAの2μgの90%を2つの断片(1.37Kbおよび1.07Kb)に変換するのに必要な酵素の量と定義された。図7のレーン5は、この定義を満たす反応を示す。
【0029】
(b)突然変異Vvnエンドヌクレアーゼ活性の決定
音波処理された子ウシ胸腺ゲノムDNAを基質として使用して、Vvnエンドヌクレアーゼ活性をアッセイした。5μlのVvnエンドヌクレアーゼ突然変異体を、20mM Tris−HCl(pH7.5)、10mM MgCl、0.15% Triton X−100、50mM NaCl、音波処理された子ウシ胸腺gDNA(3mg)およびBSA(0.1mg/ml)を含有する37℃の3mlの反応混合物に加え、温置を37℃で継続した。500μlの反応混合物を取り出し、10、20、30、40および50分の時間間隔の後、500μlの5% TCAで該エンドヌクレアーゼ活性を停止させた。TCAでクエンチされたこれらのサンプルを氷上で1時間温置し、14000rpmで15分間遠心分離して無傷DNAをペレット化した。各チューブからの上清を注意深く取り出し、260nmにおける該上清の吸光度を測定した。Vvnエンドヌクレアーゼ突然変異体の1単位は、37℃で30分のうちに酸可溶性オリゴヌクレオチドの1 A260単位を遊離させるのに必要な酵素の量と定義される。
【0030】
(c)該ヌクレアーゼ混合物における突然変異Vvnエンドヌクレアーゼと突然変異T7エンドIとの単位比の決定
所望量のVvnヌクレアーゼおよびT7エンドI突然変異体を、10mM Tris−HCl(pH7.5)、50mM NaCl、0.1mM EDTA、200μg/ml BSAおよび50% グリセロールの保存バッファー中、種々の比で一緒にした。DNA断片化バッファーは20mM Tris−HCl(pH7.5)、50mM NaCl、10mM MgCl、0.15% Triton X−100および0.1mg/ml BSAを含有していた。
【0031】
それらの2つのエンドヌクレアーゼの適当な比を決定するために、一方のエンドヌクレアーゼは一定量で維持し、他方のヌクレアーゼは濃度を変動させ、これらを、TCAアッセイを用いて、その他は同様の反応条件下で行った。
【0032】
本明細書に例示されているヌクレアーゼの混合物においては、MBP−T7エンドI突然変異体:MBP−Vvnエンドヌクレアーゼ(Q69S)突然変異体の単位比は約3:1であった。該単位比を2:1に減少させたところ、前記のTCAアッセイにより測定した場合にDNA分解の速度は50%減少した。一方、該比を8:1に増加させた場合には、該速度は僅か14%増加したに過ぎなかった。
【実施例3】
【0033】
酵素混合物においてヌクレアーゼをT7エンドI突然変異体と組合せることによる相乗効果
CB4は種々の起源および種々のサイズのゲノムDNAを時間依存的に断片化することが示された(図2)。CB4は2容量のMBP−T7エンドI突然変異体(PA/A)(0.26mg/ml)と1容量のMBP−Vvn(WT)(0.2mg/ml)との混合物である。CB4はまた、100〜1500bpのサイズを有する小さな断片の混合物を100〜150bpの断片に変換し(図2)、サイズは幾つかの現在の次世代配列決定法に適している。
【0034】
混合物中のMBP−Vvnヌクレアーゼ(Q69S)およびMBP−T7エンドI突然変異体は、小さな二本鎖DNA断片を産生するように相乗的に作用する。図6Aおよび6Bは、漸増温置時間にわたるMBP−Vvnヌクレアーゼ(Q69S)またはMBP−T7エンドI PA/Aでのプラスミドの処理がニック化環状DNAの蓄積の増加ならびにそれに続く線状プラスミドの形成およびより小さな断片へのこのDNAの分解をもたらしたことを示している。しかし、同じ反応混合物中に両方の酵素が存在した場合には、開いた環状または線状DNAへの該スーパーコイル化プラスミドの変換およびその分解は、別々の酵素の同じ濃度で観察されたもの(図6A)と比較して著しく増加した(図6B)。例えば、合わされたサンプル(すなわち、図6B)におけるレーン6は、分離したスーパーコイル化、ニック化または線状プラスミドを欠くが、個々の酵素との温置の後では、少なくともニック化および線状化プラスミドの豊富な残渣が存在していた(図6A、レーン6)。
【0035】
いずれかの特定のDNAの所望の分解は、出発DNAのサイズ、所望の断片のサイズ、および該混合物中の選択された比のヌクレアーゼの存在下の温置の時間の関数である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非特異的ヌクレアーゼとT7エンドI突然変異体とを1:200未満の単位比で含む調製物。
【請求項2】
非特異的ヌクレアーゼがVvnヌクレアーゼである、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
該VvnヌクレアーゼがQ69において突然変異を有する、請求項1または2記載の調製物。
【請求項4】
大きな二本鎖DNAからの、配列決定に適した断片の製造方法であって、
(a)該大きなDNAを請求項1記載の調製物と混合し、
(b)該大きなDNAを、配列決定に適したサイズの断片に切断することを含む製造方法。
【請求項5】
非特異的ヌクレアーゼがVvnヌクレアーゼである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
該VvnヌクレアーゼがQ69において突然変異を有する、請求項4または5記載の製造方法。
【請求項7】
(b)における切断により生じた断片上に平滑末端を作製することを更に含む、請求項4から6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
平滑末端を有するアダプターまたは単一ヌクレオチド突出部を断片の末端の一方または両方に連結することを更に含む、請求項4から7のいずれか1項記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【公表番号】特表2012−522489(P2012−522489A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548416(P2011−548416)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/023007
【国際公開番号】WO2010/091060
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(591021970)ニユー・イングランド・バイオレイブス・インコーポレイテツド (18)
【Fターム(参考)】