酵素反応から発生したシグナルの増幅方法
【課題】酵素反応から発生したシグナルを増幅する新規な方法を提供する。
【解決手段】結合された酵素を有する複数の同一の微小球の部分集団を含む微小球の集団を供給し、該微小球が光学ファイバー束の独立したファイバー又はファイバーの群と光学的に結合するように、該微小球の集団に光学ファイバー束を供給し、該微小球の集団にアナライトを供給し、それにより光学シグナルを発生させ、該光学シグナルを検出し、該光学シグナルを組み合わせて、該酵素反応からの増幅されたシグナルを生成することにより、酵素反応から発生したシグナルを増幅する。
【解決手段】結合された酵素を有する複数の同一の微小球の部分集団を含む微小球の集団を供給し、該微小球が光学ファイバー束の独立したファイバー又はファイバーの群と光学的に結合するように、該微小球の集団に光学ファイバー束を供給し、該微小球の集団にアナライトを供給し、それにより光学シグナルを発生させ、該光学シグナルを検出し、該光学シグナルを組み合わせて、該酵素反応からの増幅されたシグナルを生成することにより、酵素反応から発生したシグナルを増幅する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ガス状および液体状アナライトの検出のための分析化学センサー配列の光学応答標示またはそのSN比を増加させる方法、とりわけ、酵素反応から発生したシグナルを増幅する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的分析測定のための光吸収色素との組合せての光学ファイバーおよび光学ファイバーストランドの使用は、特に過去10年間に迅速な発展を受けた。かかる目的および技術のための光学ファイバーの使用は、Milanovichら,「Novel Optical Fiber Techniques For Medical Application」、オプティックスおよびエレクトロオプティックスについてのSPIE第28回年次国際技術シンポジウム、第494巻、1980; Seitz,W.R.、「Chemical Sensors Based on Immobilized Indicators and Fiber Optics」 in C.R.C. Critical Reviews In Analytical Chemistry,第19巻、1988、135−173頁; Wolbeis,O.S.,「Fiber Optical Fluorosensors in Analytical Chemistry」 in Molecular Luminescence Spectroscopy,Methods and Application(S.G.Schulman編集),Wiley & Sons,New York(1988); Angel,S.M. Spectroscopy 2(4):38(1987); Waltら,「Chemical Sensors and Microinstrumentation」,ACS Symposium Series,第403巻,1989,252頁およびWolfibeis,O.S. Fiber Optic Chemical Sensors,編集CRC Press,Boca Rator,FL,1991,第2巻に記載されている。
【0003】
インビトロ/インビボセンサーで光学ファイバーを使用する場合、1以上の光吸収性色素がその末梢端近くに位置する。典型的には、適当な源からの光を用いて、ファイバーの近接端を通って、色素を照射する。光学ファイバーの長さに沿っての光伝搬;およびこの伝搬した光の一部は末梢端に存在し、色素によって吸収される。光吸収性色素は固定化してもしなくてもよく;光学ファイバー自体に直接的に付着してもしなくてもよく;注目する1以上のアナライトを含有する流体試料に懸濁してもしなくてもよく;第2の光学測定での引き続いての使用に保持可能であってもなくてもよい。一旦、光が色素によって吸収されたならば、種々の波長および強度のいくらかの光は戻り、同ファイバーまたは収集ファイバーいずれかを通って検出系に運ばれ、そこで、それは観察され、測定される。光学ファイバーによって運ばれた光および光吸収性色素の特性の間の相互作用は定性的および定量的測定双方の基礎である。異なる分析目的のファイバーストランドおよび光学ファイバーの束で通常は用いられる多くの異なるクラスの光吸収性色素の中には、「発蛍光体」と呼ばれる吸収後に光を発するより通常の組成物および「色原体」と呼ばれる、光としてそれを発するよりもむしろ、光を吸収し、内部で吸収された光を熱に変換するものがある。
【0004】
蛍光は、特定の波長で光(フォトン)を吸収し、次いでより長い波長の低エネルギーの光を発するいくつかの分子の能力に基づく物理的現象である。蛍光を発することができる物質は、多数の通常の特徴:1つの波長において光エネルギーを吸収する;励起されたエネルギー状態に達する;および引き続いてもう1つの光エネルギーで光を発する能力を有する。吸収および発光スペクトルは、各発蛍光体に個々のものであり、しばしば、わずかに重複する2つの別々の曲線としてグラフ表示される。同一蛍光発光スペクトルは、一般に、励起光の波長に拘わらず観察され、従って、励起光の波長およびエネルギーは限界内で変化することができ;しかし、発蛍光体によって発せられる光は常に同一発光スペクトルを提供する。最終的に、蛍光シグナルの強度は、発せられた光の量子収率として測定することができる。蛍光量子収率は、発蛍光体によって最初に吸収されたフォトンの数と比較した、発せられたフォトンの数の比率である。これらの特徴の各々に関するより詳細な情報については、以下の文献が推奨される:Lakowicz,J.R.,Priciples of Fluorescence Spectroscopy,Plenum Press,New York,1983; Freifelder,D.,Physical Biochemistry,第2版,W.H.Freeman and Company,New York,1982; 「Molecular Luminescence Spectroscopy Methods and Applications」:パート1”(S.G.Schulman編)in Chemical Analysis,第77巻,Wiley & Sons,Inc.,1986; The Theory of Luminescence, StepanovおよびGribkovskii,little Books,Ltd.,London,1968。
【0005】
定性的および定量的分析測定双方において、光学ファイバーセンサーを使用する最近の改良の多くは、光学ファイバーの末梢端に種々の光吸収色素を蒸着および/または固定化することが望ましいことに関する。このように、種々の異なる光学ファイバー化学センサーおよび方法が、pH測定、酸素検出、および二酸化炭素分析のごとき特異的分析測定および適用で報告されている。これらの発展は以下の文献によって例示されている:Freemanら,Anal Chem.53:98(1983); Lipptschら,Anal.Chem.Acta.205:1,(1988); Wolfbeisら,Anal.Chem.60:2028(1988); Jordanら,Anal.Chem.59:437(1987); Lubbersら,Sens.Actiators 1983; Munkholmら,Talanta 35:109(1988); Petersonら,Anal.Chem.58:1427(1986);Seitz,W.R.,Anal.Chem.56:16A−34A(1984); Petersonら,Anal.Chem.52:864(1980); Saariら,Anal.Chem.54:821(1982); Saariら,Anal.Chem.,55:667(1983); Zhujunら,Anal.Chem.Acta.160:47(1984); Schwabら,Anal.Chem.56:2199(1984); Wolfbeis,O.S.,「Fiber Optic Chemical Sensors」,編集CRC Press,Boca Raton,FL,1981,第2巻;およびPantano,P.,Walt,D.R.,Anal.Chem.,481A−487A,第67巻(1995)。
【0006】
より最近では、単一の独立したファイバーオプチックス束を持つ複数色素の使用を可能としたファイバーオプチックスセンサーが構築されている。Walt.らに対する米国特許第5,244,636号および第5,250,264号は、束の末梢端に対して複数の異なる色素を付着させる系を開示しており、これらの特許の各々の教示は本明細書の一部を構成する。開示された立体配置は、束の別々の光学ファイバーを、光学的に個々の色素を評価するのを可能とする。これは、2以上の色素からのシグナルを組み合わせた場合に生起する各色素からの復帰光における別々のシグナルをほどく問題を回避し、各色素は異なるアナライトに対して感受性であり、色素の発光スペクトルにおいて重要な重複がある。
【0007】
より最近では、ファイバーオプチックスセンサーは、臭いを区別し、定量するための半選択的化学的センサーおよびパターン認識スキームの配列で使用されてきた。かかるアプローチは、デバイスまたは系を検知するデザインにおいて生物学的嗅覚の原理を実行するのに有用であった。バイオミメトリーのこの分野において、種々の技術がセンサー変換メカニズムに適用されてきた。例えば、表面音響波、導電性ポリマー、金属酸化物センサー電界効果トランジスター(MOSFET)、ピエゾエレクトリックおよび水晶結晶ミクロバランスセンサー配列が追求されてきた。
【0008】
かかる技術は臭検知に対する種々の物理的および化学的現象を利用する発明アプローチを提供するが、かかるデバイスの効果を制限するこれらの方法に対しては多数の制限がある。まず、単一配列内およびセンサー配列間の素子−対−素子再現性は、典型的には、不満足であり、かくして、センサー−対−センサーからの再キャリブレーションおよびネットワーク保持を要する。第2に、これらの方法のほとんどは、比較的遅い応答時間を有し、頻繁に、臭の存在に対する応答に数分要する。第3に、かかる方法は比較的高い検出限界および低い感度を有し、典型的には10ppm未満の臭レベルでは機能しない。第4に、かかる技術を具体化するデバイスは、典型的には、比較的大きい固有のサイズを要し、それにより、遠隔検知適用で使用されるセンサー配列のミニチュア化を制限する。最後に、これらの方法によるマルチセンサー配列の構築は複雑で、費用がかかり退屈な調製およびよく規定された配列内の個々のセンサーの設置を含む。
【0009】
より最近では、これらの欠点の多くは、人工的鼻センサーデバイスおよび系におけるファイバーオプチックスセンサー配列の適用を介して克服された。Waltらに対する米国特許第5,320,814号および第5,512,490号(これらの特許の各々の教示は本明細書の一部を構成する)は、検知する受容体単位として機能し、スペクトル認識パターンを用いて種々の異なるアナライトおよびリガンドを検出することができる不均一な半分選択的薄いフイルムで形成されたファイバーオプチックス配列を開示する。この技術は、ファイバーオプチックス束における選択的光学ファイバーの末端をコートするポリマー色素組合せの配列を利用する蒸気検知系に適用されてきた。これらの発展は、さらにDicknsonら,Nature 382:697(1996)およびWhiteら,Anal.Chem.68:2191(1996)に記載されている。
【0010】
Waltらに対する4つの従前に引用されている特許の革新的特徴は、単一光学ファイバー束センサーの端部における複数の化学的機能の設置である。この立体配置は、典型的には小さい束を介して遠隔モニターできた分析的化学センサーを生じさせた。しかしながら、欠点は、センサーの端部における化学的機能性に関連する種々の化学を適用することにおける困難性であり;機能性は工程的連続様におけるセンサー端部に組み立てられた。これは遅いプロセスであり、実際には、数十の機能性が適用できたに過ぎない。
【0011】
Waltらに対する米国特許出願第08/818,199号(その教示は本明細書の一部を構成する)は、光学ファイバー配列センサーにおけるポリマー色素コーティング層に対する代替物としてのインフレートポリマー微小球の使用を開示する。このアプローチでは、ファイバーオプチックス束は標的アナライトの存在に対する異なる化学的および光学応答を有する種々の微小球ビーズセンサーを含有する色素−ポリマー微小球レイに対する代替物として働く。この発明の1つの革新的な特徴は、光学的応答性のコード化スキームを用いて各ビーズの機能性を同定する能力を保持しつつ異なる化学的機能性を担うビーズまたは微小球を一緒に混合することができるビーズベースの分析化学系を提供することにおけるものである。加えて、本発明は、別々のビーズまたは微小球が束内の区別されるファイバーまたはファイバーの群に光学カップリングさせることができる光学ファイバー束センサーを提供する。本発明の革新的特徴は別々の適用を有するが、一緒に実施すると、本発明は、化学センサー配列および化学的分析系に組み込むことができる、非常に多数の数千以上の別々の化学的センサー要素を支持することができる光学ファイバーセンサーを提供する。このアプローチは、多くの区別されるセンサータイプを含有する個々のセンサーおよび複雑なセンサー配列の迅速な製造および組み立てを提供する。また、該方法は、センサーのバッチおよびセンサー配列内の高い程度再現性および適合性を提供する。微小球において利用できる超微細サイジングのためさらなる利点が実現される。センサー配列の総じてのサイズが実質的にミリメーター下スケールまで低下させることができる。スケールにおけるこの減少は遠隔検知配列において特に有利である。
【0012】
Waltらに対する米国特許第08/818,199号に教示された化学的センサー配列における微小球センサー要素に適用する方法は多くの革新的特徴を有するが、この方法はある限界を有する。該方法は、センサー配列で使用されるビーズ部分集団のタイプおよび位置を同定するための複雑なマルチ工程ビーズコード化プロセスを要する。ビーズは、種々の比率で蛍光色素の組合せを使用することによってコード化される。コード化色素の選択は、励起光エネルギーへの暴露に際して異なる波長において光を発する色素に限定される。異なる比率の色素の組合せはビーズのコード化部分集団を提供するが、所与の色素ペアーまたは組合せでのビーズをコード化するのに利用できる色素比率の数は、ピーク重複からの発光スペクトルを混雑させるためかなり限定される。加えて、別々のレポーティング色素が、標的アナライトのためのユニークな特徴的な光学応答標示を得るのに必要である。かくして、コード化色素選択は、さらに、その発光波長が、アナライトの存在にユニークに応答するレポーティング色素と重複または干渉しない色素を選択することによって制限される。
【0013】
この発明のもう1つの限定的特徴は、ビーズをコード化するプロセスがセンサーおよびセンサー配列をキャリブレートし、追跡する一連の測定を要することである。コード化は、最初に、まずビーズに励起光エネルギーを照射し、所与のコード化色素比率を有するセンサー配列内で特異的ビーズ部分集団のタイプおよび位置をモニターし、記録することによって達成される。次に、レポーター色素の存在下で励起光エネルギーで配列を照射しつつ、配列をアナライトに暴露する。レポーター色素の存在下でアナライトに応答するビーズをセンサー配列上にモニターし、マップする。加えて、特徴的光学応答標示をライブラリーに貯蔵する。この工程は、レポーター色素と組み合わせた注目する各アナライトにつき反復する。一旦、全てのビーズ部分集団をコード化し、その応答特性をモニターし、記録すると、全センサー配列は、各アナライトについての貯蔵された光学応答標示を用いて各センサー要素にインデックスを付すことによって各アナライトを解読しなければならない。ビーズの個々の部分集団を解読するこのプロセスは、非常に多数の部分集団が配列において配置され、それにより、各配列に必要なトレイニング時間を増加させる場合にさらなる工程を要する。
【0014】
ビーズコード化、分子タッギングの利用、キャピラリーガスクロマトグラフィーおよび電子捕獲検出に対する他の別のアプローチは、Stillら,Acc.Chem.Res.29:155(1996)によって開示されている。しかしながら、かかる方法は範囲が限定されており、容易に分析可能な特異的化学的機能性および分子タッグを有する狭いクラスのビーズ材料にのみ適用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,320,814号
【特許文献2】米国特許第5,512,490号
【特許文献3】米国特許出願第08/818,199号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Milanovichら,「Novel Optical Fiber Techniques For Medical Application」、オプティックスおよびエレクトロオプティックスについてのSPIE第28回年次国際技術シンポジウム、第494巻、1980
【非特許文献2】Seitz,W.R.、「Chemical Sensors Based on Immobilized Indicators and Fiber Optics」 in C.R.C. Critical Reviews In Analytical Chemistry,第19巻、1988、135−173頁
【非特許文献3】Wolbeis,O.S.,「Fiber Optical Fluorosensors in Analytical Chemistry」 in Molecular Luminescence Spectroscopy,Methods and Application(S.G.Schulman編集),Wiley & Sons,New York(1988)
【非特許文献4】Angel,S.M. Spectroscopy 2(4):38(1987)
【非特許文献5】Waltら,「Chemical Sensors and Microinstrumentation」,ACS Symposium Series,第403巻,1989,252頁およびWolfibeis,O.S. Fiber Optic Chemical Sensors,編集CRC Press,Boca Rator,FL,1991,第2巻
【非特許文献6】Lakowicz,J.R.,Priciples of Fluorescence Spectroscopy,Plenum Press,New York,1983
【非特許文献7】Freifelder,D.,Physical Biochemistry,第2版,W.H.Freeman and Company,New York,1982
【非特許文献8】「Molecular Luminescence Spectroscopy Methods and Applications」:パート1”(S.G.Schulman編)in Chemical Analysis,第77巻,Wiley & Sons,Inc.,1986
【非特許文献9】The Theory of Luminescence, StepanovおよびGribkovskii,little Books,Ltd.,London,1968
【非特許文献10】Freemanら,Anal Chem.53:98(1983)
【非特許文献11】Lipptschら,Anal.Chem.Acta.205:1,(1988)
【非特許文献12】Wolfbeisら,Anal.Chem.60:2028(1988)
【非特許文献13】Jordanら,Anal.Chem.59:437(1987)
【非特許文献14】Lubbersら,Sens.Actiators 1983
【非特許文献15】Munkholmら,Talanta 35:109(1988)
【非特許文献16】Petersonら,Anal.Chem.58:1427(1986)
【非特許文献17】Seitz,W.R.,Anal.Chem.56:16A−34A(1984)
【非特許文献18】Petersonら,Anal.Chem.52:864(1980)
【非特許文献19】Saariら,Anal.Chem.54:821(1982)
【非特許文献20】Saariら,Anal.Chem.,55:667(1983)
【非特許文献21】Zhujunら,Anal.Chem.Acta.160:47(1984)
【非特許文献22】Schwabら,Anal.Chem.56:2199(1984)
【非特許文献23】Wolfbeis,O.S.,「Fiber Optic Chemical Sensors」,編集CRC Press,Boca Raton,FL,1981,第2巻
【非特許文献24】Pantano,P.,Walt,D.R.,Anal.Chem.,481A−487A,第67巻(1995)
【非特許文献25】Dicknsonら,Nature 382:697(1996)
【非特許文献26】Whiteら,Anal.Chem.68:2191(1996)
【非特許文献27】Stillら,Acc.Chem.Res.29:155(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、酵素反応から発生したシグナルを増幅する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、上記目的は、酵素反応から発生したシグナルを増幅する方法であって、結合された酵素を有する複数の同一の微小球の部分集団を含む微小球の集団を供給し、該微小球が光学ファイバー束の独立したファイバー又はファイバーの群と光学的に結合するように、該微小球の集団に光学ファイバー束を供給し、該微小球の集団にアナライトを供給し、それにより光学シグナルを発生させ、該光学シグナルを検出し、該光学シグナルを組み合わせて、該酵素反応からの増幅されたシグナルを生成することを含んでなる方法により達成することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様では、酵素は、官能基により部分集団の微小球に結合されている。好ましくは、官能基は、アミノ基又はカルボキシル基、若しくはスルフヒドリル基である。
【0020】
本発明の別の好ましい態様では、部分集団の微小球はリンカーを含み、このリンカーは官能基を有しており、好ましくは、二官能性リンカーである。
酵素は、直接的又は間接的に検出できるシグナルを発生する。酵素は、光学的に検出できるシグナルを発生させるためにさらに処理される副生成物を生成する。
【0021】
本発明の更に別の好ましい態様では、光学シグナルの組み合わせが生じる。光学シグナルは、少なくとも50の倍率で増幅される。
また、アナライト検出限界は、少なくとも100の倍率で減少される。
【0022】
部品の構築および組合せの種々の新規詳細を含めた本発明の前記および他の特徴ならびに他の利点は、ここに、添付の図面を参照してより具体的に記載し、請求の範囲で規定する。本発明を具体化する特別の方法およびデバイスは例示の目的で示され、本発明の限定ではないことが理解されよう。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく種々のおよび多数の態様で使用することができる。
【0023】
添付の図面において、参照文字は、異なる図面を通じて同一部品をいう。図面は必ずしもスケール通りではない。その代わりに、本発明の原理を説明する際に強調が為される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の自己解読微小球センサーを説明する模式的ダイアグラムである。
【図2】本発明のセンサー配列の調製、解読およびそれへの微小球の取り込みのプロセスフローダイアグラムである。
【図3】本発明のファイバーオプチックスセンサー配列における自己コード化された微小球部分集団の調製および設定を説明する模式的プロセスダイアグラムである。
【図4】本発明の方法によるマイクロウエルにおける微小球のファイバーオプチックス束および設置でのマイクロウエル形成を説明するプロセスフローダイアグラムである。
【図5】マイクロウエルキャビティーに挿入されたファイバーオプチックス束およびマイクロウエルの末梢端に形成されたマイクロウエルを説明する顕微鏡写真である。
【図6】タッピングおよび空気パルスによる撹乱前におよびそれに引き続いてのその対応するマイクロウエルにおける微小球の配列を示す顕微鏡写真である(微小球キャビティーにおける微小球の静電的結合を示す)。
【図7】本発明のファイバーオプチックスセンサーおよび関連する器具および制御系の模式的ダイアグラムである。
【図8】実施例7ないし17の光学測定で使用される実験装置を説明する模式的ダイアグラムである。
【図9】トルエン蒸気への暴露に際してナイルレッド色素を侵潤させた多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図10】メタノール蒸気への暴露に際してナイルレッド色素を侵潤させた多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図11】トルエンおよびメタノール蒸気に対する暴露に際してナイルレッド色素を侵潤したPS802コート多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図12】トルエンおよびメタノール蒸気に対する暴露に際してナイルレッド色素を侵潤したPDPOコート多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図13】酢酸エチル蒸気への暴露に際してナイルレッド色素を侵潤させた多孔性シリカビーズの特徴的光学応答標示を示す図である。
【図14】メタノール蒸気のナイルレッド侵潤PMSビーズ部分集団測定においてシグナル−ノイズ比率を減少させるための光学応答シグナル合計の革新を示す図である。
【図15】メタノール蒸気のPMSビーズ部分集団測定におけるシグナル増強につき合計する光学応答シグナルの革新を示す図である。
【図16】トルエンおよびメタノール蒸気への暴露に際して、ナイルレッド色素を侵潤させた2つのPS802コート多孔性シリカビーズの特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図17】本発明の自己コード化されたファイバーオプチックスセンサー配列におけるナイルレッド侵潤多孔性シリカおよびPMSビーズ部分集団を解読するのに使用されるメタノール蒸気に対する特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図18】本発明の自己コード化されたファイバーオプチックスセンサー配列におけるn−プロパノール蒸気に対するナイルレッド侵潤多孔性シリカおよびPMSビーズ部分集団の特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図19】本発明の自己解読されたファイバーオプチックスセンサー配列におけるトルエン蒸気に対するナイルレッド侵潤多孔性シリカおよびPMSビーズ部分集団の特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図20】トルエン蒸気に対する暴露に際しての、PS802コート多孔性シリカ、ポリメチルスチレンおよびポリメチルスチレン/ジビニルベンゼンビーズ部分集団のビーズ膨潤応答の差異を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、基体の表面の独立した位置の微小球の集団を含む分析化学センサー配列を含む分析化学系を提供する。微小球集団内には別々の微小球部分集団があり、その各々は、ある場合には標的アナライトであり得る参照アナライトの存在下で励起光エネルギーによって照射されると、特徴的光学応答標示を供する。部分集団はランダムに一緒に混合されているが、各微小球の同一性および位置は、参照アナライトの存在下で励起光エネルギーによって照射されると、特徴的光学応答標示を介して測定される。
【0026】
これは、配列の解読、すなわち、配列上の微小球の各部分集団の位置の同定を非常にシンプルに進行させる。好ましい態様において、微小球は、参照アナライト、一般的には蒸気のごとき流体に対して特徴的な、すなわち、ユニークな光学応答標示を呈する1以上のレポーター色素でコード化される。かくして、この態様において、参照アナライトへの全配列の暴露は、各部分集団の各微小球の位置の同定を可能とする。その結果、既知のアナライトに対して全センサー配列の応答を比較することによって、配列の個々のセンサー要素は、便宜には、1つのシンプルな測定において同時に解読される。本発明の分析化学センサー配列は、より複雑なマルチ工程コード化系の必要性を排除する。
【0027】
次いで、センサー配列を用いて、例えば、微小球がオリゴヌクレオチドまたは別法として、化学官能基のごとき生活性剤を含む場合、標的アナライト、例えば、実質的に相補的標識オリゴヌクレオチドまたは注目する標的アナライトとの相互作用または結合に際して、微小球の光学特徴の変化を探すことによって、標的アナライトの存在を検出することができる。当業者に認識されるごとく、これは、一般的に光学シグナル変化の使用を介して、種々の方法で行うことができる。この変化は、多くの異なるメカニズムを介して起こり得る。数個の例は、微小球への色素タグドアナライトの結合、微小球上または微小球近くの色素種の生成、存在する色素種の破壊、微小球上の色素とのアナライトの相互作用に際しての光学特徴の変化、またはいずれかの他の光学的応答性の現象を含む。かくして、一旦オリゴヌクレオチドプローブの各種、または特定の化学官能性を有する微小球の位置が同定されたならば、次いで、配列を用いて、好ましくは微小球上の生活性剤または化学的官能性と特異的に会合する未知の存在を検出することができる。
【0028】
別の好ましい態様において、標的アナライトを標識しない場合、配列中の各要素の光学応答を、種々のアナライトに対する特徴的光学応答標示は従前に測定され記録されているその対応する微小球部分集団タイプのための特徴的光学応答標示のライブラリーと比較することができ、未知のものの同一性は測定することができるか、あるいはセンサー配列を訓練して測定された応答を、次いで応答標示のライブラリーに添加される特定のアナライトと関連付ける。
【0029】
本発明は、分析化学センサー配列の革新を具体化することによって、現在の技術のある種の制限を克服し、ここに、特異的微小球部分集団組成物とレポーター色素との相互作用によって特徴的光学応答標示が生産される。本発明の分析化学センサー配列において、標的アナライトに対する応答シグナルは、標的アナライトに対する応答標示、および配列内の全センサー配列および部分集団に対するコード化シグナル双方として働く。かくして、配列の解読は、標的アナライトの配列応答測定の間に1工程で達成され、標的アナライトを同定するのに使用された応答そのものを利用する。かくして、微小球コード化は、標的アナライトに対する微小球部分集団応答の性質によって配列に取り込まれる。
【0030】
本発明において、部分集団の各微小球色素組合せは、液体または蒸気のごとき所与の流体に暴露されると、特徴的光学応答標示を有する。本発明の分析化学センサーは配列は自己コード化センサー配列であり、この概念は、特異的微小球マトリックス材料と組み合わせて色素のユニークな応答標示によって供される。かくして、センサー配列にランダムに分布した微小球部分集団は容易に同定でき、センサー配列を既知のテスト流体に暴露し、単に得られた光学応答標示を各微小球部分集団で得られたものにマッチングさせることによって配列中に設置後に迅速に同定し、位置決定することができる。このアプローチでは、微小球は自己コード化され、全センサー配列の応答標示は迅速に測定され、標的アナライトの測定のために貯蔵される。本発明の方法は、独立した光学応答標示を有する数千のセンサーを含有するセンサー配列の適用において特に有用である。
【0031】
本発明のさらなる利点は、それが、生活性剤(すなわち、核酸および抗体のごとき化合物)の合成が配列上のそれらの位置から離されることを可能とする、すなわち、生活性剤は微小球上で合成でき、次いで、微小球はパターン化された表面にランダムに分布する。参照アナライトに対する既知の応答を有する色素を存在させることによって、自己コード化されるので、これは、配列が後に「解読」できる、すなわち、配列が作成された後、配列上の個々のサイトの位置とその特定のサイトにおける微小球または生活性剤との相関を作成することができることを意味する。これは、微小球が配列上にランダムに分布でき、先行技術のイン・サイチュ合成またはスポッティング技術いずれかと比較して、迅速で安価なプロセスである。一旦配列に微小球を負荷すれば、配列は解読できるか、あるいは使用でき、後記にてより詳細に概説するごとく、テスト後に十分にまたは部分的に解読される。
【0032】
本発明の好ましい態様において、超微細な多孔性のミクロビーズまたは微小球が個々のセンサーとして利用される。ミクロン−スケールのセンサーの利用は改良されたセンサー応答および感度を提供する。センサー寸法の減少は、拡散の長さおよび個々のセンサーとアナライトとの相互作用の時間を実質的に減少させ、センサー感度を増強させ、検出限界を低下させつつ、センサー応答をかなり短くする。
【0033】
本発明のもう1つの態様において、センサー配列は、光学ファイバー束の末梢端に配されたビーズまたは微小球の部分集団よりなり、ここに、別々のビーズまたは微小球は、束内の独立したファイバーまたはファイバーの群に光学的に結合させることができる。典型的には、かかるファイバーオプチックス束は数千の独立したファイバーよりなるので、かくして、本発明は、励起光エネルギーによって照射されつつアナライトに暴露された場合に各々が特徴的光学応答を有する、非常に多数の、数千の独立した種々の部分集団のセンサー配列レメントを支持できる光学ファイバーセンサーを提供する。
【0034】
1つの好ましい態様において、ファイバーオプチックス束基体の末梢端は化学的にエッチングされて、独立したファイバーの端部においてキャビティーまたはマイクロウエルを生じさせる。好ましい態様において、ビーズの各1つは、束の光学ファイバーの末端で形成される別々のマイクロウエル内に位置する。これらのマイクロウエルは光学ファイバーのコアをクラッッドに関して非等方的にエッチングすることによって形成される。得られたエッチングされたキャビティーは、個々のミクロビーズセンサーを収容するための、および個々のビーズセンサーとファイバー束における独立した光学ファイバーとの光学的カップリングを提供するための寸法とされる。典型的なファイバーオプチックス束は数千の独立したファイバーを含有するので、この態様は、センサー配列中の数千のセンサーの個々の光学的カップリングを提供し、それにより、配列内の各ビーズ部分集団に対する非常に多数の独立したセンサー測定を提供する。
【0035】
利用できる非常に多数のビーズセンサー部分集団および各部分集団内の対応して非常に多数のセンサー要素のため、本発明の重要な革新は、単一センサー配列における数千の独立したセンサー応答測定を提供することにある。これは、各センサー配列ビーズ部分集団内のセンサービーズから取られた多数の独立した測定の特徴的光学応答標示の合計および増幅を提供することによって、本発明のもう1つの有意な革新を可能とする。このアプローチは、そのいずれもそれ自体特別に感受性ではない上皮層で見いだされるほとんど数千の異なる受容体細胞タイプのグルーピングの各々中の数千の受容体細胞からの組み合わされたシグナルが臭に対する高度に増幅された検知応答に導く、ヒト嗅覚の現実の挙動を直接的に模倣する[J.S.Kauer,Trends Neurosci.14:79−95(1991)]。
【0036】
かくして、本発明は、ヒト嗅覚系で見いだされる革新的臭増幅プロセスを具体化して、非常に多数のセンサー配列要素の低レベル応答を合計することによって、アナライトに対するセンサー配列感度を有意に増強させる。低蒸気濃度においていくつかの微小球からの応答を合計することによって、シグナル−ノイズ比の実質的な改良が達成され、10以上の因子を超える。この革新は大きさのオーダにわたってセンサー配列の検出限界の低下に導く。本発明のセンサー配列によって供される感度の増強は、一般に、合計に利用可能な多数の独立したセンサー微小球応答の平方根に直接的に比例することが知られている。かかる増強にて、ppmに近づく検出限界が達成できる。
【0037】
好ましい態様において、センサー微小球は、好ましくは微小球内に浸透したまたは捕獲されたレポーター色素を用いて自己コード化される。レポーター色素は、色原体または発蛍光体であり得るが、好ましくは、特徴的に強い光学シグナルのため、解読に対して良好なシグナル−ノイズを提供する蛍光色素である。必要ではないが、自己コード化は、特徴的かつ区別つれる発光を有する2以上のレポーティング色素を利用し、励起光エネルギーでの照射に際して、ピーク強度比を測定することによって達成することができる。
【0038】
もう1つの態様において、本発明は、所定の化学的特異性で設計された化学的センサー配列に関する。この態様において、所望のサイトを微小球の表面に付着させることによって、さらなる化学的機能性を各センサー部分集団に取り込むことができる。もう1つの態様において、センサー配列は束における、束上のまたは束近くの化学的官能性を担う微小球の集団を有する。標的アナライトと相互作用する個々のまたは多数の微小球に関連した光学標示変化をモニターする能力は、そこで、イメージプロセッシング技術を用いて、使用者により手動で、または自動で分析が行われる近接端への伝達のため、別々の光学ファイバーまたはファイバーオプチックス束のファイバーの群にこれらの標示変化を光学的にカップリングさせることによって提供される。
【0039】
各センサーは、それがマイクロウエル内の微小球の部分集団の異なる分布を有する限り、異なるが、陽性の光学応答または標示を呈する微小球のみが解読を要する注目する標的アナライトに変化する。従って、センサー製造よりもむしろ分析に負担がかかる。さらに、配列中の微小球およびファイバーは微小球であり得るので、シグナル発生から生起する蛍光領域は極端に均一であり、商業的に入手可能な顕微鏡分析ソウトウエアを用いて自動的に分析することができる。かかるイメージプロセッシングソウトウエアは、異なるスペクトル領域を自動的に規定し、数秒内に各領域内のセグメントの数を計数することができる。
【0040】
従って、本発明は、個々のサイトを含む表面を持つ少なくとも第1の基体を含む配列組成物を提供する。ここに「配列」とは、配列様式での、複数の生活性剤または化学的官能基を意味し;配列のサイズは、組成物および配列の未来敵使用に依存するであろう。約2つの異なる生活性剤(すなわち、異なる微小球)から数100万の剤を含有する配列を作成することができ、非常に大きなファイバーオプチックス配列が可能である。他の化学的官能性を含む同様の配列も構築することができる。一般に、配列は、微小球および基体のサイズ、ならびに配列の目的使用に応じて、2から10億以上の生活性剤または化学的官能性もと多くを含み、かくして、非常に高い密度、高い密度、中程度の密度、低密度および非常に低い密度の配列を作成することができる。非常に高密度の配列についての好ましい範囲は、約10,000,000ないし約2,000,000,000要素であり、約100,000,000ないし約1,000,000,000が好ましい。高密度配列は約10,000ないし約10,000,000要素の範囲であり、約1,000,000ないし約5,000,000が特に好ましい。約10,000ないし約50,000範囲の中程度の密度配列が好ましくは、約20,000ないし約30,000が特に好ましい。低密度配列は一般に10,000要素未満であり、約1,000ないし約5,000が好ましい。非常に低密度の配列は1,000要素未満であり、約10ないし約1000が好ましくは、約100ないし約500が特に好ましい。いくつかの態様において、本発明の組成物は配列様式でなくてもよく;すなわち、ある態様においては、単一の生活性剤を含む組成物は同様に作成することができる。加えて、ある配列においては、複数の基体を異なるまたは同一の組成で使用することができる。かくして、例えば、大きな配列はより小さい複数の基体を含むことができる。
【0041】
加えて、本組成物の1つの利点は、特にファイバーオプチックス技術を介して、極端に高い密度の配列を作成できることである。かくして、例えば、200nmのビーズを用いることができ、非常に小さなファイバーが知られているので、1mm2ファイバーオプチックス束において250,000の異なるファイバーおよびビーズもと多くを有することが可能であり、得られる0.5cm2当たり15,000,000より大の個々のビーズおよびファイバーの密度である。
【0042】
組成物は基体を含む。「基体」または「固体支持体」または本明細書中で他の文法的に同等のものは、微小球の付着または会合に適した区別される個々のサイトを含有するように修飾でき、少なくとも1つの検出方法に適用可能ないずれの材料も意味する。当業者に認識されるように、可能な基体の数は非常に多く、限定されるものではないが、ガラスおよび修飾され機能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン等を含む)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリカ−ベースの材料(ケイ素および修飾されたケイ素を含む)、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光学ファイバー束、および種々の他のポリマーを含む。一般に、基体は光学検出を可能とし、認識できるように蛍光を発しない。
【0043】
一般に、基体は平坦または平面であるが、当業者に認識されるように、他の立体配置の基体も同様に使用することができる;例えば、微小球への試料アクセスを可能としかるプラスチックの多孔性ブロツクに微小球を包埋させ、かつ検出用の共焦点顕微鏡を用いて、三次元立体配置を用いることができる。同様に、微小球は、フロースルー試料分析のためにチューブの表面内部に置いて、試料容量を最小化することができる。好ましい基体は、後記する光学線束、およびガラス、ポリスチレンおよび他のプラスチックおよびアクリルのごとき平面基体を含む。
【0044】
基体の少なくとも1つの表面は、後の微小球の会合のために区別される個々のサイトを含有するように修飾される。これらのサイトは、微小球がウエル中にあるように、物理的に改変されたサイト、すなわち、微小球を保持できる基体中のウエルまたは小さな窪みのごとき物理的立体配置、または他の力(磁気的または圧縮的)、化学的に官能化されたサイトのごとき化学的に改変されたまたは活性なサイト、静電気的に改変されたサイト、疎水性/親水的に官能化されたサイト、接着スポット等の使用を含むことができる。
【0045】
該サイトはパターン、すなわち、規則的なデザインまたは立体配置であってよく、またはランダムに分布してもよい。好ましい態様は、サイトがX−Y座標面にアドレスすることができるように規則的パターンのサイトを利用する。この意味での「パターン」は反復単位セル、好ましくは、基体上で微小球の高密度を可能とするものを含む。しかしながら、これらのサイトは独立したサイトでなくてもよい。すなわち、例えば、いずれかの位置の微小球の付着を可能とする接着性または化学的官能性の均一な表面を使用することができる。すなわち、基体の表面は修飾されて、それらのサイトが他のサイトと隣接するか隣接しないかに拘わらず、個々のサイトにおける微小球の付着を可能とする。かくして、基体の表面は、単一関連微小球を有することができるにすぎない独立したサイトが形成されるように修飾することができ、基体の表面は修飾され、微小球はいずれの個所にも降りることができるが、それらは独立したサイトで終了する。
【0046】
好ましい態様において、基体の表面はウエル、すなわち、基体の表面中の窪みを含有するように修飾される。これは、限定されるものではないが、フォトリソグラティー、スタンピング技術、成型技術およびミクロエッチングを含めた種々の技術を用いて当該分野で知られているようになすことができる。当業者に認識されるように、使用される技術は基体の組成および形状に依存する。
【0047】
好ましい態様においては、物理的改変を基体の表面に行ってサイトを生じさせることができる。好ましい態様において、基体はファイバーオプチックス束であり、基体の表面はファイバー束の末端である。この態様において、ウエルは個々のファイバーを含むファイバーオプチックス束の末端または末梢端で作成される。この態様において、個々のファイバーのコアは、小さなウエルまたは窪みがファイバーの一端で形成されるように、クラッドに対してエッチングされる。ウエルの所要の深さはウエルに添加されるべき微小球、例えばビーズのサイズに依存するであろう。
【0048】
一般的には、この態様においては、微小球はウエル中で共有結合していないが、ウエルは一般的には後記するごとくさらに化学的に官能化することができ、架橋剤を用い、または物理的バリアーを用いることができ、すなわち、微小球上のフイルムまたは膜である。
【0049】
好ましい態様において、基体の表面は、本発明の微小球を基体上の独立したサイトまたは位置に共有結合的にまたは非共有結合的に付着させるのに用いることができる化学的に修飾されたサイトを含有するように修飾される。この意味において「化学的に修飾されたサイト」は、限定されるものではないが、一般的には対応する反応性官能基を含有する、微小球を共有結合的に付着させるのに使用できる、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基を含めた化学的官能基のパターンの付加;(接着剤の付加または接着剤の直接的付加のための先行化学的機能化によって)微小球に結合するのに使用することができる接着剤のパターンの付加;微小球の静電的付着のための、すなわち、微小球がサイトとは反対の荷電基を含む場合の、(化学的官能性化と同様の)荷電基のパターンの付加;実験条件下で同様に疎水性または親水性の微小球の付加の結果、ヒドロ親和性ベースでサイトへの微小球の会合となるように、サイトを差分的に疎水性または親水性とする化学的官能基のパターンの付加を含む。例えば、水性系における疎水性ビーズでの疎水性サイトの使用は、優先的にサイトへのビーズの会合を駆動する。前記で概説したごとく、この意味での「パターン」は、独立したサイトにおけるビーズの付着を可能とする表面の均一な処理、ならびに独立したサイトが得られる表面の処理の使用を含む。当業者に認識されるように、これは、種々の方法で達成することができる。
【0050】
本発明の組成物は、さらに、微小球の集団を含む。ここに「集団」とは、配列につき前記で概説した複数の微小球を意味する。集団内には別々の部分集団があり、これは、単一の微小球または複数の同一の微小球であり得る。すなわち、いくつかの態様では、後記でより詳細に概説するごとく、配列は各生活性剤につき単一の微小球のみを含有することができる;好ましい態様は複数の各タイプの微小球を利用する。
【0051】
本明細書中の「微小球」または「ビーズ」または「パターン」または文法的同等体は小さな区別される粒子を意味する。ビーズの組成物は、生活性剤のクラスおよび合成の方法に依存して、変化するであろう。適当なビーズ組成物は、ペプチド、核酸、および限定されるものではないが、プラスチック、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル、炭素、黒鉛、二酸化チタン、ラテックスまたはセファロース(Sepharose)のごとき架橋デキストラン、セルロース、ナイロン、架橋ミセルおよびテフロンを含めた有機サイトを用いることができる。
【0052】
合成ビーズは、種々の縮合またはビニル前駆体モノマーを重合または共重合することによって、または組み合わせたポリマー合成によって、製造することができる。かかるポリマーは、リン酸トリトリル(TTP)、リン酸トリフェニル(TTP)またはフタル酸ジブチル(DBP)のごとき可塑剤の添加によってさらに修飾することができる。センサー配列部分集団で使用される特に有用な色素解読ビーズ候補は、種々の蒸気アナライトへの暴露に際しての膨潤、その化学的構造による特徴的極性の差異、または種々の蒸気アナライトでの特徴的な化学的吸収応答いずれかを呈するポリマーおよびコポリマー材料である。ビーズ材料として候補ポリマーをプレスクリーニングし、所望の膨潤に基づいて候補を評価することにおいて、2つの特に有用な文献はR.A.McGillら,Chemtch,9月24日,1996,27−37頁およびJ.W.Grateら,Anal.Chem.,68:913−7(1996)である。
【0053】
種々のビーズ化学を非常に多様なセンサービーズ部分集団を製造するのに利用することができる。例えば、以下の組成物は候補ビーズ材料であることが判明している:シリカ、ポリ(エチレングリコール)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、PDPO[ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)]、PS078.5[トリエトキシシリル−修飾ポリブタジエン(トルエン中50%)]、PS078.8[トルエン中ジエトキシメチルシリル−修飾ポリブタジエン]、CPS2067[アクリルオキシプロピルメチル−シクロシロキサン]、PS802[(80−85%)ジメチル−(15−20%)(アクリルオキシプロピル)メチルシロキサンコポリマー]、PS901.5ポリ(アクリルオキシプロピル−メチル)シロキサン]、PS851[(97−98%)ジメチル−(2−3%)(メタクリルオキシプロピル)メチルシロキサンコポリマー]、PABS[ポリ(アクリロニトリル−ブチジエン−スチレン)]、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル75:25)、アクリルオキシプロピルメチルシロキサン−ジメチルシランコポリマー、メチルスチレン、ポリスチレン、アクリルポリマー、およびポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)。C8、C18およびフェニルヘキシルを含むビーズのごとき、フェノメネックスカラムで使用される種々の結合相に適合した商業的に入手可能なシリカビーズのごとき他の吸着剤はセンサービーズマトリックスとして有用である。アルミナおよびゼオライトのごとき無機材料も利用することができる。識別可能で適切な膨潤挙動、極性および化学的吸収特性を有するポリマーおよびコポリマーもまたビーズ候補材料として予測される。特に有用なビーズ候補材料は、出典明示して本明細書の一部とみなすWaltらに対する米国特許第5,512,490号の表7、表8および表10にリストされているラポリマー、コポリマー、およびポリマー化モノマーを含む。別の態様において、いずれかの合成されたまたは商業的に入手可能なビーズ材料は、さらに、表面処理またはコーティングいずれかを適用して特徴的な光学応答標示を修飾することによって修飾することができる。例えば、多孔性シリカビーズを利用する場合、N−オクタデシルトリエトキシシランまたは3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートをシラン化処理として適用することができる。一般に、Bangs Laboratories,Fishers INからの「Microsphere Detection Guide」はビーズ材料の選択において助けとなるガイドである。
【0054】
特定のセンサー配列においてセンサー配列要素を形成するのに使用される部分集団の選択は、主として、センサーの分析目的および検出で標的化される特異的アナライトに基づいて測定される。典型的には、微小球部分集団は、標的アナライトの存在下で励起光エネルギーによって照射する場合、その特徴的光学応答標示の区別できる差異に基づいて選択される。自己コード化センサー配列を製造するにおいて、レポーティング色素を浸透させ、参照アナライトおよび標的アナライト双方の存在下で、励起光エネルギーによって照射した場合、特徴的光学応答標示を有する微小球部分集団が選択される。かくして、センサー配列で好ましい微小球材料は、励起光エネルギーによって照射した場合にアナライトの存在下で特徴的光学応答標示を生じる微小球部分集団における物理的または化学的差異に基づいてプレ選択される。
【0055】
ビーズ材料極性、化学的構造、化学的官能性、微小球表面積、微小球孔サイズ、微小球膨潤特徴、または化学的吸着挙動のごとき特徴は、別々にまたは組み合わせて、所与の微小球部分集団の特徴的光学応答標示に寄与する。1つの態様において、蒸気および液体アナライトを含めた流体に浸透するまたは半透性のビーズ材料が好ましい。もう1つの態様において、蒸気または液体アナライトのごとき流体と接触するに際して膨潤するビーズ材料が好ましい。一般に、ユニークな極性、構造、孔サイズ、表面積、官能性または吸着特徴を有するビーズ材料は本発明のセンサービーズ材料で特に有用である。
【0056】
微小球は、特徴的ビーズマトリックス材料と組み合わせて、ビーズを同定するのに使用でき、かくして、参照アナライトへの暴露に際して、付着された生活性剤を同定するのに使用できる光学応答標示を提供するレポーティング色素を含む。すなわち、微小球の部分集団(すなわち、各センサー要素)は、微小球のその部分集団のユニークな生活性剤または化学的機能性を同定するのに使用することができるユニークな光学応答標示または光学タグを含む;ユニークな特徴的光学応答標示を含むビーズは、異なる光学応答標示を持つ他の位置におけるビーズから区別することができる。ここに概説するごとく、各生活性剤は、その生活性剤を含むいずれの微小球も参照アナライトまたは流体への暴露に際して特徴に基づいて同定可能であるように、会合したユニークな光学応答標示を有するであろう。後記にてより詳細に概説するごとく、例えば、もう1つのレベルの同定を用いる場合、例えば、異なるサイズのビーズを用いる場合、または配列に異なるバッチのビーズを順次負荷する場合、光学応答標示を再使用または複製することができる。
【0057】
化学的色素インジケーターの選択は、本発明のファイバーオプチックスセンサー配列系のデザインにとり同等に重要である。好ましい態様において(図1参照)、少なくとも1つの色素11を微小球10に取り込む。好ましい態様において、この色素11は、センサー配列中の微小球部分集団位置を同定するための解読色素、および注目する標的アナライトを検出するためのレポーティング色素双方として作用する。別の態様において、2以上の色素をコード化レポーター色素として利用することができる。好ましい態様において、少なくとも1つの色素を解読色素として用い、レポーティング色素としての分析の間に別の色素を添加する。2以上のコード化色素を使用する1つの態様において、色素対に対するピーク強度の比率は、微小球部分集団をコード化するのに使用することができ、別のレポーター色素を分析の間に付加することができる。別の態様において、アクリロイルフルオレセインのごとき共役色素を利用することができ、ここに、色素を直接的に合成ポリマーまたはコポリマービーズ材料に配合するのが望ましい。
【0058】
レポーター色素11は色原体タイプまたは発蛍光体タイプのいずれかであり得るが、蛍光色素が好ましい。何故ならば、蛍光シグナルの強度は解読する場合に良好なシグナル−ノイズ比率を提供するからである。最も好ましい態様では、極性−感受性色素またはソルバトクロミック色素が利用される。ソルバトクロミック色素は、その吸収または発光スペクトルがその周囲の環境の極性に対して感受性であり、それによって改変される。典型的には、これらの色素は局所的極性の変化のためピンク色発光波長を呈する。かかる波長シフトを引き起こす極性変化は、特定のセンサー微小球部分集団で使用される微小球マトリックス、または標的アナライトの存在によって導入することができる。極性の変化は、ビーズタイプの部分集団をコード化するのに、および特異的標的アナライトを検出するのに有用な特徴的光学応答標示を生じる。1つの好ましいソルバトクロミック色素、ナイルレッド(Eastman Kodak,Rochester,NY)は、局所的環境極性の変化に伴ってその発光波長ピークにおいて大きなシフトを呈する。加えて、ナイルレッドは広範囲の溶媒に可溶性であり、光化学的に安定であり、比較的強い蛍光ピークを有する。当該分野で通常に知られており、本発明で色素として使用することができるさらなる色素はWaltらに対する米国特許第5,512,490号で見いだすことができ、そのうち表3、表4、表5、表6および表11は本明細書の一部を構成する。
【0059】
微小球検知要素の異なる部分集団は、種々の組成のポリマーマトリックスにナイルレッドを一体化させることによって本発明のセンサー配列で製造することができる。種々の極性、疎水性、孔サイズ、柔軟性および膨潤傾向の異なるポリマーマトリックスから作成した微小球部分集団にナイルレッドを配合することによって、個々の流体の分子と異なって反応するセンサー微小球のユニークな部分集団が生産され、有機流体に暴露した場合に異なる蛍光応答を生じる。この結果、種々のアナライトに暴露した場合に特徴的光学応答標示を有する各微小球部分集団がもたらされる。
【0060】
好ましい態様において、色素は微小球の表面に共有結合される。これは、微小球の表面上の官能基を用い、生活性剤の付着につき後記で一般的に概説したごとくになすことができる。当業者に認識されるごとく、これらの付着は色素に対する効果を最小化するためになされる。
【0061】
好ましい態様において、色素は、一般的には、ビーズマトリックスまたはビーズの孔に色素を捕獲することによってビーズと共有結合的に会合させる。
【0062】
1つの態様において、色素は微小球よりはむしろ生活性剤に付加されるが、これは一般的には好ましくはない。
【0063】
図2は、センサー微小球部分集団およびセンサー微小球配列の調製を説明するプロセスダイアグラムである。工程50において、種々の微小球部分集団の懸濁液は商業的に入手可能なビーズ材料または好ましいポリマー材料から作成された合成ビーズ材料から個々に調製される。この工程では、ビーズはプレ洗浄され、実施例2および実施例3で使用されるシラン化溶液のごときカップリング剤で表面処理され、あるいは実施例6で使用されるTTP、TPPまたはDBPのごとき可塑剤で処理される。微小球部分集団を調製するにおいて、各ビーズグルーピングは、典型的には、分散を強化するための界面活性剤または分散剤の添加を含み得る適当な溶媒に分散される。例えば、Tween 20(J.T.Baker,Cleveland,OH)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートは界面活性剤として特に有用であることが判明している。
【0064】
色素溶液は、引き続いての同定のために微小球部分集団の各々をタギングまたはコード化し、後の解読工程でセンサー配列において部分集団にインデックスを付すために調製される51。最も好ましい態様において、単一の色素は、色素をコード化するセンサー微小球部分集団として、および標的アナライトの存在を検出するのに使用されるアナライトレポーティング色素として働く。もう1つの態様において、色素はセンサービーズ部分集団をコード化するためにだけ働き、さらなる色素は標的アナライトの検出用レポーター色素として働く。1つの態様において、2以上の色素が微小球部分集団に配合され、色素対のピーク強度比をセンサー微小球部分集団をコード化するために使用することができる。典型的には、単一のソルバトクロミック色素をコード化色素およびレポーティング色素として使用する。好ましい態様においては、ナイルレッド色素(Aldrich,Milwaukee,WI)を用いる。各微小球部分集団へ色素を配合するには、工程50で調製されたビーズの懸濁液を、工程51で調製された色素溶液と工程52で混合する。好ましくは、工程52においては、ビーズまたは微小球は、微小球を膨潤させる有機溶媒中に溶解させた色素を含む色素溶液中に入れる。工程54においては、ビーズを洗浄し、遠心しまたは濾過して、過剰の色素を除去する。微小球は、典型的には、水、メタノール、または微小球を膨潤させないいずれかの適当な溶媒中で洗浄し、ここに、色素は依然として可溶性である。これは、微小球から色素をすすぐことなく、残存する色素をすすぎ去ることを可能とする。別の態様において、過剰の色素の除去に続き、化学的サイトまたは官能基をビーズ表面に付着させることができる。
【0065】
ビーズは球形である必要は無く;不規則な粒子を用いることもできる。多孔性および非多孔性ビーズを利用することができるが、レポーター色素を浸透させ、レポーター色素、生活性剤等の付着のための表面積の増加のため、微小球センサーの応答性および感受性を増強させるのに好ましい。ビーズサイズは、ナノメーター、すなわち100nmからミリメーター、すなわち1mmの範囲であり、約0.2ミクロンないし約200ミクロンのビーズが好ましく、約0.5ないし約5ミクロンが特に好ましいが、いくつかの態様では、より小さいビーズを用いることができる。図1は、ビーズ孔12内に捕獲されたレポーティング色素11を含む典型的なビーズまたは微小球センサー10の構成を説明する。
【0066】
本発明の鍵となる構成は、ビーズがアッセイの間に移動しないように、基体の表面の独立したサイトにおけるビーズの会合または付着を可能とする基体/ビーズ対合の使用であることに注意すべきである。
【0067】
本発明は、ビーズベースの分析化学系を具体化し、ここに、ビーズまたは微小球は種々の無機または有機材料から製造され、ここに、各材料は、励起光エネルギーで照射しつつ、参照アナライトへの暴露に際して、センサー配列内の特別のビーズの同一性および位置を保証するのを可能とする特徴的一時的光学応答標示によって同定することができる。本発明は、励起光エネルギーのいずれかの源の利用を提供し、特異的波長に限定されない。励起光の主要な要件は、それが、所与のビーズ組成物に会合したレポーター色素の照射に際して、特徴的波長の発光された光を生じることである。
【0068】
好ましい態様において、微小球は、さらに、生活性剤を含む。「候補生活性剤」または「生活性剤」または「化学的機能性」または「結合リガンド」とは、本明細書で用いるごとく、本発明の微小球に付着させることができるいずれかの分子、例えば、タンパク質、オリゴペプチド、小さな有機分子、多糖、ポリヌレオチド等を記載することを意味する。本発明の組成物は、2つの主要な用途を有する。好ましい態様において、後記にてより詳細に記載されるごとく、組成物は特定の標的アナライトの存在;例えば、酵素、抗体、または抗原のごとき、特定のヌクレオチド配列または特定のタンパク質の存在または不存在を検出するのに使用される。別の好ましい態様において、組成物は、特定の標的アナライトに結合させるための、生活性剤、すなわち、薬物候補をスクリーニングするのに使用される。
【0069】
生活性剤は多数の化学的クラスを含むが、典型的には、それらは、有機分子、好ましくは、100を超えて約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物である。生活性剤はタンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの機能的化学基を含む。生活性剤は、しばしば、1以上の前記官能基で置換された環状炭素または複素環構造および/または芳香族またはポリ芳香族構造を含む。生活性剤は、ペプチド、核酸、多糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、構造アナログまたは組合せを含めた生体分子の中で見いだされる。特に好ましいものは核酸およびタンパク質である。
【0070】
生活性剤は合成および天然化合物のライブラリーを含めた広い範囲の源から得ることができる。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現を含めた、広い範囲の有機化合物および生体分子のランダムおよび指向された合成で多数の手段が利用できる。別法として、細菌、菌類、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが入手でき、容易に生産される。加えて、天然または合成により生産されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生物化学的手段を介して容易に修飾される。公知の薬理剤を、アシル化、アルキル化、エステル化および/または増幅のごとき指向されたまたはランダムな化学的修飾に付して、構造的アナログを生成させることができる。
【0071】
好ましい態様において、生活性剤はタンパク質である。ここに「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合されたアミノ酸を意味し、これはタンパク質、ポリペプチド、オルゴペプチドおよびペプチドを含む。タンパク質は天然に生じるアミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチドミメティック構造よりなることができる。かくして、本明細書で用いる「アミノ酸」または「ペプチド残基」は天然に生じるおよび合成のアミノ酸を共に意味する。例えば、ホモ−フェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは本発明の目的のアミノ酸と考えられる。側鎖は、(R)または(L)立体配置である。好ましい態様において、アミノ酸は(S)またはL−立体配置である。もし非天然側鎖が用いられれば、非アミノ酸置換基を用いて、例えば、インビボ分解を防止し、または遅らせることができる。
【0072】
1つの好ましい態様において、生活性剤は天然に生じるタンパク質または天然に生じるタンパク質の断片である。かくして、例えば、タンパク質、タンパク質性細胞抽出物のランダムまたは指向された消化物を含有する細胞抽出物が使用することができる。このようにして、原核生物および真核生物タンパク質のライブラリーを、ここに記載する系をスクリーニングするのに作成することができる。この態様で特に好ましいものは、細菌、菌類、ウイルス、および哺乳動物のライブラリーであり、後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0073】
好ましい態様において、生活性剤は約5ないし約30個のアミノ酸のペプチドであり、約5ないし約20個のアミノ酸が好ましく、約7ないし約15個が特に好ましい。ペプチドは、前記で概説した天然に生じるタンパク質の消化物、ランダムペプチド、または「バイアス化」されたランダムペプチドであり得る。「ランダム化された」または文法的に同等のものは、ここでは、各核酸およびペプチドが、各々、ランダムヌクレオチドおよびアミノ酸より実質的になることを意味する。一般的にこれらのランダムペプチド(または後記する核酸)は、化学的に合成されるので、それらはいずれかのヌクレオチドまたはアミノ酸をいずれかの位置に取り込むことができる。合成プロセスは、ランダム化タンパク質または核酸を生成させ、配列の長さにわたって可能な組合せの全てまたはほとんどの形成を可能とし、かくして、ランダム化された生活性タンパク質性剤のライブラリーを形成するように設計することかできる。
【0074】
好ましい態様において、生活性剤のライブラリーが使用される。ライブラリーは、標的アナライトに対して恐らくは十分な範囲の結合を行うための生活性剤の十分に構造的に多様な集団を提供するはずである。従って、相互作用ライブラリーは、そのメンバーの少なくとも1つが標的アナライトに対する親和性をそれに与える構造を有するように、十分に大きくなければならない。相互作用ライブラリーの必要な絶対的サイズを正確に計るのは困難であるが、天然は免疫応答に関してヒントを提供し;107〜108の異なる抗体の多様性は生物が直面する最も可能な抗原と相互作用する十分な親和性との少なくとも1つの組合せを提供する。公表されたイン・ビトロ選択技術は、107〜108のライブラリーサイズが標的に対する親和性を持つ構造を見いだすのに十分であることを示している。かくして、好ましい態様において、少なくとも106、好ましくは少なくとも107、より好ましくは少なくとも108、最も好ましくは少なくとも108の異なる生活性剤が主題の方法で同時に分析される。好ましい方法はライブラリーサイズおよび多様性を最大化させる。
【0075】
1つの態様において、ライブラリーは十分にランダム化され、いすれかの位置における配列優先性または一定性はない。すなわち、配列内のいくつかの位置は一定に保持されるか、または限定された数の可能性から選択される。例えば、好ましい態様において、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、架橋のためのシステイン、SH−3ドメインのためのプロリン、リン酸化サイトのためのセリン、トレオニン、チロシンまたはヒスチジンの生成に向けて、またはプリン等に対して、例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、立体障害的に片寄った(小または大)残基の規定されたクラス内でランダム化される。
【0076】
好ましい態様において、生活性剤は核酸である(一般に、ここでは「プローブ核酸」または「候補プローブ」)である。ここでの「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または文法的に同等のものは、一緒に共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。本発明の核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含有するが、ある場合には、後記で概説するごとく、例えば、ホスホルアミダイト(Beaucageら,Tetrahedron,49(10);1025およびその中の文献; Letsinger,J.Org.Chem.35:3800(1970); Sprinzlら,Enr.J.Biochem.,81:579(1977); Letsingerら,Nucl.Acids.Res.14:3487(1986); Sawaiら,Chem.Lett.,805(1984), Letsingerら,J.Am.Chem.Soc.,110;4470(1988);およびPauwelsら,Chemica Scripta,26:141(1986))、ホスホロチオエート(Magら,Nucleic Acids Res.,19:1437(1991);および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briuら,J.Am.Chem.Soc.,111:2321(1989))、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Press)、およびペプチド核酸骨格および結合(Eghom,J.Am.Chem.Soc.,114:1985(1992); Meierら,Chem.Int.Ed.Engl.,31:1008(1992); Nielsen,Nature,365:566(1993); Carissonら,Nature,380:207(1996),これらの全てが本明細書の一部を構成する)を含む別の骨格を有してもよい核酸アナログが含まれる。他のアナログ核酸は陽性骨格(Denpcyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6097(1995));非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号;第5,637,684号;第5,602,240号;第5,216,141号および第4,467,863号; Kiedrowshlら,Angrew.Chem.Intl.Ed.English,30:423(1991); Letsingerら,J.Am.Chem.Soc.,110:4470(1988); Letsingerら,Nucleosides & Nucleotides,13:1597(1994);Chapters2 and 3,ASC シンポジウムシリーズ580,「Carbohydrate Modification in Antisense Research」,編集Y.S.Sanghul and P.Dan Cook; Mesmaekerら,Bioorganic & Medical Chem.Lett.,4:395(1994); Jeffsら,J.Biomolecular NMR,34:17(1994); Tetrahedron Lett,37:743(1996))および非リボソーム骨格(米国特許第5,235,033号および第45,034,506号,および第6および7章,ASC シンポジウムシリーズ580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」,編集Y.S.SanghulおよびP.Dan Cookに記載されているものを含む)を含む。1以上の炭素環糖を含有する核酸もまた核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら,Chem.Soc.Rev.,(1995) 169−176頁)。いくつかの核酸アナログがRawls,C & E News,June 2,1997,35頁に記載されている。これら文献の全てが本明細書の一部を構成する。リボソーム−ホスフェート骨格のこれらの修飾は、かかる標識のごときさらなるサイトの付加を容易とし、または生理学的環境におけるかかる分子の安定性および半減期を増加させるためになされる。加えて、天然に生じる核酸およびアナログの混合物は作成することができる。別法として、異なる核酸の混合物、および天然に生じる核酸およびアナログの混合物を作成することができる。核酸は特定されるごとく一本鎖または二本鎖であってよく、あるいは二本鎖または一本鎖配列の双方の部分を含有することができる。核酸はDNA、ゲノムおよびcDNA、RNAまたはハイブリッドであることができ、ここに、核酸はデオキシリボ−およびリボ−核酸のいずれかの組合せ、ウラシル、アデニン、チミジン、シトシン、ギアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニジンを含めた塩基、およびニトロピロールおよびニトロインドール等のごとき塩基対アナログを含有する。
【0077】
タンパク質について一般的に前記したごとく、核酸生活性剤は天然に生じる核酸、ランダム核酸、または「バイアス化」されたランダム核酸であり得る。例えば、原核生物または真核生物の消化物をタンパク質につき前記で概説したごとくに使用することができる。
【0078】
一般に、本発明のプローブは、標的および本発明のプローブのハイブリダイゼーションが起こるように、標的配列(前記したごとく、試料の標的アナライト配列または他のプローブ配列)に相補的に設計される。この相補性は、完全である必要は無く;標的配列および本発明の一本鎖核酸の間のハイブリダイゼーションと干渉するいずれかの数の塩基対ミスマッチがあり得る。しかしながら、もし突然変異の数が余りにも多くてハイブリダイゼーションが最もストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件下で起こり得るならば、配列は相補的標的配列ではない。かくして、「実質的に相補的な」とは、プローブが標的配列に十分に相補的で選択された反応条件下でハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は当該分野で知られている;例えば、本明細書の一部を構成するManiatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,1989およびShort Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編参照。ストリンジェントな条件は配列−依存的であり、異なる条件において異なるであろう。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対するかなりのガイドが、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に見いだされる。一般に、ストリンジェント条件は、規定されたイオン強度pHにおいて特異的配列についての熱融解点(Tm)よりも約5−10℃低く選択される。該Tmは標的に相補的なプローブの50%が平衡時に標的配列にハイブリダイズする(規定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下での)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmにおいて、プローブの50%が平衡時に占められる)。ストリンジェント条件は、pH7.0ないし8.3において、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、典型的には、0.01ないし1.0Mナトリウムイオン濃度であり、該温度は短いプローブ(例えば、10ないし50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドよりも大)では少なくとも約60℃である。また、ストリンジェント条件は、ホルムアミドのごとき脱安定化剤の添加で達成することができる。もう1つの態様において、よりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件が使用される;例えば、当該分野で知られているように、中程度または低いストリンジェンシーを用いることができる;ManiatisおよびAusubel、前掲、およびTijssen参照。
【0079】
本明細書における「標的配列」または文法的同等のものは、核酸の一本鎖上の核酸配列を意味する。標的配列は遺伝子の一部、調節配列、ゲノムDNA、cDNA、mRNAおよびrRNAその他を含めたRNAであってよい。それはいずれの長さであってもよく、より長い配列がより特異的であることが理解される。当業者に理解されるように、相補的標的配列は多くの形態を取り得る。例えば、それは長い核酸配列、すなわち、遺伝子またはmRNAの全てまたは一部、とりわけ、プラスミドまたはゲノムDNAの制限断片に含有されていてもよい。後記で十分概説されるように、プローブは、試料中の標的配列の存在または不存在を測定するために標的配列にハイブリダイズされる。一般に、この用語は当業者に理解されるであろう。
【0080】
好ましい態様において、生活性剤は有機化学部分、文献で入手可能な種々のものである。
【0081】
好ましい態様において、各ビーズは、単一タイプの生活性剤よりなるが、複数の個々の生活性剤は好ましくは各ビーズに付着される。同様に、好ましい態様は、ユニークな生活性剤を含有する1を超える微小球を利用する、すなわち、微小球の部分集団の使用によって系に作られた縮重があり、部分集団中の各微小球は同一の生活性剤を含有する。
【0082】
当業者に認識されるように、生活性剤は直接ビーズ上に合成されるか、あるいはそれらは作成され、次いで、合成後に付着させることができる。好ましい態様において、リンカーを用いて、生活性剤をビーズに付着させて、良好な付着、十分な柔軟性を可能として、標的分子との良好な相互作用を可能とし、また望ましくない結合反応を回避する。
【0083】
好ましい態様において、生活性剤はビーズ上に直接的に合成される。当該分野で知られているように、化学化合物の多くのクラスは、ペプチド、有機部分および核酸のごとく、現在は固体支持体上に合成される。現在の合成技術を調節してビーズを用いるのは比較的直裁的な方法である。
【0084】
好ましい態様においては、生活性剤がまず合成され、次いで、ビーズに共有結合される。当業者に認識されるように、これは、生活性剤の組成およびビーズに依存してなされる。チオール、アミン、カルボキシル等のごとき化学的に反応性の基である種のポリマーのごとき固体支持体表面を機能性化することは、当該分野で一般的に知られている。従って、使用者による所望の機能性の付与を容易とする表面化学を有する「ブランク」微小球を用いることができる。ブランク微小球用のこれらの表面化学のいくつかの例を表1にリストする。
【0085】
これらの官能基を用いて、一般的に、公知の化学を用い、いずれかの数の異なる生活性剤をビーズに付加することができる。例えば、炭水化物を含有する生活性剤をアミノ−機能性化支持体に付着させることができ、標準的な技術を用い、炭水化物のアルデヒドを作成し、次いで、アルデヒドを表面のアミノ基と反応させる。別の態様において、スルフヒドリルリンカーを用いることができる。システイン含有タンパク質性剤を支持体に付着させるのに用いることができるSPDP、マレイミド、α−ハロアセチルおよびピリジルジスルフィドのごとき当該分野で知られている多数のスルフヒドリル反応性リンカーがある(例えば、本明細書の一部を構成する1994年のPierce Chemical Companyカタログ、架橋剤についての技術セクション、155−200頁参照)。別法として、生活性剤上のアミノ基を、表面のアミノ基への付着に用いることができる。例えば、ホモ二機能性およびヘテロ二官能性リンカーを含めた非常に多数の安定な二官能性基が当該分野でよく知られている(Pierceカタログおよびハンドブック、155−200頁)。さらなる態様において、(表面からのまたは生活性剤からの)カルボキシル基はよく知られたリンカーを用いて誘導体化させることができる(Pierceカタログ参照)。例えば、カルボジイミドはアミンのごとき良好な求核試薬による攻撃のためのカルボキシル基を活性化する(本明細書の一部を構成するTorchilinら,Critical Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems,7(4):275−306(1991)参照)。また、例えば、ポリマーへの抗体の付着のための、当該分野で知られている他の技術を用い、タンパク質性生活性剤を付着させることもできる(Slinkinら,Bioconj.Chem.2:342−348(1991); Torchilinら,前掲; Trubetskoyら,Biocnj.Chem.3:323−327(1992); Kingら,Cancer Res.54:6176−6185(1994);およびWilburら,Bioconjugate Chem.5:220−235(1994)参照、その全てが本明細書の一部を構成する)。生活性剤は前記リストしたものを含めて、種々の方法で付着させることができる。重要なことは、付着の方法が生活性剤の機能性を有意には改変しないことである;すなわち、生活性剤は、その標的との相互作用を可能とするように柔軟な方法で付着させるべきである。
【0086】
【表1】
【0087】
微小球上に酵素を固定化する特異的技術は当該分野で知られている。1つの場合において、NH2表面化学微小球を用いる。表面活性化は、6.9のpHを供するリン酸緩衝生理食塩水(10mM)中の2.5%グルタルアルデヒド(138mM、NaCl、2.7mM、KCl)で達成される。これは、室温でほぼ2時間撹拌ベッドで撹拌される。次いで、微小球を超純粋+0.01%ツイーン(Tween)20(界面活性剤)−0.02%ですすぎ、pH7.7のPBS+0.01%ツイーン20で再度すすぐ。最後に、好ましくは、0.45μmのアミコンミクロピュアフィルターを用いて予備濾過した後、酵素を溶液に添加する。
【0088】
前記した、工程50ないし54の方法によって、所望の数の微小球部分集団を調製した後、典型的には、該部分集団を工程55で組み合わせて、工程56で配列基体上に部分集団混合物を分散させるに先立ちセンサー配列要素として用いるための部分集団のランダム混合物を得る。好ましい態様において、図3は、ファイバーオプチックス束センサー配列中への自己コード化センサー微小球部分集団を調製および設置を説明する模式的プロセスダイアグラムを示す。別の態様において、工程55は省略することができ、センサー微小球部分集団の各々を、所定の位置にある配列基体上に別々にかつ順次に位置させることができる。
【0089】
かくして、一旦、少なくとも1つの生活性剤および自己コード化レポーター色素を含む微小球を作成すれば、微小球を基体の表面の独立したサイトに付加する。これは多数の方法でなすことができるが、一般的には、微小球の独立したサイト上へまたはサイトへ会合させることを可能とするであろう条件下でビーズを表面に添加することを含む。ビーズの表面への会合は、例えば、化学的付着サイトが基体およびビーズ双方に付加される場合、ビーズを表面に結合させることを含む;静電性またはヒドロ親和性(荷電している場合)、疎水性または親水性を、結合の基礎として用いる;接着剤の使用のごとき物理的であるが非共有結合的付着;または空間的付着、例えば、ウエル内のビーズの局所化。いくつかの態様において、例えば、配列上での架橋剤、フイルムまたは膜の使用を介して、最初の局所化の後により永久的な付着を行うのが好ましいであろう。
【0090】
後記で概説する種々の匹敵するプロセスを用い、微小球系を光学ファイバー束の末梢端に付着させることができる。微小球は束の端部近くに位置させるのが重要である。これは、各光学ファイバーにおける光の戻りが圧倒的に単一微小球から来ることを保証する。この特徴は、個々の微小球の光学応答標示の応答性によって微小球の機能性を含む反応を同定するのを可能とするのに、また、それらの微小球に含有された色素/ビーズ組を解読するのを可能とするのに必要である。しかしながら、接着または付加技術は微小球をアナライトから化学的に隔離しなければならない。
【0091】
図7は、本発明の光学ファイバーセンサー200および関連する制御系210を示す模式的ブロックダイアグラムである。ファイバーオプチックスセンサー200は、典型的には、数千の別々のクラッドの独立したファイバーから構築されたファイバーオプチックス束202(Galileo Electro-Optics, Stuebridge, MA)を含み、光が個々のファイバーの間で混合しないように各々のファイバーは直径が数ミクロンにすぎない。ある範囲の個々のファイバーまたはある範囲の個々のファイバーの直径を有するいずれの適当なファイバーオプチックス束202も使用することができる。微小球またはビーズセンサー配列100は、束の末梢端212に付着させ、近接端214は、焦点合わせ用の配列100の垂直位置決定のための通常のz−翻訳顕微鏡ステード216、および光学トレインを持つ配列100の水平整列のためのx−yミクロポジショナー218(Burleigh Instruments, Fishers, NY)に受容される。これらの2つの構成要素は、顕微鏡対物レンズ220用の束202の近接端214を位置決定するのに強調して作用する。対物レンズ220によって集められた光は、4位置二色キューブホイール222を持つ反射光蛍光アタッチメントへと通過する。該アタッチメントは対物レンズ220を通って75ワットのキセノンアーク灯224から光を挿入して、ファイバー束202にカップリングさせるのを可能とする。光源224からの光は、集光レンズ226によって集光され、次いで、フィルターおよびシャッターホイール228によって濾過されおよび/または遮断される。
【0092】
束202からの末梢端212から戻る光は、アタッチメント222によって通過し、次いで、遮断され、第2のホイール234によって濾過される。次いで、光を電荷カツプルドデバイト(CCD)カメラ238上に結像させる。通常のコンピューター238がイメージングプロセッシングソフトウェアを行って、CCDカメラ236からの情報を加工し、また、恐らくは、第1および第2シャッターおよびフィルターホイール228、234を制御する。マッキントッシュまたはIBM−コンパチブルパーソナルコンピューターを、インスツルメンテーションおよびデータ獲得を制御するために利用することができる。該インスツルメンテーションおよび、ファイバーオプチックスセンサー200を除外して、ファイバーオプチックスセンサー200の近接端214に配置された光学装置は、Bronkら, Anal. Chem. 67(17):2750-2752(1995)およびBronkら, Anal. Chem. 66:3519(1994)によってより完全に開示されている。
【0093】
ビーズセンサー配列100は、種々のコンパチブルプロセスを用い、光学ファイバー束202の末梢端に付着させることができる。微小球10は束の端部塚国位置させるのが重要である。これは、各独立した光学ファイバー中で戻る光が圧倒的に単一微小球のみから来ることを保証する。この特徴は、ビーズのタイプおよび位置を共に同定する目的で自己コード化微小球部分集団を解読し、微小球部分集団内の個々の微小球の光学標示の応答性を可能とし、シグナル−ノイズを低下させ、シグナル増強を改良するための各部分集団内の個々のビーズ応答の合計を提供するのに必要である。しかしながら、ビーズの接着または付着はアナライトから微小球を化学的に隔離し、または光学的測定に緩衝してはならない。
【0094】
図5Aおよび5Bは、ビーズをセンサー配列基体に付着させる好ましい方法を説明する顕微鏡写真である。マイクロウエル250は、ファイバーオプチックス束202の末梢端212に形成され、微小球10はマイクロウエルのキャビティー250に挿入される。マイクロウエル250はファイバーオプチックス束202の各光学ファイバー252の中心に形成される。図5Bに示すように、マイクロウエル250のサイズは、微小球10がマイクロウエル250内に置くことができるように、微小球10のサイズに協調される。かくして、束202の各光学ファイバー252はそのウエルに含有された単一微小球10からの光を運ぶ。結果として、束202の端部をCCD配列236上にイメージすることによって、微小球10の光学標示は個々に応答性である。
【0095】
図4は、いかにして、マイクロウエル250が形成され、微小球10がマイクロウエル中に置かれるかを説明する。1つの態様において、断面ほぼ3.7μmのコアを有するほぼ20,600の個々の光学ファイバーを含む1mm六方充填イメージングファイバー束202を使用した(Galileo Fibers, Sturbridge, MAからのPart No. ET26)。典型的には、各ファイバーのコアは、ガラス硬度およびファイバー製造の間の延伸の結果として六角形形状である。しかしながら、ある場合において、該形状は円であり得る。
【0096】
工程270において、ファイバー束202の近接端214および末梢端212は、順次、12μm、9μm、3μm、1μmおよび0.3μmラッギングフイルム上に仕上げられる。引き続いて、該端部を通常の原子力顕微鏡でスクラッチにつき調べる。工程272において、束202の末梢端212上でエッチングを行う。600μlのdH2Oおよび100μlのHF(フッ化水素酸)を含む0.2グラムNH4F(フッ化アンモニウム)の溶液、50%ストック溶液を用いることができる。末梢端212は特定時間、好ましくはほぼ80秒間この溶液中でエッチングする。
【0097】
この溶液からの除去に際して、束の端部を脱イオン水に直ちに入れて、工程274におけるいずれのさらなるエッチングも停止させる。次いで、ファイバーを流れている水道水中ですすぐ。この段階で、音波処理は、好ましくは、数秒間行って、いずれの塩生成物も反応から除去する。次いで、ファイバーを風乾する。
【0098】
図5Aおよび5Bに示すごとく、前記手法は、好都合には束202の各ファイバーについてのクラッド256に関してファイバーコア254の異方性エッチングによつてマイクロウエルを生じる。該マイクロウエルはコア254の直径ほぼ3.7μmを有する。この直径は、試料中において、使用される微小球の直径、3.1μmよりもわずかに大きくなるように選択される。コア254の純粋なシリカはフッ化水素酸の存在下でゲルマニウムドープしたシリカクラッド256よりも速くエッチングされるゆえに、選択的エッチングが起こる。
【0099】
次いで、多数の異なる技術に従って、工程276において、微小球はマイクロウエル250中に置かれる。微小球の設置は、末梢端212上の微小球の所望のランダムに混合された部分集団を含有する溶液を滴下し、束を音波処理して微小球をマイクロウエル中に沈降させ、次いで、微小球溶媒を蒸発させることによって達成することができる。別法として、部分集団を束端部に系列的に添加することができる。次いで、端部に滴下したスルホネート化Nafionの希釈溶液を用いることによって、微小球10をマイクロウエル250に固定することがでる。溶媒の蒸発に際して、Nafionの薄膜が微小球上に形成され、所定の位置に保持される。このアプローチは、FITC機能性を担うpH指示のために微小球を固定するのに適合する。固定された微小球の得られた配列は、水素イオンに対するスルホネート化Nafionの透過性のため、そのpH感受性を保持する。しかしながら、Nafionはほとんどの水溶性種に対して不透過性であるので、このアプローチは一般的には使用することができない。同様のアプローチを異なるポリマーで使用することができる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、またはポリヒドロキシメチルメタクリレート(ポリHEMA)の溶液をNafionの代わりに使用でき、水性種に対する所要の浸透性を供する。
【0100】
もう1つの態様において、別の固定アプローチは、その対応するマイクロウエル250に各微小球10を捕獲するために微小球膨潤を使用する。このアプローチにおいては、末梢端212上のマイクロウエル配列の存在下で、非膨潤性溶媒に懸濁させた微小球を音波処理することによって、微小球をまずマイクロウエル250に分布される。マイクロウエル中に入れた後、マイクロウエルがその中で膨潤する水性緩衝液に微小球を実質的に暴露させ、それにより、物理的にそれらをマイクロウエル中に捕獲する。この特定の態様によって、1つの通常に知られている微小球材料はテンタゲル、スチレン−ポリエチレングリコールコポリマーである。これらの微小球はヘキサンのような非極性溶媒中では膨潤できず、より極性のまたは水性の媒体への暴露に際して20−40容量%膨潤する。ある態様において、この固定アプローチは望ましいであろう。というのは、それは微小球自体の拡散または透過性特性を有意には損なわないからである。
【0101】
図6Aおよび6Bは、その最初の設置前および次いでのタッピングおよび空気パルスへの暴露後におけるマイクロウエル250中の典型的な微小球10を示す。図6Aおよび6Bは、特異的固定技術なくしてさえ機械的撹乱によるマイクロウエルからの微小球の認識できる損失がないことを示す。この効果は、恐らくは、微小球および光学ファイバーの間の静電力によるものであろう。これらの力はマイクロウエル内の微小球に結合する傾向がある。かくして、ほとんどの環境において、微小球のためにいずれの化学的または機械的固定も必要ではないであろう。
【0102】
配列の全てのサイトが微小球を含まなくてもよいことに注意すべきである;すなわち、空である基体表面のいくつかのサイトがあり得る。加えて、1を超える微小球を含有するいくつかのサイトがあり得るが、これは好ましくはない。
【0103】
ある態様においては、例えば、化学的付着がなされる場合、微小球を非ランダムまたは秩序だった方法で付着させることができる。例えば、光活性化付着リンカーまたは光活性化接着剤またはマスクを用い、微小球の規定された集団が降ろされるように、配列上の選択されたサイトを順次付着に適したものとすることができる。
【0104】
加えて、配列のサイズはユニークな光学応答標示の数によって設定されるので、ユニークな光学応答標示の組を「再使用」して、非常に多数のテストサイトを可能とすることができる。これはいくつかの方法で;例えば、配列内の位置的コード化スキームを用いることによって行うことができ;異なるサブ束は光学応答標示の組を再使用することができる。同様に、1つの態様はコード化様式のサイズとしてビーズを利用し、かくして、各ビーズサイズにつきユニークな光学応答標示の組の再使用を可能とする。別法として、配列にビーズを順次に部分的負荷することも、光学応答標示の再使用を可能とする。
【0105】
好ましい態様において、空間的または位置的コード化系がなされる。この態様においては、利用されるサブ束またはサブ配列(すなわち、全配列の一部)がある。電話システムと類似して、各サブ配列は、サブ配列の位置によって離された、他のサブ配列の同一タグ(すなわち、電話番号)を有することができる「エリアコード」である。かくして、例えば、同一ユニーク色素/ビーズ組合せを束間で再使用することができる。かくして、100の異なるサブ配列と組み合わせた50のユニークなタグの使用は、5000の異なる生活性剤の配列を形成することができる。この態様においては、1つの束をもう1つの束から同定できることが重要であり、一般に、これは手動で、あるいはマーカービーズ、すなわち、各サブ配列用のユニークなタグを含有するビーズの使用を介してなされる。
【0106】
別の態様において、微小球サイズのごときさらなるコード化パラメーターを付加することができる。例えば、異なるサイズのビーズの使用は、光学応答標示の組の再使用を可能とすることができ;すなわち、微小球のコード化寸法を拡大するために異なるサイズの微小球を使用することができる。異なるファイバー直径または断面積を持つ画素を含有する光学ファイバー配列を製造することができ;別法として、各々が個々のファイバーの異なる断面積を持つ2以上のファイバーオプチックス束を一緒に付加して、より大きな束を形成することができ;あるいは、同一サイズ断面積のファイバーを持つが異なるサイズのビーズでの光学ファイバー束を使用することができる。異なる直径では、最大ウエルに最大微小球を充填でき、次いで、全てのサイズのウエルが次いで充填されるまで、より小さなウエルに順次より小さな微小球を移動させる。このようにして、同一色素/ビーズ組合せを用いて、異なるサイズの微小球をコード化し、それにより、配列に存在する異なるオリゴヌクレオチド配列または化学的機能性の数を拡大し得る。ファイバーオプチックス基体につき概説したが、これならびに本明細書で概説した他の方法を、同様に、他の基体および他のアタッチメント様式で使用することができる。
【0107】
好ましい態様において、コード化および解読は、配列への微小球の順次の負荷によって達成される。空間的コード化につき前記で概説したごとく、この態様においては、光学応答標示を「再使用」するこどができる。この態様においては、各々が異なる生活性剤を含む微小球(または、各々が異なる生活性剤を含む部分集団)のライブラリーを、複数のサブライブラリーに分割する;例えば、所望の配列のサイズおよびユニークなタグの数に応じて、各々が全ライブラリーのおおざっぱに10%を含む10のサブライブラリーを作成でき、各サブライブラリーはほぼ同一のユニークタグを含む。次いで、最初のサブライブラリーをウエルを含むファイバーオプチックス的束に付加し、その光学応答標示を用い、各生活性剤の位置を測定する。次いで、第2のサブライブラリーを付加し、各光学応答標示の位置を再度測定する。この場合のシグナルは、「第1の」光学応答標示および「第2の」光学応答標示を含み;2つのマトリックスを比較することによって、各サブライブラリーにおける各ビーズの位置を測定することができる。同様に、第3、第4等のサブライブラリーを順次付加して、配列が充填されるのを可能とする。
【0108】
かくして、微小球および表面に独立したサイトを持つ基体を含む本発明の組成物を利用して、配列は大きなスペクトルの化学的機能性からなる。具体的には、本発明で使用するのに適合し得る先行技術センサーは、4つの広い分類の微小球センサー:1)基本的インジケーター化学センサー;2)酵素ベースのセンサー;3)免疫−ベースのセンサー(その双方は広い一般的クラスのタンパク質センサーの一部である);および4)ゲノ−センサーを含む。
【0109】
好ましい態様においては、生活性剤を用いて化学化合物を検出する。多数の基本的なインジケーターセンサーが、以前から示されている。その例には、以下のものが含まれる。
【表2】
【0110】
【表3】
表3に掲げた化学物質の各々は、以下にさらに詳しく記載するように、標的アナライトの存在下に光学的相互伝送可能なシグナルまたは光学的特性を直接生成する。
【0111】
酵素系微小球センサーは、その性能が証明されており、微小球について明示することができる。その例には、以下のものが含まれる。
【表4】
【0112】
一般に、上にさらに詳しく記載したように、酵素感受性化学物質アナライトの存在による標的アナライトの結合に対する光学的シグナルの誘導された変化は、この種の化学的官能基では間接的に起こる。微小球結合酵素(例えばグルコースオキシダーゼ)は、標的アナライト(例えばグルコース)を分解し、共基質(例えば酸素)を消費するか、またはある種の副生成物(例えば過酸化水素)を生成する。次いで、酸素感受性色素を使用してシグナル変化を開始する。
【0113】
免疫系微小球センサーは、農薬、除草剤、PCB、PAHなどの環境汚染物質の検出についてその性能が証明されている。加えて、これらセンサーは、次のような対象の診断に使用されている:例えば細菌[例えば、癩病、コレラ、リンパ炎(lyme)およびターブルクロシス(turburculosis)]、ウイルス(例えば、HIV、単純ヘルペス、サイトメガロウイルス)、真菌(例えば、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコックス症)、マイコプラズマ(例えば肺炎マイコプラズマ)、原虫類(例えば、アメーバ症、トキソプラズマ症)、リケッチア(例えばロッキー山紅斑点熱)および妊娠試験。
【0114】
微小球ゲノセンサーも調製することができる。これらは、代表的には、プローブ配列を微小球表面化学物質に、一般にNH2基によって結合することによって構築される。蛍光色素分子(例えばフルオレセイン)を、溶液中の標的配列に結合する。その光学的相互伝送可能なシグナル変化は、標的配列の微小球への結合によって起こる。これにより、溶液全体よりも微小球周囲の色素濃度が高くなる。性能が証明された数種のプローブおよび標的配列(Ferguson, J.A.ら, Nature Biotechnology, 14巻, Dec. 1996参照)を、以下の表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
さらに、ゲノセンサーが、ラベルとしてハイブリダイゼーションインジケーターの使用に基づきうることに注意すべきである。ハイブリダイゼーションインジケーターは、通常は可逆的に二本鎖核酸と結合しているのが好ましい。ハイブリダイゼーションインジケーターには、挿入体(インターカレーター)および副および/または主グローブ結合部分が含まれる。好ましい態様においては、挿入体を使用してよい(挿入は二本鎖核酸の存在下でのみ起こるのが普通であるので、標的ハイブリダイゼーションの存在下でのみラベルが発光するであろう)。
【0117】
本発明は、上記種類のセンサーのいずれかまたは全てを用いて行うことができる。当業者には理解されるように、センサーの種類および組成は、標的アナライトの組成に依存して広範囲に変化するであろう。即ち、センサーを、核酸、タンパク質(酵素センサーおよび免疫センサーを含む)、脂質、炭水化物などを検出するように調製することができる。同様に、これらのセンサーは、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などの生活性剤を含むことができる。さらに、単一配列センサーは、多種類のアナライト用の異なる結合リガンドを含むことができる。例えば、HIVのための配列センサーは、ウイルスゲノムの直接検出のための複数の核酸プローブ、ウイルス粒子の直接検出のためのタンパク質結合リガンド、抗HIV抗体の検出のための免疫成分などを含むことができる。
【0118】
微小球ズおよび基体に加えて、本発明の組成物は、他の成分、例えば光源、レンズやフィルターなどの光学成分、検出器、データ分析のためのコンピューター成分などを含むことができる。
【0119】
本発明の配列は、基体表面に対する微小球のランダム蓄積を「解読」して、全位置での生活性剤の同定を可能にすることができるように、生活性剤の同定に関する情報が配列中に形成されるように構築する。これは、種々の方法により行うことができる。
【0120】
好ましい態様においては、微小球を基体上に負荷し、次いで配列を解読する(分析を行う前に)。これは、対照アナライトに暴露したときの配列上の各々のサイトにおける微小球に結合した光学応答標示を検出することによって行う。これは、光学標示の組の「再使用」について上で一般的に説明したように、唯一の光学標示を使用するときには全てを一度に、または連続的に行うことができる。
【0121】
一旦製造され、必要なら解読されると、組成物は、多数の用途において使用できるようになる。予備的な事柄として、本発明は、配列要素の部分集団を有するセンサー配列の特徴的な光学応答標示におけるSN比を減少させる方法を提供する。この方法は、a)配列内の各センサー部分集団中の各センサー要素の存在位置を同定するために配列を解読し、b)配列内の各センサー要素の特徴的な光学応答標示を測定し、c)配列中の各センサー要素について、光学応答標示のベースラインを調節し、d)センサー部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示を合計し、e)部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示の合計として、各センサー部分集団の特徴的な光学応答標示を報告することを含んでなる。この方法により、SN比は少なくとも約10の倍率で増加されることになる。好ましくは、約100の倍率である。
【0122】
同様に、本発明は、配列要素の部分集団を有するセンサー配列の特徴的な光学応答標示を増幅する方法を提供し、この方法は、a)配列内の各センサー部分集団中の各センサー要素の存在位置を同定するために配列を解読し、b)配列内の各センサー要素の特徴的な光学応答標示を測定し、c)配列中の各センサー要素について、光学応答標示のベースラインを調節し、d)センサー部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示を合計し、e)部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示の合計として、各センサー部分集団の特徴的な光学応答標示を報告することを含んでなる。好ましい態様では、シグナルは、少なくとも約50の倍率で増幅され、アナライトの検出限界は、少なくとも約100のファクターで減少する。
【0123】
一般に、標的アナライトを含む試料(標的アナライトの検出のため、または標的アナライトの結合パートナーのスクリーニングのいずれであっても)を、少なくとも1種の生活性剤に標的アナライトを結合するのに適した条件、すなわち、一般に生理学的条件において、配列に添加する。そして、標的アナライトの存在または不存在が検出される。当業者なら理解できるように、検出は、種々の方法で、一般には光学シグナルの変化を用いることにより、行なうことができる。この変化は、多くの異なるメカニズムにより生じ得る。いくつかの例として、色素標識されたアナライトを微小球に結合すること、微小球上または近傍で色素種を生成すること、存在する色素種を分解すること、微小球上の色素とアナライトとの相互作用による光学シグナルの変化、または他の光学的応答性(interrogatable)現象が挙げられる。
【0124】
好ましい態様では、光学シグナルにおける変化は、検出可能な標識(ラベル)、好ましくは蛍光色素のような光学的標識により直接または間接的に標識された標的アナライトの結合の結果、生じる。例えば、タンパク質標的アナライトを使用する場合、このアナライトは、蛍光物質により直接標識され、あるいは、例えば標識された抗体を使用して間接的に標識され得る。同様に、核酸は、この技術分野で知られているように、例えばPCR増殖中に、蛍光色素により容易に標識することができる。また、標的配列を結合する場合、内位添加(intercalating)色素(例えば、臭化エチジウム)を添加し、その後結合されたターゲットの存在をプローブ配列に知らせる(signal)ことができる。生活性剤に標的アナライトを結合する際、そのサイトに新しい光学シグナルが生成され、そのシグナルを検出することができる。
【0125】
ある場合には、上記のように、酵素のような標的アナライトが、光学的に直接または間接的に検出できる種(例えば、蛍光性生成物)を生成する。
【0126】
更に、ある態様では、光学応答標示の変化は、光学的シグナルに基づいていることがある。例えば、ある化学的標的アナライトと微小球上のある蛍光色素との相互作用により、光学応答標示が変化し、異なる光学シグナルを発生することがある。例えば、フルオロホア(fluorophore)誘導レセプタを使用でき、この場合、配位子の結合がシグナルを変化させる。
【0127】
当業者には知られているように、ある態様では、標的アナライトの存在または不存在は、表面増強ラマン分光、表面プラスモン、放射能を含む、他の光学的または非光学的シグナルの変化を用いて行なえる。
【0128】
分析は、当業者には理解されるように、種々の実験条件下で行なうことができる。スクリーニングアッセイでは、多様な他の試薬が包含され得る。これらには、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進するおよび/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を減少するのに使用される、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤などのような試薬が包含される。その他にも、分析の効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを用いることができる。成分の混合物は、必要な結合を生じる任意の方法で添加される。この技術分野で知られているように、種々のブロッキングおよび洗浄工程が利用され得る。
【0129】
好ましい態様では、試料溶液における標的アナライトの存在または不存在を調べるために、組成物を使用する。「標的アナライト」または「アナライト」あるいは本明細書においてこれらと同等の用語は、結合パートナーについて検出または評価できる、あらゆる原子、分子、イオン、分子イオン、化合物または粒子を意味する。当業者なら理解できるように、多数のアナライトを本発明において使用することができる。基本的に、生活性剤を結合できる、または結合パートナー(すなわち、薬剤候補)を見つけ出せるあらゆる標的アナライトを使用することができる。
【0130】
適当なアナライトは、生体分子を含む有機および無機分子を包含する。標的アナライトの検出を行なう場合、適当な標的アナライトには、環境汚染物(農薬、殺虫剤、毒素などを含む)、化学物質(溶媒、ポリマー、有機物質などを含む)、治療用分子(治療用および濫用薬剤、抗生物質などを含む)、生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原、および受容体(例えば、神経、ホルモン、栄養および細胞表面受容体)またはこれらの配位子などを含む)、全細胞(原核生物細胞(例えば、病原性バクテリア)および、哺乳類腫瘍細胞を含む真核生物細胞)、ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む)、並びに胞子などが包含される。特に好ましいアナライトは、核酸およびタンパク質である。
【0131】
好ましい態様において、標的アナライトはタンパク質である。当業者には理解できるように、本発明を用いて検出できるまたは結合パートナーを評価できる可能性のあるタンパク質様標的アナライトは、多数存在する。適当なタンパク質標的アナライトには、(1)免疫グロブリン、(2)酵素(および他のタンパク質)、(3)ホルモンおよびサイトカイン(その多くは、細胞受容体の配位子として機能する)、および(4)他のタンパク質が包含される。
【0132】
特に好ましい態様では、標的アナライトは核酸である。これらの分析は、非常に広い用途において使用することができる。
【0133】
好ましい態様では、プローブは遺伝子診断において使用される。例えば、プローブは、非ポリープ性(nonpolyposis)大腸癌、BRCA1胸部癌遺伝子、P53(種々の癌に関連する遺伝子)、ApoE5遺伝子(アルツハイマー症のより大きい危険性を示し、容易な患者の前症候スクリーニングを可能にする)、嚢胞性ファイバー形成遺伝子(cystic fibrous gene)における突然変異、またはこの技術分野で周知の他のプローブが包含される。
【0134】
別の態様では、ウイルスおよび細菌の検出は、本発明の複合体を用いて行なわれる。この態様では、プローブは、種々の細菌およびウイルスからの標的配列を検出するように設計される。例えば、現在の血液スクリーニング技術は、HIV抗体の検出に依存している。本発明が開示する方法によれば、HIV核酸配列、特に高度に保存されたHIV配列を検出するために、臨床サンプルを直接スクリーニングすることが可能になる。加えて、これにより、抗ウイルス治療の有効性を評価する改良された方法として、患者の体内でのウイルスの循環を直接モニターすることが可能となる。同様に、白血病、HTLV−IおよびHTLV−IIに付随したウイルスを、このような方法で検出することができよう。結核、クリミジアおよび他の性交感染症のような細菌感染も検出することができよう。
【0135】
好ましい態様において、本発明の核酸は、水および食品中の毒性細菌用プローブとして使用される。例えば、このようなサンプルを処理し、細菌を溶解させて核酸を放出し、次いで、細菌株(例えば、サルモネラ、カンピロバクター、ビブリオコレラ、ライシュマニア、エシェリチアコリの腸内毒性株のような病原性菌株、および在郷軍人病バクテリア)を認識するように設計されたプローブを用いる。同様に、生体治療法を、本発明の組成物を使用して評価することもできるであろう。
【0136】
さらなる態様において、プローブは、犯行現場のDNAを被害者および容疑者から採取した試料と照合するための法医学的「DNA識別(fingerprinting)」のために使用することができる。
【0137】
さらに別の態様では、配列中のプローブは、ハイブリダイゼーションによる配列決定に使用することもできる。
【0138】
また、本発明は、標的核酸配列中の突然変異またはミスマッチを検出するための方法として使用することができる。例えば、最近では、多形DNAマーカーを使用した遺伝子変異と表現型との関係の分析に焦点があてられている。これまでの研究では、多形位置(positional)マーカーとして、ショート・タンデム・リピート(short tandem repeats;STRs)が用いられてきた。しかし、最近、シングルヌクレオチド多形体(single nucleotide polymorphisms;SNPs)に注目が集まっている。これは、ヒトゲノムDNA中キロベース(kilobase)あたり1を越える平均頻度で発生する。ある種のSNPs、特に暗号配列中および周囲にあるものは、治療上適切な表現型変異体の直接の原因であるらしい。治療上重要な表現型の原因となる周知の多形が数多くある。例えば、アポE2/3/4変異体は、アルツハイマー症および他の疾病の異なる相対リスクに関連している(Cordor et al., Science 261 (1993)参照)。SNP座の複合PCR増殖およびその後のオリゴヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションは、少なくとも数百のSNPの同時遺伝子型決定(genotyping)のための正確で信頼性のある方法であることが示されている(Wang et al., Science, 280:1077 (1998)、およびSchafer et al., Nature Biotechnology 16:33-39 (1998)参照)。本発明の組成物は、先行技術の配列と容易に置換えることができるであろう。
【0139】
好ましい態様において、本発明の組成物は、標的分子に結合する、好ましくはその機能を改変する試薬を見出すための生活性剤をスクリーニングするのに使用される。上述のごとく、当業者には理解されるように、広範な種類の異なる分析フォーマットが使用されている。一般に、結合パートナーが望まれている標的アナライトは、標識され、生活性剤による標的アナライトの結合は、ビーへラベルを補充することになり、それが後に検出される。
【0140】
好ましい態様では、生活性剤および標的アナライトの結合は特異的である。すなわち、生活性剤は、標的アナライトに特異的に結合する。本明細書における「特異的結合」は、アナライトと披検試料の他の成分または汚染物とを区別するのに十分な特異性をもって、剤がアナライトに結合することを意味する。しかしながら、当業者なら理解できるように、高度には特異的でない結合を用いてアナライトを検出することができる。例えば、システムにおいて、異なる結合配位子、例えば異なる配位子の配列を用い、特定のアナライトの検出を、「エレクトロニック・ノーズ」が機能するのと同様に、結合配位子のパネルへの結合の「標示」を介して行なう。この方法は、化学的アナライトの検出に特に有用である。結合は、非特異的結合を除去するための洗浄工程を含む分析の条件下で、結合を維持できるのに十分な程度でなければならない。しかし、ある態様では、例えば低アフィニティ結合パートナーを検出するためには、洗浄工程は望ましくない。ある態様では、例えばある種の生体分子を検出する場合、結合配位子に対するアナライトの解離定数は、約10-4〜10-6M-1未満、好ましくは約10-5〜10-9M-1未満、より好ましくは約10-7〜10-9M-1未満である。
【0141】
以下に挙げる実施例は、上記した本発明を使用する方法をさらに詳しく説明し、本発明の種々の態様の実施を意図する最良の態様を記載するものである。これらの実施例が、いかなる意味においても本発明の真の範囲を限定するものではなく、例示の目的のみで挙げたものであることは理解されるであろう。これに引用した全ての参照は、その全てが本明細書の一部を構成する。
【0142】
実施例
特定の蒸気アナライトおよび励起光エネルギーに対するセンサービーズおよびセンサー配列の反応の特徴的な一時的光学反応データ測定を、Whiteら[Anal.Chem. 68: 2191-2202 (1996)]により開示された確立された方法および装置設計に従って行った。図8に、実施例7〜17に報告したデータ測定に用いた実験装置および装置設計を模式的に示す。
【0143】
通常の測定においては、ファイバーオプチックス束202の近接端214を、ファイバーチャック300中に配置し、オリンパス(Olympus)顕微鏡に基づく画像システムを用いて見えるように確保した。他の態様においては、通常のオリンパス顕微鏡のスライドプラットホームおよびスライドクランプを、ガラスカバースリップなどの代替センサー配列基体を配置するために使用した。エピ-イルミネーター(照明装置)を装着したオリンパス顕微鏡320を、光学測定のために使用した。この顕微鏡320には、オリンパス20×および40×およびツァイス(Zeiss)100×対物レンズを装着した。オメガ(Omega)560DCRP二色性鏡330を用いて、75Wキセノンアークランプ340からの濾過された励起光エネルギーをセンサー配列100に向け、放射された光エネルギー(センサー配列100中のセンサービーズ10の各々に起因する特徴的な光学応答標示による)がCCDフレームトランスファーカメラ310によって記録されるようにした。アークランプ340から放射される励起光エネルギーを、オメガ535BP40組込み励起光フィルター/シャッター350によって濾過した。センサー配列100のセンサービーズ10から放射された光エネルギーを、CCDフレームトランスファーカメラ310の前にあるオメガ640BP20組込み放射光フィルター/シャッター360によって濾過した。
【0144】
通常、実験は、近接端214にファイバーオプチックス束202によって運ばれるセンサー配列100中の個々のセンサービーズの特徴的な光学応答標示の蛍光反応画像のビデオカメラフレームを集めることからなる。これらビーズおよび配列の画像を、CCDフレームトランスファーカメラ310[プリンストン・インスツルメンツ(Princeton Instruments, Trenton, NJ)のモデルTE512EFT]によって記録する。予め選択した数の画像フレームを捕捉し、コンピューターシステム400[8100AVマッキントッシュパワーPCに装備されたプリンストン・インスツルメンツNUBusカメラインターフェースカードを含んでなる]に送る。カメラフレーム割合は、任意の所望の値に設定することができ、通常は80〜250ms/フレームの範囲内である。以下に、図9〜16に示したデータを得る際に用いたフレーム割合(データ点の間の時間)を挙げる。特定したフレーム割合は、データ点の間の特定の時間間隔に相当する。
【0145】
【表6】
【0146】
通常の空気希釈嗅覚測定器および真空制御された蒸気供給システム500[嗅覚の研究に広く知られかつ使用されており、Kauerら(J.Physiol. 272: 495-516 (1977))に記載されている]を用いて、アナライト蒸気および空気キャリアーガスの制御されたパルスを、マイクロウエル250中に固定化されたセンサービーズ10の配列を含むファイバーオプチックスセンサー配列100の末梢端212またはセンサービーズ基体のいずれかに適用した。
【0147】
飽和した蒸気試料を生成させるために、通常、空気キャリアーガス流を、アナライトをしみ混ませた濾紙を入れた5mlのカートリッジに通す。飽和蒸気および清浄キャリアーガス流の相対的流速を調節することによってアナライト希釈が得られる。通常、100ml/分の流速を、センサー配列に対する混合ガス流のために用いる。この流速においては、2秒間のパルスが、約3.3mlのアナライト蒸気(キャリアーガスを伴う)を供給するであろう。一般に、アナライト蒸気の圧力および希釈ファクターに依存して、蒸気パルスは10-7〜10-5モルのアナライトを含有する。
【0148】
蒸気パルスは、通常、第11フレームから始まって第11〜第30フレーム中に供給した。蒸気パルスの期間は、使用した特定のフレーム割合によって変化し、通常は2〜3秒間の範囲内であった。ベースライン対照測定は、高純度のウルトラ・ゼロ(Ultra Zero)グレードの空気を用いて行った。空気パルス測定は、蒸気キャリアーガスによるあらゆるビーズ反応を明らかにするように行った。
【0149】
データ処理
一時的な一連のセンサービーズまたはセンサー配列の画像の収集に続いて、IPLab画像処理ソフトウエア[シグナル・アナリティクス(Signal Analytics, Vienna, VA)]を用いて、個々のファイバー(このファイバーはその末梢端のところで1つのセンサービーズに結合している)に対応する各ピクセル(画素)上にセグメントを描かせる。平均蛍光強度を、配列中の各フレーム中のこれらセグメントの各々について測定した。これは、蒸気パルス反応およびベースライン空気パルス反応の両方に対して行う。それぞれを複数回行った平均を出して、必要ならデータの質を改善することができる。次いで、空気パルスデータを、蒸気パルスデータから差引いて、空気単独によるバックグラウンドを差引く。得られたデータをプロットして、全ての所望のビーズに対する一時的な強度反応を得ることができる。好ましい態様においては、センサー配列データを、Whiteら[Anal.Chem. 68: 2193-2202 (1996)]が開示した方法に従って、神経網(ニューラルネットワーク)分析に用いる。
【0150】
全てのデータ操作は、単純なオペレータースクリプト(これは、ソフトウエアと共に含まれる規格化された画像またはデータ処理ルーチンを呼び起こす)を用いて、IPLabプログラム環境内で行う。これらのスクリプトおよびルーチンは、データ収集部分およびデータ分析部分からなる。
【0151】
データ収集部分においては、以下のような3つのセグメントまたはループが存在する。
ループ1
これは各センサーのベースライン蛍光を与える。このループを短縮または延長して、特定のアナライトに対する特定のセンサービーズまたはセンサー配列のより遅いかまたはより速い反応時間に調節することができる。実施例7〜17に対しては、このループを5〜10フレームに設定した。
【0152】
ループ2
これは蒸気暴露ループである。蒸気パルスをこのループ開始の直前にスクリプトの命令によって適用する。この命令が取付けたソレノイドバルブに5ボルトのパルスを送り、これが真空ラインのスイッチをオフにし、これにより、蒸気試料のノズル末端からの放出が可能になる。通常、このループは20フレームの期間である。実施例7においては、10フレームの期間を用いた。
【0153】
ループ3
これはセンサー回収ループである。別の5ボルト引金パルスをソレノイドに送り、これがスイッチを最初の位置に戻し、真空システムに溶媒蒸気の収集を再開させ、それを運び出し廃棄させる。通常、このループは30フレームの期間である。実施例7においては、15フレームの期間を用いた。
【0154】
データ分析
データ分析部分においては、先に収集した「フォーカス」画像から取得した予め選択したセグメントを、収集した画像の配列に移す。これらのセグメント(使用者が抜取る)は、平均ピクセル強度を、画像フィールド中の特定領域において測定することを可能にする。通常、これらはファイバーオプチックスセンサー配列の個々のピクセル(このそれぞれがビーズを含む)から抜取る。次いで、スクリプトが、各フレームを進むループに入り、各セグメント内の平均ピクセル強度を測定し、その値をデータカラム中に置く。次いで、得られたカラムをプロットして、所望の各ビーズの一時的な反応を得ることができる。しかし、プロットの前に、各ビーズ反応のデータをその最初の点で割ることによって、反応を「規格化」する。即ち、全ての反応を標準化して、1.0の値で始めることができる。
【0155】
ビーズ反応の集計
各ビーズの部分集団内の多数のセンサービーズからの光学反応シグナルを、各時間点での全ての反応のベースライン調整した強度値を単純に加えることによって集計して、全ビーズ反応の合計からなる新しい一時的な反応を得ることができる。シグナルの集計は、リアルタイムに、またはデータ取得後のデータ換算および分析中に行うことができる。1つの態様においては、シグナルの集計を、光学反応データを収集した後に、市販のスプレッドシートプログラム[エクセル、マイクロソフト(Redmond, WA)]を用いて行う。典型的な操作においては、規格化した光学反応を、全てのデータ点から整数1.0を差引くことによって、0.0の値から出発するように調整する。このようにすることにより、一緒に集計したときであってもベースライン-ループデータを0に維持することが可能になり、ランダムな反応シグナルノイズを相殺する。しかし、蒸気パルス-ループ一時的領域は、蒸気パルスの前に陽性、陰性または中性のいずれかの特徴的な反応変化を示し、CCDカメラ中の電荷蓄積による最初の数データ点におけるドリフトに伴うノイズを克服するためにベースライン調整を必要とすることが多い。ドリフトが存在しないときには、通常、各ビーズセンサーの第1データ点からのベースラインを、同じビーズの全反応データから差引く。ドリフトが観察されたときには、各ビーズセンサーの最初の10データ点からの平均ベースラインを、同じビーズの全反応データから差引く。このベースライン調整を行うことによって、複数のビーズ反応を一緒に加えたときに、ベースラインを0にしたままこれらを増幅することができる。全てのビーズが蒸気パルスに同時に反応するので、これらの全てが正確に同じ時間にパルスに遭遇し、これらの反応を覆うために必要な記録または調整は存在しない。連続した時間間隔における全データ点を単純に加えることによって、累計反応データが得られる。次いで、この最終的なカラム(特定の時間間隔における全データ点の合計からなる)を、個々のビーズ反応と比較またはプロットして、図14および15に示すように、改善されたシグナルとノイズの比率またはシグナル増強の程度を調べることができる。
【実施例】
【0156】
(実施例1) 多孔性シリカ/ナイルレッドビーズの調製
約0.5cm3の名目上3.2ミクロン直径の市販の多孔性シリカビーズを、LUNAカラム[フェノメネックス(Phenomenex, Torrance, CA)]から取出した。ビーズ試料を濾紙上に置き、真空濾過を用いて、0.5mlのナイルレッド(Nile Red)[イーストマン・コダック(Eastman Kodak, Rochester, NY)]溶液(トルエン中1mg/ml)をビーズ上に注いだ。ナイルレッドは直ちにシリカビーズによって吸収され、ビーズを深紫色に変えた。これらビーズをトルエンで繰返し洗浄して、あらゆる過剰の吸着されなかったナイルレッドを除去した。ビーズを時計皿上で一晩乾燥した。次いで、ビーズを、本発明の方法に従ってファイバーオプチックス束をエッチングすることによって得たマイクロウエル中に配置した。
【0157】
(実施例2) PDPOポリマー被覆した多孔性シリカビーズの調製
シラン化溶液を、980μlのエタノール/水(95%エタノール、5%超純水、酢酸でpH4.9に調整)中の20μlのN-オクタデシル-トリエチルオキシシランから調製した。実施例1のLUNA多孔性シリカビーズを、過剰のシラン化溶液中に約10分間分散させ、連続して渦巻き撹拌した。粒子をエタノールで3回すすぎ、120℃のオーブン中にて一晩(約12時間)乾燥した。
PDPO、即ちポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)[アルドリッチ(Aldrich, Milwaukee, WI)]およびナイルレッドの保存溶液を、0.09gのPDPOおよび1.0mlのクロロホルムから調製した。ポリマーを完全に溶解させた後、クロロホルム中の1mg/mlナイルレッドの一部100μlを添加した。得られた溶液を連続的に渦巻き撹拌して均一な分散液とした。
過剰のPDPO/ナイルレッドを、シラン化した多孔性ビーズの小部分に添加した(約100μlのポリマー/色素溶液を約1mgのビーズに)。この試料を約3時間渦巻き撹拌し、次いで洗浄した。過剰のポリマー色素を除去し、次いでビーズを塩化メチレンで2〜3回繰返して洗浄し、続いて水中の0.01%ポリオキシエチレン-ソルビタンモノラウレート、即ちツイーン(Tween)20[J.T.Baker, Cleveland, OH]で洗浄した。洗浄したビーズを、0.01%ツイーン20/超純水の溶液に集めた。単一の小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0158】
(実施例3) ポリシロキサンポリマーで被覆した非多孔性シリカ/ナイルレッドビーズの調製
初めに、市販の非多孔性の3.1μmのシリカビーズ[バングス・ラボラトリー(Bangs Laboratory, Fishers,IN)]を、過剰のシラン化溶液、即ちアセトン中の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(アルドリッチ)の10容量%溶液中で一晩シラン化した。過剰のシラン化溶液をデカンテーションし、ビーズを、超純粋なアセトンを用いて2〜3回繰返してすすいだ(渦巻き撹拌し、洗浄の間に遠心した)。このビーズを、過剰のナイルレッド溶液(トルエン中1mg/ml)中に約3時間浸漬し、表面が完全に飽和するように渦巻き撹拌した。このビーズ溶液を遠心し、過剰の色素溶液をデカンテーションした。次いで、7.9mgのベンゾインエチルエーテル[ポリサイエンシーズ社(Polysciences Inc., Warrington, PA)]、250μlのトルエン中のナイルレッドの保存液、および250μlの(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマー[ゲレスト社(Gelest Inc., Tullytown, PA)]の混合物を、ビーズに添加した。このビーズ懸濁液を渦巻き撹拌して、粒子を均一に被覆した。得られた懸濁混合物を、約350rpmで撹拌しながら、約100mlの超純水中の0.1%ツイーン20に滴下した。10秒間ずつの合計して30秒間の紫外線励起によって重合を行った。この試料溶液を一晩撹拌した。この懸濁液を、230ミクロンのふるいに通し、次いで5μmのふるいに通した。濾液を3000rpmで約5分間遠心し、ビーズを遠心管中に集め、超純水中の0.01%ツイーン20で洗浄した。単一の小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0159】
(実施例4) ナイルレッドを含む(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマーのビーズの調製
約25mlの超純水+25mlのエタノールを、100mlの丸底フラスコに入れ、撹拌棒を用いて約350rpmで撹拌した。500μlの(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマー、200μlのナイルレッド溶液(クロロホルム中1mg/ml)、および250μlの塩化メチレンの混合物を調製し、撹拌した水/エタノール溶液に滴下した。塩化メチレン中の5.5mgのAIBN、即ちN,N'-アゾビス-イソブチルニトリル(2,2'-アゾビス-2-メチルプロプリオ-ニトリル)[ファルツ・アンド・バウアー社(Phaltz & Bauer, Inc.)]の溶液を、撹拌分散液に添加した。この混合物をアルゴンを用いて約1時間脱ガスし、次いで約70℃に加熱した。約3時間の加熱の後、20mlの超純水中の0.01%ツイーン20を混合物に添加した。加熱と撹拌を約12時間続けた。この混合物を230ミクロンのふるいに通し、次いで固体を5000rpmまでの遠心によって集めた。得られたビーズを、超純水中の0.01%ツイーン20の溶液に集めた。ビーズ懸濁液の単一小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0160】
(実施例5) ナイルレッド染色したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズ
約1mgの市販の3.15μmのポリマービーズ(87%メチルスチレン、13%ジビニルベンゼン、アミン官能化表面を有する)[バングス・ラボラトリーズ(Bangs Laboratories, Fishers, IN)]を、1mlのメタノール中で、渦巻き撹拌し、約3000rpmで遠心し、溶媒をデカンテーションすることによって洗浄した。このビーズを褐色バイアルに移し、約100μlのナイルレッド溶液(トルエン中1mg/ml)を添加した。この試料を渦巻き撹拌し、揺動振盪器に入れて、一晩撹拌した。この懸濁液を微量遠心管に移し、デカンテーションした溶媒が透明になるまでメタノールで洗浄した。このビーズを、約0.5mlの超純水中の0.01%ツイーン20の溶液に集めた。単一小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0161】
(実施例6) ナイルレッドを導入した可塑剤修飾したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズ
約1mgの市販の3.15μmのポリマービーズ(87%メチルスチレン、13%ジビニルベンゼン、アミン官能化表面を有する)[バングス・ラボラトリーズ]を、実施例5に従ってメタノールですすぎ、褐色バイアルに移した。ポリマーに対して約2〜40重量%の可塑剤、即ちトリトリルホスフェート(TTP)、トリフェニルホスフェート(TPP)およびジブチルフタレート(DBP)[アルドリッチ]を、ナイルレッド溶液(トルエン中1mg/ml)と共に、ビーズ試料に添加し、被覆し、渦巻き撹拌し、次いで揺動振盪器上で約12時間振盪した。このビーズを微量遠心管に移し、メタノール中のナイルレッドで洗浄し、次いでデカンテーションした溶媒が透明になるまでメタノールで繰返し洗浄した。このビーズを、超純水中の0.01%ツイーン20の溶液に集めた。懸濁液の単一小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0162】
(実施例7)
実施例1の方法によって調製した多孔性シリカビーズを、上記した実験方法に従って評価して、トルエン蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図9に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスに対する62個の個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0163】
(実施例8)
実施例5の方法によって調製したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズを評価して、メタノール蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図10に示すが、この図には、メタノール蒸気のパルスに対する39個の個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0164】
(実施例9)
実施例4の方法によって調製した(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマービーズを評価して、トルエンおよびメタノールの両蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図11に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスおよびメタノール蒸気のパルスに対する個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0165】
(実施例10)
実施例2の方法によって調製したPDPOポリマー被覆した多孔性シリカビーズを評価して、トルエンおよびメタノールの両蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図12に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスおよびメタノール蒸気のパルスに対する個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0166】
(実施例11)
実施例1の方法によって調製した多孔性シリカビーズを、上記した方法に従って、ファイバーオプチックス束の末梢端にあるエッチングしたマイクロウエルに導入した。得られたセンサー配列を評価して、酢酸エチル蒸気に対するビーズ部分集団の特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図13に示すが、この図には、酢酸エチル蒸気のパルスに対する218個の個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0167】
(実施例12)
本発明のシグナル集計法を、実施例5の方法によって調製し、実施例8の方法によって試験したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズに対して行った実験測定値の分析において評価した。結果を図14に示すが、この図においては、単一センサービーズ(ビーズ#1)に対する標準化された一時的な光学反応が、試験した全39ビーズの集計した反応と比較されている。図14に示されるように、本発明のシグナル集計法は、単一センサービーズ測定において生じる実験的ノイズを大きく減少させ、分析測定のシグナルとノイズの比率において大きな改善(10倍またはそれ以上)を与える。
【0168】
(実施例13)
本発明のシグナル集計法を、実施例5の方法によって調製し、実施例8の方法によって試験したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズに対して行った実験測定値の分析において評価した。結果を図15に示すが、この図においては、39個のセンサービーズのそれぞれに対する一時的な光学反応の実際の相対強度が、シグナル集計によって得られる一時的な光学反応の相対強度と比較されている。図15に示されるように、シグナル集計によって大きなシグナル増強が得られ、これに対応して、標的アナライトの検出限界において大きな改善(100倍まで)が得られる。
【0169】
(実施例14)
実施例3の方法によって調製したポリシロキサン被覆した多孔性シリカビーズを評価して、トルエンおよびメタノールの両蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図16に示すが、この図には、トルエンおよびメタノールの両方に対する2個のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。図16に示す結果は、特定のアナライトに対するビーズセンサーの特徴的な光学応答標示を利用することによって、ビーズセンサーのこの部分集団が2種類の所望のアナライトを区別することができることを示す。
【0170】
(実施例15)
実施例1の方法によって調製した多孔性シリカビーズおよび実施例5の方法によって調製したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズの50/50混合物を、上記した本発明の方法に従って、ランダムに分散させ、ファイバーオプチックス束の末梢端にあるエッチングしたマイクロウエル中に導入した。得られたセンサー配列を評価して、メタノール蒸気に対するビーズ部分集団の特徴的な光学応答標示を調べた。535nmの励起フィルターおよび600nmの放射フィルターをこの実験に用いた。結果を図17に示すが、この図には、メタノール蒸気のパルスに対する3個の多孔性シリカビーズセンサーおよび6個のPMSビーズセンサーの標準化された一時的な光学反応が示されている。この実施例においては、ビーズ部分集団の特徴的な放射光ピークの形状が、それぞれの部分集団の識別可能な特徴的な応答標示を与える。図17は、本発明の革新的な自己コード化の特徴を示すものであり、この図では、ビーズの同一性(アイデンティティー)および位置が、対照蒸気アナライトの単一測定において決定される。
【0171】
(実施例16)
実施例15の方法によって得た自己コード化ファイバーオプチックスセンサー配列を、n-プロパノール蒸気のパルスに対する、配列の多孔性シリカおよびPMSセンサービーズ部分集団の特徴的な一時的光学応答標示を測定することによって評価した。結果を図18に示すが、この図には、n-プロパノール蒸気のパルスに対する3個の多孔性シリカビーズセンサーおよび6個のPMSビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。この実施例においては、ビーズ部分集団の特徴的な放射光強度が、それぞれの部分集団の識別可能な特徴的な応答標示を与える。図18は、異なるビーズ部分集団の別個の特徴的な一時的光学応答標示を用いて特定の所望のアナライトを検出することの利点を示す。センサー配列中のビーズセンサーの同一性および位置が実施例15の方法によって解読されたことに注意すべきである。実施例15の方法によるセンサー配列の自己コード化および本実施例16の方法によって為されるセンサー配列測定を組合わせることによって、このセンサー配列が、n-プロパノールからメタノールを検出および識別するように調整された。
【0172】
(実施例17)
実施例15の方法によって得た自己コード化ファイバーオプチックスセンサー配列を、トルエン蒸気のパルスに対する、配列の多孔性シリカおよびPMSセンサービーズ部分集団の特徴的な一時的光学応答標示を測定することによって評価した。結果を図19に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスに対する3個の多孔性シリカビーズセンサーおよび6個のPMSビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。図19は、異なるビーズ部分集団の特徴的な一時的光学応答標示を用いて特定の所望のアナライトを検出することの利点を示す。センサー配列中のビーズセンサーの同一性および位置が実施例15の方法によって解読されたことに注意すべきである。実施例15の方法によるセンサー配列の自己コード化、実施例16の方法によって為されるセンサー配列測定、および本実施例17の方法によって為されるセンサー配列測定を組合わせることによって、このセンサー配列が、メタノール、n-プロパノールおよびトルエンからなる標的アナライトの群を検出および識別するように調整された。
【0173】
(実施例18)
実施例4の方法によって得たPS802ビーズセンサー、実施例5の方法によって得たポリメチルスチレン/2%ジビニルベンゼンビーズセンサー、および市販のポリメチルスチレンビーズ[バングス・ラボラトリーズ]の試料を、顕微鏡カバースリップ基体上に分散させた。空気中で各ビーズ部分集団を平衡化した後、各部分集団を飽和トルエン蒸気のパルスに暴露し、同時に励起光エネルギーをビーズに照射した。トルエン蒸気に対する各ポリマー種の膨潤反応によるビーズ寸法の変化を、図7の装置を用いてモニターした。ビーズの反応を、CCDカメラによるビーズ画像寸法の変化の捕捉およびビーズの時間変化する蛍光画像の撮影によって記録した。図20は、3種類のビーズ部分集団の膨潤反応の相違を、空気中での各ビーズ種の最初の蛍光画像と、トルエン蒸気に暴露した後の各ビーズ種の後の画像との比較によって示すものである。種々のポリマー候補材料の膨潤反応特性のこのような測定は、本発明の自己コード化センサー配列におけるビーズセンサー成分として使用するためのビーズセンサー材料を予備スクリーニングする際に有用である。
【0174】
本発明を、その好ましい態様を参照しながら具体的に示し、説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の思想および範囲から逸脱することなく、その形態および細部に種々の変更を行いうることは当業者の理解するところであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、ガス状および液体状アナライトの検出のための分析化学センサー配列の光学応答標示またはそのSN比を増加させる方法、とりわけ、酵素反応から発生したシグナルを増幅する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的分析測定のための光吸収色素との組合せての光学ファイバーおよび光学ファイバーストランドの使用は、特に過去10年間に迅速な発展を受けた。かかる目的および技術のための光学ファイバーの使用は、Milanovichら,「Novel Optical Fiber Techniques For Medical Application」、オプティックスおよびエレクトロオプティックスについてのSPIE第28回年次国際技術シンポジウム、第494巻、1980; Seitz,W.R.、「Chemical Sensors Based on Immobilized Indicators and Fiber Optics」 in C.R.C. Critical Reviews In Analytical Chemistry,第19巻、1988、135−173頁; Wolbeis,O.S.,「Fiber Optical Fluorosensors in Analytical Chemistry」 in Molecular Luminescence Spectroscopy,Methods and Application(S.G.Schulman編集),Wiley & Sons,New York(1988); Angel,S.M. Spectroscopy 2(4):38(1987); Waltら,「Chemical Sensors and Microinstrumentation」,ACS Symposium Series,第403巻,1989,252頁およびWolfibeis,O.S. Fiber Optic Chemical Sensors,編集CRC Press,Boca Rator,FL,1991,第2巻に記載されている。
【0003】
インビトロ/インビボセンサーで光学ファイバーを使用する場合、1以上の光吸収性色素がその末梢端近くに位置する。典型的には、適当な源からの光を用いて、ファイバーの近接端を通って、色素を照射する。光学ファイバーの長さに沿っての光伝搬;およびこの伝搬した光の一部は末梢端に存在し、色素によって吸収される。光吸収性色素は固定化してもしなくてもよく;光学ファイバー自体に直接的に付着してもしなくてもよく;注目する1以上のアナライトを含有する流体試料に懸濁してもしなくてもよく;第2の光学測定での引き続いての使用に保持可能であってもなくてもよい。一旦、光が色素によって吸収されたならば、種々の波長および強度のいくらかの光は戻り、同ファイバーまたは収集ファイバーいずれかを通って検出系に運ばれ、そこで、それは観察され、測定される。光学ファイバーによって運ばれた光および光吸収性色素の特性の間の相互作用は定性的および定量的測定双方の基礎である。異なる分析目的のファイバーストランドおよび光学ファイバーの束で通常は用いられる多くの異なるクラスの光吸収性色素の中には、「発蛍光体」と呼ばれる吸収後に光を発するより通常の組成物および「色原体」と呼ばれる、光としてそれを発するよりもむしろ、光を吸収し、内部で吸収された光を熱に変換するものがある。
【0004】
蛍光は、特定の波長で光(フォトン)を吸収し、次いでより長い波長の低エネルギーの光を発するいくつかの分子の能力に基づく物理的現象である。蛍光を発することができる物質は、多数の通常の特徴:1つの波長において光エネルギーを吸収する;励起されたエネルギー状態に達する;および引き続いてもう1つの光エネルギーで光を発する能力を有する。吸収および発光スペクトルは、各発蛍光体に個々のものであり、しばしば、わずかに重複する2つの別々の曲線としてグラフ表示される。同一蛍光発光スペクトルは、一般に、励起光の波長に拘わらず観察され、従って、励起光の波長およびエネルギーは限界内で変化することができ;しかし、発蛍光体によって発せられる光は常に同一発光スペクトルを提供する。最終的に、蛍光シグナルの強度は、発せられた光の量子収率として測定することができる。蛍光量子収率は、発蛍光体によって最初に吸収されたフォトンの数と比較した、発せられたフォトンの数の比率である。これらの特徴の各々に関するより詳細な情報については、以下の文献が推奨される:Lakowicz,J.R.,Priciples of Fluorescence Spectroscopy,Plenum Press,New York,1983; Freifelder,D.,Physical Biochemistry,第2版,W.H.Freeman and Company,New York,1982; 「Molecular Luminescence Spectroscopy Methods and Applications」:パート1”(S.G.Schulman編)in Chemical Analysis,第77巻,Wiley & Sons,Inc.,1986; The Theory of Luminescence, StepanovおよびGribkovskii,little Books,Ltd.,London,1968。
【0005】
定性的および定量的分析測定双方において、光学ファイバーセンサーを使用する最近の改良の多くは、光学ファイバーの末梢端に種々の光吸収色素を蒸着および/または固定化することが望ましいことに関する。このように、種々の異なる光学ファイバー化学センサーおよび方法が、pH測定、酸素検出、および二酸化炭素分析のごとき特異的分析測定および適用で報告されている。これらの発展は以下の文献によって例示されている:Freemanら,Anal Chem.53:98(1983); Lipptschら,Anal.Chem.Acta.205:1,(1988); Wolfbeisら,Anal.Chem.60:2028(1988); Jordanら,Anal.Chem.59:437(1987); Lubbersら,Sens.Actiators 1983; Munkholmら,Talanta 35:109(1988); Petersonら,Anal.Chem.58:1427(1986);Seitz,W.R.,Anal.Chem.56:16A−34A(1984); Petersonら,Anal.Chem.52:864(1980); Saariら,Anal.Chem.54:821(1982); Saariら,Anal.Chem.,55:667(1983); Zhujunら,Anal.Chem.Acta.160:47(1984); Schwabら,Anal.Chem.56:2199(1984); Wolfbeis,O.S.,「Fiber Optic Chemical Sensors」,編集CRC Press,Boca Raton,FL,1981,第2巻;およびPantano,P.,Walt,D.R.,Anal.Chem.,481A−487A,第67巻(1995)。
【0006】
より最近では、単一の独立したファイバーオプチックス束を持つ複数色素の使用を可能としたファイバーオプチックスセンサーが構築されている。Walt.らに対する米国特許第5,244,636号および第5,250,264号は、束の末梢端に対して複数の異なる色素を付着させる系を開示しており、これらの特許の各々の教示は本明細書の一部を構成する。開示された立体配置は、束の別々の光学ファイバーを、光学的に個々の色素を評価するのを可能とする。これは、2以上の色素からのシグナルを組み合わせた場合に生起する各色素からの復帰光における別々のシグナルをほどく問題を回避し、各色素は異なるアナライトに対して感受性であり、色素の発光スペクトルにおいて重要な重複がある。
【0007】
より最近では、ファイバーオプチックスセンサーは、臭いを区別し、定量するための半選択的化学的センサーおよびパターン認識スキームの配列で使用されてきた。かかるアプローチは、デバイスまたは系を検知するデザインにおいて生物学的嗅覚の原理を実行するのに有用であった。バイオミメトリーのこの分野において、種々の技術がセンサー変換メカニズムに適用されてきた。例えば、表面音響波、導電性ポリマー、金属酸化物センサー電界効果トランジスター(MOSFET)、ピエゾエレクトリックおよび水晶結晶ミクロバランスセンサー配列が追求されてきた。
【0008】
かかる技術は臭検知に対する種々の物理的および化学的現象を利用する発明アプローチを提供するが、かかるデバイスの効果を制限するこれらの方法に対しては多数の制限がある。まず、単一配列内およびセンサー配列間の素子−対−素子再現性は、典型的には、不満足であり、かくして、センサー−対−センサーからの再キャリブレーションおよびネットワーク保持を要する。第2に、これらの方法のほとんどは、比較的遅い応答時間を有し、頻繁に、臭の存在に対する応答に数分要する。第3に、かかる方法は比較的高い検出限界および低い感度を有し、典型的には10ppm未満の臭レベルでは機能しない。第4に、かかる技術を具体化するデバイスは、典型的には、比較的大きい固有のサイズを要し、それにより、遠隔検知適用で使用されるセンサー配列のミニチュア化を制限する。最後に、これらの方法によるマルチセンサー配列の構築は複雑で、費用がかかり退屈な調製およびよく規定された配列内の個々のセンサーの設置を含む。
【0009】
より最近では、これらの欠点の多くは、人工的鼻センサーデバイスおよび系におけるファイバーオプチックスセンサー配列の適用を介して克服された。Waltらに対する米国特許第5,320,814号および第5,512,490号(これらの特許の各々の教示は本明細書の一部を構成する)は、検知する受容体単位として機能し、スペクトル認識パターンを用いて種々の異なるアナライトおよびリガンドを検出することができる不均一な半分選択的薄いフイルムで形成されたファイバーオプチックス配列を開示する。この技術は、ファイバーオプチックス束における選択的光学ファイバーの末端をコートするポリマー色素組合せの配列を利用する蒸気検知系に適用されてきた。これらの発展は、さらにDicknsonら,Nature 382:697(1996)およびWhiteら,Anal.Chem.68:2191(1996)に記載されている。
【0010】
Waltらに対する4つの従前に引用されている特許の革新的特徴は、単一光学ファイバー束センサーの端部における複数の化学的機能の設置である。この立体配置は、典型的には小さい束を介して遠隔モニターできた分析的化学センサーを生じさせた。しかしながら、欠点は、センサーの端部における化学的機能性に関連する種々の化学を適用することにおける困難性であり;機能性は工程的連続様におけるセンサー端部に組み立てられた。これは遅いプロセスであり、実際には、数十の機能性が適用できたに過ぎない。
【0011】
Waltらに対する米国特許出願第08/818,199号(その教示は本明細書の一部を構成する)は、光学ファイバー配列センサーにおけるポリマー色素コーティング層に対する代替物としてのインフレートポリマー微小球の使用を開示する。このアプローチでは、ファイバーオプチックス束は標的アナライトの存在に対する異なる化学的および光学応答を有する種々の微小球ビーズセンサーを含有する色素−ポリマー微小球レイに対する代替物として働く。この発明の1つの革新的な特徴は、光学的応答性のコード化スキームを用いて各ビーズの機能性を同定する能力を保持しつつ異なる化学的機能性を担うビーズまたは微小球を一緒に混合することができるビーズベースの分析化学系を提供することにおけるものである。加えて、本発明は、別々のビーズまたは微小球が束内の区別されるファイバーまたはファイバーの群に光学カップリングさせることができる光学ファイバー束センサーを提供する。本発明の革新的特徴は別々の適用を有するが、一緒に実施すると、本発明は、化学センサー配列および化学的分析系に組み込むことができる、非常に多数の数千以上の別々の化学的センサー要素を支持することができる光学ファイバーセンサーを提供する。このアプローチは、多くの区別されるセンサータイプを含有する個々のセンサーおよび複雑なセンサー配列の迅速な製造および組み立てを提供する。また、該方法は、センサーのバッチおよびセンサー配列内の高い程度再現性および適合性を提供する。微小球において利用できる超微細サイジングのためさらなる利点が実現される。センサー配列の総じてのサイズが実質的にミリメーター下スケールまで低下させることができる。スケールにおけるこの減少は遠隔検知配列において特に有利である。
【0012】
Waltらに対する米国特許第08/818,199号に教示された化学的センサー配列における微小球センサー要素に適用する方法は多くの革新的特徴を有するが、この方法はある限界を有する。該方法は、センサー配列で使用されるビーズ部分集団のタイプおよび位置を同定するための複雑なマルチ工程ビーズコード化プロセスを要する。ビーズは、種々の比率で蛍光色素の組合せを使用することによってコード化される。コード化色素の選択は、励起光エネルギーへの暴露に際して異なる波長において光を発する色素に限定される。異なる比率の色素の組合せはビーズのコード化部分集団を提供するが、所与の色素ペアーまたは組合せでのビーズをコード化するのに利用できる色素比率の数は、ピーク重複からの発光スペクトルを混雑させるためかなり限定される。加えて、別々のレポーティング色素が、標的アナライトのためのユニークな特徴的な光学応答標示を得るのに必要である。かくして、コード化色素選択は、さらに、その発光波長が、アナライトの存在にユニークに応答するレポーティング色素と重複または干渉しない色素を選択することによって制限される。
【0013】
この発明のもう1つの限定的特徴は、ビーズをコード化するプロセスがセンサーおよびセンサー配列をキャリブレートし、追跡する一連の測定を要することである。コード化は、最初に、まずビーズに励起光エネルギーを照射し、所与のコード化色素比率を有するセンサー配列内で特異的ビーズ部分集団のタイプおよび位置をモニターし、記録することによって達成される。次に、レポーター色素の存在下で励起光エネルギーで配列を照射しつつ、配列をアナライトに暴露する。レポーター色素の存在下でアナライトに応答するビーズをセンサー配列上にモニターし、マップする。加えて、特徴的光学応答標示をライブラリーに貯蔵する。この工程は、レポーター色素と組み合わせた注目する各アナライトにつき反復する。一旦、全てのビーズ部分集団をコード化し、その応答特性をモニターし、記録すると、全センサー配列は、各アナライトについての貯蔵された光学応答標示を用いて各センサー要素にインデックスを付すことによって各アナライトを解読しなければならない。ビーズの個々の部分集団を解読するこのプロセスは、非常に多数の部分集団が配列において配置され、それにより、各配列に必要なトレイニング時間を増加させる場合にさらなる工程を要する。
【0014】
ビーズコード化、分子タッギングの利用、キャピラリーガスクロマトグラフィーおよび電子捕獲検出に対する他の別のアプローチは、Stillら,Acc.Chem.Res.29:155(1996)によって開示されている。しかしながら、かかる方法は範囲が限定されており、容易に分析可能な特異的化学的機能性および分子タッグを有する狭いクラスのビーズ材料にのみ適用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,320,814号
【特許文献2】米国特許第5,512,490号
【特許文献3】米国特許出願第08/818,199号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Milanovichら,「Novel Optical Fiber Techniques For Medical Application」、オプティックスおよびエレクトロオプティックスについてのSPIE第28回年次国際技術シンポジウム、第494巻、1980
【非特許文献2】Seitz,W.R.、「Chemical Sensors Based on Immobilized Indicators and Fiber Optics」 in C.R.C. Critical Reviews In Analytical Chemistry,第19巻、1988、135−173頁
【非特許文献3】Wolbeis,O.S.,「Fiber Optical Fluorosensors in Analytical Chemistry」 in Molecular Luminescence Spectroscopy,Methods and Application(S.G.Schulman編集),Wiley & Sons,New York(1988)
【非特許文献4】Angel,S.M. Spectroscopy 2(4):38(1987)
【非特許文献5】Waltら,「Chemical Sensors and Microinstrumentation」,ACS Symposium Series,第403巻,1989,252頁およびWolfibeis,O.S. Fiber Optic Chemical Sensors,編集CRC Press,Boca Rator,FL,1991,第2巻
【非特許文献6】Lakowicz,J.R.,Priciples of Fluorescence Spectroscopy,Plenum Press,New York,1983
【非特許文献7】Freifelder,D.,Physical Biochemistry,第2版,W.H.Freeman and Company,New York,1982
【非特許文献8】「Molecular Luminescence Spectroscopy Methods and Applications」:パート1”(S.G.Schulman編)in Chemical Analysis,第77巻,Wiley & Sons,Inc.,1986
【非特許文献9】The Theory of Luminescence, StepanovおよびGribkovskii,little Books,Ltd.,London,1968
【非特許文献10】Freemanら,Anal Chem.53:98(1983)
【非特許文献11】Lipptschら,Anal.Chem.Acta.205:1,(1988)
【非特許文献12】Wolfbeisら,Anal.Chem.60:2028(1988)
【非特許文献13】Jordanら,Anal.Chem.59:437(1987)
【非特許文献14】Lubbersら,Sens.Actiators 1983
【非特許文献15】Munkholmら,Talanta 35:109(1988)
【非特許文献16】Petersonら,Anal.Chem.58:1427(1986)
【非特許文献17】Seitz,W.R.,Anal.Chem.56:16A−34A(1984)
【非特許文献18】Petersonら,Anal.Chem.52:864(1980)
【非特許文献19】Saariら,Anal.Chem.54:821(1982)
【非特許文献20】Saariら,Anal.Chem.,55:667(1983)
【非特許文献21】Zhujunら,Anal.Chem.Acta.160:47(1984)
【非特許文献22】Schwabら,Anal.Chem.56:2199(1984)
【非特許文献23】Wolfbeis,O.S.,「Fiber Optic Chemical Sensors」,編集CRC Press,Boca Raton,FL,1981,第2巻
【非特許文献24】Pantano,P.,Walt,D.R.,Anal.Chem.,481A−487A,第67巻(1995)
【非特許文献25】Dicknsonら,Nature 382:697(1996)
【非特許文献26】Whiteら,Anal.Chem.68:2191(1996)
【非特許文献27】Stillら,Acc.Chem.Res.29:155(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、酵素反応から発生したシグナルを増幅する新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、上記目的は、酵素反応から発生したシグナルを増幅する方法であって、結合された酵素を有する複数の同一の微小球の部分集団を含む微小球の集団を供給し、該微小球が光学ファイバー束の独立したファイバー又はファイバーの群と光学的に結合するように、該微小球の集団に光学ファイバー束を供給し、該微小球の集団にアナライトを供給し、それにより光学シグナルを発生させ、該光学シグナルを検出し、該光学シグナルを組み合わせて、該酵素反応からの増幅されたシグナルを生成することを含んでなる方法により達成することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様では、酵素は、官能基により部分集団の微小球に結合されている。好ましくは、官能基は、アミノ基又はカルボキシル基、若しくはスルフヒドリル基である。
【0020】
本発明の別の好ましい態様では、部分集団の微小球はリンカーを含み、このリンカーは官能基を有しており、好ましくは、二官能性リンカーである。
酵素は、直接的又は間接的に検出できるシグナルを発生する。酵素は、光学的に検出できるシグナルを発生させるためにさらに処理される副生成物を生成する。
【0021】
本発明の更に別の好ましい態様では、光学シグナルの組み合わせが生じる。光学シグナルは、少なくとも50の倍率で増幅される。
また、アナライト検出限界は、少なくとも100の倍率で減少される。
【0022】
部品の構築および組合せの種々の新規詳細を含めた本発明の前記および他の特徴ならびに他の利点は、ここに、添付の図面を参照してより具体的に記載し、請求の範囲で規定する。本発明を具体化する特別の方法およびデバイスは例示の目的で示され、本発明の限定ではないことが理解されよう。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく種々のおよび多数の態様で使用することができる。
【0023】
添付の図面において、参照文字は、異なる図面を通じて同一部品をいう。図面は必ずしもスケール通りではない。その代わりに、本発明の原理を説明する際に強調が為される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の自己解読微小球センサーを説明する模式的ダイアグラムである。
【図2】本発明のセンサー配列の調製、解読およびそれへの微小球の取り込みのプロセスフローダイアグラムである。
【図3】本発明のファイバーオプチックスセンサー配列における自己コード化された微小球部分集団の調製および設定を説明する模式的プロセスダイアグラムである。
【図4】本発明の方法によるマイクロウエルにおける微小球のファイバーオプチックス束および設置でのマイクロウエル形成を説明するプロセスフローダイアグラムである。
【図5】マイクロウエルキャビティーに挿入されたファイバーオプチックス束およびマイクロウエルの末梢端に形成されたマイクロウエルを説明する顕微鏡写真である。
【図6】タッピングおよび空気パルスによる撹乱前におよびそれに引き続いてのその対応するマイクロウエルにおける微小球の配列を示す顕微鏡写真である(微小球キャビティーにおける微小球の静電的結合を示す)。
【図7】本発明のファイバーオプチックスセンサーおよび関連する器具および制御系の模式的ダイアグラムである。
【図8】実施例7ないし17の光学測定で使用される実験装置を説明する模式的ダイアグラムである。
【図9】トルエン蒸気への暴露に際してナイルレッド色素を侵潤させた多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図10】メタノール蒸気への暴露に際してナイルレッド色素を侵潤させた多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図11】トルエンおよびメタノール蒸気に対する暴露に際してナイルレッド色素を侵潤したPS802コート多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図12】トルエンおよびメタノール蒸気に対する暴露に際してナイルレッド色素を侵潤したPDPOコート多孔性シリカビーズの特徴的光学応答を示す図である。
【図13】酢酸エチル蒸気への暴露に際してナイルレッド色素を侵潤させた多孔性シリカビーズの特徴的光学応答標示を示す図である。
【図14】メタノール蒸気のナイルレッド侵潤PMSビーズ部分集団測定においてシグナル−ノイズ比率を減少させるための光学応答シグナル合計の革新を示す図である。
【図15】メタノール蒸気のPMSビーズ部分集団測定におけるシグナル増強につき合計する光学応答シグナルの革新を示す図である。
【図16】トルエンおよびメタノール蒸気への暴露に際して、ナイルレッド色素を侵潤させた2つのPS802コート多孔性シリカビーズの特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図17】本発明の自己コード化されたファイバーオプチックスセンサー配列におけるナイルレッド侵潤多孔性シリカおよびPMSビーズ部分集団を解読するのに使用されるメタノール蒸気に対する特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図18】本発明の自己コード化されたファイバーオプチックスセンサー配列におけるn−プロパノール蒸気に対するナイルレッド侵潤多孔性シリカおよびPMSビーズ部分集団の特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図19】本発明の自己解読されたファイバーオプチックスセンサー配列におけるトルエン蒸気に対するナイルレッド侵潤多孔性シリカおよびPMSビーズ部分集団の特徴的光学応答標示を比較する図である。
【図20】トルエン蒸気に対する暴露に際しての、PS802コート多孔性シリカ、ポリメチルスチレンおよびポリメチルスチレン/ジビニルベンゼンビーズ部分集団のビーズ膨潤応答の差異を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、基体の表面の独立した位置の微小球の集団を含む分析化学センサー配列を含む分析化学系を提供する。微小球集団内には別々の微小球部分集団があり、その各々は、ある場合には標的アナライトであり得る参照アナライトの存在下で励起光エネルギーによって照射されると、特徴的光学応答標示を供する。部分集団はランダムに一緒に混合されているが、各微小球の同一性および位置は、参照アナライトの存在下で励起光エネルギーによって照射されると、特徴的光学応答標示を介して測定される。
【0026】
これは、配列の解読、すなわち、配列上の微小球の各部分集団の位置の同定を非常にシンプルに進行させる。好ましい態様において、微小球は、参照アナライト、一般的には蒸気のごとき流体に対して特徴的な、すなわち、ユニークな光学応答標示を呈する1以上のレポーター色素でコード化される。かくして、この態様において、参照アナライトへの全配列の暴露は、各部分集団の各微小球の位置の同定を可能とする。その結果、既知のアナライトに対して全センサー配列の応答を比較することによって、配列の個々のセンサー要素は、便宜には、1つのシンプルな測定において同時に解読される。本発明の分析化学センサー配列は、より複雑なマルチ工程コード化系の必要性を排除する。
【0027】
次いで、センサー配列を用いて、例えば、微小球がオリゴヌクレオチドまたは別法として、化学官能基のごとき生活性剤を含む場合、標的アナライト、例えば、実質的に相補的標識オリゴヌクレオチドまたは注目する標的アナライトとの相互作用または結合に際して、微小球の光学特徴の変化を探すことによって、標的アナライトの存在を検出することができる。当業者に認識されるごとく、これは、一般的に光学シグナル変化の使用を介して、種々の方法で行うことができる。この変化は、多くの異なるメカニズムを介して起こり得る。数個の例は、微小球への色素タグドアナライトの結合、微小球上または微小球近くの色素種の生成、存在する色素種の破壊、微小球上の色素とのアナライトの相互作用に際しての光学特徴の変化、またはいずれかの他の光学的応答性の現象を含む。かくして、一旦オリゴヌクレオチドプローブの各種、または特定の化学官能性を有する微小球の位置が同定されたならば、次いで、配列を用いて、好ましくは微小球上の生活性剤または化学的官能性と特異的に会合する未知の存在を検出することができる。
【0028】
別の好ましい態様において、標的アナライトを標識しない場合、配列中の各要素の光学応答を、種々のアナライトに対する特徴的光学応答標示は従前に測定され記録されているその対応する微小球部分集団タイプのための特徴的光学応答標示のライブラリーと比較することができ、未知のものの同一性は測定することができるか、あるいはセンサー配列を訓練して測定された応答を、次いで応答標示のライブラリーに添加される特定のアナライトと関連付ける。
【0029】
本発明は、分析化学センサー配列の革新を具体化することによって、現在の技術のある種の制限を克服し、ここに、特異的微小球部分集団組成物とレポーター色素との相互作用によって特徴的光学応答標示が生産される。本発明の分析化学センサー配列において、標的アナライトに対する応答シグナルは、標的アナライトに対する応答標示、および配列内の全センサー配列および部分集団に対するコード化シグナル双方として働く。かくして、配列の解読は、標的アナライトの配列応答測定の間に1工程で達成され、標的アナライトを同定するのに使用された応答そのものを利用する。かくして、微小球コード化は、標的アナライトに対する微小球部分集団応答の性質によって配列に取り込まれる。
【0030】
本発明において、部分集団の各微小球色素組合せは、液体または蒸気のごとき所与の流体に暴露されると、特徴的光学応答標示を有する。本発明の分析化学センサーは配列は自己コード化センサー配列であり、この概念は、特異的微小球マトリックス材料と組み合わせて色素のユニークな応答標示によって供される。かくして、センサー配列にランダムに分布した微小球部分集団は容易に同定でき、センサー配列を既知のテスト流体に暴露し、単に得られた光学応答標示を各微小球部分集団で得られたものにマッチングさせることによって配列中に設置後に迅速に同定し、位置決定することができる。このアプローチでは、微小球は自己コード化され、全センサー配列の応答標示は迅速に測定され、標的アナライトの測定のために貯蔵される。本発明の方法は、独立した光学応答標示を有する数千のセンサーを含有するセンサー配列の適用において特に有用である。
【0031】
本発明のさらなる利点は、それが、生活性剤(すなわち、核酸および抗体のごとき化合物)の合成が配列上のそれらの位置から離されることを可能とする、すなわち、生活性剤は微小球上で合成でき、次いで、微小球はパターン化された表面にランダムに分布する。参照アナライトに対する既知の応答を有する色素を存在させることによって、自己コード化されるので、これは、配列が後に「解読」できる、すなわち、配列が作成された後、配列上の個々のサイトの位置とその特定のサイトにおける微小球または生活性剤との相関を作成することができることを意味する。これは、微小球が配列上にランダムに分布でき、先行技術のイン・サイチュ合成またはスポッティング技術いずれかと比較して、迅速で安価なプロセスである。一旦配列に微小球を負荷すれば、配列は解読できるか、あるいは使用でき、後記にてより詳細に概説するごとく、テスト後に十分にまたは部分的に解読される。
【0032】
本発明の好ましい態様において、超微細な多孔性のミクロビーズまたは微小球が個々のセンサーとして利用される。ミクロン−スケールのセンサーの利用は改良されたセンサー応答および感度を提供する。センサー寸法の減少は、拡散の長さおよび個々のセンサーとアナライトとの相互作用の時間を実質的に減少させ、センサー感度を増強させ、検出限界を低下させつつ、センサー応答をかなり短くする。
【0033】
本発明のもう1つの態様において、センサー配列は、光学ファイバー束の末梢端に配されたビーズまたは微小球の部分集団よりなり、ここに、別々のビーズまたは微小球は、束内の独立したファイバーまたはファイバーの群に光学的に結合させることができる。典型的には、かかるファイバーオプチックス束は数千の独立したファイバーよりなるので、かくして、本発明は、励起光エネルギーによって照射されつつアナライトに暴露された場合に各々が特徴的光学応答を有する、非常に多数の、数千の独立した種々の部分集団のセンサー配列レメントを支持できる光学ファイバーセンサーを提供する。
【0034】
1つの好ましい態様において、ファイバーオプチックス束基体の末梢端は化学的にエッチングされて、独立したファイバーの端部においてキャビティーまたはマイクロウエルを生じさせる。好ましい態様において、ビーズの各1つは、束の光学ファイバーの末端で形成される別々のマイクロウエル内に位置する。これらのマイクロウエルは光学ファイバーのコアをクラッッドに関して非等方的にエッチングすることによって形成される。得られたエッチングされたキャビティーは、個々のミクロビーズセンサーを収容するための、および個々のビーズセンサーとファイバー束における独立した光学ファイバーとの光学的カップリングを提供するための寸法とされる。典型的なファイバーオプチックス束は数千の独立したファイバーを含有するので、この態様は、センサー配列中の数千のセンサーの個々の光学的カップリングを提供し、それにより、配列内の各ビーズ部分集団に対する非常に多数の独立したセンサー測定を提供する。
【0035】
利用できる非常に多数のビーズセンサー部分集団および各部分集団内の対応して非常に多数のセンサー要素のため、本発明の重要な革新は、単一センサー配列における数千の独立したセンサー応答測定を提供することにある。これは、各センサー配列ビーズ部分集団内のセンサービーズから取られた多数の独立した測定の特徴的光学応答標示の合計および増幅を提供することによって、本発明のもう1つの有意な革新を可能とする。このアプローチは、そのいずれもそれ自体特別に感受性ではない上皮層で見いだされるほとんど数千の異なる受容体細胞タイプのグルーピングの各々中の数千の受容体細胞からの組み合わされたシグナルが臭に対する高度に増幅された検知応答に導く、ヒト嗅覚の現実の挙動を直接的に模倣する[J.S.Kauer,Trends Neurosci.14:79−95(1991)]。
【0036】
かくして、本発明は、ヒト嗅覚系で見いだされる革新的臭増幅プロセスを具体化して、非常に多数のセンサー配列要素の低レベル応答を合計することによって、アナライトに対するセンサー配列感度を有意に増強させる。低蒸気濃度においていくつかの微小球からの応答を合計することによって、シグナル−ノイズ比の実質的な改良が達成され、10以上の因子を超える。この革新は大きさのオーダにわたってセンサー配列の検出限界の低下に導く。本発明のセンサー配列によって供される感度の増強は、一般に、合計に利用可能な多数の独立したセンサー微小球応答の平方根に直接的に比例することが知られている。かかる増強にて、ppmに近づく検出限界が達成できる。
【0037】
好ましい態様において、センサー微小球は、好ましくは微小球内に浸透したまたは捕獲されたレポーター色素を用いて自己コード化される。レポーター色素は、色原体または発蛍光体であり得るが、好ましくは、特徴的に強い光学シグナルのため、解読に対して良好なシグナル−ノイズを提供する蛍光色素である。必要ではないが、自己コード化は、特徴的かつ区別つれる発光を有する2以上のレポーティング色素を利用し、励起光エネルギーでの照射に際して、ピーク強度比を測定することによって達成することができる。
【0038】
もう1つの態様において、本発明は、所定の化学的特異性で設計された化学的センサー配列に関する。この態様において、所望のサイトを微小球の表面に付着させることによって、さらなる化学的機能性を各センサー部分集団に取り込むことができる。もう1つの態様において、センサー配列は束における、束上のまたは束近くの化学的官能性を担う微小球の集団を有する。標的アナライトと相互作用する個々のまたは多数の微小球に関連した光学標示変化をモニターする能力は、そこで、イメージプロセッシング技術を用いて、使用者により手動で、または自動で分析が行われる近接端への伝達のため、別々の光学ファイバーまたはファイバーオプチックス束のファイバーの群にこれらの標示変化を光学的にカップリングさせることによって提供される。
【0039】
各センサーは、それがマイクロウエル内の微小球の部分集団の異なる分布を有する限り、異なるが、陽性の光学応答または標示を呈する微小球のみが解読を要する注目する標的アナライトに変化する。従って、センサー製造よりもむしろ分析に負担がかかる。さらに、配列中の微小球およびファイバーは微小球であり得るので、シグナル発生から生起する蛍光領域は極端に均一であり、商業的に入手可能な顕微鏡分析ソウトウエアを用いて自動的に分析することができる。かかるイメージプロセッシングソウトウエアは、異なるスペクトル領域を自動的に規定し、数秒内に各領域内のセグメントの数を計数することができる。
【0040】
従って、本発明は、個々のサイトを含む表面を持つ少なくとも第1の基体を含む配列組成物を提供する。ここに「配列」とは、配列様式での、複数の生活性剤または化学的官能基を意味し;配列のサイズは、組成物および配列の未来敵使用に依存するであろう。約2つの異なる生活性剤(すなわち、異なる微小球)から数100万の剤を含有する配列を作成することができ、非常に大きなファイバーオプチックス配列が可能である。他の化学的官能性を含む同様の配列も構築することができる。一般に、配列は、微小球および基体のサイズ、ならびに配列の目的使用に応じて、2から10億以上の生活性剤または化学的官能性もと多くを含み、かくして、非常に高い密度、高い密度、中程度の密度、低密度および非常に低い密度の配列を作成することができる。非常に高密度の配列についての好ましい範囲は、約10,000,000ないし約2,000,000,000要素であり、約100,000,000ないし約1,000,000,000が好ましい。高密度配列は約10,000ないし約10,000,000要素の範囲であり、約1,000,000ないし約5,000,000が特に好ましい。約10,000ないし約50,000範囲の中程度の密度配列が好ましくは、約20,000ないし約30,000が特に好ましい。低密度配列は一般に10,000要素未満であり、約1,000ないし約5,000が好ましい。非常に低密度の配列は1,000要素未満であり、約10ないし約1000が好ましくは、約100ないし約500が特に好ましい。いくつかの態様において、本発明の組成物は配列様式でなくてもよく;すなわち、ある態様においては、単一の生活性剤を含む組成物は同様に作成することができる。加えて、ある配列においては、複数の基体を異なるまたは同一の組成で使用することができる。かくして、例えば、大きな配列はより小さい複数の基体を含むことができる。
【0041】
加えて、本組成物の1つの利点は、特にファイバーオプチックス技術を介して、極端に高い密度の配列を作成できることである。かくして、例えば、200nmのビーズを用いることができ、非常に小さなファイバーが知られているので、1mm2ファイバーオプチックス束において250,000の異なるファイバーおよびビーズもと多くを有することが可能であり、得られる0.5cm2当たり15,000,000より大の個々のビーズおよびファイバーの密度である。
【0042】
組成物は基体を含む。「基体」または「固体支持体」または本明細書中で他の文法的に同等のものは、微小球の付着または会合に適した区別される個々のサイトを含有するように修飾でき、少なくとも1つの検出方法に適用可能ないずれの材料も意味する。当業者に認識されるように、可能な基体の数は非常に多く、限定されるものではないが、ガラスおよび修飾され機能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレンおよびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン等を含む)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリカ−ベースの材料(ケイ素および修飾されたケイ素を含む)、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光学ファイバー束、および種々の他のポリマーを含む。一般に、基体は光学検出を可能とし、認識できるように蛍光を発しない。
【0043】
一般に、基体は平坦または平面であるが、当業者に認識されるように、他の立体配置の基体も同様に使用することができる;例えば、微小球への試料アクセスを可能としかるプラスチックの多孔性ブロツクに微小球を包埋させ、かつ検出用の共焦点顕微鏡を用いて、三次元立体配置を用いることができる。同様に、微小球は、フロースルー試料分析のためにチューブの表面内部に置いて、試料容量を最小化することができる。好ましい基体は、後記する光学線束、およびガラス、ポリスチレンおよび他のプラスチックおよびアクリルのごとき平面基体を含む。
【0044】
基体の少なくとも1つの表面は、後の微小球の会合のために区別される個々のサイトを含有するように修飾される。これらのサイトは、微小球がウエル中にあるように、物理的に改変されたサイト、すなわち、微小球を保持できる基体中のウエルまたは小さな窪みのごとき物理的立体配置、または他の力(磁気的または圧縮的)、化学的に官能化されたサイトのごとき化学的に改変されたまたは活性なサイト、静電気的に改変されたサイト、疎水性/親水的に官能化されたサイト、接着スポット等の使用を含むことができる。
【0045】
該サイトはパターン、すなわち、規則的なデザインまたは立体配置であってよく、またはランダムに分布してもよい。好ましい態様は、サイトがX−Y座標面にアドレスすることができるように規則的パターンのサイトを利用する。この意味での「パターン」は反復単位セル、好ましくは、基体上で微小球の高密度を可能とするものを含む。しかしながら、これらのサイトは独立したサイトでなくてもよい。すなわち、例えば、いずれかの位置の微小球の付着を可能とする接着性または化学的官能性の均一な表面を使用することができる。すなわち、基体の表面は修飾されて、それらのサイトが他のサイトと隣接するか隣接しないかに拘わらず、個々のサイトにおける微小球の付着を可能とする。かくして、基体の表面は、単一関連微小球を有することができるにすぎない独立したサイトが形成されるように修飾することができ、基体の表面は修飾され、微小球はいずれの個所にも降りることができるが、それらは独立したサイトで終了する。
【0046】
好ましい態様において、基体の表面はウエル、すなわち、基体の表面中の窪みを含有するように修飾される。これは、限定されるものではないが、フォトリソグラティー、スタンピング技術、成型技術およびミクロエッチングを含めた種々の技術を用いて当該分野で知られているようになすことができる。当業者に認識されるように、使用される技術は基体の組成および形状に依存する。
【0047】
好ましい態様においては、物理的改変を基体の表面に行ってサイトを生じさせることができる。好ましい態様において、基体はファイバーオプチックス束であり、基体の表面はファイバー束の末端である。この態様において、ウエルは個々のファイバーを含むファイバーオプチックス束の末端または末梢端で作成される。この態様において、個々のファイバーのコアは、小さなウエルまたは窪みがファイバーの一端で形成されるように、クラッドに対してエッチングされる。ウエルの所要の深さはウエルに添加されるべき微小球、例えばビーズのサイズに依存するであろう。
【0048】
一般的には、この態様においては、微小球はウエル中で共有結合していないが、ウエルは一般的には後記するごとくさらに化学的に官能化することができ、架橋剤を用い、または物理的バリアーを用いることができ、すなわち、微小球上のフイルムまたは膜である。
【0049】
好ましい態様において、基体の表面は、本発明の微小球を基体上の独立したサイトまたは位置に共有結合的にまたは非共有結合的に付着させるのに用いることができる化学的に修飾されたサイトを含有するように修飾される。この意味において「化学的に修飾されたサイト」は、限定されるものではないが、一般的には対応する反応性官能基を含有する、微小球を共有結合的に付着させるのに使用できる、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基およびチオール基を含めた化学的官能基のパターンの付加;(接着剤の付加または接着剤の直接的付加のための先行化学的機能化によって)微小球に結合するのに使用することができる接着剤のパターンの付加;微小球の静電的付着のための、すなわち、微小球がサイトとは反対の荷電基を含む場合の、(化学的官能性化と同様の)荷電基のパターンの付加;実験条件下で同様に疎水性または親水性の微小球の付加の結果、ヒドロ親和性ベースでサイトへの微小球の会合となるように、サイトを差分的に疎水性または親水性とする化学的官能基のパターンの付加を含む。例えば、水性系における疎水性ビーズでの疎水性サイトの使用は、優先的にサイトへのビーズの会合を駆動する。前記で概説したごとく、この意味での「パターン」は、独立したサイトにおけるビーズの付着を可能とする表面の均一な処理、ならびに独立したサイトが得られる表面の処理の使用を含む。当業者に認識されるように、これは、種々の方法で達成することができる。
【0050】
本発明の組成物は、さらに、微小球の集団を含む。ここに「集団」とは、配列につき前記で概説した複数の微小球を意味する。集団内には別々の部分集団があり、これは、単一の微小球または複数の同一の微小球であり得る。すなわち、いくつかの態様では、後記でより詳細に概説するごとく、配列は各生活性剤につき単一の微小球のみを含有することができる;好ましい態様は複数の各タイプの微小球を利用する。
【0051】
本明細書中の「微小球」または「ビーズ」または「パターン」または文法的同等体は小さな区別される粒子を意味する。ビーズの組成物は、生活性剤のクラスおよび合成の方法に依存して、変化するであろう。適当なビーズ組成物は、ペプチド、核酸、および限定されるものではないが、プラスチック、ガラス、ポリスチレン、メチルスチレン、アクリルポリマー、常磁性材料、トリアゾル、炭素、黒鉛、二酸化チタン、ラテックスまたはセファロース(Sepharose)のごとき架橋デキストラン、セルロース、ナイロン、架橋ミセルおよびテフロンを含めた有機サイトを用いることができる。
【0052】
合成ビーズは、種々の縮合またはビニル前駆体モノマーを重合または共重合することによって、または組み合わせたポリマー合成によって、製造することができる。かかるポリマーは、リン酸トリトリル(TTP)、リン酸トリフェニル(TTP)またはフタル酸ジブチル(DBP)のごとき可塑剤の添加によってさらに修飾することができる。センサー配列部分集団で使用される特に有用な色素解読ビーズ候補は、種々の蒸気アナライトへの暴露に際しての膨潤、その化学的構造による特徴的極性の差異、または種々の蒸気アナライトでの特徴的な化学的吸収応答いずれかを呈するポリマーおよびコポリマー材料である。ビーズ材料として候補ポリマーをプレスクリーニングし、所望の膨潤に基づいて候補を評価することにおいて、2つの特に有用な文献はR.A.McGillら,Chemtch,9月24日,1996,27−37頁およびJ.W.Grateら,Anal.Chem.,68:913−7(1996)である。
【0053】
種々のビーズ化学を非常に多様なセンサービーズ部分集団を製造するのに利用することができる。例えば、以下の組成物は候補ビーズ材料であることが判明している:シリカ、ポリ(エチレングリコール)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、PDPO[ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)]、PS078.5[トリエトキシシリル−修飾ポリブタジエン(トルエン中50%)]、PS078.8[トルエン中ジエトキシメチルシリル−修飾ポリブタジエン]、CPS2067[アクリルオキシプロピルメチル−シクロシロキサン]、PS802[(80−85%)ジメチル−(15−20%)(アクリルオキシプロピル)メチルシロキサンコポリマー]、PS901.5ポリ(アクリルオキシプロピル−メチル)シロキサン]、PS851[(97−98%)ジメチル−(2−3%)(メタクリルオキシプロピル)メチルシロキサンコポリマー]、PABS[ポリ(アクリロニトリル−ブチジエン−スチレン)]、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン−アクリロニトリル75:25)、アクリルオキシプロピルメチルシロキサン−ジメチルシランコポリマー、メチルスチレン、ポリスチレン、アクリルポリマー、およびポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)。C8、C18およびフェニルヘキシルを含むビーズのごとき、フェノメネックスカラムで使用される種々の結合相に適合した商業的に入手可能なシリカビーズのごとき他の吸着剤はセンサービーズマトリックスとして有用である。アルミナおよびゼオライトのごとき無機材料も利用することができる。識別可能で適切な膨潤挙動、極性および化学的吸収特性を有するポリマーおよびコポリマーもまたビーズ候補材料として予測される。特に有用なビーズ候補材料は、出典明示して本明細書の一部とみなすWaltらに対する米国特許第5,512,490号の表7、表8および表10にリストされているラポリマー、コポリマー、およびポリマー化モノマーを含む。別の態様において、いずれかの合成されたまたは商業的に入手可能なビーズ材料は、さらに、表面処理またはコーティングいずれかを適用して特徴的な光学応答標示を修飾することによって修飾することができる。例えば、多孔性シリカビーズを利用する場合、N−オクタデシルトリエトキシシランまたは3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートをシラン化処理として適用することができる。一般に、Bangs Laboratories,Fishers INからの「Microsphere Detection Guide」はビーズ材料の選択において助けとなるガイドである。
【0054】
特定のセンサー配列においてセンサー配列要素を形成するのに使用される部分集団の選択は、主として、センサーの分析目的および検出で標的化される特異的アナライトに基づいて測定される。典型的には、微小球部分集団は、標的アナライトの存在下で励起光エネルギーによって照射する場合、その特徴的光学応答標示の区別できる差異に基づいて選択される。自己コード化センサー配列を製造するにおいて、レポーティング色素を浸透させ、参照アナライトおよび標的アナライト双方の存在下で、励起光エネルギーによって照射した場合、特徴的光学応答標示を有する微小球部分集団が選択される。かくして、センサー配列で好ましい微小球材料は、励起光エネルギーによって照射した場合にアナライトの存在下で特徴的光学応答標示を生じる微小球部分集団における物理的または化学的差異に基づいてプレ選択される。
【0055】
ビーズ材料極性、化学的構造、化学的官能性、微小球表面積、微小球孔サイズ、微小球膨潤特徴、または化学的吸着挙動のごとき特徴は、別々にまたは組み合わせて、所与の微小球部分集団の特徴的光学応答標示に寄与する。1つの態様において、蒸気および液体アナライトを含めた流体に浸透するまたは半透性のビーズ材料が好ましい。もう1つの態様において、蒸気または液体アナライトのごとき流体と接触するに際して膨潤するビーズ材料が好ましい。一般に、ユニークな極性、構造、孔サイズ、表面積、官能性または吸着特徴を有するビーズ材料は本発明のセンサービーズ材料で特に有用である。
【0056】
微小球は、特徴的ビーズマトリックス材料と組み合わせて、ビーズを同定するのに使用でき、かくして、参照アナライトへの暴露に際して、付着された生活性剤を同定するのに使用できる光学応答標示を提供するレポーティング色素を含む。すなわち、微小球の部分集団(すなわち、各センサー要素)は、微小球のその部分集団のユニークな生活性剤または化学的機能性を同定するのに使用することができるユニークな光学応答標示または光学タグを含む;ユニークな特徴的光学応答標示を含むビーズは、異なる光学応答標示を持つ他の位置におけるビーズから区別することができる。ここに概説するごとく、各生活性剤は、その生活性剤を含むいずれの微小球も参照アナライトまたは流体への暴露に際して特徴に基づいて同定可能であるように、会合したユニークな光学応答標示を有するであろう。後記にてより詳細に概説するごとく、例えば、もう1つのレベルの同定を用いる場合、例えば、異なるサイズのビーズを用いる場合、または配列に異なるバッチのビーズを順次負荷する場合、光学応答標示を再使用または複製することができる。
【0057】
化学的色素インジケーターの選択は、本発明のファイバーオプチックスセンサー配列系のデザインにとり同等に重要である。好ましい態様において(図1参照)、少なくとも1つの色素11を微小球10に取り込む。好ましい態様において、この色素11は、センサー配列中の微小球部分集団位置を同定するための解読色素、および注目する標的アナライトを検出するためのレポーティング色素双方として作用する。別の態様において、2以上の色素をコード化レポーター色素として利用することができる。好ましい態様において、少なくとも1つの色素を解読色素として用い、レポーティング色素としての分析の間に別の色素を添加する。2以上のコード化色素を使用する1つの態様において、色素対に対するピーク強度の比率は、微小球部分集団をコード化するのに使用することができ、別のレポーター色素を分析の間に付加することができる。別の態様において、アクリロイルフルオレセインのごとき共役色素を利用することができ、ここに、色素を直接的に合成ポリマーまたはコポリマービーズ材料に配合するのが望ましい。
【0058】
レポーター色素11は色原体タイプまたは発蛍光体タイプのいずれかであり得るが、蛍光色素が好ましい。何故ならば、蛍光シグナルの強度は解読する場合に良好なシグナル−ノイズ比率を提供するからである。最も好ましい態様では、極性−感受性色素またはソルバトクロミック色素が利用される。ソルバトクロミック色素は、その吸収または発光スペクトルがその周囲の環境の極性に対して感受性であり、それによって改変される。典型的には、これらの色素は局所的極性の変化のためピンク色発光波長を呈する。かかる波長シフトを引き起こす極性変化は、特定のセンサー微小球部分集団で使用される微小球マトリックス、または標的アナライトの存在によって導入することができる。極性の変化は、ビーズタイプの部分集団をコード化するのに、および特異的標的アナライトを検出するのに有用な特徴的光学応答標示を生じる。1つの好ましいソルバトクロミック色素、ナイルレッド(Eastman Kodak,Rochester,NY)は、局所的環境極性の変化に伴ってその発光波長ピークにおいて大きなシフトを呈する。加えて、ナイルレッドは広範囲の溶媒に可溶性であり、光化学的に安定であり、比較的強い蛍光ピークを有する。当該分野で通常に知られており、本発明で色素として使用することができるさらなる色素はWaltらに対する米国特許第5,512,490号で見いだすことができ、そのうち表3、表4、表5、表6および表11は本明細書の一部を構成する。
【0059】
微小球検知要素の異なる部分集団は、種々の組成のポリマーマトリックスにナイルレッドを一体化させることによって本発明のセンサー配列で製造することができる。種々の極性、疎水性、孔サイズ、柔軟性および膨潤傾向の異なるポリマーマトリックスから作成した微小球部分集団にナイルレッドを配合することによって、個々の流体の分子と異なって反応するセンサー微小球のユニークな部分集団が生産され、有機流体に暴露した場合に異なる蛍光応答を生じる。この結果、種々のアナライトに暴露した場合に特徴的光学応答標示を有する各微小球部分集団がもたらされる。
【0060】
好ましい態様において、色素は微小球の表面に共有結合される。これは、微小球の表面上の官能基を用い、生活性剤の付着につき後記で一般的に概説したごとくになすことができる。当業者に認識されるごとく、これらの付着は色素に対する効果を最小化するためになされる。
【0061】
好ましい態様において、色素は、一般的には、ビーズマトリックスまたはビーズの孔に色素を捕獲することによってビーズと共有結合的に会合させる。
【0062】
1つの態様において、色素は微小球よりはむしろ生活性剤に付加されるが、これは一般的には好ましくはない。
【0063】
図2は、センサー微小球部分集団およびセンサー微小球配列の調製を説明するプロセスダイアグラムである。工程50において、種々の微小球部分集団の懸濁液は商業的に入手可能なビーズ材料または好ましいポリマー材料から作成された合成ビーズ材料から個々に調製される。この工程では、ビーズはプレ洗浄され、実施例2および実施例3で使用されるシラン化溶液のごときカップリング剤で表面処理され、あるいは実施例6で使用されるTTP、TPPまたはDBPのごとき可塑剤で処理される。微小球部分集団を調製するにおいて、各ビーズグルーピングは、典型的には、分散を強化するための界面活性剤または分散剤の添加を含み得る適当な溶媒に分散される。例えば、Tween 20(J.T.Baker,Cleveland,OH)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートは界面活性剤として特に有用であることが判明している。
【0064】
色素溶液は、引き続いての同定のために微小球部分集団の各々をタギングまたはコード化し、後の解読工程でセンサー配列において部分集団にインデックスを付すために調製される51。最も好ましい態様において、単一の色素は、色素をコード化するセンサー微小球部分集団として、および標的アナライトの存在を検出するのに使用されるアナライトレポーティング色素として働く。もう1つの態様において、色素はセンサービーズ部分集団をコード化するためにだけ働き、さらなる色素は標的アナライトの検出用レポーター色素として働く。1つの態様において、2以上の色素が微小球部分集団に配合され、色素対のピーク強度比をセンサー微小球部分集団をコード化するために使用することができる。典型的には、単一のソルバトクロミック色素をコード化色素およびレポーティング色素として使用する。好ましい態様においては、ナイルレッド色素(Aldrich,Milwaukee,WI)を用いる。各微小球部分集団へ色素を配合するには、工程50で調製されたビーズの懸濁液を、工程51で調製された色素溶液と工程52で混合する。好ましくは、工程52においては、ビーズまたは微小球は、微小球を膨潤させる有機溶媒中に溶解させた色素を含む色素溶液中に入れる。工程54においては、ビーズを洗浄し、遠心しまたは濾過して、過剰の色素を除去する。微小球は、典型的には、水、メタノール、または微小球を膨潤させないいずれかの適当な溶媒中で洗浄し、ここに、色素は依然として可溶性である。これは、微小球から色素をすすぐことなく、残存する色素をすすぎ去ることを可能とする。別の態様において、過剰の色素の除去に続き、化学的サイトまたは官能基をビーズ表面に付着させることができる。
【0065】
ビーズは球形である必要は無く;不規則な粒子を用いることもできる。多孔性および非多孔性ビーズを利用することができるが、レポーター色素を浸透させ、レポーター色素、生活性剤等の付着のための表面積の増加のため、微小球センサーの応答性および感受性を増強させるのに好ましい。ビーズサイズは、ナノメーター、すなわち100nmからミリメーター、すなわち1mmの範囲であり、約0.2ミクロンないし約200ミクロンのビーズが好ましく、約0.5ないし約5ミクロンが特に好ましいが、いくつかの態様では、より小さいビーズを用いることができる。図1は、ビーズ孔12内に捕獲されたレポーティング色素11を含む典型的なビーズまたは微小球センサー10の構成を説明する。
【0066】
本発明の鍵となる構成は、ビーズがアッセイの間に移動しないように、基体の表面の独立したサイトにおけるビーズの会合または付着を可能とする基体/ビーズ対合の使用であることに注意すべきである。
【0067】
本発明は、ビーズベースの分析化学系を具体化し、ここに、ビーズまたは微小球は種々の無機または有機材料から製造され、ここに、各材料は、励起光エネルギーで照射しつつ、参照アナライトへの暴露に際して、センサー配列内の特別のビーズの同一性および位置を保証するのを可能とする特徴的一時的光学応答標示によって同定することができる。本発明は、励起光エネルギーのいずれかの源の利用を提供し、特異的波長に限定されない。励起光の主要な要件は、それが、所与のビーズ組成物に会合したレポーター色素の照射に際して、特徴的波長の発光された光を生じることである。
【0068】
好ましい態様において、微小球は、さらに、生活性剤を含む。「候補生活性剤」または「生活性剤」または「化学的機能性」または「結合リガンド」とは、本明細書で用いるごとく、本発明の微小球に付着させることができるいずれかの分子、例えば、タンパク質、オリゴペプチド、小さな有機分子、多糖、ポリヌレオチド等を記載することを意味する。本発明の組成物は、2つの主要な用途を有する。好ましい態様において、後記にてより詳細に記載されるごとく、組成物は特定の標的アナライトの存在;例えば、酵素、抗体、または抗原のごとき、特定のヌクレオチド配列または特定のタンパク質の存在または不存在を検出するのに使用される。別の好ましい態様において、組成物は、特定の標的アナライトに結合させるための、生活性剤、すなわち、薬物候補をスクリーニングするのに使用される。
【0069】
生活性剤は多数の化学的クラスを含むが、典型的には、それらは、有機分子、好ましくは、100を超えて約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物である。生活性剤はタンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの機能的化学基を含む。生活性剤は、しばしば、1以上の前記官能基で置換された環状炭素または複素環構造および/または芳香族またはポリ芳香族構造を含む。生活性剤は、ペプチド、核酸、多糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、構造アナログまたは組合せを含めた生体分子の中で見いだされる。特に好ましいものは核酸およびタンパク質である。
【0070】
生活性剤は合成および天然化合物のライブラリーを含めた広い範囲の源から得ることができる。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドの発現を含めた、広い範囲の有機化合物および生体分子のランダムおよび指向された合成で多数の手段が利用できる。別法として、細菌、菌類、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが入手でき、容易に生産される。加えて、天然または合成により生産されたライブラリーおよび化合物は、通常の化学的、物理的および生物化学的手段を介して容易に修飾される。公知の薬理剤を、アシル化、アルキル化、エステル化および/または増幅のごとき指向されたまたはランダムな化学的修飾に付して、構造的アナログを生成させることができる。
【0071】
好ましい態様において、生活性剤はタンパク質である。ここに「タンパク質」とは、少なくとも2つの共有結合されたアミノ酸を意味し、これはタンパク質、ポリペプチド、オルゴペプチドおよびペプチドを含む。タンパク質は天然に生じるアミノ酸およびペプチド結合、または合成ペプチドミメティック構造よりなることができる。かくして、本明細書で用いる「アミノ酸」または「ペプチド残基」は天然に生じるおよび合成のアミノ酸を共に意味する。例えば、ホモ−フェニルアラニン、シトルリンおよびノルロイシンは本発明の目的のアミノ酸と考えられる。側鎖は、(R)または(L)立体配置である。好ましい態様において、アミノ酸は(S)またはL−立体配置である。もし非天然側鎖が用いられれば、非アミノ酸置換基を用いて、例えば、インビボ分解を防止し、または遅らせることができる。
【0072】
1つの好ましい態様において、生活性剤は天然に生じるタンパク質または天然に生じるタンパク質の断片である。かくして、例えば、タンパク質、タンパク質性細胞抽出物のランダムまたは指向された消化物を含有する細胞抽出物が使用することができる。このようにして、原核生物および真核生物タンパク質のライブラリーを、ここに記載する系をスクリーニングするのに作成することができる。この態様で特に好ましいものは、細菌、菌類、ウイルス、および哺乳動物のライブラリーであり、後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。
【0073】
好ましい態様において、生活性剤は約5ないし約30個のアミノ酸のペプチドであり、約5ないし約20個のアミノ酸が好ましく、約7ないし約15個が特に好ましい。ペプチドは、前記で概説した天然に生じるタンパク質の消化物、ランダムペプチド、または「バイアス化」されたランダムペプチドであり得る。「ランダム化された」または文法的に同等のものは、ここでは、各核酸およびペプチドが、各々、ランダムヌクレオチドおよびアミノ酸より実質的になることを意味する。一般的にこれらのランダムペプチド(または後記する核酸)は、化学的に合成されるので、それらはいずれかのヌクレオチドまたはアミノ酸をいずれかの位置に取り込むことができる。合成プロセスは、ランダム化タンパク質または核酸を生成させ、配列の長さにわたって可能な組合せの全てまたはほとんどの形成を可能とし、かくして、ランダム化された生活性タンパク質性剤のライブラリーを形成するように設計することかできる。
【0074】
好ましい態様において、生活性剤のライブラリーが使用される。ライブラリーは、標的アナライトに対して恐らくは十分な範囲の結合を行うための生活性剤の十分に構造的に多様な集団を提供するはずである。従って、相互作用ライブラリーは、そのメンバーの少なくとも1つが標的アナライトに対する親和性をそれに与える構造を有するように、十分に大きくなければならない。相互作用ライブラリーの必要な絶対的サイズを正確に計るのは困難であるが、天然は免疫応答に関してヒントを提供し;107〜108の異なる抗体の多様性は生物が直面する最も可能な抗原と相互作用する十分な親和性との少なくとも1つの組合せを提供する。公表されたイン・ビトロ選択技術は、107〜108のライブラリーサイズが標的に対する親和性を持つ構造を見いだすのに十分であることを示している。かくして、好ましい態様において、少なくとも106、好ましくは少なくとも107、より好ましくは少なくとも108、最も好ましくは少なくとも108の異なる生活性剤が主題の方法で同時に分析される。好ましい方法はライブラリーサイズおよび多様性を最大化させる。
【0075】
1つの態様において、ライブラリーは十分にランダム化され、いすれかの位置における配列優先性または一定性はない。すなわち、配列内のいくつかの位置は一定に保持されるか、または限定された数の可能性から選択される。例えば、好ましい態様において、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基は、架橋のためのシステイン、SH−3ドメインのためのプロリン、リン酸化サイトのためのセリン、トレオニン、チロシンまたはヒスチジンの生成に向けて、またはプリン等に対して、例えば、疎水性アミノ酸、親水性残基、立体障害的に片寄った(小または大)残基の規定されたクラス内でランダム化される。
【0076】
好ましい態様において、生活性剤は核酸である(一般に、ここでは「プローブ核酸」または「候補プローブ」)である。ここでの「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または文法的に同等のものは、一緒に共有結合した少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。本発明の核酸は、一般に、ホスホジエステル結合を含有するが、ある場合には、後記で概説するごとく、例えば、ホスホルアミダイト(Beaucageら,Tetrahedron,49(10);1025およびその中の文献; Letsinger,J.Org.Chem.35:3800(1970); Sprinzlら,Enr.J.Biochem.,81:579(1977); Letsingerら,Nucl.Acids.Res.14:3487(1986); Sawaiら,Chem.Lett.,805(1984), Letsingerら,J.Am.Chem.Soc.,110;4470(1988);およびPauwelsら,Chemica Scripta,26:141(1986))、ホスホロチオエート(Magら,Nucleic Acids Res.,19:1437(1991);および米国特許第5,644,048号)、ホスホロジチオエート(Briuら,J.Am.Chem.Soc.,111:2321(1989))、O−メチルホスホロアミダイト結合(Eckstein,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,Oxford University Press)、およびペプチド核酸骨格および結合(Eghom,J.Am.Chem.Soc.,114:1985(1992); Meierら,Chem.Int.Ed.Engl.,31:1008(1992); Nielsen,Nature,365:566(1993); Carissonら,Nature,380:207(1996),これらの全てが本明細書の一部を構成する)を含む別の骨格を有してもよい核酸アナログが含まれる。他のアナログ核酸は陽性骨格(Denpcyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6097(1995));非イオン性骨格(米国特許第5,386,023号;第5,637,684号;第5,602,240号;第5,216,141号および第4,467,863号; Kiedrowshlら,Angrew.Chem.Intl.Ed.English,30:423(1991); Letsingerら,J.Am.Chem.Soc.,110:4470(1988); Letsingerら,Nucleosides & Nucleotides,13:1597(1994);Chapters2 and 3,ASC シンポジウムシリーズ580,「Carbohydrate Modification in Antisense Research」,編集Y.S.Sanghul and P.Dan Cook; Mesmaekerら,Bioorganic & Medical Chem.Lett.,4:395(1994); Jeffsら,J.Biomolecular NMR,34:17(1994); Tetrahedron Lett,37:743(1996))および非リボソーム骨格(米国特許第5,235,033号および第45,034,506号,および第6および7章,ASC シンポジウムシリーズ580、「Carbohydrate Modifications in Antisense Research」,編集Y.S.SanghulおよびP.Dan Cookに記載されているものを含む)を含む。1以上の炭素環糖を含有する核酸もまた核酸の定義内に含まれる(Jenkinsら,Chem.Soc.Rev.,(1995) 169−176頁)。いくつかの核酸アナログがRawls,C & E News,June 2,1997,35頁に記載されている。これら文献の全てが本明細書の一部を構成する。リボソーム−ホスフェート骨格のこれらの修飾は、かかる標識のごときさらなるサイトの付加を容易とし、または生理学的環境におけるかかる分子の安定性および半減期を増加させるためになされる。加えて、天然に生じる核酸およびアナログの混合物は作成することができる。別法として、異なる核酸の混合物、および天然に生じる核酸およびアナログの混合物を作成することができる。核酸は特定されるごとく一本鎖または二本鎖であってよく、あるいは二本鎖または一本鎖配列の双方の部分を含有することができる。核酸はDNA、ゲノムおよびcDNA、RNAまたはハイブリッドであることができ、ここに、核酸はデオキシリボ−およびリボ−核酸のいずれかの組合せ、ウラシル、アデニン、チミジン、シトシン、ギアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニジンを含めた塩基、およびニトロピロールおよびニトロインドール等のごとき塩基対アナログを含有する。
【0077】
タンパク質について一般的に前記したごとく、核酸生活性剤は天然に生じる核酸、ランダム核酸、または「バイアス化」されたランダム核酸であり得る。例えば、原核生物または真核生物の消化物をタンパク質につき前記で概説したごとくに使用することができる。
【0078】
一般に、本発明のプローブは、標的および本発明のプローブのハイブリダイゼーションが起こるように、標的配列(前記したごとく、試料の標的アナライト配列または他のプローブ配列)に相補的に設計される。この相補性は、完全である必要は無く;標的配列および本発明の一本鎖核酸の間のハイブリダイゼーションと干渉するいずれかの数の塩基対ミスマッチがあり得る。しかしながら、もし突然変異の数が余りにも多くてハイブリダイゼーションが最もストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件下で起こり得るならば、配列は相補的標的配列ではない。かくして、「実質的に相補的な」とは、プローブが標的配列に十分に相補的で選択された反応条件下でハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は当該分野で知られている;例えば、本明細書の一部を構成するManiatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,1989およびShort Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編参照。ストリンジェントな条件は配列−依存的であり、異なる条件において異なるであろう。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに対するかなりのガイドが、Tijssen,Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に見いだされる。一般に、ストリンジェント条件は、規定されたイオン強度pHにおいて特異的配列についての熱融解点(Tm)よりも約5−10℃低く選択される。該Tmは標的に相補的なプローブの50%が平衡時に標的配列にハイブリダイズする(規定されたイオン強度、pHおよび核酸濃度下での)温度である(標的配列は過剰に存在するので、Tmにおいて、プローブの50%が平衡時に占められる)。ストリンジェント条件は、pH7.0ないし8.3において、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、典型的には、0.01ないし1.0Mナトリウムイオン濃度であり、該温度は短いプローブ(例えば、10ないし50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドよりも大)では少なくとも約60℃である。また、ストリンジェント条件は、ホルムアミドのごとき脱安定化剤の添加で達成することができる。もう1つの態様において、よりストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件が使用される;例えば、当該分野で知られているように、中程度または低いストリンジェンシーを用いることができる;ManiatisおよびAusubel、前掲、およびTijssen参照。
【0079】
本明細書における「標的配列」または文法的同等のものは、核酸の一本鎖上の核酸配列を意味する。標的配列は遺伝子の一部、調節配列、ゲノムDNA、cDNA、mRNAおよびrRNAその他を含めたRNAであってよい。それはいずれの長さであってもよく、より長い配列がより特異的であることが理解される。当業者に理解されるように、相補的標的配列は多くの形態を取り得る。例えば、それは長い核酸配列、すなわち、遺伝子またはmRNAの全てまたは一部、とりわけ、プラスミドまたはゲノムDNAの制限断片に含有されていてもよい。後記で十分概説されるように、プローブは、試料中の標的配列の存在または不存在を測定するために標的配列にハイブリダイズされる。一般に、この用語は当業者に理解されるであろう。
【0080】
好ましい態様において、生活性剤は有機化学部分、文献で入手可能な種々のものである。
【0081】
好ましい態様において、各ビーズは、単一タイプの生活性剤よりなるが、複数の個々の生活性剤は好ましくは各ビーズに付着される。同様に、好ましい態様は、ユニークな生活性剤を含有する1を超える微小球を利用する、すなわち、微小球の部分集団の使用によって系に作られた縮重があり、部分集団中の各微小球は同一の生活性剤を含有する。
【0082】
当業者に認識されるように、生活性剤は直接ビーズ上に合成されるか、あるいはそれらは作成され、次いで、合成後に付着させることができる。好ましい態様において、リンカーを用いて、生活性剤をビーズに付着させて、良好な付着、十分な柔軟性を可能として、標的分子との良好な相互作用を可能とし、また望ましくない結合反応を回避する。
【0083】
好ましい態様において、生活性剤はビーズ上に直接的に合成される。当該分野で知られているように、化学化合物の多くのクラスは、ペプチド、有機部分および核酸のごとく、現在は固体支持体上に合成される。現在の合成技術を調節してビーズを用いるのは比較的直裁的な方法である。
【0084】
好ましい態様においては、生活性剤がまず合成され、次いで、ビーズに共有結合される。当業者に認識されるように、これは、生活性剤の組成およびビーズに依存してなされる。チオール、アミン、カルボキシル等のごとき化学的に反応性の基である種のポリマーのごとき固体支持体表面を機能性化することは、当該分野で一般的に知られている。従って、使用者による所望の機能性の付与を容易とする表面化学を有する「ブランク」微小球を用いることができる。ブランク微小球用のこれらの表面化学のいくつかの例を表1にリストする。
【0085】
これらの官能基を用いて、一般的に、公知の化学を用い、いずれかの数の異なる生活性剤をビーズに付加することができる。例えば、炭水化物を含有する生活性剤をアミノ−機能性化支持体に付着させることができ、標準的な技術を用い、炭水化物のアルデヒドを作成し、次いで、アルデヒドを表面のアミノ基と反応させる。別の態様において、スルフヒドリルリンカーを用いることができる。システイン含有タンパク質性剤を支持体に付着させるのに用いることができるSPDP、マレイミド、α−ハロアセチルおよびピリジルジスルフィドのごとき当該分野で知られている多数のスルフヒドリル反応性リンカーがある(例えば、本明細書の一部を構成する1994年のPierce Chemical Companyカタログ、架橋剤についての技術セクション、155−200頁参照)。別法として、生活性剤上のアミノ基を、表面のアミノ基への付着に用いることができる。例えば、ホモ二機能性およびヘテロ二官能性リンカーを含めた非常に多数の安定な二官能性基が当該分野でよく知られている(Pierceカタログおよびハンドブック、155−200頁)。さらなる態様において、(表面からのまたは生活性剤からの)カルボキシル基はよく知られたリンカーを用いて誘導体化させることができる(Pierceカタログ参照)。例えば、カルボジイミドはアミンのごとき良好な求核試薬による攻撃のためのカルボキシル基を活性化する(本明細書の一部を構成するTorchilinら,Critical Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems,7(4):275−306(1991)参照)。また、例えば、ポリマーへの抗体の付着のための、当該分野で知られている他の技術を用い、タンパク質性生活性剤を付着させることもできる(Slinkinら,Bioconj.Chem.2:342−348(1991); Torchilinら,前掲; Trubetskoyら,Biocnj.Chem.3:323−327(1992); Kingら,Cancer Res.54:6176−6185(1994);およびWilburら,Bioconjugate Chem.5:220−235(1994)参照、その全てが本明細書の一部を構成する)。生活性剤は前記リストしたものを含めて、種々の方法で付着させることができる。重要なことは、付着の方法が生活性剤の機能性を有意には改変しないことである;すなわち、生活性剤は、その標的との相互作用を可能とするように柔軟な方法で付着させるべきである。
【0086】
【表1】
【0087】
微小球上に酵素を固定化する特異的技術は当該分野で知られている。1つの場合において、NH2表面化学微小球を用いる。表面活性化は、6.9のpHを供するリン酸緩衝生理食塩水(10mM)中の2.5%グルタルアルデヒド(138mM、NaCl、2.7mM、KCl)で達成される。これは、室温でほぼ2時間撹拌ベッドで撹拌される。次いで、微小球を超純粋+0.01%ツイーン(Tween)20(界面活性剤)−0.02%ですすぎ、pH7.7のPBS+0.01%ツイーン20で再度すすぐ。最後に、好ましくは、0.45μmのアミコンミクロピュアフィルターを用いて予備濾過した後、酵素を溶液に添加する。
【0088】
前記した、工程50ないし54の方法によって、所望の数の微小球部分集団を調製した後、典型的には、該部分集団を工程55で組み合わせて、工程56で配列基体上に部分集団混合物を分散させるに先立ちセンサー配列要素として用いるための部分集団のランダム混合物を得る。好ましい態様において、図3は、ファイバーオプチックス束センサー配列中への自己コード化センサー微小球部分集団を調製および設置を説明する模式的プロセスダイアグラムを示す。別の態様において、工程55は省略することができ、センサー微小球部分集団の各々を、所定の位置にある配列基体上に別々にかつ順次に位置させることができる。
【0089】
かくして、一旦、少なくとも1つの生活性剤および自己コード化レポーター色素を含む微小球を作成すれば、微小球を基体の表面の独立したサイトに付加する。これは多数の方法でなすことができるが、一般的には、微小球の独立したサイト上へまたはサイトへ会合させることを可能とするであろう条件下でビーズを表面に添加することを含む。ビーズの表面への会合は、例えば、化学的付着サイトが基体およびビーズ双方に付加される場合、ビーズを表面に結合させることを含む;静電性またはヒドロ親和性(荷電している場合)、疎水性または親水性を、結合の基礎として用いる;接着剤の使用のごとき物理的であるが非共有結合的付着;または空間的付着、例えば、ウエル内のビーズの局所化。いくつかの態様において、例えば、配列上での架橋剤、フイルムまたは膜の使用を介して、最初の局所化の後により永久的な付着を行うのが好ましいであろう。
【0090】
後記で概説する種々の匹敵するプロセスを用い、微小球系を光学ファイバー束の末梢端に付着させることができる。微小球は束の端部近くに位置させるのが重要である。これは、各光学ファイバーにおける光の戻りが圧倒的に単一微小球から来ることを保証する。この特徴は、個々の微小球の光学応答標示の応答性によって微小球の機能性を含む反応を同定するのを可能とするのに、また、それらの微小球に含有された色素/ビーズ組を解読するのを可能とするのに必要である。しかしながら、接着または付加技術は微小球をアナライトから化学的に隔離しなければならない。
【0091】
図7は、本発明の光学ファイバーセンサー200および関連する制御系210を示す模式的ブロックダイアグラムである。ファイバーオプチックスセンサー200は、典型的には、数千の別々のクラッドの独立したファイバーから構築されたファイバーオプチックス束202(Galileo Electro-Optics, Stuebridge, MA)を含み、光が個々のファイバーの間で混合しないように各々のファイバーは直径が数ミクロンにすぎない。ある範囲の個々のファイバーまたはある範囲の個々のファイバーの直径を有するいずれの適当なファイバーオプチックス束202も使用することができる。微小球またはビーズセンサー配列100は、束の末梢端212に付着させ、近接端214は、焦点合わせ用の配列100の垂直位置決定のための通常のz−翻訳顕微鏡ステード216、および光学トレインを持つ配列100の水平整列のためのx−yミクロポジショナー218(Burleigh Instruments, Fishers, NY)に受容される。これらの2つの構成要素は、顕微鏡対物レンズ220用の束202の近接端214を位置決定するのに強調して作用する。対物レンズ220によって集められた光は、4位置二色キューブホイール222を持つ反射光蛍光アタッチメントへと通過する。該アタッチメントは対物レンズ220を通って75ワットのキセノンアーク灯224から光を挿入して、ファイバー束202にカップリングさせるのを可能とする。光源224からの光は、集光レンズ226によって集光され、次いで、フィルターおよびシャッターホイール228によって濾過されおよび/または遮断される。
【0092】
束202からの末梢端212から戻る光は、アタッチメント222によって通過し、次いで、遮断され、第2のホイール234によって濾過される。次いで、光を電荷カツプルドデバイト(CCD)カメラ238上に結像させる。通常のコンピューター238がイメージングプロセッシングソフトウェアを行って、CCDカメラ236からの情報を加工し、また、恐らくは、第1および第2シャッターおよびフィルターホイール228、234を制御する。マッキントッシュまたはIBM−コンパチブルパーソナルコンピューターを、インスツルメンテーションおよびデータ獲得を制御するために利用することができる。該インスツルメンテーションおよび、ファイバーオプチックスセンサー200を除外して、ファイバーオプチックスセンサー200の近接端214に配置された光学装置は、Bronkら, Anal. Chem. 67(17):2750-2752(1995)およびBronkら, Anal. Chem. 66:3519(1994)によってより完全に開示されている。
【0093】
ビーズセンサー配列100は、種々のコンパチブルプロセスを用い、光学ファイバー束202の末梢端に付着させることができる。微小球10は束の端部塚国位置させるのが重要である。これは、各独立した光学ファイバー中で戻る光が圧倒的に単一微小球のみから来ることを保証する。この特徴は、ビーズのタイプおよび位置を共に同定する目的で自己コード化微小球部分集団を解読し、微小球部分集団内の個々の微小球の光学標示の応答性を可能とし、シグナル−ノイズを低下させ、シグナル増強を改良するための各部分集団内の個々のビーズ応答の合計を提供するのに必要である。しかしながら、ビーズの接着または付着はアナライトから微小球を化学的に隔離し、または光学的測定に緩衝してはならない。
【0094】
図5Aおよび5Bは、ビーズをセンサー配列基体に付着させる好ましい方法を説明する顕微鏡写真である。マイクロウエル250は、ファイバーオプチックス束202の末梢端212に形成され、微小球10はマイクロウエルのキャビティー250に挿入される。マイクロウエル250はファイバーオプチックス束202の各光学ファイバー252の中心に形成される。図5Bに示すように、マイクロウエル250のサイズは、微小球10がマイクロウエル250内に置くことができるように、微小球10のサイズに協調される。かくして、束202の各光学ファイバー252はそのウエルに含有された単一微小球10からの光を運ぶ。結果として、束202の端部をCCD配列236上にイメージすることによって、微小球10の光学標示は個々に応答性である。
【0095】
図4は、いかにして、マイクロウエル250が形成され、微小球10がマイクロウエル中に置かれるかを説明する。1つの態様において、断面ほぼ3.7μmのコアを有するほぼ20,600の個々の光学ファイバーを含む1mm六方充填イメージングファイバー束202を使用した(Galileo Fibers, Sturbridge, MAからのPart No. ET26)。典型的には、各ファイバーのコアは、ガラス硬度およびファイバー製造の間の延伸の結果として六角形形状である。しかしながら、ある場合において、該形状は円であり得る。
【0096】
工程270において、ファイバー束202の近接端214および末梢端212は、順次、12μm、9μm、3μm、1μmおよび0.3μmラッギングフイルム上に仕上げられる。引き続いて、該端部を通常の原子力顕微鏡でスクラッチにつき調べる。工程272において、束202の末梢端212上でエッチングを行う。600μlのdH2Oおよび100μlのHF(フッ化水素酸)を含む0.2グラムNH4F(フッ化アンモニウム)の溶液、50%ストック溶液を用いることができる。末梢端212は特定時間、好ましくはほぼ80秒間この溶液中でエッチングする。
【0097】
この溶液からの除去に際して、束の端部を脱イオン水に直ちに入れて、工程274におけるいずれのさらなるエッチングも停止させる。次いで、ファイバーを流れている水道水中ですすぐ。この段階で、音波処理は、好ましくは、数秒間行って、いずれの塩生成物も反応から除去する。次いで、ファイバーを風乾する。
【0098】
図5Aおよび5Bに示すごとく、前記手法は、好都合には束202の各ファイバーについてのクラッド256に関してファイバーコア254の異方性エッチングによつてマイクロウエルを生じる。該マイクロウエルはコア254の直径ほぼ3.7μmを有する。この直径は、試料中において、使用される微小球の直径、3.1μmよりもわずかに大きくなるように選択される。コア254の純粋なシリカはフッ化水素酸の存在下でゲルマニウムドープしたシリカクラッド256よりも速くエッチングされるゆえに、選択的エッチングが起こる。
【0099】
次いで、多数の異なる技術に従って、工程276において、微小球はマイクロウエル250中に置かれる。微小球の設置は、末梢端212上の微小球の所望のランダムに混合された部分集団を含有する溶液を滴下し、束を音波処理して微小球をマイクロウエル中に沈降させ、次いで、微小球溶媒を蒸発させることによって達成することができる。別法として、部分集団を束端部に系列的に添加することができる。次いで、端部に滴下したスルホネート化Nafionの希釈溶液を用いることによって、微小球10をマイクロウエル250に固定することがでる。溶媒の蒸発に際して、Nafionの薄膜が微小球上に形成され、所定の位置に保持される。このアプローチは、FITC機能性を担うpH指示のために微小球を固定するのに適合する。固定された微小球の得られた配列は、水素イオンに対するスルホネート化Nafionの透過性のため、そのpH感受性を保持する。しかしながら、Nafionはほとんどの水溶性種に対して不透過性であるので、このアプローチは一般的には使用することができない。同様のアプローチを異なるポリマーで使用することができる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、またはポリヒドロキシメチルメタクリレート(ポリHEMA)の溶液をNafionの代わりに使用でき、水性種に対する所要の浸透性を供する。
【0100】
もう1つの態様において、別の固定アプローチは、その対応するマイクロウエル250に各微小球10を捕獲するために微小球膨潤を使用する。このアプローチにおいては、末梢端212上のマイクロウエル配列の存在下で、非膨潤性溶媒に懸濁させた微小球を音波処理することによって、微小球をまずマイクロウエル250に分布される。マイクロウエル中に入れた後、マイクロウエルがその中で膨潤する水性緩衝液に微小球を実質的に暴露させ、それにより、物理的にそれらをマイクロウエル中に捕獲する。この特定の態様によって、1つの通常に知られている微小球材料はテンタゲル、スチレン−ポリエチレングリコールコポリマーである。これらの微小球はヘキサンのような非極性溶媒中では膨潤できず、より極性のまたは水性の媒体への暴露に際して20−40容量%膨潤する。ある態様において、この固定アプローチは望ましいであろう。というのは、それは微小球自体の拡散または透過性特性を有意には損なわないからである。
【0101】
図6Aおよび6Bは、その最初の設置前および次いでのタッピングおよび空気パルスへの暴露後におけるマイクロウエル250中の典型的な微小球10を示す。図6Aおよび6Bは、特異的固定技術なくしてさえ機械的撹乱によるマイクロウエルからの微小球の認識できる損失がないことを示す。この効果は、恐らくは、微小球および光学ファイバーの間の静電力によるものであろう。これらの力はマイクロウエル内の微小球に結合する傾向がある。かくして、ほとんどの環境において、微小球のためにいずれの化学的または機械的固定も必要ではないであろう。
【0102】
配列の全てのサイトが微小球を含まなくてもよいことに注意すべきである;すなわち、空である基体表面のいくつかのサイトがあり得る。加えて、1を超える微小球を含有するいくつかのサイトがあり得るが、これは好ましくはない。
【0103】
ある態様においては、例えば、化学的付着がなされる場合、微小球を非ランダムまたは秩序だった方法で付着させることができる。例えば、光活性化付着リンカーまたは光活性化接着剤またはマスクを用い、微小球の規定された集団が降ろされるように、配列上の選択されたサイトを順次付着に適したものとすることができる。
【0104】
加えて、配列のサイズはユニークな光学応答標示の数によって設定されるので、ユニークな光学応答標示の組を「再使用」して、非常に多数のテストサイトを可能とすることができる。これはいくつかの方法で;例えば、配列内の位置的コード化スキームを用いることによって行うことができ;異なるサブ束は光学応答標示の組を再使用することができる。同様に、1つの態様はコード化様式のサイズとしてビーズを利用し、かくして、各ビーズサイズにつきユニークな光学応答標示の組の再使用を可能とする。別法として、配列にビーズを順次に部分的負荷することも、光学応答標示の再使用を可能とする。
【0105】
好ましい態様において、空間的または位置的コード化系がなされる。この態様においては、利用されるサブ束またはサブ配列(すなわち、全配列の一部)がある。電話システムと類似して、各サブ配列は、サブ配列の位置によって離された、他のサブ配列の同一タグ(すなわち、電話番号)を有することができる「エリアコード」である。かくして、例えば、同一ユニーク色素/ビーズ組合せを束間で再使用することができる。かくして、100の異なるサブ配列と組み合わせた50のユニークなタグの使用は、5000の異なる生活性剤の配列を形成することができる。この態様においては、1つの束をもう1つの束から同定できることが重要であり、一般に、これは手動で、あるいはマーカービーズ、すなわち、各サブ配列用のユニークなタグを含有するビーズの使用を介してなされる。
【0106】
別の態様において、微小球サイズのごときさらなるコード化パラメーターを付加することができる。例えば、異なるサイズのビーズの使用は、光学応答標示の組の再使用を可能とすることができ;すなわち、微小球のコード化寸法を拡大するために異なるサイズの微小球を使用することができる。異なるファイバー直径または断面積を持つ画素を含有する光学ファイバー配列を製造することができ;別法として、各々が個々のファイバーの異なる断面積を持つ2以上のファイバーオプチックス束を一緒に付加して、より大きな束を形成することができ;あるいは、同一サイズ断面積のファイバーを持つが異なるサイズのビーズでの光学ファイバー束を使用することができる。異なる直径では、最大ウエルに最大微小球を充填でき、次いで、全てのサイズのウエルが次いで充填されるまで、より小さなウエルに順次より小さな微小球を移動させる。このようにして、同一色素/ビーズ組合せを用いて、異なるサイズの微小球をコード化し、それにより、配列に存在する異なるオリゴヌクレオチド配列または化学的機能性の数を拡大し得る。ファイバーオプチックス基体につき概説したが、これならびに本明細書で概説した他の方法を、同様に、他の基体および他のアタッチメント様式で使用することができる。
【0107】
好ましい態様において、コード化および解読は、配列への微小球の順次の負荷によって達成される。空間的コード化につき前記で概説したごとく、この態様においては、光学応答標示を「再使用」するこどができる。この態様においては、各々が異なる生活性剤を含む微小球(または、各々が異なる生活性剤を含む部分集団)のライブラリーを、複数のサブライブラリーに分割する;例えば、所望の配列のサイズおよびユニークなタグの数に応じて、各々が全ライブラリーのおおざっぱに10%を含む10のサブライブラリーを作成でき、各サブライブラリーはほぼ同一のユニークタグを含む。次いで、最初のサブライブラリーをウエルを含むファイバーオプチックス的束に付加し、その光学応答標示を用い、各生活性剤の位置を測定する。次いで、第2のサブライブラリーを付加し、各光学応答標示の位置を再度測定する。この場合のシグナルは、「第1の」光学応答標示および「第2の」光学応答標示を含み;2つのマトリックスを比較することによって、各サブライブラリーにおける各ビーズの位置を測定することができる。同様に、第3、第4等のサブライブラリーを順次付加して、配列が充填されるのを可能とする。
【0108】
かくして、微小球および表面に独立したサイトを持つ基体を含む本発明の組成物を利用して、配列は大きなスペクトルの化学的機能性からなる。具体的には、本発明で使用するのに適合し得る先行技術センサーは、4つの広い分類の微小球センサー:1)基本的インジケーター化学センサー;2)酵素ベースのセンサー;3)免疫−ベースのセンサー(その双方は広い一般的クラスのタンパク質センサーの一部である);および4)ゲノ−センサーを含む。
【0109】
好ましい態様においては、生活性剤を用いて化学化合物を検出する。多数の基本的なインジケーターセンサーが、以前から示されている。その例には、以下のものが含まれる。
【表2】
【0110】
【表3】
表3に掲げた化学物質の各々は、以下にさらに詳しく記載するように、標的アナライトの存在下に光学的相互伝送可能なシグナルまたは光学的特性を直接生成する。
【0111】
酵素系微小球センサーは、その性能が証明されており、微小球について明示することができる。その例には、以下のものが含まれる。
【表4】
【0112】
一般に、上にさらに詳しく記載したように、酵素感受性化学物質アナライトの存在による標的アナライトの結合に対する光学的シグナルの誘導された変化は、この種の化学的官能基では間接的に起こる。微小球結合酵素(例えばグルコースオキシダーゼ)は、標的アナライト(例えばグルコース)を分解し、共基質(例えば酸素)を消費するか、またはある種の副生成物(例えば過酸化水素)を生成する。次いで、酸素感受性色素を使用してシグナル変化を開始する。
【0113】
免疫系微小球センサーは、農薬、除草剤、PCB、PAHなどの環境汚染物質の検出についてその性能が証明されている。加えて、これらセンサーは、次のような対象の診断に使用されている:例えば細菌[例えば、癩病、コレラ、リンパ炎(lyme)およびターブルクロシス(turburculosis)]、ウイルス(例えば、HIV、単純ヘルペス、サイトメガロウイルス)、真菌(例えば、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコックス症)、マイコプラズマ(例えば肺炎マイコプラズマ)、原虫類(例えば、アメーバ症、トキソプラズマ症)、リケッチア(例えばロッキー山紅斑点熱)および妊娠試験。
【0114】
微小球ゲノセンサーも調製することができる。これらは、代表的には、プローブ配列を微小球表面化学物質に、一般にNH2基によって結合することによって構築される。蛍光色素分子(例えばフルオレセイン)を、溶液中の標的配列に結合する。その光学的相互伝送可能なシグナル変化は、標的配列の微小球への結合によって起こる。これにより、溶液全体よりも微小球周囲の色素濃度が高くなる。性能が証明された数種のプローブおよび標的配列(Ferguson, J.A.ら, Nature Biotechnology, 14巻, Dec. 1996参照)を、以下の表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
さらに、ゲノセンサーが、ラベルとしてハイブリダイゼーションインジケーターの使用に基づきうることに注意すべきである。ハイブリダイゼーションインジケーターは、通常は可逆的に二本鎖核酸と結合しているのが好ましい。ハイブリダイゼーションインジケーターには、挿入体(インターカレーター)および副および/または主グローブ結合部分が含まれる。好ましい態様においては、挿入体を使用してよい(挿入は二本鎖核酸の存在下でのみ起こるのが普通であるので、標的ハイブリダイゼーションの存在下でのみラベルが発光するであろう)。
【0117】
本発明は、上記種類のセンサーのいずれかまたは全てを用いて行うことができる。当業者には理解されるように、センサーの種類および組成は、標的アナライトの組成に依存して広範囲に変化するであろう。即ち、センサーを、核酸、タンパク質(酵素センサーおよび免疫センサーを含む)、脂質、炭水化物などを検出するように調製することができる。同様に、これらのセンサーは、核酸、タンパク質、脂質、炭水化物などの生活性剤を含むことができる。さらに、単一配列センサーは、多種類のアナライト用の異なる結合リガンドを含むことができる。例えば、HIVのための配列センサーは、ウイルスゲノムの直接検出のための複数の核酸プローブ、ウイルス粒子の直接検出のためのタンパク質結合リガンド、抗HIV抗体の検出のための免疫成分などを含むことができる。
【0118】
微小球ズおよび基体に加えて、本発明の組成物は、他の成分、例えば光源、レンズやフィルターなどの光学成分、検出器、データ分析のためのコンピューター成分などを含むことができる。
【0119】
本発明の配列は、基体表面に対する微小球のランダム蓄積を「解読」して、全位置での生活性剤の同定を可能にすることができるように、生活性剤の同定に関する情報が配列中に形成されるように構築する。これは、種々の方法により行うことができる。
【0120】
好ましい態様においては、微小球を基体上に負荷し、次いで配列を解読する(分析を行う前に)。これは、対照アナライトに暴露したときの配列上の各々のサイトにおける微小球に結合した光学応答標示を検出することによって行う。これは、光学標示の組の「再使用」について上で一般的に説明したように、唯一の光学標示を使用するときには全てを一度に、または連続的に行うことができる。
【0121】
一旦製造され、必要なら解読されると、組成物は、多数の用途において使用できるようになる。予備的な事柄として、本発明は、配列要素の部分集団を有するセンサー配列の特徴的な光学応答標示におけるSN比を減少させる方法を提供する。この方法は、a)配列内の各センサー部分集団中の各センサー要素の存在位置を同定するために配列を解読し、b)配列内の各センサー要素の特徴的な光学応答標示を測定し、c)配列中の各センサー要素について、光学応答標示のベースラインを調節し、d)センサー部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示を合計し、e)部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示の合計として、各センサー部分集団の特徴的な光学応答標示を報告することを含んでなる。この方法により、SN比は少なくとも約10の倍率で増加されることになる。好ましくは、約100の倍率である。
【0122】
同様に、本発明は、配列要素の部分集団を有するセンサー配列の特徴的な光学応答標示を増幅する方法を提供し、この方法は、a)配列内の各センサー部分集団中の各センサー要素の存在位置を同定するために配列を解読し、b)配列内の各センサー要素の特徴的な光学応答標示を測定し、c)配列中の各センサー要素について、光学応答標示のベースラインを調節し、d)センサー部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示を合計し、e)部分集団それぞれの中の全センサー要素のベースライン調節済み特徴的な光学応答標示の合計として、各センサー部分集団の特徴的な光学応答標示を報告することを含んでなる。好ましい態様では、シグナルは、少なくとも約50の倍率で増幅され、アナライトの検出限界は、少なくとも約100のファクターで減少する。
【0123】
一般に、標的アナライトを含む試料(標的アナライトの検出のため、または標的アナライトの結合パートナーのスクリーニングのいずれであっても)を、少なくとも1種の生活性剤に標的アナライトを結合するのに適した条件、すなわち、一般に生理学的条件において、配列に添加する。そして、標的アナライトの存在または不存在が検出される。当業者なら理解できるように、検出は、種々の方法で、一般には光学シグナルの変化を用いることにより、行なうことができる。この変化は、多くの異なるメカニズムにより生じ得る。いくつかの例として、色素標識されたアナライトを微小球に結合すること、微小球上または近傍で色素種を生成すること、存在する色素種を分解すること、微小球上の色素とアナライトとの相互作用による光学シグナルの変化、または他の光学的応答性(interrogatable)現象が挙げられる。
【0124】
好ましい態様では、光学シグナルにおける変化は、検出可能な標識(ラベル)、好ましくは蛍光色素のような光学的標識により直接または間接的に標識された標的アナライトの結合の結果、生じる。例えば、タンパク質標的アナライトを使用する場合、このアナライトは、蛍光物質により直接標識され、あるいは、例えば標識された抗体を使用して間接的に標識され得る。同様に、核酸は、この技術分野で知られているように、例えばPCR増殖中に、蛍光色素により容易に標識することができる。また、標的配列を結合する場合、内位添加(intercalating)色素(例えば、臭化エチジウム)を添加し、その後結合されたターゲットの存在をプローブ配列に知らせる(signal)ことができる。生活性剤に標的アナライトを結合する際、そのサイトに新しい光学シグナルが生成され、そのシグナルを検出することができる。
【0125】
ある場合には、上記のように、酵素のような標的アナライトが、光学的に直接または間接的に検出できる種(例えば、蛍光性生成物)を生成する。
【0126】
更に、ある態様では、光学応答標示の変化は、光学的シグナルに基づいていることがある。例えば、ある化学的標的アナライトと微小球上のある蛍光色素との相互作用により、光学応答標示が変化し、異なる光学シグナルを発生することがある。例えば、フルオロホア(fluorophore)誘導レセプタを使用でき、この場合、配位子の結合がシグナルを変化させる。
【0127】
当業者には知られているように、ある態様では、標的アナライトの存在または不存在は、表面増強ラマン分光、表面プラスモン、放射能を含む、他の光学的または非光学的シグナルの変化を用いて行なえる。
【0128】
分析は、当業者には理解されるように、種々の実験条件下で行なうことができる。スクリーニングアッセイでは、多様な他の試薬が包含され得る。これらには、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進するおよび/または非特異的もしくはバックグラウンド相互作用を減少するのに使用される、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗浄剤などのような試薬が包含される。その他にも、分析の効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを用いることができる。成分の混合物は、必要な結合を生じる任意の方法で添加される。この技術分野で知られているように、種々のブロッキングおよび洗浄工程が利用され得る。
【0129】
好ましい態様では、試料溶液における標的アナライトの存在または不存在を調べるために、組成物を使用する。「標的アナライト」または「アナライト」あるいは本明細書においてこれらと同等の用語は、結合パートナーについて検出または評価できる、あらゆる原子、分子、イオン、分子イオン、化合物または粒子を意味する。当業者なら理解できるように、多数のアナライトを本発明において使用することができる。基本的に、生活性剤を結合できる、または結合パートナー(すなわち、薬剤候補)を見つけ出せるあらゆる標的アナライトを使用することができる。
【0130】
適当なアナライトは、生体分子を含む有機および無機分子を包含する。標的アナライトの検出を行なう場合、適当な標的アナライトには、環境汚染物(農薬、殺虫剤、毒素などを含む)、化学物質(溶媒、ポリマー、有機物質などを含む)、治療用分子(治療用および濫用薬剤、抗生物質などを含む)、生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原、および受容体(例えば、神経、ホルモン、栄養および細胞表面受容体)またはこれらの配位子などを含む)、全細胞(原核生物細胞(例えば、病原性バクテリア)および、哺乳類腫瘍細胞を含む真核生物細胞)、ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む)、並びに胞子などが包含される。特に好ましいアナライトは、核酸およびタンパク質である。
【0131】
好ましい態様において、標的アナライトはタンパク質である。当業者には理解できるように、本発明を用いて検出できるまたは結合パートナーを評価できる可能性のあるタンパク質様標的アナライトは、多数存在する。適当なタンパク質標的アナライトには、(1)免疫グロブリン、(2)酵素(および他のタンパク質)、(3)ホルモンおよびサイトカイン(その多くは、細胞受容体の配位子として機能する)、および(4)他のタンパク質が包含される。
【0132】
特に好ましい態様では、標的アナライトは核酸である。これらの分析は、非常に広い用途において使用することができる。
【0133】
好ましい態様では、プローブは遺伝子診断において使用される。例えば、プローブは、非ポリープ性(nonpolyposis)大腸癌、BRCA1胸部癌遺伝子、P53(種々の癌に関連する遺伝子)、ApoE5遺伝子(アルツハイマー症のより大きい危険性を示し、容易な患者の前症候スクリーニングを可能にする)、嚢胞性ファイバー形成遺伝子(cystic fibrous gene)における突然変異、またはこの技術分野で周知の他のプローブが包含される。
【0134】
別の態様では、ウイルスおよび細菌の検出は、本発明の複合体を用いて行なわれる。この態様では、プローブは、種々の細菌およびウイルスからの標的配列を検出するように設計される。例えば、現在の血液スクリーニング技術は、HIV抗体の検出に依存している。本発明が開示する方法によれば、HIV核酸配列、特に高度に保存されたHIV配列を検出するために、臨床サンプルを直接スクリーニングすることが可能になる。加えて、これにより、抗ウイルス治療の有効性を評価する改良された方法として、患者の体内でのウイルスの循環を直接モニターすることが可能となる。同様に、白血病、HTLV−IおよびHTLV−IIに付随したウイルスを、このような方法で検出することができよう。結核、クリミジアおよび他の性交感染症のような細菌感染も検出することができよう。
【0135】
好ましい態様において、本発明の核酸は、水および食品中の毒性細菌用プローブとして使用される。例えば、このようなサンプルを処理し、細菌を溶解させて核酸を放出し、次いで、細菌株(例えば、サルモネラ、カンピロバクター、ビブリオコレラ、ライシュマニア、エシェリチアコリの腸内毒性株のような病原性菌株、および在郷軍人病バクテリア)を認識するように設計されたプローブを用いる。同様に、生体治療法を、本発明の組成物を使用して評価することもできるであろう。
【0136】
さらなる態様において、プローブは、犯行現場のDNAを被害者および容疑者から採取した試料と照合するための法医学的「DNA識別(fingerprinting)」のために使用することができる。
【0137】
さらに別の態様では、配列中のプローブは、ハイブリダイゼーションによる配列決定に使用することもできる。
【0138】
また、本発明は、標的核酸配列中の突然変異またはミスマッチを検出するための方法として使用することができる。例えば、最近では、多形DNAマーカーを使用した遺伝子変異と表現型との関係の分析に焦点があてられている。これまでの研究では、多形位置(positional)マーカーとして、ショート・タンデム・リピート(short tandem repeats;STRs)が用いられてきた。しかし、最近、シングルヌクレオチド多形体(single nucleotide polymorphisms;SNPs)に注目が集まっている。これは、ヒトゲノムDNA中キロベース(kilobase)あたり1を越える平均頻度で発生する。ある種のSNPs、特に暗号配列中および周囲にあるものは、治療上適切な表現型変異体の直接の原因であるらしい。治療上重要な表現型の原因となる周知の多形が数多くある。例えば、アポE2/3/4変異体は、アルツハイマー症および他の疾病の異なる相対リスクに関連している(Cordor et al., Science 261 (1993)参照)。SNP座の複合PCR増殖およびその後のオリゴヌクレオチド配列へのハイブリダイゼーションは、少なくとも数百のSNPの同時遺伝子型決定(genotyping)のための正確で信頼性のある方法であることが示されている(Wang et al., Science, 280:1077 (1998)、およびSchafer et al., Nature Biotechnology 16:33-39 (1998)参照)。本発明の組成物は、先行技術の配列と容易に置換えることができるであろう。
【0139】
好ましい態様において、本発明の組成物は、標的分子に結合する、好ましくはその機能を改変する試薬を見出すための生活性剤をスクリーニングするのに使用される。上述のごとく、当業者には理解されるように、広範な種類の異なる分析フォーマットが使用されている。一般に、結合パートナーが望まれている標的アナライトは、標識され、生活性剤による標的アナライトの結合は、ビーへラベルを補充することになり、それが後に検出される。
【0140】
好ましい態様では、生活性剤および標的アナライトの結合は特異的である。すなわち、生活性剤は、標的アナライトに特異的に結合する。本明細書における「特異的結合」は、アナライトと披検試料の他の成分または汚染物とを区別するのに十分な特異性をもって、剤がアナライトに結合することを意味する。しかしながら、当業者なら理解できるように、高度には特異的でない結合を用いてアナライトを検出することができる。例えば、システムにおいて、異なる結合配位子、例えば異なる配位子の配列を用い、特定のアナライトの検出を、「エレクトロニック・ノーズ」が機能するのと同様に、結合配位子のパネルへの結合の「標示」を介して行なう。この方法は、化学的アナライトの検出に特に有用である。結合は、非特異的結合を除去するための洗浄工程を含む分析の条件下で、結合を維持できるのに十分な程度でなければならない。しかし、ある態様では、例えば低アフィニティ結合パートナーを検出するためには、洗浄工程は望ましくない。ある態様では、例えばある種の生体分子を検出する場合、結合配位子に対するアナライトの解離定数は、約10-4〜10-6M-1未満、好ましくは約10-5〜10-9M-1未満、より好ましくは約10-7〜10-9M-1未満である。
【0141】
以下に挙げる実施例は、上記した本発明を使用する方法をさらに詳しく説明し、本発明の種々の態様の実施を意図する最良の態様を記載するものである。これらの実施例が、いかなる意味においても本発明の真の範囲を限定するものではなく、例示の目的のみで挙げたものであることは理解されるであろう。これに引用した全ての参照は、その全てが本明細書の一部を構成する。
【0142】
実施例
特定の蒸気アナライトおよび励起光エネルギーに対するセンサービーズおよびセンサー配列の反応の特徴的な一時的光学反応データ測定を、Whiteら[Anal.Chem. 68: 2191-2202 (1996)]により開示された確立された方法および装置設計に従って行った。図8に、実施例7〜17に報告したデータ測定に用いた実験装置および装置設計を模式的に示す。
【0143】
通常の測定においては、ファイバーオプチックス束202の近接端214を、ファイバーチャック300中に配置し、オリンパス(Olympus)顕微鏡に基づく画像システムを用いて見えるように確保した。他の態様においては、通常のオリンパス顕微鏡のスライドプラットホームおよびスライドクランプを、ガラスカバースリップなどの代替センサー配列基体を配置するために使用した。エピ-イルミネーター(照明装置)を装着したオリンパス顕微鏡320を、光学測定のために使用した。この顕微鏡320には、オリンパス20×および40×およびツァイス(Zeiss)100×対物レンズを装着した。オメガ(Omega)560DCRP二色性鏡330を用いて、75Wキセノンアークランプ340からの濾過された励起光エネルギーをセンサー配列100に向け、放射された光エネルギー(センサー配列100中のセンサービーズ10の各々に起因する特徴的な光学応答標示による)がCCDフレームトランスファーカメラ310によって記録されるようにした。アークランプ340から放射される励起光エネルギーを、オメガ535BP40組込み励起光フィルター/シャッター350によって濾過した。センサー配列100のセンサービーズ10から放射された光エネルギーを、CCDフレームトランスファーカメラ310の前にあるオメガ640BP20組込み放射光フィルター/シャッター360によって濾過した。
【0144】
通常、実験は、近接端214にファイバーオプチックス束202によって運ばれるセンサー配列100中の個々のセンサービーズの特徴的な光学応答標示の蛍光反応画像のビデオカメラフレームを集めることからなる。これらビーズおよび配列の画像を、CCDフレームトランスファーカメラ310[プリンストン・インスツルメンツ(Princeton Instruments, Trenton, NJ)のモデルTE512EFT]によって記録する。予め選択した数の画像フレームを捕捉し、コンピューターシステム400[8100AVマッキントッシュパワーPCに装備されたプリンストン・インスツルメンツNUBusカメラインターフェースカードを含んでなる]に送る。カメラフレーム割合は、任意の所望の値に設定することができ、通常は80〜250ms/フレームの範囲内である。以下に、図9〜16に示したデータを得る際に用いたフレーム割合(データ点の間の時間)を挙げる。特定したフレーム割合は、データ点の間の特定の時間間隔に相当する。
【0145】
【表6】
【0146】
通常の空気希釈嗅覚測定器および真空制御された蒸気供給システム500[嗅覚の研究に広く知られかつ使用されており、Kauerら(J.Physiol. 272: 495-516 (1977))に記載されている]を用いて、アナライト蒸気および空気キャリアーガスの制御されたパルスを、マイクロウエル250中に固定化されたセンサービーズ10の配列を含むファイバーオプチックスセンサー配列100の末梢端212またはセンサービーズ基体のいずれかに適用した。
【0147】
飽和した蒸気試料を生成させるために、通常、空気キャリアーガス流を、アナライトをしみ混ませた濾紙を入れた5mlのカートリッジに通す。飽和蒸気および清浄キャリアーガス流の相対的流速を調節することによってアナライト希釈が得られる。通常、100ml/分の流速を、センサー配列に対する混合ガス流のために用いる。この流速においては、2秒間のパルスが、約3.3mlのアナライト蒸気(キャリアーガスを伴う)を供給するであろう。一般に、アナライト蒸気の圧力および希釈ファクターに依存して、蒸気パルスは10-7〜10-5モルのアナライトを含有する。
【0148】
蒸気パルスは、通常、第11フレームから始まって第11〜第30フレーム中に供給した。蒸気パルスの期間は、使用した特定のフレーム割合によって変化し、通常は2〜3秒間の範囲内であった。ベースライン対照測定は、高純度のウルトラ・ゼロ(Ultra Zero)グレードの空気を用いて行った。空気パルス測定は、蒸気キャリアーガスによるあらゆるビーズ反応を明らかにするように行った。
【0149】
データ処理
一時的な一連のセンサービーズまたはセンサー配列の画像の収集に続いて、IPLab画像処理ソフトウエア[シグナル・アナリティクス(Signal Analytics, Vienna, VA)]を用いて、個々のファイバー(このファイバーはその末梢端のところで1つのセンサービーズに結合している)に対応する各ピクセル(画素)上にセグメントを描かせる。平均蛍光強度を、配列中の各フレーム中のこれらセグメントの各々について測定した。これは、蒸気パルス反応およびベースライン空気パルス反応の両方に対して行う。それぞれを複数回行った平均を出して、必要ならデータの質を改善することができる。次いで、空気パルスデータを、蒸気パルスデータから差引いて、空気単独によるバックグラウンドを差引く。得られたデータをプロットして、全ての所望のビーズに対する一時的な強度反応を得ることができる。好ましい態様においては、センサー配列データを、Whiteら[Anal.Chem. 68: 2193-2202 (1996)]が開示した方法に従って、神経網(ニューラルネットワーク)分析に用いる。
【0150】
全てのデータ操作は、単純なオペレータースクリプト(これは、ソフトウエアと共に含まれる規格化された画像またはデータ処理ルーチンを呼び起こす)を用いて、IPLabプログラム環境内で行う。これらのスクリプトおよびルーチンは、データ収集部分およびデータ分析部分からなる。
【0151】
データ収集部分においては、以下のような3つのセグメントまたはループが存在する。
ループ1
これは各センサーのベースライン蛍光を与える。このループを短縮または延長して、特定のアナライトに対する特定のセンサービーズまたはセンサー配列のより遅いかまたはより速い反応時間に調節することができる。実施例7〜17に対しては、このループを5〜10フレームに設定した。
【0152】
ループ2
これは蒸気暴露ループである。蒸気パルスをこのループ開始の直前にスクリプトの命令によって適用する。この命令が取付けたソレノイドバルブに5ボルトのパルスを送り、これが真空ラインのスイッチをオフにし、これにより、蒸気試料のノズル末端からの放出が可能になる。通常、このループは20フレームの期間である。実施例7においては、10フレームの期間を用いた。
【0153】
ループ3
これはセンサー回収ループである。別の5ボルト引金パルスをソレノイドに送り、これがスイッチを最初の位置に戻し、真空システムに溶媒蒸気の収集を再開させ、それを運び出し廃棄させる。通常、このループは30フレームの期間である。実施例7においては、15フレームの期間を用いた。
【0154】
データ分析
データ分析部分においては、先に収集した「フォーカス」画像から取得した予め選択したセグメントを、収集した画像の配列に移す。これらのセグメント(使用者が抜取る)は、平均ピクセル強度を、画像フィールド中の特定領域において測定することを可能にする。通常、これらはファイバーオプチックスセンサー配列の個々のピクセル(このそれぞれがビーズを含む)から抜取る。次いで、スクリプトが、各フレームを進むループに入り、各セグメント内の平均ピクセル強度を測定し、その値をデータカラム中に置く。次いで、得られたカラムをプロットして、所望の各ビーズの一時的な反応を得ることができる。しかし、プロットの前に、各ビーズ反応のデータをその最初の点で割ることによって、反応を「規格化」する。即ち、全ての反応を標準化して、1.0の値で始めることができる。
【0155】
ビーズ反応の集計
各ビーズの部分集団内の多数のセンサービーズからの光学反応シグナルを、各時間点での全ての反応のベースライン調整した強度値を単純に加えることによって集計して、全ビーズ反応の合計からなる新しい一時的な反応を得ることができる。シグナルの集計は、リアルタイムに、またはデータ取得後のデータ換算および分析中に行うことができる。1つの態様においては、シグナルの集計を、光学反応データを収集した後に、市販のスプレッドシートプログラム[エクセル、マイクロソフト(Redmond, WA)]を用いて行う。典型的な操作においては、規格化した光学反応を、全てのデータ点から整数1.0を差引くことによって、0.0の値から出発するように調整する。このようにすることにより、一緒に集計したときであってもベースライン-ループデータを0に維持することが可能になり、ランダムな反応シグナルノイズを相殺する。しかし、蒸気パルス-ループ一時的領域は、蒸気パルスの前に陽性、陰性または中性のいずれかの特徴的な反応変化を示し、CCDカメラ中の電荷蓄積による最初の数データ点におけるドリフトに伴うノイズを克服するためにベースライン調整を必要とすることが多い。ドリフトが存在しないときには、通常、各ビーズセンサーの第1データ点からのベースラインを、同じビーズの全反応データから差引く。ドリフトが観察されたときには、各ビーズセンサーの最初の10データ点からの平均ベースラインを、同じビーズの全反応データから差引く。このベースライン調整を行うことによって、複数のビーズ反応を一緒に加えたときに、ベースラインを0にしたままこれらを増幅することができる。全てのビーズが蒸気パルスに同時に反応するので、これらの全てが正確に同じ時間にパルスに遭遇し、これらの反応を覆うために必要な記録または調整は存在しない。連続した時間間隔における全データ点を単純に加えることによって、累計反応データが得られる。次いで、この最終的なカラム(特定の時間間隔における全データ点の合計からなる)を、個々のビーズ反応と比較またはプロットして、図14および15に示すように、改善されたシグナルとノイズの比率またはシグナル増強の程度を調べることができる。
【実施例】
【0156】
(実施例1) 多孔性シリカ/ナイルレッドビーズの調製
約0.5cm3の名目上3.2ミクロン直径の市販の多孔性シリカビーズを、LUNAカラム[フェノメネックス(Phenomenex, Torrance, CA)]から取出した。ビーズ試料を濾紙上に置き、真空濾過を用いて、0.5mlのナイルレッド(Nile Red)[イーストマン・コダック(Eastman Kodak, Rochester, NY)]溶液(トルエン中1mg/ml)をビーズ上に注いだ。ナイルレッドは直ちにシリカビーズによって吸収され、ビーズを深紫色に変えた。これらビーズをトルエンで繰返し洗浄して、あらゆる過剰の吸着されなかったナイルレッドを除去した。ビーズを時計皿上で一晩乾燥した。次いで、ビーズを、本発明の方法に従ってファイバーオプチックス束をエッチングすることによって得たマイクロウエル中に配置した。
【0157】
(実施例2) PDPOポリマー被覆した多孔性シリカビーズの調製
シラン化溶液を、980μlのエタノール/水(95%エタノール、5%超純水、酢酸でpH4.9に調整)中の20μlのN-オクタデシル-トリエチルオキシシランから調製した。実施例1のLUNA多孔性シリカビーズを、過剰のシラン化溶液中に約10分間分散させ、連続して渦巻き撹拌した。粒子をエタノールで3回すすぎ、120℃のオーブン中にて一晩(約12時間)乾燥した。
PDPO、即ちポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)[アルドリッチ(Aldrich, Milwaukee, WI)]およびナイルレッドの保存溶液を、0.09gのPDPOおよび1.0mlのクロロホルムから調製した。ポリマーを完全に溶解させた後、クロロホルム中の1mg/mlナイルレッドの一部100μlを添加した。得られた溶液を連続的に渦巻き撹拌して均一な分散液とした。
過剰のPDPO/ナイルレッドを、シラン化した多孔性ビーズの小部分に添加した(約100μlのポリマー/色素溶液を約1mgのビーズに)。この試料を約3時間渦巻き撹拌し、次いで洗浄した。過剰のポリマー色素を除去し、次いでビーズを塩化メチレンで2〜3回繰返して洗浄し、続いて水中の0.01%ポリオキシエチレン-ソルビタンモノラウレート、即ちツイーン(Tween)20[J.T.Baker, Cleveland, OH]で洗浄した。洗浄したビーズを、0.01%ツイーン20/超純水の溶液に集めた。単一の小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0158】
(実施例3) ポリシロキサンポリマーで被覆した非多孔性シリカ/ナイルレッドビーズの調製
初めに、市販の非多孔性の3.1μmのシリカビーズ[バングス・ラボラトリー(Bangs Laboratory, Fishers,IN)]を、過剰のシラン化溶液、即ちアセトン中の3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(アルドリッチ)の10容量%溶液中で一晩シラン化した。過剰のシラン化溶液をデカンテーションし、ビーズを、超純粋なアセトンを用いて2〜3回繰返してすすいだ(渦巻き撹拌し、洗浄の間に遠心した)。このビーズを、過剰のナイルレッド溶液(トルエン中1mg/ml)中に約3時間浸漬し、表面が完全に飽和するように渦巻き撹拌した。このビーズ溶液を遠心し、過剰の色素溶液をデカンテーションした。次いで、7.9mgのベンゾインエチルエーテル[ポリサイエンシーズ社(Polysciences Inc., Warrington, PA)]、250μlのトルエン中のナイルレッドの保存液、および250μlの(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマー[ゲレスト社(Gelest Inc., Tullytown, PA)]の混合物を、ビーズに添加した。このビーズ懸濁液を渦巻き撹拌して、粒子を均一に被覆した。得られた懸濁混合物を、約350rpmで撹拌しながら、約100mlの超純水中の0.1%ツイーン20に滴下した。10秒間ずつの合計して30秒間の紫外線励起によって重合を行った。この試料溶液を一晩撹拌した。この懸濁液を、230ミクロンのふるいに通し、次いで5μmのふるいに通した。濾液を3000rpmで約5分間遠心し、ビーズを遠心管中に集め、超純水中の0.01%ツイーン20で洗浄した。単一の小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0159】
(実施例4) ナイルレッドを含む(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマーのビーズの調製
約25mlの超純水+25mlのエタノールを、100mlの丸底フラスコに入れ、撹拌棒を用いて約350rpmで撹拌した。500μlの(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマー、200μlのナイルレッド溶液(クロロホルム中1mg/ml)、および250μlの塩化メチレンの混合物を調製し、撹拌した水/エタノール溶液に滴下した。塩化メチレン中の5.5mgのAIBN、即ちN,N'-アゾビス-イソブチルニトリル(2,2'-アゾビス-2-メチルプロプリオ-ニトリル)[ファルツ・アンド・バウアー社(Phaltz & Bauer, Inc.)]の溶液を、撹拌分散液に添加した。この混合物をアルゴンを用いて約1時間脱ガスし、次いで約70℃に加熱した。約3時間の加熱の後、20mlの超純水中の0.01%ツイーン20を混合物に添加した。加熱と撹拌を約12時間続けた。この混合物を230ミクロンのふるいに通し、次いで固体を5000rpmまでの遠心によって集めた。得られたビーズを、超純水中の0.01%ツイーン20の溶液に集めた。ビーズ懸濁液の単一小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0160】
(実施例5) ナイルレッド染色したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズ
約1mgの市販の3.15μmのポリマービーズ(87%メチルスチレン、13%ジビニルベンゼン、アミン官能化表面を有する)[バングス・ラボラトリーズ(Bangs Laboratories, Fishers, IN)]を、1mlのメタノール中で、渦巻き撹拌し、約3000rpmで遠心し、溶媒をデカンテーションすることによって洗浄した。このビーズを褐色バイアルに移し、約100μlのナイルレッド溶液(トルエン中1mg/ml)を添加した。この試料を渦巻き撹拌し、揺動振盪器に入れて、一晩撹拌した。この懸濁液を微量遠心管に移し、デカンテーションした溶媒が透明になるまでメタノールで洗浄した。このビーズを、約0.5mlの超純水中の0.01%ツイーン20の溶液に集めた。単一小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0161】
(実施例6) ナイルレッドを導入した可塑剤修飾したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズ
約1mgの市販の3.15μmのポリマービーズ(87%メチルスチレン、13%ジビニルベンゼン、アミン官能化表面を有する)[バングス・ラボラトリーズ]を、実施例5に従ってメタノールですすぎ、褐色バイアルに移した。ポリマーに対して約2〜40重量%の可塑剤、即ちトリトリルホスフェート(TTP)、トリフェニルホスフェート(TPP)およびジブチルフタレート(DBP)[アルドリッチ]を、ナイルレッド溶液(トルエン中1mg/ml)と共に、ビーズ試料に添加し、被覆し、渦巻き撹拌し、次いで揺動振盪器上で約12時間振盪した。このビーズを微量遠心管に移し、メタノール中のナイルレッドで洗浄し、次いでデカンテーションした溶媒が透明になるまでメタノールで繰返し洗浄した。このビーズを、超純水中の0.01%ツイーン20の溶液に集めた。懸濁液の単一小滴を顕微鏡カバースリップ上に置き、光から保護して乾燥させた。
【0162】
(実施例7)
実施例1の方法によって調製した多孔性シリカビーズを、上記した実験方法に従って評価して、トルエン蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図9に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスに対する62個の個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0163】
(実施例8)
実施例5の方法によって調製したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズを評価して、メタノール蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図10に示すが、この図には、メタノール蒸気のパルスに対する39個の個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0164】
(実施例9)
実施例4の方法によって調製した(15〜20%アクリルオキシプロピルメチルシロキサン)80〜85%ジメチルシロキサンコポリマービーズを評価して、トルエンおよびメタノールの両蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図11に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスおよびメタノール蒸気のパルスに対する個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0165】
(実施例10)
実施例2の方法によって調製したPDPOポリマー被覆した多孔性シリカビーズを評価して、トルエンおよびメタノールの両蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図12に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスおよびメタノール蒸気のパルスに対する個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0166】
(実施例11)
実施例1の方法によって調製した多孔性シリカビーズを、上記した方法に従って、ファイバーオプチックス束の末梢端にあるエッチングしたマイクロウエルに導入した。得られたセンサー配列を評価して、酢酸エチル蒸気に対するビーズ部分集団の特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図13に示すが、この図には、酢酸エチル蒸気のパルスに対する218個の個々のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。
【0167】
(実施例12)
本発明のシグナル集計法を、実施例5の方法によって調製し、実施例8の方法によって試験したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズに対して行った実験測定値の分析において評価した。結果を図14に示すが、この図においては、単一センサービーズ(ビーズ#1)に対する標準化された一時的な光学反応が、試験した全39ビーズの集計した反応と比較されている。図14に示されるように、本発明のシグナル集計法は、単一センサービーズ測定において生じる実験的ノイズを大きく減少させ、分析測定のシグナルとノイズの比率において大きな改善(10倍またはそれ以上)を与える。
【0168】
(実施例13)
本発明のシグナル集計法を、実施例5の方法によって調製し、実施例8の方法によって試験したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズに対して行った実験測定値の分析において評価した。結果を図15に示すが、この図においては、39個のセンサービーズのそれぞれに対する一時的な光学反応の実際の相対強度が、シグナル集計によって得られる一時的な光学反応の相対強度と比較されている。図15に示されるように、シグナル集計によって大きなシグナル増強が得られ、これに対応して、標的アナライトの検出限界において大きな改善(100倍まで)が得られる。
【0169】
(実施例14)
実施例3の方法によって調製したポリシロキサン被覆した多孔性シリカビーズを評価して、トルエンおよびメタノールの両蒸気に対する特徴的な光学応答標示を調べた。結果を図16に示すが、この図には、トルエンおよびメタノールの両方に対する2個のビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。図16に示す結果は、特定のアナライトに対するビーズセンサーの特徴的な光学応答標示を利用することによって、ビーズセンサーのこの部分集団が2種類の所望のアナライトを区別することができることを示す。
【0170】
(実施例15)
実施例1の方法によって調製した多孔性シリカビーズおよび実施例5の方法によって調製したポリ(メチルスチレン/ジビニルベンゼン)ビーズの50/50混合物を、上記した本発明の方法に従って、ランダムに分散させ、ファイバーオプチックス束の末梢端にあるエッチングしたマイクロウエル中に導入した。得られたセンサー配列を評価して、メタノール蒸気に対するビーズ部分集団の特徴的な光学応答標示を調べた。535nmの励起フィルターおよび600nmの放射フィルターをこの実験に用いた。結果を図17に示すが、この図には、メタノール蒸気のパルスに対する3個の多孔性シリカビーズセンサーおよび6個のPMSビーズセンサーの標準化された一時的な光学反応が示されている。この実施例においては、ビーズ部分集団の特徴的な放射光ピークの形状が、それぞれの部分集団の識別可能な特徴的な応答標示を与える。図17は、本発明の革新的な自己コード化の特徴を示すものであり、この図では、ビーズの同一性(アイデンティティー)および位置が、対照蒸気アナライトの単一測定において決定される。
【0171】
(実施例16)
実施例15の方法によって得た自己コード化ファイバーオプチックスセンサー配列を、n-プロパノール蒸気のパルスに対する、配列の多孔性シリカおよびPMSセンサービーズ部分集団の特徴的な一時的光学応答標示を測定することによって評価した。結果を図18に示すが、この図には、n-プロパノール蒸気のパルスに対する3個の多孔性シリカビーズセンサーおよび6個のPMSビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。この実施例においては、ビーズ部分集団の特徴的な放射光強度が、それぞれの部分集団の識別可能な特徴的な応答標示を与える。図18は、異なるビーズ部分集団の別個の特徴的な一時的光学応答標示を用いて特定の所望のアナライトを検出することの利点を示す。センサー配列中のビーズセンサーの同一性および位置が実施例15の方法によって解読されたことに注意すべきである。実施例15の方法によるセンサー配列の自己コード化および本実施例16の方法によって為されるセンサー配列測定を組合わせることによって、このセンサー配列が、n-プロパノールからメタノールを検出および識別するように調整された。
【0172】
(実施例17)
実施例15の方法によって得た自己コード化ファイバーオプチックスセンサー配列を、トルエン蒸気のパルスに対する、配列の多孔性シリカおよびPMSセンサービーズ部分集団の特徴的な一時的光学応答標示を測定することによって評価した。結果を図19に示すが、この図には、トルエン蒸気のパルスに対する3個の多孔性シリカビーズセンサーおよび6個のPMSビーズセンサーの一時的な光学反応が示されている。図19は、異なるビーズ部分集団の特徴的な一時的光学応答標示を用いて特定の所望のアナライトを検出することの利点を示す。センサー配列中のビーズセンサーの同一性および位置が実施例15の方法によって解読されたことに注意すべきである。実施例15の方法によるセンサー配列の自己コード化、実施例16の方法によって為されるセンサー配列測定、および本実施例17の方法によって為されるセンサー配列測定を組合わせることによって、このセンサー配列が、メタノール、n-プロパノールおよびトルエンからなる標的アナライトの群を検出および識別するように調整された。
【0173】
(実施例18)
実施例4の方法によって得たPS802ビーズセンサー、実施例5の方法によって得たポリメチルスチレン/2%ジビニルベンゼンビーズセンサー、および市販のポリメチルスチレンビーズ[バングス・ラボラトリーズ]の試料を、顕微鏡カバースリップ基体上に分散させた。空気中で各ビーズ部分集団を平衡化した後、各部分集団を飽和トルエン蒸気のパルスに暴露し、同時に励起光エネルギーをビーズに照射した。トルエン蒸気に対する各ポリマー種の膨潤反応によるビーズ寸法の変化を、図7の装置を用いてモニターした。ビーズの反応を、CCDカメラによるビーズ画像寸法の変化の捕捉およびビーズの時間変化する蛍光画像の撮影によって記録した。図20は、3種類のビーズ部分集団の膨潤反応の相違を、空気中での各ビーズ種の最初の蛍光画像と、トルエン蒸気に暴露した後の各ビーズ種の後の画像との比較によって示すものである。種々のポリマー候補材料の膨潤反応特性のこのような測定は、本発明の自己コード化センサー配列におけるビーズセンサー成分として使用するためのビーズセンサー材料を予備スクリーニングする際に有用である。
【0174】
本発明を、その好ましい態様を参照しながら具体的に示し、説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の思想および範囲から逸脱することなく、その形態および細部に種々の変更を行いうることは当業者の理解するところであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素反応から発生したシグナルを増幅する方法であって、
結合された酵素を有する複数の同一の微小球の部分集団を含む微小球の集団を供給し、
該微小球が光学ファイバー束の独立したファイバー又はファイバーの群と光学的に結合するように、該微小球の集団に光学ファイバー束を供給し、
該微小球の集団にアナライトを供給し、それにより光学シグナルを発生させ、
該光学シグナルを検出し、
該光学シグナルを組み合わせて、該酵素反応からの増幅されたシグナルを生成する
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
該酵素は、官能基により該部分集団の微小球に結合されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該官能基は、アミノ基又はカルボキシル基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該官能基は、スルフヒドリル基である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該部分集団の微小球はリンカーを含み、該リンカーは該官能基を有する請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該リンカーは二官能性リンカーである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該酵素は、直接的に検出できるシグナルを発生する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該酵素は、間接的に検出できるシグナルを発生する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該酵素は、該光学的に検出できるシグナルを発生させるためにさらに処理される副生成物を生成する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光学シグナルの組み合わせが生じる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該光学シグナルは、少なくとも50の倍率で増幅される請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
アナライト検出限界は、少なくとも100の倍率で減少される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
酵素反応から発生したシグナルを増幅する方法であって、
結合された酵素を有する複数の同一の微小球の部分集団を含む微小球の集団を供給し、
該微小球が光学ファイバー束の独立したファイバー又はファイバーの群と光学的に結合するように、該微小球の集団に光学ファイバー束を供給し、
該微小球の集団にアナライトを供給し、それにより光学シグナルを発生させ、
該光学シグナルを検出し、
該光学シグナルを組み合わせて、該酵素反応からの増幅されたシグナルを生成する
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
該酵素は、官能基により該部分集団の微小球に結合されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該官能基は、アミノ基又はカルボキシル基である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該官能基は、スルフヒドリル基である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該部分集団の微小球はリンカーを含み、該リンカーは該官能基を有する請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該リンカーは二官能性リンカーである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
該酵素は、直接的に検出できるシグナルを発生する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該酵素は、間接的に検出できるシグナルを発生する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
該酵素は、該光学的に検出できるシグナルを発生させるためにさらに処理される副生成物を生成する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光学シグナルの組み合わせが生じる請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該光学シグナルは、少なくとも50の倍率で増幅される請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
アナライト検出限界は、少なくとも100の倍率で減少される請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−249826(P2010−249826A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114269(P2010−114269)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【分割の表示】特願2009−62380(P2009−62380)の分割
【原出願日】平成10年10月6日(1998.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(399127843)トラスティーズ・オブ・タフツ・カレッジ (12)
【氏名又は名称原語表記】TRUSTEES OF TUFTS COLLEGE
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【分割の表示】特願2009−62380(P2009−62380)の分割
【原出願日】平成10年10月6日(1998.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(399127843)トラスティーズ・オブ・タフツ・カレッジ (12)
【氏名又は名称原語表記】TRUSTEES OF TUFTS COLLEGE
【Fターム(参考)】
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