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酵素反応を測定するための均質な活性試験
説明

酵素反応を測定するための均質な活性試験

【課題】インビトロ診断において、試料中の分析物の酵素活性を測定するための均質法を提供し、同一反応混合物中の酵素の量の測定及び酵素活性剤又は阻害剤の同時測定を可能にする。
【解決手段】(a)試料、測定対象の酵素によって結合及び変換させられることのできる少なくとも1つの基質、及びシグナル形成系の第1及び第2成分であって、前記シグナル形成系の前記第1及び第2成分は相互に空間的に近づけられると検出可能なシグナルが生成されるように相互作用し、このとき、前記シグナル形成系の前記第1成分は、インキュベーション中に、前記基質と結び付けられているか又は結び付けられるようになり、前記測定対象の酵素は、インキュベーション中に、前記シグナル形成系の前記第2成分と結び付けられるようになる、シグナル形成系の第1及び第2成分を含有する反応混合物の調製及びインキュベーション工程;並びに(b)前記試料中の前記酵素活性と相関する前記シグナルの測定工程を備える試料中の酵素の活性を測定する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビトロ(in−vitro)診断学の分野に属し、試料中の酵素的に触媒された反応(酵素触媒反応)を測定するための均質法に関する。本発明によれば、酵素触媒化学反応を測定することによって、酵素の活性状態又は該活性状態に影響を及ぼす物質の存在を測定することができる。
【背景技術】
【0002】
化学反応は、それによって物質が変換されるプロセスである。1つ以上の反応生成物は、1つ以上の出発物質(遊離体又は反応体)から形成される。生成物の化学的又は物理的特性は、遊離体の化学的又は物理的特性とは相違する。
【0003】
酵素触媒反応では、酵素は、化学反応の開始、促進又は制御に関与する。
【0004】
診断学的に重要なパラメーターの多くは、酵素、反応体、反応生成物又は酵素活性の調節剤である。活性調節剤は、酵素の活性に対して、阻害剤、活性剤、アゴニスト、アンタゴニスト又は補因子として、影響を及ぼすことができる物質であると理解すべきである。
【0005】
診断学的に重要な酵素の1つの例は、セリンプロテアーゼ群内の血液凝固因子であるトロンビンであり、患者の血漿試料中のその活性の測定により、患者の血液凝固の状態についての情報を得ることができる。また、別の例は、血液凝固第VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)であり、その活性の測定により、例えば、患者が血栓症を発生するリスクについての情報を得ることができる。
【0006】
酵素の活性は、通常、多かれ少なかれ特異的な基質の反応から測定される。公知の方法は、(分離工程を含まない)均質法と(1つ以上の分離工程を含む)不均質法とに分類される。
【0007】
不均質法では、検出対象の物質が濃縮される。つまり、調査対象の試料は、試料の他の成分の濃度が検出対象の物質に比較して減少させられるか又は試料の他の成分が完全に除去されるプロセスに、供せられる。このためには、例えば、親和性技術(affinity technique)が使用される。
【0008】
これとは対照的に、均質法では、試料はアッセイにおいて直接的に調査される。分離プロセス、例えば洗浄工程、は使用されない。
【0009】
酵素の活性を測定する均質法の例は、例えば特許文献1に記載されているETPアッセイのような、トロンビン活性アッセイである。血漿試料中のトロンビンが活性化され、発色性ペプチド基質が試料と混合され、トロンビンによるその特異的切断が光度測定法により測定される。しかし、この均質なアッセイフォーマットは、基質特異性の低い酵素の活性の測定には適合しないが、それは基質特異性の欠如により、基質が試料由来の他の酵素によっても変換され得るからである。均質法は、それに対する分析感受性が不十分な基質しか利用できない酵素の測定のためにも、適合しない。更に、この均質なアッセイフォーマットは、一般に、体積活性(volume activity)が低い酵素の活性を測定するためにも、また、適合しない。
【0010】
体積活性は、単位体積当たりの酵素の触媒活性を表現する。触媒活性は、単位時間内に反応する基質の量によって又は単位時間内に形成される生成物の量によって、定義される。体積活性は、1分間当り1リットル当たりの(基質分解又は生成物形成)μmol、即ち、μmol/分*L、で表示されることが多い。μmol/分に対しては、通常、単位(U)又は触媒単位(kU)の用語が使用される。国際単位系(SI)では、単位カタール(kat)、即ち、mol/秒が使用されなければならない。
【0011】
試料中の酵素の体積活性と共に、特に酵素の比活性は、その活性状態を表現する。比活性は、存在する酵素の量に対する酵素の触媒活性の比率、即ち、μmol/分*g(U/g)で表わされる。比活性は、例えば、活性化度、分解度又は酵素の阻害若しくは活性化についての情報を提供する。
【0012】
調査対象の試料が、使用された基質をも変換させる他の酵素を、含有する場合、これは特に体液の試料等の複合試料の場合に有りうるケースであるが、所望の酵素活性の特異的測定は、適切な高度に特異的な基質なしでは、試料中で直接的に実施することはできない。
【0013】
先行技術では、この課題は、例えば、酵素活性の代わりに、酵素濃度又は抗原濃度を、特異的アッセイによって、例えばイムノアッセイによって、測定することによって解決することができる。抗原濃度は、予測酵素活性と相関している。酵素濃度から酵素活性を推定することは、酵素の活性状態が例えば活性調節剤によって影響を受ける場合には、適切ではない。このため、酵素の活性又はその活性状態は、必ずしも確実に測定することができない。
【0014】
更に、先行技術では、この課題は、通常、不均質なアッセイ系を使用することによって解決されている。この場合には、検出対象の酵素が試料の他の構成成分から分離され、その後に酵素活性が測定される。分離は、通常、検出対象の酵素に対して特異的結合親和性を有する固相と試料とを接触させ、次いで、該固相を分離することによって実施される。
【0015】
これらの不均質法の不利な点は、それらが、少なくとも1つの分離工程と、おそらく追加の洗浄工程とを、含むことである。これらの追加の工程は、自動化をより困難にし、処理時間を延長させる。処理時間は、検出対象の酵素を固相に結合させるために、試料が所定の時間に亘って固相とともにインキュベートされる場合があるので、更に長くなる。また、別の不利な点は、固相のインキュベーション、分離及び洗浄が検出対象の酵素の活性に影響を及ぼす可能性がある点である。例えば、酵素の立体配座変化又は分解は、活性の変化を引き起こすことがある。不均質法のまた別の不利な点は、試料の他の構成成分が除去され又は少なくともそれらの濃度が減少させられるので、試料に固有であって検出対象の酵素の活性に影響を及ぼす結合相手、補因子、活性剤又は阻害剤も、また、除去され、その結果として、酵素活性又は該酵素と結合の可能性のあるパートナーを試料マトリックスの生理学的状況において測定できない点にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、従って、使用される基質をも変換させる妨害酵素の存在下においてさえ、酵素の活性の特異的測定を可能にする均質法を提供することにある。更に本発明の課題は、酵素の活性状態を測定すること、つまり体積活性とは別に、酵素濃度、従って比活性又は活性調節剤の存在の、指標を入手することである。特に、比活性又は活性調節剤の測定、好ましくは定量的測定、が可能にされなければならない。更に、低体積活性で存在する酵素の活性を測定することが可能でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第A2−0420332号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、基質並びにシグナル形成系の第1及び第2成分が調査される試料に加えられることで解決されるが、このとき該シグナル形成系の第1成分は、該基質と結び付けられているか又は結び付けられるようになり、該シグナル形成系の第2成分は、測定対象の該酵素と結び付けられるようになる。シグナル形成系は、測定対象の酵素を基質に結合させることによって、シグナル形成系の第1及び第2成分が相互に空間的に近づけられた場合にのみ、検出可能なシグナルが生成されるような系である。他の可能性のある妨害酵素の基質への結合は、シグナルの生成を引き起こさないが、それは、検出対象の酵素のみが該シグナル形成系の第2成分と結び付けられるためである。結果として生じるシグナルは、試料中の酵素の活性についての情報を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用される基質をも変換させる妨害酵素の存在下においてさえ、酵素の活性の特異的測定を可能にする均質法が提供される。また、本発明によれば、酵素の活性状態を測定することが可能になり、特に、比活性又は活性調節剤の測定、好ましくは定量的測定、が可能になる。更に、低体積活性で存在する酵素の活性を測定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】LOCI(登録商標)シグナルの酵素活性又は濃度への依存性を示す図。
【図2】デキストラン硫酸による活性化の有無によるシグナル高及びシグナル動力学の相違を示す図。
【図3】時間経過によるシグナルの変化を示す図。
【図4】使用したペプチド濃度の関数としてのLOCI(登録商標)シグナルの動力学を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、試料中の酵素の活性を測定する方法に関する。
【0022】
用語「酵素」は、本発明において、プロセス中に消費されることなく反応を触媒できる任意の物質を意味する。用語「酵素」は、タンパク質及び核酸、例えば触媒的に活性なRNA分子、いわゆるリボザイム類、を含んでいる。酵素は、機能に依存して、本質的に以下の種類の1つに割り当てられる:オキシドレダクターゼ類、トランスフェラーゼ類、ヒドロラーゼ類(ペプチダーゼ類、例えばセリンプロテアーゼ類、グリコシダーゼ類、グリコシラーゼ類及びヌクレアーゼ類)、リアーゼ類、イソメラーゼ類又はリガーゼ類。詳細には、用語「酵素」には、血液凝固因子である第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロテインC、第VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)、プレカリクライン、プラスミノーゲン、組織プラスミノーゲン活性剤(tPA)及びプロウロキナーゼが含まれる。
【0023】
用語「試料」は、本発明において、検出対象の酵素を含有すると推測される材料を意味する。用語「試料」は、特にヒト及び動物由来の、血液、血漿、血清及びその他の体液等の生体液若しくは生体組織、分泌物又は抽出物、を含む。必須ではないが、試料は、検出方法を酵素に適用できるようにするため又は試料から妨害成分を除去するために、前処理されなければならない。試料の前処理には、細胞の分離及び/若しくは溶解、試料の構成成分、例えばタンパク質、の沈降、加水分解若しくは変性、試料の遠心分離、試料の有機溶媒、例えばアルコール類、特にメタノール、を用いた処理;試料の界面活性剤による処理が含まれる。試料は、しばしば、別の、一般には水性の、可能であれば検出方法を妨害しない、媒体へ移される。
【0024】
本発明による方法は、試料、測定対象の酵素と結合して少なくとも1つの生成物に変換され得る少なくとも1つの基質、並びに、相互に空間的に近づけられると検出可能なシグナルが生成されるように相互作用するシグナル形成系の第1及び第2成分を、含有する反応混合物を供給するステップを備える。基質は、シグナル形成系の第1成分と結び付けられているか又は結び付けられるようになり、測定対象の酵素は、該シグナル形成系の第2成分と結び付けられる。酵素と基質との間の錯体形成の結果として、シグナル形成系の成分が相互に空間的に近づけられるので、試料中の酵素の活性と相関する検出可能なシグナルが生成される。
【0025】
用語「基質」は、本発明において、酵素と結合して少なくとも1つの反応生成物に変換される物質を意味する。例えばペプチド結合を加水分解的に切断するペプチダーゼ類を検出するための、好ましい基質は、タンパク質若しくはペプチドから成るか又は少なくとも1つのペプチド成分を含有してなる。
【0026】
用語「シグナル形成系」は、本発明においては、相互に空間的に近づけられて相互作用できるようになると、検出可能なシグナルが生成されるように相互作用する、少なくとも第1及び第2成分を含む系を意味する。成分間の相互作用は、特に、エネルギー移動−つまり、例えば光線又は電子の放射による、及び、反応性化学分子、例えば短寿命一重項酸素を経由する、成分間の直接的なエネルギー移動を、意味する。エネルギー移動は、1つの成分から他の成分へ起こることができるが、その全体に亘ってエネルギー移動が発生する様々な物質の連鎖も、また、考えられる。例えば、該成分は、エネルギードナー及びエネルギーアクセプターからなる対、例えば感光剤及び化学発光物質(欧州特許出願公開(EP−A2)第0515194号明細書、LOCI(登録商標)技術)、又は感光剤及びフルオロフォア(国際公開第95/06877号パンフレット)、又は放射性ヨウ素125及びフルオロフォア(Udenfriendら(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. 82:8672−8676)、又はフルオロフォア及び蛍光消光剤(米国特許第3,996,345号明細書)、であってよい。
【0027】
シグナル形成系の第1及び/又は第2成分は、共有結合で又は特異的相互作用によって、粒子状固相へ結び付けることができ又は後者の中に挿入することができる。用語「粒子状固相」は、懸濁可能な粒子、例えば金属ゾル、シリカ粒子、磁気粒子又は特に好ましくはラテックス粒子、を意味する。0.01〜10μmの直径を有する粒子が好ましく、0.1〜1μmの直径を有する粒子が特に好ましい。
【0028】
本発明による方法の1つの実施形態では、基質は、第1結合対A/Bの第1結合パートナーAを有しており、シグナル形成系の第1成分は、結合対A/Bの第2結合パートナーBを有している。従って、基質は、シグナル形成系の第1成分と結び付けられることができる。基質のシグナル形成系の第1成分への結合は、反応混合物のインキュベーション中に、即ち、試料及びシグナル形成系の第2成分の存在下において、起きてもよく、また、基質及び第1シグナル形成成分が反応混合物に加えられる前に別個にインキュベートされ、その後に、基質とシグナル形成系の第1成分との錯体が反応混合物に加えられてもよい。
【0029】
結合パートナーA及びBは、相互に特異的に認識し結合する、2つの相異する分子である。特異的な認識及び結合の例は、抗体−抗原相互作用、酵素−基質相互作用、ポリヌクレオチド相互作用、等である。
【0030】
適切な結合対A/Bは、主として、抗原/抗体の組み合わせであり、ここで、結合パートナーAは、基質の抗原性エピトープである。抗原性エピトープは、天然配列エピトープ又は天然タンパク質若しくはタンパク質フラグメントの構造的エピトープであってよい。抗原性エピトープは、更にまた、異種配列エピトープ又は修飾基質の構造的エピトープであってよい。異種配列エピトープ若しくは構造的エピトープの例は、FLAG、又はHIS若しくはフルオレセインタグであり、これらは、特に、ペプチド又はタンパク質を標識するために、使用される。その他の適切な結合対A/Bは、相補的ポリヌクレオチドA及びBである。シグナル形成系の第1成分と結合された結合パートナーBは、基質へ特異的に結合できるように選択されなければならない。好ましくは、結合パートナーBは、抗体又はその抗原結合性フラグメントからなる。特に好ましい結合対A/Bは、FLAGタグ/抗FLAGタグ抗体、HISタグ/抗HISタグ抗体、フルオレセイン/抗フルオレセイン抗体、ビオチン/アビジン及びビオチン/ストレプトアビジンである。
【0031】
本発明による方法のまた別の実施形態では、測定対象の酵素は、第2結合対X/Yの第1結合パートナーXを有しており、シグナル形成系の第2成分は、結合対X/Yの第2結合パートナーYと結び付けられるので、測定対象の酵素は、反応混合物のインキュベーション中に結合パートナーX及びYの結合によって、シグナル形成系の第2成分に結合させられる。
【0032】
結合パートナーX及びYは、相互に特異的に認識して結合する、2つの相異する分子である。Xは、酵素特異的な、構造又は配列エピトープであり、Yは、検出対象の酵素の性質に依存して、該酵素特異的な、構造又は配列エピトープに対する特異性を備える、抗体若しくは抗体フラグメント又はポリヌクレオチドである。
【0033】
また別の実施形態は、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子及びプロテインCを含む群から選ばれるタンパク質分解性凝固因子の活性を測定する方法であって、試料中のタンパク質分解性凝固因子の直接的又は間接的活性化のための試薬が反応混合物に追加添加される方法に関する。
【0034】
試料中のタンパク質分解性凝固因子の直接的又は間接的活性化のためには、試料は、通常、タンパク質分解性凝固因子の直接的又は間接的活性化を引き起こす試薬と混合される。「直接的活性化」は、他の凝固因子の存在とは無関係に、測定対象のタンパク質分解性凝固因子を直接的に活性化する試薬が使用されることを意味している。「間接的活性化」は、血液凝固カスケードの1つ以上の血液凝固因子を活性化する試薬が使用されることを意味し、該カスケードが次いで調査対象のタンパク質分解性凝固因子を活性化する。試薬のタイプは、測定対象の凝固因子、凝固因子単独の活性を測定すべきかどうか、又は血液凝固カスケード若しくは血液凝固カスケードの部分領域(外因又は内因経路)の機能性を凝固因子によって測定すべきかどうかに、左右される。タンパク質分解性凝固因子の直接的又は間接的活性化を可能にする物質及び様々な物質の特定の混合物は、当業者には十分に公知であり、例えば、リン脂質類、例えば負荷電リン脂質類;リポタンパク質類、例えばトロンボプラスチン;タンパク質類、例えば組織因子、活性化セリンプロテアーゼ類、例えば第IIa因子(トロンビン)、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子又は活性化プロテインC;ヘビ毒、例えば、PROTAC(登録商標)酵素、エカリン、テクスタリン、ノスカリン、バトロキソビン、トロンボシチン又はラッセルクサリヘビ毒(RVV);接触活性剤、例えば、シリカ、カオリン、エラグ酸又はセライトを含んでいる。試薬を含有し得るその他の物質は、例えば、緩衝物質、塩、洗剤、イオン、特にカルシウムイオン、及びキレート剤である。
【0035】
タンパク質分解性凝固因子の活性を測定するための本発明による方法の好ましい実施形態では、試料は、更にフィブリン凝集阻害剤と混合される。フィブリン凝集阻害剤は、トロンビン誘起フィブリンモノマーの凝集を防止する物質である。この方法で、フィブリノーゲン含有試料中でのフィブリン凝塊の形成が防止される。さもなければ、例えば拡散及びクエンチングを制限することによって、測定に有害な作用が及ぼされる可能性がある。好ましいフィブリン凝集阻害剤は、合成ペプチド類、例えばグリシン−プロリン−アルギニン−プロリン配列のペプチド(Pefabloc(登録商標)FG、スイス国、Pentapharm社から市販されている)である。フィブリン凝集阻害剤として使用できるその他の好ましいペプチド類、特に、グリシン−プロリン−アルギニン−プロリン−アラニン配列の好ましいペプチドは、欧州特許出願公開(EP−A2)第456152号明細書に記載されている。
【0036】
試料、測定対象の酵素が結合して修飾できる物質、並びにシグナル形成系の第1及び第2成分を含有する反応混合物が調製されると、反応混合物は、一定時間に亘ってインキュベートされ、酵素と基質との十分な結び付きを確実にする。用語「十分な」は、本方法が、全体として、酵素の活性の定量的測定を可能にすることを意味する。特定アッセイ系の最適インキュベーション時間は、実験的に決定することができる。反応混合物中で生成されるシグナル又はシグナルの経時的な変化は、検出対象の酵素の活性又は活性調節剤と相関している。この相関に基づいて、シグナル又はシグナルの時間的変化から、酵素の活性を測定することができる。このために、標準物質を用いた較正が実施されることが好ましい。標準物質は、既定の活性又は濃度を有する酵素又は活性調節剤である。
【0037】
本発明の課題は、更に、酵素活性の特異的測定とは別に、同一反応混合物中の酵素の量を同時に測定することを可能にする均質法を提供することにある。
【0038】
この課題は、シグナル形成系の第3成分が、また、調査される試料に加えられ、これがインキュベーション中に測定対象の酵素と結び付けられることで解決される。シグナル形成系の第3成分は、第1シグナルとは相違して、シグナル形成系の第3及び第2成分が測定対象の酵素への同時結合によって相互に空間的に近づけられた場合にのみ生成される第2の検出可能なシグナルが生成されるような成分である。生成された第2シグナルは、試料中の酵素の量と比例する。
【0039】
同一反応混合物中の酵素の活性と量とを同時測定するためのこの方法は、単一試験ランにおいて、例えば、酵素活性が基準より低い原因が酵素量の減少のためであるかどうか、又は、酵素の量が基準に一致しており、減少した活性についてのまた別の原因、例えば阻害剤等の活性調節剤、又は酵素の機能障害を想定しなければならないかどうかを確定することが可能であるという利点を有する。単一反応混合物中における様々なパラメーターの同時測定は、更に、試料のピペッティングにおいて発生する可能性のある不正確さ、又は試料のエイジングプロセスによって誘発されるであろう不正確さが回避されるという利点を有する。従って、特異的酵素活性の正確な測定が可能である。
【0040】
シグナル形成系の第3成分は、第1シグナルとは相違して、該シグナル形成系の第3及び第2成分が測定対象の酵素への同時結合によって相互に空間的に近づけられた場合にのみ生成される第2の検出可能なシグナルが生成されるような成分である。シグナル形成系の第3成分は、代替エネルギードナー又は代替エネルギーアクセプターのいずれかであってよい。シグナル形成系の第3成分は、更に特定の固相と結び付けることもできる。
【0041】
酵素の量を同時測定する1つの実施形態では、測定対象の酵素は、更に、第3結合対C/Dの第1結合パートナーCを有しており、ここで、第3結合対C/Dの第2結合パートナーDは、シグナル形成系の第3成分と結び付けられ、酵素は、インキュベーション中に結合パートナーC及びDの結合を通して、シグナル形成系の第3成分に結合させられる。第3結合対C/Dは、第2結合対X/Yとは相違していなければならない。
【0042】
結合パートナーC及びDは、相互を特異的に認識して結合する2つの相異する分子である。Cは、酵素特異的な構造又は配列エピトープであり、Dは、検出対象の酵素の性質に依存して、酵素特異的な構造又は配列エピトープに対する特異性を備える抗体若しくは抗体フラグメント又はポリヌクレオチドである。
【0043】
1つの実施形態では、例えば、シグナル形成系の第1成分は第1化学発光物質であり、シグナル形成系の第2成分は感光剤であり、そして第3成分は第2化学発光物質であり、このとき第1及び第2化学発光物質は、相互に相違する発光スペクトルを有する。相違する発光スペクトルを備える2つの光シグナルの測定は、一方では同一反応混合物中の酵素活性の定量的測定及び酵素の量の定量的測定を可能にする。
【0044】
また別の実施形態では、例えば、シグナル形成系の第1成分は第1感光剤であり、シグナル形成系の第2成分は化学発光剤であり、そして、第3成分は第2感光剤であり、ここで、第1及び第2感光剤は、相異する波長の光線によって励起可能である。波長Xの光線を用いた第1感光剤の励起後の光シグナル測定は、酵素活性の定量的測定を可能にする。波長Yの光線を用いた第2感光剤の励起後の光シグナル測定は、同一反応混合物中の酵素の量の定量的測定を可能にする。
【0045】
本発明の課題は、更に、酵素活性の調節因子を測定することを可能にする均質法を提供することである。
【0046】
用語「酵素活性の調節因子」は、阻害剤、活性剤、アゴニスト、アンタゴニスト又は補因子として、酵素の活性に影響を及ぼす(調節する)ことのできる物質を意味する。
【0047】
この課題は、測定対象の酵素活性の調節因子によって、その活性が直接的又は間接的に影響を受ける可能性がある酵素の規定量が、調査対象の試料に、別個の試薬の形態で加えられることによって解決される。更に、加えられた酵素が結合及び修飾できる基質、並びにシグナル形成系の第1及び第2成分−ここで、シグナル形成系の第1成分は基質と結び付けられているか結び付けられるようになり、そしてシグナル形成系の第2成分は加えられた酵素と結び付けられる−が、反応混合物に加えられる。シグナル形成系は、測定対象の酵素を基質に結合させることによってシグナル形成系の第1及び第2成分が相互に空間的に近づけられた場合にのみ、検出可能なシグナルが生成されるような系である。測定されたシグナルは、試料中の酵素調節因子の酵素調節活性と相関している。
【0048】
本発明による方法は、酵素阻害剤の測定及び酵素活性剤の測定の両方に適合する。酵素阻害剤を測定するためには、酵素は活性化形態で反応混合物に加えられる。酵素活性剤を測定するためには、酵素は非活性化形態で反応混合物に加えられる。
【0049】
特に、本発明による方法は、抗凝固剤、即ち、所定の血液凝固因子、の活性を阻害する物質を測定するために適合する。
【0050】
試料中の抗凝固剤を測定するためには、規定量の公知の活性化凝固因子が反応混合物に加えられる。どの活性化凝固因子が加えられるかは、どの抗凝固剤が測定対象であるかに依る。
【0051】
ヘパリン、つまり高分子量未分画ヘパリン(HMWヘパリン)又は低分子量ヘパリン(LMWヘパリン)又はヘパリノイド、の測定のためには、特に、第IIa因子(トロンビン)若しくは第Xa因子の添加が適合する。直接的トロンビン阻害剤、例えばアルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトラン、ビバリルジン、ダビガトラン又はヒルジン、の測定のためには、特に、第IIa因子(トロンビン)の添加が適合する。直接的第Xa因子阻害剤、例えばリバロキサバン、の測定のためには、特に第Xa因子の添加が適合する。
【0052】
酵素調節因子の定量的測定のための本発明による方法においては、測定対象の酵素調節因子によって、規定量の酵素の活性が直接的又は間接的に影響を受ける可能性があり、酵素が反応混合物に加えられる別個の試薬中に含有されるということとは無関係に、酵素の活性を測定するための方法を実施することについての上記の説明は、酵素調節因子の定量的測定のための本発明による方法にも当てはまる。
【0053】
酵素反応は、平衡が確立されるまでの反応の全時間間隔に亘って又は少なくとも1つの特定の時間間隔中又は少なくとも1つの時点において、測定することができる。活性を測定するためには、測定値は、そのままで又は時間間隔に関連付けて使用できる。活性が時間間隔に関連付けた光度測定データから測定される、即ち、変換若しくは反応速度が検出される場合は、変換又は反応速度を測定するための様々な方法を使用できる。例えば、変換速度は、時間−変換率曲線によって測定できる。時間−変換率曲線については、基質の反応が時間に対してプロットされる。変換速度を測定するためには、直線が時間−変換率曲線のゼロ次反応の領域内に、通常、酵素反応の測定開始時に、作図される。直線の勾配により、変換速度、即ち、特定時間間隔内の基質又は生成物の濃度変化、が与えられる。
【0054】
変換の動力学の評価に適合する測定量又はパラメーターは、例えば、反応動力学、例えば曲線そのものの考察、を記述する全パラメーターであるが、特に、最大勾配、即ち、反応速度(vmax)、シグモイド性パラメーター、直線性パラメーター、曲線下面積等のような、反応動力学の個別パラメーターである。試験評価のために適合するパラメーターは、例えば、絶対測定値、例えば特定時点又は特定測定値(例えば最大値)に達する時点に測定されるLOCI(登録商標)測定値、である。
【0055】
基質の変換において、酵素はそれらの基質と適切な条件下で反応し、酵素−基質錯体を形成する。条件が適切に選択されれば、その後の工程で、基質が少なくとも1つの生成物へ変換することがある。
【0056】
「シグナル形成系」の使用によって、シグナルの様々な時間的関係を酵素活性の測定に利用できる。
【0057】
酵素に対するシグナル形成系の結合パートナーが十分な濃度で使用されると、遊離酵素(FE)の濃度、従って活性は、系が平衡状態にあれば、無視することができる。そうでない場合は、少なくとも反応の開始時に、酵素と酵素の結合パートナーとの錯体の形成がシグナルに影響を及ぼす可能性がある。結合パートナーに結合した酵素(BE)は、基質と反応することができる。基質については、遊離基質(FS)とシグナル形成系の対応する結合パートナーに結合した基質(BS)とが区別されなければならない。BEは、従って、FS又はBSのいずれかに結合する、即ち、S及びFSが、BEへの結合において、相互に競合する。同じことが、FS又はBSの変換に対応して当てはまる。FS及びBSが必ずしもBEに対して同一親和性を有する必要はないことを念頭に置いておかなければならない。シグナル形成系への基質の結合は、親和性の変化を導く可能性がある。FSの親和性がBSの親和性より高い場合は、より多くのFSがBEに結合され、その逆もまた同様である。これは、更にまた、FS及びBSの生成物への変換にも当てはまる。基質から生成物への反応性又は変換可能性は変化する、即ち、シグナル形成系への結合に伴って増加又は減少する、場合がある。基質がシグナル形成系に結合した後の基質の変換反応が、結合した基質の変換反応が結合反応に比較して無視できるように又は結合形態にある基質が辛うじて変換され若しくは全く変換されないように、低下させられることも考えられる。
【0058】
シグナル形成系としてLOCI(登録商標)を使用した場合は、BEへのBSの結合だけがシグナルを与えるので、従って、FS及びBSの競合はシグナル又はその反応動力学に影響を及ぼす。前記競合は、FS及びBSの、各々の濃度、親和性又は変換可能性に左右される。
【0059】
主としてBSが存在するように基質の量が選択された場合は、FSの濃度は無視することができる。FSは、このとき、シグナル形成においてほとんど役割を果たさない。つまり、BSの濃度、親和性及び変換可能性は、シグナル又はその反応動力学に決定的な影響を及ぼす。BSの変換反応が結合反応に比して優勢である場合は、経時的なシグナルの減少が予想される。これとは逆に、結合反応が変換反応に比して優勢である場合は、最初に該シグナルの経時的増加が予想される。この状況は、実施例1に提示した。十分な変換反応が存在する場合は、後ほど、結合が平衡状態に近付いたときに、シグナルの減少が経時的に再び生じる可能性がある。
【0060】
以下の実施例は、本発明を例示するために役立つが、何らかの制限であると理解すべきではない。
【実施例】
【0061】
[材料]
別途記載しない限り、全ての試薬はSigma−Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス)から入手した。
【0062】
[基質]
以下のFSAP感受性ペプチドは、標準Fmocペプチド合成方法によって調製した:
1.アルギニン、プロリン、アルギニン、フェニルアラニン及びリシンの順序の配列のアミノ酸残基でビオチンに結合し、C末端リシン残基上にビオチンを有するペンタペプチド(ペプチドI);
2.イソロイシン、プロリン、アルギニン及びリシンの順序の配列のアミノ酸残基でビオチンに結合し、C末端リシン残基上にビオチンを有するテトラペプチド(ペプチドII);
3.N末端リシン残基とビオチンとの間に12エチレングリコール単位(PEG12スペーサー)のポリエチレングリコールを有する、1又は2のペプチド(1によるペプチドIII及び2によるペプチドIV)。
【0063】
[シグナル形成系]
本明細書で使用したシグナル形成系は、公知のLOCI(登録商標)技術(発光酸素チャネリングアッセイ、欧州特許出願公開(EP−A1)第0515194号明細書をも参照されたい)に基づいている。本系は、感光剤及び化学発光物質を含んでいる。感光剤の光線による励起は、化学発光物質を活性化し得る短寿命一重項酸素の生成を誘発し、これにより発光シグナルが放出される。
【0064】
[ケミビーズ(Chemibeads)]
シグナル形成系の第1成分は、以下では「ケミビーズ」と称する。ケミビーズは、粒子状ラテックス固相と結び付けられた化学発光物質を含んでいる。ケミビーズは、ハイブリドーマ細胞系DSM ACC2453(欧州特許出願公開(EP−A1)第1650305号明細書を参照されたい)から形成されるモノクローナル抗FSAP抗体(Siemens Healthcare Diagnostics Products社、MAk番号1102−677(26))と、以下の方法によって、接合させた:抗体は、Sephadex(登録商標)G−25カラム内の300mMのNaCl、0.05%のTween(登録商標)20、10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)中で緩衝し、20mg/mLに濃縮した。4mgの抗体を、25mg/mLのNaCNBH3を添加して20mgのケミビーズに共有結合させた。インキュベーション工程及びまだ遊離している反応物質のブロッキング後に、抗体と接合したケミビーズを透析濾過によって精製し、次に50mMのHEPES、300mMのNaCl、1mMのEDTA、0.1%のTriton(登録商標)X−405、1mg/mLのBSA、0.15%のPROCLIN(登録商標)300、0.1mg/mLの硫酸ネオマイシン(pH8.0)中に採取した。
【0065】
[センシビーズ(Sensibeads)]
シグナル形成系の第2成分は、以下では「センシビーズ」と称する。センシビーズは、感光剤(トリヘキシル)シリコーン−t−ブチルフタロシアニンを含んでいるが、このものは、粒子状ラテックス固相と結び付けられ、その後に、ストレプトアビジンで被覆される。
【0066】
[第VII因子活性化プロテアーゼ(FSAP)]
二本鎖FSAP(tc−FSAP)は、Kannemeierら(Kannemeier, C.ら(2001)Factor VII and single−chain plasminogen activator−activating protease: activation and autoactivation of the proenzyme. Eur. J. Biochem. 268(13):3789−3796)に記述されているように調製した。
【0067】
実施例1
FSAP活性を測定するための本発明による方法
上述したFSAP感受性ペプチドI〜IVを、蒸留水中に2mg/mLの濃度で溶解し(濃縮液)、試験のために試験バッファー(25mMのHEPES、140mMのNaCl、10mMのCaCl2、1%のTween(登録商標)20、1%のBSA及び1%のデキストランT−500(pH6.3))中に、およそ20μg/mLに希釈した。試験バッファー中で、ケミビーズを200μg/mLに、そして、センシビーズを400μg/mLに希釈した。
【0068】
[アッセイI:]
120μLの試験バッファーを10μLの抗FSAPケミビーズ、試験バッファー(10μg/mL)中の10μLの精製tc−FSAP、10μLのビオチン化ペプチド基質及び10μLのセンシビーズと混合し、DIMENSION VISTA(登録商標)反応キュベット(Siemens Healthcare Diagnostics Products社、独国マールブルク(Marburg,Germany))内で10分間に亘り37℃でインキュベートした。この後に、反応混合物の化学発光(以下ではLOCI(登録商標)シグナルとも呼ぶ)の動力学的測定を、30分間に亘り、市販で入手可能なDIMENSION VISTA(登録商標)LOCI(登録商標)測定ユニット(Siemens Healthcare Diagnostics Products社)内で、実施した。各測定点について、反応混合物を200msに亘り波長680nmの光線で照射し、生じたLOCI(登録商標)シグナルを1,000msに亘り612nmで測定した。
【0069】
1つの試験シリーズでは、上述した4つのペプチド基質I〜IVを使用した場合のシグナル形成を調査した。表1は、活性酵素の存在下で、そして酵素なしで、調査したペプチド基質のシグナル形成を、キロカウント数(キロカウント)で示している。調査した全4つのビオチン化ペプチドだけが、活性酵素の存在下で30分間に亘る明確なシグナル動力学を示した。酵素が存在しない場合は、該シグナルの有意な経時的な変化を検出できない。
【0070】
【表1】

【0071】
活性酵素の単なる検出と同様に、活性酵素を定量的に測定することもできる。表2は、活性FSAP(二本鎖(tc)形)の濃度へのLOCI(登録商標)シグナルの依存性を示している。FSAP活性を測定するために、一連のtc−FSAP希釈液を試験バッファー(18〜600血漿等量単位(PEU)/mL、即ち1.5〜50μg/mL)中で、アッセイIに記載したように、20μg/mLのペプチド基質濃度で、試験した。測定は、30分間に亘る37℃でのインキュベーション後に行なった。表2は、FSAPの濃度及び関連活性がシグナルと相関しており、従って、定量することもできることを示している。定量は、例えば、公知の活性を備える活性FSAPの対応する標準物質を用いた較正によって、実施することができる。本アッセイにtc−FSAP又はペプチド基質が加えられないと、信号形成は生じない(表3)。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
図1は、表2のデータに基づいて、LOCI(登録商標)シグナルの酵素活性又は濃度への依存性を示している。2相依存性は興味深い。低FSAP濃度において、シグナルの急増が見られる。これは、より高濃度では顕著ではなくなる。低濃度領域内では、酵素濃度、従って結合した酵素の比率、の増加がシグナル形成に寄与する度合いが、より高濃度の領域におけるよりも、より大きいと推測できる。これとは反対に、酵素濃度がより高い範囲内では、シグナル又はシグナル内の変化に結合反応又は変換反応が寄与する度合いがより大きい。
【0075】
酵素の抗原濃度は、必ずしも酵素の活性とは相関しない。例えば、FSAPが、不活性酵素前駆体(一本鎖(sc)形)及び活性酵素(tc−FSAP)の両方として、血漿中で循環する際に、FSAP−抗原濃度とFSAPとの間の100%相関は必ずしも保証されない。本発明による方法を用いると、酵素の活性及び量の両方を測定することができる。このため、酵素の比活性も、また、検出することができる。
【0076】
これを明確にする目的で、sc−FSAPを活性化するため、クエン酸塩血漿を20μg/mLの高分子量デキストラン硫酸(ロイコノストック種(Leuconostoc spp.)からのデキストラン硫酸ナトリウム塩、平均分子量≧500kDa)中で15分間に亘りプレインキュベートし、FSAPの活性化のための高分子量デキストラン硫酸を添加していない試料と比較試験を行なった。デキストラン硫酸の存在下での活性化は、同一試料に対して、同一FSAP濃度でデキストラン硫酸による活性化を行なわなかった場合とは、相違するシグナル高及びシグナル動力学をもたらした(表4及び図2)。FSAPの活性化によって生成されるシグナル高は、1PEU/mLの酵素活性を有する等濃度の12μg/mLの精製tc−FSAPのシグナルに、大まかに、対応する(図示していない)。
【0077】
【表4】

【0078】
上述したように、酵素活性がシグナル形成に及ぼす影響は、酵素濃度と比較すると、反応時間が増加するにつれて増加すると推定できる。これは、図2から明らかである。
【0079】
5分間インキュベーションにおけるシグナルに対する15分間インキュベーションにおけるシグナルの比率は、活性化FSAPについてはおよそ2.35、そして、非活性化FSAPについてはおよそ2.15である。後の時点で、酵素活性が酵素又は抗原濃度よりもシグナル形成に対してより大きく寄与すると想定されるならば、2.35対2.15のより高いシグナル比は、活性化試料対非活性化試料におけるFSAPのより高い比活性の指標である。
【0080】
この状況は、15分間及び5分間における、活性化FSAP対不活性化FSAPのシグナル比、2.84及び2.6に類似する。より高いシグナル比は、やはりまた、活性化試料対非活性化試料におけるFSAPのより高い比活性の尺度である。
【0081】
シグナルの時間依存性についての他のパラメーターも、また、抗原又は酵素濃度、酵素活性及び結果としての比活性の尺度として使用することができる。例えば、活性化FSAPについては、勾配の数値は、10分間までは10.65キロカウント/分であり、10分後には2.32キロカウント/分である。
【0082】
不活性化FSAPについての10分間までの勾配の数値は、3.60キロカウント/分、10分後には1.12キロカウント/分である。
【0083】
10分後の経時的なシグナル増加(勾配)の減少は、活性化FSAPについての方が不活性化FSAPについてよりも、顕著に高い。この減少は、例えば、勾配の比率又は差、即ち、3対2及び7対1.2、によって定量化することができる。より活性なFSAPによる結合基質のより高度の変換が、おそらく、より不活性なFSAPと比較すると、シグナルの経時的な増加を顕著に減少させる。原則として、曲線を考察するための他のパラメーターは、抗原濃度、酵素活性又は比活性を測定するためにも使用することができる。
【0084】
実施例2
酵素活性の阻害剤を測定するための本発明による方法
酵素の比活性の測定は、活性調節剤の存在の可能性についての情報を提供することもできる。しかし、本発明による方法は、更にまた、影響の定量化及び従って活性調節剤の定量的測定も可能にする。これを、以下に、FSAPの阻害剤であるアプロチニンの例について示す。シグナル又はその経過は、阻害剤の濃度の関数として変動する。酵素−阻害剤相互作用の動力学は、阻害剤の量の関数として酵素活性を測定することによって調査した。tc−FSAP阻害アッセイにおいては、酵素−阻害剤錯体の形成を可能にするために、一定量の酵素(tc−FSAP、μg/mL)を、阻害剤(ウシ肺由来アプロチニン、Fluka社)濃度を変えて、プレインキュベートした。また別のアッセイは、プレインキュベーションを行なわずに実施した。残留プロテアーゼ活性は、実施例1に記載したように、ペプチド基質を加えた後に測定した。
【0085】
アッセイ系:
120μLの試験バッファー(pH6.3)、10μLの抗FSAPケミビーズ(試験バッファー中、200μg/mL)及び10μLの精製tc−FSAP(10μg/mL)を、それぞれ、0、4.7及び47.2U/mLのアプロチニンを含む10μLの試験バッファーと、DIMENSION VISTA(登録商標)LOCI(登録商標)反応キュベット内で混合した。10μLのビオチン化ペプチド基質及び10μLのセンシビーズ(試験バッファー中の400μg/mL)の試験バッファー中への添加は、プレインキュベーションを行なわずに、又は37℃での10分間のプレインキュベーション後に実施した。生じたLOCI(登録商標)シグナルは、市販のDIMENSION VISTA(登録商標)LOCI(登録商標)測定ユニット(Siemens Healthcare Diagnostics Products社)において、680nmでの200msの照射及び612nmでの測定時間1,000msを用いて、動力学的に、37℃で15分間に亘って、測定した。アプロチニンは、強度のシグナル低減作用を、主として、tc−FSAPを用いたプレインキュベーション後に示す(表5)。
【0086】
【表5】

【0087】
使用した別の阻害剤は、アプロチニンを用いたアッセイと同様に、FSAPの軽鎖を対象としており、ハイブリドーマ細胞系DSM ACC2533(欧州特許出願公開(EP−A2)第1334983号明細書を参照されたい)によって形成される、FSAP活性を阻害するモノクローナル抗体(Siemens Healthcare Diagnostics Products社、MAk番号1102/570)であった。表6は、使用したモノクローナル抗体の濃度が増加するにつれて増加する阻害作用を示している。
【0088】
【表6】

【0089】
アプロチニンを用いた場合及び阻害性抗体を用いた場合のいずれも、シグナルは、活性調節剤の個々の濃度に伴って変動する。適切に較正すると、これは活性調節剤の定量を可能にする。阻害剤は、基質;結合した基質又は未結合基質、の結合又は変換に影響を及ぼす。結合された酵素の結合された基質への結合又は結合プロセスが、選択されたアッセイ系において優勢である場合は、阻害剤濃度の増加に伴って、実施例に示したように、シグナルの絶対値又は経時的な増加の縮小が生じる。これとは反対に、変換反応が優勢である場合は、阻害剤濃度の増加に伴って、シグナルの増加又は経時的なシグナルの減少の縮小が生じる可能性がある。
【0090】
更に、本発明による方法は、基質の特性の測定を可能にする。これは、図3から明らかになるであろう。シグナル又はシグナル動力学もまた基質のタイプに左右される。
【0091】
この原因は、様々な結合反応及び/又は変換反応に帰することができる。15分後までのシグナルの増加は、4種の相違するペプチドについて同等である。これは、結合動力学が同等であることを示すものである可能性がある。しかしながら、30分間に亘るインキュベーション後には、ペプチドIIからの、特にペプチドIII及びIVからのシグナルは、ペプチドIと比較して、はるかに低い。同等のペプチド濃度が使用されたので、これは、おそらく、これらのペプチドの親和性の相違又は変換における相違を、示している。例えば、センシビーズに結合したペプチドIの反応は、センシビーズへの結合によって、大幅に制限される可能性がある。このため、特に、結合した酵素と結合した基質との錯体によるシグナルが測定される。結合した基質の変換は、この場合には、減少するか不可能である。しかしながら、もし、結合した基質が変換されると、酵素が少ししか又は全く結合しない、結合した生成物の比率が増加するので、シグナルは、もはや、それ程大きく増加することはできない。このため、LOCI(登録商標)シグナルが減少する。そこで、特に、結合したペプチドIII及びIVは、ペプチドI及びIIより良好に変換されると推測できる。基質は、それらがセンシビーズに結合した後は、もはや酵素によって結合されることができず、変換されることさえできないと考えられる。センシビーズに結合した、もはや該酵素によっては結合されない、基質は適切ではない。まだ辛うじて変換されるか又はもはや測定可能には変換されないが酵素には結合する結合した基質は、依然として適切である。
【0092】
酵素の活性及び濃度の測定並びに相違する基質を用いた場合の挙動の相違とともに、また別の実施例は、基質の濃度をもまた測定できることを証明するであろう。図4は、使用したペプチド濃度の関数としてのLOCI(登録商標)シグナルの動力学を示している。シグナル動力学の勾配は、ペプチド濃度が増加するのに伴って増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(a)及び(b)を備える、試料中の酵素の活性を測定する方法。
(a)下記反応混合物の調製及びインキュベーション。
(i)前記試料、
(ii)測定対象の前記酵素によって結合及び変換させられることのできる少なくとも1つの基質、及び
(iii)シグナル形成系の第1及び第2成分であって、前記シグナル形成系の前記第1及び第2成分は相互に空間的に近づけられると検出可能なシグナルが生成されるように相互作用し、このとき、前記シグナル形成系の前記第1成分は、インキュベーション中に、前記基質と結び付けられているか又は結び付けられるようになり、前記測定対象の酵素は、インキュベーション中に、前記シグナル形成系の前記第2成分と結び付けられるようになる、シグナル形成系の第1及び第2成分
を含有する反応混合物;
並びに
(b)前記試料中の前記酵素活性と相関する前記シグナルの測定。
【請求項2】
前記基質が第1結合対A/Bの第1結合パートナーAを有し、前記シグナル形成系の前記第1成分が前記結合対A/Bの前記第2結合パートナーBを有し、前記基質がインキュベーション中に、前記結合パートナーA及びBの結合によって、前記シグナル形成系の前記第1成分に結合されているか又は結合されるようになる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合パートナーA及びBが、それらが、FLAGタグ/抗FLAGタグ抗体、HISタグ/抗HISタグ抗体、フルオレセイン/抗フルオレセイン抗体、ビオチン/アビジン及びビオチン/ストレプトアビジンを含む群から、結合対A/Bを形成するように選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定対象の酵素が第2結合対X/Yの第1結合パートナーXを有し、前記第2結合対X/Yの前記第2結合パートナーYが前記シグナル形成系の前記第2成分と結び付けられ、前記酵素が、インキュベーション中に、前記結合パートナーX及びYの結合によって、前記シグナル形成系の前記第2成分に結合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記結合パートナーX及びYが、Xが酵素特異的な構造又は配列エピトープであり、Yが前記酵素特異的な構造又は配列エピトープに対する特異性を備える抗体若しくは抗体フラグメント又はポリヌクレオチドであるように選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シグナル形成系の前記第1成分が第1粒子状固相と結び付けられ、前記シグナル形成系の前記第2成分が第2粒子状固相と結び付けられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シグナル形成系の前記第1成分が化学発光物質であり、前記シグナル形成系の前記第2成分が感光剤であるか、又はその逆である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ヒドロラーゼ群からの酵素の活性を測定するための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プロテアーゼ群からの酵素の活性を測定するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子及びプロテインCを含む群からのタンパク質分解性凝固因子の活性を測定する方法であって、前記試料中の前記タンパク質分解性凝固因子の直接的又は間接的活性化のための試薬が反応混合物に追加添加される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
トロンボプラスチン、第IIa因子、第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、第XIIa因子、活性化プロテインC、ヘビ毒、負荷電リン脂質類、カルシウムイオン、組織因子、シリカ、カリオン、エラグ酸及びセライトを含む群から選択される作用物質が前記タンパク質分解性凝固因子の直接的又は間接的活性化のために使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第VII因子活性化プロテアーゼの活性を測定するための請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
同一反応混合物中で前記酵素の量が同時に測定される方法であって、更に以下の工程(a)及び(b)を備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
(a)前記シグナル形成系の下記第3成分の前記反応混合物への添加。
(i)インキュベーション中に測定対象の酵素と結び付けられるようになり、
(ii)前記シグナル形成系の前記第2成分と相互作用し、その結果、前記シグナル形成系の前記第3及び前記第2成分が相互に空間的に近づけられると、前記シグナル形成系の前記第1及び第2成分の相互作用の結果として生じるシグナルとは相違する第2の検出可能なシグナルが形成される、第3成分、及び
(b)前記試料中の酵素の量と相関している前記第2シグナルの測定。
【請求項14】
前記測定対象の酵素が第3結合対C/Dの第1結合パートナーCを有し、前記第3結合対C/Dの前記第2結合パートナーDが前記シグナル形成系の前記第3成分と結び付けられ、そして、前記酵素が、インキュベーション中に、前記結合パートナーC及びDの結合によって、前記シグナル形成系の前記第3成分に結合させられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シグナル形成系の前記第1成分が第1粒子状固相と結び付けられ、前記シグナル形成系の前記第2成分が第2粒子状固相と結び付けられ、前記シグナル形成系の前記第3成分が第3粒子状ラテックス固相と結び付けられる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記シグナル形成系の前記第1成分が第1化学発光物質であり、前記シグナル形成系の前記第2成分が感光剤であり、前記第3成分が第2化学発光物質であり、そして前記第1及び第2化学発光物質が相互に相違する発光スペクトルを有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記シグナル形成系の前記第1成分が第1感光剤であり、前記シグナル形成系の前記第2成分が化学発光物質であり、前記第3成分が第2感光剤であり、そして前記第1及び第2感光剤が相互に相違する波長の光線によって励起可能である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
試料中の酵素調節因子の定量的測定方法であって、以下の工程(a)及び(b)を備えてなる方法。
(a)下記を含有する反応混合物の調製及びインキュベーション。
(i)前記試料、
(ii)前記反応混合物に加えられる別個の試薬中に含有される酵素であって、その活性が測定対象の酵素活性の調節因子によって直接的又は間接的に影響され得る酵素の規定量、
(iii)前記添加された酵素によって結合され及び修飾され得る基質、及び
(iv)シグナル形成系の第1及び第2成分であって、前記シグナル形成系の第1成分が前記基質と結び付けられているか又は結び付けられるようになり、前記シグナル形成系の第2成分が前記添加された酵素と結び付けられており、前記シグナル形成系が、前記シグナル形成系の第1及び第2成分が、前記測定対象の酵素と前記基質との結合によって、相互に空間的に近づけられたときのみに検出可能なシグナルが生成されるようなシグナル形成系である、前記シグナル形成系の第1及び第2成分、
並びに
(b)前記試料中の前記酵素調節因子の活性と相関している前記シグナルの測定。
【請求項19】
血液凝固因子の阻害剤を測定するための方法であって、規定量の活性化血液凝固因子が加えられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ヘパリン、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトラン、ビバリルジン、ダビガトラン、リバロキサバン及びヒルジンを含む群からの血液凝固因子の阻害剤を測定するための請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−254815(P2011−254815A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126283(P2011−126283)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(510259921)シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (11)
【Fターム(参考)】