説明

酵素検出デバイス

提供された基質10を修飾することができる酵素の試料中での有無を検出するための酵素検出デバイス1。デバイス1は、未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域14を有する基質を備える。さらにデバイス1は、修飾状態または未修飾状態のいずれかの被修飾性領域14と結合する基質認識分子16を備える。混合されたとき、基質の被修飾性領域14は基質認識分子16によって、酵素と比較して、優先的に結合される。デバイスは、基質認識分子17とカップリングされた検出可能な標識18をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素検出デバイス、より具体的には、修飾または未修飾いずれかの状態の特異的結合分子によって認識可能な、提供された基質を修飾することができる酵素を検出するための酵素検出デバイスに関する。本発明は、また基質を修飾することができる酵素を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床および研究の多くの状況で、特定の触媒活性を有する酵素の、試料中での存在を検出できることは有用である。この種の酵素の一例はプロテアーゼであり、ペプチド結合の加水分解および開裂によりタンパク質を消化する。したがって、プロテアーゼで分解されるタンパク質は2個以上のより小さなペプチドに開裂される。別の例は、より大きい炭水化物からシアル酸部分を開裂するシアリダーゼである。
【0003】
試料の酵素を検出する診断試験キットがUS2006/0003394に開示されている。このキットは、リポーターおよび特異的結合メンバーに結合された標的リガントをそれぞれ備える「反応性複合」を備える。標的リガントは、検出すべき酵素によって開裂して、リポーターを放出し得る。反応性複合および試料の混合物は、続いてクロマトグラフ媒質に施される。クロマトグラフ媒質は、標的リガント上の特異的結合メンバーを捕捉することができる第1の検出ゾーン、およびリポーターを結合することができる第2の検出ゾーンを備える。したがって、使用の際、試料および反応性複合の混合物はクロマトグラフ媒質に施され、まず第1の検出ゾーン、次いで第2の検出ゾーンを流れる。第1の検出ゾーンで標的リガントは捕捉される。試料中の任意の酵素は、標的リガントからリポーターを開裂し、開裂されたリポーターは第2の検出ゾーンで捕捉され、標的リガントに結合したままの開裂されていない任意のリポーターは第1の検出ゾーンに留まる。したがって、試料中に酵素が存在すると、第2の検出ゾーンでのリポーターの存在(または第1の検出ゾーンでのリポーターの欠如)によって判定される。
【0004】
US2006/0003394に開示されたキットに関する1つの問題は、混合物がクロマトグラフ媒質に沿って流れている間、酵素が引き続き活性であるので、キットは不正確な結果を出す傾向があり得るということである。反応性複合は第1の捕捉ゾーンで固定されているが、酵素は標的リガントからリポーターを開裂し続ける。したがって、第1の検出ゾーンおよび第2の検出ゾーンでの信号は、経時的に変わる傾向があり得、明確な反応終点がない。
【0005】
US2006/0003394のキットに関する別の問題は、それが標的リガントを開裂する酵素だけが検出でき、標的リガント(例えばリン酸化またはグリコシル化)への部分の付加などの他の作用がある酵素を検出することができないということである。
【0006】
US2006/0003394のキットに関するさらなる問題は、標的リガントの末端を開裂しなければならないエキソペプチダーゼまたはエキソカルボヒドラーゼなどの酵素の活性を検出することができないということである。それは、末端にリポーターを接合するために必要な条件が、酵素の活性部位との相互作用を妨げるであろう程度まで末端の化学的性質を変えるであろうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0003394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題の1つまたは複数を緩和しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、
(i)未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を備える基質、
(ii)修飾状態または未修飾状態のいずれかの被修飾性領域と特異的に結合できる基質認識分子であり、基質認識分子の結合部位は、混合したときに、基質認識分子と酵素が競合的に被修飾性領域に結合されるような部位である基質認識分子、および
(iii)基質認識分子にカップリング可能な検出可能な標識
を含む、提供された基質を修飾できる酵素の試料中での有無を検出する酵素検出デバイスが提供される。
【0010】
本発明の別の態様によると、
(i)未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を備える基質、
(ii)未修飾状態の基質の被修飾性領域と特異的に結合できる基質認識分子であり、基質認識分子の結合部位は、基質の被修飾性領域が、混合したときに酵素と比較して、前記基質認識分子により優先的に(または競合的に)結合されるような部位である基質認識分子、および
(iii)基質認識分子にカップリング可能な検出可能な標識
を含む、提供された基質を修飾できる酵素の試料中での有無を検出する酵素検出デバイスが提供される。
【0011】
基質に対する基質認識分子の親和性は、比較的低い解離速度(k)を有するのが有利である。
【0012】
基質に対する基質認識分子の親和性は、比較的低い解離速度(k)および比較的高い会合速度(k)を有するのが好ましい。
【0013】
基質認識分子の解離速度(k)は、10−4.s−1から10−7.s−1の間であるのが好ましく、より好ましくは10−5.s−1から10−6.s−1の間である。
【0014】
基質認識分子の会合速度(k)は、10.s−1から10.s−1の間であるのが好ましく、より好ましくは10.s−1から10.s−1の間である。
【0015】
基質認識分子は基質に対して、酵素が基質に対するより、低い解離速度(k)および高い会合速度(k)を有するのが有利である。
【0016】
基質は、固体担体に結着可能な結着領域をさらに備え、酵素検出デバイスは固体担体をさらに備えるのが好都合である。
【0017】
酵素検出デバイスはクロマトグラフ媒質をさらに備えるのが好ましい。
【0018】
基質はクロマトグラフ媒質に結着可能な結着領域をさらに備えるのが有利である。
【0019】
クロマトグラフ媒質は、クロマトグラフ媒質上または中で固定され、基質の結着領域と結合することができる、第1の捕捉認識分子を備えるのが好都合である。
【0020】
クロマトグラフ媒質は、基質の断片と場合によって組み合わせて、クロマトグラフ媒質上または中で固定され、基質認識分子と結合することができる第2の捕捉認識分子をさらに備えるのが好ましい。
【0021】
第1の捕捉認識分子と結着領域および/または第2の捕捉認識分子と基質認識分子は、それぞれ、結合対の半分それぞれであるのが有利であり、結合対は次のとおりである:抗原と抗体またはこれに対して特異的な抗原結合性断片;ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジン;プロテインAおよびG;炭水化物とレクチン;相補的な2つのヌクレオチド配列;エフェクターと受容体分子;ホルモンとホルモン結合タンパク質;酵素補助因子と酵素;酵素阻害剤と酵素;セルロース結合領域とセルロース繊維;固定されたアミノフェニルボロン酸とシス−ジオールを有する分子;キシログルカンとセルロース繊維およびその類似体、誘導体および断片。
【0022】
基質認識分子は、抗体もしくはこの抗原結合性断片;レクチン;ヌクレオチド配列;受容体分子;または修飾状態もしくは未修飾状態のいずれかの被修飾性領域と結合することができるホルモン結合タンパク質であるのが好都合である。
【0023】
代替として、基質認識分子は、未修飾ビオチンと結合できるアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジンである。
【0024】
好ましくは、酵素は、加水分解酵素、好ましくはペプチダーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、カルボヒドラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼである。
【0025】
代替として、酵素は、キナーゼ、グリコシル転移酵素、オキシダーゼ、還元酵素またはトランスアミナーゼである。
【0026】
酵素検出デバイスは、基質認識分子に結合した検出可能な標識をさらに備えるのが有利である。
【0027】
検出可能な標識は、基質認識分子と共有結合で結合されるのが好都合である。
【0028】
好ましくは、標識は蛍光団、金粒子、色原体、発光化合物;放射性化合物;可視化合物、信号発生物質を含有するリポソームまたは他の小胞、電気活性種または酵素およびその基質の組合せである。
【0029】
酵素検出デバイスは、第1の酵素による修飾に感受性のある第1の基質の被修飾性領域および第2の酵素による修飾に感受性がある第2の基質の被修飾性領域をそれぞれ含む第1の基質および第2の基質を備えるのが有利である。
【0030】
本発明の別の態様によると、
(i)未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を備える基質を設けるステップ、
(ii)酵素を含む疑いのある試料を準備するステップ、
(iii)未修飾状態または修飾状態のいずれかの被修飾性領域と特異的に結合できる基質認識分子であり、基質認識分子の結合部位は、混合したときに、基質認識分子と酵素が競合的に被修飾性領域に結合されるような部位である基質認識分子を設けるステップ、
(iv)試料中の酵素のうちの少なくとも一部が基質を修飾するように、試料と基質を混合するステップ、および
(v)基質と基質認識分子を接触させ、基質と基質認識分子との間の相互作用を検出するステップ
を含む、基質を修飾することができる酵素を検出する方法が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によると、
(i)未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を備える基質を設けるステップ、
(ii)酵素を含む疑いのある試料を準備するステップ、
(iii)未修飾状態の被修飾性領域と特異的に結合する基質認識分子であり、基質認識分子の結合部位は、基質の被修飾性領域が、混合したときに酵素と比較して、前記基質認識分子により優先的に(または競合的に)結合されるような部位である基質認識分子を設けるステップ、
(iv)試料中の酵素のうちの少なくとも一部が基質を修飾するように、試料と基質を混合するステップ、および
(v)基質と基質認識分子を接触させ、基質と基質認識分子との間の相互作用を検出するステップを含む、基質を修飾することができる酵素を検出する方法が提供される。
【0032】
基質に対する基質認識分子の親和性は、比較的低い解離速度(k)を含むのが有利である。
【0033】
基質に対する基質認識分子の親和性は、比較的低い解離速度(k)および比較的高い会合速度(k)を含むのが好ましい。
【0034】
好ましくは、基質認識分子の解離速度(k)は10−4.s−1および10−7.s−1の間、より好ましくは10−5.s−1および10−6.s−1の間である。
【0035】
好ましくは、基質認識分子の会合速度(k)は10.s−1および10.s−1の間、より好ましくは10.s−1および10.s−1の間である。
【0036】
基質認識分子は、酵素が基質に対して有するより低い解離速度(k)およびより高い会合速度(k)を基質に対して有するのが有利である。
【0037】
基質がさらに結着領域を含み、ステップ(i)が、固体担体を設け、固体担体に基質の結着領域を結合させるステップをさらに含むのが好都合である。
【0038】
ステップ(i)は、固体担体上に、結着領域と結合することができる第1の捕捉認識分子を設けるステップを含むのが好ましい。
【0039】
(v)は、クロマトグラフ媒質上または中に基質および基質認識分子を置くステップをさらに含むのが有利である。
【0040】
クロマトグラフ媒質は、クロマトグラフ媒質上または中に固定された第1の捕捉認識分子を含み、基質が結着領域をさらに備え、第1の捕捉認識分子は結着領域と結合することができ、方法が、基質認識分子の固定化を第1の捕捉認識分子で検出するステップをさらに含むのが好都合である。
【0041】
クロマトグラフ媒質は、クロマトグラフ媒質上または中に固定された、基質の断片と場合によって組み合わせて、基質認識分子と結合することができる第2の捕捉認識分子をさらに備え、この方法は、第2の捕捉認識分子で基質認識分子の存在を検出するステップをさらに含むのが好ましい。
【0042】
第1の捕捉認識分子および結着領域ならびに/または第2の捕捉認識分子および基質認識分子は、結合対の半分それぞれであるのが有利であり、結合対は、抗原と抗体またはこの抗原結合性断片;ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジン;免疫グロブリン(またはその適切な領域)とプロテインAおよびG;炭水化物とレクチン;相補的な2つのヌクレオチド配列;エフェクターと受容体分子;ホルモンとホルモン結合タンパク質;酵素補助因子と酵素;酵素阻害剤と酵素;セルロース結合領域とセルロース繊維;固定されたアミノフェニルボロン酸とシス−ジオールを有する分子;もしくはキシログルカンおよびセルロース繊維ならびに類似体、この誘導体および断片である。
【0043】
基質認識分子は、抗体またはこの抗原結合性断片;レクチン;ヌクレオチド配列;受容体分子;もしくは修飾状態または未修飾状態のいずれかの被修飾性領域と結合することができるホルモン結合タンパク質であるのが好都合である。
【0044】
代替として、基質認識分子は、未修飾ビオチンと結合できるアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジンである。
【0045】
好ましくは、酵素は、加水分解酵素、好ましくはペプチダーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、ホモまたはヘテロオリゴサッカリデダーゼ(oligosaccharidedase)、ホモまたはヘテロポリサッカリダーゼ、カルボヒドラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼである。
【0046】
代替として、酵素は、キナーゼ、グリコシル転移酵素、オキシダーゼ、還元酵素またはトランスアミナーゼである。
【0047】
この方法は、基質認識分子に結合した標識を設けるステップをさらに含み、ステップ(v)が標識の存在を検出するステップを含むのが有利である。
【0048】
標識は、基質認識分子と共有結合で結合されるのが好都合である。
【0049】
好ましくは、標識は蛍光団、金の粒子、色原体、発光化合物;放射性化合物;可視化合物、信号発生物質を含むリポソームまたは他の小胞;電気活性種;または酵素およびその基質の組合せである。
【0050】
有利には、ステップ(i)が、それぞれが被修飾性領域を有する第1の基質および第2の基質を設けるステップを含み、第1の基質の被修飾性領域は第1の酵素に感受性があり、第2の基質の被修飾性領域は第2の酵素による修飾に感受性があり、ステップ(v)が、第1の基質および第2の基質と基質認識分子との間の相互作用を検出するステップを含む。
【0051】
好都合には、ステップ(iii)が、修飾状態および未修飾状態のいずれかで、それぞれ第1の基質および第2の基質の被修飾性領域と特異的に結合する第1の基質認識分子および第2の基質認識分子を設けるステップを含み、第1の基質認識分子および第2の基質認識分子の結合部位は、第1の基質の被修飾性領域が、第1の酵素と比較して、前記第1の基質認識分子により優先的に(または競合的に)結合され、第2の基質の被修飾性領域が、第2の酵素と比較して、前記第2の基質認識分子により優先的に(または競合的に)結合されるような部位であり、ステップ(v)が、第1の基質および第2の基質と第1の基質認識分子および第2の基質認識分子との間の相互作用を検出するステップを含む。
【0052】
したがって、本発明の態様は、未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を持つ、提供された基質を修飾することができる酵素の、試料中での有無を検出するための酵素検出デバイスを提供する。本デバイスは、酵素活性を信号線の相対強度などの結合標識として酵素活性の存在が表される親和性結合アッセイに変換する。この方法において、未修飾基質は、未修飾状態の基質の被修飾性領域と結合する基質認識分子によって検出され結合される。使用の際、混合されると、基質は、酵素分子と比較して優先的に(または競合的に)基質認識分子によって結合される。これは、基質認識分子が酵素より低い解離速度(k)を有するからである。通常、酵素は、高い代謝回転を得るために生成物が酵素活性部位を速く空けるように、高い解離速度(k)を有している。基質認識分子は、また基質に対して高い会合速度(k)を有しており、酵素が基質に結合するより優先的に、さらに基質と結合可能にする。この種の解離および会合速度はBiacoreなどの技術を用いて測定される。酵素に対する基質認識分子の親和性は、基質に対する酵素の親和性より相当高い。すなわち基質認識分子および酵素の両方が存在するとき、混合物中に存在する基質の量に顕著な減少はない。さらに本デバイスは、基質認識分子とカップリングされた検出可能な標識を備える。
【0053】
本発明の基質認識分子は、基質の修飾可能な領域を隔離し、そうする際に、酵素がさらに基質を修飾するのを妨害する。この特徴はエンドポイントアッセイ(カイネティックアッセイ参照)において使用するのに有利である。所定時間の後に酵素の触媒活性を正確に停止することができるので、アッセイの進行をしっかりと制御することができる。これは、基質変換作用の変動し制御されないランオンを防ぐ。すなわち、基質認識分子によって基質被修飾性領域を正確に隔離することによって、アッセイの終点を制御し規定する。
【0054】
本発明がより十分に理解することができるように、また本発明のさらなる特徴が認識され得るように、本発明の実施形態を、付随する図に関して、例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態による酵素検出デバイスの1つの要素についての概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による酵素検出デバイスの別の要素の作用を表す図である。
【図3】本発明の一実施形態による酵素検出デバイスの別の要素についての概略図である。
【図4】本発明の一実施形態による酵素検出デバイスを使用している状態の概略図である。
【図5】本発明の一実施形態による酵素検出デバイスを使用している状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1を参照して、分析種酵素を検出するための酵素検出デバイス1のいくつかの要素の概略の断面図を示す。酵素検出デバイス1は、クロマトグラフ媒質を形成するニトロセルロース試験ストリップ2を備える。試験ストリップ2には上流および下流側端部3、4がある。試験ストリップ2の上流端部3に隣接して吸収性パッドを備える試料受け取りゾーン5が設けられる。試験ストリップ2の下流側端部4の方にさらに、試験ストリップ2の表面に固定された複数の第1の捕捉認識分子6が設けられる。第1の捕捉認識分子は第1の検出ゾーン7を形成する。第1の検出ゾーン7から試験ストリップ2の下流側端部4の方へさらに、試験ストリップ2の表面に固定された複数の第2の捕捉認識分子8が設けられる。第2の捕捉認識分子8は第2の検出ゾーン9を形成する。
【0057】
ここで図2を参照して、酵素検出デバイスの別の要素、すなわち基質10を記載する。基質10は、第2の領域12に連結された修飾できないリガント11を備える。修飾できないリガント11は、第1の検出ゾーン7の第1の捕捉認識分子6によって認識され捕捉され得る。すなわち、修飾できないリガント11は、結合対の半分を形成し、結合対の他の半分は、第1の捕捉認識分子6の1個である。第2の領域12は、任意の不活性のコア(スペーサー)構造13を介して修飾できないリガント11に連結される第2のリガント(「被修飾性領域」として知られている)14を備える。第2のリガント14は分析種酵素によって修飾可能である。図2に示されたように分析種酵素は、一部の構造の開裂により第2のリガント14を修飾するプロテアーゼであり、断片15を放出する。しかし、他の実施形態において、被修飾性領域14(すなわち第2のリガント)の種々の修飾は、酵素(例えばリン酸基の付加)によってなされる。他の典型的な修飾は、供与体分子から受け取り部位へ糖基を移すグリコシル転移酵素、標的部位を酸化させるオキシダーゼ、標的部位を還元する還元酵素、およびアミノ酸およびケト酸の間のアミノ基を移動させるトランスアミナーゼを含む。
【0058】
図3を参照して、酵素検出の要素をさらに記載する。結合メンバー16は、基質10の被修飾性領域14と特異的に結合することができる基質認識分子17を備える。さらに、基質認識分子17は、検出する酵素によって修飾され結合される領域(被修飾性領域14)で、基質10と結合している。すなわち、酵素および基質認識分子が被修飾性領域14と混合された場合、基質の被修飾性領域14は、酵素と比較して優先的に(または競合的に)、基質認識分子17によって結合される。さらに、基質認識分子17は、被修飾性領域14に対して酵素が有するより高い結合親和性を有することができる。したがって、一旦被修飾性領域14が基質認識分子17によって結合されたら、酵素は被修飾性領域14と結合することができず、そのため、被修飾性領域14の修飾に触媒作用を及ぼすことができない。
【0059】
検出可能な標識またはリポーター18、例えば蛍光団は基質認識分子17とカップリングされる。
【0060】
本実施形態による酵素検出デバイス1の使用を、図4を参照して記載する。この例では酵素を含まない試料が提供される。試料は、試料中の任意の酵素が被修飾性領域14を修飾することを可能にする条件下で基質10と混合される。前に述べたように、この具体例において試料は酵素を含んでいないので、被修飾性領域14の修飾は起こらない。次いで、試料と基質10の混合物を、結合メンバー16が基質10を結合することを可能にする条件下で、結合メンバー16と接触させる。次いで、試料、基質10および結合メンバー16の混合物は、試験ストリップ2上の試料受け取りゾーン5に置かれる。試験ストリップ2のクロマトグラフィーの性質により、試験ストリップ2の上流端部3から試験ストリップ2の下流側端部4、すなわち矢印19の方向の液体流路に沿って、試験ストリップ2に沿っておよび/または通して、混合物は流れる。
【0061】
この混合物は第1の検出ゾーン7と接触し、各基質10の修飾できないリガント11は、第1の検出ゾーン7の捕捉認識分子6と結合する。したがって、基質10は、第1の検出ゾーン7で固定されるようになる。さらに、結合メンバー16が基質10に結合されるので、結合メンバー16もまた第1の検出ゾーン7で固定されるようになる。混合物の他の要素は試験ストリップ2に沿った矢印19の方向に流れ続けるが、第2の検出ゾーン9で結合する結合メンバー16は、ほとんどまたはまったくない。したがって、試料中の酵素の欠如は、第1の検出ゾーン7のリポーター18の存在、および第2の検出ゾーン9でのリポーター18の欠如によって示される。
【0062】
ここで図5を参照して、本発明のこの実施形態による酵素検出デバイス1の、試料中の酵素の存在を検出する使用状態を記載する。基質10は、酵素が基質10の被修飾性領域14を修飾することができる条件下で、試料と混合される。この実施形態において、酵素は被修飾性領域14を開裂し、断片15を放出する。所定の時間の後、結合メンバー16が未修飾の被修飾性領域14のうちのいずれかと結合する条件下で、基質10と酵素の混合物は、結合メンバー16と接触される。そうする際に、結合メンバー16は、酵素の触媒活性に終止符を打って、被修飾性領域14から酵素を遮断する。より具体的には、この実施形態において、基質10は、酵素によって開裂されるのを止める。
【0063】
次いで、混合物20は試料受け取りゾーン5に置かれ、矢印19の方向に試験ストリップ2中または沿って流れる。試料20は、まず第1の検出ゾーン7と接触し、そこで各基質10の修飾できないリガント11は第1の捕捉認識分子と結合する。こうして、修飾および未修飾の基質10は第1の検出ゾーン7で固定される。さらに、被修飾性領域14が開裂され断片15を失っているため、結合メンバー16は基質10と結合することができない。結合メンバー16は、未修飾(すなわちこの実施形態では「無傷である」)の被修飾性領域に対して特異的で、不完全なリガント14には結合することができない。したがって、試料20の残りは、第2の検出ゾーン9と接触するまで、矢印19の方向に試験ストリップ2に沿って流れ続け、そこで基質認識分子16は、第2の捕捉認識分子8によって結合され固定される。したがって、リポーター18を含む結合メンバー16は、第2の検出ゾーン9で固定される。したがって、試料中の酵素の存在は、第2の検出ゾーン9で固定されたリポーター18の存在および第1の検出ゾーン7でのリポーター18の欠如によって示される。
【0064】
被修飾性領域14への修飾がその開裂であることは、本発明にとって必須でないことを認識されたい。例えば、他のいくつかの実施形態において、検出する酵素は被修飾性領域14への部分の付加により被修飾性領域14を修飾する。この試料中に酵素が存在すると、結合メンバー16は、やはり第1の検出ゾーン7ではなく、第2の検出ゾーン9で固定されるが、断片15は放出されないという違いがある。代わりに、基質10は無傷のままである。しかし、結合メンバー16は、その修飾状態の被修飾性領域と結合することができず、そのため、第1の検出ゾーン7を抜け第2の検出ゾーン9上へ流れ、そこで結合する。
【0065】
さらに、結合メンバー16がその修飾状態の被修飾性領域に対して特異的であるデバイスおよび方法が本明細書に開示される。例えば、ある部分が存在し欠如していない場合、被修飾性領域14への部分の添加により、酵素が被修飾性領域14を修飾する実施形態において、結合メンバー16は被修飾性領域14と結合する。このようにして、結合メンバー16は、酵素が試料中に存在しない場合、第2の検出ゾーン9で、酵素が試料中に存在する場合、第1の検出ゾーン7で固定される。したがって、試料中の酵素の存在は、第1の検出ゾーン7で固定されたリポーター18の存在および第2の検出ゾーン9でのリポーター18の不在によって示される。
【0066】
いくつかの実施形態において、第1および第2の検出ゾーン7および9のリポーター18の相対濃度は、試料中の酵素の相対濃度を示すために算定される。例えば、リポーター18が金の物質などの可視の標識である実施形態において、標識の相対強度は第1、第2の検出ゾーン7および9の間で比較される。
【0067】
本発明の実施形態において、検出する酵素は加水分解酵素であってもよい。例えば、酵素はプロテアーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、ホモ−またはヘテロ−オリゴサッカリデダーゼ、ホモまたはヘテロポリサッカリダーゼ、カルボヒドラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ(例えばシアリダーゼ)、エステラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼであってもよい。他の実施形態において、酵素はその開裂以外の仕方によって被修飾性領域を修飾する。例えば、酵素はキナーゼ、グリコシル転移酵素、還元酵素またはトランスアミナーゼであってもよい。
【0068】
もちろん、被修飾性領域14は検出する酵素にとって適切でなければならない。すなわち、酵素がプロテアーゼである場合、被修飾性領域14は、酵素が開裂するペプチドでなければならない。別の例として、酵素がシアリダーゼである場合、被修飾性領域14はシアリルルイス抗原を備えることができる。他の被修飾性領域は核酸、炭水化物、脂質、エステルおよび糖タンパク質を含む。グリコシル転移酵素である酵素の場合には、糖基は供与体分子から受け取り部位へ移動される。酵素がオキシダーゼである場合、標的部位は酸化される(例えば、グルコースはグルコン酸に酸化される。)。酵素が還元酵素である場合、酵素は標的部位(例えば、キニーネ還元酵素はキノンをフェノールにする。)を還元する。トランスアミナーゼは、アミノ酸およびケト酸の間のアミノ基を移動させる。
【0069】
捕捉認識分子6および修飾できないリガント11は特異的結合対の任意の適切な成分であってもよい。例えば、そのような成分は、抗原とその抗体または抗原結合性断片;ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジン;免疫グロブリン(またはその適切な結合領域)とプロテインAおよびG;炭水化物とレクチン;相補的な2つのヌクレオチド配列;エフェクターと受容体分子;ホルモンとホルモン結合タンパク質;酵素補助因子と酵素;酵素阻害剤と酵素;セルロース結合領域とセルロース繊維;固定されたアミノフェニルボロン酸とシス−ジオールを有する分子;キシログルカンとセルロース繊維およびその類似体、誘導体および断片であってもよい。
【0070】
修飾できないリガント11がビオチン部分であり、第1の捕捉認識分子が、試験ストリップ2の表面で固定されたストレプトアビジン部分であるのはとりわけ好ましい。
【0071】
基質認識分子17は、被修飾性領域14に対して特異的な抗体またはその抗原結合性断片であるのが好ましい。この種の抗体は、それらの結合アッセイ性能、すなわちkおよびkが所望のアッセイ(例えば高い会合速度、低い解離速度)に最適になるように作られる。これは、当業者によく知られている免疫技術によって行われる。高度親和性抗体は動物に抗原の濃度を減らしながら繰り返し投与することにより製造される。通常、ヤギおよびヒツジが高度親和性抗体を製造するために用いられる。
【0072】
他の実施形態において、基質認識分子17はレクチン;ヌクレオチド配列;受容体分子;または修飾状態または未修飾状態のいずれかの被修飾性領域と結合することができるホルモン結合タンパク質である。代替として、以上記載された特異的結合分子対のうちのいずれを用いてもよいが、ただし基質認識分子17が被修飾性領域14と相互作用する能力を変えるように、基質10に組み込むことができ、なおかつ、分析種酵素によって修飾できる適切な標的リガントを、基質認識分子17が認識する場合である。例えば、被修飾性領域がビオチンを備える実施形態において、基質認識分子は、未修飾ビオチンと結合できるが、検出する酵素の作用によって修飾されたビオチンとは結合できない、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジンであってもよい。基質認識分子17がヒツジ抗体であり、第2の捕捉認識分子8が抗ヒツジ抗体であることはとりわけ好ましい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、結合メンバー16は、試料受け取りゾーン5、または試料受け取りゾーン5と第1の検出ゾーン7の間で試験ストリップ2の構造体に乾燥される。これらの実施形態において、酵素が基質10の被修飾性領域14を修飾することができる条件下で、試料は基質10と混合される。次いで、この混合物は試料受け取りゾーン5に施され、試験ストリップ2の表面の結合メンバー16と接触する。すなわち、試験ストリップ2に試料を置く前に、結合メンバー16と試料の混合はない。
【0074】
いくつかの実施形態において、可溶性障壁が、試料受け取りゾーン5のすぐ下流の試験ストリップ2上に設けられる。可溶性障壁は、試料および基質の混合物を所定の時間、浸透させず、その後に障壁は破られ、混合物が試験ストリップに沿って流れ続ける。この特徴を、可溶性障壁のすぐ下流の試験ストリップ2上に結合メンバー16を乾燥させるという特徴と組み合わせるととりわけ好ましい。このような実施形態において、試料および基質に、混合し任意の酵素が被修飾性領域14を修飾するのに十分な時間を与え、その後に、混合物は、可溶性障壁を溶かし、結合メンバー16と接触し、結合メンバー16は被修飾性領域14と結合し酵素が被修飾性領域14でそれ以上の反応の触媒作用を及ぼすのを妨害する。次いで、前述のように試験ストリップ2は動作する。可溶性障壁は、例えば、PVA、とりわけ低分子量(MW)PVA、または冷水可溶性ゼラチンから製造されてもよい。
【0075】
いずれかの実施形態のリポーター18は、直接的または間接的に検出可能な信号を発生させることができる任意の物質であってもよい。適切なリポーターは色原体、発光化合物(例えば、蛍光性か燐光性の);放射性化合物;可視化合物(例えばラテックス、または金色などの金属粒子)、信号発生物質を含有するリポソームまたは他の小胞;電気活性種;または酵素およびその基質の組合せである。好ましいリポーターは、第1および/または第2の検出ゾーン7、9で蓄積し、肉眼で見えるゾーンを形成する金粒子である(図1参照)。また、本発明のいくつかの実施形態において、基質認識分子17は、リポーター18と永続的にカップリングされないが、その代わりに、前述のような特異的結合対を介してリポーター18とカップリング可能であることを認識されたい。
【0076】
特定の実施形態において、酵素検出デバイス1は、2種の異なる基質10を備え、各基質には異なる酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域14がある。そうでない場合、いくつかの実施形態において、両方の基質10は同一であり、どちらの酵素が試料中にあろうと無関係に、試験ストリップ2は同じ信号を提供する。他の実施形態において、それぞれ基質10の被修飾性領域14の一方に特異的で他方には特異的ではない第1、第2の結合メンバー16が設けられる。一方の基質の被修飾性領域14は、一方の酵素と比較して優先的に(または競合的に)、第1の結合メンバー16によって結合され、他方の基質の被修飾性領域14は、他方の酵素と比較して優先的に(または競合的に)、第2の結合メンバー16によって結合される。さらに、第1の結合メンバー16のリポーター18は、第2の結合メンバー16のリポーター18とは異なる信号を提供する。したがって、各酵素の存在は、どちらかの信号の存在によって区別することができる。さらなる実施形態において、前の実施形態と同様に、第1および第2の結合メンバーが設けられる。ただし、両方の結合メンバーは同一のリポーター18を持ち、第2の検出ゾーンは第3の検出ゾーンで補われる。第2および第3の検出ゾーンには第2および第3の捕捉認識分子がそれぞれある。第2および第3の捕捉認識分子は、第1および第2の結合メンバーに対してそれぞれ特異的である。したがって、どちらかの酵素の存在は、第2または第3の捕捉ゾーンのいずれかのリポーター18の存在または欠如によって区別できる。
【0077】
第1および第2の結合メンバー16が設けられる場合の実施形態のいくつかの変形において、酵素検出デバイス1は、第1および第2の試験ストリップ(例えば、試料受け取りゾーン5と、互いに平行、または外側に向かって放射状に配置された)と流体連通状態の単一の試料受け取りゾーン5を備える。第1の試験ストリップには、第1の基質と結合する第1の検出ゾーン7、および第1の基質に対して特異的な結合メンバー16と結合する、第2の検出ゾーン9がある。同様に、第2の試験ストリップには、第2の基質と結合する第1の検出ゾーン7、および第2の基質に特異的な結合メンバー16と結合する、第2の検出ゾーン9がある。このように、第1および第2の試験ストリップは、試料中に第1および第2の酵素の存在または欠如を示す結果を別々に提供する。
【0078】
以上記載された具体的な実施形態において、本デバイスは試験ストリップ2の方式のクロマトグラフ媒質を備える。しかし、代替実施形態においては、クロマトグラフ媒質は設けられない。例えば、一実施形態において、第1の捕捉認識分子6は、カラムまたはビーズなどの固体担体上に固定される。前述の実施形態のように、試料は、基質10、続いて結合メンバー16と混合される。次いで、試料、基質10および結合メンバー16の混合物は担体上で洗浄され、特異的結合メンバー11が捕捉認識分子6と結合するのを可能にする。次いで、未結合物質を洗い流すまたは流出させる。酵素が試料中にある場合、被修飾性領域14は開裂され、結合メンバー16は基質10と結合することができない。このようにして、リポーター18は固体担体上で固定されない。したがって、試料中の酵素の存在は固体担体中のリポーターの欠如によって示される。酵素が試料中にない場合、結合メンバー16は基質10と結合し、固体担体上のリポーター18をこのように固定させる。したがって、試料中の酵素の欠如は、固体担体上で固定されたリポーター18の存在によって示される。
【0079】
いくつかの実施形態において、この種の手順は当業者に周知の方法で、96ウェルマイクロタイタープレート中で行われる。代替として、その手順は様々な固相捕捉物質を用いて、またはマイクロアレーシステムを用いて、ロボットシステム中で行われてもよい。
【実施例】
【0080】
キットは下記構成要素を備える。
1)サンプル流体(例えば傷からの)回収用の綿棒
2)プラスチックケースに取り付けられるラテラルフロー試験ストリップ。試験ストリップは、試験ストリップの流路を横切る第1の試験ラインとして吸着されたストレプトアビジンを備える第1の検出ゾーンおよび第1の試験ラインの下流に試験ストリップの流路を横切る第2の試験ラインとして吸着された抗ヒツジ抗体を含む第2の検出ゾーンを有する。プラスチックケースには、第1および第2の試験ラインを覗く観測窓がある。第1の試験ラインの上流にまた、統合試料を受けるパッドがある。さらに、試験ストリップには、試料を受け取るパッドおよび第1の試験ラインの間の試験ストリップに乾燥させた、または試料を受け取るパッド自体に乾燥させたヒツジ抗体(基質認識分子)を有する金粒子がある。
3)綿球が試料抽出緩衝液および基質と一緒に入れられてもよい試験管。試験管は押し上げ蓋式の口で構成され、試料/抽出流体/基質混合物を試験ストリップ上に施す準備ができている場合、口は所定位置にはめてある。試料は逆さまにしたチューブから口を通して滴下して施してもよい。
4)pH7.2のホスパヘート(phospahate)緩衝食塩水(PBS)および0.1%Tween(商標)20から成る抽出流体。
5)基質(抽出流体にあらかじめ溶かしてもよい)。基質は、MMP−9に対してバイアスをかけたアミノ酸の配列を含むペプチドから成る。配列(G)PQGIFG(Q)は特に適切である。しかし、他に多くのものが入手可能で、これらは科学文献に由来してもよい。基質はポリエチレングリコールスペーサー/リンカーを介して連結された、末端ビオチン基を有する。ペプチドは、金粒子に結合したヒツジ抗体によって認識される。
【0081】
キットの使用手順は以下のとおりである:
ステップ1:流体の試料(試験サンプル)は、キットで供給される綿球で集める。流体試料を有する綿球を、抽出緩衝液および規定量の基質と一緒に試験管に入れる(試験サンプル中に酵素が存在しない場合、第1のラインをちょうど飽和させる、限定した量でなければならないので、正確な量の基質が重要である。)。流体試料がリガントと混じることができ、流体試料を放出させるために、綿球を抽出流体内で激しく回転する。この反応混合物は、規定された時間(例えば10分)の間、周囲温度で温置する。
【0082】
ステップ2:温置時間が終わると、綿球を除去する、または、軸を切り離し、開けていたふたを閉じる。次いで、チューブを逆さまに絞り出して、4滴の液体を、試料を受け取るパッド上に垂らす。液体が試験ストリップへ移動すると、液体は金粒子に結合した乾燥ヒツジ抗体と接触する。これらは試験サンプルによって再水和され、ヒツジ抗体は任意の未修飾基質と結合する。液体と金粒子がラテラルフロー試験ストリップを介して移動すると、それらはその第1のラインに届き、ここでビオチン(基質上の)は認識され捕捉される。無傷の基質に結合されたいずれの金粒子も、基質の末端ビオチンによってこの第1のラインで捕捉される。基質に結合されないまたは開裂された基質に結合されるものは、通過して第2の(抗ヒツジ)ラインで捕捉されることになる。
【0083】
ユーザーは、形成したラインを観察し、これらの相対強度を評価する。第1のラインの欠如および全強度の第2のラインの存在は、試験サンプル中の高レベルのプロテアーゼを示す。逆の結果は、ゼロまたは検出可能な限界より下の低レベルのプロテアーゼを示す。この両極端の中間段階は、試験サンプルの異なるレベルのプロテアーゼを示す。いくつかの実施形態において、結果は光電子工学ストリップリーダによって読み取る。また、読み取り値は、ユーザーに提示される単純な結果とともに単純なアルゴリズムによって自動的に解釈される。
【0084】
この例の変形においては、試験ストリップに組み込む代わりに、(ヒツジ抗体を有する)金粒子を、温置時間が終わると、反応混合物に加える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を備える基質、
(ii)未修飾状態の被修飾性領域と特異的に結合できる基質認識分子であり、基質認識分子の結合部位は、基質の被修飾性領域が、混合したときに酵素と比較して、前記基質認識分子により優先的に結合されるような部位である基質認識分子、および
(iii)基質認識分子にカップリング可能な検出可能な標識
を含む、提供された基質を修飾できる酵素の試料中での有無を検出する酵素検出デバイス。
【請求項2】
基質に対する基質認識分子の親和性が、比較的低い解離速度を含む、請求項1の酵素検出デバイス。
【請求項3】
基質に対する基質認識分子の親和性が、比較的低い解離速度および比較的高い会合速度を含む、請求項1の酵素検出デバイス。
【請求項4】
酵素が基質に対するより、基質認識分子が基質に対して、低い解離速度および高い会合速度を有する、請求項1の酵素検出デバイス。
【請求項5】
基質が結着領域をさらに備え、酵素検出デバイスが固体担体をさらに備え、結着領域が固体担体に結着できる、請求項1に記載の酵素検出デバイス。
【請求項6】
クロマトグラフ媒質をさらに備える、請求項1に記載の酵素検出デバイス。
【請求項7】
基質がクロマトグラフ媒質に結着可能な結着領域をさらに備える、請求項6に記載の酵素検出デバイス。
【請求項8】
クロマトグラフ媒質が、クロマトグラフ媒質上または中に固定され、基質の結着領域と結合することができる第1の捕捉認識分子を備える、請求項7に記載の酵素検出デバイス。
【請求項9】
クロマトグラフ媒質が、クロマトグラフ媒質上または中に固定され、基質の断片と場合によって組み合わせて、基質認識分子と結合することができる第2の捕捉認識分子をさらに備える、請求項8に記載の酵素検出デバイス。
【請求項10】
第1の捕捉認識分子と結着領域および/または第2の捕捉認識分子と基質認識分子が、それぞれ結合対の半分であり、結合対それぞれが、抗原と抗体またはこれに特異的な抗原結合性断片;ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジン;プロテインAおよびG;炭水化物とレクチン;相補的な2つのヌクレオチド配列;エフェクターと受容体分子;ホルモンとホルモン結合タンパク質;酵素補助因子と酵素;酵素阻害剤と酵素;セルロース結合領域とセルロース繊維;固定されたアミノフェニルボロン酸とシス−ジオールを有する分子;キシログルカンとセルロース繊維およびその類似体、この誘導体および断片である、請求項8または9に記載の酵素検出デバイス。
【請求項11】
基質認識分子が、修飾状態または未修飾状態のいずれかの被修飾性領域と結合することができる抗体もしくはその抗原結合性断片、レクチン、ヌクレオチド配列、受容体分子、またはホルモン結合タンパク質である、請求項1から10のいずれか一項に記載の酵素検出デバイス。
【請求項12】
基質認識分子が、未修飾ビオチンと結合できるアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジンである、請求項1から10のいずれか一項に記載の酵素検出デバイス。
【請求項13】
酵素が、加水分解酵素、好ましくはペプチダーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、カルボヒドラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼである、請求項1から12のいずれか一項に記載の酵素検出デバイス。
【請求項14】
酵素が、キナーゼ、グリコシル転移酵素、オキシダーゼ、還元酵素またはトランスアミナーゼである、請求項1から12のいずれか一項に記載の酵素検出デバイス。
【請求項15】
基質認識分子に結合された検出可能な標識をさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の酵素検出デバイス。
【請求項16】
検出可能な標識が基質認識分子と共有結合で結合されている、請求項15に記載の酵素検出デバイス。
【請求項17】
標識が、蛍光団、金粒子、色原体、発光化合物;放射性化合物;可視化合物、信号発生物質を含有するリポソームまたは他の小胞、電気活性種または酵素とその基質の組合せである、請求項15または16に記載の酵素検出デバイス。
【請求項18】
それぞれが被修飾性領域を有する第1の基質および第2の基質を備え、第1の基質の被修飾性領域は第1の酵素による修飾に感受性があり、第2の基質の被修飾性領域は第2の酵素による修飾に感受性がある、請求項1から17のいずれか一項に記載の酵素検出デバイス。
【請求項19】
(i)未修飾状態から修飾状態への酵素による修飾に感受性のある被修飾性領域を備える基質を設けるステップ、
(ii)酵素を含む疑いのある試料を準備するステップ、
(iii)未修飾状態の被修飾性領域と特異的に結合する基質認識分子であり、基質認識分子の結合部位は、基質の被修飾性領域が、混合したときに酵素と比較して、前記基質認識分子により優先的に結合されるような部位である基質認識分子を設けるステップ、
(iv)試料中の酵素のうちの少なくとも一部が基質を修飾するように、試料と基質を混合するステップ、および
(v)基質と基質認識分子を接触させ、基質と基質認識分子との間の相互作用を検出するステップ
を含む、基質を修飾することができる酵素を検出する方法。
【請求項20】
基質に対する基質認識分子の親和性が比較的低い解離速度を含む、請求項19の方法。
【請求項21】
基質に対する基質認識分子の親和性が比較的低い解離速度および比較的高い会合速度を含む、請求項19の方法。
【請求項22】
基質認識分子が基質に対して、酵素が基質に対するより、低い解離速度および高い会合速度を有する、請求項19の方法。
【請求項23】
基質が結着領域をさらに備え、ステップ(i)が固体担体を設け、固体担体に基質の結着領域を結合させるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(i)が、固体担体に結着領域を結合することができる第1の捕捉認識分子を設けるステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(v)が、クロマトグラフ媒質上または中に基質および基質認識分子を配置するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
クロマトグラフ媒質がクロマトグラフ媒質上または中に固定された第1の捕捉認識分子を備え、基質が結着領域をさらに備え、第1の捕捉認識分子が結着領域と結合することができ、第1の捕捉認識分子での基質認識分子の固定化を検出するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
クロマトグラフ媒質がクロマトグラフ媒質上または中に固定された第2の捕捉認識分子をさらに備え、第2の捕捉認識分子が基質の断片と場合によって組み合わせて、基質認識分子と結合することができ、第2の捕捉認識分子での基質認識分子の存在を検出するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第1の捕捉認識分子と結着領域および/または第2の捕捉認識分子と基質認識分子が結合対の半分それぞれであり、結合対が抗原と抗体またはその抗原結合性断片;ビオチンとアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジン;免疫グロブリン(またはその適切な領域)とプロテインAおよびG;炭水化物とレクチン;相補的な2つのヌクレオチド配列;エフェクターと受容体分子;ホルモンとホルモン結合タンパク質;酵素補助因子と酵素;酵素阻害剤と酵素;セルロース結合領域とセルロース繊維;固定されたアミノフェニルボロン酸とシス−ジオールを有する分子;またはキシログルカンとセルロース繊維、およびその類似体、誘導体および断片である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
基質認識分子が、抗体もしくはこの抗原結合性断片;レクチン;ヌクレオチド配列;受容体分子;または修飾状態もしくは未修飾状態のいずれかの被修飾性領域と結合することができるホルモン結合タンパク質である、請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
基質認識分子が、未修飾ビオチンと結合できるアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジンまたはキャプトアビジンである、請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
酵素が、加水分解酵素、好ましくはペプチダーゼ、リパーゼ、ヌクレアーゼ、ホモまたはヘテロオリゴサッカリデダーゼ、ホモまたはヘテロポリサッカリダーゼ、カルボヒドラーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、デオキシリボヌクレアーゼまたはリボヌクレアーゼである、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
酵素が、キナーゼ、グリコシル転移酵素、オキシダーゼ、還元酵素またはトランスアミナーゼである、請求項19から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
基質認識分子に結合した標識を準備するステップをさらに含み、ステップ(v)が標識の存在を検出するステップを含む、請求項19から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
標識が基質認識分子に共有結合で結合されている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
標識が、蛍光団、金粒子、色原体、発光化合物;放射性化合物;可視化合物、信号発生物質を含むリポソームまたは他の小胞;電気活性種;または酵素およびその基質の組合せである、請求項33または32に記載の方法。
【請求項36】
ステップ(i)が、それぞれが被修飾性領域を有する第1の基質および第2の基質を設けるステップを含み、第1の基質の被修飾性領域は第1の酵素に感受性があり、第2の基質の被修飾性領域は第2の酵素による修飾に感受性があり、ステップ(v)が、第1の基質および第2の基質と基質認識分子との間の相互作用を検出するステップを含む、請求項19から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(iii)が、未修飾状態でそれぞれ第1の基質および第2の基質の被修飾性領域と特異的に結合する第1の基質認識分子および第2の基質認識分子を設けるステップを含み、第1の基質の被修飾性領域は、第1の酵素と比較して優先的に前記第1の基質認識分子により結合され、第2の基質の被修飾性領域は、第2の酵素と比較して優先的に前記第2の基質認識分子により結合され、ステップ(v)が、第1の基質および第2の基質と第1の基質認識分子および第2の基質認識分子との間の相互作用を検出するステップを含む、請求項36に記載の方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−537186(P2010−537186A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521483(P2010−521483)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002889
【国際公開番号】WO2009/024805
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(508257348)モロジック リミテッド (6)
【Fターム(参考)】