説明

酵素活性の測定方法

【課題】HP/HSの生合成に関与する酵素群、特に、ND、ST及びNDSTの活性を簡便、迅速、高感度、高精度かつ安価に測定することができる方法及びキット並びにこれらの酵素の活性を変化させる物質のスクリーニング方法等を提供することを課題とする。
【解決手段】新規な修飾多糖、当該多糖が固着された固相、当該固相を利用した検体中のN−デアセチラーゼ活性、N−スルホトランスフェラーゼ活性及びN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ活性の検出方法並びにこれらの検出キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な修飾多糖、当該多糖が固着された固相、当該固相を利用した検体中のN−デアセチラーゼ活性、N−スルホトランスフェラーゼ活性及びN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ活性の検出方法並びにこれらの検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願書類中で使用する略号は以下の通りである。
BSA:ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1−ethyl−3−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide)
EDTA:エチレンジアミン四酢酸(ethylenediamine tetraacetic acid)
ELISA:酵素結合免疫測定法(enzyme−linked immunosorbent assay)
GlcA:グルクロン酸(glucuronic acid)
GlcN:グルコサミン(glucosamine)
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン(N−acetylglucosamine)
HEPES:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−エタンスルホン酸(2−[4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazinyl]ethanesulfonic acid)
HP:ヘパリン(heparin)
HPLC:高速液体クロマトグラフィー(high−performance liquid chromatography)
HRP:ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)
HS:ヘパラン硫酸(heparan sulfate)
IgG:免疫グロブリンG(immunoglobulin G)
MES:2−モルホリノエタンスルホン酸(2−morpholinoethanesulfonic acid)
NAH:N−アセチルヘパロサン(N−acetyl heparosan)
ND:N−デアセチラーゼ(N−deacetylase)
NDST:N−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ(N−deacetylase/N−sulfotransferase)
PAPS:5’−ホスホアデノシン 3’−ホスホリン酸(5’−phosphoadenosine 3’−phosphosulfate)
PBS:リン酸緩衝生理食塩液(phosphate buffered saline)
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)
PDP:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル(2−pyridyldisulfidepropionyl)
RIA:ラジオイムノアッセイ(radioimmunoassay)
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)
SPDP:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(N−succinimidyl−3−(2−pyridylthio)propionate)
SS結合:ジスルフィド結合(disulfide bond)
ST:N−スルホトランスフェラーゼ(N−sulfotransferase)
TBS:トリス塩酸緩衝生理食塩液(Tris−HCl buffered saline)
TMB:3,3’,5,5’−テトラメチルベンチジン(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)
【0003】
NDSTは、HPやHSの合成に関与する酵素であり、ND活性とST活性を併せ持つ酵素である。NDSTには4種類のバリアント(NDST1、NDST2、NDST3、NDST4)が存在し、その基質特異性等が各々異なることが報告されている。例えば、NDST3のND活性は高くST活性は低い。一方でNDST4のND活性は弱くST活性は極めて高い(非特許文献1)。
【0004】
NDST1ノックアウトマウスは新生児致死性であることが報告されている。一方、NDST2ノックアウトマウスでは致死性を示さないが、肥満細胞内での顆粒の減少、HP負電荷の減少、ヒスタミン含量が1/170に減少するなどの変化が報告されている(非特許文献2〜8)。したがって、NDSTがこのような生体内での現象に起因する疾患に関与している可能性がある。
【0005】
NDSTの活性測定方法としては、ラジオアイソトープで標識した基質を用いる測定方法が知られている。この方法によれば、GlcNAc残基におけるアセチル基がラジオアイソトープ(H)で標識されたNAH(基質)を用いて、酵素作用により当該NAHより遊離したCHCOOH量を測定することでNDSTにおけるND活性を測定し、また、ラジオアイソトープ(35S)で標識されたPAPSとN−脱硫酸化HPまたはN−脱硫酸化HSを用い、酵素作用によって取り込まれた当該多糖のN−硫酸量(35S)を測定することでNDSTのST活性を測定する(非特許文献1、12〜15、特許文献1)。
【0006】
またラジオアイソトープを使用しないNDSTの活性測定方法も知られているが、モノクローナル抗体JM403(非特許文献9〜10)を用いたサンドイッチELISA法と反応生成物のヘパリナーゼ消化物を用いたHPLC法が報告されているのみである。
【0007】
前者の測定方法はNDにより生成した脱N−アセチル部位と抗体JM403とが反応することを利用した方法であるが、サンドイッチ法であるため少なくとも2つ以上のエピトープを必要とする。また、この方法ではST活性を検出することができない(非特許文献11)。
【0008】
後者の測定方法は、ND活性及びST活性によって生成した脱N−アセチル化NAH及びN−硫酸化NAHをヘパリナーゼ消化することによって得られる不飽和二糖を、非特許文献16に記載の「2・8グリコサミノグリカン分解酵素とHPLCを組み合わせた構造解析」などを用いて脱N−アセチル化度やN−硫酸化度を算出する方法であるが、クロマトグラフィーやスクリーニングなど多検体の活性を測定する方法には適さない(特許文献2、非特許文献17)。
【0009】
ND、ST及びNDSTの活性を簡便、迅速、高感度、高精度かつ安価に測定することができれば、このような酵素が関与する疾患やそのリスクの検知、病態把握等を容易に行うことができるのみならず、当該酵素の活性に変化を与える物質(阻害剤や賦活化剤など)のスクリーニング等も効率的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0109501号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0043447号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】アイカワ、J(Aikawa,J.)ら、2001年、ジャーナルオブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第276巻、第8号、p.5876−5882
【非特許文献2】ハンフリーズ、DE(Humphries,D.E.)ら、1999年、ネイチャー(Nature)、第400巻、p.769−772
【非特許文献3】フォースバーグ、E(Forsberg,E.)ら、1999年、ネイチャー(Nature)、第400巻、p.773−776
【非特許文献4】リンギバル、M(Ringivall,M.)ら、2000年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biol ogical Chemistry)、第275巻、第34号、p.25926−25930
【非特許文献5】ピカス、DS(Pikas,D.E.)ら、2000年、バイオケミストリー(Biochemistry)、第39巻、p.4552−4558
【非特許文献6】フクダ、M(Fukuda,M.)ら、2001年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第276巻、第51号、p.47747−47750
【非特許文献7】エスコ、JD(Esko,J.D.)ら、2001年、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)、第108巻、p.169−173
【非特許文献8】フォースバーグ、E(Forsberg,E.)ら、2001年、ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)、第108巻、p.175−180
【非特許文献9】バンデンボーン、J(van den Born,J)ら、1992年、キドニー インターナショナル(Kidney International)、第41巻、p.115−123
【非特許文献10】バンデンボーン、J(van den Born,J)ら、1995年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal ofBiological Chemistry)、第270巻、第52号、p.31303−31309
【非特許文献11】バンデンボーン、J(van den Born,J)ら、2003年、グライコバイオロジー(Glycobiology)、第13巻、第1号、p.1−10
【非特許文献12】ブランダン、E(Brandan,E.)ら、1988年、ジャーナル オブバイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第263巻、第5号、p.2417−2422
【非特許文献13】ベイメ、KJ(Bame,K.J.)ら、1991年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第266巻、第16号、p.10287−10293
【非特許文献14】ベイメ、KJ(Bame,K.J.)ら、1991年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第266巻、第19号、p.12461−12468
【非特許文献15】ベルダゴ、DE(Verdugo,D.E.)ら、2002年、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)、第307巻、p.330−336
【非特許文献16】新生化学実験講座3、糖質II(東京化学同人刊、1991年)p49−62
【非特許文献17】サリバス、AS(Saribas,A.S.)ら、2004年、グライコバイオロジー(Glycobiology)、第14巻、第12号、p.1217−1228
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、HP/HSの生合成に関与する酵素群、特に、ND、ST及びNDSTの活性を簡便、迅速、高感度、高精度かつ安価に測定することができる方法及びキット並びにこれらの酵素の活性を変化させる物質のスクリーニング方法等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、NAH又はその誘導体に特定の物質が結合した修飾多糖を新たに製造し、これを用いたところND、ST及びNDSTの活性を簡便、迅速、高感度、高精度かつ安価に測定できることを見出した。そしてこれに基づいて、ND、ST及びNDSTの活性を簡便、迅速、高感度、高精度かつ安価に測定することができる方法及びキット並びにこれらの酵素の活性を変化させる物質のスクリーニング方法を提供するに至り、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、下記の群から選択される物質が、NAH又はその誘導体に結合していることを特徴とする、修飾多糖(以下、「本発明多糖」という。)を提供する。
(群)蛋白質、ビオチン、抗原物質
【0015】
この結合は、前記の物質とNAH又はその誘導体の還元末端との間に形成されているものが好ましい。またこのうち蛋白質との結合は、共有結合又はアフィニティー結合であるものが好ましい。この共有結合はSS結合又はアミド結合であるものが好ましく、このアフィニティー結合はビオチン・アビジン結合であるものが好ましい。また、この蛋白質は分子量1.5万〜20万の可溶性の蛋白質であるものが好ましい。この「分子量1.5万〜20万の可溶性の蛋白質」は、免疫グロブリン、アビジン、プロテインA、プロテインG、アルブミン又はカゼインであるものが好ましい。このアルブミンは、血清アルブミン又は卵白アルブミンであるものが好ましい。またNAHの誘導体は、下記(1)〜(3)からなる群から選ばれる物質であるものが好ましい。
(1)N−脱硫酸化HP又はN−脱硫酸化/N−アセチル化HP
(2)N−脱硫酸化HS又はN−脱硫酸化/N−アセチル化HS
(3)脱N−アセチル化NAH
【0016】
また本発明は、本発明多糖が固着された固相(以下、「本発明固相」という。)を提供する。
【0017】
また本発明は、下記ステップ(a)及び(b)を少なくとも含む、検体中のND活性の検出方法(以下、「本発明ND検出方法」という。)を提供する。
ステップ(a):本発明固相に、検体を接触させるステップ
ステップ(b):前記固相に固着された本発明多糖における、脱N−アセチル化を検出するステップ。
【0018】
この脱N−アセチル化の検出は、本発明固相に「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」を接触させることにより行われることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する「蛋白質」は、抗体であることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する抗体は、モノクローナル抗体JM403であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、下記の構成成分(A)及び(B)を少なくとも含む、検体中のND活性の検出キット(以下、「本発明ND検出キットという。)を提供する。
(A)本発明多糖
(B)NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質
【0020】
この本発明多糖は、固相に固着されているものが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する「蛋白質」は、抗体であることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する抗体は、モノクローナル抗体JM403であることが好ましい。
【0021】
また本発明は、下記ステップ(c)及び(d)を少なくとも含む、検体中のST活性の検出方法(以下、「本発明ST検出方法」という。)を提供する。
ステップ(c):本発明固相に、検体と硫酸基供与体とを接触させるステップ。
ステップ(d):前記固相に固着された本発明多糖における、N−硫酸化を検出するステップ。
【0022】
このN−硫酸化の検出は、本発明固相に「NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質」を接触させることにより行われることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する「蛋白質」は、抗体であることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する抗体は、モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1であることが好ましい。なかでも、モノクローナル抗体F58−10E4を好ましく用いることができる。
【0023】
また本発明は、下記の構成成分(A)及び(C)を少なくとも含む、検体中のST活性の検出キット(以下、「本発明ST検出キットという。)を提供する。
(A)本発明多糖
(C)NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質
【0024】
この本発明多糖は、固相に固着されているものが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する「蛋白質」は、抗体であることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する抗体は、モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1であることが好ましい。なかでも、モノクローナル抗体F58−10E4を好ましく用いることができる。
【0025】
また本発明は、本発明ND検出方法によって検体中のND活性を検出し、かつ、本発明ST検出方法によって検体中のST活性を検出することを特徴とする、検体中のNDST活性の検出方法(以下、「本発明NDST検出方法」という。)を提供する。
【0026】
また本発明は、下記の構成成分(A)、(B)及び(C)を少なくとも含む、検体中のNDST活性の検出キット(以下、「本発明NDST検出キット」という。)を提供する。
(A)本発明多糖
(B)NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質
(C)NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質
【0027】
この本発明多糖は、固相に固着されているものが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する「蛋白質」は、抗体であることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する抗体は、モノクローナル抗体JM403であることが好ましい。
【0028】
また、NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する「蛋白質」は、抗体であることが好ましい。また、NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する抗体は、モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1であることが好ましい。なかでも、モノクローナル抗体F58−10E4を好ましく用いることができる。
【0029】
また本発明は、下記ステップ(e)〜(g)を少なくとも含む、下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる物質のスクリーニング方法(以下、「本発明スクリーニング方法」という。)を提供する。
ステップ(e):下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる可能性のある試験物質を、当該酵素と共存させるステップ。
ステップ(f):ステップ(e)により得られる「前記試験物質と前記酵素との共存物」を検体とし、本発明ND検出方法、本発明ST検出方法及び本発明NDST検出方法のいずれかの方法によって、前記酵素の活性を検出するステップ。
ステップ(g):ステップ(f)により検出された酵素の活性と、ステップ(e)で用いた酵素を検体としてステップ(f)と同一の方法によって検出される酵素の活性とを比較して、下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる試験物質を選択するステップ。
(酵素群)ND、ST、NDST
【発明の効果】
【0030】
本発明多糖は、本発明固相の素材とすることができ極めて有用である。本発明固相は、本発明の各種検出方法や各種検出キットに用いることができ、極めて有用である。本発明ND検出方法、本発明ST検出方法及び本発明NDST検出方法は、いずれも簡便、迅速、特異的、高感度、高精度かつ安価にND活性、ST活性又はNDST活性を定量性・再現性よく検出することができ、極めて有用である。また本発明ND検出キット、本発明ST検出キット及び本発明NDST検出キットは、いずれも前記の検出方法の実施をさらに簡便かつ迅速なものとすることから、極めて有用である。また本発明スクリーニング方法は、ND、ST又はNDSTの活性を変化させる物質を、簡便、迅速、高感度、高精度かつ安価にスクリーニングすることができ、極めて有用である。さらに本発明は、NDST等の酵素活性の異常に起因する疾患の検知やそのリスクの検知、病態把握等にも活用しうるものであり、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】NAH−SS−BSA固相化プレートを用いた場合における、ND活性の用 量依存性を示す図である。
【図2】NAH−COOH−BSA固相化プレートを用いた場合における、ND活性 の用量依存性を示す図である。
【図3】NAH−SS−BSA固相化プレートを用いた場合における、ND活性の反 応時間依存性を示す図である。
【図4】NAH−SS−BSA固相化プレートを用いた場合における、ST活性(N DST活性)の用量依存性及びPAPS依存性を示す図である。
【図5】NAH−SS−BSA固相化プレートを用いた場合における、ST活性(N DST活性)の反応時間依存性及び熱処理による影響を示す。
【図6】「NAH−ビオチンがアビジンを介して固着されたプレート」を用いた、N D活性の用量依存性を示す図である。
【図7】「NAH−ビオチンがアビジンを介して固着されたプレート」を用いたND 活性の測定における、pHの影響を示す図である。
【図8】「NAH−ビオチンがアビジンを介して固着されたプレート」を用いた、N D活性の阻害剤のスクリーニングの結果を示す図である。
【図9】サンドイッチELISAを用いた、ND活性の検出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
<1>本発明多糖
本発明多糖は、下記の群から選択される物質が、NAH又はその誘導体に結合していることを特徴とする、修飾多糖である。
(群)蛋白質、ビオチン、抗原物質
【0033】
ここにいう「蛋白質」は特に限定されないが、分子量1.5万〜20万の可溶性の蛋白質であることが好ましく、分子量1.5万〜10万の可溶性蛋白質であることがより好ましく、分子量1.5万〜7万の可溶性蛋白質であることがより好ましい。ここで、「可溶性」とは、蛋白質が室温において水、生理的塩類溶液(生理食塩水など)、緩衝液等の水性溶媒に溶解可能であることを意味する。分子量1.5万〜20万の可溶性の蛋白質としては、免疫グロブリン、アビジン、プロテインA、プロテインG、アルブミン又はカゼインを例示することができる。また分子量1.5万〜10万や分子量1.5万〜7万の可溶性蛋白質としては、アビジン、プロテインA、プロテインG、アルブミン又はカゼインを例示することができる。なかでも、アルブミン又はカゼインが好ましい。
【0034】
この「アルブミン」としては、血清アルブミン又は卵白アルブミンを例示することができる。
【0035】
また、ここにいう「NAH」は、当技術分野においてNAHであると認識されるものである限りにおいて特に限定されない。NAHは、GlcA残基とGlcNAc残基とが交互にグリコシド結合した糖鎖である。GlcA残基とGlcNAc残基との間の結合はβ1,4グリコシド結合であり、GlcNAc残基とGlcA残基との間の結合はα1,4グリコシド結合である。NAHの一般式としては、以下の(1)又は(2)で表すことができる。
(4GlcAβ1−4GlcNAcα1)n (1)
(4GlcNAcα1−4GlcAβ1)n (2)(式中、nは任意の整数を示す。)
【0036】
本発明多糖の原料とするNAHは、公知のものを用いることができる。その由来も特に限定されず、例えば天然物由来のものでも、酵素学的に又は化学的に合成したものであってもよい。天然物由来のものとしては、NAHを産生するバクテリア由来のものを例示することができる。このようなバクテリアとしてはある種の大腸菌やパスツレラ属細菌が上げられる。具体的には、例えば、大腸菌K5株やパスツレラ マルトシダ(Pasturella multosida)を例示することができる。NAHは、例えば特開2004−18840号公報に記載の方法で製造することができる。
【0037】
また、本出願書類において「NAHの誘導体」とは、NAHの糖鎖骨格は維持しつつ、さらに他の官能基を保持していたり、逆にNAHの糖鎖骨格において本来保持されているべき官能基が失われているものなど、何らかの修飾がなされているものすべてを意味する。したがって、NAHに硫酸基が保持されているもの、NAHからアセチル基が脱離したもの、ウロン酸がエピ異性体となっているものなどは、いずれも「NAHの誘導体」の概念に包含されるが、これらに限定されるものではない。また本出願書類における「NAHの誘導体」の用語は、NAHを原材料としてこれを修飾することにより得られるものはもちろん、NAHを原材料としないで得られるものも含む概念である。
【0038】
「NAHの誘導体」としては、なかでも下記(1)〜(3)からなる群から選ばれる物質が好ましい。
(1)N−脱硫酸化HP又はN−脱硫酸化/N−アセチル化HP
(2)N−脱硫酸化HS又はN−脱硫酸化/N−アセチル化HS
(3)脱N−アセチル化NAH
ここで「N−脱硫酸化HP」とは、HPにおけるGlcN残基の2位アミノ基に結合した硫酸基が脱硫酸化されたHPをいい、「N−脱硫酸化/N−アセチル化HP」とは、HPにおけるGlcN残基の2位アミノ基に結合した硫酸基が脱硫酸化された後、GlcN残基の2位アミノ基がアセチル化されたHPをいう。また「N−脱硫酸化HS」とは、HSにおけるGlcN残基の2位アミノ基に結合した硫酸基が脱硫酸化されたHSをいい、「N−脱硫酸化/N−アセチル化HS」とは、HSにおけるGlcN残基の2位アミノ基に結合した硫酸基が脱硫酸化された後、GlcN残基の2位アミノ基がアセチル化されたHSをいう。また「脱N−アセチル化NAH」とは、NAHにおけるGlcNAc残基が脱N−アセチル化されたNAHをいう。N−脱硫酸化HP、N−脱硫酸化HS、N−脱硫酸化/N−アセチル化HP及びN−脱硫酸化/N−アセチル化HSは、HPやHSを原料として、特開2003−113090号公報に記載された方法に従って製造することができる。また「脱N−アセチル化NAH」は、NAHを原料として、Leali,D.らの方法(J.Biol.Chem.,276,41,37900−37908(2001))あるいは、Shaklee,P.K.らの方法(Biochem.J.,217,187−497(1984))などに従って化学的に製造することができる。また、Aikawa,J.らの方法(J.Biol.Chem.,274(5),2690−2695(1999))などに従って調製したヒトNDSTをNAHに作用させて酵素的に製造することもできる。
【0039】
本発明多糖の原料とすることができるNAH又はその誘導体の重量平均分子量も特に限定されず、硫酸基やアセチル基等の有無、他の化合物の付加の有無等によっても変動しうるが、例えば、硫酸基等や他の化合物の付加による影響を排除して純粋にNAH糖鎖のみの重量平均分子量として換算した場合には、1,500〜50万のものが好ましく、4,000〜20万のものがより好ましく、1万〜20万のものがより好ましく、2万〜15万のものがより好ましく、2万〜10万のものがより好ましく、2万〜8万のものがさらに好ましい。
【0040】
本発明多糖は、前記の群から選択される物質が、このようなNAH又はその誘導体に結合していることを特徴とする。ここにいう「結合」の様式は、前記の群から選択される物質とNAH又はその誘導体とが水溶液中においても解離しない強度以上の強度を有する結合である限りにおいて特に限定されない。このような結合としては、例えば、2個の原子がいくつかの電子を共有してつくる共有結合や、2個の分子間における親和性により形成されるアフィニティー結合等を例示することができる。前記の群から選択される物質が蛋白質である場合、共有結合としては、SS結合、アミノアルキル結合、アミド結合等が例示される。また前記の群から選択される物質が蛋白質である場合、アフィニティー結合としては、ビオチン・アビジン結合(ビオチンとアビジンとの間の結合)を例示することができる。なお、本出願書類における「アビジン」の用語には、ストレプトアビジンも当然に包含される。
【0041】
このような結合を形成させる方法は、公知の方法を採用することができる。
【0042】
また、前記の群から選択される物質がビオチンである場合には、例えばNAH又はその誘導体を原料とし、Osmond,R.I.W.らの方法(Anal.Biochem.,310,199−207(2002))に従って、NAH又はその誘導体のビオチン化誘導体を製造することができる。この方法によれば、NAH又はその誘導体の還元末端にビオチンを共有結合させることができる。
【0043】
また、前記の群から選択される物質が抗原物質である場合には、その抗原物質の種類に応じて、NAH又はその誘導体との結合のさせ方を選択することができる。例えば抗原物質がペプチドである場合には、前述の蛋白質を結合させる方法と同じ方法を採用することができる。なお、本出願書類において「抗原物質」とは、これを免疫原としたときにこれに対する抗体が産生される物質(抗原となる物質)を意味する。
【0044】
本発明多糖は、所望の構造のNAH又はその誘導体を製造した後、これを前記の群から選択される物質と結合させることによって製造しても良く、また所望のNAH又はその誘導体の原料となる多糖を予め前記の群から選択される物質と結合させ、その後、その糖鎖部分を前述の各種糖鎖修飾法等によって所望の構造となるよう改変して製造しても良い。
【0045】
また、このような本発明多糖をさらに別の物質と結合させても良い。例えば、NAH又はその誘導体に免疫グロブリンが結合している本発明多糖について、当該免疫グロブリン部分を介してプロテインAやプロテインGに結合させてもよく、NAH又はその誘導体にプロテインAやプロテインGが結合している本発明多糖について、当該プロテインA又はプロテインG部分を介して免疫グロブリンに結合させてもよい。また、NAH又はその誘導体にアビジンが結合している本発明多糖について、当該アビジン部分を介してビオチンに結合させてもよく、NAH又はその誘導体にビオチンが結合している本発明多糖について、当該ビオチン部分を介してアビジンに結合させてもよい。また、NAH又はその誘導体に抗原物質が結合している本発明多糖について、当該抗原物質部分を介してこれに対する抗体に結合させてもよく、NAH又はその誘導体に抗体が結合している本発明多糖について、当該抗体部分を介してこれに対する抗原物質に結合させてもよい。このようにして得られる物質も、本発明多糖に包含される。
【0046】
前記のような共有結合を形成させる方法は、公知の方法を採用することができる。以下に、蛋白質とNAHとを共有結合させる方法についてその一例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0047】
例示(1):シアノ水素化ホウ素ナトリウム等を用いて還元アミノ化したNAHに、SPDPを添加してPDP化NAHを得、これにジチオスレイトール等を添加してSH−NAHを得る。一方、蛋白質にSPDPを添加してPDP化蛋白質を得る。次いで、両者を接触させてコンジュゲーション反応(SH−NAHが還元剤となってPDP化蛋白質を還元する際、両者が結合する。)を行うことにより、蛋白質をNAHの還元末端に共有結合させる方法。これにより生じる共有結合は、SS結合である。
【0048】
例示(2):「シアノ水素化ホウ素ナトリウム等を用いて還元アミノ化したNAH」と蛋白質にEDCを添加し、コンジュゲーション反応(EDCが活性化剤として作用して両者が結合する。)を行うことにより、蛋白質のカルボキシル基とNAHの還元末端に導入されたアミノ基とを共有結合させる方法。これにより生じる共有結合は、アミド結合である。
【0049】
例示(3):NAHの還元末端のホルミル基と蛋白質のアミノ基とを反応させてシッフ塩基を形成後、トリメチルアミンボラン等の還元剤を用いて還元し、共有結合させる方法。これにより形成される共有結合は、アミノアルキル結合(−CH−NH−)である。
【0050】
例示(4):NAHの還元末端を還元した後、過ヨウ素酸酸化して遊離ホルミル基を導入し、これと蛋白質のアミノ基とを反応させてシッフ塩基を形成後、トリメチルアミンボラン等の還元剤を用いて還元し、共有結合させる方法。これにより形成される共有結合は、アミノアルキル結合(−CH−NH−)である。
【0051】
例示(5):NAHと蛋白質のアミノ基とをベンゾキノン等を用いて共有結合させる方法。
【0052】
また前記のようなアフィニティー結合を形成させる方法も、公知の方法を採用することができる。以下に、蛋白質とNAHとをアフィニティー結合させる方法についてその一例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0053】
例示(6):シアノ水素化ホウ素ナトリウム等を用いて還元アミノ化することによってNAHの還元末端に生じたアミノ基部位又はNAHのカルボキシル基部位にビオチンを結合させる。一方、蛋白質にアビジンを結合させ、両者を接触させることによりアフィニティー結合(ビオチン・アビジン結合)させる方法。
【0054】
例示(7):NAHを例示(1)から例示(5)のいずれかの方法でアビジンと結合させる方法。また必要に応じてさらに、アミノ基又はカルボキシル基に対して特異的に結合するビオチン誘導体(ピアス社)を蛋白質と反応させることによって、蛋白質のアミノ基又はカルボキシル基部位にビオチンを結合させ、次いで、これをアビジンが結合したNAHと接触させることによりアフィニティー結合(ビオチン・アビジン結合)させる方法。
【0055】
例示(8):NAHを例示(1)から例示(5)のいずれかの方法で各種抗原物質(例えば、抗原性ペプチド(例えばワクチン)等)と結合させる。次いで、これとこの抗原物質に対する抗体とを接触させることによりアフィニティー結合(抗原・抗体結合)させる方法。
【0056】
例示(9):NAHを例示(1)から例示(5)のいずれかの方法で各種抗体(例えば、抗BSA抗体等)と結合させる。また必要に応じてさらにこれとこの抗体に対する抗原蛋白質とを接触させることによりアフィニティー結合(抗原・抗体結合)させる方法。
【0057】
例示(10):NAHを例示(1)から例示(5)のいずれかの方法でプロテインA(又はプロテインG)と結合させる。また必要に応じてさらにこれと免疫グロブリン(IgG等)とを接触させることによりアフィニティー結合(プロテインA(又はプロテインG)・免疫グロブリン結合)させる方法。
【0058】
例示(11):NAHを例示(1)から例示(5)のいずれかの方法で免疫グロブリン(IgG等)と結合させる。また必要に応じてさらにこれとプロテインA(プロテインG)とを接触させることによりアフィニティー結合(プロテインA(又はプロテインG)・免疫グロブリン結合)させる方法。
【0059】
また本発明多糖における「結合」は、前記の群から選択される物質と、NAH又はその誘導体の還元末端との間に形成されていることが好ましい。
【0060】
このような方法等で前記の群から選択される物質とNAH又はその誘導体とを結合させることにより、前記の群から選択される物質がNAH又はその誘導体に結合していることを特徴とする修飾多糖(本発明多糖)を製造することができる。
【0061】
<2>本発明固相
本発明固相は、本発明多糖が固着された固相である。本発明多糖については、前記で説明した通りである。
【0062】
本発明多糖が固着される固相は、本発明多糖を固着させることができ、かつ、水、検体や反応液に不溶性である限りにおいて特に限定されない。固相の形状としては、プレート(例えばマイクロプレートのウェル等)、チューブ、ビーズ、メンブレン、ゲル、微粒子状固相担体(ゼラチン粒子、カオリン粒子、ラテックス等の合成ポリマー粒子等)等を例示することができる。なかでも、正確な定量性と使用上の簡便性の点から、マイクロプレートが望ましい。
【0063】
固相の材質としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ニトロセルロース、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリアロマー、ポリエチレン、ガラス、アガロース等が例示される。これらの中でも、ポリスチレンを材質としたプレートが好ましい。
【0064】
このような固相の表面に本発明多糖を固着させる方法としては、物理的吸着法、アフィニティー結合法、共有結合法、包括法などの一般的な方法(例えば、固定化酵素、1975年、講談社発行、第9〜75頁参照)を応用することができる。
【0065】
これらの中でも、物理的吸着法が、操作が簡便かつ頻用されていることから好ましい。
【0066】
また、前記の群から選択される物質(本発明多糖の分子に含有されている)とアフィニティーを有する物質を固相に固着させておき、これを介して本発明多糖を固相に固着させても良い。例えば本発明多糖において免疫グロブリンが結合している場合には固相に固着されたプロテインA(又はプロテインG)を介して、本発明多糖においてプロテインA(又はプロテインG)が結合している場合には固相に固着された免疫グロブリンを介して、本発明多糖においてアビジンが結合している場合には固相に固着されたビオチンを介して、本発明多糖においてビオチンが結合している場合には固相に固着されたアビジンを介して、本発明多糖において抗原物質が結合している場合には固相に固着された当該抗原物質に対する抗体を介して、本発明多糖に抗体が結合している場合には固相に固着された抗原物質(当該抗体の抗原)を介して、それぞれ本発明多糖を固相に固着させることもできる。
【0067】
本発明多糖や「前記の群から選択される物質とアフィニティーを有する物質」の固相への物理的吸着の具体的方法の一例として、例えば、本発明多糖や「前記の群から選択される物質とアフィニティーを有する物質」の緩衝液溶液(pH7〜9程度の緩衝液(例えばリン酸緩衝液、PBS、炭酸緩衝液等))を固相に接触させて0℃〜10℃程度、好ましくは0℃〜5℃程度で、6時間〜24時間程度、好ましくは10時間〜20時間程度静置する方法が例示される。「前記の群から選択される物質とアフィニティーを有する物質」を固相に接触させた場合には、その後、本発明多糖を加えて当該物質とアフィニティー結合させる。これにより、本発明多糖が固着された本発明固相を得ることができる。
【0068】
また必要に応じて、この後に固相の表面を洗浄液で洗浄してもよい。この洗浄は、固相に固着している本発明多糖が解離しない条件で行われる限りにおいて特に限定されない。
洗浄液としては緩衝液(例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、PBS等)等を用いることができる。
【0069】
また必要に応じて、この後にブロッキング物質を固相に接触させて、本発明多糖が固着していない部分を被覆しておくことが好ましい。このようなブロッキング物質としては、BSA、ゼラチン、カゼイン、スキムミルク、ApplieDuo(商品名;生化学工業株式会社製)等が例示される。これらは単独の成分で用いてもよく、2種以上の成分として用いてもよい。ブロッキングの具体的方法の一例として、例えば、ApplieDuo(商品名;生化学工業株式会社製)の溶液を固相に接触させ、0℃〜37℃程度、好ましくは10℃〜30℃程度で、30分間〜2時間程度静置する方法が例示される。必要に応じてブロッキング溶液に防腐剤等を共存させてもよい。
【0070】
また必要に応じて、この後にブロッキング物質等を除去するために前記のような洗浄液で洗浄してもよい。またこの後に、プレートを10℃〜37℃程度で乾燥させてもよい。
【0071】
<3>本発明ND検出方法
本発明ND検出方法は、下記ステップ(a)及び(b)を少なくとも含む、検体中のND活性の検出方法である。
ステップ(a):本発明固相に、検体を接触させるステップ
ステップ(b):前記固相に固着された本発明多糖における、脱N−アセチル化を検出するステップ。
【0072】
なお本出願書類において「検出」の用語は、その対象となるものを何らかのかたちで見つけ出すことを意味する。したがって、本出願書類における「検出」の用語は、その検出対象の存否(有無)を見つけ出すことのみならず、その検出の対象を定量的に見つけ出すこと(検出対象を定量的に測定すること)をも含む概念である。
【0073】
以下、ステップごとに説明する。
1.ステップ(a)
ステップ(a)は、本発明固相に、検体を接触させるステップである。本発明固相については、前記で説明した通りである。
【0074】
ここにいう「検体」は、ND活性を有する酵素が含有されているか、又は含有されている可能性があるものであればよい。また、この検体中のND活性を有する酵素は、予め単離・精製等の処理が施されている必要もない。すなわち、検体中にND活性を保持する酵素以外の酵素その他の蛋白質成分等が含有されていても、本発明ND検出方法によればND活性を特異的に検出することができる。
【0075】
また、固相と検体との接触方法は、当該固相に固着された本発明多糖の分子と、検体中に存在するND活性を有する酵素の分子とが接触する限りにおいて特に限定されない。例えば、固相に検体を添加して接触させても良く、また検体に固相を添加して接触させても良く、別体の容器に両者を同時に添加しても良い。接触の方法はこれらに限定されるものではなく、固相の形状や材質等に応じて当業者が適宜決定することができる。
【0076】
これら両者を接触させた後、固相に固着された本発明多糖の分子と検体中に存在するND活性を有する酵素の分子とを十分に反応させるためにインキュベートすることが好ましい。
【0077】
インキュベートの温度は、酵素反応が起こる温度である限りにおいて特に限定されず、その一例として室温が例示される。インキュベートの時間も、前記の両者が十分に反応する限りにおいて特に限定されないが、15〜120分間程度、より好ましくは30〜60分間程度を例示することができる。
【0078】
反応後、固相と液相を分離する。必要に応じて、固相の表面を洗浄液で洗浄することが好ましい。この洗浄は、固相に固着している本発明多糖が解離しない条件で行われる限りにおいて特に限定されない。洗浄液としては、例えば、トゥイーン(Tween)系界面活性剤等の非イオン性界面活性剤を含有する緩衝液(例えばトリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、PBS等)を例示することができる。
【0079】
本発明固相と検体とを接触させることにより、検体中に存在するND活性を有する酵素が固相に固着された本発明多糖に作用して、当該多糖の分子中(糖鎖部分)に複数個存在するGlcNAc残基が脱N−アセチル化される。そして、検体中に存在する酵素のND活性が高ければ高いほど、これに対応して、固相に固着された本発明多糖の分子中(糖鎖部分)に存在する多くのGlcNAc残基が脱N−アセチル化されることになる。
【0080】
2.ステップ(b)
ステップ(b)は、前記固相に固着された本発明多糖における、脱N−アセチル化を検出するステップである。
【0081】
検体中に存在する酵素がND活性を保持していれば、ステップ(a)において固相に固着された本発明多糖の分子中(糖鎖部分)に存在するGlcNAc残基が脱N−アセチル化される。また、検体中に存在する酵素のND活性が高ければ、それだけ多くのGlcNAc残基が脱N−アセチル化されることになる。ステップ(b)では、このステップ(a)を経た固相に固着された本発明多糖における脱N−アセチル化を検出することによって、検体中に存在するND活性を検出せんとするものである。
【0082】
固相に固着された本発明多糖における脱N−アセチル化の検出手法も特に限定されず、例えば物理化学的方法(例えばクロマトグラフィー法など)、化学的方法(例えばアミノ基検出法)、生物学的方法(例えば、免疫測定法などの生物学的なアフィニティーを利用した方法)等によって行うことができる。なかでも、簡便性や迅速性等の観点から、生物学的なアフィニティーを利用した方法によって行うことが好ましい。
【0083】
生物学的なアフィニティーによって脱N−アセチル化を検出する場合には、本発明固相に「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」を接触させることにより行うことができる。このような蛋白質は、抗体であることが好ましい。
【0084】
したがってかかる検出は、免疫測定法によって行うことが好ましい。免疫測定法としては、ELISAやRIA等が例示されるが、いずれの方法も採用することができる。
【0085】
ここで用いる「抗体」の概念には、抗体自体はもちろん、その抗原結合部位(Fab)を保持する抗体のフラグメントも包含される。またここにいう「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよいが、特異性、均質性、再現性、大量かつ永続的な生産性等の観点からすると、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0086】
ここでは、例えばモノクローナル抗体JM403を用いることができる。モノクローナル抗体JM403は、Kidney,Int.,41,p115(1992)に記載の方法により製造することができる。また、モノクローナル抗体JM403は、生化学工業株式会社から販売されており、これを使用することもできる。
【0087】
ここにおける「接触」の方法は、ステップ(a)における説明と同様である。
【0088】
また、両者を接触させた後、生物学的なアフィニティーによる結合を十分にさせるためにインキュベートすることが好ましい。インキュベートの温度は、生物学的なアフィニティーによる結合が起こる温度である限りにおいて特に限定されず、2℃〜37℃程度、好ましくは4℃〜25℃程度が例示される。インキュベートの時間は、前記両者が十分に反応する限りにおいて特に限定されないが、0.5〜2時間程度、好ましくは1〜1.5時間程度を例示することができる。
【0089】
反応後、固相と液相を分離する。必要に応じて、固相の表面を洗浄液で洗浄することが好ましい。この洗浄の要領は、ステップ(a)における酵素反応後の洗浄の要領と同様である。
【0090】
「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」は、検出を容易とするために標識物質で標識されているか又は標識されるものであってもよい。標識に用いることができる標識物質は、通常の蛋白質の標識に使用可能なものであれば特に限定されないが、例えば酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、グルコースオキシダーゼなど)、放射性同位元素(125I、131I、Hなど)、蛍光色素(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン(DTAF)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リスアミンローダミンB(Lissamine Rhodamine B)、テキサスレッド(Texas Red)、フィコエリスリン(Phycoerythrin;PE)、ウンベリフェロン、ユーロピウム、フィコシアニン、トリカラー、シアニンなど)、化学発光物質(ルミノールなど)、ハプテン(ジニトロフルオロベンゼン、アデノシン一リン酸(AMP)、2,4−ジニトロアニリンなど)、特異的結合対(ビオチンとアビジン類(ストレプトアビジンなど)、レクチンと糖鎖、アゴニストとアゴニストの受容体、HPとアンチトロンビンIII(ATIII)のいずれか一方の物質等が例示される。
【0091】
また、「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」を、固相に固着された本発明多糖におけるGlcN残基に結合させた後、さらに当該蛋白質に結合する第2の蛋白質(二次抗体等)を用いて検出してもよい。この第2の蛋白質(抗体等)は、前記のような標識物質で予め標識されていることが好ましい。
【0092】
このような「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」や、これに結合する第2の蛋白質(二次抗体等)に結合している標識物質を検出することによって、固相に固着された本発明多糖におけるGlcNAc残基の脱N−アセチル化を検出することができる。
【0093】
標識物質を検出する方法は、標識物質の種類に応じた公知の検出手段を適宜選択することができる。例えば、標識物質として特異的結合対の一方の物質(例えばビオチン)を使用した場合には、これに特異的に結合する他方の物質(例えばストレプトアビジン)を結合させた酵素(例えばペルオキシダーゼ等)を添加して、特異的結合対を形成せしめる。
次いで、これに該酵素の基質(例えば過酸化水素(酵素がペルオキシダーゼの場合))及び発色物質(例えばTMBや、ジアミノベンチジン等)を添加して、酵素反応による生成物の発色の度合いを吸光度で測定することによって、標識物質を検出することができる。
【0094】
また、例えば標識物質として放射性同位元素、蛍光色素又は化学発光物質を使用した場合には、放射能のカウント、蛍光強度、蛍光偏光、発光強度等を測定する方法などが例示される。
【0095】
このような標識物質の検出を介して、固相に固着された本発明多糖におけるGlcNAc残基の脱N−アセチル化を検出することができ、これによって検体中のND活性を検出することができる。標識物質が多く検出されたとすれば、それだけ脱N−アセチル化の程度が高いこと、すなわち検体中のND活性が高いこと意味することになる。
【0096】
ND活性の定性的な検出(ND活性の存否(有無)の検出)を望む場合には、標識物質の検出の有無をそのまま検出結果とすることができる。また、ND活性の定量的な検出(ND活性の程度や、ND活性を有する酵素の濃度の測定など)を望む場合には、吸光度、放射能のカウント、蛍光強度、発光強度などをそのままND活性の量の指標とすることができる。また、ND活性を有する既知濃度の酵素の標準溶液を用いて予め検量線又は関係式を作成しておき、これを用いて検体中のND活性を有する酵素の濃度を求めることもできる。
【0097】
<4>本発明ND検出キット
本発明ND検出キットは、下記の構成成分(A)及び(B)を少なくとも含む、検体中のND活性の検出キットである。
(A)本発明多糖
(B)NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質
【0098】
本発明多糖については、前記で説明した通りである。本発明多糖は、使用時に固相に固着させるものであってもよく、予め固相に固着されているものであってもよいが、予め固相に固着されているものが好ましい。
【0099】
また、「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」ついても、前記で説明した通りである。したがって、このような蛋白質として抗体を例示することができ、このような抗体としてモノクローナル抗体JM403を例示することができる。
【0100】
本発明ND検出キットは、本発明ND検出方法に従って用いることができる。本発明ND検出キットは、前記の構成成分を少なくとも含む限りにおいて、さらに検量線や関係式作成の標準となる既知濃度のND活性を有する酵素の標準品や、標識物質の検出試薬等を構成として加えることができる。また、これらの構成の他に、前記のブロッキング物質、前記の洗浄液、酵素反応停止液等が含まれていてもよい。さらに本発明ND検出キットには、検出バッチ同士の実施レベルを一定水準に保つための陽性コントロール(QCコントロール)を含有させることもできる。
【0101】
これらの構成成分は、例えばそれぞれ別体の容器に収容しておき、使用時に本発明ND検出方法に従って使えるキットとして保存しておくことができる。
【0102】
<5>本発明ST検出方法
本発明ST検出方法は、下記ステップ(c)及び(d)を少なくとも含む、検体中のST活性の検出方法である。
ステップ(c):本発明固相に、検体と硫酸基供与体とを接触させるステップ。
ステップ(d):前記固相に固着された本発明多糖における、N−硫酸化を検出するステップ。
【0103】
本発明ST検出方法の説明については、前記の本発明ND検出方法における「ND」を「ST」に、「脱N−アセチル化」を「N−硫酸化」に、「GlcNAc残基」を「GlcN残基」に、「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する蛋白質」を「NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質」に、「モノクローナル抗体JM403」を「モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1」にそれぞれ読み替えたものと同じである。なかでも、モノクローナル抗体F58−10E4を好ましく用いることができる。モノクローナル抗体F58−10E4は、J.Cell Biol.,119,p961(1992)に記載の方法で製造することができる。また、モノクローナル抗体F58−10E4及びモノクローナル抗体HepSS−1は、いずれも生化学工業株式会社から販売されており、これを使用することもできる。
【0104】
なお、本発明ST検出方法においては「硫酸基供与体」を用いる必要がある。ここで用いることができる硫酸基供与体は、硫酸基受容体となる本発明多糖に対して硫酸基を供与する能力を有する物質である限りにおいて特に限定されないが、PAPSが好ましい。
【0105】
<6>本発明ST検出キット
本発明ST検出キットは、下記の構成成分(A)及び(C)を少なくとも含む、検体中のST活性の検出キットである。
(A)本発明多糖
(C)NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質
【0106】
本発明ST検出キットは、本発明ST検出方法に従って用いることができる。
【0107】
本発明ST検出キットの説明については、前記の本発明ND検出キットにおける「ND」を「ST」に、「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基に結合する蛋白質」を「NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質」に、「モノクローナル抗体JM403」を「モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1」にそれぞれ読み替えたものと同じである。なかでも、モノクローナル抗体F58−10E4を好ましく用いることができる。また、本発明ST検出キットは、さらに硫酸基受容体を構成成分として含んでいてもよい。硫酸基受容体の説明は、前記の本発明ST検出方法における説明と同じである。
【0108】
<7>本発明NDST検出方法
本発明NDST検出方法は、本発明ND検出方法によって検体中のND活性を検出し、かつ、本発明ST検出方法によって検体中のST活性を検出することを特徴とする、検体中のNDST活性の検出方法である。
【0109】
このように、本発明ND検出方法と本発明ST検出方法を組み合わせて用いることにより、ND活性とST活性を併せ持つNDSTの活性を検出することができる。本発明NDST検出方法は、少なくとも本発明ND検出方法と本発明ST検出方法とを実施するステップが含まれていればよく、他のステップをさらに含んでいてもよい。また本発明NDST検出方法における、本発明ND検出方法と本発明ST検出方法の実施の順番も特に限定されない。すなわち、前者を先に実施しても良く、後者を先に実施してもよく、両者を同時に実施してもよい。
【0110】
そして、本発明ND検出方法によって検体中にND活性が検出され、かつ、本発明ST検出方法によって検体中にST活性が検出された場合には、検体中にNDST活性が存在すると判定することができる。またこれらの活性のうち一方のみが検出された場合には、検体中にND活性は存在するがST活性は存在しない、又はST活性は存在するがND活性は存在しない、と判定することができる。
【0111】
また、ND活性とST活性を定量的に検出することによって、検体中に存在するNDST活性の特性(例えば、当該NDSTはND活性に比してST活性が高いとか、当該NDSTはND活性とST活性が同等であるとか)をも検出することができる。
【0112】
<8>本発明NDST検出キット
本発明NDST検出キットは、下記の構成成分(A)、(B)及び(C)を少なくとも含む、検体中のNDST活性の検出キットである。
(A)本発明多糖
(B)NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質
(C)NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質
【0113】
本発明多糖については、前記で説明した通りである。本発明多糖は、使用時に固相に固着させるものであってもよく、予め固相に固着されているものであってもよいが、予め固相に固着されているものが好ましい。
【0114】
また、「NAH又はその誘導体におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合する蛋白質」についても、前記で説明した通りである。したがって、このような蛋白質として抗体を例示することができ、このような抗体としてモノクローナル抗体JM403を例示することができる。
【0115】
また、「NAH又はその誘導体におけるN−硫酸化されているGlcN残基に結合する蛋白質」についても、前記で説明した通りである。したがって、このような蛋白質として抗体を例示することができ、このような抗体としてモノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1を例示することができる。なかでも、モノクローナル抗体F58−10E4を好ましく用いることができる。
【0116】
また、本発明ST検出キットは、さらに硫酸基受容体を構成成分として含んでいてもよい。硫酸基受容体の説明は、前記の本発明ST検出方法における説明と同じである。
【0117】
本発明NDST検出キットは、本発明NDST検出方法に従って用いることができる。
【0118】
本発明NDST検出キットは、前記の構成成分を少なくとも含む限りにおいて、さらに検量線や関係式作成の標準となる既知濃度のNDST活性を有する酵素の標準品や、標識物質の検出試薬等を構成として加えることができる。また、これらの構成の他に、前記のブロッキング物質、前記の洗浄液、酵素反応停止液等が含まれていてもよい。さらに本発明ND検出キットには、検出バッチ同士の実施レベルを一定水準に保つための陽性コントロール(QCコントロール)を含有させることもできる。
【0119】
これらの構成成分は、例えばそれぞれ別体の容器に収容しておき、使用時に本発明NDST検出方法に従って使えるキットとして保存しておくことができる。
【0120】
<9>本発明スクリーニング方法本発明スクリーニング方法は、下記ステップ(e)〜(g)を少なくとも含む、下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる物質のスクリーニング方法である。
ステップ(e):下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる可能性のある試験物質を、当該酵素と共存させるステップ。
ステップ(f):ステップ(e)により得られる「前記試験物質と前記酵素との共存物」を検体とし、本発明ND検出方法、本発明ST検出方法及び本発明NDST検出方法のいずれかの方法によって、前記酵素の活性を検出するステップ。
ステップ(g):ステップ(f)により検出された酵素の活性と、ステップ(e)で用いた酵素を検体としてステップ(f)と同一の方法によって検出される酵素の活性とを比較して、下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる試験物質を選択するステップ。
(酵素群)ND、ST、NDST
【0121】
本発明スクリーニング方法は、本発明ND検出方法、本発明ST検出方法又は本発明NDST検出方法を、ND、ST又はNDSTの活性を変化させる物質のスクリーニング方法に応用したものである。
【0122】
ステップ(e)は、これらの酵素の活性を変化させる可能性がある試験物質を、当該酵素と共存させるステップである。この「共存」の様式は、当該可能性がある試験物質の分子と、当該酵素の分子とが接触する状態にある限りにおいて特に限定されない。試験物質をどの酵素と共存させるかは、スクリーニングの目的に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、ND活性を変化させる物質のスクリーニングを行う場合には当該活性を変化させる可能性がある物質をNDと共存させればよく、ST活性を変化させる物質のスクリーニングを行う場合には当該活性を変化させる可能性がある物質をSTと共存させればよく、NDST活性を変化させる物質のスクリーニングを行う場合には当該活性を変化させる可能性がある物質をNDSTと共存させればよい。
【0123】
ここで、試験物質と共存させるND、ST又はNDSTは、いずれも、例えばアイカワ、J(Aikawa,J.)ら、2001年、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第276巻、第8号、p.5876−5882に記載の方法で製造することができる。試験物質と共存させるND、ST又はNDSTの種類や由来等は、目的に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、ヒト由来のNDSTを用いる場合には、その目的に応じてNDST1、NDST2、NDST3、NDST4等の中から用いる酵素を適宜選択することができる。またこれらの酵素も、公知の方法(例えば、Genomics,26(2),p239−244(1995)、Biochem.J.,332(pt2),p303−307(1998)、J.Biol.Chem.,274(5),p2690−2695(1999)、J.Biol.Chem.,276(8),p5876−5882(2001)等参照)で製造することができる。また置換、欠失、挿入、転位等の変異が導入された酵素や、他のペプチド等と融合させた酵素等を用いてもよい。
【0124】
なお、酵素としてST又はNDSTを選択する場合には、さらに硫酸基受容体も共存させることになる。硫酸基受容体の説明は、前記の本発明ST検出方法における説明と同じである。
【0125】
ステップ(f)は、ステップ(e)により得られる「前記試験物質と前記酵素との共存物」を検体として、本発明ND検出方法、本発明ST検出方法及び本発明NDST検出方法のいずれかの方法によって、前記酵素の活性を検出するステップである。どの検出方法を採用するかは、スクリーニングの目的に応じて当業者が適宜選択することができる。例えば、ND活性を変化させる物質のスクリーニングを行う場合には本発明ND検出方法を、ST活性を変化させる物質のスクリーニングを行う場合には本発明ST検出方法を、NDST活性を変化させる物質のスクリーニングを行う場合には本発明NDST方法をそれぞれ採用すればよい。これにより、前記試験物質の存在下における前記酵素の活性を検出することができる。
【0126】
ステップ(g)は、ステップ(f)により検出された酵素の活性(試験物質の共存下における酵素の活性)と、ステップ(e)で用いた酵素を検体としてステップ(f)と同一の方法によって検出される酵素の活性(試験物質の非共存下における酵素の活性)とを比較して、前記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる試験物質を選択するステップである。「ステップ(f)により検出された酵素の活性(試験物質の共存下における酵素の活性)」と「ステップ(e)で用いた酵素を検体としてステップ(f)と同一の方法によって検出される酵素の活性(試験物質の非共存下における酵素の活性)」との間に差が見出された場合には、当該試験物質は前記酵素の活性を変化させる物質であるとして選択することができる。
【0127】
例えば、試験物質の共存下における酵素の活性が、試験物質の非共存下における酵素の活性よりも高い場合には、当該物質は酵素活性の促進物質であるとして選択することができる。また試験物質の共存下における酵素の活性が、試験物質の非共存下における酵素の活性よりも低い場合には、当該物質は酵素活性の阻害物質であるとして選択することができる。両者間に差がない場合には、当該物質は酵素活性に対して影響を及ぼさない物質として同定することができる。
【0128】
また、試験物質の共存下における酵素の活性と、試験物質の非共存下における酵素の活性との間に差が見いだされた場合には、その差の程度を定量的に調べることにより、酵素活性の促進物質又は阻害物質としての能力の指標としてもよい。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例により具体的に詳説するが、本発明はこれら何ら限定されるものではない。
なお本実施例において使用したNDSTは、以下の通り調製した。
【0130】
Biochem.J.,332(pt2),p303−307(1998)に記載の方法でヒト由来のNDST2をクローニングした。クローニングされたNDST2をコードするDNAは配列番号1に記載の塩基配列を有し、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する蛋白質(NDST2)をコードしている。
【0131】
この塩基配列からN末端側の膜貫通領域をコードする部分を除去し、配列番号2におけるアミノ酸番号79〜883で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質(膜貫通領域が除去されたNDST2)を発現させるために、以下の操作を行った。
【0132】
(1)25μlの反応系で、バキュロウイルスのgp67シグナルペプチドをコードする配列を保持するベクターDNA、pAcSecG2T(Pharmingen社、U.S.A.)250ngを鋳型にして5’−GATCGGATCCAACTCCTAAAAAACCGCCACCATGCTGCTAGTAAATCAG−3’(配列番号3)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−CACGGGTTCAGTTCGAGCTGTCTCCGCAAAGGCAGAATGCGCCGC−3’(配列番号4)の配列を有する短鎖DNA5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsを用いたPCRを、20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH)SO、2mM MgSO、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTPの存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃1分を10サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ロブスターL21配列(AACTCCTAAAAAACCGCCACC)(配列番号5)とgp67シグナルペプチド(39アミノ酸)をコードするDNAの特異的増幅を行った。
【0133】
(2)25μlの反応系で、ベクター中にヒトNDST2を保持するプラスミドDNA
pCRhNDST2#5 250ngを鋳型にして5’−GAGACAGCTCGAACTGAACCCGTGG−3’(配列番号6)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−CTGGTATGGCGGCCGCAATTGTCAGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTC−3’(配列番号7)の配列を有する短鎖DNA 5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsを用いたPCRを、20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl,6mM(NH)SO、2mM MgSO、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTPの存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃5分を20サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ヒトNDST2の805アミノ酸(配列番号2におけるアミノ酸番号79〜883)をコードするDNAの特異的増幅を行った。
【0134】
(3)25μlの反応系で、上記(1)で得られた反応液2μlと上記(2)で得られた反応液0.5μl中のDNAを鋳型にして、5’−GATCGGATCCAACTCCTAAAAAACCGCCAC−3’(配列番号8)の配列を有する短鎖DNA5pmolと5’−CTGGTATGGCGGCCGCAATTGTCAGCCCAGACTGGAATGCTGCAGTTC−3’(配列番号7)の配列を有する短鎖DNA5pmol、Pyrobest(Takara社、日本)1.25unitsを用いたPCRを20mM Tris−HCl(pH8.3)、10mM KCl、6mM(NH)SO、2mM MgSO、0.1%Triton X−100、0.001%BSA、200μM dNTP存在下、サーマルサイクラーを用いて、95℃2分を1サイクル、95℃30秒−52.5℃30秒−72℃6分を30サイクル、72℃10分を1サイクル行わせ、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド(39アミノ酸)とヒトNDST2の805アミノ酸(配列番号2におけるアミノ酸番号79〜883)をコードする融合DNAの特異的増幅を行った。
【0135】
(4)前記(3)で得られた融合DNAを含む反応液10μl及びベクターDNA、pFastBac−1(Invitrogen社、U.S.A.)1μgに、制限酵素BamHIとNotIを10unitsずつ加え、37℃で2時間反応させた。反応産物をTAEアガロース電気泳動に付し、目的の大きさのDNA断片をGeneclean II
kitを用いて精製し、TE緩衝液10μl中に回収した。得られたDNA1μlずつを、DNA Ligation Kit ver.2(Takara社、日本)を用いた4℃、20時間、10μlの反応系で、BamHIとNotIで同時に消化したpFastBac−1に、BamHIとNotIで同時に消化したロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド(39アミノ酸)及びヒトNDST2 805アミノ酸(配列番号2におけるアミノ酸番号79〜883)をコードする融合DNAをライゲーションした。反応液2μlを用いて、常法により大腸菌DH5αコンピテントセル(Invitrogen社、U.S.A.)40μlを形質転換し、50μg/mlアンピシリンを含む1.5%寒天含有LB培地上で、形質転換体のコロニーを選択した。得られた大腸菌のコロニーから、大腸菌が保持するプラスミドDNAを、10mM Tris−HCl(pH8.5)100μlに回収した。ベクターDNAに挿入されたDNA断片の塩基配列の解析を、常法によってヒトNDST2に特異的な短鎖DNAを用いて行った。
【0136】
その結果、ロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド(39アミノ酸)及びヒトNDST2 805アミノ酸(配列番号2におけるアミノ酸番号79〜883)をコードする融合DNAをBamHI及びNotIで消化した断片2577bpと、BamHI及びNotIで消化したpFastBac−1とのライゲーション産物で形質転換した大腸菌128クローンより、目的のDNA断片を保持すると考えられる2クローン(pFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#5及びpFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#123)を同定した。DNAの塩基配列解析を行い、前記2クローンが予想されるDNAの塩基配列と完全に一致することを確認した。
【0137】
(5)前記(4)で得られたDNAを大腸菌DH10BAC(Invitrogen社、U.S.A.)に導入し、Invitrogen社のプロトコールに従い、50μg/mlカナマイシン、7μg/mlゲンタマイシン、10μg/mlテトラサイクリンを含む1.5%寒天含有LB培地上で、形質転換体のコロニーを選択した。
【0138】
得られた大腸菌のコロニーを50μg/mlカナマイシンを含有するTerific−Broth培地(Beckton Dickinson社、U.S.A.)1.5mlに接種し、37℃20時間の振盪培養を行った。得られた培養液を容量1.5mlのエッペンドルフチューブに移した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて8000回転で、2分間遠心して大腸菌菌体を沈澱として回収した。この菌体を10mM EDTA、100μg/ml RNaseAを含有する50mM Tris−HCl(pH8.0)150μlに懸濁したのち、1%(w/v)SDSを含む200mM NaOH 150μlを加え、緩やかに混和し室温で5分間静置した。次に、3.0M酢酸カリウム(pH5.5)150μlを加え、良く混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、10分間遠心して上清画分を回収した。上清450μlにあらかじめTE緩衝液で飽和されているフェノール(Invitrogen社、U.S.A.)450μlを加えて、ボルテックスミキサーにより激しく混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて、15000回転で、5分間遠心して上層画分を回収した。上層画分400μlにエタノール1mlを加えて混和した後、室温で10分間静置した。その後、冷却遠心機を用いて、4℃にて、15000回転で、5分間遠心して上清を除去した後、沈澱に70%(v/v)エタノール1mlを加え混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、5分間遠心して上清を除去した。残った沈澱に、10mM EDTA、100μg/ml RNaseAを含む50mM Tris−HCl(pH8.0)150μlを加え、懸濁したのち、37℃で20分間反応させた。次に、あらかじめTE緩衝液で飽和されているフェノール(Invitrogen社、U.S.A.)100μlを加えて、ボルテックスミキサーにより激しく混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、5分間遠心して上層画分を回収した。上層画分100μlにエタノール250μlと3M酢酸ナトリウム10μlを加え混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて、15000回転で、5分間遠心して上清を除去した。次に、沈澱に70%(v/v)エタノール1mlを加え混和した後、冷却遠心機を用いて、4℃にて15000回転で、5分間遠心して上清を除去した。残った沈澱に、TE緩衝液100μlを加え、懸濁した。
【0139】
その結果、前記(4)で得られたDNA pFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#123を大腸菌DH10BACに導入し、薬剤耐性及びPCR法を指標に目的のクローン(pFB1−GP67hNDST2SOL(79E)#123−4)を得た。
【0140】
(6)まず、ヨトウガSf9細胞100万個をSF−900II無血清培地(Invitrogen社、U.S.A.)2mlに懸濁した後、6ウェルのプレートに移し、28℃で1時間静置し、細胞をプレートに接着させた。次に、前記(5)で得られたDNA(バキュロウイルスゲノムDNAに組み込まれたロブスターL21配列、gp67シグナルペプチド及びヒトNDST2 805アミノ酸)10μgをSf−900II無血清培地200μlに希釈したものと、cellfectin(Invitrogen社、U.S.A.)6μlをSf−900II無血清培地200μlに希釈したものとを混和し、室温で30分間静置した。あらかじめプレートに接着させたSf9細胞をSf−900II無血清培地2mlで洗浄した後、DNAとcellfectinの混和液200μlにSf−900II無血清培地800μlを混ぜたものを加えた。28℃で5時間静置した後、培地を吸引除去して、新しいSf−900II無血清培地2mlを加えて、さらに28℃で3日間培養したのち、培養上清を回収し、バキュロウイルスのストック液とした。
【0141】
(7)1000万個のSf21細胞をSF−900II(血清含有培地)10mlに懸濁した後、T−75フラスコにまき、1時間静置した。培地2mlを残して吸引除去し、前記(6)で得られたバキュロウイルスのストック液1mlを添加し1時間ゆるやかに震盪させることによってウイルスストック液をSf21(血清含有培地)に感染させた。その後、SF−900II(血清含有培地)8mlを加え、28℃で3日間培養した。
【0142】
(8)回収した培地を遠心して、細胞を除いた画分を培養上清とした。培養上清をアミコンUltra−15 30000MWCO(Millipore社、U.S.A.)にかけ、冷却遠心機を用いた遠心により分子量3万以上の画分を回収し、濃縮培養上清とした。
【0143】
これによって得られたNDST2(配列番号2におけるアミノ酸番号79〜883で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質(膜貫通領域が除去されたNDST2))を含有する溶液を、以下「NDST酵素液」という。
【0144】
(実施例1)本発明多糖の製造
(1)NAHの製造
NAHは、大腸菌K5を用いて特開2004−18840号に記載されている方法に従って製造した。製造されたNAHの特徴を以下に示す。
・ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量(Mw):44,710・ゲルろ過クロマトグラフィー法により測定した数平均分子量(Mn):36,714
・分子量分散度(Mw/Mn):1.212
・臭化エチジウム(EtBr)比色定量法により測定した核酸含量:0.09%
・ローリー法(J.Biol.Chem.193,265(1951))により測定した蛋白質含量:2.38%2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(2,4,6−trinitrobenzene sulfonic acid;2,4,6−TNBS)法(Biochemica et Biophysica Acta.,141,358(1967))によって測定した遊離アミンのモル数:0.026μM/mg
【0145】
ここで、ゲルろ過クロマトグラフィーは、Arai,M.らの方法(Biochem.Biophys.Acta,1117,60−70,1992)に従って行った。分子量が既知のコンドロイチン硫酸ナトリウム(重量平均分子量39,100、18,000、8,050;いずれも生化学工業株式会社製)およびヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量104,000;生化学工業株式会社製)を標準品として、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲルろ過クロマトグラフィーでのそれらの溶出時間をデータ解析ソフトウェア(GPC−8020 東ソー株式会社)で解析することによって得られる式に、試料の溶出時間を当てはめることにより重量平均分子量及び数平均分子量を決定した。カラムは、TSK gel G4000PWXL、G3000PWXL及びG2500PWXL(各φ7.8×300mm、東ソー株式会社)を連結したものを用いた。溶媒として0.2mol/L塩化ナトリウム溶液を用い、流速は0.6ml/分とし、検出器は示差屈折率検出器(RI−8020、東ソー株式会社)を用いた。
【0146】
(2)蛋白質(BSA)がNAHの還元末端に共有結合(SS結合)した本発明多糖の製造
(2−1)チオプロピオニルNAH(以下、「SH−NAH」という。)の調製
実施例1で調製したNAHを50mg秤量し、2mlの2M塩化アンモニウム水溶液に溶解した。この溶液に25mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、70℃で2日間、還元アミノ化反応を行った。この反応後の溶液に、13mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加して、さらに2日間同一の条件で反応させた。氷浴中で冷却した後、400μlの酢酸を添加することによって反応を完全に停止させた。
【0147】
生成した還元アミノ化NAH(以下、「RA−NAH」という。)を2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法で回収した。回収した沈殿をエタノールで洗浄した後、凍結乾燥した。これにより、39.5mgのRA−NAH凍結乾燥品を得た。
【0148】
得られたRA−NAHを10.4mg秤量し、2mlの0.1M塩化ナトリウム−0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解した。この溶液に80μlの5mM SPDP(SIGMA社)(エタノール溶液)を添加して、室温で30分間、PDP化反応を行った。
その後、過剰のSPDPを除くために、この反応液を蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥した。これにより、9.5mgの2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化NAH(以下、「PDP−NAH」という。)凍結乾燥品を得た。
【0149】
得られたPDP−NAHを9.5mg秤量し、1mlの0.1M塩化ナトリウム−0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に溶解した。この溶液に終濃度が25mMとなるようにジチオスレイトールを添加して、室温で60分間、還元反応を行った。
【0150】
生成したSH−NAHを2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法で回収した。回収した沈殿をエタノール洗浄した後、凍結乾燥した。8.3mgのSH−NAH凍結乾燥物を得た。
【0151】
(2−2)2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化BSA(以下、「PDP−BSA」という)の調製
BSA(100mg、SIGMA社)を終濃度2.5mg/mlになるように0.1M塩化ナトリウム−0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解した。この溶液に終濃度が238μMになるように5mM SPDP(エタノール溶液)を添加した後、室温で30分間、PDP化反応を行った。過剰のSPDPを除くために、この反応液を蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥した。これにより、104.2mgの2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化BSA(以下、「PDP−BSA」という。)凍結乾燥品を得た。
【0152】
(2−3)共有結合(SS結合)の形成(本発明多糖の調製)
前記において調製したSH−NAH(1.5mg)とPDP−BSA(0.75mg)とを、1mlの0.1M塩化ナトリウム−0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、室温で2時間、コンジュゲーション反応を行った。反応により生成するピリジル−2−チオンを除くため、反応後の溶液を蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥した。これにより、蛋白質(BSA)がNAHの還元末端に共有結合(SS結合)している本発明多糖(以下、「NAH−SS−BSA」という)を1.9mg得た。
【0153】
(3)ビオチンがNAHの還元末端に結合した本発明多糖の製造
前記で得られたRA−NAH(10mg)を0.5mlの0.1M炭酸水素ナトリウム溶液に溶解し、次いで3mgのsulfo−NHS−LC−ビオチン(ピアス社製)を添加して、4℃で一晩インキュベートした。その後蒸留水に対して一晩透析した後、透析内液を凍結乾燥して、ビオチンがNAHの還元末端に結合している本発明多糖(以下、「NAH−ビオチン」という)を得た(8mg)。
【0154】
(実施例2)本発明固相(NAH−SS−BSAが固着された固相)の製造
実施例1で製造したNAH−SS−BSAを、PBS(−)で1μg/mLに希釈した。この希釈後の溶液を、マキシソープ(登録商標)96ウェルマイクロプレート(NALGE NUNC社製)の各ウェルに100μLずつ添加して、4℃で14〜18時間静置することによってウェルの表面上に均一にコーティングした。
【0155】
このプレートをPBS(−)で2回洗浄した後、ブロッキング物質としてApplieDuo(商品名;生化学工業株式会社製)を5倍希釈した溶液を、また防腐剤として0.05%プロクリン(登録商標)300(SUPELCO社製)を含有するリン酸緩衝液(上記PBS(−)のうち、塩化ナトリウム、塩化カリウムを含有しないもの。pH7.2〜7.5;以下「PB」という。)をそれぞれ添加し、常温で2時間静置した。
【0156】
静置後、ブロッキング物質を十分に除去し、37℃で2時間乾燥させることによって、NAH−SS−BSAがウェルに固着されたプレートを得た。プレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入して、冷蔵保存した。
【0157】
(実施例3)蛋白質(BSA)が、NAHのカルボキシル基に共有結合(アミド結合)している本発明多糖の製造
実施例1で調製したNAHを含有する溶液、及びBSA(Serologicals Proteins社製)を含有する溶液を、それぞれ、濃度10mg/mlとなるように0.1M MES緩衝液(pH5.5)を溶媒として調製した。また、EDC(PIERCE社製)の100mg/ml溶液を、0.1M MES緩衝液(pH5.5)を溶媒として調製した。
【0158】
前記のNAH溶液(300μl)及びBSA溶液(150μl)を混合した。混合液に4μlのEDC溶液を添加した後、室温で20時間、コンジュゲーション反応を行った。反応後の溶液を蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥した。これにより、蛋白質(BSA)が、NAHのヘキスロン酸残基に保持されているカルボキシル基に共有結合(アミド結合)している本発明多糖(以下、「NAH−COOH−BSA」という)凍結乾燥物を3.5mg得た。
【0159】
(実施例4)本発明固相(NAH−COOH−BSAが固着された固相)の製造
実施例2における「NAH−SS−BSA」の代わりに「NAH−COOH−BSA」を用いて、実施例2と同様にNAH−COOH−BSAがウェルに固着されたプレートを得た。プレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入して、冷蔵保存した。
【0160】
(実施例5)ND活性の測定
実施例2および4で調製したプレートを、0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ICI社の商標Tween20に相当する製品;和光純薬工業株式会社製)を含有するPBS(−)(以下、「洗浄液」という)300μLで3回洗浄した。その後、0.05M MES、10mM MnCl及び1% Triton X−100を含有する溶液(以下、「酵素反応液1」という)(pH6.5)を用いて、NDST酵素液を10倍から5120倍に倍々で希釈した溶液を各ウェルに50μLずつ添加し、37℃で60分間静置して酵素反応させた。
【0161】
酵素反応終了後、ウェルを洗浄液で3回洗浄した。その後、ApplieDuo(商品名;生化学工業株式会社製)を20倍希釈した溶液及び0.05%プロクリン300とを含有するPBS(−)(以下、「反応液」という)で1μg/mLに調製したモノクローナル抗体JM403(生化学工業株式会社)の溶液を、各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温(15〜25℃)で60分間静置して抗原抗体反応させた。
反応液のみを含有するウェルをブランクとした。
【0162】
反応後、ウェルを洗浄液で3回洗浄し、反応液で20000倍に希釈したHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体(JACKSON社製)の溶液を各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。
【0163】
反応後、このプレートを洗浄液で3回洗浄し、ペルオキシダーゼの基質としてTMB溶液(BIOFX社製)を各ウェルに100μLずつ添加し、常温で30分間反応させ、発色させた。その後、反応停止液(BIOFX社製)を各ウェルに100μLずつ添加して反応を停止させた後、波長450nm(対照波長630nm)におけるTMB分解物の吸光度をウェルリーダーSK603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。
【0164】
モノクローナル抗体JM403は、NAH分子におけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)部分を認識する。ND活性が高ければ、その分、固相化された本発明多糖における脱N−アセチル化部位が増加することから、この脱N−アセチル化された部分をモノクローナル抗体JM403で検知することにより、脱N−アセチル化の程度(ND活性)を検知することができる。したがって本実施例では、モノクローナル抗体JM403の反応性をND活性として表すこととした。
【0165】
このND活性は、測定された吸光度から、ブランクにおける吸光度を差し引いた値として算出した。NAH−SS−BSAがウェルに固着されたプレートを用いた結果を図1に、NAH−COOH−BSAがウェルに固着されたプレートを用いた結果を図2にそれぞれ示す。
【0166】
図1及び図2から、いずれもNDSTの用量依存的な(NDST酵素液の希釈率に反比例した)ND活性が観察された。また、NAHの還元末端にBSAを結合したNAH−SS−BSAを固相化したプレートでは1280倍希釈した酵素液でもND活性を確認することができ(図1)、NAH−COOH−BSAを固相化したプレート(図2、320倍希釈率でND活性を確認)に比して、ND活性を高感度に測定できることが示された。
【0167】
(実施例6)ND活性の反応時間の依存性
実施例2で調製したプレート(NAH−SS−BSA固相化プレート)を300μLの洗浄液で3回洗浄した後、酵素反応液1を用いて160倍に希釈したNDST酵素液を各ウェルに50μLずつ添加した。その後37℃で0、10、20、30、40又は60分間静置して酵素反応させた。
【0168】
反応終了後、ウェルを洗浄液で3回洗浄し、反応液で1μg/mLに調製したモノクローナル抗体JM403(生化学工業株式会社)の溶液を各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温(15〜25℃)で60分間静置して抗原抗体反応させた。
反応液のみを含有するウェルをブランクとした。
【0169】
なお、酵素反応液1におけるpHを8.0に調製したもの、又は、NDST酵素液に代えて予め1分間煮沸したNDST酵素液を用いたものについても同様に実験した。
【0170】
以後は、実施例5と同じ方法でHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体を反応させ、次いでTMB溶液で発色させ、次いで吸光度を測定して、ND活性を算出した。
結果を図3に示す。なお図3中の黒菱形印は酵素反応液1としてpH6.5のものを用いた実験、黒正方形印は酵素反応液1としてpH8.0のものを用いた実験、白三角印は予め1分間煮沸したNDST酵素液を用いた実験のデータをそれぞれ示す。
【0171】
図3から、pH6.5及びpH8.0の酵素反応液1を用いた場合、いずれも時間依存的にND活性が認められた。またpH6.5の酵素反応液1は、pH8.0の酵素反応液1を用いた場合よりもさらに反応性が高かった。なお、1分間煮沸したNDST酵素液ではND活性が失活することが確認された。このことから、ND活性を測定する際の酵素反応時の溶液のpHは6〜7とすることが好ましいことが示された。
【0172】
(実施例7)ST活性の測定
実施例2で調製したプレート(NAH−SS−BSA固相化プレート)を300μLの洗浄液で3回洗浄した。
【0173】
その後、50mM HEPES、1% TritonX−100、1mM MnCl、10mM MgCl及び0.1mM PAPSを含有するpH7.4の溶液(以下、「酵素反応液2」という)を用いて、NDST酵素液を2倍から128倍に倍々希釈した溶液を各ウェルに50μLずつ添加し、37℃で30分間静置して酵素反応させた。
【0174】
酵素反応終了後、ウェルを洗浄液で3回洗浄した。その後、反応液で1μg/mLに調製したモノクローナル抗体F58−10E4(生化学工業株式会社)の溶液を、各ウェルに100μLずつ添加した。
【0175】
その後、プレートを常温(15〜25℃)で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応液のみを含有するウェルをブランクとした。
【0176】
なお、PAPSを含有しない酵素反応液2を用いたものについても同様に実験した。以後は、実施例5と同じ方法でHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体を反応させ、次いでTMB溶液で発色させ、次いで吸光度を測定して、ST活性を算出した。結果を図4に示す。
【0177】
図4から、NDSTの用量依存的な(NDST酵素液の希釈率に反比例した)ST活性が観察された。またPAPSの非存在下では、ST活性は検知できず、この酵素反応はPAPS依存性の酵素反応であることも確認された。
【0178】
(実施例8)ST活性の反応時間の依存性
実施例2で調製したプレート(NAH−SS−BSA固相化プレート)を300μLの洗浄液で3回洗浄した後、酵素反応液2を用いて8倍に希釈したNDST酵素液を各ウェルに50μLずつ添加した。その後37℃で0、10、20、30、40又は60分間静置して酵素反応させた。
【0179】
反応終了後、ウェルを洗浄液で3回洗浄し、反応液で1μg/mLに調製したモノクローナル抗体F58−10E4(生化学工業株式会社)の溶液を各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温(15〜25℃)で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応液のみを含有するウェルをブランクとした。
【0180】
なお、NDST酵素液に代えて予め1分間煮沸したNDST酵素液を用いたものについても同様に実験した。
【0181】
以後は、実施例5と同じ方法でHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体を反応させ、次いでTMB溶液で発色させ、次いで吸光度を測定して、ST活性を算出した。
結果を図5に示す。なお図5中の黒菱形印は煮沸処理していないNDST酵素液を用いた実験、黒正方形印は予め1分間煮沸したNDST酵素液を用いた実験のデータをそれぞれ示す。
【0182】
図5から、反応時間依存的なST活性が認められた。なお、1分間煮沸したものでは酵素蛋白質の熱変性によりST活性が失活することが確認された。
【0183】
また、実施例7は直接的にはST活性を検出しているものであるが、NDSTが、脱N−アセチル化を引き起こした後にN−硫酸化を引き起こす酵素であることを考慮すれば、ST活性が検知されたということは、その前提として脱N−アセチル化が引き起こされたことを意味しているといえる。したがって、この方法によるST活性の検出は、ND活性をも含めたNDST活性の検出をも同時に行うことができるものである。
【0184】
また、本発明ND検出方法によって検体中のND活性を検出し、更に、本発明ST検出方法によって検体中のST活性を検出することにより、より確実にNDST活性の検出を行うこともできる。
【0185】
(実施例9)本発明固相(NAH−ビオチンが、アビジンを介してプレートに固着された固相)の製造
ストレプトアビジン(JACKSON社製)を、PBS(−)で20μg/mLに希釈した。この希釈後の溶液を、マキシソープ(登録商標)96ウェルマイクロプレート(NALGE NUNC社製)の各ウェルに50μLずつ添加して、4℃で14〜18時間静置することによってウェルの表面上に均一にコーティングした。
【0186】
このプレートをPBS(−)で2回洗浄した後、ブロッキング物質としてApplieDuo(商品名;生化学工業株式会社製)を5倍希釈した溶液を、また防腐剤として0.05%プロクリン(登録商標)300(SUPELCO社製)を含有するPBをそれぞれ添加し、常温で2時間静置した。
【0187】
静置後、ブロッキング物質を十分に除去し、37℃で2時間乾燥させることによって、ストレプトアビジンがウェルに固着されたプレートを得た(ストレプトアビジン固相化プレート)。
【0188】
このストレプトアビジン固相化プレートを0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ICI社の商標、Tween20に相当する製品;和光純薬工業株式会社製)を含有するTBS(以下、「T−TBS」という)300μLで3回洗浄した。その後、実施例1で製造したNAH−ビオチンをApplieDuo(商品名;生化学工業株式会社製)を20倍希釈した溶液及び0.05%プロクリン300とを含有するTBSで1μg/mLに希釈し、各ウェルに100μLずつ添加し、37℃で30分間静置して反応させた。反応後、ウェルをT−TBSで3回洗浄して、「NAH−ビオチンがアビジンを介してプレートに固着された固相」を製造した。
【0189】
(実施例10)ND活性の測定
実施例9で製造したプレートを用いて、実施例5と同様にNDST酵素のND活性を測定した。なお本実施例においては、陰性対照として、ヒトNDST2 DNAを組み込んでいないバキュロウイルスのみを感染させて得られた培養上清を前記実施例(8)と同様に濃縮したものを使用した(mock)。mockはNDST酵素液と同様に希釈して測定した。結果を図6に示す。なお、図6中の黒丸印はNDST酵素を用いた結果を、白丸印はmockについての結果をそれぞれ示す。
【0190】
図6から、NDSTの用量依存的な(NDST酵素液の希釈率に反比例した)ND活性が観察された。また、本プレートでは1280倍希釈した酵素液でもND活性を確認することができ、ND活性を高感度に測定できることが示された。また、mockとの差を算出することにより、より正確にND活性を測定できることが示された。
【0191】
(実施例11)ST活性の測定
実施例9で製造したプレートを用いて、実施例7と同様にNDST酵素のST活性を測定した。なお本実施例においては、酵素反応液2、及び酵素反応液2中のHEPESに代えてMESを用いてpH6.5に調整したものの何れか一方の酵素反応液を用いた。結果を図7に示す。なお、図7中の菱形印は酵素反応液2(pH7.4)を用いた結果を、正方形印はpH6.5に調整した酵素反応液を用いた結果をそれぞれ示す。
【0192】
図7から、酵素反応液のpHを6.5に調整したものを用いた方が、ST活性をより高感度に測定できることが示された。このことから、ST活性を測定する際の酵素反応時の溶液のpHは6〜7とすることが好ましいことが示された。
【0193】
(実施例12)酵素活性(ND活性)に影響を与える物質のスクリーニング
酵素反応液1を用いて以下の6種類の試験物質をそれぞれ200、20、2μg/mLに希釈した。これらを実施例9で製造した固相(プレート)の各ウェルに25μLずつ添加した後すぐに「酵素反応液1で40倍に希釈したNDST酵素液」を各ウェルに25μLずつ添加した(各試験物質の最終濃度100、10、1μg/mL、酵素液の最終希釈倍率80倍)。
【0194】
(試験物質)(括弧内は、図8中における略号を示す。)
・NAH
・ブタ小腸由来HP(HP)
・N−硫酸化/完全脱O−硫酸化HP(NSDS−HP)
・鶏冠由来ヒアルロン酸(重量平均分子量100KDa;HA)
・部分的脱N−アセチル化NAH(PDNAC−NAH)
・ウシ腎臓由来HS(HSBK)
【0195】
その後37℃で60分間静置して酵素反応させた。なお、試験物質を添加しないウェルは酵素反応液1のみを添加した。反応終了後、ウェルをT−TBSで3回洗浄し、TBSで1μg/mLに調製したモノクローナル抗体JM403(生化学工業株式会社)の溶液を各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温(15〜25℃)で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応後、T−TBSで3回洗浄し、TBSで20000倍に希釈したHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体を各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。
【0196】
反応後、このプレートをT−TBSで3回洗浄し、TMB溶液を各ウェルに100μLずつ添加し、常温で30分間反応させ、発色させた。その後、反応停止液を各ウェルに100μLずつ添加して反応を停止させ、実施例5と同じ方法で吸光度を測定した。
また変化率(%)は、以下の計算式によって算出した。
変化率(%)=100x(各試験物質を添加しない場合における吸光度の値−各試験物質を各濃度添加した場合における吸光度の値)/各試験物質を添加しない場合における吸光度の値)。
【0197】
なお、モノクローナル抗体JM403は、NAHにおけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)に結合することから、検出された吸光度の値が高いほどNAHにおけるGlcN残基の数が多い(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基の数が多い)、すなわちND活性が高いことを意味する。逆に、検出された吸光度の値が低いほどNAHにおけるGlcN残基の数が少ない(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基の数が少ない)、すなわちND活性が低いことを意味する。
【0198】
そして、もし試験物質がND活性を阻害するものであれば、上記の変化率(%)は正の数となる。そしてその変化率の値が高ければ高いほど当該試験物質のNDに対する阻害能が高いこととなる。結果を図8に示す。なお図8中、白色のカラムは試験物質の最終濃度が100μg/mLの場合の結果、黒色のカラムは同じく10μg/mLの場合の結果、斜線のカラムは同じく1μg/mLの結果をそれぞれ示す。
【0199】
図8から、NAH、HP、NSDS−HP及びHSBKは、濃度依存的にND活性を阻害する作用を有することが示された。一方、HA及びPDNAC−NAHは、ND活性を阻害する作用をほとんど有していなかった。
【0200】
以上の結果から、ND活性を阻害する物質(NDの阻害剤)としてNAH、HP、NSDS−HP及びHSBKを選択することができた。
また、NAH、HP、NSDS−HP及びHSBKのなかでも、ND活性に対する阻害能が最も高いものとしてHSBKを、次いでHP及びNSDS−HPを、最も低いものとしてNAHを選択することができた。
【0201】
(実施例13)ST活性測定用の基質の検討
NAHに代えてHSBKを用い、実施例1(3)に記載の方法に従って、ビオチンがHSBKの還元末端に結合している多糖を調製した。次いで、これを実施例9に記載の方法に従ってプレートに固相化した。
【0202】
また、実施例1(1)に記載の方法を用いてNAHを製造し、これを用いてN−脱アセチル化ヘパロザンを調製し、次いでこれを用いてさまざまなロットのN−硫酸化ヘパロザンを調製した。
【0203】
このN−脱アセチル化ヘパロザンは、NDST2等の酵素反応を用いた方法や化学反応を用いた方法で調製することができる。化学的なグリコサミノグリカンの脱アセチル化方法として、ヒドラジン分解法(Patrick,N.and Conrad,H.E.,Bioche.J.,217,187,(1984))とアルカリ加水分解法(Leali,D.et al.,J.Biol.Chem.,276,37900(2001))が知られているが、ここでは後者の方法で調製した。具体的には、NAHを2M水酸化ナトリウム溶液に終濃度が10mg/mlになるように溶解し、60℃で2から24時間加熱した。加熱時間を調整することによって、脱アセチル化度の異なったN−脱アセチル化ヘパロザンを調製した。
【0204】
次いで、このN−脱アセチル化ヘパロザンを上記のLeali,D.らの方法に従ってN−硫酸化することにより、さまざまなロットのN−硫酸化ヘパロザンを調製した。具体的には、NAHのN−脱アセチル化反応終了液(N−脱アセチル化ヘパロザンを含有する)を中和した後、炭酸ナトリウムと三酸化イオウ・ピリジン複合体(PSTC)を終濃度がそれぞれ15mMと10mMになるように添加し、40℃でインキュベートした。その後1時間ごとに2.5mM(終濃度)相当のPSTCを添加し、5時間反応を行った。これにより、9ロットのN−硫酸化ヘパロザンが得られた。これらを被験物質として用いた。
【0205】
HSBKが固相化されたプレートに、モノクローナル抗体F58−10E4(終濃度:1μg/ml)と9ロットのN−硫酸化ヘパロザン(20μg/ウェル;カルバゾール法によるウロン酸含量をもとに補正した値)を添加して実施例7に記載の条件で抗原抗体反応させ、実施例7に記載の方法で吸光度を測定した。これは、いわゆる阻害法による測定である。抗原抗体反応液中のN−硫酸化ヘパロザンの濃度が0であれば、モノクローナル抗体F58−10E4は実質的に全て固相化されたHSBKに結合し、検出される吸光度が高くなる。一方、抗原抗体反応液中に過剰濃度のN−硫酸化ヘパロザンが存在すれば、モノクローナル抗体F58−10E4は実質的に全て抗原抗体反応液中のN−硫酸化ヘパロザンに結合し(固相化されたHSBKには実質的に結合せず)、検出される吸光度が低くなる。
【0206】
抗原抗体反応液中のN−硫酸化ヘパロザン濃度が0の場合の吸光度を「阻害率0%」、抗原抗体反応液中にN−硫酸化ヘパロザンが過剰濃度で存在する場合の吸光度を「阻害率100%」として、9ロット分のN−硫酸化ヘパロザンについて阻害率を算出した。結果を表1に示す。なお、N−硫酸化ヘパロザンに代えてHSBKを用いた結果も併せて示す。
【0207】
なお表1中の「Mw」及び「Mw/Mn」は、実施例1(1)に記載の方法で求めた数値である。また、各ロットのN−硫酸化ヘパロザン分子における「deNAc−0S」(NAHを構成する二糖単位(GlcA−GlcN)において、N位が脱硫酸化されておりかつ硫酸基を保持しないもの)、「0S」(NAHを構成する二糖単位(GlcA−GlcN)において、硫酸基を保持しないもの)、及び「NS」(NAHを構成する二糖単位(GlcA−GlcN)において、N位が硫酸化されているもの)の質量比(%)は、イオン交換クロマトグラフィーによって求めた。イオン交換クロマトグラフィーの条件等は以下の通りである;
【0208】
硫酸化多糖および低分子化硫酸化多糖の分解酵素(ヘパリチナーゼ、ヘパリチナーゼI及びヘパリチナーゼII(いずれも生化学工業株式会社製)の混合物)による消化を行った後の溶液50μlを、HPLC(医理化、モデル852型)を用いて分析した。強アニオン交換体カラム(ダイオネックス社、CarboPac PA−1カラム4.0mm×250mm)を使用し、232nmでの吸光度を測定した。4〜12糖スタンダードを基準とし(Yamada,et al.,J.Biol.Chem.,270,8696−8706,(1995))、流速1ml/分で、塩化リチウムを用いたグラジエント系(50mM→2.5M)を用いる方法に準拠した(Kariya,et al.,Comp.Biochem.Physiol.,103B,473,(1992))。
【0209】
なお、脱アセチル化二糖(deNAc−0S)の割合が高かったロット4及び5のN−硫酸化ヘパロザンについては、上記方法に従って再度N−硫酸化した。また、ロット1、3及び4のN−硫酸化ヘパロザンについては、以下の方法によりNDST酵素液で処理することで再度N−硫酸化した;
【0210】
N−硫酸化ヘパロザンに、NDST酵素液を50mM HEPES(pH7.5)、1% TritonX−100、1mM MnCl、10mM MgCl及び0.1mM PAPSを含有する溶液で10倍希釈した溶液を添加し、37℃で1時間インキュベートする。
【0211】
これらの物質についても、同様に阻害率を算出した。NDST酵素液によって再度N−硫酸化したものを用いた結果を表1中の「NDST」に、三酸化イオウ・ピリジン複合体(PSTC)によって再度硫酸化したものを用いた結果を表1中の「再NS」に、それぞれ示す。
【0212】
【表1】

【0213】
表1のロット2、6、7、8及び9の結果から、モノクローナル抗体F58−10E4は、平均重量分子量20kDa以上で、かつN−硫酸化構造(NS)が45%以上のN−硫酸化ヘパロザンをヘパラン硫酸と同等に認識することが示された。また、脱アセチル化構造(deNAc−0S)が30%を超えたN−硫酸化ヘパロザンはNSがたとえ60%以上存在しても、当該抗体によって認識されないが、NDSTによりN−硫酸化されることによって反応性が向上した(ロット3の結果)。さらに、deNAc−0Sが30%を超えたロット4の当該抗体に対する反応性は低かったが、その反応性はNDSTによるN−硫酸化もしくは、化学的な再N−硫酸化によってヘパラン硫酸と同等になった。このことから、本発明におけるST活性を測定する際の基質(固相化させるもの)として用いるN−アセチル化ヘパロザン誘導体は、平均重量分子量20kDa以上で、脱アセチル化構造が30%を超えたものが好ましく、さらに脱アセチル化構造が35%を超えたものがより好ましいことが示された。
【0214】
(実施例14)本発明ND検出キットの作製
以下の構成からなる本発明ND検出キットを作製した。
1.実施例2で製造したNAH−SS−BSA固相化プレート 1枚
2.モノクローナル抗体JM403 1本
3.HRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体 1本
4.TMB溶液 1本
5.実施例5に記載の反応停止液 1本
6.実施例5に記載の酵素反応液1 1本
7.実施例5に記載の洗浄液 1本
8.NDST標準溶液 1セット
【0215】
(実施例15)本発明ST検出キットの作製
以下の構成からなる本発明ST検出キットを作製した。
1.実施例2で製造したNAH−SS−BSA固相化プレート 1枚
2.モノクローナル抗体F58−10E4 1本
3.HRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体 1本
4.TMB溶液 1本
5.実施例5に記載の反応停止液 1本
6.実施例7に記載の酵素反応液2 1本
7.実施例5に記載の洗浄液 1本
8.NDST標準溶液 1セット
【0216】
(実施例16)本発明NDST検出キットの作製
以下の構成からなる本発明NDST検出キットを作製した。
1.実施例2で製造したNAH−SS−BSA固相化プレート 1枚
2.モノクローナル抗体JM403 1本
3.モノクローナル抗体F58−10E4 1本
4.HRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリンG+M抗体 1本
5.TMB溶液 1本
6.実施例5に記載の反応停止液 1本
7.実施例5に記載の酵素反応液1 1本
8.実施例7に記載の酵素反応液2 1本
9.実施例5に記載の洗浄液 1本
10.NDST標準溶液 1セット
【0217】
(実施例17)本発明ND検出キットの作製
実施例14における「実施例2で製造したNAH−SS−BSA固相化プレート」を「実施例9で製造したNAH−ビオチンがアビジンを介して固着されたプレート」に代えて、本発明ND検出キットを作製した。
【0218】
(実施例18)本発明ST検出キットの作製
実施例15における「実施例2で製造したNAH−SS−BSA固相化プレート」を「実施例9で製造したNAH−ビオチンがアビジンを介して固着されたプレート」に代えて、本発明ST検出キットを作製した。
【0219】
(実施例19)本発明NDST検出キットの作製
実施例16における「実施例2で製造したNAH−SS−BSA固相化プレート」を「実施例9で製造したNAH−ビオチンがアビジンを介して固着されたプレート」に代えて、本発明NDST検出キットを作製した。
【0220】
(試験例1)サンドイッチELISAを用いたND活性の測定
(1)サンドイッチELISA用プレートの製造
モノクローナル抗体JM403(生化学工業株式会社)を、PBS(−)で20μg/mLに希釈した。この希釈後の溶液を、マキシソープ(登録商標)96ウェルマイクロプレート(NALGE NUNC社製)の各ウェルに50μLずつ添加して、4℃で14〜18時間静置することによってウェルの表面上に均一にコーティングした。
【0221】
このプレートをPBS(−)で2回洗浄した後、ブロッキング物質として防腐剤として0.05%プロクリン(登録商標)300(SUPELCO社製)を含有させたImmunoassaystabilizer(Advanced Biotechnologies社製)をそれぞれ添加し、常温で2時間静置した。静置後、ブロッキング物質を十分に除去し、37℃で2時間乾燥させることによって、モノクローナル抗体JM403がウェルに固着されたプレートを得た。プレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入して、冷蔵保存した。
【0222】
(2)ビオチン標識JM403の製造
モノクローナル抗体JM403(生化学工業株式会社)を0.1M炭酸緩衝液(pH8.5)で一晩透析後、回収し、0.1M炭酸緩衝液で1mg/mLの濃度に溶解したLC−ビオチン(pierce社製)を質量比80:1(モノクローナル抗体JM403:LC−ビオチン)の割合で、室温、4時間撹拌反応させた。反応後の溶液をPBS(−)で一晩透析した。透析後の溶液を回収し、0.05%の濃度になるようにアジ化ナトリウム(和光純薬社製)を加え、冷蔵保存した。これによりビオチン標識されたモノクローナル抗体JM403(以下、「ビオチン標識JM403」という)を得た。
【0223】
(3)サンドイッチELISAによるND活性の測定
0.05M MES、10mM MnCl及び1% Triton X−100を含有するpH6.5の溶液を30μL、NDST酵素原液を20μL、NAHを1000、500、250、125又は62.5μg/mLの濃度に蒸留水で溶解した溶液を10μLおよび蒸留水40μLを試験管に添加し、撹拌後37℃で60分間静置して酵素反応させた。ブランクとしてNAH溶液の代わりに蒸留水を10μL添加し、同様に反応させた。
【0224】
反応後、450mM NaClを含有する50mM Tris溶液(pH9.0)を50μL加え、酵素反応を停止させた(以下、「酵素反応停止液」という)。
上記サンドイッチELISA用プレートを、洗浄液300μLで3回洗浄した。
その後、酵素反応停止液を各ウェルに100μLずつ添加し、37℃で60分間静置して抗原−固相化抗体の複合体を形成させた。
【0225】
反応後、ウェルを洗浄液で3回洗浄し、1% BSAおよび0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS(−)(以下、「反応液2」という)で1μg/mLに調製したビオチン標識JM403の溶液を、各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを37℃で60分間静置して抗体−抗原−固相化抗体のサンドイッチ状の複合体を形成させた。
【0226】
反応後、ウェルを洗浄液で3回洗浄し、反応液2で1000倍に希釈したHRP標識ストレプトアビジン(Pierce社製)の溶液を各ウェルに100μLずつ添加した。その後、プレートを常温で30分間静置してビオチン標識サンドイッチ状複合体−ストレプトアビジンの複合体を形成させた。
【0227】
反応後、このプレートを洗浄液で3回洗浄し、ペルオキシダーゼの基質としてTMB溶液(MOSS社製)を各ウェルに100μLずつ添加し、37℃で15分間反応させ、発色させた。その後、1M HCl(和光純薬工業株式会社製)を各ウェルに100μLずつ添加して反応を停止させた後、波長450nm(対照波長630nm)におけるTMB分解物の吸光度をウェルリーダーSK603(登録商標;生化学工業株式会社販売)で測定した。モノクローナル抗体JM403は、NAHにおけるGlcN残基(すなわち、脱N−アセチル化されたGlcNAc残基)を認識する。ND活性が高ければ、NAHにおける脱N−アセチル化部位が増加し、この脱N−アセチル化された部分はモノクローナル抗体JM403とビオチン標識JM403とでサンドイッチすることにより検知できることから、脱N−アセチル化の程度(ND活性)を検知することができる。したがって本試験例では、モノクローナル抗体JM403とビオチン標識JM403でサンドイッチされて検知された反応性をND活性として表すこととした。
【0228】
このND活性は、測定された吸光度から、ブランクにおける吸光度を差し引いた値として算出した。結果を図9に示す。
【0229】
図9から、ND活性は観察されたものの、NAHの用量依存的な(NAHの濃度に比例した)ND活性は観察されなかった。またその吸光度は、NAH−SS−BSA固相化プレート又はNAH−COOH−BSA固相化プレートを用いた場合に比して低かったことから(0.6〜0.7程度)、サンドイッチELISA法によるND活性の検出は感度が低いことが示された。
【0230】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱すること無く様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2005年6月28日出願の日本特許出願(特願2005−188973)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0231】
本発明は、ND活性、ST活性又はNDST活性の検出に利用することができる。また本発明は、ND、ST又はNDSTの活性を変化させる物質のスクリーニングにも利用することができ、これにより新たな医薬素材等の探索等にも利用することができる。また本発明は、NDST等の酵素活性の異常に起因する疾患の検知やそのリスクの検知、病態把握等にも活用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビオチンが、N−アセチルヘパロサンに共有結合していることを特徴とする、修飾多糖。
【請求項2】
請求項1に記載の修飾多糖が、アビジンとビオチン・アビジン結合していることを特徴とする、請求項1に記載の修飾多糖。
【請求項3】
請求項1または2に記載の修飾多糖が固着された固相。
【請求項4】
下記ステップ(a)及び(b)を少なくとも含む、検体中のN−デアセチラーゼ活性の検出方法。
ステップ(a):請求項3に記載の固相に、検体を接触させるステップ
ステップ(b):前記固相に固着された請求項1〜3のいずれか1項に記載の修飾多糖における、脱N−アセチル化を検出するステップ。
【請求項5】
脱N−アセチル化の検出が、請求項3に記載の固相に「N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する蛋白質」を接触させることにより行われる、請求項4に記載の検出方法。
【請求項6】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する「蛋白質」が、抗体である、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する抗体が、モノクローナル抗体JM403である、請求項6に記載の検出方法。
【請求項8】
下記の構成成分(A)及び(B)を少なくとも含む、検体中のN−デアセチラーゼ活性の検出キット。
(A)請求項1または2に記載の修飾多糖(B)N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する蛋白質
【請求項9】
請求項1または2に記載の修飾多糖が、固相に固着されていることを特徴とする、請求項8に記載の検出キット。
【請求項10】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する「蛋白質」が、抗体である、請求項8又は9に記載の検出キット。
【請求項11】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する抗体が、モノクローナル抗体JM403である、請求項10に記載の検出キット。
【請求項12】
下記ステップ(c)及び(d)を少なくとも含む、検体中のN−スルホトランスフェラーゼ活性の検出方法。
ステップ(c):請求項3に記載の固相に、検体と硫酸基供与体とを接触させるステップ。
ステップ(d):前記固相に固着された請求項1または2に記載の修飾多糖における、N−硫酸化を検出するステップ。
【請求項13】
N−硫酸化の検出が、請求項3に記載の固相に「N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する蛋白質」を接触させることにより行われる、請求項12に記載の検出方法。
【請求項14】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する「蛋白質」が、抗体である、請求項13に記載の検出方法。
【請求項15】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する抗体が、モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1である、請求項14に記載の検出方法。
【請求項16】
下記の構成成分(A)及び(C)を少なくとも含む、検体中のN−スルホトランスフェラーゼ活性の検出キット。
(A)請求項1または2に記載の修飾多糖
(C)N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する蛋白質
【請求項17】
請求項1または2に記載の修飾多糖が、固相に固着されていることを特徴とする、請求項16に記載の検出キット。
【請求項18】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する「蛋白質」が、抗体である、請求項16又は17に記載の検出キット。
【請求項19】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する抗体が、モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1である、請求項18に記載の検出キット。
【請求項20】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法によって検体中のN−デアセチラーゼ活性を検出し、かつ、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法によって検体中のN−スルホトランスフェラーゼ活性を検出することを特徴とする、検体中のN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ活性の検出方法。
【請求項21】
下記の構成成分(A)、(B)及び(C)を少なくとも含む、検体中のN−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ活性の検出キット。
(A)請求項1または2に記載の修飾多糖
(B)N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する蛋白質
(C)N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する蛋白質
【請求項22】
請求項1または2に記載の修飾多糖が、固相に固着されていることを特徴とする、請求項21に記載の検出キット。
【請求項23】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する「蛋白質」が、抗体である、請求項21または22に記載の検出キット。
【請求項24】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるグルコサミン残基に結合する抗体が、モノクローナル抗体JM403である、請求項23に記載の検出キット。
【請求項25】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する「蛋白質」が、抗体である、請求項21〜24のいずれか1項に記載の検出キット。
【請求項26】
N−アセチルヘパロサン又はその誘導体におけるN−硫酸化されているグルコサミン残基に結合する抗体が、モノクローナル抗体F58−10E4又はモノクローナル抗体HepSS−1である、請求項25に記載の検出キット。
【請求項27】
下記ステップ(e)〜(g)を少なくとも含む、下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる物質のスクリーニング方法。
ステップ(e):下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる可能性のある試験物質を、当該酵素と共存させるステップ。
ステップ(f):ステップ(e)により得られる「前記試験物質と前記酵素との共存物」を検体とし、請求項4〜7、請求項12〜15及び請求項20のいずれか1項に記載の方法によって、前記酵素の活性を検出するステップ。
ステップ(g):ステップ(f)により検出された酵素の活性と、ステップ(e)で用いた酵素を検体としてステップ(f)と同一の検出方法によって検出される酵素の活性とを比較して、下記の酵素群から選択される1又は2以上の酵素の活性を変化させる試験物質を選択するステップ。
(酵素群)N−デアセチラーゼ、N−スルホトランスフェラーゼ、N−デアセチラーゼ/N−スルホトランスフェラーゼ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−233204(P2012−233204A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182378(P2012−182378)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【分割の表示】特願2007−523976(P2007−523976)の分割
【原出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000195524)生化学工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】