説明

酵素活性測定方法、酵素活性測定装置及び酵素活性測定プログラム

【課題】本発明は、酵素活性を短時間で精度よく測定する。
【解決手段】本発明は、消光光を標体4の測定領域に照射してHFCを消光させ、消光させた時点を回復開始時刻T0に設定し、新たに代謝されたHFCから発光させた蛍光の強度を蛍光値として測定し、蛍光値と測定時刻とを基に基づいて酵素活性を算出することにより、回復開始時刻T0における蛍光値が小さくなり、回復開始時刻T0に対する時間の経過と共に変化する蛍光値の割合を大きくすることができ、かくして短時間で精度よく酵素活性を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酵素活性測定方法、酵素活性測定装置及び酵素活性測定プログラムに関し、例えば生体組織や生細胞内の酵素活性を測定する分野に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織や細胞内の酵素活性を測定する酵素活性測定装置は、基質が酵素と反応することにより得られる代謝産物にレーザ光を照射して励起させ、該励起された代謝産物が発する蛍光の強度を検出する。そして酵素活性測定装置は、検出された蛍光の強度に基づいて酵素活性を測定するようになされている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−289437公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した酵素活性測定装置では、測定対象となる生体組織や細胞に基質を浸透させた後、ある一定の時間が経過してから代謝産物が発する蛍光の強度を検出することになる。
【0005】
このような場合、蛍光強度の検出を開始する以前に基質と酵素とが反応してしまうため、測定開始時点である一定の蛍光強度を検出し、そこから代謝に従って増加する蛍光強度を基に酵素活性を測定することになる。
【0006】
従って酵素活性測定装置では、蛍光強度の変化が微小な場合、測定開始時点での蛍光強度に対して時間経過と共に変化する蛍光強度が小さいため、蛍光強度の測定誤差の影響を大きく受けてしまい、酵素活性を精度よく測定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、酵素活性を短時間で精度よく測定し得る酵素活性測定方法、酵素活性測定装置及び酵素活性測定プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、多光子励起させるための光を第1光源から照射させることにより蛍光を発する代謝産物に対して、蛍光を消光させるための光を第2光源から照射させるステップと、消光ステップにおいて消光された直後から、第1光源から光を出射させ、基質が測定対象の酵素によって代謝されることにより新たに得られる代謝産物から蛍光を発光させる蛍光発光ステップと、蛍光発光ステップにより代謝産物から発せられた蛍光の程度を測定する測定ステップと、測定ステップにより測定された蛍光の程度に基づいて、酵素の酵素活性を算出する算出ステップとを有する。
【0009】
また本発明においては、測定対象の酵素によって基質が代謝されて得られる代謝産物を多光子励起させるための光を出射する第1光源と、代謝産物が発する蛍光を消光させるための光を出射する第2光源と、第1光源及び第2光源から光を測定対象とすべき領域に対して照射させる照射制御部と、第2光源から光を照射させ終わった直後からの、基質が測定対象の酵素によって新たに代謝されて得られる代謝産物から発光させる蛍光の程度を測定する測定部と、測定部により測定された蛍光の程度に基づいて、酵素の酵素活性を算出する算出部とを有する。
【0010】
さらに本発明においては、コンピュータに対して、多光子励起させるための光を第1光源から照射させることにより蛍光を発する代謝産物に対して、蛍光を消光させるための光を第2光源から照射させる照射制御ステップと、照射制御ステップにおいて第2光源から光を照射させ終わった直後からの、基質が測定対象の酵素によって新たに代謝されて得られる代謝産物から発光させる蛍光の程度を測定する測定ステップと、測定ステップにより測定された蛍光の程度に基づいて、酵素の酵素活性を算出する算出ステップとを実行させるようにした。
【0011】
これにより、代謝産物を消光された直後から新たに得られる代謝産物が多光子励起されることによって発する蛍光の程度を測定し、該蛍光の程度に基づいて酵素活性を算出するので、消光直後における蛍光の程度を小さくして、該消光直後に対する時間の経過と共に変化する蛍光の程度の割合を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、代謝産物を消光された直後から新たに得られる代謝産物が多光子励起されることによって発する蛍光の程度を測定し、該蛍光の程度に基づいて酵素活性を算出するので、消光直後における蛍光の程度を小さくして、該消光直後に対する時間の経過と共に変化する蛍光の程度の割合を大きくすることができ、かくして酵素活性を短時間で精度よく測定し得る酵素活性測定方法、酵素活性測定装置及び酵素活性測定プログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】酵素活性測定装置を示す略線図である。
【図2】データ処理部の構成を示す略線図である。
【図3】酵素活性測定処理を実行するCPUの機能的構成を示す略線図である。
【図4】蛍光画像を示す略線図である。
【図5】蛍光値測定グラフを示す略線図である。
【図6】第1の実施の形態における酵素活性測定処理手順の説明に供するフローチャートである。
【図7】従来の酵素活性測定装置における明視野画像及び蛍光画像を示す略線図である。
【図8】従来の酵素活性測定装置における蛍光値測定グラフを示す略線図である。
【図9】第2の実施の形態における酵素活性測定処理手順の説明に供するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、説明は以下の順序とする。
1.第1の実施の形態
2.第2の実施の形態
3.他の実施の形態
【0015】
<1.第1の実施の形態>
[1−1.酵素活性測定装置の構成]
図1において、第1の実施の形態における酵素活性測定装置1を示す。この酵素活性測定装置1は、多光子顕微鏡2及びデータ処理部3を含む構成とされる。
【0016】
ここで本実施の形態においては、生体組織や生細胞内であるin vivo下における測定対象酵素の酵素活性を測定する場合について説明する。より具体的には、肝臓を標体として用い、測定対象酵素として薬物代謝酵素であるチクトロームP450(以下、これをCYP450とも呼ぶ)のサブタイプであるCYP2C9を用いる場合について説明する。
【0017】
測定対象酵素がCYP2C9の場合、基質として例えばMFC(7-Methoxy-trifluoromethylcoumarin)が用いられる。このMFCは、そのままでは蛍光を発しないが、CYP2C9によって蛍光物質であるHFC(7-Hydroxytrifluoromethylcoumarin)に代謝されると、蛍光を発するようになる。
【0018】
多光子顕微鏡2は、基質又は代謝産物に対して多光子吸収を誘導する光源としてフェムト秒レーザ11が設けられる。このフェムト秒レーザ11は、波長650[nm]から1100[nm]の範囲で離散的にパルス状のレーザ光を出射し得るようになされており、この範囲から基質又は代謝産物の吸収波長に合わせて波長が選択される。
【0019】
具体的にはフェムト秒レーザ11は、波長830[nm]が選択された場合、パルス幅が100[fs]以下で、繰り返し周波数が80[MHz]である。また出力安定性が±5%程度であり、平均光出力が2[W]程度となる。
【0020】
フェムト秒レーザ11から出射されたレーザ光は、ビーム径を調節するためのビーム径調整器12を透過し、XY平面(標体4における光軸と直交する平面)でレーザ光を走査させるガルバノミラー等でなるXYスキャナ13によって反射される。
【0021】
このビーム径調整器12は、例えば2つのレンズにより構成されており、データ処理部3の制御の基に、一方のレンズを光軸方向に移動させることによりレーザ光のビーム径を調節し得るようになされている。
【0022】
XYスキャナ13によって反射されたレーザ光は、ラインフィルタ14、ダイクロイックミラー15及び16を透過して焦点位置調整機構17に取り付けられた例えば60倍の対物レンズ18に入射される。
【0023】
対物レンズ18は、このレーザ光を標体4の表面から深さ方向に約2[mm]の位置に集光させる。
【0024】
この多光子顕微鏡2では、対物レンズ18によって集光されたレーザ光の焦点を中心としてXY平面に直径が約0.3[μm]、Z軸方向(光軸方向)に約1[μm]でなる紡錘型の領域で、HFCが多光子吸収することにより励起される。
【0025】
このようにフェムト秒レーザ11から出射されたレーザ光は、短パルス化されており、かつ単一パルスのエネルギーが小さいため、標体4を損傷することがない。また、このレーザ光は、対物レンズ18によって集光された場合、その焦点付近では非常に高い光子密度となり、HFCの多光子励起現象が起こる。この多光子励起現象は焦点付近の限られた領域でのみ起こるので、励起される部位が限定的であり、標体4の表面から深部で起こるため、標体4として用いられた肝臓細胞組織だけで励起させることができる。
【0026】
因みに、対物レンズ18と標体4との間には、乾燥防止アガロース5が設けられており、該標体4の乾燥を防止する。
【0027】
対物レンズ18によって集光されたレーザ光に励起されたHFCの蛍光は、500〜630[nm]の発光をする。その発光のうち中心波長が約520[nm]で、波長域が50[nm]の発光を利用する。この発光によって得られる光(以下、これを蛍光光とも呼ぶ)は、対物レンズ18及びダイクロイックミラー16を透過してダイクロイックミラー15で反射される。
【0028】
このダイクロイックミラー15は、例えば波長が600[nm]以下の光を反射し、それより大きな波長の光を透過するようになされており、フェムト秒レーザ11から出射された光ビームを透過し、蛍光光を反射する。
【0029】
ダイクロイックミラー15によって反射された蛍光光はショートパスフィルタ19を透過し、集光レンズ20によって集光されて光検出器21に到達する。このショートパスフィルタ19は、波長が600[nm]以下の光を透過する。
【0030】
光検出器21は、例えばPMT(Photomultiplier Tube)でなり、集光された蛍光光を光電効果により電気信号に変換し、蛍光光の強度に応じた蛍光値のデータをデータ処理部3に出力する。
【0031】
一方、多光子顕微鏡2には、例えば波長が300[nm]〜950[nm]でなる光を出射する白色光源22、コリメータレンズ23、及び波長が800[nm]以上の光を透過するロングパスフィルタ24からなる落射光学系25が所定高さ位置に設けられる。
【0032】
白色光源22から出射された光は、コリメータレンズ23により平行光に変換され、ロングパスフィルタ24を透過した光(以下、これを赤外光とも呼ぶ)が標体4に照射される。
【0033】
この赤外光が標体4で反射され、該反射された光(以下、これを反射光とも呼ぶ)が対物レンズ18、ダイクロイックミラー16及び15を透過してラインフィルタ14で反射される。
【0034】
このラインフィルタ14は、フェムト秒レーザ11から出射された例えば波長830[nm]の光ビームを透過し、それ以外の波長でなる光を反射するようになされており、反射光を反射する。
【0035】
ラインフィルタ14で反射された反射光は、ロングパスフィルタ26により例えば波長が800[nm]以上の帯域だけ透過され、結像レンズ27により赤外領域に感度のあるCCD(Charge Coupled Device)28に標体4の像として結像される。このCCD28は、赤外領域に感度のあるため、赤外光の組織透過性を利用して標体4内部の像を取得することができる。
【0036】
CCD28は、結像されることにより得られる標体4の像を所定形式のデータ(以下、これを赤外画像データとも呼ぶ)に変換し、該赤外画像データをデータ処理部3に出力する。
【0037】
ところで多光子顕微鏡2は、フェムト秒レーザ11からレーザ光が出射されていない場合、ダイクロイックミラー15、16及びロングパスフィルタ24、26を光路から外せるようになされている。
【0038】
これにより多光子顕微鏡2は、白色光源22から出射された光が標体4で反射され、対物レンズ18、ラインフィルタ14及び結像レンズ27を介してCCD28に結像されることにより、明視野の標体4の像を取得し得るようになされている。CCD28は、結像されることにより得られる明視野の標体4の像を所定形式のデータ(以下、これを明視野画像データとも呼ぶ)に変換し、該明視野画像データをデータ処理部3に出力する。
【0039】
多光子顕微鏡2は、これら構成に加えて、例えば100[W]の水銀ランプ29、集光レンズ30、シャッタ31及びショートパスフィルタ32が設けられる。
【0040】
HFCが多光子励起されている場合に発する蛍光を消光させるための光(以下、これを消光光とも呼ぶ)が水銀ランプ29から出射され、集光レンズ30により平行光に変換され、シャッタ31に到達する。
【0041】
シャッタ31は、データ処理部3の制御に基づいて開閉を行い、開いている時には消光光を透過し、閉じているときには該消光光を遮断する。
【0042】
シャッタ31が開いてきるときに透過された消光光は、例えば波長が500[nm]以下でなる光を透過するショートパスフィルタ32を透過してダイクロイックミラー16で反射され、対物レンズ18により集光されて標体4に照射されるようになされている。
【0043】
因みにダイクロイックミラー16は、例えば波長が500[nm]以下でなる光を反射し、それより大きな波長の光を透過するようになされている。
【0044】
[1−2.データ処理部の構成]
次に、データ処理部3の構成について説明する。このデータ処理部3は、図2に示すように、制御を司るCPU(Central Processing Unit)41に対して各種ハードウェアを接続することにより構成される。
【0045】
具体的にはROM(Read Only Memory)42、CPU41のワークメモリとなるRAM(Random Access Memory)43、ユーザの操作に応じた命令を入力する操作入力部44、インターフェイス部45、表示部46及び記憶部47がバス48を介して接続される。
【0046】
ROM42には、各種の処理を実行するためのプログラムが格納される。インターフェイス部45には、多光子顕微鏡2のフェムト秒レーザ11、ビーム径調整器12、XYスキャナ13、焦点位置調整機構17、光検出器21、CCD28及びシャッタ31などが接続される。
【0047】
表示部46には、液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はプラズマディスプレイ等が適用される。また記憶部47には、HD(Hard Disc)に代表される磁気ディスクもしくは半導体メモリ又は光ディスク等が適用される。
【0048】
CPU41は、ROM42に格納される複数のプログラムのうち、操作入力部44から与えられる命令に対応するプログラムをRAM43に展開し、該展開したプログラムに従って、表示部46及び記憶部47を適宜制御する。
【0049】
またCPU41は、展開したプログラムに従って、インターフェイス部45を介してフェムト秒レーザ11、ビーム径調整器12、XYスキャナ13、焦点位置調整機構17、光検出器21、CCD28及びシャッタ31などを適宜制御するようになされている。
【0050】
[1−3.酵素活性測定処理]
次に、in vivo下で肝臓を標体4とした場合での、CYP450のサブタイプであるCYP2C9の酵素活性を測定する酵素活性測定処理について説明する。
【0051】
因みに、酵素活性測定処理を実行する前に、CYP2C9の基質であるMFCを例えば2.5[μM]の濃度で溶解させた生理食塩水を静脈注射、腹腔内注射、或いは標体4に塗布させることにより被験者に対して予め投与させる。
【0052】
CPU41は、酵素活性測定処理の実行命令を操作入力部44から受けた場合、該実行命令に対応するプログラムにしたがって、図3に示すように、画像取得部51、領域設定部52、蛍光値測定部53、照射制御部54、酵素活性算出部55として機能する。
【0053】
画像取得部51は、CCD28により生成された赤外画像データ又は明視野画像データを取得すると、該赤外画像データ又は明視野画像データに対応する画像を表示部46に表示する。
【0054】
このときユーザは、表示部46に表示された画像を確認しながら、酵素活性を測定する領域(以下、これを測定領域とも呼ぶ)を操作入力部44を介して特定する。この操作に応じて領域設定部52は、酵素活性を測定する領域を測定領域として設定し、該測定領域に対物レンズ18の焦点を移動させる。
【0055】
蛍光測定部53は、フェムト秒レーザ11を標体4の測定領域に照射させ、MFCが代謝されて得られるHFCを多光子励起させることにより蛍光を発光させる。そして蛍光測定部53は、光検出器21で測定された蛍光値を所定時間間隔ごとに取得し、取得したときの時刻と対応付けて測定データとして記憶部47に記憶する。
【0056】
このとき画像取得部51は、操作入力部44の操作に応じて、XYスキャナ13にレーザ光を走査させ、該レーザ光の走査位置と、光検出器21で測定された蛍光値とを基に、蛍光画像を生成し得るようになされている。
【0057】
画像取得部51は、図4(A)に示すような蛍光画像PG1を生成して表示部46に表示することにより、基質であるMFCが標体4に到達していることをユーザに確認させる。
【0058】
照射制御部54は、例えば操作入力部44の操作をトリガとして、シャッタ31を開き、水銀ランプ29から出射されてショートパスフィルタ32を透過した波長500[nm]以下の消光光を標体4の測定領域に対して照射する。これにより標体4の測定領域では、蛍光を発していたHFCの光活性機能が消失され、該HFCが消光する。
【0059】
照射制御部54は、シャッタ31を開くと、蛍光測定部53で測定される蛍光値を取得し、標体4の測定領域が消光されたとすべき値に設定された閾値未満に該蛍光値がなったタイミングでシャッタ31を閉じる。このシャッタ31が開いている時間としては大よそ0.1[s]から10[s]の範囲である。
【0060】
このとき標体4の測定領域は、図4(B)の蛍光画像PG2に示すように、消光光が照射されることにより消光している。
【0061】
蛍光測定部53は、照射制御部54によりシャッタ31が閉められた時点を回復開始時刻T0として設定し、光検出器21で測定された蛍光値を所定時間間隔ごとに取得し、取得したときの時刻と対応付けて測定データとして記憶部47に記憶する。
【0062】
このとき標体4の測定領域では、回復開始時刻T0以降にCYP2C9によって新たに代謝されて得られるHFCが多光子吸収することにより蛍光を発する。従って図4(C)に示すように、回復開始時刻T0からある一定の時間が経過した後の蛍光画像PG3では蛍光が回復している。
【0063】
このようにして蛍光測定部53によって測定された測定データを基に、横軸に測定時間、縦軸に蛍光値をとったグラフを図5に示す。このグラフにおいて約12[s]から15[s]までの斜線で示した領域では、標体4の測定領域に対して水銀ランプ29から出射された消光光が照射されていることを示す。
【0064】
このグラフからもわかるように、測定を開始した時点(0[s])で既にCYP2C9によってMFCが代謝されおり、これによってある一定の蛍光値が検出されている。その後、消光光が照射されることによって蛍光値が大幅に減少する。そして消光光の照射後、新たにCYP2C9によってMFCが代謝され、蛍光値の増加が測定される。
【0065】
酵素活性算出部55は、蛍光測定部53によって測定された測定データから回復開始時刻T0での蛍光値F0と、該回復開始時刻T0から所定時間経過した時刻Tでの蛍光値Ftとを読み出す。
【0066】
そして酵素活性算出部55は、酵素活性(K)を次式
【0067】
K=a(Ft−F0)/(T−T0) ……(1)
【0068】
を用いて算出する。ここでaは、補正係数を表し、例えば、MFCと同時に投与された濃度既存のCYP酵素によって代謝されない蛍光物質からの蛍光量を基にした検量線から得られる値を用いる。
【0069】
[1−4.酵素活性測定処理手順]
次に、上述した酵素活性測定処理の手順について、図6に示すフローチャートを用いて説明する。因みに、酵素活性測定処理が実行される前にMFCが被験者に投与される。
【0070】
実際上、CPU41は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移る。ステップSP1においてCPU41は、CCD28により生成された赤外画像データ又は明視野画像データを取得すると、該赤外画像データ又は明視野画像データに対応する画像を表示部46に表示し、次のステップSP2に移る。
【0071】
ステップSP2においてCPU41は、表示部46に表示された画像を確認させながら操作入力部44を介して特定された領域を測定領域に設定し、該測定領域に対物レンズ18の焦点を移動させ、次のステップSP3に移る。
【0072】
ステップSP3においてCPU41は、フェムト秒レーザ11から出射されたレーザ光を標体4の測定領域に照射させ、HFCを多光子励起させることにより蛍光を発光させる。そしてCPU41は、光検出器21で測定された蛍光値を所定時間間隔ごとに取得し、取得したときの時刻と対応付けて測定データとして記憶部47に記憶し、次のステップSP4に移る。
【0073】
ステップSP4においてCPU41は、例えば操作入力部44の操作をトリガとして、シャッタ31を開き、水銀ランプ29から出射された波長が500[nm]以下の消光光を標体4の測定領域に対して照射し、次のステップSP5に移る。
【0074】
ステップSP5においてCPU41は、標体4の測定領域の蛍光値が閾値未満になったか否かを判断し、否定結果が得られると、標体4の測定領域の蛍光値が閾値未満になるまでステップSP5を繰り返す。
【0075】
これに対してステップSP5において肯定結果が得られると、このことは、標体4の測定領域の蛍光値が閾値未満になったことを意味し、このときCPU41は次のステップSP6に移る。
【0076】
ステップSP6においてCPU41は、シャッタ31を閉じて標体4の測定領域に対して消光光を遮断させ、この時点を回復開始時刻T0として設定し、次のステップSP7に移る。因みにCPU41は、ステップSP3において開始した蛍光値の測定をステップSP3からステップSP7まで継続して行うようになされている。
【0077】
ステップSP7においてCPU41は、測定された蛍光値と測定時刻とが対応付けられた測定データを基に、(1)式を用いて酵素活性(K)を算出し、次のステップSP8に移って処理を終了する。
【0078】
[1−5.動作及び効果]
以上の構成において酵素活性測定装置1は、水銀ランプ29から出射された波長500[nm]以下の消光光を標体4の測定領域に対して照射させ、該測定領域における代謝産物であるHFCを消光させる。
【0079】
酵素活性測定装置1は、HFCを消光させた時点を回復開始時刻T0に設定し、フェムト秒レーザ11を標体4の測定領域に照射させ、該測定領域で新たに得られるHFCを多光子励起させて蛍光を発光させ、蛍光の強度を蛍光値として光検出器21により測定する。
【0080】
酵素活性測定装置1は、測定された蛍光値と測定時刻とに基づいて、(1)式を用いて酵素活性(K)を算出する。
【0081】
これにより酵素活性測定装置1は、消光させた時点(回復開始時刻T0)からの蛍光値の変化を用いて酵素活性(K)を算出するので、回復開始時刻T0における蛍光値が小さくなり、微小な蛍光値の増加でも酵素活性(K)を精度よく測定することができる。
【0082】
ここで、従来の酵素活性測定方法について説明する。例えば、図7(A)の赤外画像PG4に示すような培養肝臓細胞に対してMFCを投与し、測定を開始した時点を測定開始時刻として蛍光値を測定する。
【0083】
このような酵素活性測定方法では、図7(B)の蛍光画像PG5に示すように、代謝産物であるHFCが多く存在する状態で測定開始時刻を設定することになる。
【0084】
これは、培養肝臓細胞に対してMFCを投与した後、CYP2C9がMFCを代謝し始めるタイミングがわからないので、ある程度の代謝が始まってから蛍光値を測定することになるからである。
【0085】
そしてこの酵素活性測定方法では、測定開始時刻から例えば所定間隔ごとに蛍光値を測定し、該蛍光値及び測定時刻に基づいて酵素活性(K)を算出するようになされている。
【0086】
このような場合、測定開始時刻から150[s]後の蛍光画像PG6を図7(C)に示すように、測定開始時刻での蛍光画像PG5(図7(B))と比較して、ほとんど変化が見られないことが分かる。
【0087】
この酵素活性測定方法で測定された蛍光値測定グラフを図8に示す。このグラフからも分かるように、測定された蛍光値は、測定開始時刻においてある一定の値であり、時間の経過と共に徐々に増加するが、測定開始時刻における蛍光値に対する変化率が小さい。
【0088】
したがってこの酵素活性測定方法では、微小な変化に基づいて酵素活性(K)を算出するので、該酵素活性(K)の算出誤差が大きくなる恐れがあり、精度よく酵素活性を測定できないといった問題がある。
【0089】
また、この酵素活性測定方法では、蛍光値の変化が測定開始時の蛍光値に対して微小であるため、酵素活性(K)の測定精度を上げるためには、測定時間を長くしなくてはならなかった。しかしながら、標体として生体である肝臓を対象とするような場合、測定時間を長くすると、被験者に対して多大な負担を強いることになる。
【0090】
これに対して本発明の酵素活性測定装置1は、酵素活性を算出する際に用いる蛍光値を測定する前に、標体4の測定領域に対して消光光を照射することによって、HFCを消光させておく。
【0091】
従って酵素活性測定装置1は、回復開始時刻T0における測定領域の蛍光値を、測定領域が消光されたとすべき値に設定された閾値未満に下げる。そして酵素活性測定装置1は、閾値未満に下がった蛍光値からの変化を用いて酵素活性(K)として算出するので、蛍光値が微小な変化でも短時間で精度よく酵素活性を測定することができる。
【0092】
また酵素活性測定装置1は、短時間で精度よく酵素活性を測定できるので、生体である肝臓を対象とするような場合でも、被験者に対して負担を大幅に緩和することができる。
【0093】
以上の構成によれば、消光光を標体4の測定領域に照射させてHFCを消光させ、消光させた時点を回復開始時刻T0に設定し、新たに代謝されたHFCから発光させる蛍光の強度を蛍光値として測定し、蛍光値と測定時刻とに基づいて酵素活性を算出する。これにより酵素活性測定装置1は、回復開始時刻T0における蛍光値を小さくして、回復開始時刻T0に対する時間の経過と共に変化する蛍光値の割合を大きくすることができ、かくして短時間で精度よく酵素活性を測定することができる。
【0094】
<2.第2の実施の形態>
第2の実施の形態において、酵素活性測定装置1の構成については、第1の実施の形態と同様であるためその説明を省略する。
【0095】
[2−1.酵素活性測定処理]
CPU41は、酵素活性測定処理の実行命令を操作入力部44から受けた場合、該実行命令に対応するプログラムに従って、画像取得部51、領域設定部52、蛍光測定部53、照射制御部54、酵素活性算出部55(図3)として機能する。
【0096】
画像取得部51は、CCD28により生成された赤外画像データ又は明視野画像データを取得すると、該赤外画像データ又は明視野画像データに対応する画像を表示部46に表示する。
【0097】
このときユーザは、表示部46に表示された画像を確認しながら、酵素活性を測定する領域を操作入力部44を介して特定する。この操作に応じて領域設定部52は、酵素活性を測定する領域を測定領域として設定し、該測定領域に対物レンズ18の焦点を移動させる。
【0098】
またユーザは、酵素活性を測定する領域の中から、消光光を照射させて蛍光を消光させる領域を操作入力部44を介して特定する。この操作に応じて領域設定部52は、測定領域のうちの消光光を照射する領域を消光領域として設定すると共に、消光光を照射しない領域を非消光領域として設定する。
【0099】
蛍光測定部53は、フェムト秒レーザ11を標体4の消光領域及び非消光領域に照射させ、MFCが代謝されて得られるHFCを多光子励起させることにより蛍光を発光させる。そして蛍光測定部53は、光検出器21で測定された消光領域及び非消光領域における蛍光値を所定時間間隔ごとに取得し、取得したときの時刻と対応付けて測定データとして記憶部47に記憶する。
【0100】
画像取得部51は、蛍光画像PG1(図4(A))を生成して表示部46に表示することにより、ユーザにMFCが標体4に到達していることを確認させる。
【0101】
照射制御部54は、例えば操作入力部44の操作をトリガとして、シャッタ31を開き、水銀ランプ29から出射されてショートパスフィルタ32を透過した波長が500[nm]以下の消光光を標体4の消光領域に対してだけ照射する。これにより標体4の消光領域は、MFCが代謝されて蛍光を発していたHFCが光活性機能を消失して消光する。
【0102】
照射制御部54は、シャッタ31を開くと、蛍光測定部53で測定される蛍光値を取得し、標体4の消光領域が消光されたとすべき値に設定された閾値未満に該蛍光値がなったタイミングでシャッタ31を閉じる。このとき標体4の測定領域では、消光領域だけが消光し、非消光領域が蛍光を発し続ける。
【0103】
蛍光測定部53は、照射制御部54によりシャッタ31が閉められた時点を回復開始時刻T0とし、光検出器21で測定された消光領域及び非消光領域の蛍光値を所定時間間隔ごとに取得し、取得したときの時刻と対応付けて測定データとして記憶部47に記憶する。
【0104】
酵素活性算出部55は、蛍光測定部53によって測定された測定データから回復開始時刻T0での蛍光値F0と、該回復開始時刻T0から所定時間経過後の時刻Tでの蛍光値Ftとを読み出す。そして酵素活性算出部55は、消光領域及び非消光領域における酵素活性(K)を(1)式を用いて算出する。
【0105】
[2−2.酵素活性測定処理手順]
次に、上述した酵素活性測定処理の手順について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。因みに、酵素活性測定処理が実行される前にMFCが被験者に投与される。
【0106】
実際上、CPU41は、ルーチンRT2の開始ステップから入って次のステップSP11へ移る。ステップSP11においてCPU41は、CCD28により生成された赤外画像データ又は明視野画像データを取得すると、該赤外画像データ又は明視野画像データに対応する画像を表示部46に表示し、次のステップSP12に移る。
【0107】
ステップSP12においてCPU41は、表示部46に表示された画像を確認させながら操作入力部44を介して特定された蛍光値を測定する領域を測定領域に設定し、該測定領域に対物レンズ18の焦点を移動させ、次のステップSP13に移る。
【0108】
ステップSP13においてCPU41は、操作入力部44からの操作に応じて、測定領域のうち、消光光を照射すべき領域を消光領域として設定し、残りの領域を非消光領域として設定し、次のステップSP14に移る。
【0109】
ステップSP14においてCPU41は、フェムト秒レーザ11を標体4の消光領域及び非消光領域に照射させ、HFCを多光子励起させることにより蛍光を発光させる。そしてCPU41は、光検出器21で測定された蛍光値を所定時間間隔ごとに取得し、取得したときの時刻と対応付けて測定データとして記憶部47に記憶し、次のステップSP15に移る。
【0110】
ステップSP15においてCPU41は、例えば操作入力部44の操作をトリガとして、シャッタ31を開き、水銀ランプ29から出射された波長が500[nm]以下の消光光を標体4の消光領域に対して照射し、次のステップSP16に移る。
【0111】
ステップSP16においてCPU41は、標体4の消光領域の蛍光値が閾値未満になったか否かを判断し、否定結果が得られると、標体4の消光領域の蛍光値が閾値未満になるまでステップSP16を繰り返す。
【0112】
これに対してステップSP16において肯定結果が得られると、このことは、標体4の消光領域の蛍光値が閾値未満になったことを意味し、このときCPU41は次のステップSP17に移る。
【0113】
ステップSP17においてCPU41は、シャッタ31を閉じて標体4の消光領域に対して消光光を遮断させ、この時点を回復開始時刻T0として設定し、次のステップSP18に移る。因みにCPU41は、ステップSP3において開始した蛍光値の測定をステップSP13からステップSP18まで継続して行うようになされている。
【0114】
ステップSP18においてCPU41は、測定された消光領域及び非消光領域の蛍光値と測定時刻とが対応付けられた測定データを基に、(1)式を用いてそれぞれの領域での酵素活性(K)を算出し、次のステップSP19に移って処理を終了する。
【0115】
[2−3.動作及び効果]
以上の構成において酵素活性測定装置1は、水銀ランプ29から出射された波長500[nm]以下の消光光を標体4の消光領域に対して照射させ、該消光領域における代謝産物であるHFCを消光させる。
【0116】
酵素活性測定装置1は、HFCを消光させた時点を回復開始時刻T0に設定し、フェムト秒レーザ11を標体4の消光領域及び非消光領域に照射させ、HFCを多光子励起させることにより蛍光を発生させ、該蛍光の強度を蛍光値として光検出器21により測定する。
【0117】
酵素活性測定装置1は、測定された蛍光値とそのときの時刻とに基づいて、(1)式を用いて消光領域及び非消光領域における酵素活性(K)を算出する。
【0118】
これにより酵素活性測定装置1は、消光領域については、消光させた時点(回復開始時刻T0)からの蛍光値の変化を用いて酵素活性(K)を算出するので、回復開始時刻T0における蛍光値が小さくなる。従って酵素活性測定装置1は、微小な蛍光値の変化でも酵素活性(K)を短時間で精度よく測定することができる。
【0119】
また酵素活性測定装置1は、非消光領域については、回復開始時刻T0において一定の蛍光値である状態からの蛍光値の変化を測定する。
【0120】
従って酵素活性測定1は、消光領域及び非消光領域での酵素活性(K)をそれぞれ算出するので、それぞれに算出された酵素活性(K)を比較し、例えばその平均を取ることにより、さらに精度よく酵素活性(K)を算出することができる。
【0121】
また酵素活性測定装置1は、短時間で精度よく酵素活性を測定できるので、生体である肝臓を対象とするような場合でも、被験者に対して負担を大幅に緩和することができる。
【0122】
さらに酵素活性測定装置1は、標体4の測定領域からさらに小さく設定された消光領域にだけ、水銀ランプ29から出射された波長500[nm]以下の消光光を照射するので、被験者に対して負担を大幅に緩和することができる。
【0123】
以上の構成によれば、消光光を標体4の消光領域に対して照射させてHFCを消光させ、消光させた時点を回復開始時刻T0に設定し、HFCを多光子励起させることにより発光させた蛍光の強度を蛍光値として測定し、測定された蛍光値と測定時刻とを基に基づいて酵素活性を算出する。これにより酵素活性測定装置1は、回復開始時刻T0における蛍光値を小さくして、回復開始時刻T0に対する時間の経過と共に変化する蛍光値の割合を大きくすることができ、かくして短時間で精度よく酵素活性を測定することができる。
【0124】
<3.他の実施の形態>
なお上述した第1及び第2の実施の形態においては、CYP450のサブタイプであるCYP2C9を測定対象の酵素として用いるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、測定対象の酵素に対して特異的に代謝され、代謝前後で蛍光強度が変化する基質を用いるようにすれば、CYP450のあらゆる種類のサブタイプを測定対象の酵素として用いることができる。またCYP450に限らず、他の酵素を測定対象の酵素として用いることができる。
【0125】
また上述した第1及び第2の実施の形態においては、CYP2C9に特異的に代謝されるMFCを基質として用いるようにした場合について述べた。このMFCは、励起光が照射されても蛍光を発することがなく、代謝されることにより得られる代謝産物であるHFCに励起光が照射されて蛍光を発する。このように第1及び第2の実施の形態においては、代謝前後で蛍光強度が変化するような基質を用いたが、本発明はこれに限らず、代謝前後で蛍光の波長が変化するような基質を用いるようにしてもよい。
【0126】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、標体4として生体での肝臓を対象とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、皮膚や他の臓器などを対象とするようにしてもよい。
【0127】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、生体組織や細胞内であるin vivo下での酵素活性を測定するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、細胞の一部を取り出す等のin vitro下での酵素活性を測定するようにしてもよい。
【0128】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、フェムト秒レーザ11から出射されたレーザ光や、水銀ランプ29から出射された消光光をダイクロイックミラー16から空気伝送により対物レンズ18に導くようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、ダイクロイックミラー16と対物レンズ18との間に光ファイバーを設け、該光ファイバーを介してレーザ光や消光光を対物レンズ18に導くようにしてもよい。
【0129】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、水銀ランプ29から出射され、ショートパスフィルタ32によって例えば波長が500[nm]以下でなる消光光によりHFCを消光させるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば、ピコ秒又はナノ秒パルスレーザにより出射される波長約830[nm]のレーザ光によりHFCを消光させるようにしてもよい。
【0130】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、シャッタ31を明けているタイミングとして、消光光を照射してから蛍光値が閾値未満になるまでの時間とするようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば5[s]や10[s]のように予め設定された時間だけ消光光を照射すべくシャッタ31を明けるようにしてもよい。
【0131】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、基質であるMFCを被験者に投与し、該MFCに特異的に作用する酵素CYP2C9の酵素活性を測定するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えばCYP2C9の阻害作用が知りたい道の薬剤(阻害剤)を最適な濃度(数μM)で生理的食塩水にMFCと共に溶解させ、上述した酵素活性測定処理に従って酵素活性を算出する。そしてMFCだけを投与した場合における酵素活性と、阻害剤を混合した場合における酵素活性とに基づいて阻害活性を測定するようにしてもよい。
【0132】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、シャッタ31が設けられ、照射制御部54によりシャッタ31の開閉により消光光を測定領域又は消光領域に照射するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、シャッタ31を設けず、照射制御部54により水銀ランプ29をオンオフすることにより消光光を測定領域又は消光領域に照射するようにしてもよい。
【0133】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、シャッタ31を閉めたタイミングを回復開始時刻T0として設定するようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、測定領域又は消光領域が消光された直後とされるのであれば、シャッタ31を閉めたタイミングから所定時間経過後を回復開始時刻T0として設定するようにしてもよい。
【0134】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、CPU41がROM42に格納されているプログラムに従い、上述した酵素活性測定処理を行うようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、記憶媒体からインストールしたり、インターネットからダウンロードしたプログラムに従って上述した酵素活性測定処理を行うようにしても良い。またその他種々のルートによってインストールしたプログラムに従って上述した酵素活性測定処理を行うようにしても良い。
【0135】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態においては、第1光源としてフェムト秒レーザ11、第2光源として水銀ランプ29、照射制御部として照射制御部54、測定部として蛍光測定部53及び算出部として酵素活性算出部55が設けられるようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる光源、照射制御部、測定部及び算出部を設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、生物実験、医薬の創製又は患者の経過観察などのバイオ産業上において利用可能である。
【符号の説明】
【0137】
1……酵素活性測定装置、2……多光子顕微鏡、3……データ処理部、4……標体、11……フェムト秒レーザ、12……ビーム径調整器、13……XYスキャナ、14……ラインフィルタ、15、16……ダイクロイックミラー、17……焦点位置調節機構、18……対物レンズ、19、32……ショートパスフィルタ、20……集光レンズ、21……光検出器、22……白色光源、23、30……コリメータレンズ、24、26……ロングパスフィルタ、25……落射光学系、27……結像レンズ、28……CCD、29……水銀ランプ、31……シャッタ、41……CPU、42……ROM、43……RAM、44……操作入力部、45……インターフェイス部、46……表示部、47……記憶部、48……バス、51……画像取得部、52……領域設定部、53……蛍光値測定部、54……照射制御部、55……酵素活性算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多光子励起させるための光を第1光源から照射させることにより蛍光を発する代謝産物に対して、蛍光を消光させるための光を第2光源から照射させる照射制御ステップと、
上記照射制御ステップにおいて上記第2光源から光を照射させ終わった直後からの、基質が測定対象の酵素によって新たに代謝されて得られる代謝産物から発光させる蛍光の程度を測定する測定ステップと、
上記測定ステップにより測定された蛍光の程度に基づいて、上記酵素の酵素活性を算出する算出ステップと
を有する酵素活性測定方法。
【請求項2】
上記照射制御ステップでは、
測定対象とすべき領域全体に対して上記第2光源からの光を照射させる
請求項1に記載の酵素活性測定方法。
【請求項3】
上記照射制御ステップでは、
上記標体における測定対象とすべき領域の一部分に上記第1光源からの光を照射させ、
上記測定ステップでは、
上記一部分及び上記領域における上記一部分以外の領域の上記蛍光の程度を測定する
請求項1に記載の酵素活性測定方法。
【請求項4】
測定対象の酵素によって基質が代謝されて得られる代謝産物を多光子励起させるための光を出射する第1光源と、
上記代謝産物が発する蛍光を消光させるための光を出射する第2光源と、
上記第1光源及び第2光源から光を測定対象とすべき領域に対して照射させる照射制御部と、
上記第2光源から光を照射させ終わった直後からの、基質が測定対象の酵素によって新たに代謝されて得られる代謝産物から発光させる蛍光の程度を測定する測定部と、
上記測定部により測定された蛍光の程度に基づいて、上記酵素の酵素活性を算出する算出部と
を有する酵素活性測定装置。
【請求項5】
コンピュータに対して、
多光子励起させるための光を第1光源から照射させることにより蛍光を発する代謝産物に対して、蛍光を消光させるための光を第2光源から照射させる照射制御ステップと、
上記照射制御ステップにおいて上記第2光源から光を照射させ終わった直後からの、基質が測定対象の酵素によって新たに代謝されて得られる代謝産物から発光させる蛍光の程度を測定する測定ステップと、
上記測定ステップにより測定された蛍光の程度に基づいて、上記酵素の酵素活性を算出する算出ステップと
を実行させる酵素活性測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−125266(P2011−125266A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286695(P2009−286695)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(504261077)大学共同利用機関法人自然科学研究機構 (156)
【Fターム(参考)】