説明

酵素的な過酸の生成のためのペルヒドロラーゼ

標的濃度のペルオキシカルボン酸をカルボン酸エステルから急速に生成するための方法が提供される。より具体的には、カルボン酸エステルは、過加水分解活性を有するラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのアセチルキシランエステラーゼに対する同一性を有する酵素を含む酵素触媒の存在下で、過酸化水素などの過酸素源と反応される。ポリペプチドは、構造的に、炭水化物エステラーゼファミリー7(CE−7)のメンバーとして分類される酵素である。本発明の方法によって生成されるペルオキシカルボン酸は、消毒、漂白、および他のランドリーケア用途において使用することができる。反応成分および本方法によって生成されるペルオキシカルボン酸を含む組成物も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペルオキシカルボン酸の生合成およびその場(in situ)での酵素触媒作用の分野に関する。具体的には、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)からのアセチルキシランエステラーゼに対する同一性を有する酵素を含む酵素触媒を用いてペルオキシカルボン酸を生成するための方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシカルボン酸組成物は有効な抗菌剤であり得る。望ましくない微生物の増殖に対して硬い表面、織物、食肉製品、生きた植物組織、および医療デバイスを清浄化、消毒および/または衛生化するためにペルオキシカルボン酸を用いる方法が記載されている(特許文献1、2、3、4、および5)。ペルオキシカルボン酸は、漂白剤としてのその使用など、種々のランドリーケア用途においても使用されている(特許文献6、7、および8)。
【0003】
ペルオキシカルボン酸は、カルボン酸アルキルエステルと、過酸化水素などの過酸化物試薬との化学反応によって調製することができる(非特許文献1を参照)。しかしながら、わずかに塩基性〜酸性のpH(約8〜約4)では、反応は、多くの商業的な消毒および/または漂白用途に適したペルオキシカルボン酸濃度を生じるのに十分に速くは進行しないことが多い。
【0004】
化学的なペルオキシカルボン酸の生成の不都合を克服する1つの方法は、過加水分解活性を有する酵素触媒を使用することである。特許文献9、ならびに10、11、および12には、構造的に炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリーのメンバー(例えば、セファロスポリンCデアセチラーゼ[CAH]およびアセチルキシランエステラーゼ[AXE])であると分類され、消毒薬および/または漂白剤として使用するのに十分な濃度でカルボン酸エステル(過酸化水素などの適切な過酸素源の存在下)をペルオキシカルボン酸に転化させるために著しい過加水分解活性を特徴とする酵素が開示されている。反応成分が混合されると、炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリーのいくつかのメンバーは、アルコール、ジオール、およびグリセロールのアセチルエステルから、1分間に4000〜5000ppm、そして5分〜30分の間に9000ppmまでの過酢酸を生じるのに十分な過加水分解活性を有することが実証されている(特許文献12)。CE−7ペルヒドロラーゼは、過剰な基質、約6.0〜約8.5のpH、および適切な温度範囲を含む適切な水性反応条件下で、30分以上経過してから過酸の濃度の増大を起こすことがよくある。通常、反応のpHは、有効量の少なくとも1つの緩衝液を用いて維持される。このような条件を用いて生成されるペルオキシ酢酸の量は望ましい量を超過することもあるし、特定の用途のために効果的な濃度に最終的に到達するまでに時間がかかり過ぎることもある。
【0005】
ペルオキシカルボン酸(例えば、過酢酸)の酵素的な生成は通常水性反応条件を用いて行われる。従って、エステル基質の加水分解および/またはペルオキシカルボン酸の加水分解から、対応するカルボン酸(例えば、酢酸)を生成する加水分解反応(化学的および/または酵素的)が生じることにより、所望の生成物が破壊されることが多い。酵素的な過加水分解の生成物(ペルオキシカルボン酸またはペルオキシカルボン酸および対応するカルボン酸加水分解生成物の混合物)は、特定の金属表面に対して腐食性であり得る。従って、反応中に生成されるペルオキシカルボン酸の総量を制限して、得られる溶液の腐食作用を防止または最小限にするのが望ましいこともある。例えば、1分間に200ppm〜1000ppm以下の過酸の生成を必要とする用途では、これらの限界をはるかに上回る最終濃度の過酸を生じる反応条件が使用されることが多い。硬い表面を消毒するために過酸をその場で発生させる用途では、効果的な消毒濃度の上限を著しく超えることなく所望の濃度の過酸を急速に発生させることにより、表面の特定の成分の腐食を制限または防止する能力があることが望ましい。洗濯物または織物の漂白のために過酸をその場で発生させる用途でも、漂白のために必要とされる濃度を上回って発生される過酸の濃度に対して同様の制限が望ましい。従って、特に過剰な基質の存在下で、所望の「標的」濃度のペルオキシカルボン酸を急速に生成するための方法を提供することが必要とされている。
【0006】
多くのCE−7炭水化物エステラーゼは、pHが約6.0未満に降下したときに過加水分解活性の低下または不活性化を示し、CE−7ペルヒドロラーゼのほとんどは5.0以下のpHで不活性化される。特許文献13は、反応成分および条件を選択することにより、酵素触媒が過加水分解活性を少ししかまたは全く有さない値まで反応混合物のpHを低下させる反応生成物(すなわち、ペルオキシカルボン酸および対応するカルボン酸加水分解生成物)が形成されることによって、所望の「標的」濃度のペルオキシカルボン酸を生成する方法を教示している。反応成分および条件は、反応混合物のpHが10分以内に6.0未満に降下して、生成されるペルオキシカルボン酸の濃度を制御することができるように選択される。しかしながら、6.0未満のpHを有する生成混合物は、特に反応生成物と接触する表面が腐食および過度の漂白の影響を受けやすい場合、一部の消毒および/または漂白用途のためには望ましくないこともある。このような状況下では、反応混合物のpHの実質的な降下に依存せず、酵素的に生成されるペルオキシカルボン酸の量を制御することが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,545,047号明細書
【特許文献2】米国特許第6,183,807号明細書
【特許文献3】米国特許第6,518,307号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0026846号明細書
【特許文献5】米国特許第5,683,724号明細書
【特許文献6】米国特許第3,974,082号明細書
【特許文献7】米国特許第5,296,161号明細書
【特許文献8】米国特許第5,364,554号明細書
【特許文献9】米国特許出願第11/638,635号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0176783号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/0176299号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2009/0005590号明細書(DiCosimoら)
【特許文献13】米国特許出願第12/539,025号明細書(DiCosimoら)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Organic Peroxide」,Daniel Swern編,第1巻,313−516頁,Wiley Interscience,New York,1971年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決すべき問題は、pHの著しい降下または6.0未満のpHに依存せずに、水性反応混合物中で所望の濃度のペルオキシカルボン酸を酵素的に生成する方法を提供することである。選択される反応成分および反応条件は、標的濃度がいったん達成されたら実質的に増大しない濃度で、所望のペルオキシカルボン酸を急速に生成することができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題は、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を5分以内に生成する(所望の濃度がいったん達成されたら実質的に増大しない)ための酵素的な方法の発見によって解決されており、ここで、反応混合物のpHは反応の過程を通して6.0〜9.0の間に維持される。本方法は、過加水分解活性を有する酵素を含む酵素触媒の使用を含み、前記酵素は、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)からのアセチルキシランエステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有する。本発明の酵素触媒は、過剰の基質の存在下および6.0〜9.0のpH範囲(他のCE−7ペルヒドロラーゼでは、通常、5分以上経過した後に実質的に増大する濃度のペルオキシカルボン酸が生成される条件)においても、5分以内に実質的に安定した標的濃度のペルオキシカルボン酸濃度を有する生成混合物の急速な生成を可能にする。
【0011】
一実施形態では標的濃度のペルオキシカルボン酸の生成方法が提供されており、本方法は、
a)1)i)構造
[X]
[式中、X=式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含んでおり、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水中の溶解度を有するエステル、
ii)構造
【化1】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
2)過酸素源と、
3)CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記シグネチャーモチーフが、
i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および
iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、前記酵素が配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素触媒と
を含む一組の反応成分を選択するステップと、
b)反応成分を水性反応下で混ぜ合わせて反応混合物を形成し、それにより、酵素的に生成されたペルオキシカルボン酸を含む反応生成物が形成されるステップであって、
1)反応混合物のpHが、約6.0〜約9.0の範囲内にとどまり、
2)反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから5分以上の反応時間で、100%よりも大きく超過されないステップと
を含む。
【0012】
別の実施形態ではペルオキシカルボン酸の生成方法が提供されており、本方法は、
a)1)i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含んでおり、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水中の溶解度を有するエステル、
ii)構造
【化2】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
2)過酸素源と、
3)CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記シグネチャーモチーフが、
(i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
(ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および(iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、前記酵素が配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素触媒と
を含む一組の反応成分を選択するステップと、
b)反応成分を水性反応下で混ぜ合わせて反応混合物を形成し、それにより、酵素的に生成されたペルオキシカルボン酸を含む反応生成物が形成されるステップであって、
1)反応混合物のpHが約6.0〜約9.0の範囲内にとどまり、そして
2)反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上の反応時間で、100%よりも大きく超過されないステップと
を含む。
【0013】
また別の態様では、
a)1)i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含んでおり、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水中の溶解度を有するエステル、
ii)構造
【化3】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
2)過酸素源と、
3)CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記シグネチャーモチーフが、
i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および
iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、前記酵素も配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素触媒と
を含む一組の反応成分と、
b)(a)の一組の反応成分を混ぜ合わせたときに形成される少なくとも1つのペルオキシカルボン酸と
を含む組成物も提供される。
【0014】
本発明の方法は、反応成分を混ぜ合わせたときに所望のペルオキシカルボン酸を生成する。反応成分は、使用するまで別々に保持され得る。さらなる態様では、反応成分を含むキットも提供されており、本キットは、
a)1)配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素を含む酵素触媒と、
2)i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含んでおり、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水中の溶解度を有するエステル、
ii)構造
【化4】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
3)任意選択的な緩衝液と
を含む第1のコンパートメントと、
b)1)過酸素源、
2)過酸化物安定剤、および
3)任意選択的な緩衝液
を含む第2のコンパートメントと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMセファロスポリンCデアセチラーゼ参照配列(配列番号2)、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号4)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号6)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アセチルキシランエステラーゼ、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号39)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号40)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号41)を含む、ペルヒドロラーゼ活性を有するいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全てペルヒドロラーゼ活性を有し、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7(CE−7)のメンバーであると分類され、全てのCE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存サブモチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。
【図1B】バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMセファロスポリンCデアセチラーゼ参照配列(配列番号2)、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号4)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号6)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アセチルキシランエステラーゼ、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号39)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号40)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)アセチルキシランエステラーゼ(配列番号41)を含む、ペルヒドロラーゼ活性を有するいくつかの酵素のCLUSTALWアライメント(バージョン1.83)の結果を示す。酵素は全てペルヒドロラーゼ活性を有し、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7(CE−7)のメンバーであると分類され、全てのCE−7炭水化物エステラーゼのためのシグネチャーモチーフを一緒に形成する保存サブモチーフ(下線)を共有する(Vincentら,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003年)および米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。
【0016】
生物学的配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.§§1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(WIPO)基準ST.25(1998年)、ならびに欧州特許条約(EPC)および特許協力条約(PCT)規則5.2および49.5(aの2)および実施細則の208項および付録Cの配列表の要件と一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データに対して使用される記号および形式は、37C.F.R.§1.822に記載される規則に従う。
【0017】
配列番号1は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号D10935)。
【0018】
配列番号2は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMからのセファロスポリンCデアセチラーゼのアミノ酸配列である。
【0019】
配列番号3は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号EU255910)。
【0020】
配列番号4は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号ABX75634.1)。
【0021】
配列番号5は、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号NC_002678.2)。
【0022】
配列番号6は、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号BAB53179.1)。
【0023】
配列番号7は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号AF038547.2)。
【0024】
配列番号8は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である(GENBANK(登録商標)受入番号AAF70202.1)。
【0025】
配列番号9は、カナマイシン耐性遺伝子の核酸配列である。
【0026】
配列番号10は、プラスミドpKD13の核酸配列である。
【0027】
配列番号11および12は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatGカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン遺伝子をコードするPCR産物を発生させるために使用されるプライマーである。この産物は、内在性katG遺伝子を破壊するために使用した。
【0028】
配列番号13は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatGカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン耐性遺伝子をコードするPCR産物の核酸配列である。この産物は、内在性のkatG遺伝子を破壊するために使用した。
【0029】
配列番号14は、E.コリ(E.coli)MG1655中のkatGカタラーゼ遺伝子の核酸配列である。
【0030】
配列番号15は、E.コリ(E.coli)MG1655中のKatGカタラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0031】
配列番号16は、プラスミドpKD46の核酸配列である。
【0032】
配列番号17および18は、katG遺伝子の破壊を確認するために使用されるプライマーである。
【0033】
配列番号19は、プラスミドpCP20の核酸配列である。
【0034】
配列番号20および21は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatEカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン遺伝子をコードするPCR産物を発生させるために使用されるプライマーである。この産物は、内在性katE遺伝子を破壊するために使用した。
【0035】
配列番号22は、E.コリ(E.coli)MG1655においてkatEカタラーゼ遺伝子に対する相同性を有する領域に隣接したカナマイシン耐性遺伝子をコードするPCR産物の核酸配列である。この産物は、内在性katE遺伝子を破壊するために使用した。
【0036】
配列番号23は、E.コリ(E.coli)MG1655中のkatEカタラーゼ遺伝子の核酸配列である。
【0037】
配列番号24は、E.コリ(E.coli)MG1655中のKatEカタラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0038】
配列番号25および26は、単一ノックアウト株E.コリ(E.coli)MG1655ΔkatE、および二重ノックアウト株E.コリ(E.coli)MG1655ΔkatGΔkatE(本明細書ではE.コリ(E.coli)KLP18と称される)におけるkatE遺伝子の破壊を確認するために使用されるプライマーである。
【0039】
配列番号27および28は、pTrcHis2−TOPO(登録商標)内にサブクローニングされたラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)アセチルキシランエステラーゼのコドン最適化型をコードするPCR産物を生成して、pSW229として同定されるプラスミドを作成するために使用されるPCRプライマーである。
【0040】
配列番号29は、プラスミドpSW229内のPCR産物の核酸配列である。
【0041】
配列番号30は、プラスミドpSW229の核酸配列である。
【0042】
配列番号31および32は、pTrcHis2−TOPO(登録商標)内にサブクローニングされたメソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)アセチルキシランエステラーゼのコドン最適化型をコードするPCR産物を生成して、pSW231として同定されるプラスミドを作成するために使用されるPCRプライマーである。
【0043】
配列番号33は、プラスミドpSW231内のPCR産物の核酸配列である。
【0044】
配列番号34は、プラスミドpSW231の核酸配列である。
【0045】
配列番号35および36は、pTrcHis2−TOPO(登録商標)内にサブクローニングされたゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)アセチルキシランエステラーゼのコドン最適化型をコードするPCR産物を生成して、pSW236として同定されるプラスミドを作成するために使用されるPCRプライマーである。
【0046】
配列番号37は、プラスミドpSW236内のPCR産物の核酸配列である。
【0047】
配列番号38は、プラスミドpSW236の核酸配列である。
【0048】
配列番号39は、過加水分解活性を有するサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)酵素のアミノ酸配列である(米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、GENBANK(登録商標)AAB70869.1)。
【0049】
配列番号40は、過加水分解活性を有するサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)酵素のアミノ酸配列である(米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、GENBANK(登録商標)NP_227893.1)。
【0050】
配列番号41は、過加水分解活性を有するバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)酵素のアミノ酸配列である(米国特許出願公開第2008/0176299号明細書、Degrassiら,Microbiology,146:1585−1591(2000年))。
【発明を実施するための形態】
【0051】
基質、過酸素源、および過加水分解活性を有する酵素触媒を混ぜ合わせることによりペルオキシカルボン酸を生成するための方法が提供されており、ここで、酵素触媒は、CE−7シグネチャーモチーフと、配列番号4に対する少なくとも95%のアミノ酸同一性とを有する酵素を含む。約6.0〜約9.0のpH範囲内にとどまる水性反応混合物中で反応を実行する場合、酵素触媒は、他の反応成分と混ぜ合わせられる際に、ペルオキシカルボン酸生成の高い初期速度と、その後の過加水分解活性の急速な低下および/または損失とを特徴とする。これらの特徴の組み合わせは、所望の過酸濃度がいったん生じたら実質的に増大しないペルオキシカルボン酸濃度(「標的」濃度)の急速な生成を容易にする。
【0052】
本発明の方法によって生成されるペルオキシカルボン酸の量は、反応混合物中の基質の量によっても過酸素の量によっても制限されないことが理解される。このようにして、本明細書中に記載される反応条件(過加水分解活性を有する他のCE−7酵素では、通常、反応成分を混ぜ合わせてから5分より長く経過しても、実質的に増大する濃度でペルオキシカルボン酸を生成し続ける条件)下で、本発明の酵素触媒を用いて生成されるペルオキシカルボン酸の量を制御することができる。
【0053】
本発明の方法によって生成されるペルオキシカルボン酸は、消毒、漂白、または(消毒および漂白に加えて)脱染、脱臭、およびこれらの組み合わせを含み得るランドリーケア用途のために織物に利益を提供することを含む(これらに限定されない)様々な用途で使用することができる。本発明の方法は、過剰量のペルオキシカルボン酸および/または6.0未満のpHが腐食または過剰漂白などの望ましくない効果を有する可能性のある用途で使用するために特に魅力的である。
【0054】
本開示ではいくつかの用語および略語が使用される。他に具体的に記載されない限りは以下の定義が適用される。
【0055】
本明細書で用いられる場合、「含む(comprising)」という用語は、特許請求の範囲において言及される規定の特徴、整数、ステップ、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらの群の存在または付加を排除しない。「含む」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0056】
本明細書で用いられる場合、使用される材料または反応物の量を修正する「約」という用語は、例えば、濃縮物を製造するため、または実際に溶液を使用するために使用される典型的な測定および液体処理手順によって、これらの手順における故意でない誤差によって、組成物を製造する、または方法を実行するために使用される材料の製造、供給源、または純度の差異によって、および同類のことによって生じ得る数量の変動を指す。また「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物に対する平衡条件が異なるために異なる量も包含する。「約」という用語によって修正されるかどうかにかかわらず、特許請求の範囲は、その量と同等の量を含む。
【0057】
本明細書で用いられる場合、「ペルオキシカルボン酸」という用語は、過酸、ペルオキシ酸(peroxyacid)、ペルオキシ酸(peroxy acid)、過カルボン酸およびペルオキソ酸(peroxoic acid)と同義である。
【0058】
本明細書で用いられる場合、「過酢酸」という用語は「PAA」と略され、ペルオキシ酢酸、エタンペルオキソ酸、およびCAS登録番号79−21−0の他の全ての同義語と同義である。
【0059】
本明細書で用いられる場合、「モノアセチン」という用語は、グリセロールモノアセタート、グリセリンモノアセタート、およびグリセリルモノアセタートと同義である。
【0060】
本明細書で用いられる場合、「ジアセチン」という用語は、グリセロールジアセタート、グリセリンジアセタート、グリセリルジアセタート、およびCAS登録番号25395−31−7の全ての他の同義語と同義である。
【0061】
本明細書で用いられる場合、「トリアセチン」という用語は、グリセリントリアセタート、グリセロールトリアセタート、グリセリルトリアセタート、1,2,3−トリアセトキシプロパン、1,2,3−プロパントリオールトリアセタート、およびCAS登録番号102−76−1の全ての他の同義語と同義である。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「モノブチリン」という用語は、グリセロールモノブチラート、グリセリンモノブチラート、およびグリセリルモノブチラートと同義である。
【0063】
本明細書で用いられる場合、「ジブチリン」という用語は、グリセロールジブチラートおよびグリセリルジブチラートと同義である。
【0064】
本明細書で用いられる場合、「トリブチリン」という用語は、グリセロールトリブチラート、1,2,3−トリブチリルグリセロール、およびCAS登録番号60−01−5の全ての他の同義語と同義である。
【0065】
本明細書で用いられる場合、「モノプロピオニン」という用語は、グリセロールモノプロピオナート、グリセリンモノプロピオナート、およびグリセリルモノプロピオナートと同義である。
【0066】
本明細書で用いられる場合、「ジプロピオニン」という用語は、グリセロールジプロピオナートおよびグリセリルジプロピオナートと同義である。
【0067】
本明細書で用いられる場合、「トリプロピオニン」という用語は、グリセリルトリプロピオナート、グリセロールトリプロピオナート、1,2,3−トリプロピオニルグリセロール、およびCAS登録番号139−45−7の全ての他の同義語と同義である。
【0068】
本明細書で用いられる場合、「酢酸エチル」という用語は、酢酸エーテル、アセトキシエタン、エタン酸エチル、酢酸エチルエステル、エタン酸エチルエステル、エチル酢酸エステル、およびCAS登録番号141−78−6の全ての他の同義語と同義である。
【0069】
本明細書で用いられる場合、「乳酸エチル」という用語は、乳酸エチルエステル、およびCAS登録番号97−64−3の全ての他の同義語と同義である。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「アセチル化糖」および「アセチル化糖類」という用語は、少なくとも1つのアセチル基を含む単糖、二糖および多糖を指す。例として、グルコースペンタアセタート、キシローステトラアセタート、アセチル化キシラン、アセチル化キシラン断片、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本明細書で用いられる場合、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基」、および「ヒドロカルビル部分」という用語は、炭素−炭素の単結合、二重結合、または三重結合および/またはエーテル結合によって結合され、それに応じて水素原子によって置換された炭素原子の直鎖、分枝状または環状配置を意味する。このようなヒドロカルビル基は、脂肪族および/または芳香族であり得る。ヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、およびフェニルが挙げられる。好ましい実施形態では、ヒドロカルビル部分は、炭素−炭素単結合および/またはエーテル結合によって結合され、それに応じて水素原子によって置換された炭素原子の直鎖、分枝状または環状配置である。
【0072】
本明細書で用いられる場合、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールの「モノエステル」および「ジエステル」という用語は、式RC(O)O(式中、RはC1〜C7線状ヒドロカルビル部分である)の少なくとも1つのエステル基を含む前記化合物を指す。一実施形態では、基質は、プロピレングリコールジアセタート(PGDA)、エチレングリコールジアセタート(EGDA)またはこれらの混合物を含む。
【0073】
本明細書で用いられる場合、「適切な酵素反応混合物」、「ペルオキシカルボン酸の発生に適切な成分」、「適切な反応成分」、「反応成分」、「反応混合物」、および「適切な水性反応混合物」という用語は、反応物および本発明の酵素触媒が接触される材料および水を指す。反応混合物の成分は本明細書において提供されており、当業者は本方法に適した成分の変化の範囲を認識する。一実施形態では、酵素反応混合物は、反応成分を混ぜ合わせると、その場でペルオキシカルボン酸を生成する。従って、反応成分は多成分系として提供され、反応成分の1つまたは複数は使用されるまで別々に保持され得る。いくつかの活性成分を分離および結合するための系および手段の設計は当該技術分野において知られており、一般に、個々の反応成分の物理的な形態に依存するであろう。例えば、反応性流体を混合したときに所望の漂白剤が生成されるいくつかの漂白用途において見られるように、いくつかの活性流体(液体−液体)系は、通常、マルチチャンバディスペンサーボトルまたは2相系を使用する(米国特許出願公開第2005/0139608号明細書、米国特許第5,398,846号明細書、米国特許第5,624,634号明細書、米国特許第6,391,840号明細書、欧州特許第0807156B1号明細書、米国特許出願公開第2005/0008526号明細書、およびPCT公報国際公開第00/11713A1号パンフレット)。ペルオキシカルボン酸を発生させるために使用される多成分系の他の形態には、粉末(例えば、いくつかの市販の漂白組成物、米国特許第5,116,575号明細書)、多層錠剤(米国特許第6,210,639号明細書)、いくつかのコンパートメントを有する水溶性パケット(米国特許第6,995,125号明細書)および水を添加すると反応する固体凝集体(米国特許第6,319,888号明細書)などの、1つまたは複数の固体成分または固体−液体成分の組み合わせのために設計されたものが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書で用いられる場合、「基質」という用語は、過酸化水素などの適切な過酸素源の存在下で本発明の酵素触媒を用いて酵素的に過加水分解される反応成分を指すであろう。一実施形態では、基質は、本発明の酵素触媒を用いて酵素的に過加水分解されることが可能な少なくとも1つのエステル基を含み、それにより、ペルオキシカルボン酸が生成される。さらなる実施形態では、本発明の方法は、実質的に安定した標的濃度のペルオキシカルボン酸の生成が過剰な基質の存在下で達成される反応成分および条件を含む。
【0075】
本明細書で用いられる場合、「反応生成物」という用語は、選択された反応成分を混ぜ合わせた後に反応混合物内で形成される化合物の混合物を指すであろう。反応生成物は、酵素的に発生されたペルオキシカルボン酸(例えば、過酢酸)と、対応するカルボン酸(例えば、酢酸)などの1つまたは複数の加水分解生成物(酵素的および/または化学的な加水分解生成物)とで構成される。一実施形態では、選択された反応成分のセットを混ぜ合わせると、反応成分を混ぜ合わせた10分以内、好ましくは約1分〜約10分以内に過加水分解触媒を実質的に減少および/または不活性化させる反応生成物を形成することができる反応混合物が生じ、ここで、反応混合物のpHは、ペルオキシカルボン酸の所望の標的濃度が達成されるまで、6.0〜9.0の間、好ましくは6.5〜8.0の間に維持される。一実施形態では、酵素触媒の過加水分解活性は、反応成分を混ぜ合わせてから10分以内に少なくとも80%低減される。
【0076】
本明細書で用いられる場合、「過加水分解」という用語は、ペルオキシカルボン酸を形成するための、選択された基質と過酸化水素源との反応であると定義される。通常、無機過酸化物が触媒の存在下で選択された基質と反応されて、ペルオキシカルボン酸を生成する。本明細書で用いられる場合、「化学的な過加水分解」という用語は、基質(ペルオキシカルボン酸前駆体)が過酸化水素源と混ぜ合わせられる過加水分解反応を含み、この場合、ペルオキシカルボン酸は酵素触媒の非存在下で形成される。本明細書で用いられる場合、「酵素的な過加水分解」という用語は、ペルオキシカルボン酸を形成するための、選択された基質と過酸化水素源との反応を指し、この場合、反応は過加水分解活性を有する酵素触媒によって触媒される。
【0077】
本明細書で用いられる場合、「ペルヒドロラーゼ活性」という用語は、タンパク質の単位質量(例えば、ミリグラム)、乾燥細胞重量、または固定化触媒重量あたりの酵素触媒活性を指す。
【0078】
本明細書で用いられる場合、「酵素活性の1単位」または「活性の1単位」または「U」は、特定の温度で1分あたり1μmolのペルオキシカルボン酸生成物を生成するために必要とされるペルヒドロラーゼ活性の量であると定義される。
【0079】
本明細書で用いられる場合、「酵素触媒」および「ペルヒドロラーゼ触媒」という用語は、過加水分解活性を有する酵素を含む触媒を指し、全微生物細胞、透過処理された微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つまたは複数の細胞成分、部分精製酵素、または精製酵素の形態であり得る。また酵素触媒は、化学修飾されていてもよい(例えば、ペグ化による、または架橋試薬との反応による)。またペルヒドロラーゼ触媒は、当業者によく知られている方法を用いて可溶性または不溶性の担体に固定化されていてもよく、例えば、「Immobilization of Enzymes and Cells」,Gordon F.Bickerstaff編,Humana Press,Totowa,NJ,USA,1997年が参照される。本明細書中に記載されているように、過加水分解活性を有する本発明の酵素は、構造的に、酵素の炭水化物ファミリーエステラーゼファミリー7(CE−7ファミリー)のメンバーであると分類される(Coutinho,P.M.,Henrissat,B.「Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach」in「Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering」,H.J.Gilbert,G.Davies,B.HenrissatおよびB.Svensson編,(1999年)The Royal Society of Chemistry,Cambridge,3−12頁を参照)。本発明のCE−7ペルヒドロラーゼ触媒は、アミノ酸配列番号4を有する酵素または配列番号4と実質的に類似している酵素を含む。実質的に類似の生物学的分子を同定するための手段は当該技術分野においてよく知られている(例えば、配列アライメントプロトコール、核酸ハイブリダイゼーション、保存シグネチャーモチーフの存在など)。1つの態様では、本発明の方法における酵素触媒は、配列番号4に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有する実質的に類似の酵素を含む。過加水分解活性を有する本発明の酵素をコードする核酸分子も本明細書中で提供される。さらなる実施形態では、本発明の方法において有用なペルヒドロラーゼ触媒は、アミノ酸配列番号4を有するポリペプチドをコードする核酸分子とストリンジェント条件でハイブリッド形成する核酸分子によってコードされる。
【0080】
本明細書で用いられる場合、「セファロスポリンCデアセチラーゼ」および「セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ」という用語は、セファロスポリンCおよび7−アミノセファロスポラン酸などのセファロスポリンの脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.41)を指す(Mitsushimaら,Appl.Environ.Microbiol.,61(6):2224−2229(1995年)、米国特許第5,528,152号明細書、および米国特許第5,338,676号明細書)。セファロスポリンCデアセチラーゼと分類される酵素は、多くの場合、有意なペルヒドロラーゼ活性を有することが示されている(DiCosimoら、米国特許出願公開第2008/0176783号明細書)。
【0081】
本明細書で用いられる場合、「アセチルキシランエステラーゼ」は、アセチル化キシランおよび他のアセチル化糖類の脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.72、AXE)を指す。アセチルキシランエステラーゼと分類される酵素はペルヒドロラーゼ活性を有することが示されている(DiCosimoら、米国特許出願公開第2009/0005590号明細書)。
【0082】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TM」という用語は、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)31954TMを有する、American Type Culture
Collection(ATCC)に寄託された細菌細胞を指す。B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)31954TMからの有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は既に記載されており(米国特出願許第11/638,635号明細書)、配列番号2として提供される(GENBANK(登録商標)受入番号BAA01729.1)。B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)31954TMペルヒドロラーゼ配列(配列番号2)は、CE−7炭水化物エステラーゼファミリー内の保存構造を定義する保存CE−7シグネチャーモチーフを示すための参照配列として使用される(米国特許出願公開第2008/0176783号明細書およびVincentらの上記文献)。参照配列番号2とのCLUSTALWを用いるアミノ酸配列アライメントは、CE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を同定するために使用することができる。保存モチーフを示すいくつかのファミリー7炭水化物エステラーゼのCLUSTALアライメントの一例は、図1Aおよび1Bに提供されている。小さい挿入および欠失のために、モチーフの相対的なアミノ酸位置の間のわずかな変化(通常、6個のアミノまたはそれ以下)が予想される。従って、CE−7シグネチャーモチーフを含むアミノ酸配列を参照および主張する際に、参照配列のアミノ酸残基の番号付けが使用される。
【0083】
本明細書で用いられる場合、「ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)」という用語は、乳製品の発酵および植物材料の発酵などの非乳製品分野において使用されている細菌の種を指す(Siezenら,Appl.Environ.Microbiol.(2008年)74(2):424−436)。ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)は発酵した植物材料と関連することがより多い亜種であるが、亜種ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモラ(Lactococcus lactis subsp. cremora)はより一般的に乳製品の発酵に関連する。一実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸配列同一性(あるいは、種々の実施形態では、96%、97%、98%、または99%の配列同一性)を有する酵素を含む。好ましい実施形態では、本発明の酵素触媒は、過加水分解活性を有し、アミノ酸配列番号4を有するラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)からのアセチルキシランエステラーゼ(GENBANK(登録商標)受入番号ABX75634.1)を含む。
【0084】
本明細書で用いられる場合、「メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)」という用語は、過加水分解活性を有するアセチルキシランエステラーゼを含む好熱性細菌を指し、配列番号6(GENBANK(登録商標)受入番号BAB53179.1)で提供される。
【0085】
本明細書で用いられる場合、「ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」という用語は、過加水分解活性を有するアセチルキシランエステラーゼを含む好熱性細菌を指し、配列番号8(GENBANK(登録商標)受入番号AAF70202.1)で提供される。
【0086】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)」という用語は、過加水分解活性を有するアセチルキシランエステラーゼを含む細菌を指し、配列番号39(GENBANK(登録商標)AAB70869、参照によって本明細書中に援用される米国特許出願公開第2008/0176299号明細書)で提供される。
【0087】
本明細書で用いられる場合、「サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8」という用語は、過加水分解活性を有するアセチルキシランエステラーゼを含む好熱性細菌を指し、配列番号40(GENBANK(登録商標)NP_227893.1、米国特許出願公開第2008/0176299号明細書)で提供される。
【0088】
本明細書で用いられる場合、「バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)PS213」および「バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)」という用語は、過加水分解活性を有するアセチルキシランエステラーゼを含む細菌を指し、配列番号41(GENBANK(登録商標)AJ249957、米国特許出願公開第2008/0176299号明細書)で提供される。
【0089】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を指す。本明細書では、特定のアミノ酸を同定するために以下の略語が使用される。
【0090】
【表1】

【0091】
本明細書で用いられる場合、核酸分子は、適切な温度および溶液イオン強度条件下で第1の分子の一本鎖が他の分子にアニールすることができる場合に、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸断片と「ハイブリッド形成可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件はよく知られており、Sambrook,J.およびRussell,D.,T.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2001年)において例示されている。温度およびイオン強度条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。
【0092】
ハイブリダイゼーションは2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能である
。核酸をハイブリッド形成するために適切なストリンジェンシーは、当該技術分野において周知の変数である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTmの値も大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(より高いTmに相当する)は、以下の順:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAで低下する。長さが100を超えるヌクレオチドのハイブリッドについては、Tmを計算するための式が誘導されている(SambrookおよびRussell、上記)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(SambrookおよびRussell、上記)。1つの態様では、ハイブリッド形成可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリッド形成可能な核酸の最小の長さは少なくとも約15ヌクレオチドの長さであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドの長さであり、さらにより好ましくは少なくとも30ヌクレオチドの長さであり、さらにより好ましくは少なくとも300ヌクレオチドの長さであり、最も好ましくは少なくとも800ヌクレオチドの長さである。さらに、当業者は、プローブの長さなどの因子に従って必要であれば温度および洗浄溶液の塩濃度が調整され得ることを認識するであろう。
【0093】
本明細書で用いられる場合、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列間、または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の関係である。当該技術分野において、「同一性」は、場合によっては、このような配列のストリング間のマッチによって決定されるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.編)Oxford University Press,NY(1988年)、「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編)Academic Press,NY(1993年)、「Computer Analysis of Sequence Data,Part I」(Griffin,A.M.,およびGriffin,H.G.編)Humana Press,NJ(1994年)、「Sequence Analysis in Molecular Biology」(von Heinje,G.編)Academic Press(1987年)、および「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton Press,NY(1991年)において記載される方法を含むがこれらに限定されない既知の方法によって容易に計算することができる。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に利用可能なンピュータプログラムにおいて体系化されている。配列アライメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)、ベクターNTIバージョン7.0のAlignXプログラム(Informax,Inc.,Bethesda,MD)、またはEMBOSS Open Software Suite(EMBL−EBI、Riceら、Trends in Genetics 16、(6)276−277頁(2000年))を用いて実施され得る。配列の多重アライメントは、アライメントのCLUSTAL法(すなわち、CLUSTALW、例えばバージョン1.83)(HigginsおよびSharp,CABIOS,5:151−153(1989年)、Higginsら,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994年)、およびChennaら,Nucleic Acids Res 31(13):3497−500(2003年)、European Bioinformatics Instituteを介してEuropean Molecular Biology Laboratoryから入手可能)をデフォルトパラメータと共に用いて実施することができる。CLUSTALWタンパク質アライメントのために適切なパラメータには、GAP存在ペナルティー=15、GAP伸長=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=−1、タンパク質GAPDIST=4、およびKTUPLE=1が含まれる。一実施形態では、速いまたは遅いアライメントがデフォルト設定と共に使用され、遅いアライメントが好ましい。あるいは、CLUSTALW法(バージョン1.83)を用いるパラメータを修正して、KTUPLE=1、GAP PENALTY=10、GAP伸長=1、マトリックス=BLOSUM(例えば、BLOSUM64)、WINDOW=5、およびTOP DIAGONALS SAVED=5も使用することができる。
【0094】
本明細書で用いられる場合、「配列分析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析に有用な任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販のものでもよいし、あるいは独立して開発されてもよい。典型的な配列分析ソフトウェアには、GCGプログラム一式(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG),Madison,WI)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら,J.Mol.Biol.215:403−410(1990年)、およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)、CLUSTALW(例えば、バージョン1.83、Thompsonら,Nucleic Acids Research,22(22),4673−4680(1994年)、およびSmith−Watermanアルゴリズムを組み込んだFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994年)、1992年会議,111−20.編:Suhai,Sandor.Publisher:Plenum,New York,NY)、ベクターNTI(Informax,Bethesda,MD)およびSequencher v.4.05が含まれ得るがこれらに限定されない。本出願に関連して、分析のために配列分析ソフトウェアが使用される場合、他に指定されない限り、分析結果が言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことは理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「デフォルト値」は、最初の初期化の際にソフトウェアと共に元々ロードされた、ソフトウェア製造業者により設定された任意の値のセットまたはパラメータセットを意味するであろう。
【0095】
本明細書で用いられる場合、「生物学的汚染物質」という用語は、1つまたは複数の不要なおよび/または病原性の生物学的実体を指し、微生物、胞子、ウィルス、プリオン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明の酵素を用いて、生存可能な生物学的汚染物質の存在を低減および/または除去するために有用である、効果的な濃度の少なくとも1つの過カルボン酸を生成することができる。好ましい実施形態では、生物学的汚染物質は生存可能な病原性微生物である。
【0096】
本明細書で用いられる場合、「消毒する」という用語は、生物学的汚染物質を破壊する、またはその増殖を防止する過程を指す。本明細書で用いられる場合、「消毒薬」という用語は、生物学的汚染物質の破壊、中和、または増殖の阻害により消毒する薬剤を指す。通常、消毒薬は、無生物体または表面を処理するために使用される。本明細書で用いられる場合、「防腐剤」という用語は、疾患を保有する微生物の増殖を阻害する化学薬品を指す。実施形態の1つの態様では、生物学的汚染物質は病原性微生物である。
【0097】
本明細書で用いられる場合、「抗ウィルス剤(virucide)」という用語は、ウィルスを阻害または破壊する薬剤を指し、「抗ウィルス薬(viricide)」と同義である。ウィルスを阻害または破壊する能力を示す薬剤は、「抗ウィルス」活性を有すると説明される。ペルオキシカルボン酸は、抗ウィルス活性を有することができる。本発明と共に使用するのに適し得る当該技術分野で既知の典型的な代替の抗ウィルス剤としては、例えば、アルコール、エーテル、クロロホルム、ホルムアルデヒド、フェノール、ベータプロピオラクトン、ヨウ素、塩素、水銀塩、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、エチレングリコール、第4級アンモニウム化合物、酵素、および洗剤が挙げられる。
【0098】
本明細書で用いられる場合、「殺生物剤(biocide)」という用語は、微生物を不活性化または破壊する化学物質(通常は広範囲)を指す。微生物を不活性化または破壊する能力を示す化学物質は、「殺生物(biocidal)」活性を有すると説明される。ペルオキシカルボン酸は、殺生物活性を有することができる。本発明における使用に適し得る当該技術分野で既知の典型的な代替の殺生物剤としては、例えば、塩素、二酸化塩素、クロロイソシアヌラート、次亜塩素酸塩、オゾン、アクロレイン、アミン、塩素化フェノール(chlorinated phenolic)、銅塩、有機硫黄化合物、および第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0099】
本明細書で用いられる場合、「最小殺生物濃度」という語句は、特定の接触時間に、標的微生物の生存可能な集団において所望の致死的で不可逆的な低減を生じ得る殺生物剤の最小濃度を指す。有効性は、処理後の生存可能な微生物の減少のlog10によって測定することができる。1つの態様では、標的とされる生存可能な微生物の処理後の減少は、少なくとも3−logの減少、より好ましくは少なくとも4−logの減少、最も好ましくは少なくとも5−logの減少である。別の態様では、最小殺生物濃度は、生存可能な微生物細胞の少なくとも6−logの減少である。
【0100】
本明細書で用いられる場合、「過酸素源」および「過酸素の源」という用語は、水溶液中にある場合に約1mM以上の濃度の過酸化水素を提供することができる化合物を指し、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素−過酸化水素付加物(過酸化カルバミド))、過ホウ酸塩、および過炭酸塩が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において記載されるように、水性反応混合物中の過酸素化合物によって提供される過酸化水素の濃度は、反応成分を混ぜ合わせたときに最初は少なくとも1mM以上である。一実施形態では、水性反応混合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも10mMである。別の実施形態では、水性反応混合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも100mMである。別の実施形態では、水性反応混合物中の過酸化水素濃度は、少なくとも200mMである。別の実施形態では、水性反応混合物中の過酸化水素濃度は、500mM以上である。さらに別の実施形態では、水性反応混合物中の過酸化水素濃度は、1000mM以上である。水性反応混合物中の酵素基質、例えばトリグリセリドに対する過酸化水素のモル比(H:基質)は約0.002〜20でよく、好ましくは約0.1〜10、最も好ましくは約0.5〜5でよい。
【0101】
本明細書で用いられる場合、「有益な薬剤」という用語は、有用な利点または好ましい効果を促進または増強するものを指す。一実施形態では、消毒、漂白、脱染、脱臭、およびこれらの任意の組み合わせなどの所望の利益を達成するために、ペルオキシカルボン酸を含む組成物などの有益な薬剤を織物に適用させる方法が提供される。
【0102】
本明細書で用いられる場合、「実質的な増大ではない」、「有意な増大ではない」、および「超過されない」という用語は、特定の時点で測定されたペルオキシカルボン酸濃度に対して反応混合物中のペルオキシカルボン酸の濃度の増大を指す場合に使用され、特定の時点とは、反応成分が混ぜ合わせられて(それにより、ペルオキシカルボン酸が生成される)からの時間を指す。本発明の方法は、特定の時点で、実質的に安定した濃度のペルオキシカルボン酸を生成する。本明細書で用いられる場合、「実質的に安定した濃度」は、定義された時間間隔にわたって100%よりも大きく増大しない反応混合物中のペルオキシカルボン酸の濃度(すなわち、2×以下である)を指すであろう。一実施形態では、反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度は、1分後の濃度の変化が比較される参照濃度である。濃度の変化は、参照時間濃度に対する濃度変化パーセント(%)で報告することができる。別の実施形態では、ペルオキシカルボン酸の参照濃度は、反応成分を混ぜ合わせてから5分後に測定される濃度である。一実施形態では、ペルオキシカルボン酸濃度の実質的でない増大は、特定の時点で測定される参照濃度よりも、100%以下の増大(すなわち、2×)、好ましくは50%以下、最も好ましくは20%以下だけ高いと定義されるであろう。
【0103】
一実施形態では、反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度は、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上、好ましくは5分以上の反応時間で、100%よりも大きく超過されず、好ましくは50%よりも大きく超過されず、より好ましくは20%よりも大きく超過されない(すなわち、増大されない)。
【0104】
別の実施形態では、反応成分を混ぜ合わせてから5分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度は、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上の反応時間で、100%よりも大きく超過されず、好ましくは50%よりも大きく超過されず、より好ましくは20%よりも大きく超過されない(すなわち、増大されない)。
【0105】
本明細書で用いられる場合、「シグネチャーモチーフ」、「CE−7シグネチャーモチーフ」、および「診断モチーフ」という用語は、定義される活性を有する酵素のファミリー間で共有される保存構造を指す。シグネチャーモチーフは、定義される基質ファミリーに対して類似の酵素活性を有する構造的に関連する酵素のファミリーを定義および/または同定するために使用することができる。シグネチャーモチーフは、単一の連続アミノ酸配列であっても、あるいはシグネチャーモチーフを一緒に形成する不連続の保存モチーフの集まりであってもよい。通常、各保存モチーフは保存アミノ酸配列によって表される。CE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を同定するための手段は本明細書に記載されている。
【0106】
過加水分解活性およびCE−7シグネチャーモチーフを有する炭水化物エステラーゼファミリー7酵素
CE−7炭水化物エステラーゼのファミリーに属する酵素は、CE−7シグネチャーモチーフを一緒に形成する不連続モチーフの集まりを共有する(Vincentらの上記文献によって定義される)。CE−7エステラーゼのためのシグネチャーモチーフは、3つの保存モチーフを含む(残基位置の番号付けは参照配列番号2に関連する):
a)Arg118−Gly119−Gln120、
b)Gly179−Xaa180−Ser181−Gln182−Gly183、および
c)His298−Glu299。
【0107】
通常、アミノ酸残基位置180のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、またはスレオニンである。触媒トライアッド(catalytic triad)に属する3つのアミノ酸残基のうちの2つは太字である。一実施形態では、アミノ酸残基位置180のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、およびスレオニンからなる群から選択される。
【0108】
触媒トライアッドに属するアミノ酸残基は太字である。位置269のアスパラギン酸残基(Asp269)は、触媒トライアッドの第3のメンバーである(Ser181−Asp269−His298、全ての残基位置は配列番号2のアミノ酸の番号付けに関連する)。
【0109】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリーのメンバーは、過酸化水素などの適切な過酸素源の存在下でカルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生成するために適切な過加水分解活性を有することが示されている(DiCosimoら、米国特許出願第12/143,375号明細書)。本発明のペルヒドロラーゼはCE−7炭水化物エステラーゼファミリーのメンバーである。本発明のペルヒドロラーゼのCLUSTALWアライメントは、本発明のペルヒドロラーゼがCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属することを示す(図1Aおよび1B、表2)。
【0110】
いくつかのよく知られているグローバルなアライメントアルゴリズムを用いて、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を表す2つ以上のアミノ酸配列を整列させて、酵素がCE−7シグネチャーモチーフで構成されているかどうかを決定することができる。整列された配列は本発明の参照配列(配列番号2)と比較され、シグネチャーモチーフの存在が決定される。一実施形態では、参照アミノ酸配列(本明細書で用いられる場合、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954TMからのペルヒドロラーゼ配列(配列番号2))を用いるCLUSTALアライメント(例えば、CLUSTALW)を用いて、CE−7エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを同定する。保存アミノ酸残基の相対的な番号付けは、整列された配列内の小さい挿入または欠失(例えば、6個以下のアミノ酸)を考慮に入れるために、参照アミノ酸配列の残基の番号付けに基づく。
【0111】
CE−7シグネチャーモチーフを含む配列を同定する(参照配列と比較したときに)ために使用することができる他の適切なアルゴリズムの例としては、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48、443−453(1970年)、グローバルアライメントツール)、ならびにSmith−Waterman(J.Mol.Biol.147:195−197(1981年)、ローカルアライメントツール)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、Smith−Watermanアライメントは、デフォルトパラメータを用いて実行される。適切なデフォルトパラメータの例としては、GAPオープンペナルティー=10およびGAP伸長ペナルティー=0.5と共にBLOSUM62スコアリングマトリックスの使用が挙げられる。
【0112】
米国特許出願公開第2008/0176783号明細書は、ペルヒドロラーゼ活性を有するいくつかのCE−7酵素間で、全体的な同一性パーセントの比較を提供しており、保存CE−7シグネチャーモチーフを有するメンバー間で、多くの場合、非常に低い同一性パーセントが観察されることが示される。CE−7炭水化物エステラーゼファミリーのメンバー間のBLASTP比較は表1に提供される。表1で提供されるCE−7酵素はその全長にわたって比較的低い全体的な同一性パーセントを有し得るが、メンバーの全てが表2に示されるように保存CE−7シグネチャーモチーフを共有する。
【0113】
【表2】

【0114】
表1のペルヒドロラーゼ活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼは全て、図1Aおよび1B(下線)ならびに表2に示されるようなCE−7シグネチャーモチーフを有する

【0115】
【表3】

【0116】
本発明の実施例は、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)ペルヒドロラーゼ(配列番号6)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)ペルヒドロラーゼ(配列番号8)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)(配列番号2)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)(配列番号39)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(配列番号40)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)(配列番号41)からのペルヒドロラーゼと比較して、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ペルヒドロラーゼ(配列番号4)に特有の特性を説明する。より具体的には、L.ラクティス(L.lactis)ペルヒドロラーゼは、反応成分を混ぜ合わせてから5分後、好ましくは1分後に実質的に増大しない標的のペルオキシカルボン酸濃度を急速に生じる能力を特徴とする。実施例で説明されるように、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ペルヒドロラーゼに特有である急速な酵素不活性化はpHの実質的な降下とは無関係であり、ここで、反応混合物のpHは、酵素触媒反応の過程を通して、6.0〜約9.0、好ましくは6.5〜8.5の間の範囲内にとどまる。酵素触媒が、配列番号4に対するアミノ酸同一性が少なくとも95%である過加水分解活性を有する酵素を含む限り、所望の濃度は、選択される反応成分の量を調整することによって制御することができる。一実施形態では、酵素触媒は、アミノ酸配列番号4の過加水分解活性を有する酵素を含む。別の実施形態では、反応成分は、反応成分を混ぜ合わせてから5分以内(反応成分が混ぜ合わせられ、それにより酵素的な過加水分解が開始されたときから測定される)、好ましくは1分以内に所望の濃度が達成される条件下で混ぜ合わせられ、ここで、ペルオキシカルボン酸濃度は、所望の濃度が達成された後は実質的に増大しない。
【0117】
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ペルヒドロラーゼに実質的に類似しているCE−7酵素
当業者は、本発明の範囲が、配列番号4により提供されるようなラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ペルヒドロラーゼと実質的に類似した過加水分解活性を有するCE−7酵素を含むことを認識するであろう。本明細書で用いられる場合、「実質的に類似」は、配列番号4に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であり、CE−7シグネチャーモチーフを含むアミノ酸配列を有する酵素を指すことができ、ここで、得られる酵素は、過加水分解酵素に特徴的な機能特性を保持する(すなわち、高過加水分解活性、続いてpHの実質的な降下とは無関係に生じる過加水分解活性の損失)。一実施形態では、本発明の酵素はさらにCE−7シグネチャーモチーフを含む。
【0118】
一実施形態では、「実質的に類似」という用語は、配列番号4に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸同一性を有し、CE−7シグネチャーモチーフを含むCE−7ペルヒドロラーゼのアミノ酸配列をコードする核酸分子を指すために使用され得る。例えば、所与の部位で化学的に等価なアミノ酸の生成をもたらすが、コードされるタンパク質の機能特性に影響を与えない遺伝子の改変が一般的であることは、当該技術分野ではよく知られている。本発明の目的のために、置換は、以下の5つの群:
1. 小さい脂肪族の非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)、
2. 極性の負帯電残基およびそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln、
3. 極性の正帯電残基:His、Arg、Lys、
4. 大きい脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)、ならびに
5. 大きい芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp.
のうちの1つの中での交換であると定義される。
【0119】
従って、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンに対するコドンは、別のあまり疎水性でない残基(グリシンなど)またはより疎水性の残基(バリン、ロイシン、またはイソロイシンなど)をコードするコドンによって置換され得る。同様に、1つの負帯電残基による別の残基の置換(アスパラギン酸によるグルタミン酸の置換など)、あるいは1つの正帯電残基による別の残基の置換(リジンによるアルギニンの置換など)をもたらす変化も、機能的に等価な産物を生じることが予想され得る。多くの場合、タンパク質分子のN末端およびC末端部分の改変をもたらすヌクレオチドの変化も、タンパク質の活性を変更しないと予想されるであろう。
【0120】
提唱される変更のそれぞれは、コードされる産物に特徴的な生物活性の保持の決定と同様に、当該技術分野において十分にルーチン的な技能の範囲内である。一実施形態では、実質的に類似の核酸配列は、高度にストリンジェントな条件(0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、そして2×SSC、0.1%SDS、続いて0.1×SSC、0.1%SDS、65℃による洗浄)下で配列番号3の相補的配列とハイブリッド形成するその能力によって定義される。
【0121】
1つの態様では、適切な核酸分子は過加水分解活性を有するポリペプチドをコードし、前記ポリペプチドは、配列番号4に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有すると共に、CE−7シグネチャーモチーフを有する。本発明の適切な核酸分子は、長さが約300〜約340のアミノ酸、好ましくは約310〜約330のアミノ酸、最も好ましくは約312のアミノ酸を有するポリペプチドをコードする。
【0122】
本明細書で用いられる場合、「pHの実質的な降下」または「pHの実質的な変化」は、酵素触媒反応の過程を通して、約1を上回るpHの降下を指す。反応混合物のpHは、反応の過程を通して、約6.0未満には降下せず、好ましくは約6.0〜約9.0の間、より好ましくは約6.5〜約8.5の間、さらにより好ましくは約7.0〜約8.5の間、最も好ましくは約7.0〜約8.0の間で維持され得ることが理解される。
【0123】
本明細書で用いられる場合、「反応の過程を通して」は、最初に反応成分を混ぜ合わせて反応混合物を形成(本発明の触媒を用いて酵素的な過加水分解を開始)してから、酵素触媒が過加水分解活性を示さなくなる時点まで測定される期間を指す。過加水分解活性の損失は、反応混合物中のペルオキシカルボン酸濃度(所望の標的濃度(または濃度範囲)がいったん達成されたら、もうあまり増大しなくなる)によって決定または推測することができる。
【0124】
カルボン酸エステルおよび過酸化水素からのペルオキシカルボン酸の酵素に触媒される調製のための適切な反応条件
過加水分解活性を有する酵素触媒の存在下で、カルボン酸エステルおよび無機過酸化物(過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウムなど)を反応させることによって、少なくとも1つのペルオキシカルボン酸を含む水性混合物を生成するための方法が提供され、ここで、酵素触媒は、CE−7シグネチャーモチーフおよび配列番号4に対する少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素を含み、L.ラクティス(L.lactis)ペルヒドロラーゼに特徴的な特性、すなわち5分以内、好ましくは1分以内に反応混合物中でペルオキシカルボン酸を急速に生成する(少なくとも次の30分(あるいは、好ましい実施形態によって定義されるその他の時点)にわたって実質的に増大しない)ことができるペルヒドロラーゼ活性を保持する。
【0125】
一実施形態では、適切な基質は、以下の式:
[X]
[式中、Xは、式RC(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含んでおり、Rは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
によって提供されるエステルを含み、前記エステルは、25℃において少なくとも5ppmである水中の溶解度を有する。
【0126】
別の実施形態では、適切な基質は、式:
【化5】

(式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、RおよびRは個々にHまたはRC(O)である)
のグリセリドを含む。
【0127】
別の実施形態では、RはC1〜C7線状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい)であり、場合により、1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよい。さらに好ましい実施形態では、RはC2〜C7線状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい)であり、そして/あるいは場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよい。
【0128】
適切な基質は、アセチル化単糖類、二糖類、および多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類も含む。別の実施形態では、アセチル化糖類は、アセチル化キシラン、アセチル化キシランの断片、アセチル化キシロース(キシローステトラアセタートなど)、アセチル化グルコース(グルコースペンタアセタートなど)、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。好ましい実施形態では、アセチル化糖類は、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。
【0129】
別の実施形態では、適切な基質は、モノアセチンと、ジアセチンと、トリアセチンと、モノプロピオニンと、ジプロピオニンと、トリプロピオニンと、モノブチリンと、ジブチリンと、トリブチリンと、グルコースペンタアセタートと、キシローステトラアセタートと、アセチル化キシランと、アセチル化キシラン断片と、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタートと、トリ−O−アセチル−D−ガラクタールと、トリ−O−アセチル−グルカールと、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールのモノエステルまたはジエステルと、そしてこれらの混合物からなる群から選択される。さらなる実施形態では、適切な基質は、プロピレングリコールジアセタート(PGDA)、エチレングリコールジアセタート(EDGA)、またはこれらの混合物を含む。
【0130】
別の実施形態では、カルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、基質は、1つまたは複数のエステル基を含むC1〜C6ポリオールである。好ましい実施形態では、C1〜C6ポリオールのヒドロキシル基のうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のアセトキシ基によって置換されている(1,3−プロパンジオールジアセタート、1,4−ブタンジオールジアセタートなど)。
【0131】
別の実施形態では、適切な基質は、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、3−ヒドロキシ酪酸メチル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、2−アセチルクエン酸トリエチル、グルコースペンタアセタート、グルコノラクトン、グリセリド(モノ、ジ、およびトリグリセリド)、例えば、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン(グリセリルジプロピオナート)、トリプロピオニン(1,2,3−トリプロピオニルグリセロール)、モノブチリン、ジブチリン(グリセリルジブチラート)、トリブチリン(1,2,3−トリブチリルグリセロール)、アセチル化糖類、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0132】
さらなる実施形態では、適切な基質は、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、酢酸エチル、および乳酸エチルからなる群から選択される。さらに別の態様では、基質は、ジアセチン、トリアセチン、酢酸エチル、および乳酸エチルからなる群から選択される。
【0133】
カルボン酸エステルは、酵素に触媒される過加水分解の際に所望の濃度のペルオキシカルボン酸を生成するために十分な濃度で、反応混合物中に存在する。カルボン酸エステルは反応混合物中に完全に溶解性である必要はないが、ペルヒドロラーゼ触媒によってエステルが対応するペルオキシカルボン酸へ転化できるようにするために十分な溶解度を有する。カルボン酸エステルは、反応混合物の0.0005重量%〜40重量%の濃度、好ましくは反応混合物の0.1重量%〜20重量%の濃度、より好ましくは反応混合物の0.5重量%〜10重量%の濃度で反応混合物中に存在する。カルボン酸エステルの重量%は、場合により、カルボン酸エステルの溶解限度より大きくてもよいので、水、酵素触媒、および過酸化物源から構成される反応混合物中のカルボン酸エステルの濃度は少なくとも0.0005重量%であり、カルボン酸エステルの残りは2相の水/有機物反応混合物の第2の別個の相として残る。添加されるカルボン酸エステルのすべてが水性反応混合物中に直ちに溶解しなければならないわけではなく、全ての反応成分の初期混合の後、付加的な連続または不連続な混合は任意である。
【0134】
本発明の反応成分によって生成されるペルオキシカルボン酸は、本発明の酵素触媒が使用される限り、選択される基質に応じて変化し得る。一実施形態では、生成されるペルオキシカルボン酸は、過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過乳酸、過グリコール酸、過メトキシ酢酸、過β−ヒドロキシ酪酸、またはこれらの混合物である。
【0135】
過酸素源は、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素−過酸化水素付加物(過酸化カルバミド))、過ホウ酸塩および過炭酸塩を含むことができるが、これらに限定されない。反応混合物中の過酸素化合物の濃度は、0.0033重量%〜約50重量%、好ましくは0.033重量%〜約40重量%、より好ましくは0.33重量%〜約30重量%の範囲であり得る。
【0136】
多くのペルヒドロラーゼ触媒(全細胞、透過処理された全細胞、および部分精製された全細胞抽出物)は、カタラーゼ活性を有することが報告されている(EC 1.11.1.6)。カタラーゼは、過酸化水素の酸素および水への転化を触媒する。1つの態様では、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素触媒には、カタラーゼ活性がない。別の態様では、反応混合物にカタラーゼ阻害剤が添加される。カタラーゼ阻害剤の例としては、アジ化ナトリウムおよび硫酸ヒドロキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、必要に応じてカタラーゼ阻害剤の濃度を調整することができる。カタラーゼ阻害剤の濃度は、通常、0.1mM〜約1M、好ましくは約1mM〜約50mM、より好ましくは約1mM〜約20mMの範囲である。1つの態様では、アジ化ナトリウムの濃度は通常約20mM〜約60mMの範囲であり、硫酸ヒドロキシルアミンの濃度は通常約0.5mM〜約30mM、好ましくは約10mMである。
【0137】
宿主細胞におけるカタラーゼ活性は、よく知られた技術(トランスポゾン変異誘発、RNAアンチセンス発現、標的化変異誘発、およびランダム変異誘発を含むがこれらに限定されない)を用いて、カタラーゼ活性の原因である遺伝子の発現を破壊することによって、下方制御または除去することができる。好ましい実施形態では、内在性カタラーゼ活性をコードする遺伝子は、下方制御または破壊(すなわち、ノックアウト)される。本明細書で用いられる場合、「破壊された」遺伝子は、改変された遺伝子によってコードされるタンパク質の活性および/または機能がもう存在しない遺伝子である。遺伝子を破壊するための手段は当該技術分野においてよく知られており、対応するタンパク質の活性および/または機能が存在しなくなる限り、遺伝子への挿入、欠失、または突然変異を含むことができるがこれらに限定されない。さらに好ましい実施形態では、産生宿主は、katGおよびkatEからなる群から選択される破壊されたカタラーゼ遺伝子を含むE.コリ(E.coli)産生宿主である(参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2008/0176783号明細書(DiCosimoら)を参照)。別の実施形態では、産生宿主は、katGおよびkatEカタラーゼ遺伝子の両方における下方制御および/または破壊を含むE.コリ(E.coli)株である。katGおよびkatEの二重ノックアウトを含むE.コリ(E.coli)株が調製されており、本明細書中ではE.コリ(E.coli)株KLP18と記載されている(実施例3)。
【0138】
水性反応混合物中の触媒の濃度は触媒の特定の触媒活性に依存し、所望の反応速度を得るように選択される。過加水分解反応における触媒の重量は、通常、全反応体積の0.0005mg〜10mg/mL、好ましくは0.010mg〜2.0mg/mLの範囲である。触媒は、当業者によく知られた方法を用いて可溶性または不溶性担体に固定化されてもよく、例えば、「Immobilization of Enzymes and Cells」,Gordon F.Bickerstaff編,Humana Press,Totowa,NJ,USA,1997年が参照される。固定化触媒の使用は、その後の反応における触媒の回収および再使用を可能にする。酵素触媒は、全微生物細胞、透過処理された微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製または精製酵素、およびこれらの混合物の形態であり得る。
【0139】
1つの態様では、カルボン酸エステルの化学的な過加水分解と酵素的な過加水分解との組み合わせによって発生されるペルオキシカルボン酸の濃度は、所望のpHにおいて漂白または消毒のために有効な濃度のペルオキシカルボン酸を提供するのに十分である。別の態様では、本発明の方法は、所望の有効な濃度のペルオキシカルボン酸を生成するための酵素および酵素基質の組み合わせを提供し、ここで、酵素を添加しないと、著しくより低い濃度のペルオキシカルボン酸が生成される。無機過酸化物と酵素基質との直接的な化学反応による酵素基質の化学的な過加水分解もいくつかあり得るが、所望の用途において有効な濃度のペルオキシカルボン酸を提供するために十分な濃度のペルオキシカルボン酸が発生されないことがあり、全ペルオキシカルボン酸濃度の有意な増大は、反応混合物への適切なペルヒドロラーゼ触媒の添加によって達成される。
【0140】
酵素的な過加水分解によって発生されるペルオキシカルボン酸(例えば、過酢酸)の濃度は、酵素的な過加水分解反応の開始から5分以内、より好ましくは1分以内に、一般に、少なくとも約2ppm、好ましくは少なくとも20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、より好ましくは少なくとも約200ppmのペルオキシカルボン酸であり、より好ましくは少なくとも300ppm、より好ましくは少なくとも500ppm、より好ましくは少なくとも700ppm、より好ましくは少なくとも約1000ppmのペルオキシカルボン酸であり、最も好ましくは少なくとも2000ppmのペルオキシカルボン酸である。
【0141】
ペルオキシカルボン酸を含む生成混合物は、場合により、希釈剤(水、または大部分は水で構成される溶液を含む)によって希釈されて、所望のより低い標的濃度のペルオキシカルボン酸との混合物を生じてもよい。1つの態様では、所望の濃度(または濃度範囲)のペルオキシカルボン酸を生成するために必要とされる反応時間は約5分以内、より好ましくは約1分以内である。
【0142】
他の態様では、ある濃度の生物学的汚染物質で汚染された表面または無生物体は、前記反応成分を混ぜ合わせてから約1分〜約168時間以内に、または約1分〜約48時間以内に、または前記反応成分を混ぜ合わせてから約1分〜2時間以内に、またはこの中の任意の時間間隔で、本明細書中に記載される方法に従って形成されたペルオキシカルボン酸と接触される。
【0143】
別の態様では、本明細書中に記載される方法に従って形成されたペルオキシカルボン酸はランドリーケア用途において使用され、ここで、ペルオキシカルボン酸は織物と接触されて、消毒、漂白、脱染、脱臭またはこれらの組み合わせなどの利益を提供する。ペルオキシカルボン酸は、織物の予洗処理剤、洗濯洗剤、染み抜き剤、漂白組成物、脱臭組成物、およびリンス剤を含む様々なランドリーケア製品において使用することができるが、これらに限定されない。一実施形態では、標的表面に対するペルオキシカルボン酸を生成するための本発明の方法はその場で実行される。
【0144】
反応の温度は、反応速度と酵素触媒活性の安定性との両方を制御するように選択される。反応の温度は、反応混合物の氷点(約0℃)よりもわずかに高い温度から約75℃までの範囲でよいが、好ましい反応温度の範囲は約5℃〜約55℃である。
【0145】
ペルオキシカルボン酸を酵素的に生成している間の反応混合物のpHは、約6.0〜約9.0、好ましくは約6.5〜約8.5、さらにより好ましくは約6.5〜約7.5の範囲のpHに維持される。一実施形態では、反応混合物のpHは、反応成分を混ぜ合わせてから少なくとも30分間は、約6.5〜約8.5の範囲である。反応混合物のpHは、リン酸、ピロリン酸、重炭酸、酢酸、またはクエン酸を含むがこれらに限定されない適切な緩衝液の添加または取り込みによって制御することができる。一実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝液および重炭酸緩衝液から選択される。緩衝液の濃度は、使用される場合には、通常0.1mM〜1.0M、好ましくは1mM〜300mM、最も好ましくは10mM〜100mMである。
【0146】
別の態様では、酵素的な過加水分解反応混合物は、反応混合物中のカルボン酸エステルの溶解速度を高めるための分散剤としての役割を果たす有機溶媒を含有し得る。このような溶媒には、プロピレングリコールメチルエーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、エタノール、プロピレングリコール、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0147】
別の態様では、酵素的な過加水分解生成物は、望ましい機能性を提供する付加的な成分を含有し得る。これらの付加的な成分は、緩衝液、洗剤ビルダー(detergent builder)、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、防蝕剤(例えばベンゾトリアゾール)、酵素安定剤、および過酸安定剤(例えば金属イオンキレート化剤)を含むが、これらに限定されない。付加的な成分の多くは洗剤産業においてよく知られている(例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許第5,932,532号明細書に記載されるものを参照されたい)。乳化剤の例としては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンが挙げられるが、これらに限定されない。増粘剤の例としては、LAPONITE(登録商標)RD、コーンスターチ、PVP、CARBOWAX(登録商標)、CARBOPOL(登録商標)、CABOSIL(登録商標)、ポリソルベート20、PVA、およびレシチンが挙げられるが、これらに限定されない。緩衝系の例としては、リン酸ナトリウム一塩基性/リン酸ナトリウム二塩基性、スルファミン酸/トリエタノールアミン、クエン酸/トリエタノールアミン、酒石酸/トリエタノールアミン、コハク酸/トリエタノールアミン、および酢酸/トリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。界面活性剤の例としては、(a)エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのブロックコポリマー、エトキシル化またはプロポキシル化線状および分枝状第1級および第2級アルコール、ならびに脂肪族ホスフィンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、(b)第4級アンモニウム化合物、特に、3つのC1〜C2アルキル基に結合した窒素原子にC8〜C20アルキル基がさらに結合した第4級アンモニウム化合物などのカチオン性界面活性剤、(c)アルカンカルボン酸(例えば、C8〜C20脂肪酸)、アルキルホスホナート、アルカンスルホナート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム「SDS」)、または線状もしくは分枝状アルキルベンゼンスルホネート、アルケンスルホナートなどのアニオン性界面活性剤、ならびに(d)アミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、アルキルベタイン、およびこれらの混合物などの両性および両性イオン界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。付加的な成分は、香料、染料、過酸化水素安定剤(例えば、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(DEQUEST(登録商標)2010、Solutia Inc.,St.Louis,MO、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの金属キレート剤)、TURPINAL(登録商標)SL、DEQUEST(登録商標)0520、DEQUEST(登録商標)0531、酵素活性の安定剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、および洗剤ビルダーを含むことができる。
【0148】
別の態様では、酵素的な過加水分解生成物は、消毒および/または漂白すべき表面または無生物体との接触の前に所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させるために予め混合されてもよい。
【0149】
別の態様では、酵素的な過加水分解生成物は、消毒すべき表面または無生物体との接触の前に所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させるために予め混合されないが、代わりに、所望の濃度の過カルボン酸を発生させる反応混合物の成分は、消毒すべき表面または無生物体と接触されて、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させる。いくつかの実施形態では、反応混合物の成分はその場所で結合または混合される。いくつかの実施形態では、反応成分はその場所に送達または適用され、その後混合または結合されて、所望の濃度のペルオキシカルボン酸を発生させる。
【0150】
ペルヒドロラーゼ触媒を用いるペルオキシカルボン酸の生成
ペルオキシカルボン酸はいったん生成されると非常に反応性であり、変数(温度およびpHを含むがこれらに限定されない)に依存して長時間にわたって濃度が低下し得る。従って、特に液体配合物については種々の反応成分を別々に保持することが望ましい場合がある。1つの態様では、過酸化水素源は、基質またはペルヒドロラーゼ触媒のいずれか、好ましくは両方から隔てられる。これは、多数のコンパートメントを有するディスペンサーの使用を含むがこれに限定されない様々な技術を用いて(米国特許第4,585,150号明細書)、ペルヒドロラーゼ触媒と、無機過酸化物および本発明の基質とを使用時に物理的に混ぜ合わせて水性の酵素的過加水分解反応を開始させることによって達成することができる。ペルヒドロラーゼ触媒は、場合により、反応チャンバの本体内に固定化されていてもよいし、あるいは処理の標的とされる表面および/または物体と接触させる前に、ペルオキシカルボン酸を含む反応生成物から分離(例えば、ろ過など)されてもよい。ペルヒドロラーゼ触媒は液体マトリックス中に存在してもよいし、あるいは固体形態(例えば、粉末または錠剤)であってもよいし、あるいは固体マトリックス内に埋め込まれてもよく、これはその後、基質と混合されて酵素的な過加水分解反応を開始させる。さらなる一態様では、ペルヒドロラーゼ触媒は溶解性または多孔質のポーチ内に含有されてもよく、これは水性基質マトリックスに添加されて、酵素的過加水分解を開始させる。付加的なさらなる態様では、酵素触媒を含む粉末は基質(例えばトリアセチン)中に懸濁され、使用時に、水中の過酸素源と混合される。
【0151】
ペルオキシカルボン酸および過酸化水素の濃度の決定方法
本発明の方法において、反応物および生成物を分析するために様々な分析方法を使用することができ、これには、滴定、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、質量分析(MS)、キャピラリー電気泳動法(CE)、U.Karstら(Anal.Chem.,69(17):3623−3627(1997年))によって記載される分析手順、ならびに米国特許出願公開第2008/0176783号明細書において記載されるような2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾタゾリン(ethylbenzothazoline))−6−スルホナート(ABTS)アッセイ(S.Minningら、Analytica Chimica Acta 378:293−298(1999年)および国際公開第2004/058961A1号パンフレット)が含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
ペルオキシカルボン酸の最小殺生物濃度の決定
J.Gabrielsonら(J.Microbiol.Methods 50:63−73(2002年))によって記載される方法は、ペルオキシカルボン酸、または過酸化水素および酵素基質の最小殺生物濃度(MBC)を決定するために使用することができる。アッセイ法は、XTTの還元阻害に基づいており、ここで、XTT((2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム、分子内塩、モノナトリウム塩)は、490nmまたは450nmで測定される光学濃度(OD)の変化によって微生物の呼吸活性を示す酸化還元色素である。しかしながら、消毒薬および防腐剤の活性を試験するために利用可能な様々なその他の方法が存在し、生存可能なプレートのカウント、直接的な顕微鏡のカウント、乾燥重量、濁度測定、吸光度、バイオルミネセンスなどが含まれるが、これらに限定されない(例えば、Brock,Semour S.「Disinfection,Sterilization,and Preservation」,第5版,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA,USA,2001年を参照)。
【0153】
酵素的に調製されたペルオキシカルボン酸組成物の使用
本発明の方法に従って生成した、酵素触媒により発生されたペルオキシカルボン酸は、様々な硬い表面/無生物体の用途において生物学的汚染物質の濃度を低減するために使用することができ、例えば、医療機器(例えば、内視鏡)、織物(例えば、衣類、カーペット)、食品の調理用の表面、食品貯蔵および食品包装装置、食品の包装に使用される材料、鶏の孵化場および成育施設、動物の囲い、ならびに微生物および/または抗ウィルス活性を有する使用済みプロセス水の汚染除去のために使用することができる。酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、プリオン(例えば、特定のプロテアーゼ)を不活性化して、さらに殺生物活性を提供するように設計された配合物中で使用することができる。好ましい態様では、本発明のペルオキシカルボン酸組成物は、特に、加圧滅菌することができない医療機器および食品包装装置のための消毒剤として有用である。ペルオキシカルボン酸含有配合物は、GRASまたは食品グレード成分(酵素、酵素基質、過酸化水素、および緩衝液)を用いて調製することができるので、酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、動物の屠殺体、食肉、果物および野菜の汚染除去のため、または加工食品の汚染除去のためにも使用することができる。酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、その最終形態が粉末、液体、ゲル、フィルム、固体またはエアロゾルである製品に組み込むことができる。酵素により発生されたペルオキシカルボン酸は、有効な汚染除去をそれでも提供する濃度まで希釈されてもよい。
【0154】
有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物は、表面または物体と、本発明の方法によって生成された生成物とを接触させることによって、生物学的汚染物質で汚染された(汚染された疑いがある)表面および/または無生物体を消毒するために使用することができる。本明細書で用いられる場合、「接触させる」は、清浄化および消毒するのに十分な時間、有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む消毒組成物と、生物学的汚染物質で汚染された疑いがある表面または無生物体とを接触した状態に置くことを指す。接触には、噴霧、処理、浸漬、フラッシング、注入(上または中に)、混合、混ぜ合わせ、ペインティング、コーティング、適用、添加が含まれ、そして、有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含むペルオキシカルボン酸溶液もしくは組成物、または有効な濃度のペルオキシカルボン酸を形成する溶液もしくは組成物と、ある濃度の生物学的汚染物質で汚染された疑いがある表面または無生物体との、その他の方法による連通も含まれる。消毒薬組成物は、清浄化および消毒の両方を提供するために清浄化組成物と併用されてもよい。あるいは、単一の組成物で清浄化および消毒の両方を提供するために、配合物中に清浄化剤(例えば、界面活性剤または洗剤)が組み込まれてもよい。
【0155】
有効な濃度のペルオキシカルボン酸を含む組成物は、少なくとも1つの付加的な抗菌剤、プリオン分解プロテアーゼの組み合わせ、抗ウィルス剤、殺胞子剤、または殺生物剤を含有することもできる。これらの薬剤と、特許請求される発明によって生成されるペルオキシカルボン酸との組み合わせは生物学的汚染物質で汚染された(汚染された疑いがある)表面および/または物体を清浄化および消毒するために使用される場合に、増大したおよび/または相乗的な効果を提供することができる。適切な抗菌剤には、所望の程度の微生物防護を提供するの十分な量の、カルボン酸エステル(例えば、p−ヒドロキシアルキルベンゾアートおよびアルキルシンナマート)、スルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸)、ヨウ素化合物または活性ハロゲン化合物(例えば、元素ハロゲン、ハロゲン酸化物(例えば、NaOCl、HOCl、HOBr、ClO)、ヨウ素、ハロゲン間化合物(interhalide)(例えば、一塩化ヨウ素、二塩化ヨウ素、三塩化ヨウ素、四塩化ヨウ素、塩化臭素、一臭化ヨウ素、または二臭化ヨウ素)、ポリハロゲン化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜臭素酸塩、次亜臭素酸、クロロ−およびブロモ−ヒダントイン、二酸化塩素、および亜塩素酸ナトリウム)、有機過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化アルキルベンゾイル、オゾン一重項酸素発生剤、およびこれらの混合物を含む)、フェノール誘導体(o−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、tert−アミルフェノールおよびC〜Cアルキルヒドロキシベンゾアートなど)、第4級アンモニウム化合物(塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムおよびこれらの混合物など)、ならびにこのような抗菌剤の混合物が含まれる。有効な量の抗菌剤には、約0.001重量%〜約60重量%の抗菌剤、約0.01重量%〜約15重量%の抗菌剤、または約0.08重量%〜約2.5重量%の抗菌剤が含まれる。
【0156】
一つの態様では、本発明の方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、ある場所の上におよび/またはある場所で適用される場合に、生存可能な生物学的汚染物質(生存可能な微生物集団)の濃度を低減するために使用することができる。本明細書で用いられる場合、「場所」は、消毒または漂白に適した標的表面の一部または全てを含む。標的表面には、潜在的に生物学的汚染物質で汚染され得る全ての表面が含まれる。非限定的な例としては、食品または飲料産業において見られる装置の表面(タンク、コンベヤー、床、ドレーン、冷凍庫、装置の表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、ドレーン、ジョイント、割れ目、これらの組み合わせなど)、建物の表面(壁、床、および窓など)、非食品産業関連のパイプおよびドレーン(水処理施設、プールおよび温泉場、ならびに発酵タンクを含む)、病院または動物病院の表面(壁、床、ベッド、装置(内視鏡など)、病院/動物病院または他のヘルスケア環境で着用される衣類(衣類、手術着(scrub)、靴を含む)、および他の病院または動物病院の表面など)、レストランの表面、浴室の表面、トイレ、衣服および靴、家禽、ウシ、乳牛、ヤギ、ウマおよびブタなど家畜のための納屋または畜舎の表面、家禽またはエビのための孵化場、ならびに医薬品または生物医薬品の表面(例えば、医薬品または生物医薬品の製造装置、医薬品または生物医薬品の成分、医薬品または生物医薬品の賦形剤)が挙げられる。付加的な硬い表面には、牛肉、鶏肉、豚肉、野菜、果物、シーフード、そしてこれらの組み合わせなどの食品も含まれる。場所は、感染した(infected)リネンまたはその他の織物などの吸水材料を含むこともできる。また場所は、収穫された植物または植物製品(種子、球茎、塊茎、果実、および野菜を含む)、生育中の植物、特に作物用に生育中の植物(穀草類、葉野菜およびサラダ用作物、根菜、豆類、ベリー状の果実、柑橘果実および硬い果物を含む)も含む。
【0157】
硬い表面材料の非限定的な例は、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、クロム、チタン、鉄、銅、真鍮、アルミニウム、およびこれらの合金)、鉱物(例えばコンクリート)、ポリマーおよびプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン)、アクリロニトリルブタジエンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、およびナイロンなどのポリアミド)である。付加的な表面としては、レンガ、タイル、セラミック、磁器、木、ビニール、リノリウム、およびカーペットが挙げられる。
【0158】
本発明の方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、漂白、脱染、および脱臭を含むがこれらに限定されない利益を織物に提供するために使用されてもよい。本発明の方法によって形成されるペルオキシカルボン酸は、織物の予洗処理剤、洗濯洗剤、染み抜き剤、漂白組成物、脱臭組成物、およびすすぎ(rinsing)剤を含むが、これらに限定されないあらゆるランドリーケア製品において使用することができる。
【0159】
組換え微生物の発現
本発明の配列の遺伝子および遺伝子産物は、異種宿主細胞中、特に微生物宿主の細胞において生成され得る。本発明の遺伝子および核酸分子の発現のための好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌ファミリーにおいて見出すことができ、広範な温度、pH値、および溶媒耐性にわたって増殖する微生物宿主である。例えば、細菌、酵母、および糸状菌はどれも適切に本発明の核酸分子の発現の宿主となり得ると考えられる。ペルヒドロラーゼは、細胞内、細胞外、または細胞内および細胞外の両方の組み合わせにおいて発現され得るが、ここで、細胞外発現によって、発酵産物からの所望のタンパク質の回収は、細胞内発現によって産生されるタンパク質の回収方法よりも容易になる。転写、翻訳およびタンパク質生合成装置は、細胞バイオマスを発生させるために使用される細胞原料に対して不変なままであり、機能性遺伝子は構わずに発現されるであろう。宿主株の例としては、アスペルギルス属、トリコデルマ属、サッカロミセス属、ピキア属、ファフィア属、クルイベロミセス属、カンジダ属、ハンゼヌラ属、ヤロウィア属、サルモネラ属、バチルス属、アシネトバクター属、ザイモモナス属、アグロバクテリウム属、エリスロバクター属(Erythrobacter)、クロロビウム属、クロマチウム属、フラボバクテリウム属、サイトファーガ属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ストレプトミセス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリア属、マイコバクテリウム属、ディノコッカス属、エシェリキア属、エルウィニア属、パンテア属、シュードモナス属、スフィンゴモナス属、メチロモナス属、メチロバクター属、メチロコッカス属、メチロサイナス属、メチロミクロビウム属(Methylomicrobium)、メチロシスティス属(Methylocystis)、アルカリゲネス属、シネコシスティス属、シネココッカス属、アナベナ属、チオバチルス属、メタノバクテリウム属、クレブシエラ属、およびミキソコッカス属などの細菌、真菌または酵母種が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、細菌宿主株には、エシェリキア属、バチルス属、およびシュードモナス属が含まれる。好ましい実施形態では、細菌宿主細胞は、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。
【0160】
工業的な生成
ペルヒドロラーゼ触媒を産生するために様々な培養方法を適用することができる。例えば、組換え微生物宿主から過剰発現される特定の遺伝子産物の大規模生成は、バッチおよび連続培養方法の両方によって生成することができる。バッチおよび流加培養方法は一般的であり、当該技術分野においてよく知られており、その例は、Thomas D.Brock in 「Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology」,第2版,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1989年)およびDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36:227(1992年)において見出すことができる。
【0161】
所望のペルヒドロラーゼ触媒の商業的な産生は、連続培養を用いて達成することもできる。連続培養は開放系であり、定義される培地がバイオリアクターに連続的に添加され、同時に、等量の条件培地が処理のために除去される。一般に、連続培養は、主に細胞が対数増殖期にあるときに、細胞を一定の高い液相密度に維持する。あるいは、連続培養は固定化細胞を用いて実施することもでき、ここで、炭素および栄養物は連続的に添加され、価値のある産物、副産物または老廃物は細胞塊から連続的に除去される。細胞の固定化は、天然および/または合成材料で構成される様々な固体担体を用いて実施することができる。
【0162】
バッチ、流加発酵、または連続培養からの所望のペルヒドロラーゼ触媒の回収は、当業者に知られている方法のいずれかによって達成され得る。例えば、酵素触媒が細胞内で産生される場合、細胞ペーストは遠心分離または膜ろ過によって培地から分離され、場合により水または所望のpHの水性緩衝液で洗浄され、次に、所望のpHの水性緩衝液中の細胞ペーストの懸濁液はホモジナイズされて、所望の酵素触媒を含有する細胞抽出物を生じる。細胞抽出物は、場合により、セライトまたはシリカなどの適切なろ過助剤を通してろ過され、酵素触媒溶液から不要なタンパク質を沈殿させるための加熱処理工程の前に細胞片が除去されてもよい。次に、所望の酵素触媒を含有する溶液は、膜ろ過または遠心分離によって、沈殿した細胞片およびタンパク質から分離されてもよく、得られた部分精製酵素触媒溶液は、付加的な膜ろ過によって濃縮され、次に場合により、適切なキャリア(例えば、マルトデキストリン、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはこれらの混合物)と混合され、噴霧乾燥されて所望の酵素触媒を含む固体粉末を生じる。
【0163】
量、濃度、またはその他の値もしくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または上限の好ましい値および下限の好ましい値の一覧のいずれかで与えられる場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲の上限または好ましい値と任意の範囲の下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。本明細書において数値の範囲が列挙される場合、他に記載されない限り、その範囲は、その両端点ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。範囲を定義する場合、本発明の範囲は、列挙される特定の値に限定することは意図されない。
【実施例】
【0164】
一般的な方法
以下の実施例は、好ましい実施形態を実証するために提供される。以下の実施例において開示される技術は、本明細書において開示される方法の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を示し、従って、その実施のために好ましいモードを構成すると考えられることは、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本発明の開示を考慮して、開示される特定の実施形態において多くの変化が成され、そしてそれでもなお本開示の方法の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができると認識すべきである。
【0165】
全ての試薬および材料は、他に指定されない限り、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、TCI America(Portland,OR)、Roche Diagnostics Corporation(Indianapolis,IN)またはSigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0166】
本明細書における以下の略語は、以下のように、測定、技術、特性、または化合物の単位に相当する:「sec」または「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「ppm」は100万分の1を意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「g」は重力を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを意味し、「ddHO」は蒸留および脱イオン水を意味し、「dcw」は乾燥細胞重量を意味し、「ATCC」または「ATCC(登録商標)」はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)を意味し、「U」はペルヒドロラーゼ活性の単位を意味し、「rpm」は1分間の回転数を意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
【0167】
HPLC法:
プレカラムSupelco Supelguard Discovery C8(Sigma−Aldrich、カタログ#59590−U)を備えたSupelco Discovery C8カラム(10cm×4.0mM、5μm)(カタログ#569422−U)、10マイクロリットルの注入体積、1.0mL/分および周囲温度におけるCH3CN(Sigma−Aldrich、#270717)および脱イオンH2Oによる勾配法。
【0168】
【表4】

【0169】
実施例1
katGカタラーゼ破壊E.コリ(E.coli)株の構築
配列番号11および配列番号12と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で分間1、30サイクル)によって、カナマイシン耐性遺伝子(kan、配列番号9)をプラスミドpKD13(配列番号10)から増幅して、配列番号13と同定されるPCR産物を生じた。katG核酸配列は配列番号14として提供され、対応するアミノ酸配列は配列番号15である。E.コリ(E.coli)MG1655(ATCC(登録商標)47076TM)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する温度感受性プラスミドpKD46(配列番号16)で形質転換し(DatsenkoおよびWanner,2000年,PNAS USA 97:6640−6645)、LB−ampプレートにおいて30℃で24時間選択した。エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)によって、MG1655/pKD46を50〜500ngのPCR産物で形質転換し、LB−kanプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLB−kanプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pKD46プラスミドをキュアリングした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。PUREGENE(登録商標)DNA精製システム(Gentra Systems, Minneapolis,MN)を用いて数個のコロニーからゲノムDNAを単離し、配列番号17および配列番号18と同定されるプライマーを用いてPCRによりチェックして、katG遺伝子の破壊を確認した。いくつかのkatG破壊株を、FLPリコンビナーゼを含有する温度感受性プラスミドpCP20(配列番号19)で形質転換し、kan遺伝子を切除するために使用し、LB−ampプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLBプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアリングした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatG1およびMG1655KatG2と命名した。
【0170】
実施例2
katEカタラーゼ破壊E.コリ(E.coli)株の構築
配列番号20および配列番号21と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって、カナマイシン耐性遺伝子(配列番号9)をプラスミドpKD13(配列番号10)から増幅して、配列番号22と同定されるPCR産物を生じた。katE核酸配列は配列番号23として提供され、対応するアミノ酸配列は配列番号24である。E.コリ(E.coli)MG1655(ATCC(登録商標)47076TM)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する温度感受性プラスミドpKD46(配列番号16)で形質転換し、LB−ampプレートにおいて30℃で24時間選択した。エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)によって、MG1655/pKD46を50〜500ngのPCR産物で形質転換し、LB−kanプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLB−kanプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pKD46プラスミドをキュアリングした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。PUREGENE(登録商標)DNA精製システム(Gentra Systems, Minneapolis,MN)を用いてゲノムDNAを数個のコロニーから単離し、配列番号25および配列番号26と同定されるプライマーを用いてPCRによりチェックして、katE遺伝子の破壊を確認した。いくつかのkatE破壊株を、FLPリコンビナーゼを含有する温度感受性プラスミドpCP20(配列番号19)で形質転換し、kan遺伝子を切除するために使用し、LB−ampプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLBプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアリングした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatE1およびMG1655KatE2と呼んだ。
【0171】
実施例3
katGカタラーゼおよびkatEカタラーゼ破壊E.コリ(E.coli)株(KLP18)の構築
配列番号20および配列番号21と同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって、カナマイシン耐性遺伝子(配列番号9)をプラスミドpKD13(配列番号10)から増幅して、配列番号22と同定されるPCR産物を生じた。E.コリ(E.coli)MG1655KatG1(実施例1)を、λ−Redリコンビナーゼ遺伝子を含有する温度感受性プラスミドpKD46(配列番号16)で形質転換し、LB−ampプレートにおいて30℃で24時間選択した。エレクトロポレーション(BioRad Gene Pulser、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25μF)によって、MG1655KatG1/pKD46を50〜500ngのPCR産物で形質転換し、LB−kanプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLB−kanプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pKD46プラスミドをキュアリングした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。PUREGENE(登録商標)DNA精製システムを用いてゲノムDNAを数個のコロニーから単離し、配列番号25および配列番号26と同定されるプライマーを用いてPCRによりチェックして、katE遺伝子の破壊を確認した。いくつかのkatE破壊株(ΔkatE)を、FLPリコンビナーゼを含有する温度感受性プラスミドpCP20(配列番号19)で形質転換し、kan遺伝子を切除するために使用し、LB−ampプレートにおいて37℃で24時間選択した。数個のコロニーをLBプレート上に画線し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアリングした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatG1KatE18.1およびMG1655KatG1KatE23と呼んだ。MG1655KatG1KatE18.1は、E.コリ(E.coli)KLP18と称される。
【0172】
実施例4
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(受入番号ABX75634.1)において報告されるようなラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子を、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)における発現に対して最適化されたコドン(DNA 2.0、Menlo Park,California)を用いて合成した。続いて、配列番号27および配列番号28として同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって遺伝子を増幅した。得られた核酸産物(配列番号29)をpTrcHis2−TOPO(登録商標)(Invitrogen,Carlsbad CA)にサブクローニングして、pSW229(配列番号30)として同定されるプラスミドを生じた。プラスミドpSW229を用いてE.コリ(E.coli)KLP18(二重カタラーゼノックアウト、実施例3)を形質転換して、KLP18/pSW229として同定される株を生じた。KLP18/pSW229を、LB培地中37℃で振とうさせながらOD600nm=0.4〜0.5まで増殖させ、この時点で、IPTGを1mMの最終濃度になるまで添加し、インキュベーションを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって収集し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の10〜20%でペルヒドロラーゼの発現を確認した。
【0173】
実施例5
メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(受入番号BAB53179.1)において報告されるようなメソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子を、E.コリ(E.coli)における発現に対して最適化されたコドン(DNA 2.0)を用いて合成した。続いて、配列番号31および配列番号32として同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって遺伝子を増幅した。得られた核酸産物(配列番号33)をpTrcHis2−TOPO(登録商標)(Invitrogen)にサブクローニングして、pSW231(配列番号34)として同定されるプラスミドを生じた。プラスミドpSW231を用いてE.コリ(E.coli)KLP18(二重カタラーゼノックアウト、実施例3)を形質転換して、KLP18/pSW231として同定される株を生じた。KLP18/pSW231を、LB培地中37℃で振とうさせながらOD600nm=0.4〜0.5まで増殖させ、この時点で、IPTGを1mMの最終濃度になるまで添加し、インキュベーションを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって収集し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の10−20%でペルヒドロラーゼの発現を確認した。
【0174】
実施例6
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(登録商標)(受入番号AAF70202.1)において報告されるようなゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子を、E.コリ(E.coli)における発現に対して最適化されたコドン(DNA 2.0)を用いて合成した。続いて、配列番号35および配列番号36として同定されるプライマーを用いるPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によって遺伝子を増幅した。得られた核酸産物(配列番号37)をpTrcHis2−TOPO(登録商標)(Invitrogen)にサブクローニングして、pSW236(配列番号38)として同定されるプラスミドを生じた。プラスミドpSW236を用いてE.コリ(E.coli)KLP18(二重カタラーゼノックアウト)を形質転換して、KLP18/pSW236として同定される株を生じた。KLP18/pSW236を、LB培地中37℃で振とうさせながらOD600nm=0.4〜0.5まで増殖させ、この時点で、IPTGを1mMの最終濃度になるまで添加し、インキュベーションを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって収集し、SDS−PAGEを実施して、全可溶性タンパク質の10〜20%でペルヒドロラーゼの発現を確認した。
【0175】
実施例7
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(Lla)ペルヒドロラーゼ、KLP18/pSW229
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(Lla)のペルヒドロラーゼを発現する株KLP18/pSW229を、ペルヒドロラーゼ発現のIPTG誘発を組み込んだ振とうフラスコ培養において調製および増殖した(実施例4)。50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中20重量%の細胞懸濁液を16,000psi(約110.32MPa)で操作されるFrench pressure cellに2回通すことによって、収集した細胞ペーストの抽出物を調製した。次に、抽出物を20,000×g(5℃)で遠心分離して細胞片を除去し、続いて、−80℃で貯蔵する前に抽出物を全てアリコートに等分した。次に、清澄化抽出物の2つの250μLアリコートを65℃または75℃のいずれかで20分間加熱した後、氷浴中で冷却した。次に、加熱処理した抽出物を14,000rpmで遠心分離して、加熱沈殿タンパク質を除去した。次に、製造業者の使用説明書に従って、清澄化、加熱処理した抽出物においてBCAアッセイ(タンパク質決定のためのビシンコニン酸キット、Sigmaカタログ番号BCA1−KT、Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を実施して、加熱処理の前後のタンパク質濃度を決定した。結果は、以下の表4に示される。
【0176】
【表5】

【0177】
SDS−PAGEを実施して、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ペルヒドロラーゼを全可溶性タンパク質の百分率として評価した。加熱前、65℃の加熱処理、および75℃の加熱処理抽出物のタンパク質負荷は5μg/レーンであった。65℃の加熱処理サンプルは85〜90%の純度であると推定された。75℃で20分間の加熱処理は、清澄化抽出物からのペルヒドロラーゼタンパク質の消失をもたらした。
【0178】
比活性の決定のために、トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1000mM)、リン酸緩衝液(50mM、pH7.2)および15μg/mLの65℃の清澄化抽出物タンパク質または20μg/mLの75℃の加熱処理した清澄化抽出物タンパク質のいずれかを用いて、反応を実行した。1、2、3、4、および5分において反応をサンプリングした後、Karst誘導体化プロトコール(Karstら、上記)を用いて分析し、反応混合物のアリコート(0.040mL)を取り出し、水中5mMのリン酸0.960mLと混合し、希釈サンプルのpHをpH4未満に調整すると反応は直ちに終了した。得られた溶液を、12,000rpmで2分間の遠心分離により、ULTRAFREE(登録商標)MC−フィルタユニット(30,000分画分子量(NMWL)、Milliporeカタログ番号UFC3LKT00)を用いてろ過した。得られたろ液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含有する1.5mLのスクリューキャップHPLCバイアル(Agilent Technologies,Palo Alto,CA、#5182−0715)に移し、次に、アセトニトリル中20mMのMTS(メチル−p−トリル−スルフィド)0.100mLを添加し、バイアルにフタを閉め、内容物を手短に混合した後、光のない状態で、約25℃で10分間のインキュベーションを行った。次に、各バイアルに、0.400mLのアセトニトリルおよび0.100mLのトリフェニルホスフィン(TPP、40mM)のアセトニトリル溶液を添加し、バイアルに再度フタを閉め、得られた溶液を混合し、光のない状態で、約25℃で30分間インキュベートした。次に、各バイアルに、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET、HPLC外部標準)を添加し、得られた溶液をHPLCにより分析した。
【0179】
また、ペルヒドロラーゼを添加せずに対照反応も実施し、化学的な過加水分解の相対速度を評価した。65℃で加熱処理したタンパク質を含有する反応は、1分で1100ppmのPAAを生成し、2、3、4、または5分では、さらなるPAAは生成されなかった。75℃で加熱処理したタンパク質を含有する反応は、酵素を含まない対照反応に対して、有意な濃度のPAAを生成しなかった。
【0180】
実施例8
メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)ペルヒドロラーゼ(Mlo、KLP18/pSW231)
メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)のペルヒドロラーゼを発現する株KLP18/pSW231を、ペルヒドロラーゼ発現のIPTG誘発を組み込んだ振とうフラスコ培養において調製および増殖した(実施例5)。次に、1mMのジチオスレイトールを含有する50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いて、20重量%の細胞懸濁液を調製した。次に、均一な細胞懸濁液を、16,000psi(約110.32MPa)で操作されるFrench pressure cellに2回通した。次に、粗抽出物を20,000×g(5℃)で25分間遠心分離して、細胞片を除去した。次に、数本のEppendorf試験管(それぞれ、250μLの抽出物を含有する)に抽出物を等分した。次に、これらの抽出物サンプルのうちの2つを65℃または75℃で20分間加熱した。各加熱処理に続いて、14,000rpmでの遠心分離の後、各サンプルの加熱沈殿タンパク質を除去した。次に、Bradfordアッセイ(Sigma Aldrich、St.Louis,MO)を実施して、加熱処理の前後のサンプルのタンパク質濃度を決定した。結果は表5に示される。
【0181】
【表6】

【0182】
SDS−PAGEを実施して、ペルヒドロラーゼの精製の度合いを評価した。メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)ペルヒドロラーゼとして同定されるペルヒドロラーゼのバンドは、65℃または75℃のいずれかにおける抽出物の加熱処理の後に消失し、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)ペルヒドロラーゼがこれらの温度で変性されることが示された。清澄化された非加熱抽出物のSDS−PAGEは、低レベルのペルヒドロラーゼ発現(全可溶性タンパク質の約5%)示した。ペルヒドロラーゼ比活性の決定のために、トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1000mM)、リン酸緩衝液(50mM、pH7.2)、および清澄化抽出物の非加熱タンパク質(100μg/mL)を含有する反応を実行した。反応(25℃)を5分間毎分サンプリングした。Karst誘導体化プロトコール(Karstら、上記)を用いてサンプルを過酢酸(PAA)生成について分析した後、HPLC分析を行った。比活性は3.9U/mgであった。
【0183】
Mloペルヒドロラーゼの発現の改善のために第2の振とうフラスコ増殖プロトコールを使用した。プロトコールは、10mLの培地を含む125mLの使い捨てのバッフル付フラスコにおける種段階と、2つの1Lのバッフル付フラスコ(各フラスコに250mLの培地を含む)における産生段階とを含む。種フラスコのための培地は、酵母抽出物(Difco、5.0g/L)、KHPO(10.0g/L)、KHPO(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NHSO(4.0g/L)およびクエン酸第二鉄アンモニウム(0.10g/L)を含有した。培地のpHを6.8に調整し、0.2ミクロンフィルタによるろ過によって培地を殺菌した。殺菌後の添加は、グルコース5g/L、微量元素溶液(5mL/L)、MgSO(5mM)、およびアンピシリン(50μg/mL)を含んでいた。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO七水和物(0.5g/L)、ZnSO七水和物(0.2g/L)、CuSO五水和物(0.02g/L)およびNaMoO二水和物(0.02g/L)を含有した。種フラスコに1mLの凍結ストックを接種し、7OD550までインキュベートした。37℃および300rpmのインキュベータシェーカーにおいて種フラスコおよび産生フラスコをインキュベートした。産生フラスコのための培地は、酵母抽出物の濃度を2g/Lに低下させた点を除いて、種フラスコと同じであった。各産生フラスコに7mLの種培養物を播種した。IPTGを約3OD550において0.1mMまで添加してから、インキュベーションを12時間続け、ここで、増殖は約9ODまで進んだ。遠心分離によって細胞を収集し、−80℃においてさらなる処理のために細胞ペレットを凍結させた。上記のようにこの収集した細胞ペーストから抽出物を調製した。SDS−PAGEゲルに基づいて、ペルヒドロラーゼは、全可溶性清澄化抽出物タンパク質の約10%を表すと推定された。Karst誘導体化プロトコール(Karstら、上記)を用いた後、HPLC分析によって比活性を決定し、比活性は3.6U/mgタンパク質であった。
【0184】
実施例9
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(Gst、KLP18/pSW236):ペルヒドロラーゼの評価
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(Gst、KLP18/pSW236)を振とうフラスコ中で増殖および誘発させた後、上記のように抽出物を調整した(実施例7)。次に、抽出物のサンプル(250μL)を65℃または75℃のいずれかで20分間加熱した後、遠心分離して加熱沈殿タンパク質を除去した。SDS−PAGEを実施して、加熱および非加熱の清澄化抽出物においてペルヒドロラーゼ純度を推定した。SDS−PAGEゲルに基づいて、ペルヒドロラーゼは、非加熱および加熱抽出物(75℃)の可溶性タンパク質の5%未満を表すと推定された。65℃で加熱処理した清澄化抽出物中のペルヒドロラーゼは、全可溶性タンパク質の15〜20%を表すと推定された。
【0185】
TA(250mM)、過酸化水素(1000mM)、リン酸カリウム緩衝液(50mM、pH7.2)、および100μg/mLの清澄化、非加熱または加熱処理した(65℃)抽出物タンパク質を含有する反応(25℃)の後に比活性を決定した。1分のサンプリングで5分間の反応を実施した後、Karst誘導体化プロトコール(Karstら、上記)およびHPLC分析を行った。比活性は、4.4U/mg非加熱タンパク質および3.3U/mg加熱処理タンパク質であると決定された。ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)ペルヒドロラーゼが熱安定性であれば、加熱処理タンパク質の比活性は、非加熱タンパク質の比活性よりも高いことが予想されるであろう。清澄化、加熱処理した抽出物タンパク質の比活性は、清澄化した非加熱抽出物タンパク質の比活性よりも低く、ペルヒドロラーゼは65℃でやや安定なだけであることが示された。
【0186】
実施例10
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)からのペルヒドロラーゼを発現する形質転換体(KLP18/pSW229)の細胞抽出物を調製した(実施例7)。次に、粗抽出物を20,000×gおよび5℃で遠心分離し、細胞片を除去して清澄化細胞抽出物を生成し、これを全可溶性タンパク質についてアッセイした(タンパク質決定のためのビシンコニン酸キット、Sigma−Aldrich、カタログ番号BCA1−KT)。清澄化抽出物を65℃で20分間加熱した後、すぐに氷/水浴中で冷却した。得られた混合物を遠心分離して沈殿したタンパク質を除去し、清澄化、加熱処理した細胞抽出物を集め、前述のように全可溶性タンパク質についてアッセイした。清澄化、加熱処理した細胞抽出物のSDS−PAGEは、ペルヒドロラーゼが少なくとも85〜90%純粋であることを示した。前述のように、清澄化、加熱処理した細胞抽出物を全可溶性タンパク質についてアッセイし、ドライアイス中で凍結し、−80℃で貯蔵した。
【0187】
トリアセチン、過酸化水素、および50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)または50mMの重炭酸ナトリウ緩衝液(pH8.5)中の加熱処理、遠心分離した細胞抽出物(8.8mg/mL)(上記のように調製)からの50μg/mLの全タンパク質を含有する反応(2mLの全体積)を24℃で実行した。各反応条件に対する対照反応を実行して、抽出物タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成される過酢酸の濃度を決定した。反応混合物中の過酢酸の濃度は、実施例7で記載されるようなKarstらの方法に従って決定した。50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中で1分間、5分間および30分に生成される過酢酸濃度は表6に記載され、50mM重炭酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)中の濃度は表7に記載される。ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ペルヒドロラーゼによって生成される過酢酸の濃度は、反応の5〜30分後に有意に増大しなかったが、M.ロティ(M.loti)、G.ステアロサーモフィルス(G.stearothermophilus)、T.ネアポリタナ(T.neapolitana)、T.マリティマ(T.maritima)、B.スブチリス(B.subtilis)およびB.プミルス(B.pumilus)ペルヒドロラーゼにより同様の反応条件下で生成される過酢酸の濃度は、通常、反応の5分後に増大し続けた(以下の実施例11〜15を参照)。
【0188】
【表7】

【0189】
【表8】

【0190】
実施例11
メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)からのペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成(比較)
メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)からのペルヒドロラーゼを発現する形質転換体(KLP18/pSW231)の細胞抽出物を、Mloペルヒドロラーゼの発現の改善のための振とうフラスコ増殖プロトコールによって調製される細胞を用いて、実施例8に記載されるように調製した。清澄化した非加熱細胞抽出物をドライアイス中で凍結させ、−80℃で貯蔵した。
【0191】
トリアセチン、過酸化水素、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の清澄化した非加熱細胞抽出物(22.8mg/mL)(上記のように調製)からの500μg/mLの全タンパク質を含有する反応(2mLの全体積)を24℃で実行した。対照反応を実行して、抽出物タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成される過酢酸の濃度を決定した。反応混合物中の過酢酸の濃度は、Karstら(上記)の方法に従って決定した。1分、5分および30分で生成される過酢酸濃度は表8に記載される。
【0192】
【表9】

【0193】
実施例12
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのペルヒドロラーゼを用いる過酢酸の生成(比較)
ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)からのペルヒドロラーゼを発現する形質転換体(KLP18/pSW236)の細胞抽出物を実施例9に記載されるように調製した。清澄化した非加熱細胞抽出物をドライアイス中で凍結させ、−80℃で貯蔵した。
【0194】
トリアセチン、過酸化水素、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中の清澄化した非加熱細胞抽出物(21.4mg/mL)(上記のように調製)からの500μg/mLの全タンパク質を含有する反応(2mLの全体積)を24℃で実行した。各反応条件に対する対照反応を実行して、抽出物タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成される過酢酸の濃度を決定した。反応混合物中の過酢酸の濃度は、Karstら(上記)の方法に従って決定した。1分、5分および30分で生成される過酢酸濃度は表9に記載される。
【0195】
【表10】

【0196】
実施例13
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ペルヒドロラーゼによって生成される過酢酸(比較)
サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのペルヒドロラーゼを発現するE.コリ(E.coli)形質転換体(KLP18/pSW196)の細胞抽出物を、ジチオスレイトール(1mM)を含有する50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペーストの懸濁液(20重量%の湿細胞重量)を16,000psi(約110MPa)の作動圧力を有するFrench pressに2回通すことによって調製した。次に、粗抽出物を20,000×gで遠心分離し、細胞片を除去して清澄化細胞抽出物を生成し、これを全可溶性タンパク質についてアッセイした(タンパク質決定のためのビシンコニン酸キット、Sigma−Aldrich)。清澄化抽出物を75℃で20分間加熱した後、すぐに氷/水浴中で冷却した。得られた混合物を遠心分離して、沈殿したタンパク質を除去し、清澄化、加熱処理した細胞抽出物を集め、前述のように、全可溶性タンパク質についてアッセイした。清澄化、加熱処理した細胞抽出物のSDS−PAGEは、ペルヒドロラーゼが少なくとも90%純粋であることを示した。清澄化、加熱処理した細胞抽出物をドライアイス中で凍結させ、−80℃で貯蔵した。
【0197】
トリアセチン、過酸化水素、および50μg/mLの清澄化、加熱処理した細胞抽出物(上記のように調製)を含有する反応(10mLの全体積)を、25mMの重炭酸緩衝液(初期反応pH約8.1)を用いて25℃で実行した。各反応条件に対する対照反応を実行して、抽出物タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成される過酢酸の濃度を決定した。反応混合物中の過酢酸の濃度の決定は、Karstら(上記)によって記載される方法に従って実施した。250mMまたは100mMのいずれかの過酸化水素を用いたときに1分、5分および30分で生成される過酢酸濃度は表10に記載される。
【0198】
【表11】

【0199】
実施例14
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8ペルヒドロラーゼによる過酢酸の生成(比較)
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8からのペルヒドロラーゼを発現する形質転換体(KLP18/pSW207)の細胞抽出物を、ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペーストの懸濁液(20重量%の湿細胞重量)を16,000psi(約110MPa)の作動圧力を有するFrench pressに2回通すことによって調製した。次に、粗抽出物を20,000×gで遠心分離し、細胞片を除去して清澄化細胞抽出物を生成し、これを全可溶性タンパク質についてアッセイした(タンパク質決定のためのビシンコニン酸キット、Sigma−Aldrich)。清澄化抽出物を75℃で20分間加熱した後、すぐに氷/水浴中で冷却した。得られた混合物を遠心分離して、沈殿したタンパク質を除去し、清澄化、加熱処理した細胞抽出物を集め、前述のように全可溶性タンパク質についてアッセイした。清澄化、加熱処理した細胞抽出物のSDS−PAGEは、ペルヒドロラーゼが少なくとも85−90%純粋であることを示した。清澄化、加熱処理した細胞抽出物をドライアイス中で凍結させ、−80℃で貯蔵した。
【0200】
トリアセチン、過酸化水素および清澄化、加熱処理した細胞抽出物(上記のように調製)を含有する反応(2mLの全体積)を、25mMの重炭酸ナトリウム緩衝液(初期pH約8.1)を用いて25℃で実行した。各反応条件に対する対照反応を実行して、抽出物タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成される過酢酸の濃度を決定した。反応混合物中の過酢酸の濃度の決定は、Karstら(上記)によって記載される方法に従って実施した。250mMまたは100mMのいずれかの過酸化水素を用いて1分、5分および30分で生成される過酢酸濃度は表11に記載される。
【0201】
【表12】

【0202】
実施例15
ペルヒドロラーゼによる過酢酸の生成(比較)
バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)PS213(KLP18/pSW195)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8(KLP18/pSW207)、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)(KLP18/pSW196)、またはバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC31954TM(KLP18/pSW194)からのペルヒドロラーゼを発現する形質転換体の細胞抽出物を、ジチオスレイトール(1mM)を含有する0.05Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中の細胞ペーストの懸濁液(20重量%の湿細胞重量)を16,000psi(約110MPa)の作動圧力を有するFrench pressに2回通すことによって調製した。次に、粗抽出物を20,000×gで遠心分離し、細胞片を除去して清澄化細胞抽出物を生成し、これを全可溶性タンパク質についてアッセイした(タンパク質決定のためのビシンコニン酸キット、Sigma−Aldrich)。上澄みをドライアイス中で凍結させ、−80℃で貯蔵した。
【0203】
50mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(初期pH7.2または6.5)中のトリアセチン、過酸化水素および遠心分離した細胞抽出物の上澄み(上記のように調製)を含有する反応(10mLの全体積)を25℃で実行した。各反応条件に対する対照反応を実行して、抽出物タンパク質を添加せずに過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生成された過酢酸の濃度を決定した(データは示されない)。反応混合物中の過酢酸の濃度の決定は、Karstら(上記)によって記載される方法に従って実施した。1分、5分および30分で生成される過酢酸濃度は表13に記載される。
【0204】
【表13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(1)(i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換される)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含み、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水への溶解度を有するエステル、
(ii)構造
【化1】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
(iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
(2)過酸素源と、
(3)CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、ペルヒドロリシスを有する酵素触媒であって、該シグネチャーモチーフが、
(i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
(ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および
(iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、該酵素が配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素触媒と
を含む一組の反応成分を選択するステップと、
(b)反応成分を水性反応下で混ぜ合わせて反応混合物を形成し、それにより、酵素的に生成されたペルオキシカルボン酸を含む反応生成物が形成されるステップであって、
(1)反応混合物のpHが、約6.0〜約9.0の範囲内にとどまり、そして
(2)反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから5分以上の反応時間で、100%よりも大きく超えないステップと
を含む、標的濃度のペルオキシカルボン酸の製造方法。
【請求項2】
反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上の反応時間で、100%よりも大きく超えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから5分以上の反応時間で、50%よりも大きく超えない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応成分を混ぜ合わせてから1分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから5分以上の反応時間で、20%よりも大きく超えない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法によって生成されるペルオキシカルボン酸の総量が、前記反応混合物中の基質の量によっても過酸素の量によっても制限されない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応混合物のpHが約6.5〜約8.5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反応混合物のpHが約7.0〜約8.0の範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物が少なくとも1つの緩衝液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの緩衝液が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウムおよび重炭酸カリウムの混合物、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ならびにリン酸ナトリウムおよびリン酸カリウムの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
基質が、モノアセチンと、ジアセチンと、トリアセチンと、モノプロピオニンと、ジプロピオニンと、トリプロピオニンと、モノブチリンと、ジブチリンと、トリブチリンと、グルコースペンタアセタートと、キシローステトラアセタートと、アセチル化キシランと、アセチル化キシラン断片と、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセタートと、トリ−O−アセチル−D−ガラクタールと、トリ−O−アセチル−グルカールと、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールのモノエステルまたはジエステルと、プロピレングリコールジアセタートと、エチレングリコールジアセタートと、そしてこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
生成されるペルオキシカルボン酸が、過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過乳酸、ペルグリコール酸、ペルメトキシ酢酸、ペル−β−ヒドロキシ酪酸、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
酵素触媒が、微生物細胞、透過処理微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製酵素、または精製酵素の形態にある、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
酵素触媒はカタラーゼ活性がない、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(c)表面または無生物体をステップ(b)において生成されるペルオキシカルボン酸と接触させ、それにより、該表面または該無生物体が消毒、脱染、脱臭または漂白されるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(c)繊維製品をステップ(b)において生成されるペルオキシカルボン酸と接触させ、それにより、該繊維製品がベネフィットを受けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ベネフィットが、消毒、漂白、脱染、脱臭、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)(1)(i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換される)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含み、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水への溶解度を有するエステル、
(ii)構造
【化2】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
(iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
(2)過酸素源と、
(3)CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、ペルヒドロリシスを有する酵素触媒であって、該シグネチャーモチーフが、
(i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
(ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および
(iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、該酵素が配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素触媒と
を含む一組の反応成分を選択するステップと、
(b)選択された一組の反応成分を水性反応条件下で混ぜ合わせて反応混合物を形成し、それにより、酵素的に生成されたペルオキシカルボン酸を含む反応生成物が形成されるステップであって、
(1)水性反応混合物のpHが約6.0〜約9.0の範囲内にとどまり、そして
(2)反応成分を混ぜ合わせてから5分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上の反応時間で、100%よりも大きく超えないステップと
を含む、標的濃度のペルオキシカルボン酸の製造方法。
【請求項18】
反応成分を混ぜ合わせてから5分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上の反応時間で、50%よりも大きく超えない、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
反応成分を混ぜ合わせてから5分後に生成されるペルオキシカルボン酸の濃度が、反応成分を混ぜ合わせてから30分以上の反応時間で、20%よりも大きく超えない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(a)(1)(i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換される)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含み、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水への溶解度を有するエステル、
(ii)構造
【化3】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
(iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
(2)過酸素源と、
(3)CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2と整列するシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、ペルヒドロリシスを有する酵素触媒であって、該シグネチャーモチーフが、
(i)配列番号2のアミノ酸位置118−120におけるRGQモチーフ、
(ii)配列番号2のアミノ酸位置179−183におけるGXSQGモチーフ、および
(iii)配列番号2のアミノ酸位置298−299におけるHEモチーフ
を含み、該酵素も配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素触媒と
を含む一組の反応成分と、
(b)(a)の一組の反応成分を混ぜ合わせたときに形成される少なくとも1つのペルオキシカルボン酸と
を含む組成物。
【請求項21】
酵素触媒がアミノ酸配列番号4を有する酵素を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
(a)(1)配列番号4に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する酵素を含む酵素触媒と、
(2)(i)構造
[X]
[式中、Xは、式R−C(O)Oのエステル基であり、
は、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、ここで、R=C2〜C7の場合には、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
は、C1〜C6線状、分枝状、または環状ヒドロカルビル部分(場合により、ヒドロキシル基によって置換される)であり、ここで、R中の各炭素原子は個々に1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含み、Rは場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含み、
mは、1からR中の炭素原子の数までである]
を有し、25℃において少なくとも5ppmである水への溶解度を有するエステル、
(ii)構造
【化4】

[式中、Rは、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキル(場合により、ヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換される)であり、そしてRおよびRは個々にHまたはRC(O)である]
を有するグリセリド、ならびに
(iii)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
(3)任意選択的な緩衝液と
を含む第1のコンパートメントと、
(b)(1)過酸素源、
(2)過酸化物安定剤、および
(3)任意選択的な緩衝液
を含む第2のコンパートメントと
を含むキット。

【図1A】
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【図1B】
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【公表番号】特表2013−506421(P2013−506421A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532257(P2012−532257)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050659
【国際公開番号】WO2011/041367
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】