説明

酵素製剤

本発明は、少なくとも1種の酵素と少なくとも1種の単細胞タンパク質を含む安定化固体または液体酵素製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い安定性、好ましくは熱安定性を有する固体または液体酵素製剤であって、単細胞タンパク質の添加により得られる該製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飼料分野においては、一時的に高い温度(80〜120℃までの)、水分および剪断応力が、タンパク質構造に影響を及ぼし、活性の望ましくない低下を招く恐れがある、製剤化(例えば、噴霧乾燥、造粒)および飼料加工工程(例えば、ペレット化、押出、伸展)中に起こりうる問題を解消するため、安定化された、好ましくは熱安定性を有する酵素が一般に有利である。
【0003】
酵素の添加は、様々な理由で飼料および食品調製物に広く実施されている。食品分野では、例えば、パン製造または醸造で酵素を添加する。飼料分野での酵素の役割は、多くの場合、例えば、粘度を低下させるか、あるいは特定の飼料化合物の抗栄養作用を低減させることにより、飼料加工率を高めることである。飼料用酵素はまた、例えば、堆肥中の環境に有害な化合物の量を減らすために用いることもできる。
【0004】
このように多様なあらゆる分野において、酵素は熱攻撃にさらされる、例えば、熱、湿度または温度曝露を被ることが多く、これらは、酵素の部分的または完全な不活性化を招く恐れがある。
【0005】
飼料には多量のホスフェートがフィチン酸リンの形態で存在するが、ブタや家禽のような単胃動物は、この形態のホスフェートを用いる能力がない。フィチン酸のアルカリまたは土類アルカリ塩は、主として穀類に天然に存在する。単胃動物は、この形態のホスフェートを用いることができないため、動物の飼料に無機ホスフェートを添加することが慣例となっている。
【0006】
他方で、フィターゼ(ミオ−イノシトールヘキサキスホスフェートホスホヒドロラーゼ)と呼ばれる酵素は、植物、および一部の微生物に存在することがわかっている。フィターゼは発酵により生成することができるため、当分野では、動物飼料添加剤としてフィターゼを用いることにより、フィチン酸(ミオ−イノシトールヘキサキスホスフェート)から無機ホスフェートを遊離することにより植物材料の栄養価を高めることが知られている。フィターゼの使用により、動物はフィテートから遊離したホスフェートを利用することができるため、動物飼料にフィターゼを添加することによって、環境のリン汚染レベルを低下させることができる。
【0007】
Gist-Brocadesの国際特許出願WO 93/16175(EP 626 010)には、フィターゼの安定化液体製剤が記載されている。安定化剤として尿素および水溶性ポリオールを用いることが提案されており、このようなポリオールとして、分子量が6,000のソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールが挙げられている。
【0008】
Hoffmann-La Rocheの欧州特許出願EP-A1 0 969 089には、フィターゼと、a)5炭素原子のポリオール、好ましくはC5糖、さらに好ましくはキシリトールまたはリビトール、b)分子量600〜4,000 Daのポリエチレングリコール、c)マロン酸、グルタル酸およびコハク酸の二ナトリウム塩、d)カルボキシメチルセルロース、ならびにe)アルギニン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの安定化剤とを含む、安定化酵素製剤が記載されている。また、この文献には、グルタルアルデヒドとの化学反応によるか;またはb)過ヨウ素酸ナトリウムを用いた酸化と、これに続くアジピン酸ジヒドラジドの添加のいずれかによる架橋によってフィターゼ製剤を安定化することも記載されている。
【0009】
WO 98/54980には、顆粒を含むフィターゼが、また、WO 98/55599には、高活性フィターゼ液と、これらを含む飼料調製物が記載されている。
【0010】
EP 0 758 018には、塩安定化酵素調製物が記載されており、該調製物では、硫酸亜鉛、マグネシウムおよび/またはカルシウムのような無機塩の添加により酵素が安定化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、別の安定化剤を提供すること、ならびに、酵素の安定性、好ましくは熱安定性を高めることであり、ここで、安定性とは、様々な条件下で活性を保持する能力と定義される。このような安定性の特徴は、酵素のライフサイクル全体に関し、ライフサイクルには、生成(発酵、下流工程および製剤化)、流通(輸送および貯蔵)ならびに最終使用(飼料および/または食品の生産および貯蔵)が含まれる。商業的に関心の高い酵素(例えば、フィターゼ)の場合、ペレット化、押出および伸展のように様々な飼料および/または食品加工工程中に達する高温(80〜120℃まで)および高湿度に耐え、飼料および/または食品への添加後の貯蔵中、特に長期貯蔵中安定していることが重要である。さらに、最終製剤中の安定化剤の量は、酵素含有製剤に添加することができる別の成分を制限することから、当分野で周知の安定化剤より少量で使用可能な別の安定化剤を提供することも本発明の目的である。また、特に、酵素混合物に用いることができる安定化剤を提供することも本発明の目的である。酵素調製物を1以上の発酵ブロスから調製する場合には、最終製剤に添加することができる安定化剤の量は制限される。これは、最終製品に高濃度の酵素を所望するために、最終製剤に添加することができる希釈剤の量が制限される場合、特に重要である。本発明のさらに別の形態では、酵素混合物を用いる場合、安定化剤は1つの酵素だけでなく、好ましくは、混合物中の全ての酵素も安定化するのが好ましい。
【0012】
本発明で用いる用語「安定性」とは、工業用酵素のあらゆる規格に関し、これには、活性、特異性、保存寿命、機械的安定性、微生物安定性、毒性、化学組成、ならびに密度、粘度、吸湿性、さらには色、臭気および微粉のような物理的パラメーターなどの特性が含まれる。本発明の好ましい態様は、製剤化、ならびにペレット化、押出および伸展などの飼料および/または食品加工工程中の熱不活性化に対する、酵素、好ましくはフィターゼおよび/またはグリコシダーゼの安定性に関する。
【0013】
酵素、特にフィターゼ、キシラナーゼおよびエンドグルカナーゼの広範な使用に対する主な障害は、これらの酵素が飼料および/または食品加工工程中の不活性化に耐える上で必要な熱安定性(80〜120℃)に制約があることである。飼料および/または食品用途のために現在入手可能な工業用酵素のほとんどは、熱不活性化に対する内在的な耐性が不十分である。分子生物学的手法に代わり、またはこれに加えて、本発明は、様々な添加剤の添加により、酵素の安定性、好ましくは熱安定性を高める。
【0014】
本発明の別の目的は、酵素製剤を安定化すると同時に、酵素製剤の栄養価に寄与する物質を提供することである。これは、動物およびヒトの栄養分野における酵素の使用に関して特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、酵素または酵素混合物の安定性、好ましくは熱安定性に対して安定化剤として作用する、単細胞タンパク質の使用を開示する。
【0016】
本明細書で使用する用語「酵素」、「(複数の)酵素」および「複数の酵素」は、単一の酵素、および異なる酵素(例えば、フィターゼとキシラナーゼ)の混合物、ならびに、供給源が異なる同種酵素(例えば、真菌フィターゼと細菌フィターゼ)の混合物を包含する。
【0017】
本発明の製剤に好ましい酵素には、食品産業(パン製造を含む)および飼料産業に有用な酵素が含まれる。
【0018】
このような酵素として、限定するものではないが、プロテアーゼ(細菌、真菌、酸性、中性またはアルカリ性)が挙げられ、中性および/または酸性のpH最適値を有するものが好ましい。
【0019】
このような酵素として、限定するものではないが、リパーゼ(真菌、細菌、哺乳動物)、好ましくは哺乳動物膵ホスホリパーゼA2またはいずれかのトリアシルグリセロールリパーゼなどのホスホリパーゼ(E.C.3.1.1.3)が挙げられる。
【0020】
このような酵素として、限定するものではないが、グリコシダーゼ(E.C.3.2、カルボヒドラーゼとしても知られる)、例えば、アミラーゼ(αまたはβ)、セルラーゼ(セルラーゼ全体またはその機能的成分)、特にキシラナーゼ、エンドグルカナーゼ、ガラクトシダーゼ、ペクチナーゼ、およびβガラクトシダーゼが挙げられる。
【0021】
このような酵素として、限定するものではないが、例えば、フィターゼ(3-フィターゼおよび6-フィターゼの両方)および/または酸性ホスファターゼなどのホスファターゼが挙げられる。
【0022】
このような酵素として、限定するものではないが、グルコースオキシダーゼが挙げられる。
【0023】
プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)は、細菌酵素、好ましくは細菌または真菌株由来のプロテアーゼであるか、または、プロテアーゼはトリプシンまたはペプシンでもよい。好ましい実施形態では、タンパク質分解酵素は、バチルス属の菌株、好ましくは枯草菌の菌株またはバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)の菌株に由来する細菌プロテアーゼである。市販されているバチルスプロテアーゼとして、AlcaseTMおよびNeutraseTM(Novozymes、デンマーク)がある。別の好ましい実施形態では、タンパク質分解酵素は、アスペルギルス属の菌株、好ましくはアスペルギルス・アキュレアツス(Aspergillus aculeatus)の菌株、アスペルギルス・ニガーの菌株、コメコウジ菌(Aspergillus oryzae)の菌株に由来する真菌プロテアーゼである。市販されているアスペルギルスプロテアーゼとしては、FlavourzymeTM(Novozymes、デンマーク)がある。
【0024】
グリコシダーゼ酵素は、いずれのグリコシダーゼ酵素(EC.3.2.1、カルボヒドラーゼとしても知られる)でもよい。好ましくは、グリコシダーゼ酵素はアミラーゼ、特に、αアミラーゼまたはβアミラーゼ、セルラーゼ、特にエンド−1,4−βグルカナーゼ(EC.3.2.1.4)またはエンド−1,3−βグルカナーゼ(EC.3.2.1.6)、キシラナーゼ、特に、エンド−1,4−β−グルカナーゼ(EC.3.2.1.8)またはキシラン−エンド−1,3−βキシロシダーゼ(EC.3.2.1.32)、αガラクトシダーゼ(EC.3.2.1.22)、ポリガラクツロナーゼ(EC.3.2.1.15)(ペクチナーゼとしても知られる)、セルロース−1,4−βセロビオシダーゼ(EC.3.2.1.91)(セロビオヒドロラーゼとしても知られる)、エンドグルカナーゼ、特にエンド−1,6−δ−グルカナーゼ(EC.3.2.1.75)、エンド−1,2−β−グルカナーゼ(EC.3.2.1.71)、エンド−1,3−β−グルカナーゼ(EC.3.2.1.39)もしくはエンド−1,3−α−グルカナーゼ(EC.3.2.1.59)である。
【0025】
本発明の好ましいエンド−1,4−β−グルカナーゼ(EC.3.2.1.4)は、WO 01/70998(BASF AG)(本明細書に参照として組み込まれる)に記載されているエンド−1,4−β−グルカナーゼである。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、酵素は少なくとも1種のキシラナーゼである。キシラナーゼは、微生物起源、例えば、アスペルギルス・ニガー、クロストリジウム・テルモセルム(Clostridium thermocellum)、トリコデルマ・レエセイ(Trichoderma reesei)、ペニシリウム・ジャンチネルム(Penicillium janthinellum)、ならびにバチルス属およびストレプトミセス属の種から得られる。キシラナーゼは、例えば、EP 121 138に記載されているように組換え発現によっても得ることができる。好ましい実施形態では、EP 0 463 706 B1(BASF AG)および/またはWO 02/24926 A1(BASF AG)に記載されているようなキシラナーゼを本発明に従い用いる。
【0027】
本発明の好適なキシラナーゼとして、エンドキシラナーゼおよび/またはエキソキシラナーゼを挙げることができる。
【0028】
好適な酵素は、ペットフードなどの動物飼料および/またはヒト栄養食品に含有させる酵素である。これらの酵素の機能は往々にして、例えば、粘度を低下させる、または特定の飼料化合物の抗栄養作用を低減させることにより、食品加工率を高めることである。また、堆肥に含まれる環境に有害な化合物の量を低減させるような飼料酵素を用いてもよい。
【0029】
本発明の酵素製剤を食品分野で用いる場合には、酵素は食品グレードの品質でなければならない。
【0030】
少なくとも1種、好ましくは2種、好ましくは3種以上の酵素を用いることも本発明の範囲に含まれる。これらは、同じクラス由来の酵素(例えば、2つの異なるフィターゼ)、または異なるクラス由来の酵素(例えば、フィターゼとキシラナーゼ)のいずれでもよい。酵素と称する場合には、単一の発酵で直接取得したものか、または別々の発酵で取得可能な酵素を混合することにより得たものかにかかわらず、上記用語には酵素の混合物も含まれ、さらに組換え生物の発酵により得られる酵素も含まれることを理解すべきである。
【0031】
好ましい実施形態では、上記酵素は、フィターゼ、キシラナーゼ、およびエンドグルカナーゼ、ならびに、その混合物からなる群より選択される。
【0032】
好ましい実施形態では、酵素は少なくとも1つのフィターゼである。
【0033】
用語「フィターゼ」とは、天然に存在するフィターゼ酵素だけではなく、フィターゼ活性、例えば、ミオ−イノシトールホスフェートからの無機リン(ホスフェート)の除去または遊離を含む反応を触媒する能力を有するあらゆる酵素を意味する。好ましくは、フィターゼはクラスEC.3.1.3.8に属する。フィターゼは3-フィターゼおよび/または6-フィターゼでありうる。
【0034】
フィターゼ活性の1単位(=FTU)は、37℃でpH5.5の0.0051モル/Lのフィチン酸ナトリウムから毎分1マイクロモルの無機リンを遊離する酵素の量として定義される。
【0035】
分析方法は、過剰に添加したフィチン酸ナトリウムからの無機ホスフェートの遊離に基づいて実施する。pH5.5および37℃でのインキュベーション時間は60分である。遊離したホスフェートは、黄色のモリブデン−バナジウム複合体を用いて測定し、415 nmの波長で光度計により評価する。比較のため、既知活性のフィターゼ標準も並行して試験する。製品試料について測定した吸光の増加を標準に対する比として表す(相対法、公式AOAC法)。
【0036】
フィターゼ活性は、”Determination of Phytase Activity in Feed by a Colorimetric Enzymatic Method”: Collaborative Interlaboratory Study Engelenら: Journal of AOAC International 第84巻、第3号、2001に従い測定することができる。
【0037】
本発明のフィターゼは、微生物由来のもの、および/または天然に存在するフィターゼの遺伝子改変および/または新規構築(遺伝子操作)により得られるもののいずれでもよい。
【0038】
好ましい実施形態では、フィターゼは植物フィターゼ、真菌フィターゼ、細菌フィターゼ、または酵母により生成可能なフィターゼである。
【0039】
フィターゼは、細菌、真菌および酵母のような微生物起源に由来するものが好ましいが、植物起源のものでもよい。好ましい実施形態では、フィターゼは、真菌株、特にアスペルギルス属、例えば、アスペルギルス・ニガー、コメコウジ菌、アスペルギルス・フィクウム(Aspergillus ficuum)、アワモリコウジ菌(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)およびアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)の菌株由来のものである。最も好ましいのは、アスペルギルス・ニガーの菌株またはコメコウジ菌の菌株に由来するフィターゼである。
【0040】
別の好ましい実施形態では、フィターゼは細菌株、特にバチルス属の菌株またはシュードモナス属の菌株に由来する。好ましくは、フィターゼ酵素は、枯草菌の菌株に由来する。
【0041】
別の好ましい実施形態では、フィターゼは細菌株、特に大腸菌の菌株に由来する。
【0042】
別の好ましい実施形態では、フィターゼは、酵母、特にクルイベロミセス属(Kluveromyces)の菌株またはサッカロミセス属の菌株に由来する。好ましくは、フィターゼは、サッカロミセス・セレビシエの菌株由来のものである。
【0043】
本発明に関して、「〜に由来する酵素」とは、特定の菌株により自然に生成された酵素を包含し、これらは該菌株から回収するか、または該菌株から単離したDNA配列によりコードされ、該DNA配列で形質転換した宿主生物において生成させるかのいずれかにより得られる。
【0044】
フィターゼは、いずれかの好適な方法を用いて、該当する微生物から取得することができる。具体的には、フィターゼ酵素は、好適な栄養培地中でフィターゼ生成微生物を発酵させた後、当分野では周知の方法により該酵素を単離することにより得られる。
【0045】
培養のために用いるブロスまたは培地は、該当する宿主細胞を増殖させるのに適していれば、通常の培地のいずれでもよく、従来技術の原理に従い組成することができる。培地は、炭素および窒素源ならびにその他の無機塩を含むのが好ましい。好適な培地、例えば、最小限培地または複合培地が販売元から入手可能であり、また、公表された配合表(published receipts)、例えば、菌株のAmerican Type Culture Collection(ATCC)Catalogueに従い調製することもできる。
【0046】
培養後、フィターゼ酵素は、培養ブロスからタンパク質を単離および精製する通常の方法により回収する。周知の精製方法は、遠心分離または濾過により培地から細胞を分離し、硫酸アンモニウムのような塩を用いて培地のタンパク質成分を沈殿させた後、クロマトグラフィー法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなど)を実施することを含む。
【0047】
あるいは、好ましくは、組換えDNA技術(例えば、EP-A1-0 420 358に記載のもの;本明細書に参照として組み込まれる)を用いて、フィターゼ酵素を大量に生成させる。
【0048】
好ましくは、アスペルギルス・フィクウムまたはアルペルギルス・ニガーの種から得たフィターゼのコード遺伝子で形質転換したアスペルギルス種の真菌を、フィターゼのコード遺伝子の発現をもたらす条件下で(EP-A1-0 420 358に記載のように)培養する。
【0049】
フィターゼ含有発酵ブロスは、本発明の製剤化に用いる前に、濾過および限外濾過の両方で処理するのが好ましい。
【0050】
本発明のさらに好ましい実施形態において、分子操作により得たフィターゼ、例えば、WO 94/03072(Rohm)、WO 99/49022(Novozymes)、WO 00/43503(Novozymes)またはWO 03/102174(BASF AG)に記載の遺伝子改変フィターゼを用いる。
【0051】
本発明で好ましく用いられる別のフィターゼは、いわゆるコンセンサス(consensus)フィターゼである。これは、理論分子生物学的手法に従い作製したフィターゼであり、アスペルギルスフィターゼと比較して内在的な安定性が高い(欧州特許出願公開第897 985号を参照)。また、本発明を実施するのに、実施例3〜13に具体的に記載されたコンセンサスフィターゼを用いることもできる。
【0052】
また、真菌から得た遺伝子を、細菌(例えば、大腸菌)、酵母または別の真菌などの宿主生物に導入する遺伝子操作により、上記のようなフィターゼを生成させることも可能である。さらに詳細については、例えば、欧州特許出願公開第68431 3号および欧州特許出願公開第897 010号を参照されたい。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、EP-B1 420 358に従うフィターゼを用いることができる。
【0054】
本発明の記載全体を通して用いる用語「単細胞タンパク質」、「単細胞タンパク質材料」、「SCP」は、1つの供給源(例えば、酵母)由来の単細胞タンパク質、ならびに様々な供給源(例えば、酵母と真菌)由来の単細胞タンパク質の混合物を包含する。
【0055】
単細胞タンパク質(SCPと略称)は、微小藻類、真菌、酵母および/または細菌のような微生物から得られるタンパク質を包含する。SCPのタンパク質含有率は、そこからSCPを取得する微生物バイオマスの乾燥質量の40〜90%(w/w)の範囲で変動する。好ましい実施形態では、SCPのタンパク質含有率は、60〜90%(w/w)、好ましくは70〜90%(w/w)の範囲である。
【0056】
本発明の一実施形態では、微生物の発酵により単細胞タンパク質を取得するが、その際、該微生物は、藻類、真菌、酵母および/または細菌から選択する。
【0057】
本発明の一実施形態では、微生物として藻類を用いて、発酵によりSCPを取得する。単細胞タンパク質の供給源として、従属栄養型藻類および光合成独立栄養型藻類のいずれを使用することも本発明の範囲に含まれる。好適な藻類の例として、クロレラ属(Chlorella)、セネデスムス属(Scenedesmus)、スピルリナ属(Spirulina)、コエラストルム属(Coelastrum)、ウロネマ属(Uronema)、ドゥナリエラ属(Dunaliella)が挙げられる。
【0058】
本発明の一実施形態では、微生物として真菌を用いて、発酵によりSCPを取得する。好適な真菌として、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、ペーシロマイセス・バリオチ(Paecilomyces variotii)およびケトミウム・セルロリチクム(Chaetomium cellulolyticum)が挙げられる。好ましい実施形態では、いわゆるペキロ法によりペーシロマイセス・バリオチ(Paecilomyces variotii)から取得した単細胞タンパク質(「マイコプロテイン」)を用いる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、細菌および/または酵母の発酵により単細胞タンパク質を取得する。食品での使用が認可されたいずれかの細菌または酵母を用いることができ、また、当業者は適切な種を容易に選択することができる。特に好ましくは、本発明で用いる単細胞タンパク質材料は、メタノトロフィック細菌および/または従属栄養細菌からなる微生物培養物である。好ましい実施形態では、本発明で用いる単細胞タンパク質材料は、場合により1種以上の従属栄養細菌と組み合わせたメタノトロフィック細菌、特に好ましくはメタノトロフィック細菌と従属栄養細菌の組合せからなる微生物培養物である。本明細書で用いる用語「メタノトロフィック」(methanotrophic)とは、増殖のためにメタンまたはメタノールを利用するあらゆる細菌を包含する。また、用語「従属栄養」(heterotrophic)は、増殖のためにメタンまたはメタノール以外の有機基質を利用する細菌を意味するのに用いられる。
【0060】
都合のよいことに、単細胞材料は発酵方法により生成することができ、この方法では、酸素、および好適な基質(例えば、液体または気体の炭化水素)、アルコールまたは炭水化物(例えば、メタン、メタノールもしくは天然ガス)を栄養鉱物溶液と一緒に、微生物の入った管状反応器に供給する。そのような多数の方法が周知であり、当分野で記載されている。
【0061】
炭化水素画分または天然ガスを用いた発酵から得られる単細胞タンパク質材料が、本発明で使用するのに特に好ましい。特に好ましいのは、天然ガスの発酵から得られる単細胞タンパク質である。微生物の濃度は発酵槽内で上昇するため、反応器内容物またはブロスの一部分を回収し、当分野で周知の技術(例えば、遠心分離および/または限外濾過)により微生物を分離することができる。都合のよいことに、このような発酵方法では、ブロスを発酵槽から連続的に回収すると、細胞濃度は、1〜5重量%、例えば、約3重量%となる。
【0062】
2種以上の微生物から生成される単細胞材料を用い、処理してもよい。これらは、同じ発酵槽または別の発酵槽のいずれで生成してもよいが、一般に、同じ発酵条件下で、同じ発酵槽で生成する。別の発酵方法で生成した材料を一緒に混合してもよい。
【0063】
本発明で用いるのに好ましい細菌として、メフヒロコッカス・カプスラツス(Mefhylococcus capsulatus)(Bath)が挙げられるが、これは、本来、英国バースの温泉から単離され、The National Collections of Industrial and Marine Bacteria(スコットランド、アバディーン)にNCIMB 11132として寄託された好熱性細菌である。メフヒロコッカス・カプスラツス(Bath)は、約45℃で最適増殖を示すが、37℃〜52℃でも増殖することができる。この菌は、通常、一対で存在するグラム陰性の非運動性球形細胞である。細胞内膜は、I型メタノトロフ(methanotroph)に特有の胞状円板の束として構成される。
【0064】
メフヒロコッカス・カプスラツス(Bath)は、一般に、既知のプラスミドを含まない非常に安定な生物である。これは、増殖のためにメタンまたはメタノールを、また、タンパク質合成のための窒素の供給源としてアンモニア、硝酸塩または分子窒素を利用することができる。
【0065】
本発明で用いるのに適したその他の細菌として、従属栄養菌アルカリゲネス・アシドボランス(Alcaligenes acidovorans)DB3(菌株NCIMB 12387)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)DB5(菌株NCIMB 13280)およびバチルス・ブレビス(Bacillus brevis)DB4(菌株NCIMB 13288)が挙げられ、いずれも約45℃の温度で最適増殖を示す。
【0066】
アルカリゲネス・アシドボランスDB3は、グラム陰性の好気性運動性桿菌であり、シュードモナス科に属し、増殖のためにエタノール、アセテート、プロピオネートおよびブチレートを利用することができる。バチルス・ブレビスDB4は、グラム陰性の内生胞子形成好気性桿菌であり、バチルス属に属し、アセテート、D-フルクトース、D-マンノース、リボースおよびD-タガトースを利用することができる。
【0067】
バチルス・フィルムスDB5は、グラム陰性の内生胞子形成運動性好気性桿菌であり、バチルス属に属し、アセテート、N-アセチル−グルコサミン、シトレート、グルコネート、D-グルコース、グリセロールおよびマンニトールを利用することができる。
【0068】
本発明の方法に用いるのに好適な酵母は、サッカロミセス属とカンジダ属からなる群より選択することができる。
【0069】
唯一炭素源およびエネルギー源として天然ガスを用いる発酵方法の一例として、EP-A-306466(Dansk Bioprotein)に記載されたものが挙げられる。この方法は、メタンで増殖させたメタノトロフィック菌メフヒロコッカス・カプスラツスの連続的発酵に基づく。酸素添加には空気または純粋酸素を用い、窒素源としてはアンモニアを用いる。これらの基質に加え、細菌培養物は、典型的に、水、ホスフェート(例えば、リン酸として)、ならびに数種の鉱物を必要とし、鉱物としては、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、ニッケル、コバルトおよびモリブデンが挙げられ、一般にリン酸塩、塩化物もしくは硫酸塩として用いられる。単細胞材料の生成に用いる鉱物はすべて飼料または食品グレード品質でなければならない。
【0070】
天然ガスは主にメタンから構成されるが、その組成は、各ガス田によって変わってくる。典型的に、天然ガスは、約90%のメタン、約5%のエタン、約2%のプロパンおよび若干の高級炭化水素を含有すると予想される。天然ガスの発酵中、メタンはメタノトロフィック菌により酸化されてバイオマスおよび二酸化炭素となる。メタノール、ホルムアルデヒドおよびギ酸は代謝中間物である。ホルムアルデヒド(また、ある程度まで、二酸化炭素も)はバイオマスに同化される。しかし、メタノトロフィック菌は、増殖のために炭素−炭素結合を含む基質を使用することができず、残る天然ガスの成分、すなわち、エタン、プロパン(また、ある程度まで高級炭化水素も)はメタノトロフィック菌により酸化されて、対応するカルボン酸が生成される(例えば、エタンは酸化されて酢酸になる)。このような産物はメタノトロフィック菌を抑制する可能性があるため、バイオマスの生成中で、その濃度を低く、好ましくは50 mg/L未満に維持することが重要である。
【0071】
この問題に対する解決策の1つは、メタノトロフィック菌により生成される代謝物を利用することができる1種以上の従属栄養菌を組み合わせて用いることである。このような細菌は、細胞溶解により発酵ブロスに放出された有機材料を利用することも可能である。これは、気泡形成を防止する上で重要であり、培養物が不要な細菌で汚染される危険性を最小限に抑えるのに役立つ。メタノトロフィック菌と従属栄養菌の組合せにより、安定で、しかも高い収率の培養物が得られる。
【0072】
単細胞材料の生成中、発酵混合物のpHを一般に約6〜7、例えば、6.5 f 0.3に調節する。当業者は、pH調節に適した酸/塩基を容易に選択することができる。これに関する用途で特に好適なものは、水酸化ナトリウムおよび硫酸である。発酵中、発酵槽内の温度は、好ましくは40℃〜50℃の範囲内、最も好ましくは45℃ f2℃に維持しなければならない。
【0073】
メフヒロコッカス・カプスラツス(Bath)(菌株NCIMB 11 132)、ならびに従属栄養菌アルカリゲネス・アシドボランスDB3(菌株NCIMB 12387)およびバチルス・フィルムスDB5(菌株NCIMB 13280)の組合せを、場合によりバチルス・ブレビスDB4(菌株NCIMB 13288)と組合せた微生物培養物が、本発明で用いるのに特に好ましい。アルカリゲネス・アシドボランスDB3の役割は、天然ガス中のエタンおよびプロパンからメフヒロコッカス・カプスラツス(Bath)により生成されるアセテートおよびプロピオネートを利用することである。アルカリゲネス・アシドボランスDB3は、得られるバイオマスの全細胞数の10%以下、例えば、約6〜8%を占めうる。バチルス・ブレビスDB4とバチルス・フィルムスDB5の役割は、培地中の溶解産物および代謝物を利用することである。典型的には、バチルス・ブレビスDB4とバチルス・フィルムスDB5が連続的発酵中の細菌数に占める割合は各々1%未満である。
【0074】
単細胞材料の調製に用いるのに適した発酵槽は、Dansk BioproteinのDK1404/92、EP-A-418187およびEP-A-306466に記載されているものなどのループ型のもの、またはエアリフト式反応器である。固定ミキサーを備えるループ型発酵槽は、発酵槽のプラグ・フロー特性によって、ガスの高い使用率(例えば、最大95%)を可能にする。ガスはループに沿って数箇所で導入され、ループ末端で上部空間へと分離されるまで、液体と接触した状態に維持される。2〜3%バイオマス(乾燥重量に基づく)と毎時0.02〜0.50、例えば、毎時0.05〜0.25の希釈速度を用いて、連続的発酵を達成することができる。
【0075】
その他の発酵槽を単細胞材料の調製に用いることもでき、このようなものとして、管状タンク発酵槽および攪拌タンク発酵槽などが挙げられる。
【0076】
理想的には、天然ガスの発酵から生成されるバイオマスは、以下のものを含む:60〜80重量%の粗タンパク質;5〜20重量%の粗脂肪;3〜10重量%の灰分;3〜15重量%の核酸(RNAおよびDNA);10〜30g/kgのリン;350 mg/kg以下の鉄;および120 mg/kg以下の銅。特に好ましくは、上記バイオマスは以下のものを含む:68〜73重量%(例えば、約70重量%)の粗タンパク質;9〜11重量%(例えば、約10重量%)の粗脂肪;5〜10重量%(例えば、約7重量%)の灰分;8〜12重量%(例えば、約10重量%)の核酸(RNAおよびDNA);10〜25g/kgのリン;310 mg/kg以下の鉄;および110 mg/kg以下の銅。タンパク質含量のアミノ酸プロフィールは、より重要なアミノ酸であるシステイン、メチオニン、トレオニン、リシン、トリプトファンおよびアルギニンを高比率で含み、栄養的に好ましいものでなければならない。典型的に、上記アミノ酸はそれぞれ、約0.7%、約3.1%、約5.2%、約7.2%、約2.5%および約6.9%(アミノ酸総量の百分率として表す)の量で存在すると考えられる。
【0077】
一般に、前記脂肪酸は、主として飽和パルチミン酸(約50%)と単不飽和パルミトレイン酸(約36%)とを含む。前記生成物に含まれる鉱物は、典型的に、多量のリン(約1.5重量%)、カリウム(約0.8重量%)およびマグネシウム(約0.2重量%)を含む。一般に、連続的発酵方法から得た単細胞タンパク質材料を遠心分離および濾過(例えば、限外濾過)工程に供することにより、存在するほとんどの水を除去し、水性ペーストまたはスラリーを形成した後、均質化を実施する。遠心分離中には、バイオマスの乾燥物含有率は一般に、約2〜約15重量%(例えば、約12重量%)まで増加する。限外濾過は、40〜50℃、例えば、42〜46℃の温度で実施することができ、これによって、バイオマスが濃縮されて、10〜30%、好ましくは15〜25重量%(例えば、15〜22重量%)の単細胞材料を含む生成物が得られる。限外濾過中に用いるサイズ排除は一般に、約100,000ダルトンの範囲内である。
【0078】
限外濾過後、例えば、限外濾過装置から得た濃縮タンパク質スラリーを熱交換器に通過させることにより、好ましくは10〜30℃、例えば、約15℃の温度にバイオマスを冷却した後、一定温度のバッファータンク中に、例えば、1〜24時間、好ましくは5〜15時間、例えば5〜12時間、10〜20℃、さらに好ましくは5〜15℃の温度で、pH5.5〜6.5に維持する。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、単細胞タンパク質を均質化バイオマスとして用いる。
【0080】
本明細書で用いる用語「均質化(した)」または「ホモジネート」などは、均質にした、または均質になったあらゆる生成物、好ましくは、均質化工程に付した生成物を意味するものとする。
【0081】
用語「均質」とは、細胞成分の実質的に均質な分散液、懸濁液または乳濁液を包含するものとする。一般に、少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%または80%の等質性を有するあらゆる生成物を実質的に均質であるとみなすことができる。実質的に均質な分散液、懸濁液または乳濁液の等質性は、例えば、90%を超える、好ましくは95%を超えうる。
【0082】
典型的には、本発明に従う均質化方法は、流動性水性ペーストまたはスラリーの形態をした微生物単細胞材料の加工を含む。一般に、これは、ほぼ全細胞材料からなるが、破砕した細胞材料の一部分が存在することもある。
【0083】
細菌などの単細胞生物は、多数の極めて微小な細胞からなり、これら細胞の各々が細胞壁構造内にカプセル化されたタンパク質を収容している。細胞壁は比較的硬く、機械的支持をもたらす働きをする。本発明の均質化工程中に、微生物の細胞壁は破壊され、これによって、細胞構造内からタンパク質の一部分が放出される。このことは、例えば、単細胞材料の加圧および減圧を順に実施することにより達成することができる。均質化は、150 MPa(1500バール)、好ましくは140 MPa(1400バール)以下、例えば、120 MPa(1200バール)以下の圧力まで材料を加圧することにより実施することができる。しかし、該工程の効率を決定すると考えられるのは絶対的圧力低下であり、典型的な圧力低下は、40 MPa〜120 MPa、さらに好ましくは50 MPa〜110 MPa、例えば、60 MPa〜100 MPaの範囲にある。
【0084】
典型的には、前記工程は、工業用ホモジナイザー(例えば、APV Rannie(デンマーク)から入手可能なもの)を用いて、制御された温度条件、好ましくは50℃未満、特に好ましくは25〜50℃、例えば、25〜35℃で実施する。
【0085】
当分野で周知のその他の方法を用いて、本発明に従う均質化を実施することができる。例えば、細胞壁の破砕が可能な剪断力に単細胞材料を供することにより均質化を実施する。これは、ミキサーを用いて実施することができ、該ミキサーにおいては、互いに対して移動する面により材料に剪断力を加える区画に該材料を通過させる。一般に、剪断力は、移動面(例えば、回転面)と、固定面との間に形成される(すなわち、WO 99/08782に記載されているものなどのローター−ステーターと同様である)。
【0086】
機械的細胞破解の方法に用いるのに知られるその他の技術、例えば、高速ボールミル粉砕を用いて、均質化を実施することもできる。また、超音波方法を用いてもよい。
【0087】
均質化は通常の高圧ホモジナイザーで実施することができ、その際、はじめに、例えば、150 Mpa(1500バール)以下の圧力まで加圧した後、ホモジナイザー内部を減圧することにより、細胞を破砕する。好ましくは、バイオマスに加える合計圧力低下は、40 MPa〜120 MPa(400〜1200バール)の範囲、例えば、約80 MPa(800バール)である。圧力低下は段階的に行なう、すなわち、1以上の段階で実施してもよく、一般に、1または2段階であるが、好ましくは単一段階で行なう。均質化を2段階工程で実施する場合には、第2段階の圧力低下は、ホモジナイザーにおける合計圧力低下の1/5未満、好ましくは1/10未満、例えば、約1/20であるのが好ましい。均質化中の材料の温度は、50℃を超えないのが好ましい。
【0088】
本明細書に記載する均質化工程により、破砕した細胞材料を含む、好ましくは主に該材料からなる生成物が生産される。例えば、破砕細胞材料は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の量で存在する。典型的に、得られる生成物は、可溶性細胞成分および粒子状の細胞成分を含む比較的粘性のタンパク質スラリーである。これは、食品および/または飼料製品への添加剤として直接用いることもできるが、通常、さらに加工することにより、上記生成物から余分な水を除去する。さらに1回以上の乾燥ステップを実施するか否かは、均質化後に得られた生成物の含水量、および最終製品に所望する水分に応じて選択する。
【0089】
典型的には、当分野で周知の噴霧乾燥方法に従い、前記生成物をさらに加工する。流動層ユニットを備えているか、または備えてない通常の噴霧乾燥機のいずれを用いてもよく、例えば、APV Anhydro(デンマーク)から入手可能な3-SPD型スプレー乾燥機がある。好ましくは、噴霧乾燥機への空気入口温度は約300℃、また、出口温度は約90℃でよい。好ましくは得られる生成物は約2〜10重量%、例えば、6〜8重量%の水分を含む。また、こうして得られる生成物の粒径は一般に0.1〜0.5 mmである。
【0090】
特に好ましくは、均質化ステップの直後に噴霧乾燥を実施する。あるいは、均質化生成物をさらに加工する前に、例えば、貯蔵タンクまたはバッファータンクに生成物を保存または保持する必要があるか、あるいは保存または保持することが非常に望ましい場合がある。このような場合、生成物を保存する条件により、噴霧乾燥後の最終生成物のゲル化特性が低下しうることがわかっている。均質化材料のゲル化特性は、20℃以下の温度で、かつpH<7、好ましくはpH<6.5、特に好ましくはpH5.5〜6.5の範囲(例えば、5.8〜6.5)で、これを保存することにより維持することができる。これらの条件下で、ゲル化特性を実質的に失うことなく、生成物を24時間まで保存することができる。
【0091】
その特性をさらに改変されたか、または改善された単細胞タンパク質を用いることも本発明の範囲に含まれる。例えば、US-A-3843807(Standard Oil Company)には、タンパク質含有単細胞微生物のテキスチャー形成方法が記載されており、この方法では、全細胞および破砕細胞の混合物を含む水性酵母ペーストを押出する。続く加熱および乾燥ステップにより、噛み心地、砕けやすさ、および水への分散に対する耐性などの望ましい特性を有する生成物が得られ、この生成物をヒト食品への添加剤としての使用に特に適したものにする。改善された機能的特性を有する単細胞タンパク質は、水性酵母スラリーの熱処理により取得することもできる(Standard Oil CompanyのUS-A-4192897を参照)。熱処理生成物は、ヒト用食品の香味を増強し、滑らかな口当たりを高める。
【0092】
好ましい実施形態では、EP 1 265 982 B1(本明細書に参照として組み込まれる)に記載された方法に従い、単細胞タンパク質を均質化する。
【0093】
酵素を微生物供給源から取得する場合には、異なる微生物供給源から取得するか、または単離した微生物に存在しない量の酵素を添加した細胞タンパク質が好ましい。
【0094】
用語「酵素製剤」は、あらゆる液体および固体製剤を包含し、それに含まれる酵素は市販されているものでよい。好ましくは、このような製剤の酵素供給源は、発酵ブロスから得た比較的未精製の液体調製物である。本発明に従う液体酵素製剤の調製のためには、SCPを発酵ブロスに直接添加してもよいし、あるいは、例えば、濾過または限外濾過により発酵ブロスを精製した後、SCP剤を濾過ステップ後に添加してもよい。
【0095】
安定化した、好ましくは熱安定化した固体製剤を取得するために、SCPの存在下で酵素を噴霧乾燥または造粒することができる。
【0096】
固体製剤は、15重量%(w/w)以下、好ましくは10重量%(w/w)以下、特に8重量%(w/w)以下の水を含む製剤であるのが好ましい。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、固体製剤は顆粒である。
【0098】
本発明の説明全体を通して用いる用語「顆粒(単数または複数)」はいずれも、単一の顆粒および複数の顆粒を区別なく包含する。
【0099】
本発明の別の態様では、少なくとも1種の酵素と少なくとも1種の単細胞タンパク質とを含む顆粒が提供される。
【0100】
単細胞タンパク質は、通常、加工しようとする混合物の総重量に基づき、0.01〜30(w/w)%、例えば、1〜20(例えば、3〜10)(w/w)%の量で存在する。
【0101】
別の実施形態では、上記に加え、顆粒は少なくとも15%(w/w)の炭水化物担体を含む。
【0102】
少なくとも約15%(w/w)の固体担体は、食用炭水化物ポリマーからなる。しかし、少なくとも30%(w/w)、最適には少なくとも40%(w/w)の固体担体が炭水化物を含むのが好ましい。固体担体の主な成分は炭水化物(例えば、デンプン)であるのが有利であり、例えば、50%(w/w)以上、好ましくは少なくとも60%(w/w)、好適には少なくとも70%(w/w)、最適には少なくとも80%(w/w)を占める。
【0103】
これらの重量百分率は、最終乾燥顆粒における非酵素成分の総重量に基づく。
【0104】
食用炭水化物ポリマーは、飼料または食品の使用がそれぞれ意図される動物またはヒトの食用に適したものであり、かつ好ましくは消化しやすいものを選択しなければならない。このポリマーは、好ましくはグルコース(例えば、グルコース含有ポリマー)または(C6H10O5)n単位を含むのが好ましい。好ましくは、炭水化物ポリマーは、α-D-グルコピラノース単位、アミロース(線状(1→4)α-D-グルカンポリマー)および/またはアミロペクチン(α-D-(1→4)およびα-D-(1→6)結合を有する分枝D-グルカン)を含む。デンプンは好ましい炭水化物ポリマーである。デンプンの代わりに、またはデンプンに加えて用いることができる他の好適なグルコース含有ポリマーとして、α-グルカン、β-グルカン、ペクチン(プロトペクチンなど)およびグリコーゲンが挙げられる。これら炭水化物ポリマーの誘導体、例えば、それらのエーテルおよび/またはエステルも考慮される。炭水化物ポリマーは水不溶性であるのが好適である。
【0105】
好適な炭水化物ポリマーは、トウモロコシ、ジャガイモおよびコメデンプンである。しかし、その他の(例えば、野菜または穀類などの植物)供給源(例えば、タピオカ、カッサバ、コムギ、トウモロコシ、サゴ、ライムギ、オートムギ、オオムギ、ヤムイモ、モロコシ、またはクズウコン)から得られるデンプンも同様に使用可能である。同様に、天然型または修飾型(例えば、デキストリン)いずれの種類のデンプンを本発明に用いてもよい。好ましくは、炭水化物(例えば、デンプン)は、タンパク質をほとんどまたは全く含まず、例えば、5%(w/w)未満、例えば、2%(w/w)未満、好ましくは1%(w/w)未満しか含まない。デンプン(またはその他の炭水化物ポリマー)の種類とは関係なく、デンプンは、動物飼料に用いることができる形態、換言すれば、食用または消化性の形態でなければならない。
【0106】
本発明の別の態様は、固体および/または液体フィターゼ製剤生産のための添加剤としての単細胞の使用に関する。本発明の実施形態では、SCPを固体化合物として標準的顆粒混合物に添加するのが好ましい。このような製剤化により、45℃で15分間の流動層乾燥機での顆粒の乾燥ステップを含む高剪断造粒工程後に決定される、フィターゼ活性の高い回復率(最大20%)が得られる。加えて、本発明のSCPを含む顆粒は、飼料および/または食品と混合したとき、このような添加剤を含まない顆粒と比較して、飼料および/または食品加工(例えば、85℃でのペレット化工程)後に、高い酵素活性の回復率を示しうる。
【0107】
本発明の別の実施形態では、酵素含有顆粒を調製する方法が提供され、この方法は、少なくとも1種の酵素と少なくとも1種の単細胞タンパク質、随意に少なくとも1種の固体担体(少なくとも15%(w/w)の食用炭水化物ポリマーを含む)を加工することを含む。
【0108】
加工に水を添加してもよい。本発明の別の実施形態では、加工後、顆粒を乾燥させる。一実施形態では、加工に水を添加したか否かにかかわらず、顆粒を乾燥してもよいことは理解されよう。
【0109】
酵素および水は、酵素含有(好ましくは水性)液、例えば、溶液またはスラリーとして提供するのが好ましく、これを単細胞タンパク質と混合することができる。SCPは、バイオマス、またはバイオマスから得られる精製タンパク質のいずれかとして添加することができる。これらの成分を固体担体と混合して、担体に吸収させる。最終製剤に異なる酵素の混合物を所望する場合には、異なる酵素を含有する(好ましくは水性)液を混合してもよいことは理解されよう。
【0110】
混合中または混合後、酵素含有液と担体とを顆粒に加工した後、これらを乾燥させることができる。炭水化物担体を用いることにより、多量の酵素含有液(従って、酵素)を吸収させることが可能になる。混合物を用いて、可塑性ペーストまたは非弾性ドウを形成することができ、このペーストまたはドウは、例えば、押出しにより、容易に顆粒に加工することができる。
【0111】
本発明の方法では、固体担体と接触させる前に、同じ組成物中に酵素と水が存在してもよい。このような場合には、酵素含有水性液が得られる。この液体は、発酵工程からの、または該工程から得た溶液もしくはスラリーでよい。この発酵工程は、通常、酵素を生産する工程である。発酵工程では、微生物(酵素を生産する)と水溶液を含むブロスが得られる。この水溶液を微生物から分離する(例えば、濾過により)と、本発明で用いる酵素含有水性液となりうる。従って、好ましい実施形態では、酵素含有水性液は、濾過物、特に、酵素の生産をもたらす発酵工程から得られた濾過物である。本発明の一実施形態では、本発明の単細胞タンパク質を上記液体に添加することができる。
【0112】
担体に吸収させることができる酵素含有液(従って、酵素)の量は、吸収される可能性がある水の量によって通常制限される。好ましくは、固体担体に添加する液体の量は、(水性)液体に含まれる(実質的に)全部の水が、固体担体中に存在する炭水化物により吸収されるような量とする。
【0113】
温度が高くなると、デンプンおよびその他の炭水化物ポリマーは膨潤しながら、はるかに多量の水を吸収することができる。このために、炭水化物ポリマーは、望ましく水(すなわち、酵素含有水性液)を吸収することができる。例えば、トウモロコシデンプンは、60℃でその重量の3倍まで、また70℃で10倍まで吸収することができる。従って、本発明では、より多量の酵素含有液を吸収させるために、より高温を使用することが考慮され、これは、特に熱安定性酵素を扱う場合に極めて好ましい。そのため、このような酵素の場合、固体担体および液体(または酵素および水)と単細胞タンパク質との混合は、温度を上げて(例:周囲温度より高い)、例えば、30℃、好ましくは40℃より高く、また場合により50℃より高い温度で実施することができる。上記に代わり、またはこれに加えて、液体をこの温度で供給してもよい。
【0114】
しかし、一般的には、前記より低い(例:周囲)温度での非膨潤条件が好ましい。これによって、高い温度での(熱感受性)酵素の不安定性に起因する活性低下を最小限に抑えることができる。酵素と水の混合時の温度は10〜60℃、例えば、10〜50℃であるのが好適であり、好ましくは20〜40℃、好ましくは20〜25℃である。
【0115】
酵素、場合によっては水(例えば、酵素含有液)、SCPおよび固体担体の混合物を顆粒にする(換言すれば、造粒する)ために本発明で用いる機械加工には、食品、飼料および酵素製剤化工程でよく使用されている公知の方法を用いることができる。このような方法として、伸展、押出、球体化、ペレット化、高剪断力造粒、ドラム造粒、流動層凝集もしくはこれらの組合せが挙げられる。これらの方法は、通常、機械的エネルギー、例えば、スクリューの駆動、混合機の回転、ペレット化装置の回転機構の圧力、流動層凝集装置の回転下部プレートによる粒子の運動、または気流による粒子の運動、あるいはこれらの組合せの投入を特徴とする。これらの方法により、固体担体(例えば、粉末の形態)を酵素と、場合によっては水、例えば、酵素含有液(水溶液またはスラリー)、SCPと混合し、その後、造粒することができる。
【0116】
あるいは、固体担体を、酵素(例:粉末の形態)および単細胞タンパク質と混合してもよく、これに、場合によっては水、例えば、液体(またはスラリー)(これは造粒液の役割を果たす)を添加することができる。
【0117】
本発明のさらに別の実施形態では、事前にSCPと混合しておいた担体に、例えば、流動層凝集装置において、酵素含有液を噴霧またはコーティングすることにより、顆粒(例えば、凝集体)を形成させる。その際、得られる顆粒には、流動層凝集装置で生産されるような凝集体が含まれる可能性もある。
【0118】
好ましくは、酵素含有液、固体担体および安定化剤の混合は、混合物の混練をさらに含む。これにより混合物の可塑性を高め、造粒(例えば、押出)を容易にすることができる。
【0119】
好ましい実施形態では、顆粒を押出、好ましくは低圧での押出により形成する。この方法は、押出される混合物の温度が上昇しないか、わずかにしか上昇しないという利点をもたらす。低圧押出として、例えば、Fuji Paudalバスケット型またはドーム型押出機での押出が挙げられる。押出は、自然に顆粒を生産する(顆粒は押型を通過後、破砕することがある)ものでも、カッターを用いるものでもよい。
【0120】
乾燥前の顆粒の水分は、15〜50%、例えば、20〜40%、例えば、25〜35%、好ましくは33〜37%であるのが好適である。また、乾燥前の顆粒の酵素含有率は、1〜25%、例えば、3〜15%、例えば、5〜12%(例えば、少なくとも50,000 ppm)であるのが好ましい(上記の値は、顆粒の総重量に基づく重量%として計算する)。
【0121】
得られた顆粒を球体化装置、例えば、MARUMERISERTM機械での丸状化(例:球体化)および/または圧縮に供することができる。得られた顆粒を乾燥させる場合には、乾燥の前に球体化を実施するのが好ましい。最終顆粒における微粉形成を低減させ、および/または顆粒のコーティングを容易にすると考えられるため、乾燥前に顆粒を球体化することができる。
【0122】
次に、例えば、流動層乾燥機で顆粒を乾燥させるか、または流動層凝集の場合には、顆粒を直ちに乾燥(凝集装置で)させることにより、(固体)顆粒を取得することができる。当業者は、食品、飼料もしくは酵素工業で顆粒を乾燥するのに周知の他の方法を用いることができる。顆粒は流動性であるのが好ましい。乾燥は、25〜60℃、例えば、30〜50℃の温度で実施するのが好ましい。ここで、乾燥は、10分から数時間にわたり実施することができる。言うまでもなく、必要な乾燥時間は、乾燥しようとする顆粒の量に応じて変動する。
【0123】
顆粒の乾燥後、得られた乾燥顆粒は、好ましくは、3〜10重量%の水分、例えば、5〜9重量%の水分を有する。
【0124】
本発明の好ましい実施形態では、
a)少なくとも1種の酵素を含む水性液を固体担体および単細胞タンパク質と混合するステップ;
b)a)で得られた混合物を機械的に加工することにより、酵素含有顆粒を取得するステップ;および
c)b)で得られた酵素含有顆粒を乾燥させるステップ
を含む方法が提供される。
【0125】
本発明の別の実施形態では、顆粒をコーティングする。コーティングを顆粒に施すことにより、別の(例えば、好ましい)特徴または特性を賦与することができ、このような特徴または特性として、低微粉含有率、色、周囲環境からの酵素の保護、一顆粒における様々な酵素活性、またはこれらの組合せなどが挙げられる。事前に乾燥させた後、または乾燥させずに、顆粒をコーティングすることができる。顆粒は、脂肪、蝋、ポリマー、塩、軟膏(unguent)および/または軟膏(ointment)、あるいは(2つめの)酵素を含むコーティング、またはこれらの組合せでコーティングすることができる。所望であれば、数層の(異なる)コーティングを施してもよいことは明らかであろう。顆粒にコーティングを施すためには、多数の周知の方法が利用可能であり、このような方法として、流動層、高剪断力造粒機、ミキサー造粒機、またはNautaミキサーの使用が挙げられる。
【0126】
一実施形態では、好ましくは乾燥後、例えば、約10重量%以下の残留水分まで乾燥した後、飼料および/または食品に適した有機ポリマーによる顆粒のコーティングを、
(a)流動層中で有機ポリマーの溶融液、溶液もしくは分散液を顆粒に噴霧するか、または流動層中で有機ポリマーによる粉末コーティングを実施する;あるいは、
(b)有機ポリマーに溶融させるか、あるいは有機ポリマーの溶融液、溶液もしくは分散液を粗顆粒に噴霧するか、または有機ポリマーによる粉末コーティングを実施した後、
必要であれば、それぞれ得られたポリマーコーティング顆粒を乾燥、冷却し、かつ/または粗画分から遊離することにより、実施する。
【0127】
本発明の方法の好ましい実施形態によれば、顆粒を流動層に装入し、流動化させた後、噴霧により有機ポリマーの水性、非水性、好ましくは水性溶液または分散液でコーティングする。この目的のために、可能な限り高濃度で、しかも依然として噴霧が可能な液体を用いる。その際、例えば、以下のものからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーの10〜50重量%濃度の水性もしくは非水性溶液または分散液を用いる:
a)約400〜15,000、例えば、約400〜10,000の数平均分子量を有するポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコール;
b)約4,000〜20,000、例えば、約7,700〜14,600の数平均分子量を有するポリアルキレンオキシドポリマーまたはコポリマー;特に、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー;
c)約7,000〜1,000,000、例えば、約44,000〜54,000の数平均分子量を有するポリビニルピロリドン;
d)約30,000〜100,000、例えば、約45,000〜70,000の数平均分子量を有するビニルピロリドン/酢酸ビニル;
e)約10,000〜200,000、例えば、約20,000〜100,000の数平均分子量を有するポリビニルアルコール;ならびに
f)約6,000〜80,000、例えば、約12,000〜65,000の数平均分子量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【0128】
別の好ましい方法の変法によれば、濃度が10〜40重量%、好ましくは約20〜35重量%の少なくとも1種のポリマーの噴霧可能な水性または非水性溶液もしくは分散液を用いるが、該少なくとも1種のポリマーは、
g)約100,000〜1,000,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリル酸アルキルポリマーおよびコポリマー;特にアクリル酸エチル/メタクリル酸メチルコポリマーおよびアクリル酸メチル/アクリル酸エチルコポリマー;ならびに
h)約250,000〜700,000の数平均分子量を有する酢酸ポリビニル(ポリビニルピロリドンで安定化したものでもよい)
からなる群より選択する。
【0129】
一般に、以下に挙げる理由で、水溶液または水性分散液が好ましい:溶剤の調製または回収に特別な処置を必要としない;爆発防止に特別な処置を必要としない;コーティング材料の中には水溶液または水性分散液として提供する方が好ましいものもある。
【0130】
しかし、特殊なケースでは、非水性溶液または非水性分散液を用いた方が有利なこともある。このようなコーティング材料は極めて容易に溶解するか、または有利に高い比率のコーティング材料を分散させることができる。この方法では、固形分の高い噴霧液を噴霧することができるため、加工時間が短縮される。また、非水性溶剤の蒸発のエンタルピーが低いことも、加工時間の短縮につながる。
【0131】
本発明に従い用いることができる分散液は、通常の分散剤を用いて、または用いずに、水性または非水性の、好ましくは水性の、液相に前記ポリマーを分散させることにより取得する。ポリマー溶液または分散液は、流動層装置またはミキサーに顆粒を装入した後、装入材料を加熱しながら、噴霧材料を噴霧することで、噴霧するのが好ましい。加熱した乾燥ガス、多くの場合空気と接触させることにより流動層装置にエネルギーを供給し、またミキサーには、加熱した壁、適切であれば、加熱した混合手段との接触によりエネルギーを供給する。結果として、高い乾燥固形分を含む噴霧材料を噴霧できる場合には、溶液または分散液を予熱するのが好ましい。有機液相を用いる場合には、溶剤を回収するのが好ましい。コーティング中の製品温度は、約35〜50℃の範囲内でなければならない。コーティングは、原則として下部噴霧方法(ノズルがガス分配プレート内にあり、上方に噴霧する)、または上部噴霧方法(コーティングが上部から流動層に向かって噴霧される)により、流動層装置内で実施することができる。
【0132】
好適なポリアルキレングリコールa)の例として、ポリプロピレングリコール、特に、様々なモル量のポリエチレングリコール、例えば、Lutrol E 4000およびLutrol E 6000の商品名でBASF AGから入手可能なPEG 4000またはPEG 6000が挙げられる。
【0133】
前記ポリマーb)の例として、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド/プロピレンオキシド混合ポリマー、ならびに、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドブロックからなるブロックコポリマー、例えば、Lutrol F 68およびLutrol F127の商品名でBASF AGから入手可能なポリマーが挙げられる。
【0134】
ポリマーa)およびb)のうち、好ましくは、溶液の総重量に基づき、最大約50重量%、例えば、約30〜50重量%の高濃度溶液を用いるのが有利である。
【0135】
前記ポリマーc)の例としては、ポリビニルピロリドン、例えば、KollidonまたはLuviskolの商品名でBASF AGにより市販されているものが挙げられる。これらのポリマーのうち、溶液の総重量に基づき、約30〜40重量%の固形分を含む高濃度溶液を用いるのが有利である。
【0136】
前記ポリマーd)の例としては、例えば、Kollidon VA64の商品名でBASF AGにより市販されているビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマーが挙げられる。溶液の総重量に基づき、約30〜40重量%の高濃度溶液を用いるのが特に有利である。
【0137】
前記ポリマーe)の例としては、例えば、Mowiolの商品名でHoechstにより市販されているものなどの製品が挙げられる。約8〜20重量%の固形分を含むそのようなポリマー溶液を用いるのが有利である。
【0138】
好適なポリマーf)の例としては、例えば、Pharmacoatの商品名でShin Etsuにより市販されているものなどのヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。
【0139】
前記ポリマーg)の例としては、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルポリマーおよびコポリマーがある。好適なポリマーの具体例として、次のものが挙げられる:例えば、BASF AGによりKollicoat EMM 30Dの商品名で、またはRohmによりEutragit NE 30の商品名でそれぞれ市販されているアクリル酸エチル/メタクリル酸メチルコポリマー;例えば、BASF AGによりKollicoat MAE 30DPの商品名で、またはRohmによりEutragit 30/55の商品名でそれぞれ市販されているメタクリレート/アクリル酸エチルコポリマー。このタイプのコポリマーは、例えば、濃度が10〜40重量%の分散液のように、本発明に従い加工することができる。
【0140】
前記ポリマーh)の例としては、ポリビニルピロリドンで安定化したポリ酢酸ビニル分散液、例えば、BASF AGによりKollicoat SR 30Dの商品名で市販されているもの(分散液の固形分:約20〜30重量%)が挙げられる。
【0141】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、顆粒を流動層に装入し、粉末コーティングする。粉末コーティングは、数平均分子量が約6,000〜80,000のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群より選択される固体ポリマーの粉末を用いて、可塑剤を添加した混合物中で実施するのが好ましい。粉末コーティングに適した材料には、粉末形態で存在することができ、しかも、溶融液または高濃度溶液のいずれの形態でも塗布できない(例えば、HPMCの場合)その他のあらゆるコーティング材料も含まれる。
【0142】
粉末コーティングは、コーティング材料を流動層に装入した顆粒に連続的に添加することで実施するのが好ましい。コーティング材料の微粒子(粒径約10〜100μm)は、粗顆粒の比較的粗い表面に付着する。可塑剤溶液として噴霧することにより、コーティング材料粒子は互いに粘着する。好適な可塑剤の例として、ポリエチレングリコール溶液、クエン酸トリエチル、ソルビトール溶液、パラフィン油などが挙げられる。溶剤を除去するために、わずかに加熱しながらコーティングを実施する。この場合、製品の温度は約60℃未満、例えば、約40〜50℃である。原則として、粉末コーティングはミキサーでも実施することができる。この場合、粉末混合物を添加し、ノズルから可塑剤も注入する。ミキサーの壁を介して、また、適切であれば混合手段を介して、エネルギー供給することにより、乾燥を実施する。この場合も、流動層におけるコーティングおよび乾燥と同様に、低い製品温度を維持しなければならない。
【0143】
本発明の方法の別の好ましい実施形態によれば、顆粒を流動層またはミキサーに装入し、以下のものからなる群より選択される少なくとも1種のポリマーの溶融液を用いて、顆粒をコーティングする:
a)数平均分子量が約1,000〜15,000のポリアルキレングリコール、特にポリエチレングリコール;および
b)数平均分子量が約4,000〜20,000のポリアルキレンオキシドポリマーまたはコポリマー;特に、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックコポリマー。
【0144】
溶融液コーティングは流動層装置で実施し、その際、コーティングしようとする顆粒を流動層装置に装入するのが好ましい。コーティング材料は、外部タンク内で溶融させ、例えば、加熱可能な管路を介して、噴霧ノズルまでポンプ輸送する。ノズルガスを加熱するのが好都合である。噴霧速度および溶融液入口温度は、コーティング材料が顆粒の表面上を容易に流れ、しかも、これを均一に被覆するように設定しなければならない。溶融液を噴霧する前に顆粒を予熱することも可能である。融点が高いコーティング材料の場合には、酵素活性の低下を最小限に抑えるために、製品温度をあまり高く設定すべきでないことに注意しなければならない。製品温度は、約35〜50℃の範囲内でなければならない。溶融液コーティングはまた、原則として下部噴霧方法または上部噴霧方法のいずれかで実施することができる。2つの異なる方法を用いて、ミキサー中で溶融液コーティングを実施することもできる。コーティングしようとする顆粒を好適なミキサーに装入し、コーティング材料の溶融液をミキサー中に噴霧してもよいし、あるいは、固体形態のコーティング材料を製品と一緒に混合することも可能である。容器の壁または混合手段を介してエネルギーを供給することにより、コーティング材料を溶融させ、これによって、粗顆粒をコーティングする。必要であれば、剥離剤を適宜添加することもできる。好適な剥離剤として、例えば、サリチル酸(salicic acid)、タルク、ステアリン酸塩およびリン酸三カルシウムが挙げられる。
【0145】
コーティングに用いられるポリマー溶液、ポリマー分散液またはポリマー溶融液に、例えば、微晶質セルロース、タルクまたはカオリンなどをさらに添加してもよい。
【0146】
本発明の別の実施形態では、WO 03/059087の第2ページ第19行から第4ページ第15行に記載されているものなどのポリオレフィンで顆粒をコーティングすることができる。
【0147】
本発明の別の実施形態では、WO 03/059087の第2ページ第18行から第4ページ第8行に記載されているものなどの、好適な溶剤中に分散させた疎水性物質の粒子を含む分散液で顆粒をコーティングすることができる。このコーティングの好ましい実施形態では、ポリオレフィン、特に好ましいポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを用いる。
【0148】
別の実施形態では、顆粒のペレット化安定性および/または保存安定性をさらに向上させるため、例えば、加工助剤として顆粒に別の成分を含有させてもよい。多数の好ましい添加剤を以下に記載する。
【0149】
顆粒に塩を含有させてもよい(例えば、固体担体または水と一緒に)。好ましくは(EP-A-0,758,018で提案されているように)、無機塩を添加することができ、これにより、乾燥酵素調製物の加工安定性および保存安定性が向上する可能性がある。好ましい無機塩は水溶性である。その例として、亜鉛(特に)、マグネシウムおよびカルシウムのような二価カチオンが挙げられる。スルフェートが最も好ましいアニオンであるが、水溶性をもたらす他のアニオンを用いることもできる。塩は固体の形態で添加することができる(例えば、混合物に)。しかし、固体担体と混合する前に、水、または酵素含有液に溶解させてもよい。塩は、少なくとも15%(酵素に基づくw/w)、例えば、少なくとも30%の量で添加するのが好適である。しかし、少なくとも60%または70%(酵素に基づくw/w)という高い比率も可能である。前記の量を乾燥前または後のいずれの顆粒に添加してもよい。従って、顆粒は、12%(w/w)未満、例えば、2.5〜7.5%、例えば、4〜6%の塩を含有しうる。塩を水に添加する場合には、5〜30%(w/w)、例えば、15〜25%の量でよい。
【0150】
ペレット化安定性のさらなる改善は、疎水性、ゲル形成性または低速溶解性(例えば、水に)化合物の含有によりもたらすことができる。これらは、1〜10重量%、例えば、2〜8重量%、および好ましくは4〜6重量%(水および固体担体成分の重量に基づき)で添加することができる。好適な物質としては、誘導体化セルロース、例えば、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、CMC(カルボキシメチルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース);ポリビニルアルコール(PVA);および/または食用油が挙げられる。ダイズ油またはカノーラ油などの食用油を加工助剤として添加(例えば、顆粒化しようとする混合物に)することができる。
【0151】
さらに、公知の安定化剤、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、好ましくは、分子量が6,000のポリエチレングリコールまたはこれらの混合物を固体製剤に添加することも考えられる。固体製剤に添加することができる別の安定化剤の例は、C5糖、好ましくはキシリトールまたはリビトール、分子量が600〜4,000 Da、好ましくは1,000〜3,350 Daのポリエチレングリコール、マロン酸、グルタル酸およびコハク酸の二ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロース、およびアルギネート、好ましくはアルギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0152】
好ましくは、顆粒は比較的狭い粒度分布を有する(例えば、単分散である)。これによって、動物飼料および/または食品における顆粒中の酵素の均質な分布を容易にすることができる。本発明の方法では、狭い粒度分布で顆粒が生産される傾向にある。しかし、必要であれば、顆粒の粒度分布をさらに狭める、スクリーニングなどの別のステップを本方法に組み込んでもよい。顆粒の平均粒度分布は、100μm〜2,000μm、好ましくは200μmから1,800μm、好ましくは300μm〜1,600μmの範囲にあるのが好適である。顆粒は、不規則な(しかし好ましくは規則的な)形状であってもよく、例えば、ほぼ球形でもよい。好ましい実施形態では、顆粒は、500〜2,000μm、好ましくは500〜1,800μm、好ましくは600〜1,000μmの平均粒度分布を有する。平均粒度分布は、Malvern Instruments GmbHの機械であるMastersizer S、シリーズ番号32734-08を用いることにより決定する。平均粒度分布は、D(v, 0.1)、D(v, 0.5)およびD(v, 0.9)の値、ならびに該分布の平均粒度D(4, 3)を特徴とする。
【0153】
好ましい実施形態では、顆粒は、少なくとも1種のホスファターゼ、好ましくは1種のフィターゼを含む。このような実施形態では、最終的な顆粒が、3,000〜25,000、例えば、5,000〜15,000、例えば、5,000〜10,000(例:6,000〜8,000)FTU/gのフィターゼ活性を有するのが好ましい。
【0154】
好ましい実施形態では、最終的な顆粒は、6,000 FTU/g以上、好ましくは8,000 FTU/g以上、特に10,000 FTU/g以上の活性を有する。
【0155】
本発明の別の形態では、本発明の酵素製剤は液体である。
【0156】
この液体製剤は、食品、飼料および酵素製剤化方法で一般に用いられる技術を用いて調製することができる。一実施形態では、安定化剤を液体に直接添加することができ、この液体に酵素を溶解または分散させる。本発明の別の実施形態では、まず安定化剤を追加の水に溶解させ、場合によっては得られた溶液のpHを調整し、こうして得た溶液を酵素もしくは酵素濃縮物または液体酵素調製物と一緒に混合する。場合によりこのようにして得た混合物のpH調整を行なう。有機または無機塩および/または酸でpHを調節することができる。
【0157】
好ましい実施形態では、液体製剤はフィターゼを含む。この実施形態では、フィターゼは、溶液1g当たり10,000 FTUより高い、特に14,000 FTUより高い活性で液体製剤中に存在するのが好ましい。
【0158】
さらに、公知の安定化剤を液体製剤に添加することも考えられる。このような安定化剤は、例えば、EP 0,758,018に記載されているものなどの塩である。これらの塩を液体製剤に含有させてもよい。好ましくは(EP-A-0,758,018に記載されているように)、無機塩を添加することができる。好ましい無機塩は、水溶性である。その例として、亜鉛(特に)、マグネシウムおよびカルシウムのような二価カチオンが挙げられる。スルフェートが最も好ましいアニオンであるが、水溶性をもたらす他のアニオンを用いることもできる。塩は固体の形態で添加してもよい(例えば、混合物に)。しかし、水、または酵素含有液に塩を溶解させてもよい。少なくとも15%(酵素に基づくw/w)、例えば、少なくとも30%の量で添加するのが好適である。しかし、少なくとも60%または70%(酵素に基づくw/w)という高い比率も可能である。
【0159】
さらに、周知の安定化剤、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、好ましくは、分子量が6,000のポリエチレングリコールまたはこれらの混合物を液体製剤に添加することも考えられる。液体製剤に添加することができる別の安定化剤の例は、C5糖、好ましくはキシリトールまたはリビトール、分子量が600〜4,000 Da、好ましくは1,000〜3,350 Daのポリエチレングリコール、マロン酸、グルタル酸およびコハク酸の二ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロース、およびアルギン酸塩、好ましくはアルギン酸ナトリウムが挙げられる。
【0160】
本発明の別の態様は、単胃動物のための飼料組成物を調製する方法に関し、該方法では、飼料に本発明の熱安定化固体または液体酵素製剤を添加する。
【0161】
酵素を添加した飼料は、押出、伸展およびペレット化のような数種の飼料加工方法に供することができるが、その際、一時的に高温が発生する可能性があるため、熱安定化が有利である。
【0162】
本発明の安定化酵素製剤は、例えば、飼料ペレットに塗布してもよい。熱安定化液体酵素製剤を水道水で希釈することにより、該酵素の所望の活性を有する溶液を取得することができる。前記酵素またはその1つがフィターゼである場合には、溶液1g当たり100〜500、好ましくは300〜500 FTU以上の活性が得られるように、溶液を希釈する。飼料ペレットを機械的ミキサーに移し、希釈酵素製剤を、攪拌中の飼料ペレットに噴霧することにより、追加の酵素活性を有する均質な製品を生産することができる。例えば、フィターゼを含む飼料ペレットの場合、好ましくは、飼料ペレット1kg当たり約500 FTUの活性が得られる。
【0163】
あるいは、固体または液体酵素製剤をすり潰した飼料と直接混合した後、この混合物をペレット化、伸展または押出のような加工に供することも可能である。
【0164】
別の態様では、本発明は、単胃動物にその栄養必要量のリンを提供する方法に関し、この方法では、動物に本発明の飼料を給餌するが、その際、飼料に追加のホスフェートを一切添加しない。
【0165】
さらに別の態様では、本発明は、ヒトの栄養のための食品組成物であって、該食品組成物が、請求項1〜12のいずれか1項に記載の安定化固体または液体酵素製剤を含むことを特徴とする、上記食品組成物に関する。
【実施例】
【0166】
実施例1
乾燥物含有率が約25〜35%(w/w)で、pH値3.7〜3.9、力価26,000〜36,000 FTU/gの水性フィターゼ濃縮物に、4〜10℃で1%(w/w)(濃縮物の量に対し)硫酸亜鉛6水和物を溶解させた。
【0167】
細断ナイフを備えたミキサーにトウモロコシデンプン(900g)を添加した後、均質化した。硫酸亜鉛を含有するフィターゼ濃縮物(380g)と、140gの10%(w/w)ポリビニルアルコール溶液(加水分解度:87〜89%)を10〜30℃で連続的に均質化しながら、ゆっくりと上記トウモロコシデンプンに添加した。10〜50℃で混合物をさらに5分間均質化した。得られたドウをドーム押出機に移し、30〜50℃で押出した(マトリックスの孔径は0.7 mmであり、得られた線材の長さは5cmであった)。
【0168】
得られた押出物を球体化機械(P50型、Glatt製)により350 rpm(回転円板の回転速度)で5分間、球体化した。次に、材料を40℃未満(製品温度)の流動層乾燥機で乾燥させ、残留水分を約6%(w/w)にした。
【0169】
得られた未加工顆粒の力価は約13,200 FTU/gであった。顆粒の最大粒径は1,300μmであり、平均粒径は約650μm(篩分け分析)であった。
【0170】
続くコーティングのために、未加工顆粒を実験用流動層(Aeromat MP-1型、Niro-Aeromatic)に移した。110 mmの入口直径と、孔あき底部(12%の自由面)を有する円錐形プラスチック容器を使用した。コーティング材料は市販のポリエチレン/(PE)分散液であった。
【0171】
35 m3/時の空気を供給しながら、周囲温度で700gの未加工顆粒を旋回させた。供給空気(35℃および45 m3/時)とホースポンプ(1.5バール)を含む二成分ジェット(1.2 mm)を用いて、PE−分散液を酵素顆粒に噴霧した。コーティング工程中の製品温度は30〜50℃であった。顆粒への分散液のコーティングは上部噴霧方法を用いて実施した。これは、水が蒸発し、PE粒子が、顆粒粒子を閉じ込めて、表面にPE皮膜を形成することを意味する。噴霧工程中、供給空気の量を65 m3/時まで徐々に増加させて、十分な旋回を確実にした。噴霧工程は15分後に終了させた。次に、製品を30〜45℃(製品温度)で30分間乾燥させた。コーティング膜(PE皮膜)の摩擦を低減させるために、供給空気の量を55 m3/時まで減少させた。
【0172】
以下に示す組成の製品が得られた:
トウモロコシデンプン 78.6%(w/w)
フィターゼ(乾燥物) 12.0%(w/w)
ポリビニルアルコール: 1.4%(w/w)
硫酸亜鉛(ZnSO4): 0.5%(w/w)
ポリエチレン: 4.0%(w/w)
残留水分: 3.5%(w/w)
【0173】
力価、すなわち、フィターゼ活性:約12,530 FTU/g
外観(顕微鏡):表面が滑らかな粒子
【0174】
実施例2
実施例1と同様の方法で調製を実施した。主な違いは、10%PVA溶液の代わりに10%(単細胞)タンパク質溶液を添加したことである。
【0175】
以下に示す組成の製品が得られた:
トウモロコシデンプン 78.6%(w/w)
フィターゼ(乾燥物) 12.0%(w/w)
タンパク質: 1.4%(w/w)
硫酸亜鉛(ZnSO4): 0.5%(w/w)
ポリエチレン: 4.0%(w/w)
残留水分: 3.5%(w/w)
【0176】
力価、すなわち、フィターゼ活性:約12,420 FTU/g
外観(顕微鏡):表面が滑らかな粒子
【0177】
実施例3
実施例1と同様の方法で調製を実施した。主な違いは、10%PVA溶液の代わりに30%(単細胞)タンパク質溶液を添加したことである。
【0178】
以下に示す組成の製品が得られた:
トウモロコシデンプン 76.2%(w/w)
フィターゼ(乾燥物) 11.62%(w/w)
タンパク質: 4.2%(w/w)
硫酸亜鉛(ZnSO4): 0.48%(w/w)
ポリエチレン: 4.0%(w/w)
残留水分: 3.5%(w/w)
【0179】
力価、すなわち、フィターゼ活性:約11,820 FTU/g
外観(顕微鏡):表面が滑らかな粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酵素と少なくとも1種の単細胞タンパク質とを含む安定化固体または液体酵素製剤。
【請求項2】
前記単細胞タンパク質が発酵により得られる、請求項1に記載の酵素製剤。
【請求項3】
少なくとも部分的に精製された形態で、またはバイオマスとして、単細胞タンパク質産生微生物の発酵により得られる前記単細胞タンパク質を含む、請求項1または2に記載の酵素製剤。
【請求項4】
前記単細胞タンパク質が、藻類、酵母、真菌および/または細菌からなる群より選択される少なくとも1種の微生物から得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項5】
均質化バイオマスとして前記単細胞タンパク質を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項6】
前記単細胞タンパク質が、40〜90%(w/w)のタンパク質を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項7】
前記酵素が、フィターゼおよび/またはグリコシダーゼからなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項8】
前記酵素が、フィターゼ、キシラナーゼ、エンドグルカナーゼおよびこれらの混合物から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項9】
前記酵素が、フィターゼ、好ましくは植物フィターゼ、真菌フィターゼ、細菌フィターゼ、酵母により産生されるフィターゼまたはコンセンサスフィターゼである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項10】
液体であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項11】
固体であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項12】
前記単細胞タンパク質材料が、最終製剤中に0.01〜30%(w/w)、好ましくは0.05〜20%(w/w)の濃度で存在することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の酵素製剤。
【請求項13】
飼料を請求項1〜12のいずれか1項に記載の安定化固体または液体酵素製剤で処理することを特徴とする、単胃動物用飼料組成物を調製する方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の安定化固体または液体酵素製剤を含むことを特徴とする、単胃動物用飼料組成物。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の安定化固体または液体酵素製剤を含むことを特徴とする、ヒト栄養補給用食品組成物。

【公表番号】特表2008−521387(P2008−521387A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541857(P2007−541857)
【出願日】平成17年11月26日(2005.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012663
【国際公開番号】WO2006/056469
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】