説明

酵素送達システムならびに調製方法および使用方法

本発明は、コーティングされた消化酵素調製物ならびに前記調製物を含む酵素送達システムおよび薬学的組成物に関する。さらに、本発明は、ADD、ADHD、自閉症、嚢胞性線維症、ならびに他の行動障害および神経学的障害を有する人を治療するために前記のシステム、薬学的組成物、および調製物を調製および使用する方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第120条により、2009年4月13日に出願された米国特許出願第12/386,051号に係る優先権を主張する。米国特許出願第12/386,051号はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、コーティングされた消化酵素/膵臓酵素調製物、ならびにこの調製物を含む薬学的組成物および酵素送達システム、ならびにこれらを調製する方法、酵素による治療に感受性の神経学的疾患もしくは神経学的状態または行動疾患もしくは行動状態を有する個体の治療において使用する方法および制御送達する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
消化酵素は、唾液腺、胃腺、膵臓の腺、および小腸の腺によって産生される。例えば、膵臓によって産生され、胃および小腸に分泌される消化酵素は消化を助ける。膵臓よって産生される消化酵素は、pHが約5〜6の十二指腸または小腸上部に分泌され、炭水化物、脂質、タンパク質、および核酸を含む食物成分の消化を助ける。しかしながら、消化酵素が経口投与された時には、pHが約pH1〜2の胃の中で強酸性条件に曝露され、ならびに酵素を変性および分解する胃プロテアーゼに曝露される。
【0004】
膵臓に影響を及ぼす状態によって引き起こされる酵素欠損症、例えば、膵炎および膵臓酵素欠損症を治療するために、消化酵素が哺乳動物に投与されてきた。ヒトに投与される膵臓酵素は通常、ブタ由来である。酵素調製物の製造業者は、リパーゼ投与を必要とする嚢胞性線維症個体におけるリパーゼ組成物用に腸溶コーティングも使用している。リパーゼ送達用の調製物は、例えば、フタル酸ヒプロメロース、ジメチコーン1000、およびフタル酸ジブチルを含有する腸溶コーティングを使用している。
【0005】
感受性のある生理活性物質をコーティングするためのある特定の方法が、Narayanaswamy et al.への米国特許第6,261,613号(特許文献1)に記載されている。米国特許第6,261,613号は、ベータプライム型の脂肪(すなわち、ブロック対称性(blocky symmetry)を有するトリグリセリド結晶)のシェルの中に、コーティングされた酵母を含有することができる粒子を開示している。このコーティング材料は、硬化植物油に見られる乳化剤などの乳化剤をさらに含有することができる。しかしながら、コーティングのみでは、約40℃〜約55℃と限られた温度範囲でしか酵母を放出することができない。Pacifico et al.への米国特許第6,251,478B1号(特許文献2)は、ある特定の生理活性化合物が脂質材料の中にカプセル化された、ある特定の感受性物質を開示している。
【0006】
背景のセクションにおける説明から、このような開示が本発明に対する先行技術を構成するとみなしてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,261,613号
【特許文献2】米国特許第6,251,478B1号
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、コーティングされた消化酵素調製物、ならびにコーティングされた消化酵素調製物を含む薬学的組成物および酵素送達システムに関する。これらは、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、他の神経学的疾患または神経学的状態および行動疾患または行動状態を有する個体の治療において有用である。本発明のコーティングおよびカプセル化された消化酵素調製物を用いると、安定性が高く、投与性が向上した酵素を、消化酵素による治療に感受性の神経学的疾患および神経学的状態ならびに行動疾患および行動状態を有する患者に制御送達することが可能になる。
【0009】
ある局面において、本発明は、消化酵素および/または膵臓酵素を含むコアならびに乳化可能な脂質を含むコーティングを含む、コーティングおよび/またはカプセル化された膵臓酵素/消化酵素調製物に関する。コアは、患者の状態を治療するのに有効な量の膵臓酵素/消化酵素を含有する。患者の状態は、例えば、神経学的障害、例えば、自閉症、ADD、ADHD、CF、およびパーキンソン病、または有効量の膵臓酵素/消化酵素を投与することができる他の疾患でもよい。特性の中でも特に、コーティングは、溶媒、熱、光、水分、および他の環境要因などの不安定化要因から膵臓酵素/消化酵素を保護する。コーティングはまた、複合物が溶媒に曝露された時に膵臓酵素/消化酵素の徐放も提供する。さらに、本発明の1つの局面において、本発明のコーティング消化酵素調製物は注入性が改善し、消化酵素粒子の味および臭いが改善している。
【0010】
本発明はまた、パーキンソン病、ADD、ADHD、自閉症、および嚢胞性線維症、ならびに他の行動状態および行動疾患または神経学的状態および神経学的疾患を有する個体において酵素を投与するための、酵素および脂質の特定のブレンドに関する。コーティング消化酵素調製物は、ヒト胃腸管の選択された通過時間でまたは選択された場所において放出させるのに使用することができる。1つの局面において、本発明は徐放性酵素調製物に関する。
【0011】
別の局面において、本発明は、(a)消化酵素粒子を含有するコアであって、酵素が粒子の約5%〜90重量%の量で存在する、コア;および(b)乳化可能な脂質を含み、コアを連続的にコーティングするコーティングであって、乳化可能な脂質が溶媒に曝露すると乳化する、コーティングを含む、コーティング消化酵素調製物に関する。
【0012】
別の局面において、本発明は、(a) 膵臓酵素または消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の神経学的状態もしくは行動障害に罹患している被験体を治療するのに有効な量の膵臓酵素または消化酵素を含むコア;および(b)乳化可能な脂質を含むコーティングを含む治療的有効量のカプセル化酵素調製物を含む、薬学的組成物に関する。
【0013】
さらに別の局面において、本発明は、(a)粒子の約5〜95重量%の量で存在する膵臓酵素または消化酵素を含むコア;および(b)乳化可能な脂質を含み、酵素を徐放する概して均一なコーティングを含む粒子を有するカプセル化酵素調製物を含む、酵素送達システムに関する。1つの局面において、酵素送達システムのカプセル化酵素調製物粒子はエアロゾル化されない。
【0014】
ある特定の局面において、本発明による酵素を調製する方法によって、例えば、放出速度が制御されていること、エアロゾル化が少ないこと、投与が安全なこと、スプリンクル(sprinkle)/サシェ送達法による投与が可能なこと、流動特性が改善されていること、貯蔵寿命および保管能力が改善されていること、ならびに本明細書に記載の他の特性を特徴とするコーティング酵素調製物が生成される。他の局面において、コーティング酵素調製物は、製造プロセスおよび包装プロセス、例えば、パウチおよびサシェへの包装を容易にする注入性が改善されている。
【0015】
ある局面において、本発明は、乳化可能な脂質のコーティングおよび消化酵素コアを含む、ある特定のコーティング消化酵素調製物が好ましい放出プロファイルおよび活性プロファイルを有し、消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、および他の神経学的状態または行動状態を治療するために、胃腸(GI)管に沿った部位時間特異的および/または位置特異的な標的放出を可能にするという驚くべき予想外の発見に基づいている。ある局面において、カプセル化された膵臓酵素/消化酵素調製物は、ヒト胃腸(GI)管内で特定の送達時間または特定の領域を得るように調製される。他の局面において、乳化可能な脂質組成物は硬化ダイズ油であるが、任意の適切な脂質または脂質ブレンドでよい。
【0016】
さらに、ある局面において、本発明は、酵素を低減する、例えば、分解および/または変性する環境から保護された安定性の高い酵素調製物に関する。これにより、より正確な用量の酵素調製物を、治療される個体に送達することが可能になる。ある局面において、コーティングはまた、酵素調製物が適切な溶媒と接触した時に乳化すると同時に、驚いたことに胃腸(GI)系内で酵素を徐放することができる。溶媒中でのコーティングの乳化特性は、酵素の徐放、好ましくは、胃腸管内での選択された位置での酵素の徐放を可能にする。胃腸管内で酵素が利用されると、最も効果的に治療が行われる。
【0017】
本発明はまた、消化酵素の脂質コーティングおよび/またはカプセル化によって酵素調製物を作る方法に関する。前記方法は、乳化可能な脂質を準備する工程、および選別された膵臓酵素/消化酵素粒子を脂質によってコーティングする工程を含む。消化酵素は、コーティング酵素調製物の5〜95重量%を構成する。
【0018】
別の局面において、本明細書に記載のように、本発明者らは、驚いたことに、本発明の方法を用いると、酵素放出速度を制御するために、消化酵素および/または膵臓酵素が乳化可能な脂質のみまたは脂質ブレンドによってコーティングされたコーティング消化酵素調製物であって、適切な溶媒に曝露されると膵臓酵素/消化酵素の放出が増大するコーティング消化酵素調製物を生成できることを発見した。本発明者らは、1種類または複数の種類のモノグリセリドから本質的になるコーティングを有するカプセル化された膵臓酵素/消化酵素調製物が水などの溶媒に曝露されると、カプセル化複合物の膵臓酵素/消化酵素の放出が増大するのに対して、0.1N HClの中では放出が阻止されることを発見した。
【0019】
さらに、本発明は、酵素調製物を投与するための方法に関する。ある局面において、前記方法は、コーティング調製物として膵臓酵素/消化酵素を投与する工程を含む。ある局面において、本発明は、消化酵素による治療を必要とする、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の行動状態もしくは神経学的状態を有する被験体に、消化酵素を含むコア;および乳化可能な脂質を含むコーティングを含む治療的有効量のカプセル化消化酵素調製物を含む、少なくとも2用量の組成物を投与する工程を含む治療方法に関する。被験体が有効量の消化酵素による治療を必要とするかどうかの確定は、被験体に酵素欠損症があることの確定に基づいてもよい。
【0020】
さらに、本発明は、賦形剤、担体、添加物、および/もしくは増量剤を含まない、または賦形剤、担体、添加物、および/もしくは増量剤をわずかに含む、ならびに/あるいは酵素調製物における溶媒の使用を必要としない、または酵素調製物における溶媒の使用が少ない、膵臓酵素/消化酵素複合物、調製物、酵素送達組成物または酵素送達システムのヒトへの送達に関する。ある態様において、コーティングは硬化ダイズ油から本質的になる。これによって、潜在的に毒性のある物質への曝露を少なくすることができ、アレルギー形成の可能性も小さくなるだろう。さらに、本発明は、投与安全性が改善された膵臓酵素および/または消化酵素の送達に関する
【0021】
さらに、本発明は、脂質カプセル化によって酵素調製物に付与された流動性の向上に起因する、改善された製造方法に関する。膵臓酵素/消化酵素の脂質カプセル化は水分に対する脂質障壁を形成し、これにより、包装機械の中でのカプセル化酵素調製物の流動が改善される。
【0022】
発明の概要は、本明細書に記載された本発明の全ての局面の完全または網羅的な説明であることを意図しない。本発明の他の局面は、本明細書において示されたさらなる説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】処理されていない未加工の消化酵素粒子の電子顕微鏡写真を示す。
【図2】未加工の消化酵素調製物をふるい分け、脂質コーティングした後のコーティング酵素調製物の電子顕微鏡写真を示す。
【図3】未加工の消化酵素粒子の棒グラフ粒径分析を示す。USSSふるいを通過することができた粒子の%をy軸に示した。
【図4】未加工の消化酵素粒子、ならびにカプセル化後の、70重量%、80重量%、および90重量%の消化酵素を含有するコーティング酵素調製物における%リパーゼ活性の棒グラフを示す。
【図5】70重量%、80重量%、および90重量%の消化酵素を含有する酵素調製物の%酵素放出の棒グラフを示す。時間をy軸に示した。
【図6】70重量%または80重量%の消化酵素を含有するコーティング酵素調製物における粒径分布と比較した、未加工の消化酵素粒子の粒径分布の棒グラフを示す。
【図7】消化酵素粒子をカプセル化するのに使用することができるプロセスのフローチャートを示す。
【図8】実用標準(一番上の線)、希釈剤(時間が4分の時に上から三番目の線)、HPLCに用いられた移動相(4分において一番下の線)、およびプラセボ(時間が4分の時に上から二番目の線)のピーク面積(mAU)対時間のクロマトグラムを示す。このクロマトグラムは、標準トリプシンピークとの干渉が無いことを証明している。
【図9】コーティング消化酵素調製物中のトリプシンを測定するためにHPLCを用いて得られた既知トリプシン濃度のピーク面積(mAU)対試料濃度(mg/mL)のグラフを示す。
【図10】自閉症の症状を有する9人の小児において測定された便キモトリプシン(FCT)レベルを示す。
【図11】自閉症の症状を有する26人の小児において測定されたFCTレベルを示す。
【図12】46人の小児において測定されたFCTレベルを示す。小児のうち25人には自閉症の症状があったのに対して、21人の小児には自閉症の症状がなかった。
【図13】320人の同年齢小児において測定された便キモトリプシンレベルを示す。ネイビーブルーの線(グレースケールでは上部の黒色の線)は、既知の状態(遺伝的状態および他の状態)の小児のFCTレベルを示す。紫色の線(グレースケールでは上部のダークグレーの線)は、既知の状態が全く無い正常小児のFCTレベルを示す。淡緑青色の線(グレースケールでは下部のミディアムグレーの線)は、自閉症小児のFCTレベルを示す。ピンク色の線(グレースケールでは下部のダークグレーの線)は、ADHD小児のFCT測定値を示す。黄色の線(グレースケールでは下部のライトグレーの線)は、ADD小児のFCT測定値を示す。
【図14】ベースラインならびにViokasまたはUltrase酵素補充を投与した30日後、60日後、90日後、および120日後での便キモトリプシンレベルの平均を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい態様の詳細な説明
全体にわたって説明されるように、本発明は、ある態様において、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、他の神経学的疾患または神経学的状態および行動疾患または行動状態を有する個体の治療において有用な、コーティング消化酵素調製物ならびにコーティング消化酵素調製物を含む薬学的組成物および酵素送達システムに関する。
【0025】
自閉症(時として「古典的自閉症」と呼ばれる)は、自閉症スペクトラム障害(ASD)として知られる発達障害の一群の中で最もよく見られる状態である。自閉症は、社会的相互作用における障害、言語コミュニケーションおよび非言語コミュニケーションに関する問題、ならびに独特の、反復性の、または極度に限定された活動および興味を特徴とする。他のASDには、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、および特定不能の広汎性発達障害(通常、PDD-NOSと呼ばれる)が含まれる。小児1,000人につき3〜6人に自閉症が認められると見積もられている。
【0026】
注意欠陥多動障害(ADHD)は、米国における全小児のうち3〜5パーセントが罹患する神経行動学的障害である。ADHDは、タスクを続ける能力、ならびに年齢に応じた抑制(認知抑制のみ、または認知抑制および行動抑制の両方)を実行する能力を妨げる。ADHDの警告となる徴候のいくつかには、指示を聞かないこと、きちんと行動できないこと、および学業ができないこと、そわそわと手および足をいじること、しゃべり過ぎること、計画、雑用、および宿題をやり遂げないこと、ならびに細部に注意を向けるおよび対応するのに苦労することが含まれる。いくつかのタイプのADHD:注意力障害優位型(predominantly inattentive)サブタイプ、多動性-衝動性優位型(predominantly hyperactive-impulsive)サブタイプ、および混合サブタイプがある。ADHDは通常、小児期に診断されるが、状態は成人になっても継続し得る。
【0027】
パーキンソン病(PD)は、ドーパミン産生脳細胞の喪失に関連する、運動系障害と呼ばれる状態の一群に属する。4つの主なPD症状は、振せん、すなわち手、腕、脚、顎、および顔の震え;硬直、すなわち四肢および体幹のこわばり;運動緩徐、すなわち動作が遅いこと;ならびに姿勢の不安定、すなわち平衡および協調運動の障害である。これらの症状が顕著になるにつれて、患者は、歩行、会話、または他の簡単なタスクの遂行が困難になることがある。PDは、通常、50歳以上の人に罹患する。PDの初期症状はわずかであり、徐々に現われる。一部の人では、疾患が他の人より速く進行する。疾患が進行するにつれて、PD患者の大半に罹患する震え、すなわち振せんが日々の活動を妨げ始めることがある。他の症状は、うつ病および他の感情変化;嚥下、咀嚼、および話の困難;排尿困難または便秘;皮膚問題;ならびに不眠を含むことがある。
【0028】
嚢胞性線維症(CF)は、最もよく見られる、命を縮める遺伝病の1つである。米国では、小児4,000人につき1人がCFをもって生まれる。CFは、西ヨーロッパ集団の中で最もよく見られる。地中海人種家系の22人につき1人がCF遺伝子保因者であるので、CFは、これらの集団において最もよく見られる遺伝病である。CFは、遺伝子である嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の変異によって引き起こされる。この遺伝子の産物は、汗、消化液、および粘液の作製において重要な塩素イオンチャンネルである。CFの無いほとんどの人は、機能する2コピーの(対立遺伝子)のCFTR遺伝子を有し、1つしかない人は嚢胞性線維症を予防する必要がある。嚢胞性線維症は、肺、肝臓、膵臓、および腸の外分泌腺(粘液)に影響を及ぼして、多系統不全による進行性障害を引き起こす。CFは、例えば、1)頻繁な肺感染症をもたらす濃密な粘液産生;2)発育不全、脂を含んだ便、および脂溶性ビタミン欠損を引き起こす、膵臓酵素の分泌低下;ならびに3)輸精管が先天的に両側に存在しない状態による男性不妊によって特徴付けることができる。多くの場合、CFの症状は乳児期および小児期において現われる。胎便性イレウスがCF新生児における典型的な所見である。
【0029】
酵素治療を必要とする嚢胞性線維症を有する個体へのリパーゼの投与を必要とする個体においてリパーゼを送達するために、非脂質腸溶コーティングのある酵素調製物が用いられている。さらに、Fallonは、例えば、本明細書において完全に示されるように参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,138,123号、同第6,660,831号、同第6,632,429、同第6,534,063号において、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、および他の神経学的疾患または神経学的状態を有する小児および他の個体の治療において使用するための、ある特定の方法および酵素組成物について述べている。
【0030】
消化酵素による治療に感受性の神経学的状態および行動状態のある患者に消化酵素を送達するために、ヒト消化管の性質は問題となっている。消化管にわたる複数の温度変化およびpH変化によって特異的送達は必要であり、課題である。例えば、胃の中に1と低いpHが現われるが、近位小腸では5〜6の塩基性pHに速やかに上昇する。例えば、一般的に、胃のpHは約1.2であり、十二指腸のpHは約5.0〜6.0であり、空腸のpHは約6.8であり、近位回腸のpHは約7.2であり、遠位回腸のpHは約7.5である。胃の低pHは、近位小腸では5〜6の塩基性pHに速やかに変化するので、酵素が達される場所に応じて特異的送達方法が求められる。
【0031】
例えば、リパーゼ投与を必要とする状態を示す嚢胞性線維症小児は、小腸の後半部分へのリパーゼ送達を必要とする。対照的に、本発明者らは、プロテアーゼ治療を必要とする自閉症小児は近位小腸への酵素の送達を必要とすることを確かめた。
【0032】
消化酵素の送達はまた、周囲室温での酵素の急速な分解および変性、ならびに高い温度、圧力、湿気、および/または光曝露によって起こり得る大きな分解および変性のために難しい場合がある。水分および熱は一緒になって酵素をすぐに不安定化して、酵素の有効性を減らし、貯蔵寿命を短くして、不正確な投与につながり得る。酵素の変性または不安定化は、活性酵素の用量を、効果的な治療に必要な量より少なくすることによって有効性を弱め得る。または、活性酵素の有効レベルを確保するために用量を増やすことによって変性または不安定化を補おうという試みが、カプセルまたは他の剤形の過量または過剰充填の危険を冒す可能性がある。浸透、分解などの好ましくない条件から膵臓酵素/消化酵素を保護および安定化するために、膵臓酵素/消化酵素(コア)は、乳化可能な脂質を含有する連続コーティングの中に入れてコーティングまたはカプセル化することができる。別の局面において、本発明は、貯蔵寿命が改善された新たなコーティング酵素調製物を提供する。
【0033】
酵素調製物の製造業者は、リパーゼの投与を必要とする個体、例えば、嚢胞性線維症を有する個体においてリパーゼを送達するために腸溶コーティングを使用してきた。ブタ酵素は、プロテアーゼ、リパーゼ、およびアミラーゼの混合物の状態で送達され、これらのヒト摂取用組成物はリパーゼ送達用に調製されているので、フタル酸ヒプロメロース、ジメチコーン1000、およびフタル酸ジブチルなどの物質を含むこれらの腸溶コーティングの使用は、消化管内の適当な位置でのプロテアーゼの送達を妨げる。現在、市場に出されている他の全ての酵素調製物は、これらの腸溶コーティング物質および/または調製物中にある他の添加物の少なくとも1つを含有している。さらに、製造を可能にする一部の添加物、例えば、流動性を改善する添加物は、酵素調製物に対する患者の反応性または感受性の危険を冒す可能性がある。
【0034】
1つの態様において、本発明は、コーティングされた消化酵素調製物および/または複合物を含み、ある態様において、コーティングされた消化酵素調製物および/または複合物はカプセル化された膵臓酵素/消化酵素調製物である。他の局面において、本発明は、コーティングされた膵臓酵素/消化酵素調製物を含む酵素送達システムおよび薬学的組成物を含む。これらのコーティングまたはカプセル化された酵素調製物は、膵臓酵素または消化酵素の粒子を含むコアおよび乳化可能な脂質を含むコーティングを含有する。
【0035】
消化酵素/膵臓酵素調製物におけるコーティングは分解および変性に対する障壁を作り出し、より正確なレベルの活性酵素が治療個体に到達するのを可能にする。本発明の脂質コーティングは、物理的障壁ならびに加水分解を阻止および/または低減する障壁を可能にすることによって、水分、熱、湿気、および光曝露に対する大きな障壁となる。コーティング酵素調製物は、脂質コーティングによる環境内の水分から保護された結果として加水分解をあまり受けない。本発明の結果として、保管条件(例えば、水分、熱、酸素など)への耐性が長期間あり、従って、長い貯蔵寿命が可能な膵臓酵素/消化酵素が提供される。カプセル化酵素調製物のコーティングは環境から酵素を保護し、コーティングの耐摩耗性を損なうことなく溶媒中での乳化をもたらす。従って、さらに、本発明は安定性の高い酵素調製物に関する。
【0036】
従って、コーティング酵素調製物は酵素投与量の過剰充填を低減し、膵臓酵素または消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン疾患、嚢胞性線維症、および他の神経学的状態もしくは神経学的疾患または行動状態または行動疾患を有する個体への、より正確な用量の酵素の送達を向上させる。
【0037】
さらに、自閉症および他の状態を有する小児および他の個体は、食物、添加物、着色剤、および薬物製剤において用いられる他の担体、賦形剤、または物質に対して複数の感受性を有することが多いので、患者の有害な症状または病的状態を潜在的に大きくし得る、アレルゲンおよび他の担体、賦形剤、増量剤、着色剤などの使用を避けた酵素送達システムを作ることが課題である。さらに、非常に小さな小児では、安楽および忍容性が可能になる酵素送達システムが最も良い。これらの酵素調製物用のサシェ送達システムも今までに実現されたことがない。
【0038】
本発明の別の局面は、小児および他の治療個体におけるアレルゲンおよび他の感受性反応の可能性を小さくするために、増量剤、着色剤、色素、流動促進剤(flow enhancer)、および他の添加物を用いることなく酵素調製物を作ることである。ある態様では、驚いたことに、特性の中でも特に酵素活性の保持、投与の容易さ、忍容性、および投与の安全性を改善するために、1種類の脂質賦形剤を用いて消化酵素をカプセル化できることが発見されている。驚いたことに、リパーゼを含有する消化酵素粒子を、硬化ダイズ油のみから本質的になるコーティングによって首尾良くカプセル化することができる。
【0039】
さらに、ブタ膵臓酵素/消化酵素には、保存処理/燻製された豚肉に似た臭気および味がかなりある。この味は、酵素補充を受けている個体、特に、小児とって強く、不快なことがある。脂質コーティングは無臭無味であるので、脂質コーティングを添加すると、酵素調製物の味がかなりマスキングされることによって、味に対する抵抗性が得られる。色、色素、芳香剤、レシピエント、または他の物質の使用を伴わない、この味マスキング法の使用は、不快なまたは望ましくない味および臭気のある薬物の投与に好ましい。他の態様において、本発明は、味および臭いが改善されたコーティング消化酵素調製物に関する。
【0040】
ある態様において、消化酵素粒子コアへのコーティングは好ましくは連続コーティングである。「連続」とは、膵臓酵素/消化酵素が均一に保護されていることを意味する。連続コーティングは膵臓酵素/消化酵素を完全に取り囲んでいる、またはカプセル化している。カプセル化によって、水分、温度などの条件および保管中に遭遇する条件から膵臓酵素/消化酵素が保護される。
【0041】
さらに、カプセル化によって膵臓酵素/消化酵素が徐放もされる。溶媒中でのコーティングの乳化特性によって、胃腸系、好ましくは、酵素を利用しようとする胃腸管領域において酵素が徐放される。カプセル化複合物のコーティングによって環境から酵素が保護され、コーティングの耐摩耗性を損なうことなく溶媒中で乳化が起こる。例えば、プロテアーゼによる治療を必要とする状態の場合、近位小腸において酵素のプロテアーゼ部分が放出されることが必要であり、そのために、30〜90分の間に溶解プロファイルがある脂質カプセル化が必要とされる。溶解プロファイルはまた、約30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、または90分でもよい。溶解プロファイルは、当業者に公知の方法および条件を用いて得ることができる。例えば、溶解プロファイルは、pH1、2、3、4、5、6、7、8、9、10を含む様々なpHで確かめることができる。
【0042】
生理活性物質の放出速度はまた、下記の添加物を添加することによって制御することもできる。調製物が溶媒に曝露された時に、溶媒は、コーティングの中にある柔らかくすることができる(mollifiable)脂質と相互作用し、コーティングを乳化し、生理活性物質を放出させる。
【0043】
本明細書で使用する「カプセル化する」とは、コーティングが膵臓酵素/消化酵素を完全に取り囲んでいることを意味する。カプセル化粒子の集団内で、カプセル化酵素調製物は、カプセル化粒子の放出プロファイルが大きく変化しない限り、実質的に連続したコーティングのある粒子の汚染部分または小さな部分を含んでもよい。コーティングまたはカプセル化された消化酵素調製物の中にコーティングまたはカプセル化された消化酵素粒子を形成するように、コーティングまたはカプセル化された粒子は、1層のコーティングに包まれた1つまたは複数の消化酵素粒子を含有してもよい。
【0044】
本発明はまた、膵臓酵素または消化酵素による治療に感受性の神経学的障害または行動障害、例えば、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および他の行動状態もしくは行動疾患または神経学的状態もしくは神経学的疾患を治療するための酵素調製物、薬学的組成物、および送達システムを調製する方法を含む。「膵臓酵素または消化酵素による治療に感受性の」とは、有効量の膵臓酵素または消化酵素を投与することによって、疾患または状態の1つまたは複数の症状を軽減、治療、または低減できることを意味する。
【0045】
ある局面において、本発明は、コーティング消化酵素調製物において以前に用いられたことのない脂質によって消化酵素粒子をコーティングすることによって作られた、選択されたコーティング酵素調製物の生成に関する。乳化可能な脂質および酵素の独特の混合物を用いると、膵臓酵素/消化酵素のある特定の成分を、胃腸管通過中に選択された位置におよび/または選択された時間で送達することができる。ある局面において、本発明は、溶解プロファイルに基づいて消化酵素をヒトに送達する方法に関する。
【0046】
乳化可能な脂質は、溶媒に曝露すると乳化し、脂質が典型的な保管温度で固体になる融点を有する、任意の脂質、脂質混合物、または脂質および乳化剤のブレンドである。乳化可能な脂質は植物に由来する脂質でもよく、動物に由来する脂質でもよい。ある態様において、乳化可能な脂質は、1種類または複数の種類のモノグリセリド、ジグリセリド、もしくはトリグリセリド、または、例えば、硬化植物油に見られる乳化剤を含む他の成分から本質的になる、またはこれを含む。別の態様において、脂質は非極性脂質である。
【0047】
本明細書で使用する、動物および/または植物「由来の」脂質は、植物もしくは動物の供給源および/もしくは組織に由来する脂肪および油を含んでもよく、ならびに/または動物もしくは植物の供給源に由来する脂肪および油の構造に基づいて合成により生成されてもよい。脂質材料は、公知の化学プロセスまたは機械プロセスによって精錬されてもよく、抽出されてもよく、精製されてもよい。哺乳動物飼料にには、必須脂肪酸と呼ばれる、脂質に存在するある特定の脂肪酸が存在しなければならない。脂質は、ある態様において、Type I USP-National Formulary植物油を含んでもよい。
【0048】
本発明において用いられる消化酵素は、膵臓供給源または他の供給源に由来する消化酵素を含むが、これに限定されない、膵臓によって産生されるタイプの消化酵素からなる任意の組み合わせでもよい。本発明の範囲はブタ由来の膵臓酵素に限定されず、他の動物または植物に由来するもの、ならびに合成により得られたものでもよい。消化酵素は、ブタ由来消化酵素などの哺乳動物供給源に由来してもよい。酵素は1種類または複数の種類の酵素を含んでもよく、植物により得られてもよく、合成により得られてもよく、微生物、酵母、または哺乳動物細胞において組換えにより産生されてもよく、1種類または複数の種類の供給源に由来する酵素の混合物を含んでもよい。消化酵素は、例えば、1種類または複数の種類の供給源に由来する1種類または複数の種類の酵素が一緒に混合されてもよい。これは、例えば、選択された疾患または状態に対してより効果的な治療を提供する適切なレベルの特定の酵素を提供するために、1種類の消化酵素を、膵臓供給源から得られた消化酵素に添加することを含む。消化酵素の供給源の1つは、例えば、Scientific Protein Laboratoriesから得ることができる(表6を参照されたい)。消化酵素は、例えば、パンクレアチン/パンクレリパーゼ組成物でもよい。1つの態様において、消化酵素は、25 USP単位/mgプロテアーゼ、2 USP 単位/mg、および25 USP単位/mgアミラーゼを含むか、これらから本質的になる。消化酵素という用語は、膵臓により産生されるタイプの1種類または複数の種類の酵素を指すことがある。
【0049】
本発明においてコアとして用いられる消化酵素粒子は、粒子の約90%のサイズが約#40〜#140 USSSメッシュすなわち約105〜425μmである、または粒子の約75%のサイズが約#40〜#80メッシュすなわち約180〜425μmである消化酵素粒子を含む。サイズが#40〜#140メッシュの粒子は#40メッシュを通過するが、#140メッシュを通過しない。本発明の1つの態様において、コーティングまたはカプセル化された消化酵素粒子に含まれる粒子のうち#100メッシュ(150μm)に通してふるい分けできるのは約35%、30%、25%、20%、15%、または10%未満でもよい。ある態様において、「エアロゾル化しない」という用語は、#100メッシュ(150μm)に通してふるい分けできるのは粒子の約20%未満または約15%未満であるコーティングまたはカプセル化された酵素調製物を指す。カプセル化消化酵素調製物は、消化酵素粒子が2種類以上の酵素を含有するカプセル化消化酵素複合物でもよい。
【0050】
コアに存在する膵臓酵素の最低量は、コーティング酵素調製物の少なくとも約5重量%の活性酵素であるが、他の態様において、少なくとも約30重量%または少なくとも約50重量%でもよい。複合物に存在する膵臓酵素/消化酵素の最大量は最大で約95重量%であり、他の態様では、最大でコーティング酵素調製物の約90%、85%、80%、75%、または70%である。他の態様では、複合物に存在する膵臓酵素の量は、約10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、35重量%、40重量%、45重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、72.5重量%、75重量%、77.5重量%、80重量%、82.5重量%、87.5重量%、または92.5重量%であるか、これらの間の任意の値である。少なくとも約a%または最大で約a%の酵素は、その%の酵素と等しくてもよく、ほぼその%の酵素を含んでもよい。「約」という用語は、等しい値と、所定の測定における実験誤差を考慮に入れた範囲を含む。粒径に関して用いられる場合、「約」という用語は、プラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%、またはこれらの間の任意の値を指してもよい。ふるい分けることができる%粒子に関して用いられる場合、「約」という用語は、プラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%、またはこれらの間の任意の値を指してもよい。
【0051】
カプセル化された消化酵素調製物または複合物を含有する組成物は、スプリンクル、散剤、カプセル、錠剤、ペレット、カプレット、または他の形態として送達することができる。単回投与用のサシェに収納されたスプリンクル調製物をさらに含む酵素送達システムに入れてカプセル化酵素調製物を包装すると、投与ごとに特定の量の酵素を送達することが可能になることで、酵素を容易に送達し、正確に投薬することが可能になる。特定の安定性パラメータ内で酵素活性を維持する酵素調製物の特定の単位投薬が可能になると、空気、水分、および熱によって酵素調製物が損なわれ、変性する多単位剤形の中に収納される他のスプリンクル製剤より改善される。好ましい態様において、水分を中に入れず、有害な環境要因から酵素調製物を保護するために、散剤またはサシェは三層箔パウチまたは類似の障壁の中に収納される。さらに、本発明は、脂質カプセル化による加水分解の低下による安全性の改善に関する。
【0052】
さらに、脂質カプセル化法によって、肺または鼻を介して吸入した場合に小児に対して腐食性であり得る酵素調製物のエアロゾル化が少なくなる。別の態様において、本発明は、酵素のエアロゾル化量を少なくすることによって投与安全性が改善した消化酵素の送達を含む。脂質カプセル化によって、エアロゾル化(aerolization)が少なくなり、小児および酵素調製物の投与者における腐食性の熱傷、吸引、および/または吸引性肺炎の可能性が小さくなり、それによって、既に易感染性になっている小児、例えば、嚢胞性線維症の小児における病気の可能性が小さくなり、安全な投与につながる。
【0053】
本明細書で使用する「エアロゾル化されない」という用語は、コーティング酵素調製物を注入した時に、コーティングされていない酵素粒子と比較して、粒子の実質的に全てがエアロゾル化されない大きさ、またはエアロゾル化が少なくなる大きさである、コーティングまたはカプセル化された酵素調製物を指すために用いられる。例えば、「エアロゾル化されない」という用語は、粒子の少なくとも約90%のサイズが約#40〜#140メッシュすなわち約106〜425μmである、または粒子の少なくとも約75%が約#40〜#80メッシュすなわち約180〜425μmである、コーティングまたはカプセル化された酵素調製物を指すことがある。「エアロゾル化されない」という用語はまた、#100メッシュ(150μm)に通してふるい分けできるのは粒子の約35%、30%、25%、20%、15%、または10%未満であるコーティングまたはカプセル化された酵素調製物を指すこともある。ある態様において「エアロゾル化されない」という用語は、#100メッシュ(150μm)に通してふるい分けできるのは粒子の約20%未満または約15%未満であるコーティングまたはカプセル化された酵素調製物を指す。
【0054】
本明細書において記載および言及されるように、本発明の組成物および方法において、適切な膵臓酵素/消化酵素および適切なコーティングを使用することができる。適切な酵素および適切な脂質コーティングの選択は、酵素またはコーティングのタイプおよび量の選択を含めて、個体の特定の酵素の必要性および治療しようとする選択された疾患によって左右される。本発明の1つの局面であるカプセル化酵素調製物は以前に述べられたことがない。
【0055】
ある態様において、本発明は、ヒト胃腸管内での通過時間に基づいて、消化酵素/膵臓酵素による治療に感受性の、パーキンソン病、ADD、ADHD、自閉症、嚢胞性線維症、ならびに他の神経学的障害および行動障害を有する個体において送達するために選択された酵素および脂質の特定のブレンドに関する。さらに、消化酵素の様々な成分については、治療される患者の要望に基づいてもよい。さらに、本発明は、特に、必要とされる送達時間および溶解プロファイルに基づいた、ヒトへの消化酵素の送達の改善に関する。
【0056】
ある特定の感受性のある生物物質をコーティングするための一般的方法が説明されたが、例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,251,478号を参照されたい。本発明のカプセル化された生理活性物質は、複数の種類のプロテアーゼ、リパーゼ、およびアミラーゼを含む、またはこれらからなる消化酵素を含有するコア、ならびに乳化可能な脂質を含む、またはこれからなるコーティングを含む酵素調製物である。
【0057】
乳化可能な脂質と添加物をブレンドすることができる。脂質および添加物の選択によって、生理活性物質の放出速度が制御される。消化酵素または膵臓酵素の場合、脂質コーティングは、治療を最適化するために、放出のために選択された消化管領域において生理活性物質を放出するようなただ1つのものとなるように選択しなければならない。
【0058】
さらに、本発明は、小児および成人への送達を容易にするために、サシェまたはパウチ調製物に入れて、コーティングおよび/またはカプセル化された酵素調製物を投与することに関する。ある態様において、本発明は、特に、サシェまたはパウチの中に収納されたコーティング酵素粒子調製物の投与に関する。これにより、食物または飲料の中に入れた状態での投与、口腔への直接投与、あるいは経鼻胃(NG)管、胃(G)管、または他の胃腸への入口もしくは送達を介した胃腸管系への直接投与を含むが、これに限定されない投与が容易になる。
【0059】
ある態様において、各用量は、約100〜1500mgのコーティングまたはカプセル化された酵素調製物を含有し、各用量は、約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1450mg、または1500mgのコーティングまたはカプセル化された酵素調製物を含有してもよい。「約」は、列挙された調製物の80〜125%を含んでもよい。各用量はまた、列挙された重量の±10%でもよい。1つの態様において、各用量は、約156 USP単位/mg±10%以上のプロテアーゼ活性を有する。プロテアーゼ活性はまた、約100 USP単位/mg、105 USP単位/mg、110 USP単位/mg、115 USP単位/mg、120 USP単位/mg、125 USP単位/mg、130 USP単位/mg、135 USP単位/mg、140 USP単位/mg、145 USP単位/mg、150 USP単位/mg、155 USP単位/mg、160 USP単位/mg、165 USP単位/mg、170 USP単位/mg、175 USP単位/mg、180 USP単位/mg、185 USP単位/mg、190 USP単位/mg、195 USP単位/mg、または200 USP単位/mg以上でもよい。
【0060】
他の態様において、本発明は、消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の行動状態もしくは神経学的状態を有する被験体に、治療的有効量のコーティング消化酵素調製物を含む少なくとも2用量の組成物を投与する工程を含む治療方法に関する。ある特定の態様において、pH6.0で行われる溶出試験において約30分までに酵素の約80%が放出される。他の態様において、コーティング消化酵素調製物が小腸に達した後、約30分までに酵素の約80%が放出される。
【0061】
本発明の別の態様は、ヒトに消化酵素を送達するための調製物において現在用いられている賦形剤、増量剤、および溶媒を使用を減らすことによる、ヒトへの酵素送達の改善に関する。例えば、カプセル化消化酵素調製物は1種類のみの賦形剤を含有してもよい。これにより、アレルギー反応の可能性が小さくなることで投与安全性が高まる。1つの態様において、賦形剤は硬化ダイズ油である。
【0062】
ある態様において、前記の脂質カプセル化法は、流れを容易にし、安定性を改善するために溶媒、増量剤、および賦形剤による酵素調製物の処理を必要としないので、本発明の1つの局面は、投与しようとするGRAS物質(一般的に安全とみなされた物質)からなる「きれいな」調製物を含む。本発明の方法によって許容される溶媒、増量剤、賦形剤、および他の添加物の使用を減らすと、潜在的なアレルゲンに対する酵素補充を服用した個体の曝露が小さくなり、それによって、治療に対してアレルギー反応を生じる可能性のある個体の治療において使用できる可能性がさらに高い低アレルギー性酵素調製物が生成される。従って、本発明のコーティング酵素調製物を投与すると、潜在的に毒性のある物質への曝露が小さくなり、アレルギー形成の可能性も小さくなる。従って、ある態様において、カプセル化消化酵素調製物は低アレルギー性である。
【0063】
さらに、別の局面において、本発明は、投与安全性が改善した消化酵素の送達に関する。脂質コーティングを用いると酵素調製物の重さが増え、エアロゾル化の可能性が小さくなる。コーティングされていない以前の酵素はエアロゾル化されることが示されており、従って、鼻腔または肺に吸い込まれ、鼻腔または肺と接触して、酵素調製物を服用した人および酵素調製物を投与した人の粘膜を傷つけることがある。
【0064】
さらに、本発明は、小児に送達するためのサシェ調製物の投与の改善に関する。特に、本発明は、食物、飲料の中に入れた状態での投与、または口腔への直接投与、または経鼻胃管、胃管、もしくは他の胃腸への入口を介した胃腸管系への直接投与を含むが、これに限定されない特定のタイプの投与を可能にするサシェの中に収納されたコーティング消化酵素調製物の投与に関する。酵素のサシェ送達の使用は、現在市場に出されている酵素調製物において以前に利用されたことがない。サシェは単位投与量または1日に複数回の用量に相当し、1回単位用量に相当する。三層の箔からなるサシェを用いると、酵素/脂質の散剤は安定し、投与が容易になる。
【0065】
別の態様において、本発明は、溶媒に曝露した時のカプセル化酵素調製物からの膵臓酵素/消化酵素の放出速度を制御する方法に関する。ある局面において、前記方法は、乳化可能な脂質を、ある量の1種類または複数の種類の添加物とブレンドして、脂質ブレンドを得る工程;および消化酵素粒子をブレンドによってコーティングして、酵素を含有するコアおよび脂質を含有するコーティングを含む粒子を含有するカプセル化消化酵素調製物を形成する工程を含む。ある態様において、乳化可能な脂質は、乳化可能な脂質および添加物が同じでなく、添加物の量が増えるにつれて、溶媒に曝露した時のカプセル化複合物からの酵素の放出速度が遅くなるブレンドである。別の選択肢では、溶媒に曝露した時のカプセル化複合物からの酵素の放出速度は、添加物の量が減るにつれて速くなる。
【0066】
驚いたことに、脂質コーティングは、胃に存在するHCl(塩酸)によって低減または破壊されるようには見えず、それによって、投与後、酵素調製物が胃腸管内の標的領域に到達するまで酵素は分解されないように保護される。さらに、脂質コーティングは、水による攻撃に対する酵素の曝露を低減し、それによって、加水分解が低減し、消化酵素は分解されないようにさらに保護される。さらに、本発明者らは、脂質のみを含有する賦形剤を使用して、リパーゼを含有する消化酵素粒子をコーティングまたはカプセル化できることを発見した。
【0067】
本発明の1つの局面において、特定の疾患標的を治療するための消化酵素の使用は、放出特徴が異なるカプセル化消化酵素複合物を調製することによって可能になる。様々な神経学的疾患および行動疾患がヒトの胃腸系に様々に影響を及ぼし得るので、特定の酵素調製物および結果として生じるカプセル化を使用すると、酵素調製物が送達される場所および持続期間に関して差別化が可能になる。
【0068】
従って、本発明は、必要とされる送達時間および溶解プロファイルに特に基づいたヒトへの消化酵素送達の改善に関する。例えば、本発明のある特定の局面において、放出速度および溶解特徴は、本発明の脂質カプセル化に特有のものである。消化酵素による治療に感受性の行動状態および行動疾患ならびに神経学的状態および神経学的疾患の治療を最適化するように選択された酵素および脂質を用いたコーティング消化酵素の調製物は以前に説明されたことがない。
【0069】
一例として、消化酵素用および/または膵臓酵素用の以前の腸溶コーティングは、プロテアーゼ部分を近位小腸に送達するには長すぎる期間にわたって酵素混合物を遅延放出する。例えば、嚢胞性線維症患者への投与においては、効果的な治療のためにリパーゼ送達が必要とされ、腸溶コーティングされた消化酵素の溶解プロファイルは酵素放出の長期の遅延ならびに高リパーゼ製剤の送達に有利に働く必要がある。
【0070】
本発明の前に、嚢胞性線維症を有する個体を治療するためのリパーゼ送達の遅延機構および/または保護機構として脂質カプセル化が用いられたことがなかった。
【0071】
さらに、本発明者らは、効果的な治療のためにプロテアーゼ酵素送達を必要とする自閉症患者を治療するために、より早い通過時間ウィンドウ(transit time window)の間に近位小腸にプロテアーゼを送達してタンパク質消化を最適化するように脂質カプセル化を改良することができると認めている。別の例では、本発明者らは、神経学的状態の自律神経学的障害のためにGI通過時間が遅いパーキンソン病患者については、効果的な治療のために酵素を送達するために、さらに別の放出プロファイルが必要であると認めている。投与後、もっと遅い時間で酵素が放出されるように脂質および/または添加物が選択される。
【0072】
脂質を層状に積み重ねることによって、または特定の脂質タイプを用いてカプセル化することによって、消化酵素が消化器系を通る通過時間を制御できることは以前に認められていなかった。さらに別の局面において、本発明は、ヒトの胃腸系内での通過時間に基づいて、膵臓酵素/消化酵素による治療に感受性の、パーキンソン病、ADD、ADHD、自閉症、および嚢胞性線維症、ならびに他の行動疾患もしくは行動状態または神経学的疾患もしくは神経学的状態を有する個体において送達するための、酵素および脂質からなる選択されたブレンドに関する。
【0073】
さらに、本発明は、脂質カプセル化によって付与された高流動性による製造の改善に関する。この製造の改善はまた、膵臓酵素/消化酵素の脂質カプセル化によって、水分に対する脂質障壁が生じ、従って、包装機械内での流れが改善したために達成することもできる。流れの質の改善は、コーティング消化酵素調製物の包装、例えば、パウチまたはサシェへの包装を容易にし得る。
【0074】
1つの局面において、本発明は、特定の疾患または状態の治療において使用するために標的化されたヒト胃腸(GI)管内で特定の送達時間に合わせてコーティング消化酵素調製物を作るための脂質カプセル化方法の使用に関する。この疾患または状態は、胃腸管の適切な領域に消化酵素を投与することによって治療することができる消化欠陥によって引き起こされてもよく、消化欠陥を特徴としてもよい。神経学的疾患もしくは神経学的状態または行動疾患もしくは行動状態は、有効量の膵臓酵素および/または消化酵素調製物を投与することによって1つまたは複数の症状を治療することができる、従来より消化器系と関連しないものである。
【0075】
従って、本明細書は、特定の疾患の治療における使用を目的とした特定の酵素の脂質カプセル化に関し、このカプセル化方法は、カプセル化された消化酵素複合物を調製するために本発明の方法において用いられる量およびタイプの脂質を含む。本発明はまた、膵臓酵素および/または消化酵素の脂質コーティングおよび/またはカプセル化によって酵素調製物を作る方法に関する。前記方法は、乳化可能な脂質を準備する工程、および膵臓酵素/消化酵素粒子を脂質によってコーティングする工程を含む。ここで、膵臓酵素/消化酵素は、コーティング酵素調製物の5〜90重量%を構成する。ある局面において、コーティングされていない膵臓酵素/消化酵素粒子のサイズ範囲は約105〜425μmである。
【0076】
1つの態様において、本発明は、カプセル化消化酵素調製物を調製する方法に関する。前記方法は、a)コーティングされていない消化酵素粒子を選別して、カプセル化に適したサイズの粒子を得る工程;およびb)選別された消化酵素粒子を乳化可能な脂質によってコーティングして、膵臓酵素/消化酵素を含有するコアおよび乳化可能な脂質を含有するコーティングを含有する、コーティングまたはカプセル化された消化酵素を形成する工程を含む。ある態様において、カプセル化消化酵素調製物は徐放性消化酵素調製物であり、高い流動性を有してもよい。調製物は、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および他の神経学的状態を有する個体の治療において有用であり得る。
【0077】
粒子の選別は、消化酵素の活性、外観、または粒径を改善する品質管理工程を含んでもよい。例えば、粒子は、酵素活性含有率を確かめるために分析されてもよく、および/またはクロマトグラフィー法、顕微鏡法、もしくは他の分析方法を用いて視覚化されてもよい。粒子はまた、小さすぎる粒子または大きすぎる粒子を除去することによって、カプセル化に適したサイズの粒子を得るように選別されてもよい。例えば、粒子は、カプセル化に適切したサイズまたはより均一なサイズ範囲の粒子を得るようにふるい分けられてもよい。さらなる例として、粒子は、USSS#40メッシュおよびUSSS#140メッシュに通してふるい分けられてもよい。#40メッシュを通過するが、#140メッシュによって保持される粒子は、コーティングまたはカプセル化に適したサイズ範囲の粒子である。粒子は、USSS#140、#120、#100、#80、#70、#60、#50、#45、または#40メッシュ、またはその任意の組み合わせに通してふるい分けることによって選別されてもよい。
【0078】
API供給業者によって供給される酵素調製物は、端が平らでなく、凝集の多い、不規則な形状をした複数のサイズの粒子として提供されることがあり、結晶性塩粒子を含有することがある(例えば、図1を参照されたい)。不均一な粒径および形状によって流動性が低下し、包装が妨げられる。さらに、コーティングされていない酵素を個体の口に流し込むのは難しく、潜在的に、多すぎる酵素または少なすぎる酵素が送達される可能性がある。本発明の1つの局面による方法に従って消化酵素粒子を処理すると、サシェ包装に適した、および食物または飲料に流し込むのに適した埃っぽくない、自由に流動することができる粒子調製物が得られる。さらに、全体を通して議論したように、エアロゾル化を防ぐために、従って、安全性を高めるために、製薬を向上させる流動性を高めるために脂質カプセル化を使用することが本発明の1つの態様である。
【0079】
例示的な未加工の酵素調製物における粒子のサイズ分布を図3のグラフに示した。一般的に、大きな粒子(>40メッシュ)および非常に小さな粒子(<140メッシュ)は適切なカプセル化に不適であり、選別によって除去することができる。カプセル化された膵臓酵素調製物の流動性を高めるために、例えば、サイズ40〜140メッシュすなわち約105〜425ミクロンの粒子のみを含めることによって、細粒および過度に大きな粒子を除去するように消化酵素粒子をふるい分けることができる。ある態様において、80重量%の消化酵素を含有するコーティング消化酵素調製物は、20lbの酵素粒子および5lbの硬化植物油を用いて、ふるい分けられた膵臓酵素粒子を硬化植物油によってコーティングすることによって作られる。
【0080】
ある態様において、脂質または脂質ブレンドの温度は、消化酵素に適用する前に110°Fに維持され、消化酵素は加熱されない。
【0081】
ある態様において、脂質は、カプセル化複合物の約5重量%、カプセル化複合物の好ましくは約30重量%、より好ましくは約50重量%の最低量で調製物に存在すべきである。カプセル化複合物に存在する膵臓酵素/消化酵素の最大量は複合物の約95重量%であり、カプセル化複合物の好ましくは約90%、より好ましくは約85%である。乳化可能な脂質は、乳化する、またはエマルジョンを作り出す任意の脂質または脂質由来材料でよいが、乳化可能な脂質が典型的な保管温度、例えば、23℃で固体になるような融点を有する。
【0082】
本明細書で使用する「乳化可能な脂質」とは、少なくとも1つの親水基および少なくとも1つの疎水基を含有し、親水性および疎水性の界面を形成することができる構造を有する脂質を意味する。前記で述べた、乳化可能な脂質のこれらの化学的性質および/または物理的性質が乳化を可能にする。界面の例には、例えば、ミセルおよび二重層が含まれる。親水基は極性基でもよく、荷電してもよく、無電荷でもよい。
【0083】
乳化可能な脂質は、例えば、硬化I型植物油を含む、パーム核油、ダイズ油、綿実油、キャノーラ油、および家禽脂などの動物または植物に由来するものでもよい。ある態様において、脂質は水素添加されていてもよい。脂質はまた飽和していてもよく、部分的に飽和していてもよい。乳化可能な脂質の例には、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、脂肪酸のエステル、リン脂質、その塩、およびその組み合わせが含まれるが、これに限定されない。
【0084】
乳化可能な脂質は、好ましくは、食品用の乳化可能な脂質である。食品用の乳化可能な脂質の一例には、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ステアロイル乳酸カルシウム、およびステアロイル乳酸カルシウムが含まれる。乳化可能な脂質である食品用の脂肪酸エステルの例には、モノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル、モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ならびにモノグリセリドおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルが含まれる。脂質は、例えば、硬化ダイズ油を含んでもよい。
【0085】
本発明の方法および製品において任意の乳化可能な脂質を使用することができる。ある特定の態様では、使用された乳化可能な脂質によって、集塊せず、エアロゾル化されない酵素調製物粒子が生成される。
【0086】
他の態様において、前記方法は、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および他の神経学的状態を有する個体の治療において有用な、流動性の高いカプセル化された徐放性消化酵素調製物の調製に関する。前記方法は、a)乳化可能な脂質を1種類または複数の種類の添加物とブレンドして、ブレンドを得る工程;およびb)選別された消化酵素をブレンドによってコーティングして、消化酵素を含有するコアおよび乳化可能な脂質のブレンドを含有するコーティングを含有するカプセル化消化酵素を形成する工程を含む。
【0087】
図2に示したように、脂質により酵素をコーティングすると、酵素のサイズおよび形状がより均一になるが、未加工の酵素に関連したぎざぎざした端が少なくなり、カバーされた酵素に関連する流動性によって製造機械がサシェ/パウチに酵素を簡単に充填し、サシェへの過剰充填または過小充填が減るので投与が容易になり、製造が容易になる。単位用量包装によって、小児は多用量の缶/箱/または他の容器を開けにくくなる。三層の箔パウチまたはサシェによって、小児はサシェ/パウチを開けにくくなり、酵素を過剰に使用することが少なくなる。
【0088】
別の態様において、本発明は、脂質ブレンドを用いて消化酵素をコーティングすることによって、カプセル化された調製物からの消化酵素の放出速度を制御する方法に関する。前記方法は、乳化可能な脂質を1種類または複数の種類の添加とブレンドしてブレンドを得る工程、消化酵素をブレンドによってコーティングして、消化酵素を含有するコアおよび乳化可能な脂質のブレンドを含有するコーティングを含有するカプセル化消化酵素を形成する工程を含む。添加物の量が多くなるにつれて、溶媒に曝露された時のカプセル化調製物からの酵素の放出速度は遅くなる。別の選択肢では、添加物の量が少なくなるにつれて、溶媒に曝露された時のカプセル化複合物からの酵素の放出速度は速くなる。従って、コーティングの内容によってカプセルからの酵素の徐放が可能になる。
【0089】
乳化不可能な脂質は、前記の乳化に関連した化学的性質および/または物理的性質を有さず、任意の脂質、脂質由来材料、ろう、有機エステル、またはその組み合わせを含む。乳化不可能な脂質は一般的に単独で乳化しない。コーティングおよび構成脂質の特性によって乳化が可能な限り、乳化不可能な脂質は添加物として使用することができる。乳化不可能な脂質、例えば、トリグリセリドは、本発明の乳化可能な脂質とブレンドすることができる。乳化不可能な脂質は、動物、植物、無機質、または合成から得られもよい。乳化不可能な脂質は好ましくは水素添加されており、飽和してもよく、部分的に飽和してもよく、トリグリセリドを含むが、これに限定されない。好ましい態様において、コーティングは、膵臓酵素/消化酵素に適用されるモノグリセリドおよびトリグリセリドのブレンドを含有する。
【0090】
コーティングの乳化および酵素の放出を制御するために、本発明の乳化可能な脂質と共に1種類または複数の種類の添加物を含める。例えば、コーティングの乳化を制御するために、従って、複合物からの酵素の放出速度を制御(例えば、遅く)するために、添加物であるトリグリセリドをモノグリセリド(例えば、乳化可能な脂質)とブレンドすることができる。さらなる例として、酵素の放出速度を制御するために、1種類または複数の種類の添加物、例えば、ジグリセリドおよびトリグリセリドを乳化可能な脂質とブレンドすることができる。硬化植物油は、ダイズレシチンなどの乳化剤または他の成分を含有してもよい。
【0091】
消化酵素に適した脂質コーティングを選択する時に、機械的強度、融点、および疎水性を含む特性が考慮されることがある。融点が低く、極性が大きく、親水性のある脂質は促進保管安定性条件下でケーキングする産物となるので、一般的に、カプセル化にあまり適していない。例えば、硬化ダイズ油、硬化ひましろう、およびカルナウバろうを用いて作られた酵素調製物は全て良好な注入性を示し、ケーキングを示さなかった。
【0092】
ろうは、パラフィンろう;石油ろう;鉱ろう、例えば、オゾケライト、セレシン、もしくはモンタンろう;植物ろう、例えば、例えば、カルナウバ(carnuba)ろう、ベーベリろう、もしくはアマろう;動物ろう、例えば、例えば、鯨ろう;または昆虫ろう、例えば、蜜ろうでもよい。
【0093】
さらに、ろう材料は、12〜31個の炭素原子を有する脂肪酸のエステルおよび12〜31個の炭素原子を有する脂肪アルコールのエステルであって、24〜62の炭素原子含有量(carbon atom content)を有するエステル、またはその混合物でもよい。例には、ミリシルパルミテート、セチルパルミテート、ミリシルセロテート、セチルミリステート、セリルパルミテート(ceryl palmitate)、セリルセルテート(ceryl certate)、ミリシルメリスセート、ステアリルパルミテート、ステアリルミリステート、およびラウリルラウレートが含まれる。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、溶媒に曝露された時の、カプセル化複合物からの膵臓酵素/消化酵素の放出速度を制御するための方法を提供する。前記方法は、酵素をある量の乳化可能な脂質でコーティングして、カプセル化された膵臓酵素物質複合物を形成する工程を含む。ここで、カプセル化複合物の総重量に基づいて乳化可能な脂質の量が多くなるにつれて、カプセル化複合物からの酵素の放出速度は遅くなる。別の選択肢では、カプセル化複合物の総重量に基づいて乳化可能な脂質の量が少なくなるにつれて、カプセル化複合物からの膵臓酵素の放出速度は速くなる。この態様において有用な乳化可能な脂質は、1種類または複数の種類のモノグリセリドから本質的になってもよい。
【0095】
脂質が乳化する時の溶媒は水性溶媒でもよい。水性溶媒は、乳化可能な脂質に存在する親水基と相互作用し、コーティングの連続性を破壊することによって、水性溶媒とコーティング内の脂質との間でエマルジョンが生じ、従って、複合物から生理活性物質が放出される。
【0096】
神経学的状態または神経学的障害の治療のために膵臓酵素または消化酵素コアをカプセル化するのに用いられる本明細書における方法は以前に説明されたことがない。持続放出薬物の特徴を有し、安定性のために脂質カプセル化を利用した、ヒト摂取用の薬物を脂質カプセル化するための方法は以前に説明されていない。本明細書に記載の実験の前に、消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、および他の神経学的状態または行動状態を治療するために、胃腸管に沿った時間特異的および/または部位特異的な標的放出に適した、乳化可能な脂質のコーティングならびに消化酵素を含むカプセル化酵素調製物の調製を可能にするプロトコールは公表されていなかった。
【0097】
本開示の局面および態様は、乳化可能な脂質のコーティングおよび消化酵素を含むある特定の薬学的投与調製物が、胃腸管の様々な部分に沿って新規の高活性ならびに予想外の好ましい放出および溶解プロファイルおよび吸収キネティックパラメータを有することができるという驚くべき予想外の発見から来ている。これらの特徴は、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病および他の神経学的状態を治療するために、胃腸管に沿って部位特異的に標的放出するように特定の生理活性酵素を処方するのに有用である。
【0098】
被験体が、有効量の消化酵素による治療を必要とするかどうかの確定は、被験体が酵素欠損症を有することの確定に基づいてもよい。
【0099】
本発明の1つの局面において、前記方法は、本発明の酵素製剤を使用して、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、および他の神経学的疾患または神経学的状態を有し、酵素欠損症も有する小児および他の個体を治療する工程を含む。酵素欠損症は、酵素欠損症の確定または診断において用いられる任意の方法によって確かめることができる。1つの局面において、確定または診断は、食習慣、自己食事制限(self-imposed dietary restriction)、摂食障害の症状、および/または胃腸障害を含む症状を評価することによって行われてもよい。他の局面において、確定は、例えば、胃腸管に分泌される、胃腸管に排出される、もしくは胃腸管に存在する酵素のレベルもしくは活性を検出する生化学検査に基づいて、および/または1種類もしくは複数の種類の消化酵素をコードする遺伝子の変異もしくは遺伝子の異常発現の存在を確かめることによって行われてもよい。酵素欠損症はまた、例えば、1種類もしくは複数の種類の消化酵素の発現または活性を調節する産物、または1種類もしくは複数の種類の消化酵素の発現または活性に他の方法で影響を及ぼす産物をコードする遺伝子の変異または異常発現を検出することによって確かめられてもよい。
【0100】
ある局面において、治療しようとする個体は、共存症が存在するかどうか試験することもできる。共存症は、消化酵素の活性または発現に影響を及ぼさない共存症である。ある特定の局面において、臨床症状に基づいて自閉症を有するが、遺伝的共存症などの共存症を有さないと確かめられた個体は、本明細書に記載の酵素送達システムによって治療される。しかしながら、臨床症状に基づく自閉症および共存症を有すると確かめられたが、検査によってFCTレベルも異常に低かった、もしくはGI病原体の別の指標を用いて陽性でもあった、および/または消化酵素の活性もしくは発現も低かった個体も、本明細書に記載の酵素送達システムによって治療することができる。
【0101】
以下の共存症は例示的な共存症として示した:
脆弱X
ハーラーマン・ストライフ症候群
21トリソミー
9番染色体への転座(tranlocation)
ベックウィズ・ヴィーデマン症候群
21トリソミー
18トリソミー
ルビンスタイン・テイビ症候群
脆弱X
プラダー・ウィリー症候群
21トリソミー
レット症候群
クリッペル・フェイユ症候群
レット症候群
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
トゥレット症候群
子宮内脳卒中
21トリソミー
脆弱X
若年性関節リウマチ
子宮内脳卒中
6トリソミー
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
若年性糖尿病
I型糖尿病
副腎白質ジストロフィー
ウィルソン病
子宮内脳卒中
I型糖尿病
プラダー・ウィリー症候群
22q13
トゥレット症候群
脳回欠損
好中球免疫不全症候群
I型糖尿病
トゥレット症候群
18pテトラソミー
高IgE症候群
アンジェルマン症候群
I型糖尿病
レット症候群
脆弱X
マルファン症候群
ワールデンブルグ症候群
グルタチオン合成酵素欠損症
I型糖尿病
ルビンシュタイン・テイビ
アンジェルマン症候群
クラインフェルター症候群
出生時の脳出血
ターナー症候群
甲状腺機能低下症
I型糖尿病
未熟児の脳損傷
【0102】
1つの局面において、酵素欠損症の確定は、便キモトリプシンレベル試験を用いて行うことができる。PCRもしくは他の増幅、SNP検出、配列決定、および/またはDNAコーミング(DNA combing)などの方法を用いて、消化酵素をコードする1種類または複数の種類の遺伝子の発現を妨害する、変異の存在または短いRNA配列の存在を検出することができる。例えば、変異は、酵素活性を下げる、または酵素活性を無くす、消化酵素をコードする遺伝子の変異でもよい。別の例として、変異は、多面発現性MET受容体型チロシンキナーゼをコードする遺伝子であるMET遺伝子の変異でもよい。Campbell et al., PNAS 103(46), 16834-39 (2006)を参照されたい。これらの変異は、例えば、METプロモーター変異体rs1858830 C対立遺伝子および/もしくはMETシグナル伝達経路、例えば、SERPINE1遺伝子ハプロタイプの変異、またはrs 344781 PLAURプロモーター変異体T対立遺伝子を含んでもよい。
【0103】
本発明の酵素製剤は、酵素治療を必要とする、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、および他の神経学的疾患または神経学的状態を有する個体への消化酵素の送達において使用するのに適している。Fallonは、例えば、米国特許第7,138,123号、同第6,660,831号、同第6,632,429号、同第6,534,063号において、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、および他の神経学的疾患または神経学的状態を有する小児および他の個体の治療において使用するための、ある特定の方法および酵素組成物について述べている。米国特許第7,138,123号、同第6,660,831号、同第6,632,429号、同第6,534,063号は、本明細書において全体が示されるように参照により本明細書に組み入れられる。
【0104】
今から、添付の図面および実施例を参照して本発明をさらに完全に説明する。図面および実施例は、この要約、詳細な説明、ならびに具体的に議論された、または他の方法で開示された任意の好ましいおよび/もしくは特定の態様と一緒に読まれることが意図される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形で具体化されてもよく、本明細書において示された態様に限定されると解釈すべきでない。逆に、これらの態様は例示にすぎず、本開示が完璧で完全なものであり、本発明の全範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0105】
本明細書に記載の実験において、効力および特性を予想外に増強/強化するいくつかの要因が発見された。例えば、ダイズ油を含むある特定のカプセル化酵素調製物は、部特異的活性、放出/溶解プロファイル、ならびに製造、包装、および貯蔵の容易さの改善につながる、ある特定の驚くべき特徴を示すことが発見された。特定の操作理論に拘束されるものではないが、当業者であれば、これらの有利なパラメータを同様に生み出すことができる他の試料調製法および/または処方も本明細書において意図されることを認めるだろう。
【0106】
以下の実験は、本発明による例示的な手順について述べている。これらの実験および対応する結果は例示にすぎず、本発明の全範囲を限定すると解釈されるものは何もないと理解すべきである。例として、これらの研究は、本開示の例示的なカプセル化酵素調製物によって実現した予想外の改善の一部を証明する。
【実施例】
【0107】
実施例1:例示的なカプセル化消化酵素調製物の流動性および注入性の増大
本開示の例示的な方法および調製物が適用される前に、処理されていない未加工の酵素調製物(Scientific Protein Laboratories (SPL), Wanakee, WI)の検査から、図1に示した粒子の電子顕微鏡写真に示したように、粒径にかなりのばらつきあり、形が不規則であることが明らかになった。結晶性塩粒子の中には目で見えるものもあった。未加工の酵素は凝集するにつれて流動せず、表面が平らでなく、端がぎざぎざしているために測定しにくい。未加工の調製物はまた、適切なカプセル化には大きすぎる粒子と小さすぎる粒子を含んでいるので、さらに処理しなければ脂質カプセル化に適さない。ふるい分けられた酵素はサイズがさらに均一になったが、注入の間に平らでない表面および凝集を示し続ける。
【0108】
図2は、未加工の材料をふるい分けおよび脂質コーティングした後に生成されたコーティング酵素調製物を示す。本実施例において、粒子の形態は大幅に改善しており、表面が丸くなっている。これにより、流れおよび感覚器を刺激する特性が良好な、埃っぽくない製品が得られた。
【0109】
今や、酵素の形態は、表面が丸くなったために著しく改善している。これにより、埃っぽくなく、エアロゾル化せず、流れが良好であり、感覚器を刺激する特性が改善された製品が得られた。
【0110】
未加工の酵素調製物における粒子のサイズ分布を図3のグラフに示した。一般的に、大きな粒子(>40メッシュ)および非常に小さな粒子(<140メッシュ)は適切なカプセル化に適していない。カプセル化膵臓酵素調製物の流動性を高めるために、サイズ40〜140メッシュすなわち約106〜425ミクロンの粒子のみを含むように未加工の酵素粒子をふるい分けた。
【0111】
実施例2:例示的なカプセル化消化酵素調製物の安定性:温度保管
さらに例示的な態様では、複数のタイプおよび重量パーセントの脂質を使用して、ふるい分けられた酵素コアをコーティングした。膵臓酵素に適した脂質コーティングの選択において、機械的強度、融点、および疎水性を含む特性を考慮に入れた。複数の脂質コーティング例を以下で調べ、これらの物理的外観を25℃および40℃で調べた。従って、機械的強度、融点、および疎水性などのある範囲の物理的性質を有する脂質を膵臓酵素コーティングについて評価した。本実施例では、コーティングの融点の低下または親水性の増大は促進保管安定性条件下で固まる産物をもたらすので、カプセル化に適していないことが見出された。硬化ダイズ油、硬化ひましろう、およびカルナウバろうを用いて作られた、ふるい分けられ、カプセル化された酵素調製物は全て良好な注入性を示し、ケーキングを示さなかった。
【0112】
表1は、25℃および40℃で起こった目に見える物理的変化の結果を示す。
【0113】
(表1)

【0114】
硬化モノグリセリドおよびダイズ油/モノグリセリドブレンドはいずれも、高い方の温度でケーキングを示した。従って、融点が低い、または親水性の高いコーティングは、40℃での本発明者らの促進保管条件試験によって証明されたように長期間の保管条件下で固まる製品をもたらしたのでカプセル化に不適であったことが明らかである。
【0115】
硬化モノグリセリドおよびダイズ油/モノグリセリドブレンドはいずれも、高い方の温度でケーキングを証明した。従って、コーティングの融点を下げること、または親水性を高めることは、40℃での本発明者らの促進保管条件によって証明されたように長期間の保管条件下で固まる製品をもたらしたのでカプセル化に不適であったことが明らかである。
【0116】
実施例3:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化された消化酵素調製物:安定性の関数として測定された酵素活性
さらなる態様において、以下の方法に従って酵素安定性を確かめた。促進試験のために、標準的なICHガイドラインを使用した。コーティングされた調製物をプラスチック容器に入れ、40℃および75%相対湿度で湿度が管理されたキャビネットの中で保管した。酵素活性は、コーティング酵素調製物を粉砕し、適切な緩衝液に溶解して分散させ、リパーゼ活性を試験することによって測定した。
【0117】
(表2)密封容器の中に入れて40C/75%RHで保管された時のカプセル化酵素のパーセント安定性

【0118】
前記の表2にまとめたデータに示したように、ダイズ油80%は、全ての脂質に最大量の安定性を付与するように見えた。これは、驚いたことに、蓋のない容器より蓋のある容器に入れて保管した酵素調製物の方が大きかった作用である。蓋のない容器に入れて40℃で保管した75%相対湿度酵素調製物の安定性試験から、コーティング調製物の安定性とコーティングされていない調製物の安定性との間に有意差は無いことが分かった。
【0119】
実施例4:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化消化酵素調製物:複数の種類のダイズキャッピング化膵臓酵素の酵素活性および放出速度
さらなる態様において、カプセル化したものを、以下に記載の方法に従って調製した。40メッシュより小さいが、140メッシュより大きな粒子を得、細粒を取り除き、腸溶コーティングにに適したさらに均一な混合物を得るように、未加工の酵素材料をふるい分けた。
【0120】
以下の調製物を作製した。
70重量%の活性酵素と、標準的な安定したダイズコーティング;
80重量%の活性酵素と、標準的な安定したダイズコーティング;および
90重量%の活性酵素と、標準的な安定したダイズコーティング。
【0121】
それぞれのカプセル化酵素調製物における活性は、カプセル化したものを粉砕し、粉砕した材料を適切な緩衝液に溶解して分散させ、リパーゼ活性を試験することによって測定した。
【0122】
図4に示したように、コーティング調製物における酵素活性は、コーティングによって大きな活性消失を示さない(未加工の酵素材料の決まった酵素活性を基準として110%から100%活性に減少する)。
【0123】
酵素放出は、それぞれのカプセル化したものを、溶解装置に入れてpH6.0緩衝液に30分間、60分間、および90分間、懸濁することによって測定した(100rpm、USPガイドラインに従う)。図5に示したように、カプセル化したものは全て30分および60分で80〜90%の放出を示す。90分で、これらの調製物を用いて得られた酵素活性の測定値は減少する。
【0124】
実施例5:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化消化酵素調製物:複数の種類のダイズ油キャッピング化膵臓酵素の粒径
さらなる態様において、図6に示したように、70重量%または80重量%の活性膵臓酵素を含有し、ダイズ油によってカプセル化された調製物を、粒径に関して未加工の膵臓酵素材料と比較した。
【0125】
全ての脂質レベルが粒径への影響を証明している。80%PECは、200メッシュレベルで全く見られないので最も均一である。
【0126】
実施例6:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化消化酵素調製物:臭いおよび味
70重量%、80重量%、および90重量%の酵素を含有する例示的なカプセル化酵素調製物の味および臭いを、Sucanat(商標)およびブラウンシュガーならびに未加工の酵素と比較して確かめるために、これらを調べた。結果を以下の表4に示した。Sucanat(商標)は有機ホールフード甘味料である。
【0127】
(表4)

【0128】
実施例7:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化消化酵素調製物:製造
本発明の酵素調製物の作製において有用な製造プロセスを概説したフローチャートを図7に示した。
【0129】
例示的なカプセル化された膵臓酵素調製物のバッチの作製において用いられた成分は、20.0lbのふるい分けられた膵臓酵素および5.0lbの硬化植物油、例えば、ダイズ油を含んだ。
【0130】
最初に、膵臓酵素濃縮物を40USSSメッシュスクリーンに通してふるい分け、このメッシュを通過した材料を保管した。次いで、保管されていた材料を、140USSSメッシュスクリーン(または同等品)に通して選別した。このメッシュを通過しなかった材料を、ふるい分けられた膵臓酵素材料または粒子として保管した。
【0131】
カプセル化プロセスにおいて、適切なコーティング材料をメルトポットに充填し、噴霧プロセスのために110°Fにして、維持した。噴霧プロセスの間に適切な粘稠性をもたらす任意の温度を使用することができる。ある態様において、温度は、コーティングにおいて用いられる脂質の融点に基づいて、および/またはふるい分けられた膵臓酵素材料または粒子とコーティングとが接触した後に、酵素調製物の活性がほぼ同じになるようにさらに選択される。
【0132】
液化したコーティング材料を秤量し、スプレーポットに移す。ふるい分けられた膵臓酵素をカプセル化製造容器に加える。膵臓酵素粒子を、選択されたコーティングレベルまでコーティング材料によってカプセル化する。
【0133】
カプセル化材料を14USSSメッシュスクリーン(または同等品)によって選別し、このスクリーンを通過した材料を保管する。ふるい分け後に、材料を収集し、QCのために試料を取り出す。
【0134】
2つのサブバッチがブレンドされるのであれば、投入され選別された材料を適切なブレンダーに加え、7〜10分間ブレンドする。完成品試験のための試料を得る。カプセル化材料を大量包装し、試験結果が出るまで隔離室(quarantine)に置く。合格基準に達したら、完成品は品質グループによって配布される。後で、製品は指示に従って発送され得る。
【0135】
分析試験および微生物アッセイを含む完成品試験のために試料を収集する。試料は経時的に試験することができる。
【0136】
実施例8:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化消化酵素調製物:包装
さらに別のさらなる態様において、酵素の安定性はカプセル化が一因であり、三層箔の包装が一因である。以下は、単回投与サシェ/パウチ用の包装プロセスを証明する。
【0137】
まず最初に、製造後に、内側に食品用ポリエチレンバックが二重に張ってあるきれいなドラムに以下の製品を分注し、ドラムを密封する。仕様基準を満たしていれば、ロットを隔離室から配布し、次いで、患者への個々の投与のためにサシェに入れるために、材料を適切な包装業者に発送する。
【0138】
例えば、26#C1S Paper/7.5#LDPE/.0007''アルミニウム箔/15#とSurlynライナーからなるPD-73272 Printed Child Resistant(CR)パウチを包装に利用する。好ましくは、予め印刷されたフィルム/箔、外面印刷は、白地に1色のアイマーク(eye-mark)のあるものであり、ロット番号、使用期限、および製品コードのインライン印刷も1色、黒色である。サシェの全体の寸法は、W2.50''xH3.50''である。サシェは、±10%の公差で、パンクレリパーゼ脂質カプセル化製剤の顆粒900mgを単位投与パウチ/サシェに収納できるようなサイズである。最終製品のプロテアーゼ活性は156 USP単位/mg以上である。
【0139】
実施例9:膵臓酵素に適した例示的なカプセル化消化酵素調製物:溶解
様々なレベルの脂質コーティング(粒子総重量当たりの%脂質コーティングとして表した)を有する粒子を用いて、ダイズ油を含む脂質カプセル化粒子からのパンクレアターゼ(Pancreatase)の放出の影響を研究した。コーティングレベルは10%〜30%であった。この範囲の脂質コーティングが、60分にわたる粒子から水性環境へのパンクレアターゼの放出に及ぼす影響は大きくなかった。全ての製剤は、溶解開始後、最初の30分以内で酵素の80%以上を放出する。90%、80%、および70%の粒子の最大放出は、60分までにそれぞれ85%、88%、および83%であった。
【0140】
実施例10:自閉症を治療するための例示的な酵素送達システム
プロテアーゼ成分によるタンパク質消化が起こる近位小腸における酵素放出に適するように、放出プロファイルに基づいて、70%〜90%のカプセル化膵臓酵素調製物(重量での活性酵素)が選択された。
【0141】
治療されている自閉症患者および自閉症小児において脂質コーティングに対するアレルギー反応の可能性を最小限にする、または無くすために、ダイズ油にはタンパク質成分が無く、それに対応して抗原性が無いので、ダイズ油を脂質コーティングとして選択した。
【0142】
70〜90%の調製物を使用すると注入性および流動性が高まると同時に、エアロゾル化が小さくなるので、サシェまたはパウチ送達システムの使用が可能になる。
【0143】
三層箔の収納容器を加えると、確実に、スプリンクル製剤は安定し、輸送可能になり、一体型投与機構によって送達される。
【0144】
低リパーゼ製剤はまた、結腸狭窄の可能性を小さくすることによって安全性を可能にし、酵素のプロテアーゼ部分の利用を高める。
【0145】
(表5)LUMINENZ-ATカプセル化消化酵素調製物、900mgサシェの組成

【0146】
原薬である膵臓酵素濃縮物(ブタ由来)は適切な供給業者から購入した。本発明の製品における使用に適した膵臓酵素濃縮物(パンクレアチン/パンクレリパーゼ)の特性を以下の表に記載した。
【0147】
(表6)

*75U/mgプロテアーゼ、6U/mgリパーゼ、または75U/mgアミレートより少なければ、仕様はNMT3.0%である。
【0148】
硬化植物油(ダイズ油)の仕様
物理的外観および感覚上の特徴:
材料はフレークまたは散剤の形で提供され、異物および不快な臭気が無い。
【0149】
(表7)

【0150】
実用標準、希釈剤、移動相B、およびプラセボのクロマトグラムは標準ピークとの干渉が無いことを証明している(図9のクロマトグラムを参照されたい)。分析用プラセボおよび活性錠剤組成物を表8に示した。
【0151】
(表8)

【0152】
プラセボマトリックスの存在下で標準的な濃度のいくつかの試料レベルを分析することによって直線法(method linearity)を評価した。これらのレベルは、50%、70%、100%、130%、および150%であった、各試料の3回の注射剤を用いて、このレベルの平均応答(面積/濃度)を計算した。次いで、得られた応答比の相対標準偏差を、平均ピーク面積対濃度の最小二乗線形回帰統計値と共に計算した(表9および表10を参照されたい)。平均ピーク面積対濃度のプロットと線形回帰線を図10に示した。
【0153】
(表9)

【0154】
(表10)

【0155】
実施例11:生化学バイオマーカーならびに自閉症の行動コア症状および非コア症状
臨床(行動)症状に基づいて自閉症と診断された小児において、自閉症小児における消化酵素欠損症との相関関係を確かめた。自閉症および遺伝的共存症があると診断された小児においても、この相関関係を確かめた。自閉症小児がタンパク質の自己食事制限をしていると最初に発見した後で、異常に低い便キモトリプシン(FCT)レベルが自閉症バイオマーカーとして有用であることを示す研究を行った。
【0156】
さらに、バイオマーカー測定値および臨床症状に基づいて、膵臓酵素補充に応答した自閉症患者の数も求めた。胃腸系の変化ならびに自閉症のコア症状の変化を調べた。以下の表は、複数の医師に基づく場所において行われた研究概要を示す。
【0157】
(表11)

【0158】
初期観察は、ほぼ全員の自閉症小児による自己食事制限の観察に基づいた。次いで、自閉症小児のタンパク質消化能力を評価する複数の研究を行った。タンパク質消化の生理研究によって、消化酵素、特に、タンパク質分解に関与する消化酵素、例えば、キモトリプシンからなる胃腸系カスケードが調べられた。機能不全の尺度として、自閉症小児において便キモトリプシン(FCT)レベルが異常に低いことが確かめられた。
【0159】
研究1
この初期研究は、自閉症小児の小さなコホートの便キモトリプシン(FCT)レベルが実際に異常に低い(<9.0)かどうかどうか確かめる試験的研究であった。研究001の結果を図10に示した。
【0160】
9人全員の自閉症小児が、7単位/グラム未満の異常に低いFCTレベルを示した。(正常>9.0)。小さな小児集団において、この観察がなされたことで、今まで発見されたことのなかった自閉症との生理学的関係の可能性をさらに調べた。
【0161】
研究2
自閉症小児(26人の小児)のさらに大きなコホートも異常に低いFCTレベルに罹患しているかどうか確かめるために、研究2を行った。膵機能不全において低量で存在する別の膵臓消化酵素である便エラスターゼ-1のレベルも確かめた。今回も、26人の小児のうち25人において、8U/g以下とFCTレベルが異常に低かった。1人の小児のFCTレベルは9U/gであった。他方で、便エラスターゼ-1レベルは全員の小児において正常であった。
【0162】
研究3
研究3では、25人の自閉症小児、21人の自閉症のない小児からなる46人の2歳〜14歳の小児においてFCTレベルを確かめた。このデータから、自閉症小児のFCTレベルは異常に低く、自閉症のない小児のFCTレベルは12U/g以上で正常であることが証明された。結果を図12にまとめた。図12の一番上の線は、自閉症のない被験者のFCTレベルを示すのに対して、一番下の線は自閉症被験者のFCTレベルを示す。
【0163】
研究4
研究4では、自閉症および共存症遺伝的障害と診断された54人の小児のFCTレベルを調べた。データから、自閉症および共存症遺伝的障害のある小児のFCTレベルは正常であることが分かった。
【0164】
自閉症は行動評価によって確かめられるので、既知の遺伝的障害による自閉症または既知の遺伝的障害と共存する自閉症は、自閉症のみを有する人または既知の遺伝的障害によるものではない自閉症を有する人とは異なる生理を有する可能性があると仮説を立てた。典型的な症状のある遺伝的障害もあれば、自閉症の総体症状と重複し、変動する遺伝的障害もあり得る。この研究では、別の既知の状態とも診断された自閉症小児においてFCTレベルが異常に低いかどうか確かめるために、これらの小児を調べた。
【0165】
以下の表12は、遺伝的共存症も有する、自閉症と診断された54人の小児を示す。
【0166】
(表12)遺伝的共存症も有する、自閉症と診断された小児


【0167】
自閉症および遺伝的共存症の両方と診断された54人の小児のうち2人のみで、FCTレベルは異常に低かった。これらの小児はI型糖尿病であった。54人の小児のうち52人のFCTレベルは正常範囲であった。
【0168】
このことは、別の既知の遺伝的病的状態の非存在下で自閉症と診断された小児において低FCTレベルが存在することを裏付けている。
【0169】
研究5
研究5では、自閉症と診断された266人の小児および自閉症が無いと診断された197人の小児からなる2歳〜8歳の463人の小児についてFCTレベルを、複数の病院の医師が行った研究において確かめた。データから、自閉症小児の便キモトリプシンレベルは異常に低く、自閉症のない小児の便キモトリプシンレベルは正常であることが分かった。
【0170】
データを以下の表13にまとめた。
【0171】
(表13)自閉症小児または自閉症のない小児における便キモトリプシンレベルの平均

【0172】
このデータから、自閉症と診断され、既知の遺伝的共存症を有さない小児のFCTレベルは異常に低いことがさらに確証された。従って、(共存症がI型糖尿病でない限り)小児に既知の遺伝的共存症が無ければ、FCTレベルは自閉症小児の診断において有用であり得る。
【0173】
キモトリプシンは膵臓酵素である。キモトリプシンはセリンプロテアーゼであり、消化プロセス中に必須アミノ酸のみを切断する点で独特である。具体的には、キモトリプシンは、芳香族アミノ酸のカルボキシル側にあるペプチド結合を切断する。異常なFCTレベルによって証明されるようにタンパク質消化が無いと、小児は、新たなタンパク質合成に利用可能なアミノ酸が欠乏する。十分なレベルの必須アミノ酸が無ければ、様々な身体機能に必要な新たなタンパク質は合成することができない。例えば、神経学的プロセスに関与するタンパク質が不足および欠乏すると、自閉症の症状が現われる可能性がある。
【0174】
研究6
研究6では、64人の自閉症小児、64人のADD小児、64人のADHD小児、64人の既知の遺伝的状態の小児、および64人の正常小児(既知の状態なし)からなる320人の2歳〜18歳の小児について、FCTレベルを確かめた。データから、自閉症小児、ADD小児、およびADHD小児のFCTレベルは、既知の遺伝的状態の小児および正常小児と比較して異常に低いことが分かった。複数の状態を有する同年齢小児の複数の病院での臨床試験中に、FCTデータを集めた。図13は、自閉症小児、ADHD(注意欠陥多動障害)小児、ADD(注意欠陥障害)小児、自閉症とも診断された既知の遺伝的障害の小児、または既知の状態の無い小児(正常)からなる6歳〜18歳の5つの別個の群におけるFCTレベルを示す。
【0175】
図13の上から2つの線は、既知の状態の無い小児におけるFCTレベルならびに既知の共存症状態(遺伝的共存症およびその他)のある小児におけるFCTレベルに対応する。下から3つの線は、自閉症小児、ADD小児、およびADHD小児におけるFCTレベルに対応する。
【0176】
自閉症小児、ADD小児、およびADHD小児のFCTレベルは、既知の状態が全く無い小児または既知の遺伝的共存症もしくは外傷状態を有する小児のFCTレベルより有意に低かった(p<0.01)。
【0177】
研究7
研究7では、自閉症と診断され、FCTレベルが異常に低い33人の小児を研究に登録した。小児を、2種類の膵臓酵素/消化酵素サプリメントの1つによって治療するか、治療しなかった。時間0、30日目、60日目、90日目、および120日目に、小児1人1人のFCTレベルを測定した。
【0178】
11人の小児に、低治療量のULTRASE(登録商標)MT20(パンクレリパーゼ)カプセルを与えた(開封して食物に振りかけた)(以下を参照されたい)。11人の小児に、1/4ティースプーンの最小投与レベルのViokase(登録商標)(パンクレリパーゼ)散剤を、食物に振りかけて与えた。11人の小児の便キモトリプシンレベルを測定した。小児は全員、同年齢であり、共存症の神経学的診断および/または遺伝的診断は無かった。
【0179】
それぞれのULTRASEカプセルは経口投与され、以下を含むブタ膵臓濃縮物の腸溶性ミニタブレット371mgを含有していた。
リパーゼ.....................20,000 U.S.P.単位
アミラーゼ...................65,000 U.S.P.単位
プロテアーゼ.................65,000 U.S.P.単位
【0180】
0.7g(1/4ティースプーンフル)のViokase散剤はそれぞれ、
リパーゼ、USP単位16,800
プロテアーゼ、USP単位70,000
アミラーゼ、USP単位70,000
を含有していた。
【0181】
酵素治療を受けなかった小児と比較して、酵素製剤による治療に応答してFCTレベルが変化するかどうか確かめるために、FCTレベルを120日にわたってモニタリングした。120日にわたって測定されたFCTレベルの結果を以下の表14に示した。
【0182】
(表14)ベースライン、複数の種類の膵臓酵素補充を投与した30日後、60日後、90日後、および120日後での便キモトリプシンレベルの平均

【0183】
結果を図14の棒グラフに示した。各時点の一番上のバー(非常に薄いバー)は、治療を受けなかった小児のFCTレベルを示す。真ん中のバーは、Viokaseによる治療を受けた小児のFCTレベルを示し、各時点の一番上のバーは、Ultrase治療後のFCTレベルを示す。この表にあり、図14のグラフに示した結果から、FCTレベルの有意な変化は、時間0のベースラインから120日までViokase腸溶性酵素製剤の投与後のみ見られたことが分かる。最大の変化は最初の90日で見られた。最初の90日での変化は、90日〜120日の間に見られた変化と比較して有意であった。Ultrase群はベースラインから120まである程度の変化を示したが、変化は有意でなかった。
【0184】
Ultraseの中にあるリパーゼは、pH変化および酸性条件、例えば、胃の中に見られる酸性条件における分解に対して非常に感受性が高い。Ultraseを腸溶コーティングすると、酵素は胃を迂回することができる。Ultraseは、膵臓酵素欠損症に罹患している嚢胞性線維症および慢性膵炎の成人を治療するのに十分なリパーゼの送達に有用なことが示されている。しかしながら、Ultraseおよび他の類似製品に腸溶コーティングをしても、これらの組成物のプロテアーゼ部分は、タンパク質分解のためにプロテアーゼが必要な近位小腸に明らかに送達されない。小規模の試験的研究において証明されたように、Ultraseは、酵素のプロテアーゼ部分、具体的にはキモトリプシンを放出しなかった。これは、Ultrase投与後に測定されたFCTレベルによって確かめられた。Ultrase治療群におけるFCTレベルは、非治療群において見られたFCTレベルとほぼ同じであった。
【0185】
酵素のプロテアーゼ部分に最適な送達タイミングおよび位置は、食物の塊が胃の中にある時間の後半部分から、消化中の食物が近位小腸にある時間までである。
【0186】
研究8
研究8では、25人の自閉症小児および17人の自閉症も他の共存症状態も無い小児からなる42人の同年齢小児を、複数の病原体ならびにFCTレベルを含む胃腸機能不全マーカーが存在するかどうか便検査を用いて調べた。自閉症小児に存在する便病原体の数は多く、FCTレベルは異常に低かった。
【0187】
この小さな試験的研究は、自閉症小児の胃腸細菌叢と自閉症のない小児の胃腸細菌叢を調べるために行った。これらの小児において異常な胃腸症状があるかどうか確かめるために、胃腸健康状態の複数のマーカーを調べた。
【0188】
25人の自閉症小児および17人の自閉症も他の共存症状態も無い小児からなる42人の同年齢小児を、複数の病原体ならびに胃腸機能不全マーカーが存在するかどうか便検査を用いてスクリーニングした。当業者に公知の他のGI病原体または便マーカーもGI機能不全マーカーとして検査することができる。以下の表15は、GI病原体または他の便マーカーが存在する率を示す。
【0189】
(表15)胃腸機能不全を示す病原体および他の便マーカーが存在する率

【0190】
自閉症小児において、低い便キモトリプシンレベルを含む陽性便マーカーが存在したことから、自閉症患者において、さらなる胃腸問題があることが分かった。
【0191】
研究9
研究9では、FCTレベルが異常に低い、自閉症と診断された3〜8歳の68人の小児に、膵臓酵素/消化酵素の組み合わせを90日間投与した。結果から、自閉症のコア症状および非コア症状を示す5つの領域のうち5つにおいて有意な改善が証明された。
【0192】
この研究において、自閉症小児の総体症状の複数の領域の検査には、胃腸症状ならびに自閉症のコア症状が含まれた。自閉症小児は経時変化せず、自閉症の程度は小児の年齢に関係なく変化しないことが文献に詳細に残されている。さらに、自閉症小児に成熟変化は伴わないと考えられている。
【0193】
この研究では、FCTレベルが異常に低い、自閉症と診断された3〜8歳の68人の小児に、90日間にわたって1回の食事につき1/4ティースプーンフルのViokaseおよびパパイヤ酵素咀嚼錠(Original Papaya Enzyme Brand)を投与した。
【0194】
ORIGINAL PAPAYA ENZYME
サプリメントの情報
1食分の分量:3個の錠剤
容器1個あたりの量:33個

*2,000カロリーの食事をベースとする
**1日の摂取量は確立していない
【0195】
医師および親に、本研究において調べられた各症状について評価スケールを完了したか尋ねた。各症状を、以下のスケールにおいて、小児がタスクを遂行できることを示し、それによって機能低下が無いことを証明する(0)から、小児がタスクを完全に遂行できないことを示す(10)まで評価した。多動または強迫性挙動などの望ましくない挙動に関して、低スコアから高スコアの変化は、小児が望ましくない挙動を低頻度で示しているので改善を示している。評価スケールは以下の通りであった。
10 小児がこのタスクを遂行する能力は0%
9 小児は、10%の確率でこのタスクを遂行することができる
8 小児は、20%の確率でこのタスクを遂行することができる
7 小児は、30%の確率でこのタスクを遂行することができる
6 小児は、40%の確率でこのタスクを遂行することができる
5 小児は、50%の確率でこのタスクを遂行することができる
4 小児は、60%の確率でこのタスクを遂行することができる
3 小児は、70%の確率でこのタスクを遂行することができる
2 小児は、80%の確率でこのタスクを遂行することができる
1 小児は、90%の確率でこのタスクを遂行することができる
0 小児は、100%の確率でこのタスクを遂行することができる
【0196】
それれぞれの間隔:ベースラインおよび90日において測定された2つのスコアの平均。得られたスコアを以下の表16に示した。
【0197】
(表16)消化酵素の投与前および投与後の自閉症小児の症状スコア

【0198】
自閉症のコア症状を研究するためにCARSスコアが用いられている。研究9では、自閉症のコア症状および非コア症状の測定値(多動、強迫性挙動、アイコンタクト、話、部分的なトイレトレーニング)を得た。細心の注意を払って、自閉症のコア症状の行動評価に基づいて自閉症が診断されたが、研究から、トイレトレーニングが無いことなど他の非コア症状は、この集団における有意な罹患率につながることが分かっている。この研究において測定された5つのパラメータから、トイレトレーニング、アイコンタクト、および話の増加、ならびに多動および強迫性挙動の減少は、消化酵素による治療によって改善されたコア症状および非コア症状であることが分かった。
【0199】
研究10および研究11
研究10および11では、便キモトリプシンレベルが異常に低い225人の2〜4歳の小児および171人の5〜11歳の小児に、膵臓酵素/消化酵素の組み合わせを、1日3回、150日間、投与した。自閉症の総体症状(symptomotology)のうち9つ全てのコアおよび非コアの測定値をベースラインで、および150日間にわたって得た。全ての年齢レベルにわたって、コア症状および非コア症状の改善を示す有意な変化が見られた。最大の変化は最初の90日にわたって起こった。
【0200】
これらの研究はそれぞれ研究9のプロトコールと同様に行った。小児を2〜4歳の年齢群および5〜11歳の年齢群に分けた。これらの研究では、便キモトリプシンレベルが異常に低い、以前に自閉症と診断された225人の2〜4歳の小児および171人の5〜11歳の小児に、150日間にわたって、1回の食事につき1/4ティースプーンフルのViokaseおよびパパイヤ酵素咀嚼錠(Original Papaya Enzyme Brand)を投与した。研究9において用いられた同じ評価スケールを、これらの2つの研究において利用した。さらに、トイレトレーニング、手のばたつかせ、遊びの習慣、および習慣づけられた排便の程度を評価した。変化を示したコホートの%も計算した。この研究を150日に延長した。90日目と150日目との間で有意性は見られなかった。
【0201】
以下の表17は、多動、強迫性挙動、手のばたつかせ、アイコンタクト、話、部分的なトイレトレーニング、完全なトイレトレーニング、習慣づけられた排便、および他人と仲良く遊ぶ能力を含む、指示された形質または挙動を示した各群における小児のパーセントのために得られた測定値を示す。
【0202】
(表17)酵素補充後に形質または症状のあるパーセント(%)

【0203】
研究9、10、および11において、自閉症のコア症状および非コア症状の測定値が得られた。細心の注意を払って、自閉症のコア症状の行動評価の結果として自閉症が診断されたが、他の非コア症状は、この集団における有意な罹患率につながる。。例えば、トイレトレーニングおよび習慣づけられた排便が無いことは、親に苦難をもたらし、多くの場合、社会的融合の欠如につながり、さらには自閉症のコア症状の一因となる。自閉症の非コア症状による、このさらなる孤立は、小児が学習する能力および社会的に融合する能力をさらに妨げる。この変遷パターン(dynamic)は、この集団に絶え間なく存在する。この作用は、自閉症のコア症状の大きな促進要因である。このことは、これらの非コア症状も自閉症の指標として有用であり得ることを証明している。
【0204】
実施例12:自閉症の治療において用いられる酵素送達システム
本発明によるカプセル化消化酵素調製物を、900mg/パウチを含有するパウチに入れて包装し、投与の直前に1個のパウチの内容物を食物に振りかけることによって、カプセル化消化酵素調製物を必要とする患者に投与し、1日に3回投与した。患者が、カプセル化消化酵素調製物、例えば、本発明のカプセル化消化酵素調製物を含む消化酵素による治療の投与を必要とするかどうかは、任意の検査、または消化酵素欠損症のマーカーとして有用な指標を用いて確定することができる。この確定は、例えば、FCTレベル、行動症状(自閉症のコア症状もしくは非コア症状)、または消化酵素の活性および/もしくは発現に影響を及ぼす遺伝子変異、例えば、MET遺伝子変異の検出を用いて行われる。
【0205】
治療期間の前後に、患者の状態または疾患の関連症状を測定する。アイコンタクト、話、部分的なトイレトレーニング、完全なトイレトレーニング、習慣づけられた排便、および他人と仲良く遊ぶ能力を示した患者のパーセントは60日でまたは60日より前に増加し、150日でさらに増加する。本発明の消化酵素による治療の際に観察された変化は、さらに短い時間経過にわたって起こる、ならびに/または任意の所定の時点での各個体におけるさらに大きな改善、および/もしくは治療された個体のさらに大きなパーセントにおけるコア症状および非コア症状の改善をもたらす。さらに、それに応じて、60日で多動、手のばたつかせ、または別のOCDの減少を示した患者の数は増加し、さらに、150日でこれらの挙動の減少を示した患者の数は増加した。
【0206】
自閉症の他のコア症状、例えば、CARS検査において測定されるコア症状も観察され、治療後に改善することが示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、カプセル化された消化酵素調製物:
(a)消化酵素粒子を含有するコア;および
(b)乳化可能な脂質を含み、コアを連続的にコーティングするコーティングであって、該乳化可能な脂質は溶媒に曝露されると乳化し、酵素は調製物中に前記粒子の約5〜95重量%の量で存在する、コーティング。
【請求項2】
コアが、膵臓酵素または消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の神経学的状態もしくは行動障害に罹患している被験体を治療するのに有効な量の膵臓酵素または消化酵素をさらに含む、請求項1記載の調製物。
【請求項3】
コアが少なくとも約105μm〜最大で約425μmのコアである、請求項1記載の調製物。
【請求項4】
コアが最大で40メッシュおよび少なくとも140メッシュになるようにふるいにかけられている、請求項1記載の調製物。
【請求項5】
調製物がエアロゾル化されない、請求項1記載の調製物。
【請求項6】
脂質が、硬化ダイズ油、硬化ひましろう、およびカルナウバろうより選択される、請求項 1記載の調製物。
【請求項7】
pH6.0で行われる溶出試験において酵素の少なくとも約80%が30分までに放出される、請求項1記載の調製物。
【請求項8】
コーティングが1種類または複数の種類のモノグリセリドから本質的になる、請求項1記載の調製物。
【請求項9】
コーティングがモノグリセリドを含む、請求項1記載の調製物。
【請求項10】
膵臓酵素または消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の神経学的状態もしくは行動障害に罹患している被験体を治療するのに有効な量の膵臓酵素または消化酵素を含むコア;および
乳化可能な脂質を含むコーティング
を含む、カプセル化された酵素調製物の治療的有効量を含む、薬学的組成物。
【請求項11】
カプセル、錠剤、腔坐剤、坐剤、カシェ剤、咀嚼錠、バッカル錠、舌下錠、速溶解性錠剤、発泡錠、顆粒剤、ペレット、ビーズ、丸剤、サシェ、スプリンクル、フィルム、ドライシロップ、再構成可能な固体、懸濁液、ロゼンジ、トローチ、インプラント、散剤、倍散剤、小板、または細片の形態である、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
粒子の約5〜95重量%の量で存在する膵臓酵素または消化酵素を含むコア;および
乳化可能な脂質を含み、酵素の徐放を提供する概して均一なコーティング
を含む、カプセル化された酵素調製物であって、
前記粒子がエアロゾル化されない、酵素調製物を含む、酵素送達システム、。
【請求項13】
コアが、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および/または他の神経学的状態に罹患している被験体を治療するのに有効な量の膵臓酵素または消化酵素をさらに含み、該酵素は粒子の約5〜95重量%の量で存在する、請求項12記載の酵素送達システム。
【請求項14】
カプセル化された酵素調製物の中に、約5、30、または50重量%で乳化可能な脂質が存在する、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項15】
カプセル化された酵素調製物に存在する膵臓酵素または消化酵素の量が、カプセル化された酵素調製物の約5〜95重量%である、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項16】
カプセル化された酵素調製物に存在する酵素の量が、カプセル化された酵素調製物の約80重量%である、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項17】
カプセル化された複合物に存在する酵素の量が、カプセル化された酵素調製物の約70重量%である、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項18】
カプセル化された複合物に存在する酵素の量が、カプセル化された酵素調製物の約70〜90重量%であり、かつ乳化可能な脂質が硬化ダイズ油、硬化ひましろう、またはカルナウバろうである、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項19】
カプセル化された酵素調製物が粒子を含み、かつさらに、カプセル化された酵素調製物の中にあるカプセル化された酵素調製物粒子の少なくとも約90%のサイズが約#40〜#140メッシュすなわち約105〜425μmであるか、または粒子の少なくとも約75%が約#40〜#80メッシュすなわち約180〜425μmである、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項20】
カプセル化された酵素調製物が粒子を含み、かつさらに、カプセル化された酵素調製物粒子の約20%未満または約15%未満が、#100メッシュすなわち約150μmによってふるい分けることができる、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項21】
サシェまたはパウチをさらに含む、請求項12記載の酵素送達システム。
【請求項22】
乳化可能な脂質が少なくとも1つの親水基および少なくとも1つの疎水基を含む、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項23】
脂質が親水性および疎水性の界面を形成することができる、請求項22記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項24】
界面がミセル界面である、請求項23記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項25】
界面が二重層界面である、請求項24記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項26】
乳化可能な脂質が動物または植物起源に由来する、請求項22記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項27】
脂質が、パーム核油、ダイズ油、綿実油、キャノーラ油、および家禽脂、硬化ダイズ油、硬化ひましろう、ならびにカルナウバろうからなる群より選択される、請求項26記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項28】
乳化可能な脂質が、水素添加されているか、飽和しているか、または部分的に飽和している、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項29】
乳化可能な脂質が硬化ダイズ油から本質的になる、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項30】
乳化可能な脂質が、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、脂肪酸のエステル、リン脂質、その塩、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項31】
乳化可能な脂質が食品用の乳化可能な脂質である、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項32】
食品用の乳化可能な脂質が、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ステアロイル乳酸カルシウム、またはステアロイル乳酸カルシウムを含む、請求項31記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項33】
脂肪酸エステルが、モノグリセリドおよびジグリセリドの酢酸エステル、モノグリセリドおよびジグリセリドのクエン酸エステル、モノグリセリドおよびジグリセリドの乳酸エステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、ならびにモノグリセリドおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステルからなる群より選択される、請求項22記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項34】
pH6.0で行われる溶出試験において酵素の少なくとも約80%が30分までに放出される、請求項10または12記載の薬学的組成物または酵素送達システム。
【請求項35】
コアが、カプセル化、圧縮、押出し、または成形からなる群より選択される技法によって処理される、請求項1、10、または12記載の酵素調製物、薬学的組成物、または酵素送達システム。
【請求項36】
溶媒に曝露された時の、カプセル化された消化酵素調製物からの消化酵素の放出速度を制御するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)消化酵素粒子を提供する工程、
(b)消化酵素粒子を乳化可能な脂質でコーティングして、カプセル化された消化酵素調製物を形成する工程であって、pH6.0で行われる溶出試験において酵素の約80%が30分までに放出される、工程。
【請求項37】
溶媒に曝露された時の、カプセル化された複合物からの消化酵素の放出速度を制御するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)消化酵素粒子を提供する工程、
(b)乳化可能な脂質を、ある量の1種類または複数の種類の添加物とブレンドして、脂質ブレンドを得る工程;および
(c)消化酵素粒子を脂質ブレンドによってコーティングして、カプセル化された消化酵素調製物を形成する工程であって、乳化可能な脂質および添加物は同じではなく、かつ添加物の量が多くなるにつれて、カプセル化された複合物からの消化酵素の放出速度は遅くなる、工程。
【請求項38】
溶媒に曝露された時の、カプセル化された複合物からの消化酵素の放出速度を制御するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)消化酵素粒子を提供する工程;
(b)乳化可能な脂質を、ある量の1種類または複数の種類の添加物とブレンドして、脂質ブレンドを得る工程;ならびに
(c)消化酵素粒子を脂質ブレンドでコーティングして、カプセル化された消化酵素調製物を形成する工程であって、乳化可能な脂質および添加物は同じではなく、かつ添加物の量が少なくなるにつれて、カプセル化された複合物からの消化酵素の放出速度は速くなる、工程。
【請求項39】
乳化可能な脂質が硬化ダイズ油である、請求項36〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
粒子が少なくとも約105μm〜最大で約425μmの粒子である、請求項36〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
溶媒に曝露された時の、カプセル化された消化酵素調製物からの消化酵素の放出速度を制御するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)消化酵素粒子を提供する工程、
(b)消化酵素粒子を乳化可能な脂質によってコーティングして、カプセル化された消化酵素調製物を形成する工程であって、カプセル化された消化酵素調製物は本質的に約150μm未満の粒子からなる、工程。
【請求項42】
消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の行動状態もしくは神経学的状態を有する被験体に、
(a)消化酵素を含むコア;および
(b)乳化可能な脂質を含むコーティング
を含む、カプセル化された消化酵素調製物の治療的有効量を含む、少なくとも2用量の組成物を投与する工程を含む、治療方法。
【請求項43】
消化酵素による治療に感受性の、自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、または他の行動状態もしくは神経学的状態を有する被験体に、消化酵素を、少なくとも2用量のカプセル化された酵素調製物を投与する方法であって、pH6.0で行われる溶出試験において酵素の約80%が30分までに放出される、方法。
【請求項44】
カプセル化された消化酵素調製物を含むサシェまたはパウチを、それを必要とする患者に投与する方法であって、以下の工程を含む方法:
サシェまたはパウチに入れた強化調製物を提供する工程であって、調製物は、食物または飲料に添加することによって、口腔への直接投与を介して、あるいは経鼻胃(NG)管、胃(G)管、または他の胃腸(GI)への入口もしくは送達を介して胃腸(GI)系に直接投与することによって投与される、工程。
【請求項45】
カプセル化された消化酵素調製物が1種類の賦形剤しか含有せず、それによって、投与の安全性が上昇する、請求項42〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
賦形剤が硬化ダイズ油である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
カプセル化された消化酵素調製物が低アレルギー性である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
消化酵素による治療に感受性の個体が酵素欠損症を有する、請求項44記載の方法。
【請求項49】
生化学マーカーを用いて、個体が酵素欠損症を有するかどうかが決定される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
生化学マーカーがFCTレベルである、請求項49記載の方法。
【請求項51】
生化学マーカーがMET遺伝子変異である、請求項49記載の方法。
【請求項52】
個体が胃腸機能不全の病原性マーカーを有する、請求項48記載の方法。
【請求項53】
自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および他の神経学的状態を有する個体の治療において有用な、流動性の高いカプセル化された徐放性消化酵素調製物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)コーティングされていない消化酵素粒子を選別して、カプセル化に適したサイズの粒子を得る工程;および
(b)選別された消化酵素粒子を乳化可能な脂質によってコーティングして、消化酵素を含有するコアおよび乳化可能な脂質を含有するコーティングを含有するカプセル化された消化酵素を形成する工程。
【請求項54】
自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および他の神経学的状態を有する個体の治療において有用な、カプセル化された徐放性消化酵素調製物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)約105〜450ミクロンの消化酵素粒子を得る工程;および
(b)膵臓酵素/消化酵素を乳化可能な脂質によってコーティングして、膵臓酵素/消化酵素を含有するコアおよび乳化可能な脂質のブレンドを含有するコーティングを含有する、カプセル化された膵臓酵素/消化酵素を形成する工程。
【請求項55】
40メッシュおよび140メッシュを用いて消化酵素粒子をふるい分けることによって、選別された酵素粒子が得られる、請求項53記載の方法。
【請求項56】
40メッシュおよび140メッシュを用いて消化酵素粒子をふるい分けることによって、酵素粒子が得られる、請求項54記載の方法。
【請求項57】
乳化可能な脂質が硬化ダイズ油である、請求項53または54記載の方法。
【請求項58】
自閉症、ADD、ADHD、パーキンソン病、嚢胞性線維症、および他の神経学的状態を有する個体の治療において有用な、カプセル化された徐放性消化酵素調製物を調製する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)乳化可能な脂質を1種類または複数の種類の添加物とブレンドして、ブレンドを得る工程;
(b)選別された消化酵素粒子を得る工程;
(c)膵臓酵素/消化酵素を脂質ブレンドによってコーティングして、膵臓酵素/消化酵素を含有するコアおよび乳化可能な脂質のブレンドを含有するコーティングを含有する、カプセル化された膵臓酵素/消化酵素を形成する工程;ならびに
(d)噴霧プロセスの間に周期的な時間間隔でバッチおよび油の温度を調整し、それによって、該プロセスの間に最適な噴霧条件が維持される工程。
【請求項59】
選別された酵素粒子が約105〜450ミクロンである、請求項58記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−523462(P2012−523462A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506131(P2012−506131)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/030895
【国際公開番号】WO2010/120781
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(511163469)キュアマーク リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】