説明

酵素配合洗顔パウダー

【課題】配合成分である酵素に対する優れた安定性、優れた起泡性、優れた使用感、および皮膚への低刺激性を具備する洗顔パウダーの提供。
【解決手段】微生物起源のタンパク分解酵素;N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、オレフィンスルホン酸塩からなる界面活性剤;ソルビトール;ポリアクリル酸Na;およびグリシルグリシンを含有する洗顔パウダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配合成分である酵素に対する優れた安定性、優れた起泡性、優れた使用感、および皮膚への低刺激性を具備する洗顔パウダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗顔パウダーに使用される酵素としては、パパインなど植物起源の蛋白分解酵素が用いられていたが、かかる酵素は蛋白分解作用が弱く、酵素の本来の目的としての毛穴につまった蛋白質の汚れ、および角質化した皮膚の洗浄を充分に行うことができなかった。また、微生物由来の酵素を配合する洗顔パウダーについても、従来のものは、酵素の安定化が充分に図られていない等の理由から、必ずしも満足する洗浄効果が得られていなかった。一方、毛穴の汚れや角質化した皮膚の清浄手段として美容皮膚科等で実施されるケミカルピーリングは、角質のみを選択的に除去することが難しく、ともすると皮膚の基底層や真皮にまで影響が及ぶことがあり、皮膚刺激性という点で必ずしも満足なものとは言えていない。
【0003】
粉末状の洗顔パウダーは、液体の原料を配合することによるブロッキングやぼたつき感が起きやすく、また製品の吸湿性による流動性の変化を抑制するために加えられる界面活性剤や他の成分等の配合に制限があり、優れた起泡性および使用感を両立させることが困難であると言われている。粉末状洗浄剤において、優れた起泡性を得るためのアニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸塩やアルキルリン酸塩等が知られている。しかし、これらは刺激性が誘発されるために使用感に劣る。一方、刺激が温和な界面活性剤としては、種々知られており、中でもN−アシルアミノ酸塩等が良く知られている。しかしながら、優れた起泡性および使用感を両立させ、刺激性が少なく、酵素を配合したときにその安定性が保たれる界面活性剤として、必ずしも満足するものは得られていない。
【0004】
微生物起源の蛋白分解酵素を配合した洗顔パウダーについての開示がある(特許文献1)。当該洗顔パウダーはポリアクリル酸ナトリウムを配合することにより酵素の安定化が図られること、滑らかな泡立ちが実現することを効果とするものである。洗浄剤成分としてN−ラウリル−L−グルタミン酸モノナトリウムなどの界面活性剤が含まれることが開示されているが、N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩の併用についての開示はない。また、該洗顔パウダーには、ソルビトールおよびグリシルグリシンに関する開示はない。
【0005】
アシルイセチオン酸塩とN−アシルアミノ酸塩とを一定の割合で配合することにより、優れた起泡性と皮膚への低刺激性等の使用感を両立させた粉末状洗浄剤組成物についての開示がある(特許文献2)。当該洗浄剤組成物には蛋白分解酵素は配合されていない。また、一般的な記載として、当該洗浄剤組成物に糖類を配合することが出来る旨の開示があるが、特定の糖類を配合した場合の効果等についての開示、示唆はない。ポリアクリル酸Naおよびグリシルグリシンに関する開示はない。
【0006】
蛋白分解酵素の安定化剤および当該安定化剤を配合した洗浄剤が開示されており(特許文献3)、当該安定化剤の一例としてグリシルグリシンが開示されている。洗浄剤の例として蛋白分解酵素を配合した洗顔パウダーの実施例があり、界面活性剤として、N−ラウロイル−L−グルタミン酸Naおよびヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸Naが配合されている。ソルビトールの使用に関する記載はない。
【特許文献1】特開昭60−120810号公報
【特許文献2】特開2001−26524号公報
【特許文献3】特開2005−306822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、配合成分である酵素に対する優れた安定性、優れた起泡性、優れた使用感、および皮膚への低刺激性を具備する洗顔パウダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、配合成分である酵素に対する優れた安定性、優れた起泡性、優れた使用感、および皮膚への低刺激性を具備する洗顔パウダーの組成について鋭意検討を重ねた結果、微生物起源のタンパク分解酵素;N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩からなる界面活性剤;ソルビトール;ポリアクリル酸Na;グリシルグリシンを配合した洗顔パウダーが、上記課題を解決することを確認し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)微生物起源のタンパク分解酵素;N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩からなる界面活性剤;ソルビトール;ポリアクリル酸Na;グリシルグリシンを含有する洗顔パウダーである。
具体的には、
(2)N−アシルアミノ酸塩がラウロイルグルタミン酸Na、アシルイセチオン酸塩がココイルイセチオン酸Na、オレフィンスルホン酸塩がオレフィン(C14−16)スルホン酸Naである上記(1)記載の洗顔パウダー、
(3)N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、オレフィンスルホン酸塩の配合比が2〜3:1〜2:1〜2であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の洗顔パウダー、
(4)N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩を洗顔パウダー全量に対して各10〜20%、3〜7%、3〜7%配合することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の洗顔パウダー、
(5)ソルビトールの配合量が洗顔パウダー全量に対して5〜7%であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の洗顔パウダーである。
なお、洗顔パウダーの組成において「%」は特記しない限り「質量%」を示す。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗顔パウダーは、微生物起源のタンパク分解酵素にN−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩およびオレフィンスルホン酸塩からなる界面活性剤、ソルビトール、ポリアクリル酸Naおよびグリシルグリシンを組み合わせることにより、配合成分である酵素に対する優れた安定性、製品としての優れた起泡性、優れた使用感、および皮膚への低刺激性が達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いる微生物起源のタンパク分解酵素としては、ASPプロテアーゼ、放線菌プロテアーゼ、黒麹菌プロテアーゼ等の微生物起源の酵素を用いることができるが、これらに限定されるものでなく、枯草菌プロテアーゼ等のASP、放線菌、黒麹菌以外の微生物により産生される酵素も用いることができる。また、医薬部外品原料規格に記載されているプロテアーゼ(1)(枯草菌由来)またはプロテアーゼ(2)(放線菌由来)を用いることもできる。洗顔パウダー全量に占めるタンパク分解酵素の配合量は0.01〜5%が好ましく、0.1〜1%がより好ましい。
【0012】
本発明に用いる界面活性剤のうち、N−アシルアミノ酸塩としては、例えば、ラウロイ
ルグルタミン酸Na、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリスチルグルタミン酸K、オレイルグルタミン酸Na等が挙げられ、ラウロイルグルタミン酸Naが好ましい。洗顔パウダー全量に占めるN−アシルアミノ酸塩の配合量は例えば5〜30%が挙げられ、好ましくは10〜20%が挙げられ、15%が最も好ましい。アシルイセチオン酸塩としては、例えば、ココイルイセチオン酸Na(ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸Na)、ラウリン酸エチルエステルスルホン酸Na、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸トリエタノールアミン等が挙げられ、ココイルイセチオン酸Naが好ましい。洗顔パウダー全量に占めるアシルイセチオン酸塩の配合量は例えば2〜15%が挙げられ、好ましくは3〜7%が挙げられ、5%が最も好ましい。オレフィンスルホン酸塩としては、例えば、炭素原子数14〜16のオレフィンからなるオレフィン(C14−16)スルホン酸Na(テトラデセンスルホン酸Na、等)が好適な例として挙げられる。洗顔パウダー全量に占めるオレフィンスルホン酸塩の配合量は例えば2〜15%が挙げられ、好ましくは3〜7%が挙げられ、5%が最も好ましい。界面活性剤の組合せは、ラウロイルグルタミン酸Naとココイルイセチオン酸Naとオレフィン(C14−16)スルホン酸Naとの組合せが好ましく、これらの配合比は、2〜3:1〜2:1〜2であることが好ましく、3:1:1であることがより好ましい。洗顔パウダー全に占める界面活性剤の配合量としては、例えば、15〜50%が挙げられ、好ましくは20〜30%が挙げられ、25%配合することがさらに好ましく、より具体的には、ラウロイルグルタミン酸Naとココイルイセチオン酸Naとオレフィン(C14−16)スルホン酸Naとをそれぞれ、10〜20%、3〜7%、3〜7%配合することが好ましく、上記3成分をそれぞれ、15%、5%、5%配合することが最も好ましい。なお、本発明の洗顔パウダーは、本発明の目的が損なわれない範囲において、上記必須の界面活性剤の他に、他の界面活性剤を配合することができる。
【0013】
本発明に用いるソルビトールは、市販のものを用いることができる。白色の粉末または結晶性粉末で、例えば日本薬局方または医薬部外品原料規格のものが使用できる。洗顔パウダー全量に占めるソルビトールの配合量は5〜10%が好ましく、5〜7%がより好ましく、7%が最も好ましい。ソルビトールを配合することにより、ソルビトールを含まない場合、あるいは、他の糖(例えば、マルトース、グルコース、等)を配合した場合に比し、優れた酵素安定化効果と使用感が達成される。
本発明に用いるポリアクリル酸Naは市販のものを用いることができる。白色粉末で、例えば食品添加物使用基準または医薬部外品原料規格のものが使用できる。洗顔パウダー全量に占めるポリアクリル酸Naの配合量は例えば0.5〜5%が挙げられ、1〜2%が好ましい。
本発明に用いるグリシルグリシンは市販のものを用いることができる。白色の結晶性の粉末で、例えば医薬部外品原料規格のものが使用できる。洗顔パウダー全量に占めるグリシルグリシンの配合量は例えば0.001〜0.1%が挙げられ、0.01%が好ましい。
【0014】
本発明の洗顔パウダーには、本発明の目的が損なわれない範囲内で、若しくは更に本発明の効果を向上させたり、他の目的のために、通常、洗顔パウダーに配合し得る各種成分を配合することができる。このような他の成分としては、例えば、無機顔料、天然色素、保湿剤、抗炎症剤、殺菌剤、酸化防止剤、香料およびこれらの混合物等が挙げられ、これらは1種または2種以上組合せて使用することができる。
【0015】
無機顔料としては、例えば、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミンまたはこれらの混合物等が挙げられる。天然色素としては、β−カロチン、ハイビスカス色素、サーフル
イエロー、カカオ色素、リボフラビン、クロロフィル、カラメルまたはこれらの混合物等が挙げられる。保湿剤としては、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリンおよびケランタン硫酸等のムコ多糖類およびこれらの塩;スフィンゴ脂質、コレステロール、リン脂質等の生体脂質;パントテン酸誘導体;コラーゲン、エラスチン、ケラチン等のタンパク質、これらの誘導体およびこれらの塩;アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分;アボガド油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油等の植物性油脂類;スクワラン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類;セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール類;メチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン類;カミツレ抽出物、ダイズ抽出物、イチョウ抽出物、ローズマリー抽出物、オウバク抽出物、コンフリー抽出物、レイシ抽出物等の植物由来の抽出物またはこれらの混合物等が挙げられる。抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、サリチル酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン、これらの誘導体およびその塩またはこれらの混合物等が挙げられる。殺菌剤としては、例えば、塩化リゾチウム、安息香酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、塩化ベンゼトニウム、フェノキシエタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン、2,2,4'−トリクロロ−2'−ヒドロキシフェニルエーテル、トリクロカルバン、トリクロサン、塩化ベンザルコニウムまたはこれらの混合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、ビタミンE類またはこれらの混合物等が挙げられる。
上記のほかに、粉末洗浄剤に基剤として使用されるデンプン(コーンスターチ等)、タルクなどがある。
本発明の洗顔パウダーを調製するには、上記各種原料成分を、公知の粉末化方法により粉末状とすることにより得ることができる。本発明により得られる洗顔パウダーは、水やお湯等に溶解して使用することができる。
本発明の洗顔パウダーは、美白化粧水と組み合わせて使用することができる。本発明の洗顔パウダーと美白化粧水とを組み合わせて使用することにより、美白有効成分の皮膚内への浸透性が高まる。
【実施例】
【0016】
以下実施例、比較例および試験例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
実施例1、比較例1および試験例1〜3
表1に示す実施例1、比較例1の各成分を常法により混合、篩過して、洗顔パウダーを製造し、容器に充填した。容器は蓋付きプラスチック製容器で、蓋を閉じた状態で保存試験を行った。実施例1、比較例1の洗顔パウダーの40℃、120日保存後の酵素力価を測定した結果を試験例1として表1中に記載した。
また、実施例1の洗顔パウダーについては、モニター33名に対して実施した使用感の評価結果を、比較例1の洗顔パウダーについては、モニター29名に対して実施した使用感の評価結果を、それぞれ試験例2および試験例3として表2および表3に示した。
モニターは、年齢20〜50才の女性から選択した。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

表2と表3において、表中の左欄の数は回答したモニターの数を示し、右欄の%は回答者の占める割合を示す。
【0020】
【表3】

【0021】
表1の結果から明らかなように、40℃、120日という過酷な条件下において、本発明の実施例1の洗顔パウダーは、比較例1の洗顔パウダーに比し、高い酵素力価が維持された。
また、表2および表3から明らかなように、総合的な使用感の観点で、比較例1の洗顔パウダーがどちらかというと不満である人の数が多かったのに対し、本発明の実施例1の洗顔パウダーは、80%以上の人が好き、またはやや好きと回答しており、優れた使用感が確認された。
【0022】
試験例4
界面活性剤の配合比、配合量を決定するに際し、洗顔パウダー全量に対するラウロイルグルタミン酸Naの配合量を9〜30%の範囲で、ココイルイセチオン酸Naの配合量を3〜10%の範囲で、オレフィン(C14−16)スルホン酸Naの配合量を3〜10%の範囲で適宜変更し、残部をコーンスターチとして各成分を常法により混合、篩過して、複数の洗顔パウダーを製造した。また、上記の3種の界面活性剤のうちの2成分をそれぞれ7〜18%の範囲で適宜配合し、残部をコーンスターチとする洗顔パウダーを同様に複数製造し、対照とした。得られた洗顔パウダーを、それぞれ10人のパネルに使用してもらい、起泡性、低ぬめり性および低刺激性の観点から評価した。
上記3種の界面活性剤を配合した洗顔パウダーにおいて、対照洗顔パウダーに比し、より好ましい結果が得られた。とりわけ、ラウロイルグルタミン酸Naを洗顔パウダー全量に対して15%、ココイルイセチオン酸Naを5%、オレフィン(C14−16)スルホン酸Naを5%配合した洗顔パウダーにおいて最も優れた評価が得られた。
【0023】
試験例5
実施例1および比較例1の洗顔パウダーならびに市販の酵素配合洗顔パウダー(プロテアーゼ(1)を配合する市販洗顔パウダーA、およびパパインを配合する市販洗顔パウダーB〜D)について、その酵素活性を、医薬部外品原料規格2006中に記載の「プロテアーゼ力価試験法」に準じて実施した。
実施例1の洗顔パウダーの酵素活性を100とした場合の相対酵素活性(%)を表4に示した。
【0024】
【表4】

表4に示すように、比較例1の酵素洗顔パウダーの相対酵素活性は、本発明の実施例1の洗顔パウダーの70%であった。また、市販の洗顔パウダーA〜Dについては、最大でも実施例1の洗顔パウダーの34%であった。
【0025】
試験例6
実施例1の洗顔パウダー、プロテアーゼ(1)を配合する市販の酵素配合洗顔パウダー(市販洗顔パウダーA)および対照洗顔パウダー(実施例1の組成からプロテアーゼ(1)を除いた組成物)について、角質層除去効果を比較した。すなわち、ヒト皮膚に各洗顔パウダーの25%水溶液を2分間処置した後、常法により表層をテープストリップし、タンパクをBrilliant Blue, Gentian Violet Bにて染色後、200倍の光学顕微鏡にて検鏡、評価した。
実施例1の洗顔パウダーでは、タンパクの染色像がほとんど認められず、確実な角質層除去効果が確認されたのに対し、市販洗顔パウダーAおよび対照洗顔パウダーの検鏡像は、試験開始前に採取したサンプルの検鏡像との差異が認められず、角質除去効果は確認できなかった。
【0026】
試験例7
実施例1の洗顔パウダーについて、角質上層のみの除去効果を確認するために以下の試験を実施した。すなわち、3名の被験者を用いて、ヒト皮膚に実施例1の洗顔パウダーの25%水溶液を2分間処置した後、常法により4回のテープストリップを実施し、得られたそれぞれのサンプル(各被験者について1層〜4層)についてタンパクをBrilliant Blue, Gentian Violet Bにて染色後、200倍の光学顕微鏡にて検鏡、評価した。
1層目のサンプルについてはタンパクの染色像がほとんど認められず、確実な角質層除去効果が確認された。2層目のサンプルについては1層目に比べると弱いものの角質層除去効果が確認された。3層目および4層目のサンプルのタンパク染色像は、試験開始前に採取したサンプルの検鏡像との差異が認められず、実施例1の洗顔パウダーが角質上層のみの除去効果を有することが確認された。
【0027】
試験例8
ヒトの皮膚に性状が近いとされるブタの皮膚を用いて、実施例1の洗顔パウダーの安全性を評価した。すなわち、ユカタンミニブタの皮膚に実施例1の洗顔パウダーの25%水溶液、ならびに精製水を5分間処置した後、常法により皮膚組織断面の観察を実施し、無処置のものと比較した。
実施例1の洗顔パウダー処置群のサンプルは、角質層内部、表皮内部および真皮において、精製水処置群または無処置群と比較して組織学的な差異は認められず、実施例1の洗顔パウダーが角質層上層のみに作用し、安全であることが確認された。
【0028】
試験例9
実施例1の洗顔パウダーについて、パッチテストにより刺激性の有無を確認した。すなわち、健常人60例に対し、実施例1の洗顔パウダーの0.2%水溶液(30例)または1%水溶液(30例)を用いて、常法による48時間のクローズド・パッチテストを実施し、テープかぶれによる判定不能例1例を除く59例について評価した。0.2%水溶液については48時間後に(±)2例、72時間後に(±)2例および貼付7日後に(±)1例が認められ、1%水溶液については48時間後に(+)1例、72時間後に(±)1例、(+)1例および貼付7日後に(±)1例が認められた。この結果から算出された皮膚刺激指数は、0.2%水溶液、1%水溶液でそれぞれ3.4および5.0となり、実施例1の洗顔パウダーが、きわめて低刺激性であることが確認された。
【0029】
試験例10
実施例1の洗顔パウダーについて、自分が敏感肌であると感じているモニター32例を対象に、使用感に関する試験を実施した。すなわち、自身の肌を敏感肌(とても敏感肌、どちらかというと敏感肌)と認識している30〜45才の女性32人を対象として、実施例1の洗顔パウダーを2日間で2回使用した後に、肌の変化の有無に関するアンケート調査を実施した。結果は、(良い意味での)肌の変化ありが7人(22%)、(良い意味での)肌の変化ややありが16人(50%)、変化なしが8人(25%)、(悪い意味での)肌の変化(つっぱり感)あり1人(3%)であった。試験を実施したモニターの70%以上の人が、(良い意味での)肌の変化があった、あるいは、ややあったと回答しており、優れた使用感が確認された。なお、本試験においても副作用は認められず、実施例1の洗顔パウダーが敏感肌の人に対しても使用可能な低刺激性の組成物であることが確認された。
【0030】
試験例11
実施例1の洗顔パウダーおよび対照洗顔パウダー(実施例1の組成からプロテアーゼ(1)を除いた組成物)に関し、薬用美白化粧水と併用した際の効果について評価した。すなわち、ヒト前腕外側を実施例1の洗顔パウダーまたは対照洗顔パウダーで5分間洗浄した後、アスコルビン酸2グルコシド(AA2G)を含有する薬用美白化粧水を同量塗布し、1時間後に、20回のテープストリップを実施した。テープに付着した角質層からAA2Gを抽出し、定量した。AA2G抽出量および全抽出量に占める割合を、1〜6層の合計、7〜12層の合計および13〜20層の合計として表5にまとめた。
【0031】
【表5】

表5から明らかなように、実施例1の洗顔パウダーと、対照洗顔パウダーで、AA2Gの全抽出量にはほとんど差が認められなかった。AA2G抽出量は、上層では対照洗顔パウダー群で高値を示し、中層および下層では実施例1の洗顔パウダー群で高値を示した。これは、実施例1の洗顔パウダーにより角質上層が除去され、化粧水中に含まれる美白有
効成分であるAA2Gの中層および下層への浸透性が高まったことによるものと推定された。従って、実施例1の洗顔パウダーは、薬用美白化粧水と併用すると、より高い美白効果が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の各成分を含有する洗顔パウダー。
(1)微生物起源のタンパク分解酵素
(2)N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩からなる界面活性剤
(3)ソルビトール
(4)ポリアクリル酸Na
(5)グリシルグリシン
【請求項2】
N−アシルアミノ酸塩がラウロイルグルタミン酸Na、アシルイセチオン酸塩がココイルイセチオン酸Na、オレフィンスルホン酸塩がオレフィン(C14−16)スルホン酸Naである請求項1記載の洗顔パウダー。
【請求項3】
N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、オレフィンスルホン酸塩の配合比が2〜3:1〜2:1〜2であることを特徴とする請求項1または2記載の洗顔パウダー。
【請求項4】
N−アシルアミノ酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびオレフィンスルホン酸塩を洗顔パウダー全量に対して各10〜20%、3〜7%、3〜7%配合することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の洗顔パウダー。
【請求項5】
ソルビトールの配合量が洗顔パウダー全量に対して5〜7%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の洗顔パウダー。

【公開番号】特開2009−256211(P2009−256211A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103834(P2008−103834)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000181147)持田製薬株式会社 (62)
【出願人】(591267785)関西酵素株式会社 (5)
【Fターム(参考)】