説明

酵素阻害のための化合物

ヘテロ原子を含む三員環を有するペプチドベースの化合物が、効率且つ特異的にプロテアソームに関連するN末端求核(Ntn)加水分解酵素の特異的な活性を阻害する。前記のペプチドベースの化合物は、そのN末端においてエポキシド又はアジリジン及び官能基を包含する。他の治療学的用途のうち、前記のペプチドベースの化合物は、抗炎症作用及び細胞の急増殖の阻害作用を示すことが期待される。これらのペプチドベースのプロテアソーム阻害剤を経口投与できるのは、それらの生体利用率のプロファイルのためである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(本発明の背景)
真核生物において、タンパク質分解は、主にユビキチン経路により媒介され、このユビキチン経路において、分解の標的となるタンパク質が、76個のアミノ酸のポリペプチドであるユビキチンに連結される。一旦標的にされると、次にユビキチン化されたタンパク質が、多触媒性プロテアーゼである26Sプロテアソームのための基質として作用し、この26Sプロテアソームが、その3つの主要なタンパク質分解活性の作用により、タンパク質を切断して短ペプチドにする。細胞内タンパク質代謝回転における一般機能を有する一方で、プロテアソーム媒介性分解はまた、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI提示、アポトーシス、細胞分裂、及びNF−κB活性化などといった多くのプロセスにおいて重要な役割を果たしている。
【0002】
20Sプロテアソームは、4つの環を構成する28個のサブユニットからなる700kDaの円筒形の多触媒性プロテアーゼ複合体であり、細胞増殖調節、主要組織適合性複合体クラスI提示、アポトーシス、抗原プロセシング、NF−κB活性化、及び前炎症性シグナルの形質導入において重要な役割を果たしている。酵母菌などの真核生物においては、7種の異なるαサブユニットが外環を形成し、7種の異なるβサブユニットが内環を構成している。このαサブユニットは、19S(PA700)及び11S(PA28)調節複合体のための結合部位として、かつ2つのβサブユニット環によって形成される内側タンパク質分解チャンバのための物理的障壁として作用する。したがって、in vivoにおいて、プロテアソームは、26S粒子(「26Sプロテアソーム」)として存在すると考えられている。in vivoにおける実験では、20S型プロテアソームの阻害は、26Sプロテアソームの阻害と容易に相関付けられ得ることが示された。粒子形成の間のβサブユニットのアミノ末端プロ配列の切断は、アミノ末端トレオニン残基を露出し、このトレオニン残基は触媒性求核剤として作用する。したがって、プロテアソームにおける触媒活性を担うサブユニットは、アミノ末端求核性残基を有し、これらのサブユニットは、N末端求核(Ntn)ヒドロラーゼのファミリーに属する(ここで、求核N末端残基は、例えば、Cys、Ser、Thrなどの求核基部分である)。このファミリーには、例えば、ペニシリンGアシラーゼ(PGA)、ペニシリンVアシラーゼ(PVA)、グルタミンPRPPアミドトランスフェラーゼ(GAT)、及び細菌グリコシルアスパラギナーゼが含まれる。偏在的に発現したβサブユニットに加えて、高等脊椎動物もまた、3つのγ−インターフェロン誘導βサブユニット(LMP7、LMP2、及びMECL1)を有し、これらは、正常なβサブユニットであるX、Y、Zと、それぞれ置換され、これにより、プロテアソームの触媒作用を改変する。異なるペプチド基質の使用を通して、3つの主要なタンパク質分解活性、すなわち大きな疎水性残基の後ろを切断するキモトリプシン様活性(CT−L)、塩基性残基の後ろを切断するトリプシン様活性(T−L)、及び酸性残基の後ろを切断するペプチジルグルタミルペプチド加水分解活性(PGPH)が、真核生物20Sプロテアソームに対して定義されている。それほど明らかとなっていない別の2つの活性、すなわち分枝鎖アミノ酸の後ろを切断するBrAAP活性、及び小さな中性アミノ酸の後ろを切断するSNAAP活性も、プロテアソームに帰せられている。主要なプロテアソームタンパク質分解活性は、異なる触媒部位によりもたらされるようである。というのも、阻害剤、βサブユニットにおける点突然変異、及びγインターフェロン誘導βサブユニットの交換が、様々な程度に、これらの活性を改変するためである。
【0003】
最近、癌、免疫及び自己免疫疾患、炎症、虚血性状態、神経変性疾患並びに他の疾患における治療学的に介在することから、プロテアソームが興味を引くターゲットとなっている。現在までFDAが承認したプロテアソーム阻害剤は、ボルテゾミブ(商品名 VELCADE(登録商標)ベルケード)のみであるが、最近では他のいくつかのプロテアソーム阻害剤が臨床試験で評価されている。今までのところ、これら全ての治療目的のプロテアソーム阻害剤は、最近ではIV(静脈内投与)で投与されている。骨髄腫及びリンパ腫のような血液病学的悪性疾患の治療におけるプロテアソーム阻害剤の臨床適用は、頻繁なIV投与の必要性のために一部に制限されているが、経口投与(PO)により改善されるであろう。
【0004】
しかしながら、これらの分子のペプチドに由来する性質のために、これらの阻害剤の経口投与後の全身的な暴露が、胃のpH、胃のぺプチダーゼ及び腸のぺプチダーゼ、薬剤の排出機構、胆汁排泄、並びに腸及び肝臓の代謝活性が挙げられるいくつかの要因により制限される。酵素により分解される、及び消化管から血流への吸収を改善するといった、ペプチドに由来する性状を克服するために使用される方法としては、構造的にペプチドから離れ、そして分子量を小さくした類似体を調製する方法が挙げられる。前記のペプチド類似体が示す経口投与後の血中濃度レベルが満足のいくものである場合、又はぴプロテアソーム阻害剤の場合には、血中の前記のプロテアソーム活性の阻害が満足のいくものである場合、前記の方法は成功であると思われる。
【0005】
前記の方法は、ペプチドエポキシケトン プロテアソーム阻害剤の類似体を調製することに適用され、それによってそれらの類似体を経口投与により生体で利用できるようにした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ペプチドα’,β’−エポキシド及びペプチドα’,β’−アジリジンとして公知の分子クラスに関する。前記の親分子は、N−末端求核(Ntn)ヒドロラーゼに効率的、不可逆的、かつ選択的に結合すると理解され、多様な触媒活性を有する酵素の特定の活性を特異的に阻害し得る。
【0007】
プロテアソームは、かつては変性タンパク質及びミスフォールドタンパク質を単に処理するのみと考えられていたが、現在はタンパク質分解機構を構成すると認識されている。このタンパク質分解機構は、シグナル依存性様式でのそれらの分解により、種々の細胞内タンパク質のレベルを調節する。したがって、プロテアソーム及びその他のNtnヒドロラーゼの活性を特異的に乱し、それにより生物学的プロセスにおけるこれらの酵素の役割を研究するためのプローブとして使用され得る試薬を特定することに大いに関心がある。本明細書においてNtnヒドロラーゼを標的にする化合物が、記載され、合成され、そして検討される。強力に、選択的に、かつ不可逆的に、特定のプロテアソーム活性を阻害し得るペプチドエポキシド及びペプチドアジリジンが、開示され、特許請求される。
【0008】
いくつかの他のペプチドベースの阻害剤とは違い、本明細書中に記載されるペプチドエポキシド及びペプチドアジリジンは、50μMまでの濃度において、非プロテアソームプロテアーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、カテプシンB、パパイン、及びカルパイン)を、実質的に阻害するとは考えられない。より高い濃度においては、阻害が観察され得るが、阻害剤が単に基質と競合するだけであれば、競合的であり、かつ不可逆的ではないと考えられよう。この新規のペプチドエポキシド及びペプチドアジリジンはまた、NF−κBの活性化を阻害し、かつ細胞培養においてp53レベルを安定化すると考えられる。さらに、これらの化合物は、抗炎症活性を有するとも考えられる。したがって、これらの化合物は、正常な生物学的プロセス及び病理学的プロセスにおけるNtn酵素機能を探究するための汎用性を有する、唯一無比の分子プローブであり得る。
【0009】
一実施態様において、本発明は、ヘテロ原子含有3員環を含む阻害剤を提供する。これらの阻害剤は、約50μM未満の濃度で存在するとき、N末端求核ヒドロラーゼ酵素(例えば、20Sプロテアソーム、又は26Sプロテアソーム)の触媒活性を阻害し得る。20Sプロテアソームに関しては、特定のヒドロラーゼ阻害剤は、約5μM未満の濃度で存在するとき、20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を阻害し、約5μM未満の濃度で存在するとき、20Sプロテアソームのトリプシン様活性又はPGPH活性を阻害しない。このヒドロラーゼ阻害剤は、例えば、ペプチドα’,β’−エポキシケトン又はペプチドα’,β’−アジリジンケトンであり得、このペプチドはテトラペプチドであり得る。前記のペプチドは、分枝又は非分枝の側鎖(例えば、水素、C1〜6アルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アルコキシアルキル、アリール、C1〜6アラルキル、C1〜6アルキルアミド、C1〜6アルキルアミン、C1〜6カルボン酸、C1〜6カルボキシルエステル、C1〜6アルキルチオール、又はC1〜6アルキルチオエーテル;例えば、イソブチル、1−ナフチル、フェニルメチル、及び2−フェニルエチル)を含み得る。このα’,β’−エポキシケトン又はα’,β’−アジリジンケトンのα’−炭素は、キラル炭素原子(例えば、本明細書において定義されるような(R)又はβ配置を有する炭素)であり得る。
【0010】
別の実施態様において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア、及び薬学的有効量のヒドロラーゼ阻害剤を含む薬学的組成物を提供する。この薬学的剤組成物は、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)、筋消耗性疾患(muscle−wasting disease)、癌、慢性感染性疾患、熱病、筋廃用(muscle disuse)、脱神経、神経損傷、飢餓状態、及び免疫関連状態などの影響を改善する。
【0011】
別の実施態様において、本発明は、経口投与により生体で利用されうる、化合物及び薬学的組成物を提供する。
【0012】
別の実施態様において、本発明は、抗炎症性の組成物を提供する。
【0013】
別の実施態様において、本発明は、以下を実現するための方法を提供する。
被験体におけるHIV感染を阻害又は低減すること;
被験体におけるウイルス遺伝子発現レベルに影響を及ぼすこと;
生物体におけるプロテアソームによって産生される種々の抗原ペプチドを改変すること;
生物体における細胞の発達過程若しくは生理的過程、又はそれらの出力が、特定のNtnヒドロラーゼのタンパク質分解活性により調節されるかどうか判定すること;
被験体におけるアルツハイマー病を処置すること;
細胞における筋タンパク質分解の速度を低下させること;
細胞における細胞内タンパク質分解の速度を低下させること;
細胞におけるp53タンパク質分解の速度を低下させること;
被験体におけるp53関連癌の増殖を阻害すること;
細胞における抗原提示を阻害すること;被験体の免疫系を抑制すること;
生物体におけるIκB−α分解を阻害すること;
細胞、筋肉、臓器又は被験体におけるNF−κBの含有量を減少させること;
サイクリン依存性真核細胞周期に影響を及ぼすこと;
被験体における増殖性疾患を処置すること;
細胞における腫瘍タンパク質のプロテアソーム依存性調節に影響を及ぼすこと;
被験体における癌増殖を処置すると;
被験体におけるp53関連アポトーシスを処置すること;並びに、
細胞におけるN末端求核剤ヒドロラーゼによって処理されるタンパク質をスクリーニングすること。
これらの方法はそれぞれ、本明細書において開示されるヒドロラーゼ阻害剤を含有する有効量の組成物を、被験体、細胞、組織、臓器若しくは生物体に投与するステップ、又は接触させるステップを含む。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(本発明の詳細な説明)
本発明は、酵素阻害剤として有用な化合物を包含する。これらの化合物は、概して、N末端において求核基を有する酵素を阻害するのに有用である。例えば、側鎖において求核基をもつN末端アミノ酸(例えば、トレオニン、セリン又はシステイン)を有する酵素又は酵素サブユニットの活性は、本明細書中に記載される酵素阻害剤により効果的に阻害され得る。N末端において非アミノ酸求核基(例えば、保護基又は炭水化物)を有する酵素又は酵素サブユニットの活性もまた、本明細書中に記載される酵素阻害剤によって効果的に阻害され得る。
【0016】
特定の作用理論により拘束されてはいないが、このようなNtnのN末端求核基が、本明細書中に記載される酵素阻害剤のエポキシド官能基と共有結合付加体を形成すると考えられている。例えば、20Sプロテアソームのβ5/Pre2サブユニットにおいて、N末端トレオニンは、以下に記載するようなペプチドエポキシド又はペプチドアジリジンとの反応の際に、モルホリノ付加体又はピペラジノ付加体を不可逆的に形成すると考えられている。前記の付加体の形成には、前記のエポキシド又は前記のアジリジンの開環切断が関与するであろう。
【0017】
α’炭素に結合した前記の基を含む実施態様において、α’炭素(エポキシド又はアジリジン環の一部を形成する炭素)の立体化学は、(R)又は(S)となり得る。本発明は、一部、本明細書で開示される構造−機能情報に基づき、次の好ましい立体化学相関関係を示唆する。好ましい化合物は、表示される上下関係(若しくはβ−α関係であり、本明細書中に描かれるとき、βはページ平面より上にある)又は(R)−(S)関係を有する多くの立体中心を有し得る(つまり、化合物中のすべての立体中心が、上記好ましい立体化学と一致する必要はない)ということに注意されたい。いくつかの好ましい実施態様において、α’炭素の立体化学は(R)であり、これはつまり、X原子がβである、すなわちX原子が分子平面より上にあるということである。
【0018】
立体化学に関しては、絶対立体化学を決定するためのカーン−インゴルド−プレローグの法則に従う。これらの法則は、例えば、Fox及びWhitesell、「Organic Chemistry」、Jones and Bartlett Publishers(Boston,MA)、1994年、5−6節、pp.177−178に記載されており、この節を、本明細書中に参考として援用する。ペプチドは、骨格単位から延びる側鎖を有する反復骨格構造を有し得る。側鎖が水素原子となることもあるが、一般的に、各骨格単位は、側鎖を付随させている。他の実施態様においては、必ずしもすべての骨格単位が付随する側鎖を有しているわけではない。前記のペプチドエポキシド又は前記のペプチドアジリジンにおいて有用なペプチドは、2つ以上の骨格単位を有する。プロテアソームのキモトリプシン様(CT−L)活性を阻害するために有用ないくつかの実施態様においては、2個から4個の間の骨格単位が存在し、CT−L阻害のためのいくつかの好ましい実施態様においては、3個の骨格単位が存在する。
【0019】
骨格単位から延びる側鎖としては、天然の脂肪族アミノ酸側鎖又は芳香族アミノ酸側鎖、例えば、水素(グリシン)、メチル(アラニン)、イソプロピル(バリン)、sec−ブチル(イソロイシン)、イソブチル(ロイシン)、フェニルメチル(フェニルアラニン)、及びアミノ酸プロリンを形成する側鎖が挙げられ得る。側鎖はまた、他の分枝若しくは非分枝の脂肪族基又は芳香族基、例えば、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル及びアリールで置換された誘導体(例えば、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(1−ナフチル)メチル、(2−ナフチル)メチル、1−(1−ナフチル)エチル、1−(2−ナフチル)エチル、2−(1−ナフチル)エチル、2−(2−ナフチル)エチル)、及び類似化合物であり得る。前記のアリール基は、分枝若しくは非分枝のC1〜6アルキル基又は置換アルキル基(例えば、アセチルなど)、あるいはアリール基又は置換アリール基(例えば、ベンゾイルなど)でさらに置換され得る。ヘテロアリール基及びヘテロシクリル基はまた、側鎖置換基としても使用され得る。ヘテロアリール基には、窒素含有アリール基、酸素含有アリール基、及び硫黄含有アリール基、例えば、チエニル、ベンゾチエニル、ナフトチエニル、チアントレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル(chromenyl)、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、インドリル、プリニル、及びキノリルなどが含まれる。ヘテロシクリル基としては、テトラヒドロフラン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン類、及びラクタム類等が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施態様において、極性残基又は荷電残基が、前記のペプチドエポキシド類又は前記のペプチドアジリジン類に導入され得る。例えば、ヒドロキシ含有アミノ酸(Thr、Tyr、Ser)又は硫黄含有アミノ酸(Met、Cys)といった天然のアミノ酸、及び非必須アミノ酸(例えば、タウリン、カルニチン、シトルリン、シスチン、オルニチン、ノルロイシンなど)が導入され得る。荷電部分あるいは極性部分を有する非天然の側鎖置換基には、例えば、1つ以上のヒドロキシ、短鎖アルコキシ基、スルフィド基、チオ基、カルボキシル基、エステル基、ホスホ基、アミド基若しくはアミノ基、又は1つ以上のハロゲン原子で置換された前記の置換基を有する、C1〜6アルキル鎖あるいはC6〜12アリール基もまた含まれ得る。いくつかの好ましい実施態様において、ペプチド部分の1つの側鎖には、少なくとも1つのアリール基が存在する。
【0021】
いくつかの実施態様において、前記の骨格単位はアミド単位[−NH−CHR−C(=O)−]であり、このアミド単位において、Rは側鎖である。この記号表示は、天然に存在するアミノ酸 プロリン、又は他の天然に存在しない環式第二級アミノ酸を排除しないということが、当業者に理解されよう。
【0022】
他の実施態様において、前記の骨格単位は、N−アルキル化されたアミド単位(例えば、N−メチルなど)、オレフィン類似体(この類似体では、1つ以上のアミド結合がオレフィン結合に置換されている)、テトラゾール類似体(この類似体では、テトラゾール環により骨格がシス配置になっている)、又は前記のの骨格結合の組み合せである。さらに他の実施態様において、アミノ酸のα炭素は、α−アルキル置換基、例えば、アミノイソ酪酸によって修飾される。いくつかのさらなる実施態様において、側鎖が局所的に、例えば、ΔE若しくはΔZのデヒドロ修飾(この修飾において、側鎖のα原子とβ原子との間に二重結合が存在する)、又は、例えば、ΔE若しくはΔZのシクロプロピル修飾(この修飾において、側鎖のα原子とβ原子との間にシクロプロピル基が存在する)により修飾される。アミノ酸基を使用するなおさらなる実施態様において、D−アミノ酸が使用され得る。さらなる実施態様においては、側鎖−骨格による環化、ジスルフィド結合形成、ラクタム形成、アゾ結合、及びRobert A.Meyers編、「Molecular Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference」、VCH Publishers、1995年、pp.658−664中の、Hruby及びBotejuによる「Peptides and Mimics,Design of Conformationally Constrained」で検討された他の修飾が含まれ得、これらの文献は本明細書中に参考として援用される。
【0023】
本発明の一つの実施態様は、式Iの構造を有する化合物、又はその薬学的に受容される塩に関するものである。
【化4】

(式中、
Lが、C=O、C=S、及びSOから選ばれ、好ましくC=Oであり、
Xが、O、S、NH及びN−C1−6アルキルから選ばれ、
Zが、非存在、C1−6アルキル、又はC1−6アルコキシであり、好ましくは非存在であり、
、R、及びRが、それぞれ独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、C1−6アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、C1−6ヘテロシクロアルキル、C1−6ヘテロアラルキル、カルボシクリル、及びC1−6カルボシクロアルキルから選ばれ、
が、水素、C1−6アラルキル、及びC1−6アルキルから選ばれ、
が、ヘテロアリールであり、かつ
及びRが、独立して水素、C1−6アルキル、及びC1−6アラルキルから選ばれる。)
【0024】
ある実施態様では、R、R、及びRが、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、C1−6アラルキル、C1−6ヘテロシクロアルキル、C1−6ヘテロアラルキル、及びC1−6カルボシクロアルキルから選ばれる。
【0025】
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、及びイソブチルから選ばれるC1−6アルキルである。
【0026】
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、C1−6ヒドロキシアルキルである。
【0027】
ある好ましい前記の実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、ヒドロキシメチル及びヒドロキシエチルから選ばれるか、好ましくはヒドロキシメチルである。
【0028】
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、C1−6アルコキシアルキルである。
【0029】
ある前記の実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、メトキシメチル、及びメトキシエチルから選ばれ、好ましくはメトキシメチルである。
【0030】
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、C1−6ヘテロアラルキルである。
ある前記の実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、イミダゾリルメチル、ピラゾリルメチル、チアゾリルメチル、及びピリジルメチルから選ばれ、好ましくはイミダゾール−4−イルメチル、チアゾール−4−イルメチル、2−ピリジルメチル、3−ピリジルメチル、又は4−ピリジルメチルである。
【0031】
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、C1−6アラルキルである。
【0032】
さらなる実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、フェニルメチル(ベンジル)及びフェニルエチルから選ばれ、好ましくはフェニルメチルである。
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれかが、独立して、C1−6カルボシクロアルキルである。
【0033】
ある実施態様では、Rが、シクロヘキシルメチルである。
【0034】
ある実施態様では、R、R、及びRのすべてが異なっている。
【0035】
ある実施態様では、R、R、及びRのいずれか2つが同一である。
【0036】
ある実施態様では、R、R、及びRのすべてが同一である。
【0037】
ある実施態様では、R及びRの少なくとも一つがC1−6ヒドロキシアルキル及びC1−6アルコキシアルキルから選ばれる。
【0038】
ある実施態様では、R及びRの少なくとも一つがアルコキシアルキルである。
【0039】
ある前記の実施態様では、R及びRの少なくとも一つがメトキシメチル及びメトキシエチルから選ばれる。
【0040】
ある実施態様では、RがC1−6アルキル及びC1−6アラルキルから選ばれる、好ましくはC1−6アルキルである。
【0041】
ある前記の実施態様では、Rがメチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル及びイソブチルから選ばれる。
【0042】
ある前記の実施態様では、Rがイソブチルである。
【0043】
あるもう一つの実施態様では、Rがフェニルメチル及びフェニルエチルから選ばれ、好ましくはフェニルメチルである。
【0044】
ある実施態様では、R、R及びRが、独立して、水素及びメチルから選ばれ、好ましくは水素である。
【0045】
ある実施態様では、Rが、5員又は6員のヘテロアリールである。
【0046】
ある前記の実施態様では、Rが、イソオキサゾール、イソチアゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール又はイミダゾールから選ばれ、好ましくはイソオキサゾール、フラン、又はチアゾールである。
【0047】
ある実施態様では、Rが、双環のヘテロアリールである。
【0048】
ある前記の実施態様では、双環のヘテロアリールが、ベンズイソオキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾールから選ばれる。
【0049】
ある実施態様では、LがC=Oであり、Zが非存在であり、Rがイソオキサゾール−3−イル又はイソオキサゾール−3−イルである。
【0050】
ある好ましい前記の実施態様では、前記のイソオキサゾール−3−イルが置換されている場合、それが、少なくともその5位で置換されている。
【0051】
ある好ましい実施態様では、前記のイソオキサゾール−5−イルが置換されている場合、それが、少なくともその3位で置換されている。
【0052】
ある実施態様では、LがC=Oであり、Zが非存在であり、Rが置換されていないイソオキサゾール−3−イルである。
【0053】
ある実施態様では、LがC=Oであり、Zが非存在であり、Rが置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0054】
ある前記の実施態様では、Rが、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコシキアルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1−6アルキルアミノカルボキシレート、(C1−6アルキル)アミノカルボキシレート、C1−6アルキルカルボキシレート、C1−6ヘテロアラルキル、C1−6アラルキル、C1−6ヘテロシクロアルキル、C1−6カルボシクロアルキルから選ばれる一つの置換基で置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0055】
ある好ましい前記の実施態様において、Rがメチル、エチル、イソプロピル及びシクロプロピルメチルから選ばれる一つの置換基で置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0056】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが4員乃至6員の窒素を含むC1−6ヘテロシクロアルキルにより置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0057】
ある前記の実施態様において、Rがアゼチジニルメチル、好ましくはアゼチジン−1−イルメチルにより置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0058】
あるもう一つの前記の実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが式:
【化5】


(式中、WがO、NR又はCHであり、かつRがH又はC1−6アルキルである。)で表される基により置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0059】
ある前記の実施態様において、WがOである。
【0060】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、たとえばピラゾリルメチル、イミダゾリルメチル、トリアゾール−5−イルメチル、好ましくは1,2,3−トリアゾール−5−イルメチルのような5員の窒素を含むC1−6ヘテロアラルキルにより置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0061】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、C1−6アルコキシ又はC1−6アルコキシアルキル、好ましくはメトキシ、エトキシ、メトキシメチル、又はメトキシエチルで置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0062】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、C1−6ヒドロキシアルキル、好ましくはヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルで置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0063】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、たとえばカルボン酸、アミノカルボキシレート、C1−6アルキルアミノカルボキシレート、(C1−6アルキル)アミノカルボキシレート、又はC1−6アルキルカルボキシレートで置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0064】
ある前記の実施態様において、Rが、たとえばメチルカルボキシレート、エチルカルボキシレート、好ましくはメチルカルボキシレートで置換されている。
【0065】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが置換されていないイソオキサゾール−5−イルである。
【0066】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが置換されたイソオキサゾール−5−イルである。
【0067】
ある前記の実施態様において、RがC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシアルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1−6アルキルアミノカルボキシレート、(C1−6アルキル)アミノカルボキシレート、C1−6アルキルカルボキシレート、C1−6ヘテロアラルキル、C1−6アラルキル、C1−6ヘテロシクロアルキル、及びC1−6カルボシクロアルキルから選ばれる置換基で置換されたイソオキサゾール−5−イルである。
【0068】
ある好ましい前記の実施態様において、Rがメチル、エチル、イソプロピル、及びシクロプロピルメチルから選ばれる置換基で一つの置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0069】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが4員乃至6員の窒素を含むC1−6ヘテロシクロアルキルで置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
ある前記の実施態様において、Rがアゼチジニルメチル、好ましくはアゼチジン−1−イルメチルで置換されたイソオキサゾール−5−イルである。
【0070】
あるもう一つの前記の実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが式:
【化6】


(式中、WがO、NR又はCHであり、かつRがH又はC1−6アルキルである。)で表される基により置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0071】
ある前記の実施態様において、WがOである。
【0072】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、たとえばピラゾリルメチル、イミダゾリルメチル、トリアゾール−5−イルメチル、好ましくは1,2,3−トリアゾール−5−イルメチルのような5員の窒素を含むC1−6ヘテロアラルキルにより置換されたイソオキサゾール−5−イルである。
【0073】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、C1−6アルコキシ又はC1−6アルコキシアルキル、好ましくはメトキシ、エトキシ、メトキシメチル、又はメトキシエチルにより置換されたイソオキサゾール−5−イルである。
【0074】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、C1−6ヒドロキシアルキル、好ましくはヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルで置換されたイソオキサゾール−5−イルである。
【0075】
ある実施態様において、LがC=Oであり、Zが非存在であり、及びRが、たとえばカルボン酸、アミノカルボキシレート、C1−6アルキルアミノカルボキシレート、(C1−6アルキル)アミノカルボキシレート、又はC1−6アルキルカルボキシレートで置換されたイソオキサゾール−3−イルである。
【0076】
ある前記の実施態様において、Rが、たとえばメチルカルボキシレート、エチルカルボキシレート、好ましくはメチルカルボキシレートで置換されている。
【0077】
ある実施態様において、式Iで表される化合物は、以下の構造式で表される化合物から選ばれる。
【化7】
















【0078】
本発明の一つの実施態様は式Iの構造を有する阻害剤を含む、ここで開示された組成物を含む医療デバイスに関する。一つの実施態様において、前記の組成物は医療デバイスの中に含まれている。ある実施態様において、前記の医療デバイスがポリマーマトリックス又はセラミックマトリックス及び阻害剤を含むゲルである。
【0079】
前記のポリマーが天然物又は合成品のいずれかである。もう一つの実施態様において、前記のゲルは薬物のデポ剤、粘着剤、縫合剤、バリア又はシール剤として役立つ。
【0080】
本発明の別の側面は、表面に、式Iの構造を有する阻害剤が配置される基質を含有する医療デバイスに関する。一実施態様において、この阻害剤は医療デバイスに直接配置される。もう一つの実施態様において、コーティングがそのように配置され、前記のコーティングは、そこで分散又は溶解された式Iの構造を有する阻害剤を含む、ポリマーマトリクス又はセラミックマトリクスを含有する。
【0081】
一実施態様において、医療デバイスは、冠状動脈用、脈管用、末梢用、又は胆管用のステントである。より具体的には、本発明のステントは、膨張可能なステントである。式Iの構造を有する阻害剤を含有するマトリクスで被覆されるとき、このマトリクスは、そのような膨張可能なステントの圧縮状態及び膨張状態を収容するための柔軟性がある。本発明の別の実施態様において、前記のステントは、少なくとも患者の体内に挿入可能若しくは移植可能な部分を有し、この部分は身体組織への曝露に対して適合する表面を有し、かつこの表面の少なくとも一部が、式Iのいずれか1つの構造を有する阻害剤で被覆されるか、又は式Iの構造を有する阻害剤が分散若しくは溶解されたマトリクス含むコーティングで被覆される。適切なステントの例は、米国特許第4,733,665号に開示されており、この特許文献の全体が本明細書において参考として援用される。
【0082】
別の実施態様において、本発明の医療デバイスは、外科手術用器具、例えば、血管インプラント、管腔内デバイス、外科手術用密封材又は血管支持体(vascular support)である。より具体的には、本発明の医療デバイスは、カテーテル、移植可能血管アクセスポート、中心静脈カテーテル、動脈カテーテル、代用血管、大動脈内バルーンポンプ、縫合糸、補助人工心臓ポンプ、薬剤溶出バリア(drug−eluting barrier)、接着剤、血管ラップ(vascular wrap)、脈管外/脈管周囲支持具、血液フィルタすなわち血管内に配置するように適合されたフィルタであり、これらは直接、式Iの構造を有する阻害剤で被覆されるか、又は式Iの構造を有する阻害剤を含有するマトリクスにより被覆される。
【0083】
ある実施態様において、管腔内医療デバイスは、式Iの構造を有する阻害剤、又は生物学的耐性があるマトリクス、及びポリマー内に分散された式Iの構造を有する阻害剤を含有するコーティングで被覆される。このデバイスは、内面、及び外面を有しており、その内面、その外面、又はその両方の少なくとも一部に前記のコーティングが適用される。
【0084】
ある実施態様において、前記の医療デバイスは、血管形成後の再狭窄を予防するのに有用であり得る。前記の医療デバイスはまた、式Iの構造を有する阻害剤を局所投与することにより、種々の疾患及び状態の処置に対して有用であり得る。
前記の疾患及び状態としては、再狭窄、炎症、関節リウマチ、炎症による組織損傷、過剰増殖性疾患、重症乾癬又は関節炎性乾癬、筋消耗性疾患、慢性感染性疾患、異常免疫応答、易損性プラークが関与する状態、虚血性状態に関連する損傷、ウイルス感染、及びウイルス増殖が挙げられる。本発明の薬剤で被覆された医療デバイスを含む処置に供する疾患及び状態の例としては、アテローム硬化症、急性冠動脈症候群、アルツハイマー病、癌、熱病、筋廃用(萎縮)、脱神経、血管閉塞、発作、HIV感染、神経損傷、アシドーシスに関連する腎不全、及び肝不全が挙げられる。例えば、Goldbergによる米国特許第5,340,736号を参照されたい。
【0085】
用語「Cx〜yアルキル」は、鎖にx個〜y個の炭素を含む直鎖状アルキル基及び分枝鎖状アルキル基を含む、置換若しくは非置換の飽和炭化水素基であるものをいい、例えば、トリフルオロメチル及び2,2,2−トリフルオロエチルなどのハロアルキル基が挙げられる。Cアルキルは、この基が末端位置にあれば水素を意味し、内側にあれば結合を意味する。用語「C2〜yアルケニル」及び「C2〜yアルキニル」は、長さが類似している置換若しくは非置換の脂肪族基であって、上記のアルキル類と置換可能であり、それぞれ、少なくとも1つの二重結合又は三重結合を含むものをいう。
【0086】
用語「アルコキシ」は、結合した酸素を有するアルキル基のことをいう。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」は、酸素と共有結合している2個の炭化水素である。したがって、前記のアルキルをエーテルに変えるアルキルの置換基は、アルコキシであるか、又はアルコキシに類似している。
【0087】
用語「C1〜6アルコキシアルキル」は、アルコキシ基で置換され、それによりエーテルを形成しているC1〜6アルキル基のことをいう。
【0088】
用語「C1〜6アラルキル」は、本明細書において使用されているように、アリール基で置換されたC1〜6アルキル基のことをいう。
【0089】
用語「アミン」及び「アミノ」は、当該技術分野において認識されており、非置換及び置換の両方のアミン類、並びにその塩、すなわち、例えば、一般式:
【化8】

で表わすことができる基であることを意味する。
ここで、R、R10及びR10’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rを表し、
又は、R及びR10は、それらが結合するN原子と一緒になって、環状構造に4個乃至8個の原子を有する複素環を形成し、
はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、又はポリシクリルを表し、そして、mは0、又は1乃至8の整数である。好ましい実施態様において、R及びR10のうちの一方のみ、カルボニルであり得る。たとえば、R、R10及び前記の窒素が一緒になってイミドを形成しない。さらにより好ましい実施態様において、R及びR10(及び必要に応じてR10’)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、又は−(CH−Rを表す。ある実施態様において、前記のアミノ基は塩基性であり、このことはプロトンが付加したアミノ基がpK≧7.00を有することを意味する。
【0090】
用語「アミド(amide及びamido)」は、アミノで置換されたカルボニルとして当該技術分野において認識されており、一般式:
【化9】

で表されうる基が挙げられる。
ここで、R9及びR10は上記で定義したとおりである。前記のアミドの好ましい実施態様には、不安定であり得るイミドを含まれないであろう。
【0091】
用語「アリール」は、本明細書において使用されるように、5員、6員及び7員の置換又は非置換の単環芳香族基を含み、この環の各原子は炭素である。用語「アリール」にはまた、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有し、少なくとも1つの前記の環が芳香族環である、2つ以上の環式環を有する多環式環系を含む。たとえば、前記の他の環式環は、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、及び/又はヘテロシクリル類であり得る。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
【0092】
用語「炭素環」及び「カルボシクリル」は、本明細書において使用されるように、非芳香族の置換又は非置換の環のことであり、前記の環中の各原子が炭素であるものをいう。用語「炭素環」及び「カルボシクリル」はまた、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有し、前記の環の少なくとも1つが炭素環式である、2つ以上の環式環を有する多環式環系を包含する。たとえば、前記の他の環式環は、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、及び/又はヘテロシクリル類であり得る。
【0093】
用語「カルボニル」は、当該技術分野で認識されており、一般式:
【化10】


で表すことができるような基を包含する。
ここで、Xは結合であるか、又は酸素若しくは硫黄を表し、R11は、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R又は薬学的に受容可能な塩を表し、R11’は、水素、アルキル、アルケニル、又は−(CH−Rを表しており、ここで、m及びRは上記で定義したとおりである。Xが酸素であって、R11又はR11’が水素ではない場合、前記の式は「エステル」を表す。Xが酸素であって、R11が水素である場合、この式は「カルボン酸」を表す。
【0094】
本明細書において使用されるとき、「酵素」は部分的、若しくは完全ななんらかのタンパク質分子であり得、このタンパク質分子は、触媒のようにして化学反応を行なう。このような酵素としては、天然酵素、融合酵素、酵素原、アポ酵素、変性酵素、ファルネシル化酵素、ユビキチン化酵素、脂肪酸アシル化酵素、ゲランゲラニル化(gerangeranylated)酵素、GPI結合(GPI−linked)酵素、脂質結合(lipid−linked)酵素、プレニル化酵素、天然に存在する突然変異酵素、人工的に生じさせた突然変異酵素、側鎖又は骨格が改変された酵素、リーダー配列を有する酵素、及び非タンパク質性物質との複合体酵素(例えば、プロテオグリカン、プロテオリポソーム)が挙げられる。酵素は、自然発現、促進された発現、クローニング、種々の液体ベース及び固体ベースのペプチド合成、並びに、当業者に公知の類似した方法を含む任意の手段により生成され得る。
【0095】
用語「C1〜6ヘテロアラルキル」は、本明細書において使用されるとき、ヘテロアリール基により置換されたC1〜6アルキル基のことをいう。
【0096】
用語「ヘテロアリール」は、置換又は非置換の芳香族5員乃至7員環(より好ましくは、5員乃至6員環)構造を包含し、この環構造には1個乃至4個のヘテロ原子が含まれる。前記の用語「ヘテロアリール」はまた、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有し、少なくとも1つの前記の環が複素環式芳香族である2つ以上の環式環を有する多環式環系を包含する。たとえば、前記の他の環式環としては、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、及び/又は、ヘテロシクリル類が挙げられ得る。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどが挙げられる。
【0097】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書において使用されるとき、炭素又は水素以外のあらゆる元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、リン、及び硫黄である。
【0098】
用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式基」は、置換又は非置換の非芳香族の3員乃至10員環構造、より好ましくは、前記の環構造に1個乃至4個のヘテロ原子を含む3員乃至7員環をいう。この用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式基」はまた、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有し、少なくとも1つの環が複素環式である2つ以上の環式環を有する多環式環系を包含する。たとえば、前記の他の環式環としては、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、及び/又は、ヘテロシクリル類が挙げられ得る。複素環基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン類、及びラクタム類などが挙げられる。
【0099】
本明細書で使用されるように、用語「C1−6ヘテロシクロアルキル」は、ヘテロシクリル基により置換されたC1−6アルキル基をいう。
【0100】
用語「C1−6ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシ基で置換されたC1−6アルキル基のことをいう。
【0101】
本明細書において使用されるように、用語「阻害剤」は、酵素の活性を妨げるか、又は低下させる(例えば、suc−LLVY−AMC、Box−LLR−AMC及びZ−LLE−AMCといった標準蛍光性ペプチド基質のタンパク質分解切断の阻害、20Sプロテアソームの種々の触媒活性の阻害)化合物について記載することを意味する。阻害剤は、競合的阻害、不競合的阻害(uncompetitive)、又は非競合的阻害(noncompetitive)により作用し得る。阻害剤は、可逆的又は不可逆的に結合することができ、したがって、この用語には、酵素の自殺基質である化合物が含まれる。阻害剤は、酵素の活性部位において、又はその近くで1つ以上の部位を改変し得るか、又は酵素の他の部分における配座変化を引き起こし得る。
【0102】
本明細書において使用されるように、用語「経口投与により生体で利用可能」は、40mg/kg若しくはそれ未満、20mg/kg若しくはそれ未満又はさらに10mg/kg若しくはそれ未満で、マウスに投与された前記の化合物が経口投与後1時間において血中のプロテアソームCT−L活性の少なくとも約50%阻害、又はさらに少なくとも約90%阻害を示す、化合物を記述することを意味する。
【0103】
本明細書において使用されるように、用語「ペプチド」は、以下で詳細に述べるように、標準的なα位の置換基との標準的なアミド結合を含むだけでなく、一般に使用されるペプチド模倣物、他の修飾された結合、天然に存在しない側鎖、及び側鎖修飾をも包含する。
【0104】
用語「ポリシクリル」又は「多環式」は、の2つ以上の環(例えば、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類、ヘテロアリール類、及び/又はヘテロシクリル類)であって、2つの隣接する環、例えば縮合環が、2つ以上の炭素を共有するものを意味する。この多環のそれぞれの環は、置換又は非置換であり得る。
【0105】
用語「予防する(preventing)」は、当該技術分野で認識されており、ある状態、例えば、局所再発(例えば、疼痛)、癌などの疾患、心不全などの複合症候群(syndrome complex)、又は他の病状に関連して使用されるとき、当該技術分野では十分に理解されており、そして前記の組成物を投与されていない被験体と比較して、被験体における医学的状態の症状の頻度を減少させるか、又は症状の発現を遅延させる組成物を投与するステップを包含する。したがって、癌の予防には、例えば、無処置の対照集団と比較して、予防的治療を受けている患者集団において検出可能な癌増殖数を減少させること、及び/又は、例えば、統計的にかつ/又は臨床的に有意な量に基づいて、無処置の対照集団と比較して、処置された集団における検出可能な癌の増殖出現を遅延させることを包含する。感染症の予防は、例えば、無処置の対照集団に対し、処置された集団における感染症の診断数を減少させること、及び/又は、無処置の対照集団に対し、処置された集団において感染の症状の発症を遅延させることを包含する。疼痛の予防は、例えば、無処置の対照集団に比べて、処置された集団の被験体が経験する痛覚の強度を軽減するか、あるいは遅延させることを包含する。
【0106】
用語「プロドラッグ」は、生理学的条件の下、治療的に活性な薬剤に変換される化合物を包含する。プロドラッグを生成するための共通法は、生理学的条件下で、加水分解により所望の分子を作り出す部分を選択することを含むことである。他の実施態様において、前記のプロドラッグは、宿主動物の酵素活性によって変換される。
【0107】
用語「予防的(prophylactic)又は治療的」処置は、当該技術分野で認識されており、1つ以上の主題の組成物を宿主に投与することを包含する。好ましくない状態(すなわち、宿主動物の疾患又は他の好ましくない状態)の臨床的顕在化に先立って投与されれば、その処置は予防的であり(すなわち、その処置が、好ましくない状態の発症から宿主を保護する。)、一方で、好ましくない状態の臨床的顕在化後に投与されれば、その処置は治療的である(すなわち、その処置が、存在する好ましくない状態又はその副作用を減少させ、改善させ、安定させることが意図される。)。
【0108】
本明細書において使用されるように、用語「プロテアソーム」は免疫プロテアソーム、及び構成的プロテアソームを含むことを意図する。
【0109】
用語「置換」は、骨格の1つ以上の炭素において、水素に置き換わった置換基を有する部分のことをいう。「置換」又は「・・・で置換された」は、前記の置換が、置換された原子及び置換基についての許容される原子価に満たしており、しかも前記の置換により安定な化合物が生ずる、例えば、転位、環化、脱離などによる転換を自動的に起こらないという条件を内包していることが理解されるであろう。本明細書において使用されるように、用語「置換された」は、有機化合物の許容される置換基をすべて含むことを意図している。広範な実施態様において、許容される置換基には、非環式及び環式、分枝及び非分枝、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物の置換基が含まれる。前記の許容される置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物については同一又は異なり得る。本発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、及び/又は、前記のヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書中に記載される許容可能なすべての有機化合物の置換基を有してもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族基若しくは複素芳香族基を挙げることができる。適切であれば、炭化水素鎖上に置換された基が、それ自体に置換され得るということを、当業者ならば理解するであろう。
【0110】
主題の処置方法に関する化合物の「治療有効量」は、処置されるべき障害若しくは状態、あるいは美容目的の臨床学的に受容可能な基準に従って、すなわち、いずれの医療処置にも適用可能な妥当な利益対危険比で、(哺乳類、好ましくはヒトに)所望の投薬量レジメンの一部として投与されたとき、症状を緩和するか、状態を改善するか、又は疾病状態の発現を遅らせる調合剤における前記の化合物の量のことをいう。
【0111】
用語「チオエーテル」は、上記で定義されるように、それに結合した硫黄部分を有するアルキル基のことをいう。好ましい実施態様において、「チオエーテル」は、S−アルキルにより表される。代表的なチオエーテル基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0112】
本明細書において使用されるとき、用語「処置する」又は「処置」は、被験体の状態を改善又は安定させるように、症状、臨床兆候、及び状態の根本的な病理を、逆転、軽減、又は阻止することを包含する。
【0113】
(20Sプロテアソームに対する選択性)
本明細書において開示される酵素阻害剤類似体及びプロドラッグが有用である理由は、1つには、それらが20Sプロテアソームの作用を阻害するためである。加えて、他の20Sプロテアソーム阻害剤と異なり、本明細書において開示されるこの化合物は、他のプロテアーゼと比較して、20Sプロテアソームに対し、非常に選択的である。つまり、まさにこの本発明の化合物は、他のプロテアーゼ、例えば、カテプシン、カルパイン、パパイン、キモトリプシン、トリプシン、トリペプチジルペプチダーゼIIに対してよりも、20Sプロテアソームに対する選択性を示す。20Sプロテアソームに対する酵素阻害剤の選択性は、約50μM未満の濃度において、この酵素阻害剤が20Sプロテアソームの触媒活性の阻害を示す一方で、他のプロテアーゼ(例えば、カテプシン、カルパイン、パパイン、キモトリプシン、トリプシン、トリペプチジルペプチダーゼII)の触媒活性の阻害を示さないというものである。好ましい実施態様において、この酵素阻害剤は、約10μM未満の濃度において、20Sプロテアソームの触媒活性の阻害を示す一方で、これらの濃度における他のプロテアーゼの触媒活性の阻害を示さない。さらにより好ましい実施態様において、この酵素阻害剤は、約1μM未満の濃度において、20Sプロテアソームの触媒活性の阻害を示す一方で、これらの濃度における他のプロテアーゼの触媒活性の阻害を示さない。酵素反応速度論的測定法は、米国特許出願番号第09/569748号の実施例2、及びSteinら、Biochem、1996年、35巻、3899−3908ページに開示されている。
【0114】
(キモトリプシン様活性に対する選択性)
本明細書において開示される酵素を阻害する化合物の特定の実施態様はさらに有用である。なぜならば、それらの化合物は、トリプシン様活性及びPGPH活性と比較すると、20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性を、効率的かつ選択的に阻害し得ることである。20Sプロテアソームのキモトリプシン様活性は、大きな疎水性残基のすぐ傍におけるペプチドの切断により特徴づけられる。特に、Ntnヒドロラーゼのキモトリプシン様活性は、標準的な基質の切断により測定されうる。このような基質の例は、当該分野において公知である。例えば、ロイシルロイシルバリニルチロシン(leucylleucylvalinyltyrosine)誘導体が、使用され得る。酵素反応速度論的測定法は、米国特許出願公開第09/569748号の実施例2、及びSteinら、Biochem、1996年、35巻、3899−3908ページに開示されている。
【0115】
(酵素阻害剤の用途)
プロテアソーム阻害の生物学的意義は、数多くある。プロテアソーム阻害は、急増殖疾患、神経毒性/変性疾患、アルツハイマー病、虚血性状態、炎症、免疫関連疾患、HIV、癌、臓器移植拒絶、敗血ショック、抗原提示の阻害、ウイルス遺伝子発現の減少、寄生虫感染症、アシドーシス関連疾患、黄斑変性、肺動脈疾患、筋消耗疾患、線維症、骨及び毛髪の成長疾患が挙げられるがこれらに限定されない多数の疾患の予防及び/又は治療として提案されている。それゆえ、たとえば本明細書で開示されているように経口投与により生体で利用可能であるペプチドエポキシケトン構造を有する分子のようなプロテアソーム阻害剤組成物は、これらの疾患に罹った患者を処置する手段を提供する。
【0116】
プロテアソーム阻害剤組成物は、プロテアソームのタンパク質分解機能により直接的に媒介される状態(例えば、筋消耗)、又はNF−κBなどのプロテアソームによって処理されるタンパク質を介して間接的に媒介される状態を処置するために使用され得る。プロテアソームは、細胞調節(たとえば、細胞周期、遺伝子転写、及び代謝経路)、細胞内連絡、及び免疫応答(たとえば、抗原提示)に関連するタンパク質(たとえば、酵素)の迅速除去及び翻訳後プロセシングに関与する。以下に検討される具体的な例としては、β−アミロイドタンパク質及び調節タンパク質(例えば、サイクリン及び転写因子NF−κB)が挙げられる。
【0117】
細胞レベルにおいて、ポリユビキチン化されたタンパク質の蓄積、細胞の形態学的な変化、及びアポトーシスが、様々なプロテアソーム阻害剤による細胞の処理において報告されている。プロテアソームは、網状赤血球を成熟すること、及び線維芽細胞を成長することに関与する多くのタンパク質を分解する。インスリン又は血清を与えない細胞において、蛋白分解の速度がおよそ2倍になる。プロテアソームを阻害すると、蛋白分解が減るので、筋たんぱく質の減少及び腎臓又は肝臓への窒素負荷の両方を減らす。本発明の一実施態様は、悪液質及び筋消耗疾患の治療に関するものである。本発明の化合物は、たとえば癌、慢性感染症、熱病、筋廃用(muscle disuse)(萎縮)及び脱神経、神経損傷、飢餓状態、アシドーシスと関連した腎臓疾患及び肝疾患のような状態を治療するのに有用であり得る。Goldberg;米国特許第5,340,736号を参照のこと。それゆえ、本発明のある実施態様は、細胞における筋タンパク質の分解速度を減らすこと、細胞内タンパク質の分解速度を減らすこと、細胞内p53関連タンパク質の分解速度を減らすこと及びp53関連癌の成長を阻害することのための組成物を包含する。これらの方法の各々が、細胞(in vivo又はin vitro,たとえば患者の筋肉)に、本明細書で開示されたプロテアソーム阻害剤を含む薬学的組成物の有効量と接触させるステップを含む。
【0118】
細胞内の蛋白分解により、MHCクラスI媒介免疫応答を誘発するためにTリンパ球への提示のための低分子量のペプチドが生ずる。前記の免疫システムにより、ウイルスが感染したか又は腫瘍形成の変換を経た自系の細胞について評価する。ある実施態様において、本発明は、本明細書で開示される化合物に対して前記の細胞を被曝させるステップを含む、細胞における抗原提示を阻害するための方法に関するものである。本発明のプロテアソーム阻害剤は、アレルギー、喘息、器官/組織拒絶反応(移植片対宿主疾患)及び、例えば狼瘡、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症及び炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)が挙げられるがこれに限定されるものではない自己免疫疾患のような免疫関連状態を処置するために使用され得る。したがって、ある実施態様において、本発明は、本明細書において開示されるプロテアソーム阻害剤の有効量を被験体に投与するステップを含む、被験体の免疫システムを抑制するための方法に関するものである。
【0119】
ある実施態様において、本発明は、プロテアソーム又は他の多種の触媒活性を有するNtnにより産生される抗原性ペプチドのレパートリーを変えるための方法に関するものである。たとえば、もし20SプロテアソームのPGPH活性が選択的に阻害されるならば、あらゆる酵素阻害がないか又は例えばプロテアソームのキモトリプシン様活性の選択的阻害によるかして産生され、そして提示される以上に、抗原性ペプチドの異なるセットがプロテアソームにより産生され、そして細胞の表面のMHC分子中に提示される。
【0120】
本発明のもう一つの実施態様は、神経変性疾患及び状態(例えば、発作、神経系に対する虚血性損傷、神経外傷(例えば、衝撃性脳損傷、脊髄損傷、及び神経系に対する外傷性損傷)、多発硬化症、及び他の免疫媒介性ニューロパシー(例えば、ギラン・バレー症候群及びその改変体、急性運動軸策ニューロパシー、急性炎症脱髄性多発ニューロパシー、及びフィッシャー症候群)、HIV/AIDS痴呆、軸策障害、糖尿病ニューロパシー、パーキンソン疾患、ハンティングトン病、多発硬化症、細菌性髄膜炎、寄生虫性髄膜炎、真菌性髄膜炎、ウイルス性髄膜炎、脳炎、血管性認知症、多発脳梗塞性認知症、レヴィー小体認知症、前頭葉認知症(例えば、ピック症)、皮質下認知症(例えば、ハンティングトン病又は進行性核上麻痺)、病巣皮質萎縮症候群(例えば、原発性失語症)、代謝性中毒性認知症(例えば、慢性甲状腺低下症、又はB12欠乏症)、及び感染により引き起こされる認知症(例えば、梅毒又は慢性髄膜炎)を含むが、これらに限定されない、処置のための、本明細書において開示されるプロテアソーム阻害剤組成物の使用に関するものである。
【0121】
アルツハイマー病は、老人班及び脳血管におけるβ−アミロイドタンパク質(β−AP)の細胞外沈着物によって特徴付けられる。β−APは、アミロイドタンパク質前駆体(APP)に由来する39個乃至42個のアミノ酸のペプチドフラグメントである。APPの少なくとも3つのアイソフォーム(695個、751個、及び770個のアミノ酸)が公知である。mRNAの可変スプライシングが、前記のアイソフォームを生じさせる;通常プロセシングが、β−AP配列の部分に影響を及ぼし、それにより、β−APの発生を妨げている。プロテアソームによる異常なタンパク質プロセシングが、アルツハイマー病の脳中の大量のβ−APを生じさせていると考えられている。ラットにおける、APPプロセシング酵素は、約10種のサブユニット(22kDa−32kDa)を含有している。25kDaのサブユニットは、ヒトマクロペイン(human macropain)のβサブユニットと同一の、X−Gln−Asn−Pro−Met−X−Thr−Gly−Thr−SerのN末端配列を有する(Kojima,S.ら、Fed.Eur.Biochem.Soc.、1992年、304巻:57−60ページ)。前記のAPPプロセシング酵素は、Gln15−−Lys16結合で切断し;カルシウムイオンの存在で、前記の酵素はまた、Met−−Asp結合、及びAsp−−Ala結合でも切断し、β−APの細胞外ドメインを放出する。
【0122】
したがって、本発明の一実施態様は、本明細書において開示される化合物(例えば、薬学的組成物)の有効量を被験体に投与するステップを包含する、アルツハイマー病を処置する方法に関するものである。前記の治療としては、β−APプロセシング速度を低下させること、β−APプラーク形成速度を低下させること、β−AP生成速度を低下させること、及びアルツハイマー病の臨床兆候を軽減することが挙げられる。
【0123】
線維症は、繊維芽細胞の急激な増殖から生ずる瘢痕組織の過剰かつ持続する形成であり、かつTGF−βシグナリング経路の活性化と関連している。線維症は、細胞外マトリックスの広い範囲にわたる蓄積を含み、かつほとんどのあらゆる組織又はいくつかの異なる組織の中で起こりうる。通常、TGF−β刺激に係るターゲット遺伝子の転写を活性化する細胞内シグナリングタンパク質(Smad)のレベルは、プロテアソーム活性により制御されている(Xuら,2000年)。しかしながら、TGF−βシグナリング成分の加速された分解が、癌や他の急増殖状態において観察される。したがって、ある実施態様において、本発明は、例えば糖尿病性網膜症、黄斑変性、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、IgA腎症、肝硬変、胆道閉鎖症、うっ血心不全、強皮症、放射線誘発線維症、及び肺線維症(特発性肺線維症、コラーゲン血管疾患、サルコイドーシス、間隙性肺疾患及び外因性肺疾患)のような急増殖状態を処置するための方法に関するものである。火傷を負った患者の治療は、しばしば繊維症により妨げられるので、ある実施態様において、本発明は、火傷を治療するための前記の阻害剤を局所又は全身的に投与することに関するものである。外科手術後の傷が治癒することは、しばしば繊維症の阻害により防ぐことができ得る、形が崩れた瘢痕と関連している。したがって、ある実施態様において、本発明は瘢痕の予防又は減少のための方法に関するものである。
【0124】
特定のプロテアソーム阻害剤は、インビトロ及びインビボにおけるユビキチン化されたNF−κBの分解及びプロセシングの両方を妨げる。プロテアソーム阻害剤はまた、IκB−αの分解、及びNF−κBの活性化を妨げる(Palombellaら、Cell、1994年、78巻:773−785ページ、及びTraencknerら、EMBO J.、1994年、13巻:5433−5441ページ)。本発明の一実施態様は、前記の細胞を、本明細書において記載される化合物と接触させるステップを包含する、IκB−α分解を阻害するための方法に関するものである。ある実施態様では、本発明は、細胞、筋肉、臓器、又は被験体において、NF−κBの細胞含量を減少させるための方法に関するものであり、前記の細胞、筋肉、臓器、又は被験体を、本明細書において記載される化合物と接触させるステップを包含する。
【0125】
NF−κBは、Relタンパク質ファミリーのメンバーである。転写活性化タンパク質のRelファミリーは、2つのグループに分けられ得る。第一のグループは、タンパク質分解プロセシングを必要とし、p50(NF−κB1、105kDa)及びp52(NF−κ2、100kDa)を含む。第2のグループは、タンパク質分解プロセシングを必要とせず、p65(RelA、Rel(c−Rel)及びRelB)を含む。ホモダイマー及びヘテロダイマーの両方が、Relファミリーメンバーによって形成され得る。例えば、NF−κBは、p50〜p65のヘテロダイマーである。IκB及びp105のリン酸化及びユビキチン化された後、前記の2つのタンパク質は、それぞれ分解及び処理され、細胞質から核へ転座させる活性NF−κBを生成する。ユビキチン化されたp105はまた、精製されたプロテアソームによっても処理される(Palombellaら、Cell、1994年、78巻:773−785ページ)。活性NF−κBは、他の転写活性化物質(例えば、HMGI(Y))と、立体特異的エンハンサー複合体を形成し、特定の遺伝子の選択的発現を誘発する。
【0126】
NF−κBは、免疫応答、炎症応答、及び有糸分裂事象の発生に関与する遺伝子を調節する。例えば、NF−κBは、免疫グロブリン軽鎖κ遺伝子、IL−2レセプターα鎖遺伝子、クラスI主要組織適合複合体遺伝子、並びに、例えば、IL−2、IL−6、顆粒球コロニー刺激因子、及びIFN−βをコードする多数のサイトカイン遺伝子の発現のために必要とされる(Palombellaら、Cell、1994年、78巻:773−785ページ)。ある実施態様では、本発明は、IL−2、MHC−I、IL−6、TNFα、IFN−β、又は他の以前に言及されたいずれかのタンパク質の発現レベルにも影響を及ぼす方法を包含し、各方法は、本明細書に開示されたプロテアソーム阻害剤組成物の有効量を、被験体に投与するステップを包含する。p50を含む複合体は、急性炎症応答及び免疫応答の迅速媒介物質である(Thanos,D.及びManiatis,T.、Cell、1995年、80巻:529−532ページ)。
【0127】
リポ多糖体(LPS)誘発性サイトカイン(例えば、TNFα)の過剰産生は、敗血症性ショックと関連付けられるプロセスの中心であると考えられている。さらに、LPSによる細胞の活性化における第一ステップは、LPSの特異な膜レセプターへの結合であるということが、一般に受け入れられている。前記の20Sプロテアソーム複合体のαサブユニット及びβサブユニットは、LPS結合タンパク質として同定されており、LPS誘導性シグナル伝達が、敗血病の処置又は予防における重要な治療標的であり得ることを示唆している(Qureshi,N.ら、J.Immun.、2003年、171巻:1515−1525ページ)。したがって、ある実施態様において、前記のプロテアソーム阻害剤組成物は、敗血症性ショックを予防、及び/又は、処置するためのTNFαの阻害のために使用され得る。
【0128】
NF−κBはまた、E−セレクチン、P−セレクチン、ICAM、及びVCAM−1をコードする細胞接着遺伝子の発現に関与する(Collins,T.、Lab.Invest.、1993年、68巻:499−508ページ)。ある実施態様では、本発明は、細胞接着(すなわち、E−セレクチン、P−セレクチン、ICAM、又はVCAM−1により媒介される細胞接着)を阻害するための方法であり、本明細書において開示されるプロテアソーム阻害剤を含む薬学的組成物の有効量を、細胞に接触させるステップ(又は被験体に投与するステップ)を包含する。
【0129】
NF−κBはまた、HIV−エンハンサー/プロモータに、特異的に結合する。mac239のNefに比べて、pbj14のHIV調節タンパク質Nefは、タンパク質キナーゼ結合を制御する領域にある2つのアミノ酸だけ異なる。タンパク質キナーゼが、IκBのリン酸化のシグナルを伝達し、ユビキチン−プロテアソーム経路を通じてIκB分解を誘発すると考えられている。分解後、NF−κBは核内に放出されるので、HIVの転写を向上させる(Cohen,J.、Science、1995年、267巻:960ページ)。ある実施態様は、本発明は、被験体におけるHIV感染を阻害するため、又は減少させるための方法、又はウイルス遺伝子の発現レベルを低下させるための方法に関するものあり、それぞれの方法は、本明細書において開示されるプロテアソーム阻害剤組成物の有効量を、被験体に投与するステップを包含する。
【0130】
ウイルス感染症は多くの疾患の病理学に寄与している。例えば進行中の心筋炎及び拡張された心臓障害のような心臓の状態がコクサッキーウイルスB3に関連している。感染されたマウスの心臓のcomparative whole−genome microarray analysesにおいて、特定のプロテアソームサブユニットが、慢性心筋炎を発症したマウスの心臓において一様に活性化された(Szalayら, Am J Pathol 168巻:1542−52ページ,2006年)。いくらかのウイルスは、ウイルスがそのエンドソームからその細胞質ゾルに放出されるウイルスの侵入ステップにおいて、ユビキチン−プロテアソームシステムを利用している。マウス肝炎ウイルス(MHV)は、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスも属するCoronaviridae科に属する。Yu及びLai(J Virol 79巻:644−648ページ,2005年)は、処置しない細胞の力価と比較すると減少したウイルス力価と相関すことから、MHVが感染した細胞をプロテアソーム阻害剤により処置すると、ウイルスの複製が減少することを示した。Hepadnaviridae virus科に属するヒトB型肝炎ウイルス(HBV)も同様に、増殖するためにウイルスによりエンコードされたエンベロープタンパク質を必要とする。プロテアソーム分解経路を阻害すると、分泌されたエンベロープタンパク質が有意に減少する(Simsekら, J Virol 79巻:12914−12920ページ,2005年)。HBVに加え、他の肝炎ウイルス(A、C、D及びE)もまた、分泌、形態形成及び病原のためにはユビキチン−プロテアソーム分解経路を利用し得る。したがって、ある実施態様において、本発明は、本明細書に開示された化合物の有効量と細胞と接触させる(又は被験体に投与する)ステップを含む、たとえばSARS、又はA型、B型、C型、D型及びE型肝炎のようなウイルス感染症を処置するための方法に関するものである。
【0131】
虚血及び再灌流傷害により、体の組織に行き渡る酸素が欠乏する状態である低酸素症が発症する。前記の状態はIκ−Bαの分解を増加させるので、NF−κBが活性化される(Koongら,1994年)。低酸素症を生じる障害の重篤さを、プロテアソーム阻害剤の投与により軽減することができることが示された(Gaoら,2000年;Baoら,2001年;Pyeら,2003年)。したがって、本発明の実施態様は、本明細書で開示されたプロテアソーム阻害剤の有効な量を、前記の治療が必要な被験体に投与するステップを含む、虚血状態又は再灌流障害を処置する方法に関するものである。前記の状態又は障害の例としては、急性冠動脈症候群(脆弱性プラーク)、動脈閉塞症(心臓動脈、大脳動脈、末梢動脈及び脈管の閉塞)、アテローム性動脈硬化症(冠状動脈硬化症、冠状動脈疾患)、梗塞、心不全、膵炎、心筋層の肥大、狭窄及び再狭窄が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
タンパク質分解プロセシングを必要とする他の真核生物転写因子としては、基本転写因子TFIIA、単純疱疹ウイルスVP16アクセサリータンパク質(宿主細胞因子)、ウイルス誘発IFN調節因子2タンパク質、及び膜結合型ステロール調節因子結合タンパク質1が挙げられる。
【0133】
ある実施態様では、本発明は、サイクリン依存性真核細胞周期に影響を及ぼすための方法であり、(インビトロ又はインビボにおいて)細胞を、本明細書において開示されたプロテアソーム阻害剤組成物に曝露するステップを包含する。サイクリンは細胞周期制御に関与するタンパク質である。プロテアソームは、サイクリンの分解に関与する。サイクリンの例としては、有糸分裂サイクリン類、G1サイクリン類、及びサイクリンBが挙げられる。サイクリンの分解により、細胞は、1つの細胞周期ステージ(たとえば、有糸分裂)を出て、そして別の細胞周期ステージ(たとえば、分裂)に入ることを可能となる。すべてのサイクリン類が、p34cdc2タンパク質キナーゼ、又は関連するキナーゼと関連すると考えられている。タンパク質分解標的シグナルが、アミノ酸42−RAALGNISEN−50(分解ボックス(destruction box))に局在化される。サイクリンがユビキチンリガーゼに易損性の形態に変換されるか、又はサイクリン特異的リガーゼが、有糸分裂の間に活性化されるという証拠がある(Ciechanover,A.、Cell、1994年、79巻:13−21ページ)。プロテアソームの阻害は、サイクリン分解を阻害するので、例えばサイクリン関連癌において細胞増殖を阻害する(Kumatoriら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、1990年、87巻:7071−7075ページ)。本発明の一実施態様は、被験体において増殖性疾患(たとえば、癌、乾癬、又は再狭窄)を処置するための方法に関するものであり、本明細書において開示される有効量のプロテアソーム阻害剤組成物の有効量を、被験体に投与するステップを包含する。本発明はまた、被験体におけるサイクリン関連炎症を処置するための方法に関するものであり、本明細書において記載されるプロテアソーム阻害剤組成物の治療学的に有効量を、被験体に投与するステップを包含する。
【0134】
本発明のさらなる実施態様は、癌タンパク質のプロテアソーム依存性調節に影響を及ぼすための方法、及び癌増殖を処置又は阻害する方法に関するものであり、それぞれの方法は、細胞を、本明細書において開示されるプロテアソーム阻害剤組成物に(インビボ、たとえば被験体において、又はインビトロにおいて)曝露させるステップを包含する。HPV−16及びHPV−18誘導E6タンパク質は、粗網赤血球溶解産物において、p53のATP及びユビキチン依存性複合化並びに分解を刺激する。劣性の癌遺伝子p53は、変異した易熱性E1を備えた細胞株において非許容温度で蓄積することが示された。p53が高レベルになると、アポトーシスを引き起こし得る。ユビキチン系により分解される癌原タンパク質(proto−oncoprotein)の例としては、c−Mos、c−Fos、及びc−Junが挙げられる。ある実施態様では、本発明は、p53関連アポトーシスを処置するための方法に関するものであり、本明細書において開示されるプロテアソーム阻害剤の有効量を、被験体に投与するステップを包含する。
【0135】
別の実施態様において、前記の開示された組成物は、例えば、原虫寄生生物に起因する感染症のような寄生虫感染の処置に有用であり得る。これらの寄生虫のプロテアソームは、主に細胞分化活性及び細胞複製活性に関与すると考えられている(Paugamら、Trends Parasitol.、2003年、19巻(2号):55−59ページ)。さらに、エントアメーバ種は、プロテアソーム阻害剤に暴露されると、被嚢形成能力を喪失することが示されている(Gonzalesら、Arch.Med.Res.、1997年、28巻、Spec No:139−140ページ)。特定のこのような実施態様において、前記のプロテアソーム阻害剤組成物のための管理プロトコルは、プラスモディウム(Plasmodium sps.)(マラリアの原因となる、P.falciparum、P.vivax、P.malariae、及びP.ovaleを含む)、トリパノソーマ(Trypanosoma sps.)(シャーガス病の原因となる、T.cruzi、及びアフリカ睡眠病の原因となる、T.bruceiを含む)、リーシュマニア(Leishmania sps.)(L.amazonensis、L.donovani、L.infantum、L.mexicanaなどを含む)、ニューモシスチス カリニ(Pneumocystis carinii)(AIDSなどにより免疫抑制された患者において、肺炎の原因となることが知られている原虫)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、エントアメーバ・インバデンス(Entamoeba invadens)、及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)から選択される寄生原生動物により発症する、ヒトにおける寄生虫感染症の処置に有用である。ある実施態様において、前記の開示されたプロテアソーム阻害剤組成物は、プラスモディウムヘルマニ(Plasmodium hermani)、クリプトスポリジウム(Cryptoridium sps.)、単包条虫(Echinococcus granulosus)、アイメリアテネラ(Eimeria tenella)、ザルコシスティスニューローナ(Sarcocystis neurona)、及びアカパンカビ(Neurospora crassa)から選択される原虫寄生生物に起因する、動物及び家畜における寄生虫感染の処置に対して有用である。寄生虫疾患の処置におけるプロテアソーム阻害剤として有用な他の化合物は、国際公開第98/10779号パンフレットにおいて記載されており、この特許文献は、本明細書において、その全体が援用されている。
【0136】
ある実施態様では、前記のプロテアソーム阻害剤組成物は、赤血球及び白血球において回復することなく、寄生生物におけるプロテアソーム活性を阻害する。ある前記の実施態様において、前記の血球の長い半減期は、再発する寄生生物への曝露に対する治療法に関し、長期的な防護を提供し得る。ある実施態様では、前記のプロテアソーム阻害剤組成物は、将来の感染に対する化学的予防法に関し、長期的な防護を提供し得る。
【0137】
20Sプロテアソームに結合する阻害剤が、骨器官培養において骨形成を刺激することもまた、実証されている。さらに、前記の阻害剤がマウスに対して全身的に投与されたとき、特定のプロテアソーム阻害剤は、骨体積及び骨形成速度を70%以上増大させた(Garrett,I.R.ら、J.Clin.Invest.2003年、111巻:1771−1782ページ)。これはつまり、ユビキチン−プロテアソーム機構が、骨芽細胞分化及び骨形成を、調節することを示唆している。したがって、開示されたプロテアソーム阻害剤組成物は、骨粗鬆症など、骨喪失と関連付けられる疾患の処置及び/又は予防において有用であり得る。
【0138】
プロテアソーム阻害は、癌、特に多発性骨髄腫の処置のための治療戦略としてすでに確立されていた。しかしながら、in vitro及びin vivoのモデルに基づいて、他の癌、特にヘム関連の悪性疾患及び固形癌に対する戦略として役立ちうることが推定されていた。したがって、本発明のある実施態様は、癌を処置する方法に関するものであって、本明細書で開示されたプロテアソーム阻害剤組成物の有効な量を前記の処置が必要な被験体に投与するステップを包含する。
【0139】
(投与)
本明細書中に記載の通りに調製される化合物は、当該分野で周知の通り、処置されるべき障害、並びに患者の年齢、状態及び体重に依存して、種々の形態で投与され得る。例えば、前記の化合物が経口投与されるべき場合、これらは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤として処方され得る;又は非経口投与については、これらは、(静脈内、筋肉内若しくは皮下)注射剤、点滴注入調製物、又は坐剤として処方され得る。眼粘膜経路による投与については、これらは、点眼剤又は眼軟膏剤として製剤化され得る。これらの製剤は、従来の手段によって調製され得、そして所望の場合、活性成分は、任意の従来の添加剤又は賦形剤(例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、可溶化剤、懸濁助剤、乳化剤、コーティング剤、シクロデキストリン、及び/又は緩衝剤)と混合され得る。前記の投与量は、患者の症状、年齢及び体重、処置又は予防されるべき障害の性質及び重篤度、投与経路並びに薬物の形態に依存して異なるが、一般に、前記の化合物の0.01mg乃至2000mgの1日投薬量が成人患者には推奨され、これは、1回又は分割して投与され得る。
【0140】
単回投与形態を調製するために、キャリア材料と合わされ得る活性成分の量は一般に、治療効果を生じる化合物量である。所定の患者において処置効力に関して最も有効な結果を生じる、正確な投与時期及び/又は組成物量は、特定の化合物の活性、薬物動力学、及びバイオアベイラビリティー、患者の生理学的状態(年齢、性別、疾患の型及び病期、全般的身体状態、所定の投薬量に対する応答性、及び薬物適用の型を含む)、投与経路などに依存するであろう。しかしながら、上記のガイドラインは、被験体をモニタリングすること並びに最適な投薬時期及び/又は投薬量を調整することからなる、慣用実験にすぎないものを必要とする、例えば、最適な投与時期及び/又は投与量を決定するような、処置を微調整するための基本として用いられ得る。
【0141】
語句「薬学的に受容可能な」は、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/危険比と釣り合って、過度の毒性も、刺激も、アレルギー応答も、他の問題も合併症も伴わずに、ヒト及び動物の組織と接触させる使用に適切である、リガンド、物質、組成物、及び/又は投与量形態を言及するために本明細書中で用いられる。
【0142】
語句「薬学的に受容可能なキャリア」は、本明細書中で用いられる場合、例えば液体又は固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料のような、薬学的に受容可能な物質、組成物、又はビヒクルを意味する。各キャリアは、処方物の他のリガンド成分と適合し、そして患者に対して有害ではないという意味で「受容可能」でなければならない。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る物質のいくつかの例としては以下の例が挙げられる:(1)糖(例えば、ラクトース、グルコース、及びスクロース);(2)デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、並びに置換β−シクロデキストリン及び非置換β−シクロデキストリン);(3)セルロース、及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース);(4)粉末状トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑石;(8)賦形剤(例えば、カカオ脂及び坐剤ロウ);(9)油(例えば、落花生油、綿実油、紅花油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油);(10)グリコール類(例えば、プロピレングリコール);(11)ポリオール類(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコール);(12)エステル類(例えば、オレイン酸エチル及びラウリル酸エチル);(13)寒天;(14)緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム);(15)アルギン酸;(16)発熱物質非含有水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;及び(21)薬学的処方物に用いられる他の無毒性の適合性物質。ある実施態様では、本発明の薬学的組成物は、非発熱性である、すなわち、患者に投与した場合に有意な体温上昇を誘導しない。
【0143】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、前記の阻害剤の、比較的無毒性の、無機酸付加塩及び有機酸付加塩をいう。これらの塩を、前記の阻害剤の最後の単離及び精製の間にインサイチュ(in situ)で調製するか、又は遊離塩基形態の精製された阻害剤と適切な有機酸又は無機酸とを別々に反応させ、そしてこのように形成された塩を単離することにより調製してもよい。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチレート、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリルスルホン酸塩、及びアミノ酸塩などが挙げられる(例えば、Bergeら(1977年)Pharmaceutical Salts,J.Pharm.Sci.66巻:1−19ページを参照されたい。)。
【0144】
他の場合には、本発明の方法において有用な前記の阻害剤は、1以上の酸性官能基を含み得るので、薬学的に受容可能な塩基と薬学的に受容可能な塩を形成し得る。用語「薬学的に受容可能な塩」は、これらの例において、阻害剤の、比較的無毒性の、無機塩基付加塩及び有機塩基付加塩をいう。これらの塩は同様に、阻害剤の最終単離と精製との間にインサイチュ(in situ)で調製されるか、あるいは遊離酸形態の精製された阻害剤と、例えば、薬学的に受容可能な金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、若しくは重炭酸塩のような適切な塩基、アンモニア、又は薬学的に受容可能な有機一級アミン、有機二級アミン若しくは有機三級アミンとを別々に反応させることにより調製されてもよい。代表的なアルカリ塩又はアルカリ土類塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成に有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、Bergeら,前出を参照のこと)。
【0145】
着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味剤、矯臭剤、保存剤並びに抗酸化剤だけでなく、湿潤剤、乳化剤、及び例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤もまた、この組成物中に添加してもよい。
【0146】
薬学的に受容可能な抗酸化剤の例としては以下が挙げられる:(1)水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);及び(3)金属キレート化剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0147】
経口投与に適している製剤は、活性成分として所定量の阻害剤を各々含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントである風味のある基剤を用いるロゼンジ、散剤、顆粒剤の形態であってもよく、又は水性若しくは非水性の液体中の溶液若しくは懸濁液として存在してもよく、又は水中油型若しくは油中水型の液体乳濁物として存在してもよく、又はエリキシル剤若しくはシロップ剤として存在してもよく、又はトローチ剤(不活性マトリクス(例えば、ゼラチン及びグリセリン、若しくはスクロース及びアカシア)を用いる)として存在してもよく、そして/又はうがい薬として存在してもよい、などである。組成物はまた、ボーラス、舐剤、又はペーストとして投与され得る。
【0148】
経口投与のための固体投薬形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣丸、散剤、顆粒剤など)では、活性成分は、1以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム)及び/又は以下のうちのいずれかと混合される:(1)フィラー類若しくは増量剤類(例えば、デンプン類、シクロデキストリン類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸);(2)結合剤類(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及び/又はアラビアゴムなど);(3)湿潤剤類(humectant)(例えば、グリセロール);(4)崩壊剤類(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート類、及び炭酸ナトリウム);(5)溶解遅延剤(例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤類(例えば、四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤類(wetting agent)(例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールなど);(8)吸収剤類(例えば、カオリン及びベントナイト粘土);(9)滑沢剤類(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物);並びに(10)着色剤類。
カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤を含み得る。カプセル剤、錠剤及びピル剤の場合、前記の薬学的組成物は、また緩衝剤を含んでいてもよい。類似タイプの固体組成物にはまた、高分子量ポリエチレングリコールなどだけでなく、ラクトースすなわち乳糖のような賦形剤を用いて、軟質及び硬質の充填ゼラチンカプセル剤において、フィラーとしても用いられ得る。
【0149】
錠剤は、必要に応じて1以上の補助成分を用いて、圧縮又は成形によって調製され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製されてもよい。成形錠剤は、適切な機械において、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化した阻害剤の混合物を成形することにより調製されてもよい。
【0150】
錠剤、及び例えば、糖衣丸、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤ような他の固形投与形態は、必要に応じて、刻み目が付けられてもよく、又はコーティング及びシェル(例えば、腸溶性コーティング及び製薬処方分野で周知の他のコーティング)を用いて調製されてもよい。これらはまた、例えば、所望の放出プロフィールを提供する種々の比率でヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム、及び/又はマイクロスフェアを用いて、その中の活性成分の徐放又は制御された放出を提供するように処方されてもよい。これらは、例えば、細菌保持フィルタを用いる濾過によって、又は滅菌水若しくは他の何らかの注射可能な滅菌媒体中に使用直前に溶解され得る無菌固体組成物の形態で滅菌剤を含めることによって、滅菌されてもよい。これらの組成物はまた、不透明化剤を必要に応じて含んでもよく、そして必要に応じて遅延した様式で、胃腸管の特定の部分に活性成分のみを、又は活性成分を優先的に放出する組成物であってもよい。用いられ得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びロウが挙げられる。前記の活性成分はまた、適切な場合には、上記の賦形剤のうちの1以上を用いた、マイクロカプセル化形態であってもよい。
【0151】
経口投与のための液体投薬形態としては、薬学的に受容可能な乳濁剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、及びエリキシル剤が挙げられる。前記の活性成分に加えて、前記の液体投与形態は、当該分野で通常用いられる不活性希釈剤(例えば、水又は他の溶媒)、可溶化剤、及び乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びそれらの混合物)などを含んでいてもよい。
【0152】
不活性希釈剤以外に、前記の経口組成物はまた、佐剤(例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤)、甘味料、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料、及び保存剤を含んでいてもよい。
【0153】
懸濁液は、前記の活性な阻害剤に加えて、懸濁剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物)を含んでいてもよい。
【0154】
直腸投与又は膣投与のための処方物は、坐剤として与えられてもよく、その坐剤は、1以上の阻害剤を1以上の適切な非刺激性の賦形剤又はキャリアと混合することによって調製され得、その賦形剤又はキャリアとしては、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ロウ又はサリチル酸塩が挙げられる。この坐剤は室温で固体であるが体温では液体であり、それゆえ直腸又は膣腔内で融解し、前記の活性成分を放出する。
【0155】
膣投与に適切な処方物としてはまた、当該分野で適切であることが公知である前記のキャリアを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡剤、又はスプレー処方物が挙げられる。
【0156】
阻害剤の局所投与又は経皮投与のための投薬形態としては、散剤、スプレー剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション剤、ゲル、液剤、パッチ、及び吸入剤が挙げられる。前記の活性成分は、薬学的に受容可能なキャリア、及び必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤、又は噴霧剤と、滅菌条件下で混合されてもよい。
【0157】
前記の軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、阻害剤に加えて、賦形剤(例えば、動物性脂肪及び植物性脂肪、油状物、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、滑石、及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物)を含んでいてもよい。
【0158】
散剤及びスプレー剤は、阻害剤に加えて、賦形剤(例えば、ラクトース、滑石、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物)を含んでいてもよい。スプレー剤は、慣習的な噴霧剤(例えば、クロロフルオロ炭化水素及び揮発性の非置換炭化水素(例えば、ブタン及びプロパン))をさらに含んでいてもよい。
【0159】
前記の阻害剤は、代替的に、エアロゾルによって投与され得る。これは、前記の組成物を含む、水性エアロゾル、リポソーム調製物、又は固形粒子を調製することによって達成され得る。非水性(例えば、フルオロカーボン噴霧剤)懸濁液が使用され得る。超音波噴霧器は、前記の化合物の分解を生じ得る、剪断する薬剤に曝されるのを最小限にするので、超音波噴霧器が好ましい。
【0160】
通常は、水性エアロゾルは、薬剤の水溶液又は水性懸濁液を従来の薬学的に受容可能なキャリア及び安定剤と一緒に配合することによって調製される。前記のキャリア及び安定剤は、特定の組成物の要件によって変わるが、代表的には、非イオン性界面活性剤(Tween、Pluronic、ソルビタンエステル、レシチン、Cremophor)、薬学的に受容可能な共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール)、血清アルブミンのような無害のタンパク質、オレイン酸、アミノ酸(例えば、グリシン)、緩衝液、塩、糖、又は糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは、一般的に、等張性溶液から調製される。
【0161】
経皮パッチは、身体への阻害剤の送達を制御することができるという更なる利点を有する。前記の投薬形態は、前記の薬剤を適切な媒体中に溶解又は分散させることによって調製され得る。吸収促進剤もまた、皮膚を透過する前記の阻害剤の流れを増加させるために使用され得る。前記の流れの速度は、速度制御膜を提供するか、又は前記の阻害剤をポリマーマトリクス若しくはゲル中に分散させるかのいずれかによって制御され得る。
【0162】
非経口投与に適切な本発明の薬学的組成物は、1以上の阻害剤を、1以上の薬学的に受容可能な滅菌した水性又は非水系の溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液、あるいは使用直前に滅菌した注射可能溶液若しくは分散液中に再構成される滅菌された散剤と組み合わせて含み、そしてこれらの組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、処方物を投与することを意図される受容者の血液と等張性にする溶質、又は懸濁剤若しくは増粘剤を含んでいてもよい。
【0163】
本発明の薬学的組成物において使用され得る適切な水性キャリア及び非水系キャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、並びに注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エステル)が挙げられる。適切な流動性は、例えば、コーティング剤(例えば、レシチン)の使用、分散剤の場合に必要とされる粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0164】
これらの組成物はまた、佐剤(例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤)を含んでいてもよい。微生物の作用は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸など)の配合によって確実に防止され得る。張度調整剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を組成物に配合することもまた望ましい。さらに、注射可能な薬学的形態の持続性吸収は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)の配合によってもたらされ得る。
【0165】
いくつかの場合において、薬物の効果を持続させるために、皮下注射又は筋肉内注射からの前記の薬物の吸収を遅らせることが望ましい。例えば、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、前記の薬物を油状ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0166】
注入可能なデポ形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中に阻害剤のマイクロカプセルマトリクスを形成することによって調製される。薬物に対するポリマーの比率、及び使用される特定のポリマーの性状に依存して、薬物の放出速度が制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。注射可能なデポ剤はまた、前記の薬物を身体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルジョン中にトラップすることによって調製される。
【0167】
前記の薬剤の調製物は、経口的に、非経口的に、局所的に、又は経直腸的に投与されてもよい。当然のことながら、これらの調製物は、各々の投与経路に適切な形態により投与される。例えば、これらの調製物は、注射、吸入、点眼薬、軟膏、坐剤、注入によって、錠剤の形態又はカプセル剤の形態で投与され;ローション剤又は軟膏によって局所投与され;そして坐剤によって直腸投与される。経口投与が好ましい。
【0168】
句「非経口投与」及び「非経口投与される」とは、本明細書中で使用される場合、経腸投与及び局所投与以外の投与様式であって、通常は、注射による投与を意味し、静脈内注射、筋肉内注射、動脈内注射、髄腔内注射、嚢内注射、眼窩内注射、心臓内注射、皮内注射、腹腔内注射、経気管注射、皮下注射、表皮下注射、関節内注射、被膜下注射、クモ膜下注射、脊髄内注射及び胸骨内注射、並びに注入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
本明細書中で使用される場合、句「全身投与」、「全身的に投与した」、「末梢投与」及び「末梢的に投与した」とは、中枢神経系への直接投与以外の、リガンド、薬物又は他の物質の投与(例えば、皮下投与)を意味し、その結果、リガンド、薬物又は他の物質は患者の系に入り、次いで代謝及び他の同様のプロセスに供される。
【0170】
これらの阻害剤は、治療のためのヒト及び他の動物に、任意の適切な投与経路によって投与されてもよく、このような投与経路としては、経口投与、経鼻投与(例えば、噴霧による)、直腸投与、膣内投与、非経口投与、槽内投与、及び粉末、軟膏、又はドロップによる局所投与(口腔内投与及び舌下投与を含む。)が挙げられる。
【0171】
選択される投与経路に関わらず、適切な水和形態で使用され得る本発明の前記の阻害剤及び/又は薬学的組成物は、当業者に公知の慣習的な方法によって薬学的に受容可能な投薬形態に処方される。
【0172】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、この患者に対し毒性になることなく、特定の患者、組成物及び投与の形式について、所望の治療応答を達成するのに効果的な活性成分の量を得るために変動してもよい。
【0173】
開示される化合物の薬学的に受容可能な混合物中の濃度は、いくつかの要因に依存して変動し、このような要因としては、投与される化合物の用量、利用される前記の化合物の薬物動力学的な特徴、及び投与経路が挙げられる。概して、本発明の組成物は、非経口投与のため、他の物質の中に、本明細書中に開示される化合物を約0.1%w/v乃至10%w/v含有する水溶液として提供されてもよい。代表的な用量の範囲は、1乃至4回に分割して与えられる用量で、約0.01mg/kg体重/日乃至約50mg/kg体重/日である。各分割された用量は、同じか、又は異なる量の本発明の化合物を含有してもよい。前記の用量は、いくつかの要因、すなわち患者の全体的な健康、並びに前記の選択された化合物の製剤及び投与経路に依存して有効量となる。
【0174】
本発明の別の実施態様では、1種以上の他の治療剤が前記のプロテアソーム阻害剤と共に投与される併用療法(conjoint therapy)が提供される。前記の併用療法は、処置の個々の構成要素の同時投薬、連続投薬、又は分離投薬によって達成されてもよい。
【0175】
ある実施態様において、本発明の化合物は、一つ又はそれより多い他のプロテアソーム阻害剤と共に併用投与される。
【0176】
特定の実施態様において、本発明の化合物は、化学療法剤と共に併用投与される。適切な化学療法剤としては、ビンカアルカロイド類(すなわち、ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビンオレルビン(vinorelbine))、パクリタキセル、エピジポドフィロトキシン類(すなわち、エトポシド、テニポシド)、抗生物質類(ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)、アントラサイクリン類、ミトザントロン、ブレオマイシン類、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシン)、酵素類(全身的にL−アスパラギンを代謝し、自身のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を枯渇させる、L−アスパラギナーゼ);抗血小板剤類、抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤類(例えば、ナイトロジェンマスタード類(メクロレタミン、シクロホスファミド及びそのアナログ、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン類及びメチルメラミン類(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル類(ブスルファン)、ニトロソ尿素類(カルムスチン(BCNU)及びそのアナログ、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazene)類−デカルバジニン(DTIC);抗増殖/抗有糸分裂抗代謝剤(例えば、葉酸アナログ(メトトキサレート)、ピリミジンアナログ類(フルオロウラシル、フロクスウリジン、及びシタラビン)、プリンアナログ類及び関連する阻害剤類(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2−クロロデオキシアデノシン));アロマターゼ阻害剤類(アナストロゾール(anastrozole)、エキセメスタン(exemestane)及びレトロゾール);並びに白金配位錯体類(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトーテン、アミノグルテチミド;ヒストン脱アセチチル化酵素(HDAC)阻害剤類;ホルモン類(すなわち、エストロゲン)及びホルモンアゴニスト類(例えば、黄体化(leutinizing)ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト類(ゴセレリン、ロイプロリド及びトリプトレリン(triptorelin))が挙げられ得る。他の化学療法剤としては、メクロレタミン、カンプトテシン、イホスファミド(ifosfamide)、タモキシフェン、ラロキシフェン、ゲムシタビン(gemcitabine)、ナベルビン(navelbine)又は前述のものの任意のアナログ又は誘導改変体が挙げられ得る。
【0177】
ある実施態様において、本発明の化合物はサイトカインと併用投与される。サイトカインとしては、インターフェロン−γ、−α及び−β、インターロイキン1−8、10及び12、顆粒球単球コロニー刺激因子(Granulocyte Monocyte Colony−Stimulating factor(GM−CSF))、TNF−α及び−β、並びにTGF−βが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0178】
ある実施態様において、本発明の化合物はステロイドと共に併用投与される。適切なステロイドとしては、21−アセトキシプレグネノロン(acetoxypregnenolone)、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド(budesonide)、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール(cortivazol)、デフラザコート(deflazacort)、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフプレドネート(difuprednate)、エノキソロン(enoxolone)、フルアザコート、フルクロロニド、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド(fluocinolone acetonide)、フルオシノニド、フルコルチンブチル、フルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルランドレノリド(flurandrenolide)、プロピオン酸フルチカゾン(fluticasone)、ホルモコルタール(formocortal)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、ヒドロコルチゾン、エタボン酸ロテプレドノール(loteprednol etabonate)、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン 25−ジエチルアミノアセテート、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン、リメキソロン(rimexolone)、チソコルトール(tixocortol)、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサアセトニド、並びにそれらの塩及び/又は誘導体が挙げられる。
【0179】
特定の実施態様において、本発明の化合物は、免疫治療剤と共に併用投与される。適切な免疫治療剤としては、多剤耐性調節剤類(ベラパミル、バルスポーダル(valspordar)、ビリコダル(biricodar)、タリクイダル(tariquidar)、ラニクイダル(laniquidar))、ラパマイシン、マイコフェニレイト モフェチル(mycophenylate mofetil)、シクロホスミド(cyclophosomide)、シクロスポリン、サリドマイド、及びモノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。前記のモノクローナル抗体は、裸の抗体であるか、又は結合体化された抗体であって、例えば、リツキシマブ、トシツモマブ、アレムツズマブ(alemtuzumab)、ダクリズマブ(daclizumab)、エプラツズマブ(epratuzumab)、イブリツモマブ チウキセタン(ibritumomab tiuxetan)、ゲムツヅマブ オゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)、ベバシズマブ(bevacizumab)、セツキシマブ、エルロチニブ(erlotinib)及びトラスツズマブ(trastuzumab)のいずれかであり得る。
実施例
【実施例1】
【0180】
スキーム1:化合物010の合成
【0181】
【化11】

【0182】
化合物(003)
0℃としたN−Bocセリン(メチルエステル)(001)(2.5g,11.4mmol)、L−アラニン ベンジルエステル塩酸塩(002)(3.3g,11.4mmol)、HOBT(2.5g,18.2mmol)、及びHBTU(6.9g,18.24mmol)のテトラヒドロフラン溶液(400mL)にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(8.0mL,45.6mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)を10分間に亘り添加した。得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌した。減圧下でその溶媒の殆どを除去し、そして得られた物質を酢酸エチル(300mL)で希釈した。ついで、得られた溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)、及びブライン(100mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、そしてCelite−545を通して濾過した。減圧下で得られた溶液を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)により精製し、そして目的の化合物(003)(4.4g)を単離し、そしてLC/MS(LCRS(MH) m/z:457.23)で確認した。
【0183】
化合物(004)
0°Cとした化合物(003)(5.14g,11.25mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に10%Pd/C(500mg)を添加した。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で4時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通してろ過し、ついで濾取されたケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。得られた有機濾液を減圧下で濃縮し、ついで高真空下に2時間放置すると、化合物(004)が得られた。この化合物(004)については、LC/MS(LCRS(MH) m/z:367.18)で確認し、そしてさらに精製することなく使用した。
【0184】
化合物(006)
化合物(005)(3.9g,13mmol)(化合物(005)の合成については、米国特許出願番号第11/131,688を参照ください。)のトリフルオロ酢酸(50mL)溶液に10%Pd/C(600mg)を添加した。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で6時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通してろ過し、そして得られた濾取したケーキをジクロロメタン(200mL)で洗浄した。得られた濾液を減圧下で濃縮し、ついで高真空下に一夜放置して、化合物(006)を得た。この化合物(006)については、LC/MS(LCRS(MH) m/z:172.13)で確認し、そしてさらに精製することなく次の反応に使用した。
【0185】
化合物(007)
0℃に冷却した化合物(004)、化合物(006)、HOBT(2.5g,18mmol)及びHBTU(6.9g,18mmol)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、N,N−ジエチルイソプロピルアミン(8mL,46mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50mL)を10分間にわたり添加した。得られた混合物を室温下でさらに5時間撹拌した。得られた混合物の溶媒の殆どを減圧下で除去し、そして残存する物質を酢酸エチル(400mL)で希釈した。得られた溶液を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545と通して濾過した。得られた濾液の溶媒を減圧下で除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)にて精製すると、化合物(007)(3.5g)を得た。この化合物(007)をLC/MS(LCRS (MH) m/z:520.29)で同定した。
【0186】
化合物(008)
0℃とした化合物(007)(320mg,0.616mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を加え、そして得られた溶液を同温でさらに1時間撹拌した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、ついで高真空下に2時間放置すると化合物(008)が得られた。この化合物(008)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:420.24)で同定し、さらに精製することなく使用した。
【0187】
化合物(010)
0℃とした化合物(008)、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸(009)(94mg,0.74mmol)、HOBT(135mg,1.0mmol)及びHBTU(350mg,1.0mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を5分間にわたり添加した。得られた混合物を室温下さらに5時間撹拌し、ついで酢酸エチル(200mL)で希釈した。ついで、得られた酢酸エチル溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)で洗浄し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ついでCelite−545を通して濾過した。得られた有機層の溶媒を減圧下で除去し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(010)(195mg)が得られた。この化合物(010)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:529.26)で同定した。この化合物(010)は、40mg/kg、POで、プロテアソームCT−Lの活性を>90%阻害した。
【実施例2】
【0188】
スキーム2:化合物023の合成
【0189】
【化12】

【0190】
化合物(013)
0℃に冷却したN−Boc−L−ロイシン(011)(2.6g,11mmol)、L−フェニルアラニン ベンジルエステル塩酸塩(012)(2.9g,10mmol)、HOBT(1.7g,11mmol)及びHBTU(3.9g,11mmol)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.9mL,30mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を5分間に亘り添加した。得られた混合物を室温下さらに5時間撹拌し、そして均一な溶液とした。ついで、得られた溶液を酢酸エチル(300mL)希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。得られた濾液の溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(013)(4.4g)を得た。この化合物(013)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:469.26)で同定した。
【0191】
化合物(014)
0℃とした化合物(013)(4.32g,9.24mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、10%Pd/C(500mg)を添加した。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下4時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、そして濾取されたケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。得られた有機濾液を減圧下で濃縮し、ついで高真空下に置くと化合物(014)(3.5g)が得られた。この化合物(014)をLC/MS(LCRS (MH) m/z:378.22)で同定し、さらに精製することなく使用した。
【0192】
化合物(015)
0℃とした化合物(014)(3.5g,9.24mmol)、化合物(006)(2.4g,11mmol)、HOBT(1.7g,11mmol)及びHBTU(3.9g,11mmol)のテトラヒドロフラン(200 mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(4.9mL,30mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)を5分間に亘り加えた。得られた混合物をさらに5時間室温下で撹拌すると、均一な溶液となった。ついで、得られた溶液を酢酸エチル(400mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、Celite−545を通して濾過した。得られた溶液から溶媒を減圧下で除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると、目的とする化合物(015)(5.0g)を単離した。この化合物(015)をLC/MS(LCRS(MH)m/z: 532.33)で同定した。
【0193】
化合物(016)
0℃とした化合物(015)(5.0g,9.40mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(20mL)を5分間に亘り加え、得られた溶液を同温でさらに1時間攪拌した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと化合物(016)が得られた。この化合物(016)についてLC/MS(LCRS(MH) m/z:432.33)で同定し、さらに精製することなく使用した。
【0194】
化合物(18)
メチル 5−メチル−3−イソオキサゾール−カルボキシレート(017)(14.1g,100mmol)の四塩化炭素(500mL)溶液に、N−ブロモスクシノイミド(23g,130mmol)及び過酸化ベンゾイル(2.5g,10mmol)を室温で添加した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下80℃で一夜攪拌した。得られた反応液を冷却し、ジクロロメタン(500mL)で希釈し、ついで飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL×3回)で洗浄した。得られた水層をジクロロメタン(200mL)で抽出し、ついで得られた抽出液を有機層に合わせ、ブラインで洗浄後、MgSOで乾燥した。得られた有機層の溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(018)(7.9g)が得られた。この化合物(018)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:219.95)により同定した。
【0195】
化合物(019)
0℃とした化合物(018)(12g,55mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、4N−水酸化リチウム水溶液(35mL)を添加した。得られた混合物を室温で一夜攪拌した。ついで、得られた反応混合物を2N−塩酸でpH1とし、ついでテトラヒドロフラン(200mL×3回)で抽出した。得られた有機層を合わせ、ブライン(10mL)で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濾過した。得られた有機層の溶媒を除去し、そして得られた残渣を凍結乾燥すると、化合物(019)(8.2g)が得られた。この化合物(018)を、LC/MS(LCRS(MH) m/z:205.95)により同定し、そしてさらに精製することなく使用した。
【0196】
化合物(020)
化合物(019)(6.0g,30mmol)、ベンジルアルコール(3.5mL)及びp−トルエンスルホン酸(1.1g,6mmol)のトルエン(100mL)溶液を100℃で一夜攪拌した。得られた反応混合物を冷却し、酢酸エチル(300mL)で希釈し、ついで飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。ついで、得られた水層を酢酸エチル(200mL)で抽出した。得られた有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、ついで硫酸ナトリウムで乾燥後濾過した。得られた有機層の溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると、化合物(020)(5.8g)が得られた。この化合物(020)をLC/MS(LCRS(MH) m/z: 295.98)により同定した。
【0197】
化合物(020)
化合物(020)(2.0g,6.8mmol)及びモルホリン(3.0mL)を含むテトラヒドロフラン(50mL)溶液を室温下で2時間攪拌した。得られた反応混合物の溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル/メタノール)で精製すると化合物(021)(820mg)が得られた。この化合物(021)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:303.13)で同定した。
【0198】
化合物(022)
化合物(021)(400mg,1.32mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液に10%Pd/C(100mg)を加え、そして得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下室温で2時間攪拌した。ついで、得られた反応混合物を、Celite−545を通して濾過後、濃縮すると化合物(022)が得られた。この化合物(022)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:213.08)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0199】
化合物(023)
0℃とした、化合物(016)(130mg,0.3mmol)、化合物(022)(70mg,0.4mmol)、HOBT(70mg,0.5mmol)及びHBTU(170mg,0.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温でさらに5時間攪拌すると、均一な溶液が得られた。ついで、得られた溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。得られた濾液の溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると、化合物(023)(125mg)が得られた。この化合物(023)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:626.35)で同定した。また、この化合物(023)は40mg/kg、POでプロテアソームCT−Lの活性を>80%阻害した。
【実施例3】
【0200】
スキーム3:化合物029の合成
【0201】
【化13】

【0202】
化合物(025)
0℃とした、Fmoc−Val−OH(024)(348mg,1.6mmol)のジクロロメタン(4mL)溶液に、MSNT(474mg,1.6mmol)及びN−メチル−イミダゾール(0.13mL,1.6mmol)を加えた。HMPBレジン(400mg,0.32mmol)を添加すると、得られた混合物は均一になった。得られた反応混合物を室温で2時間シェイクした。前記のレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄し、ついで空気乾燥に付すと化合物(025)が得られた。
【0203】
化合物(026)
レジン(025)を、20%ピペリジンを含むN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に入れ、ついで得られた混合物を室温で1時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。0℃とした、Fmoc−Ser(OMe)−OH(546mg,1.6mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(4mL)溶液に、HOBT(245mg,1.6mmol)、HBTU(606mg,1.6mmol,)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.6mL,3.2mmol)を加えた。得られたレジンを一度に加えると、得られた反応混合物は均一になった。得られた反応混合物を一夜シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄し、そして空気乾燥すると化合物(026)が得られた。
【0204】
化合物(027)
レジン(026)を、20%ピペリジンを含むN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に入れ、ついで得られた混合物を室温で1時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。0℃とした、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸(009)(162mg,1.6mmol)のN,N−ジメチルホルミアミド(4mL)溶液に、HOBT(245mg,1.6mmol)、HBTU(606mg,1.6mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.6mL, 3.2mmol)を添加した。得られた混合物が均一になるやいなや、前記のレジンを加え、ついで得られた反応混合物を一夜シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄後、得られたレジンを空気乾燥すると、化合物(027)が得られた。
【0205】
化合物(028)
50%トリフルオロ酢酸のジクロロメタン(10mL)溶液を化合物(027)に加え、ついで得られた混合物を30分間シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、ジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。減圧下で蒸発物を除去すると、化合物(028)が得られた。この化合物(028)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:328.14)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0206】
化合物(029)
0℃とした、化合物(029)、化合物(006)(117mg,0.4mmol)、HOBT(70mg,0.5mmol)及びHBTU(170mg,0.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌し、均一な溶液とした。ついで、得られた溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、ついで飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ついでCelite−545を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去すると、ついで得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると、化合物(029)が得られる。この化合物(029)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:481.26)で同定した。この化合物(029)はプロテアソームCT−Lの作用を20mg/kg POで>70%阻害した。
【実施例4】
【0207】
スキーム4:化合物(035)の合成
【0208】
【化14】

【0209】
化合物(031)
0℃とした、Fmoc−L−4−チアゾリルアラニン(030)(1.0g,2.5mmol)のジクロロメタン(4mL)溶液に、N−メチル−イミダゾール(150uL,1.9mmol)、MSNT(755mg,2.55mmol)及びHMPBレジン(800mg、0.51mmol)を加えるやいなや、得られた混合物は均一となった。得られた反応混合物を室温で2時間シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄後、得られたレジンを空気乾燥すると、化合物(031)が得られた。
【0210】
化合物(032)
得られたレジン(031)(360mg,0.23mmol)を20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に添加し、ついで得られた混合物を室温で1時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。
0℃とした、Fmoc−L−ロイシン(204mg,0.58mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(4mL)溶液に、HOBT(124mg,0.92mmol)、HBTU(349mg,0.92mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(402μL,2.3mmol)を添加した。ついで、得られたレジンを加えるやいなや、得られた反応混合物は均一となった。得られた反応混合物を5℃で5時間シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄後、得られたレジンを空気乾燥すると化合物(032)が得られた。
【0211】
化合物(033) レジン(032)(0.23mmol)を20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に添加し、得られた混合物を室温で1時間シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。
0℃とした、化合物(022)(123mg,0.58mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(4mL)溶液に、HOBT(124mg,0.92mmol)、HBTU(349mg,0.92mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(402μL,2.3mmol)を添加した。得られた混合物が均一になるやいなや、得られたレジンを添加し、そして得られた反応混合物を一夜室温でシェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄後、得られたレジンを空気乾燥すると化合物(033)が得られた。
【0212】
化合物(034)
レジン(033)に、50%トリフルオロ酢酸のジクロロメタン(10mL)溶液を加え、ついで得られた混合物を30分間シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、ジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。減圧下で蒸発物を除去すると、化合物(034)が得られた。この化合物をLC/MS(LCRS(MH) m/z:480.18)により同定し、さらに同定することなく使用した。
【0213】
化合物(035)
0℃とした化合物(034)及び化合物(006)(70mg,0.23mmol)、HOBT(50mg,0.37mmol)及びHBTU(140mg,0.37mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL,2.5mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を添加した。得られた混合物を室温で5時間撹拌し、ついで酢酸エチル(200mL)で希釈した。ついで得られた溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過し、減圧下で溶媒を除去した。得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(035)(15mg)が得られた。この化合物(035)をLC/MS(LCRS(MH)m/z: 633.3)により同定した。また、この化合物(035)は40mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>90%阻害した。
【実施例5】
【0214】
スキーム5:化合物039の合成
【0215】
【化15】

【0216】
化合物(036)
レジン(031)(800mg,0.23mmol)を20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に入れ、得られた混合物を室温で1時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。
0℃としたFmoc−L−Ser(OMe)−OH(435mg,1.3mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に、HOBT(276mg,2.0mmol)、HBTU(710mg,2.0mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.9mL,5.1mmol)を添加した。ついで、得られたレジンを加えるやいなや、得られた混合物が均一になる。ついで、得られた混合物を5℃で5時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄後、空気乾燥すると化合物(036)が得られた。
【0217】
化合物(037)
レジン(036)を20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に入れ、得られた混合物を室温で1時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄した。
0℃とした化合物(009)(162mg,1.3mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(4mL)溶液に、HOBT(276mg,2.0mmol),HBTU(710mg,2.0mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.9mL,5.1mmol)を添加した。得られた混合物が均一になるやいなや、得られたレジンを加え、そして得られた反応混合物を室温で一夜シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄し、ついで空気乾燥すると化合物(037)が得られた。
【0218】
化合物(038)
化合物(037)に、50%トリフルオロ酢酸のジクロロメタン(10ml)溶液を加え、そして得られた混合物を30分間シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、ジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。減圧下で揮発物を除去すると、化合物(038)が得られた。この化合物を、LC/MS(LCRS(MH) m/z:383.09)で同定し、そしてこれ以上精製することなく使用した。
【0219】
化合物(039)
0℃とした、化合物(038)及び化合物(006)(156mg,0.51mmol)、HOBT(111mg,0.82mmol)及びHBTU(311mg,0.82mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL,2.5mmol)を含むテトラヒドロフラン(5mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で5時間攪拌すると均一な溶液となった。ついで、得られた溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで、減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(039)(22mg)が得られた。この化合物(039)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:536.21)により同定した。また、この化合物(035)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>75%阻害した。
【実施例6】
【0220】
スキーム6:化合物045の合成(方法A)
【0221】
【化16】

【0222】
化合物(041)
0℃としたFmoc−L−アラニン(040)(1.0g,3.2mmol)のジクロロメタン(30mL)溶液に、N−メチル−イミダゾール(190μL,12.4mmol)、MSNT(950mg,3.2mmol)及びHMPBレジン(1.0g,0.64mmol)を加えた。得られた混合物は添加と同時に均一となった。得られた反応混合物を室温で2時間シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄すると化合物(041)が得られた。
【0223】
化合物(042)
レジン(041)を、20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に加え、そして得られた混合物を室温で1時間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄した。
0℃としたFmoc−Ser(OMe)−OH(546mg,1.6mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に、HOBT(346mg,2.6mmol)、HBTU(970mg,2.6mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.1mL,6.4mmol)を加えた。ついで、得られたレジンを加えるやいなや、得られた反応混合物は均一となった。得られた混合物を5℃で5時間シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄し、空気乾燥すると化合物(042)が得られた。
【0224】
化合物(043)
レジン(042)(0.23mmol)を20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に加え、そして得られた混合物を室温で1時間シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL×3回)及びジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。
0℃とした化合物(009)(203mg,1.6mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に、HOBT(346mg,2.6mmol)、HBTU(970mg,2.6mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.1mL,6.4mmol)を加えた。得られた混合物が均一になるやいなや、得られたレジンを加え、そして得られた反応混合物を室温で一夜シェイクした。ついで、得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)で洗浄し、空気乾燥すると化合物(043)が得られた。
【0225】
化合物(044)
化合物(043)に、50%トリフルオロ酢酸のジクロロメタン(10mL)溶液を加え、そして得られた混合物を30分間シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、そしてジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。減圧下で揮発物を除去すると、化合物(044)が得られた。この化合物(044)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:300.11)により同定し、そしてさらに精製することなく使用した。
【0226】
化合物(045)
0℃とした前記の中間体(044)、化合物(006)(195mg,0.64mmol)、HOBT(137mg,1.0mmol)及びHBTU(357mg,1.0mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL,2.5mmol)を含むテトラヒドロフラン(5mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で4時間攪拌した。ついで、得られた溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで、減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(045)(84mg)が得られた。この化合物(045)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:453.23)により同定した。また、この化合物(045)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【実施例7】
【0227】
スキーム7:化合物045の合成(方法B)
【0228】
【化17】

【0229】
化合物(047)
0℃としたN−Boc−セリン(メチルエステル)(001)(6.57g,33mmol)、L−アラニン ベンジルエステル塩酸塩(046)(6.45g,30mmol)、HOBT(5.05g,33mmol)及びHBTU(11.8g,33mmol)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(9.0g,70mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液を10分間に亘り加えた。得られた混合物は均一になり、そしてさらに5時間室温で攪拌した。ついで減圧下で大部分の溶媒を除去し、得られた物質を酢酸エチル(500mL)で希釈した。ついで、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(150mL×2回)及びブライン(200mL)で洗浄し、そして得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)精製すると化合物(047)(11.8g)が得られた。この化合物を、LC/MS(LCRS(MH) m/z:381.19)により同定した。
【0230】
化合物(048)
0℃とした化合物(047)(11.8g,31.0mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(50mL)を10分間に亘り加え、そして得られた混合物を同温でさらに3時間攪拌した。ついで減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣を高真空下に一夜置くと化合物(048)トリフルオロ酢酸塩が得られる。この化合物(048)トリフルオロ酢酸塩をLC/MS(LCRS(MH) m/z:281.15)により同定し、これ以上精製せずに使用した。
【0231】
化合物(049)
0℃とした化合物(048)、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸(009)(3.93g,31mmol)、HOBT(4.7g,35mmol)及びHBTU(12.5g,35mmol)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(20mL)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液を10分間に亘り加え、そして得られた混合物のpHを〜8とした。得られた混合物を室温でさらに5時間攪拌した。ついで減圧下で溶媒の大部分を除去し、酢酸エチル(1.0L)で希釈した。ついで得られた溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄し、そして得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(049)が得られた。この化合物(049)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:390.16)により同定した。
【0232】
化合物(044)
0℃とした化合物(049)(3.28g,8.4mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、10%Pd/C(500mg)を加えた。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で4時間攪拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、濾取されたケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。得られた有機濾液を減圧下で濃縮し、高真空下に2時間置くことにより化合物(044)が得られた。この化合物(044)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:281.15)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0233】
化合物(045)
0℃とした化合物(044)、化合物(006)(1.9g,8.5mmol)、HOBT(2.0g,13mmol)及びHBTU(5.4g,14mmol)のテトラヒドロフラン(200mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(5.4g,42mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温でさらに5時間攪拌した。ついで減圧下で大部分の溶媒を除去し、そして得られた物質を酢酸エチル(400mL)で希釈した。ついで得られた溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(50mL)で洗浄し、そして得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。ついで、減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(045)(1.35g)が得られた。この化合物(045)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:453.23)により同定した。
【実施例8】
【0234】
スキーム:化合物055の合成
【0235】
【化18】

【0236】
化合物(051)
0℃としたN−Boc−L−2−ピリジルアラニン(050)(1.0g,3.76mmol)、L−フェニルアラニン ベンジルエステル塩酸塩(002)(1.3g,3.76mmol)、HOBT(0.68g,5.0mmol)及びHBTU(1.8g,5.0mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.6mL)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温でさらに3時間攪拌し、そして酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄し、そして得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。ついで、減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(051)(1.45g)が得られた。この化合物(051)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:504.24)により同定した。
【0237】
化合物(052)
0℃とした化合物(051)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、10%Pd/C(100mg)を加え、そして得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で4時間攪拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、得られた濾過ケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。ついで得られた有機濾液を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと化合物(052)が得られた。この化合物(052)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:414.2)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0238】
化合物(053)
0℃とした化合物(052)、化合物(006)(0.85g,3.9mmol)、HOBT(0.70g,5.3mmol)及びHBTU(1.70g,4.9mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3mL)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加え、そして得られた混合物を一夜室温で攪拌した。ついで、得られた反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(50mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過し、ついで減圧下でその溶媒を除去し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)及びHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)により精製すると化合物(053)(1.51g)が得られた。その化合物(053)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:567.21)により同定した。
【0239】
化合物(054)
0℃とした化合物(053)(200mg,0.352mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を加え、そして得られた溶液を同温でさらに1時間した。得られた溶液を減圧下で濃縮し、ついで高真空下に置くと化合物(054)が得られた。この化合物(054)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:467.26)により同定し、そしてさらに精製することなく使用した。
【0240】
化合物(055)
0℃とした化合物(054)、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸(009)(127mg,1.0mmol)、HOBT(135mg,1.0mmol)及びHBTU(350mg,1.0mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で5時間撹拌した。ついで得られた混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈後、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ついでCelite−545を通して濾過し、減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(055)(40mg)が得られた。この化合物(055)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:576.27)により同定した。また、この化合物(055)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【実施例9】
【0241】
スキーム9:化合物061の合成
【0242】
【化19】

【0243】
化合物(057)
0℃としたN−Boc−L−n−valine(056)(1.0g,4.6mmol)、L−フェニルアラニン ベンジルエステル塩酸塩(002)(1.4g,4.6mmol)、HOBT(1.0g,7.4mmol)及びHBTU(2.8g,7.4mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(3.2mL,18.4mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で3時間撹拌し、ついで酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄し、ついで得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(057)が得られた。この化合物(057)をLC/MS(LCRS(MH) m/z: 455.25)により同定した。
【0244】
化合物(058)
0℃とした化合物(057)(1.30g,2.875mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、10%Pd/C(100mg)を加えた。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で4時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、そして濾取されたケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。ついで、得られた濾液を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと化合物(058)が得られた。この化合物(058)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:365.2)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0245】
化合物(059)
0℃とした化合物(058)、化合物(006)(0.99g,4.6mmol)、HOBT(0.62g,4.6mmol)及びHBTU(1.70g,4.9mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.4mL)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で一夜撹拌し、ついで酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(50mL)で洗浄した。ついで得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。ついで減圧下でその溶媒を除去し、得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)により精製すると化合物(059)(1.21g)が得られた。その化合物(059)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:518.32)により同定した。
【0246】
化合物(060)
0℃とした化合物(059)(250mg,0.48mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を加え、そして得られた溶液を同温でさらに1時間撹拌した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと化合物(060)が得られた。この化合物(060)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:418.26)により同定し、そしてさらに精製することなく使用した。
【0247】
化合物(061)
0℃とした化合物(060)、化合物(022)(122mg,0.58mmol)、HOBT(104mg,0.77mmol)及びHBTU(292mg,0.72mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.35mL)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、そして得られた混合物を室温でさらに4時間撹拌した。ついで得られた反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。ついで得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、Celite−545を通して濾過した。ついで減圧下でその溶媒を除去し、得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)により精製すると化合物(061)(88.4mg)が得られた。その化合物(061)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:612.33)により同定した。またこの化合物(061)は40mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【実施例10】
【0248】
スキーム10:化合物068の合成
【0249】
【化20】

【0250】
化合物(063)
0℃としたN−Boc−HoSer(OMe)−OH(062)(1.0g,4.3mmol)、L−フェニルアラニン ベンジルエステル塩酸塩(002)(1.3g,4.3mmol)、HOBT(0.88g,6.5mmol)及びHBTU(2.3g,6.5mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.0 mL)のテトラヒドロフラン(5mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温でさらに3時間撹拌し、そしてついで酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄した。ついで得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下でその溶媒を除去し、得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)により精製すると化合物(063)(1.51g)が得られた。その化合物(063)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:471.24)により同定した。
【0251】
化合物(064)
0℃とした化合物(063)(1.35g,2.875mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、10%Pd/C(100mg)を加えた。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下4時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、濾取されたケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。得られた有機濾液を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと化合物(064)が得られた。この化合物(064)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:381.19)により同定し、そしてさらに精製することなく使用した。
【0252】
化合物(065)
0℃とした化合物(065)、化合物(006)(0.99g,4.6mmol)、HOBT(0.62g,4.6mmol)及びHBTU(1.70g,4.9mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.4mL)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液を加えた。得られた混合物を室温で一夜撹拌し、ついで酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL×2回)及びブライン(50mL)で洗浄した。ついで得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下でその溶媒を除去し、得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)により精製すると化合物(065)(1.11g)が得られた。その化合物(065)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:534.31)により同定した。
【0253】
化合物(066)
0℃とした化合物(065)(230mg,0.43mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を加え、ついで得られた溶液を同温でさらに1時間撹拌した。ついで得られた反応混合物を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと、化合物(066)が得られた。その化合物(066)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:434.26)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0254】
化合物(068)
0℃とした化合物(066)、5−イソプロピルイソオキサゾール−3−カルボン酸(067)(81mg,0.52mmol)、HOBT(93mg,0.69mmol)及びHBTU(262mg,0.69mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.30mL)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、そして室温でさらに4時間撹拌した。ついで得られた溶液を酢酸エチル(200mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。ついで得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下でその溶媒を除去し、得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)により精製すると化合物(068)(75.7mg)が得られた。その化合物(053)をLC/MS(LCRS(MH)m/z:571.31)により同定した。この化合物(068)は40mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>70%阻害した。
【実施例11】
【0255】
スキーム11:化合物075の合成(方法A)
【0256】
【化21】

【0257】
化合物(070)
L−セリン(メチルエステル)塩酸塩(069)(1.0g,6.4mmol)の水/ジオキサン(1:1,80ml)溶液に、水酸化ナトリウム(768mg,19.2mmol)を加えた。得られた混合物を室温で30分間撹拌後、得られた混合物を0℃に冷却し、クロロギ酸 9−フルオレニルメチル(1.65g,6.4mmol)のジオキサン(16mL)溶液を滴下した。得られた反応混合物を室温でさらに4時間撹拌した。ついで溶媒を除去後、得られた残渣を水で希釈し、そして1N−塩酸でpH〜1に調整し、そして得られた水層を酢酸エチル(100mL×4回)で抽出した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと、化合物(070)(1.8g)が得られた。この化合物(070)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:342.13)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0258】
化合物(071)
レジンHMPB−BHA(500mg,0.32mmol)をジクロロメタンで洗浄した。乾燥したフラスコ中でmoc−Ser(Me)−OH(070)(546mg,1.6mmol)をジクロロメタンに溶解し、そして得られた溶液に1−メチルイミダゾール(95μL,1.2mmol)を加え、ついでMSNT(474mg,1.6mmol)を加えた。得られた混合物が均一になるやいなや(10分間)、得られた混合物をジクロロメタン(5mL)に懸濁したHMPB−BHAレジンに加えた。得られた反応混合物を一夜シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、そしてDMF(20mL×3回)、MeOH(20mL×3回)及びDCM(20mL×3回)で洗浄し、そして空気乾燥すると、化合物(070)が得られた。
【0259】
化合物(072)
レジン(071)(300mg,0.192mmol)を20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に加え、ついで得られた混合物を室温で30分間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)2回により洗浄した。0℃としたFmoc−Ser(Me)−OH(070)(0.48mmol,163mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液に、HOBT(104mg,0.77mmol)、HBTU(291mg,0.77mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.34mL,1.92mmol)を加えた。得られた混合物が均一になるやいなや前記のレジン(0.13mmol,200mg)を加え、そして得られた反応混合物を一夜シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、DMF(10mL)、DCM(10mL)、MeOH(10mL)、HO(10mL)、DMF(10mL)、MeOH(10mL)及びDCM(10mL)により洗浄し、そして空気乾燥すると化合物(072)が得られた。
【0260】
化合物(073)
化合物(072)(300mg,0.19mmol)に、20%ピペリジンのN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)溶液を加え、ついで得られた混合物を室温で30分間シェイクした。得られたレジンを濾取し、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL×3回)及びジクロロメタン(20mL×3回)2回により洗浄した。
0℃とした化合物(009)(61mg,0.48mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)溶液に、HOBT(104mg,0.77mmol)、HBTU(291mg,0.77mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.34mL,1.92mmol)を加えた。得られた混合物が均一になるやいなや、前記のレジン(300mg,0.192mmol)を加え、そして得られた反応混合物を一夜シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、DMF(10mL)、DCM(10mL)、MeOH(10mL)、HO(10mL)、DMF(10mL)、MeOH(10mL)及びDCM(10mL)を洗浄し、そして空気乾燥すると化合物(073)が得られた。
【0261】
化合物(074)
化合物(073)に、50%トリフルオロ酢酸のジクロロメタン(10mL)溶液を加え、ついで得られた混合物を30分間シェイクした。ついで得られたレジンを濾取し、ついでジクロロメタン(10mL×3回)で洗浄した。減圧下で揮発物を除去し、ついで目的の化合物(070)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:330.12)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0262】
化合物(075)
0℃とした化合物(074)、化合物(006)(78mg,0.38mmol)、HOBT(41mg,0.30mmol)及びHBTU(116mg,0.30mmol)のアセトニトリル(50mL)溶液に、N,N―ジイソプロピルエチルアミン(0.1mL,0.6mmol)溶液を加えた。得られた混合物を0℃〜4℃で一夜撹拌し、ついで酢酸エチル(200mL)で希釈した。ついで、得られた混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄後、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。減圧下で溶媒を除去し、ついで得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると、化合物(075)(29mg)が得られた。この化合物(075)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:483.24)により同定した。さらにこの化合物(075)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【実施例12】
【0263】
スキーム12:化合物075(方法B)
【0264】
【化22】

【0265】
化合物(076)
0℃としたN−Bocセリン(メチルエステル)−OH(43.8g,200mmol)、トリエチルアミン(26.5g,260mmol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジンのジクロロメタン(1.2L)溶液に、クロロギ酸ベンジル(41g,240mmol)のジクロロメタン(250mL)溶液を30分間に亘り加え、ついで得られた混合物を同温でさらに3時間撹拌した。ついで飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)を加え、そして得られた有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200mL)及びブライン(200mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ついでCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(076)(54g)が得られた。この化合物(076)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:310.16)により同定した。
【0266】
化合物(077)
0℃とした化合物(076)(54g,174.6mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(200mL)を10分間に亘り加え、ついで得られた混合物を同温でさらに3時間撹拌した。ついで減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣を高真空下に一夜置くと化合物(077)のトリフルオロ酢酸塩が得られた。この化合物(077)のトリフルオロ酢酸塩をLC/MS(LCRS(MH) m/z: 210.11)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0267】
化合物(078)
0℃とした化合物(077)(43.8g,200mmol)、N−Bocセリン(メチルエステル)−OH(36.7g,167mmol)、HOBT(27g,200mmol)及びHBTU(71.4g,200mmol)のテトラヒドロフラン(1.2L)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(75g,600mmol)のテトラヒドロフラン(250mL)溶液を10分間に亘り加え、ついで得られた混合物のpHを〜8に調整した。ついで得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌した。ついで減圧下で殆どの溶媒を除去し、そして得られた混合物を酢酸エチル(1.0L)で希釈した。ついで、得られた混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(150mL×2回)及びブライン(200mL)で洗浄後、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(078)(65g)が得られた。この化合物(078)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:411.21)により同定した。
【0268】
化合物(079)
0℃とした化合物(079)(13.4g,32.7mmol)のテトラヒドロフラン(300mL)溶液に、10%Pd/C(2.7g)を加え、ついで1気圧の水素雰囲気下で4時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、ついで濾取されたケーキをテトラヒドロフランで洗浄した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、高真空下に置くと、化合物(079)が得られた。この化合物(079)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:321.16)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0269】
化合物(080)
0℃とした化合物(079)、化合物(006)(5.6g,26mmol)、HOBT(6.0g,41.4mmol)及びHBTU(14.8g,41.4mmol)のテトラヒドロフラン(400mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(23mL)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液を加え、ついで得られた混合物を室温で一夜撹拌した。ついで減圧下で大部分の溶媒を除去し、そして得られた物質を酢酸エチル(500mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL×2回)及びブライン(100mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン及び酢酸エチル)で精製すると化合物(080)(9.2g)が得られた。この化合物(080)をLC/MS(LCRS (MH) m/z:474.27)により同定した。
【0270】
化合物(081)
0℃とした化合物(080)(200mg,0.43mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(10mL)を加え、ついで得られた溶液を同温でさらに1時間撹拌した。得られた有機層を減圧下で濃縮し、そして高真空下に置くと化合物(081)が得られた。この化合物(081)をLC/MS(LCRS (MH) m/z:374.22)により同定し、さらに精製することなく使用した。
【0271】
化合物(075)
0℃とした化合物(081)、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸(009)(65mg,0.5mmol)、HOBT(65mg,0.5mmol)及びHBTU(175mg,0.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、ついで得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌した。ついで、得られた混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過した。ついで減圧下で溶媒を除去し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(075)(85mg)が得られた。この化合物(075)をLC/MS(LCRS (MH)m/z:483.24)により同定した。
【実施例13】
【0272】
スキーム13:化合物083の合成
【0273】
【化23】

【0274】
化合物(083)
0℃とした化合物(081)(160mg,0.43mmol)、イソオキサゾール−3−カルボン酸(082)(60mg,0.5mmol)、HOBT(65mg,0.5mmol)、HBTU(175mg,0.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、ついで得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌した。ついで得られた反応混合物を酢酸エチル(200mL)により希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)により洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、そしてCelite−545を通して濾過した。減圧下でその溶媒を除去し、ついで得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム及びアセトニトリル)に精製すると、化合物(083)(74mg)が得られた。この化合物(083)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:469.22)により同定した。またこの化合物(083)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【実施例14】
【0275】
スキーム:化合物085の合成
【0276】
【化24】

【0277】
化合物(085)
0℃とした化合物(081)(160mg,0.43mmol)、5−メチル−イソオキサゾール−3−カルボン酸(084)(65mg,0.5mmol)、HOBT(65mg,0.5mmol)及びHBTU(175mg,0.5mmol)のテトラヒドロフラン(50mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.5mL)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌した。ついで得られた反応混合物を酢酸エチル(200mL)により希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)により洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、Celite−545を通して濾過した。減圧下でその溶媒を除去し、ついで得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム及びアセトニトリル)に精製すると、化合物(085)(71mg)が得られた。この化合物(083)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:483.24)により同定した。またこの化合物(085)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>50%阻害した。
【実施例15】
【0278】
スキーム15:化合物088の合成
【0279】
【化25】

【0280】
化合物(087)
化合物(086)(0.100g,0.295mmol)(化合物((086)は、Cbz−ロイシンをCbz−フェニルアラニンに置き換える以外の化合物(005)の調製法と同様にして調製された。)のトリフルオロ酢酸(10mL)溶液に、10%Pd/C(20mg)を加えた。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で6時間撹拌した。ついで得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、そして濾取されたケーキをジクロロメタン(50mL)で洗浄した。得られた濾液を減圧下で濃縮し、そして高真空下に一夜置くと化合物(087)が得られた。この化合物(087)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:206.1)により同定し、さらに精製することなく次の反応に使用した。
【0281】
化合物(088)
0℃とした化合物(087)、化合物(074)(166mg,0.354mmol)、HOBT(54mg,0.354mmol)及びHBTU(134mg,0.354mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.2mL,1.18mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で一夜撹拌し、均一な溶液とした。得られた混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてCelite−545を通して濾過し、ついで減圧下で濃縮し、そして得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム水溶液及びアセトニトリル)で精製すると化合物(088)(10mg)が得られた。この化合物(088)をLC/MS(LCRS (MH) m/z:517.69)により同定した。また、この化合物(088)は20mg/kg POでプロテアソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【実施例16】
【0282】
スキーム:化合物091の合成
【0283】
【化26】

【0284】
化合物(090)
化合物(089)(0.100g,0.28mmol)(化合物((089)は、Cbz−ロイシンをCbz−4−フルオロフェニルアラニンに置き換える以外の化合物(005)の調製法と同様にして調製された。)のトリフルオロ酢酸(10mL)溶液に、10 %Pd/C(20mg)を加えた。得られた混合物を1気圧の水素雰囲気下で6時間撹拌した。得られた混合物を、Celite−545を通して濾過し、そして濾取されたケーキをジクロロメタン(50mL)により洗浄した。得られた濾液を減圧下で濃縮し、そして高真空下に一夜置くと化合物(090)が得られた。この化合物(090)をLC/MS(LCRS (MH) m/z:224.1)により同定し、さらに精製することなく次の反応に使用した。
【0285】
化合物(091)
0℃とした化合物(090)、化合物(074)(110mg,0.336mmol)、HOBT(51mg,0.336mmol)及びHBTU(127mg,0.336mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.2mL,1.18mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で一夜撹拌し、均一な溶液とした。ついで得られた溶液を酢酸エチル(20mL)で希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL×2回)及びブライン(10mL)で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ついでCelite−545を通して濾過し、そして減圧下で濃縮した。ついで得られた残渣をHPLC(酢酸アンモニウム及びアセトニトリル)で精製すると化合物(091)(60mg)が得られた。この化合物(091)をLC/MS(LCRS(MH) m/z:535.69)により同定した。また、この化合物(091)は20mg/kg POでプロテソームCT−Lの作用を>80%阻害した。
【0286】
生物学的活性
化合物を10% PS80/クエン酸ナトリウム(pH3)ビークルを使用して製剤化され、ついで経口(PO)でマウス(3匹の動物/1群)に投与した。投与後1時間経過時に前記の動物を犠牲にし、そして以下の組織、すなわち血液、脳、副腎、心臓及び肝臓を採取した。全血(〜200μL)をPBSで2回洗浄し、そして低張ショック(hypotonic shock)(300μl 50mM Tris pH8,5mM EDTA)により溶解した。試験まで血液の溶解物を−80℃で保存した。血液の溶解物を、マイクロ遠心チューブを使用しての遠心分離により清澄にした。各血液の溶解物のプロテアソームのCT−L特異的活性は以下のa)及びb)の方法により測定した。
a)標品としてウシγグロブリンを使用するブラドフォード法の変法(modified Bradford assay)によるタンパク質濃度
b)蛍光プロテアソーム基質LLVY−AMCの開裂速度
同族体で処理された動物についての%プロテアソーム活性を、ビークルのみを投与した動物群の平均の特異的活性により、各同族体を投与された動物群の平均の特異的活性を割ることにより算定した。%プロテアソーム阻害活性を、100から%プロテアソーム活性を差し引くことにより算定した。
【0287】
(等価物)
当業者は、本明細書に記載される化合物の多くの等価物およびそれらの使用方法を、ごく普通の実験法のみを使用して認識または確認できるであろう。こうした等価物は本発明の範囲内と考えられ、添付の特許請求の範囲により網羅される。
【0288】
上記の引用文献および引用刊行物はすべて、本明細書において参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

(式I中、
Lが、C=O、C=S、及びSOから選ばれ、
Xが、O、S、NH、及びN−C1−6アルキルから選ばれ、
Zが、非存在、C1−6アルキル、又はC1−6アルコキシであり、
、R2、及びRが、それぞれが独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、アリール、C1−6アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、C1−6ヘテロシクロアルキル、C1−6ヘテロアラルキル、カルボシクリル、及びC1−6カルボシクロアルキルから選ばれ、
が、水素、C1−6アラルキル、及びC1−6アルキルから選ばれ、
が、ヘテロアリールであり、かつ
及びRが、独立して、水素、C1−6アルキル、及びC1−6アラルキルから選ばれる。)で表される構造式を有する化合物又はその薬学的に受容される塩。
【請求項2】
Zが、非存在であることを特徴とする請求項1の化合物。
【請求項3】
、R、及びRが、独立して、水素及びメチルから選ばれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Lが、C=Oであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Lが、SOであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
、R2、及びRが、独立して、水素、C1−6アルキル、C1−6アルケニル、C1−6アルキニル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシアルキル、C1−6アラルキル、C1−6ヘテロシクロアルキル、C1−6ヘテロアラルキル、及びC1−6カルボシクロアルキルから選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の化合物。
【請求項7】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、C1−6アルキルであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、及びイソブチルから選ばれることを特徴とする請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、プロパルギルであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、C1−6ヒドロキシアルキルであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項11】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、ヒドロキシメチル及びヒドロキシエチルから選ばれることを特徴とする請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、C1−6アルコキシアルキルであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項13】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、メトキシメチル及びメトキシエチルから選ばれることを特徴とする請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、C1−6ヘテロアラルキルであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項15】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、イミダゾリルメチル、ピラゾリルメチル、チアゾリルメチル、及びピリジルメチルから選ばれることを特徴とする請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
、R2、及びRのいずれかが、独立して、シクロヘキシルメチルであることを特徴とする請求項6に記載の化合物。
【請求項17】
、R2、及びRが、すべて異なることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項18】
及びR2の少なくとも一つが、C1−6ヒドロキシアルキル及びC1−6アルコキシアルキルから選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項19】
及びR2の少なくとも一つが、C1−6アルコキシアルキルであることを特徴とする請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
及びR2の少なくとも一つが、メトキシメチル及びメトキシエチルから選ばれることを特徴とする請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が、C1−6アルキル及びC1−6アラルキルから選ばれることを特徴とする請求項1乃至請求項5、又は請求項18乃至請求項20のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項22】
が、C1−6アルキルであることを特徴とする請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
が、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル、及びイソブチリルから選ばれることを特徴とする請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
が、イソブチルであることを特徴とする請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
が、C1−6アラルキルであることを特徴とする請求項21に記載の化合物。
【請求項26】
が、フェニルメチルであることを特徴とする請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
が、5員又は6員のヘテロアリールであることを特徴とする請求項1乃至請求項26のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項28】
が、イソオキサゾール、イソチアゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール又はイミダゾールから選ばれることを特徴とする請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
が、イソオキサゾール、フラン、又はチオフェンから選ばれることを特徴とする請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
が、フラン又はチオフェンであることを特徴とする請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
が、置換されていないフラン−3−イル又はチオフェン−2−イルであることを特徴とする請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
が、イソオキサゾール−3−イル又はイソオキサゾール−5−イルであることを特徴とする請求項29に記載の化合物。
【請求項33】
が、5位に置換基を有するイソオキサゾール−3−イルであることを特徴とする請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
が、3位に置換基を有するイソオキサゾール−5−イルであることを特徴とする請求項32に記載の化合物。
【請求項35】
前記の置換基が、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルコキシアルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1−6アルキルアミノカルボキシレート、(C1−6アルキル)アミノカルボキシレート、C1−6アルキルカルボキシレート、C1−6ヘテロアラルキル、C1−6アラルキル、C1−6ヘテロシクロアルキル、及びC1−6カルボシクロアルキルから選ばれることを特徴とする請求項33又は請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
前記の置換基が、メチル、エチル、イソプロピル、及びシクロプロピルメチルから選ばれることを特徴とする請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
前記の置換基が、C1−6ヘテロアラルキル、及びC1−6ヘテロシクロアルキルから選ばれることを特徴とする請求項35に記載の化合物。
【請求項38】
前記の置換基が、1,2,4−トリアゾール−5−イルメチルであることを特徴とする請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
前記の置換基が、アゼチジン−1−イルメチルであることを特徴とする請求項37に記載の化合物。
【請求項40】
前記の置換基が、
式:
【化2】


(式中、WがO、NR、又はCHであり、Rが、H又はC1−6アルキルである。)で表される基であることを特徴とする請求項37に記載の化合物。
【請求項41】
WがOであることを特徴とする請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
前記の置換基が、C1−6アルコキシ及びC1−6アルコキシアルキルから選ばれることを特徴とする請求項37に記載の化合物。
【請求項43】
前記の置換基が、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル及びメトキシエチルから選ばれることを特徴とする請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
前記の置換基が、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1−6アルキルアミノカルボキシレート、(C1−6アルキル)アミノカルボキシレート又はC1−6アルキルカルボキシレートから選ばれることを特徴とする請求項37に記載の化合物。
【請求項45】
前記の置換基が、メチルカルボキシレートを特徴とする請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
【化3】


















から選ばれる化合物。
【請求項47】
請求項1乃至請求項46のいずれか一つに記載の化合物及び薬学的に受容される希釈剤又はキャリヤを含む薬学的組成物。
【請求項48】
経口投与により生体内で利用される請求項47に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、炎症の処置のための方法。
【請求項50】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、HIV感染症を阻害又は軽減するための方法。
【請求項51】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、神経変性疾患の処置のための方法。
【請求項52】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、筋消耗性疾患(muscle−wasting disease)の処置のための方法。
【請求項53】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、癌の処置のための方法。
【請求項54】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、慢性感染症の処置のための方法。
【請求項55】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、過剰増殖状態(hyperproliferative condition)の処置のための方法。
【請求項56】
治療学的に有効な量の請求項35に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、筋廃用(muscle disuse)の処置のための方法。
【請求項57】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、免疫関連の状態の処置のための方法。
【請求項58】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、被験体におけるウイルス遺伝子の発現のレベルに作用するための方法。
【請求項59】
治療学的に有効な量の請求項48に記載の薬学的組成物を投与するステップを包含する、生物におけるプロテアソームにより産生される抗原性ペプチドの種類を変化させるための方法。


【公表番号】特表2009−514971(P2009−514971A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540164(P2008−540164)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/043503
【国際公開番号】WO2007/056464
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(506343520)プロテオリックス, インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】