説明

酵素電極

【課題】小型化及び低コスト化が容易であり、かつ、高性能な酵素電極を提供する。
【解決手段】酵素電極1において、互いに平行な複数の貫通孔11を有する陽極酸化アルミナ基板10と、貫通孔11内に導入された酵素30と、陽極酸化アルミナ基板10の少なくとも一方の面(表面)に貫通孔11を塞がないように成膜された電極40と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素電極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定物質と選択的に反応する反応物質を担持する担体として、互いに平行な複数の貫通孔を有する基材と、貫通孔内に当該貫通孔の内壁に沿って形成された中空糸状のシリカ構造体と、を備え、シリカ構造体は、ナノメートルオーダーの大きさの穴部を内壁面に複数有し、穴部の内部に反応物質が固定される担体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような特許文献1に記載の担体に、例えば、反応物質として酵素を担持させ、電極上に載置したり固定したりすると、酵素電極を構成することができる。
しかし、酵素を担持する担体と電極とが別体だと、酵素電極の小型化及び低コスト化が困難であるという問題がある。
【0003】
ところで、気体透過性を持つポーラスな基板と、当該基板の一表面上にポーラス性を持つようにして一様に形成されたアノード電極薄膜と、このアノード電極薄膜上に形成されたイオン伝導体薄膜と、さらにこのイオン伝導体薄膜上に形成された櫛形パターンのカソード電極薄膜と、このカソード電極薄膜及びイオン伝導体薄膜上に形成されたポーラス層と、さらにこのポーラス層を、その一部を除いて覆う封止層とを有する限界電流式酸素センサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、特許文献2には、ポーラスな基板と、電極(電極薄膜)と、が一体的に形成された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−154785号公報
【特許文献2】特開平7−20085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載のポーラスな基板と電極薄膜とが一体的に形成されたものには、酵素が担持されていない。また、ポーラスな基板と電極薄膜とが一体的に形成されたものに酵素を担持して構成した酵素電極等も提案されていない。
【0006】
本発明の課題は、小型化及び低コスト化が容易であり、かつ、高性能な酵素電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、酵素電極において、
互いに平行な複数の貫通孔を有する基板と、
前記貫通孔内に導入された酵素と、
前記基板の少なくとも一方の面に前記貫通孔を塞がないように成膜された電極と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の酵素電極において、
前記貫通孔内に当該貫通孔の内壁に沿って形成された中空糸状のシリカ構造体を備え、
前記シリカ構造体は、壁面に複数の穴部を有し、
前記酵素は、前記貫通孔内に導入されて前記穴部の内部に固定されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の酵素電極において、
前記基板における前記電極が成膜される面側の部分は、前記貫通孔の内壁がエッチングされて、他の部分よりも前記貫通孔の径が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酵素を担持した基板と電極とが一体的に形成されている。したがって、酵素を担持した基板と電極とが別体である場合と比較して、部品点数が少なくなるので、低コスト化が容易である。
また、基板の少なくとも一方の面に電極が成膜されているので、酵素を担持した基板と電極とが別体である場合と比較して、小型化が容易である。
また、基板は貫通孔を有しており、電極は当該貫通孔を塞がないように成膜されているので、酵素が選択的に反応する特定物質(基質)を含有する液体や気体を、強制的に透過させることができる。したがって、効率よく酵素反応が実施できるので、高性能な酵素電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の酵素電極の構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態の酵素電極の要部構成を説明するための断面模式図である。
【図3】陽極酸化アルミナ基板の断面のSEM写真である。
【図4】陽極酸化アルミナ基板の断面のSEM写真である。
【図5】酵素電極の製造方法の一部を説明するための図であり、(a)は、貫通孔を拡張する前の陽極酸化アルミナ基板を示す図、(b)は、貫通孔を拡張した後の陽極酸化アルミナ基板を示す図、(c)は、電極を成膜した後の陽極酸化アルミナ基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0013】
<酵素電極>
本実施形態の酵素電極1は、陽極酸化アルミナ基板10と、当該陽極酸化アルミナ基板10に担持された酵素30と、等からなり、例えば、酵素反応を利用する酵素センサや酵素バイオ電池に好適に適用することができる。
具体的には、酵素電極1は、例えば、図1及び図2に示すように、厚さ方向に貫通する互いに平行な複数の貫通孔11を有する陽極酸化アルミナ基板10と、貫通孔11内に当該貫通孔11の内壁11aに沿って形成された中空糸状のシリカ構造体20と、貫通孔11内に導入されてシリカ構造体20に固定された酵素30と、陽極酸化アルミナ基板10の一方の面(表面)に貫通孔11を塞がないように成膜された電極40(作用電極41、対向電極42、参照電極43)と、を備えて構成される。
【0014】
酵素電極1において、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11内は、例えば、図2に示すように、酵素30が固定される固定領域A1と、特定物質(反応物質)及び生成物(反応生成物)が拡散する拡散領域A2と、に分けられる。
固定領域A1は、シリカ構造体20の壁面部分であり、その壁面部分に形成された穴部21の内部に酵素30が固定されている。
拡散領域A2は、酵素電極1の一方の面(表面)から他方の面(裏面)にかけて貫通する孔からなる。すなわち、拡散領域A2は、陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に形成されたシリカ構造体20の中空部分であり、何も充填されていない空洞となっている。
【0015】
したがって、例えば、酵素電極1の表面から裏面に向かって(或いは、裏面から表面に向かって)、特定物質を含有する液体や気体を強制的に透過させると、当該液体や気体は何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を通過する。そのため、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造(酵素30が固定された領域を、特定物質や生成物が拡散する構造)の酵素電極と比較して、圧損が低く、当該液体や気体を高速に透過させることができるので、高速で反応を実施することができる。
【0016】
さらに、当該液体や気体が拡散領域A2を通過する際に、当該液体や気体に含有された特定物質は、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、固定領域A1に固定された酵素30へと移動し、当該酵素30と接触する。そして、当該接触によって生じた生成物も、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、酵素電極1の外部へと移動する。そのため、酵素電極1は、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造の酵素電極と比較して、内部での特定物質や生成物の拡散性が高くなるので、高速で反応を実施することができる。
【0017】
また、例えば、酵素電極1の一部(例えば、電極40部分)又は全部を電解液等に浸漬させ、特定物質を含有する気体を当該電解液等と接触させて、当該電解液等に当該特定物質を溶解させると、当該特定物質は、酵素電極1の外部を拡散して内部(拡散領域A2)へと移動し、さらに、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、固定領域A1に固定された酵素30へと移動し、当該酵素30と接触する。そして、当該接触によって生じた生成物も、何も充填されていない空洞状態の拡散領域A2を拡散して、酵素電極1の外部へと移動する。そのため、酵素電極1は、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造の酵素電極と比較して、内部での特定物質や生成物の拡散性が高くなるので、高速で反応を実施することができる。
【0018】
<陽極酸化アルミナ基板>
陽極酸化アルミナ基板10は、アルミニウムを含む基板(アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基板)を陽極酸化して得た陽極酸化アルミナ基板(陽極酸化アルミナ膜)である。陽極酸化アルミナ基板10は、例えば、厚さが50μm程度の平板形状をなしている。
【0019】
陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11は、例えば、陽極酸化によって形成された、陽極酸化アルミナ基板10の一方の面(表面)から他方の面(裏面)にかけて貫通する円筒状(或いは、角筒状)の孔である。
貫通孔11の直径は、当該貫通孔11内に導入する酵素30の種類等に応じて適宜任意に変更可能であり、具体的には、例えば、50nm〜1μmである。
【0020】
ここで、例えば、図2に示すように、陽極酸化アルミナ基板10における表面側(図2における上面側)の部分は、貫通孔11の内壁11aがエッチングされて、他の部分よりも貫通孔11の径が大きくなっている。これにより、陽極酸化アルミナ基板10の表面に電極40等を成膜しても、電極40等によって貫通孔11が狭まってしまうことがないため、高速で反応を実施することができる。
【0021】
<シリカ構造体>
シリカ構造体20は、ナノメートルオーダーのサイズの細孔(穴部21)を複数有する多孔性シリカ膜(シリカ製のメッシュ体)を丸めて円筒状(或いは、角筒状)に形成したような形状をなしている。すなわち、シリカ構造体20は、ナノメートルオーダーのサイズの細孔(穴部21)を壁面に複数有する中空糸状のシリカ系メソ多孔体である。
シリカ構造体20は、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の内壁11aを鋳型として形成される。具体的には、例えば、貫通孔11の内壁11aに、界面活性剤とシリカとの自己組織化によって有機−無機複合体(界面活性剤を含むシリカ層)を形成させ、その後、有機−無機複合体から界面活性剤を焼却除去や溶媒抽出除去することによって、周期構造を有するメソポーラスな多孔質材料(シリカ構造体20)を形成することができる。
【0022】
穴部21は、界面活性剤のミセルを鋳型として形成された、シリカ構造体20の内壁面20aから外壁面20bにかけて貫通する孔である。穴部21の貫通方向は、例えば、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の貫通方向に対して略垂直となっている。
穴部21のサイズ(中心細孔直径)は、当該穴部21の内部に固定する酵素30の種類等に応じて適宜任意に変更可能であり、具体的には、例えば、1nm〜50nmである。ここで、穴部21のサイズは、界面活性剤の種類を変えて、界面活性剤のミセルの径を変えることによって制御できる。また、穴部21のサイズは、例えば、界面活性剤と併せて、トリメチルベンゼンやトリプロピルベンゼンなどの比較的疎水性の分子を添加し、ミセルを膨潤させて、ミセルの径を変えることによって制御できる。
【0023】
なお、穴部21の中心細孔直径とは、穴部21の断面形状が正円形状であると仮定し、シリカ構造体20の細孔容積(V)を穴部21の直径(D)で微分した値(dV/dD)を穴部21の直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径を意味する。
【0024】
穴部21のサイズは、当該穴部21の内部に固定する酵素30のサイズの0.5〜2.0倍程度であることが好ましく、酵素30のサイズの0.7〜1.4倍程度であることがより好ましく、酵素30のサイズとほぼ同等であることが最も好ましい。穴部21のサイズが酵素30のサイズの0.5倍未満であると、酵素30が穴部21の内部へと入り込み難くなり、酵素30の固定量が不充分となる傾向がある。また、穴部21のサイズが酵素30のサイズの2.0倍よりも大きいと、酵素30の立体構造が効率よく保持されない傾向がある。
すなわち、シリカ構造体20が有する穴部21のサイズを、当該穴部21の内部に固定する酵素30のサイズの0.5〜2.0倍程度(より好ましくは0.7〜1.4倍程度、最も好ましくはほぼ同程度)にすることによって、穴部21の内部への酵素30の固定(吸着)を効率化でき、また、穴部21の内部に固定された酵素30の立体構造の保持が容易となるため酵素30を安定的に担持することができる。
【0025】
なお、穴部21の内部に固定する酵素30が多量体を形成する場合、当該酵素30のサイズは、多量体のサイズとすることができる。ここで、多量体とは、2以上の酵素(タンパク質)が、直接に、又は水などの低分子を介して結合してなる化合物をいい、結合には、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合が含まれる。しかし、これらの結合の種類は、特に制限されない。
また、穴部21の内部に固定する酵素30のサイズは、当該酵素30の形状が、球状である場合は酵素30の直径(例えば、楕円球状のように直径が複数ある場合は、そのうちの何れか1つ)、板状である場合は酵素30の長辺の長さ、等とすることができるが、これらに限られるものではなく、穴部21の内部に固定する酵素30の形状や特性に応じて適宜任意に判断するのが好ましい。
【0026】
また、穴部21の内部に固定する酵素30の変性を抑制する等の観点から、シリカ構造体20の酸解離定数(pKa)は、pKa5〜14が好ましい。
【0027】
また、穴部21の深さ(すなわち、シリカ構造体20の壁面の厚み)は、穴部21の内部に固定する酵素30の種類等に応じて適宜任意に変更可能であり、具体的には、例えば、1nm以上である。
ここで、シリカ構造体20の壁面の厚みを決めるファクターとして、シリカ構造体20の原料となるシリカ源溶液の粘度や液温、シリカ源溶液を陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11内に流し込む速度などが挙げられる。例えば、流し込む速度が低下するにつれて、貫通孔11内に形成される中空糸状のシリカ構造体20の壁面の厚みは厚くなり、流し込む速度が所定の閾値以下になると、貫通孔11内には、固定領域A1と拡散領域A2とが分離された構造のシリカ系メソ多孔体(中空糸状のシリカ構造体20)が形成されず、固定領域A1と拡散領域A2とが分離されていない構造のシリカ系メソ多孔体が形成されてしまう。
【0028】
シリカ構造体20は、0.1〜1.5mL/gの細孔容積を有するシリカ系メソ多孔体であることが好ましく、また、200〜1500mの比表面積を有するシリカ系メソ多孔体であることが好ましい。そして、シリカ構造体20は、全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上のシリカ系メソ多孔体であることが好ましい。
ここで、「全細孔容積に占める、中心細孔直径の±40%の範囲内の直径を有する細孔の全容積の割合が60%以上」とは、例えば、中心細孔直径が3.00nmである場合、この3.00nmの±40%、すなわち、1.80〜4.20nmの範囲にある細孔の容積の合計が、全細孔容積の60%以上を占めていることを意味する。
このような条件を満たすシリカ系メソ多孔体は、細孔の直径が非常に均一であることを意味し、このような細孔配列構造を有するシリカ系メソ多孔体に、酵素30を吸着させると、酵素30の安定性及び吸着量(固定量)をより向上させることができる。なお、細孔容積は、例えば、リン酸溶液や硝酸溶液で陽極酸化アルミナ基板10を溶解させて、析出したシリカ構造体20を液体窒素温度に冷却して窒素ガスを導入する方法(窒素吸着法)によって算出することができる。
【0029】
また、シリカ構造体20は、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有するX線回折パターンを示すシリカ系メソ多孔体であることが好ましい。X線回折パターンでピークが現われる場合は、そのピーク角度に相当するd値の周期構造がシリカ系メソ多孔体中にあることを意味する。
したがって、1nm以上のd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1nm以上の間隔で規則的に配列していることを意味する。このように、非常に規則的な細孔配列構造を有するシリカ系メソ多孔体に、酵素30を吸着させると、酵素30の安定性及び吸着量をより向上させることが可能になる。
【0030】
なお、シリカ構造体20における、穴部21の配列状態(細孔配列構造)は、特に制限されるものではない。シリカ構造体20としては、例えば、ヘキサゴナルの細孔配列構造を有するもの、キュービックやディスオーダの細孔配列構造を有するものが例示される。
ここで、シリカ構造体20がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、シリカ構造体20が有する穴部21の配置が六方構造であることを意味する。ヘキサゴナルの細孔配列構造としては、2次元ヘキサゴナル及び3次元ヘキサゴナルが挙げられる。本発明において好適に用いることのできる2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有するシリカ構造体20は、例えば、図1に示すように、2次元ヘキサゴナル配列構造に基づいて、六角柱状の細孔が互いに平行に規則的に形成されている。
また、シリカ構造体20がキュービックの細孔配列構造を有するとは、シリカ構造体20が有する穴部21の配置が立方構造であることを意味する。
また、シリカ構造体20がディスオーダの細孔配列構造を有するとは、シリカ構造体20が有する穴部21の配置が不規則であることを意味する。
【0031】
なお、シリカ構造体20が、ヘキサゴナルやキュービックなどの規則的細孔配列構造を有する場合は、穴部21の全てがこれらの規則的細孔配列構造である必要はない。すなわち、シリカ構造体20は、ヘキサゴナルやキュービックなどの規則的細孔配列構造と、ディスオーダの不規則的細孔配列構造と、の両方を有していることが可能である。しかしながら、全ての穴部21のうちの80%以上は、ヘキサゴナルやキュービックなどの規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
【0032】
また、シリカ構造体20としては、有機基を有するシリカ系メソ多孔体、有機基を有しないシリカ系メソ多孔体が例示される。そして、何れのシリカ系メソ多孔体の場合においても、ケイ素以外の金属元素(例えば、Al、Zr、Ti)を更に含むことができる。なお、何れのシリカ系メソ多孔体であっても、表面にはシラノール基(−SiOH基)が存在している。
有機基を有するシリカ系メソ多孔体とは、シリカ系メソ多孔体を構成するケイ素原子の少なくとも一部に、有機基が、炭素−ケイ素結合を形成することによって結合しているものをいう。有機基としては、例えば、アルカンやアルケン、アルキン、ベンゼン、シクロアルカンなどの炭化水素から1以上の水素がとれて生じる炭化水素基、アミド基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基、スルフォン基、カルボキシル基、エーテル基、アシル基、ビニル基等が挙げられる。
【0033】
<酵素>
酵素30は、特定物質と選択的に反応する酵素であれば任意であり、特定物質の種類によって適宜選択可能である。
具体的には、酵素30は、例えば、酸化還元酵素、加水分解酵素、転移酵素、異性化酵素等の酵素(酵素タンパク質)であるが、これらに限定されるものではない。
また、酵素30は、例えば、生来の酵素分子であっても良いし、活性部位を含む酵素の断片であっても良い。当該酵素分子又は当該活性部位を含む酵素の断片は、例えば、動植物や微生物から抽出したものであっても良いし、所望によりそれを切断したものであっても良いし、遺伝子工学的に又は化学的に合成したものであっても良い。
【0034】
陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に導入してシリカ構造体20の穴部21の内部に固定する酵素30(すなわち、酵素電極1を構成する酵素30)は、1種類の酵素であっても良いし、2種類以上の酵素であっても良い。
また、酵素電極1を構成する酵素30が2種類以上である場合、当該酵素30は、例えば、同種の特定物質(基質)に作用する2種類以上の酵素であっても良いし、異種の特定物質に作用する2種類以上の酵素であっても良いし、同種及び/又は異種の特定物質に作用する2種類以上の酵素であっても良い。
また、酵素電極1を構成する酵素30が2種類以上である場合、その2種類以上の酵素30は、陽極酸化アルミナ基板10が有する別々の貫通孔11内に導入されても良いし、同一の貫通孔11内に導入されても良い。
【0035】
酵素30を貫通孔11内に導入して穴部21の内部に固定する方法としては、例えば、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10に、酵素30を含む溶液を滴下するディップ法、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10を、酵素30を含む溶液に浸漬する浸漬法、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10の表面から裏面に向かって(或いは、裏面から表面に向かって)、酵素30を含む溶液を透過させる透過法等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これにより、高次構造と活性を保持したまま、酵素30を貫通孔11内に導入して穴部21の内部に固定することができる。
さらに、必要に応じて、公知の酵素固定化法(例えば、導電性高分子、グルタルアルデヒド、光架橋性樹脂等を用いる固定化法等)と併用することもできる。
【0036】
なお、貫通孔11内には、酵素30の他に、酵素30と電極40(作用電極41)との間の電子の受け渡しを促進する電子伝達物質や、酵素30の活性の発現を触媒する補酵素などが予め導入されていても良い。また、電子伝達物質や補酵素などは、特定物質(基質)を含有する液体に溶解させておいても良い。
【0037】
<電極>
電極40は、パッド40aや、電極40とパッド40aとを接続する配線40bとともに、陽極酸化アルミナ基板10の一方の面(表面)に成膜された金属薄膜である。
なお、本実施形態では、電極40(電極40、パッド40a、配線40b)を金属薄膜とするが、これに限ることはなく、電極40(電極40、パッド40a、配線40b)は、導電性の薄膜であれば任意である。
【0038】
酵素電極1を酵素センサに適用する際には、例えば、電極40において発生した電流値を測定するポテンショスタット(図示省略)と接続するリード線(図示省略)を、パッド40aに接続することによって、配線40b、パッド40a及びリード線を介して、電極40とポテンショスタットとを接続する。
【0039】
なお、酵素電極1の電極方式として、図1では、作用電極41と対向電極42と参照電極43との三極方式を示しているが、これに限ることはなく、作用電極と対向電極との二極方式、作用電極と対向電極と参照電極との三極方式の何れを採用しても良い。
【0040】
<酵素電極の製造方法>
次に、酵素電極1の製造方法について説明する。
酵素電極1は、陽極酸化アルミナ基板10を準備し、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の径を一部拡張し、陽極酸化アルミナ基板10の表面に電極40等を成膜し、シリカ構造体20を貫通孔11内に形成し、酵素30を貫通孔11に導入してシリカ構造体20に固定することによって製造される。
【0041】
(陽極酸化アルミナ基板の準備)
まず、陽極酸化アルミナ基板10を準備する。
具体的には、まず、アルミニウムを含む基板を陽極酸化して得た市販の陽極酸化アルミナ基板を用意する。
ここで、本実施形態において用意した陽極酸化アルミナ基板の断面の電子顕微鏡写真を図3に、用意した陽極酸化アルミナ基板の断面をさらに拡大して得た電子顕微鏡写真を図4に示す。図3及び図4に示すように、陽極酸化アルミナ基板が有する貫通孔11は、陽極酸化アルミナ基板の厚さ方向に、すなわち、一方の面(表面)から他方の面(裏面)にかけて貫通していることが分かる。
【0042】
次いで、用意した陽極酸化アルミナ基板を脱脂洗浄する。
より具体的には、例えば、まず、用意した陽極酸化アルミナ基板を、アセトンに浸して超音波洗浄を10分程度行った後、エタノールに浸して超音波洗浄を10分程度行う。その後、超純水を用いて流水洗浄を10分程度行った後、乾燥窒素で超純水を吹き飛ばし乾燥させる。
【0043】
次いで、脱脂洗浄した陽極酸化アルミナ基板の表面を整形する。
ここで、陽極酸化アルミナ基板の表面は、滑らかではなく、多くの凹凸部がある。電極40、パッド40a及び配線40bとして金属薄膜を陽極酸化アルミナ基板の表面に成膜する際、この凹凸部は成膜した金属薄膜の不連続部となり、電流が流れ難くなるので、都合が悪い。そこで、この凹凸部を反応性イオンエッチングによって取り去り、陽極酸化アルミナ基板の表面を被成膜面に適した面にする。
より具体的には、例えば、反応ガスとしてCF及びSFをそれぞれ50sccmずつ処理室に流し、処理室の圧力を10torrにして、RFパワーを20W入力した状態で、反応性イオンエッチングを15分程度行う。
【0044】
なお、反応性イオンエッチングの条件は、処理室の大きさや排気速度などによって適宜任意に変更可能であり、上記の条件は一例である。
また、陽極酸化アルミナ基板の表面から凹凸部を取り去って、被成膜面に適した面にする方法は、反応性イオンエッチング法に限ることはなく、その他公知の方法を適宜任意に使用可能である。
また、この陽極酸化アルミナ基板の表面を整形する工程で、陽極酸化アルミナ基板の厚みを調整することも可能である。具体的には、例えば、50μmの厚さの陽極酸化アルミナ基板から、30μmの厚さの陽極酸化アルミナ基板を作成することも可能である。
【0045】
(貫通孔の径の拡張)
次に、準備した陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の径を一部拡張する。
ここで、準備した陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11は、図5(a)に示すように、陽極酸化アルミナ基板10の表面から裏面に亘って、略一定の径を有している。電極40、パッド40a及び配線40bとして金属薄膜を陽極酸化アルミナ基板10の表面に成膜すると、当該金属薄膜によって、陽極酸化アルミナ基板10における表面側の部分では、その他の部分よりも貫通孔11が狭まり、貫通孔11のサイズ(径)や金属薄膜の厚さにもよるが、液体や気体を高速で透過できなくなって、高速な反応が実施できなくなる場合がある。そこで、図5(b)に示すように、貫通孔11の内壁11aのうちの電極40等が成膜される面側(表面側)の部分をエッチングすることによって、陽極酸化アルミナ基板10における表面側の部分の貫通孔11の径を、他の部分よりも大きくする。
【0046】
エッチングの深さは、陽極酸化アルミナ基板10の表面に金属薄膜を成膜した際、例えば、図5(c)に示すように、貫通孔11のうちの金属薄膜でコーティングされている部分の径が、コーティングされていない部分の径と略同等となる深さが好ましいが、これに限定されるものではなく、電極40等(金属薄膜)によって貫通孔11が狭まり液体や気体を高速に透過できなくなってしまうことを解消できるのであれば、適宜任意に変更可能である。
また、エッチングの方法は任意であり、乾式法であっても、湿式法であっても良い。
【0047】
(電極の成膜)
次に、貫通孔11の径を一部拡張した陽極酸化アルミナ基板10の表面に、電極40を成膜する。
具体的には、まず、Oプラズマアッシングを行うことによって、酸素(オゾン)により陽極酸化アルミナ基板10の表面をクリーニングする。Oプラズマアッシングの条件は、適宜任意に変更可能であり、例えば、酸素流量100mL/min、圧力100Pa、RFパワー300W、処理時間3分である。
【0048】
次いで、例えば、図5(c)に示すように、陽極酸化アルミナ基板10の表面に、電極40、パッド40a及び配線40bとして、金属薄膜を成膜する。
ここで、成膜に適している金属は、金(Au)や白金(Pt)であるが、その他の金属であっても良い。成膜方法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、パルスレーザーデポジション法、電子ビーム蒸着法等が利用できるが、その他の成膜方法であっても良い。
【0049】
より具体的には、まず、表面をクリーニングした陽極酸化アルミナ基板10を成膜室に入れ、第一層にチタン(Ti)やクロム(Cr)などを薄く(10Å〜100Å程度)蒸着する。その後、同じ成膜室で時間を経過させないで、金(Au)や白金(Pt)を所定の厚さに達するまで蒸着する。チタン(Ti)やクロム(Cr)などを最初に成膜するのは、金(Au)や白金(Pt)と陽極酸化アルミナ基板10との間の密着力を向上させるためである。金(Au)や白金(Pt)の膜厚は酵素電極1の形状や使用目的などにより適宜任意に変更可能であり、例えば、0.5μmである。
金属薄膜の成膜は、電極40(電極40、パッド40a、配線40b)の形状に切り抜かれた薄い金属製のマスクを通して行うのが良い。蒸着源と陽極酸化アルミナ基板10との間に、特に陽極酸化アルミナ基板10に密着して、この金属製のマスクを入れる。こうすることで、金属製のマスクに開けられた穴の形状と同じ形に金属薄膜(AuやPt)が蒸着できる。
【0050】
なお、金属薄膜の成膜方法の別の方法として、半導体に使われているフォトリソグラフ法を応用することができる。具体的には、例えば、陽極酸化アルミナ基板10の表面にレジストをスピンコートで塗布し、所定の温度で加熱する。その後、フォトマスクを通して紫外線を露光、現像することで、陽極酸化アルミナ基板10の表面に電極40(電極40、パッド40a、配線40b)の形のパターンが形成される。これに金属薄膜(AuやPt)を蒸着し、その後レジストを除去する。
【0051】
(シリカ構造体の形成)
次に、シリカ構造体20を貫通孔11内に形成する。
具体的には、例えば、まず、シリカ構造体20の原料となるシリカ源溶液を、電極40が成膜された陽極酸化アルミナ基板10の一方の面(表面)から流し込んで他方の面(裏面)から排出する操作(或いは、裏面から流し込んで表面から排出する操作)を行う。この際、貫通孔11の内壁11aに残留するシリカ源溶液の厚さが所定の値となるように、シリカ源溶液の粘度や液温、シリカ源溶液を流し込む速度などの条件を調整する。
次いで、例えば、貫通孔11の内壁11aにシリカ源溶液が残留する陽極酸化アルミナ基板10を加熱し、当該シリカ源溶液を焼き固めることによって、貫通孔11の内壁11aに沿ってシリカ構造体20を形成する。
【0052】
(酵素の導入)
次に、酵素30を貫通孔11に導入してシリカ構造体20に固定する。
具体的には、まず、酵素30を含む溶液を作成する。
次いで、例えば、作成した酵素30を含む溶液を、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10の表面から流し込んで裏面から排出する操作(或いは、裏面から流し込んで表面から排出する操作)を繰り返し行うことによって、当該酵素30を貫通孔11内に導入して穴部21の内部に吸着固定させる。
次いで、貫通孔11内にシリカ構造体20が形成された陽極酸化アルミナ基板10を洗浄することによって、拡散領域A2内の酵素30を洗い流す。
【0053】
以上のようにして、酵素電極1を製造することによって、高性能な酵素電極1を低コストで多量に供給することができる。
すなわち、陽極酸化アルミナ基板10は、大量生産でき、その品質も十分に制御管理可能である。また、電極40等(金属薄膜)の成膜方法も、大量生産可能な真空技術を用いている。また、酵素30の固定化の手法も、大量生産に適した手法である。つまり、上記の酵素電極1の製造方法は、大量生産のために開発された既存の工業技術を組み合わせており、そのため、プロセス全体が大量生産に適した制御性に優れたものとなっている。工業的に見れば、上記の酵素電極1の製造方法は、工業化するために必要な再現性、制御性、低コスト性、大量生産性等を有している。したがって、上記の酵素電極1の製造方法を使用すれば、高性能な酵素電極1を低コストで多量に供給することができる。
【0054】
また、陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11のサイズや密度などは、アルミニウムを含む基板を陽極酸化する際の陽極酸化条件等を調整することによって制御できる。工業的には、貫通孔11のサイズや密度を知ることで、酵素30の固定量を決めることができるとともに、酵素電極1に透過させる液体や気体(特定物質(基質)等を含有する液体や気体)に対するコンダクタンスを決定することができる。したがって、上記の酵素電極1の製造方法を使用すれば、電極40の形状、酵素30の固定量、液体や気体のコンダクタンス等の物性値が制御された条件下で、再現性よく酵素電極1を製造することができ、工業的に有利である。
なお、上記の酵素電極1の製造方法は、一例であって、これに限られるものではない。
【0055】
以上説明した本実施形態の酵素電極1によれば、互いに平行な複数の貫通孔11を有する陽極酸化アルミナ基板10と、貫通孔11内に導入された酵素30と、陽極酸化アルミナ基板10の少なくとも一方の面(表面)に貫通孔11を塞がないように成膜された電極40と、を備えている。すなわち、酵素30を担持した陽極酸化アルミナ基板10と、電極40と、が一体的に形成されている。したがって、酵素を担持した基板と電極とが別体である場合と比較して、部品点数が少なくなるので、低コスト化が容易である。
【0056】
また、陽極酸化アルミナ基板10の少なくとも一方の面(表面)に電極40が成膜されているので、酵素を担持した基板と電極とが別体である場合と比較して、小型化が容易である。
さらに、陽極酸化アルミナ基板10は薄いシートであり、その上に電極40として金属薄膜が形成されているので、多数の酵素電極1を積み重ねても、全体の厚さを薄くすることができる。例えば、陽極酸化アルミナ基板10の厚さが50μmであれば、200枚の酵素電極1を積み重ねても、全体の厚さが約1cmにしかならない。したがって、酵素電極1を酵素センサや酵素バイオ電池に適用した場合、酵素電極1を積み重ねて適用しても、酵素センサや酵素バイオ電池が大型化することなく、好適である。
【0057】
また、陽極酸化アルミナ基板10は、直径が50nm〜1μmの貫通孔11を有しており、電極40は、当該貫通孔11を塞がないように成膜されているので、酵素30が選択的に反応する特定物質(基質)等を含む液体や気体を強制的に透過させることができ、酵素30に対して特定物質等を効率よく供給することができる。そのため、高速で効率よく酵素反応が実施できるので、高性能な酵素電極1を提供することができる。したがって、酵素電極1を酵素センサに適用した場合、酵素反応効率が高く、微小電流であっても高感度かつ短時間で検出できるため、高性能な酵素センサを作成することができる。
【0058】
さらに、酵素電極1を多層に積み重ねても、液体や気体を全体にまんべんなく透過させることができるので、効率の良い酵素反応を生じさせることができる。したがって、例えば、酵素電極1を多層に積み重ねて酵素バイオ電池に適用した場合、大型化することなく酵素電極1を多層に積み増すことができるとともに、酵素電極1を多層に積み増しても効率よく特定物質(基質)等を含む液体を循環させることができるため、小型でありながらも、高効率で高出力の酵素バイオ電池を作成することができる。
【0059】
また、酵素反応部分と電極40部分とが近いため(陽極酸化アルミナ基板10の厚さが50μmであれば、酵素30と電極40との間は最大でも50μmしか離れていない)、酵素反応で生じた電気を電極40によって効率よく短時間で検出できる。また、電極40によって酵素反応で生じた電気がすばやくくみ上げられるので、酵素反応で生じる電気を効率よく引き出すことができる。
【0060】
また、以上説明した酵素電極1によれば、貫通孔11内に当該貫通孔11の内壁11aに沿って形成された中空糸状のシリカ構造体20を備え、シリカ構造体20は、壁面に複数の穴部21を有し、酵素30は、貫通孔11内に導入されて穴部21の内部に固定されている。
したがって、陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内にシリカ構造体20が形成されているので、陽極酸化アルミナ基板10に効率よく安定的に酵素30を担持させることができる。
【0061】
また、以上説明した酵素電極1によれば、陽極酸化アルミナ基板10における電極40が成膜される面(表面)側の部分は、貫通孔11の内壁11aがエッチングされて、他の部分よりも貫通孔11の径が大きいので、陽極酸化アルミナ基板10の少なくとも一方の面(表面)に、電極40を成膜しても、電極40によって貫通孔11が狭まってしまうことがなく、高速で酵素反応を実施できる。
【0062】
なお、本発明は、上記した実施の形態のものに限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0063】
シリカ構造体20が有する穴部21の貫通方向は、陽極酸化アルミナ基板10が有する貫通孔11の貫通方向に対して略垂直に限ることはなく、穴部21が中空糸状のシリカ構造体20の内壁面20aから外壁面20bにかけて貫通しているのであれば任意である。
また、シリカ構造体20が有する穴部21は、シリカ構造体20の内壁面20aから外壁面20bにかけて貫通する細孔に限ることはなく、例えば、シリカ構造体20の内壁面20aに形成された凹部(すなわち、内壁面20a側が開口して外壁面20b側が閉口した穴)であっても良い。
【0064】
なお、酵素電極1を構成する基板は、陽極酸化アルミナ基板10に限ることはなく、所定の金属を含む基板を陽極酸化して得た陽極酸化金属基板等の、互いに平行な複数の貫通孔11を有する金属酸化物基板であれば任意である。
また、酵素電極1を構成する基板は、陽極酸化アルミナ基板等の金属酸化物基板に限ることはなく、互いに平行な複数の貫通孔11を有する基板であれば任意である。具体的には、例えば、ナノレベルの周期的な円柱構造をテンプレートとして用いて、高分子ポリマー、金属、セラミックス等の薄膜へ転写することによって、互いに平行な複数の貫通孔11を有する基板を作成することもできる。
【0065】
陽極酸化アルミナ基板10の貫通孔11内に中空糸状のシリカ構造体20を形成することとしたが、これに限ることはなく、貫通孔11内に、効率よく安定的に酵素30を固定するための中空糸状の多孔体が形成されていれば任意であり、例えば、中空糸状のカーボン多孔体が形成されていても良い。
また、必ずしも貫通孔11内に多孔体を形成する必要はなく、貫通孔11に直接酵素30が固定されていても良い。
【0066】
陽極酸化アルミナ基板10の表面に、電極40(作用電極41、対向電極42、参照電極43)、パッド40a及び配線40bを成膜するようにしたが、これに限ることはなく、例えば、表面に、作用電極41と作用電極41用のパッド40aと作用電極41と当該パッド40aとを接続する配線40bとを成膜し、裏面に、対向電極42と対向電極42用のパッド40aと対向電極42と当該パッド40aとを接続する配線40bとを成膜するとともに参照電極43と参照電極43用のパッド40aと参照電極43と当該パッド40aとを接続する配線40bとを成膜するようにしても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 酵素電極
10 陽極酸化アルミナ基板(基板)
11 貫通孔
20 シリカ構造体
21 穴部
30 酵素
40 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な複数の貫通孔を有する基板と、
前記貫通孔内に導入された酵素と、
前記基板の少なくとも一方の面に前記貫通孔を塞がないように成膜された電極と、
を備えることを特徴とする酵素電極。
【請求項2】
前記貫通孔内に当該貫通孔の内壁に沿って形成された中空糸状のシリカ構造体を備え、
前記シリカ構造体は、壁面に複数の穴部を有し、
前記酵素は、前記貫通孔内に導入されて前記穴部の内部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の酵素電極。
【請求項3】
前記基板における前記電極が成膜される面側の部分は、前記貫通孔の内壁がエッチングされて、他の部分よりも前記貫通孔の径が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の酵素電極。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−47452(P2012−47452A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186729(P2010−186729)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(505303059)株式会社船井電機新応用技術研究所 (108)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】