説明

酵素電気化学センサー用イオン型親水性高分子量レドックスポリマー

【課題】作用電極、レドックス酵素、レドックスメディエーターから成る酵素電気化学センサーにおいて、前記のレドックスメディエーターおよびレドックス酵素の適切な活性を維持しながら、該電気化学センサー電極付近からのレドックスメディエーター、レドックス酵素両者の不注意な溶出を防止する。
【解決手段】イオン部分含有親水性ポリマーと該親水性ポリマーにペンダント状に結合した複数レドックスメディエーターを含むイオン型親水性高分子量レドックスポリマーを使用し、代表的陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマーは、親水性アクリルアミドモノマー、塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムおよびビニルフェロセンの共重合によって合成する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、一般に、センサー、特に酵素電気化学センサーに関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
電極と連結してレドックスメディエーター(例、フェロセン)およびレドックス酵素(グルコースオキシダーゼなど)を用いた酵素電気化学センサーの、液体サンプル中の分析物の測定への使用は、近年、関心が高まってきた。該酵素電気化学センサーは、体液サンプル(例、血液または間質液サンプル)中の分析物(例えばグルコース)の連続または半連続モニタリングに特に適していると考えられる。例えば、レドックスメディエーター、レドックス酵素および作用電極を用いた酵素電気化学グルコースセンサーは、比較的低電位(例、SCEに対して0.4V未満)を使ってグルコース濃度を決定(即ち、測定)できるので、作用電極での妨害応答を制限する。酵素電気化学センサーのさらに詳細な説明については、米国特許第5,089,112号および同第6,284,478号を参照されたい。いずれも、参照することによって本明細書に完全に組み込まれている。
【0003】
レドックス酵素のレドックスセンター周囲のタンパクは、レドックス酵素から酵素電気化学センサーの電極への電子の直接移動を妨げる可能性がある。そのため、典型的な酵素電気化学センサーでは、レドックスメディエーターを用いて、レドックス酵素と該電気化学センサーの電極の間の電子移動を促進する。このような状況で、酸化状態と還元状態の間のレドックス酵素サイクルは、分析物の存在、前記レドックスメディエーターおよび電極表面によって促進される。前記サイクリングの最終的結果は、レドックス酵素が元の酸化状態および触媒特性を本質的に維持しながら、電子を電極表面で受容または供与するというものである。
【0004】
連続または半連続電気化学グルコースセンサーなどの長期安定を必要とする酵素電気化学センサーには、レドックスメディエーター、レドックス酵素が共に電極付近から溶出しないことが不可欠である。そのため、酵素電気化学センサー中に容易に溶出可能なレドックスメディエーター(容易に溶出可能なフェリシアニド、ベンゾキノンおよび低分子量キノン誘導体、フェロセン、低分子量フェロセン誘導体、ルテニウム錯体およびオスミウム錯体など)を用いるのは望ましくない。さらに、レドックスメディエーターがヒトや他の対象に有害な物質である場合、ヒトや他の対象の体内への該レドックスメディエーターの溶出は望ましくなく、従って使用を避けなければならない。
【0005】
さらに、酵素電気化学センサーのレドックス酵素およびレドックスメディエーターは、互いに好ましい相互作用を行うことができなければならず、該レドックスメディエーターは、前記酵素電気化学センサーの電極と電子を交換できなければならない。言い換えれば、不注意な溶出を防ぎながら、レドックス酵素およびレドックスメディエーター両方の活性を維持する必要がある。
【0006】
レドックスメディエーターの溶出を防ぐために、レドックスメディエーターをレドックス酵素に化学結合させる特定の化学組成物が、電気化学センサー用に提案されている。しかし、該化学組成物のレドックス酵素は、酵素活性の有害な低下をきたす可能性がある。
【0007】
別法として、溶出防止のために、レドックスメディエーターは、ポリシロザンのような水不溶性合成ポリマー鎖にも結合されている。しかし、前記の化学組成物は、その疎水性のために、低柔軟性とそれによる仲介活性低下をきたす。さらに、水不溶性合成ポリマー鎖へのレドックスメディエーターの結合は、酵素電気化学センサーに用いるレドックス酵素の溶出を防止する必要性に直接対処するものではない。
【0008】
そのため、依然として該分野で必要なのは、酵素電気化学センサー用化学組成物で、前記のレドックスメディエーターおよびレドックス酵素の適切な活性を維持しながら、該電気化学センサー電極付近からのレドックスメディエーター、レドックス酵素両者の不注意な溶出を防止する化学組成物である。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明の実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーは、前記のレドックスメディエーターおよびレドックス酵素の適切な活性を維持しながら、前記電気化学センサー電極付近からの該レドックスメディエーター、該レドックス酵素両者の不注意な溶出を防止する。
【0010】
本発明の実施態様に従った酵素電気化学センサー用イオン型親水性高分子量レドックスポリマーは、イオン部分を有する親水性ポリマー(例、親水性ポリマー主鎖に組み込まれたイオンモノマー)および複数の結合レドックスメディエーターを含む。該レドックスメディエーターは、例えば、前記の親水性ポリマーにペンダント状に共有結合できる。
【0011】
前記のイオン型親水性レドックスポリマーの分子量は十分に高いので、該レドックスポリマーが、酵素電気化学センサーの電極(例、炭素系作用電極)に対して、該電極付近に強力な親和性を有し、容易に固定され、容易に組み込まれ、および/または、容易に捕捉される。そのため、本発明に従ったイオン型親水性レドックスポリマーの典型的な分子量は、16 kg/molよりも大きい。
【0012】
本発明の実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーのイオン性質は、荷電レドックス酵素(グルコースオキシダーゼなど)との強力な結合を促進する。この強力な結合が、該レドックス酵素の溶出を最小限に抑え、該レドックス酵素と前記レドックスメディエーターの間の活性を高める。
【0013】
本発明の実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーは、例えば、メディエーター含有モノマー(ビニルフェロセン(VFc)など)、親水性モノマーおよびイオン型モノマーのフリーラジカル共重合によって合成できる。該合成において、該親水性モノマーを用いて、前記レドックスポリマー内での親水性ポリマー主鎖の大部分を合成することができる。得られるイオン型親水性高分子量レドックスポリマーの親水性が、適当な溶液(水性体液など)中で、該イオン型親水性高分子量レドックスポリマーの膨潤および/または溶解性を提供する。
【0014】
イオン型モノマーの使用は、イオン型親水性高分子量レドックスポリマー中のイオン部分(即ち、荷電官能基)の取り込みを起こし、その一方で、メディエーター含有モノマーの使用が、メディエーターのイオン型親水性高分子量レドックスポリマーへの結合を生じる。
【0015】
本発明の原理を利用した具体的な実施例を示す以下の詳細な説明および添付図面を参照することによって、本発明の特徴および長所をさらに良く理解できる。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
本明細書全体の一貫性を保つために、また、本発明を明確に理解するために、以下の定義を、本明細書で使用する用語に適用する:
用語「レドックスメディエーター」は、電極表面、レドックス酵素の両方との還元(電子受容)または酸化(電子供与)を実施できるいずれかの化学成分を指す。
用語「レドックス酵素」は、基質分子の酸化または還元を特異的に触媒することのできる生化学物質を指す。
用語「親水性の」は、水または水性溶液に高い親和性を有するいずれかの化学種またはサブグループを指す。そのため、親水性化合物は、水または水性溶液に誘引され、溶解し、または吸収される傾向を持つことになる。
用語「レドックスポリマー」は、少なくとも1種類のレドックスメディエーターを含むように合成または修飾(例、誘導体化)されたポリマーを指す。
【0017】
図1は、酵素電気化学センサー用陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100の略図である。図1は、酵素電気化学センサーの電極(E)付近の陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100と負に荷電したレドックス酵素(RE)を示す。レドックス酵素REの負電荷は、図1で「−」の記号で表し、レドックス酵素REのレドックスセンターは、大文字「A」で表す。
【0018】
陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100は、イオン部分120(図1で記号「+」で表す)を有する親水性ポリマー主鎖110と複数の結合レドックスメディエーター130(図1で記号「M」で表す)を含む。いったん、本開示が通知されると、陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100および親水性ポリマー主鎖110が、全体として考えた場合、共に親水性であるが、イオン部分120とレドックスメディエーター130は必ずしも親水性である必要がないことを当業者は認識するだろう。
【0019】
陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100の分子量は、典型的には16kg/molより大きい。この点で、比較的高い分子量が、必ずしも、陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマーと電極の間に永続的高親和性を招くわけではない点は、注目する必要がある。しかし、前記の陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが電極付近に捕捉されない場合には、高分子量は、比較的遅い溶解速度と有益な低速溶出を伴う。
【0020】
親水性ポリマー主鎖110は、当業者に周知のいずれかの適当な親水性ポリマーから形成できる。例えば、親水性ポリマー主鎖110は、親水性アクリルアミドモノマー(AAM)から形成できる。本発明の実施態様での使用に適した代替親水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、N-ビニルピロリジノンおよびN-イソプロピルアクリルアミドなどの重合性アクリレートまたはビニル基を有する親水性モノマーを含むが、それらに制約されない。
【0021】
イオン部分120は、例えば親水性ポリマー主鎖110に組み込まれた陽イオン単位(例、モノマー)を含めて、当業者に周知のいずれかの適切なイオン部分であることができる。適切な陽イオンモノマーは、塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)を含むが、それに制約されない。本発明での使用に適した代替陽イオンモノマーは、塩化(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウム、塩化[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウム、塩化[(2-メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートおよび2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレートなどの四級アンモニウム陽イオンモノマーおよび三級アンモニウム陽イオンモノマーを含む。
【0022】
必要に応じて、適切な陰イオン部分の親水性ポリマー主鎖への組み入れによって、本発明に従った陰イオン型親水性高分子量レドックスポリマーの実施態様を形成できる。適切な陰イオン部分は、例えばカルボン酸モノマー(例、アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸モノマー)を含む。陰イオン型親水性高分子量レドックスポリマーを陽イオンレドックス酵素と共に用いることができ、有益である。例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)は、pH 7で弱陽イオンである。
【0023】
レドックスメディエーター130は、例えば、親水性ポリマー主鎖110にペンダント状に共有結合させることができる。レドックスメディエーター130は、当業者に周知のいずれかの適切なレドックスメディエーターであることができ、フェロセン(Fc)、オスミウム錯体、キノン、フェリシアナイド、メチレンブルー、2,6-ジクロロインドフェノール、チオニン、ガロシアニンおよびインドフェノールを含むが、それらに制約されない。
【0024】
水性溶液(例、血液および間質液)中の分析物(例、グルコース)の測定には、陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100の親水性が、電子交換のためのレドックスメディエーター130とレドックス酵素REの間の好ましい相互作用、並びに、電子交換のためのレドックスメディエーター130と電極Eの間の好ましい相互作用を促進する。さらに、陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマー100の陽イオン性は、負電荷(即ち、陰イオン)レドックス酵素REとの相互作用を増強する。
【0025】
本発明の実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーの比較的高い分子量は、前記レドックスメディエーターおよび/またはレドックス酵素の不注意な溶出を防止する方法によって酵素電気化学センサーの使用を容易にする。例えば、該高分子量は、該酵素電気化学センサーの電極との親和性を促進できる。
【0026】
図2は、本発明の典型的実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマー200合成の単純一段階反応順序の簡略図である。該反応順序は、図2に示すように、アクリルアミド(AAM)、ビニルフェロセン(VFc)および塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)の共重合に関するものである。図2の反応順序は、開始剤として2.2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を使って70℃で実施する。
【0027】
図2の反応順序から生じる前記イオン型親水性高分子量ポリマー200は、例えば、約110kg/mol(ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって重量平均分子量として測定)の高分子量を有することができる。
【0028】
AMMは、比較的高い分子量のレドックスポリマーの形成を補助する比較的高い連鎖成長速度係数を有するので、AMMを図2の反応順序に用いるというのは、注目すべき点である。
【0029】
図2では、AAM、VFcおよびAETMACの相対モル比率を、それぞれ、m、nおよびpで表す。この点で、mは、例えば、約84−約99の範囲であることができ、nは、例えば、約1−約6の範囲であることができ、pは、例えば、0付近−約10の範囲であることができる。
【0030】
イオン型高分子量レドックスポリマー200の物理的配座は、非常に柔軟であるため、その部分は、レドックス酵素のレドックスセンターと酵素電気化学センサーの電極の間でセグメントとして拡散し、急速な電子交換を実現する。この点で、「セグメントとして拡散する」という用語は、該イオン型高分子量レドックスポリマーに結合した(つながった)ままで、溶媒和し、動き回ることのできる部分(例、レドックスメディエーター含有部分)を指す。
【0031】
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー200の陽イオン部分は、負に荷電したレドックス酵素(例えば、グルコースオキシダーゼなど)との親和性を促進する。この点で、イオン型親水性高分子量レドックスポリマー200とグルコースオキシダーゼの間の親和性は、水性溶液中で配合すると、凝集として認められている。該親和性は、前記レドックスメディエーターと該レドックス酵素の間の急速な電子交換を可能にする。それは、イオン電荷が、該レドックス酵素のレドックスセンター(該レドックス酵素の活性センターとしても既知)との密接な接触を提供するためである。
【0032】
実施例1 イオン型親水性高分子量レドックスポリマーの合成
ジオキサンとエタノール(1/1 v/v)の混合液40ml中、アクリルアミド(AAM)1.8g、80%塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)0.7g、ビニルフェロセン(VFc)0.3gおよび2.2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03gの反応溶液を使ったフリーラジカル共重合によって、図2のイオン型親水性高分子量レドックスポリマー200を合成した。該反応は、丸底フラスコ中で実施した。
【0033】
反応開始前、該反応溶液を1時間の窒素バブリングによって脱酸素した。次に、該反応溶液を、窒素雰囲気下で連続マグネティック攪拌しながら、油中で70℃まで24時間加熱した。生じたポリマー沈殿を濾過し、アセトンで反復洗浄し、イオン型親水性高分子量レドックスポリマー200の精製サンプルを得た。その後、該精製サンプルを50℃のオーブン中で乾燥した。
【0034】
次に、精製乾燥サンプルの比較的低い分子量部分を脱イオン水での透析によって除いた。該透析では、16kg/molを分子カットオフ値とするセルロース膜透析チュービングを用いた。
【0035】
実施例2 イオン型親水性高分子量レドックスポリマーを用いた酵素電気化学グルコースセンサー電極の調製
酵素電気化学グルコースセンサー電極は、イオン型親水性高分子量レドックスポリマー200(上記の実施の形態1のとおりに調製)の1%(w/v)水性溶液0.5μlを炭素電極(サイズ2.25mm X 2.25mm)上に塗布した後、50℃のオーブンで約5分間乾燥し、レドックスポリマー被覆電極を形成することによって調製した。次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中10%(w/v)グルコースオキシダーゼ溶液1μlを、該レドックスポリマー被覆電極に塗布した後、50℃のオーブン中で10分間乾燥した。
【0036】
ポリエチレンイミン(PEI)52mgおよびポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PPGDGE)106mgを含有する溶液を2-イソプロパノール1ml中で混合した。次に、PEI/PPGDGE混合液0.8μlを上記のとおりに調製した電極に直接塗布し、50℃のオーブンで30分間乾燥した。該PEIおよびPPGDGEは、架橋透析膜を形成し、電極付近にイオン型親水性高分子量レドックスポリマー200および前記グルコースオキシダーゼ(レドックス酵素)を保持したが、グルコースなどの低分子量分析物を透過させた。
【0037】
実施例3 実施例 2の酵素電気化学センサー電極の検査
実施の形態2の電気化学グルコースセンサー電極を、0mMから15mMまでのグルコース濃度に亘って、三極センサー装置中の作用電極としてPBS中で検査した。該三極センサー装置は、作用電極、対電極および参照電極を含んだ。
【0038】
前記作用電極は、室温、温和なマグネティック攪拌下で、大気に開いた三極センサー装置によって、Ag/AgClに対して300mVで平衡を保った。濃縮グルコース溶液のボーラスをPBSに定期的に添加し、PBSのグルコース濃度を高めた。図3Aは、該三極センサー装置の電流が、各ボーラス添加後に急速に増加した後、プラトーに達したことを示す。
【0039】
前記作用電極は、15mMのグルコースで、10時間連続でも検査し(図3Aに図示せず)、約17%のみの電流応答減少を示した。該応答は、低分子量レドックスメディエーターを用いた酵素電気化学センサーと比較すると、長期測定安定性の劇的な改善点である。
【0040】
図3Bは、電流応答対グルコース濃度を表す図3Aに対応する検量線である。この検量線は、2mMから15mMまでの範囲でほぼ直線である。
【0041】
本発明の実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーは、容易に合成できる。さらに、高い電極親和性およびレドックス活性の提供(例えば、レドックス酵素との急速電子移動)に分子量、イオン性質および物理的配座を適合させることができる。
【0042】
本明細書に述べる本発明の実施態様の各種代替物を利用できることを理解する必要がある。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を規定し、それによって、これらの特許請求の範囲内の構造およびその等価物を網羅することを意図する。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 酵素電気化学センサー用イオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが、
イオン部分を含む親水性ポリマーと、
複数の結合レドックスメディエーターと、を含み、
前記イオン型親水性高分子量ポリマーの分子量が16kg/molよりも大きい、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(2) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマーが親水性ポリマー主鎖である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(3) 実施態様2記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマー主鎖を少なくとも部分的に親水性アクリルアミドモノマー(AAM)から形成する、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(4) 実施態様2記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマー主鎖を、アクリレート重合性基を有する親水性モノマーおよびビニル重合性基を有する親水性モノマーの少なくとも1種類から少なくとも部分的に形成する、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(5) 実施態様2記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分を、前記親水性主鎖に取り込み、前記レドックスメディエーターを前記親水性ポリマー主鎖にペンダント状に共有結合させる、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【0044】
(6) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分が陽イオン部分である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(7) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分が、塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)から成る、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(8) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分が、四級アンモニウム陽イオンモノマーおよび三級アンモニウム陽イオンモノマーの少なくとも1種類から成る、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(9) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記レドックスメディエーターがフェロセン(Fc)である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(10) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマーが、親水性アクリルアミドモノマー(AAM)から少なくとも部分的に形成される親水性ポリマー主鎖で、
前記イオン部分を、前記親水性ポリマー主鎖に組み入れた塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)から少なくとも部分的に形成し、
前記レドックスメディエーターが、ビニルフェロセン(VFc)として前記親水性ポリマー主鎖に共有結合したフェロセン(Fc)である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【0045】
(11) 実施態様10記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記分子量が約110 kg/molである、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(12) 実施態様10記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
AAMの相対モル比率が約84−約99の範囲であり、VFcの相対モル比率が約1−約6の範囲であり、AETMACの相対モル比率が0付近−約10の範囲である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(13) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分がカルボン酸モノマーから成る、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(14) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマーである、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
(15) 実施態様1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが陰イオン型親水性高分子量レドックスポリマーである、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】酵素電気化学センサーのレドックス酵素および電極付近の、本発明に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーの典型的実施態様の簡略図である。
【図2】本発明の典型的実施態様に従ったイオン型親水性高分子量レドックスポリマーを合成する反応順序の簡略図である。
【図3A】酵素電気化学グルコースセンサーの過渡電流応答を示す図であり、連続的に添加したグルコースのボーラスで検査した、本発明の典型的実施態様に従った陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマーを含む。
【図3B】図3Aの過渡電流応答に対応する検量線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素電気化学センサー用イオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが、
イオン部分を含む親水性ポリマーと、
複数の結合レドックスメディエーターと、を含み、
前記イオン型親水性高分子量ポリマーの分子量が16kg/molよりも大きい、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項2】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマーが親水性ポリマー主鎖である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項3】
請求項2記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマー主鎖を少なくとも部分的に親水性アクリルアミドモノマー(AAM)から形成する、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項4】
請求項2記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマー主鎖を、アクリレート重合性基を有する親水性モノマーおよびビニル重合性基を有する親水性モノマーの少なくとも1種類から少なくとも部分的に形成する、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項5】
請求項2記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分を、前記親水性主鎖に取り込み、前記レドックスメディエーターを前記親水性ポリマー主鎖にペンダント状に共有結合させる、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項6】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分が陽イオン部分である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項7】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分が、塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)から成る、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項8】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分が、四級アンモニウム陽イオンモノマーおよび三級アンモニウム陽イオンモノマーの少なくとも1種類から成る、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項9】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記レドックスメディエーターがフェロセン(Fc)である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項10】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記親水性ポリマーが、親水性アクリルアミドモノマー(AAM)から少なくとも部分的に形成される親水性ポリマー主鎖で、
前記イオン部分を、前記親水性ポリマー主鎖に組み入れた塩化[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム(AETMAC)から少なくとも部分的に形成し、
前記レドックスメディエーターが、ビニルフェロセン(VFc)として前記親水性ポリマー主鎖に共有結合したフェロセン(Fc)である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項11】
請求項10記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記分子量が約110 kg/molである、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項12】
請求項10記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
AAMの相対モル比率が約84−約99の範囲であり、VFcの相対モル比率が約1−約6の範囲であり、AETMACの相対モル比率が0付近−約10の範囲である、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項13】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン部分がカルボン酸モノマーから成る、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項14】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが陽イオン型親水性高分子量レドックスポリマーである、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。
【請求項15】
請求項1記載のイオン型親水性高分子量レドックスポリマーであって、
前記イオン型親水性高分子量レドックスポリマーが陰イオン型親水性高分子量レドックスポリマーである、
イオン型親水性高分子量レドックスポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2006−131893(P2006−131893A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−284816(P2005−284816)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】