説明

酷暑環境用農林資材として使用する方法

【課題】 過剰な太陽エネルギーを、栽培している植物に照り返すことなく、その場所から除去することによって、土地や植物の乾燥と温度上昇とを防止し、その結果、植物の光合成ひいては植物の育成を促進できる酷暑環境用農林資材としての使用方法を提供する。
【解決手段】 再帰反射部材1と、再帰反射部材1を構成する透明媒体4中に分散された蛍光剤2とを有し、蛍光剤2が光合成に有効な波長よりも短波長側の光を吸収し、光合成に有効な光を発するものであることを特徴とする酷暑環境用農林資材10としての使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酷暑環境用農林資材として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱帯地域や乾燥地域では広大な砂漠が有効利用されず、食糧不足が恒常的である。その上に、人口増加が顕著である。
【0003】
熱帯地域や乾燥地域における植物において食糧不足が恒常的である原因の一つは、熱帯地域や乾燥地帯における植物にとって、太陽光線のエネルギーの大部分は害あって益のないものであることによる。すなわち、植物の葉に照射されることなく、あるいは照射されても光合成に有効でない波長である等の理由により、光合成に利用されなかった太陽光のエネルギーは、ただ単に土地や植物を加熱し、貴重な水分を蒸発させ、土地や植物を乾燥させることに使われてしまう。それに加えて、炎天下においては、作物の温度が高まると、気孔から蒸散により失われる水分が増加するため、作物は自身の乾燥を防ぐために、気孔を閉じる。その結果、二酸化炭素を取り込むことができず、光合成のための光が降り注がれているにもかかわらず、光合成を行うことができないまま、厳しい環境にひたすら耐え続けるのである。この時、光反応によって過酸化物が生成するために、場合によっては枯れてしまうこととなるのである。このような現象は温帯地方においても真夏の日照りが続けば植物が枯れる現象を目撃するところである。このように、酷暑における植物にとって、植物や土地からの水分を蒸発させる太陽光線は致命的なものである。
【0004】
過剰な太陽エネルギーにより作物の植えられた地面が加熱されないように、地面に鏡を配置し、反射させることが考えられるが、この場合、照り返しによって作物が加熱されてしまい、かえって作物にとって厳しい状況になってしまうという問題がある。この問題は、通常、炎天下において、アスファルトの道路を歩いていると、照り返しによって、非常に暑い思いをした経験に照らして明らかであり、また、大人よりも背の低い子供のほうがより厳しいことからも明らかである。また、砂漠における水耕栽培ハウスによる野菜等の栽培においては、光合成に有効に活用されない過剰な太陽エネルギーがハウス内の多大な温度上昇を引き起こし、引いては、空調設備に対する負荷が多大になるという問題がある。かくの如く、熱帯や乾燥地帯での植物栽培に有効な手段がないというのが現状である。
【0005】
また、熱線反射フィルムを用いてハウス内に熱線が入らないようにハウスを建設する提案があるが(特許文献1、2、3参照)、熱帯や乾燥地域でこの提案を実行した場合には、反射した熱線が近傍の土地を加熱し、それらからの伝熱により、栽培ハウスの土地をも加熱させてしまう。その上、太陽光エネルギーの大部分を占める可視光線は熱線反射フィルムを透過するので、熱帯地域は無論のことながら、温帯地域においても、ハウス内の温度上昇を引き起こす。そのため、農作業者もそのような高温高湿の雰囲気下での作業が大変であり、それを解消するためのハウス内の温度制御の費用が嵩むという問題がある。この対応の中でも比較的費用が嵩まなく、農作業者にとっても対応しやすい方法は、ハウス内が熱くなったときに、窓を開放して熱気を逃がす対応であるが、その場合でも、ハウス内の植物の成長を促進させるべく炭酸ガスや水蒸気の濃度を制御保持しているときには、その炭酸ガスや水蒸気までも放出してしまい、これらの制御を一時的に放棄しなければならないのである。
【0006】
また、温帯でも、真夏においては、ビルの表面温度は70℃を超える。そのような環境下でヒートアイランド現象を抑えるべく、ビルの緑化が試みられている。これは植物にとってまことに過酷である。例えば、セダムは生命力が強く、ドイツでは住宅の屋根緑化として多く採用されているが、気温25℃未満で気孔を閉じてしまうため、気温が25℃を超える日本の気候では過酷である(非特許文献1参照)。
【0007】
また、湛水条件下にある稲でさえ、真夏の晴天時の日中には根の水分吸収速度が蒸散速度に追いつかずに気孔が閉じて、水分の損失を防ぐのである。
【0008】
かように、酷暑環境というのは、熱帯地方や乾燥地方に限られず、温帯地方においても認められるのである。かくの如く、酷暑環境下においては、低廉な価格で提供できる適当な農林資材が知られていないため、人間はなす術がなく、植物が防衛的に気孔を閉じ、自らの成長を抑制せざるを得ないのを黙認せざるを得ず、その作業をする者も酷暑に耐えているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−7728号公報
【特許文献2】特開平10−165008号公報
【特許文献3】特開2009−86659号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】屋上緑化 Wikipedia
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記諸課題を解消する酷暑環境用農林資材としての使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題について再帰反射を利用することで解決されることに思い至ったものである。
即ち、本発明は、次の(1)〜(18)に存する。
(1) 再帰反射部材の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(2) 再帰反射部材が波長依存性を有し、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過することを特徴とする上記(1)の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(3) 形状がフィルム状、シート状、パネル状、ブロック状、空洞状または柱状であり、その主たる面に再帰反射部材が略平行に設けられたことを特徴とする上記(1)または(2)の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(4) 再帰反射部材を構成する熱線透過媒体中に分散されるか、再帰反射部材の表面に塗布された、短波長側の光を吸収し光合成に有効な光を発する蛍光剤を有することを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(5) 再帰反射部材が、熱線と可視光線のそれぞれの少なくとも大部分を再帰反射するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、その少なくともいずれかを透明樹脂に分散させた塗膜であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(6) 再帰反射部材が、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、その少なくともいずれかを熱線透過樹脂に分散させた塗膜であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(7) 再帰反射部材が含有されている層と拡散反射層との積層からなり、再帰反射部材が波長依存性を有し、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過することを特徴とする上記(3)乃至(5)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(8) 拡散反射層と再帰反射部材が含有されている層との積層からなり、拡散反射層がコールドミラー層であることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(9) 熱帯地方や乾燥帯地方の農地若しくはその周辺又は温帯地方の農地に敷いて用いたり、水面に浮かせて用いることを特徴とする上記(1)または(3)乃至(5)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(10) 熱帯地方から温帯地方にかけての地域における植物栽培用ハウス内の地面若しくは床面に敷いたり、または水面に浮かせて用いることを特徴とする上記(1)または(3)乃至(5)のいずれかの酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(11) 植物栽培用ハウスの屋根材及び窓材が上記(2)の農林資材であり、栽培用ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水面に浮かせて用いるものが上記(10)の農林資材であることを特徴とする植物栽培用ハウス向け酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(12) 空洞体の主たる面が透明ガスバリヤー性部材からなり、その内部に再帰反射部材を有し、再帰反射部材が主たる面とほぼ同面積であり、主たる面と略平行に配置するか、または空洞体の少なくとも主たる面のいずれかが再帰反射部材からなり、ともに再帰反射部材でないときの他方の主たる面は少なくとも可視光線を透過する部材からなり、いずれの場合にも、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、空洞体内部が断熱性の構成からなることを特徴とする上記(2)または(3)の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(13) 空洞体内部の断熱性が概ね真空によりもたらされていることを特徴とする上記(12)の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(14) 乾燥帯地方における植物栽培ハウスにおいて、植物栽培ハウスの屋根材及び窓材が上記(13)に係る農林資材であり、ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水面に浮かせて用いるものが上記(10)に係る農林資材であることを特徴とする乾燥帯地方での酷暑環境用植物栽培ハウス向け農林資材としての使用方法。
(15) 再帰反射部材が、熱線も可視光線のそれぞれの少なくとも大部分を再帰反射するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを多数個、透明樹脂に分散させた塗料であることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(16) 再帰反射部材が、熱線も可視光線のそれぞれの少なくとも大部分を再帰反射するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを多数個、透明樹脂を溶解する溶剤中に分散させたインキであることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(17) 再帰反射部材が、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを熱線透過樹脂に分散させた塗料であることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
(18) 再帰反射部材が、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを熱線透過樹脂に分散させたインキであることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【0013】
〔定義〕
本発明において規定する「再帰反射」とは、再帰反射率が入射光の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であり、反射した光の60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上を、入射した方向から±10度以内の方向に再帰反射するものをいう。また、本発明において規定する「拡散反射」とは、乱反射と鏡面反射(正反射)とを包含する意味で用いている。
【0014】
また、本発明において規定する「農林資材」とは、植物を育てるための資材を包括的に表現するものであり、農業資材と林業資材を含め、農業資材の中には園芸資材も包含する意味で用いている。また、農林用成形物の他、農林用成形物の一部若しくは全てが塗料により塗布されることで成形されるような成形物の中間体も包含する意味で用いている。
【0015】
また、本発明において規定する「酷暑環境」とは、本発明に係る再帰反射よりなる農林資材がなければ、一年の中で一番厳しい条件下であれば、気孔が暑さのために閉じたり、気孔の開口率が30%以下となる環境または光合成速度が暑さのために最適条件下の30%以下となる環境を指す。
【0016】
また、本発明において規定する「熱線」とは、太陽光の光合成に有効な波長より長波長の光を指していうものである。また、本発明において規定する「熱線の大部分」とは、熱線の60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上を意味する。
【0017】
また、本発明において規定する「主たる面」とは、通常は、農林資材の形状がフィルム状、シート状、パネル状、ブロック状、空洞状又は柱状の形状における外面を構成する多面体の中で最も広い面積を有する面をいう。しかしながら、形状が空洞状で、その形状が直方体より多面体であり、例えば受光面側が屋根型で底面が平面のような形状のような場合とか、煉瓦のように積み上げて使用するように、本発明農林資材を重ねて使用する場合には、施工後に外気や太陽光に晒される面を「主たる面」という。尚、ここで「面」とは平面や曲面、場合によっては凹凸面を含む意味で用いている。
【0018】
また、本発明において規定する「略平行」とは、例えば、図1でいえばミラー5の平均的向きは主たる面に平行である。このように再帰反射部材の細部を見れば、主たる面に平行ではないが、平均的にみれば、平行であるものを包含するばかりでなく、平均的に見ても主たる面に平行ではないが、ほぼ平行であり、本発明の目的を達成し得るものをも包含する。
【0019】
また、本発明において規定する「蛍光」とは、光の波長を変換する機能を代表して記述したものであり、蛍光や燐光をいう。
【0020】
また、本発明で「略対称」あるいは「略平板」とは、前者が対称に近似するものであり、後者が平板に近似するものであり、いずれも一体となる微小再帰反射体が塗布の仕方に関係なく、近似的に再帰反射を示すものである。また、本発明に於いて規定する「略等方的」とは、等方的ではないが、近似的に等方的であり、塗布の仕方に関係なく、近似的に再帰反射を示すものをいう。
【0021】
また、本発明において規定する「透明」とは、可視光線、熱線を概ね透過するという意味であり、より好ましくは太陽光の概ね全波長に対して概ね透過することをいい、このような部材が見た目において概ね透明であることから代表して記述に用いたものである。尚、本発明における農林資材中に蛍光剤が含まれている場合には、蛍光剤が吸収する波長域がたとえ紫外線領域であっても、その放射する波長域が光合成に有効な波長域である限り、その紫外線領域に対しても概ね透過することを意味する。これに対し、本発明において規定する「熱線透過」とは、熱線を概ね透過するという意味である。ここで「概ね透過する」とは、波長平均透過率が60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であることを意味する。
【0022】
また、本発明で「熱帯」とか「乾燥帯」はケッペンの気候区分による。
【0023】
また、本発明で「再帰反射部材が受光面とほぼ同面積」でいう「ほぼ」とは、再帰反射部材の主たる面が受光面積の70%以上、好ましくは80%以上、よりこのましくは90%以上であることをいう。
【0024】
また、本発明で「概ね真空」とは、断熱性を損なわない程度の減圧下を包含する意味で用いている。
【0025】
また、本発明で「略一層」とは、完全な一層構造のみでなく、所々欠けた一層構造または部分的に若しくは大部分が二層以上であってもよく、単に一層が好ましい構造体であることを示すものである。
【発明の効果】
【0026】
請求項1に係る、再帰反射構造を有する酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、太陽光源に対しどのように配置しても、再帰反射部材により、入射光をそのまま太陽光源に帰す。そのため、従来であれば、地面、水田や湖沼池などの水面、植物栽培ハウス内の地面や床面、水耕栽培や池などの水面(以下、「地面、水田や湖沼池などの水面、植物栽培ハウス内の地面や床面、水耕栽培や池などの水面」を「地面など」という)等に照射された過剰な太陽エネルギーにより地面などが過熱されて植物の乾燥と温度上昇を招いていたのに対し、本農林資材を植物の近傍の酷暑環境下における地面などに敷いて用いることにより、農林資材自体の吸熱は著しく少なく、本農林資材に照射した太陽光を植物その他に照り返すことがないので、地面などが過熱されない。その結果、地面などから蒸散する水分も抑制され、本発明農林資材の再帰反射部材が熱線は無論、熱線ではない可視光線まで再帰反射する場合には、地面などや植物の乾燥と温度上昇とを防止することができるので酷暑環境下においても植物は気孔を閉じる必要が減り、植物の光合成を促し、ひいては植物の育成を促進することができる。
【0027】
また、請求項2に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、再帰反射部材が波長依存性を有し、光合成に有効な波長よりも長波長側の波長域の全部もしくはその大部分を反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するので、植物と光源との間に設置することにより、植物の植えられている地面などが過熱されずに済む上に、光合成に有効な波長が概ね透過するので、一層植物の成長を促進することができる。そのため、植物栽培ハウスの屋根材、窓材として用いることで、酷暑環境が快適な植物の成長環境に変貌するので、水や土壌の条件を整える必要はあるものの、食糧になる植物を始め、種々の植物を育成することができる。植物栽培ハウスの柱の高さを高くすれば、その中で、樹木を植栽し、樹木の成長が天井の高さになれば、伐採し、また新たに植樹するという循環により、成長性の高い熱帯地域で効率的な林業が成立する。また、請求項2に係る酷暑環境用農林資材は透明であるので、植物の近傍にある構造物、例えば地面などやコンクリート、ガラスなどに塗布あるいは積層体の形で配置することにより、構造物の美観を損なうことなく、構造物の表面で可視光線は反射されて植物の光合成を促進させることができる。特にヒートアイランドを緩和する、ビル屋上の植物とか街路樹とか、屋内の窓辺に置かれる植物にとって好適な態様である。
【0028】
また、請求項3に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、フィルム状とか、シート状、パネル状、ブロック状、空洞状または柱状の形状であり、その主たる面に再帰反射部材が略平行に設けられているので、光源からの受光面が広い。それ故、上記効果がより効果的に発揮される。
【0029】
また、請求項4に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、蛍光剤に吸収されなかった光は再帰反射により土地や植物の過熱を防ぎ、再帰反射された後に蛍光剤に吸収された光或いは再帰反射される前に蛍光剤に吸収された光は、光合成に有効な光として散乱されて、近傍にある植物に照射されるので、植物の光合成ひいては植物の育成をより効率的に促進できるものとなる。そのため、再帰反射部材のみであれば、光合成に有効でない波長に対しては、土地や植物の過熱を防ぐに過ぎず、光合成に有効な波長に対しては再帰反射面から再帰反射するだけであり光散乱されるわけではないので、限られた受光面にある植物に対して光合成の効果を与えるにとどまり、その限りでは光を有効に使っていなかったのであるが、蛍光剤の存在により有効利用される。例えば、前述の請求項2に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法は請求項4に係る農林資材としての使用方法とすることで一層、効果的である。
【0030】
また、請求項15〜18に係る農林資材としての使用方法によれば、請求項1乃至4の効果のほかに、塗料又はインキの形態で提供され、しかも通常の塗布方法でも、特に制限された条件もなく塗布することができ、塗布後は請求項5または6に係る農林資材としての使用方法によれば、従来にない高い再帰反射性能のものが得られる。即ち、従来は通常の塗布方法では、高い再帰反射性能のものが得られなかったのであるが、請求項5、6、15〜18に係る発明で、そのようなものが達成できるのである。この点を詳述すると、従来、再帰反射を提供し得た塗料としては、ビーズ型のものが知られているが、ビーズ型の場合、焦点の位置に反射面が来る必要がある。そのため、ビーズを高屈折率材料で製造し、その屈折率とビーズの大きさを調整することで、ビーズと反射層との界面若しくはその近傍に焦点が来るようにして、ビーズを反射層に埋め込むことが一般的である。かかる要請から、ビーズを一層に塗ることが必須である。さもないと焦点の位置と反射面がずれてしまい、再帰反射として満足できる性能が得られないからである。ところが、従来、一層にビーズを塗る方法としては、静電電着塗装法やエアスプレー法があったのであるが、それらには固有の問題がある。まず、静電電着塗装法では素人が簡単に扱える方法ではないという問題がある。また、エアスプレー法では、主面に対して概ね垂直にビーズをぶつけて下地の定着層に食い込ませるので、主面に対して定着層が概ね水平である必要があり、傾斜している定着面では食い込みが浅くなり、ビーズの結着が弱く、剥がれ落ちやすい。また、主面に対して、凹凸構造を有する場合、例えば、タイルやブロックのように溝が設けられているものでは、主面に対して垂直に近い面があるため、施工が困難である。このようにエアスプレー法では、ビーズの利用率が低く、未利用のビーズはごみになってしまい、コスト的に高いものになっている。そのため、通常は結着剤を含有する塗料で塗布する方法がとられる。ところが、実際問題として、塗布するときにビーズを含む上塗り塗料は透明であるため、反射面である下塗り層に対して、とかく厚塗りしがちになる。また、薄く塗って一層にしたつもりでも、一部重ね塗りをしがちであり、そのような部位は2層とか3層になる。そのため、再帰反射性能の高いものを得ることは簡単ではないのが実情である。この点を改良したビーズ型として、再帰反射面がビーズの表面の一部に設けられたものがある(特開2005−105222号参照)。これは再帰反射面が塗布に影響されることなく一定距離になるので、その面では改良される。しかしながら、ビーズの中を光が入射した後に再帰反射面で反射されるようにいつも配置できないため、この場合も高い再帰反射性能が得られない。その点をさらに改良した特開2005−288206号にしても、その一つの改良では、下塗り層とビーズの反射層との親和性を高めて、反射層が下塗り層側に配列させるようにしているが、ビーズが重なるように塗った場合には、ビーズの向きが揃わなくなり、再帰反射性が得られない。また、別の改良では、ビーズの反射層を磁性体とし、磁力でビーズの反射層の向きを揃えているが、塗装面側に磁力で引き寄せることができる対象物への塗装に限定される。これら従来技術に対し、請求項5、6、15〜18に係る発明によれば、コーナーキューブ型微小反射体の形態においてはどのように微小反射体が配置されても主面側に向いているコーナーキューブ型の再帰反射構造が存在し、また、ビーズ型微小反射体の形態においては、焦点と反射面の位置関係が固定されているとともに、どのように微小反射体が配置されても主面側に向いているビーズ型の再帰反射構造体が存在するので、いずれの形態であっても、整然と一層に塗布する必要がなく、それでいてなお且つ、高い再帰反射性能が得られるのである。
【0031】
したがって、請求項5,6、15〜18に係る発明を用いることにより、既設の再帰反射性能がないものか不十分な構造体の上に塗布することにより、高性能の再帰反射材を提供することができる。
【0032】
また、請求項7に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、再帰反射部材含有層と拡散反射層とが積層されており、しかも再帰反射部材が波長依存性を有し、熱線を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するので、本発明農林資材を酷暑環境下にある植物の近傍に配置して再帰反射部材含有層を受光面として使用すれば、熱線が近傍の植物には照射されず、酷暑環境下にある植物を過熱しない。しかも、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光は再帰反射部材含有層を概ね透過して、拡散反射層で拡散反射されるので、近傍にある植物の光合成を促進することができる。
【0033】
また、請求項8に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、拡散反射層と再帰反射部材含有層とが積層されており、しかも拡散反射層がコールドミラー層であるので、酷暑環境下にある植物の近傍に配置してコールドミラー層を受光面として使用すれば、コールドミラー層で光合成に有効な波長を含む光を拡散反射する。それにより、近傍にある植物の光合成を促進し、コールドミラー層を透過する残りの波長は再帰反射部材含有層で再帰反射するので、酷暑環境下にある植物は熱線を受けず、蒸散を防ぐべく気孔を閉じる必要がないので、より一層、酷暑環境下にある植物の成長を促進することができる。
【0034】
また、請求項9に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、熱帯地方や乾燥帯地方の農林地の植物の近傍若しくはその周辺又は温帯地方の農林地の植物の近傍に敷いて用いたり、湖沼池や水田における植物の近傍の水面に浮かせて用いることで、太陽光のエネルギーを周囲に発散させることなく或いは蛍光剤を含有する場合には必要以上に発散させることなく、再帰反射するので、周囲を過熱しない。その結果、湖沼池の水分に限らず、地面などや植物の水分の蒸散を抑制することができ、植物の気孔は閉じたり、狭めたりする必要が軽減され、農林地や水面にある植物の成長を促進させることができる。
【0035】
また、請求項10に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、熱帯地方から温帯地方にかけての地域における植物栽培ハウス内の地面などであって、植物の近傍に敷いて用いることで、植物栽培ハウス内に照射された光のうち、植物に照射される光は別として、その太陽光のエネルギーを周囲に発散させることなく或いは蛍光剤を含有する場合には必要以上に発散させることなく、再帰反射するので、周囲を過熱させない。その結果、地面などや植物の水分の蒸散を抑制することができ、植物の気孔は閉じたり、狭めたりする必要が軽減され、植物の成長を促進させることができ、且つ、温度制御費用を低減することができる。しかも、植物栽培ハウス内で作業する者もハウス内が過熱されることがないので、農林作業が楽に作業ができる。
【0036】
また、請求項11に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、受光部材で熱線の全部若しくは大部分が再帰反射されるので、酷暑環境下にある植物栽培ハウス内には植物の光合成に必要な光のみが入ってくる。それでも、熱線はカットされていながら、なお太陽エネルギーの半分強が植物栽培用ハウス内に入ってくるのであるが、そのうち、植物に照射されずに、植物栽培ハウス内の地面などに照射される可視光線のエネルギーは、再帰反射部材により、植物栽培ハウス内を暖めることなく、再帰反射されるので、植物栽培ハウス内は熱帯地方においてもさほど過熱されないで済む。その結果、地面などや植物の水分の蒸散を抑制することができ、植物の気孔は閉じたり、狭めたりする必要が軽減され、植物の成長を促進させることができ、且つ、温度制御費用が抑制される。それとともに、植物栽培ハウス内で作業するも楽に作業ができる。
【0037】
また、請求項12に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、空洞体の少なくとも主たる面が透明ガスバリヤー性部材からなり、その内部に再帰反射部材を有し、再帰反射部材が受光面とほぼ同面積であり、受光面と略平行に配置するか、または空洞体の少なくとも主たる面が再帰反射部材からなり、空洞体内部が断熱性であるので、太陽光の放射熱と大気からの伝熱による熱の流入を遮断することができる。それ故に、本農林資材を特に、乾燥帯地方の植物栽培ハウスの窓材や屋根材などの受光部材として用いることで、乾燥帯地方の農林地近傍の砂漠からの熱風による伝熱を和らげるとともに、作物に照射する光はともかくとしてその周りに照射する太陽光の放射熱を防ぎ、植物を成長させることができる。乾燥帯地方において特に好適であるが、その他の酷暑環境下においても、大気の伝熱を軽減し、冷房費を軽減することができるので、利用可能である。
【0038】
また、請求項13に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、内部が概ね真空であるので、大気からの伝熱による熱の流入を完璧に遮断するので、請求項11に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法の中でも特に熱風の影響を強く受ける地域に用いることで、熱風の影響を受けることなく、植物を成長させることができる。
【0039】
また、請求項14に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法によれば、周辺に砂漠、準砂漠、荒地などが存在し、そこからの熱風が流れ込んでくるような乾燥帯地域における栽培ハウスとして、その屋根材及び窓材が請求項13に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法であるので、熱線を再帰反射し、可視光線のみを透過し、その可視光線も、ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水耕栽培や池の水面に浮かせて用いるものが請求項10に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法であるので、植物に照射される可視光線を除く可視光線に基づくハウス内の温度上昇がないので、地球上でも最も過酷な酷暑条件下にある地域で、太陽エネルギーを有効に使いつつ、農林作業を快適にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の概略構成を模式的に示す縦断面説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の概略構成を模式的に示す縦断面説明図である。
【図3】(a)は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法の一例を模式的に示す概略説明図、(b)は他例の概略説明図である。
【図4】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の第1及び第2の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法のさらに別の例概略を模式的に示す概略説明図である。
【図5】本発明の第1及び第2の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法のさらに別の例を模式的に示す概略説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の概略構成を模式的に示す縦断面説明図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の概略構成を模式的に示す縦断面説明図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の概略構成を模式的に示す断面説明図である。
【図9】(a)〜(e)は、それぞれ別の態様である、本発明の第5の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる再帰反射部材の概略構成を模式的に示す説明図である。
【図10】(a)及び(b)は、本発明の第5の実施形態のコーナーキューブを外側に開口した構造の微小透明球状体が不均一に塗布された場合の再帰反射性能を説明するための塗装縦断面図である。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の一態様の縦断面図である。
【図12】本発明の第8の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の一態様の縦断面図である。
【図13】本発明の第8の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の別の態様の縦断面図である。
【図14】本発明の第9の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の一態様の縦断面図である。
【図15】本発明の第9の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の別の態様の縦断面図である。
【図16】本発明の第9の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材の別の態様の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、本発明の各実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法を、図面を参照しながら説明する。但し、図面は模式的なものであり、各材料層の厚さやその比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明および公知技術を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0042】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いら農林資材10は、図1に示すように、再帰反射部材として、コーナーキューブプリズム構造1を取る場合である。コーナーキューブプリズム構造1は熱線透過媒体層4とミラー5により構成されている。本実施形態においては、熱線透過媒体層4には蛍光剤2が分散されていることが好ましい。また、ミラー5を境にして熱線透過媒体層4の裏側には裏打ち層6が形成されていることが好ましい。
【0043】
また、上記構成とは別に、ミラー5を設けずに、裏打ち層6に金属粉を分散させた樹脂とした構成としてもよい。
【0044】
熱線透過媒体層4は、熱線を概ね透過する媒体であればよいが、好適には、全波長を概ね透過するものが用いられる。また、好適には、耐候性や機械的耐久性を有するものが用いられ、樹脂、ガラスなどが用いられる。このうち、成形加工性や柔軟性の点で樹脂が好ましい。樹脂としては、例えば、耐候性ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アルキド系樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂を用いることができる。蛍光剤の最適な含有量は、用いる蛍光剤の種類によって異なるが、概ね透明媒体中に0.005〜3質量%、より好ましくは、概ね0.01〜0.5質量%である。
【0045】
ミラー5は、熱線を概ね反射しうる材質であればよいが、光を概ね反射しうる材質であればより一層よい。通常、金属が用いられ、蒸着法やメッキにより形成されるのが好ましいが、樹脂に分散された金属粉末でもよい。ミラー5の反射率は高いほど好ましく、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0046】
蛍光剤2は短波長側の光を吸収し、光合成に有効な光を放射する機能を有するものである。短波長側の光が光合成に有効でないとき、それを吸収して光合成に有効な光とするものであってもよいし、短波長側の光自体も光合成に有効なとき、それを吸収してより有効性を増すものであってもよい。ここで「光合成に有効な波長」とは、光合成に寄与する波長を指すのであり、植物の種類によって異なるものである。より厳密にいうと、植物の有する光合成システムにおいて太陽光を吸収する光アンテナとなる色素の種類、すなわち、その光吸収特性によって異なるものである。例えば、水草のような光合成真核生物では、約0.6〜約0.7μmの波長、即ち橙〜赤色の波長が最も光合成に有効な波長であり、ついで約0.4〜約0.5μmの波長、即ち青〜青緑色の波長が光合成に有効な波長であり、約0.5〜約0.6μmの波長、即ち緑〜黄色の波長は光合成に利用できるものの効率が悪い波長であり、0.4μm以下の紫外線の波長は光合成に効果がないばかりでなく、植物の成長阻害をもたらすことが知られている。この例でいえば、約0.4μm未満の光を吸収して約0.4〜約0.7μmの光に変換する蛍光剤であってもよいし、約0.4μm未満若しくは約0.5〜約0.6μmの光を吸収して約0.6〜約0.7μmの光に変換する蛍光剤であってもよい。
【0047】
かかる蛍光剤としては公知の無機または有機の蛍光顔料、蛍光色素などを用いることができる。その中でも蛍光顔料としては、発光ピークの波長が0.42〜0.55μm、または、0.6〜0.7μmにあるものが好適なものとして使用される。これは、約0.42〜約0.55μmの波長の光が植物の光合成に関与して、主として葉の成長を促進し、また、約0.6〜約0.7μmの波長の光は植物の光合成に関与して、主として実の成長を促進するからである。なかでも、反射率の高いものが好ましく、例えば、0.42〜0.55μmの波長に発光ピークのあるものとしては、蛍光緑色顔料であるNKP−4002(発光ピーク約0.51μm、反射率138%)、蛍光緑色顔料であるNKP−4005(発光ピーク約0.512μm、反射率140%)などが挙げられ、0.6〜0.7μmの波長に発光ピークのあるものとしては、蛍光赤色顔料であるNKP−4003(発光ピーク約0.605μm、反射率203%)(以上、いずれも商品名日本蛍光化学(株)社製)などが挙げられる。また、蛍光色素としては、例えば、ビオラントロン系色素、イソビオラントロン系色素、ビラントロン系色素、フラバントロン系色素、ペリレン系色素、ビレン系色素などの多環系色素、キサンテン系色素、チオキサンテン系色素、ナフタルイミド色素、ナフトラクタム色素、アントラキノン色素、ベンゾアントロン色素、クマリン色素などが挙げられる。さらには、量子ドットと呼ばれる量子効果を用いた無機系の蛍光剤も利用可能である。
【0048】
蛍光剤2はあってもなくてもよい。ただ蛍光剤2があった方が好ましい。蛍光剤の存在位置としては、放射光側になりうる位置であればどこでも良い。具体的には再帰反射部材を構成する熱線透過媒体層4中に分散させるか、再帰反射部材の表面に塗布される。図では熱線透過媒体層4中に分散させた例を示しているが、他の透明媒体層があるときは、その層に含有させてもよいし、熱線透過媒体層4の表面に塗布させてもよい。
【0049】
裏打ち層6は、コーナーキューブプリズム構造1を有する熱線透過媒体層4の裏面が凸凹となるために、ごみ等が付着しやすく、また、取り扱い時に引っかかりやすく裂けやすいことから設けられたものであって、状況によってはなくても良い。従って、裏打ち層6は透明である必要性がなく、樹脂などにより作製することができる。
【0050】
酷暑環境用農林資材10は、通常採用される樹脂の成形加工技術やガラスの成形加工技術で成形することができる。例えば、熱線透過媒体層4が樹脂の場合には、蛍光剤2が分散された熱線透過樹脂組成物をプレス加工により、コーナーキューブプリズム構造1を取り得るような形状の成形物に作製し、コーナーキューブプリズム構造1を取り得る様な形状の部位に、反射面となるミラー5を、例えばアルミ蒸着やメッキにより設け、裏打ち層6を構成する樹脂を流し込むことで作製することができる。また、最初に裏打ち層を金属粉末含有樹脂で作成し、その上部に蛍光剤を含有する熱線透過樹脂を流し込んで酷暑環境用農林資材10を作製してもよい。
【0051】
次に、本実施形態に係る酷暑環境用農林資材10の作用を説明する。本実施形態では、図1に示すように、酷暑環境用農林資材10に入射した光線7のうち、蛍光剤2に入射することなく、コーナーキューブプリズム構造のミラー5に直接入射したものはミラー5によって反射され、その反射光が蛍光剤2に吸収されない限り、コーナーキューブプリズム構造1によって再帰反射されるので近傍の植物や地面などを熱することがない。また、光線の入射光線がミラー5により反射される前か後に蛍光剤2に入射したものは短波長側の光を吸収し光合成に有効な光を蛍光剤2の全方位に放射する。その結果、酷暑環境用農林資材10の近傍にある植物の光合成を促進する効果を有する。
【0052】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材20は、再帰反射部材が第1の実施形態のコーナーキューブプリズム構造1の代わりにビーズ構造21とする点で第1の実施形態と異なる。即ち、酷暑環境用農林資材20は、図2に示すように、光合成に有効な光を放射する蛍光剤2が分散された熱線透過球状体22と光反射層23と定着層24と裏打ち層25とから構成されており、熱線透過球状体22はその一部が光反射層23及び定着層24内に埋没・固着し、残りが定着層24から露出するように、略一層に密に敷きつめて形成されている。また、熱線透過球状体22の一部が定着層24から露出せず、薄い熱線透過体で被覆されていてもよい。
【0053】
このうち、熱線透過球状体22は、入射した光の焦点の位置と反射位置とがなるべく一致させ、再帰反射率が50%以上になるように屈折率と大きさが選択される。材質としては、熱線透過媒体層4に用いられたものと同様の材質からなり、ガラス、セラミックス若しくは熱線透過樹脂から構成され、セラミックスの場合は表面のみがセラミックスで中は透明材料からなるものでもよい。大きさ、屈折率は、平均粒径70〜150μmで、屈折率(n)1.8〜2.0のようなものが好適に用いられる。さらに、熱線透過球状体の平均粒径は、再帰反射性、熱線透過球状体層の形成工程における熱線透過球状体の吐出安定性と固着効率性、並びに、熱線透過球状体層の形成工程が塗料による場合における塗膜からの非剥離性・非脱落性を考慮してより一層好適な範囲を設定することができる。
【0054】
光反射層23は、熱線透過球状体22と直接、あるいは焦点樹脂層(焦点層)を介して積層される。このうち、焦点樹脂層を介するのは、入射角が大きくなったときの反射性の低下を防ぐためのものであり、特公平8−27402号、特開平8−101304号などに示すような方法で均一な厚みの透明層を形成する方法とか、樹脂塗料を粉体塗装して後、熱処理する方法、特許第3723568号に示すような、焦点樹脂層の厚さをランダムにする方法などが例示される。また直接積層するものとしては、例えば、金属粉顔料を含有する熱線透過樹脂組成物からなる。その場合の熱線透過樹脂は、接着性に優れかつある程度の耐候性や機械的耐久性を有するものが好ましく、例えば、耐候性ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、カーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アルキド系樹脂、塩素系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂を用いることができる。中でも耐候性ウレタン系樹脂やメタクリル系樹脂が接着性、耐候性、経済性等の観点からとくに好適である。光反射層23の樹脂中に含有される金属粉顔料には、アルミニウム、銅、錫、銀等の箔を粉末にした顔料を用いることができるが、光輝性と入手の容易さからアルミニウム粉末が最適であり、その濃度は固化状態の反射層に対する質量比で20〜40%であることが望ましい。金属粉は、なかでも箔を粉末にしたものが好ましいが、光反射性を有する限り、特に制限されず、粉とは言い難い粒子状のものであってもよい。また、金属粉の代わりに、白色あるいは表面が鏡面のビーズであってもよく、光を反射しうるものであれば、何でもよい。また別な例としては、光反射層23と熱線透過球状体22との界面を少なくとも含む表面を金属蒸着したものがある。また、熱線透過球状体22の屈折率より低い材料を用いて、屈折率の異なる界面での反射を利用してもよい。屈折率の低い材料としては、空気も利用可能である。光反射層23の厚みは、熱線透過球状体22が光反射層23の底部又はその近くまで埋込まれ、その下部表面の30〜50%程度が光反射層23と接している場合に最も反射率が高くなることから、例えば、熱線透過球状体の平均粒径70〜150μmとする場合は、光反射層の厚みは40〜60μmとすることが望ましい。
【0055】
定着層24は樹脂又は樹脂組成物からなる。このうち、定着層24を構成する樹脂は、耐候性、耐黄変性、耐チョーキング性と耐ハンドリング性に優れたものが好ましく、特に耐候性ウレタン系樹脂又はメタクリル系樹脂が好適である。定着層24の厚みは、熱線透過球状体22の塗膜からの脱落防止と、露出面積の増大に伴う再帰反射性の効果の増大との兼ね合いから、例えば、熱線透過球状体の平均粒径が70〜150μmとする場合は、定着層の厚みは40〜60μmとすることが望ましい。また、樹脂組成物を構成する樹脂以外の成分としては着色剤、安定剤などが例示される。
【0056】
蛍光剤2はあってもなくてもよい。ただ蛍光剤2があった方が好ましい。蛍光剤の存在位置としては、放射光側になりうる位置であればどこでもよい。具体的には再帰反射部材を構成する熱線透過媒体中に分散させるか、再帰反射部材の表面に塗布される。図では熱線透過球状体22の中に分散されているが、熱線透過球状体22に分散させず、定着層24中に分散させてもよいし、両方に分散させてもよいし、図示していないが、熱線透過球状体22や定着層24を覆うように被覆若しくは積層された熱線透過樹脂中に分散させてもよい。また、上記層のいずれかの表面に塗布されてもよい。
【0057】
裏打ち層26は、光反射層23の裏面を保護するために設けるものである点で、実施形態1における裏打ち層6と目的を若干異にする面もあるが、裏打ち層6と概ね同趣旨であり、同様のものが用いられる。即ち、裏打ち層6と同様、必須ではないが、設けた方が好ましい。設ける場合には、裏打ち層26は透明である必要性がなく、樹脂などにより作製することができる。
【0058】
酷暑環境用農林資材20も酷暑環境用農林資材10と同様、樹脂加工技術やガラス加工技術、セラミックス加工技術などにおける成形加工技術が採用できる。例えば、蛍光剤2を含有する再帰反射塗膜を比較的簡単な工程で効率良く成形することができ、その他の層も塗装で形成することができるので、光反射層23を形成する工程と、定着層24を形成する工程と、熱線透過球状体22を形成する工程とを、この順序で順次行うことによって簡単に酷暑環境用農林資材20を製造することができる。より詳細に述べるならば、例えば、先ず、裏打ち層26となる下地調整された基体表面に、金属粉顔料、好ましくはアルミニウム粉末を含有する熱線透過樹脂塗料を塗布して、好適な厚みとなる光反射層23を形成する。次いで、光反射層23の形成用塗膜を所定時間放置してその粘度が所定の値になった後、樹脂塗料を塗布して、好適な厚みとなる定着層24を形成する。上記各工程の塗装方法は、特に限定されるものでないが、塗膜厚みの制御が容易な方法、例えば、エアスプレー法や静電塗装法によるのが好ましい。このような方法で、塗料の供給速度と塗装時間を調節することにより、容易に所定膜厚の塗膜を形成することができる。次いで、定着層24の形成用塗膜を所定時間放置してその粘度が所定の値になった後、所定平均粒径、所定屈折率の透明球状体22を用い、例えば、エアブラスト法又は静電粉体塗装法により蛍光剤2が分散された熱線透過球状体層22を形成する。塗膜の粘度が適正な状態で、このような方法により球状熱線透過体を吹き付ければ、熱線透過球状体22は光反射層23の底部又は底部近くまで貫入し、固着される。なお、2層以上に積み重なった熱線透過球状体は、樹脂塗料で接着されていないため容易に除去することができ、略一層に密に敷きつめられた熱線透過球状体層22を形成することができる。上記のように全ての層を塗装で行うのではなく、そのうちの一部を成形物としてもよい。そのようなものとして、光反射層23と裏打ち層26はフィルムとかシートとし、熱線透過球状体22と定着層24とを塗料の形態としたものが例示される。このような成形物であれば、裏打ち層がなくて光反射層23のみからなるものであってもよい。
【0059】
次に、酷暑環境用農林資材20の作用を説明する。酷暑環境用農林資材10の場合と異なる点を言及すると、酷暑環境用農林資材20に照射した光7のうち、蛍光剤2と衝突しなかったものは、図2に示すように、熱線透過球状体22に入り、光反射層23との界面またはその近傍で反射され、再帰反射される。他方、蛍光剤2と衝突したものは、実施形態1と同様である。
【0060】
次に、第1又は第2の実施形態に係る酷暑環境用農林資材10、20の使用方法を図3〜図5に従って説明する。なお、図中、大きい矢印は太陽光線の入射・反射を示し、小さい矢印は光合成に有効な光を示すものである。図3は、酷暑環境用農林資材10、20を、植物の根側近傍に配置したものである。このうち、図3(a)は、酷暑環境用農林資材10、20を植物Pの根側近傍であって、コーナーキューブプリズム構造1、又はビーズ型構造21からの反射光側を植物の葉側に向けたものである。このような使用方法では、地面などが過熱されることがないので地面などや植物の乾燥と温度上昇とを防止できる。酷暑環境用農林資材10は植物と植物の間の地面などに直接敷かれてもよいし、地面などより大部分を若干浮かせて地面などと平行に配置されてもよい。後者の場合は裏打ち層6、26のところどころに地面などと接触させるための脚部を設ける。また、いずれの場合も、形状としてはシート、フィルム、ブロックなど任意の形状が取られ、例えば、シートの場合には、所々に穴を開け、その穴の大きさは将来の成長を加味した、植物の茎、幹の大きさとし、その穴に植物の種とか苗を植えるようにした大きなシートでも良いし、より小さなシートを複数枚植物の周りに敷くようにしてもよい。また、シートの形状に限らず、酷暑環境下用農林資材に、通気性や雨水を透過させるための多数の貫通孔となる開口部が設けられてもよい。ここで、「植物の葉側」とは、植物学的な意味ではなく、該植物の有する光合成システムにおいて太陽光を吸収する光アンテナとなる色素が多数存在する植物の部位を代表して記述したものであり、従って、植物によって、葉であったり茎であったり、場合によっては植物全体をいう。同様に、「植物の根側」とは、植物に対する太陽光の入射方向とは反対側の、太陽光を吸収する光アンテナとなる色素が少ない部位を代表して記述したものであり、場合によっては、植物に対する太陽光の入射方向とは反対側の部位をいう。
【0061】
図3(b)は、酷暑環境用農林資材10、20を、植物の根側近傍の土地を植物の根元より低い位置に配置したケースである。典型的には、植物を植える地面を谷(凹部L)と山(凸部H)の列状に開墾し、山(凸部H)に植物を、谷(凹部L)に酷暑環境用農林資材10、20を敷いたものである。このような形態の使用方法では、図3(a)と比べて光合成に有効な波長光が植物に対しより多く照射されるため、植物の光合成ひいては植物の育成をより促進して更に効率的に植物を栽培することができる。
【0062】
図4は、酷暑環境用農林資材10、20を、植物Pの葉側近傍に配置したものであり、そのうち、図4(a)は、酷暑環境用農林資材10、20を湾曲させ、植物Pの側面に一端を地面などに接触させ、他端を地面などより高い位置にして、酷暑環境用農林資材10、20をタープ状若しくはカーテン状に設置したものである。また、図4(b)は、酷暑環境用農林資材10、20を植物Pの近傍の側面に立設したものである。これらの場合でも、酷暑環境用農林資材10、20からの反射光のうち、蛍光剤により吸収されなかったものは再帰反射されるので、植物Pに照射することなく、入射方向に戻る。また、蛍光剤により吸収した光は、植物に照射されるものがあり、植物を成長促進させる。この場合の酷暑環境用農林資材10、20の形態はシート、フィルム、パネル、柱など任意の形状が取られ、それ自体が立設し得ないときには、例えば、柵、フェンス、ラティス、壁、堀、柱、ドア、カーテン、区画ブロックなどの構造体に添装するように設置することで使用される。
【0063】
図5は、酷暑環境用農林資材10、20を、図3(a)と同様に、植物Pの根側近傍に配置し、その裏面側に、間歇的に又は一定時間ごとに注水パイプ(又は散水パイプ)Qにより地面に注水又は散水するものである。この形態の使用方法では、酷暑環境用農林資材10、20の再帰反射効果により、酷暑環境用農林資材10、20自体の吸熱が著しく少ないので、酷暑環境用農林資材10、20の裏面側となる地面に注水又は散水された水の蒸散を防ぎ、無駄な水の使用を大幅に抑制し、植物Pに水を効果的に供給することができる。
【0064】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材30について図6を用いて説明する。酷暑環境用農林資材30は、第1の実施の形態のミラー5の代わりに熱線反射ミラー35とし、熱線透過媒体層4の代わりに透明媒体層14とするものである。即ち、コーナーキューブプリズム構造31を形成する一要素である透明媒体層14と、コーナーキューブプリズム構造を構成するもう一つの要素である熱線反射ミラー35と、短波長側の光を吸収し、光合成に有効な光を放射する蛍光剤2が分散されているか、表面に塗布された裏打ち層36とから構成されたものである。蛍光剤2が必須でないことは前記実施形態と同様である。
【0065】
このうち、熱線反射ミラー35は熱線を再帰反射し、光合成に有用な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過する。熱線反射ミラー35は熱線反射機能を有する金属酸化物をITOのスパッタ蒸着で形成する方法、或いは熱線反射機能を有する金属酸化物粉末を透明樹脂中に分散させた組成物を層状成形物として、透明媒体層14と積層する方法などで製造できる。
【0066】
短波長側の光を吸収し光合成に有効な光を放射する蛍光剤2を含有させる場合には、再帰反射部材の光の反射側に設けても良いが、図示するように再帰反射部材の透過光側に設けた方が蛍光剤の放射する蛍光をより効率的に植物に照射することができるのでより好ましい。図では透過光側透明媒体中に分散させた場合を示しているが、透過透明媒体の表面に塗布してもよい。
【0067】
本実施の形態においては、透明媒体層14はなくても良い。しかしながら、透明媒体層14がない場合、第1の実施形態の6と同様、酷暑環境用農林資材20の受光面側は凸凹であるためにごみが付着しやすく、また取り扱い時に引っかかりやすく裂けやすいことから、透明媒体層14を設けたものであり、状況によってはなくてもよい。
【0068】
次に、本実施の形態に係る酷暑環境用農林資材30の作用並びにその使用方法を図6により説明する。この場合には、酷暑環境用農林資材30が光源と植物の間に置かれるか、或いは植物の近傍の構造物に塗布あるいは積層されて使用される。このうち、後者は第6の実施の形態で後述するので、前者について、図6をもとに以下説明する。酷暑環境用農林資材30に図面の上方より照射した光7は、コーナーキューブプリズム構造31の反射部位により、熱線7aが概ね再帰反射され、光合成に有用な波長を含む残りの波長域の光7bが概ね透過されるので、熱線7aは植物に照射されない。また、可視光で代表される光合成に有用な波長を含む残りの波長域の光7bのうち、蛍光剤2に吸収され、全方位に放射された光は植物に照射される。従って、土地や植物の乾燥と温度上昇とを抑制するとともに、植物の光合成ひいては植物の育成を促進することができる。この実施の形態の場合には、酷暑環境用農林資材30を植物栽培ハウス窓材、屋根材などの受光部材とか、植物栽培ハウスの、例えばヘリオスタット、フレネルレンズなどの集光部とか、植物栽培ハウスの集光部からの光を受けて植物栽培ハウス内部に取り入れる過程に置かれるレシーバーとすることにより、従来のビニールハウスでは内部が太陽光や人工光源の熱により蒸し風呂のような暑さになったのに対し、そのような暑さを招くことなく、或いは、場所によっては、空調設備の負荷を大幅に軽減できて、快適な農業や園芸をすることができる。尚、植物栽培ハウスの集光部とかレシーバーに用いるときには蛍光剤2を用いない方が好ましい。蛍光剤2を用いると、この段階で蛍光剤が全方位に蛍光を放射するので、放射された蛍光が栽培室に導入される比率が低下してしまうからである。それよりも、例えば、植物栽培ハウスのドーム状の壁材と床材とを、蛍光剤で塗布された鏡面とすることにより、熱線が除去された光がドーム状の壁と床の鏡面との間で反射され、ドーム状の中に配置された植物に必ず、有用な光となって到達するような方式を採用した方が効果的である。
【0069】
〔第4の実施の形態〕
第4の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材40は、図7に示すように、第2の実施の形態の光反射層23の代わりに熱線反射層43とし、熱線透過球状体22の代わりに透明球状体42としたものである。それにより、熱線を再帰反射し、光合成に有用な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過する構造としたものである。即ち、短波長側の光を吸収し光合成に有効な光を放射する蛍光剤2が分散された透明球状体42と、熱線反射層43と、定着層24と、透明な裏打ち層46とから構成されている。このうち、熱線反射層43は、第3の実施形態の熱線反射ミラー35と材質的には同様のものであり、熱線を再帰反射し、光合成に有用な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するが、図示する通り、形状を異にする。また、透明な裏打ち層46は透明であるほかは裏打ち層26と同様のものが用いられる。尚、図7では蛍光剤2が透明球状体42の中に分散されている例を示しているが、蛍光剤2を透明な裏打ち層46とか熱線反射層43や定着層24に分散させるか、これらの層の少なくともいずれかの表面に塗布させてもよい。その中でも蛍光剤が太陽光を散乱する場合には、透明な裏打ち層46の表面、特に放射光側表面に塗布させる形態が好ましい。
【0070】
次に、本酷暑環境用農林資材40の作用を説明する。この実施の形態の場合も酷暑環境用農林資材30の場合と同様に、光源と植物の間に置かれるか、或いは植物の近傍の構造物に塗布あるいは積層されて使用され、酷暑環境用農林資材30の場合と同様な作用を有する。このうち、後者は第6の実施の形態で後述するので、前者について、図7をもとに以下説明する。即ち、酷暑環境用農林資材40に照射した太陽光線7は、図7に示すように、透明球状体42を透過したもののうち、熱線7aは透明球状体42と熱線反射層43との界面或いはその近傍で再帰的に反射されるので、植物へ照射することがない。これに対し、光合成に有用な波長を含む残りの波長域7bの光は概ね透過し、その一部は蛍光剤2により、短波長側の光が吸収され、光合成に有効若しくはより有効な光に変換されて、全方位に放射されるので近傍にある植物にその一部が照射される。従って、土地や植物の乾燥と温度上昇とを抑制し、植物の光合成ひいては植物の育成を促進することができる。この実施の形態の場合には、第3の実施の形態と同様、植物栽培ハウスの窓材、屋根材などの受光部材とか、植物栽培ハウスの集光部、例えばヘリオスタットからの光を受けて植物栽培ハウス内部に取り入れる過程に置かれるレシーバーに用いることができる。
【0071】
〔第5の実施の形態〕
第5の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材50は、図8に示すように、インキまたは塗料とした形態であって、後で詳述する再帰反射構造を有する微小反射体51と、短波長側の光を吸収し、光合成に有効な光を放射する蛍光剤2とが、熱線透過樹脂または透明樹脂と、要すればバインダーとを溶解する溶剤54の中にそれぞれ多数個分散されているものである。このうち、再帰反射構造を有する微小反射体51の再帰反射が熱線も可視光線も再帰反射するものであるときは、熱線透過樹脂、好ましくは透明樹脂が用いられ、再帰反射構造を有する微小反射体51の再帰反射が熱線を選択的に再帰反射し、可視光線を透過するものであるときは、透明樹脂が用いられる。以下の説明では簡便を期すために上述の関係を単に「熱線透過樹脂又は透明樹脂」またはそれに類似する表現で説明している。尚、蛍光剤2は通常含まれていた方が好ましいが、状況によっては含めなくてもよい。また、塗料は溶剤を用いない、粉体塗料であってもよい。
【0072】
再帰反射構造を有する微小反射体51とは、図9に示すように、個々が再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、個々が再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものである。このうち、前者の例を示したものが、図9(a)〜(c)であり、後者の例を示したものが、図9(d)、(e)である。また、再帰反射構造がコーナーキューブ構造に由来するものが図9(a)、(b)、(e)であり、ビーズ型構造に由来するものが図9(c)、(d)である。図中、(a)はコーナーキューブミラー8個の各反射面を張り合わせ、コーナーキューブを外側に開口した構造の斜視図で、左が球状体、右が対称重四角錐、(b)は(a)のコーナーキューブミラーの代わりにコーナープリズムとしたもの、(c)、(d)はビーズを多数個、光反射体の周りに配したもので、(c)は断面図、(d)は左が上面図、右がa−a´線断面図である。(e)右側の図は、左側に上面図で示す一個のコーナーキューブミラーの各辺を接合させた多数個の再帰反射ミラーシートの上面図であり、その右に示す図がそのb−b´線断面図である。これらの図中、(a)、(b)における破線はミラーの影に隠れて直視できないか、熱線透過樹脂又は透明樹脂の屈折率により変形して見える部分を示し、(e)の破線部分は谷折り線であり、破線同士の交差点は谷底である。また、(e)の実線は山折り線(稜線)であると同時に同一平面にあり、実線同士の交差点は頂点である。
【0073】
以下、これらの図を参考にして詳細に説明する。まず、図9(a)の左側に示したのは8個のコーナーキューブミラーである超微小反射体55を一体とした、実際には球ではないが、一見球状体風の壁と床からなる構造体の微小反射体51であり、右側が同様に対称四角錐ではないが、一見対称四多角錐風の壁と床からなる構造体の微小反射体51である。図の波線はミラーの影に隠れて直視できない部位を示し、実線は直視できる線である。図9(a)に示すように、コーナーキューブ構造を用いた場合は、8個が最適である。8個であれば、壁面が90度の角を有するのでコーナーキューブ構造をそのままで取れるのに対し、それ以外の4個以上の値では、配置が難しく、コーナーキューブとコーナーキューブとの間に隙間ができるので、塗布層面積に対する再帰反射構造の開口している面積の比率が低下するからである。本発明ではこのような4個以上から形成されるコーナーキューブとコーナーキューブとの間に隙間ができているものでも一体であれば塗布の如何に拘わらず近似的に再帰反射性が得られるので差し支えない。このような意味及び後述で挙げるものを含めて本発明では略対称と呼んでいる。これに対し、1〜3個の超微小反射体からなる微小反射体では、微小反射体を多数個分散した塗料とかインキとして塗布した場合、微小反射体の再帰反射構造の向きが揃いがちとなり、等方性若しくは略等方性とならないため、好ましくないためである。ここでコーナーキューブ構造におけるミラーの代わりに熱線反射ミラーとすることにより、熱線を再帰反射し、可視光線を透過する選択的再帰反射体とすることができる。図9(b)は図9(a)のコーナーキューブミラーの代わりにコーナープリズムとした例である。図9(b)は図9(a)の開口部に熱線透過樹脂又は透明樹脂56を充填することによって得られ、いずれも、例えばプレス加工で作成することができる。図9(b)の波線は熱線透過樹脂又は透明樹脂56の屈折率により変形して見える線を示し、実線は直視できる線である。かくの如く、図9(a)、(b)に示されるのは、再帰反射構造を有する超微小反射体55の4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものであるということができ、また、放射状に再帰反射構造の超微小反射体を配置したものということもできる。
【0074】
図9(c)及び(d)は、再帰反射構造を有する微小反射体51がマイクロビーズ型の形態であり、このうち、図9(c)は断面図である。この図は横断面図でもあり、縦断面図でもある。微小反射体中央部53がその周りよりも低屈折率を有するものであるか、光反射性の部材、例えば金属粉を分散させた樹脂、であり、それゆえに反射材のコアとなる反射面となり、その周りに超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52を配置した形態である。この形態はどの断面をとってもこの形状を示す対称体であり、いずれの方向から見ても微小反射体51が等方的に再帰反射構造である。また、図9(d)は別な実施の形態であり、その左図は上面図であり、右図は左図のa−a’線縦断面図である。微小反射体中央部53がその周りよりも低屈折率を有するものであり、それゆえに反射面となり、その上部及び下部に超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52を配置した形態である。この形態の場合、低屈折率である微小反射体中央部53が一方向に広い面を有する板状体である。かくの如く、図9(c)、(d)は反射材のコアの周りに超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52を配置した形態であり、そのうち図9(c)が三次元的対称体若しくは三次元的略対称体である。超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52の数が少ないと略対称体になり、数が多くなると対称体となる。また図9(d)は平板であり、二次元的な対称体であるといえる。
【0075】
再帰反射構造を有する微小反射体51がマイクロビーズ型の形態をとるのは、図9(c)(d)に示すようなもののほかに、配位化合物の立体化学で用いる専門用語で表現する構造をとることができる。それは反射材のコアである微小反射体中央部53を単核錯体の単核に、超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52を単核錯体の配位子に見立てた構造である。例えば三方両錐型は配位子3個を三角形に並べ、その重心の上下に1個ずつ配位子を配置した構造であり5配位、すなわち超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52が5個であり、三角形に並んだ配位子の重心に核、すなわち反射材のコアである微小反射体中央部53が配置されている。また四方錐型は配位子4個を四角形に並べ、その重心の上部に1個配位子を配置した構造であり5配位、すなわち超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52が5個であり、四角形に配置した配位子と上部の1個の配位子に挟まれるように核、すなわち反射材のコア53が配置されている。また、三角柱型は三角柱の各頂点に配位子があり、重心に核が配置されているので、6配位子である。このように4個であれば、四面体構造、5個であれば、三方両錘型か四方錘型、6個であれば、八面体型、三角柱型、7個であれば、五方両錘型、一面冠八面体型、四角面一冠三角柱型など、8個であれば、立方体型、四方逆プリズム型、十二面体型、六方両錘型、トランス二面冠八面体型、三角面二冠三角柱型、四角面二冠三角柱型など、9個であれば、四角面三冠三角柱型、七方両錘型などが例示され、フラーレンのようにサッカーボール型としてもよい。かくの如く、4個以上であれば、何らかの対称性を有する構造が得られ、8個以上となれば、対称性を有する構造が多々存在する。反射を受け持つコア53となる樹脂の周囲に超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52が配置されていればよいので、上記のように数学的に対称性高く配置されている必要はなく、反射材のコア53の周りに超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52が配されていればよく対称性が歪んでいてもよい。この意味を含めて本発明では「対称若しくは略対称」と呼んでいる。それゆえ、微小反射体中央部53の周りに4個以上の超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52を配し等方的若しくは略等方的に再帰反射構造を有するものが挙げられる。以上より個々が再帰反射構造を有する超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52が幾つか集まって一体として対称若しくは略対称を形成する際の超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体52の数は4個以上、好ましくは8個以上である。
【0076】
また、図9(e)は、別な実施の形態の平面図であり、図9(e)の左側の上面図で示す一個のコーナーキューブミラーの各辺を3個以上連接して表裏両面をそれぞれ構成して略平板の微小反射体とするものである。その上面図を図9(e)の右側に、そのb−b´線断面図が下側に示されたものである。ここで図の実線は山折れ線(稜線)であり、同一平面にあり、波線は谷折り線である。このような形状を略平板と本発明では呼んでいる。この形態では、割れを防止するために、表面と裏面の何れか、或いは両方を、透明部材で裏打ちしてもよい。
【0077】
また、再帰反射構造を有する微小反射体51の大きさは10μm〜5mmの大きさが好ましく、20μm〜1mmの大きさがより好ましく用いられる。10μmより小さいと入射光の波長に近づき、光散乱されてしまうからであり、5mmより大きいと塗布しにくくなるためである。
【0078】
これら微小反射体51は公知の超精密金型でプレス成型あるいは射出成型、さらには場合によっては、通常の樹脂成型技術により製造することができる。このうち、図9(e)のような形態は、例えばアルミニウムのような金属粒子を分散させた樹脂フィルムをプレス成型するか、逆にプレス成型してから蒸着することで得られる。この方法はロールトゥロールなので、大量生産性能が高い。薄いシートに仕上げるのであれば、コーナーキューブの大きさを、それに合わせて小さくしなければならないので、マイクロ技術で作成された超精密金型が必要になるが、厚めのシートやパネル状であれば、超精密金型を使う必要がないので、製造は容易である。例えば、3mm程度の厚さのシルバーキャンピングシートや8mm程度の厚さのシルバーキャンピングマットをコーナーキューブ構造にして蛍光塗料を塗布することで簡単に製造することができる。これは水に浮き、断熱性もあるので、酷暑環境下での栽培ハウスの水耕栽培の際に、水面に浮かせて用いることができるし、砂漠からの熱風の影響を避けるべく、内部が断熱性とする空洞体の構造材料に使用することができる。また、熱線を再帰反射させ可視光を透過する場合は、ITO等の選択的に熱線再帰反射する部材を分散させた樹脂素材を用いて、超精密金型でプレスあるいは射出成型するか、透明樹脂で形を作ってから、ITO等の蒸着をすることで得られる。また、コーナーキューブ型の微小再帰反射体のうち、平板型は離型性の問題は少ないが、等方型のものは離型性が良くない形状をしているので、離型性を高める工夫が必要である。その一つの方法は、コーナーキューブの角度を開き気味にする方法である。別な方法は離型の際に超音波などの振動を与える方法である。さらに別な方法はプレスの際よりも離型の際の温度を下げて、熱膨張率の差を用いて離型しやすくする方法である。
【0079】
本実施の形態に係る酷暑環境用農林資材50となるインキまたは塗料中に微小反射体51と共に含まれる透明樹脂、熱線透過樹脂は、それぞれ第1、第2の実施形態で説明した熱線透過樹脂、第3、第4の実施形態で説明した透明樹脂が用いられる。
【0080】
本発明の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材50となるインキまたは塗料中には、透明樹脂または熱線透過樹脂が微小反射体51に対して接着性を有しないときには、バインダーがさらに含まれる。バインダーとしては、塗膜の透明性を大きく損なわずに接着性を有するものであれば何でもよいが、好適には耐久性、耐候性のあるものが用いられる。例えば、ウレタン系接着剤、ノボラック系接着剤、アクリル系接着剤、アルキド樹脂、フッ素系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。アミノ樹脂やブロックポリイソシアネート樹脂などの架橋剤と併せて使用することもできる。
【0081】
本実施の形態のインキ又は塗料には、粉体塗料以外、溶剤が用いられる。溶剤は透明樹脂または熱線透過樹脂と、バインダーが含まれる場合にはバインダーを溶解するものであれば何でもよい。例えば、ミネラルスピリット、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、クロルベンゼン、トリクロルベンゼン、パークロルエチレン、トリクロルエチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール類、n−プロパノン、2−ブタノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテルなどのエーテル類、その他テレビン油などが挙げられる。また、当該溶剤は、単独で、あるいは二種以上を混合して使用することができる。
【0082】
本実施の形態のインキ又は塗料の構成は溶剤を除いた全量中、再帰反射構造を有する微小反射体20〜90質量%と、蛍光剤を含有せしめる場合は概ね0.005〜3質量%、より好ましくは、概ね0.01〜0.5質量%と、微小反射体の空隙を埋める透明樹脂または熱線透過樹脂、要すればバインダーを残量とする配合が好ましい。また、本発明の塗料又はインキには、必要に応じて、他の着色顔料、染料、各種添加剤などを加えることができる。さらに水が加わっていてもよい。その場合には透明または熱線透過樹脂樹脂の溶解を妨げない限度である。各種添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、増粘剤、静電気除去剤、分散剤、酸化防止剤、艶だし剤、界面活性剤、合成保存剤、潤滑剤、可塑剤、硬化剤、フィラー(強化剤)、ワックスなどが挙げられる。
【0083】
本実施の形態の酷暑環境用農林資材50となる塗料又はインキを塗装する方法としては、公知の方法が採用でき、例えば、刷毛塗り法、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコーター法、バーコーター法などが挙げられる。酷暑環境用農林資材50となる塗料又はインキの被塗物としての基材は、植栽用構造物とか部材であれば特に限定されず、例えば、フェンス、ラティス、壁、堀、柱、ドア、カーテン、区画ブロック、パイプ、フィルム部材、シート部材、植物栽培台、柵、ウッドチップなどの、植物の近傍にある構造物であれば好適に用いることができる。また、当該被塗物としての基材である植栽用構造物の材質も、特に限定されず、従来公知のものを用いることができるが、例えば、セラミックス、ガラス、セメント、コンクリ−トなどの無機材料、天然樹脂、合成樹脂などのプラスチック材料、金属、木材、紙などが挙げられる。
【0084】
本実施の形態に係る酷暑環境用農林資材50として、微小反射体51の反射面に全反射ミラーを用いた場合、本実施の形態の再帰反射構造を有する微小反射体、微小反射体の空隙を埋める熱線透過樹脂と、要すれば、バインダーと、溶剤と、蛍光剤とを含有するインキないしは塗料などを植栽用構造物の主面に塗布したものは第1及び第2の実施の形態と同様の機能が付与される。一方、微小反射体51の反射面に熱線反射ミラーを用い、その周囲を透明樹脂とした場合では、第3及び第4の実施の形態と同様の機能が付与される。
【0085】
この実施形態は、このような微小反射体51がどのような向きで透明樹脂または熱線透過樹脂中に固定されても、酷暑環境用農林資材に再帰反射機能が付与されるのが特徴である。例えば、微小反射体がコーナーキューブミラー構造である図9(a)の場合、ばらばらに並べれば、各コーナーキューブミラー構造の向きはばらばらになるが、入射した光に対して、開口するコーナーキューブミラー構造が存在するために、再帰反射される。コーナーキューブミラーは±45度程度、概ね90度程度が再帰反射の守備範囲であるので、主たる面側に開口しているコーナーキューブミラーは、再帰反射に概ね寄与する。コーナーキューブミラーの角度が寝てくると再帰反射率は下がるが、主たる面側から見ると、様々な向きを向いている微小反射体の開口されたコーナーキューブミラーばかりが見えるので、全体としては、概ね再帰反射の塗装面となる。図9(b)の場合も同様である。図9(c)の微小反射体は全くの対称体であるから、塗布しても再帰反射機能が付与されることは明らかである。図9(d)、(e)の場合は、平板であるので、塗布したときには、平板の主たる面を塗布面と概ね平行に配向する性質を有するので、再帰反射性能は高い。このような作用があるので、微小反射体が対称若しくは略対称の場合には、下地が凹凸でも構わないし、平坦な下地に微小反射体の群が凹凸に形成されても構わない。図10(a)及び(b)は、基材56上に、コーナーキューブを外側に開口した構造の超微小熱線透過球状体、好ましくは超微小透明球状体51,51…が不均一に塗布された場合の一層または多層の各塗装縦断面図であるが、図10(b)に示すように、多数個の微小反射体のいずれかが一層ではなく、多層に厚塗りされていても、何ら支障なく再帰反射されることが示されている。また、微小反射体が平板の場合には、塗布面が平坦な下地の場合、再帰反射性能が高い。なお、図10中の図示符号57は透明樹脂または熱線透過樹脂よりなるバインダーである。
【0086】
〔第6の実施の形態〕
第6の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材は、熱線の全部若しくは大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過する再帰反射部材が含有されている層と拡散反射層との積層からなるものである。熱線の全部若しくは大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過する再帰反射部材からなるものとしては、第3の実施の形態または第4の実施の形態に係る再帰反射部材が例示される。第3の実施の形態の場合で言えば、裏打ち層36の、熱線反射ミラー35の面とは反対側の面に接して拡散反射層が設けられる構造、第4の実施の形態の場合で言えば、熱線反射層43と透明な裏打ち層46との間に拡散反射層が設けられる構造とか、透明な裏打ち層46中に拡散反射機能を有するものを分散させた構造とし裏打ち層と拡散反射層を兼務させた構造、透明な裏打ち層46の熱線反射層43と接する面とは反対側の面に拡散反射層が設けられる構造などが例示される。
【0087】
拡散反射層は、入射光を拡散反射する機能を有するものであれば、特に限定されないが、反射率が高いものが好適に用いられ、反射率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上のものが用いられる。材料としては、金属が特に好適である。また、拡散反射層の形態としては、例えば、反射率の高いもののみからなるもの、少なくとも入射光側となる主たる面が反射率の高い材質である多層積層体、反射率の高い材質を透明媒体中に分散させた組成物が挙げられる。このうち、積層体の例としては、任意の基材に蒸着された金属蒸着物やメッキしたものが挙げられ、また組成物の例としては、ガラス、樹脂等の透明媒体中に金属粉とか金属粒子を分散させたものが好適なものとして挙げられる。拡散反射層の透明媒体中に含有される金属粉顔料としては、アルミニウム、銅、錫、銀等の箔を粉末にした顔料が好適に用いることができるが、光輝性と入手の容易さからアルミニウム粉末が最適であり、その濃度は、本発明酷暑環境用農林資材の反射率が50%以上となるような量とすればよく、中でも、拡散反射層に対する質量比で20〜40%であることが望ましい。透明媒体としては、前述の透明媒体と同様のものが用いられる。
【0088】
この実施形態の場合には、酷暑環境用農林資材は酷暑環境下にある植物の近傍に置かれる。熱線は再帰反射されるので、近傍の植物に照射されることなく光源に戻るのに対し、熱線反射ミラーを透過した、光合成に有効な波長を包含する光は拡散反射層で拡散反射されて、近傍の植物に照射されて、光合成を促進する。かくのごとく、拡散反射層を設けた場合には拡散反射層の存在により、周囲にある植物に熱線以外の光を照射するので、蛍光剤がなくてもよいが、蛍光剤があれば、より一層効果的である。また、この形態は植物栽培ハウスの集光部に用いることができる。その一例として、ヘリオスタットの反射鏡面部に用いることができる。また、別の例として、集光部からの光を受けて栽培ハウス内部に取り入れる過程に置かれるレシーバーにも用いることができる。このような集光部やレシーバーに用いるときは、第3、第4の実施の形態と同様、蛍光剤2を用いない方が良い。また、このような場合には、植物栽培ハウスの壁材は第3の実施の形態で述べたようなものでなくてもよく、例えば、植物栽培ハウスのドーム状の壁材と床材を、蛍光剤で塗布された鏡面とすることにより、熱線が除去された光がドーム状の壁と床の鏡面との間で反射され、ドーム状の中に配置された植物に必ず、有用な光となって到達することができる。
【0089】
〔第7の実施の形態〕
第7の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材は、再帰反射部材が含有されている層と拡散反射層との積層からなり、拡散反射層がコールドミラー層である。第6の実施の形態と拡散反射層を積層する点では似ているが、この実施の形態の場合には、拡散反射層がコールドミラー層に限られるのに対し、再帰反射部材は特に限定されない点で、第6の実施の形態と異なり、実際に使用する場合にはコールドミラー層を入射光側とする点でも異なる。かかる使用形態では、光合成に有効な波長を含む光をコールドミラーで拡散反射し、残りの、光合成に有効でない光を再帰反射部材で再帰反射させるので、植物の近傍に配置して使用される。また、第6の実施の形態と同様、植物栽培ハウスの集光部に用いることができる。この形態では、コールドミラー層で光合成に有効な波長が拡散反射されるので、再帰反射部材の中に蛍光剤が含まれていなくてもよい。尚、コールドミラーとしては、光合成に有効な波長を拡散反射し、熱線を透過するものであればよく、例えば、透明基板上に低屈折率薄膜とこの薄膜よりも屈折率の高い薄膜とを交互に積層し、光波の干渉を利用して可視光線を反射されたものとか、積層数を減らすべく基材との間に交互に積層されるいずれの薄膜の屈折率よりも高い屈折率を有する赤外線透過膜を介在させたものなどが挙げられる。
【0090】
〔第8の実施の形態〕
図11に示すように、第8の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材は、植物栽培ハウス向け酷暑環境用農林資材60である。その構成は、植物栽培ハウス内の地面若しくは床面に敷いたり、または水耕栽培や池などにおける植物の近傍の水面に浮かせて用いる再帰反射部材61と、植物栽培ハウス60の窓材、屋根材などを構成する受光部材62とからなる。このうち、再帰反射部材61は熱線も可視光線も再帰反射するものが用いられるのに対し、受光部材62は太陽光を透過するものであれば、何でもよい。熱線も可視光線も透過する、ガラスや塩化ビニル樹脂などの樹脂フィルム;熱線を選択的に反射する、熱線反射ガラスや樹脂フィルム;熱線を再帰反射し、可視光線を透過する、熱線再帰反射ガラスや樹脂フィルムなどが例示され、これらのいずれかを一層とする積層体であってもよい。積層体の一例を後述の第10の実施の形態で示す。何れを用いるのが最適かは、栽培する植物の種類、栽培地の気温、栽培ハウス内の植物の占める受光面積比率などにより異なり、受光部材を透過する熱量と気温により栽培ハウス内が適度の温度になるように適宜選択される。しかしながら、熱帯や乾燥帯では無条件に熱線を選択的に再帰反射する、ガラスやフィルムが好ましい。なお、栽培ハウスにおいて直接太陽光を受光する部位にならない壁、即ち屋根が光透過性材料でない場合に日陰部分になる部位は、特に限定されないが、可視光線を再帰反射するとともに蛍光剤を含有するものがより好ましい。無論、太陽光線を直接受光する部位と同様の材質としてもよい。
【0091】
図12、図13は、特に水耕栽培の例を示すものである。水耕栽培の植物63は、水耕栽培させる水64に浮かせつつ樹立させるべく、水より比重の軽い浮き部65にクッション部材66を介して緩やかに挟持されている。クッション部材66としては、スポンジのような吸水性のものが好ましく、浮き部65としては、プラスチックが好適である。浮き部65そのものが、再帰反射部材61そのものであってもよいし、浮き部65の表面に再帰反射部材61が積層されていてもよい。プラスチックそのものが水より比重の小さいもののときには、そのまま成形することで使えるし、水より比重が大きいときには、中空にすることで浮き部にすることができる。再帰反射部材61としては、蛍光剤2が分散された再帰反射部材が好適に用いられる。また、水耕栽培の植物63が成長するにつれて、浮き部65の占める割合を増やしていく必要があり、図12に示すように、適宜、浮き部65を増やしていってもよいが、図13に示すように、自動的に浮き部65の占める割合が増えるように、浮き65aを多数個用意し、その表面に再帰反射と蛍光剤を分散塗布させたものが好適に用いられる。浮き65aの形状は、球状、塊状、サイコロ状、ブロック状など、任意の形態が取り得るが、球状が特に好ましい。
【0092】
〔第9の実施の形態〕
第9の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法は、農林地の外側に広大な砂漠とか準砂漠、荒地が広がっており、その熱い大気が農地に流れ込んでくる乾燥帯地方における農林地に好適なものである。図14に示すように、その農林資材100の構成は、後で詳述するように空洞体の少なくとも一部を再帰反射部材101とし、空洞体内部が概ね断熱性のものからなる。空洞体の内部を断熱性としているのは、大気からの熱流入を防止するためである。断熱性を構成するものとしては、例えば、真空とか断熱材102が用いられ、断熱材としては繊維系断熱材、発泡体断熱材などが用いられる。空洞体の形状は特に限定されないが、受光面を広く取れる直方体が好適である。
【0093】
空洞体のうち、少なくとも地面110と接しない主たる面の受光面に用いられる再帰反射部材101としては、熱線も可視光線も再帰反射する部材である。再帰反射部材の形態としては、図1に示したコーナーキューブ型再帰反射構造体或いは図2に示したビーズ型再帰反射構造体と、アルミ蒸着フィルムとを、接着剤を介して積層ラミネート或いはプレス加工したものに蛍光塗料を塗ったものとか、又はガラス板とか金属板などの表面に図9に示した微小反射体と蛍光剤からなる再帰反射塗料をアルミ蒸着フィルム若しくはアルミシートに塗ったものなどが例示される。
【0094】
空洞体のうち、再帰反射部材101でなくてもよい空洞体部位は内部の断熱性を保持できるものであれば、どのようなものでも良く、金属材料、プラスチック材料、ガラス材料などが例示される。無論、再帰反射部材であってもよい。再帰反射部材101でなくてもよい空洞体部位としては、例えば、地面と接しない主たる面の受光面のみを除くすべての外壁でも良いし、地面と接する主たる面を主たる面とする直方体の外壁だけでも良い。
【0095】
このような構成とすることにより、栽培地の周囲にある砂漠等から栽培地に流れ込んでくる熱の流入を断熱により防ぐとともに、上空から照射する太陽光を再帰反射させることで栽培地の加熱を防いでいる。それ故、本実施形態に係る酷暑環境用農林資材で農地を囲むことにより、又は、農林地内の植物の植えられていない土地に敷くことにより、熱帯における農林地の植物は周りからの熱風による影響を受けることなく、成長することができる。
【0096】
図15は、真空で断熱構造とした具体的実施形態の一つの例を示すものであり、真空包装技術を転用して農林資材100内部を真空とするものである。その際、内部を真空にする過程で壁材が変形して再帰反射部材101のみでは内部空間を保持できないようなものの場合には、内部にハニカム構造体103を挿入しておく。また、壁材の再帰反射部材101に対するハニカム構造体103の端部のあたりを和らげるべく、バックシート104を挿入するのが望ましい。壁材としては、耐光性、真空を維持するガスバリヤー性に優れたものが用いられる。真空のレベルを上げるべく、必要に応じ空気を吸着させるゲッター剤或いはガス吸着剤を内部に加えるのが好ましい。
【0097】
第9の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材100は、図14、図15のような態様のほかに、図16に示すようなものであってもよい。すなわち、空洞体が再帰反射部材でなく、受光面側が透明ガスバリヤー性部材105からなり、空洞体の放射光側106は受光側と同じにしてもよいが、例えば金属や不透明なプラスチックからなっていてもよく、内部に再帰反射部材101を有しているものであるとともに内部を概ね断熱性、特に真空とするものである。図15の場合と同様、空洞体の強度に応じて、適宜、ハニカム構造体103、バックシート104が内在するものが用いられる。
【0098】
〔第10の実施の形態〕
第10の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材は、乾燥帯地方向け植物栽培用ハウスであり、その屋根材と窓材が、内部を概ね真空とする密閉体であり、密閉体の主たる面の少なくとも一方が透明ガスバリヤー性部材からなり、ともに透明ガスバリヤー性部材でないときの他方の主たる面は少なくとも可視光線を透過する部材からなり、少なくとも可視光線を透過する部材又は密閉体の内部の部材が熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射するものであり、密閉体の内部の部材であるときには、密閉体の主たる面とほぼ同面積であり、主たる面と略平行に配置されており、植物栽培ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水面に浮かせるものが再帰反射部材を備えるものか、再帰反射部材を構成する透明媒体中に分散されるか、再帰反射部材の表面に塗布された、短波長側の光を吸収し光合成に有効な光を発する蛍光剤を有するものである。
【0099】
このうち、ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水面に浮かせるものは第8の実施の形態に示すものと同様である。
【0100】
また、屋根材や窓材は、第9の実施の形態に係る酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材における一実施態様である図15と形状が同一若しくは類似であり、材質、用途が以下の点で異なる。第9の実施の形態の再帰反射部材は全ての光を再帰反射するものであるのに対し、第10の実施形態の屋根材や窓材の再帰反射部材は熱線を再帰反射し、他の光線を透過するものである。また、第9の実施の形態の好適な用途としては熱帯の農林地の近傍の地面とか、農林地内の植物が植えられていない地面に敷くものであるのに対し、第10の実施の形態の好適な用途としては、広大な砂漠、準砂漠、荒地から流れ込んでくる熱い熱気がある乾燥帯における植物栽培ハウスの窓材、屋根材などの受光部材或いは、植物栽培ハウスが地下に設けられる場合の集光部とか、集光部からの光を受けて植物栽培ハウス内部に取り入れる過程に置かれるレシーバーである。また、断熱構造は透明である必要性から、断熱を構成する密閉体の主たる面がともに再帰反射部材からなる場合でないときの一方の主たる面は透明ガスハリヤー材であり、断熱性は概ね真空とすることでもたらし、ハニカム構造体103やバックシート104は透明材料からなる。このうち、透明ガスバリヤー材としては、例えば、ガラス、酸化珪素(SiOx)よりなる透明蒸着フィルムとか、ポリカーボネート系樹脂やその樹脂組成物、ポリメチルメタクリレート系樹脂やその樹脂組成物、透明性塩化ビニル樹脂組成物、例えば弗化ビニリデン樹脂とポリメチルメタクリレートの6:4〜7:3の比率での混合物のような透明性弗素樹脂や樹脂組成物が好適である。再帰反射部材の形態としては、図6のようなコーナーキューブ型であってもよいし、図7のようなビーズ型であってもよい。また、蛍光剤は、上述のような用途における、光源と植物の間に置かれた農林資材の放射光側材質中に、若しくは放射光側材質が透明であるときに、その手前に置かれた透明な物の中に分散されるか、又は農林資材の放射光側表面、若しくは放射光側材質が透明であるときに、その手前に置かれた透明な物の放射光側表面に塗布されるのが一般的である。例えば、栽培ハウスが地下に設けられる場合の集光部やレシーバーにおいては、植物を栽培するハウス内の壁材が放射光側材質となるので、ハウス内壁材に蛍光剤を塗布すれば十分である。何故ならば、栽培ハウスの集光部やレシーバーにも蛍光剤を含めると、そこから放射される蛍光がハウス内に向かわないものもあるため、効率的でないからである。上記構成からなることで、農林地の近傍からの砂漠からの熱風による影響を受けることなく、栽培ハウス内の植物を成長させることができる。
【0101】
〔第11の実施の形態〕
また、本発明の酷暑環境用農林資材としての使用方法に用いられる農林資材において、上記各実施形態の入射光側の面に、反射防止材または光触媒からなる表面コート層が設けた形態はより一層好適である。そのうち、光触媒は、環境浄化機能を有するものでも、表面に親水性を付与するものでもよい。反射防止材がある場合には、その効果によって、入射光は入射面での乱反射を少なくし、光触媒がある場合には、その効果によって入射面を清浄にするので、再帰反射効果とともに、蛍光剤がある場合には、それによる光合成の促進効果を増すことができる。
【符号の説明】
【0102】
10、20、30、40、50、100 酷暑環境用農林資材
1、21、31、51、61、101 再帰反射部材
2 蛍光剤
4 熱線透過媒体層
5 ミラー
6、26、36、46 裏打ち層
7 太陽光線
14 透明媒体層
22 熱線透過球状体
23 光反射層
24 定着層
35 熱線反射ミラー
42 透明球状体
43 熱線反射層
51 微小反射体
52 超微小熱線透過球状体又は超微小透明球状体
53 微小反射体中央部(光反射部)
54 溶剤
55 超微小反射体
56 熱線透過樹脂又は透明樹脂
60 植物栽培用ハウス
62 受光部材
63 水耕栽培の植物
64 水
65 浮き部
66 クッション部材
101 再帰反射部材
102 真空或いは断熱材
103 ハニカム構造体
104 バックシート
105 透明ガスバリヤー性部材
106 空洞体の放射光側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再帰反射部材の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項2】
再帰反射部材が波長依存性を有し、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過することを特徴とする請求項1に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項3】
形状がフィルム状、シート状、パネル状、ブロック状、空洞状または柱状であり、その主たる面に再帰反射部材が略平行に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項4】
再帰反射部材を構成する熱線透過媒体中に分散されるか、再帰反射部材の表面に塗布された、短波長側の光を吸収し光合成に有効な光を発する蛍光剤を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項5】
再帰反射部材が、熱線と可視光線のそれぞれの少なくとも大部分を再帰反射するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、その少なくともいずれかを透明樹脂と要すればバインダー中に分散させた塗膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項6】
再帰反射部材が、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを熱線透過樹脂に分散させた塗膜であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項7】
再帰反射部材が含有されている層と拡散反射層との積層からなり、再帰反射部材が波長依存性を有し、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項8】
拡散反射層と再帰反射部材が含有されている層との積層からなり、拡散反射層がコールドミラー層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項9】
熱帯地方や乾燥帯地方の農林地若しくはその周辺又は温帯地方の農地に敷いて用いたり、水面に浮かせて用いることを特徴とする請求項1または請求項3乃至5のいずれか一項に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項10】
熱帯地方から温帯地方にかけての地域における植物栽培用ハウス内の地面若しくは床面に敷いたり、または水面に浮かせて用いることを特徴とする請求項1または請求項3乃至5のいずれか一項に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項11】
植物栽培用ハウスの屋根材及び窓材が請求項2の農林資材であり、栽培用ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水面に浮かせて用いるものが請求項10の農林資材であることを特徴とする植物栽培用ハウス向け酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項12】
空洞体の主たる面が透明ガスバリヤー性部材からなり、その内部に再帰反射部材を有し、再帰反射部材が主たる面とほぼ同面積であり、主たる面と略平行に配置するか、または空洞体の少なくとも主たる面のいずれかが再帰反射部材からなり、ともに再帰反射部材でないときの他方の主たる面は少なくとも可視光線を透過する部材からなり、いずれの場合にも、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、空洞体内部が断熱性の構成からなることを特徴とする請求項2又は3に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項13】
空洞体内部の断熱性が概ね真空によりもたらされていることを特徴とする請求項12に記載の酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項14】
乾燥帯地方における植物栽培ハウスにおいて、植物栽培ハウスの屋根材及び窓材が請求項13に係る農林資材であり、ハウス内の地面若しくは床材に敷いたり、または水面に浮かせて用いるものが請求項10に係る農林資材であることを特徴とする乾燥帯地方での酷暑環境用植物栽培ハウス向け農林資材としての使用方法。
【請求項15】
再帰反射部材が、熱線も可視光線のそれぞれの少なくとも大部分を再帰反射するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを多数個、透明樹脂に分散させた塗料であることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項16】
再帰反射部材が、熱線も可視光線のそれぞれの少なくとも大部分を再帰反射するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを多数個、透明樹脂を溶解する溶剤中に分散させたインキであることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項17】
再帰反射部材が、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを熱線透過樹脂に分散させた塗料であることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。
【請求項18】
再帰反射部材が、熱線の全部若しくはその大部分を再帰反射し、光合成に有効な波長を含む残りの波長域の光を概ね透過するものであり、且つ10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの4個以上を一体として対称若しくは略対称とするものか、又は10μm〜5mmの大きさの再帰反射構造を示すもの3個以上を連接して表裏両面をそれぞれ構成して平板若しくは略平板とするものであり、それらの少なくともいずれかを熱線透過樹脂に分散させたインキであることを特徴とする酷暑環境用農林資材としての使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−50384(P2012−50384A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195975(P2010−195975)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(504229815)株式会社CDMコンサルティング (12)
【Fターム(参考)】