説明

酸に不安定な保護基を有するフェノール樹脂

【課題】 高い熱安定性を有し、高い加工安定性および流れ抵抗を有するレジスト組成物のバインダーとして適しているフェノール樹脂の提供。
【解決手段】 このフェノール樹脂は、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)のヒドロキシル基の10〜90%が、式I


の保護基によって置換されており、重量平均分子量対数平均分子量の比率、Mw/Mnが1.03〜1.80の範囲のものである化学増幅型ポジレジスト用フェノール樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に単分散性の狭い分子量分布を有し、酸に不安定なアセタールおよびケタール側鎖基を有するフェノール樹脂、これらのフェノール樹脂を含む放射線感受性組成物、これらの組成物を使用する像形成の方法、およびポジフォトレジストにおけるポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高集積回路の製造では、基板に像転写する0.35μmより狭い幅を有する構造物を作る能力が必要とされている。例えば、o−キノンジアジド/ノボラック系の解像力は、像露光に使用する365nmの波長で物理的に可能な限界に達している。このため、深UV領域(DUV領域、深紫外:200〜300nm)のより短い波長で作動するフォトレジストに関心が高まっている。ノボラックはこの領域で非常に強い吸収を起こすので、約1.0μmの通常の層の厚さでは均一な露光は不可能である。必要な光学的透明度を確保するためには、DUV領域で作動するフォトレジスト用のバインダー樹脂として、一般にポリ(p−ヒドロキシスチレン)またはその誘導体を使用する。
【0003】
一般に知られているように、放射線感受性が高められた系は、アルカリ可溶化基、例えば、ヒドロキシル基が酸に不安定な保護基でブロックされている例えばアルカリ溶解性バインダー樹脂を含み、従ってバインダー樹脂は実質的にアルカリに不溶性となっている。次いで、露光すると適当な波長で吸収する酸フォトジェネレーターの第一反応が始まり、次の第二反応で保護基を除去する強酸を形成し、これによって可溶化基が再形成される。
【0004】
このような系について記載しうる例は、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)であり、このフェノール基は例えばtert−ブチルオキシカルボニルオキシ(TBOC)またはテトラヒドロピラニル(THP)基によって保護されている。
このようなバインダー樹脂からなるフォトレジストは、知られている(例えば、M. J. BowdenおよびS. R. Turner(編) “Electronic and Photonic Application of Polymers",
ACS Series 218 Washington(1988);およびN. Hayashiら,Polymer 33, 1583(1992))が、シリコーンへの接着性について欠点がある。
【0005】
さらに、これらの化学的に強化されたポジレジストは、第一反応と次の第二反応との間のプロセスの間隔に関して、非常に鋭敏である。たったの数分後でも決定的となる感受性においては、間隔を延長する(後露光を遅らせる)のは著しく表面の反応を抑制する結果となり、T形変性材(T-shaped denatured profiles)が形成される(S. A. MacDonaldら,SPIE 第1466巻, Advances in Resist Technology and Processing VIII(1991)2〜7)。
【0006】
フェノール性ヒドロキシル基が、酸によって開裂する保護基によって部分的にのみ置換されたバインダー樹脂をレジスト処方物の中に使用することによって、レジスト処方物の接着性、再現性および解像度を改良する試みが成されてきた。このような試みの一つの例は、フェノール樹脂がテトラヒドロピラニル基によって部分的に保護されている放射線感受性混合物を提案しているEP−A−447,868である。
【0007】
EP A 520 642には、アセタールまたはケタール基によって部分的に保護されているポリ(ヒドロキシスチレン)ポリマーが提案されており、このポリマーは、上記のような欠点を有していないとしている。しかしながら、遊離フェノールモノマー単位を有するコポリマーは、熱安定性が著しく失われ易いことが知られている。熱に誘発された分
解(自触媒作用)は、弱酸性のフェノールヒドロキシル基の触媒効果による部分的な脱保護に帰することができる。先行技術のレジストでは、特に非常に酸に不安定な保護基、例えばアセタールおよびケタール保護基の場合には、この問題を解決するのが不可能であった。しかしながら、好ましいのはまさにこれらの保護基であり、それはこれらが酸にあまり不安定でない保護基、例えばtert−ブトキシカルボニルオキシ(TBOC)基またはtert−ブチルエステル保護基よりも、露光と後露光ベークとの間の間隔を比較的長くできる(従って、処理性がより大きくなる)からである。
【0008】
製造したレリーフ構造の熱流れ抵抗についての重要な因子は、バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)のレベルである。保護基の含量が増加するにつれて、Tgは減少し、その結果同様にレジスト構造における流れ抵抗も減少する。しかしながら、十分に高い流れ抵抗(製造したレジスト構造の寸法安定性)は、リトグラフ処理の後の半導体基板(Tin、Sio2、Al等)におけるプラズマ−化学構造の転写(エッチング法)にとって基本的に重要である。
【0009】
本発明の目的は、特にレリーフ構造を製造するための、新規なポリマーおよびこれによって得られるポジ型の非常に活性な放射線感受性系を開発することであり、このポリマーは上記欠点を有しない、換言すれば、それらは良好な接着性、加工安定性、UV放射線、電子ビームおよびX線に対する感受性を有しており、高い光学的透明度のためDUV領域での使用に特に適しており、そしてさらに良好な熱安定性を有しており、高い解像度が可能である。
【0010】
驚くべきことに、フェノール性のOH基のうちのいくらかがアセタールまたはケタール保護基によって置換された、実質的に単分散性の狭い分子量分布を有するフェノール樹脂からなる放射線感受性混合物が、上記欠点を有しないということを発見した。
【0011】
本発明は、フェノール性ヒドロキシル基の10〜90%が、式I
【化1】

〔式中、R1およびR2は、それぞれ互いに独立してC1〜C6アルキル、未置換または一つもしくはそれ以上のC1〜C4アルキル基によって置換されたC3〜C6シクロアルキルであるか、または−(CH2)n−アリールであるか、またはR1およびR2はそれらの基が結合している酸素および炭素原子と一緒に、環員としてさらにヘテロ原子またはヘテロ基、例えば−O−、−S−、−SO2−または−NR8−(R8は、C1〜C6アルキル、アリールまたはC6〜C16アラルキルである)を含むことのできる5員〜8員環を形成し、R3は、水素、C1〜C6アルキル、未置換または一つもしくはそれ以上のC1〜C4アルキル基によって置換されたC3〜C6シクロアルキルであるか、または−(CH2)n−アリールであるか、またはR2およびR3はこれらの基が結合している炭素原子と一緒に、環員としてさらにヘテロ原子またはヘテロ基、例えば−O−、−S−、−SO2−または−NR8−(R8は、C1〜C6アルキル、アリールまたはC6〜C16アラルキルである)を含むことのできる5員〜8員環を形成し、nは0、1、2または3であり、そしてアリールは、一つまたはそれ以上のC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ニトロまたはシアノ基またはハロゲン原子によって置換されたナフチルまたはフェニルである〕の保護基によって置換されているが、但し重量平均分子量対数平均分子量の比率、Mw/Mnは1.03〜1.80の範囲である、フェノール樹脂に関する。
【0012】
好ましいフェノール樹脂は、式IIおよびIII:
【化2】

(R1、R2およびR3は上に定義したとおりであり、そしてR4およびR5は互いにそれぞれ独立して水素、メチル、ハロゲンであり、そしてR6およびR7は互いにそれぞれ独立して水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンである)の構造反復単位を含むものである。
【0013】
特に好ましいフェノール樹脂は、式IIaおよびIIIa
【化3】

(式中、R1〜R7は上に定義したとおりである)の構造反復単位を含むものである。
【0014】
アルキル基の置換基R1〜R8は直鎖または分枝であることができる。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシルおよびイソヘキシルである。
アルコキシ置換基の例は、メトキシ、エトキシ、n−プロピル、イソプロポキシ、n−ブトキシおよびtert−ブトキシである。
ハロゲン置換基R4〜R7はフルオロ、ブロモ、そして特にクロロが好ましい。
アラルキル基は、ベンジルまたはフェニルエチルが好ましい。
【0015】
式IIおよびIIIの構造単位では、R4、R5、R6およびR7は水素が好ましい。
特に好ましいフェノール樹脂は、R1およびR2がそれぞれ互いに独立してメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルまたはシクロヘキシルであるか、またはR1およびR2はこれらの基が結合している酸素または炭素原子と一緒にテトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロピラニル環を形成する、式IIおよびIIIの構造反復単位からなるものである。
式IIおよびIIIの構造単位では、R3は水素またはメチルが好ましい。
【0016】
本発明のフェノール樹脂では、フェノール性ヒドロキシル基の15〜70%が、式Iの保護基で置換されているのが好ましい。
重量平均分子量/数平均分子量の好ましい比率、Mw/Mnは、1.03〜1.5である。
【0017】
本発明のフェノール樹脂は、例えばフェノール基を含むアルカリ溶解性樹脂をビニルエーテル化合物またはイソプロペニルエーテル化合物、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ジヒドロフラン、ジヒドロピラン、2−メトキシプロペン等を保護することによって、知られている方法によって得ることができる。保護は、通常、適切な酸性触媒の存在下で実施するのが好ましい。このような適切な触媒の例は、酸性イオン交換樹脂、酸、例えば塩酸、スルホン酸またはこれらの塩、例えばピリジニウムトシレートである。フェノール性ヒドロキシル基を含む適切なアルカリ溶解性樹脂は、ホモポリマー、例えばポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ポリ(4−ヒドロキシ−α−メチルスチレン)、ポリ(3−ヒドロキシスチレン)、またはフェノール系ビニルモノマーと他のモノマー単位から形成されたコポリマー、例えば4−ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アルキルメタクリレート、アルキルアクリレート、スチレン、フマロニトリル、無水マレイン酸もしくはマレイミドおよびそれらの誘導体の反応生成物である。
【0018】
アルカリ溶解性フェノール樹脂は、モノマーの適切な重合または共重合により知られている方法によって得ることができ、次いで改質することができる。このような改質の例は、シクロヘキサノール基が得られるフェノール基の部分的な水素化、または例えばエステル化またはエーテル化によるフェノール性OH基の部分的な置換または誘導である。
【0019】
例えばアニオン重合のような、狭い分子量分布に直接導くことができる重合方法を選ぶことは可能であり、またこのような狭い分子量分布は、分別によりもしくはこのような方法を適切に組み合わせることによって得ることができる。
最初に述べたように、本発明のフェノール樹脂は、電子部品(電気メッキレジスト、エッチングレジストおよびハンダレジスト)用、成形エッチング用のポジレジスト処方物において、印刷プレート、例えばオフセット印刷プレートまたはスクリーン印刷型および印刷回路の製造において、そして特に集積回路の組み立て用の超小型電子部品に使用される。
【0020】
従って、本発明は、また(A)および(B)の全量を基準にして、
(A) 本発明のフェノール樹脂80.0〜99.9重量%、好ましくは90〜99.8重量%
(B) 活性線に露光すると酸を発生する物質を0.1〜20.0重量%、好ましくは0.2〜10重量%
からなる、放射線感受性組成物に関する。
【0021】
成分(A)のポリマーには、水性アルカリ溶液中で混合物の溶解性が高まるように、酸触媒によって除去されるアセタールまたはケタール保護基を含む。さらに、これらの混合物は、特に高い熱安定性によって特徴付けることができ、長い保存寿命、高い解像力および良好な接着性を有する。
【0022】
活性線に露光すると酸を発生する、放射線感受性成分(B)は、多数の既知化合物の任意のものであってよい。これらには、例えばジアゾタイプの方法に使用するジアゾニウム塩、既知のポジ型複写組成物に使用するo−キノンジアジド、または照射するとハロゲン化水素酸を形成するハロゲン化合物が含まれる。このタイプの化合物は、例えばUS−A
3,515,552、同3,536,489または同3,779,778およびDE−A 27
18 259、同22 43 621または同26 10 842に記載されている。
【0023】
本発明の組成物の適切な放射線感受性成分(B)は、特にヨードニウム塩およびスルホ
ニウム塩からなる群より選ばれるカチオン光開始剤である。このような化合物は、例えば“UV-Curing,Science and Technology"(編者:S. P. Pappas, Technology Marketing Corp., 642 Westover Road, Stamford, Connecticut, USA)に記載されている。
【0024】
また、放射線感受性化合物としてスルホキソニウム塩を使用することもできる。このような塩は、例えばEP−B 35,969およびEP−A 44,274および同54,509に記載されている。深UV領域で吸収する脂肪族スルホキソニウム塩については特別な言及がなされている。
【0025】
また、US−5,118,582、US 5,189,402およびT. Uenoら,Polym. Eng.Sci.32, 1511(1992)に記載されているようにスルホン酸エステルを使用することもできる。また、他のスルホン酸エステル、例えばEP−A 502,677に記載されているようなN−スルホニルオキシイミドおよびUS 5,135,838に記載されているようなニトロベンジルスルホネート、例えば2−ニトロ−6−トリフルオロメチルベンジル 4−メトキシベンゼンスルホネートも適切である。使用することができる他のスルホニル化合物は、例えばDE−A 42 25 422およびPolym. Eng.Sci.32, 1476(1992)に記載されている。短波UV線または電子ビームを照射するのに特に好ましいのは、ジスルホン化合物、例えば、DE 38 04 316に記載されているフェニルクミルジスルホンおよびフェニル 4−アニシルジスルホンである。
【0026】
また、特にEP−A 241,423およびEP−A 571,330に記載されているイミノスルホネートも、特に適切である。
また、活性光も照射してスルホン酸を発生する化合物を使用することもできる。このような化合物はそれ自体知られており、例えばGB−A 2,120,263、EP−A 84
515、同37,152または同58,638およびUS−A 4,258,121または4,371,605に記載されている。照射によりカルボン酸を発生する化合物も同様に使用することができる。このような化合物は、例えばEP−A 552,548に記載されている。
【0027】
塩を放射線感受性の酸生成化合物(B)として使用する場合は、前記塩は有機溶媒に溶解するのが好ましい。最も好ましくは、これらの塩は、錯体酸、例えばテトラフルオロ硼酸、ヘキサフルオロ燐酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ヘキサフルオロ砒酸またはヘキサフルオロフンチモン酸との生成物である。
【0028】
本発明の組成物は、成分(B)としてジスルホンまたはスルホン酸エステルを含むのが好ましい。
また、好ましいのは成分(A)および(B)に加えて成分(C)として有機溶媒を含む放射線感受性組成物である。
【0029】
成分(C)としての有機溶媒およびその濃度の選択は、主にレジスト処方物の組成の性質および塗布方法に依存している。溶媒は不活性でなければならない、すなわち、成分(A)および(B)といかなる化学反応も起こさず、塗布後乾燥して再び除去できなければならない。適切な溶媒の例は、ケトン、エーテル、エステル、および芳香族化合物並びにそれらの混合物のいずれかである。このような溶媒の例は、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール;アセテート、例えば酢酸ブチル;1−メトキシ−2−プロパノール、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ブチルグリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、例えばエチルセロソルブ、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびメチルセロソルブ;アルキレングリコールアルキルエーテルエステル、例えば酢酸メチルセロソルブ、酢酸エチルセロソルブ、酢酸プロピレングリコールエチルエーテル、酢酸メトキシプロピル;酢酸エチル、n−ブチルアセテート、エチル3−エトキシプロピオネートおよびメトキシメチルプロピオネート、乳酸エチル、トルエンおよびキシレンである。好ましい有機溶媒は、乳酸エチル、エトキシエチルプロピオネートであり、特に酢酸メトキシプロピルである。
【0030】
さらに、好ましいのは、成分(A)および(B)の全量を基準に、さらに成分(D)として慣用の添加剤0.01〜40重量%を含む組成物である。
これらの慣用の添加剤は、例えば以下の物質である:
成分(A)および(B)の全量を基準に、約0.1〜2重量%の顔料または色素、例えばMikrolith Blau 4G, Orasolblau GNおよびIrgalithgrun。
【0031】
成分(A)および(B)の全量を基準に、約5〜15重量%の、有機および無機充填剤、例えばタルク、石英(SiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化アルミニウムおよび炭酸カルシウム、これらを用いることによって、例えば被膜の性質、例えば耐熱性、接着性または耐引掻き性を高めることができる。
【0032】
成分(A)および(B)の全量を基準に、総量約0.01〜10重量%の弱塩基性添加剤(コーティング添加剤)、例えば消泡剤(例えば、Byk 80)、定着剤(例えばベンゾトリアゾール)、殺カビ剤およびチキソトロープ剤またはエチレンオキサイドおよびまたはプロピレンオキサイド単位を含むヒドロキシ末端ポリグリコールエーテル、例えばTetronic 701、901、908Pおよび1501(BASF製品)。
【0033】
組成物の濡れ性を改善するための、得られた被膜の縦じわを避けるための、照射される領域の現像性を改善するため等の界面活性剤。これらの界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールジラウレートおよびポリエチレングリコールジステアレート;フッ素化界面活性剤、例えばF Top EF 301、EF 303およびEF 352(Shin Akita Kasei K. K. の製品)、Megafac F 171および173(Dainippon Ink & Chemicalsの製品)、Fluorad FC 430およびFC 431(Sumitomo 3M Limitedの製品)、Asahi Guard AG 710,Surflon S-382, Surflon SC 101, SC 102, SC 103, SC 104, SC 105およびSC 106(Asahi Glass Co., Ltdの製品)が含まれる。また、例えばオルガノシロキサンポリマーKP 341(Shin-Etsu Chemical Co., Ltdの製品)およびアクリル酸またはメタクリル酸ポリマーであるPolyflow No. 75およびNo. 95(Kyoeisha Yushikagaku Kogyo K. K.の製品)も使用することができる。使用する界面活性剤の量は、成分(A)および(B)の全量を基準に約0.01〜0.1重量%である。
【0034】
成分(A)および(B)の全量を基準に、通常約0.01〜1重量%の濃度の、さらに強い塩基性添加剤、例えば芳香族および脂肪族アミン、アンモニウム塩およびN−含有ヘテロ環式化合物。
【0035】
本発明のレジスト処方物は、成分(A)、(B)および使用するのであれば(C)および(D)を室温で撹拌しながら混合し、均一な溶液にすることによって製造する。
【0036】
知られている塗布方法、例えば浸漬、ナイフ塗布、はけ塗り、吹付、特に静電吹付およびリバースローラー塗布、そして特にスピンコートによって、室温でレジスト処方物を基板に均一に塗布する。
含浸漬(層の厚さ)および支持体の性質は、所望の用途による。層の厚さの範囲は一般に0.1〜10μm以上であり、好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0037】
マイクロエレクトロニクスでは、基板は、例えば表面酸化されたシリコーンウェファーである。
塗布した後、一般に、例えば70〜130℃の温度で乾燥して溶媒を除去する。
レジストフィルムは、乾燥後、活性線に対する高い感受性および基板に対する非常に良好な接着性を有するフォトレジストである。
【0038】
さらに、これは高い透明度および深UV領域、特に250nmでの感受性を有し、そして良好な熱安定性を有する。
レリーフ構造を製造するためには、新規な組成物を塗布した基板を像露光に付す。「像」露光の用語は、所定のパターンを含むフォトマスク、例えば透明画を通して露光、像を作り出すための、例えばコンピューター制御下で塗布された基板の表面上を動かすレーザービームを用いた露光、コンピューター制御された電子ビームを用いた照射、および適当なマスクを通したX線またはUV放射線への露光が含まれる。
【0039】
一般に、露光は、好ましくは約190〜1000nmの間、特に190〜300nm、そして特に250nmの波長を有するUVおよび/またはVIS放射線を用いて実施する。照射は、主にすべての知られている放射線源、例えば高圧水銀ランプまたはUV/VISレーザー、そして特にエキシマーレーザー(248nmの波長を有するKrFエキシマーレーザー光)を用いて実施することができる。また、放射線源は、X線(例えば、シンクロトロン放射線)または荷電粒子のビーム(例えば、電子ビーム)からなることができる。プロセスのパラメータ、例えば照射時間および放射線感受性層からの放射線源の距離は、放射線感受性組成物の性質および被膜の所望の性質に依存しており、幾つかの日常実験を使用して当業者が決定できる。
【0040】
像露光後、ウェファーを50〜150℃で数秒〜数分間、後露光ベークにかけることができる。
【0041】
次に、フォトレジストの露光された領域を現像液でウォッシュアウトする。特定の現像液の選択は、フォトレジストのタイプ、特に使用するバインダーの性質または形成する光分解生成物の性質に依存する。現像液は塩基の水性溶液からなることができ、所望によりこれに湿潤剤および有機溶媒またはそのれらの混合物を添加することができる。
【0042】
本発明の組成物は、ポジレジストとして使用するのが好ましい。従って、本発明は、さらに以下の処理工程:
(I) 成分(A)および(B)の全量を基準にして
(A) 本発明のフェノール樹脂80〜99.9重量%、および
(B) 活性線に露光すると酸を発生する物質0.1〜20重量%
からなる、放射線感受性組成物を基板に塗布し、そして
(II) 被覆された基板を所定のパターンで活性線に露光し、そして
(III) 露光された基板をポジ型レジスト用の現像液で現像する
ことからなる、ポジ像を作るための方法に関する。
【0043】
特に好ましい現像液は、o−キノンジアジド/ノボラックレジスト被膜の現像にも使用する水性アルカリ溶液である。これらには、例えばアルカリ金属珪酸塩、燐酸塩、水酸化物および炭酸塩の水性溶液、特にテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液が含まれる。少量の湿潤剤および/または有機溶媒もこれらの溶液に添加することができる。現像液に添加することができる典型的な有機溶媒は、例えばシクロヘキサノン、2−エトキシエタノール、アセトン、イソプロパノール、エタノール、およびこれらの溶媒の二つまたはそれ以上の混合物である。
【0044】
現像液は、像露光された被覆基板を現像剤溶液中に浸漬するか、基板上に現像剤溶液を吹付けるか、または繰り返し塗布し、そして像露光された被覆基板に現像液をスピンコートし、そして遠心分離により現像液を除去することによって適用するのが好ましい。
【0045】
さらに、本発明は、印刷プレート、印刷回路または集積回路を製造するためのポジレジストとしての本発明の組成物の使用、および本発明の組成物を使用して製造された印刷プレート、印刷回路または集積回路に関する。
【0046】
本発明を以下の実施例によって説明するがこれらに限定されるものではない。特に別記しない限り、すべての部およびパーセントは重量であり、温度は摂氏である。
【実施例】
【0047】
合成実施例1
単分散性のポリ(4−(1−tert−ブトキシエトキシ)スチレン/4−ヒドロキシスチレン)の製造
単分散性のポリ−4−ヒドロキシスチレン(Nippon Soda VP−8000:Mw=8300、Mw/Mn=1.12)15.0gをテトラヒドロフラン70mlに溶解し、溶液を6.2gのtert−ブチルビニルエーテルおよび触媒量の4−トルエンスルホン酸と共に、室温で20時間撹拌した。次いで、塩基性イオン交換体を用いて反応溶液から触媒を除いた。次いで、反応溶液に水を加えてポリマーを沈殿させ、濾過によって単離し、水で洗浄し、それから一定重量になるまで乾燥し、15.5gのポリ(4−(1−tert−ブトキシエトキシ)スチレン/4−ヒドロキシスチレン)を得た。TGA分析したところ、30モル%のOH基が保護されていた。
分解温度:210℃(TGA、加熱速度10℃/分)
GPC:Mw=8530、Mw/Mn=1.18
ポリマーは熱に安定である:120℃で自触媒分解による質量の損失は全く見られなかった。
【0048】
合成実施例2
単分散性のポリ(4−(1−tert−ブトキシエトキシ)スチレン/4−ヒドロキシスチレン)の製造
単分散性のポリ−4−ヒドロキシスチレン(Nippon Soda VP−8000:Mw=6460、Mw/Mn=1.18)15.0gをテトラヒドロフラン70mlに溶解し、溶液を4.5gのtert−ブチルビニルエーテルおよび触媒量の塩酸と共に、室温で16時間撹拌した。次いで、塩基性イオン交換体を用いて反応溶液から触媒を除いた。次いで、反応溶液に水を加えてポリマーを沈殿させ、濾過によって単離し、水で洗浄し、それから一定重量になるまで乾燥し、15.4gのポリ(4−(1−tert−ブトキシエトキシ)スチレン/4−ヒドロキシスチレン)を得た。TGA分析したところ、30モル%のOH基が保護されていた。
分解温度:210℃(TGA、加熱速度10℃/分)
GPC:Mw=8390、Mw/Mn=1.16
ポリマーは熱に安定である:120℃で自触媒分解による質量の損失は全く見られなかった。
【0049】
合成実施例3(比較)
多分散性のポリ(4−(1−tert−ブトキシエトキシ)スチレン/4−ヒドロキシスチレン)の製造
合成実施例1の方法にほぼ従って、多分散性のポリ−4−ヒドロキシスチレン15.0g(Hoechst Celanese;Mw=8560、Mw/Mn=3.91)およびtert−ブチルビニル
エーテル6.2gを反応させて、15.0gのポリ(4−(1−tert−ブトキシエトキシ)スチレン/4−ヒドロキシスチレン)を得た。TGA分析したところ、30モル%のOH基が保護されていた。
分解温度:205℃(TGA、加熱速度10℃/分)
GPC:Mw=20280、Mw/Mn=4.5
120℃で自触媒分解によるゆるやかな分解が見られた。
【0050】
応用実施例1
合成実施例1で製造したコポリマー98.9重量部、フェニルクミルジスルホン1.0重量部および4,4′−ジアミノジフェニルエーテル0.2重量部を、1−メトキシ−2−プロピルアセテート354部に溶解した。溶液を孔径0.2μmのフィルターを通して濾過し、ホットプレート上120℃で60秒間予め乾燥した後、0.78μmの厚さの被膜が得られるようにシリコーンウェファー上にスピンコートした。KrFエキシマーレーザー放射線(248nm)を有する5:1投射露光装置(Canon FPA 4500、NA 0.37)を用い、3mJ/cmの段階で暗視野マスクを通して露光を実施した。次いで、ウェファーをホットプレート上110℃で60秒間、後露光ベークし、その後で市販の0.262Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液中で60秒間現像した。
36mJ/cm2の露光線量で、レジスト1で正確に再現された垂直な0.35μm l/s構造物が得られた。0.50μm接触孔を垂直エッジで再現した。
【0051】
応用実施例2
合成実施例2で製造したコポリマー96.85重量部、2−ニトロ−6−トリフルオロメチルベンジル4−メトキシベンゼンスルホネート3.0重量部および2,4,5−トリフェニルイミダゾール0.15重量部を1−メトキシ−2−プロピルアセテート354部に溶解した。孔径0.2μmのフィルターを通して溶液を濾過し、ホットプレート上120℃で60秒間予め乾燥した後0.82μmの厚さを有する被膜が得られるように、シリコーンウェファー上にスピンコートした。KrFエキシマーレーザー放射線(248nm)を有する5:1投射露光装置(Canon FPA 4500、NA 0.37)を用い、3mJ/cmの段階で暗視野マスクを通して露光を実施した。次いで、ウェファーをホットプレート上120℃で60秒間、後露光ベークし、その後で市販の0.262Nテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液中で60秒間現像した。
25mJ/cm2の露光量で、正確に再現された垂直な0.35μm l/s構造物が得られた。
【0052】
応用実施例3(比較)
合成実施例3で製造したコポリマー98.8重量部、フェニルクミルジスルホン1.0重量部および4,4′−ジアミノジフェニルエーテル0.2重量部を1−メトキシ−2−プロピルアセテート354部中に溶解した(レジスト溶液2)。
この工程は応用実施例1と同様の条件下で実施した。
レジスト2では、36mJ/cm2の露光量で、望ましくないT形0.35μm構造が見られた。0.50μmの接触孔がレジスト表面上に張出しをもって再現された。
【0053】
本発明を特定の実施態様に関して記載してきたが、ここに開示した発明の概念から離脱することなく、多くの変更、改良および変法を成しうることは明白である。従って、特許請求の範囲の精神および広い範囲内に帰属するすべてのこのような変更、改良および変法を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性ヒドロキシル基の10〜90%が、式I
【化1】

〔式中、R1およびR2は、それぞれ互いに独立してC1〜C6アルキル、未置換または一つもしくはそれ以上のC1〜C4アルキル基によって置換されたC3〜C6シクロアルキルであるか、または−(CH2n−アリールであり、R3は、水素、C1〜C6アルキル、未置換または一つもしくはそれ以上のC1〜C4アルキル基によって置換されたC3〜C6シクロアルキルであるか、または−(CH2n−アリールであり、nは0、1、2または3であり、そしてアリールは、一つまたはそれ以上のC1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、ニトロまたはシアノ基またはハロゲン原子によって置換されたナフチルまたはフェニルである〕の保護基によって置換されているが、但し重量平均分子量対数平均分子量の比率MW/MNは1.03〜1.5の範囲であり、
活性線に露光すると酸を発生するスルホニウム塩からなる放射線感受性物質と共に用いられる、
化学増幅型ポジレジストのためのフェノール樹脂。
【請求項2】
式IIおよびIII:
【化2】

(R1、R2およびR3は請求項1に定義したとおりであり、そしてR4およびR5は互いに
それぞれ独立して水素、メチル、ハロゲンであり、そしてR6およびR7は互いにそれぞれ独立して水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシまたはハロゲンである)の構造反復単位を含む、請求項1記載のフェノール樹脂。
【請求項3】
式IIaおよびIIIa
【化3】

(式中、R1〜R7は請求項2に定義したとおりである)の構造反復単位を含む、請求項2記載のフェノール樹脂。
【請求項4】
4、R5、R6およびR7が水素である、式IIおよびIIIの構造反復単位を含む、請求項2記載のフェノール樹脂。
【請求項5】
1およびR2が、それぞれ互いに独立してメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルもしくはシクロヘキシルである、式IIおよびIIIの構造反復単位を含む、請求項2記載のフェノール樹脂。
【請求項6】
3が水素またはメチルである、式IIおよびIIIの構造反復単位を含む、請求項2記載のフェノール樹脂。
【請求項7】
フェノール性ヒドロキシル基の15〜70%が、式Iの保護基で置換されている、請求項1記載のフェノール樹脂。
【請求項8】
(A)および(B)の全量を基準にして、
(A) 請求項1のフェノール樹脂80.0〜99.9重量%
(B) 活性線に露光すると酸を発生するスルホニウム塩からなる放射線感受性物質0.1〜20.0重量%
を含む、放射線感受性組成物。
【請求項9】
成分(A)および(B)に加えて、成分(C)として有機溶媒を含む、請求項8記載の放射線感受性組成物。
【請求項10】
成分(C)が、アルキレングリコールアルキルエーテルエステルである、請求項9記載の放射線感受性組成物。
【請求項11】
(I) 請求項8の放射線感受性組成物で基板を被覆し、
(II) 被覆した基板を所定のパターンで活性線に露光し、
(III) ポジ型レジスト用の現像液で露光された基板を現像する
ことによってポジ像を製造する方法。
【請求項12】
印刷プレート、印刷回路または集積回路を製造するためのポジレジストとして、請求項8の放射線感受性組成物の使用。
【請求項13】
請求項8の放射線感受性組成物を用いて製造した印刷プレート、印刷回路、集積回路。

【公開番号】特開2006−22335(P2006−22335A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201116(P2005−201116)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【分割の表示】特願平8−6982の分割
【原出願日】平成8年1月19日(1996.1.19)
【出願人】(592188748)アーチ・スペシャルティ・ケミカルズ・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】OLIN MICROELECTRONIC CHEMICALS,INC.
【Fターム(参考)】