説明

酸ハロゲン化物の製造方法、及び酸ハロゲン化物

【課題】脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を、安全、安価で、且つ選択性高く製造できる方法を提供する。
【解決手段】一般式(III)で表される化合物を酸性化合物及び金属触媒からなる群から選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより一般式(II)で表される化合物を得る工程と、一般式(II)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させることにより一般式(I)で表される化合物を得る工程とを含む酸ハロゲン化物の製造方法。






(式中、Aは立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から原子を1つ除いた2価の連結基、Xはハロゲン原子、Lは脱離基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸ハロゲン化物の製造方法、及び酸ハロゲン化物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸ハロゲン化物は、医・農薬品や色素等の機能性化合物の合成中間体として活発に使用されている。特に、嵩高い基を有する酸ハロゲン化物は、機能性化合物の特定部分を嵩高くすることができる。そのことにより、例えば分子回転の抑制による色相のシャープ化、機能性化合物の脆弱な部分の保護による耐薬品性や耐候性の向上等といった機能性付与が期待できるため、嵩高い基を有する酸ハロゲン化物は有用である。さらに、脱離基を有し且つ嵩高い基を有する酸ハロゲン化物は、脱離基を置換することによりアルカリ可溶性基や重合性基といった機能性基を導入することができ、さらなる機能性付与が可能となるため、非常に有用である。
【0003】
嵩高い基を有する酸ハロゲン化物を製造する方法として、嵩高い基を有するエステル化合物をアルカリ条件下で加水分解し、得られたカルボン酸を塩化チオニルと反応させる方法がある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法を用いて脱離基を有する酸ハロゲン化物を製造する際、カルボン酸製造時に脱離基が脱離してしまい、目的物の収率が低下する問題があった。特に、嵩高い基を有するエステル化合物は、加水分解速度が速く、脱離反応が顕著に進行してしまうため、脱離基を有し且つ嵩高い基を有する酸ハロゲン化物を合成することは非常に困難であった。脱離基が脱離を抑制するためには、嵩高い基を有するカルボン酸の製造条件を温和にすることが考えられる。嵩高い基を有するカルボン酸の製造方法としては、酸アミドを亜硝酸ナトリウムと反応させる方法(非特許文献2参照。)、ケトンを硝酸で酸化する方法(非特許文献3参照。)、グリニヤール試薬と二酸化炭素とを反応させる方法(非特許文献3参照。)が報告されているが、これらの反応も脱離基が反応してしまい、目的物の収率が低下することと、反応が危険であり、大量スケールでの製造には不向きであるという問題があった。
【0004】
脱離基を有するカルボン酸の合成例として、トリメチルシリルヨージドを用いてエステルを加水分解する方法(例えば特許文献1参照。)が報告されているが、トリメチルシリルヨージドは高価であること、また嵩高い基を有するカルボン酸を製造する場合は反応が長時間必要とすることから製造コストが高くなる問題があった。
また、特許文献1には、塩素原子を脱離基とするカルボン酸クロリド等の合成が記載されているが、記載されたカルボン酸クロリドはいずれも置換基を有さないか、メチル基程度の小さい置換基であり、脱離基を有し且つ嵩高い基を有する酸ハロゲン化物の合成方法については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,204,278号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1984,106,1010.
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.1957,79,2530.
【非特許文献3】Journal of the Chemical Society,Perkin Transactions2:Physical Organic Chemistry,1974,1525.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の第一の目的は、脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を、安全、安価で、且つ選択性高く製造できる方法を提供することにある。本発明の第二の目的は、本発明の製造法で製造された脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を提供することにある。
本発明において「嵩高い基」とは、立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から水素原子を1つ除いた2価の連結基のことを言う。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、各種合成法を詳細に検討した結果、特定のエステル化合物を酸性化合物及び金属触媒からなる群から選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより特定構造のカルボン酸を得る工程と、特定構造のカルボン酸を酸ハロゲン化剤と反応させることにより酸ハロゲン化物を得る工程により、従来製造が困難であった脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を安全、安価で、且つ選択性高く製造できることを見出した。
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(III)で表される化合物を酸性化合物及び金属触媒からなる群から選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより、下記一般式(II)で表される化合物を得る工程と、下記一般式(II)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させることにより一般式(I)で表される化合物を得る工程とを含む酸ハロゲン化物の製造方法。
【0010】
【化1】

【0011】
一般式(I)中、Aは立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から原子を1つ除いた2価の連結基である。Xはハロゲン原子を表す。Lは脱離基を表す。
【0012】
【化2】

【0013】
一般式(II)中、A及びLは前記一般式(I)におけるA及びLとそれぞれ同義である。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(III)中、A及びLは前記一般式(I)におけるA及びLとそれぞれ同義である。Rは酸性化合物の作用により脱離する基、又は金属触媒の作用により水素化分解可能な基を表す。
【0016】
<2> 前記一般式(I)、(II)、及び(III)で表される化合物が、それぞれ下記一般式(IV)、(V)、及び(VI)で表される化合物である<1>に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【0017】
【化4】

【0018】
一般式(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群から選ばれた基を表す。Rはアルキレン基を表す。X及びLは前記一般式(I)におけるX及びLとそれぞれ同義である。
【0019】
【化5】

【0020】
一般式(V)中、R、R、R、及びLは前記一般式(IV)におけるR、R、R、及びLとそれぞれ同義である。
【0021】
【化6】

【0022】
一般式(VI)中、R、R、R、及びLは前記一般式(IV)におけるR、R、R、及びLとそれぞれ同義である。Rは一般式(III)におけるRと同義である。
【0023】
<3> さらに、下記一般式(VII)で表される化合物と下記一般式(VIII)で表される化合物とを反応させることにより、前記一般式(VI)で表される化合物を得る工程を含む<2>に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【0024】
【化7】

【0025】
一般式(VII)中、R、R、及びRは前記一般式(VI)におけるR、R、及びRとそれぞれ同義である。
【0026】
【化8】

【0027】
一般式(VIII)中、R、及びLは前記一般式(VI)におけるR、及びLとそれぞれ同義である。Lは脱離基を表す。
【0028】
<4> 前記一般式(VII)で表される化合物と前記一般式(VIII)で表される化合物とを反応させることにより、前記一般式(VI)で表される化合物を得る工程の反応温度が、−10℃〜20℃の範囲である<3>に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【0029】
<5> 前記一般式(III)、(VI)、又は(VII)におけるRが、三級アルキル基である<1>〜<4>のいずれか一項に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【0030】
<6> <1>に記載の製造方法により得られた下記一般式(I)で表される化合物。
【0031】
【化9】

【0032】
一般式(I)中、Aは立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から原子を1つ除いた2価の連結基である。Xはハロゲン原子を表す。Lは脱離基を表す。
【0033】
<7> <2>〜<5>のいずれか一項に記載の製造方法により得られた下記一般式(IV)で表される化合物。
【0034】
【化10】

【0035】
一般式(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群から選ばれた基を表す。Rはアルキレン基を表す。X及びLは前記一般式(I)におけるX及びLとそれぞれ同義である。
【0036】
本発明の特定の酸ハロゲン化物の製造方法によって、脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を高純度で得ることができるため、カラーフィルタ用、印刷用、及びインクジェット用色素や医薬、農薬のように、高純度が求められる機能性材料の合成中間体として特に有効である。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を、安全、安価で、且つ選択性高く製造できる方法を提供することができる。また、本発明の製造法で製造された脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の脱離基と嵩高い基とを有する酸ハロゲン化物の製造方法及び酸ハロゲン化物について詳細に説明する。以下の詳細な説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0039】
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、「ある官能基の炭素数」とは、置換基の炭素数除いた官能基の全炭素数を表す。
【0040】
本発明の特定構造の酸ハロゲン化物の製造方法は、下記一般式(III)で表される化合物を酸性化合物及び金属触媒からなる群から選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより下記一般式(II)で表される化合物を得る工程と、下記一般式(II)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させることにより下記一般式(I)で表される化合物を得る工程とを含む。
以下、一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)で表される化合物、及びその製造方法について詳細に説明する。
【0041】
<一般式(I)で表される化合物>
【0042】
【化11】

【0043】
一般式(I)中、Aは立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から原子を1つ除いた2価の連結基である。Xはハロゲン原子を表す。Lは脱離基を表す。
【0044】
本発明における立体パラメータは、置換基の立体的嵩高さを表すパラメータであり、文献(J.A.Macphee,et al,Tetrahedron,Vol.34,pp3553〜3562、藤田稔夫編 化学増刊107 構造活性相関とドラックデザイン、1986年2月20日発行(化学同人))に示されている−Es’値を用いている。本発明の一般式(I)中のAが有する−Es’値としては、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは3.5以上であり、特に好ましくは5.0以上である。
以下に、立体パラメータ(−Es’値)が1.5以上の1価の置換基の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、一般式(I)におけるAは、立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から水素原子またはハロゲン原子を1つ除いた2価の連結基である。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
はハロゲン原子を表すが、取り扱いやすさ及び用いる酸ハロゲン化剤のコストの観点から、特に塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子が最も好ましい。
は脱離基を表す。脱離基としては公知の脱離基が挙げられるが、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、スルホニルオキシ基(例えば、メシル基、トシル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等)が好ましく、塩素原子及び臭素原子がさらに好ましく、塩素原子が最も好ましい。
【0049】
<一般式(IV)で表される化合物>
前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化12】

【0051】
一般式(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群から選ばれた基を表す。Rはアルキレン基を表す。X及びLは前記一般式(I)におけるX及びLとそれぞれ同義である。
【0052】
及びRにおけるアルキル基は、直鎖でも、分岐を有するものでも、環状のものでもよく、例えば、炭素数1〜30の直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキル基及び炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基が挙げられる。
及びRが直鎖または分岐のアルキル基を表す場合、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基が挙げられるが、好ましくは炭素数2〜20の直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキル基であり、無置換のエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基がさらに好ましい。
【0053】
及びRが環状のアルキル基を表す場合、置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、シクロアルキル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素数が3〜30のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが含まれる。
【0054】
置換基を有するアルキル基の該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などが挙げられる。
【0055】
置換基を有するアルキル基の上記置換基を以下に、さらに詳細に説明する。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−オクチル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基で、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基が挙げられ、多シクロアルキル基でもよく、例えば、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基で、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基)やトリシクロアルキル基等の多環構造の基が挙げられる。好ましくは単環のシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であり、単環のシクロアルキル基が特に好ましい。)、
【0056】
アルケニル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルケニル基で、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基で、例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられ、多シクロアルケニル基、例えば、ビシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基で、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基)やトリシクロアルケニル基であり、単環のシクロアルケニル基が特に好ましい。)アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基)、
【0057】
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基で、例えばフェニル基、p−トリル基、ナフチル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基)、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくは非芳香族、単環もしくは縮環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有するヘテロ環基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、
【0058】
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、
【0059】
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基であり、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基で、例えばメトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基)、
【0060】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、炭素数1〜30のヘテロ環アミノ基であり、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基、N−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ基)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)基、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ)基、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、
【0061】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基で、例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基であり、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基)、メルカプト基、
【0062】
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基で、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基で、例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル基)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基)、スルホ基、
【0063】
アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基であり、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−t−ブチルフェノキシカルボニル基)、
【0064】
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、n−オクタデシルオキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基)、アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましい)、例えば、フェニルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基)、イミド基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のイミド基で、例えばN−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基で、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基)、
【0065】
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基で、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基で、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基)が挙げられる。
【0066】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記のいずれかの基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられ、具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0067】
及びRにおけるアルケニル基は、直鎖でも、分岐を有するものでも、環状のものでもよく、置換もしくは無置換のアルケニル基が挙げられる。
及びRが直鎖または分岐のアルケニル基を表す場合、置換基の炭素原子を除いた炭素数が2〜30のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の例には、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基などが含まれる。これらアルケニル基が有してもよい置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
及びRが環状のアルケニル基を表す場合、置換基の炭素原子を除いた炭素数が5〜20のシクロアルケニル基が好ましい。シクロアルケニル基の例には、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基などが含まれる。これらシクロアルケニル基が有してもよい置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
【0068】
及びRにおけるアルキニル基には、置換基を有するアルキニル基及び無置換のアルキニル基が含まれる。置換基の炭素原子を除いた炭素数が2〜30のアルキニル基が好ましい。アルキニル基の例には、エチニル基、プロパルギル基などが含まれる。これらアルキニル基が有してもよい置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
【0069】
及びRにおけるアリール基には、置換基を有するアリール基及び無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素数が6〜30のアリール基が好ましい。アリール基の例には、フェニル基、p−トリル基、ナフチル基などが含まれる。これらアリール基が有してもよい置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
【0070】
及びRにおけるヘテロ環基には、置換基を有するヘテロ環基及び無置換のヘテロ環基が含まれる。ヘテロ環基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素数が6〜30のヘテロ環基が好ましい。ヘテロ環基の例には、ピリジル基、イミダゾイル基、ピロイル基、ピラゾリル基、フラニル基、テトラヒドロフラニル基などが含まれる。これらヘテロ環基が有してもよい置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
及びRは、特にアルキル基が好ましい。
【0071】
一般式(IV)におけるRは、直鎖でも、分岐を有するものでも、環状のものでもよく、置換もしくは無置換のアルキレン基を表す。
における直鎖又は分岐のアルキレン基としては、炭素数が1〜30の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましく、炭素数が2〜20の直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましく、炭素数が2〜5の直鎖又は分岐のアルキレン基が最も好ましい。これらアルキレン基が有してもよい置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
【0072】
また、Rにおける環状のアルキレン基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素数が3〜30のシクロアルキレン基が好ましい。シクロアルキレン基の例には、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などが含まれる。これらシクロアルキレン基が有してもよい置換基の例は、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものがあげられる。
は、特に直鎖又は分岐のアルキレン基が好ましい。
【0073】
一般式(IV)におけるX及びLは、前記一般式(I)中のX及びLとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0074】
一般式(IV)においては、Rが炭素数2〜10のアルキル基であって、Rが炭素数2〜10のアルキル基であって、Rが炭素数2〜10のアルキレン基であって、Xが塩素原子、臭素原子であり、且つLが塩素原子、臭素原子であることが好ましい。また、Rが炭素数2〜5アルキル基であって、Rが炭素数2〜5アルキル基であって、Rが炭素数2〜5アルキレン基であって、Xが塩素原子であり、且つLが塩素原子であることが最も好ましい。
【0075】
下記に一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、例示化合物の表で「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「Pr」はプロピル基、「Bu」はブチル基、および「Ph」はフェニル基であることをそれぞれ示す。
【0076】
【化13】

【0077】
<一般式(II)で表される化合物>
【0078】
【化14】

【0079】
一般式(II)中、A及びLは一般式(I)におけるA及びLとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0080】
<一般式(V)で表される化合物>
前記一般式(II)で表される化合物は、下記一般式(V)で表される化合物であることが好ましい。
【0081】
【化15】

【0082】
一般式(V)中、R、R、R、及びLは前記一般式(IV)におけるR、R、R、及びLとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0083】
下記に一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
【化16】

【0085】
<一般式(III)で表される化合物>
【0086】
【化17】

【0087】
一般式(III)中、A及びLは、前記一般式(I)におけるA及びLとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。Rは酸性化合物の作用により脱離する基、又は金属触媒の作用により水素化分解可能な基を表す。
【0088】
Rにおける酸性化合物の作用により脱離する基として、公知の酸性化合物の作用により脱離する基を用いることができるが、例えば、三級アルキル基(例えば、tert−ブチル基、tert−アミル基、1−エチルシクロヘキシル基等)、アセタール基(例えば、メトキシメチル基、エトキシエチル基、テトラヒドロ−2−フラニル基、テトラヒドロ−2−ピラニル基等)、トリアルキルシリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等)等があげられる。酸性化合物の作用により脱離する基としては好ましくは、三級アルキルエステル基であり、特にtert−ブチル基が最も好ましい。
酸性化合物については後述する。
【0089】
また、Rにおける金属触媒の作用により水素化分解可能な基とは、金属触媒の存在下、水素又は水素供与体を添加し水素化分解可能な基を表す。水素化分解については、「接触水素化反応 有機合成への応用 第1版(東京化学同人)12.水素化分解」などに記述されており、これらの文献に記載の公知の水素化分解可能な基であれば特に制限なく使用できる。
水素化分解可能な基の具体例としては、ベンジル基、ビニル基などであるが、本発明における水素化分解可能な基としては、特にベンジル基が容易に水素化分解できるため好ましい。
また水素供与体の例としては、水素、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム等のギ酸等価体などが挙げられ、特に好ましいものは水素である。水素供与体の添加量は、一般式(III)の化合物に対し、5〜100モル当量が好ましく、5〜50モル当量が最も好ましい。
金属触媒については後述する。
【0090】
特に、酸性化合物の作用により脱離する基として、Rが三級アルキルエステル基であることが好ましい。
【0091】
<一般式(VI)で表される化合物>
前記一般式(III)で表される化合物は、下記一般式(VI)で表される化合物が好ましい。
【0092】
【化18】

【0093】
一般式(VI)中、R、R、R、及びLは、前記一般式(IV)におけるR、R、R、及びLとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。Rは前記一般式(III)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0094】
下記に前記一般式(III)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0095】
【化19】

【0096】
以下、本発明の製造方法について詳細に述べる。
【0097】
<一般式(III)で表される化合物を、酸性化合物及び金属触媒からなる群から選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより一般式(II)で表される化合物を得る工程>
本発明の製造方法は、前記一般式(III)で表される化合物を、酸性化合物及び金属触媒からなる群から選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより、前記一般式(II)で表される化合物を得る工程(以下、適宜「脱保護工程」という。)を含む。
【0098】
ここでいう酸性化合物とは、水温25℃でのpKaが1以下を示す化合物を表す。ここでいう「pKa」とは、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に記載されている定義のものである。
pKaが1以下を示す化合物としては、スルホン酸化合物(例えば、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)、カルボン酸化合物(例えば、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸等)、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素)が挙げられるが、特にスルホン酸及びカルボン酸化合物が好ましく、スルホン酸化合物が最も好ましい。本発明の副生成物(後述する一般式(VII)で表されるまた、酸性イオン交換樹脂(例えば、Amberlyst15、Amberlyst16等)も使用することができる。また、酸性化合物の作用による脱保護は、脱水素反応を伴う脱保護(下記の式(1))であっても、酸性化合物による加水分解(下記の式(2))のどちらの機構でもよい。
【0099】
【化20】

【0100】
後述するように、前記一般式(VI)で表される化合物は、一般式(VII)で表される化合物と一般式(VIII)で表される化合物とを反応させる工程を経て製造することが好ましいが、この場合、一般式(VII)で表される化合物のクライゼン縮合物が副生し、後工程でそのクライゼン縮合物由来の酸クロリドが混入する可能性がある。しかし、脱離工程でスルホン酸を用いると、そのクライゼン縮合物が分解し、実質反応に影響しない化合物に変換されるため、非常に好ましい。
【0101】
酸性化合物の使用量は、用いる酸性化合物の酸性度の強さによるため一義的に決めることができないが、一般式(III)で表される化合物1モルに対し、0.001〜10モルであることが好ましく、0.01〜5モルであることがさらに好ましく、0.05〜1モルであることが最も好ましい。
反応温度は、0〜150℃が好ましく、10〜100℃がさらに好ましい。反応時間は、0.5〜10時間であることが生産性の観点から好ましい。
反応の終点は、NMR、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により決定することができる。
【0102】
一般式(III)におけるRが水素化分解できる基である場合、金属触媒の存在下、一般式(II)で表される化合物に変換することができる。この場合、水素又は水素供与体を添加し、水素化分解させる。
金属触媒としては、水素化分解できる公知の金属触媒であれば、特に制限なく使用することができるが、反応性及び取り扱い易さの観点からパラジウム触媒、ロジウム触媒、ニッケル触媒が好ましく、特にパラジウム触媒が好ましく、特にパラジウム炭素が最も好ましい。
金属触媒の使用量は、一般式(III)で表される化合物に対し、0.01〜100質量%用いることが好ましく、0.1〜10質量%用いることがさらに好ましく、0.1〜5質量%が最も好ましい。水素を用いる場合、水素圧は1〜100気圧が好ましく、1〜10気圧が最も好ましい。
水素供与体を添加する場合、水素供与体としては、蟻酸誘導体(例えば、蟻酸、蟻酸ナトリウム、蟻酸アンモニウム等)が好ましい。水素供与体は、一般式(III)で表される化合物1モルに対し、1〜100モル用いることが好ましく、1〜10モル用いることがさらに好ましい。反応温度は、0〜100℃が好ましく、10〜50℃が最も好ましい。
反応の終点は、NMR、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等により決定することができる。
【0103】
本発明の脱保護工程は無溶媒で行うことが生産性の観点から好ましいが、溶媒存在下で行ってもよい。用いる溶媒としては、特に制限はないが、脂肪族炭化水素系溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族系溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン等)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル系溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等)、アミド系溶媒(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン等)、含硫黄系溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン等)等が挙げられるが、特に芳香族系溶媒、エステル系溶媒が好ましい。
【0104】
一般式(II)で表される化合物は、蒸留や再結晶等の操作で精製してもよいが、単離せずに、そのまま次工程に用いることが製造コストの観点から好ましい。
【0105】
<一般式(II)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させることにより一般式(I)で表される化合物を得る工程>
一般式(II)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させることにより一般式(I)で表される化合物を得る工程(以下、適宜「酸ハロゲン化工程」という。)に用いる酸ハロゲン化剤とは、カルボン酸を酸ハロゲン化物に変換できる公知の化合物を表し、第四版 実験化学講座 22 有機合成IV 酸・アミノ酸・ペプチド115頁〜127頁に記載の化合物が挙げられるが、塩化チオニル、オキサリルクロリド、塩化ホスホリルが好ましく、塩化チオニルが最も好ましい。
【0106】
酸ハロゲン化剤の使用量は、一般式(II)で表される化合物1モルに対し、1〜5モル用いることが好ましく、1〜2モル用いることがさらに好ましい。
反応温度は0〜100℃が好ましく、10〜70℃がさらに好ましく、20〜50℃が最も好ましい。
反応時間は、0.5〜10時間が好ましい。
【0107】
酸ハロゲン化剤を活性化するため、さらに添加剤を添加してもよい。添加剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジンが好ましい。添加剤の添加量は、一般式(II)で表される化合物1モルに対し、0.001〜1モル添加するのが好ましく、0.01〜0.5モル添加するのが最も好ましい。
【0108】
本発明の酸ハロゲン化工程は無溶媒で行うことが生産性の観点から好ましいが、溶媒存在下で行ってもよい。用いる溶媒としては、前記脱保護工程で記述した溶媒が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
【0109】
得られる一般式(I)で表される化合物は蒸留や再結晶等の精製を行うことが好ましいが、沸点が非常に高く蒸留できない場合や、固体化しない場合は、濃縮により未反応の酸ハロゲン化剤を除去して次工程に使用してもよい。
【0110】
前記一般式(VI)で表される化合物は、下記一般式(VII)で表される化合物と下記一般式(VIII)で表される化合物とを反応させる工程を経て製造することが好ましい。
以下、詳細に説明する。
【0111】
<一般式(VII)で表される化合物と一般式(VIII)で表される化合物とを反応させることにより前記一般式(VI)で表される化合物を得る工程>
【0112】
【化21】

【0113】
一般式(VII)中、R、R、及びRは、前記一般式(VI)におけるR、R、及びRとそれぞれ同義である。
【0114】
【化22】

【0115】
一般式(VIII)中、R、及びLは、前記一般式(VI)におけるR、及びLとそれぞれ同義である。Lは脱離基を表す。
【0116】
が表す脱離基としては、前記Lが表す脱離基と同様であるが、好ましくはLと脱離能が同等又は脱離能が高い脱離基であることが好ましい。
具体的には、Lが塩素原子である場合、Lは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、スルホニルオキシ基であることが好ましく、臭素原子及びヨウ素原子であることがさらに好ましく、臭素原子であることが最も好ましい。Lが臭素原子である場合、Lは臭素原子、ヨウ素原子、スルホニルオキシ基であることが好ましく、臭素原子及びヨウ素原子であることがさらに好ましく、ヨウ素原子であることが最も好ましい。Lがヨウ素原子である場合、Lはヨウ素原子であることが好ましい。Lがスルホネート基である場合、Lはスルホネート基であることが好ましい。
【0117】
前記LとLとの組み合わせのうち、特にLが塩素原子であり、Lが臭素原子である組み合わせが、選択性及び原料コストの観点から最も好ましい。
【0118】
一般式(VII)で表される化合物と一般式(VIII)で表される化合物とを反応させる場合、一般式(VII)で表される化合物を塩基化合物と反応させて下記一般式(VII-2)で表されるエノラートを中間体として発生させたのち、一般式(VIII)で表される化合物と反応させることが好ましい。
【0119】
【化23】

【0120】
一般式(VII-2)中、R、R、及びRは、前記一般式(VI)におけるR、R、及びRとそれぞれ同義である。
【0121】
前記一般式(VII-2)で表されるエノラートを発生させる塩基としては、公知の塩基を用いることができ、例えばリチウムジイソプロピルアミド、カリウムヘキサメチルジシラジド、金属水素化物(例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等)、金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、金属アルコキシド(例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド等)が挙げられるが、特にリチウムジイソプロピルアミド、カリウムヘキサメチルジシラジドが好ましく、リチウムジイソプロピルアミドが最も好ましい。これらの塩基は一種類使用してもよいし、二種類以上混合して使用してもよい。
【0122】
塩基の使用量としては、一般式(VII)で表される化合物1モルに対し、1〜3モル用いるのが好ましく、1〜2モル用いるのがさらに好ましく、1.1〜1.5モル用いるのが最も好ましい。
反応温度は、−70〜30℃が好ましく、−50〜20℃がさらに好ましく、−10〜20℃が最も好ましい。この温度範囲にあることによって冷却コストが抑制でき、製造コストを安価にできる。また、一般式(VII-2)で表されるエノラートが分解しにくく、収率を向上することができる。
反応時間は0.1〜5時間が好ましく、0.5〜3時間がさらに好ましく、0.5〜2時間が最も好ましい。
【0123】
一般式(VII)で表される化合物と反応させる一般式(VIII)で表される化合物は、一般式(VII)で表される化合物1モルに対し、1〜10モル用いるのが好ましく、1〜5モル用いるのがさらに好ましく、1〜2モル用いるのが最も好ましい。
反応温度は、生産性の観点から、−70〜30℃が好ましく、−50〜20℃がさらに好ましく、−10〜20℃が最も好ましい。この温度範囲とすることによって、反応性が高く、しかも反応選択性が高くなるので、目的物の収率が高く生産性が良好となる。
反応時間は0.1〜5時間が好ましく、0.5〜3時間がさらに好ましく、0.5〜2時間が最も好ましい。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0125】
〔実施例1〕
窒素気流下、ジイソプロピルアミン100g(1.0mol)に、テトラヒドロフラン500mLを添加し、−10℃に冷却した。次に、2.6mol/Lの濃度のブチルリチウム・ヘキサン溶液353mL(0.92mol)を1時間かけて滴下し、反応系中でリチウムジイソプロピルアミドを調製した。次に、−10〜10℃(エノール化の温度)の温度範囲で下記構造の(A1)146g(0.85mol)を1時間かけて滴下した。1時間攪拌後、3−クロロ−1−ブロモプロパン198.0g(1.3mol)を2時間かけて滴下し、反応温度を−10〜10℃(アルキル化の温度)の間に制御した。0℃で1時間攪拌後、水300mLを添加し、分液操作を行った。さらに、濃塩酸100mL/水200mLの水溶液で得られた油層を2回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で油層を1回洗浄した。得られた油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して下記の化合物(III-1)の粗体を得た。この粗体に、酸性化合物としてメタンスルホン酸4.1g(43mmol、(A1)に対し5mol%相当)加え、90℃で2時間加熱し、下記の化合物(II-1)に変換した。化合物(II-1)の粗体に、塩化チオニル154.7g(1.3mol)を添加し、50℃で2時間加熱した。これを減圧蒸留(沸点 90℃/1mmHg)することにより下記の化合物(I-1)を117.1g(0.68mol)得た。(A1)基準の収率はモル換算で80%であった。ガスクロマトグラフィー測定による純度は95%であった。
下記に合成のスキームを示す。
【0126】
なお、得られた化合物が(I−1)の構造であることは、H NMRを用いて同定した。
H NMR(300MHz、CDCl):δ0.87(6H,t)、1.65−1.84(8H,m)、3.55(2H,t)
【0127】
【化24】

【0128】
〔実施例2〜9〕
実施例1において、下記表4に記載の各反応温度に変更し、酸性化合物の種類と量、および酸ハロゲン化剤の種類(使用量は実施例1と同じモル量)を変更し、それ以外は実施例1と同様にして、実施例2〜9を行った。なお、実施例5のトリフルオロ酢酸を用いる脱保護工程は、室温で2時間行い、反応終了後、減圧で残存するトリフルオロ酢酸を除去した。
【0129】
【表4】

【0130】
〔実施例10〜12〕
実施例1において、原料(A1)に代えて、表4に記載の(A2)、(A3)、及び(A4)を同モル量用いた以外は実施例1と同様にして実施例10〜12を行い、それぞれ例示化合物の(I−29)、(I−30)、(I−7)を得た。
なお、化合物A3における置換基の−Es’値は1.5以上である。
得られた化合物が、例示化合物の(I−29)、(I−30)、(I−7)であることは、H NMRを用いて同定した。
例示化合物(I−29):H NMR(300MHz、CDCl):δ0.82(3H,t)、0.87(3H,t)、1.65−1.84(12H,m)、3.54(2H,t)
例示化合物(I−30):δ0.95(3H,t)、1.65−1.84(6H,m)、3.56(2H,t),5.21(1H,d)、5.35(1H,d)、5.92(1H,m)
例示化合物(I−7):H NMR(300MHz、CDCl):δ0.86(6H,t)、1.63−1.85(12H,m)、3.53(2H,t)
なお、(A2)〜(A4)の構造を下記に示す。
【0131】
【化25】

【0132】
〔実施例13〕
窒素気流下、ジイソプロピルアミン100g(1.0mol)、テトラヒドロフラン500mLを添加し、−10℃に冷却した。次に、2.6mol/Lの濃度のブチルリチウム・ヘキサン溶液353mL(0.92mol)を1時間かけて滴下し、反応系中でリチウムジイソプロピルアミドを調製した。次に、−10〜10℃(エノール化の温度)の温度範囲で下記構造の(A5)158g(0.85mol)を1時間かけて滴下した。1時間攪拌後、3−クロロ−1−ブロモプロパン198.0g(1.3mol)を2時間かけて滴下し、反応温度を−10〜10℃(アルキル化の温度)の間に制御した。0℃で1時間攪拌後、水300mLを添加し、分液操作を行った。さらに、濃塩酸100mL/水200mLの水溶液で得られた油層を2回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で油層を1回洗浄した。得られた油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して下記の化合物(II-1)の粗体を得た。この粗体に、塩化チオニル154.7g(1.3mol)添加し、50℃で2時間加熱した。これを減圧蒸留(沸点 90℃/1mmHg)することにより下記の化合物(I-1)を122.5g(0.58mol)得た。(A5)基準の収率はモル換算で68%であった。ガスクロマトグラフィー測定による純度は95%であった。
下記に合成のスキームを示す。
【0133】
【化26】

【0134】
〔実施例14〕
窒素気流下、ジイソプロピルアミン100g(1.0mol)、テトラヒドロフラン500mLを添加し、−10℃に冷却した。次に、2.6mol/Lの濃度のブチルリチウム・ヘキサン溶液353mL(0.92mol)を1時間かけて滴下し、反応系中でリチウムジイソプロピルアミドを調製した。次に、−10〜10℃(エノール化の温度)の温度範囲で下記構造の(A6)175g(0.85mol)を1時間かけて滴下した。1時間攪拌後、3−クロロ−1−ブロモプロパン198.0g(1.3mol)を2時間かけて滴下し、反応温度を−10〜10℃(アルキル化の温度)の間に制御した。0℃で1時間攪拌後、水300mLを添加し、分液操作を行った。さらに、濃塩酸100mL/水200mLの水溶液で得られた油層を2回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で油層を1回洗浄した。得られた油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して下記の化合物(III-21)の粗体を得た。この粗体に、トルエン200mL、金属触媒として5質量%のパラジウムを含むパラジウム炭素10gを加え、水素雰囲気下、25℃で4時間攪拌し、下記の化合物(II-1)に変換した。次に、セライトを用いてパラジウム炭素を除去した溶液に、塩化チオニル154.7g(1.3mol)添加し、50℃で2時間加熱した。これを減圧蒸留(沸点 90℃/1mmHg)することにより下記の化合物(I-1)を118.4g(0.56mol)得た。(A5)基準の収率は66%であった。ガスクロマトグラフィー測定による純度は92%であった。
下記に合成のスキームを示す。
【0135】
【化27】

【0136】
(比較例1)
窒素気流下、ジイソプロピルアミン100g(1.0mol)、テトラヒドロフラン500mLを添加し、−10℃に冷却した。次に、2.6mol/Lの濃度のブチルリチウム・ヘキサン溶液353mL(0.92mol)を1時間かけて滴下し、反応系中でリチウムジイソプロピルアミドを調製した。次に、−10〜10℃(エノール化の温度)の温度範囲で下記構造の(A7)123g(0.85mol)を1時間かけて滴下した。1時間攪拌後、3−クロロ−1−ブロモプロパン198.0g(1.3mol)を2時間かけて滴下し、反応温度を−10〜10℃(アルキル化の温度)の間に制御した。0℃で1時間攪拌後、水300mLを添加し、分液操作を行った。さらに、濃塩酸100mL/水200mLの水溶液で得られた油層を2回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で油層を1回洗浄した。得られた油層を硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮して下記の化合物(III-A)を得た。ここに、50質量%水酸化カリウム水溶液112g(1.0mol)、エタノール500gを加え、外温80℃で4時間加熱した。反応液を濃縮後、酢酸エチル500mL/1規定塩酸500mLで分液操作し、油層を濃縮後、塩化チオニル154.7g(1.3mol)添加し、50℃で2時間加熱した。これを減圧蒸留(沸点 90℃/1mmHg)することにより下記の化合物(I-1)を118.4g(0.56mol)得た。(A7)基準の収率は66%であった。ガスクロマトグラフィー測定による純度は72%であり、20%は脱HClした下記の化合物(I-1)’であった。
下記に合成のスキームを示す。
【0137】
【化28】

【0138】
(比較例2)
比較例1と同様の操作を行い、下記の化合物(III−A)を得た。ここに、トリメチルシリルヨージド20g(0.1mol)、水50g、エタノール500gを加え、外温80℃で加熱した。反応終了に144時間かかった。反応液を濃縮後、酢酸エチル500mL/1規定塩酸500mLで分液操作し、油層を濃縮後、塩化チオニル154.7g(1.3mol)添加し、50℃で2時間加熱した。これを減圧蒸留(沸点 90℃/1mmHg)することにより下記の化合物(I-1)を92.9g(0.44mol)得た。(A7)基準の収率は52%であった。ガスクロマトグラフィー測定による純度は92%であった。
下記に合成のスキームを示す。
【0139】
【化29】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(III)で表される化合物を、酸性化合物及び金属触媒からなる群より選択される1種以上の化合物の存在下で反応させることにより、下記一般式(II)で表される化合物を得る工程と、下記一般式(II)で表される化合物を酸ハロゲン化剤と反応させることにより一般式(I)で表される化合物を得る工程とを含む酸ハロゲン化物の製造方法。
【化1】


一般式(I)中、Aは立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から原子を1つ除いた2価の連結基である。Xはハロゲン原子を表す。Lは脱離基を表す。
【化2】


一般式(II)中、A及びLは前記一般式(I)におけるA及びLとそれぞれ同義である。
【化3】


一般式(III)中、A及びLは前記一般式(I)におけるA及びLとそれぞれ同義である。Rは酸性化合物の作用により脱離する基、又は金属触媒の作用により水素化分解可能な基を表す。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物であり、前記一般式(II)で表される化合物が、下記一般式(V)で表される化合物であり、且つ、前記一般式(III)で表される化合物が、下記一般式(VI)で表される化合物である請求項1に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【化4】


一般式(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群から選ばれた基を表す。Rはアルキレン基を表す。X及びLは前記一般式(I)におけるX及びLとそれぞれ同義である。
【化5】


一般式(V)中、R、R、R、及びLは前記一般式(IV)におけるR、R、R、及びLとそれぞれ同義である。
【化6】


一般式(VI)中、R、R、R、及びLは前記一般式(IV)におけるR、R、R、及びLとそれぞれ同義である。Rは一般式(III)におけるRと同義である。
【請求項3】
さらに、下記一般式(VII)で表される化合物と下記一般式(VIII)で表される化合物とを反応させることにより、前記一般式(VI)で表される化合物を得る工程を含む請求項2に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【化7】


一般式(VII)中、R、R、及びRは前記一般式(VI)におけるR、R、及びRとそれぞれ同義である。
【化8】


一般式(VIII)中、R、及びLは前記一般式(VI)におけるR、及びLとそれぞれ同義である。Lは脱離基を表す。
【請求項4】
前記一般式(VII)で表される化合物と前記一般式(VIII)で表される化合物とを反応させることにより、前記一般式(VI)で表される化合物を得る工程の反応温度が、−10℃〜20℃の範囲である請求項3に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(III)、(VI)、又は(VII)におけるRが、三級アルキル基である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の酸ハロゲン化物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の製造方法により得られた下記一般式(I)で表される化合物。
【化9】


一般式(I)中、Aは立体パラメータである−Es’値が1.5以上である1価の置換基から原子を1つ除いた2価の連結基である。Xはハロゲン原子を表す。Lは脱離基を表す。
【請求項7】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた下記一般式(IV)で表される化合物。
【化10】


一般式(IV)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群から選ばれた基を表す。Rはアルキレン基を表す。X及びLは前記一般式(I)におけるX及びLとそれぞれ同義である。

【公開番号】特開2012−51818(P2012−51818A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193856(P2010−193856)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】