説明

酸化アンチモン膜の原子層堆積

【課題】アンチモン反応物質および酸素ソースを使用して酸化アンチモン薄膜を原子層堆積によって堆積させるプロセスを提供する。
【解決手段】アンチモン反応物質は、ハロゲン化アンチモン、例えばSbCl、アンチモンアルキルアミン、およびアンチモンアルコキシド、例えばSb(OEt)を含んでもよい。酸素ソースは、例えばオゾンであってもよい。いくつかの実施形態では、この酸化アンチモン薄膜は、バッチ反応器の中で堆積される。この酸化アンチモン薄膜は、例えば、エッチング停止層または犠牲層としての役割を果たしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年10月12日出願の米国仮出願第61/546,500号、および2012年2月10日出願の米国仮出願第61/597,373号に基づく優先権を主張する。これらの開示は、参照によりその全体を本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本願は、原子層堆積によるSb膜の堆積に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
酸化アンチモン薄膜を、原子層堆積(ALD)によって堆積することができる。1つの態様では、酸化アンチモン薄膜は、アンチモンソースおよび酸素ソースの交互かつ逐次的なパルスから堆積される。
【0004】
いくつかの実施形態では、当該アンチモンソースは、ハロゲン化アンチモン、アンチモンアルコキシドまたはアンチモンアルキルアミン化合物を含む。酸素ソースは、例えば、オゾンであってもよい。いくつかの実施形態では、この酸素ソースは、プラズマを含む。いくつかの実施形態では、酸素ソースは水ではない。
【0005】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン薄膜が、アンチモンアルコキシドおよび酸素ソース(例えばオゾン)の交互かつ逐次的なパルスを含むALDサイクルを使用して堆積される。このアンチモンアルコキシドは、例えば、Sb(OEt)であってもよい。膜は、バッチ反応器またはシングルウェーハ反応器(single−wafer reactor)の中で堆積されてもよく、例えば、犠牲層としてまたはエッチング停止層(etch stop layer)として使用されてもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン薄膜が、アンチモンアルキルアミンおよび酸素ソース(例えばオゾン)の交互かつ逐次的なパルスを含むALDサイクルによって堆積される。この膜は、シングルウェーハ反応器またはバッチ反応器の中で堆積されてもよく、例えば、犠牲層としてまたはエッチング停止層として使用されてもよい。
【0007】
いくつかの実施形態では、水のパルスが、当該堆積プロセスに含まれてもよい。水が含まれるとき、当該酸素ソースは水ではない。
【0008】
別の態様では、酸化アンチモン薄膜が、アンチモン前駆体および水の交互かつ逐次的なパルスを含むALDプロセスによって堆積される。いくつかの実施形態では、このアンチモン前駆体は、ハロゲン化アンチモン、アンチモンアルキルアミンまたはアンチモンアルコキシドである。
【0009】
いくつかの実施形態では、当該ハロゲン化アンチモン反応物質はSbClであってもよい。いくつかの実施形態では、アンチモンアルコキシド反応物質はSb(OEt)であってもよい。いくつかの実施形態では、アンチモンアルキルアミン反応物質はSb(N(CH3であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、ALDによって堆積された酸化アンチモンの化学量論は、SbO(式中、xは約1〜約3である)であってもよい。いくつかの実施形態では、この酸化アンチモンの化学量論は、Sb、Sbまたはこれらの混合物であってもよい。いくつかの実施形態では、当該酸化アンチモンの化学量論はSbである。他の実施形態では、当該酸化アンチモンの化学量論はSbである。いくつかの実施形態では、当該酸化アンチモンの化学量論はSbおよびSbの混合物である。他の実施形態では、当該酸化アンチモンは異なる化学量論を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、当該ALDプロセスは熱的ALDプロセスである。いくつかの実施形態では、当該ALDプロセスはプラズマ支援(plasma enhanced)ALDプロセス(PEALD)である。
【0012】
いくつかの実施形態では、当該ALDプロセスは、バッチ反応器の中で実施される。いくつかの実施形態では、当該ALDプロセスは、シングルウェーハ反応器の中で実施される。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該酸化アンチモンは、異なる金属または金属酸化物などの別の物質でドーピングされてもよい。つまり、この異なる金属または金属酸化物の少なくとも1つの金属はアンチモンではない。例えば、当該酸化アンチモンは、酸化アルミニウム(Al)でドーピングされてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、ALDによって堆積された酸化アンチモン膜は、固体状態ドーピング用途において、例えばFinFetの形成において使用される。例えば、酸化アンチモンは、シリコン上に堆積されてもよく、温度は、ドーパント(Sb)を下に存在するシリコンの中へと送り込むために使用することができる。シャープなドーパント(Sb)プロファイルが得られる可能性がある。なぜなら、その拡散係数は、Pの拡散係数よりも低い大きさであるからである。
【0015】
いくつかの実施形態では、シリコン基板などの材料ドーピングする方法は、ALDによって直接上に酸化アンチモンを堆積することと、この材料を、下に存在する材料と接触させることと、アニールして、ドーパントを酸化アンチモン層から下に存在する材料へと送り込むこととを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、ALDによって堆積された酸化アンチモン薄膜は、PMOSにおけるp型キャップ層として使用されてもよい。例えば、酸化アンチモンの薄層を、ALDによってゲート誘電体上に堆積して、これにより閾値電圧をp型に向かってシフトさせることができる。いくつかの実施形態では、Si/SiO/HfO/SbO/TiN構造が形成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ALDによって堆積された酸化アンチモン薄膜は、ダブルパターニングまたはクアドラプルパターニング(quadruple patterning)のための犠牲層(例えばレジスト上に堆積される)として使用することができる。多重パターニングの方法は、ALDによって、基板上にあるパターン形成されたレジスト層にわたって、共形の(形状に一致した、conformal)酸化アンチモン層を堆積することと、この酸化アンチモン層をエッチングすることと、このレジストを除去することと、基板をエッチングすることとを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ALDによって堆積された酸化アンチモン薄膜は、エッチング停止層として使用される。
【0018】
いくつかの態様では、ALDによって堆積された酸化アンチモン薄膜は、半導体基板上に構造体を形成するために使用することができる。第1の物質を含む第1の層は、基板上に堆積される。酸化アンチモンの第2の層は、ALDによってその基板上に堆積される。当該ALDプロセスは、基板を、アンチモン前駆体および酸素前駆体と交互にかつ逐次的に接触させることを含んでもよい。この第1の層または第2の層は、その後でエッチングされる。いくつかの実施形態では、第1の物質を含む第1の層は、第2の酸化アンチモン層よりも選択的にエッチングされる。他の実施形態では、第2の酸化アンチモン層は第1の層よりも選択的にエッチングされる。この第1の層は、例えば、SiOまたはAlを含んでもよい。この第2の酸化アンチモン膜を堆積するためのALDプロセスは、いくつかの実施形態では、バッチ反応器の中で実施されてもよい。
【0019】
本発明は、実施形態のうちのいくつかについての詳細な説明から、および添付の図面から、よりよく理解されるであろう。これらは、本発明を説明することが意図されているが、本発明を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1Aおよび図1Bは、構造化されたフォトレジスト上に堆積されたSb層を示す。
【図2A】Sb(OEt)およびOから堆積されたSb膜の成長速度を、温度の関数として示す。
【図2B】分光エリプソメーターを使用して21点から測定された、Sb(OEt)およびOから堆積されたSb膜の膜不均一性を、温度の関数として示す。
【図2C】同様にSb(OEt)およびOから堆積されたSb膜の膜不均一性を、温度の関数として示す。
【図3】100℃で堆積された25nmのSb膜のAFMイメージを示す。
【図4A】SbClおよびOから堆積されたSb膜の成長速度を、温度の関数として示す。
【図4B】SbClおよびOから堆積されたSb膜の膜不均一性を、温度の関数として示す。測定は、分光エリプソメーターを使用して21点で行った。
【図5】SbOの成長速度を、Sb(N(CHパルス時間の関数として図示する。
【図6】Sb(N(CH+Oから100℃で堆積されたSbOの厚さプロファイル(nm)を示す。
【図7】Sb(OEt)およびOからのSbOの成長速度を、反応器に注入された推定O投入量の関数として図示する。
【図8】実施例6に記載される条件を使用して堆積されたSbO膜の厚さ不均一性地図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
酸化アンチモン膜(SbO)は、アンチモン前駆体および酸素ソース反応物質を使用する原子層堆積プロセスによって堆積することができる。いくつかの実施形態では、アンチモン前駆体は、ハロゲン化アンチモン、アンチモンアルコキシドおよび/またはアンチモンアルキルアミンであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、Sb膜は、Sb(OCおよびOを使用するALDによって堆積することができる。いくつかの実施形態では、Sb膜は、SbClおよびOを使用するALDによって堆積される。
【0022】
ALDによって堆積された酸化アンチモンは、様々な場面で、例えば、p型キャッピング層として、下に存在するシリコンをドーピングするためのドーパントソースとして固体状態ドーピング用途において、および複数のパターニング用途において、使用することができる。SiOと比べてエッチング特性に違いがあるので、この酸化アンチモンは犠牲層として使用することができる。
【0023】
当該酸化アンチモン膜の厚さおよび組成は、所望の特徴を持つ膜を生成するように制御することができる。酸化アンチモンは、本願明細書中では、総称的に、SbOと呼ばれる。しかしながら、正確な化学量論は変わる可能性がある。いくつかの実施形態では、xは約1〜約3、または約1.2〜約2.5であることができる。いくつかの実施形態では、当該酸化アンチモンの化学量論はSbである。他の実施形態では、当該酸化アンチモンの化学量論はSbである。いくつかの実施形態では、当該酸化アンチモンの化学量論はSbおよびSbの混合物である。いくつかの実施形態では、当該酸化アンチモンは異なる化学量論を有する。
【0024】
ALD型プロセスは、前駆体化学物質の制御された自己制御的な表面反応に基づく。基板をそれらの前駆体と交互にかつ逐次的に接触させることにより、気相反応は回避される。蒸気相反応物質は、例えば、反応物質パルス間に過剰の反応物質および/または反応物質副生成物を反応チャンバーから除去することにより、反応チャンバーの中で互いから分離される。
【0025】
本願明細書中に提示される方法は、基板表面上での酸化アンチモン膜の堆積を可能にする。ALD型プロセスの特性および共形の薄膜を堆積する能力のため、表面構造的に困難な応用も可能である。いくつかの実施形態によれば、原子層堆積(ALD)型プロセスは、集積回路ワークピースなどの基板上に酸化アンチモン膜を形成するために使用される。
【0026】
基板またはワークピースは、反応チャンバーの中に置かれ、交互に繰り返される表面反応にかけられる。特に、いくつかの実施形態では、薄膜は、自己制御的なALDサイクルの繰り返しによって形成される。好ましくは、各ALDサイクルは、少なくとも2つの別個の相(フェーズ)を含む。第1の相では、1つの反応物質が基板表面上にわずかに約1単層を形成するであろう。この反応物質としては、アンチモンが挙げられる。本願明細書中で「アンチモン反応物質」または「アンチモン前駆体」とも呼ばれるこの反応物質は、例えば、ハロゲン化アンチモン、アンチモンアルコキシドまたはアンチモンアルキルアミドであってもよい。酸素を含む第2の反応物質(「酸素ソース」)が与えられ、吸着されたアンチモン前駆体と反応して、酸化アンチモンを形成する。この酸素ソースは、いくつかの実施形態では、プラズマを含んでもよい。例示的な酸素ソースとしては、水、オゾンおよび酸素プラズマが挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、酸化アンチモンの成長を増進するために第3の反応物質が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、この第3の反応物質は水であってもよい。第1の相および第2の相ならびに第1の反応物質、第2の反応物質および第3の反応物質と呼ばれるが、ALDサイクルは、これらの反応物質のうちのいずれの1つで始まってもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、堆積が所望される基板、好ましくは半導体ワークピース、が反応器へと投入される。この反応器は、集積回路の形成における様々な異なるプロセスが実施されるクラスターツールの一部であってもよい。いくつかの実施形態では、フロー型反応器が利用される。いくつかの実施形態では、高容積の製造が可能なシングルウェーハALD反応器が使用される。
【0028】
他の実施形態では、複数の基板を含むバッチ反応器が使用される。バッチALD反応器におけるいくつかの実施形態については、基板の数は、好ましくは10〜200の範囲、より好ましくは50〜150の範囲、最も好ましくは100〜130の範囲にある。いくつかの実施形態では、バッチ反応器は、50よりも多いウェーハ、100よりも多いウェーハ、または150よりも多いウェーハとともに使用される。いくつかの実施形態では、加工の間にボート(boat)が回転する縦型バッチ反応器、例えばエーエスエム・ヨーロッパ(ASM Europe B.V.)(オランダ、アルメール(Almere))製のA412(商標)反応器、が利用される。従って、いくつかの実施形態では、ウェーハは、加工の間に回転する。
【0029】
ALDプロセスを増強するように特に設計されている例示的なシングルウェーハ反応器は、商標Pulsar(登録商標) 2000およびPulsar(登録商標) 3000のもとでエーエスエム・アメリカ(ASM America,Inc.)(アリゾナ州、フェニックス)から市販されている。ALDプロセスを増強するように特に設計されている例示的なバッチALD反応器は、商標A4ALD(商標)およびA412(商標)のもとでエーエスエム・ヨーロッパ(ASM Europe B.V.)(オランダ、アルメール(Almere))から市販されている。いくつかの実施形態では、エーエスエム・マイクロケミストリー(ASM Microchemistry Oy)(エスポー(Espoo))によって供給されるF−450(商標) ALD反応器が使用される。使用することができるかまたは使用されるように改変することができる他の反応器は、当業者には明らかであろう。
【0030】
いくつかの実施形態では、基板は300mmウェーハである。他の実施形態では、基板は450mmウェーハである。これらの大きいウェーハは、シングルウェーハ反応器の中またはバッチ反応器の中で使用されてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、ALDによって堆積された酸化アンチモン膜についての最大のウェーハ内厚さ不均一性は、約15%未満(1σ)、約10%未満、約5%未満、または約3%未満である。バッチ反応器が使用されるいくつかの実施形態では、ウェーハ間均一性は3%未満(1σ)、2%未満、1%未満、さらには0.5%未満である。
【0032】
上で簡潔に触れたように、本願明細書に開示されるALDプロセスは、三次元構造体の上での共形の堆積をも可能にする。いくつかの実施形態では、三次元構造体上の堆積されたSbO膜の段差被覆(ステップカバレッジ)は、50%超、80%超、90%超またはさらには95%超である。
【0033】
いくつかの実施形態では、必要に応じて、ワークピースの露出した表面は、ALDプロセスの第1の相と反応するように終結することができる。いくつかの実施形態では、別々の終結工程は必要とはされない。
【0034】
このあとより詳細に論じられるように、いくつかの実施形態では、1以上のSbO堆積サイクルがアンチモン前駆体の提供で始まり、そのあと、酸素ソースが続く。他の実施形態では、堆積は、酸素ソースの提供で始まり、そのあと、アンチモン前駆体が続いてもよい。反応チャンバーは、典型的には、反応パルスと反応パルスとの間にパージされる。所望の厚さの膜が得られるまで、このサイクルは繰り返される。いくつかの実施形態では、ALDプロセス内の1以上のサイクルが、所望の組成を持つ膜を得るために変更される。
【0035】
いくつかの実施形態では、アンチモン前駆体がまず与えられる。初期の表面終結の後、必要または所望に応じて、第1のアンチモン前駆体パルスがワークピースに供給される。いくつかの実施形態によれば、この第1の反応物質パルスは、キャリアガスフロー、および注目するワークピース表面と反応性である揮発性のアンチモン種(SbClまたはSb(OEt)など)を含む。従って、このアンチモン反応物質は、ワークピース表面上に吸着する。この第1の反応物質パルスはワークピース表面を自己飽和し、そのため、第1の反応物質パルスの過剰の構成成分のいずれも、このプロセスによって形成される分子層とさらに反応しない。
【0036】
この第1のアンチモン反応物質パルスは、好ましくは、ガス状形態で供給される。このアンチモン反応物質ガスが、当該プロセス条件下で、露出した表面を飽和するのに十分な濃度でその種をワークピースへと輸送するために十分な蒸気圧を呈する場合に、その種は本記載の目的のための「揮発性」と考えられる。
【0037】
このアンチモン反応物質は、所望の程度まで基板表面を飽和するのに十分な時間、パルス供与される。
【0038】
分子層が基板表面上に吸着するのに十分な時間の後、次いで、過剰の第1の反応物質は反応空間から除去される(パージされる)。いくつかの実施形態では、第1の反応物質の流れは止められ、同時に、過剰の反応物質および(存在する場合)反応物質副生成物を反応空間から拡散またはパージするのに十分な時間、キャリアガスまたはパージガスが流し続けられる。アンチモン反応物質の提供および除去は、ALDサイクルのアンチモン相と呼ぶことができる。
【0039】
酸素ソース(第2の反応物質)は、基板表面と接触して、吸着されたアンチモン前駆体と反応して、酸化アンチモン層を形成するように反応空間の中へとパルス供与される。この酸素ソースは、例えば、オゾン、水または酸素ラジカルを含んでもよい。酸素ソース濃度およびパルス供与時間も、特定の状況に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、酸素ソース濃度は約10〜約400g/m(NTP)、または約60〜約300g/mであってもよい。チャンバーへの酸素ソースの流量は、例えば、約100〜約1000cm/分(NTP)、または約200〜800cm/分であってもよい。
【0040】
完全に飽和し分子層を酸素パルスと反応させるのに十分な時間の後、あらゆる過剰の第2の、酸素反応物質は反応空間から除去される。第1の反応物質の除去の場合のように、この工程は、過剰の反応性化学種および揮発性の反応副生成物が反応空間からパージされるのに十分な時間、パージガスを流すことを含んでもよい。合わせて、酸素反応物質の提供および除去は、プロセスの中の第2の相を表し、酸素相と考えることもできる。
【0041】
これらのアンチモン相および酸化相は一緒に、1つのALDサイクルを表し、これが繰り返されて、所望の厚さの酸化アンチモン薄膜が形成される。
【0042】
後で論じるように、いくつかの実施形態では、水(または別の反応物質)が基板にパルス供与される第3の相が含まれてもよい。水の蒸気相パルスが反応空間に与えられ、反応し、次いで、例えば、不活性ガスとともにパージすることにより反応空間から除去される。いくつかの実施形態では、この水相は、アンチモン相の後でかつ酸化相の前に与えられる。他の実施形態では、水相は、酸化相の後でかつ次のアンチモン相の後に与えられる。水が使用されるとき、酸化相は、水以外の酸素ソースを利用する。
【0043】
このアンチモン反応物質および酸素ソースについての正確なパルス供与時間は、特定の状況に基づいて決定することができる。いくつかの実施形態では、アンチモン反応物質および/または酸素ソースについてのパルス時間は、約0.05〜180秒、0.1〜50秒、1〜10秒または約2秒である。反応器のタイプ、基板のタイプおよびその表面積に応じて、アンチモン反応物質および酸素前駆体についてのパルス供与時間は、180秒よりもさらに長くてもよい。いくつかの実施形態では、パルス供与時間は、数分間の程度であってもよい。最適のパルス供与時間は、特定の状況に基づいて当業者が容易に決定することができる。
【0044】
典型的なパージ時間は、約0.05〜20秒、例えば約1〜10、またはさらには約1〜2秒である。しかしながら、必要に応じて、例えば、極めて高いアスペクト比の構造体または複雑な表面形態を持つ他の構造体にわたって層を堆積することが必要とされるときなどには、他のパージ時間を利用することができる。
【0045】
バッチ反応器を使用するいくつかの実施形態では、アンチモン反応物質のパルス時間は、約1〜約60秒であり、このアンチモン反応物質は約5〜約600秒間パージされ、酸素ソースは約1〜約60秒間パルス供与され、この酸素ソースは、約5〜約600秒間パージすることにより除去される。
【0046】
本願明細書中でALDサイクルは、たいてい、アンチモン相で始まると言及されるが、他の実施形態では、このサイクルは酸素相で始まってもよいということが企図される。当業者は、第1の反応物質相は、一般に、以前のサイクルの中の最後の相によって残された終結物(存在する場合)と反応するということを認識するであろう。従って、酸素相が第1のALDサイクルの中の第1の相である場合には、反応物質が基板表面上に事前に吸着されていないか、または反応空間の中に存在しない可能性がある一方で、その後のサイクルでは、酸素相はアンチモン相に効果的に続くであろう。
【0047】
いくつかの実施形態では、アンチモン相は、ハロゲン化アンチモン、例えばSbCl、アンチモンアルキルアミンまたはアンチモンアルコキシド、例えばSb(OEt)のパルスを提供することを含む。過剰のアンチモン前駆体は除去され、その前駆体は、酸素ソース(例えばオゾンまたは水)のパルスと接触され、酸化アンチモンの層を形成する。
【0048】
上で触れたように、各ALDサイクルの各パルスまたは相は、典型的には、自己制御的である。過剰の反応物質が各相において供給され、反応を受ける構造表面を飽和する。表面飽和によって、すべての利用可能な反応性部位の反応物質による占拠(例えば、物理的大きさまたは「立体障害」の制約を受ける)が確実になり、従って優れた段差被覆が確実になる。しかしながら、いくつかの実施形態では、相のうちの1以上は自己制御的でないように、反応条件が操作されてもよい。
【0049】
1つの実施形態によれば、酸化アンチモン薄膜は、複数の酸化アンチモン堆積サイクルを含むALD型プロセスによって基板上に形成され、各堆積サイクルは、
アンチモン化合物が基板に吸着するように、基板を、気化したアンチモン化合物と接触させることと、
過剰のアンチモン化合物および反応副生成物(存在する場合)を除去することと、
この基板を酸素ソースと接触させ、これにより、吸着された アンチモン化合物を酸化アンチモンへと転化することと、
過剰の未反応の酸素ソースおよび反応副生成物を除去することと
を含む。
【0050】
接触させる工程および除去する工程は、所望の厚さおよび組成の薄膜が得られるまで、繰り返される。
【0051】
上で論じたように、堆積プロセスは、典型的には、複数のALD堆積サイクルを含む。いくつかの実施形態では、酸化アンチモンは、例えば、金属または金属酸化物、例えば酸化アルミニウムでドーピングされてもよい。従って、いくつかの実施形態では、酸化アンチモン堆積サイクルは、金属または金属酸化物堆積サイクルとの所望の比で提供されてもよい。金属または金属酸化物堆積サイクルに対する酸化アンチモン堆積サイクルの比は、ALDプロセスによって堆積された最終の酸化アンチモン膜の中のドーパント濃度を制御するように選択されてもよい。例えば、低ドーパント密度のためには、金属または他の金属酸化物堆積サイクルに対する酸化アンチモンサイクルの比は、10:1の程度であってもよい。より高濃度のドーパントのためには、比は約1:1以上までの範囲であってもよい。
【0052】
加えて、ドーパントの密度は、堆積プロセスの間のドーパント堆積サイクルに対する酸化アンチモンサイクルの比を変えることにより、膜の厚さにわたって変化させることができる。
【0053】
堆積温度は、反応物質の熱分解温度未満、しかし、反応物質の凝縮を回避し所望の表面反応のための活性化エネルギーを与えるのに十分高いレベルに維持される。当然、任意の与えられたALD反応についての適切な温度枠は、関与する表面終結物および反応物質種に依存するであろう。本発明では、温度は、好ましくは、約500℃以下である。いくつかの実施形態では、堆積温度は約50〜約400℃である。SbClについては、堆積温度は、好ましくは、約35℃以上、例えば約35℃〜約500℃である。Sb(OEt)については、堆積温度は、好ましくは、約室温以上、例えば約室温〜約500℃である。
【0054】
バッチ反応器が使用されるいくつかの実施形態では、堆積温度は、約20℃〜約500℃、約100℃〜約400℃、約120℃〜約300℃または約150℃〜約250℃である。
【0055】
当該堆積プロセスは、広い範囲の圧力条件で実施することができるが、当該プロセスを減圧で運転することが好ましい。反応チャンバーの中の圧力は、典型的には、約0.01〜約500mbarまたはこれより上である。しかしながら、ある場合には、圧力は、当業者が容易に決定できるとおり、この範囲よりも高いかまたは低いであろう。いくつかの実施形態では、シングルウェーハ反応器の中の圧力は、約0.01mbar〜50mbar、または約0.1mbar〜10mbarに維持される。いくつかの実施形態では、バッチALD反応器の中の圧力は、約1mTorr〜500mTorr(約0.1Pa〜約65Pa)、または約30mTorr〜200mTorr(約4Pa〜約27Pa)に維持される。
【0056】
アンチモンソースの温度は、好ましくは、堆積温度または基板温度未満に設定される。これは、ソース化学物質の蒸気の分圧が基板温度における凝縮限界を超えると、薄膜の制御された一層ずつの成長が損なわれるという事実に基づく。例えば、SbClについては、いくつかの実施形態では、ソース温度は約35℃であり、一方、Sb(OEt)については、いくつかの実施形態では、ソース温度はほぼ室温である。
【0057】
いくつかの実施形態では、堆積された酸化アンチモン薄膜は、約80%超、約90%超、約95%超の段差被覆または約100%の段差被覆を有する。
【0058】
一般に、ソース物質(例えば、アンチモンソース物質)は、十分な蒸気圧、基板温度における十分な熱安定性、およびALDによって堆積を行うための化合物の十分な反応性を提供するように選択されることが好ましい。「十分な蒸気圧」は、典型的には、気相にある十分なソース化学物質分子を基板表面に供給して、表面での自己飽和反応を所望の速度で可能にする。「十分な熱安定性」は、典型的には、ソース化学物質自体が、成長を妨げる凝縮性の相を表面上に形成しないか、または熱分解を通して有害なレベルの不純物を基板表面を残さないということを意味する。換言すれば、温度は、選択された反応物質の蒸気の凝縮限界よりも上で熱分解限界よりも下に保たれる。1つの目的は、基板上での分子の未制御の凝縮を回避することである。「十分な反応性」は、典型的には、商業的に許容できるスループット時間を可能にするのに十分短いパルスの中での自己飽和を生じる。さらなる選択基準としては、高純度での化学物質の入手可能性および化学物質の取り扱いの容易さが挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、当該アンチモン反応物質はハロゲン化アンチモンを含む。例えば、このハロゲン化アンチモンはSbClであってもよい。他の実施形態では、ハロゲン化アンチモンはSbBr、SbFまたはSbIであってもよい。いくつかの実施形態では、ハロゲン化アンチモンは、少なくとも1つのハライドリガンドを含む。いくつかの実施形態では、ハロゲン化アンチモンはSbX3−z(式中、zは1〜3であり、Aは、アルキルアミンを含むリガンド、Xとは異なるハライド、またはアミン、シリル、アルコキシドまたはアルキル基である)である。
【0060】
いくつかの実施形態では、このアンチモン反応物質は、アンチモンアルコキシドを含む。例えば、アンチモン反応物質は、Sb(OEt)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、このアンチモン反応物質は、Sb(OR)(式中、Rは直鎖状、分枝状、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、C1−C12のアルキルまたはアルケニル基である)を含んでもよい。このアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、アミン、シリルなどの置換基で置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、当該アンチモン反応物質は、Sb(OR)3−x(式中、xは1〜3であり、Rは直鎖状もしくは分枝状の、環状もしくは直鎖状の、飽和もしくは不飽和の、C1−C12のアルキルまたはアルケニル基である)を含んでもよい。このアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、アミン、シリルのような置換基で置換されていてもよい。Aは、アルキルアミン、ハライド、アミン、シリルまたはアルキルを含むリガンドである。
【0061】
酸化アンチモンは、上記のとおり、ハロゲン化アンチモンまたはアンチモンアルコキシドをアンチモンソースとして使用して堆積することができるのに対して、いくつかの実施形態では、アンチモンアルキルアミンおよびアンチモンアルキルなどの他のタイプのアンチモンソースを使用することができる。例えば、犠牲層としての役割を果たすための酸化アンチモン膜の堆積などの特定の応用例では、代替のアンチモンソースを使用することができる。この犠牲層は、例えば、ダブルパターニングまたはクアドラプルパターニングにおいて使用されてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、アンチモンアルキルアミンが使用される。このアンチモン反応物質は、例えば、Sb(NR3−x(式中、xは1〜3であり、Rは直鎖状、分枝状もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、C1−C12のアルキルまたはアルケニル基であることができる)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、このアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、アミン、シリルなどの置換基で置換されていてもよい。Aは、アルキルアミン、ハライド、アミン、シリルまたはアルキルを含むリガンドであることができる。この種の前駆体の具体例は、トリス(ジメチルアミン)アンチモン、Sb(NMeである。他の非限定的な例は、C2−C3類似体:Sb(NEt、Sb(NPrおよびSb(NPrである。Sb(NRの中のRは、直鎖状もしくは分枝状の、環状もしくは直鎖状の、飽和もしくは不飽和の、C1−C12のアルキルまたはアルケニル基であることができる。このアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、アミン、シリルなどの置換基で置換されていてもよい。
【0063】
使用することができる別のタイプのアンチモン化合物は、式SbR3−x(式中、xは1〜3であり、Rは、直鎖状、分枝状、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、C1−C12のアルキルまたはアルケニル基であることができる)を有するアンチモンアルキルである。いくつかの実施形態では、このアルキルまたはアルケニルは、ハロゲン、アミン、シリルなどのような置換基で置換されていてもよい。Aは、アルキルアミン、ハライド、アミン、シリルまたはアルキルを含むリガンドである。
【0064】
上記のアンチモン化合物のうちのいくつかにおいては、アンチモンの酸化状態は+IIIであるが、+Vのような異なるアンチモンの酸化状態を有する、アルコキシド、ハライド、アルキルおよびアルキルアミンまたはそれらの混合物もしくは誘導体などの類似のアンチモン化合物を使用することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、当該酸素ソース物質は、水、酸素、過酸化水素、過酸化水素の水溶液、オゾン、原子状酸素、窒素酸化物、過酸(−−O−−O−−H)、アルコール、酸素含有ラジカルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。離れた場所でまたはその場で発生された酸素プラズマなどの他の酸素ソースも、用いることができる。
【0066】
この酸素ソースは、酸素含有ガスパルスであってもよく、酸素および不活性ガス(窒素またはアルゴンなど)の混合物であることができる。いくつかの実施形態では、この酸素ソースは、分子状酸素含有ガスパルスであってもよい。いくつかの実施形態では、酸素−ソースガスの酸素含有量は約10〜25%である。従って、酸素の1つのソースは空気であってもよい。いくつかの実施形態では、酸素ソースは分子状酸素である。いくつかの実施形態では、酸素ソースは、活性化されたまたは励起された酸素種を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、当該酸素ソースはオゾンを含む。この酸素ソースは、純粋なオゾンまたはオゾン、分子状酸素、および別のガス、例えば不活性ガス(窒素またはアルゴンなど)の混合物であってもよい。オゾンは、オゾン発生装置によって生成することができ、そのオゾンは、最も好ましくは、何らかの種類の不活性ガス、例えば窒素を用いて、または酸素を用いて反応空間の中へと導入される。いくつかの実施形態では、オゾンは、約5体積%〜約40体積%、好ましくは約15体積%〜約25体積%の濃度で与えられる。他の実施形態では、オゾンは、例えば、酸素含有ガスをアークに通して導くことにより、反応器内部で形成される。
【0068】
他の実施形態では、酸素含有プラズマは、反応器の中で形成される。いくつかの実施形態では、このプラズマは、基板の上で、または基板のごく近傍で、その場で形成されてもよい。他の実施形態では、プラズマは、離れた場所のプラズマ発生装置の中で、反応チャンバーの上流で形成され、プラズマ生成物は、反応チャンバーへと導かれ、基板と接触される。当業者ならわかるとおり、離れた場所のプラズマの場合には、基板への経路は、基板に到達する前に、電気的に中性の種を最大にし、イオンの生存を最小にするように最適化することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、水は酸素ソースとして使用されない。いくつかの実施形態では、水は酸素ソースとして使用される。他の実施形態では、水は、1以上のさらなる酸素ソースと組み合わせて使用される。この水は、このさらなる酸素ソースと一緒に、または別々に与えられてもよい。いくつかの実施形態では、水パルスは、第2の酸素ソース(例えばオゾン)のパルスの前に与えられる。他の実施形態では、水パルスは、第2の酸素ソース(例えばオゾン)のパルスの後に与えられる。反応チャンバーは、各パルスの間にパージされてもよい。
【0070】
上で触れたように、いくつかの実施形態では、この酸化アンチモン膜は、例えば半導体をドーピングするための、下に存在する層のためのドーパントソースとして使用することができる。例えば、酸化アンチモンを、本願明細書に開示されるALDプロセスによって、別の層、例えばケイ素層、の上にわたって堆積することができ、下に存在するケイ素層へとドーパント(Sb)を送り込むために、アニーリングを実施することができる。ドーピングされる対象の半導体層は、例えば、finFETデバイスのフィン(fin)であってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン層がシリコン基板の上にわたって堆積され、シリコン基板の中へとドーパント(Sb)を送り込むためにアニールされる。
【0072】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン層を、c−Si系太陽電池用の表面パッシベーション膜として使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン層は、PMOSにおけるp型キャッピング層としての役割を果たすことができる。例えば、薄い酸化アンチモン層を、ゲート誘電体の上に堆積することができる。従って、この酸化アンチモン層は、閾値電圧をp型に向かってシフトさせる役割を果たす可能性がある。いくつかの実施形態では、Si/SiO/HfO/SbO/TiNを含む多層構造が堆積され、この場合、少なくともSbO層は、本願明細書に記載されるALDによって堆積される。
【0074】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン薄膜は、複数のパターニング用途(例えば二重露光(double exposure)、二重現像(double development)、スペーサ規定ダブルパターニング(spacer defined double patterning)、三重露光(triple exposure)および四重露光(quadruple exposure)など)において使用することができる。この酸化アンチモン薄膜は、例えば、犠牲層またはエッチング停止層としての役割を果たしてもよい。
【0075】
一部は、極紫外リソグラフィー(EUV)の導入の遅れのために、ダブルパターニングが、限界寸法(CD)を低下させるために使用される。使用される1つのアプローチは、スペーサ規定ダブルパターニング(SDDP)と呼ばれる。手短に言えば、均一な共形の層が、例えば、非晶質炭素であることができるパターン形成されたコア(マンドレルまたは鋳型とも呼ばれる)上に堆積される。乾式エッチングの後、下側の層(複数可)にパターンを形成するための鋳型/マスクとして作用するスペーサが作成される。このスペーサ材料の層の厚さがCDおよびCD均一性を決定する。良好なウェーハ内均一性が所望される(CD値の10%の3 SIGMA(σ)がよい基準である)。いくつかの実施形態では、酸化アンチモン層は、SDDPプロセスの一部として、本願明細書に記載されるALDによって堆積される。この酸化アンチモン層は、例えば、スペーサを形成するために使用される共形の層としての役割を果たしてもよい。
【0076】
ダイレクトSDDPでは、スペーサは、レジスト上に直接堆積された共形の層である。従って、低温プロセス(150℃未満など)が使用される。実際の最大温度は、レジストのタイプに応じて変わるであろう。ダイレクトSDDPの利点は、従来のSDDPと比べた、プロセス工程の数の減少である。課題は、レジストに適合する堆積プロセスを見つけることである。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるプロセスは、150℃未満の温度、または与えられたレジストについての最大温度未満の温度で運転され、従ってこのダイレクトSDDPに関して使用することができる。いくつかの実施形態では、SDDPプロセス、または半導体基板上に構造体を形成するための他のプロセスは、本願明細書に記載されるALDにより共形の酸化アンチモン膜を堆積することと、その後その酸化アンチモン膜をエッチングすることとを含む。いくつかの実施形態では、酸化アンチモン膜よりも基板上の異なる膜がエッチングされる。
【0077】
加えて、スペーサが鋳型および下に存在する誘電体よりも高いエッチング選択性、および良好な機械的特性(パターンの崩壊を回避する)を有する場合、低アスペクト比のレジストを使用することができ、従ってリソグラフィーおよび集積を容易にすることができる。現在、SiOおよびSiNがスペーサ層を形成するために使用されるが、これらは、鋳型および/または下に存在する誘電体に対する困難なエッチング選択性を有し、従って高アスペクト比のレジストを必要とする。いくつかの実施形態では、開示された方法によって堆積されたSbO膜、例えばSb膜、は、より望ましいエッチング選択性を有し、スペーサ層を形成するために使用される。例えば、実験により、1% HF、25% HSO、濃HNO、および2M NaOHはSbOをエッチングしないが、他方で、SbOは、濃HClによって素早く除去することができるということが示された(下記の実施例を参照)。従来のSDDPアプローチと比べて、これは、鋳型および下に存在する材料に対するより高い選択性を可能にする。
【0078】
本願明細書に開示されるSbO堆積プロセスは、いくつかの実施形態では、比較的低温、例えば150℃未満または100℃未満で実施することができ、かつ均一な特性を持つ共形の膜を形成するために使用することができるので、いくつかの実施形態では、当該プロセスは、ダイレクトSDDPのために使用することができる。加えて、堆積された膜は、良好な機械的特性および良好なエッチング選択性を有することができるので、低アスペクト比のレジストを形成することができ、これにより、リソグラフィーおよび集積を容易にすることができる。
【0079】
いくつかのこのような実施形態では、酸化アンチモン層は、ALDによって、パターン形成されたレジストの上にわたって共形的に堆積される。例が図1に図示されており、この図では、1つのSb層が、構造化されたフォトレジストの上に100℃で堆積された。
【0080】
酸化アンチモンは、犠牲層またはエッチング停止層として使用することができる。上で触れたように、SbO膜とSiOおよびALDによって堆積されたAlなどの他の材料との間で、エッチング特性に差がある。例えば、Sb(OEt)およびOから堆積されたSb膜は、1% HF、25% HSO、濃HNOまたは2M NaOHを用いてエッチングすることはできなかった。しかしながら、この膜は、濃HCl中では約10nm/分の速度でエッチングすることができた。従って、いくつかの実施形態では、Sb(OEt)およびOから堆積されたSb膜は、HClを使用して選択的にエッチングすることができ、または1% HF、25% HSO、濃HNOまたは2M NaOHを使用して、異なる膜を、当該Sb膜よりも選択的にエッチングすることができる。
【0081】
他方、から堆積されたSbClおよびOから選択されたSb膜は、1% HF、25% HSO、濃HCl、または濃HNOを用いてエッチングすることができなかった。従って、いくつかの実施形態では、これらの化合物のうちの1以上を使用してエッチングすることができる膜は、これらの前駆体から堆積されたSb膜よりも選択的にエッチングすることができる。
【0082】
加えて、熱的SiOはHF溶液の中で約2.8nm/分の速度でエッチングされるのに対し、本願明細書に記載されるようにして堆積されたSbO膜は、同じHF溶液の中で顕著なエッチングをまったく示さないということが見出された。従って、いくつかの実施形態では、HFは、このようなSbO膜よりもSiOを選択的にエッチングするために使用される。他方、SbO膜は、Hを用いて、約1〜2nm/分の速度でエッチングすることができたが、熱的SiOはHを用いてはエッチングされない。従って、他の実施形態では、このようなSbO膜は、Hを使用して、熱的SiOよりも選択的にエッチングすることができる。
【0083】
SbO膜は、Al膜、例えばALDによって堆積されたAl膜に対して良好なエッチング選択性をも有する。HPO、HF、KOHおよびTMAHは、ALDによって堆積されたAl膜をエッチングすることが見出されたが、SbOをエッチングしなかったのに対し、AlはH、酒石酸または濃HClによってエッチングされなかった。従って、SbOは、H、酒石酸または濃HClを使用してAlよりも選択的にエッチングすることができるのに対し、Alは、HPO、HF、KOHまたはTMAHを使用してSbOよりも選択的にエッチングすることができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、パターン形成されたレジスト層の上にわたって堆積された後、酸化アンチモン層はエッチングされて、下に存在するレジストが露出される。次いで、このレジストは取り除かれ、下に存在する基板がエッチングされて、所望の特徴部が形成される。
【0085】
一般に、堆積が当該堆積枠の外にない限り、すなわち良好な品質を得るのに十分高いが、前駆体(複数可)の主要な分解を防ぐのに十分低い、従って膜の低品質、例えば、分解に起因する不純物を防止する温度にある限り、SbO膜についての堆積温度が高いほど、それらは、高い耐エッチング性を有する。
【0086】
いくつかの実施形態では、SbO膜は、SiOおよびSiの膜または層よりも選択的にエッチングすることができる。エッチングは、気相中でまたは「湿式エッチング」として液相中で実施されてもよい。エッチングを選択的に実施することができる例示的な選択的なエッチング溶液としては、濃HCl、Hおよび酒石酸が挙げられる。選択性は、好ましくは75%(1:3のエッチング速度差)超、80%(1:5のエッチング速度差)超、90%(1:10のエッチング速度差)超であり、ある場合には選択性は、95%(1:20のエッチング速度差)超、またはさらには98%(エッチング速度差1:50)超であることができる。いくつかの実施形態では、エッチング速度差は、1:100(99%の選択性)またはさらにはこれより高いことができる。
【0087】
いくつかの実施形態では、SiO膜は、本願明細書に記載されるようにして堆積されたSbOの膜または層よりも選択的にエッチングすることができる。エッチングは、気相中または「湿式エッチング」として液相中で実施されてもよい。エッチングを選択的に実施することができる例示的なエッチング溶液としては、0.5%または1.0%の希HFなどのHF含有溶液が挙げられる。選択性は、75%(1:3のエッチング速度差)超、80%(1:5のエッチング速度差)超、90%(1:10のエッチング速度差)超、ある場合には95%(1:20のエッチング速度差)超またはさらには98%(1:50のエッチング速度差)超であってもよい。いくつかの実施形態では、99%またはさらにはこれより高い選択性を得ることができる(例えば1:100のエッチング速度差)。
【0088】
いくつかの実施形態では、SbO膜は、Alの膜または層よりも選択的にエッチングすることができる。エッチングは、気相中または「湿式エッチング」として液相中で実施されてもよい。例示的な選択的なエッチング溶液としては、濃HCl、Hおよび酒石酸が挙げられる。選択性は、75%(1:3のエッチング速度差)超、80%(1:5のエッチング速度差)超、90%(1:10のエッチング速度差)超、またはさらには95%(1:20のエッチング速度差)超または98%(1:50のエッチング速度差)超であってもよい。ある場合には、この選択性は、1:100のエッチング速度差以上を有して、99%以上であることができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、Al膜は、本願明細書に記載されるようにして堆積されたSbOの膜または層よりも選択的にエッチングすることができる。エッチングは、気相中または「湿式エッチング」として液相中で実施されてもよい。例示的な選択的なエッチング溶液としては、HPO、HF、KOHおよびTMAHが挙げられる。選択性は、75%(1:3のエッチング速度差)超、80%(1:5のエッチング速度差)超、90%(1:10のエッチング速度差)超、およびある場合には95%(1:20のエッチング速度差)超または98%(1:50のエッチング速度差)超であってもよい。ある場合には99%以上の選択性を、1:100のエッチング速度差以上を有して、成し遂げることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、ケイ素または窒化ケイ素は、本願明細書に記載されるALDによって堆積されたSbO膜よりも選択的にエッチングされる。これらの場合には、ケイ素または窒化ケイ素は、一般的なケイ素または窒化ケイ素のエッチング剤(腐食剤)を使用して、SbOよりもエッチングすることができる。SbOを、ケイ素または窒化ケイ素よりも選択的にエッチングすることもできる。例えば、濃HCl、Hまたは酒石酸を使用することができる。いくつかの実施形態では、選択性は、75%(1:3のエッチング速度差)超、80%(1:5のエッチング速度差)超、90%(1:10のエッチング速度差)、およびさらには95%(1:20のエッチング速度差)超または98%(1:50のエッチング速度差)超である。ある場合には、99%以上の選択性が、1:100のエッチング速度差またはさらにはこれより大きい速度差を有して、成し遂げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、当該SbO膜は、異なる材料に対してエッチング選択性を有する、または逆も言える − この他の物質は、SbOに勝って選択的にエッチングすることができる。これらの場合、他の物質は、一般に公知のエッチング剤を使用して、SbOよりも選択的にエッチングすることができる。また、SbOは、濃HCl、Hまたは酒石酸を使用して、この他の物質よりも選択的にエッチングすることもできる。選択性は、75%(1:3のエッチング速度差)超、80%(1:5のエッチング速度差)超、90%(1:10のエッチング速度差)超、およびある場合には95%(1:20のエッチング速度差)超または98%(1:50のエッチング速度差)超であってもよい。ある場合には、選択性は、1:100のエッチング速度差以上を有して、99%以上であることができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、当該SbO膜は、乾式エッチング剤を使用して、SiNまたはSiOなどの他の物質に勝って選択的にエッチングすることができる。例えば、Clおよび/またはF含有プラズマエッチング剤を使用することができる。いくつかの実施形態では、ClプラズマまたはCHFおよびClプラズマの混合物が使用される。ここでも、選択性は、50%(1:2のエッチング速度差)超、75%(1:3のエッチング速度差)超、またはさらには90%(1:10のエッチング速度差)超であってもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、例えば複数のパターニングプロセスにおいて基板上に構造体を形成する方法は、第1の物質を含む第1の膜を堆積することと、酸化アンチモンを含む第2の膜を堆積することとを含む。この酸化アンチモンは、例えば、基板を、アンチモン反応物質、例えばハロゲン化アンチモン、アンチモンアルコキシドまたはアンチモンアルキルアミン、および酸素ソース(例えばオゾン)に交互にかつ逐次的に接触させることにより、本願明細書に記載されるALDプロセスによって堆積される。その後、この第1の膜は、酸化アンチモンよりも選択的にエッチングされてもよいし、またはこの酸化アンチモンは、第1の膜よりも選択的にエッチングされてもよい。いくつかの実施形態では、この第1の物質は、例えば、SiOまたはAlであってもよい。酸化アンチモンの第2の層が第1の層よりもエッチングされるとき、エッチングは、当該酸化アンチモン層を、濃HCl、Hおよび酒石酸からなる群から選択されるエッチング剤と接触させることを含んでもよい。当該酸化アンチモン層よりも第1の物質がエッチングされるとき、エッチングは、第1の物質を、HF、HPO、KOHおよびTMAHからなる群から選択されるエッチング剤と接触させることを含んでもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン薄膜は、アンチモンアルコキシドおよび酸素ソース(例えばオゾン)の交互かつ逐次的なパルスを含むALDサイクルを使用して堆積される。このアンチモンアルコキシドは、例えば、Sb(OEt)であってもよい。この膜はバッチ反応器の中で堆積されてもよく、例えば、犠牲層としてまたはエッチング停止層として使用されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、酸化アンチモン薄膜は、アンチモンアルキルアミンおよび酸素ソース(例えばオゾン)の交互かつ逐次的なパルスを含むALDサイクルによって堆積される。この膜は、バッチ反応器の中で堆積されてもよく、例えば、犠牲層としてまたはエッチング停止層として使用されてもよい。
【実施例】
【0096】
実施例1 − シングルウェーハ反応器におけるアンチモンソースとしてのSb(OEt)
酸化アンチモン(Sb)薄膜を、Sb(OCをアンチモンソースとして、およびOを酸素ソースとして使用して、F−450 ALCVD(商標)反応器の中で、原子層堆積(ALD)によって堆積した。
【0097】
300℃でSb(OC2H5)3(パルス3.0秒間、パージ5.0秒間)およびHO(パルス1.5秒間、パージ5.0秒間)を使用しても膜は得られなかったが、400℃ではいくらかの膜が得られた(成長速度約0.02Å/サイクル)。
【0098】
100〜350℃でSb(OCおよびOの交互かつ逐次的なパルスを使用して膜を堆積した。Sb(OEt)を3.0秒間パルス供与し、5.0秒間パージした。Oも3.0秒間パルス供与し、5.0秒間パージした。Sb(OCは、室温(21℃)で使用した。
【0099】
成長速度は、約0.4〜1.3Å/サイクルの範囲であった。成長速度は、100〜250℃で0.4〜0.6Å/サイクルであり、275〜350℃では0.8Å/サイクル超であった。膜不均一性は、100〜150℃および350℃まででは高かった(>10% 1σ)。200〜300℃では、1σ不均一性は6%未満であり、275℃で最低の約3%であった。図2A〜図2Cは、100〜350℃における膜成長速度および不均一性を示す。
【0100】
この膜を、X線反射(XRR)、X線回折(XRD)およびX線光電子分光法(XPS)、エネルギー分散型x線分析(EDX)および原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて特性解析した。XRRによれば、膜密度は約6〜6.5g/cmであり、密度は高い温度(200〜300℃)ほど大きくなった。XRRから得たrms粗さは、約1.4nm(200〜300℃で24〜40nm)であった。Sbに帰属することができる非常に弱いピークが、150℃で堆積した試料のXRD回折図で見られた。AFM rms粗さは、約0.31nm(100℃で堆積された約25nm膜)であった。この膜は滑らかで均一であり、相イメージ(図3)において、コントラストは見られなかった。
【0101】
XPSによれば(表1)、アンチモンの酸化状態は+3である。従って、この膜はSbであった。炭素および窒素を、表面上の混入物質として検出したが、約5nmをスパッタリングした後は、何も検出できなかった。酸素濃度は、O1sおよびSb3d5のピークの重なりのため、およその値であった。O/Sbの減少(表2)は、高質量のSbよりも低質量の酸素の優先的スパッタリングに起因すると考えられる。XPS試料を250℃で堆積した。EDXは、300℃で堆積した膜の中で炭素を検出したが、塩素は検出しなかった。
【0102】
エッチング試験を、1% HF、25% HSO、2M NaOH、濃HNOおよび濃HClの中で、室温で行った。当該膜は、濃HClでのみエッチングすることができた(エッチング速度約10nm/分)。1% HF、37% HClおよび0.5M 酒石酸を使用してさらなるエッチング試験を実施した。結果を下記の表2に示す。
【0103】
表1。XPS結果。250℃で堆積したSb膜。数字は原子%を呈示する。約5nmのスパッタリングの前(上段)および後(下段)に測定した。
【表1】

【0104】
図1に図示するように、構造化されたフォトレジストの上に100℃でSb層を堆積した。30nmという厚さの目標値を選び、この堆積プロセスは750サイクルを含んでいた。各サイクルでは、Sb(OEt)を3.5秒間パルス供与し、5.0秒間パージし、O3を3.0秒間パルス供与し、5秒間パージした。観察された段差被覆は95%超であった。約16というk値を観察した。
【0105】
表2。反応物質としてのSb(OEt)およびOならびに約100〜約200℃の反応温度を使用して堆積したSb膜のエッチング結果
【表2】

【0106】
実施例2 − シングルウェーハ反応器におけるアンチモンソースとしてのSbCl
酸化アンチモン(Sb)薄膜を、SbClをアンチモンソースとして、およびOを酸素ソースとして使用して、F−450 ALCVD(商標)反応器の中で、原子層堆積(ALD)によって堆積した。HOを酸素ソースとして使用すると(SbCl3パルス2.0秒間、パージ5.0秒間;H2Oパルス1.5秒間、パージ5秒間)、膜は得られなかった。しかしながら、Oに加えてHOを使用することにより、成長を高めることができ、均一性を増大させることができる。堆積サイクルは、SbCl3パルス2.0秒間、パージ5秒間;O3パルス3.0秒間、パージ5秒間;H2Oパルス1.5秒間、パージ5.0秒間からなっていた。
【0107】
各ALDサイクルでは、SbCl3を2秒間パルス供与し、5秒間パージし、他方でオゾンを3秒間パルス供与し、5秒間パージした。
【0108】
膜を150〜400℃で堆積した。SbClについての気化温度は35℃であった。成長速度は0.3Å/サイクル未満であった。250℃未満の温度で、成長速度は<0.1Å/サイクルであった。300℃より上では、成長速度は0.2Å/サイクルであった。最高の成長速度は400℃での0.28Å/サイクルであった。
【0109】
膜不均一性は約6〜約16%であった。不均一性は、低い堆積温度(150〜200℃)および最高温度の400℃では高かった(>10% 1σ)。250〜350℃では、1σ不均一性は5〜7%であった。
【0110】
図4は、150〜400℃における膜成長速度および不均一性を示す。表3は、Oパルスの前後でのHOパルスの追加が成長速度および不均一性にどのように影響を及ぼすかを提示する。
【0111】
表3。成長速度および膜均一性に対するOパルスの前後の追加的なHOパルスの効果
【表3】

【0112】
X線反射(XRR)、X線回折(XRD)およびX線光電子分光法(XPS)およびエネルギー分散型x線分析(EDX)を用いて膜を特性解析した。XRRによれば、膜密度は、約6〜6.6g/cmであり、密度は、高い温度に向かって(150〜400℃)増大した。XRRから得たrms粗さは、1.3nm(150℃において6nm)、1.0(300℃において20nm)および400℃において1.2nmであった。400℃で堆積した試料に関しては、XRD回折図において明確なピークが観察されなかった。従って、この膜は非晶質であると推定された。XPS(表4)によれば、アンチモンの酸化状態は+3であり、従って、この膜はSbであった。表面上の混入物質として炭素および窒素を検出したが、約5nmをスパッタリングした後は、いずれも検出できなかった。酸素濃度は、O1sおよびSb3d5のピークピークの重なりのため、およその値であった。O/Sbの減少(表4)は、高質量のSbよりも低質量の酸素の優先的スパッタリングに起因すると考えられる。XPS試料を400℃で堆積した。EDXは、400℃で堆積した膜では、炭素も塩素も検出しなかった。
【0113】
エッチング試験を、1% HF、25% HSO、濃HNOおよび濃HClの中で、室温で行った。当該膜は、これらの溶液のいずれの中でもエッチングすることはできなかった(初期の膜厚が約40nmで1〜6分間のエッチング時間)。
【0114】
表4。XPS結果。400℃で堆積したSb膜。数字は原子%を表す。
約5nmのスパッタリングの前(上段)および後(下段)に測定した。
【表4】

【0115】
実施例3 − シングルウェーハ反応器におけるアンチモンソースとしてのSb(N(CH
酸化アンチモン(SbO)薄膜を、Sb(N(CHをアンチモンソースとして、およびOを酸素ソースとして使用して、Pulsar(登録商標) 2000 R&D反応器の中で、原子層堆積(ALD)によって堆積した。
【0116】
Sb(N(CHおよびO(O中)の交互かつ逐次的なパルスを使用して、約100〜300℃の反応温度で、膜を堆積した。Sb(N(CHを0.1〜1.0秒間パルス供与し、10秒間パージした。Oを10秒間パルス供与し、10秒間パージし、O濃度は250g/m(NTP)であった。Sb(N(CHを室温(約20℃〜約23℃)で使用した。キャリアガスフローは0.8slmであった。
【0117】
成長速度は、約0.83〜1.92Å/サイクルの範囲であった。成長速度は、約100℃では約1.44〜1.92Å/サイクルであり、200℃では約0.83〜約1.39Å/サイクルであった。膜不均一性(ウェーハ内)は、約2.1%〜約7.1%(1σ)にわたっていた。例えば、100℃で、およびSb(N(CHパルス1秒間、パージ10秒間およびOパルス10秒間、パージ10秒間、濃度250g/m(NTP)を用いて堆積した500サイクルの膜は、1.92Å/サイクルの成長速度および2.1%(1σ)のウェーハ内均一性を有していた。図5および図6は、Sb(N(CH+Oを用いた典型的なSbO膜の特徴を提示する。
【0118】
実施例4 − バッチ反応器におけるアンチモンソースとしてのSb(OEt)
酸化アンチモン(SbO)薄膜を、Sb(OCをアンチモンソースとしておよびOを酸素ソースとして使用して、市販の、生産型のASM A412(商標) バッチ反応器の中で、原子層堆積(ALD)によって堆積した。
【0119】
Sb(OCH5)およびOの交互かつ逐次的なパルスを使用して、約140〜220℃の反応温度で、膜を堆積した。Sb(OEt)を15〜40g/hrの投入量で3.0〜20秒間パルス供与し、10〜60秒間パージした。Oも、3.0〜20秒間パルス供与し、10〜600秒間パージした。Sb(OCは、120℃で、液体注入システムで使用した。キャリアガスフローは約0.5slm〜約0.8slmにわたっていた。シングルピッチおよびダブルッピッチの両方のウェーハ投入を使用した。これらは、それぞれ、100製品または50製品のウェーハ容量に対応する。
【0120】
成長速度は、約0.38〜0.8Å/サイクルの範囲であった。成長速度は、約140℃では約0.38〜0.41Å/サイクルであり、200〜220℃では約0.5〜約0.8Å/サイクルであった。膜不均一性(ウェーハ内)は約3.4%〜約13%(1σ)にわたっており、ウェーハ間均一性は約0.1%〜約3.9%(1σ)にわたっていた。例えば、200℃でダブルピッチ投入量を用い、かつSb(OEt)パルス5秒間、投入量25g/h、パージ10秒間およびOパルス5秒間、パージ600秒間、濃度350g/mを用いて堆積した200サイクルの膜は、0.63Å/サイクルの成長速度、3.4%(1σ)のウェーハ内均一性および0.39%(1σ)のウェーハ間均一性を有していた。
【0121】
実施例5 − シングルウェーハ反応器におけるアンチモンソースとしてのSb(OEt)
酸化アンチモン(SbO)薄膜を、Sb(OCをアンチモンソースとしておよびOを酸素ソースとして使用して、Pulsar(登録商標) 2000 R&D反応器の中で、原子層堆積(ALD)によって堆積した。
【0122】
約200℃の反応温度で、Sb(OCH5)およびOの交互かつ逐次的なパルスを使用して、膜を堆積した。Sb(OEt)パルスを0.5秒に固定し、パージを10秒に固定した。Oを2.5〜30秒間パルス供与し、10秒間パージし、O濃度は60〜300g/m(NTP)であり、反応器へのOフローは200〜800cm/分(NTP)であった。Sb(OCは40℃に加熱した。キャリアガスフローは0.8slmであった。
【0123】
成長速度は約0.3〜0.7Å/サイクルの範囲であった。成長速度は、図7に示すように、使用したO投入量に大きく依存し、図7では、菱形は、反応器の中のOフローが変動した実施を表し、正方形は、O濃度が変動した実施を表し、三角形は、Oパルス時間が変動した実施を表す。膜不均一性(ウェーハ内)は、約2.7%〜約49.5%(1σ)にわたっていた。より高いO投入量は、膜のより高い成長速度を生じた。
【0124】
実施例6 − バッチ反応器におけるアンチモンソースとしてのSb(N(CH
酸化アンチモン(SbO)薄膜を、Sb(N(CHをアンチモンソースとして、およびOを酸素ソースとして使用して、市販の、生産型のASM A412(商標) バッチ反応器の中で、原子層堆積(ALD)によって堆積した。
【0125】
Sb(N(CHおよびOの交互かつ逐次的なパルスを使用して、約200℃の反応温度で、膜を堆積した。Sb(N(CHを50g/hrの投入量で5.0秒間パルス供与し、120秒間パージした。Oも、350g/mの濃度で5.0秒間パルス供与し、120秒間パージした。Sb(N(CHは、120℃で、液体注入システムで使用した。キャリアガスフローは0.5slmであった。
【0126】
SbOの成長速度は約1.3〜1.4Å/サイクルの範囲であった。膜不均一性(ウェーハ内)は、約4.5%〜約5.3%(1σ)にわたっていた。4.5%膜厚不均一性地図は、図8で見ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アンチモンを堆積するための原子層堆積プロセスであって、反応チャンバーの中で、基板をアンチモン前駆体および酸素ソースと、交互にかつ逐次的に接触させることを含み、前記アンチモン前駆体は、ハロゲン化アンチモンおよびアンチモンアルコキシドから選択される、プロセス。
【請求項2】
前記アンチモン前駆体はSbClである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アンチモン前駆体はSb(OEt)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酸素ソースは、水、酸素、過酸化水素、過酸化水素の水溶液、オゾン、原子状酸素、窒素酸化物、過酸(−−O−−O−−H)、アルコール、酸素含有ラジカルおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸素ソースはオゾンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酸素ソースは酸素プラズマを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記酸素ソースは水ではない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記基板を水と接触させることをさらに含む、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記基板は、前記アンチモン前駆体と接触した後で、かつ前記酸素ソースと接触する前に、水と接触する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸化アンチモンは式SbO(式中、xは約1〜約3である)を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
xは約1.2〜約2.5である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記酸化アンチモンは、Sb、Sbおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記反応チャンバーはバッチ反応器の一部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記反応チャンバーはシングルウェーハ反応器の一部である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記酸化アンチモンに異なる金属または金属酸化物をドーピングすることをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記酸化アンチモンは酸化アルミニウムでドーピングされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記薄膜は、半導体加工における犠牲層としての役割を果たす、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記薄膜は、ダブルパターニングまたはクアドラプルパターニングのための犠牲層としての役割を果たす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薄膜は、レジストの上に堆積される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
原子層堆積によって酸化アンチモン層を堆積する方法であって、
バッチ反応器の中で、基板を、アンチモンアルキルアミンまたはアンチモンアルコキシドを含むアンチモン前駆体と接触させることと、
過剰のアンチモン前駆体を除去することと、
前記基板をオゾンと接触させることと、
過剰のオゾンを除去することと
を含む、方法。
【請求項21】
前記アンチモン前駆体はSb(OEt)を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記酸化アンチモン前駆体はSb(N(CHを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記基板は300mmウェーハまたは450mmウェーハである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
反応空間の中で半導体基板上に構造体を形成する方法であって、
第1の物質を含む第1の層を前記基板上に堆積することと、
酸化アンチモンの第2の層を、原子層堆積プロセスによって前記基板上に堆積することであって、前記原子層堆積プロセスは、前記基板をアンチモン前駆体および酸素ソースと交互にかつ逐次的に接触させることを含む、ことと、
前記第1の層または第2の層をエッチングすることと
を含む、方法。
【請求項25】
前記アンチモン前駆体は、ハロゲン化アンチモン、アンチモンアルコキシド、およびアンチモンアルキルアミンからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アンチモン前駆体はSb(OEt)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アンチモン前駆体はSb(N(CHである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記酸素ソースはオゾンである、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記反応空間はバッチ反応器の一部である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
酸化アンチモンの前記第2の層は、第1の物質を含む前記第1の層よりも選択的にエッチングされる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の物質はSiOである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の物質はAlである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
エッチングすることは、酸化アンチモンの前記第2の層を濃HCl、Hおよび酒石酸からなる群から選択されるエッチング剤と接触させることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
第1の物質を含む前記第1の層は、酸化アンチモンの前記第2の層よりも選択的にエッチングされる、請求項24に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の物質はSiOを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の物質はAlを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
エッチングすることは、第1の物質を含む前記第1の層を、HF、HPO、KOHおよびTMAHからなる群から選択されるエッチング剤と接触させることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
酸化アンチモンを含む前記第2の層は犠牲層である、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
酸化アンチモンを含む前記第2の層はエッチング停止層である、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
酸化アンチモンを含む前記第2の層は、パターン形成されたレジスト層の上にわたって堆積される、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−84959(P2013−84959A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−225541(P2012−225541)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(501380070)エーエスエム インターナショナル エヌ.ヴェー. (26)
【氏名又は名称原語表記】ASM INTERNATIONAL N.V.
【Fターム(参考)】