説明

酸化インジウムスズ膜の製造方法

【課題】 熱安定および低電気抵抗の酸化インジウムスズ膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化物誘電層20を形成し、即ち、基板10の表面に酸化物薄膜を形成するステップaと、酸化物誘電層20を表面処理し、即ち、酸素をイオン源設備に送入し、酸素がイオン源を通過した後に発生するイオン束により酸化物誘電層20に表面処理を実行するステップbと、透明導電膜を形成し、即ち、イオン処理を通過した後の酸化物誘電層20の上に酸化インジウムスズ膜30を積層するステップcとを含む。基板10は、プラスチックの本体11と本体11の一側面に形成される硬質コーティング12から構成され、本体11の他側は基板10の表面10aを形成する。酸化物誘電層20にイオン処理を予め実行することで、酸化物誘電層20の安定性および精密度を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化インジウムスズ膜に関し、詳しく言えば、熱安定および低電気抵抗の酸化インジウムスズ膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化インジウムスズ膜(Indium Tin Oxide film)は、接触式パネルを構成する要素であり、品質の良さがパネルの性能に関係する。
酸化インジウムスズ膜の透過度を高めるために、周知の技術は、プラスチック基板の上にスパッタリング(sputtering)のプロセスにより二酸化チタン薄膜(TiO2 film)と二酸化ケイ素薄膜(SiO2 film)を順番に積層し、そののち二酸化ケイ素薄膜(SiO2 film)の上に酸化インジウムスズ膜を積層すると、前述の二酸化チタン薄膜と二酸化ケイ素薄膜が酸化物誘電層、即ち、抗反射膜層となる。上述の構造は、二酸化チタン薄膜(TiO2 film)が高屈折率の特性を有し、二酸化ケイ素薄膜(SiO2 film)が低屈折率の特性を有するため、反射光線が光のルートの違いによって相互干渉して相殺されることで、酸化インジウムスズ膜の透過度を高める目的を達成する。
【0003】
接触式パネルが製造過程において徐冷(annealing)、固化(curing)および信頼性試験(Reliability Testing)などの処理をされる場合、長期間で熱を受けなければならないため、酸化物誘電層が含有する酸素が拡散作用により酸化インジウムスズ膜内に入り込み、酸化インジウムスズ膜の酸素含有量を変化させると、酸化インジウムスズ膜の熱安定性を低下させ、電気抵抗比を増大させるとともに、間接的に酸化インジウムスズ膜の品質を低下させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、酸化物誘電層に酸素含有のイオン束による処理を実行することにより、酸化物誘導層の隙間を補填し、安定化した精密な酸化物誘電層を求め、そして、酸化インジウムスズ膜に比較的よい熱安定性および比較的低い電気抵抗比を保持させる熱安定型および低電気抵抗比の酸化インジウムスズ膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明による熱安定型および低電気抵抗比の酸化インジウムスズ膜の製造方法は、酸化物誘電層を形成し、即ち、基板の表面に酸化物薄膜を形成するステップaと、酸化物誘電層を表面処理し、即ち、酸素をイオン源設備に送入し、酸素がイオン源を通過した後に発生するイオン束により酸化物誘電層に表面処理を実行するステップbと、透明導電膜を形成し、即ち、イオン処理を通過した後の酸化物誘電層の上に酸化インジウムスズ膜を積層するステップcとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施例の製造方法の製造プロセスを示す図である。
【0007】
図2のaからeは、本発明の一実施例の製造ステップおよび構造を示す図である。
図3は、本発明のもう一つの実施例の構造を示す図である。
【0008】
図1と図2に示すように、本発明の一実施例による酸化インジウムスズ膜の製造方法は下記のステップを含む。
a)酸化物誘電層を形成する。
まず基板10をスパッタリングシステムの真空反応室(図中未表示)に置く。本実施例に使用する基板10は、図2のaに示すように、透明の本体11と本体11の一側面に形成される硬質コーティング12から構成される。前述の本体11はポリエチレンテレフタラート(Polyethylene Terephthalate、PET)などのプラスッチック材質から形成され、本体11の他側面は基板10の表面10aを形成する。また、注目すべきなのは、透明本体の両側面にそれぞれの硬質コーティングを形成することで基板を構成し、そのうちの一つの硬質コーティングの表面で基板の表面を構成してもよいということである。
【0009】
続いて、スパッタリングのプロセスにおいて、ターゲット(target)材料として別々チタン材料とケイ素材料を使用し、スパッタリング反応室に酸素を送入し、図2のbに示すように、基板10の表面10aの上に二酸化チタン薄膜21(TiO2 film)を積層し、図2のcに示すように、二酸化チタン薄膜21の上に二酸化ケイ素薄膜22(SiO2 film)を積層し、二酸化チタン薄膜21と二酸化ケイ素薄膜22から酸化物誘電層20を構成する。この製造プロセスは周知の技術であるため、詳しい説明を省く。
【0010】
b)酸化物誘電層の表面処理をする。
酸化物誘電層20が完成した後、基板10と酸化物誘電層20とを含む基材をイオン処理の設備(図中未表示)に置き、続いて酸素をイオン源(ion source)に送入し、そして酸素がイオン源を通過した後に発生するイオン束(図2のdの中でイオン束を矢印で表示する)により酸化物誘電層20に表面処理を実行することで、酸化物誘導層20の隙間を補填し、安定化した精密な酸化物誘電層を求める。
【0011】
本実施例では、イオン束を形成するイオン源の製作に線形イオン源(linear ion source)を使用する。また、円形イオン源(round ion source)を使用してもよい。
c)透明導電膜を形成する。
酸化物誘電層20のイオン処理が完了した後、図2のeに示すように、酸化物誘電層20の上に酸化インジウムスズ膜30(Indium Tin Oxide film)を積層し、酸化インジウムスズ膜30が透明導電膜となる。本実施例では、スパッタリングの方法で薄膜を形成する。
【0012】
以上は、本実施例による熱安定型および低電気抵抗比の酸化インジウムスズ膜の製造方法の説明である。本実施例は、抗反射作用の酸化物誘電層20にイオン処理を予め実行することで、酸化物誘電層20の安定性および精密度を高める。したがって、その後の接触式パネルが高温作業の下で各項処理をされる場合、酸化物誘電層20は酸素拡散の現象が発生し難く、酸化インジウムスズ膜30の酸素含有量を変化させる現象が免れられることで、酸化インジウムスズ膜30が良好な熱安定性および低電気抵抗比の特性を有すると同時に、酸化インジウムスズ膜30が良好な透過度を有する。
【0013】
以下、表1は、温度を150℃で、処理時間を90分間に設定するという徐冷の条件で、それぞれの酸素イオン処理をされない酸化物誘電層と酸素イオン処理をされた酸化物誘電層に積層された酸化インジウムスズ膜に表面抵抗値と電気抵抗比の試験を実行した結果である。表1の試験の数値データにより、酸素イオン処理済みの酸化物誘電層に積層された酸化インジウムスズ膜の表面抵抗値と電気抵抗比が明らかに低いと判明する。表面抵抗は、単位面積あたりの抵抗値を意味する。
【0014】
【表1】

【0015】
また、注目すべきなのは、本実施例では、イオン表面処理に送入する気体がアルゴン(Ar)と酸素の混合気体でもよいということである。
また、酸化物誘電層を形成する場合、二酸化チタン薄膜と二酸化ケイ素薄膜の積層を増加することで、抗反射の効率を高めることが可能である。但し、積層の増加に伴い、酸化インジウムスズ膜の電気抵抗比が高まるため、酸化物誘電層にイオン処理を予め実行すれば、電気抵抗値比が明らかに低減する。図3に示すような構造層は、前述の実施例に比べて、さらに二酸化チタン薄膜21と二酸化ケイ素薄膜22の積層が増加し、図中の矢印で表示されるイオン束によるイオン処理が完了した後、酸化物誘電層20の上に酸化インジウムスズ膜30が積層されるものである。以下の表2から、上述の多層の二酸化チタン薄膜21と二酸化ケイ素薄膜22の構造が酸素イオン処理をされた後、酸化インジウムスズ膜の表面抵抗値と電気抵抗比が比較的低いと判明する。
【0016】
【表2】

【0017】
上述の説明をまとめてみると、本発明は新規性があり、かつ本発明は、出願前に同じものが公開されたり、使用されたりするレポートが一切なかったため、発明の条件を満たすと考えられる。
上述は本発明の比較的好ましい実施例に過ぎないため、本発明の明細書および請求項範囲により同等な構造変化をするのは本発明の請求範囲に属すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例による酸化インジウムスズ膜の製造方法の製造プロセスを示す図である。
【図2】本発明の一実施例による酸化インジウムスズ膜の製造方法の製造ステップおよび構造を示す模式図である。
【図3】本発明のもう一つの実施例による酸化インジウムスズ膜の製造方法による構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0019】
10 基板、10a 表面、11 本体、12 硬質コーティング、20 酸化物誘電層、21 二酸化チタン薄膜、22 二酸化ケイ素薄膜、30 酸化インジウムスズ膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に酸化物薄膜を形成することで酸化物誘電層を形成するステップaと、
酸素をイオン源設備に送入し、酸素がイオン源を通過した後に発生するイオン束により酸化物誘電層に表面処理を実行するステップbと、
イオン処理を通過した後の酸化物誘電層の上に酸化インジウムスズ膜(Indium Tin Oxide film)を積層することで透明導電膜を形成するステップcと、
を含むことを特徴とする酸化インジウムスズ膜の製造方法。
【請求項2】
基板は、プラスチックの本体と本体の一側面に形成される硬質コーティングから構成され、本体の他側は基板の表面を形成することを特徴とする請求項1に記載の酸化インジウムスズ膜の製造方法。
【請求項3】
ステップaは、基板の表面にスパッタリングを実行して二酸化チタン薄膜(TiO2 film)を形成し、二酸化チタン薄膜(TiO2 film)の上にスパッタリングを実行して二酸化ケイ素薄膜(SiO2 film)を積層することを含むことを特徴とする請求項1に記載の酸化インジウムスズ膜の製造方法。
【請求項4】
ステップbにおいて、さらにアルゴン(Ar)を送入し、酸素とアルゴンの混合気体がイオン源を通過した後、所要のイオン束が形成されることを含むことを特徴とする請求項3に記載の酸化インジウムスズ膜の製造方法。
【請求項5】
酸化物誘電層と酸化インジウムスズ膜は、スパッタリングのプロセスで形成することを特徴とする請求項1に記載の酸化インジウムスズ膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−52447(P2006−52447A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235300(P2004−235300)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(501029319)勝華科技股▲分▼有限公司 (12)
【Fターム(参考)】