説明

酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェン、それらを用いた電気機器およびそれらの作製方法、ならびに電気透析装置

【課題】純度の高い酸化グラファイト(あるいは酸化グラフェン)を量産する。
【解決手段】グラファイトを酸化剤により酸化して得られた酸化グラファイト溶液に電気透析することで溶液に含まれる水溶性イオンを除去することにより、酸化グラファイトの純度を高める。このようにして得られた酸化グラファイトを原料にして得られた酸化グラフェンは、粉体と混合した後、還元することで、導電性を呈するグラフェンとなり、また、粉体を結合させることができる。例えば、各種電池の導電助剤やバインダーの代わりに利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンやそれらを用いた各種電気機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンとは、1原子の厚さのsp結合炭素原子のシートのことであり、炭素原子とその結合からできた蜂の巣のような六角形格子構造をとっている。厳密には、グラフェンとは上記の定義の通りであるが、本明細書では、これらのシートが2乃至100層、積層した炭素膜もグラフェンと称する。
【0003】
グラフェンは様々な方法で作製されるが、Hummers法は簡便な方法であり、多くの研究がなされている(特許文献1および特許文献2参照)。Hummers法では、最初に酸化剤でグラファイトを酸化する。酸化剤には、過マンガン酸カリウムを用い、通常は酸化作用を促進するために硫酸等の酸を同時に添加する。
【0004】
酸化されたグラファイト(酸化グラファイト)は、層状構造を保っているが、グラファイトに比較すると層の間隔が増大しているため、超音波処理等により容易に層状構造を破壊することができ、酸化されたグラフェン(酸化グラフェン)を得ることができる。なお、この際、酸化グラフェンは1以上の炭素原子のシートを有していることがある。
【0005】
得られた酸化グラフェンを適切な物体表面に薄く膜状に形成し、酸化グラフェンを還元することで、非常に薄い炭素膜(グラフェン)を形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0131915号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0303706号明細書
【特許文献3】米国特許第3705846号明細書
【特許文献4】米国特許第6495013号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにHummers法は、高価な装置が必要としない方法であるため工業的に有望である。しかしながら、実用的な酸化グラファイトを得るためには、以下に示すように、精製工程で多大な時間や労力、資源を要する。
【0008】
上記のようにグラファイトを酸化した直後の溶液中には、様々なイオンが溶け込んでいる。これらのイオンは多くの場合、不要なものであり、場合によっては得られるグラフェンの特性を悪化させるため、分離除去することが求められる。イオンを分離するためには、通常は溶液を純水で希釈して、遠心分離で溶液を分離して、上澄み部分を捨てるという工程を幾度も繰り返すことが求められる。この方法では、連続的な生産が困難であり、また、多量の純水が必要とされる。
【0009】
一方、酸化グラファイト溶液からイオンを分離する技術として透析法を用いる提案がされている(特許文献2参照)。透析法を用いると、酸化グラファイト溶液を純水で希釈するという工程を削減できるが、効率的な透析法については開示されていない。
【0010】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、本発明の態様の一は、より量産性のよい、酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンの作製方法やそれに必要な装置等を提供することを課題とする。また、本発明の態様の一は、酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンを用いて得られた電気機器を提供することを課題とする。また、本発明の態様の一は、特殊な組成等を有する酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンを提供することを課題とする。また、本発明の態様の一は、新規な電気機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、グラファイトを溶液中で酸化する工程と、溶液の水素イオン濃度がPH3以下となるように酸を添加する工程と、溶液から電気透析により陽イオンを除去する工程と、を有する酸化グラファイトの作製方法である。ここで、酸は塩酸を用いてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様は、グラファイトを溶液中で酸化する工程と、溶液の水素イオン濃度がPH6乃至8となるようにPH調整剤を添加する工程と、溶液から電気透析により陽イオンおよび陰イオンを除去する工程と、を有する酸化グラファイトの作製方法である。
【0013】
また、本発明の一態様は、グラファイトを溶液中で酸化する工程と、溶液の水素イオン濃度がPH6乃至8となるようにPH調整剤を添加する工程と、溶液から陽イオンおよび陰イオンを除去する第1の電気透析の工程と、陽イオンを除去するバイポーラ膜を用いた第2の電気透析の工程と、を有する酸化グラファイトの作製方法である。
【0014】
上記においてPH調整剤には、水酸化リチウムあるいは水酸化アンモニウムを用いてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様は、上記の方法によって得られた酸化グラファイトを超音波処理することにより得られた酸化グラフェンの作製方法である。
【0016】
また、本発明の一態様は、上記の方法によって得られた酸化グラフェンを還元することにより得られたグラフェンの作製方法である。
【0017】
上記の方法によって得られた酸化グラファイト、酸化グラフェン、あるいはグラフェンはさまざまな電気機器に使用される。電気機器は蓄電装置でもよい。また、蓄電装置はイオンをキャリアとする二次電池でもよい。イオンをキャリアとする二次電池としては、リチウムイオン二次電池、ナトリウム硫黄二次電池を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0018】
また、本発明の一態様は、陽極と陰イオン交換膜と陽イオン交換膜と陰極を有する電気透析装置であって、陽極と陽イオン交換膜の間に陰イオン交換膜を有し、陰極と陰イオン交換膜の間に陽イオン交換膜を有し、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の領域には、酸化グラファイトと陰イオンを有する水素濃度がPH3以下である溶液を注入することを特徴とする電気透析装置である。
【0019】
また、本発明の一態様は、陽極と陰イオン交換膜とバイポーラ膜と陰極を有する電気透析装置であって、陽極とバイポーラ膜の間に陰イオン交換膜を有し、陰極と陰イオン交換膜の間にバイポーラ膜を有し、バイポーラ膜と陰イオン交換膜の間の領域には、酸化グラファイトと陰イオンを有する水素濃度がPH3以下である溶液を注入することを特徴とする電気透析装置である。
【0020】
また、本発明の一態様は、陽極と陰イオン交換膜と陽イオン交換膜と陰極を有する電気透析装置であって、陽極と陽イオン交換膜の間に陰イオン交換膜を有し、陰極と陰イオン交換膜の間に陽イオン交換膜を有し、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の領域には、酸化グラファイトと陽イオンと陰イオンを有する水素イオン濃度がPH6乃至PH8である溶液を注入することを特徴とする電気透析装置である。
【0021】
上記において、陽極と陰イオン交換膜の間、あるいは陰極と陽イオン交換膜の間に1以上のバイポーラ膜を有してもよい。
【0022】
また、本発明の一態様は、陽極とバイポーラ膜と陽イオン交換膜と陰極を有する電気透析装置であって、陽極と陽イオン交換膜の間にバイポーラ膜を有し、陰極とバイポーラ膜の間に陽イオン交換膜を有し、陽イオン交換膜とバイポーラ膜の間の領域には、酸化グラファイトと陽イオンを有する水素イオン濃度がPH6以上である溶液を注入することを特徴とする電気透析装置である。この電気透析装置を本発明の他の一態様の第2の電気透析の工程に用いても良い。
【発明の効果】
【0023】
上記の構成を有する本発明の態様の少なくとも一によって、純度の高い酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンを得ることができる。また、上記の構成を有する本発明の態様の少なくとも一によって、純度の高い酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンを連続的に製造することができる。また、上記の構成を有する本発明の態様の少なくとも一によって、純度の高い酸化グラファイト、酸化グラフェンあるいはグラフェンの量産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一態様で用いる電気透析装置の模式図である。
【図2】本発明の一態様の酸化グラフェンの作製工程を示す図である。
【図3】本発明の一態様の酸化グラフェンの作製工程を示す図である。
【図4】本発明の一態様の原理を示す図である。
【図5】本発明の一態様の原理を示す図である。
【図6】本発明の一態様の原理を示す図である。
【図7】二次電池の例を示す図である。
【図8】蓄電装置の応用の形態を説明するための図である。
【図9】無線給電システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、酸化グラフェンを作製する工程について図1、図2、図4(A)を用いて説明する。図2には、本実施の形態の酸化グラフェンの作製工程の概略を示す。材料であるグラファイトは平均粒径1μm乃至100μmのものを用いるとよい。最初に、グラファイトに濃硫酸および酸化剤を添加し、酸化グラファイトを得る(図2のP1)。
【0027】
さらに、過剰な酸化剤を失活させるために、過酸化水素水を添加する(図2のP2)。この段階での溶液は、各種のイオンや酸化グラファイト以外の沈殿、未反応のグラファイト等を含んでいる。まず、溶液をろ過することで水溶性のイオンを除去する(図2のP3)。
【0028】
さらに、残った固形物(酸化グラファイトや酸化グラファイト以外の沈殿、未反応のグラファイト等を含む)に純水を加え、さらに溶液の水素イオン濃度をPH3以下として、沈殿を溶解させる。PH調整のためには塩酸を添加するとよいが、その他のものでもよい。この段階でさらにろ過して、溶液に溶けているイオンを除去してもよい。その際には、得られる固形物を十分に乾燥させると、塩素イオンも低減できる。
【0029】
また、溶液は少量の未反応のグラファイトを含んでいるため遠心分離をおこなうことで、未反応グラファイトを分離する(図2のP4)。未反応のグラファイトは、原料の一部として利用できる。なお、溶液中に存在する未反応のグラファイトが微量な場合にはこの工程は必要ない。
【0030】
このようにして得られた溶液は酸性であり、また、塩素イオンを含有している。これを除去するために電気透析をおこなう(図2のP5)。その際、溶液の水素イオン濃度はPH3以下とすることが好ましい。
【0031】
ここで電気透析について説明する。図1は本実施の形態の酸化グラフェンの作製工程に用いる電気透析装置の概略を示す。電気透析装置は陽極101、陰極102、陰イオン交換膜103、陽イオン交換膜104を有する。また、陰イオン交換膜103と陽イオン交換膜104で挟まれた領域を流れる精製溶液管105と陽極101と陰イオン交換膜103で挟まれた領域および陰極102と陽イオン交換膜104で挟まれた領域を流れる廃液管106という2系統の管を有する。精製溶液管105と廃液管106には、それぞれ、精製溶液タンク107と廃液タンク108、および精製溶液ポンプ109と廃液ポンプ110を有する。
【0032】
最初に、精製溶液タンク107には、酸化グラファイト溶液を入れ、廃液タンク108には純水あるいは適切な電解質を含む溶液を入れる。溶液は図1に矢印で示すように流れる。なお、図1に示す電気透析装置に、精製溶液管105や廃液管106のいずれか一方あるいは双方に外部から溶液を追加する装置や、外部に溶液を取り出す装置を設けてもよい。精製溶液管105を流れる溶液からは陰イオン交換膜103と陽イオン交換膜104によって、含まれる陰イオンと陽イオンが除去され、それらは廃液管106に移動する。
【0033】
本実施の形態の電気透析について、図4(A)を用いて簡単に説明する。図4(A)には、図1で示した陽極101、陰極102、陰イオン交換膜103、陽イオン交換膜104、精製溶液管105、廃液管106を模式的に示す。陽極101と陰極102の間には電圧が印加されている。精製溶液管105を流れる溶液に含まれている塩素イオン(Cl)と水素イオン(H)は、それぞれ陽極101、陰極102に引き寄せられ、陰イオン交換膜103、陽イオン交換膜104に到達する。
【0034】
陰イオン交換膜103は、陰イオンは透過するが、陽イオンは透過させず、陽イオン交換膜104は、陽イオンは透過するが、陰イオンは透過させないという性質を有する。そのため、塩素イオンは陰イオン交換膜103を透過して、陽極101側の廃液管106に到達し、水素イオンは陽イオン交換膜104を透過して、陰極102側の廃液管106に到達する。このようにして、精製溶液管105のイオン濃度は低下する。逆に、廃液管106の塩素イオン濃度、水素イオン濃度は上昇する。
【0035】
なお、精製溶液管105には、酸化グラファイトも含まれるが、分子が巨大であるため陰イオン交換膜103、陽イオン交換膜104を透過することができず、精製溶液管105に残留する。なお、酸化グラファイトは、溶液中では電離して、陰イオン状の物質(GO)となる。
【0036】
なお、図1に示されるように、廃液管106では、塩素イオンと水素イオンが混合するようになっている。したがって、陰極102付近にある塩素イオンは、陽イオン交換膜104に到達することもあるが、陽イオン交換膜104は塩素イオンを透過させないので、廃液管106に留まる。
【0037】
精製溶液管105の塩素イオン濃度が十分に低下したら、精製溶液管105を流れる溶液の一部あるいは全部を取り出し、精製すべき溶液を追加するとよい。同時に、廃液管106を流れる溶液の一部あるいは全部を取り出し、純水あるいはイオン濃度の低い溶液を追加するとよい。取り出した溶液は酸化グラファイトを含む。
【0038】
なお、廃液管106から得られる溶液中には、塩酸が含まれているが、この溶液を図2に示す工程の原料として用いることもできる。
【0039】
以上のようにして得られた酸化グラファイトを含む溶液を蒸発させる(図2のP6)。得られる固形物は純度の高い酸化グラファイトである。さらに、酸化グラファイトを適切な溶媒に懸濁させ、超音波処理をおこなうことで、酸化グラファイトの層状構造を破壊し、酸化グラフェンを得ることができる(図2のP7)。
【0040】
なお、図2のP6の工程は必ずしも必要ではなく、電気透析で精製した溶液に対してそのまま超音波処理をおこなうことで酸化グラフェンを得ることもできる。
【0041】
(実施の形態2)
本実施の形態では、陽イオン交換膜の代わりにバイポーラ膜を用いる溶液の精製方法について説明する。バイポーラ膜とは陰イオン交換膜と陽イオン交換膜を張り合わせたものであり、バイポーラ膜に水(HO)を分解するのに必要とされる電圧以上の電圧をかけると、水を水素イオン(H)と水酸化物イオン(OH)に分離する作用を有する(特許文献3、特許文献4参照)。その際、バイポーラ膜の陰イオン交換膜側からは水素イオンが、陽イオン交換膜側からは水酸化物イオンが放出される。
【0042】
本実施の形態の電気透析を図4(B)を用いて説明する。なお、本実施の形態で説明する電気透析に用いる装置は、図4(B)をもとに、図1と同様に構築できる。本実施の形態で用いる電気透析装置は、陽極111、陰極112、陰イオン交換膜113、バイポーラ膜114を有する。
【0043】
図4(B)に示すように、図4(A)の陽イオン交換膜104の代わりにバイポーラ膜114を設ける。バイポーラ膜114の陽極111側は陰イオン交換膜であり、陰極112側は陽イオン交換膜である。
【0044】
また、陰イオン交換膜113とバイポーラ膜114の間には、精製溶液管115が設けられ、陽極111と陰イオン交換膜113の間および陰極112とバイポーラ膜114の間には廃液管116が設けられる。
【0045】
最初に、精製溶液管115には、酸化グラファイトを含む溶液を流し、廃液管116には純水あるいは適切な電解質を含む溶液を流す。
【0046】
以上の構成において、陽極111と陰極112の間に適切な電圧を印加すると、精製溶液管115にある溶液中の塩素イオンが陰イオン交換膜113を透過して、廃液管116に移動する。その結果、精製溶液管115にある溶液中の塩素イオン濃度が低下する。
【0047】
また、バイポーラ膜114では水が分解され、廃液管116には水素イオンが、精製溶液管115には水酸化物イオンが供給される。この結果、廃液管116では塩酸が得られる。得られた塩酸は図2に示す工程の原料として用いることができる。また、精製溶液管115に放出された水酸化物イオンは、精製溶液管115中の水素イオンと結合して水となる。
【0048】
本実施の形態の電気透析は、処理すべき溶液中の水素イオン以外の陽イオンの濃度が十分に低い場合には、実施の形態1で示した電気透析に比較して、効率的に塩素イオンを除去できる。一方、水素イオン以外の陽イオンは精製溶液管115から排出できないので、水素イオン以外の陽イオン濃度がある程度高い場合には利用できないこともある。
【0049】
(実施の形態3)
本実施の形態でも、電気透析の工程において、酸化グラファイト溶液からイオンを分離する際に、バイポーラ膜を用いる方法に関して説明する。
【0050】
本実施の形態の電気透析を図4(C)を用いて説明する。なお、本実施の形態で説明する電気透析に用いる装置は、図4(C)をもとに、図1と同様に構築できる。本実施の形態で用いる電気透析装置は、陽極121、陰極122、陰イオン交換膜123、第1のバイポーラ膜124、第2のバイポーラ膜127を有する。
【0051】
図4(C)に示すように、陽極121と陰イオン交換膜123の間に第2のバイポーラ膜127を設け、陰極122と陰イオン交換膜123の間に第1のバイポーラ膜124を設ける。第1のバイポーラ膜124の陽極121側は陰イオン交換膜であり、第2のバイポーラ膜127の陰極122側は陽イオン交換膜である。また、陰イオン交換膜123と第1のバイポーラ膜124の間には、精製溶液管125が設けられる。
【0052】
陰イオン交換膜123と第2のバイポーラ膜127の間には廃液管126が設けられる。また、第1のバイポーラ膜124と陰極122の間と第2のバイポーラ膜127と陽極121の間には中和管128が設けられる。
【0053】
最初に、精製溶液管125には、酸化グラファイトを含む溶液を流し、廃液管126、中和管128には、純水あるいは適切な濃度の電解質を有する溶液が流される。
【0054】
以上の構成において、陽極121と陰極122の間に適切な電圧を印加すると、精製溶液管125にある溶液中の塩素イオンは陰イオン交換膜123を透過して、廃液管126に移動する。その結果、精製溶液管125にある溶液中の塩素イオン濃度が低下する。
【0055】
また、第1のバイポーラ膜124では水が分解され、精製溶液管125には水酸化物イオンが、中和管128には水素イオンが供給される。また、第2のバイポーラ膜127では、廃液管126には水素イオンが、中和管128には水酸化物イオンが供給される。この結果、廃液管126では塩酸が得られる。得られた塩酸は図2に示す工程の原料として用いることができる。
【0056】
また、中和管128には、第1のバイポーラ膜124と第2のバイポーラ膜127によって水素イオンと水酸化物イオンが供給されるが、これらはただちに中和反応して、水となる。図4(C)の電気透析装置では、塩素イオンが陽極121に触れることがないので、陽極121が腐食することや、塩素ガスが発生することがない。したがって、装置を安全に稼動させることができる。
【0057】
(実施の形態4)
本実施の形態では、酸化グラフェンを作製する工程について図5(A)を用いて説明する。なお、本実施の形態では、実施の形態1乃至実施の形態3とは異なり、電気透析(図2のP5)をおこなう前にPH調整剤を精製すべき溶液に添加して、溶液の水素イオン濃度はPH6乃至PH8とする。
【0058】
PH調整剤としては各種アルカリ溶液、アルカリ塩を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム等を用いるとよい。
【0059】
なお、酸化グラファイトや酸化グラフェン、グラフェンの用途によっては、PH調整剤に含まれる陽イオンが特性を劣化させる不純物となることがある。PH調整剤に含まれる陽イオンの多くは電気透析により除去できるが、微量が酸化グラファイトや酸化グラフェン、グラフェン中に残存することがある。
【0060】
例えば、作製する酸化グラファイトや酸化グラフェン、グラフェンをリチウムイオン二次電池の原料に用いるのであれば、PH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウムを用いるよりも、水酸化リチウムや炭酸リチウムを用いることが好ましい。
【0061】
また、その後に200℃以上の温度で加熱する工程があるのであれば、水酸化アンモニウムを用いてもよい。加熱工程で水酸化アンモニウムは揮発し、酸化グラファイトや酸化グラフェン、グラフェン中には残らない。
【0062】
本実施の形態の電気透析について、図5(A)を用いて簡単に説明する。なお、本実施の形態の電気透析では、図1に示す装置と同等な装置を用いることができる。ここではPH調整剤として、水酸化物(MOH)を用いたとする。図5(A)には、陽極131、陰極132、陰イオン交換膜133、陽イオン交換膜134、精製溶液管135、廃液管136を示す。陽極131と陰極132の間には電圧が印加されている。
【0063】
精製溶液管135を流れる溶液に含まれている塩素イオン(Cl)と陽イオン(M)は、それぞれ陽極131、陰極132に引き寄せられ、陰イオン交換膜133、陽イオン交換膜134に到達し、塩素イオンは陰イオン交換膜133を透過して、陽極131側の廃液管136に到達し、陽イオンは陽イオン交換膜134を透過して、陰極132側の廃液管136に到達する。このようにして、精製溶液管135のイオン濃度は低下する。逆に廃液管136のイオン濃度は上昇する。
【0064】
精製溶液管135のイオン濃度が十分に低下したら、精製溶液管135を流れる溶液の一部あるいは全部を取り出し、精製すべき溶液を追加するとよい。同時に、廃液管136を流れる溶液の一部あるいは全部を取り出し、純水あるいはイオン濃度の低い溶液を追加するとよい。
【0065】
なお、廃液管136から得られる溶液中には、塩素イオン、陽イオンが含まれているが、この溶液を電気分解して、塩酸と水酸化物(MOH、PH調整剤)を取り出して、それぞれ酸化グラファイトを作製する原料として用いることもできる。以上のようにして得られた酸化グラファイトを含む溶液より、酸化グラフェンを得ることができる。
【0066】
(実施の形態5)
実施の形態4では、廃液として陽イオンと塩素イオンの混じった溶液を得た。上記のように、この廃液は電気分解によって、塩酸と水酸化物とし、それぞれ酸化グラファイトの作製工程に使用することができる。これに対し、本実施の形態では、廃液を電気分解するのではなく、バイポーラ膜を用いることで、電気透析の工程(図2のP5)で同時に塩酸と水酸化物を得る方法について説明する。
【0067】
本実施の形態の電気透析を図5(B)を用いて説明する。なお、本実施の形態で説明する電気透析に用いる装置は、図5(B)をもとに、図1と同様に構築できる。本実施の形態で用いる電気透析装置は、陽極141、陰極142、陰イオン交換膜143、陽イオン交換膜144、第1のバイポーラ膜148、第2のバイポーラ膜149を有する。
【0068】
図5(B)に示すように、陽極141と陰イオン交換膜143の間に第1のバイポーラ膜148を設け、陰極142と陽イオン交換膜144の間に第2のバイポーラ膜149を設ける。第1のバイポーラ膜148の陽極141側は陰イオン交換膜であり、第2のバイポーラ膜149の陰極142側は陽イオン交換膜である。
【0069】
また、陰イオン交換膜143と陽イオン交換膜144の間には、精製溶液管145が設けられ、陰イオン交換膜143と第1のバイポーラ膜148の間と第2のバイポーラ膜149と陰極142の間には酸管146が設けられ、陽イオン交換膜144と第2のバイポーラ膜149の間と第1のバイポーラ膜148と陽極141の間にはアルカリ管147が設けられる。
【0070】
最初に、精製溶液管145には、酸化グラファイトを含む溶液を流し、酸管146、アルカリ管147には純水あるいは適切な電解質を含む溶液を流す。
【0071】
以上の構成において、陽極141と陰極142の間に適切な電圧を印加すると、精製溶液管145にある溶液中の塩素イオンと陽イオンは、それぞれ、陰イオン交換膜143と陽イオン交換膜144を透過して、酸管146とアルカリ管147に移動する。その結果、精製溶液管145にある溶液中のイオン濃度が低下する。
【0072】
また、第1のバイポーラ膜148と第2のバイポーラ膜149では水が分解され、酸管146には、水素イオンが、アルカリ管147には水酸化物イオンが供給される。この結果、酸管146では塩酸が、アルカリ管147では水酸化物が得られる。得られた塩酸と水酸化物は、それぞれ酸化グラファイトを作製する原料として用いることができる。
【0073】
(実施の形態6)
本実施の形態でも、実施の形態5と同様に電気透析の工程において、酸化グラファイト溶液からイオンを分離する際に、バイポーラ膜を用いて、陽イオンと陰イオンを分別して回収し、塩酸と水酸化物(MOH)を得る方法に関して説明する。
【0074】
本実施の形態の電気透析を図5(C)を用いて説明する。なお、本実施の形態で説明する電気透析に用いる装置は、図5(C)をもとに、図1と同様に構築できる。本実施の形態で用いる電気透析装置は、陽極151、陰極152、陰イオン交換膜153、陽イオン交換膜154、第1のバイポーラ膜158、第2のバイポーラ膜159を有する。
【0075】
図5(C)に示すように、陽極151と陰イオン交換膜153の間に第1のバイポーラ膜158を設け、陰極152と陽イオン交換膜154の間に第2のバイポーラ膜159を設ける。第1のバイポーラ膜158の陽極151側は陰イオン交換膜であり、第2のバイポーラ膜159の陰極152側は陽イオン交換膜である。また、陰イオン交換膜153と陽イオン交換膜154の間には、精製溶液管155が設けられる。ここまでの構成は図5(B)に示すものと同じである。
【0076】
図5(C)に示す電気透析装置では以下の構成が、図5(B)と異なる。陰イオン交換膜153と第1のバイポーラ膜158の間には酸管156が設けられ、陽イオン交換膜154と第2のバイポーラ膜159の間にはアルカリ管157が設けられる。そして、第1のバイポーラ膜158と陽極151の間と第2のバイポーラ膜159と陰極152の間には中性液管160が設けられる。
【0077】
最初に、精製溶液管155には、酸化グラファイトを含む溶液を流し、酸管156、アルカリ管157には純水あるいは適切な電解質を含む溶液を流す。また、中性液管160には、純水あるいは適切な濃度の電解質を有する溶液が流される。
【0078】
以上の構成において、陽極151と陰極152の間に適切な電圧を印加すると、精製溶液管155にある溶液中の塩素イオンと陽イオンは、それぞれ、陰イオン交換膜153と陽イオン交換膜154を透過して、酸管156とアルカリ管157に移動する。その結果、精製溶液管155にある溶液中のイオン濃度が低下する。
【0079】
また、第1のバイポーラ膜158と第2のバイポーラ膜159では水が分解され、酸管156には、水素イオンが、アルカリ管157には水酸化物イオンが供給される。この結果、酸管156では塩酸が、アルカリ管157では水酸化物が得られる。得られた塩酸と水酸化物は、それぞれ酸化グラファイトを作製する工程の原料として用いることができる。
【0080】
また、中性液管160には、第1のバイポーラ膜158と第2のバイポーラ膜159によって水酸化物イオンと水素イオンが供給されるが、これらはただちに中和反応して、水となる。図5(C)の電気透析装置では、塩素イオンが陽極151に触れることがないので、陽極151が腐食することや、塩素ガスが発生することがない。したがって、装置を安全に稼動させることができる。
【0081】
(実施の形態7)
本実施の形態では、酸化グラフェンを作製する工程について図3および図6を用いて説明する。本実施の形態では、電気透析を2段階に分けておこなう。図3には、本実施の形態の酸化グラフェンの作製工程の概略を示す。電気透析以外の工程は、実施の形態1を参照すればよい。最初に、グラファイトに濃硫酸および酸化剤を添加し、酸化グラファイトを得る(図3のP1)。
【0082】
さらに、過剰な酸化剤を失活させるために、過酸化水素水を添加する(図3のP2)。この段階での溶液は、各種のイオンや酸化グラファイト以外の沈殿、未反応のグラファイト等を含んでいる。まず、溶液をろ過することで水溶性のイオンの大部分を除去する(図3のP3)。
【0083】
さらに、残った固形物(酸化グラファイトや酸化グラファイト以外の沈殿、未反応のグラファイト等を含む)に純水を加え、さらに溶液の水素イオン濃度をPH3以下として、沈殿を溶解させる。PH調整のためには塩酸を添加するとよい。
【0084】
このようにして得られた溶液から塩素イオンを除去するために電気透析を用いる。本実施の形態では、第1の電気透析の工程(図3のP5A)と第2の電気透析の工程(図3のP5B)と2段階の電気透析をおこなう。第1の電気透析の工程前に、PH調整剤を添加して、溶液の水素イオン濃度はPH6乃至PH8とすることが好ましい。
【0085】
ここで、第1の電気透析について、図6(A)を用いて簡単に説明する。第1の電気透析に用いる電気透析装置は図1に示すものと同等なものを用いることができる。ここではPH調整剤として、水酸化物(MOH)を用いたとする。図6(A)には、陽極161、陰極162、陰イオン交換膜163、陽イオン交換膜164、精製溶液管165、廃液管166を示す。陽極161と陰極162の間には電圧が印加されている。精製溶液管165を流れる溶液に含まれている塩素イオン(Cl)と陽イオン(M)は、塩素イオンは陰イオン交換膜163を透過して、陽極161側の廃液管166に、陽イオンは陽イオン交換膜164を透過して、陰極162側の廃液管166に到達する。このようにして、精製溶液管165のイオン濃度は低下する。逆に、廃液管166のイオン濃度は上昇する。
【0086】
精製溶液管165のイオン濃度が十分に低下したら、精製溶液管165を流れる溶液の一部あるいは全部を取り出し、精製すべき溶液を追加するとよい。取り出した溶液には、酸化グラファイト以外に、微量の陽イオンが含まれる。そのほとんどは、PH調整剤として添加されたものを起源とする。酸化グラファイトは、溶液中では電離して、陰イオン状の物質(GO)となるため、電気的に中性を保つために相応の陽イオンが必要なため、どうしても微量の陽イオンが残存する。この陽イオンは次の第2の電気透析の工程で除去される。
【0087】
なお、廃液管166を流れる溶液もイオンの濃度が高くなれば、その一部あるいは全部を取り出し、純水あるいはイオン濃度の低い溶液を追加するとよい。なお、廃液管166から得られる溶液中には、塩素イオン、陽イオンが含まれているが、この溶液を電気分解して、塩酸と水酸化物(MOH)を取り出して、それぞれを図3に示す工程の原料として用いることもできる。
【0088】
なお、第1の電気透析を、実施の形態5(あるいは図5(B))あるいは実施の形態6(あるいは図5(C))に示したように、バイポーラ膜を用いた方法でおこなうと、この工程において塩酸と水酸化物が得られる。すなわち、第1の電気透析に用いる装置として、実施の形態5あるいは実施の形態6に示される装置を用いてもよい。実施の形態5に示される装置で電気透析をおこなった場合には、精製溶液管145に残留する溶液に対して、第2の電気透析をおこなえばよい。実施の形態6に示される装置で、電気透析をおこなった場合も同様である。
【0089】
第2の電気透析の工程(図3のP5B)に用いる電気透析装置は、図1に示される電気透析装置の陰イオン交換膜163の代わりにバイポーラ膜173を用いたものである。図6(B)を用いて第2の電気透析の原理を説明する。図6(B)には、陽極171、陰極172、バイポーラ膜173、陽イオン交換膜174、精製溶液管175、廃液管176を示す。なお、バイポーラ膜の陽極171側は陰イオン交換膜であり、陰極172側は陽イオン交換膜である。
【0090】
陽極171と陰極172の間には電圧が印加されている。精製溶液管175を流れる溶液は、水素イオン濃度がPH6以上であることが好ましい。この溶液には陽イオン(M)と酸化グラファイトの電離したもの(GO)が含まれているが、そのうち陽イオン(M)は陰極172に引き寄せられ、陽イオン交換膜174を透過して廃液管176に至る。
【0091】
一方、バイポーラ膜173では、水が分解され、水酸化物イオン(OH)は陽極171側(すなわち、廃液管176)に、水素イオン(H)は陰極172側(すなわち、精製溶液管175)に放出される。その結果、精製溶液管175には、純度の高い酸化グラファイトが残り、廃液管176では水酸化物が得られる。廃液管176で得られる水酸化物は、上記のPH調整剤として使用できる。
【0092】
以上のようにして得られる溶液は純度の高い酸化グラファイトを含む。この酸化グラファイトを含む溶液に対して超音波処理をおこなうことで、酸化グラファイトの層状構造を破壊し、酸化グラフェンを得ることができる(図3のP7)。
【0093】
(実施の形態8)
本実施の形態では蓄電装置(以下では、リチウムイオン二次電池)の作製方法について図7を用いて説明する。図7(A)は、蓄電装置301の平面図であり、図7(A)の一点鎖線A−Bの断面図を図7(B)に示す。
【0094】
図7(A)に示す蓄電装置301は、外装部材302の内部に蓄電セル303を有する。また、蓄電セル303に接続する端子部304、端子部305を有する。外装部材302には、ラミネートフィルム、高分子フィルム、金属フィルム、金属ケース、プラスチックケース等を用いることができる。
【0095】
図7(B)に示すように、蓄電セル303は、負極306と、正極307と、負極306及び正極307の間に設けられるセパレータ308と、外装部材302中に満たされる電解質309とで構成される。
【0096】
負極306は、負極集電体310及び負極活物質層311を含んで構成される。正極307は、正極集電体312及び正極活物質層313を含んで構成される。負極活物質層311は、負極集電体310の一方または両方の面に形成される。正極活物質層313は、正極集電体312の一方または両方の面に形成される。
【0097】
また、負極集電体310は、端子部304と接続する。また、正極集電体312は、端子部305と接続する。また、端子部304、端子部305は、それぞれ一部が外装部材302の外側に導出されている。
【0098】
正極集電体312には、アルミニウム、ステンレス等を用いる。正極集電体312には、箔状、板状、網状等の形状を適用することができる。負極集電体310は銅、チタン等を用いて形成できる。
【0099】
電解質309の溶質は、キャリアイオンであるリチウムイオンを移送可能で、且つリチウムイオンが安定に存在する材料を用いる。電解質の溶質の代表例としては、LiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、Li(CSON等のリチウム塩がある。なお、キャリアイオンを、リチウム以外のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンとする場合には、電解質309の溶質として、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩、ベリリウム塩、マグネシウム塩、等を適宜用いることができる。
【0100】
また、電解質309の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解質309の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。
【0101】
また、電解質309の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液のリスクが低減し、安全性が高まる。また、蓄電装置301の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解質309として、LiPO等の固体電解質を用いることができる。
【0102】
セパレータ308には、絶縁性の多孔体を用いる。セパレータ308としては、セルロース(紙)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機物を用いて作製できる。その他にガラス繊維等の無機物を用いてもよい。
【0103】
以下に、負極活物質層311、正極活物質層313の作製方法について簡単に説明する。まず、添加剤として用いる酸化グラフェンを作製する。酸化グラフェンの作製は実施の形態1乃至7を参照できる。なお、酸化グラフェンは官能基により周囲が終端されているため、水やクロロホルムやN,N−dimethylformamide(DMF)やN−methylpyrrolidone(NMP)等の極性溶媒中に懸濁させることができる。
【0104】
次に酸化グラフェンと活物質粒子とを混合する。混合する際、活物質粒子の比率が混合物の90%以上、好ましくは95%以上となるようにするとよい。混合する前に酸化グラフェンのみを水あるいはNMP等の溶液に懸濁させるとよい。その後、活物質粒子を混合することでスラリーが得られる。アセチレンブラック等の他の導電助剤やバインダーを適宜、混入してもよい。
【0105】
上述の通り、酸化グラフェンはさまざまな官能基を多数有しており、なかでもカルボキシル基やヒドロキシル基のため、酸化グラフェン自体が理想的な分散剤として機能する。そのため、特に粒径100nm以下の微粒子を混合する際には二次粒子の生成を抑制できる。
【0106】
活物質としてはさまざまな材料を用いることができる。例えば、正極活物質の材料としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、珪酸マンガンリチウム、珪酸鉄リチウム等を用いることができるが、これに限らない。また、負極活物質の材料としては、珪素やスズ、ゲルマニウム、グラファイト等を用いることができる。
【0107】
活物質粒子の粒径は20nm乃至100nmとするとよい。また、正極活物質粒子の作製工程においてグルコース等の炭水化物を混合して、正極活物質粒子にカーボンをコーティングしてもよい。この処理により導電性が高まる。
【0108】
得られた正極活物質粒子と酸化グラフェンを含むスラリーを正極集電体312に、得られた負極活物質粒子と酸化グラフェンを含むスラリーを負極集電体310にそれぞれ塗布する。厚さは、任意に設定できるが、1μm乃至1mmとするとよい。その後、スラリーを乾燥させる。乾燥後は必要に応じてプレスしてもよい。
【0109】
その後、酸化グラフェンを還元させるために大気中、真空中あるいは窒素やアルゴン等の還元雰囲気中で150℃乃至900℃で還元させる。温度は集電体や活物質の耐熱性、酸化グラフェンに求められる導電率等を考慮して決定すればよい。
【0110】
また、この還元処理の過程において、酸化グラフェン分子が、隣接する酸化グラフェン分子と結合し、より巨大なグラフェンへと成長し、網の目のような立体的なネットワークが形成される。その際、この分子内に活物質粒子が取り込まれるため、結果的に活物質粒子間の結合力が高められる。
【0111】
なお、グラフェンは、還元温度により導電性が変化するが、それ以外にも柔軟性や強度等も変化する。必要とする導電性、柔軟性、強度等を考慮して、還元温度を決定すればよい。また、導電性が十分でないグラフェンをバインダーの代わりに使用するのであれば、導電性を補うために公知の導電助剤を必要量添加することが好ましい。
【0112】
なお、本実施の形態では、蓄電装置301として、パウチされた薄型蓄電装置を示したが、ボタン型蓄電装置、円筒型蓄電装置、角型蓄電装置等、様々な構造の蓄電装置を実現しうる。また、本実施の形態では、正極、負極、及びセパレータが積層された構造を示したが、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0113】
リチウムイオン二次電池は、メモリー効果が小さく、エネルギー密度が高く、放電容量が大きい。また、出力電圧が高い。そして、これらによって、小型化及び軽量化が可能である。また、充放電の繰り返しによる劣化が少なく、長期間の使用が可能であり、コスト削減が可能である。
【0114】
次に、蓄電装置の別の例であるキャパシタの構造について説明する。キャパシタの代表例としては、二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等がある。ここではリチウムイオンキャパシタについて説明する。リチウムイオンキャパシタは、充放電の効率が高く、急速充放電が可能であり、繰り返し利用による寿命も長い。
【0115】
キャパシタの場合は、図7(B)に示すリチウムイオン二次電池の正極活物質層313の代わりに、リチウムイオン及び/またはアニオンを可逆的に吸蔵できる材料を用いればよい。正極活物質層313の代表例としては、活性炭、導電性高分子、ポリアセン有機半導体(PAS)がある。これらの微粒子を上述のように酸化グラフェンと混合してスラリーを作製し、正極集電体に塗布した後、還元処理を施すとよい。また、負極として上記に示す負極集電体、負極活物質層を含む電極を用いるとよい。
【0116】
なお、開示する発明の一形態である電極を用いる蓄電装置は、上述のものに限られない。例えば、蓄電装置の別の一形態である空気電池の負極として上記に示す負極集電体及び負極活物質層を含む電極を用いることも可能である。この場合にも、サイクル特性の向上した蓄電装置を作製することができる。
【0117】
(実施の形態9)
実施の形態8に示した蓄電装置は、電力により駆動する様々な電子機器・電気機器の電源として用いることができる。
【0118】
本発明の一態様に係る蓄電装置を用いた電子機器・電気機器の具体例として、表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、携帯電話、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等のカメラ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、エアコンディショナーなどの空調設備、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫等の電化製品、DNA保存用冷凍庫、透析装置等の医療用機器などが挙げられる。
【0119】
また、蓄電装置からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電子機器・電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車、内燃機関と電動機を併せ持った複合型自動車(ハイブリッドカー)、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車などが挙げられる。
【0120】
なお、上記電子機器・電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための蓄電装置(主電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電子機器・電気機器は、上記主電源や商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電子機器・電気機器への電力の供給を行うことができる蓄電装置(無停電電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。或いは、上記電子機器・電気機器は、上記主電源や商用電源からの電子機器・電気機器への電力の供給と並行して、電子機器・電気機器への電力の供給を行うための蓄電装置(補助電源と呼ぶ)として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることができる。
【0121】
図8に、上記電子機器・電気機器の具体的な構成を示す。図8において、表示装置401は、本発明の一態様に係る蓄電装置405を用いた電子機器・電気機器の一例である。具体的に、表示装置401は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体402、表示部403、スピーカー部404、蓄電装置405等を有する。本発明の一態様に係る蓄電装置405は、筐体402の内部に設けられている。
【0122】
表示装置401は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置405に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置405を無停電電源として用いることで、表示装置401の利用が可能となる。
【0123】
表示部403には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Device)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0124】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0125】
図8において、据え付け型の照明装置411は、本発明の一態様に係る蓄電装置414を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置411は、筐体412、光源413、蓄電装置414等を有する。図8では、蓄電装置414が、筐体412及び光源413が据え付けられた天井415の内部に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置414は、筐体412の内部に設けられていてもよい。
【0126】
照明装置411は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置414に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置414を無停電電源として用いることで、照明装置411の利用が可能となる。
【0127】
なお、図8では天井415に設けられた据え付け型の照明装置411を例示しているが、本発明の一態様に係る蓄電装置は、天井415以外、例えば側壁416、床417、窓418等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明装置などに用いることもできる。
【0128】
また、光源413には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0129】
図8において、室内機421及び室外機425を有するエアコンディショナーは、本発明の一態様に係る蓄電装置424を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機421は、筐体422、送風口423、蓄電装置424等を有する。図8では、蓄電装置424が、室内機421に設けられている場合を例示しているが、蓄電装置424は室外機425に設けられていてもよい。或いは、室内機421と室外機425の両方に、蓄電装置424が設けられていてもよい。
【0130】
エアコンディショナーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置424に蓄積された電力を用いることもできる。特に、室内機421と室外機425の両方に蓄電装置424が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置424を無停電電源として用いることで、エアコンディショナーの利用が可能となる。
【0131】
なお、図8では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナーを例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディショナーに、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることもできる。
【0132】
図8において、電気冷凍冷蔵庫431は、本発明の一態様に係る蓄電装置435を用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫431は、筐体432、冷蔵室用扉433、冷凍室用扉434、蓄電装置435等を有する。図8では、蓄電装置435が、筐体432の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫431は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、蓄電装置435に蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置435を無停電電源として用いることで、電気冷凍冷蔵庫431の利用が可能となる。
【0133】
なお、上述した電子機器・電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助するための補助電源として、本発明の一態様に係る蓄電装置を用いることで、電気機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0134】
また、電子機器・電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、蓄電装置に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫431の場合、気温が低く、冷蔵室用扉433、冷凍室用扉434の開閉が行われない夜間において、蓄電装置435に電力を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉433、冷凍室用扉434の開閉が行われる昼間において、蓄電装置435を補助電源として用いることで、昼間の電力使用率を低く抑えることができる。
【0135】
(実施の形態10)
本実施の形態では、実施の形態8に示した蓄電装置(二次電池)を、無線給電システム(以下、RF給電システムと呼ぶ。)に用いた場合の一例を、図9のブロック図を用いて説明する。なお、図9では、受電装置及び給電装置内の構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとして示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが困難であり、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0136】
はじめに、RF給電システムの概要について説明する。受電装置501は、給電装置511から供給された電力で駆動する電子機器または電気推進車両等に含まれているが、この他電力で駆動する装置に適宜適用することができる。
【0137】
電子機器の代表例としては、デジタルカメラやビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、表示装置、コンピュータ等がある。
【0138】
また、電気推進車両の代表例としては、電気自動車、ハイブリッド自動車、鉄道用電気車両、作業車、カート、車椅子等がある。また、給電装置511は、受電装置501に電力を供給する機能を有する。
【0139】
図9において、受電装置501は、受電装置部502と、電源負荷部509とを有する。受電装置部502は、受電装置用アンテナ回路503と、信号処理回路504と、二次電池505とを少なくとも有する。また、給電装置511は、給電装置用アンテナ回路512と、信号処理回路513とを少なくとも有する。
【0140】
受電装置用アンテナ回路503は、給電装置用アンテナ回路512が発信する信号を受け取る、あるいは、給電装置用アンテナ回路512に信号を発信する役割を有する。信号処理回路504は、受電装置用アンテナ回路503が受信した信号を処理し、二次電池505の充電、二次電池505から電源負荷部509への電力の供給を制御する。また、信号処理回路504は、受電装置用アンテナ回路503の動作を制御する。すなわち、受電装置用アンテナ回路503から発信する信号の強度、周波数などを制御することができる。
【0141】
電源負荷部509は、二次電池505から電力を受け取り、受電装置501を駆動する駆動部である。電源負荷部509の代表例としては、モータ、駆動回路等があるが、その他の電力を受け取って受電装置を駆動する装置を適宜用いることができる。また、給電装置用アンテナ回路512は、受電装置用アンテナ回路503に信号を送る、あるいは、受電装置用アンテナ回路503からの信号を受け取る役割を有する。
【0142】
信号処理回路513は、給電装置用アンテナ回路512が受信した信号を処理する。また、信号処理回路513は、給電装置用アンテナ回路512の動作を制御する。すなわち、給電装置用アンテナ回路512から発信する信号の強度、周波数などを制御することができる。
【0143】
本発明の一態様に係る二次電池は、図9で説明したRF給電システムにおける受電装置501が有する二次電池505として利用される。RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用することで、従来の二次電池に比べて蓄電量を増やすことができる。よって、無線給電の時間間隔を延ばすことができる(何度も給電する手間を省くことができる)。
【0144】
また、RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用することで、電源負荷部509を駆動することができる蓄電量が従来と同じであれば、受電装置501の小型化及び軽量化が可能である。従って、トータルコストを減らすことができる。
【0145】
受電装置501は、受電装置部502と、電源負荷部509とを有する。受電装置部502は、受電装置用アンテナ回路503と、信号処理回路504と、二次電池505と、整流回路506と、変調回路507と、電源回路508とを、少なくとも有する。また、給電装置511は、給電装置用アンテナ回路512と、信号処理回路513と、整流回路514と、変調回路515と、復調回路516と、発振回路517とを、少なくとも有する。
【0146】
受電装置用アンテナ回路503は、給電装置用アンテナ回路512が発信する信号を受け取る、あるいは、給電装置用アンテナ回路512に信号を発信する役割を有する。給電装置用アンテナ回路512が発信する信号を受け取る場合、整流回路506は受電装置用アンテナ回路503が受信した信号から直流電圧を生成する役割を有する。
【0147】
信号処理回路504は受電装置用アンテナ回路503が受信した信号を処理し、二次電池505の充電、二次電池505から電源回路508への電力の供給を制御する役割を有する。電源回路508は、二次電池505が蓄電している電圧を電源負荷部509に必要な電圧に変換する役割を有する。変調回路507は受電装置501から給電装置511へ何らかの応答信号を送信する場合に使用される。
【0148】
電源回路508を有することで、電源負荷部509に供給する電力を制御することができる。このため、電源負荷部509に過電圧が印加されることを低減することが可能であり、受電装置501の劣化や破壊を低減することができる。
【0149】
また、変調回路507を有することで、受電装置501から給電装置511へ信号を送信することが可能である。このため、受電装置501の充電量を判断し、一定量の充電が行われた場合に、受電装置501から給電装置511に信号を送信し、給電装置511から受電装置501への給電を停止させることができる。この結果、二次電池505の充電量を100%としないことで、二次電池505の充電回数を増加させることが可能である。
【0150】
また、給電装置用アンテナ回路512は、受電装置用アンテナ回路503に信号を送る、あるいは、受電装置用アンテナ回路503から信号を受け取る役割を有する。受電装置用アンテナ回路503に信号を送る場合、信号処理回路513は、受電装置に送信する信号を生成する。発振回路517は一定の周波数の信号を生成する。変調回路515は、信号処理回路513が生成した信号と発振回路517で生成された一定の周波数の信号に従って、給電装置用アンテナ回路512に電圧を印加する役割を有する。
【0151】
このようにすることで、給電装置用アンテナ回路512から信号が出力される。一方、受電装置用アンテナ回路503から信号を受け取る場合、整流回路514は受け取った信号を整流する役割を有する。復調回路516は、整流回路514が整流した信号から受電装置501が給電装置511に送った信号を抽出する。信号処理回路513は復調回路516によって抽出された信号を解析する役割を有する。
【0152】
なお、RF給電を行うことができれば、各回路の間に他のどのような回路を設けてもよい。例えば、受電装置501が信号を受信し整流回路506で直流電圧を生成したあとに、後段に設けられたDC−DCコンバータやレギュレータといった回路によって、定電圧を生成してもよい。このようにすることで、受電装置501内部に過電圧が印加されることを抑制することができる。
【0153】
なお、RF給電システムに本発明の一態様に係る二次電池を利用し、受電装置用アンテナ回路503と二次電池505を重ねる場合は、二次電池505の充放電による二次電池505の形状の変化と、当該変形に伴うアンテナの形状の変化によって、受電装置用アンテナ回路503のインピーダンスが変化しないようにすることが好ましい。アンテナのインピーダンスが変化してしまうと、十分な電力供給がなされない可能性があるためである。
【0154】
例えば、二次電池505を金属製あるいはセラミックス製の電池パックに装填するようにすればよい。なお、その際、受電装置用アンテナ回路503と電池パックは数十μm以上離れていることが望ましい。
【0155】
また、充電用の信号の周波数に特に限定はなく、電力が伝送できる周波数であればどの帯域であっても構わない。充電用の信号は、例えば、135kHzのLF帯(長波)でもよいし、13.56MHzのHF帯でもよいし、900MHz〜1GHzのUHF帯でもよいし、2.45GHzのマイクロ波帯でもよい。
【0156】
また、信号の伝送方式として電磁結合方式、電磁誘導方式、共鳴方式、マイクロ波方式など様々な種類があるが、適宜選択すればよい。ただし、雨や泥などの、水分を含んだ異物によるエネルギーの損失を抑えるためには、周波数が低い帯域、具体的には、短波である3MHz〜30MHz、中波である300kHz〜3MHz、長波である30kHz〜300kHz、及び超長波である3kHz〜30kHzの周波数を利用した電磁誘導方式や共鳴方式を用いることが望ましい。
【0157】
本実施の形態は、他の実施の形態などと組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0158】
101 陽極
102 陰極
103 陰イオン交換膜
104 陽イオン交換膜
105 精製溶液管
106 廃液管
107 精製溶液タンク
108 廃液タンク
109 精製溶液ポンプ
110 廃液ポンプ
111 陽極
112 陰極
113 陰イオン交換膜
114 バイポーラ膜
115 精製溶液管
116 廃液管
121 陽極
122 陰極
123 陰イオン交換膜
124 第1のバイポーラ膜
125 精製溶液管
126 廃液管
127 第2のバイポーラ膜
128 中和管
131 陽極
132 陰極
133 陰イオン交換膜
134 陽イオン交換膜
135 精製溶液管
136 廃液管
141 陽極
142 陰極
143 陰イオン交換膜
144 陽イオン交換膜
145 精製溶液管
146 酸管
147 アルカリ管
148 第1のバイポーラ膜
149 第2のバイポーラ膜
151 陽極
152 陰極
153 陰イオン交換膜
154 陽イオン交換膜
155 精製溶液管
156 酸管
157 アルカリ管
158 第1のバイポーラ膜
159 第2のバイポーラ膜
160 中性液管
161 陽極
162 陰極
163 陰イオン交換膜
164 陽イオン交換膜
165 精製溶液管
166 廃液管
171 陽極
172 陰極
173 バイポーラ膜
174 陽イオン交換膜
175 精製溶液管
176 廃液管
301 蓄電装置
302 外装部材
303 蓄電セル
304 端子部
305 端子部
306 負極
307 正極
308 セパレータ
309 電解質
310 負極集電体
311 負極活物質層
312 正極集電体
313 正極活物質層
401 表示装置
402 筐体
403 表示部
404 スピーカー部
405 蓄電装置
411 照明装置
412 筐体
413 光源
414 蓄電装置
415 天井
416 側壁
417 床
418 窓
421 室内機
422 筐体
423 送風口
424 蓄電装置
425 室外機
431 電気冷凍冷蔵庫
432 筐体
433 冷蔵室用扉
434 冷凍室用扉
435 蓄電装置
501 受電装置
502 受電装置部
503 受電装置用アンテナ回路
504 信号処理回路
505 二次電池
506 整流回路
507 変調回路
508 電源回路
509 電源負荷部
511 給電装置
512 給電装置用アンテナ回路
513 信号処理回路
514 整流回路
515 変調回路
516 復調回路
517 発振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトを溶液中で酸化する工程と、
前記溶液の水素イオン濃度がPH3以下となるように酸を添加する工程と、
前記溶液から電気透析により陽イオンを除去する工程と、
を有する酸化グラファイトの作製方法。
【請求項2】
請求項1において、前記酸は塩酸であることを特徴とする酸化グラファイトの作製方法。
【請求項3】
グラファイトを溶液中で酸化する工程と、
前記溶液の水素イオン濃度がPH6乃至8となるようにPH調整剤を添加する工程と、
前記溶液から電気透析により陽イオンおよび陰イオンを除去する工程と、
を有する酸化グラファイトの作製方法。
【請求項4】
請求項3において、前記PH調整剤は、水酸化リチウムであることを特徴とする酸化グラファイトの作製方法。
【請求項5】
請求項3において、前記PH調整剤は、水酸化アンモニウムであることを特徴とする酸化グラファイトの作製方法。
【請求項6】
グラファイトを溶液中で酸化する工程と、
前記溶液の水素イオン濃度がPH6乃至8となるようにPH調整剤を添加する工程と、
前記溶液から陽イオンおよび陰イオンを除去する第1の電気透析の工程と、
前記溶液から陽イオンを除去するバイポーラ膜を用いた第2の電気透析の工程と
を有する酸化グラファイトの作製方法。
【請求項7】
請求項6において、前記第1の電気透析の工程には、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を用いることを特徴とする酸化グラファイトの作製方法。
【請求項8】
請求項6もしくは請求項7において、前記第2の電気透析の工程には、陽イオン交換膜とバイポーラ膜を用いることを特徴とする酸化グラファイトの作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8記載の方法で得られた酸化グラファイトを超音波処理することにより得られた酸化グラフェンの作製方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法で得られた酸化グラフェンを還元することにより得られたグラフェンの作製方法。
【請求項11】
陽極と陰イオン交換膜と陽イオン交換膜と陰極を有し、
前記陽極と前記陽イオン交換膜の間に前記陰イオン交換膜を有し、
前記陰極と前記陰イオン交換膜の間に前記陽イオン交換膜を有し、
前記陽イオン交換膜と前記陰イオン交換膜の間の領域には、酸化グラファイトと陽イオンと陰イオンとを有する溶液を注入することを特徴とする電気透析装置。
【請求項12】
陽極と陰イオン交換膜とバイポーラ膜と陰極を有し、
前記陽極と前記バイポーラ膜の間に前記陰イオン交換膜を有し、
前記陰極と前記陰イオン交換膜の間に前記バイポーラ膜を有し、
前記バイポーラ膜と前記陰イオン交換膜の間の領域には、酸化グラファイトと陽イオンとを有する溶液を注入することを特徴とする電気透析装置。
【請求項13】
前記溶液の水素イオン濃度がPH3以下であることを特徴とする請求項11または請求項12記載の電気透析装置。
【請求項14】
前記溶液の水素イオン濃度がPH6乃至PH8であることを特徴とする請求項11記載の電気透析装置。
【請求項15】
前記陽極と前記陰イオン交換膜の間にバイポーラ膜を有する請求項11もしくは請求項12記載の電気透析装置。
【請求項16】
前記陰極と前記陽イオン交換膜の間にバイポーラ膜を有する請求項11記載の電気透析装置。
【請求項17】
陽極と陽イオン交換膜とバイポーラ膜と陰極を有し、
前記陽極と前記陽イオン交換膜の間に前記バイポーラ膜を有し、
前記陰極と前記バイポーラ膜の間に前記陽イオン交換膜を有し、
前記バイポーラ膜と前記陽イオン交換膜の間の領域には、酸化グラファイトと陽イオンとを有する水素イオン濃度がPH6以上である溶液を注入することを特徴とする電気透析装置。
【請求項18】
請求項17記載の電気透析装置を前記第2の電気透析の工程に用いる請求項6乃至請求項8記載の酸化グラファイトの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−47171(P2013−47171A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−161070(P2012−161070)
【出願日】平成24年7月20日(2012.7.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】