説明

酸化ストレス疾患を治療するための2−ヘテロシクリルアミノアルキル−(p−キノン)誘導体

ミトコンドリア疾患、エネルギープロセシング低下障害、神経変性疾患、および加齢による疾患を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する方法と、2−ヘテロシクリルアミノアルキル−(p−キノン)誘導体などの本発明の方法に有用な化合物とを開示する。一実施形態では、本発明は、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年6月25日に出願された米国仮特許出願第61/133,169号の優先権の利益を主張する。この出願の全内容は、その全体が本明細書によって参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本出願は、疾患の治療、予防、または抑制;発症遅延;および細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレスに関連する症状に有用な組成物および方法を開示する。こうした疾患の例は、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害(impaired energy processing disorder)、神経変性疾患、または加齢による疾患である。
【背景技術】
【0003】
(背景)
酸化ストレスは、細胞内の正常なレドックス状態に対する撹乱によって引き起こされる。過酸化物およびフリーラジカルなどの活性酸素種の、通常の生成と解毒との間の不均衡は、細胞構造および機構に対する酸化損傷をもたらす可能性がある。好気性生物における正常状態下での活性酸素種の最も重要な原料は、おそらく、正常な酸化的呼吸中のミトコンドリアからの活性化された酸素の漏出である。このプロセスに伴う障害は、ミトコンドリア疾患、神経変性疾患、または加齢による疾患に関与することが疑われている。
【0004】
ミトコンドリアは一般に、細胞の「発電所」と呼ばれる、真核細胞における細胞器官である。その第1の機能の1つは、酸化的リン酸化である。アデノシン三リン酸(ATP)分子は、細胞におけるエネルギー「通貨」またはエネルギー担体として機能し、真核細胞は、ミトコンドリアによって実施される生化学的プロセスから、そのATPの大部分を得る。これらの生化学的プロセスは、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)から還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH+H)を産生するクエン酸回路(トリカルボン酸回路またはクレブズ回路)、および酸化的リン酸化(この間に、NADH+Hが、NADに再び酸化される)を含む。(クエン酸回路はまた、フラビンアデニンヌクレオチドすなわちFADをFADHに還元し;FADHはまた、酸化的リン酸化に関与する)。
【0005】
NADH+Hの酸化によって放出された電子は、ミトコンドリア呼吸鎖として知られている一連のタンパク質複合体(複合体I、複合体II、複合体III、および複合体IV)に輸送される。これらの複合体は、ミトコンドリアの内膜中に埋め込まれる。複合体IVは、鎖の最後で、酸素に電子を移し、これは、水に還元される。これらの電子が横断すると、エネルギーが放出され、複合体は、ミトコンドリアの内膜を横切るプロトン勾配を産生するために使用され、これによって、内膜全体の電気化学ポテンシャルがもたらされる。別のタンパク質複合体、すなわち複合体V(これは、複合体I、II、III、およびIVと直接的に関連しない)は、電気化学的勾配によって蓄積されたエネルギーを使用し、ADPをATPに転換する。
【0006】
生物中の細胞が一時的に酸素を奪われる場合、酸素が再び入手できるまで無気呼吸が利用される、または、細胞は死ぬ。解糖中に産生されたピルビン酸は、無気呼吸中に乳酸に転換される。酸素が筋細胞に供給されることができない場合、乳酸の蓄積は、活動の強度の高い期間中の筋疲労の原因となると考えられている。酸素が再び入手できると、乳酸は、酸化的リン酸化に使用するためのピルビン酸に再び転換される。
【0007】
体に損傷を与える、また、フリーラジカルならびに他の構造(一酸化窒素、パーオキシナイトライト、および水素三酸化物(trioxidane)など)の形成を増加させる可能性がある酸素の中毒または毒性は、高濃度の酸素によって引き起こされる。通常、体は、こうした損傷に対する多くの防御系を有するが、より高濃度の遊離酸素では、これらの系は、最終的には時間と共に抑えられ、細胞膜に対する損傷の速度は、それを制御または修復する系の能力を超えてしまう。そして、細胞障害および細胞死が起こる。
【0008】
組織への酸素の輸送の質的および/または量的途絶は、赤血球の機能におけるエネルギー途絶をもたらし、異常ヘモグロビン症(haemoglobinopathy)などの様々な疾患に関与する。異常ヘモグロビン症は、ヘモグロビン分子のグロビン鎖のうちの1つの異常構造をもたらす、ある種の遺伝子欠損である。一般的な異常ヘモグロビン症としては、地中海貧血症および鎌状赤血球貧血症が挙げられる。地中海貧血症は、遺伝性の常染色体劣性の血液障害である。地中海貧血症では、遺伝子欠損は、ヘモグロビンを構成するグロビン鎖のうちの1つの合成の速度の低下をもたらす。地中海貧血症が、あまりに少ないグロビンしか合成されないという量的問題である一方、鎌状赤血球貧血症は、不適切に機能しているグロビンの合成という質的問題である。鎌状赤血球貧血症は、硬く異常な鎌状形状を呈する赤血球によって特徴づけられる血液疾患である。鎌状赤血球化により、細胞の柔軟性が低下し、血管を介するその移動が制限され、下流の組織に酸素が欠乏する。
【0009】
ミトコンドリア機能不全は、様々な病態に関与する。ある種のミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアゲノムにおける突然変異または欠失に起因する。細胞中の閾値割合のミトコンドリアが欠陥性である場合、また、組織内の閾値割合のこうした細胞が、欠陥性のミトコンドリアを有する場合、組織または器官の機能不全の症状が生じる可能性がある。実際に、いずれの組織も影響を受ける可能性があり、また、様々な組織が関与する程度に応じて、多種多様な症状が現れる可能性がある。ミトコンドリア疾患のある種の例は、フリードライヒ失調症(FRDA)、レーバー遺伝性視神経症(LHON)、ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症(lactacidosis)、および脳卒中(MELAS)、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)症候群、リー病、および呼吸鎖障害である。神経変性疾患、脳卒中、失明、聴覚障害、視覚障害、糖尿病、および心不全を含めた大抵のミトコンドリア疾患は、老化加速の徴候および症状を現す小児に伴われる。
【0010】
フリードライヒ失調症は、タンパク質フラタキシンのレベル低下によって引き起こされる、常染色体劣性の神経変性および心臓変性障害である。この疾患は、進行性の随意運動協調性の喪失(運動失調)および心臓合併症を引き起こす。症状は一般的に、幼年期に開始し、患者が成長するにつれて、疾患は次第に悪化し;患者は、最終的には運動障害により車椅子生活となる。
【0011】
レーバー遺伝性視神経症(LHON)は平均27から34歳で発症する失明によって特徴づけられる疾患である。心臓の異常および神経学的合併症などの他の症状も発症する可能性がある。
【0012】
ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS)は、乳児、小児または若年成人に現れる可能性がある。嘔吐や発作を伴う脳卒中は、最も重い症状の1つである;虚血性発作で起こるような血流の障害ではなく、脳のある種の領域におけるミトコンドリアの代謝障害が、細胞死および神経学的病変の原因となると仮定される。
【0013】
赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)症候群は、ミトコンドリア脳筋症と呼ばれる珍しい筋疾患のグループのうちの1つである。ミトコンドリア脳筋症は、遺伝物質の異常が、エネルギーを放出する細胞構造の部分(ミトコンドリア)に起因する障害である。これは、脳および筋肉の機能不全(脳筋症)を引き起こす可能性がある。ミトコンドリア異常ならびに「赤色ぼろ線維」(顕微鏡下で見た時の組織の異常)は、常に存在する。MERRF症候群の最も特徴的な症状は、四肢または体全体に及ぶ、通常、突然の短時間の律動性の痙攣である筋発作であり、発語困難(構音障害)、視神経萎縮症、低身長、聴力損失、痴呆、および非自発的な目の律動(眼振)も、発症する可能性がある。
【0014】
リー病は、中枢神経系の変性によって特徴づけられる珍しい遺伝性の神経代謝障害である。その症状は通常、3ヶ月から2歳の間に開始し、急速に進行する。大抵の小児では、第1の徴候は、不十分な吸引能力、および首のすわりや運動技能の喪失である可能性がある。これらの症状には、食欲不振、嘔吐、過敏性、連続的に泣くこと、および発作が伴う可能性がある。障害が進行すると、症状には、全身性虚弱、筋緊張の欠如、および乳酸アシドーシス(これは、呼吸および腎臓機能の障害をもたらす可能性がある)発症も含まれ得る。心臓疾患も起こる可能性がある。
【0015】
補酵素Q10欠乏は、運動失調、発作、または精神薄弱によって顕在化される、および、腎不全をもたらす、運動不耐性を伴う筋障害および再発性のミオグロビン尿(Di Mauroら、(2005)、Neuromusc.Disord.15:311〜315)、幼年期に開始する小脳性運動失調症および小脳萎縮(Masumeciら、(2001)、Neurology、56:849〜855、およびLampertiら、(2003)60:1206:1208);およびネフローゼを伴う小児脳筋症などの徴候を伴う呼吸鎖障害である。CoQ10欠乏患者の筋肉ホモジネートの生化学的測定では、呼吸鎖複合体IおよびII+IIIの活性の著しい低下が示されたのに対して、複合体IV(COX)は、穏やかに低下した(Gempelら、(2007)、Brain、130(8):2037〜2044)。
【0016】
複合体I欠乏、またはNADHデヒドロゲナーゼすなわちNADH−CoQ還元酵素欠乏は、3つの主要な形態によって分類される症状を伴う呼吸鎖障害である:(1)発達遅延、筋衰弱、心疾患、先天性乳酸アシドーシス、および呼吸不全によって特徴づけられる致死的な小児多系統障害;(2)運動不耐性または虚弱として顕在化する、幼年期または成人期に開始する筋障害;および(3)幼年期または成人期に開始する可能性があり、眼筋麻痺、発作、痴呆、運動失調、聴力損失、色素性網膜症、感覚神経障害、および制御不能の移動を含めた症状および徴候の可変の組み合わせからなる、ミトコンドリア脳筋症(MELASを含めて)。
【0017】
複合体II欠乏またはコハク酸デヒドロゲナーゼ欠乏は、脳筋症、ならびに発育障害、発達遅延、低血圧症、嗜眠、呼吸不全、運動失調、筋クローヌス、および乳酸アシドーシスを含めた様々な徴候を含めた症状を伴う呼吸鎖障害である。
【0018】
複合体III欠乏またはユビキノン−チトクロムCオキシドレダクターゼ欠乏は、4つの主要な形態によって分類された症状を伴う呼吸鎖障害である:(1)致死的な小児脳筋症、先天性乳酸アシドーシス、低血圧症、ジストロフィー姿勢、発作、および昏睡;(2)その後(幼年期から成人期)に開始する脳筋症:虚弱、低身長、運動失調、痴呆、聴力損失、感覚神経障害、色素性網膜症、および錐体路徴候の様々な組み合わせ;(3)虚弱の固定へと進行する、運動不耐性を伴う筋障害;および(4)小児性織球様心筋症(infantile histiocytoid cardiomyopathy)。
【0019】
複合体IV欠乏またはチトクロムCオキシダーゼ欠乏は、2つの主要な形態によって分類された症状を伴う呼吸鎖障害である:(1)脳筋症(ここでは、患者は一般に、生後6から12ヶ月までは正常であり、その後、発達退行、運動失調、乳酸アシドーシス、視神経萎縮症、眼筋麻痺、眼振、ジストニア、錐体路徴候、呼吸系疾患、および頻繁な発作を示す);および(2)2つの主要な形を有する筋障害:(a)致死的な小児性筋障害−出生後すぐに開始する可能性があり、低血圧症、虚弱、乳酸アシドーシス、赤色ぼろ線維、呼吸不全、および腎臓の問題を伴う:および(b)良性の小児性筋障害−出生後すぐに開始する可能性があり、低血圧症、虚弱、乳酸アシドーシス、赤色ぼろ線維、呼吸系疾患を伴うが、(小児が生存した場合)後に自然に好転する。
【0020】
複合体V欠乏またはATP合成酵素欠乏は、緩徐に進行する筋障害などの症状を含めた呼吸鎖障害である。
【0021】
CPEOすなわち慢性進行性外眼筋麻痺症候群は、眼の筋障害、色素性網膜炎、または中枢神経系の機能不全などの症状を含めた呼吸鎖障害である。
【0022】
カーンズ−セイヤー症候群(KSS)は、以下を含めた3つの特徴によって特徴づけられるミトコンドリア疾患である:(1)一般的に20歳未満の人での開始;(2)慢性の進行性外眼筋麻痺;および(3)網膜色素変性症。さらに、KSSは、心臓伝導異常、小脳性運動失調症、および脳脊髄液(CSF)タンパク質レベルの増加(例えば>100mg/dL)を含む可能性がある。KSSに伴われるさらなる特徴は、筋障害、ジストニア、内分泌異常(例えば、糖尿病、成長遅延、または低身長、および副甲状腺機能低下症)、左右相称の感音性難聴、痴呆、白内障、および近位尿細管性アシドーシスを含む可能性がある。
【0023】
遺伝性欠損があるミトコンドリアを伴う先天性障害に加えて、後天的なミトコンドリア機能不全は、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病のような、加齢に関連する疾患、特に神経変性障害に関与する。ミトコンドリアDNAにおける体細胞突然変異の発生率は、年齢と共に指数関数的に上昇する;呼吸鎖活性の低下は、高齢の人々に一般的に見られる。ミトコンドリア機能不全はまた、興奮毒性のニューロン損傷(脳血管発作、発作、および虚血を伴うものなど)に関連する。
【0024】
上記の疾患は、呼吸鎖の複合体Iの異常によって引き起こされると考えられる。残りの呼吸鎖への複合体Iからの電子伝達は、化合物補酵素Q(別名ユビキノン)によって介在される。酸化型補酵素Q(CoQoxまたはユビキノン)は、複合体Iによって還元型補酵素Q(CoQredまたはユビキノール)に還元される。次いで、還元型補酵素Qは、(複合体IIを省略して)呼吸鎖の複合体IIIにその電子を移し、ここで、これは、CoQox(ユビキノン)に再び酸化される。その後、CoQoxは、電子伝達のさらなる反復に関与することができる。
【0025】
こうしたミトコンドリア疾患を患う患者に利用できる治療は非常に少ない。近年では、化合物イデベノンが、フリードライヒ失調症の治療のために提案されている。イデベノンの臨床的効果は、比較的少ないが、ミトコンドリア疾患の合併症は、非常に重い可能性があるので、有用性が少ない治療であっても、この疾患の未治療の経過よりは好ましい。ミトコンドリア障害を治療するために、別の化合物(MitoQ)も提案されているが(特許文献1を参照のこと)、MitoQについての臨床成績は、まだ報告されていない。コエンザイムQ10(CoQ10)およびビタミン剤の投与は、KSSの個々の場合において、一時的な有益効果しか示されていない。CoQ10補充はまた、CoQ10欠乏の治療のために使用されているが、結果はまちまちである。
【0026】
酸化ストレスは、運動ニューロン疾患、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、クロイツフェルト−ヤコブ病、マシャド−ジョセフ病、脊髄小脳失調、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、およびハンチントン病などの神経変性疾患にとって重大であると推測される。酸化ストレスは、ある種の心臓血管疾患と関連があると考えられ、低酸素後の酸素再灌流傷害に起因する虚血カスケードでも役割を果たす。このカスケードには、脳卒中および心臓発作が含まれる。
【0027】
老化のフリーラジカル説としても知られている損傷蓄積説は、DNA、脂質、およびタンパク質に対する損傷を引き起こし、徐々に蓄積させる、好気的代謝中に生成されるフリーラジカルのランダムな効果を提唱する。老化の進行において役割を果たすフリーラジカルの概念は、Himan D(1956)、「Aging−A theory based on free−radical and radiation chemistry」、J.Gerontol.11、298〜300、によって最初に導入された。
【0028】
老化のフリーラジカル説によれば、老化の進行は、酸素代謝から開始する(Valkoら、(2004)「Role of oxygen radicals in DNA damage and cancer incidence」、Mol.Cell.Biochem.266、37〜56)。理想的な条件下でさえ、ある種の電子は、電子伝達鎖から「漏れる」。これらの漏出電子は、酸素と相互作用してスーパーオキシドラジカルを生成し、その結果、生理的条件下では、ミトコンドリア中の酸素分子の約1〜3%は、スーパーオキシドに転換される。スーパーオキシドラジカルからのラジカル酸素損傷の原発部位は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)である(Cadenasら、(2000)「Mitochondrial free radical generation,oxidative stress and aging」、Free Radic.Res、28、601〜609)。細胞は核DNA(nDNA)に対して行われる損傷のうちの大部分を修復するが、mtDNAは修復することはできない。したがって、広範なmtDNA損傷が次第に蓄積し、ミトコンドリアは停止し、細胞死や生物の老化が引き起こされる。
【0029】
年齢が上がることに伴ういくつかの疾患は、癌、真性糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、虚血/再灌流傷害、慢性関節リウマチ、神経変性障害(痴呆、アルツハイマー病、およびパーキンソン病など)である。生理的衰退としての老化の進行のプロセスに起因する疾患としては、筋力、心肺機能、視覚、および聴覚の低下、ならびに皮膚のしわおよび毛髪の白髪化が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第7,179,928号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
エネルギーの生物的生産を調節する能力は、上述の疾患の域を越えて適用される。様々な他の障害も、ATPレベルなどの、最適以下のレベルのエネルギーバイオマーカー(時として「エネルギー関数の指標」とも呼ばれる)をもたらす可能性がある。1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節して、患者の健康を増進するために、これらの障害の治療も必要である。他の用途では、疾患を患っていない個人における、その正常値から離れたある種のエネルギーバイオマーカーを調節することが望ましい可能性がある。例えば、ある個人が、非常に激しい活動を行っている場合、その個人におけるATPのレベルを増大させることが望ましい可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
(発明の開示)
一実施形態では、本発明は、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法であって、治療有効量または有効量の、式Iの1種または複数の化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を被験体に投与することを含む方法を包含する:
【0033】
【化1】

(式中、Rは、
【0034】
【化2】

からなる群から選択され、
ここでは、は、残りの分子へのRの付着点を示し;
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、任意選択で置換されたヘテロシクリルであり;
MおよびM’は独立に、水素、−C(O)−R10、−C(O)(C〜C)−アルケニル、−C(O)(C〜C)−アルキニル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロシクリル、−C(O)O−R10、−C(O)NR10a10b、−SOOR10、−SO−C〜C−アルキル、−SO−(C〜C)−ハロアルキル、−SO−アリール、−SO−NR10a10b、および−P(O)(OR10a)(OR10b)、およびC連結型アミノ酸またはジペプチドから選択され;
10、R10a、およびR10bは独立に、水素、または、−OH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)、−C(O)OH、−C(O)O−(C〜C)−アルキル、もしくはハロゲンで任意選択で置換された(C〜C)−アルキルである)。
【0035】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する:
【0036】
【化3】

(式中、
該化合物が、2−(2−(9−(3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンでも2−(2−(9−(3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメトキシシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンでもないという条件で、
Rは、
【0037】
【化4】

からなる群から選択され、
ここでは、は、残りの分子へのRの付着点を示し;
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、任意選択で置換されたヘテロシクリルであり;
MおよびM’は独立に、水素、−C(O)−R10、−C(O)(C〜C)−アルケニル、−C(O)(C〜C)−アルキニル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロシクリル、−C(O)O−R10、−C(O)NR10a10b、−SOOR10、−SO−C〜C−アルキル、−SO−(C〜C)−ハロアルキル、−SO−アリール、−SO−NR10a10b、および−P(O)(OR10a)(OR10b)、およびC連結型アミノ酸またはジペプチドから選択され;
10、R10a、およびR10bは独立に、水素、または、−OH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)、−C(O)OH、−C(O)O−(C〜C)−アルキル、もしくはハロゲンで任意選択で置換された(C〜C)−アルキルである)。
【0038】
ある実施形態では、本発明は、R、R、およびRが独立にC〜C−アルキルである化合物を包含する。他の実施形態では、RおよびRは独立にC〜C−アルコキシであり、RはC〜C−アルキルである。他の実施形態では、RおよびRの一方はC〜C−アルコキシであり、他方は水素であり、かつRは独立にC〜C−アルキルである。他の実施形態では、RおよびRの一方はC〜C−アルコキシであり、他方はC〜C−アルキルであり、かつRは独立にC〜C−アルキルである。ある実施形態では、本発明は、R、R、およびRがメチルである化合物を包含する。他の実施形態では、RおよびRはメトキシであり、Rはメチルである。他の実施形態では、RおよびRの一方はメトキシであり、他方は水素であり、かつRはメチルである。他の実施形態では、RおよびRの一方はメトキシであり、他方はメチルであり、かつRはメチルである。
【0039】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量または有効量の、上に述べた通りの式Iの1種または複数の化合物を投与することによって、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害(impaired energy processing disorder)、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法を包含する。ある実施形態では、障害は、フリードライヒ失調症である。他の実施形態では、障害は、MELASである。他の実施形態では、障害は、LHONである。他の実施形態では、障害は、MERFFである。別の実施形態では、障害は、リー病である。
【0040】
別の実施形態では、本発明は、ミトコンドリアの呼吸鎖障害を治療または抑制する方法を包含する。特定の実施形態では、障害は、コエンザイムQ10欠乏である。他の特定の実施形態では、障害は、複合体Iまたは複合体IIまたは複合体IIIまたは複合体IVまたは複合体Vまたはそれらの組み合わせの異常である。
【0041】
別の実施形態では、本発明は、組織への酸素の輸送の質的および/または量的途絶が、赤血球の機能におけるエネルギー途絶をもたらすような障害を治療する方法を包含する。いくつかのこれらの疾患としては、鎌状赤血球貧血症および地中海貧血症などの酸素中毒症および異常ヘモグロビン症が挙げられる。
【0042】
別の実施形態では、本発明は、神経変性障害を治療または抑制する方法を包含する。特定の実施形態では、神経変性障害は、加齢に伴う障害である。他の特定の実施形態では、障害は、ハンチントン病、パーキンソン病、またはアルツハイマー病である。他の特定の実施形態では、障害は、聴覚または平衡感覚の障害をもたらす神経変性障害に関連する。他の特定の実施形態では、障害は、視覚障害をもたらす神経変性障害に関連する。
【0043】
別の実施形態では、本発明は、式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する:
【0044】
【化5】

(式中、
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C(O)(C〜C)アルキル、−C(O)(C〜C)シクロアルキル、−C(O)OH、−C(O)O(C〜C)−アルキル、またはオキソで任意選択で置換されたヘテロシクリルである)。
【0045】
一実施形態では、本発明は、nが0である式Iaの化合物を包含し;別の実施形態では、本発明は、nが1である式Iaの化合物を包含する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、R、R、およびRが、独立に(C〜C)アルキルである式Iaの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、およびRは、メチルである。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、Rが水素である式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、Rが、メチルなどの(C〜C)アルキルである式Iaの化合物を包含する。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、R、R、R、およびRが独立に、(C〜C)アルキルである式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、R、およびRは、メチルである。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、R、R、およびRが独立に(C〜C)アルキルであり、Rが水素である式Iaの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、およびRはメチルであり、Rは水素、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物である。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、R、R、およびRが独立に(C〜C)アルコキシである式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、およびRは、メトキシである。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、R、R、R、およびRが独立に(C〜C)アルコキシである式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、R、およびRは、メトキシである。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、RおよびRが独立に(C〜C)アルコキシであり、Rが(C〜C)アルキルである式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、RおよびRはメトキシであり、Rはメチルである。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、RおよびRが独立に(C〜C)アルコキシであり、Rが(C〜C)アルキルであり、Rが水素である式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、RおよびRはメトキシであり、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0055】
ある実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換された飽和または部分的に不飽和のヘテロシクリルである式Iaの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換されたピペリジン、モルホリン、ピペラジン、チアゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、キヌクリジンである式Iaの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0056】
ある実施形態では、本発明は、Hetが任意選択で置換されたヘテロアリールである式Iaの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換された窒素含有ヘテロアリールである式Iaの化合物を包含する。ある実施形態では、Hetは、任意選択で置換されたピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、またはテトラゾール、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物から選択される。他の実施形態では、Hetは、任意選択で置換されたインドール、キノリン、イソインドール、イソキノリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾトリアゾール、イミダゾ−ピリジン、ピラゾロ−ピラジン、ピラゾロ−ピリダジン、テトラヒドロプリン、ピリミド−ピリミジン、ピラジノ−ピリダジン、アクリジン、ジベンズアゼピン、カルバゾール、フェナントリジン、フェナジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、フェノキサジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジン、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物から選択される。ある実施形態では、Hetは、ピリジン、ピリミジン、4−トリフルオロメチル−ピリミジン−2−イル、4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル、5−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル;6−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル、3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル、5−フルオロ−ピリジン−2−イル、4−フルオロ−ピリジン−2−イル、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物である。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換された、酸素または硫黄含有ヘテロアリールである式Iaの化合物を包含する。ある実施形態では、Hetは、任意選択で置換されたフラン、ピラン、チオフェン、チオピラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン、ベンゾジオキソール、キサンテン、ベンゾチオフェン、ベンゾチオピランおよびチオキサンテン、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物から選択される。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する:
【0060】
【化6】

(ここでは、
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C(O)(C〜C)アルキル、−C(O)(C〜C)シクロアルキル、−C(O)OH、−C(O)O(C〜C)−アルキル、またはオキソで任意選択で置換されたヘテロシクリルであり;
MおよびM’は独立に、水素、−C(O)−R10、−C(O)(C〜C)−アルケニル、−C(O)(C〜C)−アルキニル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロシクリル、−C(O)O−R10、−C(O)NR10a10b、−SOOR10、−SO−C〜C−アルキル、−SO−(C〜C)−ハロアルキル、−SO−アリール、−SO−NR10a10b、および−P(O)(OR10a)(OR10b)、およびC連結型アミノ酸またはジペプチドから選択され;
10、R10a、およびR10bは独立に、水素、または、−OH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)、−C(O)OH、−C(O)O−(C〜C)−アルキル、もしくはハロゲンで任意選択で置換された(C〜C)−アルキルである)。
【0061】
一実施形態では、本発明は、nが0である式Ibの化合物を包含し;別の実施形態では、本発明は、nが1である式Ibの化合物を包含する。
【0062】
一実施形態では、本発明は、R、R、およびRが独立に、C〜C−アルキルである式Ibの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、およびRは、メチルである。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、Rが水素である式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、Rが、メチルなどのC〜C−アルキルである式Ibの化合物を包含する。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、R、R、R、およびRが独立に、C〜C−アルキルである式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、R、およびRは、メチルである。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、R、R、およびRが独立に、C〜C−アルキルであり、Rが水素である式Ibの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、およびRはメチルであり、Rは水素、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物である。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、R、R、およびRが独立に、C〜C−アルコキシである式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、およびRは、メトキシである。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、R、R、R、およびRが独立に、C〜C−アルコキシである式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、R、R、R、およびRは、メトキシである。
【0069】
別の実施形態では、本発明は、RおよびRが独立にC〜C−アルコキシであり、RがC〜C−アルキルである式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、RおよびRはメトキシであり、Rはメチルである。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、RおよびRが独立にC〜C−アルコキシであり、RがC〜C−アルキルであり、Rが水素である式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、RおよびRはメトキシであり、Rはメチルであり、Rは水素である。
【0071】
ある実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換された飽和または部分的に不飽和のヘテロシクリルである式Ibの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。ある実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換されたピペリジン、モルホリン、ピペラジン、チアゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、キヌクリジンである式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0072】
ある実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換されたヘテロアリールである式Ibの化合物;ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換された窒素含有ヘテロアリールである式Ibの化合物を包含する。ある実施形態では、Hetは、任意選択で置換されたピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、またはテトラゾール、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物から選択される。他の実施形態では、Hetは、任意選択で置換されたインドール、キノリン、イソインドール、イソキノリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾトリアゾール、イミダゾ−ピリジン、ピラゾロ−ピラジン、ピラゾロ−ピリダジン、テトラヒドロプリン、ピリミド−ピリミジン、ピラジノ−ピリダジン、アクリジン、ジベンズアゼピン、カルバゾール、フェナントリジン、フェナジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、フェノキサジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジン、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物から選択される。ある実施形態では、Hetは、ピリジン、ピリミジン、4−トリフルオロメチル−ピリミジン−2−イル、4−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル、5−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル;6−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル、3−トリフルオロメチル−ピリジン−2−イル、5−フルオロ−ピリジン−2−イル、4−フルオロ−ピリジン−2−イル、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物である。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、Hetが、任意選択で置換された、酸素または硫黄含有ヘテロアリールである式Ibの化合物を包含する。ある実施形態では、Hetは、任意選択で置換されたフラン、ピラン、チオフェン、チオピラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン、ベンゾジオキソール、キサンテン、ベンゾチオフェン、ベンゾチオピランおよびチオキサンテン、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物から選択される。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、MおよびM’が、水素、−C(O)−H、または−C(O)−C〜C−アルキル(例えば水素またはアセチル)から独立に選択される式Ibの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、R、R、およびRが、メチルであり、MおよびM’が独立に、水素またはC(O)−R10である式Ibの化合物、ならびにその塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。別の実施形態では、本発明は、R、R、およびRがメチルであり、MおよびM’が独立に、水素またはアセチルである式Ibの化合物、ならびにその塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、以下から選択される式Iの化合物、ならびにそのすべての塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、および水和物を包含する:
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピラジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(3−クロロピラジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(6−クロロピラジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−5−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(1H−インドール−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(キノリン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(1H−イミダゾール−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(1H−ピロール−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(1H−ピラゾール−5−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(1H−イミダゾール−5−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(1−メチル−1H−イミダゾール−5−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(オキサゾール−5−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(オキサゾール−4−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(チアゾール−4−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(フラン−3−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(メチル(ピリジン−2−イル)アミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(3−(ピリジン−2−イルアミノ)プロピル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(3−(ピリミジン−2−イルアミノ)プロピル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(3−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)プロピル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(テトラヒドロフラン−3−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;および
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピペリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン。
【0078】
前述の実施形態のいずれかを含めた一実施形態では、本発明は、治療有効量または有効量の、式I、Ia、またはIbの1種または複数の化合物、あるいはその任意の塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、または水和物を投与することによって、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法を包含する。
【0079】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量または有効量の、式Iの1種または複数の化合物、あるいはその任意の塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、または水和物を投与することによって、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法を包含する。
【0080】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量または有効量の、R、R、およびRが独立にC〜Cアルキルである式Iaの1種または複数の化合物;あるいはその任意の塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、または水和物を投与することによって、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法を包含する。
【0081】
別の実施形態では、本発明は、治療有効量または有効量の、R、R、およびRが、C〜Cアルキルから独立に選択され、Rが水素である、式Ibの1種または複数の化合物;あるいはその任意の塩、プロドラッグ、代謝産物、溶媒和物、または水和物を投与することによって、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法を包含する。
【0082】
前述の実施形態のいずれかを含めた他の実施形態では、酸化ストレスによって引き起こされるまたは酸化ストレスによって悪化する障害は、以下からなる群から選択されるミトコンドリア障害である:ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS);レーバー遺伝性視神経症(LHON);慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO);リー病;カーンズ−セイヤー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FRDA);補酵素Q10(CoQ10)欠乏;複合体I欠乏;複合体II欠乏;複合体III欠乏;複合体IV欠乏;複合体V欠乏;他の筋障害;心筋症;脳筋症;尿細管性アシドーシス;神経変性疾患;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);運動ニューロン疾患;聴覚および平衡感覚障害;視覚障害;他の神経障害;てんかん;遺伝子病;ハンチントン病;気分障害;統合失調症;双極性障害;加齢に伴う疾患;脳血管疾患;黄斑変性症;糖尿病;および癌。
【0083】
前述の実施形態のいずれかを含めた別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、ミトコンドリア呼吸鎖障害である。特定の実施形態では、ミトコンドリア呼吸鎖障害は、呼吸鎖タンパク質障害である。別の特定の実施形態では、障害は、CoQ10欠乏である。
【0084】
前述の実施形態のいずれかを含めた別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、以下からなる群から選択される:遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS);レーバー遺伝性視神経症(LHON);慢性進行性外眼筋麻痺(CPEO);リー病;カーンズ−セイヤー症候群(KSS);およびフリードライヒ失調症(FRDA)。
【0085】
前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、フリードライヒ失調症(FA)である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、レーバー遺伝性視神経症(LHON)である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS)である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、リー病である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、カーンズ−セイヤー症候群(KSS)である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、ミトコンドリア障害は、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、障害は、CoQ10欠乏である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、障害は、パーキンソン病である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、障害は、ハンチントン病である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、障害は筋萎縮性側索硬化症(ALS)である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明のさらに別の実施形態では、障害は、脳卒中などの脳血管発作である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、障害は、聴覚または平衡感覚障害である。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、障害は、視覚障害である。
【0086】
前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、酸素の欠乏、中毒、もしくは毒性に起因するエネルギープロセシング低下障害に罹患した被験体に投与される。
【0087】
前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、組織への酸素の輸送の質的および/または量的途絶が、赤血球の機能におけるエネルギー途絶をもたらすような疾患に罹患した被験体に投与される。前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、疾患としては、鎌状赤血球貧血症および地中海貧血症などの異常ヘモグロビン症が挙げられる。
【0088】
前述の実施形態のいずれかを含めた本発明の別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、それだけには限らないが以下を含めた1つまたは複数の様々なエネルギーバイオマーカーを調節するために、また、運動不耐性を調節する(または、逆に言えば、運動耐性を調節する)ために、また、嫌気的閾値を調節するために、ミトコンドリア障害を患う被験体に投与される:全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中の乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中のピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中の乳酸/ピルビン酸の比;クレアチンリン酸レベル、NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型チトクロムCレベル;還元型チトクロムCレベル;酸化型チトクロムC/還元型チトクロムCの比;アセト酢酸レベル;ベータ−ヒドロキシ酪酸レベル;アセト酢酸/ベータ−ヒドロキシ酪酸比;8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;活性酸素種のレベル;酸素消費量(VO2)、二酸化炭素排出量(VCO2)、呼吸商(VCO2/VO2)。エネルギーバイオマーカーは、全血、血漿、脳脊髄液、脳室流体、動脈血、静脈血、またはこうした測定のために有用な他の任意の体液、体内ガス、または他の生体試料中で測定することができる。一実施形態では、これらのレベルは、健康な被験体における数値の約2標準偏差内の数値に調節される。別の実施形態では、これらのレベルは、健康な被験体における数値の約1標準偏差内の数値に調節される。別の実施形態では、被験体におけるレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくともプラスマイナス約10%変化させられる。別の実施形態では、こうしたレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくともプラスマイナス約20%変化させられる。別の実施形態では、こうしたレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくともプラスマイナス約30%変化させられる。別の実施形態では、こうしたレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくともプラスマイナス約40%変化させられる。別の実施形態では、こうしたレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくともプラスマイナス約50%変化させられる。別の実施形態では、こうしたレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくともプラスマイナス約75%変化させられる。別の実施形態では、こうしたレベルは、調節前の被験体におけるレベルから少なくとも約100%プラスにまたは少なくとも約90%マイナスに変化させられる。
【0089】
前述の実施形態のいずれかを含めた別の実施形態では、酸化ストレス障害を治療または抑制する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法が実施される被験体(1人または複数)は、以下からなる群から選択される:激しいまたは長時間の身体活動を受けている被験体;慢性的なエネルギー問題を患う被験体;慢性的な呼吸系疾患を患う被験体;妊婦;分娩時の妊婦;新生児;早産児;極限環境にさらされた被験体;高温環境にさらされた被験体;低温環境にさらされた被験体;酸素含量が平均より低い環境にさらされた被験体;二酸化炭素含量が平均より高い環境にさらされた被験体;大気汚染のレベルが平均より高い環境にさらされた被験体;航空機旅行客;客室乗務員;高い高度にいる被験体;大気質が平均より低い都市で生活する被験体;大気質が低下した密閉環境で働いている被験体;肺疾患を患う被験体;肺気量が平均より低い被験体;結核患者;肺癌患者;気腫患者;嚢胞性線維症患者;手術から回復しつつある被験体;病気から回復しつつある被験体;高齢の被験体;エネルギー低下を経験しつつある高齢の被験体;慢性的な疲労を患う被験体;慢性疲労症候群を患う被験体;急性外傷を受けた被験体;ショック状態の被験体;急性の酸素投与を必要としている被験体;慢性的な酸素投与を必要としている被験体;または、エネルギーバイオマーカーの増強から恩恵を受けることができる、急性的、慢性的、もしくは進行中の、エネルギーを必要とする他の被験体。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、医薬として許容される賦形剤、担体、またはビヒクルと組み合わせた、式I、Ia、および/またはIbの1種または複数の化合物を包含する。
【0091】
別の実施形態では、本発明は、ミトコンドリア疾患の治療における、式I、Ia、および/またはIbの1種または複数の化合物の使用を包含する。別の実施形態では、本発明は、ミトコンドリア疾患の治療に使用するための医薬品の製造における、式I、Ia、および/またはIbの1種または複数の化合物の使用を包含する。
【0092】
上述の化合物および方法のすべてについて、キノン形は、必要に応じて、その還元された(ヒドロキノン)形でも使用することができる。同様に、ヒドロキノンの形は、必要に応じて、その酸化された(キノン)形でも使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0093】
(発明を実行するための様式)
本発明は、疾患、発達遅延、ならびに、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性疾患、および加齢による疾患などの酸化ストレスに関連する症状を治療または抑制するのに有用な化合物と、エネルギーバイオマーカーの調節のためにこうした化合物を使用する方法とを包含する。前記疾患の治療または抑制のためのレドックス活性な治療、および本発明の関連態様を、ここで、より詳細に述べる。
【0094】
「被験体」、「個人」、または「患者」は、個々の生物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳類、最も好ましくはヒトを意味する。
【0095】
本明細書に論じる化合物および方法を用いて疾患を「治療する」ことは、疾患または疾患の1つまたは複数の症状を緩和または排除するために、あるいは疾患または疾患の1つまたは複数の症状の進行を遅延させるために、あるいは疾患または疾患の1つまたは複数の症状の重症度を緩和するために、さらなる治療剤の有無にかかわらず、本明細書に論じる1種または複数の化合物を投与することであると定義される。本明細書に論じる化合物および方法を用いる疾患の「抑制」は、疾患の臨床症状を抑制するために、または疾患の有害症状の徴候を抑制するために、さらなる治療剤の有無にかかわらず、本明細書に論じる1種または複数の化合物を投与することであると定義される。治療と抑制の相違は、治療が、疾患の有害症状が被験体に顕在化した後に行われるのに対し、抑制は、疾患の有害症状が被験体に顕在化する前に行われることである。抑制は、部分的、実質的に完全、または完全であり得る。ミトコンドリア障害の多くは遺伝するので、疾患の危険がある患者を特定するために、遺伝子検査を使用することができる。そして、本発明の化合物および方法は、任意の有害症状が現れることを抑制するために、疾患の臨床症状を顕在化する危険がある無症状の患者に投与することができる。本明細書に論じる化合物の「治療的使用」は、上で定義した通りの、疾患を治療または抑制するための、本明細書に論じる1種または複数の化合物を使用することと定義される。化合物の「有効な量」は、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、正常化する、または増強するのに十分な化合物の量である(調節、正常化、および増強は、以下に定義する)。化合物の「治療有効量」は、被験体に投与された場合に、疾患または疾患の1つまたは複数の症状を緩和するまたは排除するのに、あるいは疾患または疾患の1つまたは複数の症状の進行を遅延させるのに、あるいは疾患または疾患の1つまたは複数の症状の重症度を緩和するのに、あるいは疾患の臨床症状を抑制するのに、あるいは疾患の有害症状の徴候を抑制するのに十分である化合物の量である。治療有効量は、1回または複数回の投与で与えることができる。化合物の「有効な量」は、治療有効量と、被験体における1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節、正常化、または増強するのに有効な量との両方を包含する。
【0096】
エネルギーバイオマーカーを「調節」または「調節する」ことは、エネルギーバイオマーカーのレベルを所望の数値に変化させること、またはエネルギーバイオマーカーのレベルを所望の方向に変化させる(例えば、増大または低下させる)ことを意味する。調節には、それだけには限らないが、以下で定義する通りの正常化および増強が含まれる。
【0097】
エネルギーバイオマーカーを「正常化」または「正常化する」ことは、エネルギーバイオマーカーのレベルを病理学的数値から正常値の方へ変えることと定義され、ここでは、エネルギーバイオマーカーの正常値は、1)健康な人または被験体におけるエネルギーバイオマーカーのレベル、または2)人または被験体における1種または複数の望ましくない症状を軽減するエネルギーバイオマーカーのレベルであり得る。すなわち、病態において低下するエネルギーバイオマーカーを正常化することは、正常な(健康な)数値の方へ、または望ましくない症状を軽減する数値の方へエネルギーバイオマーカーのレベルを増加させることを意味し;病態において上昇するエネルギーバイオマーカーを正常化することは、正常な(健康な)数値の方へ、または望ましくない症状を軽減する数値の方へエネルギーバイオマーカーのレベルを低下させることを意味する。
【0098】
エネルギーバイオマーカーを「増強」または「増強する」ことは、有益または所望の効果を達成するために、正常値または増強前の数値から離れた1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルを意図的に変化させることを意味する。例えば、被験体に、著しいエネルギー要求が存在する状況では、その被験体におけるATPのレベルを、その被験体におけるATPの正常なレベルよりも上のレベルに増大させることが望ましい可能性がある。エネルギーバイオマーカーを正常化することが、被験体のための最適の結果を達成できない場合に、増強はまた、ミトコンドリア疾患などの疾患または症状を患う被験体において有益効果を与えるものであり得る。そのような場合、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強が有益であり得る、例えば、こうした被験体には、正常より上のレベルのATPまたは正常未満のレベルの乳酸(ラクテート)が有益であり得る。
【0099】
エネルギーバイオマーカー補酵素Qを調節する、正常化する、または増強することは、関心被験体の種において優勢である種(1種または複数)の補酵素Qを調節する、正常化する、または増強することを意味する。例えば、ヒトにおいて優勢である補酵素Qの種は、補酵素Q10である。種または被験体が、有意な量で存在する(すなわち、調節される、正常化される、または増強される場合に、種または被験体に対する有益効果を有することができる量で存在する)補酵素Qの複数の種を有する場合、補酵素Qを調節する、正常化する、または増強することは、種または被験体に存在する補酵素Qの任意のすべての種を調節する、正常化する、または増強することを指すことができる。
【0100】
本明細書に記述される化合物が存在可能であり、かつ中性の(塩でない)化合物として使用することができる場合、説明は、本明細書に記述される化合物のすべての塩、ならびに化合物のこうした塩を使用する方法を包含することを意図する。一実施形態では、化合物の塩は、医薬として許容される塩を含む。医薬として許容される塩は、ヒトおよび/または動物に対する薬物または医薬品として投与することができ、投与時に、遊離の該化合物(中性化合物または塩でない化合物)の生物活性のうちの少なくともいくつかを保持するような塩である。塩基性化合物の所望の塩は、化合物を酸で処理することによって、当業者に知られた方法によって調製することができる。無機酸の例としては、それだけには限らないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸が挙げられる。有機酸の例としては、それだけには限らないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、スルホン酸、およびサリチル酸が挙げられる。塩基性化合物のアミノ酸との塩(アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩など)も、調製することができる。酸性化合物の所望の塩は、化合物を塩基で処理することによって、当業者に知られた方法によって調製することができる。酸化合物の無機塩の例としては、それだけには限らないが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩など);アンモニウム塩;およびアルミニウム塩が挙げられる。酸化合物の有機塩の例としては、それだけには限らないが、プロカイン、ジベンジルアミン、N−エチルピペリジン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、およびトリエチルアミン塩が挙げられる。酸性化合物のアミノ酸との塩(例えばリジン塩)も、調製することができる。
【0101】
本発明には、化学的に可能であるならば、ジアステレオマーおよびエナンチオマーを含めた化合物のすべての立体異性体も含まれる。本発明は、任意の比率の、可能な立体異性体の混合物(それだけには限らないが、ラセミ混合物を含めて)も含む。立体化学が化学構造で明確に示されない限り、その構造は、記載する化合物のすべての可能な立体異性体を包含することが意図される。立体化学が、分子の1部分または複数部分について明確に示されるが、分子の別の1部分または複数部分については示されない場合、その構造は、立体化学が明確に示されないような部分(1つまたは複数)に関する、すべての可能な立体異性体を包含することが意図される。
【0102】
化合物は、プロドラッグの形で投与することができる。プロドラッグは、それ自体は比較的不活性であるが、被験体に導入されると活性な化合物に転換する(ここではこれは、化学または生物学プロセス(例えば酵素変換)によってin vivoで使用される)化合物の誘導体である。適切なプロドラッグ製剤としては、それだけには限らないが、本発明の化合物および本発明の化合物のエステルのペプチド結合体が挙げられる。適切なプロドラッグに関するさらなる議論は、H.Bundgaard、「Design of Prodrugs」,New York:Elsevier,1985に;R.Silverman、「The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action」、Boston:Elsevier,2004に;R.L.Juliano(編)「Biological Approaches to the Controlled Delivery of Drugs」(Annals of the New York Academy of Sciences、v.507)、New York:New York Academy of Sciences、1987に;また、E.B.Roche(編)「Design of Biopharmaceutical Properties Through Prodrugs and Analogs」(Symposium sponsored by Medicinal Chemistry Section、APhA Academy of Pharmaceutical Sciences、November 1976 national meeting、Orlando、Florida)、Washington:The Academy、1977に提供される。
【0103】
化合物の代謝産物も、本発明に包含される。
【0104】
「(C〜C)アルキル」は、1から6個の炭素原子の直鎖、分枝状、または環状の、飽和した炭化水素、あるいは任意のその組み合わせを包含することが意図される。「(C〜C)アルキル」の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、シクロプロピルメチル、メチルシクロプロピル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、およびシクロヘキシルである。残りの分子に対する(C〜C)アルキル基の付着点は、(C〜C)アルキル基上の、任意の化学的に可能な場所であり得る。
【0105】
「(C〜C)−アルケニル」は、2から6個の炭素原子を有する、直鎖、分枝状、または環状の不飽和基、あるいは任意のその組み合わせを包含することが意図される。すべての二重結合はそれぞれ、(E)または(Z)幾何構造や、任意のそれらの混合物であり得る。アルケニル基の例としては、それだけには限らないが、−CH−CH=CH−CH;および−CH−CH−シクロヘキセニル(式中、エチル基は、任意の利用可能な炭素数で、シクロヘキセニル部分に付着可能である)が挙げられる。
【0106】
「(C〜C)−アルキニル」は、2から6個の炭素原子を有する、少なくとも1つの三重結合を含む、直鎖、分枝状、または環状の不飽和基、あるいは任意のその組み合わせを包含することが意図される。
【0107】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0108】
「(C〜C)ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲン置換基を有する任意のC〜Cアルキル置換基を包含することが意図され;ハロゲンは、C〜Cアルキル基上に、任意の数で付着することができる。C〜Cハロアルキルのある種の例は、−CF、−CCl、−CHF、−CHCl、−CHBr、−CHF、−CHCl、または−CFCFである。
【0109】
用語「アリール」は、単一の環(例えばフェニル)または複数の縮合された(融合された)環(例えばナフチルまたはアントリル)を有する、6から20個の炭素原子の、芳香族の環状炭化水素基を包含することが意図される。
【0110】
用語「ヘテロ環」、「複素環」、「ヘテロシクロ」、および「ヘテロシクリル」は、その環内に(窒素、酸素、および/または硫黄から選択される)1、2、3、または4個のヘテロ原子を組み込んだ1つまたは複数の環を有する、飽和した、部分的に不飽和の、または不飽和の、一価の炭素環式ラジカルを包含することが意図される。ヘテロ環の例としては、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、チアゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、イミダゾリジン、ピロリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、キヌクリジンなどが挙げられる。この用語は、以下で述べる通りのヘテロアリール基も含む。
【0111】
「任意選択で置換されたヘテロシクリル」については、置換基として、(C〜C)−アルキル、ハロ(C〜C)ハロアルキル、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、アリール、アラルキル、ヘテロシクリル、−C(O)(C〜C)アルキル、−C(O)アリール、−C(O)ヘテロシクリル、−C(O)(C〜C)シクロアルキル、−C(O)OH、−C(O)O(C〜C)−アルキル、−C(O)Oアラルキル、−C(O)Oアリール、−C(O)NH2、−C(O)NH(C〜C)−アルキル、−C(O)N((C〜C)−アルキル)、−C(O)NH−アリール、−NHC(O)(C〜C)−アルキル、−N((C〜C)−アルキル)−C(O)(C〜C)−アルキル、−NHC(O)アリール、−N((C〜C)−アルキル)−C(O)アリール、−C(O)NH(C〜C)−アルキル、−C(O)N((C〜C)−アルキル)、−C(O)NH−アリール、−NHS(O)(C〜C)−アルキル、−N((C〜C)−アルキル)−S(O)(C〜C)−アルキル、−NHS(O)−アリール、−N((C〜C)−アルキル)−S(O)−アリール、−S(O)NH(C〜C)−アルキル、−S(O)N((C〜C)−アルキル)、−S(O)NH−アリール、またはオキソを挙げることができる。
【0112】
用語「ヘテロアリール」は、その環内に(窒素、酸素、および/または硫黄から選択される)1、2、3、または4個のヘテロ原子を組み込んだ1つまたは複数の環を有する、一価の芳香族の炭素環式ラジカルを包含することが意図される。ヘテロアリールの例としては、ピリジン、ピラジン、イミダゾリン、チアゾール、イソチアゾール、ピラジン、トリアジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラゾール、チオフェン、ピロール、ピラン、フラン、インドール、キノリン、キナゾリン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾ−ピリジン、ピラゾロ−ピリジン、ピラゾロ−ピラジン、アクリジン、カルバゾール、イソインドール、イソキノリン、インダゾール、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾトリアゾール、イミダゾ−ピリジン、ピラゾロピラジン、ピラゾロ−ピリダジン、テトラヒドロプリン、ピリミド−ピリミジン、ピラジノ−ピリダジン、ジベンズアゼピン、フェナントリジン、フェナジン、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、フェノキサジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジンなどが挙げられる。
【0113】
用語「パーキンソン病」(「パーキンソニズム」および「パーキンソン症候群」とも呼ばれる)(「PD」)は、パーキンソン病だけでなく薬剤誘発性パーキンソニズムおよび脳炎後パーキンソニズムも含むことが意図される。パーキンソン病は、振戦麻痺としても知られている。これは、振戦、筋硬直、および姿勢反射の損失によって特徴づけられる。疾患は通常、10から20年が経過する間にゆっくりと進行し、その後、これらの症状は、不能状態を引き起こす。パーキンソン病の影響を模倣することにより、パーキンソン病のためのモデルを作り出すために、メタンフェタミンまたはMPTPを用いた動物の治療が使用されている。これらの動物モデルを、パーキンソン病のための様々な治療の有効性を評価するために用いた。
【0114】
「呼吸鎖障害」は、ミトコンドリアの呼吸鎖に含まれるタンパク質または他の成分の欠陥または障害に起因する、ミトコンドリア、細胞、組織、または個人による酸素の利用の低下をもたらす障害を意味する。「ミトコンドリアの呼吸鎖に含まれるタンパク質または他の成分」は、ミトコンドリア複合体I、II、III、IV、および/またはVを含む、(それだけには限らないが、タンパク質、テトラピロール、およびチトクロムを含めた)成分を意味する。「呼吸鎖タンパク質」は、これらの複合体のタンパク質成分を指し、「呼吸鎖タンパク質障害」は、ミトコンドリアの呼吸鎖に含まれるタンパク質の欠陥または障害に起因する、ミトコンドリア、細胞、組織、または個人による酸素の利用の低下をもたらす障害を意味する。
【0115】
用語「フリードライヒ失調症」は、他の関連する失調を包含することが意図され、時として、遺伝性失調、家族性失調、またはフリードライヒ消耗(Friedreich’s tabes)とも呼ばれる。
【0116】
用語「失調症」は、運動を調節する神経系の部分(小脳など)の非特定的な臨床症状を含む機能不全である。失調を患う人は、運動および平衡を制御する神経系の部分が影響を受けるので、共調運動に関して問題がある。失調症は、指、手、腕、脚、胴、言語、および眼球運動に影響を及ぼす可能性がある。失調症という語は、感染症、損傷、他の疾患、または中枢神経系の変性的変化と関係する可能性がある共調運動不能の症状を説明するためにしばしば用いられる。失調症は、遺伝性失調および孤発性失調と呼ばれる神経系の一群の特定の変性疾患を表すためにも用いられる。失調症は、聴覚障害をまたしばしば伴う。
【0117】
前庭−小脳機能不全、脊髄−小脳機能不全、および大脳−小脳機能不全;感覚性失調症;および前庭性失調症を含めた、3種類の失調症(小脳性失調症)が存在する。脊髄−小脳失調または多系統萎縮症に分類可能である疾患の例は、遺伝性オリーブ橋小脳萎縮症、遺伝性小脳皮質萎縮症、フリードライヒ失調症、マシャド‐ジョセフ病、ラムゼーハント症候群、遺伝性歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、遺伝性痙性対麻痺、シャイ‐ドレーガー症候群、皮質性小脳萎縮症、線条体黒質変性症、マリネスコ‐シェーグレン症候群、アルコール性皮質性小脳萎縮症、悪性腫瘍に伴う腫瘍随伴性小脳萎縮、有害物質によって引き起こされる中毒性小脳萎縮症、内分泌撹乱などに伴う小脳萎縮である。
【0118】
失調症状の例は、運動性失調、躯幹失調、四肢失調など;起立性低血圧症、排尿障害、発汗低下、睡眠無呼吸、起立性失神などの自律神経障害;下肢の硬直、眼性眼振、動眼神経障害、錐体路機能不全、錐体外路症状(姿勢調節機能不全、筋硬直、無動、振戦)、嚥下困難、舌萎縮、脊髄後索症状、筋萎縮、筋衰弱、深部反射亢進、感覚障害、脊柱側彎症、脊柱後側彎症、足変形、構語障害、痴呆、躁状態、リハビリテーションに対する自発性の低下である。
【0119】
本発明の化合物および方法を用いる治療または抑制に適した疾患
様々な疾患は、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性疾患、および加齢による疾患などの、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害によって引き起こされるまたは悪化すると考えられており、本発明の化合物および方法を使用して治療または抑制することができる。こうした疾患としては、それだけには限らないが、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)などの遺伝性ミトコンドリア疾患、ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中、(MELAS)、レーバー遺伝性視神経症(LHON、レーバー病、レーバー視神経萎縮症(LOA)、またはレーバー視神経症(LON)とも呼ばれる)、リー病またはリー症候群、カーンズ−セイヤー症候群(KSS)、フリードライヒ失調症(FA)、CoQ10欠乏;他の筋障害(心筋症および脳筋症を含めて)、および尿細管性アシドーシス;パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS、別名ルーゲーリッグ病)などの神経変性疾患、運動ニューロン疾患;てんかんなどの他の神経性疾患;ハンチントン病などの遺伝子病(これは、神経性疾患でもある);気分障害(統合失調症および双極性障害など);脳卒中などの脳血管発作、および加齢に伴う疾患、特に、治療のためにCoQ10が提案されている疾患(黄斑変性症、糖尿病、および癌など)が挙げられる。ミトコンドリア機能不全はまた、興奮毒性のニューロン損傷(発作、脳卒中、および虚血に随伴するものなど)に関連する。エネルギー障害によって引き起こされる疾患としては、酸素の欠乏、中毒、または毒性に起因する疾患、ならびに、組織への酸素の輸送の質的および/または量的途絶(例えば、地中海貧血症または鎌状赤血球貧血症などの異常ヘモグロビン症など)が挙げられる。
【0120】
本発明の化合物および方法を用いる治療に適した視覚障害としては、それだけには限らないが、視神経症、レーバー遺伝性視神経症、優性遺伝性若年性視神経萎縮症、毒物によって引き起こされる視神経症、緑内障、加齢に関連する黄斑変性症(「乾燥型」すなわち非滲出性の黄斑変性症と、「湿潤型」すなわち滲出性の黄斑変性症との両方)、シュタルガルト黄斑ジストロフィー、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、未熟児網膜症、または虚血再灌流関連の網膜損傷などの、目の神経変性疾患によって引き起こされる視覚障害が挙げられる。
【0121】
本発明の化合物および方法を用いる治療に適したある種の疾患については、疾患の主な原因は、呼吸鎖の欠陥、あるいは、ミトコンドリア、細胞、または組織(1つまたは複数)におけるエネルギーの通常の利用を妨げる別の欠陥に起因する。このカテゴリーに分類される疾患の例は、赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF)などの遺伝性ミトコンドリア疾患、ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS)、レーバー遺伝性視神経症(LHON、レーバー病、レーバー視神経萎縮症(LOA)、またはレーバー視神経症(LON)とも呼ばれる)、リー病またはリー症候群、カーンズ−セイヤー症候群(KSS)、フリードライヒ失調症(FA)である。本発明の化合物および方法を用いる治療に適した他の疾患については、疾患の主な原因は、呼吸鎖の欠陥、あるいは、ミトコンドリア、細胞、または組織(1つまたは複数)におけるエネルギーの通常の利用を妨げる別の欠陥に起因しない;このカテゴリーに分類される疾患の例としては、脳卒中、癌、および糖尿病が挙げられる。しかし、こうした後者の疾患は、特にエネルギー障害によって悪化し、こうした状態を改善するために、本発明の化合物を用いる治療が特に適している。こうした疾患の該当例としては、疾患の主な原因が脳に対する血液供給の障害に起因する、虚血性発作および出血性卒中が挙げられる。血栓症または塞栓症によって引き起こされる虚血症状発現、または血管の破裂によって引き起こされる出血症状発現は、呼吸鎖の欠陥、またはエネルギーの通常の利用を妨げる別の代謝性障害によって主としては引き起こされず、酸化ストレスが、低酸素後の酸素再灌流傷害に起因する虚血カスケードで役割を果たす(このカスケードは、心臓発作や脳卒中に存在する)。したがって、本発明の化合物および方法を用いる治療は、疾患、障害、または状態の影響を緩和することとなる。1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強することは、治療手段と予防領域の両方として、こうした疾患において有益であることも立証することができる。例えば、修復が成功する前に動脈瘤が破裂するであろう、動脈瘤の非緊急修復を受ける予定の患者に対して、術前の前と間にエネルギーバイオマーカーを増強することによって、患者の予後を改善することができる。
【0122】
用語「酸化ストレス障害」または「酸化ストレス疾患」は、酸化ストレスによって引き起こされる疾患および酸化ストレスによって悪化する疾患を包含する。用語「酸化ストレス障害」または「酸化ストレス疾患」は、疾患の主な原因が、呼吸鎖の欠陥、あるいは、ミトコンドリア、細胞、または組織(1つまたは複数)におけるエネルギーの通常の利用を妨げる別の欠陥に起因するような疾患および障害と、疾患の主な原因が、呼吸鎖の欠陥、あるいは、ミトコンドリア、細胞、または組織(1つまたは複数)におけるエネルギーの通常の利用を妨げる別の欠陥に起因しないような疾患および障害とを包含する。前者の一連の疾患を、「一次的な酸化ストレス障害」と呼ぶことができるのに対して、後者を「二次的な酸化ストレス障害」と呼ぶことができる。「酸化ストレスによって引き起こされる疾患」と「酸化ストレスによって悪化する疾患」の区別は完全ではなく、疾患は、酸化ストレスによって引き起こされる疾患と酸化ストレスによって悪化する疾患の両方であり得ることに留意しなければならない。疾患または障害の主な原因が1つだけであり、かつその主な原因が既知であるならば、「一次的な酸化ストレス障害」と「二次的な酸化ストレス障害」の境界は、より明確である。
【0123】
酸化ストレスによって引き起こされる疾患と酸化ストレスによって悪化する疾患との間のいくらか流動的な境界を踏まえれば、ミトコンドリア疾患または障害、ならびにエネルギープロセシング低下疾患および障害は、酸化ストレスによって引き起こされる疾患のカテゴリーに分類される傾向があるのに対して、加齢による神経変性障害および疾患は、酸化ストレスによって悪化する疾患のカテゴリーに分類される傾向がある。ミトコンドリア疾患または障害、ならびにエネルギープロセシング低下疾患および障害は一般に、一次的な酸化ストレス障害であるのに対して、加齢による神経変性障害および疾患は、一次的または二次的な酸化ストレス障害であり得る。
【0124】
ミトコンドリア機能不全の臨床的評価および治療の有効性
いくつかの容易に測定可能な臨床的マーカーを、ミトコンドリア障害またはエネルギープロセシング低下障害を患う患者の代謝状態を評価するために用いる。これらのマーカーは、マーカーのレベルが、病的な値から好ましい値に動くので、施される治療の有効性の指標としても使用することができる。これらの臨床的マーカーとしては、それだけには限らないが、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中の乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中のピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中の乳酸/ピルビン酸の比;クレアチンリン酸レベル、NADH(NADH+H)、またはNADPH(NADPH+H)レベル;NADまたはNADPレベル;ATPレベル;嫌気的閾値;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型チトクロムCレベル;還元型チトクロムCレベル;酸化型チトクロムC/還元型チトクロムCの比;アセト酢酸レベル、β−ヒドロキシ酪酸レベル、アセト酢酸/β−ヒドロキシ酪酸比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;活性酸素種のレベル;ならびに、酸素消費(VO2)のレベル、二酸化炭素排出(VCO2)のレベル;および呼吸商(VCO2/VO2)などのエネルギーバイオマーカーが挙げられる。これらの臨床的マーカーのいくつかは、運動生理学研究機関においてごく普通に測定され、また、被験体の代謝状態の好都合な評価を提供する。本発明の一実施形態では、フリードライヒ失調症、レーバー遺伝性視神経症、MELAS、KSS、またはCoQ10欠乏などのミトコンドリア疾患を患う患者における1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、健康な被験体における平均レベルの2標準偏差内に改善される。本発明の別の実施形態では、フリードライヒ失調症、レーバー遺伝性視神経症、MELAS、KSS、またはCoQ10欠乏などのミトコンドリア疾患を患う患者における1種または複数のこれらのエネルギーバイオマーカーのレベルは、健康な被験体における平均レベルの1標準偏差内に改善される。運動不耐性も、施される治療の有効性の指標として使用することができる。ここでは、運動耐性の改善(すなわち運動不耐性の低下)が、施される治療の有効性を示す。
【0125】
いくつかの代謝バイオマーカーが、CoQ10の有効性を評価するために既に用いられており、これらの代謝バイオマーカーは、本発明の方法に使用するためのエネルギーバイオマーカーとしてモニタリングすることができる。ピルビン酸、すなわちブドウ糖の嫌気代謝の産物は、嫌気環境における乳酸への還元によって、または酸化的代謝によって除去されるが、これは、機能性のミトコンドリアの呼吸鎖に依存する。呼吸鎖の機能不全は、乳酸およびピルビン酸の循環からの不十分な除去をもたらす可能性があり、ミトコンドリア細胞変性では、高い乳酸/ピルビン酸比が観察される(Scriver CR、「The metabolic and molecular bases of inherited disease」、第7版、New York:McGraw−Hill、Health Professions Division、1995;およびMunnichら、J.Inherit.Metab.Dis.15(4):448〜55(1992)を参照のこと。)したがって、血中の乳酸/ピルビン酸比(Chariotら、Arch.Pathol.Lab.Med.118(7):695〜7(1994))は、ミトコンドリア細胞変性(Scriver CR、「The metabolic and molecular bases of inherited disease」、第7版、New York:McGraw−Hill、Health Professions Division、1995;およびMunnichら、J.Inherit.Metab.Dis.15(4):448〜55(1992)を再び参照のこと)、および中毒性ミトコンドリアミオパチー(Chariotら、Arthritis Rheum.37(4):583〜6(1994))の検出のための非侵襲的試験として広く使用されている。肝ミトコンドリアのレドックス状態の変化は、動脈のケトン体比(アセト酢酸/3−ヒドロキシ酪酸:AKBR)を測定することによって調べることができる(Uedaら、J.Cardiol.29(2):95〜102(1997))。8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の尿中排泄は、臨床と職場環境(occupational setting)の両方で、ROS誘発性DNA損傷の修復の程度を評価するためのバイオマーカーとしてしばしば使用されている(Erholaら、FEBS Lett.409(2):287〜91(1997);Hondaら、Leuk.Res.24(6):461〜8(2000);Pilgerら、Free Radic.Res.35(3):273〜80(2001);Kimら、Environ Health Perspect 112(6):666〜71(2004))。
【0126】
磁気共鳴分光法(MRS)は、プロトンMRS(1H−MRS)を使用して脳脊髄液(CSF)および皮質・白質の乳酸の上昇を示すことによる、ミトコンドリア細胞変性の診断において有用であった(Kaufmannら、Neurology 62(8):1297〜302(2004)))。リンMRS(31P−MRS)は、低レベルの皮質性クレアチンリン酸(PCr)(Matthewsら、Ann.Neurol.29(4):435〜8(1991))、および骨格筋における運動後のPCr回復速度の遅れ(Matthewsら、Ann.Neurol.29(4):435〜8(1991);Barbiroliら、J.Neurol.242(7):472−7(1995);Fabriziら、J.Neurol.Sci.137(1):20−7(1996))を示すために用いた。また、直接的生化学測定によって、ミトコンドリア細胞変性患者には、低い骨格筋PCrが確認された。
【0127】
運動負荷試験は、特に、ミトコンドリアミオパチーにおける評価およびスクリーニング手段として有用である。ミトコンドリアミオパチーの顕著な特徴の1つは、最大全身酸素消費量(VO2max)の低下である(Taivassaloら、Brain 126(Pt2):413〜23(2003))。VO2maxが、心拍出量(Qc)と末梢の酸素抽出量(動脈−静脈の全酸素含有量)の差によって決定されると仮定すると、ある種のミトコンドリア細胞変性は、心機能に影響を及ぼす(ここでは、送達が変化する可能性がある);しかし、ほとんどのミトコンドリアミオパチーは、末梢の酸素抽出量(A−V O2の差)の特徴的な欠乏と、酸素送達の増進(過剰循環)を示す(Taivassaloら、Brain 126(Pt2):413〜23(2003))。これは、直接的なAV収支の測定を用いる(Taivassaloら、Ann.Neurol.51(1):38〜44(2002))、また、非侵襲的に、近赤外分光法による(Lynchら、Muscle Nerve 25(5):664〜73(2002);van Beekveltら、Ann.Neurol.46(4):667〜70(1999))、静脈血の運動誘発性脱酸素化の欠如によって示すことができる。
【0128】
これらのエネルギーバイオマーカーのいくつかを、以下の通りに、より詳細に述べる。ある種のエネルギーバイオマーカーを、本明細書に議論および列挙するが、本発明は、これらの列挙されたエネルギーバイオマーカーのみの、調節、正常化、または増強に限定されないことを強調しなければならない。
【0129】
乳酸(ラクテート)レベル:ミトコンドリア機能不全では、一般的に、ピルビン酸レベルが増加し、解糖の能力を維持するために、ピルビン酸が乳酸に転換されることから、異常レベルの乳酸がもたらされる。還元されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドが、呼吸鎖によって効率的に処理されないことから、ミトコンドリアの機能不全によって、異常なレベルのNADH+H、NADPH+H、NAD、またはNADPももたらされる可能性がある。乳酸レベルは、全血、血漿、または脳脊髄液などの適切な体液のサンプルを採取することによって測定することができる。磁気共鳴を使用して、乳酸レベルは、事実上いずれの体積の所望される実体(例えば脳など)でも測定することができる。
【0130】
MELAS患者において磁気共鳴を使用する脳の乳酸アシドーシスの測定は、Kaufmannら、Neurology 62(8):1297(2004)に記載されている。脳の側脳室における乳酸のレベルの値を、MELASをもたらす2つの突然変異体、すなわちA3243GおよびA8344Gについて示す。全血、血漿、および脳脊髄液の乳酸レベルは、YSI 2300 STAT Plus Glucose&Lactate Analyzer(YSI Life Sciences、Ohio)などの、市販品として入手できる装置によって測定することができる。
【0131】
NAD、NADP、NADH、およびNADPHレベル:NAD、NADP、NADH(NADH+H)またはNADPH(NADPH+H)の測定は、様々な蛍光、酵素、または電気化学的技術、例えば、US 2005/0067303に記載されている電気化学的アッセイによって測定することができる。
【0132】
酸素消費量(vOまたはVO2)、二酸化炭素排出量(vCOまたはVCO2)、および呼吸商(VCO2/VO2):vOは、通常、安静時(安静時vO)に、または最大運動強度(vO最大量)で測定される。最適には、両方の値が測定されることとなる。しかし、重篤な障害をもつ患者については、vO最大量の測定は、実施しなくてもよい。どちらの形のvOの測定も、様々な供給業者、例えばKorr Medical Technologies,Inc(Salt Lake City、Utah)から得られる標準装置を使用して容易に達成される。VCO2も、容易に測定することができ、同じ条件下でのVCO2とVO2の比(VCO2/VO2、安静時または最大運動強度)によって、呼吸商(RQ)を得る。
【0133】
酸化型チトクロムC、還元型チトクロムC、および酸化型チトクロムCと還元型チトクロムCの比:酸化型チトクロムCレベル(CytCox)、還元型チトクロムCレベル(CytCred)、および酸化型チトクロムC/還元型チトクロムCの比(CytCox)/(CytCred)などのチトクロムCパラメータは、in vivo近赤外分光法によって測定することができる。例えば、Rolfe,P.、「In vivo near−infrared spectroscopy」、Annu.Rev.Biomed.Eng.2:715〜54(2000)、およびStrangmanら、「Non−invasive neuroimaging using near−infrared light」、Biol.Psychiatry 52:679〜93(2002)を参照のこと。
【0134】
運動耐性/運動不耐性:運動不耐性は、「呼吸困難または疲労の徴候が原因の、大きい骨格筋の動的変化を必要とする活動を行う能力の低下」(Pinaら、Circulation 107:1210(2003))と定義される。運動不耐性は、筋組織の分解および尿中への筋肉ミオグロビンのその後の排出により、ミオグロビン尿症を伴うことが多い。消耗するまでトレッドミル上を歩くまたは走ることに費やされる時間、消耗するまでエクササイズバイク(固定された自転車)上で費やされる時間など、運動不耐性の様々な計測を使用することができる。本発明の化合物または方法を用いる治療は、運動耐性の約10%以上の改善(例えば、消耗までの時間の約10%以上の増大(例えば10分から11分への増大))、運動耐性の約20%以上の改善、運動耐性の約30%以上の改善、運動耐性の約40%以上の改善、運動耐性の約50%以上の改善、運動耐性の約75%以上の改善、または運動耐性の約100%以上の改善をもたらすことができる。運動耐性は、厳密に言うと、本発明の目的のエネルギーバイオマーカーではないが、エネルギーバイオマーカーの調節、正常化または増強には、運動耐性の調節、正常化、または増強が含まれる。
【0135】
同様に、ピルビン酸(ピルベート)レベル、乳酸/ピルビン酸比、ATPレベル、嫌気的閾値;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型チトクロムCレベル;還元型チトクロムCレベル;酸化型チトクロムC/還元型チトクロムCの比;アセト酢酸レベル、β−ヒドロキシ酪酸レベル、アセト酢酸/β−ヒドロキシ酪酸比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;および活性酸素種のレベルの、正常および異常な値に関する試験は、当技術分野で知られており、本発明の化合物および方法の有効性を評価するために用いることができる(本発明の目的では、エネルギーバイオマーカーの調節、正常化、または増強には、嫌気的閾値の調節、正常化、または増強が含まれる)。
【0136】
以下の表1は、様々な機能不全が与える生化学およびエネルギーバイオマーカーへの影響を例示する。表1はまた、所与の機能不全と典型的に関連する物理的な影響(例えば機能不全の病徴または他の影響など)も示す。他に列挙するエネルギーバイオマーカーに加えて、表中に列挙するいずれかのエネルギーバイオマーカーも、本発明の化合物および方法によって調節、増強、または正常化することができることに留意する必要がある。RQ=呼吸商;BMR=基礎代謝率;HR(CO)=心拍数(心拍出量);T=体温(好ましくは核心温として測定される);AT=嫌気的閾値;pH=血液pH(静脈および/または動脈)。
【0137】
【表1】

本発明の方法に従う、ミトコンドリア疾患に悩む被験体の治療によって、被験体における症状の緩和または軽減を誘導する、例えば、障害のさらなる進行を停止させることができる。
【0138】
ミトコンドリア疾患の部分的または完全な抑制によって、被験体がそれ以外に経験するであろう1つまたは複数の症状の重症度を軽減させることができる。例えば、MELASの部分的な抑制によって、脳卒中様症状または罹患する発作の症状発現の回数の減少をもたらすことができる。
【0139】
本明細書に記載するエネルギーバイオマーカーのいずれか1つまたは任意の組み合わせは、治療または抑制的治療の有効性を測定するための、好都合に測定可能な基準を提供する。さらに、当業者に知られている他のエネルギーバイオマーカーも、治療または抑制的治療の有効性を評価するためにモニタリングすることができる。
【0140】
エネルギーバイオマーカーの調節のための化合物の使用
ミトコンドリア疾患またはエネルギープロセシング低下障害の治療または抑制の状態を評価するためにエネルギーバイオマーカーをモニタリングすることに加えて、本発明の化合物は、1つまたは複数のエネルギーバイオマーカーを調節するために、被験体または患者に使用することができる。エネルギーバイオマーカーの調節は、被験体におけるエネルギーバイオマーカーを正常化するために、または被験体におけるエネルギーバイオマーカーを増強するために行うことができる。
【0141】
1種または複数のエネルギーバイオマーカーの正常化は、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルが、正常レベル(すなわち健康な被験体におけるレベル)とは病的相違を示すような、1種または複数のこうしたエネルギーバイオマーカーのレベルを、被験体における正常またはほぼ正常なレベルに回復させること、あるいは、被験体における病的症状を軽減するために1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルを変化させることと定義される。エネルギーバイオマーカーの性質に応じて、こうしたレベルは、正常値を超えるまたは正常値未満の測定値を示す可能性がある。例えば、病的乳酸レベルは一般的に、正常な(すなわち健康な)人の乳酸レベルよりも高く、レベルを下げることが望ましい可能性がある。病的ATPレベルは一般的に、正常な(すなわち健康な)人のATPレベル未満であり、ATPのレベルを増大させることが望ましい可能性がある。したがって、エネルギーバイオマーカーの正常化は、エネルギーバイオマーカーのレベルを、被験体における正常値の少なくとも約2標準偏差以内に、より好ましくは、被験体における正常値の少なくとも1標準偏差以内に、または正常値の少なくとも約2分の1標準偏差以内に、または正常値の少なくとも約4分の1標準偏差以内に回復させることを含み得る。
【0142】
1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの増強は、被験体における1種または複数のエネルギーバイオマーカーの実在レベルを、被験体にとって有益であるまたは所望の効果を提供するレベルに変化させることと定義される。例えば、激しい作業または長時間の活発な身体活動(例えば登山)を行っている人は、ATPレベルの増大または乳酸レベルの低下から恩恵を受けることができる。上で述べた通りに、エネルギーバイオマーカーの正常化は、ミトコンドリア疾患を伴う被験体にとって最適の状態を達成することはできず、こうした被験体は、エネルギーバイオマーカーの増強から恩恵を受けることができる。1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの増強から恩恵を受けることができる被験体の例としては、それだけには限らないが、激しい長時間の身体活動を受けている被験体、慢性のエネルギー問題を患う被験体、または慢性の呼吸系疾患を患う被験体が挙げられる。こうした被験体としては、それだけには限らないが、妊婦、特に分娩時の妊婦;新生児、特に早産児;高温環境(1日約4時間以上の、常に華氏約85〜86度または摂氏約30度を超える温度)、低温環境(1日約4時間以上の、常に華氏約32度または摂氏約0度未満の温度)、あるいは、酸素含量が平均より低い、二酸化炭素含量が平均より高い、または大気汚染のレベルが平均より高い環境などの極限環境にさらされた被験体(航空機旅行客、客室乗務員、高い高度にいる被験体、大気質が平均より低い都市で生活する被験体、大気質が低下した密閉環境で働いている被験体);結核患者、肺癌患者、気腫患者、および嚢胞性線維症患者などの、肺疾患を患うまたは肺気量が平均より低い被験体;手術または病気から回復しつつある被験体;エネルギー低下を経験しつつある高齢の被験体を含めた高齢の被験体;慢性疲労症候群を含めた慢性的な疲労を患う被験体;急性外傷を受けた被験体;ショック状態の被験体;急性の酸素投与を必要としている被験体;慢性的な酸素投与を必要としている被験体;または、エネルギーバイオマーカーの増強から恩恵を受けることができる、急性的、慢性的、もしくは進行中の、エネルギーを必要とする他の被験体が挙げられる。
【0143】
したがって、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの増大が被験体に有益である場合、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強は、それぞれのエネルギーバイオマーカー(1種または複数)のレベルを正常よりも少なくとも約4分の1標準偏差、正常よりも少なくとも約2分の1標準偏差、正常よりも少なくとも約1標準偏差、または正常よりも少なくとも約2標準偏差、上昇させることを含み得る。あるいは、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約10%、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約20%、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約30%、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約40%、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約50%、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約75%、増強より前のそれぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの被験体レベルよりも少なくとも約100%、増大させることができる。
【0144】
1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強するために、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルの低下が所望される場合、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、被験体における正常値の少なくとも約4分の1標準偏差の量だけ低下させる、被験体における正常値の少なくとも約2分の1標準偏差の量だけ低下させる、被験体における正常値の少なくとも約1標準偏差の量だけ低下させる、あるいは、被験体における正常値の少なくとも約2標準偏差の量だけ低下させることができる。あるいは、1種または複数のエネルギーバイオマーカーのレベルは、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約10%、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約20%、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約30%、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約40%、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約50%、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約75%、それぞれの1種または複数のエネルギーバイオマーカーの増強前の被験体レベルよりも少なくとも約90%、低下させることができる。
【0145】
研究用途、実験系、およびアッセイにおける化合物の使用
本発明の化合物は、研究用途でも使用することができる。本発明の化合物は、実験系における1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節するために、in vitro、in vivo、またはex vivo実験で使用することができる。こうした実験系は、細胞サンプル、組織サンプル、細胞成分または細胞成分の混合物、部分的な器官、器官全体、または生物体であり得る。式I、Ia、およびIbの1種または複数の化合物はいずれも、実験系または研究用途で使用することができる。こうした研究用途としては、それだけには限らないが、アッセイ試薬としての使用、生化学的経路の解明、または本発明の1種または複数の化合物の存在/非存在下での実験系の代謝状態に対する他の薬剤の効果の評価を挙げることができる。
【0146】
さらに、本発明の化合物は、生化学試験またはアッセイに使用することができる。こうした試験としては、前記1種または複数の化合物の投与に対する被験体の潜在的応答(または特定の亜集団の被験体の応答)を評価するための、または本発明のどの化合物が、特定の被験体または被験体の亜集団において最適効果をもたらすのかを決定するための、本発明の1種または複数の化合物の、被験体由来の組織または細胞サンプルとの培養を挙げることができる。こうした試験またはアッセイは、1)被験体から細胞サンプルまたは組織サンプルを得ること(ここでは、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの調節が分析され得る);2)この細胞サンプルまたは組織サンプルに、本発明の1種または複数の化合物を投与すること;および、3)1種または複数の化合物の投与の後、1種または複数の化合物を投与する前のエネルギーバイオマーカーの状態と比較して、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの調節の量を決定することを含むであろう。別のこうした試験またはアッセイは、1)被験体から細胞サンプルまたは組織サンプルを得ること(ここでは、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの調節が分析され得る);2)この細胞サンプルまたは組織サンプルに、本発明の少なくとも2種の化合物を投与すること;3)少なくとも2種の化合物の投与の後、少なくとも2種の化合物を投与する前のエネルギーバイオマーカーの状態と比較して、1種または複数のエネルギーバイオマーカーの調節の量を決定すること、および、4)ステップ3で決定された調節の量に基づいて、治療、抑制、または調節に使用するための化合物(1種または複数)を選択することを含むであろう。
【0147】
医薬製剤
本明細書に記載する化合物は、医薬として許容される賦形剤、医薬として許容される担体、および医薬として許容されるビヒクルなどの添加物を用いる処方によって、医薬組成物として製剤化することができる。医薬として許容される適切な賦形剤、担体、およびビヒクルとしては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、単糖類、二糖類、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、デキストロース、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリビニルピロリジノン、低融点ワックス、イオン交換樹脂など、ならびにその任意の2種またはそれ以上のものの合剤などの、加工剤(processing agent)および薬物送達調節剤および促進剤が挙げられる。医薬として許容される他の適切な賦形剤は、参照により本明細書に組み込まれる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Pub.Co.、New Jersey(1991)、および「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia、第20版(2003)および第21版(2005)に記載されている。
【0148】
医薬組成物は、単位用量が、治療または抑制効果を与えるのに十分な用量、あるいは、エネルギーバイオマーカーを調節する、正常化する、または増強するのに有効な量であるような、単位用量製剤を含むことができる。単位用量は、治療または抑制効果を与えるのに単一用量として十分であり得る、あるいは、エネルギーバイオマーカーを調節する、正常化する、または増強するのに有効な量であり得る。あるいは、単位用量は、エネルギーバイオマーカーを調節する、正常化する、または増強するために、障害の治療または抑制の経過において定期的に投与される用量であり得る。
【0149】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、例えば、溶液、懸濁液、またはエマルジョンを含めた、意図される投与の方法に適したいかなる形でもよい。溶液、懸濁液、およびエマルジョンを調製する際には、一般的に、液体担体が使用される。本発明の実施に使用するために意図される液体担体としては、例えば、水、生理食塩水、医薬として許容される有機溶媒(1種または複数)、医薬として許容される油または脂肪など、ならびにこれらの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。液体担体は、可溶化剤、乳化剤、栄養分、緩衝剤、保存剤、懸濁化剤、増粘剤、粘度調節剤、安定剤などの、医薬として許容される他の適切な添加物を含有することができる。適切な有機溶媒としては、例えば、エタノールなどの一価アルコール、およびグリコールなどの多価アルコールが挙げられる。適切な油としては、例えば、ダイズ油、ヤシ油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油などが挙げられる。非経口投与については、担体はまた、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステル(oily ester)であり得る。本発明の組成物はまた、微粒子、マイクロカプセル、リポソーム型カプセル封入物など、ならびにこれらの任意の2種またはそれ以上の組み合わせであり得る。
【0150】
「Treatise on Controlled Drug Delivery」、A.Kydonieus編、Marcel Dekker, Inc.、New York 1992中の、Lee、「Diffusion−Controlled Matrix Systems」、155〜198ページ、ならびにRonおよびLanger、「Erodible Systems」、199〜224ページに記載されている通りの、拡散制御マトリックスシステムまたは浸食性システムなどの、徐放または制御放出送達システムを使用することができる。マトリックスは、例えば、in situおよびin vivoで、例えば、加水分解または酵素による切断によって(例えば、プロテアーゼによって)自然に分解することができる生物分解可能な材料であり得る。送達システムは、例えば、天然に存在するまたは合成のポリマーまたはコポリマー、例えばヒドロゲルの形であり得る。切断可能な連結を有する典型的なポリマーとしては、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、多糖、ポリ(リン酸エステル)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(イミドカーボナート)、およびポリ(ホスファゼン)が挙げられる。
【0151】
本発明の化合物は、経腸的に、経口的に、非経口的に、舌下的に、吸入によって(例えば噴霧またはスプレーとして)、直腸に、または局所的に、所望される通りの従来の非毒性の医薬として許容される担体、補助剤、およびビヒクルを含有する単位製剤で投与することができる。例えば、適切な投与様式としては、経口、皮下、経皮、経粘膜、イオン泳動、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内(例えば鼻粘膜を介して)、硬膜下、直腸内、胃腸内など、また、特定の罹患器官または組織への直接的投与が挙げられる。中枢神経系への送達については、脊髄および硬膜外投与、または脳室への投与を使用することができる。局所投与は、経皮パッチまたはイオン泳動装置などの、経皮投与の使用を含むこともできる。本明細書では、用語「非経口」には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射または注入技術が含まれる。該化合物は、所望の投与経路に適した、医薬として許容される担体、補助剤、およびビヒクルと混合される。経口投与は、好ましい投与経路であり、経口投与に適した製剤は、好ましい製剤である。本明細書での使用目的で記載した化合物は、固体の形で、液体の形で、エアゾールの形で、または錠剤、ピル、粉末混合物、カプセル、顆粒、注射可能薬物、クリーム、溶液、坐薬、浣腸剤、結腸洗浄剤、エマルジョン、分散液、食品プレミックスの形で、また、他の適切な形で投与することができる。化合物は、リポソーム製剤で投与することもできる。化合物は、プロドラッグとして投与することもできる。ここでは、プロドラッグは、治療される被験体において、治療的に有効である形に変化を受ける。投与のさらなる方法は、当技術分野で知られている。
【0152】
注射可能な調製物、例えば、注射可能な水性または油性の滅菌懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って調製することができる。滅菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の、注射可能な滅菌溶液または懸濁液(例えば、プロピレングリコール中の溶液として)であり得る。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー液、および等張食塩水がある。加えて、溶媒または懸濁媒として、滅菌した不揮発性油も、通常使用される。この目的では、合成のモノまたはジグリセリドを含めた任意の刺激の少ない不揮発性油を使用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸も、注射可能薬物の調製における使用が見いだされている。
【0153】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒を挙げることができる。こうした固体剤形では、活性な化合物は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合されていてもよい。こうした剤形は、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤も含むことができる。カプセル、錠剤、およびピルの場合、剤形は、緩衝剤も含むことができる。錠剤およびピルは、さらに腸溶コーティングを用いて調製することができる。
【0154】
経口投与のための液体剤形としては、当分野で共通に使用される不活性希釈剤(例えば水など)を含有する、医薬として許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルを挙げることができる。こうした組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、シクロデキストリン、ならびに甘味料、着香料、および芳香剤などの補助剤も含むことができる。
【0155】
本発明の化合物はまた、リポソームの形でも投与することができる。当技術分野で知られている通り、リポソームは、通常、リン脂質または他の脂質物質から得られる。リポソームは、水性媒体中に分散した単層または多層の水和した液体結晶によって形成される。リポソームを形成することができる、非毒性の、生理的に許容される、代謝可能ないかなる脂質も使用することができる。リポソーム形中の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤などを含有することができる。好ましい脂質は、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)(天然と合成の両方)である。リポソームを形成する方法は、当技術分野で知られている。例えば、Prescott編、「Methods in Cell Biology」、第XIV巻、Academic Press、New York,N.W.、33ページ以下参照(1976)を参照のこと。
【0156】
本発明はまた、ミトコンドリア疾患、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患などの、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス疾患を治療または抑制するのに有用な材料を含有する製品およびキットを提供する。本発明は、式I、Ia、および/またはIbの1種または複数の化合物を含むキットを提供する。ある種の実施形態では、本発明のキットは、上記の容器を含む。
【0157】
他の態様では、該キットは、例えば、ミトコンドリア障害を患う個人を治療すること、または個人におけるミトコンドリア障害を抑制することを含めた、本明細書に記載する方法のいずれのためにも使用することができる。
【0158】
単回投与剤形を作製するための担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、活性成分が投与される宿主および特定の投与様式に応じて変動することとなる。しかし、任意の特定の患者に対する特定の投与レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、体の領域、肥満度指数(BMI)、健康状態、性別、食事、投与の時刻、投与経路、排出の速度、薬物の組み合わせ、ならびに治療を受ける特定の疾患のタイプ、進行、および重症度を含めた様々な因子に依存することを理解するべきである。選択される単位投薬量は通常、血液、組織、器官、または体の他の標的部位に、定義された最終濃度の薬物を提供するように製造および投与される。投与される状況に対する治療有効量または有効量は、ルーチン実験によって容易に決定することができ、また、通常の臨床医の技術および判断以内にある。
【0159】
使用することができる投薬量の例は、体重1kgあたり約0.1mgから約300mg、または体重1kgあたり約1.0mgから約100mg、または体重1kgあたり約1.0mgから約50mg、または体重1kgあたり約1.0mgから約30mg、または体重1kgあたり約1.0mgから約10mg、または体重1kgあたり約10mgから約100mg、または体重1kgあたり約50mgから約150mg、または体重1kgあたり約100mgから約200mg、または体重1kgあたり約150mgから約250mg、または体重1kgあたり約200mgから約300mg、または体重1kgあたり約250mgから約300mgの、治療有効量または有効量の投薬量範囲内である。本発明の化合物は、1回に1日量を投与することもできるし、1日の総投薬量を、1日2回、3回、または4回の分割された投薬量で投与することもできる。
【0160】
本発明の化合物を、唯一の活性な医薬品として投与することもできるが、これを、障害の治療または抑制に使用される1種または複数の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。ミトコンドリア疾患の治療または抑制のための、本発明の化合物と組み合わせると有用な代表的な薬剤としては、それだけには限らないが、補酵素Q、ビタミンE、イデベノン、MitoQ、ビタミン、および酸化防止剤化合物が挙げられる。
【0161】
本発明の化合物と組み合わせてさらなる活性剤を使用する場合、さらなる活性剤は通常、「the Physicians’Desk Reference」(PDR)第53版(1999)に示される通りの治療的量、または当分野の技術者に知られているであろうような治療的に有用な量で使用することができる。
【0162】
本発明の化合物および他の治療的に活性な薬剤は、推奨される最大の臨床的投薬量で、または、より低い用量で投与することができる。本発明の組成物における活性な化合物の投薬レベルは、投与経路、疾患の重症度、および患者の応答に応じて、所望の治療効果を得るように変動させることができる。他の治療薬と組み合わせて投与される場合、治療薬を、同じ時刻または異なる時刻に投与される別々の組成物として調製することもできるし、治療薬を単一の組成物として投与することもできる。
【0163】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに理解されることとなる。
【0164】
一般に、本出願に使用する学術用語は、CambridgeSoft Corp(Cambridge、Mass.)によるChemOffice(登録商標)内のネーミングパッケージ、バージョン11.0の一連のプログラムの助けを借りて作成した。
【0165】
本発明の化合物の調製
本発明の化合物は、以下の一般的方法および手順を使用して、容易に入手できる出発材料から調製することができる。典型的であるまたは好ましい処理条件(すなわち、反応温度、時刻、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、別段の記述がない限り、他の処理条件も使用可能であることが理解されよう。最適反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒に伴って変動し得るが、こうした条件は、通常の最適化手順によって当業者によって決めることができる。
【0166】
合成反応パラメータ
用語「溶媒」、「不活性有機溶媒」、または「不活性溶媒」は、それと共に記載される反応条件下で不活性である溶媒を意味する。本発明の化合物の合成に使用される溶媒としては、例えば、メタノール(「MeOH」)、アセトン、水、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(「THF」)、クロロホルム、塩化メチレン(またはジクロロメタン(「DCM」))、ジエチルエーテル、ピリジンなど、ならびにそれらの混合物が挙げられる。そうでないと指定されない限り、本発明の反応に使用する溶媒は、不活性有機溶媒である。
【0167】
用語「q.s.」は、所定の機能を達成するのに十分な量を加えること、例えば、溶液を所望の体積(すなわち100%)にすることを意味する。
【0168】
Hおよび13C NMRは、記述した通りの重水素化された溶媒中で、それぞれ400MHzおよび100MHzで、Varian Ultrashielded磁石上で得た。すべての範囲は、その残留溶媒ピーク(Gottlieb,H.E.ら;J.Org.Chem.1997、62、7512〜7515に定義される通り)、または0.00ppmでのTMSに対して、ppmで記述する。FIDは、Varian VNMRJソフトウェアまたはACD Version 11 1D NMRプロセッサーを使用して処理した。IRスペクトルは、純サンプルとしてPE Universal single bounce SeGe/Diamond ATR stageを使用して、LiTa検出器を備えたPerkin ELMER Spectrum 100で得た。融解温度は、密閉されてないホウ珪酸ガラス管内で、Optimelt MPA−100で5℃/分で得た。HPLCおよびHPLC/MSデータは、混在モードでAgilent ACPI/ES multimode sourceを使用して、Diode Array分光光度計(下記参照)とHP 1956Bマスの両方を取り付けたAgilent 1100 LCシステムで得た。HPLCカラムは、Phenomenex Lunaフェニル−ヘキシル150mm×4.6mm 5μmシリカ担持カラムであり、0.02%(v/v)ギ酸を含有する水/アセトニトリルで溶離した。スペクトルは、Agilent chemstationソフトウェアで処理した。クロマトグラフ分離は、ISCO Redisep包装済みカラムを使用して、Teledyne−ISCO Combiflash Companion上で実施した。
【0169】
出発化合物(例えば2,3,5−トリメチルヒドロキノン)は、例えばAldrich Chemical Company、Milwaukee、WIから、市販品として入手できる、または、一般に使用される方法論を使用して、当分野の技術者によって容易に調製することができる。
【実施例】
【0170】
化合物の合成
実施例1
2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン
ステップ1:1,4−ビス(ベンジルオキシ)−3,5,6−トリメチルベンゼン
2,3,5−トリメチルヒドロキノン(15.2g、100mmol)のDMF(150mL)溶液を、BnBr(35.7mL、51.6g、300mmol、3当量)と無水KCO(55.3g、400mmol、4当量)で処理した。褐色懸濁液を、48時間60℃に加熱したが、HPLCによれば、この時間では反応は不完全であると判断された。さらなるBnBr(37mL、300mmol、3当量)とKCO(50g、362mmol、3.6当量)を加え、さらに48時間60℃に加熱した。反応物を冷却し、Celiteを通して濾過し、濾過ケークを2×100mL EtOAcですすぎ、合わせた濾液を500mL HOで洗浄した。水層を、4×250mL EtOAcで抽出し、回転蒸発によって80℃で濃縮した。褐色の残渣を300mLの水に注ぐと、淡い褐色の固体が沈殿し、得られた懸濁液を終夜撹拌した。濾過によって褐色固体を収集し、2×50mL HOで洗浄し、乾燥させると、褐色固体として26.8gの1,4−ビス(ベンジルオキシ)−3,5,6−トリメチルベンゼンがもたらされた。H NMR (400 MHz, CDCl) d = 7.50−7.34 (m, 10 H), 6.64 (s, 1 H), 5.03 (s, 2 H), 4.74 (s, 2 H), 2.30 (s, 3 H), 2.25 (s, 3 H), 2.20 (s, 3H) ppm。
【0171】
ステップ2 2−ブロモ−1,4−ビス(ベンジルオキシ)−3,5,6−トリメチルベンゼン
100mLジメチルエーテル(DME)に、ステップ1にある通りに調製した1,4−ビス(ベンジルオキシ)−3,5,6−トリメチルベンゼン(5g、15.0mmol)を溶解し、これを、滴下漏斗を介して、Br(0.85mL、16.5mmol、1.1当量)の10mL DME(1.6M)溶液で10分かけて処理した。HPLCによれば、反応は不完全であると判断された。さらなるBrのDME溶液(0.42mL、1.31g、8.19mmol、0.55当量)を加え、終夜攪拌した。夜間に、溶液から白色固体が沈殿した。反応物を200mL EtOAcで処理して固体を溶解し、洗浄水が無色になるまでHOで洗浄した(3×100mL)。合わせた水層を、EtOAc(3×50mL)で再び抽出し、合わせた有機層を、2×100mL飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して褐色固体とした。この固体をシリカ上に吸着させ、フラッシュクロマトグラフィー(傾斜溶離、2〜20% EtOAc/ヘプタン)によって精製すると、黄色固体が得られた。この固体をヘプタンに懸濁し、終夜撹拌し、濾過し、濾過ケークをヘプタンですすいだ。得られた白色粉末を真空中で乾燥させると、白色粉末として3.31gの2−ブロモ−1,4−ビス(ベンジルオキシ)−3,5,6−トリメチルベンゼンがもたらされた。HPLC 97.8%、215nm、イオン化せず;H NMR (400 MHz, CDCl3) d = 7.57 (d, 2 H), 7.48 (d, 2 H), 7.44−7.36 (m, 6 H), 4.87 (s, 2H), 4.74 (s, 2 H), 2.41 (s, 3 H), 2.24 (s, 3 H), 2.20 (s, 3 H) ppm。
【0172】
ステップ3:2,5−ビス(ベンジルオキシ)−3,4,6−トリメチルベンズアルデヒド。
【0173】
2−ブロモ−1,4−ビス(ベンジルオキシ)−3,5,6−トリメチルベンゼン(5.002g、12.16mmol)を、25mL トルエンと25mL EtOに溶解し、0℃に冷却した。この黄色の撹拌溶液に、8.2mL n−BuLi(ヘキサン中、1.6M、12.76mmol、1.05当量)を10分かけて加えると、透明な黄色溶液が得られた。0℃で20分後、溶液は、濁ってきた。このわずかに濁った溶液に、DMF(3mL、40mmol、2.8g)を加えると、添加後すぐに、溶液が透明になった。終夜攪拌後、20%NHCl水溶液50mL、それに続いて100mL HOおよび100mL EtOAcを加えた。層を分離させ、水相を、3×100mLのEtOAcで抽出し、合わせた有機相を、NaCl飽和水溶液2×50mLで洗浄し、NaSOで乾燥させ、黄色オイルに濃縮すると、凝固して、薄褐色の固体として2,5−ビス(ベンジルオキシ)−3,4,6−トリメチルベンズアルデヒドが得られた(3.90g)。MS M+H=361m/z; H NMR (400 MHz, CDCl3) d = 10.51 (s, 1H), 7.51−7.37 (m, 10 H), 4.87 (s, 2 H), 4.74 (s, 2 H), 2.55 (s, 3 H), 2.30 (s, 3 H), 2.25 (s, 3 H)ppm。
【0174】
ステップ4:2−(2,5−ビス(ベンジルオキシ)−3,4,6−トリメチルフェニル)エタンアミン
2,5−ビス(ベンジルオキシ)−3,4,6−トリメチルベンズアルデヒド(3.2g、8.8mmol、1.0当量)と酢酸アンモニウム(815mg、10.6mmol、1.15当量)を、ニトロメタン(44mL)に溶解した。得られた溶液を、80℃で1時間撹拌し、その後、HPLC分析によると、反応が完了したことが示された。混合物を、100mL酢酸エチルに希釈し、ブライン(30mL)で2回洗浄した。有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮させると、3.2gの黄色固体、すなわち2,5−ビス(ベンジルオキシ)−(3,4,6−トリメチル)ニトロスチレンが得られ、これを、さらなる精製を行わずに使用した。この固体中間体を、22mL無水THFに溶解し、0℃で撹拌しながら水素化アルミニウムリチウム(2.1g、50mmol、6当量)のスラリーに滴下した。60分後、添加は完了し、混合物を、暖めて還流させた。反応物を、さらに18時間撹拌し、その後、HPLC分析によって、ある種の中間産物の存在が示された。この時点で、混合物を周囲温度に冷却し、水素化アルミニウムリチウム(700mg)の第2部分を加えた。30分還流後、反応は、完了したと考えられた。混合物を、氷水浴中で撹拌しながら、2.5M水酸化ナトリウム200mLに、ゆっくりと注いだ。得られたスラリーを20分間撹拌し、i−PrOAc(200mL)で希釈し、濾過した。有機層を除去し、水層を100mL i−PrOAcで2回洗浄した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、白色固体として3.3gの2−(2,5−ビス(ベンジルオキシ)−3,4,6−トリメチルフェニル)エタンアミンが得られた。H−NMR (400 MHz, CDOD) 7.51−7.31 (m, 10H), 4.77 (s, 2H), 4.72 (s, 2H),2.83 (m, 2H), 2.71 (m, 2H), 2.24 (s, 3H), 2.22 (s, 3H), 2.13 (s, 3H)ppm。
【0175】
ステップ5:2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン
2−(2,5−ビス(ベンジルオキシ)−3,4,6−トリメチルフェニル)エタンアミン(500mg、1.3mmol)をDMSO(1mL)に入れた撹拌溶液に、2−クロロ−4−トリフルオロメチルピリジン(256mg、2.0mmol、1.5当量)と、ジイソプロピルエチルアミン(578μL、3.3mmol、2.5当量)を加えた。得られた溶液を、12時間100℃で撹拌し、その後、HPLC分析によって、反応が完了したことが示された。混合物を80℃にし、水(3mL)を加え、得られた懸濁液を30分撹拌した。その後、混合物を周囲温度にし、さらに30分撹拌し、その後、濾過によって固体を収集した。真空中で乾燥させた後、所望の生成物を含有する750mgの未精製の褐色固体が得られた。この粗製物質を、トリフルオロ酢酸(6mL)に溶解し、チオアニソール(393μL、3.35mmol)で処理した。周囲温度で1時間撹拌後、HPLC分析によると、反応が完了したことが示された。揮発性物質を、真空中で除去し、残渣を25mLの酢酸エチルに溶解した。有機層を、水、1M 炭酸水素ナトリウム水溶液、およびブライン(各10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。未精製のヒドロキノン(450mg)を、アセトニトリル(7mL)に溶解し、氷水浴中で冷却した。この撹拌溶液に、硝酸セリウムアンモニウム水溶液(2mL中に、1.46g、7.6mmol)を、液滴で加えた。試薬の約90%を加えた時、TLC分析によって、反応が完了したと考えられた。この時点で、混合物を、酢酸エチルとブライン(各15mL)に分け、有機層を除去した。残りの水層を、1M炭酸水素ナトリウム水溶液10mLを加えることによって塩基性にし、酢酸エチル(15mL)で抽出した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮すると、500mgの褐色のオイルが生成された。シリカゲルクロマトグラフィによる精製(傾斜溶離、0→35%酢酸エチル(ヘプタン中))によって、明るい黄色固体(85mg)として、2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンがもたらされた。H−NMR (400 MHz, CDCl) 8.15 (d, 1H), 6.76 (m, 2H), 3.49 (m, 2H), 2.86 (t, 2H), 2.08 (s, 3H), 2.01 (s, 6H)。M=338.0。
【0176】
実施例1に記載したのと類似の手順を使用して、以下の化合物を調製した:
2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;H−NMR (400 MHz, CDCl) 7.50 (t, 1H), 6.90 (d, 1H), 6.57 (d, 1H), 4.83 (br t, 1H), 3.43 (q, 2H), 2.80 (t, 2H), 2.08 (s, 3H), 2.00 (s, 6H) ppm。M=338.0。
【0177】
2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;H−NMR (400 MHz, CDCl) 10.6 (br s, 1H), 8,12 (s, 1H), 8.00 (d, 1H), 7.32 (d, 1H), 3.41 (br t, 2H), 2.80 (t, 2H), 2.07 (s, 3H), 1.99 (s, 6H) ppm。M=338.0。
【0178】
2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン H−NMR (400 MHz, CDCl) 8.08 (s, 2H), 5.24 (br t, 1H), 3.49 (q, 2H), 2.80 (t, 2H) 2.02 (s, 6H), 2.00 (s, 3H )ppm。M=289.0。
【0179】
2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;M=289.0。
【0180】
2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;H−NMR (400 MHz, CDCl) 10.3 (br s, 1H), 7.89 (t, 1H), 7.74 (d, 1H), 7.20 (d, 1H), 6.76 (t, 1H), 3.39 (m, 2H), 2.80 (t, 2H), 2.08 (s, 3H), 2.01 (s, 6H) ppm。M+H=271.1。
【0181】
2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;H−NMR (400 MHz, CDCl) 8.42 (br s, 1H), 6.80 (d, 1H), 5.80 (br s, 1H), 3.55 (q, 2H), 2.81 (t, 2H), 2.07 (s, 3H), 2.01 (s, 6H) ppm。M+H=340.1。
【0182】
2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;H−NMR (400 MHz, CDCl) 8.23 (m, 2H), 6.52 (m, 1H), 5.21 (m, 1H), 3.56 (q, 2H), 2.81 (t, 2H), 2.01 (m, 9H) ppm。M+H=272.2。
【0183】
2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;H−NMR (400 MHz, CDCl) 8.22 (d, 1H), 7.62 (m, 1H), 6.60 (q, 1H), 3.61 (q, 2H), 2.87 (t, 2H), 2.03 (m, 6H), 2.01 (s, 3H) ppm。M+H=339.0。
【0184】
生物学的実施例
実施例A
フリードライヒ失調症患者由来のヒト皮膚線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
最初のスクリーニングは、レドックス障害の回復に有効な化合物を特定するために実施した。Jauslinら、Hum.Mol.Genet.11(24):3055(2002)、Jauslinら、、FASEB J.17:1972〜4(2003)、および国際特許出願第WO2004/003565号に記載される通りに、試験サンプル、4つの基準化合物(イデベノン、デシルユビキノン、Trolox、およびα−酢酸トコフェロール)、および溶媒対照を、L−ブチオニン−(S,R)−スルホキシイミン(BSO)の添加によってストレスを受けたFRDA線維芽細胞を救う、それらの能力について試験した。フリードライヒ失調症患者由来のヒト皮膚線維芽細胞は、L−ブチオニン−(S,R)−スルホキシイミン(BSO)を用いるグルタチオン(GSH)の新規合成の阻害に高感受性、すなわちGSH合成酵素の特異的阻害剤であることが示されている(Jauslinら、Hum.Mol.Genet.11(24):3055(2002))。この特異的BSO介在性細胞死は、抗酸化剤または抗酸化経路に関与する分子(α−トコフェロール、セレンまたは小分子グルタチオンペルオキシダーゼミメティクスなど)の投与によって妨げることができる。しかし、これらの抗酸化剤は、その効力、すなわち、それらが、BSOによってストレスを受けたFRDA線維芽細胞を救うことが可能である濃度が異なる。
【0185】
MEM(アミノ酸およびビタミンを富化した培地、カタログ番号1−31F24−I)と、培地199(M199、カタログ番号1−21F22−I)(アールの平衡塩(Earle’s Balanced Salt)を含み、フェノールレッドを含まない)を、Bioconceptから購入した。ウシ胎児血清は、PAA研究所から得た。塩基性線維芽細胞成長因子と上皮細胞成長因子は、PeproTechから購入した。ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン混合物、L−ブチオニン(S,R)−スルホキシイミン、(+)−α−酢酸トコフェロール、デシルユビキノン、およびウシ膵臓由来のインスリンは、Sigmaから購入した。Trolox(6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸)は、Flukaから得た。イデベノンは、Chemo Ibericaから得た。カルセインAMは、Molecular Probesから購入した。細胞培養培地は、125ml M199 EB、50ml ウシ胎児血清、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、2mMグルタミン、10μg/mlインスリン、10ng/ml EGF、および10ng/ml bFGFを合わせることによって作製し、500mlの体積になるようにMEM EBSを加えた。200mlの培地(Invitrogen,Carlsbad,Ca.)にBSO 444mgを溶解し、その後濾過滅菌することによって、10mM BSO溶液を調製した。実験過程中、この溶液を、+4℃で保管した。細胞を、Coriell Cell Repositories(Camden,NJ;保管番号GM04078)から得て、10cmの組織培養プレートで増殖させた。細胞を、3日ごとに1:3の比で分割した。
【0186】
試験サンプルを、1.5mlガラスバイアルに入れた。化合物を、DMSO、エタノール、またはPBSで希釈し、5mM保存溶液を得た。溶解後、これを−20℃で保管した。基準の抗酸化剤(イデベノン、デシルユビキノン、酢酸トコフェロール、およびTrolox)を、DMSOに溶解した。
【0187】
試験サンプルを、以下のプロトコルに従ってスクリーニングした:FRDA線維芽細胞を含む培養株は、液体窒素中に保管した約500,000細胞を含む1mlバイアルから開始した。3日ごとに1:3の比で細胞を分割することによって、10cmの細胞培養皿で、9枚のプレートが得られるまで細胞を増殖させた。集密になったら、線維芽細胞を収集した。54枚のマイクロタイタープレート(96ウェル−MTP)に対して、合計1430万個の細胞(第8代)を、480mlの培地に再懸濁した。これは、3,000細胞/ウェルを含む100μl培地に相当する。残りの細胞は、増殖のための10cm細胞培養株プレート(500,000細胞/プレート)に分配した。培養プレートに細胞を付着させるために、プレートを、95%湿度および5%COを含む雰囲気中で37℃で終夜保温した。
【0188】
MTP培地(243μl)を、マイクロタイタープレートのウェルに加えた。試験化合物を解凍し、7.5μlの5mM保存溶液を、243μlの培地を含有するウェルに溶解して、150μMのマスター溶液を得た。マスター溶液からの連続希釈を行った。1回の希釈ステップの期間は、できる限り短くした(一般に1秒未満)。
【0189】
プレートを、細胞培養インキュベーター中に一晩置いた。その翌日、10μlの10mM BSO溶液を、ウェルに加え、1mMの最終のBSO濃度とした。48時間後、0%対照(ウェルE1〜H1)の細胞が確実に死滅していることを確認するために、3枚のプレートを、位相差顕微鏡下で検査した。すべてのプレートから培地を捨て、ペーパータオル上に逆さにしたプレートを軽くたたくことによって、残りの液体を除去した。
【0190】
次いで、1.2μMカルセインAMを含有する100μlのPBSを、各ウェルに加えた。プレートを、室温で50〜70分間保温した。その後、PBSを捨て、ペーパータオル上でプレートを軽くたたき、Gemini蛍光リーダーで、蛍光(485nmおよび525nmの励起/発光波長)を読み取った。データを、Microsoft Excel(EXCELは、Microsoft Corporationの表計算プログラムの登録商標である)にインポートし、各化合物について、EC50濃度を算出した。
【0191】
化合物を3回試験した、すなわち、実験を3回実施し、細胞の継代数は、1回繰り返すごとに増大した。
【0192】
溶媒(DMSO、エタノール、PBS)は、試験される最も高い濃度(1%)であっても、非BSO処理細胞の生存率に対して有害な影響を与えないし、BSO処理された線維芽細胞に対しても有益な影響を与えなかった。化合物はいずれも、自発蛍光を示さなかった。非BSO処理の線維芽細胞の生存率を、100%と設定し、BSOおよび化合物で処理した細胞の生存率を、この値と比較して算出した。
【0193】
以下の表で、4種の対照化合物のEC50をまとめて示す。
【0194】
【表2】

以下のものなどの、本発明のある特定の化合物:
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;および
・2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
は、EC50が、約100nM未満であり、FRDAからの保護を示した。
【0195】
実施例B
ハンチントン病の患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
FRDA細胞を、Coriell Cell Repositoriesから入手したハンチントン病細胞(Camden、NJ;保管番号GM 04281)で置き換えること以外は、実施例Aに記載したのと同様のスクリーニングを使用して、本発明の化合物を試験した。本発明の化合物を、ハンチントン病の患者由来のヒト皮膚線維芽細胞を酸化ストレスから救う、その能力について試験した。
【0196】
以下のものなどの、本発明のある特定の化合物:
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;および
・2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
は、EC50が、約100nM未満であり、ハンチントン病からの保護を示した。
【0197】
実施例C
レーバー遺伝性視神経症患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
FRDA細胞を、Coriell Cell Repositoriesから入手したレーバー遺伝性視神経症(LHON)細胞(Camden,NJ;保管番号GM03858)で置き換えること以外は、実施例Aに記載したのと同様のスクリーニングを使用して、本発明の化合物を試験した。本発明の化合物を、LHON患者由来のヒト皮膚線維芽細胞を酸化ストレスから救う、その能力について試験した。
【0198】
以下のものなどの、本発明のある特定の化合物:
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;および
・2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
は、EC50が、約100nM未満であり、LHONからの保護を示した。
【0199】
実施例D
パーキンソン病患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
FRDA細胞を、Coriell Cell Repositoriesから入手したパーキンソン病(PD)細胞(Camden、NJ;保管番号AG20439)で置き換えること以外は、実施例Aに記載したのと同様のスクリーニングを使用して、本発明の化合物を試験した。本発明の化合物を、パーキンソン病患者由来のヒト皮膚線維芽細胞を酸化ストレスから救う、その能力について試験した。
【0200】
以下のものなどの、本発明のある特定の化合物:
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;および
・2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
は、EC50が、約100nM未満であり、PDからの保護を示した。
【0201】
実施例E
CoQ10欠乏性患者由来の線維芽細胞における本発明の化合物のスクリーニング
FRDA細胞を、CoQ2突然変異を有するCoQ10欠乏性患者から得られる細胞で置き換えること以外は、実施例Aに記載したのと同様のスクリーニングを使用して、本発明の化合物を試験した。本発明の化合物を、CoQ10欠乏性患者由来のヒト皮膚線維芽細胞を酸化ストレスから救う、その能力について試験した。
【0202】
以下のものなどの、本発明のある特定の化合物:
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(4−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(6−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2,3,5−トリメチル−6−(2−(3−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルアミノ)エチル)シクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
・2−(2−(5−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;および
・2−(2−(4−フルオロピリミジン−2−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオン;
は、EC50が、約100nM未満であり、CoQ10欠乏からの保護を示した。
【0203】
引用を特定することによって本明細書に言及した刊行物、特許、特許出願、および公開された特許出願の開示はすべて、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0204】
前述の発明は、理解を確実にする目的で、図と例とを挙げて、ある程度詳細に記載してきたが、ある種の軽微な変更および変形が実施されるであろうことが、当業者には明らかである。したがって、説明および実施例は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法であって、治療有効量または有効量の、式Iの1種または複数の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物を被験体に投与することを含む方法:
【化7】

(式中、Rは、
【化8】

からなる群から選択され、
ここでは、は、残りの分子へのRの付着点を示し;
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、任意選択で置換されたヘテロシクリルであり;
MおよびM’は独立に、水素、−C(O)−R10、−C(O)(C〜C)−アルケニル、−C(O)(C〜C)−アルキニル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロシクリル、−C(O)O−R10、−C(O)NR10a10b、−SOOR10、−SO−C〜C−アルキル、−SO−(C〜C)−ハロアルキル、−SO−アリール、−SO−NR10a10b、および−P(O)(OR10a)(OR10b)、およびC連結型アミノ酸またはジペプチドから選択され;
10、R10a、およびR10bは独立に、水素、または、−OH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)、−C(O)OH、−C(O)O−(C〜C)−アルキル、もしくはハロゲンで任意選択で置換された(C〜C)−アルキルである)。
【請求項2】
ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性疾患、または加齢による疾患から選択される酸化ストレス障害を治療する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する請求項1の方法であって、治療有効量または有効量の、式Iの1種または複数の化合物を被験体に投与することを含む方法。
【請求項3】
式Iの化合物またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物:
【化9】

(式中、
式Iの化合物が、2−(2−(9−(3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメチルシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンでも2−(2−(9−(3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)−9H−プリン−6−イルアミノ)エチル)−3,5,6−トリメトキシシクロヘキサ−2,5−ジエン−1,4−ジオンでもないという条件で、
Rは、
【化10】

からなる群から選択され、
ここでは、は、残りの分子へのRの付着点を示し;
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、任意選択で置換されたヘテロシクリルであり;
MおよびM’は独立に、水素、−C(O)−R10、−C(O)(C〜C)−アルケニル、−C(O)(C〜C)−アルキニル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロシクリル、−C(O)O−R10、−C(O)NR10a10b、−SOOR10、−SO−C〜C−アルキル、−SO−(C〜C)−ハロアルキル、−SO−アリール、−SO−NR10a10b、および−P(O)(OR10a)(OR10b)、およびC連結型アミノ酸またはジペプチドから選択され;
10、R10a、およびR10bは独立に、水素、またはは、−OH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)、−C(O)OH、−C(O)O−(C〜C)−アルキル、もしくはハロゲンで任意選択で置換された(C〜C)−アルキルである)。
【請求項4】
式Iaの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物:
【化11】

(式中、
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C(O)(C〜C)アルキル、−C(O)(C〜C)シクロアルキル、−C(O)OH、−C(O)O(C〜C)−アルキル、またはオキソで任意選択で置換されたヘテロシクリルである)。
【請求項5】
nが0である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
、R、およびRが、独立に(C〜C)−アルキルである、請求項4に記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物。
【請求項7】
が水素である、請求項4に記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物。
【請求項8】
Hetが、任意選択で置換されたヘテロアリールである、請求項4に記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物。
【請求項9】
Hetが、任意選択で置換された、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、またはテトラゾールから選択される、請求項8に記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物。
【請求項10】
Hetが、任意選択で置換された、インドール、キノリン、イソインドール、イソキノリン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾトリアゾール、イミダゾ−ピリジン、ピラゾロピラジン、ピラゾロ−ピリダジン、テトラヒドロプリン、ピリミド−ピリミジン、ピラジノ−ピリダジン、アクリジン、ジベンズアゼピン、カルバゾール、フェナントリジン、フェナジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジン、フェノキサジン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジンから選択される、請求項8に記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物。
【請求項11】
医薬として許容される賦形剤をさらに含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法であって、治療有効量または有効量の、請求項4に記載の1種または複数の化合物を投与することを含む方法。
【請求項13】
前記障害がミトコンドリア障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ミトコンドリア障害が呼吸鎖障害である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記障害が、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS);レーバー遺伝性視神経症(LHON);リー病;カーンズ−セイヤー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FA);CoQ10欠乏、心筋症;脳筋症および他の筋障害;尿細管性アシドーシス;神経変性疾患;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);運動ニューロン疾患;他の神経性疾患;てんかん;遺伝子病;ハンチントン病;気分障害;統合失調症;双極性障害;加齢に伴う疾患;脳血管発作、黄斑変性症;糖尿病;および癌からなる群から選択される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ミトコンドリア疾患が、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS);レーバー遺伝性視神経症(LHON);リー病;カーンズ−セイヤー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FA)、およびCoQ10欠乏からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患がハンチントン病である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患がパーキンソン病である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記障害が、酸素の欠乏、中毒、もしくは毒性、または酸素の輸送の質的または量的途絶に起因するエネルギープロセシング低下障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項4に記載の1種または複数の化合物を含む、治療有効量または有効量の医薬組成物を投与することによって、ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療または抑制する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法。
【請求項21】
式Ibの化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物:
【化12】

(ここでは、
nは、0または1であり;
およびRは独立に、水素、(C〜C)アルキル、および(C〜C)アルコキシから選択され;
は、(C〜C)アルキルまたは(C〜C)アルコキシであり;
は、水素、(C〜C)アルキル、ヒドロキシ、または(C〜C)アルコキシであり;
Hetは、(C〜C)アルキル、(C〜C)ハロアルキル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C(O)(C〜C)アルキル、−C(O)(C〜C)シクロアルキル、−C(O)OH、−C(O)O(C〜C)−アルキル、またはオキソで任意選択で置換されたヘテロシクリルであり;
MおよびM’は独立に、水素、−C(O)−R10、−C(O)(C〜C)−アルケニル、−C(O)(C〜C)−アルキニル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロシクリル、−C(O)O−R10、−C(O)NR10a10b、−SOOR10、−SO−C〜C−アルキル、−SO−(C〜C)−ハロアルキル、−SO−アリール、−SO−NR10a10b、および−P(O)(OR10a)(OR10b)、およびC連結型アミノ酸またはジペプチドから選択され;
10、R10a、およびR10bは独立に、水素、または、−OH、−NH、−NH(C〜Cアルキル)、−N(C〜Cアルキル)、−C(O)OH、−C(O)O−(C〜C)−アルキル、もしくはハロゲンで任意選択で置換された(C〜C)−アルキルである)。
【請求項22】
nが0である請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
、R、およびRがメチルであり、MおよびM’が独立に、水素またはC(O)−R10である、請求項21に記載の化合物、またはその塩、溶媒和物、もしくは水和物。
【請求項24】
医薬として許容される賦形剤をさらに含む、請求項21に記載の化合物。
【請求項25】
ミトコンドリア障害、エネルギープロセシング低下障害、神経変性障害、および加齢による疾患から選択される、細胞における正常な電子流に影響を及ぼす酸化ストレス障害、酸化ストレスによって引き起こされる疾患、酸化ストレスによって悪化する疾患、一次的な酸化ストレス障害、または二次的な酸化ストレス障害、を含めた酸化ストレス障害を治療する;あるいは1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法であって、治療有効量または有効量の、請求項21に記載の1種または複数の化合物を被験体に投与することを含む方法。
【請求項26】
前記障害が、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS);レーバー遺伝性視神経症(LHON);リー病;カーンズ−セイヤー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FA);他の筋障害;CoQ10欠乏;心筋症;脳筋症;尿細管性アシドーシス;神経変性疾患;パーキンソン病;アルツハイマー病;筋萎縮性側索硬化症(ALS);運動ニューロン疾患;他の神経性疾患;てんかん;遺伝子病;ハンチントン病;気分障害;統合失調症;双極性障害;加齢に伴う疾患;脳血管発作、黄斑変性症;糖尿病;および癌からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ミトコンドリア疾患が、遺伝性ミトコンドリア疾患;赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん(MERRF);ミトコンドリアミオパチー、脳症、高乳酸血症、および脳卒中(MELAS);レーバー遺伝性視神経症(LHON);リー病;カーンズ−セイヤー症候群(KSS);フリードライヒ失調症(FA)、およびCoQ10欠乏からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記障害が、ハンチントン病およびパーキンソン病からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記障害が、酸素の欠乏、中毒、もしくは毒性、または酸素の輸送の質的または量的途絶に起因するエネルギープロセシング低下障害である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項21に記載の1種または複数の化合物を含む、治療有効量または有効量の医薬組成物を投与することによって、ミトコンドリア障害もしくはエネルギープロセシング低下障害、あるいは酸化ストレスによって引き起こされるまたは酸化ストレスによって悪化する疾患を治療または抑制する;または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを調節する、1種または複数のエネルギーバイオマーカーを正常化する、または1種または複数のエネルギーバイオマーカーを増強する方法。
【請求項31】
前記エネルギーバイオマーカーが、全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中の乳酸(ラクテート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中のピルビン酸(ピルベート)レベル;全血、血漿、脳脊髄液、または脳室内流体のいずれかの中の乳酸/ピルビン酸の比;クレアチンリン酸レベル、NADH(NADH+H)レベル;NADPH(NADPH+H)レベル;NADレベル;NADPレベル;ATPレベル;還元型補酵素Q(CoQred)レベル;酸化型補酵素Q(CoQox)レベル;全補酵素Q(CoQtot)レベル;酸化型チトクロムCレベル;還元型チトクロムCレベル;酸化型チトクロムC/還元型チトクロムCの比;アセト酢酸レベル、β−ヒドロキシ酪酸レベル、アセト酢酸/β−ヒドロキシ酪酸比、8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)レベル;活性酸素種のレベル;酸素消費(VO2)のレベル;二酸化炭素排出(VCO2)のレベル;呼吸商(VCO2/VO2);運動耐性;および嫌気的閾値からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−525926(P2011−525926A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516536(P2011−516536)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/048308
【国際公開番号】WO2009/158348
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(507393285)エジソン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】