説明

酸化タンタル粒子の製造方法

【課題】 300℃よりも低い温度で、結晶化された酸化タンタル粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 容器内にタンタルアルコキシドを用意する工程と、前記容器内で前記タンタルアルコキシドを加水分解する加水分解工程と、を含む酸化タンタル粒子の製造方法において、
前記加水分解工程における、前記容器内の最高温度T(℃)及び前記容器内の最高圧力P(MPa)が、下記の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする酸化タンタル粒子の製造方法。
205≦T<300 ・・・(1)
P≧0.9 ・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化タンタル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化タンタル粒子は、可視光領域の光を吸収しにくい、屈折率が高い、アッベ数が低いという性質をもつため、レンズの添加剤として用いられる。
【0003】
特に、結晶化された酸化タンタル粒子は、非晶質の酸化タンタル粒子に比べて、粒子ごとの屈折率、アッベ数の差が小さい。そのため、結晶化された酸化タンタル粒子をレンズの母材に添加したとき、そのレンズ内の位置ごとの屈折率、アッベ数の差も小さい。
【0004】
従来の結晶化された酸化タンタル粒子の製造方法は、有機溶媒のトルエンに溶かしたタンタルペンタブトキシドをオートクレーブ反応容器にいれ、300℃、高圧下でタンタルペンタブトキシドを加水分解することによって得る(非特許文献1)。一般的に、無機粒子を製造する際に、300℃以上の高温下の反応を利用する場合、粒子同士の衝突頻度が高くなるため、粒子同士が凝集するおそれがあることが知られている。一方、従来、タンタルアルコキシドを低温、低圧下で加水分解すると、非晶質の酸化タンタル粒子が得られることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H.Kominami et al.、Physical Chemistry Chemical Physics、3号、13巻、2697−2703項(2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、300℃よりも低い温度で、結晶化された酸化タンタル粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る酸化タンタル粒子の製造方法は、容器内にタンタルアルコキシドを用意する工程と、前記容器内で前記タンタルアルコキシドを加水分解する加水分解工程と、を含む酸化タンタル粒子の製造方法において、前記加水分解工程における、前記容器内の最高温度T(℃)及び前記容器内の最高圧力P(MPa)が、下記の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
205≦T<300 ・・・(1)
P≧0.9 ・・・(2)
【発明の効果】
【0008】
本発明は、高圧下でタンタルアルコキシドを加水分解することにより、低温でも、結晶化された酸化タンタル粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る酸化タンタル粒子の製造方法について説明するための図である((a)実施形態1(b)実施形態2)。
【図2】本発明の実施形態に係る光学素子の製造方法の一例を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例で得られた結果について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について以下に説明する。
【0011】
本実施形態に係る酸化タンタル粒子の製造方法は、容器内にタンタルアルコキシドを用意する工程と、前記容器内で前記タンタルアルコキシドを加水分解する加水分解工程と、を含む酸化タンタル粒子の製造方法において、
前記加水分解工程における、前記容器内の最高温度T(℃)及び前記容器内の最高圧力P(MPa)が、下記の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
205≦T<300 ・・・(1)
P≧0.9 ・・・(2)
ここで、タンタルアルコキシドとして、タンタルペンタノルマルブトキシド(Ta(OC)を用いた場合、下記の式(i)、(ii)で示される加水分解反応が生じる。
Ta(OC+5HO → Ta(OH)+5COH ・・・(i)
2Ta(OH) → Ta+5HO ・・・(ii)
【0012】
なお、以下では上記と同様に、T及びPは、加水分解工程における、反応容器内の最高温度T(℃)及び反応容器内の最高圧力P(MPa)を意味する。本実施形態における加水分解工程において、加水分解反応が起きている時間のうち、容器内の温度が最高温度T(℃)である時間の割合が50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%以上であることが特に好ましい。また、本実施形態における加水分解工程において、加水分解反応が起きている時間のうち、容器内の圧力が最高圧力P(MPa)である時間の割合が50%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、100%であることが特に好ましい。
【0013】
また、前記加水分解工程は、前記反応容器内の温度が前記最高温度T(℃)である状態で、前記タンタルアルコキシドと水とを反応させる工程であることが好ましい。最高温度T(℃)である状態でタンタルアルコキシドと水とを反応させる場合、反応速度が速い。
【0014】
この加水分解反応が上記式(1)及び(2)の条件下で起こることにより、結晶化された酸化タンタル粒子を得ることができる。さらに、300℃よりも低い温度で加水分解反応が起こるため、酸化タンタル粒子同士の凝集が生じにくく、粒径の小さい結晶化された酸化タンタル粒子を得ることができる。粒径の小さい粒子をレンズの母材に添加した場合、得られるレンズは光を散乱させにくい。一方、300℃以上の高温下で加水分解反応が起こると、酸化タンタル粒子同士の衝突頻度が高くなるため、酸化タンタル粒子同士が凝集するおそれがある。また、加水分解反応は、上記の式(1)、下記の式(3)、(4)、及び(5)を満たすことがより好ましい。
P≧−0.89T+189.56(205≦T<210) ・・・(3)
P≧−0.043T+11.69(210≦T<250) ・・・(4)
P≧0.9(250≦T<300) ・・・(5)
さらに、加水分解反応は、上記の式(3)、(4)及び下記の式(6)、(7)を満たすことが特に好ましい。
P≦−0.024T+12.03(205≦T≦250) ・・・(6)
205≦T<250 ・・・(7)
また、加水分解反応は、下記の式(8)を満たすことが好ましい。
P≦10 ・・・(8)
容器内の最高圧力Pを10MPa以下とすることで、加水分解反応をさせるときに用いる容器、加圧機構などの装置のコストが少なくてすむ。
【0015】
なお、タンタルペンタノルマルブトキシド以外のタンタルアルコキシドの加水分解反応についても、上記の式(i)、(ii)と同様に起こり、最終的に結晶化された酸化タンタル粒子が得られると考えられる。
【0016】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る酸化タンタル粒子の製造方法について、図1(a)を用いて説明する。
【0017】
まず、反応容器である第1の槽101の内部にタンタルアルコキシドと有機溶媒の混合物102を用意する。
【0018】
次に、有機溶媒とタンタルアルコキシドの混合物に水を加える。このとき、第1の槽の内部の最高温度T(℃)及び第1の槽の内部の最高圧力P(MPa)が、上記の式(1)及び(2)を満たすように、第1の槽の内部の環境を調整する。このようにすることで、結晶化された酸化タンタル粒子を得ることができる。
【0019】
なお、本実施形態に係る酸化タンタル粒子の製造方法は、上記の工程以外の工程を含んでいてもよい。例えば、得られた結晶化された酸化タンタル粒子の表面に表面修飾剤を加える工程などが挙げられる。表面修飾剤を加えることによって、結晶化された酸化タンタル粒子同士の凝集をさらに抑制することができる。
【0020】
(第1の槽)
本実施形態において、反応容器である第1の槽としては耐熱性、耐圧性の密閉容器であればよく、形状などは特に限定されず、例えば、オートクレーブを用いることができる。耐熱性、耐圧性がともに高いことから、第1の槽として、ステンレス鋼(Stainless used steel、以下、SUSと略すことがある)製のオートクレーブを用いることが好ましい。
【0021】
また、第1の槽としては、バッチ式でもよいし、フロー式でもよい。
【0022】
オートクレーブ内部の環境を調整するために、オートクレーブ内部を昇温、加圧する手段は、特に限定されない。例えば、まず、オートクレーブ外部から電気炉で加熱してオートクレーブ内部の温度を反応温度まで昇温させる。そして、オートクレーブ内部の温度が反応温度に到達した時に、オートクレーブ外部から不活性ガスをオートクレーブ内部に導入することで、オートクレーブ内部の圧力を上げることができる。もし、オートクレーブ内部の温度が反応温度に到達した時にすでにオートクレーブ内部の圧力が必要な圧力に達している場合は、オートクレーブ外部から不活性ガスをオートクレーブ内部に導入しなくてもよい。
【0023】
また、オートクレーブ内部の圧力を必要な圧力に達するまで上げた後に、反応温度まで昇温させてもよい。
【0024】
上記の不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガスなどが挙げられる。
【0025】
なお、上記の反応温度及び必要な圧力は、上記式(1)及び(2)で示される範囲内の値である。
【0026】
(加水分解反応の反応時間について)
加水分解反応の反応時間について、タンタルアルコキシドと水との加水分解反応、重縮合反応、非晶質から相転移反応を経て結晶化された酸化タンタルを生成しやすくするために、反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましく、特に2時間以上7時間以下が好ましい。
【0027】
(タンタルアルコキシド)
本実施形態におけるタンタルアルコキシドとしては、タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタノルマルプロポキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタノルマルブトキシド、タンタルペンタイソブトキシド、タンタルペンタセカンダリーブトキシド、タンタルペンタターシャリーブトキシド、タンタルターシャリーペンチルオキシド、タンタルターシャリーヘキシルオキシド、タンタルターシャリーヘプチルオキシドが挙げられる。
【0028】
(有機溶媒)
本実施形態における有機溶媒としては、炭化水素、エーテル類、アルコール類、イオン性液体などが挙げられる。
【0029】
炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、1−オクタデセンなどが挙げられる。
【0030】
エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0031】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンタノール、ターシャリーペンタノール、ヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、1,2−エタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンが挙げられる。
【0032】
イオン性液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウム塩、1−エチル−2、3−ジメチルイミダゾリウム塩、1−ブチル−2、3−ジメチルイミダゾリウム塩、1−ヘキシル−ジメチルイミダゾリウム塩、1−エチルピリジニウム塩、1−ブチルピリジニウム塩、1−ヘキシルピリジニウム塩、1−メチル−3−アリルイミダゾリウム塩、1−エチル−3−アリルイミダゾリウム塩、1−プロピル−3−アリルイミダゾリウム塩、1−ブチル−3−アリルイミダゾリウム塩、1−ペンチル−3−アリルイミダゾリウム塩、1−オクチル−3−アリルイミダゾリウム塩、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム塩、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム塩、1,3−ジアリルイミダゾリウム塩、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム塩、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム塩、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム塩が挙げられる。
【0033】
(表面修飾剤)
本実施形態における表面修飾剤としては、シラン系カップリング剤、有機カルボン酸、有機窒素化合物、有機硫黄化合物、有機リン化合物などが挙げられる。
【0034】
シラン系カップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0035】
有機カルボン酸としては、ヘキシル酸、オクチル酸、デシル酸、ドデシル酸、テトラデシル酸、ヘキサデシル酸、オクタデシル酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、γ‐リノレン酸、ジホモ‐γ‐リノレン酸、アラキドン酸、α‐リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、シクロヘキサンカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
【0036】
有機窒素化合物としては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、フェニルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジフェニルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリフェニルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。
【0037】
有機硫黄化合物としては、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、トデカンチオール、テトラデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオールなどが挙げられる。
【0038】
有機リン化合物としては、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、トリヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリデシルホスフィン、トリドデシルホスフィン、トリテトラデシルホスフィン、トリヘキサデシルホスフィン、トリオクタデシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド、トリデシルホスフィンオキシド、トリドデシルホスフィンオキシド、トリテトラデシルホスフィンオキシド、トリヘキサデシルホスフィンオキシド、トリオクタデシルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィンオキシド、リン酸トリス(2−エチルヘキシル)、リン酸トリフェニルなどが挙げられる。なお、上記の表面修飾剤は単独で使用しても、複数混合して使用してもよい。
【0039】
(酸化タンタル粒子)
本実施形態に係る酸化タンタル粒子の製造方法によれば、実施例において後述するようにδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタル粒子が得られる。結晶化された酸化タンタル粒子の中でもδ相(デルタ相)酸化タンタル粒子は、α相(アルファ相)、β相(ベータ相)に比べて、球状のものが多く、有機ポリマーやガラスに添加して複合材料としたときに、その複合材料は散乱や屈折が生じにくいため、レンズの添加剤に特に適している。
【0040】
(有機モノマーと酸化タンタル粒子との分散液)
湿式媒体撹拌ミル(ビーズミル)を用いて、極性溶媒や非極性溶媒に、有機モノマーと本実施形態に係る酸化タンタル粒子の製造方法によって得られた、酸化タンタル粒子とが分散した分散液を調製することが可能である。
【0041】
なお、上記有機モノマーとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリイミド(PI)などの熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド(PI)などの熱硬化性樹脂を用いることができる。特に有機モノマーとして、炭化水素系モノマーや脂環式モノマーを用いると、低吸湿特性や低線膨張特性という観点から好ましい。
【0042】
(有機ポリマーと酸化タンタル粒子との複合材料)
上記の有機モノマーと酸化タンタルの分散液に、光の照射や加熱をすることにより、有機モノマーを重合硬化することで透明な有機ポリマー・無機粒子複合材料を得ることが可能である。また、重合硬化するとき、あるいは重合硬化した後に成形ないし加工することで高屈折率、高分散(低アッベ数)かつ、透明度の高い光学レンズを得ることができる。
【0043】
(光学素子の製造方法)
本実施形態に係る光学素子の製造方法の一例について図2を用いて説明する。まず、上記酸化タンタルの製造方法によって得られた酸化タンタル粒子201を用意する(S1)。次に用意した酸化タンタル粒子201を有機モノマー202に分散させる(S2)。次に、成形型203に酸化タンタル粒子が分散した有機モノマーを入れる(S3)。そして、有機モノマーを硬化させる(S4)。このような工程を経ることによって、光学素子204を得ることができる。
【0044】
ここで、図2では、凸レンズのような光学素子を示しているが、適宜、型を選択することにより、凹レンズのような光学素子や、シリンドリカルレンズなどを作製することも可能である。
【0045】
また、上記の、酸化タンタル粒子を有機モノマーの分散させる方法としては、ビールミル、ビーズミル、ジェットミル、混練機を用いる方法が挙げられる。また、有機モノマーを硬化させる手段としては、熱で硬化する方法、紫外光で硬化する方法、紫外と可視光を併用して硬化する方法、マイクロ波又はミリ波照射で硬化する方法、EB照射で硬化する方法などが挙げられる。
【0046】
また、上記の有機モノマーの代わりに、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いることも可能である。熱可塑性樹脂を硬化させるためには、熱可塑性樹脂を冷却すればよい。
また、型を用いることで光学素子を所望の形状に成型してもよいが、酸化タンタル粒子が分散した有機モノマーの有機モノマーを硬化させた後、研磨加工して所望の形状に成型してもよい。
【0047】
本実施形態に係る光学素子の製造方法の他の例は、上記の酸化タンタル粒子を分散させた有機溶媒と、有機モノマーとを混合した後、その有機溶媒を除去した上で有機モノマーを硬化することによって、光学素子を得る方法である。
【0048】
本実施形態に係る光学素子の製造方法によって得られる光学素子の例としては、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズ等のレンズ;眼鏡レンズ等の全光線透過型レンズ;光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)等光ディスクのピックアップレンズ;走査光学系のレンズとしては、レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズ等のレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズ等が挙げられる。その他の例としては、液晶ディスプレイ等の導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルム等の光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板等が挙げられる。
【0049】
上記の光学素子の中でレンズであることが好ましい。レンズを製造する場合、上記で光学素子を得る工程の後にさらに、該光学素子の表面に反射防止膜を設ける工程を有していてもよく、反射防止膜と光学素子との間に中間層を設ける工程を有していてもよい。反射防止膜は特に限定されないが、レンズの屈折率と近い屈折率を有するものであることが好ましい。また、中間層は特に限定されないが、レンズの屈折率と反射防止膜の屈折率との間の値をもつ材料からなることが好ましい。また、レンズにおいて、内面反射を低減するため、光が通過できない部分、通常はレンズ側端部(通称はコバ部)などに、使用波長域において実質不透明な膜を形成してもよい。
【0050】
(ガラス・無機粒子複合材料)
さらに、ガラス(硝材)に本実施形態に係る酸化タンタル粒子の製造方法によって得られた、酸化タンタル粒子を添加し、光学レンズとして用いることが出来る。酸化タンタル粒子を熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Press:HIP)法、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)法、真空焼結法、真空ホットプレスを用いることで透明度の高い光学レンズを得ることができる。
【0051】
(光学レンズ)
上記の光学レンズとしては凹レンズ、凸レンズ、球面レンズ、非球面レンズ、回折光学素子(DOE)、屈折率分布型(GRIN)レンズなどが挙げられる。
【0052】
以上の光学レンズはフィルムカメラ、デジタルカメラ(DSC)、ビデオカメラ(VD)、携帯電話カメラ、監視カメラ、TVカメラ、映画カメラ、プロジェクターに搭載することが可能である。
【0053】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る酸化タンタルの製造方法について図1(b)を用いて説明する。なお、ここでは、実施形態1と異なる点について説明し、共通することについては、説明を省略する。
【0054】
まず、水104の入った第2の槽103と、第2の槽103の中に存在するタンタルアルコキシドと有機溶媒の混合物102の入った第1の槽101を用意する。反応容器である第2の槽103は密閉されている。
【0055】
次に、第1の槽101と第2の槽103の内部が、上記の式(1)、(2)を満たすような温度、圧力となるように、昇温、加圧する。昇温、加圧しているときに、第2の槽103に入っている水104が蒸発して、第2の槽103の中の混合物102に入る。すると、混合物102と水104とが反応(加水分解反応)する。
【0056】
そして、上記の式(1)、(2)の条件を満たすような温度、圧力下に置かれるため、上記の式(i)、(ii)で示される反応が進み、結晶化された酸化タンタル粒子を製造することができる。
【0057】
(第2の槽)
本実施形態における第2の槽としては耐熱性、耐圧性を有し、密閉されていないものであればよく、形状などは特に限定されない。耐熱性、耐圧性がともに高いことから、第2の槽として、SUS製のビーカーを用いることが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
(結晶性の分析手法)
以下に説明する本発明の実施例において、生成した結晶化された酸化タンタル粒子の結晶性の分析は、粉末X線回折(XRD)測定によって行った。X線回折装置としては、株式会社リガク製RINT2100(X線管電圧40kV、X線管電電流40mA)を用いた。ここで、2θ=22.9°の回折ピークはδ相(デルタ相)酸化タンタルの(001)面に由来する(JCPDS No.19−1299)。得られたX線回折ピーク(2θ=22.9°)から下記の式(7)のシェラー式を用いてδ相(デルタ相)酸化タンタル(001)面の結晶子径D(001)を算出した。2θ=22.9°回折ピークの回折強度が大きく、(001)面の結晶子径D(001)が大きいほど結晶性の良いδ相(デルタ相)酸化タンタル粒子が生成しているといえる。2θ=22.9°回折ピークの回折強度が小さく、(001)面の結晶子径D(001)が小さいほど微結晶な酸化タンタル粒子が生成しているといえる。X線回折データのデータ処理と結晶子径D(001)の算出には、粉末X線回折パターン総合解析ソフトウェアJADEを使用した。
(001)=K×λCu−Kα1/β(001)cosθ・・・(7)(ここで、K=0.9、λCu−Kα1=0.154056nm、β(001)は回折ピーク(2θ=22.9°)の半価幅である)
【0060】
(実施例1)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中にタンタルペンタノルマルブトキシド27.325g(50mmol)とトルエン300mLを加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度6.2℃/分でオートクレーブ内部の温度が205℃となるまで昇温した。内部の温度が205℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は0.62MPaであった。次にオートクレーブ内部に窒素ガスを導入し、オートクレーブ内部の圧力を5.90MPaとした。次にシングルプランジャーポンプを用いて水45g(2.5mol)をオートクレーブ内部に加えた。この時、オートクレーブ内部の圧力は6.41MPaであった。オートクレーブ内部の温度を205℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は205℃、最高圧力は7.11MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末11.74gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末は、X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタルであることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は1406cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は12nmであることが分かった。
【0061】
(実施例2)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中にタンタルペンタノルマルブトキシド27.325g(50mmol)とトルエン300mLを加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブ外部から電気炉で加熱し、昇温速度5.0℃/分でオートクレーブ内部温度210℃まで昇温した。内温210℃到達時のオートクレーブ内部圧力は0.76MPaであった。次にシングルプランジャーポンプを用いて水45g(2.5mol)をオートクレーブ内部に加えた。この時、オートクレーブ内部圧力は2.59MPaであった。オートクレーブ内部の温度を210℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は210℃、最高圧力は2.66MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末12.77gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタルであることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は1670cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は18nmであることが分かった。
【0062】
(実施例3)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中にタンタルペンタノルマルブトキシド27.325g(50mmol)とトルエン300mLを加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度5.4℃/分でオートクレーブ内部の温度が220℃となるまで昇温した。内部の温度が220℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は0.83MPaであった。次にシングルプランジャーポンプを用いて水45g(2.5mol)をオートクレーブ内部に加えた。この時、オートクレーブ内部の圧力は3.07MPaであった。オートクレーブの内部の温度を220℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は220℃、最高圧力は3.21MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末11.39gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末は、X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタルであることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は4050cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は37nmであることが分かった。
【0063】
(実施例4)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中にタンタルペンタノルマルブトキシド5.465g(10mmol)とシクロヘキサン100mLを加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度5.6℃/分でオートクレーブ内部の温度が250℃となるまで昇温した。内部の温度が250℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は2.31MPaであった。次にシングルプランジャーポンプを用いて水27g(1.5mol)をオートクレーブ内部に加えた。この時、オートクレーブ内部の圧力は3.21MPaであった。オートクレーブの内部の温度を250℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は250℃、最高圧力は6.03MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末2.22gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末は、X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタルであることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は9722cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は43nmであることが分かった。
【0064】
(実施例5)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中にタンタルペンタノルマルブトキシド5.465g(10mmol)とトルエン100mLを加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度2.2℃/分でオートクレーブ内部温度250℃まで昇温した。内部の温度が250℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は1.54MPaであった。次にシングルプランジャーポンプを用いて水27g(1.5mol)をオートクレーブ内部に加えた。この時のオートクレーブ内部圧力は2.76MPaであった。オートクレーブ内部の温度を250℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は250℃、最高圧力は5.14MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末1.94gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末は、X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタルであることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は10191cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は40nmであることが分かった。
【0065】
(実施例6)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中に300mLのSUS製ビーカーを設置した。SUS製ビーカーの中にタンタルペンタノルマルブトキシド5.465g(10mmol)とメチルシクロヘキサン100mLを入れ、SUS製ビーカーとSUS製オートクレーブの内壁面との隙間に水27g(1.5mol)を加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、アルゴンガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度3.2℃/分でオートクレーブ内部の温度が250℃となるまで昇温した。内部の温度が250℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は0.83MPaであった。次にオートクレーブ内部にアルゴンガスを導入し、オートクレーブ内部圧力を0.90MPaとした。オートクレーブ内部の温度を250℃に保持し、6時間攪拌しながら反応後させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は250℃、最高圧力は0.96MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末1.85gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末は、X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタル(Ta)であることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は8367cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は33nmであることが分かった。
【0066】
(実施例7)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中に300mLのSUS製ビーカーを設置した。SUS製ビーカーの中にタンタルペンタノルマルブトキシド5.465g(10mmol)とシクロヘキサン100mLを入れ、SUS製ビーカーとSUS製オートクレーブの内壁面との隙間に水27g(1.5mol)を加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、アルゴンガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度3.5℃/分でオートクレーブ内部の温度が250℃となるまで昇温した。内部の温度が250℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は0.74MPaであった。次にオートクレーブ内部にアルゴンガスを導入し、オートクレーブ内部圧力を0.90MPaとした。オートクレーブ内部の温度を250℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は250℃、最高圧力は0.94MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末2.26gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末は、X線回折パターンからδ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタルであることが分かった(JCPDS No.19−1299)。また、2θ=22.9°付近に(001)面に由来する回折ピークが観測され、その最大回折強度は8671cps、シェラー式から(001)面の結晶子径は37nmであることが分かった。
【0067】
(比較例1)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中に300mLのSUS製ビーカーを設置した。SUS製ビーカーの中にタンタルペンタノルマルブトキシド5.465g(10mmol)とシクロヘキサン100mLを入れ、SUS製ビーカーとSUS製オートクレーブの内壁面との隙間に水27g(1.5mol)を加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度2.9℃/分でオートクレーブ内部の温度が200℃となるまで昇温した。内部の温度が200℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は2.38MPaであった。次にオートクレーブ内部にアルゴンガスを導入し、オートクレーブ内部の圧力を8.03MPaとした。オートクレーブ内部の温度を200℃に保持し、6時間攪拌しながら反応させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は200℃、最高圧力は8.55MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、80℃で12時間減圧乾燥し、白色粉末2.15gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末のX線回折パターンはハローピーク(非晶質由来のピーク)を示し、δ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタル由来の回折ピークは観測されなかった。すなわち、得られた酸化タンタルは非晶質であることが分かった。
【0068】
(比較例2)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中に300mLのSUS製ビーカーを設置した。SUS製ビーカーの中にタンタルペンタノルマルブトキシド5.465g(10mmol)とトルエン100mLを入れ、SUS製ビーカーとSUS製オートクレーブの内壁面との隙間に水27g(1.5mol)を加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、アルゴンガスで置換した。オートクレーブの外部から電気炉で加熱し、昇温速度3.7℃/分でオートクレーブ内部の温度が250℃となるまで昇温した。内部の温度が250℃に到達した時のオートクレーブ内部の圧力は0.42MPaであった。オートクレーブ内部の温度を250℃に保持し、6時間攪拌しながら反応後させた。この時の、オートクレーブ内の最高温度は250℃、最高圧力は0.44MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末2.32gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。得られた白色粉末のX線回折パターンはハローピーク(非晶質由来のピーク)を示し、δ相(デルタ相)の結晶化された酸化タンタル由来のピークは観測されなかった。得られた酸化タンタルは非晶質であることが分かった。
【0069】
(比較例3)
内容量1LのSUS製オートクレーブの中にタンタルペンタノルマルブトキシド2.031g(5mmol)と1−オクタデセン100mLを加えた。オートクレーブの蓋をして内部を密閉し、窒素ガスで置換した。オートクレーブ外部から電気炉で加熱し、昇温速度5.1℃/分でオートクレーブ内部温度290℃まで昇温した。内温290℃到達時のオートクレーブ内部圧力は0.19MPaであった。次に耐圧シリンジポンプを用いて水3.65g(0.2mol)をオートクレーブ内部に加えた。この時、オートクレーブ内部圧力は0.36MPaであった。オートクレーブ内部温度290℃で6時間攪拌・反応後した。この時の、オートクレーブ内の最高温度は290℃、最高圧力は0.78MPaであった。冷却後、得られた沈殿物を濾別し、減圧乾燥し、白色粉末1.15gを得た。白色粉末を測定試料とし、XRD測定した。X線回折パターンからハローピークのみ観測され、非晶質の酸化タンタルであることが分かった。
【0070】
(まとめ)
上記、実施例1から7及び比較例1から3で得られた結果について、表1及び図3にまとめた。なお、表1および図3において、酸化タンタル粒子が結晶化した場合は○、結晶化しなかった場合は×で示した。このように、上記の式(1)及び(2)の条件、より好ましくは式(1)、(3)、(4)及び(5)で示される条件、さらに好ましくは式(3)、(4)、(6)及び(7)を満足する場合において、結晶化された酸化タンタル粒子を製造できることがわかった。
【0071】
【表1】

【符号の説明】
【0072】
101 第1の槽
102 タンタルアルコキシドと有機溶媒の混合物
103 第2の槽
104 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内にタンタルアルコキシドを用意する工程と、前記容器内で前記タンタルアルコキシドを加水分解する加水分解工程と、を含む酸化タンタル粒子の製造方法において、
前記加水分解工程における、前記容器内の最高温度T(℃)及び前記容器内の最高圧力P(MPa)が、下記の式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする酸化タンタル粒子の製造方法。
205≦T<300 ・・・(1)
P≧0.9 ・・・(2)
【請求項2】
前記加水分解工程における前記最高温度T(℃)及び前記最高圧力P(MPa)が、下記の式(3)、(4)、及び(5)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の酸化タンタル粒子の製造方法。
P≧−0.89T+189.56(205≦T<210) ・・・(3)
P≧−0.043T+11.69(210≦T<250) ・・・(4)
P≧0.9(250≦T<300) ・・・(5)
【請求項3】
前記加水分解工程における前記最高温度T(℃)及び前記最高圧力P(MPa)が、下記の式(3)、(4)、(6)及び(7)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化タンタル粒子の製造方法。
P≧−0.89T+189.56(205≦T<210) ・・・(3)
P≧−0.043T+11.69(210≦T<250) ・・・(4)
P≦−0.024T+12.03(205≦T≦250) ・・・(6)
205≦T≦250 ・・・(7)
【請求項4】
前記加水分解工程は、前記反応容器内の温度が前記最高温度T(℃)である状態で、前記タンタルアルコキシドと水とを反応させる工程であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の酸化タンタルの製造方法。
【請求項5】
前記酸化タンタル粒子は、酸化タンタルの結晶であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の酸化タンタル粒子の製造方法。
【請求項6】
前記タンタルアルコキシドが、タンタルペンタノルマルブトキシドであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の酸化タンタル粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の酸化タンタル粒子を用意する工程と、
用意した前記酸化タンタル粒子を有機モノマーに分散させる工程と、
前記有機モノマーを硬化させる工程と、
を有することを特徴とする光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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