説明

酸化チタンの粒子と膜の製造方法

【構成】本願発明は、酸化チタン粒子および酸化チタン膜の製造方法に関する。酸化チタン微粒子の懸濁液を特定のpH領域で100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させることにより本願発明の酸化チタン粒子を製造する。また、このようにして得られた酸化チタン粒子を水に懸濁液させ、さらに特定のpHに調整した後、該懸濁液を支持体に塗布し、次いで焼成して酸化チタン粒子を該支持体上に固着せしめることにより本発明の酸化チタン膜を製造する。
【効果】本発明で得られる酸化チタン粒子および酸化チタン膜は、顔料、紫外線吸収剤、フィラー、光学材料、電子材料、光電変換材料、装飾用材料、触媒、光触媒、触媒担体、吸着剤、バイオリアクターなどに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は酸化チタン粒子および酸化チタン膜の製造方法に関し、さらに詳細には顔料、紫外線吸収剤、フィラー、光学材料、電子材料、光電変換材料、装飾用材料、触媒、光触媒、触媒担体、吸着剤、バイオリアクターなどに用いられる酸化チタン粒子および酸化チタン膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化チタン粒子は顔料、紫外線吸収剤、フィラーなどに有用なものである。また、酸化チタン粒子を支持体に固着させてなる酸化チタン膜は、酸化チタンの光半導体特性を利用して光触媒、センサ素子あるいは太陽電池などの半導体電極用材料として、また、その誘電性を利用して封止用材料として有用なものである。また、酸化チタン膜は光の反射率が高く、その反射色調が美しいシルバー調であることから、熱線反射ガラス用材料や装飾用材料として、さらに、酸化チタン膜の多孔性を利用して触媒、光触媒、触媒担体、吸着剤、バイオリアクターなどにも用いられるものである。酸化チタン膜を製造するには、たとえば、チタニウムイソプロポオキサイドなどを含む溶液に支持体を浸漬し、引き上げた後、支持体を高温に加熱して成膜する方法、高温の支持体表面に四塩化チタンの蒸気を吹きつけて成膜する方法、高温の支持体表面にチタニウムアセチルアセトナート、チタンアルコキシドなどの有機チタン化合物を含む溶液を吹きつけて成膜する方法などが挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記の従来技術の方法では、チタン化合物を支持体上で反応させて酸化チタン膜を生成させる方法であるため、得られる酸化チタン膜を構成する酸化チタン一次粒子の大きさは数nmであり、焼結時にこの酸化チタン粒子の体積収縮が起こり、生成した膜にクラックが生じやすい。クラックが生じた膜は、支持体から剥がれやすく、耐久性や耐摩耗性が低いうえ、酸化チタン膜の光学的な特性などが低下するという問題がある。しかも、従来技術の方法では、特に光電変換材料、触媒、光触媒、吸着剤などに適した、膜厚が厚く、比表面積の大きい多孔質の酸化チタン膜は得られ難い。さらには、従来技術の方法では、有機溶媒やチタン化合物などの蒸気による作業環境の悪化や着火などの作業の危険性を伴いやすいなどの問題もある。
【0004】本発明の目的は、結晶性に優れ、かつ、種々の特性にも極めて優れた酸化チタン粒子を提供することにある。さらに、もう一つの目的は、クラックが少なく、支持体との接着性が強固な酸化チタン膜を提供することにある。
【0005】本発明は、酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理する方法において、(1)ルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子の懸濁液(2)硫酸チタニルを加水分解して得られるアナタース型酸化チタン含有した酸化チタン微粒子の懸濁液或いは(3)前記酸化チタン微粒子の他にメタチタン酸やオルトチタン酸の含水酸化チタン微粒子等の各種の酸化チタン微粒子を高度に分散させた懸濁液、を用いて水熱処理する酸化チタン粒子の製造方法である。更に、酸化チタン粒子を用いて支持体上に酸化チタン膜を製造する方法である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、支持体との接着性が強く、光学的特性などにも優れた酸化チタン膜を得るべく研究した結果、(1)酸化チタン微粒子の結晶を成長させてなる酸化チタン粒子を用いることにより、成膜時の酸化チタン粒子の体積収縮を少なくすることができ、クラックの発生が少なく、支持体との接着性が改善されること、(2)固着させる酸化チタン粒子は、その平均粒子径が10〜100nm、好ましくは10〜30nm、特に好ましくは15〜25nmのものが支持体との接着性にすぐれているため望ましいこと、(3)酸化チタン微粒子の結晶を成長させる方法としては、(a)酸化チタン微粒子を200〜600℃の温度で加熱する方法、(b)酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理する方法、(c)酸化チタン微粒子を高度に分散させたものを100℃以上の温度で水熱処理する方法があり、これらは酸化チタン微粒子の結晶を均一に成長させることができるため好ましいこと、特に、前記(b)の方法において、ルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子や硫酸チタニルを加水分解し、次いで、得られた酸化チタン微粒子を水熱処理する方法が好ましいこと、さらに、(4)酸化チタン微粒子の結晶を成長させて得られた酸化チタン粒子を支持体に固着させて酸化チタン膜を形成する際、該酸化チタン粒子を高度に分散させた懸濁液とすることにより、酸化チタン膜の充填度を高めることができて支持体との接着性がより一層改善されることなどを見出し、本発明を完成した。
【0007】本発明において、「酸化チタン」とは、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸等の各種の酸化チタンあるいは含水酸化チタンを意味する。また、「酸化チタン微粒子」とは、その平均粒子径が3〜20nm、好ましくは5〜15nmの微細なものを意味し、この微粒子の結晶を成長させて、その平均粒子径が10〜100nm、好ましくは10〜30nm、特に好ましくは15〜25nmとなったものを「酸化チタン粒子」と称している。このような酸化チタン微粒子は、たとえば、従来法に従って硫酸チタニル、塩化チタン、酢酸チタン、チタンアルコキシドなどのチタン化合物を、必要に応じてシードの存在下、加水分解したり、中和したりして得られる。このようにして得た酸化チタン微粒子はその後、硫酸根、塩素根やアルカリなどの不純物を除去するために分別し、洗浄するのが好ましい。
【0008】本発明において、「ルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子」とは、X線回折像においてルチル型結晶と同定しうる酸化チタンの微細な粒子を0.5〜50重量%、好ましくは1〜30重量%含有し、残部のほとんどが非晶質である酸化チタンをいう。これに相当するものには、二酸化チタン顔料を製造する際に使われるルチル転位促進シードが挙げられる。このルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子は、たとえば、■硫酸チタニル、酢酸チタン、四塩化チタンなどのチタン化合物を必要に応じて核晶の存在下、アルカリで中和したり、加水分解したりして沈殿物を得、次いで該沈殿物を、必要に応じてアルカリを添加し加熱した後、塩酸、硝酸などの無機酸またはクエン酸などの有機酸を添加し50℃以上沸点以下の温度で熟成したり、■塩化チタンを、pHが4〜7の範囲でアルカリで中和したり、■塩化チタンを、塩酸濃度が11%以上の条件下で加熱して加水分解したり、■塩化チタンを気相で熱分解酸化したりして得られる。
【0009】また、「硫酸チタニルを加水分解して得られる酸化チタン微粒子」とは、硫酸チタニルを60〜110℃、特に80〜110℃の温度に加熱して加水分解して得られる、アナタース型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子を言う。このものは、僅かに非晶質酸化チタンを含有するものの、ほとんどがX線回折像においてアナタース型結晶と同定しうる酸化チタンを含有するものである。
【0010】加水分解時の加熱温度が60℃より低いと硫酸チタニルの加水分解が充分行われなかったり、加水分解に長い時間かかったりするため好ましくない。溶液中の硫酸チタニルの濃度や加熱時間は適宜設定できるが、TiO2 に換算して50〜250g/lの硫酸チタニル濃度が適当であり、また、1〜10時間程度の加熱時間が適当である。加熱時の圧力は通常大気圧で行うのが好ましいが、加圧下で行ってもよい。また、前記硫酸チタニルの溶液に必要に応じて、シードを存在させることもできる。このようにして得られた酸化チタン微粒子を分別し、洗浄して、硫酸根などの不純物を除去するのが好ましい。
【0011】さらに、本発明において、「酸化チタン微粒子を高度に分散させた懸濁液」とは、酸化チタン微粒子の懸濁液に酸を存在させてpHを4以下、好ましくは2以下、または酸化チタン微粒子の懸濁液にアルカリを存在させてpHを9以上、好ましくは10以上として酸化チタン微粒子を分散させたり、あるいは、酸化チタン微粒子の粉末を粉砕機で粉砕した後懸濁液としたり、懸濁液中の酸化チタン微粒子を粉砕機や分級機で粉砕しながら懸濁させたり、分散剤を懸濁液中に存在させたりして得られるものである。
【0012】前記の酸またはアルカリを存在させる場合、懸濁液のpHが4より高く9より低いと酸化チタン微粒子が分散し難く、コロイド溶液とすることができないため好ましくない。懸濁液のpHを4以下にするには、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、炭酸などの無機酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸などの有機酸の少なくとも一種を適宜選択して加える。本発明において使用する酸としては、塩酸或いは硝酸が望ましい。懸濁液のpHを9以上にするには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、アミン類などのアルカリの少なくとも一種を適宜選択して存在させる。粉砕機を用いる場合の粉砕機としては、サンドミル、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ペイントシェイカーなどの湿式粉砕機が好ましい。分散剤を用いる場合の分散剤としては、たとえば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどの無機分散剤、ポリカルボン酸ナトリウム塩、ポリエチレングリコール、アセチルアセトンなどの有機分散剤が挙げられる。これらの分散剤は一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。本発明においては、有機分散剤を用いるのが特に好ましく、特に、有機分散剤の中でもオロタン850(商品名 ローム アンド ハース社製)などのポリカルボン酸ナトリウム塩やポリエチレングリコールが好ましい。これらの分散剤は、酸化チタン微粒子の懸濁液を支持体に塗布するまでに適宜加えて懸濁液中に存在させることができ、この添加量は、酸化チタン微粒子の重量に対して分散剤の有効成分が0.1〜40重量%程度が適当である。本発明においては、酸化チタン微粒子の懸濁液に酸を存在させてpHを4以下、好ましくは2以下、または酸化チタン微粒子の懸濁液にアルカリを存在させてpHを9以上、好ましくは10以上として酸化チタン微粒子を分散させる方法が好ましい。
【0013】本発明において、水熱処理は酸化チタン微粒子の懸濁液或いは高度に分散させた懸濁液を100℃以上、好ましくは100〜250℃の温度に加熱することにより行う。この水熱処理により、酸化チタン微粒子の結晶を成長させ、その平均粒子径が10〜100nm、好ましくは10〜30nm、特に好ましくは15〜25nmとなるようにする。またこの水熱処理により、ルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子はルチル型酸化チタンとなり、このものは、X線回折の結果、アナタース型結晶は認められず、実質的にルチル型の結晶構造を示す。アナタース型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子は、水熱処理により、アナタース型酸化チタンとなり、このものは、X線回折の結果、実質的にアナタース型の結晶構造を示す。こうして得られるルチル型酸化チタン或いはアナタース型酸化チタンは、水熱処理の温度や処理時間を適宜設定することにより所望の粒子径とすることができる。なお、酸化チタン微粒子を高度に分散させた懸濁液を水熱処理することにより、水熱処理の効果をより一層高めることができる。
【0014】前記の水熱処理は、通常、飽和蒸気圧程度の圧力で行うのが好ましいが、飽和蒸気圧以上に加圧したり、大気圧程度の圧力で行うこともでき、通常、工業的に用いられる耐熱耐圧装置で行える。水熱処理の時間は適宜設定できるが、1〜48時間程度が適当である。
【0015】水熱処理して得られた酸化チタン粒子はその後、必要に応じて、硫酸根、塩素根、アルカリなどの不純物を除去するために分別し、洗浄し、乾燥して、乾燥粉末とすることができる。乾燥は任意の温度で行うことができるが、100〜500℃の温度が適当である。また、使用場面に応じて、酸化チタン粒子を支持体に担持あるいは被覆したり、前記の乾燥粉末を粉砕したり、成形したりして用いることもできる。さらに、使用する触媒反応に応じて、酸化チタンの粒子表面に金、白金、ロジウム、パラジウムなどの遷移金属を適宜担持させることもできる。
【0016】また、本発明は、酸化チタン微粒子の結晶を成長させて得られた酸化チタン粒子を支持体に塗布し、焼成して酸化チタン膜を製造する方法である。本発明において「酸化チタン膜」とは、通常の酸化チタン顔料と樹脂媒体とから成る一般的な塗膜とは異なり、樹脂を実質的に含まない膜をいう。さらに、支持体1cm2あたり、膜厚1μmあたり、10〜200cm2 程度の大きい比表面積を有するものである。本発明の酸化チタン膜は、後述の酸化チタン懸濁液の濃度や酸化チタン粒子の粒子径などの条件を適宜設定することにより、酸化チタン膜の膜厚、透明度、比表面積で表される多孔度などを任意に変えることができる。また、使用する酸化チタン粒子の結晶系を適宜選択したり、焼成条件などを適宜設定することにより、アナタース型、ルチル型のいずれかの酸化チタン膜とすることができる。さらには、アナタース型酸化チタンとルチル型酸化チタンが任意の割合で混合した膜とすることもできる。膜厚としてはたとえば、0.5〜20μm程度とすることができる。使用する酸化チタン粒子は、その平均粒子径が10〜100nm、好ましくは10〜30nm、特に好ましくは15〜25nmのものは、支持体との接着性に優れている。
【0017】本発明において、酸化チタン微粒子の結晶を成長させる方法としては、(a)200〜600℃、好ましくは300〜500℃、特に好ましくは300〜450℃の温度で加熱する方法、および前記した(b)100℃以上、好ましくは100〜250℃の温度で水熱処理する方法などがある。加熱の温度が200℃より低いと酸化チタン微粒子の結晶の成長が充分でなく、支持体に固着させる際に、酸化チタンの体積収縮が大きくなりクラックが生じやすく、支持体との接着性が悪くなるため好ましくない。また、600℃より高いと酸化チタンの結晶が大きく成長し過ぎて支持体との接着性が悪くなったり、酸化チタン膜の比表面積が小さくなったりするため好ましくない。加熱の処理時間は0.5〜2時間が適当である。
【0018】前記の加熱処理や水熱処理により、酸化チタン微粒子の結晶が成長し、結晶性が改善され、均一、かつ、適切な大きさの酸化チタン粒子とすることができるため、所望の酸化チタン膜を得ることができる。
【0019】本発明においては、先ず、酸化チタン微粒子の結晶を成長させて得られた酸化チタン粒子を、たとえば、水、アルコール、トルエンなどの溶媒に懸濁させる。前記溶媒は、作業環境の観点から特に水が好ましい。懸濁液中の酸化チタン濃度は適宜設定できるが、TiO2 に換算して10〜1200g/lの範囲が好ましい。酸化チタン濃度が10g/lより低いと得られる酸化チタン膜の厚みを厚くするのが困難になるため好ましくない。また、1200g/lより高いと懸濁液の粘度が高くなり、支持体に塗布しにくいため好ましくない。本発明においては、懸濁液中の酸化チタン粒子を前記の分散処理を行って、高濃度にするのが好ましい。また、本発明においては、前記の水熱処理をして得られた酸化チタン懸濁液から酸化チタン粒子を分別することなく、そのまま或いは酸化チタン濃度を調整して次記する各種の塗布方法で支持体上に塗布して酸化チタン膜とすることができる。
【0020】次に、得られた酸化チタン懸濁液を、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法などの通常の方法で支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥し、焼成して、溶媒を除去し、かつ、酸化チタン粒子を支持体に固着せしめる。本発明の酸化チタン膜を形成せしめる支持体は、使用目的、用途などに応じて材質、形状、大きさなどを適宜選択することができる。材質としては、たとえば、ガラス、金属、セラミックスなどが挙げられ、形状、大きさとしては、たとえば、1枚の厚板、小さい断片、ビーズのような球状体などが挙げられる。前記の焼成は100℃以上、好ましくは200〜800℃、特に好ましくは300〜800℃の温度で焼成する。焼成温度が100℃の温度より低いと、支持体との接着性が悪くなるため望ましくない。焼成温度の上限は、使用する用途により一概には言えないが、800℃の温度より高いと酸化チタン粒子の結晶成長が大きくなったり、酸化チタン膜の比表面積が小さくなるため好ましくない場合がある。結晶成長のための加熱を行った場合には、その加熱の温度以上の温度で焼成する。固着のための焼成温度が結晶成長のための加熱の温度より低いと、支持体との接着性が悪くなるため望ましくない。
【0021】本発明においては、酸化チタン粒子として、前記の酸化チタン微粒子の高度分散懸濁液を水熱処理して得られた酸化チタン粒子を用いるのが好ましい。また、本発明において、ルチル型酸化チタンから成る酸化チタン膜を製造するには、前記のルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して得られた実質的にルチル型酸化チタンからなる酸化チタン粒子を用いるのが好ましい。さらに、アナタース型酸化チタンの酸化チタン膜を製造するには、硫酸チタニルを加水分解し、次いで、得られた酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して得られた実質的にアナタース型酸化チタン粒子を用いるのが好ましい。このようにして、本発明の酸化チタン膜が得られる。
【0022】
【実施例】
実施例1222g/lの炭酸ナトリウムの水溶液2リットルに、攪拌下、200g/lの四塩化チタンの水溶液1リットルを滴下して四塩化チタンを室温で中和した。引き続き、この中和沈殿物のTiO2 の重量に対して5重量%のクエン酸を前記の水溶液に添加した後、70℃に加温し、20分間熟成した。(なお、得られた酸化チタン微粒子を一部採取し、濾過し、洗浄し、乾燥したものはX線回折の結果、ルチル型の結晶構造の酸化チタン微粒子を15重量%含有しており、残部は非晶質であった。)このようにして得られた酸化チタン微粒子を濾過し、洗浄した後、水に分散させ、TiO2 に換算して250g/lの懸濁液とした。次いで、この懸濁液に硝酸水溶液を添加してpHを1.3にした後、オートクレーブに入れ、150℃の温度で13時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。この後、得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥して、本発明の酸化チタン粒子(試料A)を得た。この試料Aは、X線回折の結果、実質的にルチル型の結晶構造を有しており、粒子径が18nmであった。また、電子顕微鏡観察の結果、ルチル型結晶の自形である立方晶形状を有していた。
【0023】比較例180g/lの四塩化チタンの溶液1リットルに攪拌下、アンモニア水を添加し、溶液のpHを7.0にしてゲルを得た。このゲルを濾過し、洗浄した後、水に分散させ、TiO2 に換算して250g/lの懸濁液とした。次いで、この懸濁液をオートクレーブに入れ、150℃の温度で13時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。この後、得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥して、酸化チタン(試料B)を得た。この試料Bは、X線回折の結果、アナタース型の結晶構造を有しており、粒子径が10.5nmであった。
【0024】比較例2市販の酸化チタン触媒P−25(日本アエロジル社製、粒子径22nm、ルチル型とアナタース型の混合形)を試料Cとした。
【0025】実施例1、比較例1、2で得られた試料(A〜C)の触媒活性を以下のようにして調べた。試料をそれぞれ水に分散させ、TiO2 に換算して4g/lの懸濁液とした。これらの懸濁液25mlにテトラクロロエチレンを10μl添加した後、150Wのキセノンランプを30分間照射して、テトラクロロエチレンの光触媒分解反応を行った。反応前のテトラクロロエチレンの濃度と反応後のテトラクロロエチレンの濃度から各々の試料による分解率を算出した。その結果を表1に示す。この表から明らかなように、本発明のルチル型酸化チタンは触媒活性に優れていることがわかる。
【0026】
【表1】


【0027】また、試料A〜Cの結晶性を光音響分光法による分光学的手法を用いて調べた。すなわち、密閉容器に試料0.5gを入れ、そこへ一定波長の光を照射すると試料がその波長に応じて光を吸収するが、この吸収した光のエネルギーを無放射過程により熱として放出する場合、結晶格子の振動エネルギーの増大に伴う試料の熱膨張により、試料の周囲の大気が振動し音波を発生する。この時に発生する音波を高感度マイクロホンにより検出する。試料に照射する光の波長を300〜1600nmに変化させて高感度マイクロホンの出力を測定して、各試料の光音響スペクトルを得た。
【0028】ルチル型酸化チタンは3.0eVのエネルギーギャップを有していると一般的に言われているが、このエネルギーギャップに相当するエネルギーを光エネルギーに換算すると413nmの波長の光となる。従って、理論上は413nmより少し短い波長の光を照射すると酸化チタンに全て吸収され、一方、413nmより少し長い波長の光を照射すると酸化チタンには全く吸収されないことになる。しかしながら、結晶性の劣った酸化チタンでは、3.0eVよりも小さなエネルギーを吸収し得る欠陥準位を有しており、このため、413nmより少し長い波長の光でも吸収してしまう。このことから、この固有光吸収端の状態を前記の光音響スペクトルを用いて比較することにより、各試料の結晶性の優劣を判断することができる。本発明のルチル型酸化チタン粒子の光音響スペクトルは固有光吸収端の立ち上がりが鋭いことから、本発明のルチル型酸化チタン粒子は結晶性が優れていることがわかった。
【0029】実施例280g/lの硫酸チタニルの溶液1リットルを85℃の温度に加熱し3時間保持して、硫酸チタニルを加水分解した。(なお、得られた酸化チタン微粒子を一部採取し、濾過し、洗浄し、乾燥したものはX線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は5nmであった。)このようにして得られた酸化チタン微粒子を濾過し、洗浄した後、水に分散させ、TiO2 に換算して250g/lの懸濁液とした。次いで、この懸濁液に塩酸水溶液を添加し、pHを1.0にした後、オートクレーブに入れ、150℃の温度で13時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。この後、得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥して、本発明の酸化チタン粒子(試料D)を得た。この試料Dは、X線回折の結果、アナタース型の結晶構造を有しており、粒子径が13nmであった。
【0030】比較例3実施例2において、水熱処理を行わないこと以外は実施例2と同様に処理して酸化チタン微粒子(試料E)を得た。この試料Eは、X線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は5nmであった。
【0031】比較例4比較例3で得た酸化チタン微粒子を450℃の温度で30分間焼成して試料Fを得た。この試料Fは、X線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は12nmであった。
【0032】実施例2、比較例1〜4で得られた試料(B〜F)の触媒活性を以下のようにして調べた。試料をそれぞれ水に分散させ、TiO2 に換算して4g/lの懸濁液とした。これらの懸濁液25mlに2−プロパノール25μlを添加した後、150Wのキセノンランプを2時間照射して、2−プロパノールの光触媒分解反応を行った。反応前の2−プロパノールの濃度と反応後の2−プロパノールの濃度から各々の試料による分解率を算出した。その結果を表2に示す。この表から明らかなように、本発明のアナタース型酸化チタンは触媒活性に優れていることがわかる。
【0033】
【表2】


【0034】次に、テトラクロロエチレンの分解反応の触媒活性を前記と同様にして調べた。その結果を表3に示す。この表から明らかなように、本発明のアナタース型酸化チタンは触媒活性に優れていることがわかる。
【0035】
【表3】


【0036】また、試料B〜Fの結晶性を前記と同様にして調べた。本発明のアナタース型酸化チタンの光音響スペクトルは固有光吸収端の立ち上がりが鋭いことから、本発明のアナタース型酸化チタンは結晶性が優れていることがわかった。
【0037】本発明のルチル型酸化チタン粒子、アナタース型酸化チタン粒子は、前述のように、従来のものに比べ触媒活性が高い。この理由については明らかでないが、本発明のルチル型酸化チタン粒子、アナタース型酸化チタン粒子は、結晶性に優れており、酸化チタンの粒子内部に存在する格子欠陥が少ないためと考えられる。従来のルチル型酸化チタン粒子やアナタース型酸化チタン粒子は格子欠陥が多いため、紫外線などの光照射によって発生した電子や正孔が該格子欠陥に多く留まってしまい、触媒反応に関与できる電子や正孔の量が少ない。一方、本発明のルチル型酸化チタン粒子、アナタース型酸化チタン粒子は格子欠陥が少ないため、発生した電子や正孔が格子欠陥に留まりにくく、さらに、発生した電子と正孔との電荷分離が容易になって、触媒反応に関与できる電子や正孔の量が増えたためと推察される。さらに、本発明のアナタース型酸化チタン粒子は硫酸チタニルを加水分解して得られた酸化チタン微粒子を水熱処理するため、得られたアナタース型酸化チタン粒子の表面には酸点が多く存在しており、この酸点が反応物の吸着活性点となって、より一層触媒活性が高くなるものと推察される。
【0038】実施例380g/lの硫酸チタニル溶液1リットルを85℃に加熱して加水分解した後、生成物を濾過し、洗浄して湿ケーキを得た。引き続き、この湿ケーキの水分をアセトンで置換した後、60℃の温度で真空乾燥して、酸化チタン微粒子粉末を得た。(なお、得られた酸化チタン微粒子はX線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は5nmであった。)次いで、前記の酸化チタン微粒子粉末を300℃の温度で1時間加熱して、粒子径が11nmのアナタース型結晶の酸化チタン粒子を得た。その後、この酸化チタン粒子を擂潰器で粉砕した後、水に投入した。さらに、この水にポリエチレングリコール(平均分子量15000〜25000)をTiO2 に対して20重量%加えた後、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)を用いて充分に振とうして、500g/lの酸化チタン懸濁液を得た。次に、この懸濁液をドクターブレード(隙間60μm)を用いてガラス板に塗布し、自然乾燥した後、450℃の温度で2時間焼成し、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、白濁)を得た。この酸化チタン膜は、ガラス板(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。また、この酸化チタン膜を触針式膜厚計を用いて測定した結果、膜厚は10μmであり、比表面積を窒素ガス吸着法により測定した結果、支持体1cm2 、膜厚1μmあたりの比表面積が80〜100cm2 であった。
【0039】実施例4実施例3において加熱温度を400℃にしたこと以外は、実施例3と同様に処理して、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、白濁)を得た。この酸化チタン膜は、ガラス板(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。この酸化チタン膜は、膜厚が10μmであり、支持体1cm2 、膜厚1μmあたりの比表面積が80〜100cm2 であった。
【0040】実施例5酸性チタニアゾル(石原産業株式会社製、CS−N、アナタース型結晶、粒子径5nmの酸化チタン微粒子)を110℃の温度で5時間乾燥させ、得られた酸化チタン微粒子粉末を大気中で300℃の温度で1時間加熱して酸化チタン粒子粉末(アナタース型結晶、粒子径11nm)を得た。次に、以下に示す成分をペイントシェイカーで5時間振とうして、十分混合分散させたものをドクターブレードで100cm2 のガラス板に塗布し、乾燥後450℃の温度で30分間焼成し、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、半透明)を得た。この酸化チタン膜は、ガラス板(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。この酸化チタン膜は、膜厚が2.0μmであった。
酸化チタン粒子粉末 8.0g ポリエチレングリコール(分子量20000) 3.2g 純水 14.0ml 濃硝酸 0.5ml得られた酸化チタン膜の触媒活性を以下のようにして調べた。8リットルのガラス容器に前記の酸化チタン膜を入れた後、悪臭成分であるアセトアルデヒドを50ppmの濃度となるように添加してガラス容器を密封した。次に、前記の酸化チタン膜の表面において紫外光強度が1mW/cm2 となるようにブラックライトを2時間照射し、その後のアセトアルデヒドの濃度を測定した結果、15ppmであった。この結果から、本発明の酸化チタン膜は光触媒活性に優れていることがわかった。
【0041】比較例5実施例3と同様な方法で得た湿ケーキを加熱することなく、このものに水を加え、さらにポリエチレングリコール(平均分子量15000〜25000)を酸化チタンに対して20重量%加えた後、攪拌して300g/lの酸化チタン懸濁液を得た。次に、この懸濁液をドクターブレードを用いてガラス板に塗布し、自然乾燥した後、450℃の温度で2時間焼成したが、酸化チタン粒子は小片の状態でガラス板からはがれ、酸化チタン膜を支持体上に形成することはできなかった。
【0042】実施例680g/lの硫酸チタニル溶液1リットルを85℃に加熱し、この温度で3時間保持し、硫酸チタニルを加水分解して酸化チタン微粒子を得た。(なお、得られた酸化チタン微粒子を一部採取し、濾過し、洗浄し、乾燥したものはX線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は6nmであった。)このようにして得られた酸化チタン微粒子を濾過し、洗浄した後、水に分散させて、TiO2 基準で200g/lの懸濁液とした。次いで、この懸濁液に塩酸水溶液を添加し、該懸濁液のpHを1.0にした後、オートクレーブに入れ、200℃の温度で13時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。(なお、得られた酸化チタン懸濁液を一部採取し、濾過し、洗浄し、乾燥したものはX線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は20nmであった。)次に、ドクターブレードを用いて前記の水熱処理をして得た酸化チタン懸濁液をガラス板に塗布し、自然乾燥した後、450℃の温度で3時間焼成し、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、透明)を得た。この酸化チタン膜は、ガラス板(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。また、この酸化チタン膜は、膜厚が6μmであり、支持体1cm2 、膜厚1μmあたりの比表面積が80〜100cm2 であった。
【0043】実施例7実施例6に記載した方法に準じて硫酸チタニルを加水分解して酸化チタン微粒子を得た。(なお、得られた酸化チタン微粒子を一部採取し、濾過し、洗浄し、乾燥したものはX線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は5nmであった。)このようにして得られた酸化チタン微粒子を濾過し、洗浄した後、水に分散させて、TiO2 基準で250g/lの懸濁液とした。次いで、この懸濁液に硝酸水溶液を添加し、該懸濁液のpHを1.2にした後、オートクレーブに入れ、150℃の温度で13時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。(なお、得られた酸化チタン懸濁液を一部採取し、濾過し、洗浄し、乾燥したものはX線回折の結果、アナタース型結晶を有しており、粒子径は13nmであった。)次に、前記の水熱処理をして得た酸化チタン懸濁液中のTiO2 基準に対して、ポリエチレングリコール(平均分子量20000)40重量%を酸化チタン懸濁液に添加し、60℃の温度に加熱した。次いで、この懸濁液を実施例6と同様にして、ガラス板に塗布し、自然乾燥した後、焼成し、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、透明)を得た。この酸化チタン膜は、ガラス板(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。また、この酸化チタン膜は、膜厚が7.5μmであり、支持体1cm2 、膜厚1μmあたりの比表面積が100〜120cm2 であった。
【0044】実施例8実施例7に記載した方法に準じて得た水熱処理後の酸化チタン懸濁液に、水を加えてTiO2 基準で12g/lの濃度とした。この懸濁液200mlに市販の中空ガラスビーズ(スリーエム社製、B28/750)10gを入れた後、エバポレーターで水分を除去した。得られた生成物を100℃の温度で2時間乾燥し、次いで、300℃の温度で1時間焼成し、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、透明)を得た。この酸化チタン膜は、中空ガラスビーズ(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。
【0045】実施例9実施例8において、中空ガラスビーズに代えて中実ガラスビーズ(東芝バロティーニ社製、GB503M)を用いたこと以外は、実施例8と同様に処理して、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、透明)を得た。この酸化チタン膜は、中実ガラスビーズ(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。
【0046】実施例10実施例8において、中空ガラスビーズに代えてセラミックス製ハニカム構造体(日本ガイシ社製、商品名ハニセラム)を用いたこと以外は、実施例8と同様に処理して、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、透明)を得た。この酸化チタン膜は、ハニカム構造体(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。
【0047】実施例11酸性チタニアゾル(石原産業株式会社製、CS−N、アナタース型結晶、粒子径6nmの酸化チタン微粒子)に水酸化ナトリウムを加えpH7に調節した後、濾過、洗浄を行った。得られた湿ケーキに水を加え、TiO2 に換算して100g/lとなるように酸化チタン微粒子懸濁液を調製し、次いで、該懸濁液に水酸化ナトリウムを加えpH10に調節した後、オートクレーブに入れ、150℃の温度で3時間飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。次に、前記の水熱処理後の酸化チタン懸濁液(アナタース型結晶、粒子径18nm)に硝酸を加えpH7に中和し、濾過、水洗を行った。得られた酸化チタンケーキに、さらに水を加え、TiO2 に換算して500g/lとなるように酸化チタン懸濁液を調製し、次いで、硝酸を加えてpH1に調節した。この懸濁液をスピンコーターにより100cm2 のガラス板に塗布し、乾燥後500℃の温度で3時間焼成して、本発明の酸化チタン膜(アナタース型結晶、半透明)を得た。この酸化チタン膜は、ガラス板(支持体)上に強固に固着しており、これを光学顕微鏡で観察したところ、クラックはほとんど認められなかった。この本発明の酸化チタン膜は、膜厚が1.0μmであった。得られた酸化チタン膜の触媒活性を前記の実施例5記載の方法で調べた結果、光照射後のアセトアルデヒド濃度は13ppmであった。この結果から、本発明の酸化チタン膜は光触媒活性に優れていることがわかった。
【0048】
【発明の効果】本発明方法は、結晶性に優れ、かつ、光学的特性、光電変換特性、触媒特性などにも優れた酸化チタン粒子を簡便、かつ、容易に製造することができて、工業上甚だ有用な方法である。また、本発明方法で得られた酸化チタン粒子は、支持体に固着させることにより、大きな比表面積を有し、クラックの発生が少なく、支持体との接着性が良好な酸化チタン膜とするとができる。本発明の酸化チタン膜は光学的特性、光電変換特性、触媒特性などにも優れており、光学材料、電子材料、光電変換材料、装飾用材料、触媒、光触媒、触媒担体、吸着剤あるいはバイオリアクターなどに有用である。特に、本発明の酸化チタン膜は光触媒特性に優れており、その光触媒活性を利用して有害物質を迅速、かつ、効率よく除去することができるので、工業用途ばかりでなく一般家庭用の脱臭体などとして極めて有用なものである。さらに、本発明の酸化チタン膜は、長期間使用でき、安全性が高く、適応できる有害物質の範囲が広く、さらに、廃棄しても環境を汚さないため、産業的に極めて有用なものである。さらに、本発明の製造方法は、ガラス、金属、セラミックス、プラスチックなどの支持体に酸化チタン膜を簡単に固着させることができ、しかも、安定した品質の酸化チタン膜を製造できるなど有用な方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で得られた酸化チタン膜の表面の粒子構造を表す光学顕微鏡写真(倍率1000倍)である。
【図2】実施例7で得られた酸化チタン膜の断面の粒子構造を表す電子顕微鏡写真(倍率8000倍)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】酸化チタン微粒子を結晶成長させて酸化チタン粒子を得、得られた酸化チタン粒子を支持体に塗布し、塗布した支持体を焼成して支持体上に粒子を固着せしめることを特徴とする、酸化チタン膜の製造方法。
【請求項2】酸化チタン粒子の平均粒径が10〜100nmである、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項3】酸化チタンの微粒子を200〜600℃の温度で加熱して、該微粒子を結晶成長させて酸化チタン粒子を得、次いで得られた酸化チタン粒子を支持体に塗布し、塗布した支持体を成長時の加熱温度以上の温度で焼成して該支持体上に粒子を固着せしめる、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項4】酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させる、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項5】酸化チタン微粒子の懸濁液のpHを4以下または9以上に調整し、次いで、該懸濁液を100℃以上の温度で水熱処理して、該酸化チタン微粒子を結晶成長させる、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項6】ルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させる、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項7】硫酸チタニルを加水分解して酸化チタン微粒子を得、次いで、得られた酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させる、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項8】酸化チタン粒子の懸濁液のpHを4以下または9以上に調整した後、該懸濁液を支持体に塗布し、次いで焼成して酸化チタン粒子を該支持体上に固着せしめる、請求項1に記載の酸化チタン膜の製造方法。
【請求項9】酸化チタン微粒子の懸濁液のpHを4以下または9以上に調整し、次いで、該懸濁液を100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させることを特徴とする、酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項10】ルチル型酸化チタンを含有した酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させることを特徴とする、実質的にルチル型酸化チタンからなる酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項11】硫酸チタニルを加水分解して酸化チタン微粒子を得、次いで、得られた酸化チタン微粒子を100℃以上の温度で水熱処理して、該微粒子を結晶成長させることを特徴とする、実質的にアナタース型酸化チタンからなる酸化チタン粒子の製造方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate