説明

酸化チタン粒子、及び酸化チタン粒子の作製方法

【課題】 可視光から近赤外光の光散乱能に優れた、新規な酸化チタン粒子を提供する。
【解決手段】 チタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物及び有機アルカリ類を所定の溶媒中で混合し、反応溶液を作製する。次いで、前記反応溶液を密閉容器中で加熱し、放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈する酸化チタン粒子を作製する。なお、前記星型酸化チタン粒子は、白色化粧料の含有物として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子、及び酸化チタン粒子の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは高い屈折率と白色隠蔽性を有し、さらに紫外線吸収能力を有するので、塗料、化粧品及び自動車や窓ガラス用可視光透過紫外光カットフィルム、さらには光触媒性を利用した大気中浄化装置、光伝導性を利用した色素増感太陽電池の半導体電極、液晶のバックライト等に使用される白色反射板など多方面に使用されている。
【0003】
これらの用途の内、隠蔽性が重要な塗料や適度の光散乱性を必要とする色素増感太陽電池の半導体電極における散乱粒子用途では、酸化チタンの粒径は可視光(波長380〜700nm)および近赤外(700〜1100nm)の約半分程度が好適とされる。これはMieの光散乱理論で説明されるように波長の約半分の粒径が散乱能が強いためである。したがって、可視光および近赤外領域の光を単分散状態の酸化チタン粒子で散乱させるためには150nmから600nm程度の粒径が必要である。
【0004】
しかしながら、前述した粒径範囲の酸化チタン粒子を作製する技術は今だ十分確立されておらず、また、粒径に対する従属性を排除した高散乱性の酸化チタン粒子の確立が望まれていた。
【特許文献1】特開昭63−229139
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、可視光から近赤外光の光散乱能に優れた、新規な酸化チタン粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、
放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈することを特徴とする、酸化チタン粒子に関する。
【0007】
また、本発明は、
チタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物及び有機アルカリ類を所定の溶媒中で混合し、反応溶液を作製する工程と、
前記反応溶液を密閉容器中で加熱する工程とを具え、
放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈する酸化チタン粒子を作製することを特徴とする、酸化チタン粒子の作製方法に関する。
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した。その結果、上述した原料からなる反応溶液を準備し、これら原料を加熱反応させることによって、放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、その結果、全体として星形を呈する酸化チタン粒子の作製に成功した。前記酸化チタン粒子は、その星形形状に依存して、粒径などに大きく依存することなく高い散乱効果を有する。したがって、可視光から近赤外光の光散乱能に優れる。
【0009】
なお、前記酸化チタン粒子は、以下に詳述する作製方法における作製条件を種々制御することによって、6つの延在部が放射状に伸びた構成とすることができる。この場合、前記光散乱能をさらに向上させることができる。また、その一次粒径を100nm〜1000nmの範囲にすることができ、その外観形状と粒径範囲とに依存して、可視光から近赤外の範囲において高い光散乱能を有するようになる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、光散乱能に優れた、特に可視光から近赤外光の光散乱能に優れた、新規な酸化チタン粒子を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細、並びにその他の特徴及び利点について、最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
本発明の酸化チタン粒子を作製するに際しては、最初に、チタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物及び有機アルカリ類を所定の溶媒中で混合し、反応溶液を作製する。
【0013】
前記チタンアルコキシドとしては、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタンを例示することができる。加水分解速度の制御性および入手容易性の観点からテトライソプロポキシチタン、テトラノルマルブトキシチタンが好適に使用でき、テトライソプロポキシチタンが特に好適である。また、前記チタン金属塩としては、四塩化チタン及び硫酸チタンを例示することができる。
【0014】
これらの加水分解生成物はメタチタン酸やオルトチタンと呼ばれる含水酸化チタンのケーキ状物質であるが、そのケーキ内部には加水分解の過程で生成されたアルコール類や塩酸、硫酸が含有されている。これらの物質は結晶成長の際に阻害物質となるため、純水を用いデカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法などの方法を用い洗浄することが好ましい。
【0015】
また、前記有機アルカリ類としては、アミン類、高分子アミンおよびその塩、並びにアンモニアを例示することができる。前記アミン類としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。また前記高分子アミン及びその塩としては、前記アミン類からなる高分子アミンおよびその塩を例示することができる。なお、前記有機アルカリ類は、前記反応溶液に対してpH調整剤として働く。
【0016】
さらに、前記溶媒は、特に限定されないが、水が好ましい。
【0017】
前記反応溶液中のpHは9〜11であることが好ましく、さらにはpH9.5〜10.5であることが好ましい。これによって、本発明の酸化チタン粒子の好ましい態様である6つの延在部が互いに略等間隔で放射状に伸びた酸化チタン粒子を簡易に得ることができる。また、その一次粒径を100nm〜1000nmの範囲にすることができ、その外観形状と粒径範囲とに依存して、可視光から近赤外の範囲において高い光散乱能を有する酸化チタン粒子を得ることができるようになる。なお、前記反応溶液中のpHは前記有機アルカリ類の濃度を制御することによって調節する。
【0018】
また、前記反応溶液中のチタン原子濃度は0.05mol/L〜10mol/Lの範囲であることが好ましく、特には0.1mol/L〜2.5mol/Lの範囲であることが好ましい。チタン原子濃度は、形成される酸化チタン粒子の粒径に直接影響を及ぼすので、所望する酸化チタン粒子の粒径に応じて適宜設定する必要があるが、上述したチタン原子濃度に設定することによって、100nm〜1000nmの範囲の一次粒径を有する酸化チタン粒子を簡易に作製することができるようになる。なお、前記チタン原子濃度は、反応溶液中のチタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物の濃度を適宜調節することによって制御することができる。
【0019】
また、前記反応溶液のpH及びチタン原子濃度を上述したような好ましい範囲に設定することにより、前記反応溶液は一般的にスラリー状となる。
【0020】
次いで、本発明においては、前記反応溶液をステンレスなどの密閉容器中で加熱する。この場合、前記反応溶液中のチタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物は、高温及び加圧下で分解するとともに、得られたチタン源の結晶成長が進行し、目的とする星形形状の酸化チタン粒子を得ることができる。
【0021】
なお、前記加熱処理は120℃〜350℃の温度範囲、さらには200℃〜350℃さらには230℃〜350℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、前記加熱処理時間は、2時間以上であることが好ましく、さらには12時間〜36時間であることが好ましい。また、かかる加熱処理において、室温から上記温度範囲までの加熱速度は特に限定しないが、100℃/時間以下であることが好ましい。さらに、前記加熱処理においては、結晶化度の均質化の観点より、前記反応溶液をスターラー又は撹拌羽などを用いて、強制的に撹拌することが好ましい。
【0022】
また、前記加熱処理の前に、予備加熱処理を行うこともできる。上述した加熱処理のみでは、本発明の星形形状の酸化チタン粒子に加えて、粒状の酸化チタン粒子が形成される場合があり、目的とする前記星形形状の酸化チタン粒子の作製歩留まりが低下する場合がある。これに対して、前記加熱処理に加えて前記予備加熱処理を施すことにより、前記粒状酸化チタン粒子の形成割合が減少し、前記星形形状の酸化チタン粒子の作製歩留まりを向上させることができるようになる。
【0023】
なお、前記予備加熱処理は、70℃〜150℃の温度範囲、さらには80℃〜120℃さらには100℃〜120℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、予備加熱時間は1時間以上であることが好ましく、さらには2時間〜4時間の範囲であることが好ましい。さらにこの場合においても、結晶化度の均質化の観点より、前記反応溶液をスターラー又は撹拌羽などを用いて、強制的に撹拌することが好ましい。
【0024】
以上のような作製工程を経ることにより、本発明の星形形状の酸化チタン粒子を得ることができる。また、上述した作製工程において、反応溶液のpHなどにおいてそれぞれ好ましい態様を採ることにより、本発明の好ましい態様である、6つの延在部が放射状に伸びた星形形状の酸化チタン粒子を得ることができる。
【0025】
前記星形形状の酸化チタン粒子は、各延在部がアナターゼ単相からなり、その結果全体として双晶を呈するようになる。酸化チタンはブルッカイト相、アナターゼ相及びルチル相などの結晶相を有するが、前記アナターゼ相は準安定相であるので、ある程度の大きさの酸化チタン粒子を形成するために加熱処理を施すと、前記アナターゼ相は安定相であるルチル相に転移してしまう。この結果、酸化チタン粒子の形状とは無関係に、100nm以上の一次粒径を有する酸化チタン粒子を得ようとすると、前記酸化チタン粒子はルチル相を含むことになる。したがって、本発明は100nm〜1000nmの範囲の一次粒径であって、アナターゼ単相から構成される酸化チタン粒子を提供できるため、ルチル相以外の結晶相からなる酸化チタン粒子を得ることができるという観点からも重要である。また、条件の調整により各延在部はそれぞれが単結晶となる。
【0026】
前記酸化チタン粒子は、この酸化チタン粒子が残留する液相に対して水溶性樹脂や添加剤を加えて使用することも出来る。またスプレードライ、フリーズドライ、ヌッチェ、熱風乾燥、エバポレーター、真空乾燥、サーマジェットドライ、遠心分離などの方法によって乾燥し粉末化することも出来る。また、前記液相の状態からフラッシング法や溶剤置換によって、非水系の分散液もしくは懸濁液として直接的に使用することも出来る。なお、この場合、前記分散液又は前記懸濁液の状態でデカンテーション、ヌッチェ洗浄、限外濾過、マイクロフィルトレーション、遠心分離などの方法によって、粒子合成時の残留アルコール類やアミン類などの添加物由来の不純物を除去することも出来る。
【0027】
(化粧料)
前述のようにして作製し、前述のような特性を有する本発明の前記酸化チタン粒子は、その外観形状さらには粒径に起因して、特に可視光から近赤外光の光散乱能に優れる。したがって、日焼け止め化粧料などの酸化チタンを用いた化粧料として使用することができる。
【0028】
光反射特性、紫外線吸収特性、隠蔽性に優れている酸化チタンを用いている化粧料は数多く商品化されている。
【0029】
上述したように、酸化チタンには、ブルッカイト、アナターゼ、ルチルという結晶相を有することが知られているが、ルチルは高温安定相であるのでその粒子は、一般的に大きく、化粧品として利用した際に、透明感が得られないことが問題であった。また、400nm付近の光を吸収することから、その色目はやや青みがかったものであり、化粧品としては好ましくない。一方、アナターゼは準安定相であるゆえに、大きな粒子を得られにくいといった性質を有している。
【0030】
また、白色度を上げるために、粒径200nm前後の粒子が用いる試みがなされているが、この場合には前記粒径の前記粒子の使用量を増大させる必要があり、その結果、このような酸化チタンを含む化粧料のざらつき感等が強調されるという問題があった。
【0031】
本発明の酸化チタン粒子は、その結晶相がアナターゼ型を有すること、及び一次粒子径が100nm〜1000nmであること、及び酸化チタン本来の性質に起因して、優れた白色性を呈する。また、その星型形状に起因して優れた反射性を有する。したがって、本発明の酸化チタン粒子を含有させることによって、白色性及び反射性に優れた化粧料を提供することができる。
【0032】
また、酸化チタンは紫外線の吸収に優れるという本来的な性質を有しているので、前記化粧料は優れたUVカットの効果をも呈するようになる。
【0033】
一方、本発明の酸化チタン粒子は、アナターゼ型の結晶相を有するので、光触媒性が強く、肌のダメージになる可能性がある。したがって、本発明の酸化チタン粒子に対して紫外線吸収効果を付与するためには、SiO、ZrO、Alなどの微粒子もしくは、TEOS、TMOS、Alエトキシド等の金属アルコキシドやSiカップリング剤、Alカップリング剤等で複合化することで表面をコートすることが好ましい。また、オルガノシロキサン類、シリコーン樹脂等で被覆してもよい。
【0034】
アルコキシド法を用いた処理方法は、一般的な加水分解法が用いることが可能であるが、他の方法でも良い。そのときの金属アルコキシドやカップリング剤の濃度は、酸化チタン粒子に対し10wt%〜50wt%が好ましい。また、微粒子で表面処理を行う場合は、溶媒中に、粒子径が3nm〜50nmのSiO、ZrO、Alなどの微粒子を酸化チタン粒子に対して5wt%〜70wt%に混合して単分散させ、ビーズミル、ロールミル、超音波練乳機、ホモジナイザー等で均一になるように混合することで、酸化チタン粒子の表面を覆うことが可能となる。
【0035】
また、0.1mM〜1MのZn塩水溶液に本発明の星形酸化チタン粒子を1〜50wt%の濃度で分散させ、その分散液をスプレードライによって450〜500℃に加熱することによって、前記酸化チタン表面をZnOで薄く被覆し複合化したZnO複合星状酸化チタン粒子を得ることができる。この場合、前記酸化チタン粒子の紫外線吸収特性をさらに向上させることができ、前記酸化チタンを含有した化粧料のUVカット効果をさらに増大させることができる。
【0036】
さらに、0.001M〜1Mの濃度の塩化チタン水溶液を80℃に熱し、その中に本発明のアナターゼ型星形酸化チタン粒子を投入し、24時間以上攪拌混合する。この処理をすることによって、表面のみをルチル化したルチル被膜アナターゼ型星形酸化チタン粒子を得ることができる。この場合も、前記酸化チタン粒子の紫外線吸収効果をさらに増大させることができ、前記酸化チタンを含有した化粧料のUVカット効果をさらに増大させることができる。
【0037】
本発明の化粧料には、上述した星形酸化チタン粒子以外に、通常化粧料で用いられる粉体類、油剤、界面活性剤、香料、防腐剤、殺菌剤、保湿剤、顔料、増粘剤、溶剤等を同時に配合することが出来る。
【0038】
本発明の化粧料の種類としては、ファンデーション、ベースファンデーション、頬紅、白粉、プレストパウダー、チークカラー、口紅、アイライナー、アイシャドウ、ネイルカラー、サンスクリーン剤、軟膏、乳液、クリーム、エッセンス、パウダー、ローション、スプレー、紫外線防止剤等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
(星型酸化チタン粒子の作製及び評価)
[実施例1]
容量1Lのガラス容器に10℃に冷却した純水250mLを入れ、撹拌羽により300rpmで撹拌しながら、高純度化学社製チタンテトライソプロポキシド71gを滴下ロートを用いて滴々投入した。1時間の撹拌後に前記チタンテトライソプロポキシドは加水分解され白色水性懸濁液となった。この白色水性懸濁液をヌッチェと東洋濾紙社製濾紙No2で吸引濾過を行い、続いて純水500mLで洗浄を行い、白色ケーキ状物質を得た。この白色ケーキ状物質、及び東京化成社製テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液1.4gを純水中に添加し、総量で200gとなるようにした。得られた反応溶液はスラリー状となり、pHは10.23であった。反応溶液中のチタン原子濃度は1.25mol/Lであった。
【0040】
次いで、前記反応溶液を密閉容器中に入れ、撹拌しながら120℃で4時間予備加熱処理を行った後、270℃で12時間加熱処理を行い、酸化チタン粒子を含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を濾過、洗浄して、得られた洗浄ケーキを120℃で一昼夜乾燥することにより、粉末化した酸化チタン粒子を得た。
【0041】
[比較例1]
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドを加えることなく反応溶液を作製した以外は、実施例と同様にして予備加熱処理及び加熱処理を実施して、酸化チタン粒子を作製した。なお、本比較例における前記反応溶液のpHは8.2であった。反応溶液中のチタン原子濃度は1.25mol/Lであった。
【0042】
[比較例2]
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代えて和光純薬社製硝酸1.42を5gを加えた以外は、実施例と同様にして予備加熱処理及び加熱処理を実施して、酸化チタン粒子を作製した。なお、本比較例における前記反応溶液のpHは2.0であった。反応溶液中のチタン原子濃度は1.25mol/Lであった。
【0043】
[試験例1]
上記実施例及び比較例1、2で作製した酸化チタン粒子を分析するために、電子顕微鏡で粒子形状を測定し、粉末X線回折で結晶相の同定を行った。評価結果を表1に示す。実施例においては、星形形状であり、一次粒径が200nm〜350nmであって、各延在部がアナタース単相を呈する双晶の酸化チタン粒子が得られていることが判明した。また、比較例1においては、一次粒径数十nm程度のアナタース単相からなる粒状の酸化チタン粒子が得られていることが判明した。さらに、比較例2においては、一次粒径数十nmのアナタース相及びルチル相が混在した酸化チタン粒子が得られていることが判明した。
【0044】
【表1】

【0045】
なお、本実施例で得た酸化チタン粒子のSEM写真を図1に示すとともに、TEM写真を図2に示す。また、本実施例における酸化チタン粒子のX線回折パターンのグラフをそれぞれ図3に示す。
【0046】
[試験例2]
上記実施例及び比較例1の酸化チタン粒子、並びに一次粒径20nmの凝集体で平均凝集粒径300nmのアナターゼ単相からなる粒状の酸化チタン粒子(和光純薬社製:比較例3)との光散乱性を調べた。最初に、αテルピネオール(関東化学社製)70gにエチルセルロース45(関東化学社製)5gをホモジナイザーで溶解させビヒクルを作製した。次いで、前記ビヒクルに実施例及び比較例1で得た酸化チタン粒子の25g、及び和光純薬社酸化チタン粒子の25gをホモジナイザーで攪拌しながら添加した。次いで、このようにして得た酸化チタンペーストを3本ロールミルで混練し印刷ペーストとした。
【0047】
次いで、前記印刷ペーストを厚さ1.1mmのパイレックス(登録商標)ガラスに350メッシュステンレススクリーンを用いてスクリーン印刷し、次いで500℃に保持された電気炉内において30分焼成した。この結果、前記パイレックス(登録商標)ガラス上の前記印刷ペースト部分は2μmの膜厚の白色半透明〜不透明の多孔質酸化チタン膜となった。次いで、前記多孔質酸化チタン膜を積分球付属の紫外可視近赤外分光計によって各波長毎の光反射率を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から明らかなように、実施例で得た星形形状の酸化チタン粒子は総ての波長において40%以上の高い反射率を呈することが判明した。また、比較例3における酸化チタン粒子は粒状であるが、その平均凝集粒径が約300nmであるために、総ての波長において20%以上の反射率を有することが分かる。さらに、実施例及び比較例3を比較すると、酸化チタン粒子の粒径はほぼ同じであるにも拘らず、実施例における酸化チタン粒子は星形形状の外観を呈することによって、高い反射率を呈することが分かる。一方、一次粒径が数十nmであって、粒状の外観を呈する比較例2の酸化チタン粒子においては、各波長において10%前後の低い反射率しか有しないことが判明した。
【0050】
(星型酸化チタン粒子の化粧料への応用)
[実施例2]
<成分Aの調整>
本発明の星形酸化チタン粒子(1次粒子径100〜300nm)の20.0g、デカメチルシクロペンタシロキサンの30.0g、ジメチルポリシロキサンの3.0g、トリー2ーエチルヘキサン酸グリセリルの7.0g、ポリオキシエチレン・ポリシロキサン共重合体の3.0g、パラメトキシ桂皮酸ー2ーエチルヘキシルの7.0g、及び4−tert−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタンの2.0gを90℃で加熱溶解させ、ホモジナイザーで8000rpmにて10分間攪拌し、成分Aを調整した。
【0051】
<成分Bの調整>
エチルアルコールの3.0g及び蒸留水25.0gを80℃に加温し、成分Bを調整した。
【0052】
<化粧料の作製>
成分Aに対して成分Bを徐々に加え、90℃で乳化させるとともに、25℃まで徐々に冷却し、化粧料を得た。
【0053】
<白色度の評価>
上述のようにして作製した化粧料を、1mm厚の石英板に2μmの厚さで塗布し、ヘーズメーターにてヘーズ値(H)の測定を行い、白色度を評価した。評価基準は以下の通りとした。結果を表3に示す。
1:H=0〜5%
2:H=5〜10%
3:H=10〜20%
4:H=20〜30%
5:H=30%以上
【0054】
[比較例4]
実施例2において、本発明の星形酸化チタン粒子の代わりにアナターゼ酸化チタン粒子(平均1次粒子径200nm)(Wako社製)を用いた以外は実施例3と同様に化粧料を作製し、その白色性について、実施例3と同様の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3から明らかなように、本発明の星型酸化チタン粒子を含む化粧料は、従来の酸化チタン粒子を含む化粧料と比較して、優れた白色度を呈することが分かる。したがって、本発明の星型酸化チタン粒子は、白色化粧料の含有物として好適であることが分かる。
【0057】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の酸化チタン粒子の一例を示すSEM写真である。
【図2】本発明の酸化チタン粒子の一例を示すTEM写真である。
【図3】本発明の酸化チタン粒子の一例のX線回折プロファイルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈することを特徴とする、酸化チタン粒子。
【請求項2】
前記複数の延在部は6つの延在部からなり、これら6つの延在部は互いに略等間隔で放射状に伸びていることを特徴とする、請求項1に記載の酸化チタン粒子。
【請求項3】
一次粒径が100nm以上1000nm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酸化チタン粒子。
【請求項4】
前記複数の延在部はそれぞれ単結晶であって、前記酸化チタン粒子は全体として双晶を呈することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の酸化チタン粒子。
【請求項5】
前記延在部はアナターゼ単相であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の酸化チタン粒子。
【請求項6】
チタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物及び有機アルカリ類を所定の溶媒中で混合し、反応溶液を作製する工程と、
前記反応溶液を密閉容器中で加熱する工程とを具え、
放射状に伸びた複数の延在部を有するとともに、前記延在部は長さ方向における略中心部において稜を有し、全体として星形を呈する酸化チタン粒子を作製することを特徴とする、酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項7】
前記加熱工程は120℃〜350℃の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項6に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項8】
前記チタンアルコキシドは、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタン、及びテトラノルマルブトキシチタンから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項9】
前記チタン金属塩は、四塩化チタン及び硫酸チタンの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項10】
前記有機アルカリ類は、アミン類、高分子アミン及びその塩、並びにアンモニアから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項11】
前記反応溶液のpHが9〜11であることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか一に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項12】
前記反応溶液中のチタン原子濃度が、0.05mol/L以上10mol/L以下の範囲であることを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項13】
前記反応溶液はスラリー状であることを特徴とする、請求項6〜12のいずれか一に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項14】
前記反応溶液に対して予備加熱処理を施すことを特徴とする、請求項13に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項15】
前記予備加熱処理は70℃〜150℃の温度範囲で行うことを特徴とする、請求項14に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項16】
前記酸化チタン粒子において、前記複数の延在部は6つの延在部からなり、これら6つの延在部は互いに略等間隔で放射状に伸びていることを特徴とする、請求項6〜15のいずれか一に記載の酸化チタン粒子の作製方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一に記載の酸化チタン粒子を具えることを特徴とする、化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−76798(P2006−76798A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247049(P2004−247049)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】