説明

酸化チタン系微粒子の製造方法および酸化チタン系微粒子、該酸化チタン系微粒子を用いた抗菌・消臭剤ならびに抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液および抗菌・消臭性塗膜付基材

【課題】抗菌・消臭成分を多く担持することができ、微細であっても安定で凝集することがない酸化チタン系微粒子を製造する。
【解決手段】チタニウム化合物水溶液の温度を0〜30℃の範囲に維持しながら、所定量のアンモニア水溶液を所定の速度で添加して酸化チタン水和物を調製し、洗浄後、所定量の過酸化水素水を添加して溶解した後、30〜100℃で撹拌しながら過酸化水素を除去し、熟成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超微細で均一な粒子径分布を有する酸化チタン系微粒子の製造方法、該方法によって得られる酸化チタン系微粒子、該酸化チタン系微粒子を含む抗菌・消臭剤、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液、および抗菌・消臭性塗膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、清潔志向、衛生志向、安全志向、快適志向等、生活環境の向上が求められている。
従来、シリカゲル、複合酸化物、酸化チタン等の粉末、あるいはコロイド粒子に抗菌性を有する銀、銅、亜鉛等の金属成分を担持した抗菌性組成物が知られている。
【0003】
例えば、本願出願人は無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌剤(特開平6−80527号公報:特許文献1)あるいはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムに抗菌性を有する金属イオンをイオン交換した抗菌剤(特開平3−275627号公報:特許文献2)を開示している。
抗菌効果の持続性および抗菌物質の安定性を改善する目的で、抗菌性の金属イオンをゼオライトあるいはアルミノ珪酸塩に担持した抗菌性組成物も知られている(特開平1−283204号公報:特許文献3)。
【0004】
また、本願出願人は、金属成分と該金属成分以外の無機酸化物とから構成される無機酸化物微粒子であって、前記無機酸化物が酸化チタンとシリカおよび/またはジルコニアとを含んでなり、該酸化チタンが結晶性酸化チタンである抗菌性消臭剤を開示している(特開2005−318999号公報:特許文献4)。この抗菌性消臭剤は抗菌性能の他、揮発性有機化合物(VOC)の分解による消臭性能を有することを開示している。
【0005】
上記した無機酸化物粒子系の抗菌剤、消臭剤、抗菌・消臭剤は、通常、微粒子粉体を樹脂、あるいは繊維に練り込んで使用したり、塗料やインキにしてこれを基材に塗布して使用している。あるいは成型してろ材として使用している。
しかしながら、無機酸化物粒子系の抗菌剤、消臭剤を基材上に塗布して薄膜を形成して用いる場合、基材との密着性、膜表面の平坦性、透明性、耐久性等に問題があった。
従来、基材上に膜を形成して使用するにはバインダー成分が使用されるが、従来公知のバインダー成分を使用すると抗菌性能、消臭性能が充分発揮できない問題があった。
【0006】
本願出願人は、特開平07−286114号公報(特許文献5)にマトリックス成分としてペルオキソポリチタン酸を水および/または有機溶媒に溶解した状態で含有している被膜形成用塗布液を開示しているが、その後、この被膜形成用塗布液を用いて形成した被膜はアンモニア等の臭気成分を分解して無臭化できることを見出している。
【0007】
しかしながら、このようなペルオキソポリチタン酸をマトリックス成分として用いた、無機酸化物粒子系の抗菌剤、消臭剤を含む薄膜を形成しても、塗布液の安定性が不充分となり、得られる薄膜は基材との密着性、透明性、表面の平坦性が不充分となったり、クラックが発生する場合があり、加えて抗菌性能、消臭性能も充分とは言えなかった。
【0008】
近年、居住空間、公共施設、医療施設、養護施設、自動車内装等において、抗菌、防かび、防藻、坑ウイルス、抗アレルゲン、害虫忌避等の他、建材等に含まれるホルムアルデヒド、煙草喫煙時に発生するアセトアルデヒド等の有害物質の除去、便所等で発生するアンモニア等に対する消臭性能が求められ、しかも、美観等を損ねることのない、抗菌・消臭性透明薄膜が求められている。しかも、上記性能をさらに向上させるとともに長期にわたって維持できる抗菌・消臭剤が求められている。
また、抗菌・消臭剤が結晶性酸化チタンを用いる場合は、有機系基材、繊維等と接触させて用いると変色したり、性能が低下し、用途、用法に制限があった。
【0009】
酸化チタン系微粒子の製造方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報(特許文献6)、特開昭62−235215号公報(特許文献7)、特開平7−286114号公報(特許文献8)、特開2008−44826号公報(特許文献9)等に種々開示されているが、粒子径が小さく、粒子径分布が均一で、且つ無定型酸化チタン微粒子は開示されていない。
【0010】
本発明者等は鋭意検討した結果、酸化チタン系微粒子の調製において、チタニウム化合物の加水分解(中和)にアンモニアを用い、室温より低温で、アンモニアの添加速度を所定の速度範囲で行うと、微細な酸化チタン水和物が得られ、これを過酸化水素に溶解し、必用に応じて加熱処理すると、平均粒子径が10nm以下で、粒子径分布が均一な無定型の酸化チタン系微粒子が高収率で得られることを見出した。
また、抗菌・消臭性金属成分を含む上記酸化チタン系微粒子をチタンキレート化合物水溶液に分散させた分散液はゲル化することなく長期安定で、しかもこの分散液を塗布して得られる薄膜は透明で、基材との密着性に優れていることを見出して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−80527号公報
【特許文献2】特開平3−275627号公報
【特許文献3】特開平1−283204号公報
【特許文献4】特開2005−318999号公報
【特許文献5】特開平07−286114号公報
【特許文献6】特開昭63−17221号公報
【特許文献7】特開昭62−235215号公報
【特許文献8】特開平7−286114号公報
【特許文献9】特開2008−44826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、酸化チタン系微粒子が超微粒子であるために抗菌・消臭成分を多く担持することができ、微細であっても安定で凝集することがなく、抗菌・消臭剤に好適に用いることのできる酸化チタン系微粒子の高収率の製造方法、得られる酸化チタン系微粒子、該酸化チタン系微粒子を用いた抗菌・消臭剤、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液、抗菌・消臭性塗膜付基材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の酸化チタン系微粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(e)からなることを特徴とする。
(a)TiO2としての濃度が0.5〜20重量%のチタニウム化合物水溶液を調製する工程。
(b)チタニウム化合物水溶液の温度を0〜30℃の範囲に維持しながら、チタニウム化合物のTiO2としてのモル数(MTiO2)を1としたとき、添加するアンモニア水溶液のアンモニアのモル数(MNH3)が1〜10の範囲となり、1〜10時間/1モル(MNH3)の速度でアンモニア水溶液を添加して酸化チタン水和物を調製する工程。
(c)酸化チタン水和物を洗浄する工程。
(d)TiO2としての濃度が0.1〜10重量%の酸化チタン水和物分散液に、過酸化水素水を、酸化チタン水和物のTiO2としてのモル数(MTiO2)と過酸化水素のモル数(MH2O2)とのモル比(MH2O2)/(MTiO2)が1〜10の範囲となるように添加し、温度10〜100℃で溶解する工程。
(e)温度30〜100℃で撹拌しながら過酸化水素を除去し、熟成する工程。
【0014】
前記工程(e)についで、下記の工程(f)を行うことが好ましい。
(f)シリカゾルおよび/またはジルコニアゾルをTiO2に対して0.1〜15重量%となるように添加する工程。
前記工程(f)についで、下記の工程(g)を行うことが好ましい。
(g)温度30〜80℃で熟成する工程。
前記酸化チタン系微粒子が無定型であることが好ましい。
【0015】
本発明の酸化チタン系微粒子は、平均粒子径(D)が3〜10nmの範囲にあり、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン系微粒子の個数割合が70%以上であることを特徴とする。
本発明の酸化チタン系微粒子は、前記いずれかの製造方法によって得られたものである。
【0016】
本発明の抗菌・消臭剤は、抗菌・消臭性成分を酸化物換算で0.1〜25重量%の範囲で含む酸化チタン系微粒子であって、平均粒子径(D)が3〜10nmの範囲にあり、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン微粒子の個数割合が70%以上であることを特徴とする。
前記抗菌・消臭性成分が銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の成分であることが好ましい。
前記酸化チタン系微粒子がシリカおよび/またはジルコニアをTiO2に対して0.1〜15重量%の範囲で含有することが好ましい。
前記酸化チタン系微粒子が無定型であることが好ましい。
前記いずれかに記載の抗菌・消臭剤は、香料化合物を含有する水系分散媒中に分散してなることが好ましい。
【0017】
本発明の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液は、前記いずれかに記載の抗菌・消臭剤を含んでなることを特徴とする。
この抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液は、水溶性金属キレート化合物を含んでなることが好ましく、水溶性金属キレート化合物がチタンキレート化合物であることが好ましく、チタンキレート化合物がチタンラクテートアンモニウム塩であることが好ましい。
【0018】
この抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液は、全固形分濃度が0.01〜20重量%の範囲にあり、前記抗菌・消臭剤の固形分としての濃度が0.005〜19.9重量%の範囲にあり、前記水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が0.0001〜10.0重量%の範囲にあり、抗菌・消臭剤の重量(Wa)と水溶性金属キレート化合物のTiO2としての重量(Wb)の重量比(Wb)/(Wa)が0.005〜1.0の範囲にあることが好ましい。
【0019】
本発明の抗菌・消臭性塗膜付基材は、基材と、基材上に形成された抗菌・消臭性塗膜とからなり、該抗菌・消臭性塗膜が前記いずれかに記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液を用いて形成された抗菌・消臭性塗膜であることを特徴とする。
前記抗菌・消臭性塗膜中の抗菌・消臭剤の固形分としての含有量が50〜99.5重量%の範囲にあり、水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が0.5〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、酸化チタン系微粒子が小粒径であるために抗菌・消臭成分を多く担持することができ、微細であっても安定で凝集することがない酸化チタン系微粒子を製造することができる。また、該酸化チタン系微粒子を収率よく製造することができる。更に、該酸化チタン系微粒子を用いた抗菌・消臭剤は、抗菌性能、消臭性能に優れると共に、変色性の抗菌・消臭成分についても変色抑制効果がある。本発明の抗菌・消臭剤は、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液、および抗菌・消臭性塗膜付基材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[酸化チタン系微粒子の製造方法]
以下に、まず、本発明に係る酸化チタン系微粒子の製造方法について説明する。
本発明に係る酸化チタン系微粒子の製造方法は、下記の工程(a)〜(e)からなることを特徴としている。
(a)TiO2としての濃度が0.5〜20重量%のチタニウム化合物水溶液を調製する工程。
(b)チタニウム化合物水溶液の温度を0〜30℃の範囲に維持しながら、チタニウム化合物のTiO2としてのモル数(MTiO2)を1としたとき、添加するアンモニア水溶液のアンモニアのモル数(MNH3)が1〜10の範囲となり、1〜10時間/1モル(MNH3)の速度でアンモニア水溶液を添加して酸化チタン水和物を調製する工程。
(c)酸化チタン水和物を洗浄する工程。
(d)TiO2としての濃度が0.1〜10重量%の酸化チタン水和物分散液に、過酸化水素水を、酸化チタン水和物のTiO2としてのモル数(MTiO2)と過酸化水素のモル数(MH2O2)とのモル比(MH2O2)/(MTiO2)が2〜10の範囲となるように添加し、温度10〜100℃で溶解する工程。
(e)温度30〜100℃で撹拌しながら過酸化水素を除去し、熟成する工程。
【0022】
以下、各工程を順に説明する。
工程(a)
TiO2としての濃度が0.5〜20重量%のチタニウム化合物水溶液を調製する。
チタニウム化合物としては、従来公知のチタニウム化合物を用いることができ、例えば、塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、有機酸チタン等のチタニウム化合物を用いることができる。
チタニウム化合物水溶液の濃度はTiO2としての濃度が0.5〜20重量%、さらには1〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
チタニウム化合物水溶液の濃度がTiO2として0.5重量%未満の場合は、収率が低下したり生産性、経済性が低下する場合がある。
チタニウム化合物水溶液の濃度がTiO2としての濃度が20重量%を越えると、工程(b)で生成する酸化チタン水和物(ゲル)が塊となり、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の粒子径が大きくなり過ぎたり、粒子径分布が不均一となる場合がある。
【0023】
工程(b)
チタニウム化合物水溶液の温度を0〜30℃の範囲に維持しながら、チタニウム化合物のTiO2としてのモル数(MTiO2)を1としたとき、添加するアンモニア水溶液のアンモニアのモル数(MNH3)が1〜10の範囲となり、1〜10時間/1モル(MNH3)の速度でアンモニア水溶液を添加して酸化チタン水和物を調製する。
まず、チタニウム化合物水溶液の温度を0〜30℃、さらには0〜20℃の範囲に調整して維持することが好ましい。
チタニウム化合物水溶液の温度が30℃を越えると、生成する酸化チタン水和物(ゲル)の一次粒子が大きくなり、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の粒子径が大きくなるとともに粒子径分布が不均一となる場合がある。
チタニウム化合物水溶液の温度が0℃未満の場合は、生成する酸化チタン水和物(ゲル)の一次粒子がさらに小さくなることもなく、また、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の粒子径分布がさらに均一となることもない。
【0024】
ついで、チタニウム化合物水溶液にアンモニア水溶液を添加して、加水分解(中和)するが、チタニウム化合物をTiO2としてのモル数(MTiO2)を1としたとき、添加するアンモニア水溶液のアンモニアのモル数(MNH3)が1〜10、さらには2〜5の範囲にあることが好ましい。
アンモニアのモル数(MNH3)が1未満の場合は、チタニウム化合物の加水分解が不充分となる場合があり、生成する酸化チタン水和物(ゲル)の一次粒子が大きくなり、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の平均粒子径が10nmを越えて大きくなる場合があり、しかも粒子径分布が不均一となり、収率も低下する問題がある。
アンモニアのモル数(MNH3)が10を越えても、さらに、生成する酸化チタン水和物(ゲル)の一次粒子がさらに小さくなることもなく、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の平均粒子径がさらに小さくなることもなく、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の粒子径分布がさらに均一になることもない。
【0025】
また、チタニウム化合物を、TiO2として1モル加水分解するとしたときに、アンモニアの添加速度は1〜10時間/1モル(MNH3)、さらには2〜8時間/1モル(MNH3)の範囲にあることが好ましい。
アンモニアの添加速度が1時間/1モル(MNH3)未満の場合は、生成する酸化チタン水和物(ゲル)の一次粒子が大きくなり、工程(d)での過酸化水素溶解性が低下し、酸化チタン系微粒子の収率が低下する場合があり、また、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の粒子径が大きくなるとともに粒子径分布が不均一となる場合がある。
アンモニアの添加速度が10時間/1モル(MNH3)を越えると、生成する酸化チタン水和物(ゲル)の一次粒子は小さいものの、大きな二次粒子が生成するためか、最終的に得られる酸化チタン系微粒子の粒子径分布が不均一になる場合がある。
【0026】
なお、本発明では、アンモニアに代えて水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム等の他の塩基性化合物を用いることもできるが、アンモニアは最終的に得られる酸化チタン系微粒子中に残存しても、必用に応じて除去することが容易であり、また、抗菌・消臭性能を阻害することもないので好適に用いることができる。
【0027】
工程(c)
ついで、酸化チタン水和物(ゲル)を洗浄する。
洗浄する方法としては、酸化チタン水和物(ゲル)中のチタニウム化合物に由来するアニオン等を除去できれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、充分な純水を掛け水する方法、希アンモニア水を掛け水する方法等が挙げられる。
洗浄後の酸化チタン水和物(ゲル)中の不純物(アニオン等)が固形分(TiO2)中に1重量%以下、さらには0.1重量%以下であることが好ましい。このような不純物が多いと過酸化水素での未溶解物が増加し、収率が低下する場合があり、また、最終的に得られる酸化チタン系微粒子に凝集粒子が発生する場合がある。
【0028】
工程(d)
ついで、TiO2としての濃度が0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%の範囲にある洗浄した酸化チタン水和物分散液を調製する。
酸化チタン水和物分散液の濃度が固形分(TiO2)として0.1重量%未満の場合は、生産効率、収率、経済性が低下する問題がある。
酸化チタン水和物分散液の濃度が固形分(TiO2)として10重量%を越えると、後述する過酸化水素と酸化チタンとのモル比、溶解温度にもよるが、溶解に長時間を要したり、溶解が不充分になることがあり、このため酸化チタン系微粒子の収率が低下する問題が生じる。さらに、得られる酸化チタン系微粒子の粒子径分布が不均一になる場合がある。
【0029】
濃度調整した酸化チタン水和物分散液に、酸化チタン水和物のTiO2としてのモル数(MTiO2)と過酸化水素のモル数(MH2O2)とのモル比(MH2O2)/(MTiO2)が2〜10、さらには好ましくは3〜8の範囲となるように過酸化水素水を添加する。
モル比(MH2O2)/(MTiO2)が2未満の場合は、溶解温度にもよるが、時間を要したり、未溶解の酸化チタン水和物が残存する場合がある。
【0030】
モル比(MH2O2)/(MTiO2)が10を越えても、さらに、溶解が進むこともなく、未溶解の酸化チタン水和物が減少して酸化チタン系微粒子粒子の収率が向上することもなく、過酸化水素が過剰となり、後述する工程(e)で除去する過酸化水素が増大し、経済性の点からも望ましくない。
【0031】
溶解する際の温度は10〜100℃、さらには30〜80℃の範囲にあることが好ましい。
溶解温度が10℃未満の場合は、溶解に時間を要したり、未反応酸化チタン水和物が残存する場合があり、酸化チタン系微粒子粒子の収率が不充分となる場合がある。
溶解温度が100℃を越えると、得られる酸化チタン系微粒子粒子の粒子径が大きくなり過ぎたり、粒子径分布が不均一になる場合がある。
溶解時間は、温度によっても異なるが、溶解を開始して一度黄色を呈した後に生成するペルオキソチタン酸水溶液が透明になった時点をいい、通常0.5〜12時間である。
【0032】
工程(e)
前記分散液を温度30〜100℃、さらには40〜80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去し、熟成する。
この時の温度が30℃未満の場合は、過酸化水素の除去に時間を要したり、熟成効果が不充分となり、得られる酸化チタン系微粒子の粒子径分布が不均一になる場合がある。
この時の温度が100℃を越えると、得られる酸化チタン系微粒子が凝集する場合があり、超微細で単分散した酸化チタン系微粒子、粒子径分布が均一な粒子が得られない場合がある。また、無定型から結晶化が進み、アナタース型酸化チタンが増加し、用途によっては耐光性、耐候性が不充分となる場合がある。
なお、工程(e)の熟成時間は、前記工程(d)の溶解を開始して一度黄色を呈した後に生成するペルオキソチタン酸水溶液が透明になった時点、以降の時間である。
この時の処理時間は、通常0.5〜12時間である。
【0033】
上記のようにして本発明に係る酸化チタン系微粒子(第1の酸化チタン系微粒子)が得られるが、本発明では、さらに、前記工程(e)についで、下記の工程(f)、必用に応じて工程(g)を行うことによって酸化チタン系微粒子(第2の酸化チタン系微粒子)が得られる。
【0034】
工程(f)
シリカゾルおよび/またはジルコニアゾルを第1の酸化チタン系微粒子のTiO2に対して0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%となるように添加する。
シリカゾル、ジルコニアゾルとしては、従来公知のシリカゾル、ジルコニアゾルを用いることができるが、平均粒子径は1〜100nmの範囲にあることが好ましい。
平均粒子径が1nm未満の場合は、得られる酸化チタン系微粒子が凝集することがあり、100nmを越えると、後述するシリカ成分、ジルコニア成分を添加する効果が不充分となる場合がある。
【0035】
シリカゾルおよび/またはジルコニアゾルの添加量がTiO2に対して0.1重量%未満の場合で、シリカゾルを用いる場合、酸化チタン系微粒子分散液の安定性の向上効果が不充分となり、また耐光性、耐候性の向上効果が充分得られない場合があり、ジルコニアゾルを用いた場合は、酸化チタン系微粒子分散液の安定性の向上効果が不充分となり、また耐光性、耐候性の向上効果が充分得られない場合があり、抗菌成分の種類によっては変色を抑制する効果が得られない場合がある。
シリカゾルおよび/またはジルコニアゾルの添加量がTiO2に対して15重量%を越えると、安定性向上効果、耐光性、耐候性の向上効果が不充分となり、これに抗菌・消臭成分を担持して抗菌・消臭剤と用いた場合、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0036】
工程(g)
ついで、温度30〜80℃、好ましくは40〜60℃で熟成する。
熟成温度が30℃未満の場合は、粒子の分散性の向上、安定性の向上、粒子径の均一化等の熟成効果が充分得られない場合がある。
熟成温度が80℃を越えると、粒子成長がおこり、粒子径が大きくなり過ぎる場合があり、温度、時間によってはアナターゼ結晶化して充分な耐候性が得られない場合がある。
この時、熟成時間は温度によっても異なるが、概ね1〜24時間である。
【0037】
このようにして得られる酸化チタン系微粒子(第1および第2の酸化チタン系微粒子)は、平均粒子径(D)が3〜10nmの範囲にあり、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン系微粒子の個数割合が70%以上であることが好ましく、酸化チタン系微粒子は無定型であることが好ましい。
【0038】
平均粒子径(D)は3〜10nm、さらには5〜8nmの範囲にあることが好ましい。
平均粒子径(D)が3nm未満の場合は、分散液の安定性が不充分となる場合があり、後述する塗布液に用いた場合に、凝集する場合があり、得られる塗膜の強度、透明性、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
平均粒子径(D)が10nmを越えると、粒子の外部表面積が小さくなるためか、均一に高分散した状態の抗菌・消臭成分の単位重量当たりの含有量を向上させる効果が得られず、充分な抗菌・消臭性能が得られない場合がある。
【0039】
また、粒子径分布については、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン系微粒子の個数割合が70%以上、さらには80%以上であることが好ましい。
平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン系微粒子の個数割合が70%未満の場合は、分散液、塗布液の安定性が不充分となる傾向があり、用途、用法によっては得られる塗膜の強度、透明性、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0040】
本発明では、平均粒子径は、酸化チタン系微粒子の透過型電子顕微鏡(日立H−800、日立ハイテク(株)製)を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として求めることができる。
また、粒子径分布は、上記粒子径の分布曲線を求め、平均粒子径(D)±2nmの粒子の個数割合を求める。
【0041】
また、酸化チタン系微粒子は無定型であることが好ましい。酸化チタン系微粒子は結晶性であっても使用することができるが、耐光性、耐候性の観点から無定型であることが好ましい。さらに詳しくは、結晶性酸化チタン系微粒子は抗菌・消臭性能は高いが、耐光性に問題があり、一方、無定型酸化チタン系微粒子の場合、本願では均一で粒子径の小さい粒子であるため抗菌・消臭剤の含有量を多くすることができ、このため、耐光性、耐候性に問題が無く、抗菌・消臭性能に優れた酸化チタン系微粒子が得られる。
【0042】
[抗菌・消臭剤]
次に、抗菌・消臭剤について説明する。
本発明に係る第1の抗菌・消臭剤は、抗菌・消臭性成分を酸化物換算で0.1〜25重量%の範囲で含む酸化チタン系微粒子であって、平均粒子径(D)が3〜10nmの範囲にあり、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン微粒子の個数割合が70%以上であることを特徴としている。
酸化チタン系微粒子としては、前記酸化チタン系微粒子が用いられる。
【0043】
第1の抗菌・消臭剤中の抗菌・消臭性成分の含有量は酸化チタン系微粒子に対して、酸化物換算で0.1〜25重量%、さらには1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性成分の含有量が0.1重量%よりも少ない場合には充分な抗菌・消臭性能が得られにくい。
抗菌・消臭性成分の含有量が25重量%よりも多い場合には、さらに消臭性能および抗菌性能が向上することもなく、むしろ抗菌・消臭性成分が凝集するためか性能が低下する場合がある。
【0044】
抗菌・消臭性成分としては、銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の金属成分であることが好ましい。なかでも銀または亜鉛は抗菌性能と消臭性能のいずれも優れているので好ましい。特に亜鉛の場合は全く変色することもないので好適に採用することができる。
このような抗菌・消臭性成分はイオン、酸化物、水酸化物等の化合物またはこれらの混合物のいずれの形態で存在していてもよい。抗菌性の観点からはイオンの形態が好ましく、酸化物であれば消臭性にも優れた抗菌・消臭剤が得られる。
また、抗菌・消臭成分は酸化チタン系微粒子の表層に存在するか、酸化チタン系微粒子の内部まで比較的均一に分布していることが好ましい。
【0045】
本発明の抗菌・消臭剤において前記酸化チタン系微粒子は、前記したように、シリカおよび/またはジルコニアをTiO2に対して0.1〜15重量%の範囲で含有することが好ましい。
また、前記酸化チタン系微粒子は無定型であることが好ましい。
【0046】
本発明に係る第2の抗菌・消臭剤は、前記抗菌・消臭剤が香料化合物を含有する水系分散媒中に分散していることを特徴としている。
水系分散媒としては、抗菌・消臭剤を均一に、且つ安定に分散させすることができれば特に制限はなく、通常、水、水とアルコール類の混合分散媒が好ましい。
アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の他、高級アルコール、多価アルコール、芳香族アルコール等が用いられる。また、必用に応じて、アルコール以外の添加剤を添加してもよい。
水系分散媒中の抗菌・消臭剤の濃度は、用途によっても異なるが、固形分として0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。
【0047】
香料化合物としては、特開2004−180979号公報に開示された香料化合物を好適に用いることができる。具体的には、2,4,6−トリメチル−2−フェニル−1,3−ジオキサン、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、メチルノニルアセトアルデヒド、ベンジルアルコール、3−メチル−5−フェニルペンタン−1−オール等が好適に用いることができる。
【0048】
このような香料化合物の配合量は、香料化合物の種類、用途、用法によっても異なるが、通常0.001〜2重量%、さらには0.01〜1重量%の範囲にあることが好ましい。
このような範囲で香料化合物を含んでいると、時間の経過によって香りが変化することもなく、異臭に対するマスキング力を有し、長期にわたって安定な芳香性を有するとともに、持続的な抗菌・消臭性能を有する抗菌・消臭剤が得られる。
【0049】
上記した第1の抗菌・消臭剤における抗菌・消臭成分を酸化チタン系微粒子に担持する方法としては、例えば前記特開2005−318999号公報(特許文献4)に開示した方法を採用することができる。
具体的には、例えば、負の電荷を有する酸化チタン微粒子が分散した分散液に、抗菌・消臭性成分の金属塩水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0050】
前記金属塩水溶液はアンミン錯塩水溶液が好ましい。アンミン錯塩水溶液を用いると酸化チタン系微粒子分散液の安定性を低下させたり、ゲル化させることなく長期にわたって安定な抗菌・消臭性能を有する抗菌・消臭性塗膜を製造することができる。安定性が低下した抗菌消臭剤、ゲル化した抗菌消臭剤は用途が制限されたり、抗菌性能、消臭性能が不充分となることがある。
好適なアンミン錯塩水溶液は、例えば、酸化亜鉛、酸化銀あるいは酸化銅などをアンモニア水に溶解することによって、亜鉛、銀あるいは銅等のアンミン錯塩水溶液を調製することができる。
【0051】
なお、前記した方法での抗菌消臭剤の調製に際し、水を分散媒とする酸化チタン系微粒子分散液の濃度は酸化物として5重量%以下、好ましくは、0.5重量%〜3重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭成分の金属塩水溶液の添加量は、抗菌・消臭成分の含有量が酸化チタン微粒子に対して、酸化物として0.1〜25重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲となるように添加する。
前述の方法で得られた水を分散媒とする抗菌・消臭成分を担持した酸化チタン微粒子分散液は、公知の方法、例えば限外濾過膜を用いて、所望の濃度に調整される。
【0052】
[抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液]
次に、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液について具体的に説明する。
本発明に係る抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液は、前記抗菌・消臭剤を含むものであり、特に、前記抗菌・消臭剤が水溶性金属キレート化合物を含有する水系分散媒中に分散してなることを特徴としている。
【0053】
抗菌・消臭剤
抗菌・消臭剤としては、前記した抗菌・消臭剤が用いられる。
水系分散媒
本発明に用いる水系分散媒としては、水、水とアルコールの混合分散媒が好ましい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、等が挙げられる。
混合分散媒の場合、混合比率は特に制限はないが、概ね水の割合が10重量%以上であることが好ましい。
【0054】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液の全固形分濃度は0.01〜20重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
全固形分濃度が0.01重量%未満の場合は、塗布して得られる抗菌・消臭性塗膜の膜厚が薄くなり、抗菌・消臭性能が不充分となるほか、膜の強度が不充分、基材表面に凹凸がある場合は表面の平坦性が不充分となる場合がある。
【0055】
全固形分濃度が20重量%を超えると、塗布液の安定性が不充分となったり、塗工性が低下し、得られる抗菌・消臭性塗膜の基材との密着性、表面平坦性、透明性、耐久性、クラック抑制等が低下するとともに抗菌性能、消臭性能が不充分となる場合がある。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の抗菌・消臭剤の濃度は固形分として0.005〜19.9重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の抗菌・消臭剤の濃度が固形分として0.005重量%未満の場合は、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の抗菌・消臭剤の濃度が固形分として19.9重量%を超えると、水溶性金属キレート化合物が制限されるが、この場合、塗布液の安定性、基材との密着性、透明性等が低下し膜強度が不充分となる場合がある。
【0056】
水溶性金属キレート化合物
本発明に用いる水溶性金属キレート化合物としては、金属がTi、Al、Zr、Si等である水溶性金属キレート化合物が挙げられる。なかでも、金属がTiである水溶性チタンキレート化合物は抗菌・消臭性能を低下させることがないので好適に使用することができる。
水溶性チタンキレート化合物としては、水溶性チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミン)、チタンラクテート等が挙げられる。
これらの水溶性チタンキレート化合物は、溶液自体も安定であるが、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液に用いた場合も、安定で、これを塗布して得られる抗菌・消臭性塗膜は基材との密着性、透明性、塗膜表面の平坦性に優れ、且つ、抗菌・消臭性能に優れている。
【0057】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度は0.0001〜10重量%、さらには0.0005〜8重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が0.0001重量%未満の場合は、塗布液の安定性、基材との密着性、透明性等が不充分となる場合がある。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が10重量%を超えると、塗布液の安定性がさらに向上することもなく、得られる抗菌・消臭性塗膜中の酸化チタン系微粒子の含有量が低下するために、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0058】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液中の抗菌・消臭剤(抗菌・消臭成分を含む酸化チタン系微粒子)の固形分としての重量(Wa)と水溶性金属キレート化合物のTiO2としての重量(Wb)の重量比(Wb)/(Wa)が0.005〜1.0、さらには0.01〜0.5の範囲にあることが好ましい。
前記重量比(Wb)/(Wa)が0.005未満の場合は、水溶性金属キレート化合物が少なくなり、塗布液の安定性、基材との密着性、透明性、表面平坦性等が低下したり、膜強度が不充分となる場合がある。
前記重量比(Wb)/(Wa)が1.0を超えると、塗布液の安定性がさらに向上することもなく、得られる抗菌・消臭性塗膜中の抗菌・消臭剤の含有量が低下するために、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0059】
さらに、本発明の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液には他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、顔料、分散材、界面活性剤等の他、通常塗料やインキに配合剤として用いられる成分が挙げられる。
【0060】
[抗菌・消臭性塗膜付基材]
次に、本発明に係る抗菌・消臭性塗膜付基材について説明する。
本発明に係る抗菌・消臭性塗膜付基材は、基材と、基材上に形成された抗菌・消臭性塗膜とからなり、該抗菌・消臭性塗膜が前記抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液を用いて形成された抗菌・消臭性塗膜であることを特徴としている。
【0061】
基材
基材としては、ガラス、金属、樹脂、セラミック、木、各種繊維、無機酸化物等の基材が挙げられる。
また、接着性樹脂フィルム等の一方の表面に抗菌・消臭性塗膜を形成した後、他の基材を張付けて使用することもできる。
【0062】
抗菌・消臭性塗膜中の抗菌・消臭剤の固形分としての含有量は50〜99.5重量%、さらには60〜96重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性塗膜中の抗菌・消臭剤の固形分としての含有量が50重量%未満の場合は、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
抗菌・消臭性塗膜中の抗菌・消臭剤の固形分としての含有量が99.5重量%を超えてもさらに抗菌消臭性能が向上することもなく、基材との密着性、透明性、表面平坦性、膜強度等が不充分となる場合がある。
【0063】
抗菌・消臭性塗膜中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量は0.5〜50重量%、さらには4〜40重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性塗膜中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が0.5重量%未満の場合は、基材との密着性、透明性、表面平坦性、膜強度等が不充分となる場合がある。
抗菌・消臭性塗膜中の水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が50重量%を超えると、抗菌・消臭剤の含有量が少ないために抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0064】
抗菌・消臭性塗膜の膜厚は0.1〜50μm、さらには0.1〜20μmの範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭性塗膜の膜厚が0.1μm未満の場合は、抗菌・消臭性能が不充分となる場合があり、長期に亘って高い抗菌・消臭性能を維持することができない場合がある。
抗菌・消臭性塗膜の膜厚が50μmを超えても、抗菌・消臭性能がさらに向上することもなく、塗膜にクラックが生じたり、透明性が低下するため用途が制限される場合がある。
【0065】
このような抗菌・消臭性塗膜付基材は、前記抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液を、ディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコーター法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理して硬化させることによって製造することができる。
【0066】
本発明の抗菌・消臭剤、抗菌・消臭性塗膜において抗菌の対象となる菌類としては、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌、プロテウス菌、肺炎桿菌、枯草菌等、真菌としては黒かび、黒麹かび、白かび等、ウイルスとしてはインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス等、藻類としてはクロレラ等が挙げられる。
また、消臭の対象となる臭気成分としては、法定悪臭8物質(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化ジメチル、アンモニア、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン)、炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール類、エステル類、窒素化合物、硫黄化合物、低級脂肪酸等が挙げられる。
【0067】
本発明の抗菌・消臭性塗膜は、居住空間、公共施設、医療施設、養護施設、自動車内装等において、抗菌性能とともに消臭性能が求められる箇所において特に有用である。
【実施例】
【0068】
[実施例1]
酸化チタン系微粒子(1)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の硫酸チタニル水溶液1600gを調製し、温度15℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を15℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
【0069】
ついで、洗浄した酸化チタン水和物ゲルスラリーを用い、TiO2として濃度1重量%、2000gの水和酸化チタン水和物分散液を調製し、これに濃度35重量%の過酸化水素水140gを添加し、50℃、1時間で溶解した。
この時、モル比(MH2O2)/(MTiO2)=5.8であった。(工程(d))
ついで、温度80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去しながら1時間熟成した。(工程(e))
【0070】
ついで、純水を用い、限外濾過膜法で洗浄して、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(1)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(1)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を測定し、結果を表に示した。
ここで、収率は、得られた酸化チタン系微粒子(1)の固形分(TiO2)重量を使用酸化チタン(TiO2)重量で除して求めた。
【0071】
なお、結晶性はX線解析スペクトルよって測定し、以下の基準で評価した。
X線解析ピークが高い :S(結晶性が高い)
X線解析ピークが中程度:M(結晶性が中程度)
X線解析ピークが低い :W(結晶性が低い)
X線解析ピークが殆ど認められない :Am(無定型)
【0072】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(1)分散液の調製
TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(1)分散液1910gに抗菌・消臭成分として銀アンモニウム溶液(酸化銀、0.9gに純水89.1gを加え、15%アンモニア溶液、13.5gを1時間で添加して調製した溶液)を酸化チタン系微粒子(1)分散液に添加し、95℃で4時間熟成、限外濾過膜法により、5000gの純水で洗浄し、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(1)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(1)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を測定し、結果を表に示した。
【0073】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製
イオン交換水89.5重量部に固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(1)10重量部を配合し、充分に分散させた後、これに水溶性金属キレート化合物としてチタンラクテートアンモニウム塩溶液(マツモトファインケミカル(株)製:オルガチックスTC-300、チタンラクテートアンモニウム塩42重量%、水20重量%、イソプロピルアルコール38重量%、TiO2としての濃度10.0重量%)0.5重量部を添加して、固形分濃度0.2重量%の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0074】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1)の安定性を下記の方法で評価した。
安定性評価
ガラスの密閉容器にて、50℃で1週間放置後、目視にて確認した。
ゲル化なし :◎
ゲル化、薄く白濁:○
ゲル化、白濁分離:△
ゲル化、白濁沈殿:×
【0075】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)の調製
イオン交換水90重量部に固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(1)10重量部を配合し、充分に分散させて、固形分濃度0.15重量%の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)の安定性は表に示した。
【0076】
抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成
厚さ0.105mmの工業用純アルミニウム板を脱脂し、苛性処理し、充分に水で洗浄して乾燥したアルミニウム基材表面に抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)をバーコーター法で膜厚が約10μmになるように塗布し、120℃で2分間乾燥した。次いで200℃で2分間加熱処理して抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。なお、評価方法、評価基準は以下に示す。
【0077】
抗菌・消臭性塗膜付基材(1-2)の作成
厚さ0.105mmの工業用純アルミニウム板を脱脂し、苛性処理し、充分に水で洗浄して乾燥したアルミニウム基材表面に抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)をバーコーター法で膜厚が約10μmになるように塗布し、120℃で2分間乾燥した。次いで200℃で2分間加熱処理して抗菌・消臭性塗膜付基材(1-2)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(1-2)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0078】
膜厚
垂直に切断した膜の断面を走査型電子顕微鏡観察により観察して測定した。
【0079】
密着性
JIS K 5400に基づく基盤目試験に準拠し、抗菌・消臭性塗膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数93〜99個:○
残存升目の数85〜92個:△
残存升目の数84個以下 :×
【0080】
平坦性
触針式表面荒さ計(東京精密(株)製:サーフコム)で表面の平均荒さを評価した。
【0081】
抗菌性能
JIS Z2801に準拠し、抗菌・消臭性塗膜付基材(1)に菌懸濁液、0.4mlを接種し、その上に被覆フィルムを被せて蓋をした後、35±1℃、RH90以上で24時間放置後、菌懸濁液を回収して生菌数を測定し、次式(1)の殺菌活性値により抗菌性能を評価した。結果を表に示す。
試験菌には、黄色ぶどう球菌、大腸菌、およびMRSAを用い、菌懸濁液の栄養として、肉エキス(3g/L)+ペプトン(10g/L)+塩化ナトリウム(5g/L)を100倍に薄めたものを使用した。
殺菌活性値=Log(植菌数)−Log(試験片生菌数) ・・・(1)
【0082】
消臭性能
試験臭(1):アセトアルデヒド(初期濃度:60ppm)
試験方法:1Lテドラーバッグに検体(10cm×10cm)を入れ、臭気1Lを添加後、室温にて、紫外線照射下(1.0mW/cm2)で放置。24時間後、検知管にて臭気残存濃度(消臭率)及び二酸化炭素濃度(ppm)を測定した。
【0083】
試験臭(2,3):硫化水素(初期濃度:4ppm)、アンモニア(初期濃度:100ppm)
試験方法:5Lテドラーバッグに検体(10cm×10cm)を入れ、臭気3Lを添加後、室温にて、蛍光灯照射下で放置。2時間後検知管にて臭気残存濃度(消臭率)を測定した。
【0084】
[実施例2]
酸化チタン系微粒子(2)分散液の調製
実施例1と同様にして、固形分(TiO2)濃度1重量%、1626gの酸化チタン系微粒子(1)分散液を調製し、これにシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SN-350、平均粒子径7nm、SiO2濃度16.7重量%)17gを混合、80℃で1時間熟成して、固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(2)分散液を調製した。
酸化チタン系微粒子(2)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。酸化チタン系微粒子(2)の組成は、TiO2濃度が85.2重量%、SiO2濃度が14.8重量%であった。
【0085】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(2)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(2)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(2)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(2)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を測定し、結果を表に示した。抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(2)の組成は、TiO2濃度が81.4重量%、SiO2濃度が14.1重量%、Ag2O濃度が4.5重量%であった。
【0086】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(2)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(2)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(2)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0087】
抗菌・消臭性塗膜付基材(2)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(2)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(2)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0088】
[実施例3]
酸化チタン系微粒子(3)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の硫酸チタニル水溶液1600gを調製し、温度5℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を5℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
以下、実施例1と同様にして、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(3)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(3)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0089】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(3)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(3)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(3)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(3)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0090】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(3)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(3)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(3)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0091】
抗菌・消臭性塗膜付基材(3)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(3)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(3)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0092】
[実施例4]
酸化チタン系微粒子(4)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の硫酸チタニル水溶液1600gを調製し、温度25℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を25℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
以下、実施例1と同様にして、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(4)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(4)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0093】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(4)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(4)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(4)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(4)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0094】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(4)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(4)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(4)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0095】
抗菌・消臭性塗膜付基材(4)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(4)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(4)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0096】
[実施例5]
酸化チタン系微粒子(5)分散液の調製
TiO2として濃度1.0重量%の硫酸チタニル水溶液8000gを調製し、温度10℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を10℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
以下、実施例1と同様にして、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(5)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(5)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0097】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(5)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(5)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(5)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(5)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0098】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(5)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(5)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(5)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(5)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0099】
抗菌・消臭性塗膜付基材(5)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(5)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(5)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0100】
[実施例6]
酸化チタン系微粒子(6)分散液の調製
TiO2として濃度15重量%の硫酸チタニル水溶液530gを調製し、温度10℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を10℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
以下、実施例1と同様にして、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(6)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(6)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0101】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(6)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(6)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(6)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(6)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0102】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(6)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(6)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(6)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(6)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0103】
抗菌・消臭性塗膜付基材(6)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(6)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(6)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0104】
[実施例7]
酸化チタン系微粒子(7)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の硫酸チタニル水溶液1600gを調製し、温度15℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を15℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は 3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
【0105】
ついで、洗浄した酸化チタン水和物ゲルスラリーを用い、TiO2として濃度1重量%、2000gの水和酸化チタン水和物分散液を調製し、これに濃度35重量%の過酸化水素水48.5gを添加し、50℃、1時間で溶解した。
この時、モル比(MH2O2)/(MTiO2)=2.0であった。(工程(d))
ついで、温度80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去しながら1時間熟成した。(工程(e))
ついで、純水を用い、限外濾過膜法で洗浄して、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(7)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(7)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0106】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(7)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(7)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(7)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(7)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0107】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(7)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(7)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(7)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0108】
抗菌・消臭性塗膜付基材(7)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(7)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(7)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0109】
[実施例8]
酸化チタン系微粒子(8)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の硫酸チタニル水溶液1600gを調製し、温度15℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を15℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は 3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
【0110】
ついで、洗浄した酸化チタン水和物ゲルスラリーを用い、TiO2として濃度1重量%、2000gの水和酸化チタン水和物分散液を調製し、これに濃度35重量%の過酸化水素水220gを添加し、50℃、1時間で溶解した。
この時、モル比(MH2O2)/(MTiO2)=9.0であった。(工程(d))
ついで、温度80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去しながら1時間熟成した。(工程(e))
ついで、純水を用い、限外濾過膜法で洗浄して、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(8)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(8)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0111】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(8)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(8)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(8)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(8)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0112】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(8)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(8)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(8)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0113】
抗菌・消臭性塗膜付基材(8)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(8)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(8)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0114】
[実施例9]
酸化チタン系微粒子(9)分散液の調製
実施例1において、工程(e)の温度を50℃で実施した以外は同様にしてTiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(9)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(9)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0115】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(9)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(9)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(9)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(9)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0116】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(9)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(9)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(9)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(9)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0117】
抗菌・消臭性塗膜付基材(9)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(9)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(9)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0118】
[実施例10]
酸化チタン系微粒子(10)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の四塩化チタン水溶液1600gを用いた以外は実施例1と同様にしてTiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(10)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(10)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0119】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(10)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(10)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(10)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(10)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0120】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(10)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(10)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(10)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(10)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0121】
抗菌・消臭性塗膜付基材(10)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(10)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(10)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0122】
[実施例11]
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(11)分散液の調製
実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(1)分散液を調製し、分散液100gに香料化合物として2,4,6−トリメチル−2−フェニル−1,3−ジオキサンを0.02g添加して固形分濃度1.52重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(11)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(11)分散液は、芳香を発した。
【0123】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(11)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-1)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(11)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(11)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(11)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0124】
抗菌・消臭性塗膜付基材(11)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-1)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(11)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(11)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(11)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0125】
[比較例1]
酸化チタン系微粒子(R1)分散液の調製
TiO2として濃度5.0重量%の硫酸チタニル水溶液1600gを調製し、温度35℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を35℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
【0126】
ついで、洗浄した酸化チタン水和物ゲルスラリーを用い、TiO2として濃度1重量%、2000gの水和酸化チタン水和物分散液を調製し、これに濃度35重量%の過酸化水素水140gを添加し、50℃、1時間で溶解した。
この時、モル比(MH2O2)/(MTiO2)=5.8であった。(工程(d))
ついで、温度80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去しながら1時間熟成した。(工程(e))
ついで、純水を用い、限外濾過膜法で洗浄して、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(R1)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(R1)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0127】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R1)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(R1)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R1)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R1)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0128】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R1)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R1)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R1)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0129】
抗菌・消臭性塗膜付基材(R1)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-2)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(R1)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(R1)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0130】
[比較例2]
酸化チタン系微粒子(R2)分散液の調製
TiO2として濃度0.2重量%の硫酸チタニル水溶液40000gを調製し、温度15℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を15℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
【0131】
ついで、洗浄した酸化チタン水和物ゲルスラリーを用い、TiO2として濃度1重量%、2000gの水和酸化チタン水和物分散液を調製し、これに濃度35重量%の過酸化水素水140gを添加し、50℃、1時間で溶解した。
この時、モル比(MH2O2)/(MTiO2)=5.8であった。(工程(d))
ついで、温度80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去しながら1時間熟成した。(工程(e))
ついで、純水を用い、限外濾過膜法で洗浄して、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(R2)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(R2)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0132】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R2)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(R2)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R2)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R2)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0133】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R2)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R2)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R2)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0134】
抗菌・消臭性塗膜付基材(R2)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-2)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(R2)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(R2)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0135】
[比較例3]
酸化チタン系微粒子(R3)分散液の調製
TiO2として濃度25重量%の硫酸チタニル水溶液320gを調製し、温度15℃に調整した。(工程(a))
ついで、温度を15℃に維持しながら、濃度15重量%のアンモニア水360gを1時間で添加して酸化チタン水和物ゲルスラリーを調製した。この時、モル比(MNH3)/(MTiO2)=3.2、添加時間は3.2時間/モル(MNH3)であった。(工程(b))
ついで、酸化チタン水和物ゲルスラリーを濾過し、60℃の温水8000gを掛けて洗浄した。(工程(c))
【0136】
ついで、洗浄した酸化チタン水和物ゲルスラリーを用い、TiO2として濃度1重量%、2000gの水和酸化チタン水和物分散液を調製し、これに濃度35重量%の過酸化水素水140gを添加し、50℃、1時間で溶解した。
この時、モル比(MH2O2)/(MTiO2)=5.8であった。(工程(d))
ついで、温度80℃で撹拌しながら過酸化水素を除去しながら1時間熟成した。(工程(e))
ついで、純水を用い、限外濾過膜法で洗浄して、TiO2として濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(R3)分散液を得た。酸化チタン系微粒子(R3)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性、収率を表に示した。
【0137】
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R3)分散液の調製
固形分濃度1重量%の酸化チタン系微粒子(R3)分散液を用いた以外は実施例1と同様にして固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R3)分散液を調製した。
抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R3)の平均粒子径、粒子径分布、結晶性を分析し、結果を表に示した。
【0138】
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(1-2)の調製において、固形分濃度1.5重量%の抗菌・消臭性酸化チタン系微粒子(R3)分散液を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R3)を調製した。
抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R3)の安定性を評価し、結果を表に示した。
【0139】
抗菌・消臭性塗膜付基材(R3)の作成
実施例1の抗菌・消臭性塗膜付基材(1-2)の作成において、抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性塗膜付基材(R3)を作成した。
得られた抗菌・消臭性塗膜付基材(R3)について、膜厚、密着性、表面平坦性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(a)〜(e)からなることを特徴とする酸化チタン系微粒子の製造方法。
(a)TiO2としての濃度が0.5〜20重量%のチタニウム化合物水溶液を調製する工程。
(b)チタニウム化合物水溶液の温度を0〜30℃の範囲に維持しながら、チタニウム化合物のTiO2としてのモル数(MTiO2)を1としたとき、添加するアンモニア水溶液のアンモニアのモル数(MNH3)が1〜10の範囲となり、1〜10時間/1モル(MNH3)の速度でアンモニア水溶液を添加して酸化チタン水和物を調製する工程。
(c)酸化チタン水和物を洗浄する工程。
(d)TiO2としての濃度が0.1〜10重量%の酸化チタン水和物分散液に、過酸化水素水を、酸化チタン水和物のTiO2としてのモル数(MTiO2)と過酸化水素のモル数(MH2O2)とのモル比(MH2O2)/(MTiO2)が1〜10の範囲となるように添加し、温度10〜100℃で溶解する工程。
(e)温度30〜100℃で撹拌しながら過酸化水素を除去し、熟成する工程。
【請求項2】
前記工程(e)についで、下記の工程(f)を行うことを特徴とする請求項1に記載の酸化チタン系微粒子の製造方法。
(f)シリカゾルおよび/またはジルコニアゾルをTiO2に対して0.1〜15重量%となるように添加する工程。
【請求項3】
前記工程(f)についで、下記の工程(g)を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化チタン系微粒子の製造方法。
(g)温度30〜80℃で熟成する工程。
【請求項4】
前記酸化チタン系微粒子が無定型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化チタン系微粒子の製造方法。
【請求項5】
平均粒子径(D)が3〜10nmの範囲にあり、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン系微粒子の個数割合が70%以上であることを特徴とする酸化チタン系微粒子。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの方法によって得られたことを特徴とする請求項5に記載の酸化チタン系微粒子。
【請求項7】
抗菌・消臭性成分を酸化物換算で0.1〜25重量%の範囲で含む酸化チタン系微粒子であって、平均粒子径(D)が3〜10nmの範囲にあり、平均粒子径(D)±2nmの粒子径を有する酸化チタン微粒子の個数割合が70%以上であることを特徴とする抗菌・消臭剤。
【請求項8】
前記抗菌・消臭性成分が銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の成分であることを特徴とする請求項7に記載の抗菌・消臭剤。
【請求項9】
前記酸化チタン系微粒子がシリカおよび/またはジルコニアをTiO2に対して0.1〜15重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項7または8に記載の抗菌・消臭剤。
【請求項10】
前記酸化チタン系微粒子が無定型であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の抗菌・消臭剤。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載の抗菌・消臭剤が香料化合物を含有する水系分散媒中に分散してなることを特徴とする抗菌・消臭剤。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載の抗菌・消臭剤を含んでなることを特徴とする抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項13】
水溶性金属キレート化合物を含んでなることを特徴とする請求項12に記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項14】
前記水溶性金属キレート化合物がチタンキレート化合物であることを特徴とする請求項13に記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項15】
前記チタンキレート化合物がチタンラクテートアンモニウム塩であることを特徴とする請求項13または14に記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項16】
全固形分濃度が0.01〜20重量%の範囲にあり、前記抗菌・消臭剤の固形分としての濃度が0.005〜19.9重量%の範囲にあり、前記水溶性金属キレート化合物のTiO2としての濃度が0.0001〜10.0重量%の範囲にあり、抗菌・消臭剤の重量(Wa)と水溶性金属キレート化合物のTiO2としての重量(Wb)の重量比(Wb)/(Wa)が0.005〜1.0の範囲にあることを特徴とする請求項13〜15のいずれかに記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液。
【請求項17】
基材と、基材上に形成された抗菌・消臭性塗膜とからなり、該抗菌・消臭性塗膜が請求項12〜16のいずれかに記載の抗菌・消臭性塗膜形成用塗布液を用いて形成された抗菌・消臭性塗膜であることを特徴とする抗菌・消臭性塗膜付基材。
【請求項18】
前記抗菌・消臭性塗膜中の抗菌・消臭剤の固形分としての含有量が50〜99.5重量%の範囲にあり、水溶性金属キレート化合物のTiO2としての含有量が0.5〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項17に記載の抗菌・消臭性塗膜付基材。

【公開番号】特開2011−236106(P2011−236106A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111489(P2010−111489)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】