説明

酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液、酸化チタン系抗菌・消臭剤付繊維および布

【課題】抗菌性能と併せて酸性および塩基性臭気成分を分解することのできる抗菌・消臭剤分散液の提供。
【解決手段】抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子と酸性物質吸着性微粒子とが水に分散したものである。抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の濃度(C)は0.01〜20重量%の範囲にあり、酸性物質吸着性微粒子の濃度(C)は0.001〜10重量%の範囲にあり、濃度(C)と濃度(C)との比(C)/(C)が0.01〜2の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性能と併せて揮発性有機化合物(VOC)、アンモニア等の酸性臭気成分および塩基性臭気成分を分解することのできる抗菌・消臭剤の分散液と抗菌・消臭剤を担持した抗菌・消臭性繊維および布に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、清潔志向、衛生志向、安全志向、快適志向等生活環境の向上が求められている。
従来、シリカゲル、複合酸化物、酸化チタン等の粉末、あるいはコロイド粒子に抗菌性を有する銀、銅、亜鉛等の金属成分を担持した抗菌性組成物が知られている。
【0003】
例えば、本願出願人は無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌剤(特開平6−80527号公報:特許文献1)あるいはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムに抗菌性を有する金属イオンをイオン交換した抗菌剤(特開平3−275627号公報:特許文献2)を開示している。
抗菌効果の持続性および抗菌物質の安定性を改善する目的で、抗菌性の金属イオンをゼオライトあるいはアルミノ珪酸塩に担持した抗菌性組成物も知られている(特開平1−283204号公報:特許文献3)。
【0004】
また、本願出願人は、金属成分と該金属成分以外の無機酸化物とから構成される無機酸化物微粒子であって、前記無機酸化物が酸化チタンとシリカおよび/またはジルコニアとを含んでなり、該酸化チタンが結晶性酸化チタンである抗菌性消臭剤を開示している(特開2005−318999号公報:特許文献4)。この抗菌性消臭剤は抗菌性能の他、揮発性有機化合物(VOC)の分解による消臭性能を有することを開示している。
【0005】
上記した本願出願人の結晶性酸化チタンを含む抗菌性消臭剤は優れた抗菌性能および消臭性能を有しているが、金属成分によっては抗菌性能は高いが消臭性が不充分となる場合があった。このため、消臭性能に優れた金属成分に変更すると抗菌性能が不充分となる問題があった。
【0006】
さらに、近年、抗菌性能、消臭性能を有する衣類、肌着等が求められており、アンモニア等の塩基性臭気成分の消臭性能には優れているが、酢酸等の酸性臭気成分の消臭性能が不充分であったり、その逆の場合があり、塩基性臭気成分と酸性臭気成分とを同時に満足できる程度に消臭できない場合があった。
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子にアルミナ微粒子を混合して用いると酸性臭気成分の消臭率が大きく向上するとともに、繊維への付着性を低下させることなく長期に亘って抗菌・消臭性能を維持できることを見出して本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−80527号公報
【特許文献2】特開平3−275627号公報
【特許文献3】特開平1−283204号公報
【特許文献4】特開2005−318999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は抗菌性能と併せて酸性および塩基性臭気成分を分解することのできる抗菌・消臭剤分散液および該抗菌・消臭剤を担持した抗菌・消臭性繊維および布を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液は、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子と酸性物質吸着性微粒子とが水に分散したことを特徴としている。
前記抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の濃度(C)が0.01〜20重量%の範囲にあり、酸性物質吸着性微粒子の濃度(C)が0.001〜10重量%の範囲にあり、濃度(C)と濃度(C)との比(C)/(C)が0.01〜2の範囲にあることが好ましい。
【0011】
前記酸性物質吸着性微粒子がアルカリ含有シリカ微粒子であることが好ましい。
前記酸性物質吸着性微粒子がアルミナ微粒子であることが好ましい。
前記抗菌・消臭性金属成分が銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の平均粒子径が2〜50nmの範囲にあることが好ましい。
【0012】
前記抗菌・消臭性金属成分の担持量が抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子中に金属として0.1〜20重量%の範囲であることが好ましい。
前記酸化チタン系微粒子が無定型であることが好ましい。
前記酸化チタン系微粒子がシリカおよび/またはジルコニアを含み、酸化チタン系微粒子中のシリカおよび/またはジルコニアの含有量が酸化物として1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0013】
本発明に係る抗菌・消臭性繊維または布は、前記いずれかの酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液を塗布してなることを特徴としている。
前記酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の塗布量が酸化チタン系抗菌・消臭剤の固形分として0.01〜2重量%の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、抗菌性能と併せて酸性臭気成分および塩基性臭気成分を分解することのできる抗菌・消臭剤分散液および該抗菌・消臭剤を担持した抗菌・消臭性繊維および布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、まず、本発明に係る酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液について説明する。
[酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液]
本発明に係る酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液は、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子と酸性物質吸着性微粒子とが水に分散したことを特徴としている。
【0016】
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子
本発明の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子は、酸化チタン系微粒子に抗菌・消臭性金属成分が担持されている。
本発明に用いる酸化チタン系微粒子としては酸化チタン微粒子、酸化チタン以外の酸化物を含む酸化チタン微粒子があり、該酸化チタン以外の酸化物としてはシリカおよび/またはジルコニアが挙げられる。
この時の酸化チタン系微粒子中の酸化チタンの含有量は50重量%以上、さらには70〜95重量%の範囲にあることが好ましい。
酸化チタン系微粒子中の酸化チタンの含有量が50重量%未満の場合は、充分な抗菌性能、消臭性能が得られないことがある。
【0017】
シリカを含むことによって、酸化チタン系微粒子分散液の安定性が向上し、また耐光性、耐候性が向上する傾向がある。また、ジルコニアを含むことによって酸化チタン系微粒子分散液の安定性が向上し、また耐光性、耐候性が向上する傾向があり、抗菌成分の種類によっては変色を抑制することができる。
上記した酸化チタン系微粒子は、本願出願人による特開昭63−185820号公報、特開2005−318999号公報(特許文献4)等に開示した方法に準じて得ることができる。
【0018】
酸化チタン系微粒子は、平均粒子径が概ね2〜50nm、さらには5〜40nmの範囲にあることが好ましい。
酸化チタン系微粒子の平均粒子径が2nm未満の場合は、酸化チタン系微粒子が凝集する傾向があり、後述する抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子を繊維あるいは布に塗布して担持した場合に、付着性が不充分となり、使用に伴い粒子が脱落しやすく、消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
酸化チタン系微粒子の平均粒子径が50nmを越えても繊維あるいは布への付着性が不充分となるとともに粒子の有効な外部表面積の低下により消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
【0019】
前記酸化チタン系微粒子は無定型であることが好ましい。
酸化チタン系微粒子が無定型であると、理由は明らかではないがアナタース型、ルチル型等の結晶性酸化チタン系微粒子を用いた場合に比較して特に消臭性能に優れた抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子を得ることができる。
無定型酸化チタン系微粒子は、本願出願人の出願による特開昭63−185820号公報、特開2005−318999号公報等に開示した方法に準じて得ることができる。重要な点は、無定型酸化チタン系微粒子を結晶化させないことであり、例えば酸化チタン系微粒子の酸化チタンの含有量、平均粒子径等によっても異なるが、水熱処理する際に、結晶化しない範囲で低温、短時間処理することが好ましい。
【0020】
抗菌・消臭性金属成分としては銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種または2種以上の抗菌・消臭性金属成分を含むことが好ましい。なかでも銀または亜鉛は抗菌性能と消臭性能のいずれも優れているので好ましい。特に亜鉛の場合は全く変色することもないので好適に採用することができる。
このような抗菌・消臭性金属成分はイオン、酸化物、水酸化物等の化合物またはこれらの混合物のいずれの形態で存在していてもよい。抗菌性の観点からはイオンの形態が好ましく、酸化物であれば消臭性にも優れた抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子が得られる。
【0021】
また、抗菌・消臭性金属成分は酸化チタン系微粒子の表層に存在するか、酸化チタン系微粒子の内部まで比較的均一に分布していることが好ましい。
抗菌・消臭性金属成分を酸化チタン系微粒子に担持する方法としては、例えば前記特開2005−318999号公報に開示した方法を採用することができる。
具体的には、例えば、負の電荷を有する酸化チタン微粒子が分散した分散液に、抗菌・消臭性成分の金属塩水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0022】
前記金属塩水溶液はアンミン錯塩水溶液が好ましい。アンミン錯塩水溶液を用いると酸化チタン系微粒子分散液の安定性を低下させたり、ゲル化させることなく長期にわたって安定な抗菌・消臭性能を有する抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子を製造することができる。
好適なアンミン錯塩水溶液は、例えば、酸化亜鉛、酸化銀あるいは酸化銅などをアンモニア水に溶解することによって、亜鉛、銀あるいは銅等のアンミン錯塩水溶液を調製することができる。
【0023】
なお、前記した方法での抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子分散液の調製に際し、水を分散媒とする酸化チタン系微粒子分散液の濃度は酸化物として5重量%以下、好ましくは、0.5重量%〜3重量%の範囲にあることが好ましい。
前述の方法で得られた水を分散媒とする抗菌・消臭性金属成分を担持した酸化チタン系微粒子分散液は、公知の方法、例えば限外濾過膜を用いて、所望の濃度に調整される。
【0024】
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子中の抗菌・消臭性金属成分の含有量は酸化物として0.1〜20重量%、さらには1〜15重量%の範囲にあることが好ましい。
抗菌・消臭金属成分の含有量が0.1重量%よりも少ない場合には充分な抗菌・消臭性能が得られにくい。
抗菌・消臭性金属成分の含有量が20重量%よりも多い場合には、さらに消臭性能および抗菌性能が向上することもなく、むしろ抗菌・消臭金属成分が凝集するためかこれら性能が低下する場合がある。
【0025】
酸性物質吸着性微粒子
本発明の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液には酸性物質吸着性微粒子が含まれている。
酸性物質吸着性微粒子としては、後述する臭気成分、特に酸性物質を吸着することができれば特に制限はないが、本発明では、アルカリ含有シリカ微粒子および/またはアルミナ微粒子が好適に用いられる。
【0026】
アルカリ含有シリカ微粒子
アルカリ含有シリカ微粒子としては、アルカリを含むシリカゾルが好ましい。
アルカリ含有シリカ微粒子中のアルカリの含有量はMO(M:アルカリ金属)として0.1〜30重量%、さらには10.0〜25重量%の範囲にあることが好ましい。
アルカリ含有シリカ微粒子中のアルカリの含有量がMOとして0.1重量%未満の場合は酸性臭気成分の吸着量が低いためか酸性臭気成分の消臭性能が不充分となる場合がある。
アルカリ含有シリカ微粒子中のアルカリの含有量がMOとして30重量%を越えると、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の安定性が不充分となったり、抗菌性能が不充分となる場合がある。
【0027】
アルカリ含有シリカ微粒子の平均粒子径は抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子と同程度か小さいことが好ましく、概ね2〜50nm、さらには5〜40nmの範囲にあることが好ましい。
アルカリ含有シリカ微粒子の平均粒子径が2nm未満の場合は酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の安定性が不充分となる場合があり、50nmを越えると酸性臭気成分の吸着量が不充分となるためか酸性臭気成分の消臭性能が不充分となる場合がある。
このようなアルカリ含有シリカ微粒子は、従来公知のシリカゾルの製造方法によって製造することができ、必要に応じて、アルカリを含むシリカゾルを陽イオン交換樹脂等によって処理してアルカリ含有量を調整することができる。
【0028】
アルミナ微粒子
アルミナ微粒子としては、従来公知のアルミナ微粒子を用いることができる。本発明では、アルミナ水和物微粒子、特に擬ベーマイトアルミナ水和物微粒子が好ましい。
擬ベーマイトアルミナ水和物(Al・nHO、n=0.5〜2.5)は結晶性アルミナ水和物の一種で、通常、繊維状の一次粒子が束になった繊維状の二次粒子である。
アルミナ水和物微粒子の形状、大きさ等については特に制限はないが下記のものが好適に用いられる。
【0029】
擬ベーマイトアルミナ水和物微粒子の一次粒子の大きさは、平均長さ(L)が1〜20nm、さらには2〜15nmの範囲にあることが好ましく、平均幅(W)が0.5〜10nm、さらには1〜8nmの範囲にあることが好ましい。また、この時、長さと径の比(L)/(W)(アスペクト比ということがある)は2〜40の範囲にあることが好ましい。一次粒子の大きさのは、アルミナ水和物微粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、100個の粒子について幅および長さを測定し、各々の平均値として求めることができる。
【0030】
また、アルミナ水和物微粒子の二次粒子の大きさは、2〜500nm、さらには5〜300nmの範囲にあることが好ましい。
アルミナ水和物微粒子の二次粒子の大きさが前記範囲にあれば、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の安定性を阻害することなく、酸性臭気成分の吸着量が高く、酸性臭気成分の消臭性能に優れた酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液を得ることができる。
本発明では、二次粒子の大きさはレーザー法粒子径分布測定装置(HORIBA(株)製:LA−950v2)により測定した。
【0031】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液中の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の濃度(C)は固形分として0.01〜20重量%、さらには0.1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液中の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の濃度(C)が固形分として0.01重量%未満の場合は、後述する抗菌・消臭性繊維または布を製造した際、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の塗布量が少なく、抗菌・消臭性金属成分の担持量によっても異なるが、抗菌・消臭性能が不充分となる場合がある。
【0032】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液中の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の濃度(C)が固形分として20重量%を越えると、後述する抗菌・消臭性繊維または布を製造した際、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の塗布量が多くなるもののさらに抗菌、消臭性能が向上することもなく、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の安定性が不充分となる場合があり、安定性が低い分散液を用いた場合、塗布の均一性が低下したり、付着性が不充分となり、使用に伴い粒子が脱落しやすく、消臭性能、抗菌性能を長期に維持することできない場合がある。
【0033】
つぎに、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液中の酸性物質吸着性微粒子の濃度(C)は、固形分として0.001〜10重量%、さらには0.01〜8重量%の範囲にあることが好ましい。
酸性物質吸着性微粒子の濃度(C)が固形分として0.001重量%未満の場合は、抗菌性能は得られるものの酸性臭気成分の吸着性能が不充分となり、酸性臭気成分の消臭性能が不充分となる場合がある。
酸性物質吸着性微粒子の濃度(C)が固形分として10重量%を越えると、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の安定性が不充分となり、繊維あるいは布に塗布して担持した場合に、塗布の均一性が低下したり、付着性が不充分となり、使用に伴い粒子が脱落しやすく、消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
【0034】
また、前記濃度(C)と濃度(C)との固形分としての重量比(C)/(C)が0.01〜2、さらには0.05〜0.5の範囲にあることが好ましい。
前記比(C)/(C)が0.01未満の場合は、酸性臭気成分の分解性能はあるものの酸性臭気成分の吸着が不充分となるためか酸性臭気成分の消臭性能が不充分となる場合がある。
前記比(C)/(C)が2を越えても、さらに酸性臭気成分の吸着量は充分であるものの酸性臭気成分の分解性能が不充分となり、結果的に消臭性能が不充分となる場合があり、さらに、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の安定性が低下し、前記したように塗布の均一性が低下したり、付着性が不充分となり、使用に伴い粒子が脱落しやすく、消臭性能、抗菌性能が不充分となることがある。
【0035】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の濃度は、全固形分濃度として0.011〜30重量%、さらには0.11〜18重量%の範囲にあることが好ましい。
本発明では、前記酸性物質吸着性微粒子としてアルカリ含有シリカ微粒子とアルミナ微粒子とを別々に使用することもできるし、混合して用いることもできる。
なお、混合して用いる場合は、安定性の観点から酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液の合計濃度が概ね10重量%以下であることが好ましい。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液は、分散媒は主に水が用いられるが、必要に応じて水とアルコールの混合分散媒を用いることもできる。
【0036】
さらに、本発明の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液には他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、顔料、分散材、界面活性剤等の他、通常塗料やインキに配合剤として用いられる成分等が挙げられる。
上記した酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコーター法等の周知の方法で繊維、布に塗布し、乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理によって固着させることによって抗菌・消臭性繊維および布を製造することができる。
【0037】
つぎに、本発明に係る抗菌・消臭性繊維および布について説明する。
[抗菌・消臭性繊維および布]
本発明に係る抗菌・消臭性繊維および布は、前記したいずれかの酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液を塗布してなることを特徴としている。
【0038】
繊維および布
繊維としては、天然繊維、合成繊維等、従来公知の繊維を用いることができる。
天然繊維としては、例えば、綿、麻、リンネル、羊毛、絹、カシミヤ、石綿、ガラス繊維等を挙げることができる。
合成繊維としては、例えば、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン等を挙げることができる。
また、布としては前記繊維を用いた布が挙げられる。
抗菌・消臭性繊維および布は、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコーター法等の周知の方法で塗布し、乾燥し、さらに必要に応じて加熱処理によって固着させることによって製造することができる。
【0039】
抗菌・消臭性繊維および布中の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の付着量(W)は、固形分として0.01〜2重量%、さらには0.05〜1.5重量%の範囲にあることが好ましい。
また、抗菌・消臭性繊維および布中の酸性物質吸着成分の付着量(W)は固形分として、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子との重量比(W)/(W)が0.01〜2、さらには0.05〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0040】
本発明の抗菌・消臭性繊維において抗菌の対象となる菌類としては、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌、プロテウス菌、肺炎桿菌、枯草菌等、真菌としては黒かび、黒麹かび、白かび等、ウイルスとしてはインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス等、藻類としてはクロレラ等が挙げられる。
また、消臭の対象となる臭気成分としては、法定悪臭8物質(硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化ジメチル、アンモニア、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、スチレン)、炭化水素、ケトン、アルデヒド、アルコール類、エステル類、窒素化合物、硫黄化合物、低級脂肪酸等が挙げられる。
【0041】
本発明の抗菌・消臭性繊維または布は、衣服、肌着、下着等の他、居住空間、公共施設、医療施設、養護施設、自動車内装等において、抗菌性能とともに消臭性能が求められる箇所においても有用である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液の調製
硫酸チタンを水に溶解し、TiO2として1.0重量%を含む水溶液を準備した。この溶液に、攪拌しながら濃度15重量%のアンモニア水を徐々に添加し、白色スラリー液を得、このスラリー液をガラスフィルターでろ過し、ケーキを水で十分洗浄し、含水チタン酸のケーキを得た。このケーキ31.4gに、水と濃度33重量%の過酸化水素219.8gを加えた後、80℃で14時間加熱し、TiO2として濃度1.0重量%、pH8.2、黄褐色透明のチタン酸溶液3136gを得た。
【0044】
ついで、濃度15重量%のアンモニア水溶液でpH9に調整した。濃度15重量%のアンモニア水溶液の使用量は4.2gであった。
ついで、温度50℃になるまで加温し、硝酸亜鉛12.7gを純水335.8gに溶解した硝酸亜鉛水溶液を5.8g/分で添加した。添加中、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20)を加えながらpHを8.5〜9.5の範囲に維持した。
ついで、分散液から樹脂を分離した後、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SN-350、固形分濃度16.5重量%)を34.5g添加し、95℃で1時間加熱し、ついで、冷却した後、限外濾過膜にて濃縮して固形分濃度10重量%の亜鉛を担持した酸化チタン・シリカ微粒子(TS-1)分散液からなる抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液を得た。
【0045】
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)中のZnOの担持量は8.0重量%であった。
また、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)の平均粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(CAPA−700)で測定したところ、5nmであった。また、X線回折により粒子は無定型であった。
【0046】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(1)の調製
固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-500、平均粒子径7nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中NaO含有量22.0重量%)100gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(1)を調製した。
【0047】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(1)の安定性を下記の方法で評価し、結果を表に示す。
安定性評価
ガラスの密閉容器にて、50℃で1週間放置後、目視にて確認。
ゲル化なし :◎
ゲル化、薄く白濁:○
ゲル化、白濁分離:△
ゲル化、白濁沈殿:×
【0048】
抗菌・消臭性布(1)の調製
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(1)6.0gを純水94gに分散させ、この液に布(綿ポリエステル混綿(T/C):25cmx25cm)6.25gを浸漬し、ピックアップ100%で絞り、ついで、110℃で30分間乾燥して抗菌・消臭性布(1)を調製した。
抗菌・消臭性布(1)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を以下の方法、基準で評価し、結果を表に示す。
【0049】
抗菌性能
JIS L 1902 に準拠して実施した。
バイアル瓶に抗菌・消臭性布(1)0.4gを入れて、菌懸濁液(1/20濃度のニュートリエントブロス:肉エキス(150mg/L)、ペプトン(250mg/L)、界面活性剤Tween80(0.05重量%) 0.2mlを滴下し、37℃で18時間培養後、洗い出し、生菌数を測定した。試験菌には、黄色ぶどう球菌、大腸菌、およびMRSAを用いた。
抗菌性能は次式(1)の殺菌活性値により評価し、結果を表に示す。
殺菌活性値=Log(植菌数)−Log(試験片生菌数) ・・・・(1)
【0050】
消臭性能
消臭試験(1)
5Lのテドラーバッグに抗菌・消臭性布(1)(10cm×10cm)を入れ、濃度4ppmの硫化水素ガス3Lを封入し、室温にて2時間蛍光灯を照射した。ついで、検知管にて残存硫化水素ガス濃度を測定し、消臭率を表に示す。
消臭試験(2)
5Lのテドラーバッグに抗菌・消臭性布(1)(10cm×10cm)を入れ、濃度100ppmのアンモニアガス3Lを封入し、室温にて2時間蛍光灯を照射した。ついで、検知管にて残存アンモニアガス濃度を測定し、消臭率を表に示す。
消臭試験(3)
5Lのテドラーバッグに抗菌・消臭性布(1)(10cm×10cm)を入れ、濃度50ppmの酢酸ガス3Lを封入し、室温にて2時間蛍光灯を照射した。ついで、検知管にて残存酢酸ガス濃度を測定し、消臭率を表に示す。
【0051】
付着性
抗菌・消臭性布(1)を、洗濯用合成洗剤を用い、水流は弱く、浴比は1:30、洗いは40℃で5分間、すすぎ1回目は温度30℃以下で2分間、すすぎ2回目は温度30℃以下で2分間、これを1サイクルとして、10回洗濯、脱水後平干しを実施した。
洗濯した抗菌・消臭性布(1)について、上記消臭試験(3)を実施し、選択後の消臭性能の維持率を下記の分類で付着性として評価し、結果を表に示す。
消臭性能維持率90%以上 : ◎
消臭性能維持率50%〜90%未満: ○
消臭性能維持率10%〜50%未満: △
消臭性能維持率10%未満 : ×
【0052】
[実施例2]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(2)の調製
実施例1において、酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル33gを混合した以外は同様にして固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(2)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(2)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0053】
抗菌・消臭性布(2)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(2)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(2)を調製した。
抗菌・消臭性布(2)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0054】
[実施例3]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(3)の調製
実施例1において、酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル133gを混合した以外は同様にして固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(3)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(3)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0055】
抗菌・消臭性布(3)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(3)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(3)を調製した。
抗菌・消臭性布(3)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0056】
[実施例4]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてアルミナ水和物微粒子(日揮触媒化成(株)製:AP−1、Al含有量72重量%、平均粒子径200nm)13.9g、水86.1gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(4)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(4)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0057】
抗菌・消臭性布(4)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(4)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(4)を調製した。
抗菌・消臭性布(4)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0058】
[実施例5]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(5)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてアルミナ水和物微粒子(日揮触媒化成(株)製:AP−1、Al含有量72重量%、平均粒子径200nm)4.6g、水28.7gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(5)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(5)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0059】
抗菌・消臭性布(5)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(5)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(5)を調製した。
抗菌・消臭性布(5)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0060】
[実施例6]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(6)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてアルミナ水和物微粒子(日揮触媒化成(株)製:AP−1、Al含有量72重量%、平均粒子径200nm)18.5g、水114.8gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(6)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(6)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0061】
抗菌・消臭性布(6)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(6)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(6)を調製した。
抗菌・消臭性布(6)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0062】
[実施例7]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(7)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-500、平均粒子径7nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中NaO含有量22.0重量%)50g、アルミナ水和物微粒子(日揮触媒化成(株)製:AP−1、Al含有量72重量%、平均粒子径200nm)7g、水43gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(7)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(7)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0063】
抗菌・消臭性布(7)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(7)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(7)を調製した。
抗菌・消臭性布(7)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0064】
[実施例8]
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(2)分散液の調製
硫酸チタンを水に溶解し、TiO2として1.0重量%を含む水溶液を準備した。この溶液に、攪拌しながら濃度15重量%のアンモニア水を徐々に添加し、白色スラリー液を得、このスラリー液をガラスフィルターでろ過し、ケーキを水で十分洗浄し、含水チタン酸のケーキを得た。このケーキ31.4gに、水と濃度33重量%の過酸化水素219.8gを加えた後、80℃で14時間加熱し、TiO2として濃度1.0重量%、pH8.2、黄褐色透明のチタン酸溶液3136gを得た。
【0065】
次いで、濃度15重量%のアンモニア水溶液でpH9.0に調整した。この時、15重量%のアンモニア水溶液の使用量は4.2gであった。
ついで、温度50℃になるまで加温し、硝酸銅10.6gを純水335.8gに溶解した水溶液を5.8g/分で添加した。添加中、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20)を加えながらpHを8.5〜9.5の範囲に維持した。
ついで、分散液から樹脂を分離した後、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SN-350、固形分濃度16.5重量%)を34.5g添加し、95℃で1時間加熱し、ついで、冷却した後、限外濾過膜にて濃縮して固形分濃度10重量%の銅を担持した酸化チタン・シリカ微粒子(TS-2)分散液からなる抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(2)分散液を得た。
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(2)中のCuOの担持量は8.0重量%であった。
また、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(2)の平均粒子径は5nmであった。また、X線回折により粒子は無定型であった。
【0066】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(8)の調製
固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(2)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-500、平均粒子径7nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中NaO含有量22.0重量%)100gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(8)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(8)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0067】
抗菌・消臭性布(8)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(8)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(8)を調製した。
抗菌・消臭性布(8)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0068】
[実施例9]
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(3)分散液の調製
硫酸チタンを水に溶解し、TiO2として1.0重量%を含む水溶液を準備した。この溶液に、攪拌しながら濃度15重量%のアンモニア水を徐々に添加し、白色スラリー液を得、このスラリー液をガラスフィルターでろ過し、ケーキを水で十分洗浄し、含水チタン酸のケーキを得た。このケーキ31.4gに、水と濃度33重量%の過酸化水素219.8gを加えた後、80℃で14時間加熱し、TiO2として濃度1.0重量%、pH8.2、黄褐色透明のチタン酸溶液3136gを得た。
【0069】
次いで、濃度15重量%のアンモニア水溶液でpH9.0に調整した。この時、15重量%のアンモニア水溶液の使用量は4.2gであった。
ついで、温度50℃になるまで加温し、硝酸亜鉛12.7gを純水335.8gに溶解した水溶液を5.8g/分で添加した。添加中、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20)を加えながらpHを8.5〜9.5の範囲に維持した。
ついで、分散液から樹脂を分離した後、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SN-350、固形分濃度16.5重量%)を34.5g添加し、160℃で16時間加熱し、ついで、冷却した後、限外濾過膜にて濃縮して固形分濃度10重量%の亜鉛を担持した酸化チタン・シリカ微粒子(TS-3)分散液からなる抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(3)分散液を得た。
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(3)中のZnOの担持量は8.0重量%であった。
また、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(3)の平均粒子径は、10nmであった。また、X線回折により粒子はアナターゼであった。
【0070】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(9)の調製
実施例1において、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(3)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(9)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(9)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0071】
抗菌・消臭性布(9)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(9)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(9)を調製した。
抗菌・消臭性布(9)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0072】
[実施例10]
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(4)分散液の調製
硫酸チタンを水に溶解し、TiO2として1.0重量%を含む水溶液を準備した。この溶液に、攪拌しながら濃度15重量%のアンモニア水を徐々に添加し、白色スラリー液を得、このスラリー液をガラスフィルターでろ過し、ケーキを水で十分洗浄し、含水チタン酸のケーキを得た。このケーキ31.4gに、水と濃度33重量%の過酸化水素219.8gを加えた後、80℃で14時間加熱し、TiO2として濃度1.0重量%、pH8.2、黄褐色透明のチタン酸溶液3136gを得た。
【0073】
次いで、濃度15重量%のアンモニア水溶液でpH9.0に調整した。この時、15重量%のアンモニア水溶液の使用量は4.2gであった。
ついで、温度50℃になるまで加温し、硝酸銅10.6gを純水335.8gに溶解した水溶液を5.8g/分で添加した。添加中、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20)を加えながらpHを8.5〜9.5の範囲に維持した。
ついで、分散液から樹脂を分離した後、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SN-350、固形分濃度16.5重量%)を34.5g添加し、160℃で16時間加熱し、ついで、冷却した後、限外濾過膜にて濃縮して固形分濃度10重量%の銅を担持した酸化チタン・シリカ微粒子(TS-4)分散液からなる抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(4)分散液を得た。
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(4)中のCuOの担持量は8.0重量%であった。
また、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(4)の平均粒子径は10nmであった。また、X線回折により粒子はアナターゼであった。
【0074】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(10)の調製
実施例1において、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(4)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(10)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(10)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0075】
抗菌・消臭性布(10)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(10)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(10)を調製した。
抗菌・消臭性布(10)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0076】
[実施例11]
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(5)分散液の調製
四塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiOとして濃度5重量%の四塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15重量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。四塩化チタン水溶液添加後のpHは10.5であった。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiOとして濃度10重量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
このオルソチタン酸のゲル1000gを純水29000gに分散させた後、濃度35重量%の過酸化水素水8000gを加えてペルオキソチタン酸水溶液とした後、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、TiOとしての濃度が3.0重量%の酸化チタン微粒子(T-5)分散液を調製した。
【0077】
消臭抗菌成分の担持
別途、硝酸亜鉛29.1gに水470.9gを加えて、濃度1.0重量%の硝酸亜鉛水溶液を調製した。
TiO2濃度を1.0重量%に希釈した酸化チタン微粒子(T-5)分散液9.2kgを調合タンクに採取し、これを攪拌しながら50℃に加温した。ついで、酸化チタン微粒子(T-5)分散液のpHが9.0になるように濃度15重量%のアンモニア水溶液を添加した後、前記硝酸亜鉛水溶液をペリスターポンプで10g/minの速度で添加した。硝酸亜鉛水溶液の添加により酸化チタン微粒子(T-5)分散液のpHが低下し始めたところで、陰イオン交換樹脂(三菱化学製)をpH8.5に維持するように少量ずつ添加し、全硝酸亜鉛水溶液の添加が終了するまで、この操作を継続した。陰イオン交換樹脂の全使用量は1100gであり、また酸化チタン微粒子(T-5)分散液のpHは最終的に8.4であった。
【0078】
酸化チタン微粒子(T-5)分散液からイオン交換樹脂を分離した後、ついで、95℃で3時間過熱後、冷却し、ついで、限外濾過膜装置でTiO2 重量に対して200倍の水で洗浄した後、限外濾過膜装置で濃縮して、固形分濃度10重量%の亜鉛を担持した酸化チタン微粒子(T-5)分散液からなる抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(5)分散液を得た。抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(5)中のZnOの担持量は8.0重量%であった。
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(5)の平均粒子径は5nmであった。また、X線回折により粒子は無定型であった。
【0079】
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(11)の調製
実施例1において、抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(5)分散液を用いた以外は同様にして固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(11)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(11)の安定性を評価し、結果を表に示す。
抗菌・消臭性布(11)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(11)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(11)を調製した。
抗菌・消臭性布(11)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0080】
[比較例1]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R1)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液を固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R1)とした。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R1)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0081】
抗菌・消臭性布(R1)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R1)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(R1)を調製した。
抗菌・消臭性布(R1)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0082】
[比較例2]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R2)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-500、平均粒子径7nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中NaO含有量22.0重量%)0.5g、を混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R2)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R2)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0083】
抗菌・消臭性布(R2)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R2)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(R2)を調製した。
抗菌・消臭性布(R2)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0084】
[比較例3]
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R3)の調製
実施例1と同様にして調製した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-500、平均粒子径7nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中NaO含有量22.0重量%)300gを混合して固形分濃度10.0重量%の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R3)を調製した。
酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R3)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0085】
抗菌・消臭性布(R3)の調製
実施例1において、酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液(R3)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(R3)を調製した。
抗菌・消臭性布(R3)について、酸化チタン系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0086】
[比較例4]
特開2009−209089号公報の実施例1に準拠して、微粒結晶性アルミノシリケートを調製した。
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1)の調製
NaOH水溶液(NaOH濃度48重量%)203gにアルミン酸ソーダ水溶液(Al濃度22重量%、NaO濃度17重量%)57.7gを加え、1時間攪拌した。
ついで、これにSiO濃度16.2重量%の3号水硝子740gを1時間で添加した。この時、温度を30℃に維持した。ついで、30分間撹拌した後、38℃で12時間静置してシリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1)を調製した。
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1)の酸化物モル比は、NaO:Al:SiO:HO=16.0:1.0:16.0:332であった。
【0087】
シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-1)の調製
SiO濃度24重量%の3号水硝子500gにシリカアルミナヒドロゲルスラリー(1-1) 500gを撹拌しながら添加し、30分間攪拌して、シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-1)を調製した。この酸化物モル比は、NaO:Al:SiO:HO=26.0:1.0:48.1:637であった。
【0088】
ついで、シリカアルミナヒドロゲルスラリー(2-1)を60℃で48時間水熱処理した。ついで、遠心分離し、イオン交換水で充分に洗浄し、コロイド状フォージャサイト型ゼオライト(1)を合成した。得られたコロイド状フォージャサイト型ゼオライト(1)の平均一次粒子径(D)は60nm、平均二次粒子径(D)は130nmであった。
【0089】
抗菌・消臭性金属成分担持ゼオライト系微粒子(1)分散液の調製
上記で得られたNaY型であるコロイド状フォージャサイト型ゼオライト(1)10gを純水100gに分散させ、攪拌しながら濃度10重量%の硝酸水溶液でpHを5.5〜6.0に調整した。別途硝酸亜鉛1.8gを純水100gに溶解し、pH調整したNaY型ゼオライト懸濁スラリーを攪拌しながら添加した。添加後、スラリー温度を60℃に調整し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄し、水を加えてZnO、8.0重量%を担持した固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持ゼオライト系微粒子(1)分散液を調製した。
【0090】
ゼオライト系抗菌・消臭剤分散液(R4)の調製
固形分濃度10重量%の抗菌・消臭性金属成分担持ゼオライト系微粒子(1)分散液100gに酸性物質吸着性微粒子としてシリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI-500、平均粒子径7nm、固形分濃度10.0重量%、固形分中NaO含有量22.0重量%)100gを混合して固形分濃度10.0重量%のゼオライト系抗菌・消臭剤分散液(R4)を調製した。
ゼオライト系抗菌・消臭剤分散液(R4)の安定性を評価し、結果を表に示す。
【0091】
抗菌・消臭性布(R4)の調製
実施例1において、ゼオライト系抗菌・消臭剤分散液(R4)を用いた以外は同様にして抗菌・消臭性布(R4)を調製した。
抗菌・消臭性布(R4)について、ゼオライト系抗菌・消臭剤の付着性および抗菌性能、消臭性能を評価し、結果を表に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子と酸性物質吸着性微粒子とが水に分散した酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項2】
前記抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の濃度(C)が0.01〜20重量%の範囲にあり、酸性物質吸着性微粒子の濃度(C)が0.001〜10重量%の範囲にあり、濃度(C)と濃度(C)との比(C)/(C)が0.01〜2の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項3】
前記酸性物質吸着性微粒子がアルカリ含有シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項4】
前記酸性物質吸着性微粒子がアルミナ微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項5】
前記抗菌・消臭性金属成分が銀、銅、亜鉛、錫、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項6】
前記抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子の平均粒子径が2〜50nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項7】
前記抗菌・消臭性金属成分の担持量が抗菌・消臭性金属成分担持酸化チタン系微粒子中に酸化物として0.1〜20重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項8】
前記酸化チタン系微粒子が無定型であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項9】
前記酸化チタン系微粒子がシリカおよび/またはジルコニアを含み、酸化チタン系微粒子中のシリカおよび/またはジルコニアの含有量が酸化物として1〜20重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の酸化チタン系抗菌・消臭剤分散液を塗布してなることを特徴とする抗菌・消臭性繊維または布。
【請求項11】
前記酸化チタン系抗菌・消臭剤の塗布量が固形分として0.01〜2重量%の範囲にあることを特徴とする請求項10に記載の抗菌・消臭性繊維または布。

【公開番号】特開2013−47396(P2013−47396A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185357(P2011−185357)
【出願日】平成23年8月27日(2011.8.27)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】