説明

酸化ビスマスの製造方法及びその装置

【課題】 高純度のα体の酸化ビスマスを歩留まりよく製造し得る製造方法を提供する。
【解決手段】
金属ビスマスを溶融し、溶融された金属ビスマスを開放式の第1反応炉へ移送させ300℃〜650℃で攪拌し酸化反応させ、生成される酸化ビスマスと未反応物をスクリューを通じて密閉型の第2反応炉へ移送させ300〜600℃で酸素を供給しながら回転させ酸化反応させることを特徴とする酸化ビスマスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ビスマスの製造方法及びその装置に関する。さらに詳しくは、金属ビスマスを低温で溶融し、溶融されたビスマスを開放型の第1反応機において300〜650℃で攪拌し、得られた生成物を第2反応炉で酸素を供給し反応させて、酸化ビスマスを製造する方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ビスマスとは、通常、三酸化ビスマス(Bi)をいい、この酸化ビスマスは電気の伝導性が高く、殺菌剤、マグネット、ガラス、ゴムの硬化、耐炎ペーパー、触媒などその用途は多様で、その需要も徐々に増加しており、さらに高純度の酸化ビスマスは、特に電子産業などでその需要が増加している。
【0003】
酸化ビスマスはその結晶構造によって、α体、β体、γ体、δ体に分類され、通常、産業的に利用される酸化ビスマスはα体の酸化ビスマスである。
【0004】
従来、酸化ビスマスの製造法としては、微細ビスマスを燃焼させて酸化させるか、加熱ゾーンに入れて燃焼させる方法(特許文献1)、金属ビスマスを硝酸ナトリウムで加熱して融解させ、ここに塩素ガスを通過させて酸化ビスマスを製造する方法(特許文献2)、硝酸ビスマス水溶液に苛性ソーダまたは苛性カリを加え中和させ、中和液を40〜70℃とすることによって、針状酸化ビスマスを製造する方法(特許文献3)、3価のビスマスイオン含有水溶液にモノカルボン酸を加えビスマス−モノカルボン酸の錯体を水溶液として得て、ここでアルカリを添加し錯体を沈降させて分離し、これをか焼させ微細酸化ビスマス球状物を製造する方法(特許文献4)、ビスマスを高温で加熱して蒸気状にした後、ここに空気を供給して酸化ビスマスを製造する方法(特許文献5)、ビスマスの粒子又は粉末に硝酸及び過酸化水素を加え硝酸ビスマス溶液を得て、ここに水酸化ナトリウムを加えて、加熱して生成された沈殿物を分離し、これを水洗、乾燥、分級することによって、酸化ビスマスを得る方法(非特許文献1)、微細ビスマス金属に850〜900℃に加熱しながら空気を注入し酸化させて酸化ビスマスを製造する方法(非特許文献1)、ビスマス金属を750〜800℃で酸化させる方法、炭酸ビスマスを熱分解させる方法、ビスマス塩溶液にアルカリ金属水酸化物を反応させて製造する方法(非特許文献2)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第1,318,336号明細書
【特許文献2】米国特許第1,354,806号明細書
【特許文献3】特公昭47−11335号公報
【特許文献4】米国特許第4,873,073号明細書
【特許文献5】特公昭61−136922号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JOM; Apr 2002; 54, 4; ABI/INFORM Trade & Industry
【非特許文献2】Ullman’s Encylopedia of Industrial Chemistry, Vol.5, pp. 185−186
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の技術中、特許文献1の方法は、溶融させて酸化反応させる温度が記載されていないが、非特許文献1及び2の内容を参考にしてみると、この反応は750〜900℃で行われると判断されるが、このような高い温度で反応を行うと、エネルギー費用が高くなり、最終製品の市場における競争力が失われる。
【0008】
なお、前記の特許文献3、4等に示された硝酸ビスマスなどの塩を利用して酸化ビスマスを生産することは、まず硝酸ビスマスまで製造し、硝酸ビスマスから酸化ビスマスを製造する2段階の工程で行われなければならないため、工程が複雑で経済的でない。さらに硝酸ビスマスを入手して酸化ビスマスを製造することは原材料の購入に難しさがあり、更に原材料費が高いので、製造原価が高くなる。
【0009】
なお、前記の特許文献3、4等に示された湿式法は酸化ビスマスを分離した後、水洗処理によって副産物を除かなければならないし、その時、副産物が溶解されている水洗廃水と反応用水の廃水処理をしなければならないので、費用がかかり、環境を汚染しやすいし、作業環境も悪いだけでなく生成される酸化ビスマスに微量の酸が残留し品質が低下する恐れがあり、高純度の酸化ビスマスを要求する消費者に応じることができない場合がある。
【0010】
前記の特許文献5に示された方法は、気相反応で、気相にするために多くの時間、エネルギー、繊細な装置が必要であり、さらに生成される酸化ビスマスがナノサイズ程度と非常に微細であり、微細物の高温での収集において、耐高温性のフィルターの設置、そのための維持等に費用が多大にかかるし、経済的でない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、酸化ビスマスの製造方法に関する従来の方法及び装置の問題点を解決するために鋭意検討した結果、ビスマスの金属の塊を300℃以上、望ましくは400〜450℃で溶融させて、これを空気が接触可能な開放型の第1反応炉へ移送した後、300℃〜650℃の温度を維持しながら攪拌して酸化反応させ、酸化ビスマスを得、排気ファンが設置された集塵タンクから酸化ビスマスを収集し、これを第2反応炉で300℃〜600℃の温度を維持しながら、酸素と反応させることによって、高純度のα体の酸化ビスマスを歩留まりよく製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法及びその装置によると、金属ビスマスを従来使用された高温条件(700℃以上)よりずっと低い温度である溶融点またはその付近の温度で溶融させ、これを酸化させた後、得られた酸化ビスマスを再び300℃〜650℃の比較的に低温で空気または酸素雰囲気中で酸化させることによって、α体の酸化ビスマスを安価で、高純度に製造することができる。
【0013】
さらに、本発明により、第1反応炉で得られた酸化ビスマスを排気ファンが装着された集塵装置を利用し収集し、これを第2反応炉で空気または酸素雰囲気下で再び未反応物質を反応させ高純度の酸化ビスマスを製造する装置は、簡便で、効率が良く、メンテナンスが簡便な利点がある。
【0014】
さらに、前記の装置は第1反応炉で得られた酸化ビスマスを収集する収集タンクと第2反応炉の間に貯留槽を設置することによって、生産量を制御することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に従う酸化ビスマス製造装置の全体構成図である。
【図2】本発明に従う酸化ビスマス製造装置において反応炉の他の実施例の細部構造を示した拡大断面図である。
【図3】本発明に従う酸化ビスマス製造装置において密閉型の第2反応炉の他の実施例の細部構造を示した拡大断面図である。
【図4】本発明に従う製造方法によって製造された酸化ビスマスのX線の回折分析(XRD)の結果を示したグラフである。
【図5】本発明に従う製造方法によって製造された酸化ビスマスのX線の回折分析(XRD)の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付された図1〜図3を参照して、本発明に従う酸化ビスマス製造のための装置を詳しく説明する。
【0017】
図1は、本発明に従う酸化ビスマス製造装置の全体の構成図であり、図2は、本発明に従う酸化ビスマス製造装置において反応炉の他の実施例の細部構造を示した拡大断面図であり、図3は、本発明に従う酸化ビスマス製造装置において密閉型の第2反応炉の他の実施例の細部構造を示した拡大断面図である。
【0018】
図1のように、本発明に従う酸化ビスマス製造装置は、金属ビスマスを高温で溶融する溶融タンク(110)と、溶融された金属ビスマスを1次酸化させるために内部にモーター(122)の駆動で回転可能なインペラー(121)が具備された第1反応炉(120)と、負圧を通じて、前記第1反応炉(120)内の酸化ビスマスを収集するために一側に排気ファン(134)が具備された収集装置(130)と、前記の収集装置(130)に収集された酸化ビスマスを密閉空間内で2次酸化させるために内部にモーター(151)の駆動で回転可能なスクリューが具備され、一側に酸素流入口が具備された密閉型の第2反応炉(150)及び前記2次酸化ビスマスを粉砕する粉砕機(160)を含んで構成される。
【0019】
溶融タンク(110)は、金属ビスマスを投入して溶融させる装置として、溶融タンク(110)の内部温度はビスマスの溶融温度である271℃以上を維持すればよいが、本発明において、300℃〜650℃に維持される第1反応炉(120)の温度を考慮し溶融タンク(110)の溶融温度は最小300℃以上に維持することが反応速度や生産コスト面から望ましい。
【0020】
特に、本発明において、第1反応炉(120)内部に投入された溶融物の表面へ高温の空気が接触されるように熱風が供給されることによって、第1反応炉(120)内部が一定な温度に維持されるようにすることが望ましい。このような高温の熱風供給は、第1反応炉(120)内に溶融されたビスマスが投入される場合に、第1反応炉(120)内の溶融物の温度と溶融タンク(110)から投入された原料(ビスマス溶融物)間の温度差によって、反応炉(120)の内壁又はインペラー(121)の軸などにスケールが形成されることを最小化することができる。その時、熱風の温度は、特に制限されないが、200〜450℃、特に300〜450℃が望ましい。
【0021】
第1反応炉(120)は、溶融タンク(110)から溶融されたビスマスが投入され1次酸化反応が成され、300〜600℃の反応温度を維持する。第1反応炉(120)内のビスマス溶融物はモーター(122)で駆動されるインペラー(121)によって攪拌される間に酸化される。
【0022】
前記のインペラー(121)は垂直方向の回転軸に沿って回転が成され、その時、インペラー(121)の下段と第1反応炉(120)の底面とのギャップを最小限に設定する方が望ましい。これは、インペラー(121)の下段と第1反応炉(120)の底面間のギャップが大きい場合には十分攪拌できないし、反応炉の底面に残留する未反応ビスマスの発生を最小化するためである。
【0023】
なお、本発明において、第1反応炉(120)内部へ投入された溶融物の表面へ高温の空気が接触されるように熱風が供給されるようにすることによって、第1反応炉(120)内部が一定な温度に維持されるようにする。このような高温の熱風供給は、第1反応炉(120)内に溶融されたビスマスが投入される場合に、第1反応炉(120)内の溶融物の温度と溶融タンク(110)から投入された原料(ビスマス溶融物)間の温度差によって、反応炉(120)の内壁又はインペラー(121)の軸などにスケールが形成されることを最小化することができる。
【0024】
なお、本発明において、第1反応炉(120)内のビスマスの酸化を促進するために、図2に示したように、第1反応炉(120)内に空気または酸素を注入することができる。即ち、図2(a)のように、第1反応炉(120)内に任意の位置に空気/酸素供給機(図示せず)から供給される空気または酸素を注入する注入管(122)を装着し、前記の注入管(122)の出口は溶融されたビスマス内に沈漬されるように設置し溶融ビスマス内に直接空気または酸素を注入するようにする。
【0025】
なお、図2bのように、前記の注入管(122)をインペラーの垂直軸の内部に設置することによって、酸素がインペラー(121)の軸内部を通じて注入されるようにすると、第1反応炉(120)内にはインペラー外に別途の注入管(122)が設置されないので、構造が複雑になることがない。このような図2に記載された反応炉の他の実施例に示した反応炉を使用して実施することは、反応炉内の溶融物を攪拌するインペラーの大きな駆動力を要することから実質的にこれを駆動させることができる強いモーター等を必要にする。
【0026】
収集装置(130)は、第1反応炉(120)から生成された酸化ビスマスを収集するためであり、第1反応炉(120)から流入された酸化ビスマスを安定化させる沈降タンク(131)と、前記の排気ファン(134)による吸入空気を旋回させることによって渦流を発生させるサイクロン(132)、酸化ビスマスを収集し一側に排気ファン(134)が装着された収集タンク(133)を含み、さらに前記の沈降タンク、サイクロン(132)、収集タンク(133)の各下端に酸化ビスマスを移送するスクリュー(135)が具備される。
【0027】
このような収集装置(30)の作用は次のようである。
【0028】
前記の排気ファン(134)が駆動すると、収集タンク(133)内の圧力が急降下することによって、前記の収集タンク(133)内部とサイクロン(132)及び沈降タンク(131)を通じて連結された第1反応炉(120)内の空気が収集タンク(133)側に移動し、これによって、第1反応炉(120)内には負圧が発生する。その時、サイクロン(132)によって、形成された渦流は空気の移動を加速させることによって、第1反応炉(120)内の負圧の程度を迅速に増加させることができる。
【0029】
第1反応炉(120)内の負圧によって、ビスマスに比べて比重が小さい酸化ビスマスは収集装置(30)の沈降タンク(131)内に流入され安定化された一部酸化ビスマスが落下してスクリュー(135)を通じて移送され、さらにサイクロン(132)内で遠心力によって壁の内壁にぶつかった酸化ビスマスも一部は壁に沿って落下しスクリュー(135)を通じて移送され、残留酸化ビスマスは収集タンク(133)内へ移動し、最終的にスクリュー(135)に捕集され次の装置に移動される。
【0030】
なお、第1反応炉(120)内から生成された酸化ビスマスが収集装置(130)側に移動し、第1反応炉(120)内の溶融液が減ると、インペラー(121)を駆動するモーター(122)の負荷が小さくなるので、その時、モーター(122)の負荷を感知し、これによって、第1反応炉(120)内に投入される溶融ビスマスの投入を制御させると、第1反応炉(120)内には常に適当な量の反応物及び未反応ビスマスが維持される。
【0031】
なお、貯留槽(140)はスクリュー(135)によって、運搬された酸化ビスマスを貯蔵し、必要によっては、スクリュー(135)から運搬された酸化ビスマス中の不純物を除くためのフィルタリング工程が追加されることがある。
【0032】
この時、収集装置(130)から排出される酸化ビスマスは図1の点線で表示されたように、貯留槽(140)を経由しないで、直接次の装置である密閉型の第2反応炉(150)に移送できる。従って、本発明によると、前記の貯留槽(140)の設置は選択的事項に過ぎない。
【0033】
前記の密閉型の第2反応炉(150)は、第1反応炉(120)内で1次酸化が成される反応物を2次酸化させるため、300〜600℃に維持された密閉型タンク内にモーター(151)によって、駆動するスクリュー(図示せず)が回転駆動して2次酸化が成されて未反応物(Bi)について酸化が成されるようになる。
【0034】
さらに、密閉型の第2反応炉(150)においては、酸素が供給され迅速な酸化反応を誘導することができる。投入される酸素の圧力は、密閉型の第2反応炉(150)の条件によって相違するが、本発明においては、約1〜2.5kgf/cm圧力で酸素が供給される場合に、高圧用の密閉型の第2反応炉であることを要求しないで迅速な酸化反応が得られた。
【0035】
前記の密閉型の第2反応炉(150)の酸化反応を促進させるために図3のように密閉型の第2反応炉(150)に偏心軸を形成することができる。即ち、図3を参照するように、前記の密閉型の第2反応炉(150)の中心軸(153)が、モーター(151)の駆動で回転する駆動軸(152)について、偏心するように設置すると、密閉型の第2反応炉(150)の回転時、揺動回転して酸化反応を促進することができる。
【0036】
前記の粉砕機(160)は、密閉型の第2反応炉(150)内で2次酸化が成される酸化ビスマスを粉砕する。粉砕工程前に酸化ビスマス中に不純物を除くためのフィルタリング工程が追加されることがある。
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0038】
実施例1
(1次酸化過程)
純度99.99%の塊状のビスマス金属は、400〜450℃に維持され、300〜400℃の1m容量の溶融タンク(110)に連続して約45kg/時間の速度で投入し、熱風が供給される300リットル容量の第1反応炉の温度を300℃に維持し、インペラー(121)の速度は約50〜100rpmであり、収集タンク(130)に連結された吸入ポンプによって沈降タンク(131)またはサイクロン(132)での吸入負圧が20mmHOに維持される開放型の第1反応炉に前記の溶融ビスマスを45kg/時間の速度で移送しインペラーを駆動させて酸化反応させた。
【0039】
なお、前記の反応炉(120)の温度を350、400、450、500、550、600及び650℃に変化させながら同一に行われ、収集装置へ移送される前の反応物を採取し未反応物の重量を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0040】
実施例2
前記の実施例1において、塊状のビスマスの投入量を30kg/時間にしたことを除いて実施例1と同一に行われ、未反応物の重量を測定し、その結果を下記の表1に一緒に示した。
【0041】
【表1】

【0042】
前記の表1から、温度が高ければ高いほど酸化度が高いことが分かるが、650℃を超える温度では、得られる反応物の凝集現象が発生するので、望ましくないことを確認した。さらに、原料の投入量が増加すればするほど反応機の内部での滞留時間が短くなるため酸化度が低くなり、これと反対に、投入量が少なければ少ないほど酸化度が増加することが確認できる。従って、原料の投入量を多くするためには、反応機の容量を大きくし、それによる加熱媒体の容量も大きくならなければならない。
【0043】
従って、これらの実施例から、酸化反応が300℃〜350℃でも可能であるが、酸化反応率が約25%〜50%程度であり、長時間の反応時間を要するため、450℃〜650℃にする方が望ましい。反応機に注入されるビスマス溶融物の量が少ないと、モーターにかかる負荷が少なく、空気との反応接触面が広いので酸化反応が早いことと確認される。
【0044】
実施例3
前記の実施例2において、第1反応炉(120)の反応温度650℃で得られた未反応物が含有率が0.04%である反応生成物を第1反応炉に連結された沈降タンク(131)、サイクロン(132)及び収集タンク(133)へ移送されながら、重量が重い粒子は、 沈降タンク(131)、サイクロン(132)の下部のホッパーを通じて移送され、重量が軽い粒子は、 収集タンク(133)を通じて前記の各装置の下部の移送スクリューに沿って沈降タンク(140)または密閉型の第2反応炉(150)へ移送される。密閉型の第2反応炉(内部容量:1m)の温度を450℃に維持しながら、酸素を2kgf/cmに引き込みながら30分間第2反応炉を3回転/分の速度で反応させ、反応開始後、5分、10分、20分、30分に反応物を採取して未反応物の含量を測定して反応率(%)を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0045】
実施例4
前記の実施例3、実施例2で第1反応炉(120)の反応温度500℃で得られた未反応物の含有率が0.87%である反応生成物を使用することを除いて、実施例3と同一の方法を行って、反応率を調べ、その結果を下記の表2に一緒に示した。
【0046】
実施例5
前記の実施例3、実施例2で第1反応炉(120)の反応温度450℃で得られた未反応物の含有率が2.8%である反応生成物を使用することを除いて、実施例3と同一の方法を行って、反応率を調べ、その結果を下記の表2に一緒に示した。
【0047】
実施例6
前記の実施例1で第1反応炉(120)の反応温度500℃で得られた未反応物の含有率が8.4%である反応生成物を使用することを除いて、実施例3と同一の方法を行って、反応率を調べ、その結果を下記の表2に一緒に示した。
【0048】
比較例1〜4
酸素を注入しないことを除いて、前記の実施例3〜6と同一に反応させたものを比較例1〜4にし、その結果を下記の表2に一緒に示した。
【0049】
【表2】

【0050】
表2から、2次酸化が成される密閉型の第2反応炉(150)内に2kgf/cmの圧力で酸素を投入した場合と、外部からの酸素の投入なしで密閉された状態で攪拌が成された場合とにおいて、反応時間の経過による酸化されないビスマス含量の比率(%)を確認した。酸素を投入した場合は、2次酸化反応後の未反応のビスマス含量の比率は全て0.005%であるのに対し、酸素を注入しない比較例3〜4においては酸化率が著しく落ちることが確認できる。
【0051】
実施例7
前記の実施例2の650℃で酸化反応させて得られた反応生成物(未反応率0.04%)を500℃に維持される密閉型の第2反応炉(150)内に投入し、酸素注入量を1kgf/cm及び2.5kgf/cmにし、酸素投入圧力の条件において20分に一定にした以外は実施例3と同一の方法を行った後、未反応ビスマス含量を測定し、その結果を下記の表3に示した。
【0052】
【表3】

【0053】
表3から、第2反応炉での酸化反応は、酸素投入量に依存的であることが分かる。
【0054】
実施例8
第2反応炉(150)においての酸化能を試験するために、実施例2の500℃で得られた反応生成物(未反応率0.87%)を密閉型の第2反応炉(150)内に連続で注入しながら、2kgf/cmの酸素を投入しながら下記の表4に記載された反応温度の条件で20分間反応を行った。その結果を表4に一緒に示した。
【0055】
【表4】

【0056】
前記の表4から、第2反応炉(150)においての反応温度は経済性などを考慮すると、400〜600℃が望ましく、450〜600℃が特に望ましい。
【0057】
比較例5
熱風を供給しないことを除いて、前記の実施例1と同一の方法を1日8時間行った。7日、15日、30日後の第1反応炉(120)の内壁に形成されたスケールを測定し、その結果を下記の表5に示した。
【0058】
【表5】

【0059】
前記の表5に示したように、熱風を注入しない場合、7日経過した後、若干のスケールが形成され、15日経過後にはスケールを除かないと、もうそれ以上第1反応炉(120)を使用して反応させることができなかったのに対し、熱風を注入した場合は、30日経過後にもスケールの厚さが約11mmに過ぎないので、熱風を注入する場合は、第1反応炉(120)の内壁のスケールの除去作業を1ヶ月に1回程度にしても十分に反応システムを維持することができる。
【0060】
試験例1
前記の実施例で得られる反応生成物中の酸化ビスマスの決定構造を確認するために得られる物質のX線回折分析機(XRD)を利用して確認した。
【0061】
標準サンプルは、α体の酸化ビスマス(ALDRICHI社の製品、純度99.999%)を利用した。
【0062】
試料1は、第1反応炉の温度は450℃であり、吸入負圧が15mmHOに維持される開放型の第1反応炉に前記の溶融ビスマスを時間当たり40kgの速度で移送しインペラーを駆動させ酸化反応させて得られたものを使用した。
【0063】
試料2は、第1反応炉の温度は500℃であり、吸入負圧が15mmHOに維持される開放型の第1反応炉に前記の溶融ビスマスを時間当たり40kgの速度で移送しインペラーを駆動させ酸化反応させて得られたものを使用した。
【0064】
試料3は、第1反応炉の温度は550℃であり、吸入負圧が10mmHOに維持される開放型の第1反応炉に前記の溶融ビスマスを時間当たり20kgの速度で移送しインペラーを駆動させ酸化反応させて得られたものを使用した。
【0065】
試料4は、第1反応炉の温度は450℃であり、吸入負圧が15mmHOに維持される開放型の第1反応炉に前記の溶融ビスマスを時間当たり40kgの速度で移送しインペラーを駆動させ酸化反応させて得られたことを第2反応炉で酸素を1kgf/cmの速度で注入し、反応炉の温度を500℃にして得られたものを使用した。
【0066】
前記で得られた試料と標準サンプルである酸化ビスマスα体を使用しX線回折分析機(XRD)を利用して測定したところ、前記の試料は全部標準サンプルと同一なピークを示した。これを図4に示す。
【0067】
試験例2
試験例1の試料4の製造において、第2反応炉の温度を450℃にしたこと以外は、同一の方法を行って得られた試料について、試験例1と同一にX線回折分析機(XRD)を利用してピークを測定した結果を図5に示した。
【0068】
前記の試験例1及び2から、本発明の方法によって、製造された酸化ビスマスは全てα体であることを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の方法及びその装置によると、金属ビスマスを従来使用された高温条件(700℃以上)より低い温度である溶融点またはその付近の温度で溶融させ、これを酸化させた後、得られた酸化ビスマスを再び300℃〜650℃の比較的に低温で空気または酸素雰囲気中酸化させることによって、α体の酸化ビスマスを安価で、高純度に製造することができる有用な発明である。
【0070】
さらに、本発明によると、第1反応炉で得られた酸化ビスマスを排気ファンが装着された集塵装置を利用し収集し、これを第2反応炉で空気または酸素雰囲気下で再び未反応物質を反応させ高純度の酸化ビスマスを製造する装置は簡便で、安価で、メンテナンスが簡便な利点がある。
【0071】
さらに、前記の装置は第1反応炉で得られた酸化ビスマスを収集する収集タンクと第2反応炉の間に貯留槽を設置することによって、生産量を制御することができる利点がある。
【符号の説明】
【0072】
110 溶融タンク
120 第1反応炉
121 インペラー
130 収集装置
131 沈降タンク
132 サイクロン
133 収集タンク
140 貯留槽
150 第2反応炉
160 粉砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ビスマスを溶融し、溶融された金属ビスマスを開放式の第1反応炉へ移送させ300℃〜650℃で攪拌し酸化反応させ、生成される酸化ビスマスと未反応物をスクリューを通じて密閉型の第2反応炉へ移送させ300〜600℃で空気または酸素を供給しながら回転させ酸化反応させることを特徴とする酸化ビスマスの製造方法。
【請求項2】
金属ビスマスを300〜450℃で溶融させることを特徴とする請求項1に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項3】
金属ビスマスを400〜450℃で溶融させることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項4】
第1反応炉においての酸化反応が400〜600℃で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項5】
第2反応炉においての酸化反応が400〜600℃で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項6】
第1反応炉の内部に200〜450℃の熱風を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項7】
第1反応炉の内部に300〜450℃の熱風を供給することを特徴とする請求項6に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項8】
収集装置に設置された排気ファンによって収集装置内の圧力が10〜30mmHOに維持されて反応炉内の酸化ビスマスが捕集されることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項9】
第2反応炉に空気または酸素を1〜2.5kgf/cmの圧力で注入することを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化ビスマスの製造方法。
【請求項10】
金属ビスマスを高温で溶融する溶融タンク(110);
溶融された金属ビスマスを1次酸化させるために内部に回転可能なインペラー(121)が具備された第1反応炉(120);
負圧を通じて前記の第1反応炉(120)内の酸化ビスマスを収集するため一側に排気ファン(134)が具備された収集装置(130);
前記の収集装置(130)へ収集された酸化ビスマスを密閉空間内で2次酸化させるため内部に回転可能なスクリューが具備され、一側に酸素流入口が具備された密閉型の第2反応炉(150)を含んでなることを特徴とする酸化ビスマスの製造装置。
【請求項11】
第2反応炉(150)で排出される酸化ビスマスを粉砕する粉砕機(160)が具備されたことを特徴とする請求項10に記載の酸化ビスマスの製造装置。
【請求項12】
前記の第1反応炉(120)内に空気または酸素供給をするために注入管(122)が具備されたことを特徴とする請求項10に記載の酸化ビスマスの製造装置。
【請求項13】
前記の注入管(122)はインペラー(121)軸の内部に形成されたことを特徴とする請求項12に記載の酸化ビスマスの製造装置。
【請求項14】
前記の収集装置(130)は、第1反応炉(120)で流入された酸化ビスマスを安定化させる沈降タンク(131);
前記の排気ファン(134)による吸入空気を旋回させるためのサイクロン(132);及び酸化ビスマスを収集し排気ファン(134)が装着された収集タンク(133)を含むことを特徴とする請求項10に記載の酸化ビスマスの製造装置。
【請求項15】
前記の沈降タンク(131)、サイクロン(132)、収集タンク(133)の下端に酸化ビスマスを移送するスクリュー(135)が具備されたことを特徴とする請求項14に記載の酸化ビスマスの製造装置。
【請求項16】
前記の密閉型の第2反応炉(150)の中心軸(153)は、回転駆動軸(152)について偏心されたことを特徴とする請求項10に記載の酸化ビスマスの製造装置。
【請求項17】
前記の収集装置(130)と密閉型の第2反応炉(150)の間に収集装置(130)から排出される酸化ビスマスを貯蔵する貯留槽(140)をさらに含むことを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の酸化ビスマスの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−524819(P2010−524819A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503953(P2010−503953)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003538
【国際公開番号】WO2008/133372
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509289652)ダンスク インダストリアル シー・オー エル・ティー・ディー (1)
【氏名又は名称原語表記】DANSUK INDUSTRIAL CO., LTD.
【Fターム(参考)】