説明

酸化マグネシウム粒子

【課題】 酸化マグネシウム錠剤を、黒ずみを発生させずに製造するのに適した酸化マグネシウム粒子を提供する。
【解決手段】 表面が水酸化マグネシウム及び/又は炭酸マグネシウムからなる被覆層で覆われている酸化マグネシウム錠剤製造用の酸化マグネシウム粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム錠剤製造用の酸化マグネシウム粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
制酸剤や緩下剤として、酸化マグネシウム錠剤が利用されている。このような目的に利用される酸化マグネシウム錠剤は、酸化マグネシウム粒子に賦形剤などを加えて、打錠成型することにより製造されている。ところが、酸化マグネシウム粒子は硬度が高いため、酸化マグネシウム粒子を錠剤に形成する際に酸化マグネシウム粒子と打錠成型機との摩耗により、酸化マグネシウム錠剤の表面に部分的な黒ずみが発生することがあることが知られている。
【0003】
黒ずみのない酸化マグネシウム錠剤を製造する方法として、特許文献1には、粒状の酸化マグネシウム(適当な造粒機を用いて粉末状の酸化マグネシウムを粒状に造粒したもの)、賦形剤、及びタルク、並びにステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウムを含有する混合粉末を打錠成型する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、レーザ回折散乱法で測定された平均二次粒子径が0.5〜10μmの酸化マグネシウム粒子と結合材及び崩壊剤からなる混合物を造粒して得た顆粒状粒子に、潤滑剤(好ましくは、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム)を混合して打錠成型する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2000−1428号公報
【特許文献2】特開2003−146889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、黒ずみを発生させずに酸化マグネシウム錠剤を製造するのに適した酸化マグネシウム粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、1000℃の温度で1時間加熱したときの質量減少率が2〜10質量%の範囲となるような量にて、表面が水酸化マグネシウム及び/又は炭酸マグネシウムからなる被覆層で覆われている酸化マグネシウム錠剤製造用の酸化マグネシウム粒子にある。
ここで、質量減少率(%)とは、(加熱前の酸化マグネシウム粒子の質量(g)−加熱後の酸化マグネシウム粒子の質量(g))/加熱前の酸化マグネシウム粒子の質量(g)×100(%)により算出される値を意味する。
【0007】
上記本発明の酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粒子に、50〜200℃の温度下にて、水蒸気又は水蒸気と二酸化炭素ガスとの混合ガスを接触させる方法により製造することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸化マグネシウム粒子を用いることにより、打錠成型機を利用しながらも黒ずみのない酸化マグネシウム錠剤を高い得率で製造することが可能となる。また、本発明の酸化マグネシウム粒子の製造方法を利用することにより、表面が水酸化マグネシウム及び/又は炭酸マグネシウムからなる被覆層で覆われている酸化マグネシウム粒子を工業的に有利に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の酸化マグネシウム粒子は、1000℃の温度で1時間加熱したときの質量減少率(以下、強熱質量減少率という)が2〜10質量%の範囲となるように、その表面が水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムあるいは水酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムとの混合物からなる被覆層で覆われている。被覆層を形成している水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムは酸化マグネシウムよりも硬度が低いため、本発明の酸化マグネシウム粒子は摩耗による着色が起こりにくい。
強熱質量減少率は、5〜10質量%の範囲にあることが好ましい。この強熱質量減少率は、加熱により水酸化マグネシウム又は炭酸マグネシウムが酸化マグネシウムに変化することにより生じる水又は二酸化炭素の揮発分に相当する。
【0010】
本発明の酸化マグネシウム粒子は、酸化マグネシウム粒子に、50〜200℃(好ましくは60〜180℃)の温度下にて、水蒸気又は水蒸気と二酸化炭素ガスとの混合ガスを接触させる方法により好適に製造することができる。酸化マグネシウム粒子に水蒸気を接触させると、酸化マグネシウムの粒子表面が水和され、水酸化マグネシウムからなる被覆層が生成する。そして、その水酸化マグネシウムからなる被覆層に、二酸化炭素ガスを接触させると、水酸化マグネシウムが炭酸化され炭酸マグネシウムが生成する。
【0011】
原料となる酸化マグネシウム粒子としては、海水に生石灰を投入して水酸化マグネシウムを生成させる方法(いわゆる、海水法)により得た水酸化マグネシウム粒子を、700〜1300℃の温度、好ましくは750〜1200℃の温度で焼成して製造したものを用いることができる。原料の酸化マグネシウム粒子は、強熱質量減少率が1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0012】
原料の酸化マグネシウム粒子は、レーザ回折法により測定される平均二次粒子径が0.5〜10μmの範囲にあることが好ましい。また、粒子径が8μm以上の二次粒子の含有量が5体積%未満であることが好ましい。さらに、一次粒子の粒子サイズを表す指標の一つである比表面積が1〜50m2/gの範囲にあることが好ましい。
【0013】
原料の酸化マグネシウム粒子に水蒸気又は水蒸気と二酸化炭素ガスとの混合ガスを接触させる操作は、混練機などの攪拌混合装置を用いて、酸化マグネシウム粒子を攪拌しながら行なうことが好ましい。
酸化マグネシウム粒子と水蒸気又は混合ガスとの接触時間は、通常は30分間〜5時間の範囲である。
【0014】
本発明の酸化マグネシウム粒子は、単独で、または公知の賦形剤、崩壊剤及び潤滑剤などの添加剤を加えて、酸化マグネシウム錠剤の製造材料として使用される。賦形剤の例としては、乳糖、結晶セルロース、澱粉及びリン酸水素カルシウムを挙げることができる。崩壊剤の例としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びカルボキシ澱粉ナトリウムを挙げることができる。潤滑剤の例としては、ステアリン酸及びその塩(ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩)を挙げることができる。
【0015】
賦形剤の添加量は、酸化マグネシウム粒子100質量部に対して、1〜20質量部の範囲にあることが好ましい。崩壊剤の添加量は、酸化マグネシウム粒子100質量部に対して、1〜20質量部の範囲にあることが好ましい。潤滑剤の添加量は0.1〜10質量部の範囲にあることが好ましい。
【0016】
本発明の酸化マグネシウム粒子を、打錠成型機を用いて錠剤に形成する際の打錠圧は、1錠あたり500〜2000kgの範囲にあることが好ましく、800〜1200kgの範囲にあることが特に好ましい。
【実施例】
【0017】
[実施例1]
(1)酸化マグネシウム粒子の製造
海水法により得られた水酸化マグネシウム粒子15kgを950℃の温度で1時間焼成して酸化マグネシウム粒子10kgを製造した。得られた酸化マグネウム粒子の強熱質量減少率は0.4質量%であった。また、この酸化マグネウム粒子は、レーザ回折法により測定した平均二次粒子径が3μm、粒子径が8μm以上の二次粒子の含有量が0.2体積%であり、比表面積が10m2/gであった。
【0018】
(2)被覆層の形成
上記(1)にて得られた酸化マグネシウム粒子2kgを、加熱装置付き万能混練機(内容積:5L)に投入した。次いで、酸化マグネシウム粒子を攪拌しながら、混練機内に水量として約115g相当のスチームを導入して、密閉した。その後、混練機の内部温度を95℃に加熱した。混練機の内部温度を95℃に保持し、酸化マグネシウム粒子の攪拌を2時間続けて、酸化マグネシウム粒子の表面に被覆層を形成した。
得られた被覆層付き酸化マグネシウム粒子の強熱質量減少率は5.2質量%であった。
【0019】
上記の被覆層付き酸化マグネシウム粒子5gをステンレス製の丸底容器に入れて、乳棒で酸化マグネシウム粒子を丸底容器の底部に60秒間擦りつけて、摩耗による酸化マグネシウム粒子の着色状態を目視で観察した。その結果、酸化マグネシウム粒子の表面に着色は認められなかった。
【0020】
上記の被覆層付き酸化マグネシウム粒子を用いて、単発打錠機(金型:ステンレス製)にて打錠圧1000kgの条件で、質量1gの丸錠型酸化マグネシウム錠剤を10個製造した。得られた酸化マグネシウム錠剤の表面を目視で観察した結果、全ての錠剤の表面に黒ずみは認められなかった。
【0021】
[実施例2]
前記実施例1(1)にて得られた酸化マグネシウム粒子2kgを、加熱装置付き万能混練機(内容積:5L)に投入した。次いで、酸化マグネシウム粒子を攪拌しながら、混練機内に水量として約115g相当のスチームを導入した。次いで、混練機の内部温度を90℃に加熱した。混練機の内部温度を90℃に保持し、混練機内に二酸化炭素ガスを2L/分の流量で導入しながら、酸化マグネシウム粒子の攪拌を3時間続けて、酸化マグネシウム粒子の表面に被覆層を形成した。
得られた被覆層付き酸化マグネシウム粒子の強熱質量減少率は8.7質量%であった。
【0022】
上記の被覆層付き酸化マグネシウム粒子5gを前記実施例1と同様にステンレス製丸底容器の底部に60秒間擦りつけて、摩耗による酸化マグネシウム粒子の着色状態を目視で観察した。その結果、酸化マグネシウム粒子の表面に着色は認められなかった。
【0023】
上記の被覆層付き酸化マグネシウム粒子を用いて、前記実施例1と同様に丸錠型酸化マグネシウム錠剤を10個製造した。得られた酸化マグネシウム錠剤の表面を目視で観察した結果、全ての錠剤の表面に黒ずみは認められなかった。
【0024】
[比較例1]
前記実施例1の(1)にて製造した被覆層無しの酸化マグネシウム粒子(強熱質量減少率:0.4質量%)5gを、前記実施例1と同様にステンレス製丸底容器の底部に60秒間擦りつけて、摩耗による酸化マグネシウム粒子の着色状態を目視で観察した。酸化マグネシウム粒子は灰色に着色していた。
【0025】
上記の被覆層無しの酸化マグネシウム粒子を用いて、前記実施例1と同様に丸錠型酸化マグネシウム錠剤を10個製造した。得られた酸化マグネシウム錠剤の表面を目視で観察した結果、全ての錠剤の表面に黒ずみが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1000℃の温度で1時間加熱したときの質量減少率が2〜10質量%の範囲となるような量にて、表面が水酸化マグネシウム及び/又は炭酸マグネシウムからなる被覆層で覆われている酸化マグネシウム錠剤製造用の酸化マグネシウム粒子。
【請求項2】
酸化マグネシウム粒子に、50〜200℃の温度下にて、水蒸気又は水蒸気と二酸化炭素ガスとの混合ガスを接触させる工程を含む請求項1に記載の酸化マグネシウム粒子の製造方法。

【公開番号】特開2006−249052(P2006−249052A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71952(P2005−71952)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】