酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体及びその用途
本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体、医薬の製造のための薬物伝達体としてのその用途、上記複合体を含むワクチン組成物及び造影剤を提供する。酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛ナノ粒子の生体内活用性を顕著に改善させるので、上記複合体は、医薬の生体内または細胞内伝達のための薬物伝達体として使用することができると共に、生体または細胞のイメージングのために使用することができ、生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、MRI造影剤、バイオセンサーに応用可能なビーズ(bead)の製造のための用途を追加に提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体、医薬の製造のための薬物伝達体としてのその用途、上記複合体を含むワクチン組成物及び造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ技術は、多様な分野において応用されていて、特に医療分野と生命工学分野において最も広く利用されている。医療分野では、ナノ技術を利用して診断と治療の革命を可能にする迅速且つ効果的な塩基配列分析、または人体疾病を診断及び予防することができるナノ感知分析に応用されていて、生命工学分野では、遺伝子や薬物の伝達、またはナノ配列を基盤とした分析技術などに活用されている。
【0003】
現在、さまざまな素材が多様なサイズのナノ粒子を製造するのに使用されていて、このようなナノ粒子は、免疫治療、磁気共鳴映像(Magnetic ResonanceImaging、MRI)診断、薬物伝達体系開発などに活用されている。
【0004】
これらのうち酸化亜鉛ナノ粒子は、その電気的、光学的特性に起因して、窯業分野、電気素材分野、センサー、医生物学分野に広く使用されている。特に最近になって、酸化亜鉛と有機物質を利用したナノ構造体合成を通じて生物学的感知装置などを開発するのに幅広く活用されていて、人体危害性が低いため(食品添加物として米国FDAの使用許可物質)食品、医薬品産業分野において軟膏、色素、食品添加物などにも広く使用されている。したがって、生体適用可能性が非常に高い素材として注目されていて、今後、多様な医生命工学分野への活用が期待されている。
【0005】
酸化亜鉛ナノ粒子を医生命工学分野に活用するためには、タンパク質などの生体高分子と結合させる過程が必要である。しかし、この素材自体が他の有機物質と強く結合しない特性があるため、大部分の場合において、酸化亜鉛ナノ粒子の表面を化学的に処理する製造工程が導入されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kjaergaard et.al、2000 App.Env.Microbiol.66(1)10−14;Thai et.al.、2004 Biotech.Bioengineering.87(2)129−137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような酸化亜鉛ナノ粒子の表面処理過程は、有機溶媒または化学的反応性が高い化合物を使用しなければならないので、人体に直接使用されることができるナノ粒子または構造体の製造及び活用に制約となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを利用して酸化亜鉛ナノ粒子の生体適合性を改質し、これを医薬の製造のための薬物伝達体として活用するか、またはワクチン、造影剤、生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、バイオセンサーに応用可能なビーズなどの製造に使用しようとする。
【0009】
本発明者らは、酸化亜鉛ナノ粒子を化学的に改質する代わりに、酸化亜鉛−結合性ペプチドを導入し、酸化亜鉛ナノ粒子の生体利用性を改善させることができるという点に着目した。下記実施例で確認することができるように、酸化亜鉛−結合性ペプチドを酸化亜鉛ナノ粒子に導入する場合、酸化亜鉛ナノ粒子を利用して伝達しようとする腫瘍抗原の結合力が酸化亜鉛−結合性ペプチドを使用しない群に比べて著しく高い。したがって、本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を提供する。
【0010】
本発明において使用しようとする酸化亜鉛−結合性ペプチドは、一般的なペプチドに比べて酸化亜鉛ナノ粒子に対する親和力(affinity)に優れたペプチドを言う。下記実施例から明らかなように、酸化亜鉛−結合性ペプチドを使用しない場合、タンパク質薬物は、酸化亜鉛ナノ粒子とほとんど結合しない。しかし、酸化亜鉛−結合性ペプチドを使用する場合、タンパク質、DNA、RNAなどの薬物は、特別な化学的固定方法を使用しなくても、酸化亜鉛ナノ粒子に導入することができるようになる。
【0011】
酸化亜鉛に結合するペプチドをペプチドライブラリスクリーニングを通じて捜し出す方法については、既存に報告されているが(Kjaergaard et.al、2000 App.Env.Microbiol.66(1)10−14;Thai et.al.、2004 Biotech.Bioengineering.87(2)129−137)、これら論文では、大腸菌表面にペプチドを発現させて、酸化亜鉛フィルムに結合された大腸菌数を測定することによって、酸化亜鉛との結合有無を間接的に確認しただけであり、その結合力に対する詳細な分析は行われかった。また、これら論文では、酸化亜鉛−結合性ペプチドを酸化亜鉛ナノ粒子に導入し、これを薬物伝達体として使用するか、またはワクチン、または造影剤などとして使用することができることについては全然開示していない。
【0012】
これより、上記先行技術に開示されたペプチドライブラリを利用した酸化亜鉛−結合性ペプチドのアミノ酸配列を分析した結果、酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構成を有することが好ましいという事実を知見した。
【0013】
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【0014】
すなわち、Arg−X1−X2−ArgまたはArg−X1−X2−Arg−Lysモチーフを共通的に含み且つ直列繰り返し(tandem repeat)構造を有するようにすれば、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドの酸化亜鉛に対する結合力が増加するものと現われた。直列繰り返し構造を有するようにするために、上記モチーフが流動的に結合することができるリンカーを含ませた。このようなリンカーとして、下記実施例では、Gly−Gly−Asp−Alaを使用したが、モチーフ間の結合に流動性を提供することができる形態ならリンカーの構成は、特に制限されない。例えば、このようなリンカーには、Glyが多数含まれることが好ましいことができる。例えば、Gly−Gly−Asp−Xaa−Ala(Xaaは、任意のアミノ酸)の形態もリンカーに使用可能である。上記Xaaとしては、SerやValが好ましいものと予想される。下記実施例で確認することができるように、このような酸化亜鉛−結合性ペプチドは、酸化亜鉛との結合性が非常に優れているので、酸化亜鉛ナノ粒子の生体内または細胞内活用のための酸化亜鉛ナノ粒子の表面改質のために使用されることができる。
【0015】
したがって、本発明は、下記式(I)または(II)の酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を提供する。
【0016】
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【0017】
一具体例において、X1は、ProまたはThrであり、X2は、Hisであり、mは、1〜5の整数であり、nは、3〜50の整数であることができる。
【0018】
他の具体例において、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドは、配列番号1〜4のうちいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドであることができる。
【0019】
配列番号1:Arg Pro His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
配列番号2:Arg Thr His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
配列番号3:Arg Pro His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
Arg Pro His Arg Lys Gly Gly Asp Ala Arg Pro
His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
配列番号4:Arg Thr His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
Arg Thr His Arg Lys Gly Gly Asp Ala Arg Thr
His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
【0020】
本発明において、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、式(I)または(II)の酸化亜鉛−結合性ペプチドそのものであることができる。この場合、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体に追加にタンパク質、DNA、RNA、化合物医薬、造影物質などの薬物が追加に導入されることができる。このような薬物は、例えば、複合体と物理的または化学的に結合されることができ、これにより、生体内または細胞内にこれら薬物を伝達する役目をするようになる。
【0021】
この場合、薬物の効果的な伝達のために、複合体表面には、標的指向性リガンドが結合されることができる。本発明の複合体が組職や細胞に導入されることができるように標的化させるリガンドを意味する。このような標的指向性リガンドとしては、抗体、アプタマーだけでなく、細胞表面の特定受容体と結合するものと知られている化合物リガンドも有用に使用することができる。このような抗体、アプタマー、化合物リガンドの具体的な種類は、当業界によく知られている。
【0022】
上記複合体と薬物との物理的または化学的結合、または上記複合体と標的指向性リガンドとの物理的または化学的結合は、複合体表面に存在するタンパク質と薬物または標的指向性リガンドとの結合により行われ、これは、当業界に公知された方法を利用して容易に行われることができる。
【0023】
例えば、複合体表面のタンパク質に存在する官能基と薬物や標的指向性リガンド上に存在する官能基との共有結合により行われることができる。このような官能基は、タンパク質、薬物または標的指向性リガンド上に本来存在するものであることができるが、必要な場合、相互結合可能な官能基を有するように改質することができる。タンパク質上に存在する官能基と薬物または標的指向性リガンド上に存在する官能基は、互いに結合を形成することができるように公知の官能基の結合例から選択されることができる。このようなこのような公知の官能基の結合例のうち代表的な例を下記表1に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
または、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチドだけでなく、第2のペプチドをタンパク質内に含む融合タンパク質であることができる。このような融合タンパク質は、当業界に公知された通常の組換えタンパク質製造方法により容易に製造することができる。この際、第2のペプチドは、酸化亜鉛−結合性ペプチドのN末端またはC末端に位置することができ、その位置は、特に制限されない。
【0026】
例えば、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質に含まれる第2のペプチドは、抗原であることができる。
【0027】
すなわち、一具体例において、上記タンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質であることができる。
【0028】
酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体は、後述するように、非常に多様な用途に使用されることができる。例えば、酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体は、免疫治療のためのワクチン組成物の製造のために使用されることができる。酸化亜鉛ナノ粒子は抗原が含まれた組換えタンパク質に対する担体または薬物伝達体として利用される。
【0029】
一具体例において、上記抗原は、腫瘍抗原であることができる。下記実施例では、酸化亜鉛−結合性ペプチドと腫瘍抗原を含む組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を樹枝状細胞に導入し、このような樹枝状細胞をワクチンとして利用して癌を治療または予防することができることを示す。
【0030】
このような腫瘍抗原の種類は、特に制限されず、当業界に公知されている腫瘍抗原ならいずれも使用可能である。癌の治療または予防のために使用されることができる腫瘍抗原の代表的な例は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインなどを含む。このような腫瘍抗原の例及びこれらを発現する癌細胞については、当業界によく知られている。
【0031】
なお、本発明において使用される酸化亜鉛ナノ粒子は、その全体が酸化亜鉛よりなる酸化亜鉛ナノ粒子だけでなく、その他の成分を含む酸化亜鉛ナノ粒子をも含むものと定義する。
【0032】
一具体例において、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛だけよりなるものであることができる。この場合、本発明の複合体は、酸化亜鉛ナノ粒子を通じてタンパク質などの薬物を生体内または細胞内に伝達する役目を行い、また酸化亜鉛ナノ粒子の本然の特性によって光学イメージングを可能にする。
【0033】
一具体例において、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛によってナノ構造の外部が一部または全部取り囲まれたナノサイズの物質よりなることができる。このような例として、ダンベル(dumbbell)形状、ナノ線、合金、薄膜などを例示することができる。ダンベル形状では、一方は、一部/または全部が酸化亜鉛で 構成されることができ、ダンベルの他方は、磁性、金属、高分子、セラミック、半導体などで構成されることができる。また、合金は、金属、セラミック、半導体と酸化亜鉛の合金よりなることができる。(例:FeOとZnO、AuとZnO)、また、ナノ線の場合、電気化学的または湿式方法で形成されることができるが、ZnOナノ線、ZnOが含まれたナノ線(例:AuZnO合金ナノ線)、ZnOがコーティングされたナノ線を使用することができる。また、ZnOが表面に存在する薄膜を使用することもでき、使用先によって上記構造が複合的に構成された構造(例:薄膜に1次元ナノ船が突出されている構造、粒子表面にナノ粒子、ナノ線などが付着された構造)も含まれることができる。
【0034】
他の具体例において、上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有するものであることができる。コア−シェル構造を有する酸化亜鉛ナノ粒子において、シェルは、本発明のタンパク質との結合のために酸化亜鉛よりなり、コアには、本発明による複合体の適用目的によって適当な物質を選択して位置させることができる。
【0035】
例えば、一具体例において、上記コアは、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなるものであることができる。上記金属は、特に制限されないが、Pt、Pd、Ag、Cu及びAuよりなるグループから選択されることが好ましい。上記磁性物質も、特に制限されないが、Co、Mn、Fe、Ni、Gd、Mo、MM’2O4、及びMxOy(M及びM’は、それぞれ独立的にCo、Fe、Ni、Mn、Zn、Gd、またはCrを示し、0<x≦3、0<y≦5)よりなるグループから選択されることが好ましい。また、上記磁性合金も特に制限されないが、CoCu、CoPt、FePt、CoSm、NiFe、及びNiFeCoよりなるグループから選択されることが好ましい。また、半導体物質としては、これに制限されるものではないが、CdSe、CdTe、ZnSeなどが選択されることができる。
【0036】
一具体例において、上記コアは、磁性物質よりなるものであることができる。この場合、本発明の複合体を利用すれば、酸化亜鉛ナノ粒子内部の磁性物質によって外部磁場による生物製剤(DNA、RNA、細胞など)の効果的な分離、薬物伝達、高効率診断、外部磁場による温熱治療(Hyperthermia)をはじめとする治療、そしてMRI造影などが可能である。
【0037】
一具体例において、上記コアは、T1またはT2造影物質よりなるものであることができる。この場合、本発明の複合体は、酸化亜鉛ナノ粒子を通じてタンパク質を生体内または細胞内に伝達することができると共に、酸化亜鉛内のT1またはT2造影物質によってMRI造影が可能であり、酸化亜鉛ナノ粒子本然の特性によって光学イメージングが可能なマルチモーダル特性を有するようになる。コア−シェル構造を有する酸化亜鉛ナノ粒子で使用されることができるT1またはT2造影物質の種類は、特に制限されず、T1またはT2造影物質の例は、当業界によく知られている(例えば、大韓民国特許公開10−2010−0023778号公報参照)。
【0038】
一具体例において、上記コアは、酸化鉄よりなるものであることができる。下記実施例では、コアがT2造影物質である酸化鉄よりなり、シェルが酸化亜鉛よりなるコア−シェル構造の酸化亜鉛ナノ粒子を製造し、このような酸化亜鉛ナノ粒子と、酸化亜鉛−親和性ペプチドと腫瘍抗原を含むタンパク質との複合体を利用して癌細胞を造影し、癌細胞を死滅させることができることを示す。
【0039】
本発明による酸化亜鉛ナノ粒子は、好ましくは、高分子界面活性剤を利用して製造されたものであることができる。高分子界面活性剤のうち両親媒性(amphiphilic)界面活性剤を使用すれば、酸化亜鉛ナノ粒子を有機溶媒上で高温熱分解法(Thermodecompostion)で製造することができ、共沈法(Co−precipitation)など他の方法で製造したナノ粒子に比べて結晶性に優れていて、均一なサイズを有する酸化亜鉛ナノ粒子を得ることができると共に、両親媒性界面活性剤を使用せずに有機溶媒上で製造したナノ粒子に比べて水に対する分散性が相対的に優れているという長所を提供する。このような両親媒性界面活性剤としては、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ポリプロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)を使用することができる。
【0040】
なお、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体形成には、特別な方法が要求されない。酸化亜鉛−結合性ペプチドの酸化亜鉛に対する親和性によって、上記タンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子を単純にインキュベーションすることだけでも、簡単に複合体を形成することができる。
【0041】
また、本発明は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を薬物伝達体として含む医薬組成物を提供する。前述したように、本発明の複合体は、タンパク質、DNA、RNA、細胞、化合物医薬、造影物質などの薬物と結合し、これら薬物を生体内または細胞内に伝達する薬物伝達体として機能することができる。このような薬物は、前述したように、上記複合体と物理的または化学的に結合されることができ、このような薬物以外にも、複合体に標的指向性を付与するための標的指向性リガンドが追加に結合されることができる。また、本発明の医薬組成物は、複合体と結合される薬物以外にも、追加の薬物をさらに含むことができ、医薬の製剤化のために一般的に利用されるさまざまな賦形剤を含むことができる。
【0042】
また、本発明は、薬物を、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体と混合するか、または上記複合体に結合させることを含む薬物と上記複合体を含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0043】
また、本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含むワクチン組成物を提供する。前述したように、酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体は、ワクチン組成物の製造のために使用されることができる。酸化亜鉛−結合性ペプチドは、抗原が酸化亜鉛ナノ粒子に結合することを可能にして、酸化亜鉛ナノ粒子を薬物伝達体として抗原を生体内または細胞内に導入することを容易にする。生体内または細胞内に導入された抗原は、上記抗原に対する細胞性または体液性免疫反応を引き起こし、人体の免疫システムを通じて上記抗原によって媒介される疾患を治療または予防するようになる。このような抗原の種類は、特に制限されず、人為的に免疫反応を起こし、疾病を予防または治療するために使用される抗原なら、いずれも本発明のワクチン組成物の製造のために使用することができる。一具体例において、上記抗原は、腫瘍抗原であることができ、この場合、このようなワクチン組成物は、癌の治療または予防のために使用されることができる。
【0044】
本発明の一具体例において、上記ワクチン組成物は、追加に兔疫細胞を含むものであることができる。本発明において、兔疫細胞は、免疫系を担当する細胞を総称するもので、具体的には、樹枝状細胞、T細胞、NK細胞、B細胞などを含む。一具体例において、上記兔疫細胞は、樹枝状細胞、T細胞、NK細胞であることができる。なお、このような組成物には、細胞以外にも細胞を安定に維持することができる緩衝液などが含まれる。
【0045】
兔疫細胞を利用した癌の免疫治療方法については、当業界によく知られている。例えば、患者から樹枝状細胞を回収した後、樹枝状細胞にTATタンパク質と腫瘍抗原の融合タンパク質を導入し、このように腫瘍抗原を収得した樹枝状細胞をさらに体内に注入し、樹枝状細胞にとって免疫反応を誘導するようにして、癌細胞を死滅させる方法である。腫瘍抗原を樹枝状細胞に導入するために、TAT融合タンパク質を利用するなどの既存の方法は、手続が複雑であるだけでなく、培養時間が多く所要され、そのため、樹枝状細胞の生存率の低下、生体内の導入後の効果の低下などが問題になった。しかし、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を兔疫細胞に導入し、これをワクチン組成物に使用する場合、簡単な方法で短時間内に兔疫細胞を含む細胞治療剤、すなわちワクチンを製造することができる。さらに、下記実施例で確認することができるように、本発明の複合体は、樹枝状細胞の生存率、免疫効能などにも影響を及ぼすことなく、腫瘍抗原の伝達率が非常に高いため、効果的に癌細胞を死滅させることができるものと現われた。したがって、本発明の一具体例において、上記ワクチン組成物は、上記複合体が導入した兔疫細胞を含むものであることができる。
【0046】
兔疫細胞を含む癌免疫治療剤またはワクチン組成物の組成、投与方法、有効量などについては、当業界によく知られている。
【0047】
また、本発明は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含む造影剤を提供する。
【0048】
前述した酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体は、薬物伝達体またはワクチンの役目を行うことができるだけでなく、酸化亜鉛ナノ粒子は、その自体で光学的造影が可能な特性を有しているため、同時に造影剤(imagingagent)として作用することができる。
【0049】
一具体例において、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体には、標的指向性リガンドが結合されてもよい。この場合、造影剤の標的指向性が向上するようになる。
【0050】
他の具体例において、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むものであることができる。前述したように、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質に抗原が含まれる場合、上記抗原を発現する標的細胞に本発明の複合体が導入され、免疫反応を誘導することができると共に、複合体が持っている造影効果によって標的細胞の造影が可能になる。このような抗原の種類は、特に制限されない。一具体例において、上記抗原は、腫瘍抗原であることができ、この場合、上記造影剤は、癌の免疫治療と同時に造影を可能にする。上記腫瘍抗原は、これに制限されるものではないが、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されるものであることができる。
【0051】
上記造影剤に含まれる酸化亜鉛ナノ粒子の構成は、前述した通りである。一具体例において、上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有するものであることができる。例えば、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなるものであることができる。前述したように、酸化亜鉛ナノ粒子がT1またはT2造影物質よりなるコアと酸化亜鉛よりなるシェルで構成されたコア−シェル構造を有するものである場合、本発明の造影剤は、光学的イメージングだけでなく、磁気共鳴イメージングを可能にする。下記実施例で確認することができるように、酸化鉄コアと酸化亜鉛シェルよりなる酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドと癌腫胚芽抗原を含むタンパク質との複合体を含む本発明の造影剤は、癌細胞の死滅同時に注入した樹枝状細胞の位置を追跡診断することができる。磁気共鳴イメージングのための既存の酸化鉄ナノ粒子は、水溶液上での凝集を防止するために化学的表面処理をするか、または樹枝状細胞に導入するためにリポソームのような細胞伝達用化合物(transfection agents)を利用するなど手続が複雑であるだけでなく、培養時間が多く所要され、そのため、樹枝状細胞の生存率の低下、生体内導入後の効果の低下などが問題になった。しかし、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を樹枝状細胞に導入し、これをワクチン組成物に使用する場合、簡単な方法で短時間内に樹枝状細胞を含む細胞治療剤、すなわちワクチンを製造することができ、コアシェルに含まれた酸化鉄成分により磁気共鳴イメージングを可能にする。
【0052】
本発明の造影剤において、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチド以外に抗体をさらに含むものであることができる。この場合、抗体は、造影剤に標的指向性を付与する役目を行い、もし上記抗体が治療用抗体の場合、追加的に治療剤の役目を行うようになる。一具体例において、このような抗体は、腫瘍抗原をターゲットにするものであることができる。造影剤に標的指向性を付与するか、または腫瘍抗原をターゲットにして治療効果を示す抗体の種類については、当業界によく知られている。例えば、癌治療用抗体としてよく知られているハーセプチンのFc末端に酸化亜鉛−結合性ペプチドが存在するようにハーセプチンの組換え抗体を製造することができる。このような組換え抗体は、酸化亜鉛ナノ粒子に非常によく結合されることができ、このように形成された複合体は、癌の治療及び癌治療の予後を観察することができる治療剤と造影剤としての役目を同時に行うことができる。
【0053】
また、このような造影剤組成物において、上記複合体には、タンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される1つ以上の薬物が物理的または化学的に結合されてもよい。例えば、上記複合体に治療用薬物が結合されている場合、診断と同時に治療の効果を奏することができ、もし上記複合体に造影物質が追加的に結合されている場合、多機能性造影剤として作用することができる。このような造影物質としては、例えば、蛍光物質、放射性同位元素または量子ドットなどを含む。
【0054】
本発明による造影剤は、医薬分野において通常使用される担体及びビヒクルを含むことができる。具体的にイオン交換樹脂、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、各種リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセライド混合物)、水、塩または電解質(例えば、プロタミンスルフェート、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム及び亜鉛塩)、膠質性シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系基質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアリレート、ワックス、ポリエチレングリコールまたは羊毛脂などを含むことができるがこれに制限されない。また、本発明による造影剤は、上記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、または保存剤などを追加に含むことができる。
【0055】
一具体例において、本発明による造影剤は、非経口投与のための水溶性溶液で製造することができ、好ましくは、 ハンクス溶液(Hank’s solution)、リンガー溶液(Ringer’s solution)または物理的に緩衝された塩水のような緩衝溶液を使用することができる。水溶性注入(injection)懸濁液は、ソジウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランのように懸濁液の粘度を増加させることができる基質を添加することができる。
【0056】
本発明の造影剤の他の好ましい様態は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の滅菌注射用製剤の形態であることができる。このような懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤(例えば、ツイン80)及び懸濁化剤を使用して本分野に公知された技術によって剤形化することができる。また、滅菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液(例えば、1、3−ブタンジオール中の溶液)であることがある。使用されることができるビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。また、滅菌非揮発性オイルが通常的に溶媒または懸濁化媒質として使用される。このような目的のために合成モノまたはジグリセライドを含めて刺激性が少ない非揮発性オイルは、いずれも使用することができる。
【0057】
上記造影剤を生体に投与する段階は、医薬分野で通常的に利用される経路を通じて投与されることができ、非経口投与が好ましく、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または局所経路を通じて投与することができる。
【0058】
なお、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体は、上述した薬物伝達体、ワクチン、または造影剤の製造のための用途以外に生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、MRI造影剤、バイオセンサーに応用可能なビーズ(bead)の製造のための用途を追加に提供する。例えば、酸化亜鉛ナノ粒子が持っている光学的特性によって本発明の複合体をFACSのような光学分離に使用し、遺伝子、細胞などの生物学的物質の分離に利用することができる。他の具体例において、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体がコア−シェル構造を有していて、上記コアが磁性物質よりなり、シェルが酸化亜鉛よりなる場合、コアに存在する磁性物質に起因してMACSのような物質の磁性分離への応用が可能である。また、本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を含む温熱治療用組成物、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体をビーズとして含むバイオセンサーなどを提供する。
【発明の効果】
【0059】
酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛ナノ粒子の生体内活用性を顕著に改善させるので、上記複合体は、医薬の生体内または細胞内伝達のための薬物伝達体として使用することができると共に、生体または細胞のイメージングのために使用することができ、生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、MRI造影剤、バイオセンサーに応用可能なビーズ(bead)の製造のための用途を追加に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】Fe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子のTEM分析、構造、成分分析、水溶液での分散、光学特性、及び磁性特性分析結果を示す。
【図2】本発明のZnOpep−1と3×ZnOpep−1量を測定した405nmでの吸光度結果を示す。
【図3】本発明のZnOpep−1、3×ZnOpep−1及び3×ZnOpep−2がコアシェルナノ粒子と結合した量を測定した405nmでの吸光度結果を示す。
【図4】多様な種類の水溶液内での酸化亜鉛ナノ粒子とペプチドの間の結合力を示す。
【図5】水溶液内で酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛結合ペプチドを含むCEA腫瘍抗原の組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の結合力を示す。
【図6】図6aは、DAB−enhanced Prussian blue染色を通じてインキュベーション時間によるFe3O4ナノ粒子とFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子の細胞内運搬状態を示し、図6bは、それぞれのサンプルでランダムに選択された100個の細胞の光学強度を測定した結果を示す。
【図7】図7aは、樹枝状細胞内に導入されたコアシェルナノ粒子をDAB−enhanced Prussian blue染色を通じて確認した結果を示す。図7bは、コアシェルナノ粒子の光学的特性を利用して共焦点蛍光顕微鏡で導入されたコアシェルナノ粒子を確認した結果を示す。図7cは、樹枝状細胞内に導入されたコアシェルナノ粒子結合ペプチドを共焦点蛍光顕微鏡で観察した結果を示す。図7dは、樹枝状細胞内に酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛結合ペプチドを含むCEA腫瘍抗原の組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子を伝達した場合に樹枝状細胞内に存在する腫瘍抗原の量をFACS分析した結果である。
【図8】コアシェルナノ粒子のローディングが樹枝状細胞の細胞生存率に影響を及ぼさないことを示すグラフである。
【図9】コアシェルナノ粒子のローディングが樹枝状細胞の成熟に影響を及ぼさないことを示すグラフである。
【図10】酸化鉄ナノ粒子とコアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞の磁気共鳴映像分析によるインビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)での探知結果を示す。
【図11】酸化鉄ナノ粒子で標識された樹枝状細胞(○)とコアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞(●)のT2弛緩時間を比較した磁気共鳴分析結果を示す。
【図12】酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞によって誘導された抗−腫瘍兔疫性を評価した結果を示す。
【図13】酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞によって誘導されたCEA−特異的T細胞反応の誘導結果を示す。
【図14】酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞で兔疫されたマウスの腫瘍成長及び生存を分析した結果を示す(□:NP/3×ZBP−CEA、■:NP/CEA、▽:3xZBP−CEA、▼:CEA、○:NP、●:DC)。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、ただ本実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義される。
【実施例】
【0062】
実施例1:Fe3O4−ZnOコア−シェルナノ粒子の合成
Fe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子(core−shellna noparticles、CSNP)を改良されたナノエマルジョン方法により製造した。
Fe3O4コア合成のために0.5mmol(0.1766g)のアイアン(III)アセチルアセトネート(Fe(acac)3、99.9%、Aldrich)と2.5mmol(0.6468g)の1、2−ヘキサデカンジオール(1、2−hexdecanediol、C14H29CH(OH)CH2(OH)、90%、Aldrich)をポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ポリプロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG、Aldrich)(0.7529g)とともに10ml〜20mlのオクチルエーテル(C8H17OC8H17、99%、Wako)に溶解した。ナノ粒子の物理的、化学的特性制御のためにPEG−PPG−PEGの代わりに、ポリビニルピロリドン(PVP)が使用されることができ、溶媒としては、オレイルアミン(OAM、C9H18=C9H17NH2、70%)、オレイン酸(OA、C9H18=C8H15COOH、99%)などが使用されることができる。
【0063】
還元過程は、上記混合溶液を1時間80℃〜130℃までゆっくり加熱し、その温度で1時間〜2時間循環させた。その後、15分間260℃〜300℃まで早く加熱し、260℃〜300℃で1時間〜2時間循環させた。混合溶液を室温まで冷却させれば、磁性体コア物質が形成される。合成過程は、アルゴンのような不活性ガス雰囲気で進行することができる。上記磁性体コアを製造した後、特別な精製過程なしにZnOコーティング工程を進行した。既に形成されたFe3O4コアに0.25mmol(0.0659g)の亜鉛アセチルアセトネート(zinc acetylacetonate、Zn(acac)2)、0.3234g(1.25mmol)の1、2−ヘキサデカンジオール(1、2−hexdecanediol)が溶解されたオクチルエーテル(octylether、5ml)を添加した後、加熱手段と磁力攪拌器(Magnetic Stirring)を使用して上記反応混合物を80℃〜130℃まで温度を上げ、1時間〜2時間均一に混合した。次いで、混合溶液を加熱し、260℃〜300℃の間で1時間〜2時間程度維持した結果、ZnO層がFe3O4上に形成された。反応後、Fe3O4−ZnOコア−シェルナノ粒子を無水エタノール(anhydrous ethanol)を添加し、遠心分離及び磁性分離を利用して洗浄した。製造されたコア−シェルナノ粒子の形態、組成及びナノ構造は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry) が備えられたTEM(JEOL 2010F、Technai F20(FEI Co.))で測定した。TEM測定のためのサンプルの製造のために、ヘキサン中に分散したナノ粒子と水とPBSに分散されたペプチド−ナノ粒子複合体は、それぞれcarbon−supported copper grids上に落とした。Fe3O4−ZnONPsの構造的分析は、粉末x−線回折分析機(10C1 beamline、Pohang Accelerator Laboratory、South Korea)により行われた。磁性特性は、試料振動型磁力計 (vibrating sample magnetometer)(Lakeshore 7300)、 物理特性測定装置(Physical property measurement system)(PPMS、Quantum Design)を使用して測定された。ヘキサン中に分散されたナノ粒子と水とPBSに分散されたペプチド−ナノ粒子複合体の光学特性は、それぞれUV− 可視分光法(Visspectroscopy)(Agilent 8453E)及び分光蛍光光度計(spectrofluorophotometer) (Shimadzu RF−5301PC)により分析された。図1は、Fe3O4−ZnOナノ粒子のTEM分析、水分散性、磁性特性及び光学特性分析結果を示す。具体的に、図1aは、Fe3O4−ZnOナノ粒子の球形形態及び均一なサイズ分布を示すTEM結果である(Scale bar:100nm)。図1bは、コア−シェルナノ粒子の構造的模式図である。図1cは、単一コアシェルナノ粒子がFeとZnよりなることを示すTEM−EDX point−probe analysisの結果である。図1dは、PBS中での茶色のコアシェルナノ粒子の均質な分散を示し、図1eは、磁石によってナノ粒子の回収後、きれいで且つ透明な溶液を示す。図1fは、Fe3O4コア部分(赤色)とFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子(青色)の磁性履歴曲線を示す。図1gは、ペプチドが結合されたコアシェルナノ粒子のUV及び可視光放出を示す光発光(Photoluminescence)スペクトルを示す。
【0064】
実施例2:ZnO−結合性ペプチドの設計及び製造
ZnO−結合性ペプチド(ZnO−binding peptide、ZBP)の設計のために、先行研究から高−親和性ZnO結合パターンの配列を収集した。高−親和性結合ペプチドのクラスタリングによりRXXRまたはRXXRKの結合モチーフがZnO結合に重要な役目を行うことを知見し、RPHRKまたはRTHRKを下記実施例で使用されるZnO−結合性ペプチドのモチーフとして選択した。また、酸化亜鉛ナノ粒子とZnO−結合性ペプチドの間の結合力を増加させるために、酸化亜鉛−結合性ペプチドの製造時に、ZnO結合モチーフの直列繰り返しを導入しようとした。周辺モチーフ間の柔軟性を増加させることができる柔軟性リンカーとしてGGDAを選択し、これをモチーブの間に導入した。
【0065】
酸化亜鉛−結合性ペプチドの酸化亜鉛ナノ粒子に対する結合性を定量分析することができるように、酸化亜鉛−結合性ペプチドをビオチンで標識し、ストレプトアビジンとの結合性を調査する方法を使用した。このために、まず、ビオチンが標識された酸化亜鉛−結合性ペプチドとストレプトアビジンの間の結合を確認しようとした。ペプチド合成器(PeptrEXTM、Peptron)を利用してビオチンで標識されたペプチドとして、biotin−RPHRKGGDA(biotin−ZnOpep−1)、biotin−RPHRKGGDARPHRKGGDARPHRKGGDA(biotin−3xZnOpep−1)、biotin−RTHRKGGDA(biotin−ZnOpep−2)及びbiotin−RTHRKGGDARTHRKGGDARTHRKGGDA(biotin−3xZnOpep−2)を合成した後、滅菌された水に1mg/mlの濃度で溶かした。TBS(Tris buffered saline)に希釈した上記ペプチドをそれぞれ10μg/well、1μg/well、0.1μg/well及び0.01μg/wellずつとなるように、96ウェルプレート(96 well plate)に分注した後、4℃で16時間反応させて、上記プレートにコーティングした。その後、各ウェルに遮断溶液(blocking solution:5%Bovine serum albumin in TBS)を入れ、常温で一時間反応させた後、0.05%Tween20を含むTBSを使用して3回洗浄した。その後、AP−ストレプトアビジン結合体(alkaline phosphatase−streptavidin conjugate)を1:1,000で希釈し、常温で一時間反応させた。反応が終わった後、さらに0.05%Tween20を含むTBSを使用して残留AP−ストレプトアビジン結合体を除去した。その後、pNPPホスファターゼ(pNPP phosphatase)基質を添加し、20分間常温で反応させた後、停止バッファーを入れ、反応を停止した後、VICTOR(Perkinelmer社)を使用して405nmの波長で吸光度を測定した。その結果、図2から明らかなように、単一酸化亜鉛−結合性ペプチドより3X酸化亜鉛−結合性ペプチドがさらに高い吸光度を示し、これは、コーティングされた量に依存的に増加することを確認することができた。この結果は、酸化亜鉛−結合性ペプチドのビオチンとストレプトアビジンの結合力を利用して定量分析が可能であることを示唆する。
【0066】
実施例3:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力
実施例3では、実施例2に基づいて酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力を確認しようとした。実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子(エタノール内に保管)を1.5mlチューブに移し、マグネチックスタンドに20分間静置させて、コア−シェル(core−shell)酸化亜鉛粒子を分離した。上記酸化亜鉛ナノ粒子からエタノールを完全に除去した後、TBSを添加した後、超音波を利用してナノ粒子を水溶液に分散させた。100μgのナノ粒子と10μg、1μg、0.1μg、0.01μg及び0.001μgのペプチドをTBSに希釈して混合した後、常温で1時間回転して反応させた。反応後、遠心分離機を利用して(15,000g、2min)複合体を沈殿させた後、マグネチックスタンドに15分間静置させて、ナノ粒子−ペプチド複合体 を分離した。
【0067】
同一の方法で複合体をTBSを利用して6回洗浄した。1:1000で希釈されたAP−ストレプトアビジン結合体(1.5mg/ml)を添加し、常温で一時間回転して反応させた。反応が終わった後、さらに遠心分離機を利用して上記AP−ストレプトアビジン結合体を分離し、マグネチックスタンドに15分間静置させて溶液を除去した後、TBSを利用して6回洗浄した。その後、pNPPホスファターゼ基質を入れ、20分間常温で反応させ、停止バッファーを入れて反応を停止した後、VICTOR(Perkinelmer社)を利用して405nmの波長で吸光度を測定した。その結果、図3から明らかなように、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合が酸化亜鉛−結合性ペプチドの濃度に依存的に増加することを確認することができた。また、単一酸化亜鉛−結合性ペプチドより3X酸化亜鉛−結合性ペプチドが酸化亜鉛ナノ粒子とさらによく結合することを確認することができた。それぞれのペプチドの結合は、100μgのコアシェルナノ粒子に対して約1μg以下のペプチド(1xZBPに対して〜1nmol、3xZBPに対して〜0.3nmolに均等)が使用される時に飽和され、1μgのコアシェルナノ粒子当たり約3〜10pmolのペプチドが結合するものと現われた。
【0068】
実施例4:多様な水溶液での酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力
実施例4では、実施例3から確認した酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力を多様な水溶液条件でも結合が可能であるかを調べるために行った。実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子(エタノール内に保管)を1.5mlチューブに移し、マグネチックスタンドに20分間静置させてコア−シェル(core−shell)酸化亜鉛粒子を分離した後、エタノールを完全に除去した。分離したナノ粒子(100μg)をTBS、RIPAバッファー(1%Triton X−100、0.1%ソジウムドデシルスルフェート、0.5%ソジウムジオキシコレート、150mM NaCl、50mM Tris−HCl[pH7.5]、2mMEDTA)、または多様な濃度(6M、3M、1.5M、0.75M、0.375M)のヨウ素が添加されたバクテリア溶菌バッファー(bacteria lysis buffer:20mM HEPES[pH7.6]、500mM NaCl、1mM EDTA、1%NP−40)に浮遊させた後、0.1μgのペプチド(3×ZnOpep−1)を添加し、常温で一時間回転して反応させた。遠心分離機を利用して複合体を分離し、マグネチックスタンドに15分間入れた後、水溶液を除去した後、TBSを利用して6回洗浄した。AP−ストレプトアビジン結合体を入れて常温で一時間回転して反応させた。反応が終わった後、さらに遠心分離機を回転して上記複合体を分離した後、マグネチックスタンドに15分間静置させて反応溶液を除去した後、TBSを利用して6回洗浄した。pNPPホスファターゼ基質を入れ、20分間常温で反応させた後、反応停止バッファーを入れ、405nmの波長で吸光度を測定した。その結果、図4から明らかように、TBS、RIPA、そして多様な濃度のヨウ素が添加された水溶液上でも酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドがよく結合されていることを確認することができた。これは、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドが多様な水溶液条件でもよく結合することを意味する。
【0069】
実施例5:癌腫胚芽抗原と酸化亜鉛−結合性ペプチドとの融合タンパク質の製造
Bae、M.Y.、など[Bae、M.Y.、Cho、N.H.&Seong、S.Y.Protective anti−tumour immune responses by murine dendritic cells pulsed with recombinant Tat−carcinoembryonic antigen derived from Escherichia coli.Clin.Exper.Immunol.157、128−138(2009)]に開示された方法を利用してE.coliからアミノ酸35から332(GenBank Accessionno.M17303)に相当するヒト癌腫胚芽抗原(CEA)を精製した。組換えZBP−CEA融合タンパク質の製造のために、3xZnOpep−1(RPHRKGGDARPHRKGGDARPHRKGGDA)をコーディングするannealed double−stranded DNA(5’−CTA GCC GCC CGC ATC GCA AAG GCG GCG ATG CGC GCC CGC ATC GCA AAG GCG GCG ATG CGC GCC CGC ATC GCA AAG GCG GCG ATG CGG−3’)をNheI及びEcoRI位置の切断後(下線で表示)、上記Bae、M.Y.、などに開示されたpET23a−CEAプラスミドでクローニングした。Bae、M.Y.、などに開示された方法によって組換えタンパク質を生産し精製した。同じ方法で、ZnOpep−1、ZnOpep−2及び3xZnOpep−2を生産した。精製されたタンパク質は、使用前にエンドキシン除去カラム(Pierce)で処理された。精製された組換えタンパク質のエンドトキシン汚染は、QCI−1000 End−Point Chromagenic Endotoxin Detection Kit(Lonza)を利用して調査した。
【0070】
実施例6:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換えCEA腫瘍抗原の結合力
実施例5では、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換え癌腫胚芽抗原(Carcino−Embryonic Antigen、CEA)の結合力を確認した。互いに異なる濃度の酸化亜鉛結合ペプチドが含まれた組換えCEA腫瘍抗原と上記酸化亜鉛−結合性ペプチドが含まれていない腫瘍抗原を50μgの酸化亜鉛ナノ粒子とPBS(Phosphate−buffered saline)で1時間反応させ、反応が終わった後、さらに遠心分離機を利用して複合体を分離した後、マグネチックスタンドに15分間静置させた後、溶液を除去した後、PBSを利用して6回洗浄した。収去された酸化亜鉛ナノ粒子をSDS−PAGEサンプルバッファーに入れ、100℃で10分間反応させ、SDS−PAGEを行った後、クマシブルー染色法(Coomassie blue staining)を使用して酸化亜鉛ナノ粒子に結合された組換えタンパク質の量を確認した。その結果、図5から明らかなように、酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含まない組換えCEA腫瘍抗原は、酸化亜鉛ナノ粒子と非常に少ない量だけ結合したのに対し、酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換えCEA腫瘍抗原と酸化亜鉛の亜鉛は,ペプチドの濃度に依存的に増加することを確認することができた。これは、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換え腫瘍抗原の間にも結合が可能であることを意味する。
【0071】
実施例7:樹枝状細胞にローディングされた酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体のインビトロモニタリング
Bae、M.Y.、などに記述された方法を利用してマウス細胞から樹枝状細胞を製造し、これにコアシェルナノ粒子をローディングした。未成熟樹枝状細胞をコアシェルナノ粒子と共培養した。これは、成熟樹枝状細胞に比べて未成熟樹枝状細胞が捕食作用が活発するからである。インキュベーション時間とZnOシェルのローディング効率に対する効果を評価するために、未成熟樹枝状細胞を100μg/mlのFe3O4 NPsまたはFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子と多様な時間条件でインキュベーションした。導入されたナノ粒子は、DAB(diaminobenzidine)−enhanced Prussian blue染色法により探知され、光学強度の測定を用いて定量した。図6aは、DAB−enhanced Prussian blue染色を用いてインキュベーション時間によるFe3O4NPsとFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子の細胞内運搬状態を示し、図6bは、それぞれのサンプルでランダムに選択された100個の細胞の光学強度を測定した結果を示す。図6から明らかなように、8時間以前の反応時間では、Fe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子がFe3O4 NPsに比べてさらに効率的に樹枝状細胞により摂取されたが、インキュベーション20時間後には、何らの差異がなかった。この結果は、ZnOシェルがコアシェルナノ粒子の細胞内運搬を促進し、コアシェルナノ粒子を利用する場合、樹枝状細胞内への導入に必要なインキュベーション時間を低減することができることを提示する。
【0072】
図7は、コアシェルナノ粒子の光学的特性を利用した樹枝状細胞にローディングされた抗原のインビトロモニタリング結果を示す。図7aは、DAB−enhanced Prussian blue染色後に可視化されたコアシェルナノ粒子がローディングされた樹枝状細胞とコアシェルナノ粒子がローディングされていない樹枝状細胞を示す。図7aから明らかなように、インキュベーション1時間後、約95%以上の樹枝状細胞がコアシェルナノ粒子で標識されたものと現われた。ZnOナノ粒子が数時間内に捕食性細胞と非−捕食性細胞により効率的に吸収されることはよく知られている。正確なメカニズムは、まだわからないが、この結果は、ZnOによるFe3O4 NPsの表面コーティングが細胞性吸収(uptake)を促進することができることを提示する。通常的な超常磁性Fe3O4粒子が細胞内伝達のためにプロタミンスルフェートのようなトランスフェクション促進化合物や長いインキュベーション時間(略16時間〜48時間)を必要とするという点を考慮する時、本発明のコア−シェルナノ粒子は、少ないインキュベーション時間を必要とし、トランスフェクションのための試薬や表面改質を必要とないという点から大きい長所を有する。
【0073】
ZnOの光発光は、樹枝状細胞サイトゾル内への運搬後、レーザースキャニング共焦点顕微鏡を利用して調査した。図7bは、コアシェルナノ粒子がローディングされた樹枝状細胞(下端)またはローディングされていない樹枝状細胞(上端)を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す(励起:405nm、発光:>420nm)。ToPro−3染色試薬で染色された樹枝状細胞の核は、青色で現われる(White bar:10μm)。コアシェルナノ粒子−標識された樹枝状細胞は、405nmの波長で励起され、465〜679nmの広い発光波長で高い蛍光強度を示した。しかし、ピーク発光は、529〜550nmで観察され、これは、通常的なFACSまたは共焦点顕微鏡を通じて容易に観察されることができる(図示せず)。コアシェルナノ粒子は、サイトプラズムにわって分散されていて、凝集された形態で発見されたが、これは、捕食作用により吸収されたことを意味することができる。細胞内コアシェルナノ粒子分布の類似のパターンが非−食細胞性エピセリウム(epithelium)から由来したHeLa細胞でも現われた(データ不図示)。エンドソーム性またはリソソーム性小胞の共染色は、凝集されたコアシェルナノ粒子が初期エンドソーム性マーカーであるEEA1またはリソソーム性マーカーであるLAMP2との共存を示し、これは、凝集されたナノ粒子がエンドサイトーシスを通じて内在化されることを提示する。コアシェルナノ粒子がサイトプラズム及び細胞内輸送小胞(intracellular trafficking vesicles)内で探知されることを考慮する時、それらは、ファゴサイトーシスまたはエンドサイトーシスによって内在化されるものと思われる。
【0074】
また、コアシェルナノ粒子上に固定されたポリペプチドの細胞内運搬を調査した。図7cから明かなように、3×ZBP−結合されたコアシェルナノ粒子が樹枝状細胞のサイトプラズム内に効率的に運搬された。一部のペプチド−コアシェルナノ粒子凝集体は、ペプチドが結合されていないコアシェルナノ粒子のようにエンドソームまたはリソソームに部分的に共存したりした(White bar:10μm)。
【0075】
実施例8:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内伝達効率
実施例8では、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内に伝達される効率を調べた。酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内伝達効率をFACS分析法を使用して確認した。マウスの骨髓から分離した未成熟樹枝状細胞(1×106cells)をCEA腫瘍抗原と37℃で1時間反応させた後、細胞内に伝達された腫瘍抗原の量をFACSで分析した。酸化亜鉛ナノ粒子(50μg)とCEA腫瘍抗原(20μg)複合体をPBSで1時間反応させた。
【0076】
対照群及び実験群としてa)酸化亜鉛ナノ粒子処理群、b)CEA腫瘍抗原処理群、c)酸化亜鉛−結合性ペプチドを含む組換えCEA腫瘍抗原処理群、d)酸化亜鉛ナノ粒子とCEA腫瘍抗原を一緒に処理した群、e)酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体処理群に分析した結果、図7dから明らかなように、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原が複合体を形成することができる実験群だけで樹枝状細胞内でCEA腫瘍抗原が細胞内に伝達されたことを確認することができた(コアシェルナノ粒子:酸化亜鉛コアシェルナノ粒子、CEA:腫瘍抗原、3Xzbp−CEA:酸化亜鉛−結合性ペプチド(3×ZnOpep−1)が結合された腫瘍抗原)。これは、今後、酸化亜鉛ナノ粒子を利用して酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むCEA腫瘍抗原の複合体を樹枝状細胞内に導入することができる伝達体として使用可能であることを意味する。
【0077】
実施例9:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内伝達による樹枝状細胞の生存率及び成熟
コアシェルナノ粒子のローディングが樹枝状細胞の生存率及び成熟に及ぶ影響に対して評価した。図8aは、100μg/mlコアシェルナノ粒子を1〜7日間樹枝状細胞とインキュベーションした時の細胞生存率を示し、図8bは、多様な濃度のコアシェルナノ粒子(12.5〜400μg/ml)を3日間樹枝状細胞とインキュベーションした時の細胞生存率を示す。図8から明らかなように、コアシェルナノ粒子のローディングは、樹枝状細胞の細胞生存率に影響を及ぼさない。図9は、コアシェルナノ粒子のローディングの前と後の樹枝状細胞の成熟マーカーを示す。バクテリアのLPS(lipopolysaccharide)が樹枝状細胞の成熟のために使用された。樹枝状細胞上の成熟マーカー(MHCII、CD40、CD80、andCD86)の表面発現は、コアシェルナノ粒子ローディングによって影響を受けなかった。総合すれば、これら結果は、コアシェルナノ粒子ローディングが樹枝状細胞の細胞生存率や成熟に影響を及ぼさないことを提示する。
【0078】
実施例10:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞の磁気共鳴分析によるインビトロ及びイン秘宝での探知
ナノ粒子を利用したインビトロまたはインビボ磁気共鳴映像分析実験において、効果的な細胞標識リングのための最適の条件を決定することは非常に重要である。このために、まず、樹枝状細胞を多様な濃度のコアシェルナノ粒子(0〜160μg/ml)とインキュベーションした。図10aから明らかなように、樹枝状細胞のインビトロ磁気共鳴イメージング結果は、コアシェルナノ粒子の濃度が増加するにつれてT2弛緩時間が漸進的に減少するものと現われ(イメージが暗くなる)、100μg/ml未満で飽和されるものと現われた。最適のインキュベーション時間を定めるために、40μg/mlのコアシェルナノ粒子の存在下で0.5〜24時間樹枝状細胞を培養した。図10bから明らかなように、樹枝状細胞は、1時間内にコアシェルナノ粒子に飽和され、これは、前述したように、コアシェルナノ粒子が1時間内に樹枝状細胞により効率的に吸収されることを示し、磁気共鳴イメージングにおいてT2弛緩時間の十分な減少を示す。図11から明らかなように、Fe3O4−標識された樹枝状細胞(○)と比較する時、最初4時間コアシェルナノ粒子−標識された樹枝状細胞(●)の磁気共鳴映像分析結果は、T2弛緩時間においてさらに迅速な減少を示した。これら結果は、コアシェルナノ粒子が非浸湿的磁気共鳴映像分析を利用したインビボでの樹枝状細胞移動モニタリングのために適用されることができることを示す。
【0079】
磁気共鳴映像分析による樹枝状細胞輸送のインビトロモニタリングに対するコアシェルナノ粒子の潜在的用途を検証するために、コアシェルナノ粒子が標識された樹枝状細胞をC57BL/6マウスの後足の裏に注射した。注射された足の裏から膝窩リンパ節に移動した樹枝状細胞をT2−weighted multigradient echo磁気共鳴シーケンス(sequence)を利用して観察した。図10cから明らかなように、注射48時間後、左側リンパ節内でコアシェルナノ粒子−標識された細胞の存在を示す低信号強度(hypointense)を示す領域が観察された(赤色矢印)。予想したように、ZnO NPで標識された樹枝状細胞の注射部位に相当する膝窩リンパ節では、T2減少が観察されなかった(白色矢印)。
【0080】
コアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞は、排出リンパ節の中心部で観察され、これは、T2減少がリンパ管を通じて輸送されたコアシェルナノ粒子よりはコアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞によるものであることを示す。ガラスナノ粒子は、一般的にリンパ管を通じて輸送された後、リンパ節の被膜下領域(subcapsular region)に位置する。切断したリンパ節の免疫組職学的分析は、磁気共鳴映像分析により観察されたT2減少がT細胞領域に移動したコアシェルナノ粒子−標識樹枝状細胞により惹起されたものであることを示す(図10d)。DAB−enhanced Prussian blue染色と免疫組職化学染色(anti−Thy1.2、図10dの上端;anti−B220、図10dの下端)の結果を組み合わせて見れば、コアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞は、大部分B220+B細胞小胞(follicle)ではないThy1.2+T細胞領域内に存在することが分かる。対照的に、酸化亜鉛でラベルされたDCsを注入したリンパ節では、鉄成分を測定することができなかった。
【0081】
実施例11:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞により誘導された抗−腫瘍免疫
酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞でC57BL/6マウスを兔疫し、CEA−特異的細胞性免疫を分析した。兔疫されたマウスの脾臓からリンパ球を得、インビトロで多様な濃度のCEAで再刺激した。図12aから明らかなように、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBPCEA)で免疫化されたマウスのリンパ球は、対照群のリンパ球よりCEAに対する反応においてさらに高い投与量−依存的な増殖を示した。CEA特異的な細胞毒性リンパ球が全身的に生成されるか否かを調査するために、免疫化されたマウスから得た脾臓細胞(Splenocyte)を分析した。樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で免疫化されたマウスからの脾臓細胞を利用する時、CEA−発現癌細胞((MC38/CEA)に対する著しい細胞毒性反応が観察されたのに対し、対照群では、有意な細胞毒性が観察されなかった(図12b、右側パネル)。CEA−陰性MC38標的細胞に対する脾臓細胞の細胞毒性は、実験群のうちいずれも有意に現われなかった(図12b、左側パネル)。これは、兔疫されたマウスで探知された反応が腫瘍抗原CEA特異的であることを提示する。次に、細胞−媒介免疫反応の典型的な標識サイトカインであるIFN−γを生成するT細胞の生成を調査した。脾臓細胞でCEA−特異的CD8+T細胞免疫反応を細胞内サイトカイン染色及びCEA抗原の存在または不在下でフローサイトメトリーを用いて調査した。IFN−γ−分泌CD8+T細胞の頻度は、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で免疫化されたマウスから得たCD8+T細胞だけでただ腫瘍抗原による刺激後、略10倍程度増加した。対照的に、他の対照群から得たCD8+T細胞は、免疫後、有意なIFN−γ分泌を示さなかった(図12c)。樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBPCEA)群は、他の樹枝状細胞群に比べてリンパ節でCEA−特異的な、IFN−γ−生産CD4+またはCD8+T細胞を生成するにあたってさらに効果的であった(図13)。この結果は、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)がインビボでCEA特異的な細胞性免疫を効果的に生成することができることを示す。
【0082】
C57BL/6マウスのわき腹にMC38/CEA細胞を注入し、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)免疫による腫瘍の成長を観察し、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)の抗腫瘍兔疫性を評価した。腫瘍接種後7日後、マウスを一週間間隔をもって週1回ずつ樹枝状細胞を4回兔疫した。図14aから明らかなように、対照群と比べて樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)が注入されたマウスで腫瘍成長がより抑制された(□:NP/3×ZBP−CEA、■:NP/CEA、▽:3xZBP−CEA、▼:CEA、○:NP、●:DC)。また、図14bから明らかなように、腫瘍接種40日後、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で処理された5匹のマウスが全部生存したのに対し、他のすべての群のマウスは、死んだ。樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で免疫化されたマウスの平均生存期間は、対照群マウスに比べて平均10.5〜19.5日延長された。このような結果は、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)が対照群に比べてCEA−陽性腫瘍に対するさらに強力な保護免疫反応を誘導することを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体、医薬の製造のための薬物伝達体としてのその用途、上記複合体を含むワクチン組成物及び造影剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ技術は、多様な分野において応用されていて、特に医療分野と生命工学分野において最も広く利用されている。医療分野では、ナノ技術を利用して診断と治療の革命を可能にする迅速且つ効果的な塩基配列分析、または人体疾病を診断及び予防することができるナノ感知分析に応用されていて、生命工学分野では、遺伝子や薬物の伝達、またはナノ配列を基盤とした分析技術などに活用されている。
【0003】
現在、さまざまな素材が多様なサイズのナノ粒子を製造するのに使用されていて、このようなナノ粒子は、免疫治療、磁気共鳴映像(Magnetic ResonanceImaging、MRI)診断、薬物伝達体系開発などに活用されている。
【0004】
これらのうち酸化亜鉛ナノ粒子は、その電気的、光学的特性に起因して、窯業分野、電気素材分野、センサー、医生物学分野に広く使用されている。特に最近になって、酸化亜鉛と有機物質を利用したナノ構造体合成を通じて生物学的感知装置などを開発するのに幅広く活用されていて、人体危害性が低いため(食品添加物として米国FDAの使用許可物質)食品、医薬品産業分野において軟膏、色素、食品添加物などにも広く使用されている。したがって、生体適用可能性が非常に高い素材として注目されていて、今後、多様な医生命工学分野への活用が期待されている。
【0005】
酸化亜鉛ナノ粒子を医生命工学分野に活用するためには、タンパク質などの生体高分子と結合させる過程が必要である。しかし、この素材自体が他の有機物質と強く結合しない特性があるため、大部分の場合において、酸化亜鉛ナノ粒子の表面を化学的に処理する製造工程が導入されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kjaergaard et.al、2000 App.Env.Microbiol.66(1)10−14;Thai et.al.、2004 Biotech.Bioengineering.87(2)129−137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような酸化亜鉛ナノ粒子の表面処理過程は、有機溶媒または化学的反応性が高い化合物を使用しなければならないので、人体に直接使用されることができるナノ粒子または構造体の製造及び活用に制約となっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを利用して酸化亜鉛ナノ粒子の生体適合性を改質し、これを医薬の製造のための薬物伝達体として活用するか、またはワクチン、造影剤、生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、バイオセンサーに応用可能なビーズなどの製造に使用しようとする。
【0009】
本発明者らは、酸化亜鉛ナノ粒子を化学的に改質する代わりに、酸化亜鉛−結合性ペプチドを導入し、酸化亜鉛ナノ粒子の生体利用性を改善させることができるという点に着目した。下記実施例で確認することができるように、酸化亜鉛−結合性ペプチドを酸化亜鉛ナノ粒子に導入する場合、酸化亜鉛ナノ粒子を利用して伝達しようとする腫瘍抗原の結合力が酸化亜鉛−結合性ペプチドを使用しない群に比べて著しく高い。したがって、本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を提供する。
【0010】
本発明において使用しようとする酸化亜鉛−結合性ペプチドは、一般的なペプチドに比べて酸化亜鉛ナノ粒子に対する親和力(affinity)に優れたペプチドを言う。下記実施例から明らかなように、酸化亜鉛−結合性ペプチドを使用しない場合、タンパク質薬物は、酸化亜鉛ナノ粒子とほとんど結合しない。しかし、酸化亜鉛−結合性ペプチドを使用する場合、タンパク質、DNA、RNAなどの薬物は、特別な化学的固定方法を使用しなくても、酸化亜鉛ナノ粒子に導入することができるようになる。
【0011】
酸化亜鉛に結合するペプチドをペプチドライブラリスクリーニングを通じて捜し出す方法については、既存に報告されているが(Kjaergaard et.al、2000 App.Env.Microbiol.66(1)10−14;Thai et.al.、2004 Biotech.Bioengineering.87(2)129−137)、これら論文では、大腸菌表面にペプチドを発現させて、酸化亜鉛フィルムに結合された大腸菌数を測定することによって、酸化亜鉛との結合有無を間接的に確認しただけであり、その結合力に対する詳細な分析は行われかった。また、これら論文では、酸化亜鉛−結合性ペプチドを酸化亜鉛ナノ粒子に導入し、これを薬物伝達体として使用するか、またはワクチン、または造影剤などとして使用することができることについては全然開示していない。
【0012】
これより、上記先行技術に開示されたペプチドライブラリを利用した酸化亜鉛−結合性ペプチドのアミノ酸配列を分析した結果、酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構成を有することが好ましいという事実を知見した。
【0013】
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【0014】
すなわち、Arg−X1−X2−ArgまたはArg−X1−X2−Arg−Lysモチーフを共通的に含み且つ直列繰り返し(tandem repeat)構造を有するようにすれば、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドの酸化亜鉛に対する結合力が増加するものと現われた。直列繰り返し構造を有するようにするために、上記モチーフが流動的に結合することができるリンカーを含ませた。このようなリンカーとして、下記実施例では、Gly−Gly−Asp−Alaを使用したが、モチーフ間の結合に流動性を提供することができる形態ならリンカーの構成は、特に制限されない。例えば、このようなリンカーには、Glyが多数含まれることが好ましいことができる。例えば、Gly−Gly−Asp−Xaa−Ala(Xaaは、任意のアミノ酸)の形態もリンカーに使用可能である。上記Xaaとしては、SerやValが好ましいものと予想される。下記実施例で確認することができるように、このような酸化亜鉛−結合性ペプチドは、酸化亜鉛との結合性が非常に優れているので、酸化亜鉛ナノ粒子の生体内または細胞内活用のための酸化亜鉛ナノ粒子の表面改質のために使用されることができる。
【0015】
したがって、本発明は、下記式(I)または(II)の酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を提供する。
【0016】
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【0017】
一具体例において、X1は、ProまたはThrであり、X2は、Hisであり、mは、1〜5の整数であり、nは、3〜50の整数であることができる。
【0018】
他の具体例において、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドは、配列番号1〜4のうちいずれか1つのアミノ酸配列を有するペプチドであることができる。
【0019】
配列番号1:Arg Pro His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
配列番号2:Arg Thr His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
配列番号3:Arg Pro His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
Arg Pro His Arg Lys Gly Gly Asp Ala Arg Pro
His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
配列番号4:Arg Thr His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
Arg Thr His Arg Lys Gly Gly Asp Ala Arg Thr
His Arg Lys Gly Gly Asp Ala
【0020】
本発明において、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、式(I)または(II)の酸化亜鉛−結合性ペプチドそのものであることができる。この場合、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体に追加にタンパク質、DNA、RNA、化合物医薬、造影物質などの薬物が追加に導入されることができる。このような薬物は、例えば、複合体と物理的または化学的に結合されることができ、これにより、生体内または細胞内にこれら薬物を伝達する役目をするようになる。
【0021】
この場合、薬物の効果的な伝達のために、複合体表面には、標的指向性リガンドが結合されることができる。本発明の複合体が組職や細胞に導入されることができるように標的化させるリガンドを意味する。このような標的指向性リガンドとしては、抗体、アプタマーだけでなく、細胞表面の特定受容体と結合するものと知られている化合物リガンドも有用に使用することができる。このような抗体、アプタマー、化合物リガンドの具体的な種類は、当業界によく知られている。
【0022】
上記複合体と薬物との物理的または化学的結合、または上記複合体と標的指向性リガンドとの物理的または化学的結合は、複合体表面に存在するタンパク質と薬物または標的指向性リガンドとの結合により行われ、これは、当業界に公知された方法を利用して容易に行われることができる。
【0023】
例えば、複合体表面のタンパク質に存在する官能基と薬物や標的指向性リガンド上に存在する官能基との共有結合により行われることができる。このような官能基は、タンパク質、薬物または標的指向性リガンド上に本来存在するものであることができるが、必要な場合、相互結合可能な官能基を有するように改質することができる。タンパク質上に存在する官能基と薬物または標的指向性リガンド上に存在する官能基は、互いに結合を形成することができるように公知の官能基の結合例から選択されることができる。このようなこのような公知の官能基の結合例のうち代表的な例を下記表1に示した。
【0024】
【表1】
【0025】
または、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチドだけでなく、第2のペプチドをタンパク質内に含む融合タンパク質であることができる。このような融合タンパク質は、当業界に公知された通常の組換えタンパク質製造方法により容易に製造することができる。この際、第2のペプチドは、酸化亜鉛−結合性ペプチドのN末端またはC末端に位置することができ、その位置は、特に制限されない。
【0026】
例えば、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質に含まれる第2のペプチドは、抗原であることができる。
【0027】
すなわち、一具体例において、上記タンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質であることができる。
【0028】
酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体は、後述するように、非常に多様な用途に使用されることができる。例えば、酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体は、免疫治療のためのワクチン組成物の製造のために使用されることができる。酸化亜鉛ナノ粒子は抗原が含まれた組換えタンパク質に対する担体または薬物伝達体として利用される。
【0029】
一具体例において、上記抗原は、腫瘍抗原であることができる。下記実施例では、酸化亜鉛−結合性ペプチドと腫瘍抗原を含む組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を樹枝状細胞に導入し、このような樹枝状細胞をワクチンとして利用して癌を治療または予防することができることを示す。
【0030】
このような腫瘍抗原の種類は、特に制限されず、当業界に公知されている腫瘍抗原ならいずれも使用可能である。癌の治療または予防のために使用されることができる腫瘍抗原の代表的な例は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインなどを含む。このような腫瘍抗原の例及びこれらを発現する癌細胞については、当業界によく知られている。
【0031】
なお、本発明において使用される酸化亜鉛ナノ粒子は、その全体が酸化亜鉛よりなる酸化亜鉛ナノ粒子だけでなく、その他の成分を含む酸化亜鉛ナノ粒子をも含むものと定義する。
【0032】
一具体例において、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛だけよりなるものであることができる。この場合、本発明の複合体は、酸化亜鉛ナノ粒子を通じてタンパク質などの薬物を生体内または細胞内に伝達する役目を行い、また酸化亜鉛ナノ粒子の本然の特性によって光学イメージングを可能にする。
【0033】
一具体例において、本発明の酸化亜鉛ナノ粒子は、酸化亜鉛によってナノ構造の外部が一部または全部取り囲まれたナノサイズの物質よりなることができる。このような例として、ダンベル(dumbbell)形状、ナノ線、合金、薄膜などを例示することができる。ダンベル形状では、一方は、一部/または全部が酸化亜鉛で 構成されることができ、ダンベルの他方は、磁性、金属、高分子、セラミック、半導体などで構成されることができる。また、合金は、金属、セラミック、半導体と酸化亜鉛の合金よりなることができる。(例:FeOとZnO、AuとZnO)、また、ナノ線の場合、電気化学的または湿式方法で形成されることができるが、ZnOナノ線、ZnOが含まれたナノ線(例:AuZnO合金ナノ線)、ZnOがコーティングされたナノ線を使用することができる。また、ZnOが表面に存在する薄膜を使用することもでき、使用先によって上記構造が複合的に構成された構造(例:薄膜に1次元ナノ船が突出されている構造、粒子表面にナノ粒子、ナノ線などが付着された構造)も含まれることができる。
【0034】
他の具体例において、上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有するものであることができる。コア−シェル構造を有する酸化亜鉛ナノ粒子において、シェルは、本発明のタンパク質との結合のために酸化亜鉛よりなり、コアには、本発明による複合体の適用目的によって適当な物質を選択して位置させることができる。
【0035】
例えば、一具体例において、上記コアは、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなるものであることができる。上記金属は、特に制限されないが、Pt、Pd、Ag、Cu及びAuよりなるグループから選択されることが好ましい。上記磁性物質も、特に制限されないが、Co、Mn、Fe、Ni、Gd、Mo、MM’2O4、及びMxOy(M及びM’は、それぞれ独立的にCo、Fe、Ni、Mn、Zn、Gd、またはCrを示し、0<x≦3、0<y≦5)よりなるグループから選択されることが好ましい。また、上記磁性合金も特に制限されないが、CoCu、CoPt、FePt、CoSm、NiFe、及びNiFeCoよりなるグループから選択されることが好ましい。また、半導体物質としては、これに制限されるものではないが、CdSe、CdTe、ZnSeなどが選択されることができる。
【0036】
一具体例において、上記コアは、磁性物質よりなるものであることができる。この場合、本発明の複合体を利用すれば、酸化亜鉛ナノ粒子内部の磁性物質によって外部磁場による生物製剤(DNA、RNA、細胞など)の効果的な分離、薬物伝達、高効率診断、外部磁場による温熱治療(Hyperthermia)をはじめとする治療、そしてMRI造影などが可能である。
【0037】
一具体例において、上記コアは、T1またはT2造影物質よりなるものであることができる。この場合、本発明の複合体は、酸化亜鉛ナノ粒子を通じてタンパク質を生体内または細胞内に伝達することができると共に、酸化亜鉛内のT1またはT2造影物質によってMRI造影が可能であり、酸化亜鉛ナノ粒子本然の特性によって光学イメージングが可能なマルチモーダル特性を有するようになる。コア−シェル構造を有する酸化亜鉛ナノ粒子で使用されることができるT1またはT2造影物質の種類は、特に制限されず、T1またはT2造影物質の例は、当業界によく知られている(例えば、大韓民国特許公開10−2010−0023778号公報参照)。
【0038】
一具体例において、上記コアは、酸化鉄よりなるものであることができる。下記実施例では、コアがT2造影物質である酸化鉄よりなり、シェルが酸化亜鉛よりなるコア−シェル構造の酸化亜鉛ナノ粒子を製造し、このような酸化亜鉛ナノ粒子と、酸化亜鉛−親和性ペプチドと腫瘍抗原を含むタンパク質との複合体を利用して癌細胞を造影し、癌細胞を死滅させることができることを示す。
【0039】
本発明による酸化亜鉛ナノ粒子は、好ましくは、高分子界面活性剤を利用して製造されたものであることができる。高分子界面活性剤のうち両親媒性(amphiphilic)界面活性剤を使用すれば、酸化亜鉛ナノ粒子を有機溶媒上で高温熱分解法(Thermodecompostion)で製造することができ、共沈法(Co−precipitation)など他の方法で製造したナノ粒子に比べて結晶性に優れていて、均一なサイズを有する酸化亜鉛ナノ粒子を得ることができると共に、両親媒性界面活性剤を使用せずに有機溶媒上で製造したナノ粒子に比べて水に対する分散性が相対的に優れているという長所を提供する。このような両親媒性界面活性剤としては、ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ポリプロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)を使用することができる。
【0040】
なお、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体形成には、特別な方法が要求されない。酸化亜鉛−結合性ペプチドの酸化亜鉛に対する親和性によって、上記タンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子を単純にインキュベーションすることだけでも、簡単に複合体を形成することができる。
【0041】
また、本発明は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を薬物伝達体として含む医薬組成物を提供する。前述したように、本発明の複合体は、タンパク質、DNA、RNA、細胞、化合物医薬、造影物質などの薬物と結合し、これら薬物を生体内または細胞内に伝達する薬物伝達体として機能することができる。このような薬物は、前述したように、上記複合体と物理的または化学的に結合されることができ、このような薬物以外にも、複合体に標的指向性を付与するための標的指向性リガンドが追加に結合されることができる。また、本発明の医薬組成物は、複合体と結合される薬物以外にも、追加の薬物をさらに含むことができ、医薬の製剤化のために一般的に利用されるさまざまな賦形剤を含むことができる。
【0042】
また、本発明は、薬物を、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体と混合するか、または上記複合体に結合させることを含む薬物と上記複合体を含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0043】
また、本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含むワクチン組成物を提供する。前述したように、酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体は、ワクチン組成物の製造のために使用されることができる。酸化亜鉛−結合性ペプチドは、抗原が酸化亜鉛ナノ粒子に結合することを可能にして、酸化亜鉛ナノ粒子を薬物伝達体として抗原を生体内または細胞内に導入することを容易にする。生体内または細胞内に導入された抗原は、上記抗原に対する細胞性または体液性免疫反応を引き起こし、人体の免疫システムを通じて上記抗原によって媒介される疾患を治療または予防するようになる。このような抗原の種類は、特に制限されず、人為的に免疫反応を起こし、疾病を予防または治療するために使用される抗原なら、いずれも本発明のワクチン組成物の製造のために使用することができる。一具体例において、上記抗原は、腫瘍抗原であることができ、この場合、このようなワクチン組成物は、癌の治療または予防のために使用されることができる。
【0044】
本発明の一具体例において、上記ワクチン組成物は、追加に兔疫細胞を含むものであることができる。本発明において、兔疫細胞は、免疫系を担当する細胞を総称するもので、具体的には、樹枝状細胞、T細胞、NK細胞、B細胞などを含む。一具体例において、上記兔疫細胞は、樹枝状細胞、T細胞、NK細胞であることができる。なお、このような組成物には、細胞以外にも細胞を安定に維持することができる緩衝液などが含まれる。
【0045】
兔疫細胞を利用した癌の免疫治療方法については、当業界によく知られている。例えば、患者から樹枝状細胞を回収した後、樹枝状細胞にTATタンパク質と腫瘍抗原の融合タンパク質を導入し、このように腫瘍抗原を収得した樹枝状細胞をさらに体内に注入し、樹枝状細胞にとって免疫反応を誘導するようにして、癌細胞を死滅させる方法である。腫瘍抗原を樹枝状細胞に導入するために、TAT融合タンパク質を利用するなどの既存の方法は、手続が複雑であるだけでなく、培養時間が多く所要され、そのため、樹枝状細胞の生存率の低下、生体内の導入後の効果の低下などが問題になった。しかし、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を兔疫細胞に導入し、これをワクチン組成物に使用する場合、簡単な方法で短時間内に兔疫細胞を含む細胞治療剤、すなわちワクチンを製造することができる。さらに、下記実施例で確認することができるように、本発明の複合体は、樹枝状細胞の生存率、免疫効能などにも影響を及ぼすことなく、腫瘍抗原の伝達率が非常に高いため、効果的に癌細胞を死滅させることができるものと現われた。したがって、本発明の一具体例において、上記ワクチン組成物は、上記複合体が導入した兔疫細胞を含むものであることができる。
【0046】
兔疫細胞を含む癌免疫治療剤またはワクチン組成物の組成、投与方法、有効量などについては、当業界によく知られている。
【0047】
また、本発明は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含む造影剤を提供する。
【0048】
前述した酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体は、薬物伝達体またはワクチンの役目を行うことができるだけでなく、酸化亜鉛ナノ粒子は、その自体で光学的造影が可能な特性を有しているため、同時に造影剤(imagingagent)として作用することができる。
【0049】
一具体例において、上記酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体には、標的指向性リガンドが結合されてもよい。この場合、造影剤の標的指向性が向上するようになる。
【0050】
他の具体例において、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むものであることができる。前述したように、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質に抗原が含まれる場合、上記抗原を発現する標的細胞に本発明の複合体が導入され、免疫反応を誘導することができると共に、複合体が持っている造影効果によって標的細胞の造影が可能になる。このような抗原の種類は、特に制限されない。一具体例において、上記抗原は、腫瘍抗原であることができ、この場合、上記造影剤は、癌の免疫治療と同時に造影を可能にする。上記腫瘍抗原は、これに制限されるものではないが、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されるものであることができる。
【0051】
上記造影剤に含まれる酸化亜鉛ナノ粒子の構成は、前述した通りである。一具体例において、上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有するものであることができる。例えば、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなるものであることができる。前述したように、酸化亜鉛ナノ粒子がT1またはT2造影物質よりなるコアと酸化亜鉛よりなるシェルで構成されたコア−シェル構造を有するものである場合、本発明の造影剤は、光学的イメージングだけでなく、磁気共鳴イメージングを可能にする。下記実施例で確認することができるように、酸化鉄コアと酸化亜鉛シェルよりなる酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドと癌腫胚芽抗原を含むタンパク質との複合体を含む本発明の造影剤は、癌細胞の死滅同時に注入した樹枝状細胞の位置を追跡診断することができる。磁気共鳴イメージングのための既存の酸化鉄ナノ粒子は、水溶液上での凝集を防止するために化学的表面処理をするか、または樹枝状細胞に導入するためにリポソームのような細胞伝達用化合物(transfection agents)を利用するなど手続が複雑であるだけでなく、培養時間が多く所要され、そのため、樹枝状細胞の生存率の低下、生体内導入後の効果の低下などが問題になった。しかし、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を樹枝状細胞に導入し、これをワクチン組成物に使用する場合、簡単な方法で短時間内に樹枝状細胞を含む細胞治療剤、すなわちワクチンを製造することができ、コアシェルに含まれた酸化鉄成分により磁気共鳴イメージングを可能にする。
【0052】
本発明の造影剤において、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチド以外に抗体をさらに含むものであることができる。この場合、抗体は、造影剤に標的指向性を付与する役目を行い、もし上記抗体が治療用抗体の場合、追加的に治療剤の役目を行うようになる。一具体例において、このような抗体は、腫瘍抗原をターゲットにするものであることができる。造影剤に標的指向性を付与するか、または腫瘍抗原をターゲットにして治療効果を示す抗体の種類については、当業界によく知られている。例えば、癌治療用抗体としてよく知られているハーセプチンのFc末端に酸化亜鉛−結合性ペプチドが存在するようにハーセプチンの組換え抗体を製造することができる。このような組換え抗体は、酸化亜鉛ナノ粒子に非常によく結合されることができ、このように形成された複合体は、癌の治療及び癌治療の予後を観察することができる治療剤と造影剤としての役目を同時に行うことができる。
【0053】
また、このような造影剤組成物において、上記複合体には、タンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される1つ以上の薬物が物理的または化学的に結合されてもよい。例えば、上記複合体に治療用薬物が結合されている場合、診断と同時に治療の効果を奏することができ、もし上記複合体に造影物質が追加的に結合されている場合、多機能性造影剤として作用することができる。このような造影物質としては、例えば、蛍光物質、放射性同位元素または量子ドットなどを含む。
【0054】
本発明による造影剤は、医薬分野において通常使用される担体及びビヒクルを含むことができる。具体的にイオン交換樹脂、アルミナ、アルミニウムステアレート、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、各種リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、カリウムソルベート、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセライド混合物)、水、塩または電解質(例えば、プロタミンスルフェート、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム及び亜鉛塩)、膠質性シリカ、マグネシウムトリシリケート、ポリビニルピロリドン、セルロース系基質、ポリエチレングリコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリアリレート、ワックス、ポリエチレングリコールまたは羊毛脂などを含むことができるがこれに制限されない。また、本発明による造影剤は、上記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、または保存剤などを追加に含むことができる。
【0055】
一具体例において、本発明による造影剤は、非経口投与のための水溶性溶液で製造することができ、好ましくは、 ハンクス溶液(Hank’s solution)、リンガー溶液(Ringer’s solution)または物理的に緩衝された塩水のような緩衝溶液を使用することができる。水溶性注入(injection)懸濁液は、ソジウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランのように懸濁液の粘度を増加させることができる基質を添加することができる。
【0056】
本発明の造影剤の他の好ましい様態は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の滅菌注射用製剤の形態であることができる。このような懸濁液は、適当な分散剤または湿潤剤(例えば、ツイン80)及び懸濁化剤を使用して本分野に公知された技術によって剤形化することができる。また、滅菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液(例えば、1、3−ブタンジオール中の溶液)であることがある。使用されることができるビヒクル及び溶媒としては、マンニトール、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。また、滅菌非揮発性オイルが通常的に溶媒または懸濁化媒質として使用される。このような目的のために合成モノまたはジグリセライドを含めて刺激性が少ない非揮発性オイルは、いずれも使用することができる。
【0057】
上記造影剤を生体に投与する段階は、医薬分野で通常的に利用される経路を通じて投与されることができ、非経口投与が好ましく、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または局所経路を通じて投与することができる。
【0058】
なお、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体は、上述した薬物伝達体、ワクチン、または造影剤の製造のための用途以外に生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、MRI造影剤、バイオセンサーに応用可能なビーズ(bead)の製造のための用途を追加に提供する。例えば、酸化亜鉛ナノ粒子が持っている光学的特性によって本発明の複合体をFACSのような光学分離に使用し、遺伝子、細胞などの生物学的物質の分離に利用することができる。他の具体例において、本発明の酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体がコア−シェル構造を有していて、上記コアが磁性物質よりなり、シェルが酸化亜鉛よりなる場合、コアに存在する磁性物質に起因してMACSのような物質の磁性分離への応用が可能である。また、本発明は、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体を含む温熱治療用組成物、酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質及び酸化亜鉛ナノ粒子の複合体をビーズとして含むバイオセンサーなどを提供する。
【発明の効果】
【0059】
酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質は、酸化亜鉛ナノ粒子の生体内活用性を顕著に改善させるので、上記複合体は、医薬の生体内または細胞内伝達のための薬物伝達体として使用することができると共に、生体または細胞のイメージングのために使用することができ、生物製剤を効果的に分離することができる分離剤、温熱治療をはじめとする治療剤、MRI造影剤、バイオセンサーに応用可能なビーズ(bead)の製造のための用途を追加に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】Fe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子のTEM分析、構造、成分分析、水溶液での分散、光学特性、及び磁性特性分析結果を示す。
【図2】本発明のZnOpep−1と3×ZnOpep−1量を測定した405nmでの吸光度結果を示す。
【図3】本発明のZnOpep−1、3×ZnOpep−1及び3×ZnOpep−2がコアシェルナノ粒子と結合した量を測定した405nmでの吸光度結果を示す。
【図4】多様な種類の水溶液内での酸化亜鉛ナノ粒子とペプチドの間の結合力を示す。
【図5】水溶液内で酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛結合ペプチドを含むCEA腫瘍抗原の組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の結合力を示す。
【図6】図6aは、DAB−enhanced Prussian blue染色を通じてインキュベーション時間によるFe3O4ナノ粒子とFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子の細胞内運搬状態を示し、図6bは、それぞれのサンプルでランダムに選択された100個の細胞の光学強度を測定した結果を示す。
【図7】図7aは、樹枝状細胞内に導入されたコアシェルナノ粒子をDAB−enhanced Prussian blue染色を通じて確認した結果を示す。図7bは、コアシェルナノ粒子の光学的特性を利用して共焦点蛍光顕微鏡で導入されたコアシェルナノ粒子を確認した結果を示す。図7cは、樹枝状細胞内に導入されたコアシェルナノ粒子結合ペプチドを共焦点蛍光顕微鏡で観察した結果を示す。図7dは、樹枝状細胞内に酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛結合ペプチドを含むCEA腫瘍抗原の組換えタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子を伝達した場合に樹枝状細胞内に存在する腫瘍抗原の量をFACS分析した結果である。
【図8】コアシェルナノ粒子のローディングが樹枝状細胞の細胞生存率に影響を及ぼさないことを示すグラフである。
【図9】コアシェルナノ粒子のローディングが樹枝状細胞の成熟に影響を及ぼさないことを示すグラフである。
【図10】酸化鉄ナノ粒子とコアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞の磁気共鳴映像分析によるインビトロ(in vitro)及びインビボ(in vivo)での探知結果を示す。
【図11】酸化鉄ナノ粒子で標識された樹枝状細胞(○)とコアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞(●)のT2弛緩時間を比較した磁気共鳴分析結果を示す。
【図12】酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞によって誘導された抗−腫瘍兔疫性を評価した結果を示す。
【図13】酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞によって誘導されたCEA−特異的T細胞反応の誘導結果を示す。
【図14】酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞で兔疫されたマウスの腫瘍成長及び生存を分析した結果を示す(□:NP/3×ZBP−CEA、■:NP/CEA、▽:3xZBP−CEA、▼:CEA、○:NP、●:DC)。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現され、ただ本実施例は、本発明の開示が完全になるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義される。
【実施例】
【0062】
実施例1:Fe3O4−ZnOコア−シェルナノ粒子の合成
Fe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子(core−shellna noparticles、CSNP)を改良されたナノエマルジョン方法により製造した。
Fe3O4コア合成のために0.5mmol(0.1766g)のアイアン(III)アセチルアセトネート(Fe(acac)3、99.9%、Aldrich)と2.5mmol(0.6468g)の1、2−ヘキサデカンジオール(1、2−hexdecanediol、C14H29CH(OH)CH2(OH)、90%、Aldrich)をポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(ポリプロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG、Aldrich)(0.7529g)とともに10ml〜20mlのオクチルエーテル(C8H17OC8H17、99%、Wako)に溶解した。ナノ粒子の物理的、化学的特性制御のためにPEG−PPG−PEGの代わりに、ポリビニルピロリドン(PVP)が使用されることができ、溶媒としては、オレイルアミン(OAM、C9H18=C9H17NH2、70%)、オレイン酸(OA、C9H18=C8H15COOH、99%)などが使用されることができる。
【0063】
還元過程は、上記混合溶液を1時間80℃〜130℃までゆっくり加熱し、その温度で1時間〜2時間循環させた。その後、15分間260℃〜300℃まで早く加熱し、260℃〜300℃で1時間〜2時間循環させた。混合溶液を室温まで冷却させれば、磁性体コア物質が形成される。合成過程は、アルゴンのような不活性ガス雰囲気で進行することができる。上記磁性体コアを製造した後、特別な精製過程なしにZnOコーティング工程を進行した。既に形成されたFe3O4コアに0.25mmol(0.0659g)の亜鉛アセチルアセトネート(zinc acetylacetonate、Zn(acac)2)、0.3234g(1.25mmol)の1、2−ヘキサデカンジオール(1、2−hexdecanediol)が溶解されたオクチルエーテル(octylether、5ml)を添加した後、加熱手段と磁力攪拌器(Magnetic Stirring)を使用して上記反応混合物を80℃〜130℃まで温度を上げ、1時間〜2時間均一に混合した。次いで、混合溶液を加熱し、260℃〜300℃の間で1時間〜2時間程度維持した結果、ZnO層がFe3O4上に形成された。反応後、Fe3O4−ZnOコア−シェルナノ粒子を無水エタノール(anhydrous ethanol)を添加し、遠心分離及び磁性分離を利用して洗浄した。製造されたコア−シェルナノ粒子の形態、組成及びナノ構造は、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry) が備えられたTEM(JEOL 2010F、Technai F20(FEI Co.))で測定した。TEM測定のためのサンプルの製造のために、ヘキサン中に分散したナノ粒子と水とPBSに分散されたペプチド−ナノ粒子複合体は、それぞれcarbon−supported copper grids上に落とした。Fe3O4−ZnONPsの構造的分析は、粉末x−線回折分析機(10C1 beamline、Pohang Accelerator Laboratory、South Korea)により行われた。磁性特性は、試料振動型磁力計 (vibrating sample magnetometer)(Lakeshore 7300)、 物理特性測定装置(Physical property measurement system)(PPMS、Quantum Design)を使用して測定された。ヘキサン中に分散されたナノ粒子と水とPBSに分散されたペプチド−ナノ粒子複合体の光学特性は、それぞれUV− 可視分光法(Visspectroscopy)(Agilent 8453E)及び分光蛍光光度計(spectrofluorophotometer) (Shimadzu RF−5301PC)により分析された。図1は、Fe3O4−ZnOナノ粒子のTEM分析、水分散性、磁性特性及び光学特性分析結果を示す。具体的に、図1aは、Fe3O4−ZnOナノ粒子の球形形態及び均一なサイズ分布を示すTEM結果である(Scale bar:100nm)。図1bは、コア−シェルナノ粒子の構造的模式図である。図1cは、単一コアシェルナノ粒子がFeとZnよりなることを示すTEM−EDX point−probe analysisの結果である。図1dは、PBS中での茶色のコアシェルナノ粒子の均質な分散を示し、図1eは、磁石によってナノ粒子の回収後、きれいで且つ透明な溶液を示す。図1fは、Fe3O4コア部分(赤色)とFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子(青色)の磁性履歴曲線を示す。図1gは、ペプチドが結合されたコアシェルナノ粒子のUV及び可視光放出を示す光発光(Photoluminescence)スペクトルを示す。
【0064】
実施例2:ZnO−結合性ペプチドの設計及び製造
ZnO−結合性ペプチド(ZnO−binding peptide、ZBP)の設計のために、先行研究から高−親和性ZnO結合パターンの配列を収集した。高−親和性結合ペプチドのクラスタリングによりRXXRまたはRXXRKの結合モチーフがZnO結合に重要な役目を行うことを知見し、RPHRKまたはRTHRKを下記実施例で使用されるZnO−結合性ペプチドのモチーフとして選択した。また、酸化亜鉛ナノ粒子とZnO−結合性ペプチドの間の結合力を増加させるために、酸化亜鉛−結合性ペプチドの製造時に、ZnO結合モチーフの直列繰り返しを導入しようとした。周辺モチーフ間の柔軟性を増加させることができる柔軟性リンカーとしてGGDAを選択し、これをモチーブの間に導入した。
【0065】
酸化亜鉛−結合性ペプチドの酸化亜鉛ナノ粒子に対する結合性を定量分析することができるように、酸化亜鉛−結合性ペプチドをビオチンで標識し、ストレプトアビジンとの結合性を調査する方法を使用した。このために、まず、ビオチンが標識された酸化亜鉛−結合性ペプチドとストレプトアビジンの間の結合を確認しようとした。ペプチド合成器(PeptrEXTM、Peptron)を利用してビオチンで標識されたペプチドとして、biotin−RPHRKGGDA(biotin−ZnOpep−1)、biotin−RPHRKGGDARPHRKGGDARPHRKGGDA(biotin−3xZnOpep−1)、biotin−RTHRKGGDA(biotin−ZnOpep−2)及びbiotin−RTHRKGGDARTHRKGGDARTHRKGGDA(biotin−3xZnOpep−2)を合成した後、滅菌された水に1mg/mlの濃度で溶かした。TBS(Tris buffered saline)に希釈した上記ペプチドをそれぞれ10μg/well、1μg/well、0.1μg/well及び0.01μg/wellずつとなるように、96ウェルプレート(96 well plate)に分注した後、4℃で16時間反応させて、上記プレートにコーティングした。その後、各ウェルに遮断溶液(blocking solution:5%Bovine serum albumin in TBS)を入れ、常温で一時間反応させた後、0.05%Tween20を含むTBSを使用して3回洗浄した。その後、AP−ストレプトアビジン結合体(alkaline phosphatase−streptavidin conjugate)を1:1,000で希釈し、常温で一時間反応させた。反応が終わった後、さらに0.05%Tween20を含むTBSを使用して残留AP−ストレプトアビジン結合体を除去した。その後、pNPPホスファターゼ(pNPP phosphatase)基質を添加し、20分間常温で反応させた後、停止バッファーを入れ、反応を停止した後、VICTOR(Perkinelmer社)を使用して405nmの波長で吸光度を測定した。その結果、図2から明らかなように、単一酸化亜鉛−結合性ペプチドより3X酸化亜鉛−結合性ペプチドがさらに高い吸光度を示し、これは、コーティングされた量に依存的に増加することを確認することができた。この結果は、酸化亜鉛−結合性ペプチドのビオチンとストレプトアビジンの結合力を利用して定量分析が可能であることを示唆する。
【0066】
実施例3:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力
実施例3では、実施例2に基づいて酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力を確認しようとした。実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子(エタノール内に保管)を1.5mlチューブに移し、マグネチックスタンドに20分間静置させて、コア−シェル(core−shell)酸化亜鉛粒子を分離した。上記酸化亜鉛ナノ粒子からエタノールを完全に除去した後、TBSを添加した後、超音波を利用してナノ粒子を水溶液に分散させた。100μgのナノ粒子と10μg、1μg、0.1μg、0.01μg及び0.001μgのペプチドをTBSに希釈して混合した後、常温で1時間回転して反応させた。反応後、遠心分離機を利用して(15,000g、2min)複合体を沈殿させた後、マグネチックスタンドに15分間静置させて、ナノ粒子−ペプチド複合体 を分離した。
【0067】
同一の方法で複合体をTBSを利用して6回洗浄した。1:1000で希釈されたAP−ストレプトアビジン結合体(1.5mg/ml)を添加し、常温で一時間回転して反応させた。反応が終わった後、さらに遠心分離機を利用して上記AP−ストレプトアビジン結合体を分離し、マグネチックスタンドに15分間静置させて溶液を除去した後、TBSを利用して6回洗浄した。その後、pNPPホスファターゼ基質を入れ、20分間常温で反応させ、停止バッファーを入れて反応を停止した後、VICTOR(Perkinelmer社)を利用して405nmの波長で吸光度を測定した。その結果、図3から明らかなように、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合が酸化亜鉛−結合性ペプチドの濃度に依存的に増加することを確認することができた。また、単一酸化亜鉛−結合性ペプチドより3X酸化亜鉛−結合性ペプチドが酸化亜鉛ナノ粒子とさらによく結合することを確認することができた。それぞれのペプチドの結合は、100μgのコアシェルナノ粒子に対して約1μg以下のペプチド(1xZBPに対して〜1nmol、3xZBPに対して〜0.3nmolに均等)が使用される時に飽和され、1μgのコアシェルナノ粒子当たり約3〜10pmolのペプチドが結合するものと現われた。
【0068】
実施例4:多様な水溶液での酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力
実施例4では、実施例3から確認した酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドの間の結合力を多様な水溶液条件でも結合が可能であるかを調べるために行った。実施例1で得た酸化亜鉛ナノ粒子(エタノール内に保管)を1.5mlチューブに移し、マグネチックスタンドに20分間静置させてコア−シェル(core−shell)酸化亜鉛粒子を分離した後、エタノールを完全に除去した。分離したナノ粒子(100μg)をTBS、RIPAバッファー(1%Triton X−100、0.1%ソジウムドデシルスルフェート、0.5%ソジウムジオキシコレート、150mM NaCl、50mM Tris−HCl[pH7.5]、2mMEDTA)、または多様な濃度(6M、3M、1.5M、0.75M、0.375M)のヨウ素が添加されたバクテリア溶菌バッファー(bacteria lysis buffer:20mM HEPES[pH7.6]、500mM NaCl、1mM EDTA、1%NP−40)に浮遊させた後、0.1μgのペプチド(3×ZnOpep−1)を添加し、常温で一時間回転して反応させた。遠心分離機を利用して複合体を分離し、マグネチックスタンドに15分間入れた後、水溶液を除去した後、TBSを利用して6回洗浄した。AP−ストレプトアビジン結合体を入れて常温で一時間回転して反応させた。反応が終わった後、さらに遠心分離機を回転して上記複合体を分離した後、マグネチックスタンドに15分間静置させて反応溶液を除去した後、TBSを利用して6回洗浄した。pNPPホスファターゼ基質を入れ、20分間常温で反応させた後、反応停止バッファーを入れ、405nmの波長で吸光度を測定した。その結果、図4から明らかように、TBS、RIPA、そして多様な濃度のヨウ素が添加された水溶液上でも酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドがよく結合されていることを確認することができた。これは、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドが多様な水溶液条件でもよく結合することを意味する。
【0069】
実施例5:癌腫胚芽抗原と酸化亜鉛−結合性ペプチドとの融合タンパク質の製造
Bae、M.Y.、など[Bae、M.Y.、Cho、N.H.&Seong、S.Y.Protective anti−tumour immune responses by murine dendritic cells pulsed with recombinant Tat−carcinoembryonic antigen derived from Escherichia coli.Clin.Exper.Immunol.157、128−138(2009)]に開示された方法を利用してE.coliからアミノ酸35から332(GenBank Accessionno.M17303)に相当するヒト癌腫胚芽抗原(CEA)を精製した。組換えZBP−CEA融合タンパク質の製造のために、3xZnOpep−1(RPHRKGGDARPHRKGGDARPHRKGGDA)をコーディングするannealed double−stranded DNA(5’−CTA GCC GCC CGC ATC GCA AAG GCG GCG ATG CGC GCC CGC ATC GCA AAG GCG GCG ATG CGC GCC CGC ATC GCA AAG GCG GCG ATG CGG−3’)をNheI及びEcoRI位置の切断後(下線で表示)、上記Bae、M.Y.、などに開示されたpET23a−CEAプラスミドでクローニングした。Bae、M.Y.、などに開示された方法によって組換えタンパク質を生産し精製した。同じ方法で、ZnOpep−1、ZnOpep−2及び3xZnOpep−2を生産した。精製されたタンパク質は、使用前にエンドキシン除去カラム(Pierce)で処理された。精製された組換えタンパク質のエンドトキシン汚染は、QCI−1000 End−Point Chromagenic Endotoxin Detection Kit(Lonza)を利用して調査した。
【0070】
実施例6:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換えCEA腫瘍抗原の結合力
実施例5では、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換え癌腫胚芽抗原(Carcino−Embryonic Antigen、CEA)の結合力を確認した。互いに異なる濃度の酸化亜鉛結合ペプチドが含まれた組換えCEA腫瘍抗原と上記酸化亜鉛−結合性ペプチドが含まれていない腫瘍抗原を50μgの酸化亜鉛ナノ粒子とPBS(Phosphate−buffered saline)で1時間反応させ、反応が終わった後、さらに遠心分離機を利用して複合体を分離した後、マグネチックスタンドに15分間静置させた後、溶液を除去した後、PBSを利用して6回洗浄した。収去された酸化亜鉛ナノ粒子をSDS−PAGEサンプルバッファーに入れ、100℃で10分間反応させ、SDS−PAGEを行った後、クマシブルー染色法(Coomassie blue staining)を使用して酸化亜鉛ナノ粒子に結合された組換えタンパク質の量を確認した。その結果、図5から明らかなように、酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含まない組換えCEA腫瘍抗原は、酸化亜鉛ナノ粒子と非常に少ない量だけ結合したのに対し、酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換えCEA腫瘍抗原と酸化亜鉛の亜鉛は,ペプチドの濃度に依存的に増加することを確認することができた。これは、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含む組換え腫瘍抗原の間にも結合が可能であることを意味する。
【0071】
実施例7:樹枝状細胞にローディングされた酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体のインビトロモニタリング
Bae、M.Y.、などに記述された方法を利用してマウス細胞から樹枝状細胞を製造し、これにコアシェルナノ粒子をローディングした。未成熟樹枝状細胞をコアシェルナノ粒子と共培養した。これは、成熟樹枝状細胞に比べて未成熟樹枝状細胞が捕食作用が活発するからである。インキュベーション時間とZnOシェルのローディング効率に対する効果を評価するために、未成熟樹枝状細胞を100μg/mlのFe3O4 NPsまたはFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子と多様な時間条件でインキュベーションした。導入されたナノ粒子は、DAB(diaminobenzidine)−enhanced Prussian blue染色法により探知され、光学強度の測定を用いて定量した。図6aは、DAB−enhanced Prussian blue染色を用いてインキュベーション時間によるFe3O4NPsとFe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子の細胞内運搬状態を示し、図6bは、それぞれのサンプルでランダムに選択された100個の細胞の光学強度を測定した結果を示す。図6から明らかなように、8時間以前の反応時間では、Fe3O4−ZnOコアシェルナノ粒子がFe3O4 NPsに比べてさらに効率的に樹枝状細胞により摂取されたが、インキュベーション20時間後には、何らの差異がなかった。この結果は、ZnOシェルがコアシェルナノ粒子の細胞内運搬を促進し、コアシェルナノ粒子を利用する場合、樹枝状細胞内への導入に必要なインキュベーション時間を低減することができることを提示する。
【0072】
図7は、コアシェルナノ粒子の光学的特性を利用した樹枝状細胞にローディングされた抗原のインビトロモニタリング結果を示す。図7aは、DAB−enhanced Prussian blue染色後に可視化されたコアシェルナノ粒子がローディングされた樹枝状細胞とコアシェルナノ粒子がローディングされていない樹枝状細胞を示す。図7aから明らかなように、インキュベーション1時間後、約95%以上の樹枝状細胞がコアシェルナノ粒子で標識されたものと現われた。ZnOナノ粒子が数時間内に捕食性細胞と非−捕食性細胞により効率的に吸収されることはよく知られている。正確なメカニズムは、まだわからないが、この結果は、ZnOによるFe3O4 NPsの表面コーティングが細胞性吸収(uptake)を促進することができることを提示する。通常的な超常磁性Fe3O4粒子が細胞内伝達のためにプロタミンスルフェートのようなトランスフェクション促進化合物や長いインキュベーション時間(略16時間〜48時間)を必要とするという点を考慮する時、本発明のコア−シェルナノ粒子は、少ないインキュベーション時間を必要とし、トランスフェクションのための試薬や表面改質を必要とないという点から大きい長所を有する。
【0073】
ZnOの光発光は、樹枝状細胞サイトゾル内への運搬後、レーザースキャニング共焦点顕微鏡を利用して調査した。図7bは、コアシェルナノ粒子がローディングされた樹枝状細胞(下端)またはローディングされていない樹枝状細胞(上端)を共焦点顕微鏡で観察した結果を示す(励起:405nm、発光:>420nm)。ToPro−3染色試薬で染色された樹枝状細胞の核は、青色で現われる(White bar:10μm)。コアシェルナノ粒子−標識された樹枝状細胞は、405nmの波長で励起され、465〜679nmの広い発光波長で高い蛍光強度を示した。しかし、ピーク発光は、529〜550nmで観察され、これは、通常的なFACSまたは共焦点顕微鏡を通じて容易に観察されることができる(図示せず)。コアシェルナノ粒子は、サイトプラズムにわって分散されていて、凝集された形態で発見されたが、これは、捕食作用により吸収されたことを意味することができる。細胞内コアシェルナノ粒子分布の類似のパターンが非−食細胞性エピセリウム(epithelium)から由来したHeLa細胞でも現われた(データ不図示)。エンドソーム性またはリソソーム性小胞の共染色は、凝集されたコアシェルナノ粒子が初期エンドソーム性マーカーであるEEA1またはリソソーム性マーカーであるLAMP2との共存を示し、これは、凝集されたナノ粒子がエンドサイトーシスを通じて内在化されることを提示する。コアシェルナノ粒子がサイトプラズム及び細胞内輸送小胞(intracellular trafficking vesicles)内で探知されることを考慮する時、それらは、ファゴサイトーシスまたはエンドサイトーシスによって内在化されるものと思われる。
【0074】
また、コアシェルナノ粒子上に固定されたポリペプチドの細胞内運搬を調査した。図7cから明かなように、3×ZBP−結合されたコアシェルナノ粒子が樹枝状細胞のサイトプラズム内に効率的に運搬された。一部のペプチド−コアシェルナノ粒子凝集体は、ペプチドが結合されていないコアシェルナノ粒子のようにエンドソームまたはリソソームに部分的に共存したりした(White bar:10μm)。
【0075】
実施例8:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内伝達効率
実施例8では、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内に伝達される効率を調べた。酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内伝達効率をFACS分析法を使用して確認した。マウスの骨髓から分離した未成熟樹枝状細胞(1×106cells)をCEA腫瘍抗原と37℃で1時間反応させた後、細胞内に伝達された腫瘍抗原の量をFACSで分析した。酸化亜鉛ナノ粒子(50μg)とCEA腫瘍抗原(20μg)複合体をPBSで1時間反応させた。
【0076】
対照群及び実験群としてa)酸化亜鉛ナノ粒子処理群、b)CEA腫瘍抗原処理群、c)酸化亜鉛−結合性ペプチドを含む組換えCEA腫瘍抗原処理群、d)酸化亜鉛ナノ粒子とCEA腫瘍抗原を一緒に処理した群、e)酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体処理群に分析した結果、図7dから明らかなように、酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原が複合体を形成することができる実験群だけで樹枝状細胞内でCEA腫瘍抗原が細胞内に伝達されたことを確認することができた(コアシェルナノ粒子:酸化亜鉛コアシェルナノ粒子、CEA:腫瘍抗原、3Xzbp−CEA:酸化亜鉛−結合性ペプチド(3×ZnOpep−1)が結合された腫瘍抗原)。これは、今後、酸化亜鉛ナノ粒子を利用して酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むCEA腫瘍抗原の複合体を樹枝状細胞内に導入することができる伝達体として使用可能であることを意味する。
【0077】
実施例9:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体の樹枝状細胞内伝達による樹枝状細胞の生存率及び成熟
コアシェルナノ粒子のローディングが樹枝状細胞の生存率及び成熟に及ぶ影響に対して評価した。図8aは、100μg/mlコアシェルナノ粒子を1〜7日間樹枝状細胞とインキュベーションした時の細胞生存率を示し、図8bは、多様な濃度のコアシェルナノ粒子(12.5〜400μg/ml)を3日間樹枝状細胞とインキュベーションした時の細胞生存率を示す。図8から明らかなように、コアシェルナノ粒子のローディングは、樹枝状細胞の細胞生存率に影響を及ぼさない。図9は、コアシェルナノ粒子のローディングの前と後の樹枝状細胞の成熟マーカーを示す。バクテリアのLPS(lipopolysaccharide)が樹枝状細胞の成熟のために使用された。樹枝状細胞上の成熟マーカー(MHCII、CD40、CD80、andCD86)の表面発現は、コアシェルナノ粒子ローディングによって影響を受けなかった。総合すれば、これら結果は、コアシェルナノ粒子ローディングが樹枝状細胞の細胞生存率や成熟に影響を及ぼさないことを提示する。
【0078】
実施例10:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞の磁気共鳴分析によるインビトロ及びイン秘宝での探知
ナノ粒子を利用したインビトロまたはインビボ磁気共鳴映像分析実験において、効果的な細胞標識リングのための最適の条件を決定することは非常に重要である。このために、まず、樹枝状細胞を多様な濃度のコアシェルナノ粒子(0〜160μg/ml)とインキュベーションした。図10aから明らかなように、樹枝状細胞のインビトロ磁気共鳴イメージング結果は、コアシェルナノ粒子の濃度が増加するにつれてT2弛緩時間が漸進的に減少するものと現われ(イメージが暗くなる)、100μg/ml未満で飽和されるものと現われた。最適のインキュベーション時間を定めるために、40μg/mlのコアシェルナノ粒子の存在下で0.5〜24時間樹枝状細胞を培養した。図10bから明らかなように、樹枝状細胞は、1時間内にコアシェルナノ粒子に飽和され、これは、前述したように、コアシェルナノ粒子が1時間内に樹枝状細胞により効率的に吸収されることを示し、磁気共鳴イメージングにおいてT2弛緩時間の十分な減少を示す。図11から明らかなように、Fe3O4−標識された樹枝状細胞(○)と比較する時、最初4時間コアシェルナノ粒子−標識された樹枝状細胞(●)の磁気共鳴映像分析結果は、T2弛緩時間においてさらに迅速な減少を示した。これら結果は、コアシェルナノ粒子が非浸湿的磁気共鳴映像分析を利用したインビボでの樹枝状細胞移動モニタリングのために適用されることができることを示す。
【0079】
磁気共鳴映像分析による樹枝状細胞輸送のインビトロモニタリングに対するコアシェルナノ粒子の潜在的用途を検証するために、コアシェルナノ粒子が標識された樹枝状細胞をC57BL/6マウスの後足の裏に注射した。注射された足の裏から膝窩リンパ節に移動した樹枝状細胞をT2−weighted multigradient echo磁気共鳴シーケンス(sequence)を利用して観察した。図10cから明らかなように、注射48時間後、左側リンパ節内でコアシェルナノ粒子−標識された細胞の存在を示す低信号強度(hypointense)を示す領域が観察された(赤色矢印)。予想したように、ZnO NPで標識された樹枝状細胞の注射部位に相当する膝窩リンパ節では、T2減少が観察されなかった(白色矢印)。
【0080】
コアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞は、排出リンパ節の中心部で観察され、これは、T2減少がリンパ管を通じて輸送されたコアシェルナノ粒子よりはコアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞によるものであることを示す。ガラスナノ粒子は、一般的にリンパ管を通じて輸送された後、リンパ節の被膜下領域(subcapsular region)に位置する。切断したリンパ節の免疫組職学的分析は、磁気共鳴映像分析により観察されたT2減少がT細胞領域に移動したコアシェルナノ粒子−標識樹枝状細胞により惹起されたものであることを示す(図10d)。DAB−enhanced Prussian blue染色と免疫組職化学染色(anti−Thy1.2、図10dの上端;anti−B220、図10dの下端)の結果を組み合わせて見れば、コアシェルナノ粒子で標識された樹枝状細胞は、大部分B220+B細胞小胞(follicle)ではないThy1.2+T細胞領域内に存在することが分かる。対照的に、酸化亜鉛でラベルされたDCsを注入したリンパ節では、鉄成分を測定することができなかった。
【0081】
実施例11:酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞により誘導された抗−腫瘍免疫
酸化亜鉛ナノ粒子と酸化亜鉛−結合性ペプチドアミノ酸配列を含むCEA腫瘍抗原複合体で標識された樹枝状細胞でC57BL/6マウスを兔疫し、CEA−特異的細胞性免疫を分析した。兔疫されたマウスの脾臓からリンパ球を得、インビトロで多様な濃度のCEAで再刺激した。図12aから明らかなように、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBPCEA)で免疫化されたマウスのリンパ球は、対照群のリンパ球よりCEAに対する反応においてさらに高い投与量−依存的な増殖を示した。CEA特異的な細胞毒性リンパ球が全身的に生成されるか否かを調査するために、免疫化されたマウスから得た脾臓細胞(Splenocyte)を分析した。樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で免疫化されたマウスからの脾臓細胞を利用する時、CEA−発現癌細胞((MC38/CEA)に対する著しい細胞毒性反応が観察されたのに対し、対照群では、有意な細胞毒性が観察されなかった(図12b、右側パネル)。CEA−陰性MC38標的細胞に対する脾臓細胞の細胞毒性は、実験群のうちいずれも有意に現われなかった(図12b、左側パネル)。これは、兔疫されたマウスで探知された反応が腫瘍抗原CEA特異的であることを提示する。次に、細胞−媒介免疫反応の典型的な標識サイトカインであるIFN−γを生成するT細胞の生成を調査した。脾臓細胞でCEA−特異的CD8+T細胞免疫反応を細胞内サイトカイン染色及びCEA抗原の存在または不在下でフローサイトメトリーを用いて調査した。IFN−γ−分泌CD8+T細胞の頻度は、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で免疫化されたマウスから得たCD8+T細胞だけでただ腫瘍抗原による刺激後、略10倍程度増加した。対照的に、他の対照群から得たCD8+T細胞は、免疫後、有意なIFN−γ分泌を示さなかった(図12c)。樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBPCEA)群は、他の樹枝状細胞群に比べてリンパ節でCEA−特異的な、IFN−γ−生産CD4+またはCD8+T細胞を生成するにあたってさらに効果的であった(図13)。この結果は、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)がインビボでCEA特異的な細胞性免疫を効果的に生成することができることを示す。
【0082】
C57BL/6マウスのわき腹にMC38/CEA細胞を注入し、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)免疫による腫瘍の成長を観察し、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)の抗腫瘍兔疫性を評価した。腫瘍接種後7日後、マウスを一週間間隔をもって週1回ずつ樹枝状細胞を4回兔疫した。図14aから明らかなように、対照群と比べて樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)が注入されたマウスで腫瘍成長がより抑制された(□:NP/3×ZBP−CEA、■:NP/CEA、▽:3xZBP−CEA、▼:CEA、○:NP、●:DC)。また、図14bから明らかなように、腫瘍接種40日後、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で処理された5匹のマウスが全部生存したのに対し、他のすべての群のマウスは、死んだ。樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)で免疫化されたマウスの平均生存期間は、対照群マウスに比べて平均10.5〜19.5日延長された。このような結果は、樹枝状細胞(コアシェルナノ粒子/3×ZBP−CEA)が対照群に比べてCEA−陽性腫瘍に対するさらに強力な保護免疫反応を誘導することを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体。
【請求項2】
上記酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の複合体:
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【請求項3】
X1は、ProまたはThrであり、
X2は、Hisであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、3〜50の整数であることを特徴とする請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
上記酸化亜鉛−結合性ペプチドが配列番号1〜4のうちいずれか1つのアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のペプチドである複合体。
【請求項5】
上記複合体に追加にタンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される薬物が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
上記複合体の表面に標的指向性リガンドが結合されていることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
上記タンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
上記抗原は、腫瘍抗原であることを特徴とする請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
上記腫瘍抗原は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有することを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
上記コアは、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
上記コアは、T1またはT2造影物質よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項10に記載の複合体。
【請求項13】
上記コアは、酸化鉄よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項10に記載の複合体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体を薬物伝達体として含む医薬組成物。
【請求項15】
上記医薬組成物は、タンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される1つ以上の薬物を含むことを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
薬物を請求項1〜14のいずれか一項に記載の複合体と混合するか、または上記複合体に結合させることを含む、薬物と上記複合体を含む医薬組成物の製造方法。
【請求項17】
酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含むワクチン組成物。
【請求項18】
上記酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構造を有することを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物:
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【請求項19】
上記抗原は、腫瘍抗原であることを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
上記腫瘍抗原は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
上記ワクチン組成物は、癌の治療または予防のためのものであることを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
上記ワクチン組成物は、追加に兔疫細胞を含むことを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
上記ワクチン組成物は、上記複合体が導入された兔疫細胞を含むことを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
上記兔疫細胞は、樹枝状細胞、T細胞またはNK細胞であることを特徴とする請求項22または23に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含む造影剤。
【請求項26】
酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構造を有することを特徴とする請求項25に記載の造影剤:
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【請求項27】
上記複合体の表面に標的指向性リガンドが結合されていることを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項28】
上記タンパク質は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むことを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項29】
上記抗原は、腫瘍抗原であることを特徴とする請求項28に記載の造影剤。
【請求項30】
上記腫瘍抗原は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されることを特徴とする請求項29に記載の造影剤。
【請求項31】
上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有することを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項32】
上記コアは、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項31に記載の造影剤。
【請求項33】
上記コアは、T1またはT2造影物質よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項31に記載の造影剤。
【請求項34】
上記コアは、酸化鉄よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項31に記載の造影剤。
【請求項35】
上記タンパク質は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗体を含むことを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項36】
上記抗体は、腫瘍抗原をターゲットとすることを特徴とする請求項35に記載の造影剤。
【請求項37】
上記複合体にタンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される1つ以上の薬物が物理的または化学的に結合されていることを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項38】
上記造影物質は、蛍光物質、放射性同位元素または量子ドットであることを特徴とする請求項37に記載の造影剤。
【請求項1】
酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子の複合体。
【請求項2】
上記酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の複合体:
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【請求項3】
X1は、ProまたはThrであり、
X2は、Hisであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、3〜50の整数であることを特徴とする請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
上記酸化亜鉛−結合性ペプチドが配列番号1〜4のうちいずれか1つのアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のペプチドである複合体。
【請求項5】
上記複合体に追加にタンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される薬物が導入されていることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
上記複合体の表面に標的指向性リガンドが結合されていることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
上記タンパク質は、酸化亜鉛−結合性ペプチドと抗原を含む組換えタンパク質であることを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
上記抗原は、腫瘍抗原であることを特徴とする請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
上記腫瘍抗原は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されることを特徴とする請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有することを特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項11】
上記コアは、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
上記コアは、T1またはT2造影物質よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項10に記載の複合体。
【請求項13】
上記コアは、酸化鉄よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項10に記載の複合体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合体を薬物伝達体として含む医薬組成物。
【請求項15】
上記医薬組成物は、タンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される1つ以上の薬物を含むことを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
薬物を請求項1〜14のいずれか一項に記載の複合体と混合するか、または上記複合体に結合させることを含む、薬物と上記複合体を含む医薬組成物の製造方法。
【請求項17】
酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含むワクチン組成物。
【請求項18】
上記酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構造を有することを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物:
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【請求項19】
上記抗原は、腫瘍抗原であることを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
上記腫瘍抗原は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
上記ワクチン組成物は、癌の治療または予防のためのものであることを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
上記ワクチン組成物は、追加に兔疫細胞を含むことを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
上記ワクチン組成物は、上記複合体が導入された兔疫細胞を含むことを特徴とする請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
上記兔疫細胞は、樹枝状細胞、T細胞またはNK細胞であることを特徴とする請求項22または23に記載のワクチン組成物。
【請求項25】
酸化亜鉛−結合性ペプチドを含むタンパク質と酸化亜鉛ナノ粒子との複合体を含む造影剤。
【請求項26】
酸化亜鉛−結合性ペプチドは、下記式(I)または(II)の構造を有することを特徴とする請求項25に記載の造影剤:
[(Arg−X1−X2−Arg)m−リンカー]n(I)
[(Arg−X1−X2−Arg−Lys)m−リンカー]n(II)
上記式中、
X1は、Pro、Ala、Thr、Gln、またはIleであり、
X2は、His、Ile、Asn、またはArgであり、
mは、1〜5の整数であり、
nは、1〜100の整数である。
【請求項27】
上記複合体の表面に標的指向性リガンドが結合されていることを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項28】
上記タンパク質は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗原を含むことを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項29】
上記抗原は、腫瘍抗原であることを特徴とする請求項28に記載の造影剤。
【請求項30】
上記腫瘍抗原は、癌腫胚芽抗原、サバイビン、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−12、BAGE、GAGE、NY−ESO−1、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、gp100、MART−1、MC1R、Igイディオタイプ、CDK4、カスパーゼ−9、ベータ−カテニン、CIA、BCR/ABL、変異されたp21/ras、変異されたp53、プロテナーゼ3、WT1、MUC−1、正常p53、Her2/neu、PAP、PSA、PSMA、G250、HPVE6/E7、EBVLMP2a、HCV、HHV−8、アルファフェトプロテイン、5T4、オンコ−トロホブラスト及びグリコプロテインよりなる群から選択されることを特徴とする請求項29に記載の造影剤。
【請求項31】
上記酸化亜鉛ナノ粒子は、コア−シェル構造を有することを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項32】
上記コアは、金属物質(metal material)、磁性物質(magnetic material)、磁性合金(magnetic alloy)または半導体物質(semicoductor material)よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項31に記載の造影剤。
【請求項33】
上記コアは、T1またはT2造影物質よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項31に記載の造影剤。
【請求項34】
上記コアは、酸化鉄よりなり、シェルは、酸化亜鉛よりなることを特徴とする請求項31に記載の造影剤。
【請求項35】
上記タンパク質は、上記酸化亜鉛−結合性ペプチド及び抗体を含むことを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項36】
上記抗体は、腫瘍抗原をターゲットとすることを特徴とする請求項35に記載の造影剤。
【請求項37】
上記複合体にタンパク質、DNA、RNA、化合物医薬及び造影物質よりなる群から選択される1つ以上の薬物が物理的または化学的に結合されていることを特徴とする請求項25に記載の造影剤。
【請求項38】
上記造影物質は、蛍光物質、放射性同位元素または量子ドットであることを特徴とする請求項37に記載の造影剤。
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−509452(P2013−509452A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−537814(P2012−537814)
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007726
【国際公開番号】WO2011/055980
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(510056353)コリア・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・ビジネス・ファウンデーション (15)
【出願人】(510140700)エスエヌユー・アールアンドディービー・ファウンデーション (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月3日(2010.11.3)
【国際出願番号】PCT/KR2010/007726
【国際公開番号】WO2011/055980
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(510056353)コリア・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・ビジネス・ファウンデーション (15)
【出願人】(510140700)エスエヌユー・アールアンドディービー・ファウンデーション (4)
【Fターム(参考)】
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