説明

酸化傷害抑制剤

【課題】酸化傷害を引き起こす種々の化合物による細胞の酸化を抑制できる酸化傷害抑制剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)


[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、RはH、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。]
で表される化合物を含む細胞の酸化傷害抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化傷害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、活性酸素種やフリーラジカルが、様々な疾病を引き起こすことが明らかになってきている。元来活性酸素は生体の免疫機構の中で生成し、外部から侵入した病原菌等を攻撃する働きをもっている。しかし、活性酸素が過剰に生成し残存してしまうと、生体内の構成成分、すなわち脂質、タンパク質、及びDNA等と反応し悪影響を及ぼす。なかでも生体膜等の構成成分である不飽和脂肪酸は酸化され易く、フリーラジカル中間体を経て過酸化脂質を生成する。この過酸化脂質は、動脈硬化、高血圧症、及び肝機能傷害等を誘起することが知られており、老化現象にも密接に関係しているとも言われている。また、酸化をうけやすい不飽和脂肪酸を含む食品、医薬品、及び化粧品等は保存中の品質低下が起こりやすいという問題もあった。
【0003】
特許文献1には、このような脂肪酸等の酸化を防止する化合物として、フラン環を有する新規フェノール化合物が開示されている。また、特許文献1には、該フェノール化合物がフリーラジカル消去活性及びシクロオキシゲナーゼ阻害活性を有することが開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1には、酸化傷害を引き起こす種々の化合物による細胞の酸化傷害に対する効果については開示されていない。
【特許文献1】特開2004−315498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、酸化傷害抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、種々の化合物による細胞の酸化傷害を、該フェノール化合物が効果的に抑制できることを見出した。本発明は、この様な知見に基づき完成されたものであり、下記項1〜項5に示す細胞の酸化傷害抑制剤及び細胞の酸化傷害を抑制する方法を提供する。
項1.
一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、RはH、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。]
で表される化合物を含む細胞の酸化傷害抑制剤。
項2. 酸化傷害が、6−ヒドロキシドーパミン、リポポリサッカライド、リノール酸ヒドロペルオキシド又はグルタミン酸により引き起こされるものである項1に記載の酸化傷害抑制剤。
項3. 前記一般式(1)において、Rが炭素数1〜18直鎖アルキル基であり、OR基がベンゼン環上の3位に結合し、Rがメチル基又はエチル基であり、OH基がベンゼン環上の4位に結合するものである項1又は2に記載の酸化傷害抑制剤。
項4. 一般式(1−1)
【0009】
【化2】

【0010】
で表される化合物及び一般式(1−2)
【0011】
【化3】

【0012】
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む項1に記載の酸化傷害抑制剤。
項5. 一般式(1)
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。]
で表される化合物を使用することを特徴とする培養細胞の酸化傷害を抑制する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の酸化傷害抑制剤は、種々の化合物による細胞の酸化傷害を効果的に抑制できる。特に、本発明の酸化傷害抑制剤は、6−ヒドロキシドーパミン、リポポリサッカライド、リノール酸ヒドロペルオキシド又はグルタミン酸により引き起こされる細胞の酸化傷害に対して優れた抑制効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の酸化傷害抑制剤は、下記一般式(1)
【0017】
【化5】

【0018】
[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、RはH、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。]
で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0019】
一般式(1)で表される化合物において、Rの炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれであってもよい。Rの炭素数1〜18のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及び等が挙げられる。より好ましいアルキル基は、直鎖アルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、及びn−デシル基等が挙げられる。
【0020】
一般式(1)において、R2はH、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。
【0021】
2の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。また、R2のフェノール性水酸基の保護基としては、メトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基及び4−メトキシベンジル基等のエーテル系の保護基、トリメチルシリル基及びt−ブチルジメチルシリル基等のシリル系の保護基、並びにアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、イソブチロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基及びトリオイル基等のエステル系の保護基等が挙げられ、好ましくはエステル系の保護基である。
【0022】
一般式(1)のR2としてはメチル基又はエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0023】
一般式(1)におけるフェノールは、フェノール性水酸基の保護基が結合していても良い。このフェノール性水酸基の保護基としては、上記記載のものが例示できる。
【0024】
一般式(1)で表される化合物において、式:ROで表される基は、ベンゼン環上の2〜6位のいずれの位置に結合していてもよいが、3位(又は5位)に結合するのが好ましい。
【0025】
一般式(1)で表される化合物において、OH基は、ベンゼン環上の2〜6位のいずれの位置に結合していてもよいが、4位に結合するのが好ましい。
【0026】
本発明の酸化傷害抑制剤は、上記一般式(1)で表される化合物の中でも、下記一般式(1−1)
【0027】
【化6】

【0028】
で表される化合物(以下、フランSということがある)及び一般式(1−2)
【0029】
【化7】

【0030】
で表される化合物(以下、フランLということがある)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことが特に好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される化合物は、従来公知の方法によって製造でき、例えば特許文献1に記載の方法によって製造できる。
【0032】
上記一般式(1)で表される化合物は、一種単独で本発明の酸化傷害抑制剤に含んでもよいし、二種以上を混合して本発明の酸化傷害抑制剤に含んでもよい。
【0033】
本発明の酸化傷害抑制剤は、酸化傷害を引き起こす種々の化合物による細胞の酸化傷害を効果的に抑制できる。
【0034】
例えば、本発明の酸化傷害抑制剤は、生体内に存在するカテコールアミン作動性の神経毒である6−ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)に起因する細胞死を抑制する効果を有する。6-OHDAはパーキンソン病のモデル化合物として知られており、本発明の酸化傷害抑制剤は、パーキンソン病に対して有効である。
【0035】
また、本発明の酸化傷害抑制剤は、グラム陰性菌の構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)に起因する細胞死に対して顕著な抑制効果を有する。LPSは、敗血症、歯周病等の様々な感染性疾患に伴う傷害に関与していると考えられている。従って、本発明の酸化傷害抑制剤は、LPSが関与する感染症に対して有効である。
【0036】
さらに、本発明の酸化傷害抑制剤は、リノール酸ヒドロペルオキシド(HpODE)誘導性の細胞死に対する抑制効果を有する。従って、本発明の酸化傷害抑制剤は、酸化脂質の生成に伴う細胞の酸化傷害に対しても有効である。
【0037】
またさらに、本発明の酸化傷害抑制剤は、グルタミン酸に起因する細胞死に対して顕著な抑制効果を有する。グルタミン酸による神経細胞傷害は、脳虚血再灌流、各種神経変性疾患の発症に深く関わっていると考えられており、本発明の酸化傷害抑制剤は、脳虚血、各種神経変性疾患に対して有効である。
【0038】
本発明の酸化傷害抑制剤は、細胞の酸化傷害抑制剤として有用であり、特に、パーキンソン病、敗血症、歯周病等のLPSが関与する感染症、酸化脂質の生成に伴う細胞の酸化傷害、脳虚血、各種神経変性疾患等に対する予防薬及び/又は治療薬として有用である。
【0039】
本発明は、一般式(1)で表される化合物を有効成分とする細胞の酸化傷害抑制剤(以下、「製剤」ともいう)を提供する。
【0040】
本発明の製剤は、一般式(1)で表される化合物だけからなるものであってもよいし、任意の担体や添加剤と組み合わせて、従来公知の方法で所望の用途に適した形態に調製した組成物であってもよい。また、一般式(1-2)又は(1-3)で表される化合物の1種からなるものであってもよいし、一般式(1-2)又は(1-3)で表される化合物を混合又は併用するものであってもよく、任意の担体や添加剤と組み合わせて、従来公知の方法で所望の用途に適した形態に調製した組成物であってもよい。
【0041】
本発明の製剤の形態は、特に制限されないが、例えば錠剤、粉末剤、顆粒剤、丸剤、粉末シロップ剤およびカプセル剤(硬カプセルおよび軟カプセル)などの固体状の製剤;クリーム、軟膏およびジェルなどのペースト状またはゲル状の製剤;液剤、懸濁剤、乳液剤、シロップ、エリキシル剤などの液体状の製剤等とすることができる。
【0042】
本発明の製剤中、一般式(1)で表される化合物の配合量は、細胞の酸化傷害抑制効果を発揮する割合で含むものであれば特に制限されず、製剤100重量%中、0.001〜99重量%、好ましくは0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%の範囲で適宜設定調製することができる。
【0043】
当該製剤は、一般式(1)で表される化合物を、細胞の酸化傷害抑制効果を発揮する割合で含むものであればよく、この効果を妨げない範囲で他成分を配合することもできる。かかる他成分としては、薬理学的及び製剤学的に許容されるものであれば制限されないが、例えば賦形剤、結合剤、分散剤、増粘剤、滑沢剤、pH調整剤、可溶化剤などの一般に製剤の製造に使用される担体のほか、抗生物質、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、ビルダー、漂白剤、酵素、キレート剤、消泡剤、着色料(染料、顔料など)、柔軟剤、保湿剤、界面活性剤、酸化防止剤、香料、矯味剤、矯臭剤、溶媒などが含まれる。
【0044】
本製剤の使用方法は、本製剤を経口投与、点滴、注射等により体内に摂取させる方法や、患部への局所的な施用等とすることができる。
【0045】
本発明の製剤の使用量は、剤形や投与(使用)方法等によって異なるため、一概に規定することはできないが、例えば、適当な1日の投与量は、一般式(1)で表される化合物の投与量に換算して、通常、成人1Kg当たり1ng/ml〜100mg/ml、好ましくは10ng/ml〜50mg/ml程度の範囲で、患者の年齢、症状に応じて適宜設定することができ、これらの製剤は、1日1〜数回に分けてするのがよい。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明の酸化傷害抑制の実施例を挙げて、本発明を一層明らかにするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
各試薬
実施例で使用した主な試薬を以下に示す。
【0048】
ダルベッコ変法イーグル培地 (nutrient mixture F-12 Ham = 1:1 (D-MEM/F-12)):Gibco BRL, Rockville, MD 製
ウマ血清 : Gibco BRL, Rockville, MD 製
ウシ胎仔血清: JRH Biosciences, Lenexa, KS 製
RPMI−1640培地: ナカライテスク社製
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS): ナカライテスク社製
3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT): ナカライテスク社製
6−ヒドロキシドーパミン(6-OHDA): Sigma-Aldrich, St. Louis, MO 製
13S-ヒドロキシペルオキシ-9Z, 11E-オクタデカン二酸 (13(S)-HpODE): Cayman Chemical, Ann Arbor, MI製
1−メチル−4−フェニルピリジニウム(MPP): Sigma-Aldrich, St. Louis, MO 製
リポポリサッカライド(LPS): Sigma-Aldrich, St. Louis, MO 製。
【0049】
細胞の培養方法
実施例で使用した細胞の培養方法を以下に示す。
【0050】
未分化のPC12細胞(rat pheochromocytoma cell line)は、常法に従い、5%ウマ血清及び10%ウシ胎仔血清を含むダルベッコ変法イーグル培地 (D-MEM/F-12)中で培養した。THP-1 (human monocytic leukaemia cell line)は、加熱不活性化した10%ウシ胎仔血清を含むRPMI−1640培地で培養した。各細胞は、加湿条件で、5%二酸化炭素、95%空気下、37℃で培養した。
【0051】
実施例1(6-ヒドロキシドーパミン(6-OHDA)誘導性PC12細胞死に対するフランS及びフランLの添加効果)
神経細胞のモデルであるラット副腎髄質由来褐色細胞PC12細胞にフランS(それぞれ1 μM、10μM、25 μM、及び50 μM)及びフランL(それぞれ1μM、10μM、25 μM、及び50 μM)をそれぞれ添加して24時間培養した。その後、6-OHDA(100 μM)を添加してさらに24時間培養した。MTT法(Denizot and Lang 1986)を用いて生細胞数を測定した。細胞は0.5 mg/mlのMTTを含む培地で37℃下2時間培養した。0.04 N HClを含むイソプロピルアルコールを新鮮培地に加え(培地:イソプロピルアルコール=2:3(体積比))得られた混合物をピペットでホルマザン(formazan)が完全に溶解するまで撹拌した。570 nmにおけるホルマザンの吸光度は、Multiskan Ascent plate reader (Theromo Labsystems, Helsinki, Finland)を使用して測定した。以下の実施例においても、同様のMTT法により生細胞数を測定した。生細胞数の測定結果を図1に示す。
【0052】
図1中の*と0 μM(−)との比較から、25μM及び50 μMのフランSを添加した場合に、特に有意な細胞死抑制効果が認められることが分かる((P < 0.05 Dunnett, ANOVA))。
【0053】
6-OHDAは生体内に存在するカテコールアミン作動性の神経毒であり、パーキンソン病のモデル化合物として知られている。実施例1の結果から、本発明の酸化傷害抑制剤が、パーキンソン病に対して有効であることが確認された。
【0054】
実施例2(リポポリサッカライド(LPS)誘導性THP-1細胞死に対するフランS及びフランLの添加効果)
ヒト単球由来THP-1細胞に、フランS(10μM)及びフランL(10μM)をそれぞれ添加して24時間細胞を培養した。その後、細胞にLPS (0.25 mg/ml)をさらに添加して24時間培養した。MTT法を用いて生細胞数を測定した。結果を図2に示す。
【0055】
図2中の*と0 μM(−)との比較から、フランS(10μM)及びフランL(10μM)の添加により、顕著な細胞死抑制効果が認められることが分かる(P < 0.05 Dunnett, ANOVA)。
【0056】
グラム陰性菌の構成成分であるLPSは、敗血症や歯周病など様々な感染性疾患に伴う傷害に関与していると考えられる。本発明の酸化傷害抑制剤が、LPSの関与する感染症に対して特に有効であることが確認された。
【0057】
実施例3(リノール酸ヒドロペルオキシド(HpODE)誘導性PC12細胞死に対するフランS及びフランLの添加効果)
PC12細胞に、フランS(それぞれ1 μM、10μM、25 μM、及び50 μM)及びフランL(それぞれ1 μM、10μM、25 μM、及び50 μM)をそれぞれ添加して24時間培養した。その後、該細胞にHpODE(75μM)をさらに添加し24時間培養した。MTT法を用いて生細胞数を測定した。
【0058】
図3中の*と0 μM(−)との比較から、フランS及びフランLそれぞれ1μMの低濃度においても、有意な細胞死抑制効果が認められることが分かる(P < 0.05 Dunnett, ANOVA)。結果を図3に示す。
【0059】
この結果から、本発明の酸化傷害抑制剤が、酸化脂質の生成にともなう酸化ストレス傷害に対して有効であることが確認された。

実施例4(グルタミン酸誘導性神経細胞死に対するフランS及びフランLの添加効果)
細胞は、ラット胎児脳由来初代神経細胞(Sprague-Dawley rats, day 17 of gestation, SLC, Sizuoka, Japan)から単離したものを使用した。
【0060】
ラット胎児脳由来初代神経細胞をパパイン(papain, 90 U/ml, Worthington Biochemical, Lakewood, NJ)消化した後、プラスチックピペットで細胞を静かに分離した(37℃下)。取り出した細胞をポリエチレンイミンでコートしたプレート上に播種した。
【0061】
この細胞を、加熱不活性化したウシ胎仔血清(10 %)を加えたD-MEM/F-12培地で成長させた。培地中の90%以上の細胞が神経細胞であることを、アストロサイト特異的マーカー(astrocyte-specific marker)であるグリア細胞繊維性酸性タンパク質(GFAP; Upstate, Lake Placid, NY)、神経特異的マーカー(neuron-specific markers)である微小管結合タンパク質−2 (MAP2; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)及びbIII-tublin (Promega, Madison, WI)の染色により確認した。
【0062】
以上の手順により得られた細胞に、フランS(それぞれ1 μM及び10μM)及びフランL(それぞれ1 μM及び10μM)をそれぞれ添加して24時間培養した(Pretreatment)。その後、グルタミン酸(10 mM)を添加し、さらに24時間培養した。
【0063】
一方、細胞に、フランS(それぞれ1 μM及び10μM)、フランL(それぞれ1 μM及び10μM)それぞれと共にグルタミン酸(10 mM)添加して24時間培養した(Cotreatment)。グルタミン酸を添加しても、培地のpHは変化しなかった。
MTT法を用いて生細胞数を測定した。なお、MTT法において、細胞は0.5 mg/mlのMTTを含む培地で37℃下4時間培養した。結果を図4に示す。
【0064】
図4中の*と0 μM(−)との比較から、フランS及びフランLは、有意な細胞死抑制効果を有することが分かる(P < 0.05 Dunnett, ANOVA)。特に、フランLは、1 μMと低濃度であっても有意な細胞死抑制効果を示した。
【0065】
グルタミン酸による神経細胞傷害は、脳虚血再灌流、各種神経変性疾患の発症に深く関わっていると考えられている。本発明の酸化傷害抑制剤が、脳虚血、各種神経変性疾患に対して有効であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の酸化傷害抑制剤は、種々の化合物によって引き起こされる細胞の酸化傷害を効果的に抑制できるので、細胞に対する酸化傷害抑制剤として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】PC12細胞の生細胞数を示すグラフ(実施例1)
【図2】THP−1細胞の生細胞数を示すグラフ(実施例2)
【図3】PC12細胞の生細胞数を示すグラフ(実施例3)
【図4】ラット胎児脳由来初代神経細胞の生細胞数を示すグラフ(実施例4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、RはH、炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。]
で表される化合物を含む細胞の酸化傷害抑制剤。
【請求項2】
酸化傷害が、6−ヒドロキシドーパミン、リポポリサッカライド、リノール酸ヒドロペルオキシド又はグルタミン酸により引き起こされるものである請求項1に記載の酸化傷害抑制剤。
【請求項3】
前記一般式(1)において、Rが炭素数1〜18直鎖アルキル基であり、OR基がベンゼン環上の3位に結合し、Rがメチル基又はエチル基であり、OH基がベンゼン環上の4位に結合するものである請求項1又は2に記載の酸化傷害抑制剤。
【請求項4】
一般式(1−1)
【化2】

で表される化合物及び一般式(1−2)
【化3】

で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載の酸化傷害抑制剤。
【請求項5】
一般式(1)
【化4】

[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基であって、Rは炭素数1〜4のアルキル基又はフェノール性水酸基の保護基である。]
で表される化合物を使用することを特徴とする培養細胞の酸化傷害を抑制する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−249351(P2009−249351A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100401(P2008−100401)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】