説明

酸化剤含有水の処理方法及び水処理装置

【課題】後段で逆浸透膜処理や脱イオン処理を行う際に、逆浸透膜装置や脱イオン装置の酸化剤による劣化及び濁質による閉塞を長期間防止することができる酸化剤含有水の処理方法を提供する。
【解決手段】酸化剤含有水に還元剤を添加した後、活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過手段で活性炭濾過処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水など懸濁物質等を含む水であって、酸化剤を含有する酸化剤含有水を処理する酸化剤含有水の処理方法及び水処理装置に関し、特に、逆浸透膜装置や脱イオン装置を用いた処理に好適である酸化剤含有水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水から純水等を製造するために、例えば、濾過等して懸濁物質をある程度除去した後、被処理水を逆浸透膜(RO)装置や脱イオン装置等で処理している。工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水に含まれる微生物によるトラブルを防止するために、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素やオゾン等の酸化剤が添加されるが、これら酸化剤により、逆浸透膜装置や脱イオン装置等の膜や構成部材が酸化され劣化してしまうという問題がある。
【0003】
そのため、被処理水に酸化剤を添加した後に、逆浸透膜装置や脱イオン装置等の前段において、活性炭濾過装置に通水する技術がある(特許文献1等参照)。しかしながら、活性炭濾過装置に通水する技術では、酸化剤により活性炭が分解するため、長期間使用できないという問題がある。活性炭の分解に応じて交換する方法もあるが、交換頻度が高くなってしまうことが問題になる。そして、活性炭量が不十分な場合は、酸化剤が十分除去できず逆浸透膜装置や脱イオン装置等の膜や構成部材が劣化してしまうという問題もある。
【0004】
その他に、被処理水に酸化剤を添加した後に、還元剤をポンプで添加する技術がある(特許文献2等参照)。還元剤の添加量を多くすれば、酸化剤から発生する塩素等を十分除去することができるが、ポンプによる還元剤の添加では、還元剤が間欠的に添加されたり、ポンプの故障により還元剤の添加が不十分になり、逆浸透膜装置や脱イオン装置等の膜や構成部材が劣化してしまう場合がある。
【0005】
また、純水製造の際に原水となる工業用水等には懸濁物質が含まれており、例えば工業用水では清澄なものでも濁度で1〜2NTU程度の懸濁物質が含まれている。したがって、このような工業用水等を直接逆浸透膜装置や脱イオン装置等に供給すると、これら装置を閉塞させてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−337563号公報
【特許文献2】特開平7−308671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した事情に鑑み、後段で逆浸透膜処理や脱イオン処理を行う際に、逆浸透膜装置や脱イオン装置の酸化剤による劣化及び濁質による閉塞を長期間防止することができる酸化剤含有水の処理方法及び水処理装置を提供することを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の酸化剤含有水の処理方法は、酸化剤含有水に還元剤を添加した後、活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過手段で活性炭濾過処理することを特徴とする。
また、前記活性炭濾過手段が、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものであることが好ましい。
【0009】
そして、前記濾過体本体は、前記シート状部材が芯材に渦巻状に巻回されたものであることが好ましい。
【0010】
また、前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの繊維で形成された不織布でもよい。
また、前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの活性炭繊維で形成されたものであってもよい。
前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの繊維で形成された不織布と被処理水を透過しない水不透過シートとからなるようにしてもよい。
【0011】
前記メッシュシートは、直径0.1〜0.6mmの繊維で形成されていることが好ましい。
【0012】
そして、前記活性炭濾過処理の後、逆浸透膜装置で逆浸透膜処理をすることが好ましい。また、前記活性炭濾過処理の後、脱イオン装置で脱イオン処理をすることが好ましい。
【0013】
また、前記活性炭濾過手段の入口で酸化還元電位を測定し、この酸化還元電位の測定値に応じて前記還元剤の添加量を制御することが好ましい。
【0014】
本発明の水処理装置は、酸化剤を含有する被処理水に還元剤を添加する還元剤導入装置と、前記還元剤が導入された被処理水が導入され活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過装置と、該活性炭濾過装置から排出された被処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置から排出された被処理水を脱イオン処理する電気脱イオン装置とを有することを特徴とする。
【0015】
そして、前記活性炭濾過装置が、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一方は活性炭繊維で形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
酸化剤含有水に還元剤を添加した後、活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過手段で活性炭濾過処理することにより、確実に酸化剤から発生する塩素等及び濁質を除去することができるため、逆浸透膜装置や脱イオン装置の酸化剤から発生する塩素等による劣化及び濁質による閉塞を、長期間に亘って防止することができる。なお、酸化剤を含有する被処理水であるため、微生物によるトラブルの発生も、勿論抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】活性炭濾過装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】活性炭濾過装置の構成を示す横断面図である。
【図3】活性炭濾過装置の濾過体を示す斜視図である。
【図4】メッシュシートの要部拡大図である。
【図5】水処理装置例の概略系統図である。
【図6】活性炭濾過装置及び逆浸透膜装置の構成例である。
【図7】逆浸透膜の差圧の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の酸化剤含有水の処理方法は、酸化剤含有水に還元剤を添加した後、活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過手段で活性炭濾過処理するものである。
【0019】
被処理水である酸化剤含有水は、酸化剤を含有する水であればよく、例えば、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水(特に、工場からの廃水を生物処理した生物処理水)や、これらに凝集剤を添加・撹拌等してフロック(凝集物)を形成する凝集処理をした水に、酸化剤を添加した水が挙げられる。酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素やオゾン等を例示できるが、経済性及び持続性の観点から塩素系酸化剤が好ましい。本発明の酸化剤含有水の酸化剤濃度は特に限定されるものではないが、塩素系酸化剤の場合は、全塩素濃度として0.05〜5mg/L、特に0.1〜1mg/L程度である。勿論、工業用水や市水等で元々酸化剤を含有する水は、新たに酸化剤を添加しなくても、本発明における被処理水となる。このように本発明の被処理水は酸化剤を含有する水であるため、微生物によるトラブルの発生も、勿論抑制される。なお、酸化剤含有水は濁度が5NTU以下であることが好ましく、さらに好ましくは3NTU以下である。濁度が5NTUより高い場合は、本発明の酸化剤含有水の水処理方法であっても濁質による閉塞を防止し難いため、この場合は、膜分離手段や重力濾過装置などの固液分離手段により別途処理することが好ましい。
【0020】
上記凝集処理を行うための凝集剤としては、高分子凝集剤や、無機凝集剤が挙げられる。高分子凝集剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及び、それらのアルカリ金属塩等のアニオン系の有機系高分子凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド等のノニオン系の有機系高分子凝集剤、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその4級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、及び、それらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等のカチオン系の有機系高分子凝集剤、及び上記アニオン性モノマー、カチオン性モノマーやこれらモノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体である両性の有機系高分子凝集剤が挙げられる。高分子凝集剤の添加量に特に限定はなく、被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ね固形分で0.01〜10mg/Lである。また、無機凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩などが挙げられる。また、無機凝集剤の添加量にも特に限定はなく、処理する被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ねアルミニウム又は鉄換算で0.5〜10mg/Lである。また、被処理水の性状にもよるが、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を用いた場合、高分子凝集剤及び無機凝集剤を添加した被処理水のpHを、pH5.0〜7.0程度とすると、凝集が最適となる。無機凝集剤の添加は、高分子凝集剤を被処理水に添加する前でも後でもよく、また、高分子凝集剤と同時に添加してもよい。
【0021】
このような酸化剤含有水に、まず還元剤を添加する。これにより、酸化剤が還元剤によって還元されるため、酸化剤水から酸化剤を除去することができる。還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムやヒドラジン等が挙げられる。還元剤の添加量は特に限定されず、被処理水である酸化剤含有水の酸化剤含有量等の性状にもよるが、酸化剤に対して当量以上である。なお、活性炭濾過手段の入口で、酸化還元電位計(ORP計)等により酸化還元電位を測定し、この酸化還元電位の測定値に応じて還元剤の添加量を制御する(フィードバック制御)ことが好ましい。酸化還元電位が300mV以下、更には250mV以下となるように還元剤を添加することが好ましい。これにより、適切な量の還元剤を添加することができる。
【0022】
次に、還元剤を添加した後の酸化剤含有水を、活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過手段で活性炭濾過処理する。活性炭濾過手段は、活性炭を有する濾過体を具備するものであればよい。この活性炭により、還元剤の添加によっても除去できなかった酸化剤を吸着し還元することができるため、酸化剤を被処理水からほぼ完全に還元し無害化することができる。したがって、活性炭濾過処理の後に、逆浸透膜装置や脱イオン装置に被処理水を通水しても、酸化剤による膜の劣化や装置の構成部材の劣化を防止することができる。また、前段で還元剤を添加することにより、酸化剤から発生する塩素をある程度除去しているため、酸化剤による活性炭濾過手段が有する活性炭の分解が抑制されて、長期間使用することができる。
【0023】
また、被処理水である酸化剤含有水に含まれる懸濁物質が、活性炭濾過処理の後段の装置である逆浸透膜装置や脱イオン装置等を閉塞させてしまうが、本発明においては、濾過体、すなわち濁質を捕捉する部材を具備する濾過処理手段により、酸化剤含有水中に含まれる懸濁物質も除去することができる。したがって、濁質による後段の逆浸透膜装置や脱イオン装置等の閉塞を防止することができる。
【0024】
このような活性炭濾過手段の一例について、図1〜図4を用いて具体的に説明する。図1は、活性炭濾過装置の構成を示す被処理水の通水方向の縦断面図であり、図2は、活性炭濾過装置の構成を示す横断面図であり、図3は、活性炭濾過装置の濾過体を示す斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、活性炭濾過装置10は、被処理水が通水される筒状の濾過槽1と、通水される被処理水中の濁質を捕捉する濾過体2とを有する。該濾過体2は、濾過槽1の通水方向の両端に接続される芯材3と、芯材3に渦巻状に巻回されたシート状部材からなる濾過体本体4を有する。このシート部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシート5と、メッシュシート5に比べて被処理水が通過し難い活性炭繊維で形成されたシート状のスペーサー6のシート面同士が重ねられたものである。
【0026】
また、濾過槽1の通水方向両端には、濁質(懸濁物質)や、酸化剤等を含有する被処理水が自由に通水できる程度の穴が複数設けられた樹脂製等の円形のプレート7が設けられ、各プレート7の中心に芯材3の両端が固定されている。そして、濾過体2は、濾過体本体4の軸芯が被処理水の通水方向に沿うように、濾過体2が濾過槽1内部全体に充填されている。また、濾過槽1の内壁と濾過体本体4の外周との隙間や、芯材3付近の隙間は、接着剤等の被処理水が通過しない水不透過部材8で埋められており被処理水が通過できない構成になっている。なお、濾過体本体4の軸芯とは、渦巻状に巻回された濾過体本体4の渦巻きの中心であり、本実施形態では芯材3が該当する。
【0027】
このような活性炭濾過装置10に、被処理水、すなわち、還元剤を添加した酸化剤含有水を通水すると、スペーサー6はメッシュシート5に比べて被処理水が通過し難いため、被処理水の多くは、メッシュシート5の空孔を通りメッシュシート5を略縦断、すなわちメッシュシート5を面方向に通過し、その際被処理水に含まれる濁質がメッシュシート5にトラップされ、濁質が除去された被処理水が濾過槽1から排出される。このように、被処理水が通過する空孔を有し濁質を捕捉することができるメッシュシート5を、厚さ方向に横断するのではなく縦断するように、被処理水が通水される構造の活性炭濾過装置10とすることで、清澄な処理水が得られる。したがって、活性炭濾過装置10は、限外濾過膜(UF)装置又は精密濾過膜(MF)装置等の膜分離装置の代わりに逆浸透膜(RO)装置や脱イオン装置の前段で使用することができ、逆浸透膜装置や脱イオン装置の閉塞を抑制することができる。また、活性炭濾過装置10は、限外濾過膜置又は精密濾過膜装置のように、膜を用いた濾過ではないので閉塞し難く、また安価である。
【0028】
そして、スペーサー6が活性炭繊維で形成されたものであるため、このスペーサー6に被処理水が接触することにより、被処理水が含有する酸化剤が活性炭繊維と反応し、還元されて無害化される。したがって、活性炭濾過装置10から排出される被処理水は、酸化剤がほぼ完全に除去されたものとなる。
【0029】
ここで、メッシュシート5は、被処理水が通過することができる空孔を有し被処理水が含有する濁質を所望の程度除去できればよく、特に限定はないが、例えば、図4に示すような、縦糸9aと横糸9bで形成された織物が挙げられる。なお、図4は、メッシュシート5の要部拡大平面図(図4(a))及び図4(a)のA−A´断面図(図4(b))である。
【0030】
そして、メッシュシート5の隣り合う縦糸9a同士や隣り合う横糸9b同士の距離、すなわち、オープニング(図4中OPで示す。)は200〜4000μm程度が好ましく、また、空孔(図4中斜線で示す。)の大きさ、すなわち、メッシュシート5の平面視の空間率(オープニングエリア)は40〜98%程度とすることが好ましく、そして、交点部の高さ(図中Tで示す厚さ)は500〜1200μmであることが好ましい。具体的な商品としては、例えば、100目〜8目(NBC社)程度のものを用いればよい。この範囲であれば、特に好適に濁質を除去することができる。また、逆浸透膜装置、例えば逆浸透膜を巻き回した形状のスパイラル型逆浸透膜装置では、交点部の高さが通常0.65〜1.2mm程度のメッシュシートを原水流路スペーサーとして用いているため、逆浸透膜装置の前段で用いる活性炭濾過装置、すなわち、逆浸透膜装置に処理水を供給する活性炭濾過装置として用いて逆浸透膜装置の閉塞を防止させる場合、逆浸透膜装置よりも交点部の高さの低いメッシュシートを用いることが好ましいためである。
【0031】
また、縦糸9aや横糸9bとなる繊維の直径Dは、それぞれ直径0.1〜0.6mmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.4mm程度である。被処理水の濁度や処理量にもよるが、被処理水を略縦断できるようにするためには、ある程度の太さの繊維で被処理水を通過させる空孔を形成する必要があり、また、太すぎると形成される空孔が大きくなりすぎて、濁質を除去できなくなるためである。
【0032】
メッシュシート5を構成する糸等の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの合成樹脂や、金属繊維、活性炭繊維等が挙げられるが、塩素等の酸化剤による劣化を受け難いポレオレフィンや、PVDFが好ましい。なお、図4においては、織物を例示したが、繊維で形成された比較的大きな空孔を有する不織布でもよい。
【0033】
また、スペーサー6は、メッシュシート5に比べて被処理水が通過し難いシート状のものであれば特に限定されず、例えば、空孔を全く有さず被処理水を通過させない水不透過シートや、直径0.1〜100μm、好ましくは0.5〜30μm程度の繊維で形成された不織布等、又は、これらを貼り合わせたり熱融着で一体成型する等により重ねられたものとしてもよい。
【0034】
なお、メッシュシート5の少なくとも一部が活性炭繊維を用いて形成されている場合は、スペーサー6は活性炭繊維以外の材質で形成されていてもよい。このようなスペーサー6の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、金属繊維等が挙げられる。この中では、耐薬品性や経済性の観点からは、ポレオレフィンが好ましい。
【0035】
そして、メッシュシート5及びスペーサー6を重ね合わせる形態に特に限定はなく、シート面同士を貼り合わせてもよく熱融着で一体成型してもよい。なお、メッシュシート5とスペーサー6の大きさは同一でなくてもよいが、均一に被処理水を処理するためには、ほぼ同一であることが好ましい。メッシュシート5やスペーサー6の通水方向の長さは、被処理水の濁度、酸化剤濃度、処理量等にもよるが、例えば、200〜1000mm程度とすればよい。
【0036】
このメッシュシート5及びスペーサー6を重ね合わせたシート部材を巻きつける芯材3の材質は特に限定されず、プラスチックや金属などを用いることができるが、経済性の観点からは塩化ビニル配管(CVP配管)とすることが好ましい。また、芯材の形状3も特に限定されず、例えば円柱状でも角柱状でもよい。なお、シート部材を芯材3に巻きつける方法も特に限定は無く、例えばシート部材の端部を接着剤等で芯材3に固定し、該芯材3を中心として、シート部材をのり巻き状に巻き込み、被処理水の処理量や濁度等に応じて、任意の径となるように巻きつければよい。
【0037】
そして、濾過槽1に限定はなく、例えば材質はステンレス製や繊維強化プラスチック(FRP)製とすることができ、また、大きさは中空の円柱状(筒状)であれば、直径100〜1000mm、高さ200〜1000mmとすることができる。また、図1では、筒状の濾過槽1としたが、筒状でなくてもよく、通水できる形状、すなわち、中空であればよく、例えば角柱に空洞を設けた形状でもよい。
【0038】
図1においては、濾過体2として、芯材3に3回巻回された濾過体本体4を有するものを用いたが、巻回す回数に制限はなく、被処理水の処理量及び濁度や酸化剤濃度等により適宜調節すればよい。濾過体本体4が1回のみ巻回された濾過体2としてもよいが、巻回す回数が多いほどスペーサー6によりメッシュシート5の形状が保持しやすくなり、被処理水が均一にメッシュシート5を縦断できるようになって、水処理が安定するため好ましい。
【0039】
また、図1においては、濾過体2として、芯材3に濾過体本体4が巻回された物を用いたが、芯材3はなくてもよく、例えばスペーサー6等でメッシュシート5の通水時の形状を保持し、被処理水がメッシュシート5を面方向に通過(縦断)することができれば、濾過体本体4のみからなる濾過体2としてもよい。
【0040】
また、図1においては、中空の円柱状の濾過槽1に濾過体2を充填した活性炭濾過装置10としたが、濾過体2にFRPなどのシートを巻きつけて被処理水が漏れないように接合したものとしてもよい。また、スペーサー6を水不透過の材質とし、被処理水が漏れないようにすることにより、スペーサー6が濾過槽1を兼ねるようにしてもよい。
【0041】
なお、活性炭濾過装置10は、被処理水の通水方向とは逆方向に、活性炭濾過装置10から排出された被処理水、洗浄液、洗浄液と空気との混合液、又は、被処理水(原水)を通水して系外に排出するいわゆる逆洗を行なうことが好ましい。これにより活性炭濾過装置10が有する濾過体2等の部材に付着した濁質等の汚染物質を除去することができる。
【0042】
このような活性炭濾過手段に通水されて活性炭濾過処理した後は、必要に応じて、逆浸透膜装置に通水することによる逆浸透膜処理や、脱イオン装置に通水することによる脱イオン処理を行うことにより、例えば純水を製造することができる。本発明においては、活性炭濾過手段から排出される被処理水は、酸化剤や濁質がほぼ除去されているため、逆浸透膜装置や脱イオン装置の酸化剤による劣化及び濁質による閉塞が防止される。
【0043】
逆浸透膜処理する逆浸透膜装置に特に限定はないが、メッシュシート5の被処理水通水方向の断面積よりも被処理水の通水路の断面積が大きい、例えば、スパイラル型のものではメッシュシート5の交点部の高さよりも原水流路の幅が大きいものが好ましい。逆浸透膜装置の形態に特に限定はないが、例えば、袋とじにした逆浸透膜を側面に通水孔を有する中空の芯材に巻き回した形状のいわゆるスパイラル型のものが、大型化に対応し易いため好ましい。特に、活性炭濾過装置10と同一の直径を有するスパイラル型の逆浸透膜装置とすることが好ましい。なお、スパイラル型の逆浸透膜装置を用いると、逆浸透膜で不純物を膜分離処理された処理水が、中空の芯材から排出され、芯材以外からは逆浸透膜で膜分離処理されていない不純物を多く含んだいわゆる濃縮水が排出される。また、スパイラル型のもの以外に、平膜や中空糸等、いずれの構造でもよい。逆浸透膜としては、芳香族ポリアミド製の膜等が挙げられる。
【0044】
なお、逆浸透膜装置による逆浸透膜処理の代わりに、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)などの膜分離処理を行ってもよい。
【0045】
また、脱イオン処理を行う脱イオン装置に特に限定はなく、一般的な電気脱イオン装置を用いることができる。一般的な電気脱イオン装置は、陰極と陽極との間に、複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列することにより、濃縮室と脱塩室とが形成されている。そして、脱塩室及び濃縮室には、それぞれイオン交換樹脂が、混床あるいは単一の層で充填されている。
【0046】
このような酸化剤含有水の処理方法を行なう水処理装置の一例について、図5を用いて説明する。図5は、本発明の酸化剤含有水の処理方法を行なう水処理装置の概略系統図である。図5に示すように、水処理装置30は、図1の活性炭濾過装置10の前段(上流側)に、還元剤注入装置31を設け、且つ、活性炭濾過装置10の後段(下流側)に、活性炭濾過装置10側から順に逆浸透膜装置32及び電気脱イオン装置33を設けたものである。
【0047】
このような水処理装置30では、まず、被処理水、すなわち酸化剤が添加等され酸化剤を含有する酸化剤含有水に、還元剤が貯留されるタンク34及びポンプ35等からなる還元剤注入装置31により、還元剤が添加される。還元剤が添加されることにより、被処理水が含有する酸化剤が還元される。次に、この還元剤が添加された被処理水が、活性炭濾過装置10に導入される。そして、活性炭濾過装置10に導入された被処理水がメッシュシート5を縦断することにより、被処理水中に含まれる濁質が除去される。また、活性炭繊維で形成されたスペーサー6等に被処理水が接触することにより、被処理水が含有する酸化剤が活性炭繊維で還元される。したがって、活性炭濾過装置10から排出される被処理水は、酸化剤がほぼ完全に除去されたものであり、且つ、濁質も除去されたものである。そして、活性炭濾過装置10から排出された被処理水は、逆浸透膜装置32に通水され、この逆浸透膜装置32から排出された被処理水は電気脱イオン装置33に通水されることにより、純水等を製造することができる。
【0048】
図5においては、活性炭濾過装置10と逆浸透膜装置32とを別々に設けた水処理装置としたが、これに限定されず、図6に示すように、活性炭濾過装置10と逆浸透膜装置32とを一つの中空の容器36に収納する等して一体的な水処理装置としてもよい。一体的な水処理装置とすることで、コンパクト化が図れると共に、部品数を少なくすることができる。なお、還元剤注入装置31、活性炭濾過装置10、逆浸透膜装置32や電気脱イオン装置33は、複数設けても一つずつ設けてもよい。
【0049】
さらに、必要に応じて、被処理水に凝結剤、殺菌剤、消臭剤、消泡剤、防食剤などを添加してもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
被処理水(原水)として、次亜塩素酸ナトリウムが添加された工業用水、具体的には、平均濁度1.2NTU、残留塩素(as.Cl):0.5ppm、水温:20℃の工業用水を、図5に示す水処理装置で処理した。なお、10時間に一度運転を停止し、水処理時の通水方向とは逆方向に、活性炭濾過装置10から排出された被処理水に空気を混合した混合液を、被処理水流量1.6m/h、空気流量1.0m/hとなる量で活性炭濾過装置10に通水して、逆洗を行なった。還元剤注入装置31、活性炭濾過装置10、逆浸透膜装置32及び電気脱イオン装置33の構成は以下の通りである。
【0052】
<還元剤注入装置>
タンク:イワキ(株)製EWN−B11−VC1J−WPO
ポンプ:イワキ(株)製CT−U120N
還元剤:亜硫酸水素ナトリウム
【0053】
<活性炭濾過装置>
濾過槽:内径100mmの円筒状容器(ベッセル)
濾過体:メッシュシートをポリエチレン製の直径0.3mmの繊維からなる縦糸及び横糸で形成された図4に示す1m×10mで交点部の高さTが0.85mm、オープニング3000μm、オープニングエリア82%の織物とし、スペーサーを直径15μmの活性炭繊維で形成された1m×10m×厚さ0.3mmの不織布1枚と、PET(ポリエチレンテレフタラート)製の1m×10m×厚さ0.1mmのフィルム(水不透過フィルム)とからなるものとし、これらを重ね合わせて四隅を熱融着したシート状部材を作成した。そして、このシート部材を水不透過フィルムが外側になるようにして直径20mmの塩化ビニル製のパイプ(芯材)に10m巻きつけて形成した、直径100mmの濾過体
水不透過部材:濾過槽の内壁と濾過体本体の外周との隙間や、芯材付近の隙間を、被処理水を通過させない接着剤で充填した
濾過装置の通水量:1.6m/h(LV=200m/h)
【0054】
<逆浸透膜装置>
逆浸透膜:ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製FILMTEC LE−4040(原水流路スペーサーの交点部の高さ:0.85mm)を用いたスパイラル型のもの(直径100mm)を2本連結したもの
処理水量:0.5m/h
濃縮水量:1.1m/h
【0055】
<電気脱イオン装置>
電気脱イオン装置:Ionpure製LX04X−3
処理水量:0.4m/h
濃縮水量:0.1m/h
【0056】
処理時における逆浸透膜装置32の差圧を、図7に示すように、逆浸透膜装置32の入口の圧力P1と濃縮水出口の圧力P2の差(P1−P2(MPa))として求めた。また、電気脱イオン装置33の差圧を、脱塩室入口圧力P1’と、脱塩室出口圧力P2’との差(P1’−P2’(MPa))として求めた。結果を表1に示す。さらに、活性炭濾過装置10から排出される被処理水の残留塩素濃度及び濁度も測定した。なお、濁度はホルマジン標準液を用いた透過散乱測定方式により求めた。
【0057】
この結果、逆浸透膜装置32の差圧は1000時間通水してもほぼ一定で安定しており、逆浸透膜装置32の閉塞が防止されていることが確認された。また、電気脱イオン装置33の差圧も、1000時間通水しても上昇せず、電気脱イオン装置33も閉塞が防止され、安定した運転が可能であった。そして、活性炭濾過装置10から排出される被処理水の残留塩素濃度及び濁度は共に測定下限値以下(残留塩素濃度0.05ppm以下、濁度0.1NTU以下)であった。したがって、後段の逆浸透膜装置32及び電気脱イオン装置33の酸化剤による劣化及び濁質による閉塞を長期間防止することができることが確認された。
【0058】
(比較例1)
活性炭濾過装置10を設けず、還元剤注入装置31、逆浸透膜装置32及び電気脱イオン装置33のみとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。差圧の測定結果を表1に示す。この結果、逆浸透膜装置32の差圧は徐々に上昇し、通水後1000時間後には0.5MPaとなり、通水不能になった。また、活性炭濾過装置10から排出される被処理水の残留塩素濃度は、0.05ppmであった。
【0059】
(比較例2)
還元剤注入装置31を設けず、活性炭濾過装置10、逆浸透膜装置32及び電気脱イオン装置33のみとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。差圧の測定結果を表1に示す。この結果、活性炭濾過装置10から排出される被処理水の残留塩素濃度は上昇し、通水後200時間後には0.1ppmを超えた。そして、この残留イオン濃度の上昇により電気脱イオン装置33の差圧が上昇し、通水後1000時間後には0.5MPaとなり、通水不能になった。
【0060】
【表1】

【符号の説明】
【0061】
1 濾過槽、 2 濾過体、 3 芯材、 4 濾過体本体、 5 メッシュシート、 6 スペーサー、 7 プレート、 8 水不透過部材、 9a 縦糸、 9b 横糸、 10 活性炭濾過装置、 30 水処理装置、 31 還元剤注入装置、 32 逆浸透膜装置、 33 電気脱イオン装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤含有水に還元剤を添加した後、活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過手段で活性炭濾過処理することを特徴とする酸化剤含有水の処理方法。
【請求項2】
前記活性炭濾過手段が、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、
前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものであること特徴とする請求項1に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項3】
前記濾過体本体は、前記シート状部材が芯材に渦巻状に巻回されたものであることを特徴とする請求項2に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項4】
前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの繊維で形成された不織布であることを特徴とする請求項2又は3に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項5】
前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの活性炭繊維で形成されたものであることを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項6】
前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの繊維で形成された不織布と被処理水を透過しない水不透過シートとからなることを特徴とする請求項2又は3に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項7】
前記メッシュシートは、直径0.1〜0.6mmの繊維で形成されていることを特徴とする請求項2〜6の何れか一項に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項8】
前記活性炭濾過処理の後、逆浸透膜装置で逆浸透膜処理をすることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項9】
前記活性炭濾過処理の後、脱イオン装置で脱イオン処理をすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載する酸化剤含有水の処理方法。
【請求項10】
前記活性炭濾過手段の入口で酸化還元電位を測定し、この酸化還元電位の測定値に応じて前記還元剤の添加量を制御することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載する酸化物含有水の処理方法。
【請求項11】
酸化剤を含有する被処理水に還元剤を添加する還元剤導入装置と、前記還元剤が導入された被処理水が導入され活性炭を有する濾過体を具備する活性炭濾過装置と、該活性炭濾過装置から排出された被処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜装置と、該逆浸透膜装置から排出された被処理水を脱イオン処理する電気脱イオン装置とを有することを特徴とする水処理装置。
【請求項12】
前記活性炭濾過装置が、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一方は活性炭繊維で形成されたものであること特徴とする請求項11に記載する水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206008(P2012−206008A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72764(P2011−72764)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】