説明

酸化型染毛剤又は脱色剤組成物

【課題】ダメージ毛の空洞補修効果に優れ、健常毛のような良好なツヤのある仕上がりを得ることができる酸化型染毛剤又は脱色剤組成物の提供。
【解決手段】アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤を混合して使用する染毛剤組成物又は脱色剤組成物であって、混合物中に0.5質量%を超える量のグアニジウム塩及び2.0質量%を超える量の常温で液体の芳香族アルコールを含有し、グアニジウム塩の含有量をa質量%、常温で液体の芳香族アルコールの含有量をb質量%としたとき、(a−0.5)*(b−2.0)≧1.0を満足し、混合物のpHが8.0〜11.5である酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の脱色又は染色には、第1剤に含有するアルカリ剤と、第2剤に含有する酸化剤等の共存下での酸化反応によって毛髪を脱色ないし染色する酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物が広く使用されている。
【0003】
しかし、このような酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物は、毛髪損傷を引き起こし易く、毛髪内部に空洞を生じさせる結果、光の乱反射によるくすみが生じ、ツヤの失われた仕上がりとなるという問題を有している。そこで、毛髪の損傷を抑制した酸化型染毛剤として、特定の有機溶剤を使用したもの(特許文献1〜2)などの技術が提案されている。しかし、これらの酸化型染毛剤及び脱色剤組成物では、いったん生じた損傷を補修して良好なツヤのある仕上がりを得ることはできなかった。
【0004】
また、従来グアニジウム塩は、酸化型染毛剤又は脱色剤におけるアルカリ剤として使用されることが知られているが、特定の有機溶剤とグアニジウム塩とを特定の濃度範囲で併用することによる毛髪損傷補修効果やツヤ付与効果については、知られていない。
【0005】
一方、特許文献3及び4には、分子中にアミノ基、ヒドロキシル基、カルボニル基又はカルボキシル基を有する低分子化合物を、毛髪に立体感、透明感又は深み感を付与する有効成分として使用する技術が開示されており、かかる有効成分として、グアニジン誘導体や芳香族アルコールも挙げられている。しかし、これら文献の実施例には、グアニジウム塩を使用した例は記載されておらず、当然ながらグアニジウム塩と特定の有機溶剤を併用した処方も記載されていない。また、これら実施例として記載されている具体的な剤型は、シャンプー、リンス、パーマ剤の第1剤、第2剤のみであり、酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物により毛髪を脱色ないし染色しながら毛髪損傷補修効果が得られることについては記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-029443号公報
【特許文献2】特開2002-193770号公報
【特許文献3】特開2001-220321号公報
【特許文献4】特開2001-220322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、通常であれば毛髪損傷を引き起こし易い酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物であるにもかかわらず、既に他の酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物によってダメージを受けた毛の空洞を補修して健常毛のような良好なツヤのある仕上がりを得ることができ、しかも酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物としての基本性能である髪色を明るくする能力にも優れる酸化型染毛剤又は脱色剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、酸化型染毛剤又は脱色剤組成物において特定濃度を超える量のグアニジウム塩と芳香族アルコールとを併用し、かつそれらの含有量が一定の条件を満たすようにすることにより、上記課題を一度に解決することができることを見出した。
【0009】
本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤を混合して使用する染毛剤組成物又は脱色剤組成物であって、混合物中に0.5質量%を超える量のグアニジウム塩及び2.0質量%を超える量の常温で液体の芳香族アルコールを含有し、グアニジウム塩の含有量をa質量%、常温で液体の芳香族アルコールの含有量をb質量%としたとき、(a−0.5)*(b−2.0)≧1.0を満足し、混合物のpHが8.0〜11.5である酸化型染毛剤又は脱色剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の染毛剤組成物は、他の酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物によってダメージを受けた毛の空洞を補修して健常毛のような良好なツヤのある仕上がりを得ることができ、しかも酸化型の染毛剤又は脱色剤組成物としての基本性能である髪色を明るくする能力にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、各成分の含有量に関し「混合物中」とは、二剤式の場合は「第1剤と第2剤との混合物中」、三剤式の場合は「第1剤〜第3剤からなる混合物中」を指すものとする。
【0012】
〔グアニジウム塩〕
本発明で用いるグアニジウム塩としては、塩酸グアニジン、硫酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、重炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、ホウ酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、グアニジン有機酸塩等が挙げられ、なかでも炭酸グアニジン及び重炭酸グアニジンが好ましい。これらグアニジウム塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。グアニジウム塩は、第1剤に配合されることが好ましく、染め上がりの良好なツヤの観点より、混合物中に0.5質量%を超える量含有するものとし、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは2〜8質量%含有する。
【0013】
〔芳香族アルコール〕
本発明で用いる常温で液体の芳香族アルコール(以下、単に「芳香族アルコール」という)としては、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール等が挙げられ、なかでもベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノールが好ましい。なお、本出願において「常温」とは、25℃をいうものとする。これら芳香族アルコールは、任意の剤に含有させることができるが、前述の第1剤〜第3剤とは別個の剤として使用することもできる。芳香族アルコールは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。芳香族アルコールは、染め上がりの良好なツヤの観点より、混合物中に2.0質量%を超える量含有するものとし、好ましくは2.5〜20.0質量%、更に好ましくは3.0〜10.0質量%含有する。
【0014】
本発明の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物は、グアニジウム塩の含有量をa質量%、常温で液体の芳香族アルコールの含有量をb質量%としたとき、染め上がりの良好なツヤの観点より、(a−0.5)*(b−2.0)≧1.0を満足することが必要であり、(a−0.5)*(b−2.0)≧2.0、更には(a−0.5)*(b−2.0)≧2.5、更には(a−0.5)*(b−2.0)≧3.0、更には(a−0.5)*(b−2.0)≧3.5、更には(a−0.5)*(b−2.0)≧4.0を満足することが好ましい。また、良好な染毛性の観点から、40≧(a−0.5)*(b−2.0)、更には35≧(a−0.5)*(b−2.0)、更には30≧(a−0.5)*(b−2.0)を満足することが好ましい。
【0015】
〔酸化染料〕
本発明の組成物が染毛剤組成物である場合には、酸化染料を含有する。酸化染料としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカプラーを用いることができる。プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロ-パラフェニレンジアミン、N-メトキシエチル-パラフェニレンジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-パラフェニレンジアミン、2,6-ジメチル-パラフェニレンジアミン、4,4′-ジアミノジフェニルアミン、1,3-ビス(N-(2-ヒドロキシエチル)-N-(4-アミノフェニル)アミノ)-2-プロパノール、PEG-3,3,2′-パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、3-メチル-4-アミノフェノール、2-アミノメチル-4-アミノフェノール、2-(2-ヒドロキシエチルアミノメチル)-4-アミノフェノール、オルトアミノフェノール、2-アミノ-5-メチルフェノール、2-アミノ-6-メチルフェノール、2-アミノ-5-アセタミドフェノール、3,4-ジアミノ安息香酸、5-アミノサリチル酸、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、2,5,6-トリアミノ-4-ヒドロキシピリミジン、4,5-ジアミノ-1-(4′-クロロベンジル)ピラゾール、4,5-ジアミノ-1-ヒドロキシエチルピラゾールとこれらの塩等が挙げられる。
【0016】
また、カプラーとしては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチルアミノ)アニソール、2,4-ジアミノ-5-メチルフェネトール、2,4-ジアミノ-5-(2-ヒドロキシエトキシ)トルエン、2,4-ジメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、2,6-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)トルエン、2,4-ジアミノ-5-フルオロトルエン、1,3-ビス(2,4-ジアミノフェノキシ)プロパン、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2, 4-ジクロロ-3-アミノフェノール、2-クロロ-3-アミノ-6-メチルフェノール、2-メチル-4-クロロ-5-アミノフェノール、N-シクロペンチル-メタアミノフェノール、2-メチル-4-メトキシ-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、2-メチル-4-フルオロ-5-アミノフェノール、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、4-クロロレゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、5-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドール、7-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、3,4-メチレンジオキシフェノール、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシアニリン、1-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3,4-メチレンジオキシベンゼン、2,6-ジヒドロキシ-3,4-ジメチルピリジン、2,6-ジメトキシ-3,5-ジアミノピリジン、2,3-ジアミノ-6-メトキシピリジン、2-メチルアミノ-3-アミノ-6-メトキシピリジン、2-アミノ-3-ヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジンとこれらの塩等が挙げられる。
【0017】
プレカーサーとカプラーは、それぞれ2種以上を併用してもよく、その含有量は、それぞれ混合物中の0.01〜5.0質量%、更には0.1〜4.0質量%が好ましい。
【0018】
〔他の染料〕
本発明の染毛剤組成物は、酸化染料以外の染料として、更に直接染料を併用することができる。直接染料としては、ニトロ染料、分散染料、塩基性染料、酸性染料等が挙げられる。ニトロ染料としては、2-ニトロ-パラフェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-パラヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-オルトフェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、HCブルーNo.2、HCオレンジNo.1、HCレッドNo.1、HCイエローNo.2、HCイエローNo.4、HCイエローNo.5、HCレッドNo.3、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-パラフェニレンジアミン等が挙げられ、分散染料としては、ディスパーズバイオレット1、ディスパーズブルー1、ディスパーズブラック9等が挙げられ、塩基性染料としては、ベーシックブルー99、ベーシックブラウン16、ベーシックブラウン17、ベーシックレッド76、ベーシックレッド51、ベーシックイエロー57、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31等が挙げられる。酸性染料としては、だいだい色205号、赤色106号等が挙げられる。
【0019】
直接染料は、2種以上を併用してもよい。またその含有量は、混合物中に0.001〜5.0質量%、更には0.01〜3.0質量%が好ましい。
【0020】
〔アルカリ剤〕
本発明の染毛剤又は脱色剤組成物は、第1剤にアルカリ剤を含有する。アルカリ剤としては、アンモニア及びその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩、1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0021】
アルカリ剤は、2種以上を併用してもよく、混合物中の含有量は、十分な染毛効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、0.05〜15.0質量%が好ましく、更には0.1〜10.0質量%、更には0.2〜5.0質量%が好ましい。なお、ここでいうアルカリ剤の含有量には、前述のグアニジウム塩を含まないものとする。
【0022】
〔過酸化水素〕
本発明の染毛剤又は脱色剤組成物は、第2剤に過酸化水素を含有する。混合物中の過酸化水素の含有量は、十分な染毛効果、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、0.1〜12.0質量%が好ましく、更には0.5〜9.0質量%、更には1.0〜6.0質量%が好ましい。
【0023】
〔界面活性剤〕
本発明の染毛剤又は脱色剤組成物には、いずれか1以上の剤に界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれをも使用することができる。
【0024】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル系アニオン界面活性剤;N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-アルキルアミノ酸塩、アミド型N-アシルアミノ酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、コハク酸アルキル又はコハク酸アルケニルの塩等のカルボン酸系アニオン界面活性剤;スルホコハク酸塩型、イセチオン酸塩型、タウリン塩型、アルキルベンゼンスルホン酸塩型、α-オレフィンスルホン酸塩型、アルカンスルホン酸型等のスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル系アニオン界面活性剤が挙げられる。これらのうち、カルボン酸系、硫酸エステル系が好ましく、なかでもカルボン酸系が好ましい。カルボン酸系アニオン界面活性剤の中でも、N-アシルアミノ酸塩、エーテルカルボン酸塩が好ましく、このうち、アシル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜16、更には10〜14のN-アシルグルタミン酸塩、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜16、更には10〜14でオキシエチレン基の平均付加モル数が3〜15、好ましくは3〜12、更には4〜10のポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩が好ましい。
【0025】
非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。アルキルポリグルコシドとしては、アルキル基の炭素数が8〜18、更には8〜14、更には9〜11であるものが好ましく、またこのアルキル基が直鎖であるものが好ましい。グルコシドの平均重合度は1〜5、更には1〜2が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が10〜22、更には12〜18であるものが好ましく、またこのアルキル基が直鎖であるものが好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく、なかでもオキシエチレン基の平均付加モル数が1〜50、更には2〜40であるものが好ましい。アルキルグリセリルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が8〜18、更には8〜12であるものが好ましく、またこのアルキル基が分岐鎖であるものが好ましい。
【0026】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ジアルキル(C12−18)ジモニウムクロリド等が挙げられ、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアロキシプロピルトリモニウムクロリド、ジアルキル(C12−18)ジモニウムクロリドがより好ましい。カチオン界面活性剤の市販品としては、コータミン86W、同86P コンク、同60W、同E-80K、同D2345P(以上、花王社製)、ニッコール CA-2580(日本サーファクタント工業社製)が挙げられる。
【0027】
両性界面活性剤としては、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基又はアシル基を有するカルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、イミダゾリニウム系の界面活性剤が挙げられ、なかでもカルボベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤が好ましい。好ましい両性界面活性剤としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0028】
界面活性剤は二種以上を併用することもでき、混合物中の含有量は、混合物の安定性の観点より、2.0〜8.0重量%が好ましく、更には2.5〜7.0質量%、更には3.0〜6.0質量%が好ましい。
【0029】
〔高級アルコール〕
本発明の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物には、感触改善、安定性の観点から、第1剤、第2剤及び第3剤のいずれか1以上に、炭素数12以上の高級アルコールを含有させることが好ましい。これらは、界面活性剤と構造体を形成して分離を防ぐと共に、すすぎ時の感触を改善する効果がある。
【0030】
高級アルコールとしては、炭素数12〜30、更には16〜22のものが好ましく、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
高級アルコールは、2種以上を併用してもよく、またその含有量は、混合物の粘度及び安定性の観点より、混合物中の3.0〜11.0重量%、更には4.0〜9.0重量%が好ましい。
【0032】
〔多価アルコール〕
本発明の染毛剤又は脱色剤組成物は、更に多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールとしては、炭素数2〜20のもの、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;キシリット、マンニット、ガラクチット、ソルビット等の糖アルコール類;その他トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0033】
多価アルコールは、二種以上を併用してもよい。また、混合物中の含有量は、毛髪にうるおいを与え、毛髪のぱさつきを抑止する効果に優れる点から、0.1〜20.0質量%が好ましく、更には0.5〜15.0質量%、更には1.0〜10.0質量%が好ましい。
【0034】
〔媒体〕
本発明の組成物には、媒体として、水及び必要により有機溶剤が使用される。有機溶剤としては、前述の芳香族アルコール以外に、エタノール、2-プロパノール等の低級アルカノール類、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンジルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。
【0035】
〔剤型等〕
本発明の組成物は、現在広く利用されている酸化染毛剤又は脱色剤と同様に、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤よりなる二剤型として、又は脱色力向上のため、更に第3剤として過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)等の造粒物からなる粉末状酸化剤を組み合わせてなる三剤型として、更には上記二剤型又は三剤型に、別の剤を組み合わせた形として提供される。第1剤及び第2剤の剤形は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、泡状などとすることができ、泡状の場合、エアゾール形態、ノンエアゾール形態のいずれとすることもできる。
【0036】
〔pH〕
本発明の組成物のpH(25℃)は、第1剤は8.0〜12.0、第2剤は2.0〜5.0が好ましく、混合時の全組成物は、脱色・染毛効果と皮膚刺激性の点から、8.0〜11.5、更には9.0〜11.0が好ましい。pH調整剤としては、前記のアルカリ剤のほか、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸等の有機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等が挙げられる。
【0037】
〔その他任意成分〕
本発明の組成物には、上記成分のほかに通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。このような任意成分としては、炭化水素類、動植物油脂、高級脂肪酸類、天然又は合成の高分子、シリコーン類、エーテル類、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、防腐剤、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤が挙げられる。
【0038】
〔処理法〕
本発明の組成物を用いて毛髪を染色又は脱色処理するには、例えば本発明の組成物の第1剤と第2剤(三剤型の場合は更に第3剤)を使用直前に混合した後、毛髪に適用し、所定時間放置後、洗い流し、乾燥すればよい。毛髪への適用温度は15〜45℃、適用時間は3〜60分間、更には5〜45分間、更には10〜30分間が好ましい。
【0039】
以上述べた本発明の実施形態について、以下に総括して示す。
【0040】
<1> アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤を混合して使用する染毛剤組成物又は脱色剤組成物であって、混合物中に0.5質量%を超える量のグアニジウム塩及び2.0質量%を超える量の常温で液体の芳香族アルコールを含有し、グアニジウム塩の含有量をa質量%、常温で液体の芳香族アルコールの含有量をb質量%としたとき、(a−0.5)*(b−2.0)≧1.0を満足し、混合物のpHが8.0〜11.5である酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0041】
<2> グアニジウム塩が、塩酸グアニジン、硫酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、重炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、ホウ酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン及びグアニジン有機酸塩から選ばれるものである、<1>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0042】
<3> 混合物中におけるグアニジウム塩の含有量が、1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%である、<1>又は<2>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0043】
<4> 常温で液体の芳香族アルコールが、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール及び2-ベンジルオキシエタノールから選ばれるものである、<1>〜<3>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0044】
<5> 混合物中における常温で液体の芳香族アルコールの含有量が、2.5〜20.0質量%、より好ましくは3.0〜10.0質量%である、<1>〜<4>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0045】
<6> 更に、混合物中に界面活性剤を含有する、<1>〜<5>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0046】
<7> 界面活性剤が、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である、<6>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0047】
<8> 混合物中における界面活性剤の含有量が、2.0〜8.0質量%、より好ましくは2.5〜7.0質量%、更に好ましくは3.0〜6.0質量%である、<6>又は<7>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0048】
<9> 更に、混合物中に炭素数12以上の高級アルコールを含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0049】
<10> 炭素数12以上の高級アルコールが、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール及びオレイルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、<9>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0050】
<11> 混合物中における炭素数12以上の高級アルコールの含有量が、3.0〜11.0質量%、より好ましくは4.0〜9.0質量%である、<9>又は<10>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0051】
<12> 更に、混合物中に多価アルコールを含有する、<1>〜<11>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0052】
<13> 混合物中における多価アルコールの含有量が、0.1〜20.0質量%、より好ましくは0.5〜15.0質量%、更に好ましくは1.0〜10.0質量%である、<12>に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0053】
<14> (a−0.5)*(b−2.0)≧2.0、より好ましくは(a−0.5)*(b−2.0)≧2.5、より好ましくは(a−0.5)*(b−2.0)≧3.0、より好ましくは(a−0.5)*(b−2.0)≧3.5、更に好ましくは(a−0.5)*(b−2.0)≧4.0を満足するものである、<1>〜<13>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0054】
<15> 40≧(a−0.5)*(b−2.0)、より好ましくは35≧(a−0.5)*(b−2.0)、更に好ましくは30≧(a−0.5)*(b−2.0)を満足するものである、<1>〜<14>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0055】
<16> 混合物のpHが、9.0〜11.0である、<1>〜<15>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【0056】
<17> <1>〜<16>のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物の第1剤と第2剤を使用直前に混合した後、毛髪に適用し、15〜45℃で、3〜60分間、より好ましくは5〜45分間、更に好ましくは10〜30分間放置後、洗い流し、乾燥する、染毛又は脱色方法。
【実施例】
【0057】
実施例1〜14、比較例1〜6
(評価用毛髪の作製)
中国人白髪に対して、下記1及び2の工程を2回繰り返した後、更にもう一度ブリーチ処理をした後、ドライヤーで15分乾燥してダメージ毛髪を作製した。ダメージ毛髪から毛髪内部が長さ全体にわたって空洞化している毛を目視で選び出して評価用毛髪とした。

1.ブリーチ液(表1)で30℃20分ブリーチ処理
2.下記日常ヘアケア行動のモデルサイクルを15サイクル行った。

日常ヘアケア行動のモデルサイクル:毛髪を40℃の水に1分間浸漬した後、ドライヤーで15分乾燥(温風)
【0058】
【表1】

【0059】
(空洞補修効果の評価)
前記処理後、評価用毛髪の内部の空洞を確認した後、表2〜4に示す処方からなる処理剤11gに、評価用毛髪40本を浸漬し30℃で60分静置した。40℃の温水で15秒すすぎ自然乾燥した後、再び同一部位の空洞を観察した。処理前後の毛髪内部の空洞を比較して、下記式により空洞の補修率を算出した。
補修率=(x−y)/x×100
x:剤処理前に空洞があった毛の本数
y:剤処理後に空洞があった毛の本数
【0060】
(処理剤)
下記第1剤(表2)と第2剤(表3)を1:1の質量比で混合し、処理剤とした。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
実施例15〜16、比較例7
毛髪約2.8gの日本人毛トレスに表1のブリーチ液を3g塗布して30℃30分静置し、40℃の温水で15秒すすぎ、15秒シャンプーで洗い15秒すすいだ。コンディショナーを15秒なじませた後、15秒すすぎ、ドライヤー乾燥した。これらの処理を10回行ったものを、評価用トレスとした。
【0065】
評価用トレスを、表5に示す第1剤と表6に示す第2剤を質量比1:1で混合した処理剤28gに浸し、30℃で20分静置した。トレスを40℃の温水で15秒すすぎ、コンディショナーを約3g15秒間トレスになじませ、40℃の温水で15秒すすいだ後、乾燥させた。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
ツヤ評価:ヘアカラーの開発に5年以上携わっている専門パネラー3名による目視評価を行った。評価は、比較例7と実施例15、及び比較例7と実施例16の一対比較評価とし、下記基準に従って評価した。この結果を表7に示す。
実施例の方がツヤがある :2
実施例の方がツヤがややある:1
実施例と比較例は同等 :0
比較例の方がツヤがややある:−1
比較例の方がツヤがある :−2
【0069】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤を混合して使用する染毛剤組成物又は脱色剤組成物であって、混合物中に0.5質量%を超える量のグアニジウム塩及び2.0質量%を超える量の常温で液体の芳香族アルコールを含有し、グアニジウム塩の含有量をa質量%、常温で液体の芳香族アルコールの含有量をb質量%としたとき、(a−0.5)*(b−2.0)≧1.0を満足し、混合物のpHが8.0〜11.5である酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項2】
グアニジウム塩が、塩酸グアニジン、硫酸グアニジン、硝酸グアニジン、炭酸グアニジン、重炭酸グアニジン、リン酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン、ホウ酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン及びグアニジン有機酸塩から選ばれるものである、請求項1記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項3】
混合物中におけるグアニジウム塩の含有量が、1〜10質量%である、請求項1又は2に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項4】
混合物中におけるグアニジウム塩の含有量が、2〜8質量%である、請求項1又は2に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項5】
常温で液体の芳香族アルコールが、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p-アニシルアルコール、p-メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール及び2-ベンジルオキシエタノールから選ばれるものである、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項6】
混合物中における常温で液体の芳香族アルコールの含有量が、2.5〜20.0質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項7】
混合物中における常温で液体の芳香族アルコールの含有量が、3.0〜10.0質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項8】
更に、混合物中に界面活性剤を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項9】
界面活性剤が、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項10】
混合物中における界面活性剤の含有量が、2.0〜8.0質量%である、請求項8又は9に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項11】
更に、混合物中に炭素数12以上の高級アルコールを3.0〜11.0質量%含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項12】
更に、混合物中に多価アルコールを含有する、請求項1〜11のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項13】
混合物中における多価アルコールの含有量が、0.1〜20.0質量%である、請求項12に記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項14】
(a−0.5)*(b−2.0)≧3.5である、請求項1〜13のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。
【請求項15】
(a−0.5)*(b−2.0)≧4.0である、請求項1〜14のいずれかに記載の酸化型染毛剤又は脱色剤組成物。

【公開番号】特開2012−224621(P2012−224621A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−86647(P2012−86647)
【出願日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】