説明

酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定方法

【課題】基板上に製膜された薄膜または自立した薄板を対象とした、酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定を安価に行うことができ、特に、熱伝導率の測定では、測定感度と同程度以下の熱伝導率の測定が可能となる、酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定方法を提供する。
【解決手段】基板上に製膜した薄膜または自立した薄板の諸特性を測定する方法であって、被測定対象材料を被測定対象材料より高い既知の熱伝導率を有する材料に添加させた部材を用いて、被測定対象材料の酸化度、窒化度、熱伝導率または組成比を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に製膜した薄膜および自立した薄板の評価技術に関し、特に、薄膜または薄板の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、薄膜または薄板の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定方法の従来技術として、まず、酸化度および窒化度の従来技術を説明し、次に、熱伝導率および組成比の従来技術を説明する。
【0003】
<酸化度および窒化度について>
SiO、Al、AlN、Si、GeNなどの酸化物や窒化物、あるいは酸素および窒素の両方を含む、すなわち誘電体は、電気的絶縁、熱絶縁、多層膜光学設計などの目的で、ひろい産業、技術分野で用いられている。これらの材料が、組み込まれるデバイスやシステムで求められる役割を果たす(特性を発揮する)には、それぞれの材料の酸化度あるいは窒化度を正確に把握、制御しなければならない。ここでいう酸化度および窒化度とは、ある原子1個が、何個の酸素あるいは窒素と結びついているのか、もしくは、酸化物あるいは窒化物中の化学量論比の相の割合ということである。例えば、シリコン酸化物でいえば、注目するシリコン酸化物が、SiOなのかそれともSiOなのか、もしくはそれらの割合がいくらかということである。
【0004】
酸化物SiOは電気的には絶縁体であり、熱伝導率も1.47W・m−1・K−1となる。Siになると、半導体に分類されるが、電気抵抗は1×10μΩ・cm(Fe=9.71、Ag=1.59)(アグネ周期律表)、熱伝導率は148W・m−1・K−1(アグネ周期律表)となる。また、SiOの屈折率は可視域で1.5程度であるが1個酸素が抜けたSiOでは2以上であり、Siではさらに屈折率は大きくなる。参考のため、以下の表1に波長405nm近傍における、SiO、SiO、Siの光学定数を示す。Si酸化物の光学定数は、酸素の量が少なくなるほど、n(屈折率)、k(吸収率)ともに大きくなる。
【0005】
【表1】

【0006】
SiO、Al、AlN、Si、GeNなどの酸化物や窒化物、あるいは酸素および窒素の両方を含む、すなわち誘電体は、るつぼなどを使用した抵抗加熱による蒸着法、電子銃加熱による蒸着法、レーザアブレーション法、マグネトロンスパッタリング法などのスパッタリング法で製膜されるが、製膜過程で融解したり、高い運動エネルギを受けて固体のターゲットから各材料が離脱したりしたときに、酸素が抜ける(この場合還元という)あるいは窒素、もしくは酸素と窒素の両方が抜けるといったことが起こり得る。また、基板を有しない自立した薄板状の、酸化物や窒化物、あるいは酸素および窒素の両方を含む誘電体を作製するには、原料である、酸化物や窒化物、あるいは酸素および窒素の両方を含む材料の風末を加圧成形し、その後加熱し、焼結または溶融させる。このときの昇温過程でも、酸素が抜ける(この場合還元という)あるいは窒素、もしくは酸素および窒素の両方が抜けるといったことが起こり得る。
【0007】
例えば、酸化物のAlは結晶化するとルビーやサファイアといった硬い宝石になり、また融点は2047℃である。これに対し、SiOは、融点は1720℃であり、石英ガラスとも呼ばれる。SiOはAlに比べて不安定であり、製膜時あるいは加圧成形後の昇温過程で、製膜条件や昇圧条件によっては酸素が抜ける(還元作用が起こる)と考えられる。これらの酸化物、窒化物あるいは酸素と窒素の両方を含む材料を製膜するときは、ArやXrなどのスパッタリングガスに酸素あるいは窒素もしくは両方を混ぜる反応性スパッタリング法や、蒸着法で製膜する際に基板に酸素イオンや窒素イオンもしくは両方を照射する反応性蒸着法が用いられる。自立した薄板の場合は、酸素、窒素、酸素と窒素の混合ガスなどのうちのいずれか、もしくはこれらのガスのうちのいずれかとArなどの不活性ガスによる混合ガスの雰囲気中で加熱し、焼結または溶融することによって酸素あるいは窒素、もしくは酸素、窒素の両方が抜けるのを防止または補償する。
【0008】
材料の酸化度あるいは窒化度、もしくは酸素および窒素が何個ある原子と結びついているかということは、SiO、Al、AlN、Si、GeNなどの誘電体を利用する場合だけでなく、金属あるいは合金、半導体を利用する場合も重要になる。例えば、MOなどの光磁気ディスクには記録材料として、TbFeなどの希土類−遷移金属非晶質合金が使われている。この合金の磁気異方性、保磁力、磁化など、記録材料として要求される磁気特性は組成比に依存する。この合金を製膜する過程で酸素が膜中に取り込まれたとすると、酸素はTbあるいはFe、もしくは両方と結びつく。酸素と結びついた原子は強磁性を示さなくなるので、記録層の磁気特性ひいてはディスクの記録・再生特性も変化してしまう。これは、酸素あるいは窒素、もしくは酸素、窒素の両方が材料中に取り込まれることが、材料自身や材料を用いている素子、およびその素子が組み込まれているシステムの特性・性能に悪い影響を与える1例である。
【0009】
金属あるいは合金、もしくは半導体を利用する場合で、ある効果を期待し、酸素あるいは窒素、を積極的に材料中に導入することもある。相変化光ディスクは、記録材料であるカルコゲナイド化合物のGeSbTeを、レーザ照射により非晶質化あるいは結晶化させ、記録・消去を繰り返し行う。記録・消去過程はGeSbTeの溶融・凝固の過程であるため、繰り返し行われることによりGeSbTe層で膜流動が進み、最終的には記録できなくなる(書き換え回数の制限)という欠点が、相変化記録媒体で指摘されていた。膜流動を抑えるためにGeSbTeに窒素を微量添加する方法が提案されている。GeNが結晶粒界に析出し、結晶粒内部のGeSbTeの長距離にわたる流動を抑えるとされている。
【0010】
SiO、Al、AlN、Si、GeNなどの酸化度や窒化度は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)やAES(Auger Electron Spectroscopy)などの方法を用いて評価(測定)される。以下に、酸化度、窒化度を測定するための代表的な二つの方法について説明する。
【0011】
AES(Auger Electron Spectroscopy)(オージェ電子分光):
試料に電子線を照射したとき、原子核の周囲の各軌道をまわる電子がエネルギの高い励振状態からエネルギの低い基底状態に移るときに電子が放出される。この電子のことを、この減少の研究者の名前をとりオージェ電子(Auger Electron)と呼ぶ。飛び出すオージェ電子の運動エネルギは、注目する原子の周囲環境、すなわちどのような原子に何個囲まれているかによって決まる。従って、オージェ電子の運動エネルギを計測することによって、酸化度および窒化度を測定できる。オージェ電子の検出深さは、そのエネルギが2keV程度なので、1〜3nmとなる。
【0012】
XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)(X線光電子分光):
試料にX線を照射したときに出てくる電子(X線光電子)の運動エネルギを測定することで、原子の種類(組成)、原子が取り巻かれる環境(化学状態、すなわち酸化度、窒化度)がわかる。X線は波長、エネルギにもよるが数ミクロン程度は試料中に進入する。しかし、X線光電子の平均自由工程は2nm程度なので、XPSで得られる情報は試料表面から2nm程度のところまで、ということになる。
【0013】
<熱伝導率および組成比について>
さまざまな元素およびそれらの化合物からなる、数nmから数10μmの厚さの薄膜は、撮像、表示(ディスプレイ)、記録など放送にかかわる技術分野や半導体産業を初めとし、あらゆる研究・技術・産業分野で用いられている機能性材料である。厚さ、硬度、表面平坦性、トライボロジ(表面潤滑性)、光透過率、光学定数、電気抵抗(電導度)、磁気特性、熱特性などの物性・物理量のうち、熱特性のひとつである熱伝導率は、材料・素子・装置・システムの次のような機能に強い影響を与える。
【0014】
すなわち、保温、冷却、熱絶縁などである。ここでいう保温は、加熱機構のない魔法瓶や浴槽、雪のかまくら、毛糸のセータ、ふとんなどのことで、これらの場合、セラミックやプラスチック、金属としては熱伝導率の小さなステンレス、真空、雪や繊維のなかの空気が保温機能をもたらしている。冷却は、例えば半導体集積回路(チップ)や電源、オートバイのエンジンなど、大電流が流れる、あるいは電流密度が高い場合や、燃焼によって高温が発生する場合に求められる機能である。熱絶縁は、やかんやなべの持ち手、マイコンが搭載されたストーブやオイルファンヒーターで求められる。
【0015】
このように、人間がケガや病気をせずに快適に生活をするために、また、装置・システムが正常に動作するために熱伝導率は重要な働きをし、場合によっては高熱伝導率の材料が(冷却、除熱の場合)、また低熱伝導率の材料が(保温、熱絶縁の場合)必要とされる。人間が正確環境や装置・システムの動作に必要な機能を材料や素子に持たせるには、材料の持つ物性・物理量を正確に測定・評価する必要がある。
【0016】
熱伝導率を測定するにはいくつかの方法が提案されている。以下にこれらの方法および、各方法による装置について紹介する。
【0017】
定常法としては、定常絶対法および定常比較法(円板熱流計法)がある。温度や熱流の変化過程を利用する非定常法としては、熱線法、プローブ法、レーザフラッシュ法などがある。第3の分類として、測定試料片をレーザで周期的に加熱するレーザangstrom法(周期的加熱法)がある。ANTER社製のUNITHERMTM2021は、定常比較法である円板熱流計法による装置であり、熱伝導率が既知の物質4種(Stainless steel, Pyrex, Pyroceram, Vespel)を用いて較正を行う。試料の形状は円板またはフィルムである。厚さは2mmから20mmとされる。厚さサブミクロンのいわゆる薄膜の測定はできない。
【0018】
周期的加熱法であるレーザangstrom法を基板上に製膜した薄膜の側手に適用する場合について紹介する。特徴は、以下の通りである。
(1)薄膜の測定感度は、基板が薄いほど、また低熱伝導であるほど高くなる。測定できる熱伝導率の下限がない。
(2)自立した単体薄板の熱拡散率が±0.3%の精度で測定できる。従って、基板(自立した単体薄板)上に製膜した薄膜の熱伝導率が高精度で測定できる。
(3)広範囲の厚さ(3〜500μm)の自立した単体薄板に適用できる。
【0019】
いずれの方法を用いるとしても、小さな値の熱伝導率を精度よく測定するのは困難である。以下の表2に示すように、導電性の高い金属は熱伝導率も高く、100W/(m・K)レベルの値だが、絶縁性の誘電体(酸化物、窒化物等)や空気等の気体の場合熱伝導率は小さく、数W/(m・K)から1W/(m・K)である。本発明で用いている方式は周期的加熱法であるレーザangstrom法であり、使用している装置は、(株)ULVAC理工製のLaserPITである。この装置の測定精度は自立した薄板を試料とした場合±5%である。しかし、薄膜試料の場合これより悪くなる可能性がある。薄膜試料の熱伝導率の測定感度は±0.3W/(m・K)程度なので、1W/(m・K)の値を測定しようとすると、測定精度は±30%ということになる。
【0020】
【表2】

【0021】
次に、従来用いられてきた組成分析法について述べる。
【0022】
EPMA(Electro Probe Microanalyzer):
電子を照射して各元素からの特性X線を計測することによって組成分析を行う。微小部分の分析が行える。しかし、定量分析には標準試料が必要となり、装置が高価である。
【0023】
AES(Auger Electron Spectroscopy)、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy):
前者は電子を照射して特性電子線の1種であるAuger電子を計測することで組成分析を行う。後者はX線を照射して、励起されて出てくる電子の運動エネルギを計測することで組成分析を行う。酸化状態や原子の結合状態を分析できる、表面・界面分析が行えるなどの特徴があるが、定量性に掛ける。また装置が高価である。
【0024】
SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy):
直訳すれば2次イオン質量分析である。イオンを照射して表面近傍から出てくる原子の質量を分析することで、試料を較正する元素およびその割合を特定する。表面・界面分析が行える、微量分析が行えるなどの特徴がある。しかし、定量性に欠け、装置が高価である。
【0025】
蛍光X線分析:
X線を照射して各元素の特性X線を計測することで組成分析を行う。定量分析を行うには標準試料が必要となる。また、体に有害なX線を使用する。
【0026】
ICP:
ICP−AES(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)とICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectroscopy)の2種類がある。試料をHClやHNOなどの酸に溶解したうえで、発光分析や質量分析を行う。定量分析には溶液の標準試料がやはり必要になるが、酸などに溶かし込む物質を化学てんびんを用いて高精度に秤量できるため、高精度の標準試料ができる。従って定量性が高い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
以上述べた種々の分析方法は、いずれも高価な装置を必要とし、特に、基板上に製膜された薄膜および自立した薄板であって低熱伝導率の材料の種々の特性を測定する場合、測定に限界があり、また、限界内であっても測定精度に問題があった。
【0028】
具体的には、例えば上述した種々の方法の中でも一般的によく使用されるAESやXPSでは、試料表面もしくは界面、およびそれらの近くの領域の分析に効果を発揮する。試料表面にイオンを当てて少しずつ削って(スパッタリング)測定すれば深いところの情報も入手できるが、この場合、スパッタリングによる被測定試料の化学状態(酸化度、窒化度)の変化を伴う。測定環境(測定試料室)としては、10−7Pa程度の真空度が必要となる。従って、真空気密性の高い容器、排気能力の高い真空ポンプが必要になる。また、被測定対象から出てくる電子の検出器などの問題もあり、それぞれの方式の測定を行う装置は非常に高額になり、1基¥2000万〜¥数億する。AESあるいはXPSを、いわゆる有償による依頼分析で行おうとすれば、1試料あたり¥10万〜¥20万の費用がかかる。
【0029】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、基板上に製膜された薄膜および自立した薄板を対象とした、酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定を安価に行うことができ、特に、熱伝導率の測定では、測定感度と同程度以下の熱伝導率の測定が可能となる、酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比の測定方法は、基板上に製膜した薄膜または自立した薄板の諸特性を測定する方法であって、被測定対象材料を被測定対象材料より高い既知の熱伝導率を有する材料に添加させた部材を用いて、被測定対象材料の酸化度、窒化度、熱伝導率または組成比を測定することを特徴とするものである。
【0031】
なお、本発明の酸化度の測定方法の好適例としては、熱伝導率が既知の標準物質を標準物質より熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率と、被測定対象材料を前記熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率とを比較することにより、被測定対象材料の酸化度を求めること、がある。
【0032】
また、本発明の窒化度の測定方法の好適例としては、熱伝導率が既知の標準物質を標準物質より熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率と、被測定対象材料を前記熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率とを比較することにより、被測定対象材料の窒化度を求めること、がある。
【0033】
さらに、本発明の熱伝導率の測定方法の好適例としては、被測定対象材料を被測定対象材料より高い既知の熱伝導率を有する材料に添加し、組成比Cm(高い熱伝導率を有する材料)、Cl(被測定対象材料)を決定し、被測定対象材料を添加した膜の熱伝導率Kと被測定対象材料を添加しない高い熱伝導率を有する材料からなる膜の熱伝導率Kmとを測定し、被測定対象材料の熱伝導率KlをCm/Km+Cl/Kl=1/Kから求めること、がある。
【0034】
さらにまた、本発明の組成比の測定方法の好適例としては、被測定対象材料を被測定対象材料より高い熱伝導率を有する材料に添加した試料があり、その添加割合(組成比)がわかっている場合に、この試料を標準試料にして、熱伝導率を測定することで、添加割合が知られていない試料の組成分析を行うこと、がある。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、被測定対象材料を被測定対象材料より高い既知の熱伝導率を有する材料に添加させた部材を用いて、被測定対象材料の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比などの諸特性を測定することで、高価な装置を用いることなく、すなわち安価に諸特性を測定できるとともに、特に、熱伝導率を測定する際は、使用する装置の測定限界以下の熱伝導率の測定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の特徴は、基板上に製膜した薄膜および自立した薄板の諸特性を測定する方法であって、低熱伝導率材を高熱伝導率材に添加させた部材を用いて、低熱伝導率材の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比などの諸特性を測定することにある。以下、測定すべき特性毎にその説明を行う。
【0037】
<酸化度、窒化度の測定について>
本発明が行う、二つの材料の熱伝導率を比較することによる酸化度、窒化度の測定方法について数式を用いて説明する。それぞれK、Kなる値の熱伝導率を持つ酸化物あるいは窒化物、もしくは酸素と窒素の両方を含む誘電体A、Bがあり、K>Kだとする。材料Aは高融点(2000℃から5000℃)で化学的に安定(化学量論比、酸化度、窒化度が変化しない)材料(例えばAl、HfO、ZrO、Y、MgOなど)と仮定する。A、Bそれぞれを、K>K、Kなる熱伝導率の物質Mに同じ割合混ぜる。物質MにAを混ぜたときの熱伝導率の実測値をKMA、Bを混ぜたときの熱伝導率の実測値をKMBとする。
【0038】
混合された実際の膜は図1に示すようになっているが、熱流に対しては、図2に示すように模式化される。電気伝導の場合、電位差E、電気抵抗R、電流Iの間に次の関係が存在する。
【数1】


熱伝導の場合も同様の関係式が存在する。熱流をσ、温度差をΔT(=T1−T2)、熱抵抗をRとすると、
【数2】


となる。
【0039】
図2に示すように、異なる2種類の材料、すなわちMとAまたはBが熱流σに対して交互に現れる場合、それぞれの領域の熱抵抗をRTM、RTA(B)、組成比をC、CA(B)とすると全体の熱抵抗は次式で表される。
【数3】

【0040】
熱伝導率と熱抵抗は逆数の関係にあるので、全体の熱伝導率をK、領域Mの熱伝導率をK、領域AまたはBの熱伝導率をKA(B)とするとKは次式で表される。
【数4】

【0041】
MにAを混ぜたときに熱伝導率をKMA、Bを混ぜたときの熱伝導率をKMBとすると、
【数5】


となる。添加する材料A、Bの熱伝導率K、KはK>Kの関係にあるので、それぞれの材料を添加した後の膜の熱伝導率KMA、KMBは、組成比C、C(C)によらずKMA>KMBとなる。
【0042】
もしなんらかの原因で(例えば還元作用による酸素の離脱のために)材料Bの熱電伝導率KBが増加し、K≧Kとなれば、6式よりKMB≧KMAとなる。まず、熱伝導率の高い材料Mに熱伝導率が既知のある材料Bを添加し、添加膜の熱伝導率を測定する。つぎに融点が高く、化学的に安定で熱伝導率が材料Bよりも大きな材料AをMに添加し、熱伝導率を測定する。前者と後者の値を比較することにより、材料Bで酸素や窒素の離脱現象(酸素の場合は還元と呼ぶ)が起きているかどうか、判断できる。
【0043】
図3に実施例を示す。図3は、相変化記録材料のGeSbTeにシリコン酸化物あるいはアルミ酸化物を添加した膜の熱伝導率(実測値)の添加率依存性である。ここでいうシリコン酸化物とは、SiOという化学量論比の物質および、この化学量論比からずれたシリコン酸化物、もしくは化学量論比からずれたシリコン酸化物とSiOとの混合物である。アルミ酸化物とは、Alという化学量論比の物質および、この化学量論比からずれたアルミ酸化物、もしくは化学量論比からずれたアルミ酸化物とAlとの混合物である。SiOの熱伝導率は1.47W・m−1・K−1、Alの熱伝導率は6〜8W・m−1・K−1である。
【0044】
GeSbTe膜に添加された酸化物がそれぞれ化学量論比的なSiO、Alであるならば、これまでに数式で説明したように、それぞれの酸化物の熱伝導率からすればSiOを添加した膜の熱伝導率の方が小さくなるはずである。図3の結果からは、同時スパッタ法によるスパッタリング過程でSiOの一部が分解して酸素が離脱し、SiあるいはSiOよりも酸素含有量が少ない低酸素相が生じたために、GeSbTeに添加したシリコン酸化物の熱伝導率がアルミ酸化物の熱伝導率よりも小さくなったことが判断される。このことを確認するため、同時スパッタリングしたときのスパッタ条件と同じ条件で製膜した、シリコン酸化膜およびアルミ酸化膜について、SiOおよびAlと、SiOやAlなど低酸素相の割合をXPSで分析した。
【0045】
図4に分析結果を示す。図4の結果から、スパッタリング時にターゲットに投入した高周波電力が大きいほど、酸化物や窒化物、あるいは酸素と窒素の両方を含む材料などの誘電体に対する、酸素や窒素あるいはその両方を誘電体から離脱させる作用は大きいと考えられる。SiOの融点が1720℃であるのに対し、Alの融点は2047℃とこれより高いこと、Alが結晶化したものはコランダムと呼ばれ、ルビーやサファイヤなどの宝石の基本形であることを考えると、同じスパッタリングパワー(高周波電力)に対して、Alの方が安定である(分解して低酸素相を発生させることがない)と考えられる。
【0046】
図4の結果では、シリコン酸化膜の場合96Wスパッタリングパワーのとき9.4%の低酸素相が生じているのに対し、アルミ酸化膜では倍の200Wのスパッタリングパワーでも低酸素相が生じておらず、アルミ酸化膜は化学量論比的なAlであることがわかる。シリコン酸化膜を200Wのスパッタリングパワーで製膜すると、低酸素相は11%に増える。図4に示した、シリコン酸化膜およびアルミ酸化膜についてのXPSによる酸化度(低酸素相の割合、酸素離脱の程度)の分析結果は、図3に示した熱伝導率の測定結果に基づいて行った。SiOが分解して低酸素相が生じているという判断が正しいことを裏付けている。
【0047】
このように化学的に安定なことが確認されている標準物質(例えばAl、HfO、ZrO、Y、MgOなど)を熱伝導率の高いAgなどの材料に添加した膜の熱伝導率と被測定対象材料を熱伝導率の高いAgなどの材料に添加した膜の熱伝導率とを比較することにより、被測定対象材料で酸素や窒素の離脱(酸素の場合還元)が起きているかどうか、すなわち、酸化度の定性的評価を行うことができる。また、窒化度も同様にして求めることができる。これが本発明の酸化度または窒化度の測定方法における第一の方法である。
【0048】
次に本発明の酸化度または窒化度の測定方法における第二の方法について述べる。例えば、KMA(アルミ酸化物)<KMB(シリコン酸化物)すなわちKA(アルミ酸化物)<KB(シリコン酸化物)であれば、シリコン酸化物で酸素の離脱が起きていると判断できる(上述の第一の方法)。しかし、KMA(アルミ酸化物)>KMB(シリコン酸化物)ならば、シリコン酸化物で酸素の離脱作用が起きていないかというとそうとも限らない。ある程度の酸素離脱が起きているとしても、標準物質(実施例の場合、Al)より熱伝導率が小さいことはあり得るからである。このような場合、図1の実施例において、酸素離脱現象の確認および、通常このようなときに用いられるXPSやAESによらない酸化度(化学量論比(シリコン酸化物の場合SiO、アルミ酸化物の場合Al)の相の割合)の定量的評価は次のようにして行う。
【0049】
図4に示すように、XPSの結果から、高いスパッタパワーで製膜するほどシリコン酸化膜中のSiOの割合が減ることが分かっているので、スパッタパワーを変えてAgなどの高熱伝導率材料に1%から30%の(この割合は、添加してできあがった膜の熱伝導率が測定方式・装置の測定限界を下回らないように決める)シリコン酸化物を添加した薄膜試料を何個か(例えば10個程度)作る。または、SiO、SiO、SiOなど、酸化度の異なる何個か(例えば10個程度)のターゲットを用いて、Agなどの高熱伝導率材に1%から30%程度(この場合は、添加してできあがった膜の熱伝導率が測定方式・装置の測定限界を下回らないように、理想的には測定限界の10倍程度以上になるように決める)のシリコン酸化物を添加した薄膜試料を作る。これらの試料について熱伝導率を測定するとともに、XPSまたはAESで化学量論比の相とそれ以外の相の割合(組成比)を求める。しかる後に、図5にその一例を示すように、熱伝導率の化学量論相と非化学量論相との割合に対する依存性をグラフ化した検量線を作る。いちど検量線を作れば、XPSやAESを使用することなく、熱伝導率を測定することで酸素あるいは窒素、もしくは酸素および窒素の両方を含む誘電体の、化学量論相と非化学量論相の割合を求めることができる。これが、本発明の第二の方法である。
【0050】
第一の方法および第二の方法では、被測定対象物の例としてSiOなどのシリコン酸化物をあげたが、本発明の方法が適用できるのは酸化物に限らず、窒化物、もしくは酸素および窒素の両方を含む誘電体でもよい。また、これらの材料を添加する相手方の材料としてAgをあげて実施例では説明したが、Agに限らず、添加した後の熱伝導率が、測定方式・装置の測定感度(本発明で用いた周期的加熱法のLaserPIT((株)アルバック理工)の測定感度は0.3W・m−1・K−1)に比べて充分大きくなるような金属であればよく、具体的には、以下の表3に示すZn、Al、Ir、Au、Cuなどのように100W・m−1・K−1以上の熱伝導率を示す金属や合金であればよい。高熱伝導率材に誘電体を添加する割合も添加した後の試料の熱伝導率が、測定方式・装置の測定感度以上であればよい。
【0051】
【表3】

【0052】
以下にこれらの根拠を説明するとともに、AgにSiOを添加するときの割合の範囲を算出する。AgにSiO2を95%、30%および1%の3種類の割合で添加したとすると、それぞれの添加後の膜の熱伝導率は5式によればつぎのようになる。
【数6】

【0053】
1%添加しただけで添加後の膜の熱伝導率はAgの熱伝導率の1/4になる。95%添加すると熱伝導率は0.65W・m−1・K−1となり、本発明で使用したLaserPITの測定感度は±0.3W・m−1・K−1であるから、同装置で測定したときの誤差率は±50%となる。添加割合30%のときの誤差率は±10%である。従って、AgにSiO2を添加し、その膜の熱伝導率をLaserPITで測定するときの許容される誤差率が±10%なら、許される添加割合は、1%〜30%である。
【0054】
なお、実施例では、被測定試料は、化学量論比相と非化学量論比相との割合を知りたい材料を高熱伝導率に添加したものとしたが、被測定材料の熱伝導率が測定方式・装置の測定感度以上であれば、直接、被測定材料の熱伝導率を測定してもよい。
【0055】
また、実施例では試料作製法としてスパッタリング法を用いたが、るつぼやボードを用いた抵抗加熱方式あるいは電子ビームを用いた蒸着法、レーザアブレーション法でもよい。さらに、基板上に製膜した薄膜でなく、自立した薄板状の試料の場合は、酸化物あるいは窒化物、もしくは酸素および窒素の両方を含む微粉末を最大50MPa程度で加圧成形した後に、酸素、窒素、酸素・窒素混合ガス、Arなどの希ガス、Arなどの希ガスと水素との混合ガスなどの雰囲気中で加熱する、焼結法を用いる。
【0056】
<熱伝導率の測定について>
電気電導度が大きく、熱伝導率の大きな金属(例えば上述した表2で422W・m−1・K−1のAg)に低熱伝導率材料をある程度(10から30at.%)まぜることで、測定する方式あるいは装置の測定感度よりも充分大きな熱伝導率の材料が得られる。高熱伝導率材の熱伝導率をKm、低熱伝導率材の熱伝導率をKlとした場合、図6に示すように熱の流れる方向に沿って見たとき、Kmの領域とKlの領域とが交互に現れると考えられる。Kmの領域の割合をCm(at.%)、Klの領域の割合をClとすれば、混合膜の熱伝導率Kは以下の11式で表される。
Cm/Km+Cl/Kl=1/K (11式)
【0057】
例として、例えば上述した表2で422W・m−1・K−1のAgに1.47W・m−1・K−1のAgのSiOを添加した膜の熱伝導率Kを11式により計算してみる。Cm=0.9、Cl=0.1のとき、K=15W・m−1・K−1程度である。このときのK値を本発明で使用した測定装置で実測したとすると誤差率は±2%である。KのCl(SiO組成比)依存性を図7に示す。なお、実際に基板上に製膜されたSiO膜、あるいはAgなどの高熱伝導率材に同時スパッタ法などで添加されたSiOは、製膜条件によってはSiOであるとは限らず、SiOという化学量論比からずれた、シリコン酸化物、あるいはSiOと化学量論比からずれたシリコン酸化物との混合物である可能性があるが、図7に示した計算結果は、添加されたものが化学量論比的にSiOである時の計算結果である。
【0058】
熱伝導率の大きな材料に低熱伝導率材を添加する方法は、基板上に薄膜を製膜する場合は、2個のターゲットを用いた同時スパッタ法や、2個の蒸着源を用いた同時蒸着もしくは同時レーザアブレーション法を用いる。自立した薄板状の混合剤を作るには、それぞれの材料を微粉末状にしたうえで均一に混合し、高温状態のもとで加圧(最大50MPa程度)する焼結法を用いる。
【0059】
熱伝導率の実測値をもとに低熱伝導率材の熱伝導率を求める方法について、説明する。低熱伝導率材(例えばシリコン酸化物)を熱伝導率が大きな材料(例えばAg)に添加する。ここでいうシリコン酸化物は、化学量論比がSiOである原材料(スパッタ法の場合は、ターゲット)を用いた場合でも製膜条件によっては、化学量論比からはずれたシリコン酸化物や、これらシリコン酸化物と化学量論比がSiO2であるものとの混合物である可能性がある。また、組成比Cm(高熱伝導率材)、Cl(低熱伝導率材)は、EPMAやICPなどの方法で決定する。低熱伝導率材を添加した膜としない膜の熱伝導率を測定し、11式により低熱伝導率材の熱伝導率を算出する。実施例を図8および以下の表4に示す。
【0060】
無添加のGeSbTeの熱伝導率実測値を0.93W・m−1・K−1(図8中A)、スパッタレート比(=組成比(EPMAで決定))で9:1になるようにシリコン酸化物を添加したときの熱伝導率を0.57W・m−1・K−1(図8中B)として、11式からシリコン酸化物の熱伝導率を求めると、0.127W・m−1・K−1となる。この値の信頼性を評価し、かつ、高熱伝導率材にどの程度まで低熱伝導率材を混ぜていいかの限界を見積もるために、いま求めた値を11式に代入し、各割合における熱伝導率を計算し実測値と比較した。結果を以下の表4に示す。
【0061】
【表4】

【0062】
GST/シリコン酸化物=7/3まで実測値と計算値のずれは3%以内に収まっている。シリコン酸化物の割合が半分以上になり、熱伝導率が本発明で用いた装置の測定感度以下になると計算値とのずれが大きくなっている。これは、実測値の誤差が大きくなったためと考えられる。添加膜の熱伝導率から、正確な低熱伝導率材の熱伝導率を求めるための添加割合の上限は、GeSbTeとシリコン酸化物との組合せの場合、40%程度ということになる。一般的には、添加された結果できあがった膜の熱伝導率が測定に用いる方式・装置の測定感度を下回らないような割合で添加することが重要になる。不正確な熱伝導率の実測値の低熱伝導率材熱伝導率への影響を確認するために、各割合の実測値かr求めたシリコーン酸化物の熱伝導率を以下の表5に示す。
【0063】
【表5】

【0064】
<組成比の測定について>
低熱伝導率材を高熱伝導率材に添加した試料があり、その添加割合(組成比)がわかっている場合、この試料を標準試料にして、熱伝導率を測定することで、添加割合が知られていない試料の組成分析を行うことができる。図8に熱伝導率の実測結果を示したアルミ酸化物を添加した膜を例にして説明する。
【0065】
図8中添加割合(スパッタレート比)9:1のアルミ酸化物添加膜(図8中C)のアルミ酸化物の組成比は、EPMA(Electron Ptobe Microanalyses)の結果によれば17at.%であった。この組成比と添加膜熱伝導率の実測値から11式により求めたアルミ酸化物の熱伝導率は、0.0524W・m−1・K−1である。図8中、添加割合(スパッタレート比)8:2でアルミ酸化物を添加した膜のアルミ酸化物の組成比についてはEPMAによる分析を行わなかったが、いま求めたAlの熱伝導率を11式に代入することにより、この試料のアルミ酸化物の組成比は27at.%と求められる。このようにひとつの試料の組成比をなんらかの方法で決めることができれば、他の組成分析専用の装置にくらべて安価な装置(¥500万〜1000万)で、分析のために別途試料をつくることなく、組成比が道の試料の熱伝導率を測定することで、その試料の組成分析が行える。
【0066】
なお、上述した例では、本発明における熱伝導率測定方法および熱伝導率の値を用いて組成しを求める方法について説明するにあたり、試料は基板上に製膜した薄膜とし、測定方法はレーザによる周期的加熱法としたが、試料は基板を用いない自立した薄板でもよく、測定方式は本稿で紹介した他の方式でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、基板上に製膜した薄膜または自立した薄板などの材料、特に、低熱伝導率を有する被測定対象材料の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比を測定するいずれの分野にも適用することができ、簡単な操作で安価に、従来、装置の測定限界以下となり、あるいは、測定限界内でも測定限界近傍で高精度の測定ができなかった、低熱伝導率を有する被測定対象材料の酸化度、窒化度、熱伝導率および組成比を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の測定方法で用いる混合膜の概念図を示す図である。
【図2】本発明の測定方法で用いる混合膜を混合状態の熱流から見た模式図である。
【図3】本発明の測定方法において、GeSbTeにシリコン酸化物あるいはアルミ酸化物を添加した膜の熱伝導率の添加率依存性を示すグラフである。
【図4】本発明の測定方法において、XPSの分析結果を示すグラフである。
【図5】本発明の測定方法において、熱伝導率の化学量論相と非化学量論相との割合に対する依存性を示すグラフである。
【図6】本発明の測定方法で用いる低熱伝導率測定用混合膜の一例を示す図である。
【図7】本発明の測定方法において、AgにSiOを添加したときの熱伝導率KとSiOの組成比との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の測定方法において、GeSbTeにシリコン酸化物あるいはアルミ酸化物を添加した膜の熱伝導率の添加率依存性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に製膜した薄膜または自立した薄板の諸特性を測定する方法であって、被測定対象材料を被測定対象材料より高い既知の熱伝導率を有する材料に添加させた部材を用いて、被測定対象材料の酸化度、窒化度、熱伝導率または組成比を測定することを特徴とする測定方法。
【請求項2】
熱伝導率が既知の標準物質を標準物質より熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率と、被測定対象材料を前記熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率とを比較することにより、被測定対象材料の酸化度を求めることを特徴とする請求項1に記載の酸化度の測定方法。
【請求項3】
熱伝導率が既知の標準物質を標準物質より熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率と、被測定対象材料を前記熱伝導率の高い材料に添加した膜の熱伝導率とを比較することにより、被測定対象材料の窒化度を求めることを特徴とする請求項1に記載の窒化度の測定方法。
【請求項4】
被測定対象材料を被測定対象材料より高い既知の熱伝導率を有する材料に添加し、組成比Cm(高い熱伝導率を有する材料)、Cl(被測定対象材料)を決定し、被測定対象材料を添加した膜の熱伝導率Kと被測定対象材料を添加しない高い熱伝導率を有する材料からなる膜の熱伝導率Kmとを測定し、被測定対象材料の熱伝導率Klを
Cm/Km+Cl/Kl=1/K
から求めることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導率の測定方法。
【請求項5】
被測定対象材料を被測定対象材料より高い熱伝導率を有する材料に添加した試料があり、その添加割合(組成比)がわかっている場合に、この試料を標準試料にして、熱伝導率を測定することで、添加割合が知られていない試料の組成分析を行うことを特徴とする請求項1に記載の組成比の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−163161(P2007−163161A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356362(P2005−356362)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年9月7日 社団法人応用物理学会発行の「2005年(平成17年)秋季 第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集 第1分冊」に発表
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】